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特許7512093車両用前照灯の点灯制御システム及び点灯制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】車両用前照灯の点灯制御システム及び点灯制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20240701BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
B60Q1/04 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020098554
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191656
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 功基
(72)【発明者】
【氏名】喜多 靖
(72)【発明者】
【氏名】木村 能子
(72)【発明者】
【氏名】中島 航
(72)【発明者】
【氏名】大山 修斗
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 暁久
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009566(JP,A)
【文献】特開2001-202002(JP,A)
【文献】特開2016-068792(JP,A)
【文献】特開2018-069748(JP,A)
【文献】特開2001-294080(JP,A)
【文献】米国特許第05067055(US,A)
【文献】特開2009-132230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に向けて少なくともすれ違いビームと、前記すれ違いビームよりも手前の路面に向けて手前照射ビームとを照射する車両用前照灯と、
前記すれ違いビームと前記手前照射ビームとの点灯制御を行う点灯制御部と、
前記車両の前方に位置する横断歩道を検知する歩道検知部と、
前記横断歩道と前記車両との間の距離を算出する距離算出部とを備え、
前記点灯制御部は、前記車両の夜間走行時に、前記すれ違いビーム及び前記手前照射ビームを点灯した状態から、前記距離が一定以下となったときに、前記手前照射ビームを消灯又は減光する制御を行うことを特徴とする車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項2】
前記点灯制御部は、前記車両が前記横断歩道を通過したとき又は通過した後に、前記手前照射ビームを再点灯する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項3】
前記歩道検知部は、前記車両に搭載された撮像装置から供給される画像情報に基づいて、前記横断歩道を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項4】
前記画像情報は、道路標識と、道路標示と、横断歩道線との何れか1つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項5】
前記距離算出部は、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知した後に、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知するのに用いた前記画像情報に基づいて、前記距離を算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項6】
前記距離算出部は、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知した後に、前記車両に搭載されたGPS装置から供給される前記車両の位置情報と、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知するのに用いた前記画像情報とに基づいて、前記距離を算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項7】
前記歩道検知部は、前記車両に搭載されたGPS装置から供給される前記車両の位置情報と、前記横断歩道の位置が特定された地図情報とに基づいて、前記横断歩道を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項8】
前記距離算出部は、前記位置情報と前記地図情報とに基づいて、前記距離を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項9】
前記手前照射ビームは、前記すれ違いビームの下部側と重複して照射されることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
【請求項10】
車両の前方に向けて少なくともすれ違いビームと、前記すれ違いビームよりも手前の路面に向けて手前照射ビームとを照射する車両用前照灯の点灯制御方法であって、
前記車両の夜間走行時に、前記すれ違いビーム及び前記手前照射ビームを点灯した状態から、前記車両の前方に位置する横断歩道と前記車両との間の距離が一定以下となったときに、前記手前照射ビームを消灯又は減光することを特徴とする車両用前照灯の点灯制御方法。
【請求項11】
前記車両が前記横断歩道を通過したとき又は通過した後に、前記手前照射ビームを再点灯することを特徴とする請求項10に記載の車両用前照灯の点灯制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯の点灯制御システム及び点灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、夜間に横断歩道を横断しようとする歩行者に対して、車両の接近を通知・警告する技術として、下記特許文献1に記載の車両用表示システムが挙げられる。この車両用表示システムでは、自車両から歩行者に対して、路面上に図形や文字を描画することで、車両との距離感の情報を伝えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-037260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両用表示システムでは、歩行者や自車両の運転者に対して煩わしさを与えてしまう。また、歩行者が路面上に描画された図形や文字を正しく認識できない可能性もある。
【0005】
さらに、この車両用表示システムでは、夜間に横断歩道を横断しようとする歩行者に対して、横断歩道を横断するまでに必要な車両との距離感や、接近する車両の加速感を十分に認識させることができない。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、夜間に横断歩道を横断しようとする歩行者に対して、横断歩道を横断するまでに必要な車両との距離感及び車両の加速感を実際の車両との距離よりも短い距離で認識させることを可能とした車両用前照灯の点灯制御システム及び点灯制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 車両の前方に向けて少なくともすれ違いビームと、前記すれ違いビームよりも手前の路面に向けて手前照射ビームとを照射する車両用前照灯と、
前記すれ違いビームと前記手前照射ビームとの点灯制御を行う点灯制御部と、
前記車両の前方に位置する横断歩道を検知する歩道検知部と、
前記横断歩道と前記車両との間の距離を算出する距離算出部とを備え、
前記点灯制御部は、前記車両の夜間走行時に、前記すれ違いビーム及び前記手前照射ビームを点灯した状態から、前記距離が一定以下となったときに、前記手前照射ビームを消灯又は減光する制御を行うことを特徴とする車両用前照灯の点灯制御システム。
〔2〕 前記点灯制御部は、前記車両が前記横断歩道を通過したとき又は通過した後に、前記手前照射ビームを再点灯する制御を行うことを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔3〕 前記歩道検知部は、前記車両に搭載された撮像装置から供給される画像情報に基づいて、前記横断歩道を検知することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔4〕 前記画像情報は、道路標識と、道路標示と、横断歩道線との何れか1つ以上であることを特徴とする前記〔3〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔5〕 前記距離算出部は、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知した後に、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知するのに用いた前記画像情報に基づいて、前記距離を算出することを特徴とする前記〔4〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔6〕 前記距離算出部は、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知した後に、前記車両に搭載されたGPS装置から供給される前記車両の位置情報と、前記歩道検知部が前記横断歩道を検知するのに用いた前記画像情報とに基づいて、前記距離を算出することを特徴とする前記〔4〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔7〕 前記歩道検知部は、前記車両に搭載されたGPS装置から供給される前記車両の位置情報と、前記横断歩道の位置が特定された地図情報とに基づいて、前記横断歩道を検知することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔8〕 前記距離算出部は、前記位置情報と前記地図情報とに基づいて、前記距離を算出することを特徴とする前記〔7〕に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔9〕 前記手前照射ビームは、前記すれ違いビームの下部側と重複して照射されることを特徴とする前記〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の車両用前照灯の点灯制御システム。
〔10〕 車両の前方に向けて少なくともすれ違いビームと、前記すれ違いビームよりも手前の路面に向けて手前照射ビームとを照射する車両用前照灯の点灯制御方法であって、
前記車両の夜間走行時に、前記すれ違いビーム及び前記手前照射ビームを点灯した状態から、前記車両の前方に位置する横断歩道と前記車両との間の距離が一定以下となったときに、前記手前照射ビームを消灯又は減光することを特徴とする車両用前照灯の点灯制御方法。
〔11〕 前記車両が前記横断歩道を通過したとき又は通過した後に、前記手前照射ビームを再点灯することを特徴とする前記〔10〕に記載の車両用前照灯の点灯制御方法。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、夜間に横断歩道を横断しようとする歩行者に対して、横断歩道を横断するまでに必要な車両との距離感及び車両の加速感を実際の車両との距離よりも短い距離で認識させることを可能とした車両用前照灯の点灯制御システム及び点灯制御方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用前照灯の一構成例を示す正面図である。
図2】車両用前照灯から車両の前方に向けて照射されるすれ違いビーム及び手前照射ビームによって路面に形成されたすれ違い用配光パターン及び手前照射用配光パターンを示す模式図である。
図3】すれ違いビーム及び手前照射ビームによって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたすれ違い用配光パターン及び手前照射用配光パターンを示す模式図である。
図4】車両用前照灯から車両の前方に向けて照射される手前照射ビームの鉛直方向の配光角を示す側面図である。
図5】車両用前照灯から車両の前方に向けて照射される手前照射ビームの水平方向の配光角を示す平面図である。
図6】車両用前照灯の点灯制御システムの一構成例を示すブロック図である。
図7】車両用前照灯の点灯制御方法の説明するための模式図である。
図8】車両用前照灯の点灯制御方法の説明するためのフローチャートである。
図9】手前照射ビームが歩行者に与える距離感について測定した結果を示すグラフ及び写真である。
図10】手前照射ビームの路面配光端距離を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0011】
(車両用前照灯)
先ず、本発明の一本実施形態に係る車両用前照灯1の構成について、図1図5を参照しながら説明する。
なお、図1は、車両用前照灯1の一構成例を示す正面図である。図2は、車両用前照灯1から車両Bの前方に向けて照射されるすれ違いビームL1及び手前照射ビームL2によって路面Tに形成されたすれ違い用配光パターンP1及び手前照射用配光パターンP2を示す模式図である。図3は、すれ違いビームL1及び手前照射ビームL2によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたすれ違い用配光パターンP1及び手前照射用配光パターンP2を示す模式図である。図4は、車両用前照灯1から車両Bの前方に向けて照射される手前照射ビームL2の鉛直方向の配光角を示す側面図である。図5は、車両用前照灯1から車両Bの前方に向けて照射される手前照射ビームB2の水平方向の配光角を示す平面図である。
【0012】
本実施形態の車両用前照灯1は、図1図5に示すように、車両Bの前端側の両コーナー部に搭載された灯体Hの内側に、すれ違いビーム用ランプ2と、手前照射用ランプ3と、走行ビーム用ランプ4と、ポジションランプ5と、ターンランプ6とが配置された構造を有している。
【0013】
なお、図1では、車両Bの左右両側に対称に配置される一対の車両用前照灯1のうち、左側の車両用前照灯1を例示している。また、灯体Hは、正面が開口したハウジングと、このハウジングの開口を覆う透明なレンズカバー(アウターレンズ)とにより構成されている。
【0014】
すれ違いビーム用ランプ2は、灯体Hの上部中央側に配置されて、車両Bの前方に向けてすれ違いビームL1を照射する。すれ違いビームL1は、上端にカットオフラインCLを含むすれ違い用配光パターンP1を形成する。
【0015】
手前照射用ランプ3は、灯体Hの下部中央側に配置されて、すれ違いビームL1よりも手前の路面Tに向けて手前照射ビームL2を出射する。手前照射ビームL2は、すれ違いビームL1の下部側と重複して照射されることによって、すれ違い用配光パターンP1の下部側と一部重なる手前照射用配光パターンP2を形成する。
【0016】
また、手前照射ビームL2の鉛直方向の配光角は、図4に示すように、水平方向(0°)に対して-1.7°~-53°の範囲としている。一方、手前照射ビームL2の水平方向の配光角は、図5に示すように、前方(0°)に対して-30°~45°の範囲としている。
【0017】
また、手前照射用配光パターンP2の幅は、すれ違い用配光パターンP1の幅と同程度か、場合によってはすれ違い用配光パターンP1の幅よりも大きくてもよい。
【0018】
走行ビーム用ランプ4は、灯体Hの車幅方向の内側に配置されて、車両Bの前方に向けて走行ビーム(ハイビーム)(図示せず。)を出射する。走行ビームは、すれ違いビームL1よりも上方に向けて照射されることによって、すれ違い用配光パターンP1の上方に走行ビーム用配光パターンを形成する。
【0019】
ポジションランプ5は、灯体Hの車幅方向の外側に配置されて、白色発光する。ターンランプ6は、灯体Hの手前照射用ランプ3とポジションランプ5との間に配置されて、橙色発光により点滅する。
【0020】
本実施形態の車両用前照灯1では、すれ違いビーム用ランプ2と手前照射用ランプ3と走行ビーム用ランプ4との点灯を切り替えることによって、すれ違いビームL1と手前照射ビームL2と走行ビームとを車両Bの前方に向けて切り替え自在に照射することが可能である。また、本実施形態の車両用前照灯1では、ポジションランプ5とターンランプ6との点灯を切り替えることが可能である。
【0021】
(車両用前照灯の点灯制御システム)
次に、上記車両用前照灯1の点灯制御システム100の構成について、図6及び図7を参照しながら説明する。
なお、図6は、車両用前照灯1の点灯制御システム100の一構成例を示すブロック図である。図7は、車両用前照灯1の点灯制御方法の説明するための模式図である。
【0022】
本実施形態の点灯制御システム100は、図6及び図7に示すように、点灯制御部101と、歩道検知部102及び距離算出部103を含む演算処理部104と、情報記憶部105とを備えている。また、点灯制御部101、演算処理部104及び情報記憶部105は、車両用前照灯1と電気的に接続されたコンピュータ(ECU)200により構成されている。コンピュータ(ECU)200は、撮像装置301と、入力装置302と、GPS装置303と電気的に接続されている。
【0023】
点灯制御部101は、車両用前照灯1の点灯制御を行うものであり、少なくともすれ違いビームL1と手前照射ビームL2との点灯(ON)と消灯(OFF)とを切り替える制御を行う。
【0024】
歩道検知部102は、車両Bの前方に位置する横断歩道Rを検知する。具体的には、撮像装置301が車両Bの前方における画像を撮像し、この撮像装置301から供給される画像情報を情報記憶部105に記憶する。撮像装置301については、車両Bに搭載された赤外線カメラ(暗視カメラ)などを用いることができる。
【0025】
歩道検知部102は、この画像情報に基づいて、車両Bの前方における横断歩道Rの有無を検知する。画像情報については、例えば、横断歩道Rの位置を示す道路標識r1や、横断歩道Rの手前の路面Tに表示された道路標示r2と、横断歩道Rを表示する横断歩道線r3などを挙げることができる。歩道検知部102は、これら道路標識r1と道路標示r2と横断歩道線r3の何れか1つ以上の画像情報に基づいて、車両Bの前方における横断歩道Rの有無を検知する。
【0026】
一方、歩道検知部102は、入力装置302を介して横断歩道Rの位置が特定された地図情報を情報記憶部105に記憶する。入力装置302については、有線又は無線のインターフェースなどを用いることができる。
【0027】
入力装置302に有線インターフェースを用いた場合、この入力装置302を介して情報記憶部105に地図情報を予め記憶(保存)しておく。一方、入力装置302に無線インターフェースを用いた場合、この入力装置302を介して情報記憶部105に地図情報を予め記憶(保存)しておくだけでなく、必要な地図情報だけを随時記憶(保存)したり、更新(書き換え)したりすることが可能である。
【0028】
また、歩道検知部102は、車両Bに搭載されたGPS装置303から供給される車両Bの位置情報を情報記憶部105に記憶する。そして、歩道検知部102は、これら横断歩道Rの地図情報と、車両Bの位置情報とに基づいて、車両Bの前方における横断歩道Rの有無を検知する。
【0029】
距離算出部103は、横断歩道Rと車両Bとの間の距離を算出する。具体的には、歩道検知部102が横断歩道Rを検知した後に、撮像装置301から供給される歩道検知部102が横断歩道Rを検知するのに用いた画像情報に基づいて、走行する車両Bと、車両Bの前方に位置する横断歩道Rとの間の距離を算出する。
【0030】
一方、距離算出部103は、走行する車両Bの位置情報と、車両Bの前方に位置する横断歩道Rの地図情報とに基づいて、横断歩道Rと車両Bとの間の距離を算出する。
【0031】
一方、距離算出部103は、歩道検知部102が横断歩道Rを検知した後に、走行する車両Bの位置情報と、撮像装置301から供給される歩道検知部102が横断歩道Rを検知するのに用いた画像情報に基づいて、横断歩道Rと車両Bとの間の距離を算出する。
【0032】
距離算出部103では、上記何れかの方法を用いて距離を算出すればよく、更に上記何れかの方法を組み合わせて距離を算出してもよい。
【0033】
点灯制御部101は、車両Bの夜間走行時に、すれ違いビームL1及び手前照射ビームL2を点灯(ON)した状態から、距離が一定以下となったときに、手前照射ビームL2を消灯(OFF)する制御を行う。
【0034】
また、点灯制御部101は、車両Bが横断歩道Rを通過したとき又は通過した後(距離が0以下となったとき)に、手前照射ビームL2を再点灯する制御を行う。
【0035】
(車両用前照灯の点灯制御方法)
次に、上記車両用前照灯1の点灯制御方法について、図7図10を参照しながら説明する。
なお、図8は、車両用前照灯1の点灯制御方法の説明するためのフローチャートである。図9は、手前照射ビームL2が歩行者Mに与える距離感について測定した結果を示すグラフ及び写真である。図10は、手前照射ビームL2の路面配光端距離を説明するための模式図である。
【0036】
本実施形態の点灯制御方法は、上記点灯制御システム100を用いて、車両Bの夜間走行時に、すれ違いビームL1及び手前照射ビームL2を点灯(ON)した状態から、車両Bの前方に位置する横断歩道Rと車両Bとの間の距離が一定以下となったときに、手前照射ビームL2を消灯することを特徴とする。
【0037】
また、本実施形態の点灯制御方法は、車両Bが横断歩道Rを通過したとき又は通過した後(距離が0以下となったとき)に、手前照射ビームL2を再点灯する。
【0038】
本実施形態の点灯制御方法は、図7に示すように、夜間に横断歩道Rを横断しようとする歩行者Mに対して、横断歩道Rを横断するまでに必要な車両Bとの距離感及び車両Bの加速感を実際の車両Bとの距離よりも短い距離で認識させるために行われる。
【0039】
また、本実施形態の点灯制御方法は、図8に示すフローチャートに従って、車両用前照灯1の点灯制御を行う。
【0040】
具体的には、先ず、図8に示すステップS101において、車両Bの夜間走行時に、すれ違いビームL1及び手前照射ビームL2を点灯(ON)した状態とする。
【0041】
次に、図8に示すステップS102において、図7に示す横断歩道Rからの距離が一定以上となる区間Aにおいて、車両Bの前方に位置する横断歩道Rの検知を行う。
【0042】
次に、車両Bの前方に位置する横断歩道Rの検知した場合、図8に示すステップS103に進み、走行する車両Bと、車両Bの前方に位置する横断歩道Rとの間の距離を算出する。
【0043】
次に、図8に示すステップS104において、車両Bと横断歩道Rとの間の距離が一定以下となった場合、図8に示すステップS105に進み、横断歩道Rからの距離が一定以下となる区間Bにおいて、手前照射ビームL2を消灯(OFF)する。
【0044】
ここで、手前照射ビームL2を消灯するまでの一定の距離は、接近する車両Bとの距離から歩行者Mが横断歩道の横断が無理だと判断する距離である。この一定の距離については、実験結果から100mに設定している。
【0045】
次に、図8に示すステップS106において、車両Bと横断歩道Rとの間の距離が0m(横断歩道Rの位置)となった場合、図8に示すステップS107に進み、車両Bが横断歩道Rを通過した区間Cにおいて、手前照射ビームL2を再点灯(ON)する。
【0046】
なお、横断歩道Rについては、連続する場合も考えられることから、車両Bが横断歩道Rを通過してからの時間や距離に応じて、手前照射ビームL2を再点灯(ON)するタイミングを適宜変更することが可能である。
【0047】
ところで、すれ違いビームL1よりも手前の路面Tに向けて手前照射ビームL2を照射した場合、横断歩道Rを横断しようとする歩行者Mに対して、車両Bとの距離感を実際の距離よりも短い距離として認識(錯覚)させることが可能である。
【0048】
ここで、手前照射ビームL2が歩行者Mに与える距離感についての測定を行った。その測定結果を図9に示す。
具体的に、本測定では、すれ違いビームL1のみを照射する参考車両と、すれ違いビームL1及び手前照射ビームL2を照射する測定車両とを準備する。また、測定車両については、手前照射ビームL2の照射位置を変更しながら、参考車両と測定車両とが同じ位置に停止していると感じたときの距離の差を測定した。
【0049】
図9には、測定車両から前方の路面に向けて照射される手前照射ビームL2の路面配光端距離を0m、6m、12mとしたときの測定車両(写真左側)の参考車両(写真右側)に対する距離の差[m]をグラフに示している。路面配光端距離は、図10に示すように、手前照射ビームL2により路面Tに形成された手前照射用配光パターンP2の車両Bに最も近い端部から車両Bの先端までの距離である。
【0050】
また、図9に示すグラフの縦軸は、距離差が0mからプラス(+)方向に向かうほど、参考車両よりも前方に測定車両が位置することで、実際の距離とは遠く感じることを示している。一方、距離差が0mからマイナス(-)方向に向かうほど、参考車両よりも後方に測定車両が位置することで、実際の距離とは近く感じることを示している。
【0051】
図9に示すように、測定車両と参考車両との距離差がマイナス(-)となることで、手前照射ビームL2を照射した場合、手前照射ビームL2が歩行者Mに与える距離感は、実際の距離よりも近く感じさせることが可能である。
【0052】
これにより、本実施形態の点灯制御方法では、図7に示すように、歩行者Mに対して、横断歩道Rからの距離が105mの地点で、横断歩道Rに接近する車両Bとの距離が100mにあると認識(錯覚)させることが可能である。また、車両Bが走行している場合は、歩行者Mに対して車両の加速感(接近感)を与えることが可能である。
【0053】
したがって、本実施形態の点灯制御方法では、歩行者Mに対して、横断歩道Rを横断するまでに必要な車両Bとの距離感及び車両の加速感を実際の車両Bとの距離よりも短い距離で認識させることによって、横断歩道Rの横断を早期に断念させることが可能である。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、車両Bの前方に位置する横断歩道Rと車両Bとの間の距離が一定以下となったときに、手前照射ビームL2を消灯する場合を例示しているが、手前照射ビームL2を減光させることも可能である。この場合も、歩行者Mに対して、横断歩道Rを横断するまでに必要な車両Bとの距離感及び車両の加速感を実際の車両Bとの距離よりも短い距離で認識させることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…車両用前照灯 2…すれ違いビーム用ランプ 3…手前照射用ランプ 4…走行ビーム用ランプ 5…ポジションランプ 6…ターンランプ 100…点灯制御システム 101…点灯制御部 102…歩道検知部 103…距離算出部 104…演算処理部 105…情報記憶部 200…コンピュータ(ECU) 301…撮像装置 302…入力装置 303…GPS装置 L1…すれ違いビーム L2…手前照射ビーム P1…すれ違い用配光パターン P2…手前照射用配光パターン B…車両 H…灯体 T…路面 R…横断歩道 r2…道路標示 r3…横断歩道線 M…歩行者
図1
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