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特許7512094放射線治療用CT撮像システム及び放射線治療用CT撮像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】放射線治療用CT撮像システム及び放射線治療用CT撮像方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240701BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61B6/03 577
A61N5/10 P
A61B6/03 560G
A61B6/03 570B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020098683
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191370
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 康介
(72)【発明者】
【氏名】井関 康
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517837(JP,A)
【文献】特開2012-210232(JP,A)
【文献】特開平06-269445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0083889(US,A1)
【文献】特表2004-533889(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150708(WO,A1)
【文献】Z. van Kesteren, et al.,A novel amplitude binning strategy to handle irregular breathing during 4DMRI acquisition: improved imaging for radiotherapy purposes,Radiation Oncology,2019年,Vol. 14, No. 80,p. 1-14,<検索日:2023.09.22>, <DOI: 10.1186/s13014-019-1279-z>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58 、
A61M36/10 -36/14 、
A61N 5/00 - 5/10 、
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
インターネット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を載置する治療台と、
前記治療台を取り囲んでこの治療台の周囲を回転すると共に前記治療台上の前記患者へ放射線を照射する放射線照射部が設置された回転ガントリと、
前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時にX線を照射するX線発生部と、
前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時に前記治療台上の前記患者を透過した透過X線を撮像して画像データを出力するX線撮像部と、
前記治療台上の前記患者の呼吸運動を監視する呼吸監視装置と、
前記X線発生部による前記X線の発生及び前記X線撮像部からの前記画像データの取得を制御すると共に、前記X線撮像部からの前記画像データを用いて3次元再構成画像を作成する制御計算装置と、を有する放射線治療用CT撮像システムであって、
前記制御計算装置は、前記呼吸監視装置により監視された前記患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅を複数の振幅範囲に分割し、
これらの振幅範囲毎に、前記X線撮像部にて撮像された前記画像データを、この画像データ撮像時の前記回転ガントリの回転角度値と共に、前記回転ガントリの回転中に分類し、
同一の前記振幅範囲に分類された複数の前記画像データ及び前記回転ガントリの回転角度値を再構成して前記3次元再構成画像を作成し、
前記振幅範囲毎に分類された前記画像データが前記回転ガントリの1回転において枚数に偏りがあるときには、前記3次元再構成画像を作成するのに不適切であると判断して、前記1回転で取得された前記画像データを棄却するよう構成されたことを特徴とする放射線治療用CT撮像システム。
【請求項2】
前記制御計算装置は、患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅範囲毎に再構成して作成された3次元再構成画像を複数、前記呼吸波形の最大吸気と最大呼気の一方から他方へ向って順次並べて統合することで、最大吸気と最大呼気との間で順次変化する立体画像を出力するよう構成されたことを特徴とする請求項に記載の放射線治療用CT撮像システム。
【請求項3】
前記制御計算装置は、患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅を複数の振幅範囲に分割するための前記振幅についての分割領域と分割数に関する情報を、予め保持するよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療用CT撮像システム。
【請求項4】
患者を載置する治療台と、
前記治療台を取り囲んでこの治療台の周囲を回転すると共に、前記治療台上の前記患者へ放射線を照射する放射線照射部が設置された回転ガントリと、
前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時にX線を照射するX線発生部と、
前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時に前記治療台上の前記患者を透過した透過X線を撮像して画像データを出力するX線撮像部と、
前記治療台上の前記患者の呼吸運動を監視する呼吸監視装置と、
前記X線発生部による前記X線の発生及び前記X線撮像部からの前記画像データの取得を制御すると共に、前記X線撮像部からの前記画像データを用いて3次元再構成画像を作成する制御計算装置と、を有する放射線治療用CT撮像システムを準備し、
前記呼吸監視装置により監視された前記患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅を複数の振幅範囲に分割するステップと、
これらの振幅範囲毎に、前記X線撮像部にて撮像された前記画像データを、この画像データ撮像時の前記回転ガントリの回転角度値と共に、前記回転ガントリの回転中に分類するステップと、
同一の前記振幅範囲に分類された複数の前記画像データ及び前記回転ガントリの回転角度値を再構成して、前記3次元再構成画像を作成するステップとを、前記制御計算装置が順次実施し、
前記制御計算装置は更に、前記振幅範囲毎に分類された前記画像データが前記回転ガントリの1回転において枚数に偏りがあるときには、前記3次元再構成画像を作成するのに不適切であると判断して、前記1回転で取得された前記画像データを棄却することを特徴とする放射線治療用CT撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線治療用CT撮像システム及び放射線治療用CT撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、放射線を患者の患部に照射してその病巣の細胞に損傷を与える治療方法であるが、患部への正確な照射が行われないと正常組織も損傷しかねない。そのため、予めCT(コンピューター断層)撮影を行って患者の患部位置を3次元的に把握し、放射線を、正常組織を避けて患部に最も効果的に照射する治療計画を行っている。本放射線治療では、その治療計画に従って放射線を照射させるように、治療計画時の患者体位と治療直前の患者の体位とを合わせる必要がある。
【0003】
そのため、治療計画時に、CT撮像装置から出力される3次元再構成画像を断層化してCT画像を求め、このCT画像と、治療直前に治療室内で撮影するX線撮像装置からのX線画像とを照合させて、患者の患部の位置合わせが行われている。但し、治療室内のX線撮像装置では、患者に対して体軸方向の2次元画像を取得するのみであり、治療計画時のCT撮像装置から出力される3次元再構成画像に対して精度の高い照合を行うことが困難である。
【0004】
CT撮影に使用するX線の発生には、扇状に拡散するファンビームと円錐状に拡散するコーンビームとがある。放射線治療用回転ガントリではコーンビーム状のX線を使用したCT撮影が用いられる。コーンビーム状のX線を使用したCT撮影において、患者の断層座標V(x、y、z)からX線検出器座標V(x、y、z)への座標変換は、図8に示す
E×P×T×R×V=V
という一連の行列式を用いた計算で行われる。ここで各行列は、
【数1】
と書き表せる。
【0005】
回転行列Rは、ボリューム(患者)座標系を角度φでy軸周りに反時計方向に回転させる。また、平行移動行列Tは、ボリューム(患者)座標系をX線の照射方向(z軸)に沿って負側に距離dだけ移動させる。これらの2つの行列R及びTは、座標系をボリューム(患者)座標系からのX線源座標系へ写像する。また、X線源の位置D並びにX線検知器のサイズw及びhによって決定される透視投射行列Pは、コーンビーム投影の切頭体を定義する。この行列Pのパラメータn及びfは、X線源から切頭体の遠近それぞれのクリッピング平面までの距離を表す。更に、座標変換行列Eは、患者の断層座標Vに対するX線検出器座標Vをなす。
【0006】
上記行列式による演算に基づき、回転ガントリに設置されたX線撮像装置が、患者周辺を回転しながらX線透過画像を撮影することによって画像データを取得し、3次元再構成画像を生成する。しかしながら、回転ガントリの回転速度は1周が約1~2分であり、患者の呼吸周期の約3~4秒に対して長すぎる。このため、回転ガントリが1回転して撮像する間に患者の呼吸によって撮像範囲が動いてしまい、上記X線撮像装置では、位置精度の高い3次元再構成画像が得られない。従って、この3次元再構成画像では、治療計画時のCT画像との整合や立体的な位置合わせを行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-29793号公報
【文献】特表2010-505562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、CT撮影時のX線画像に捉えられた患者内の標的の3次元位置を認識し、動体追跡治療の治療放射線照射条件を満たす画像を選択して画像再構成を行い、CT画像を生成する旨が記載されている。これにより、患者の呼吸等の動きがあっても、治療計画通りに放射線を標的に照射することが可能になる。しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、治療放射線照射条件を満たす画像のみを選択するため、患部の位置変位を正確に把握できない。例えば、治療計画時の骨格及び臓器の位置関係が治療時とずれていたとき、その日の状態の違いによるのか、呼吸性移動によるのかの区別をすることが困難である。
【0009】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、患者の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を正確に把握できる放射線治療用CT撮像システム及び放射線治療用CT撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態における放射線治療用CT撮像システムは、患者を載置する治療台と、前記治療台を取り囲んでこの治療台の周囲を回転すると共に前記治療台上の前記患者へ放射線を照射する放射線照射部が設置された回転ガントリと、前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時にX線を照射するX線発生部と、前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時に前記治療台上の前記患者を透過した透過X線を撮像して画像データを出力するX線撮像部と、前記治療台上の前記患者の呼吸運動を監視する呼吸監視装置と、前記X線発生部による前記X線の発生及び前記X線撮像部からの前記画像データの取得を制御すると共に、前記X線撮像部からの前記画像データを用いて3次元再構成画像を作成する制御計算装置と、を有する放射線治療用CT撮像システムであって、前記制御計算装置は、前記呼吸監視装置により監視された前記患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅を複数の振幅範囲に分割し、これらの振幅範囲毎に、前記X線撮像部にて撮像された前記画像データを、この画像データ撮像時の前記回転ガントリの回転角度値と共に、前記回転ガントリの回転中に分類し、同一の前記振幅範囲に分類された複数の前記画像データ及び前記回転ガントリの回転角度値を再構成して前記3次元再構成画像を作成し、前記振幅範囲毎に分類された前記画像データが前記回転ガントリの1回転において枚数に偏りがあるときには、前記3次元再構成画像を作成するのに不適切であると判断して、前記1回転で取得された前記画像データを棄却するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の実施形態における放射線治療用CT撮像方法は、患者を載置する治療台と、前記治療台を取り囲んでこの治療台の周囲を回転すると共に、前記治療台上の前記患者へ放射線を照射する放射線照射部が設置された回転ガントリと、前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時にX線を照射するX線発生部と、前記回転ガントリに取り付けられ、この回転ガントリの回転時に前記治療台上の前記患者を透過した透過X線を撮像して画像データを出力するX線撮像部と、前記治療台上の前記患者の呼吸運動を監視する呼吸監視装置と、前記X線発生部による前記X線の発生及び前記X線撮像部からの前記画像データの取得を制御すると共に、前記X線撮像部からの前記画像データを用いて3次元再構成画像を作成する制御計算装置と、を有する放射線治療用CT撮像システムを準備し、前記呼吸監視装置により監視された前記患者の呼吸運動の呼吸波形における振幅を複数の振幅範囲に分割するステップと、これらの振幅範囲毎に、前記X線撮像部にて撮像された前記画像データを、この画像データ撮像時の前記回転ガントリの回転角度値と共に、前記回転ガントリの回転中に分類するステップと、同一の前記振幅範囲に分類された複数の前記画像データ及び前記回転ガントリの回転角度値を再構成して、前記3次元再構成画像を作成するステップとを、前記制御計算装置が順次実施し、前記制御計算装置は更に、前記振幅範囲毎に分類された前記画像データが前記回転ガントリの1回転において枚数に偏りがあるときには、前記3次元再構成画像を作成するのに不適切であると判断して、前記1回転で取得された前記画像データを棄却することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、患者の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る放射線治療用CT撮像システムの回転ガントリ、X線発生部、X線撮像部及び治療台等を示す正面図。
図2図1の回転ガントリ等を示す正面図。
図3図1の放射線治療用CT撮像システムを機能させるための制御計算装置を含む機器の構成図。
図4図3の制御計算装置の機能を説明するブロック図。
図5】患者の呼吸運動の呼吸波形の周期を複数の位相範囲に分割し、取得した画像データを分類する様子を説明する模式図。
図6】第2実施形態に係る放射線治療用CT撮像システムの制御計算装置の機能を説明するブロック図。
図7】患者の呼吸運動の呼吸波形の振幅を複数の振幅範囲に分割し、取得した画像データを分類する様子を説明する模式図。
図8】患者の断層座標からX線検出器座標へ座標変換する概念を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図5
図1は、第1実施形態に係る放射線治療用CT撮像システムの回転ガントリ、X線発生部、X線撮像部及び治療台等を示す正面図である。また、図3は、図1の放射線治療用CT撮像システムを機能させるための制御計算装置を含む機器の構成図である。これらの図1及び図3に示す放射線治療用CT撮像システム10は、患者1の患部へ放射線を照射する際に、患者1の患部及び臓器等をX線により撮像し、得られた画像データを用いて3次元再構成画像を作成するものであり、治療台11、回転ガントリ12、X線発生部13、X線撮像部14、呼吸監視装置15及び制御計算装置16を有して構成される。
【0017】
治療台11は、患者1を横臥させて載置させるものである。また、回転ガントリ12は、治療台11を取り囲んでこの治療台11の周囲を回転するものであり、辺縁部に放射線照射部17が設置される。回転ガントリ12の回転軸Oは、治療台11に横臥した患者1の位置になるように設定される。また、放射線照射部17は、治療台11に横臥した患者1へ放射線を照射する。
【0018】
X線発生部13は第1X線発生部13A及び第2X線発生部13Bを有してなる。図2にも示すように、これらの第1X線発生部13Aと第2X線発生部13Bは、回転ガントリ12の辺縁部に、回転ガントリ12の回転軸Oを中心として90度離反した位置に設置される。これらの第1及び第2X線発生部13A及び13Bは例えばX線管であり、回転ガントリ12の回転時に治療台11上の患者1へ向かってX線を照射する。
【0019】
X線撮像部14は第1X線撮像部14A及び第2X線撮像部14Bを有してなる。第1X線撮像部14Aは、第1X線発生部13Aに対し回転ガントリ12の回転軸Oを中心として180度の方向に位置付けられて第1X線発生部13Aと対をなし、放射線照射部17に隣接して配置される。また、第2X線撮像部14Bは、第2X線発生部13Bに対し回転ガントリ12の回転軸Oを中心として180度の方向に位置付けられて第2X線発生部13Bと対をなし、放射線照射部17に隣接して配置される。
【0020】
第1X線撮像部14Aは、回転ガントリ12の回転時に、第1X線発生部13Aから照射されたX線が治療台11上の患者1を透過した透過X線を撮像して画像データ(X線透過画像)29を出力する。また、第2X線撮像部14Bは、回転ガントリ12の回転時に、第2X線発生部13Bから照射されたX線が治療台11上の患者1を透過した透過X線を撮像して画像データ(X線透過画像)29を出力する。
【0021】
呼吸監視装置15は、図1及び図3に示すように、例えば治療台11に設置されたセンサ18を備える。このセンサ18は、治療台11に横臥した患者1の体表面に表れる呼吸運動の移動量を測定する。呼吸監視装置15は、センサ18からの測定データを取り込むことで、患者1の呼吸運動を監視する。
【0022】
制御計算装置16は、図3に示すように、X線発生部(第1X線発生部13A及び第2X線発生部13B)によるX線の発生、及びX線撮像部(第1X線撮像部14A及び第2X線撮像部14B)からの画像データ(X線透過画像)29の取得等を制御すると共に、X線撮像部14からの画像データ29を用いて3次元再構成画像等を作成する。
【0023】
つまり、制御計算装置16は、第1高電圧発生装置19A及び第2高電圧発生装置19Bを制御して、第1X線発生部13A及び第2X線発生部13Bのそれぞれから、タイミング及び強度を調整してX線を発生させる。また、制御計算装置16は、第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14Bにてそれぞれ撮像された画像データ(X線透過画像)29を、X線の発生タイミング(つまり画像データ29の撮像タイミング)毎に取得する。また、制御計算装置16は、回転ガントリ12の回転を制御するガントリ制御装置20から、回転ガントリ12の回転角度値θを逐次取得する。更に、制御計算装置16は、センサ18が測定した患者1の呼吸運動の移動量(呼吸波形)を、呼吸監視装置15を介して数値で取得する。
【0024】
更に、図4に示すように、制御計算装置16は、3次元再構成画像及びアニメーション化された立体画像の作成機能を実現するために画像前段処理部21、呼吸波形分割部22、画像データ等分類部23、3次元再構成部24及び立体画像作成部25を有する。
【0025】
画像前段処理部21は、X線撮像部14(第1X線撮像部14A及び第2X線撮像部14B)から取り込んだ画像データ(X線透過画像)29に対して画像前段処理を行なう。この画像前段処理は、例えば画像フィルタリングによるノイズ除去である。また、呼吸波形分割部22は、呼吸監視装置15により監視された患者1の呼吸運動の移動量である呼吸波形26(図5)の周期Sを、複数(例えば10個)の位相範囲αに分割する第1ステップを実施する。
【0026】
ここで、放射線治療用CT撮像システム10における回転ガントリ12は、一般的なCT撮像装置と異なり、1回転に1~2分を要する。一方、患者1の呼吸運動における呼吸波形26の周期S(最大吸気から最大呼気を経て最大吸気までの時間)は、3~4秒程度である。従って、回転ガントリ12の1回転中に患者1の呼吸は複数回なされることになる。そして、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等は、この呼吸運動の呼吸波形26における同一の位相範囲α、例えば1番目の位相範囲αどうし、2番目の位相範囲αどうし等において同一位置にある。
【0027】
画像データ等分類部23は、図4及び図5に示すように、呼吸波形分割部22にて設定された位相範囲α毎に、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ(X線透過画像)29を、この画像データ29撮像時の回転ガントリ12の回転角度値θと共に分類する第2ステップを実施する。従って、呼吸波形26の各位相範囲αには、X線撮像部14により撮像された画像データ29と、この画像データ29撮像時の回転ガントリ12の回転角度値θとを結合したデータセットが、複数セット分類されることになる。
【0028】
3次元再構成部24は、呼吸波形26の同一の位相範囲α毎に画像データ等分類部23により分類された複数のデータセット(X線撮像部14による画像データ29及び回転ガントリ12の回転角度値θ)を再構成して、3次元再構成画像を位相範囲α毎に作成する第3ステップを実施する。
【0029】
立体画像作成部25は、3次元再構成部24により呼吸波形26の位相範囲α毎に作成された3次元再構成画像を複数、呼吸波形26の位相の時系列に沿って順次並べて統合することで、時間軸を有する(つまりアニメーション化された)立体画像を作成する第4ステップを実施する。
【0030】
制御計算装置16は、呼吸波形分割部22、画像データ等分類部23、3次元再構成部24及び立体画像作成部25における第1ステップ~第4ステップを順次実施して、3次元再構成画像、及びアニメーション化された立体画像を作成する。これらの両画像は、外部出力部27(図4)へ出力されて表示可能に構成される。また、制御計算装置16は、ユーザインタフェース28に接続されてもよい。このユーザインタフェース28は、例えば、制御計算装置16と同一の計算機内部で同時に動作するプログラムという形態であってもよく、または、制御計算装置16とは別の計算機内部で作動し、ネットワーク回線を通して制御計算装置16との情報の送受信を行なう形態であってもよい。
【0031】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)患者1の呼吸運動の呼吸波形26が図5に示すように規則的である場合、呼吸波形26における同一の位相位置では患者1の患部及び臓器等が同一位置にある。そのため、制御計算装置16が、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ29を、患者1の呼吸運動の呼吸波形26における同一の位相範囲α毎に再構成して3次元再構成画像を作成することで、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を、3次元再構成画像により正確に把握することができる。この結果、放射線治療を行なう際に、患者1の呼吸波形26のどの位相位置で放射線を照射するかが明確になるので、精度の高い放射線治療を行なうことができる。
【0032】
(2)制御計算装置16は、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ29を、患者1の呼吸運動の呼吸波形26における同一の位相範囲α毎に再構成して3次元再構成画像を作成し、この位相範囲α毎の3次元再構成画像を複数、呼吸波形26の位相の時系列に沿って順次並べて統合することで、アニメーション化された時間軸を有する立体画像を出力している。このため、患者1の呼吸運動によって変動する患部及び臓器等の変動の様子を立体的に確認できるので、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を、より一層正確に把握することができる。この結果、放射線治療を行なう際に、患者1の呼吸波形26のどの位相位置で放射線を照射すべきかがより一層明確になるので、より精度の高い放射線治療を行なうことができる。
【0033】
(3)制御計算装置16は、呼吸波形分割部22が患者1の呼吸運動の呼吸波形26における周期Sを複数に分割して複数の位相範囲αを設定し、画像データ等分類部23及び3次元再構成部24が位相範囲α毎に3次元再構成画像を作成し、これら複数の3次元再構成画像から立体画像作成部25が、アニメーション化された時間軸を有する立体画像を作成するので、制御計算装置16のアルゴリズムがシンプルになる。このため、この制御計算装置16を実装した放射線治療用CT撮像システム10の構成を容易化できる。
【0034】
[B]第2実施形態(図6図7
図6は、第2実施形態に係る放射線治療用CT撮像システムの制御計算装置の機能を説明するブロック図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0035】
本第2実施形態の放射線治療用CT撮像システム30が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態の制御計算装置16における3次元再構成画像及びアニメーション化された立体画像を作成する機能が、制御計算装置31の画像前段処理部21、呼吸波形分割部32、画像データ等分類部33、3次元再構成部34及び立体画像作成部35により実現される点である。
【0036】
なお、制御計算装置31においても、制御計算装置16と同様に、X線発生部13(第1X線発生部13A、第2X線発生部13B)によるX線の発生制御、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)からの画像データ29の取得制御、ガントリ制御装置20からの回転ガントリ12の回転角度値θの取得制御、及び呼吸監視装置15からの患者1の呼吸運動移動量(呼吸波形)の取得制御等を実施する。
【0037】
図7に示すように、患者1の呼吸運動の呼吸波形36は、最大吸気または最大呼気等が呼吸毎に異なって不規則になる場合がある。このような場合でも、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等は、この呼吸運動の呼吸波形36における振幅方向の同一位置、例えば後述の同一の振幅範囲βで同一位置にある。
【0038】
上述の事実を前提として、図6及び図7に示すように、呼吸波形分割部32は、呼吸監視装置15により監視された患者1の呼吸運動の移動量である呼吸波形36における振幅Lを、複数(例えば10個)の振幅範囲βに分割する第11ステップを実施する。呼吸波形36における例えば1番目の振幅範囲βどうし、2番目の振幅範囲βどうし等のそれぞれ同一の振幅範囲βでは、患者1の患部及び臓器等は同一位置である。
【0039】
この呼吸波形分割部32は、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における振幅Lを複数の振幅範囲βに分割するために上記振幅Lについて分割すべき分割領域(最大吸気から最大呼気までの領域)と分割数に関する情報を、予め保持する。つまり、呼吸波形分割部32は、患者1の呼吸波形36の振幅Lを分割するために、回転ガントリ12が1回転し終わった後に、患者1の呼吸運動の呼吸波形36の分布から、振幅Lを分割すべき分割領域及び分割数を初めて決定するのではなく、患者1の呼吸波形36の分布から上記分割領域(最大吸気から最大呼気までも領域)及び分割部を予め決定して保持しておく。
【0040】
画像データ等分類部33は、呼吸波形分割部32により分割された複数個の振幅範囲β毎に、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ(X線透過画像)29を、この画像データ29撮像時の回転ガントリ12の回転角度値θと共に分類する第12ステップを実施する。従って、呼吸波形36の各振幅範囲βには、X線撮像部14により撮像された画像データ29と、この画像データ29撮像時における回転ガントリ12の回転角度値θとを結合したデータセットが、複数セット分類されることになる。
【0041】
3次元再構成部34は、呼吸波形36の同一の振幅範囲β毎に画像データ等分類部33により分類された複数のデータセット(X線撮像部14による画像データ29及び回転ガントリ12の回転角度値θ)を再構成して、3次元再構成画像を作成する第13ステップを実施する。
【0042】
この3次元再構成画像を作成する際に、3次元再構成部34は、振幅範囲β毎に分類された画像データ29が3次元再構成画像を作成するために枚数が不十分である等のように不適切であると判断した場合には、上記画像データ29を棄却する。この棄却により、振幅範囲β毎に作成される3次元再構成画像の精度が確保される。
【0043】
つまり、呼吸波形36の振幅Lを分割した振幅範囲β毎に画像データ29を分類する場合には、特に最大吸気や最大呼気に近い振幅範囲βで画像データ29を取得できないことがある。従って、このような振幅範囲βでは、回転ガントリ12が1回転する間に3次元再構成画像作成のための画像データ数が不十分になってしまう。また、回転ガントリ12が1回転する間に患者1の呼吸運動の呼吸波形36の中心位置がずれていく場合がある。このような場合には、呼吸波形36の最大振幅に近い振幅範囲βで撮像開始時に画像データ29が取得(分類)されていたが、その後取得できなくなり、3次元再構成画像の作成にとって画像データ数が不十分になることがある。
【0044】
そこで、3次元再構成部34は、回転ガントリ12が1回転する間に、患者1の呼吸波形36の振幅範囲βに分類される画像データ(X線透過画像)29数が、この振幅範囲βにおいて3次元再構成画像を作成するために必要な最低画像数に至らず不十分であるとき、その振幅範囲βにおいては3次元再構成を行なわない。3次元再構成部34は、その3次元再構成を行なわない振幅範囲βに分類された画像データ29を棄却する。ここで、上記最低画像数は3次元再構成部34に予め設定されたものである。
【0045】
また、3次元再構成部34は、振幅範囲βに分類された画像データ数が最低画像数を満たす場合であっても、各振幅範囲βに分類された画像データ29が、回転ガントリ12の1回転の間で枚数に偏りがあるときには、その時の回転ガントリ12の1回転で取得された画像データ29からは3次元再構成を行なわず、その画像データ29を全て棄却する。例えば、回転ガントリ12の1回転の角度範囲(360度)を複数の等分された角度範囲に区分けし、各区分けされた角度範囲内で、振幅範囲β毎に分類された画像データ数が略均等枚数(例えば、枚数のばらつきが20%以内)得られないときには、その回転ガントリ12の1回転中に取得された画像データ29からは全ての振幅範囲βにおいて3次元再構成画像を作成せず、全ての画像データ29を棄却する。
【0046】
立体画像作成部35は、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における振幅範囲β毎に再構成して作成された3次元再構成画像を複数、呼吸波形36の最大吸気から最大呼気へ向かって順次並べて統合して、呼吸波形36の最大吸気と最大呼気との間で順次変化するアニメーション化された立体画像を出力する第14ステップを実施する。ここで、複数の3次元再構成画像は、呼吸波形36の最大呼気から最大吸気へ向かって順次並べて統合してもよい。
【0047】
制御計算装置31は、呼吸波形分割部32、画像データ等分類部33、3次元再構成部34及び立体画像作成部35における第11ステップ~第14ステップを順次実施して、3次元再構成画像、及びアニメーション化された立体画像を作成する。これらの両画像は、外部出力部27へ出力されて表示可能に構成される。
【0048】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、次の効果(4)~(7)を奏する。
(4)患者1の呼吸運動の呼吸波形36が図7に示すように不規則的であっても、この呼吸波形36の振幅Lにおける同一位置では患者1の患部及び臓器等が同一位置にある。そのため、制御計算装置31は、呼吸波形36が特に不規則的である場合に、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ29を、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における同一の振幅範囲β毎に再構成して3次元再構成画像を作成することで、この3次元再構成画像に影が生じるなどのアーチファクトの発生を低減できる。この結果、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を、3次元再構成画像により正確に把握することができる。この結果、放射線治療を行なう際に、患者1の呼吸波形36のどの位相位置で放射線を照射するかが明確になるので、精度の高い放射線治療を行なうことができる。
【0049】
(5)制御計算装置31は、X線撮像部14(第1X線撮像部14A、第2X線撮像部14B)にて撮像された画像データ29を、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における同一の振幅範囲β毎に再構成して3次元再構成画像を作成し、この振幅範囲β毎の3次元再構成画像を複数、呼吸波形36の最大吸気と最大呼気の一方から他方へ向って順次並べて統合することで、最大吸気と最大呼気との間で順次変化するアニメーション化された立体画像を出力している。このため、患者1の呼吸運動によって変動する患部及び臓器等の変動の様子を立体的に確認できるので、患者1の呼吸運動に伴い変動する患部及び臓器等の位置を、より一層正確に把握できる。この結果、放射線治療を行なう際に、患者1の呼吸波形36のどの位相位置で放射線を照射すべきかがより一層明確になるので、より精度の高い放射線治療を行なうことができる。
【0050】
(6)制御計算装置31の3次元再構成部34は、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における振幅範囲β毎に分類された画像データ29が3次元再構成画像を作成するのに不適切(例えば枚数不足)であると判断した場合には、その画像データ29から3次元再構成画像を作成せず、その画像データ29を棄却する。この結果、3次元再構成部34による不必要なデータ処理を行なう時間を削減できるので、他の振幅範囲βにおいて、画像データ29用いた3次元再構成画像の作成を迅速に行なうことができる。
【0051】
(7)制御計算装置31の呼吸波形分割部32は、患者1の呼吸運動の呼吸波形36における振幅Lを複数の振幅範囲βに分割するために上記振幅Lについて分割すべき分割領域(最大吸気から最大呼気までの領域)と分割数に関する情報を、予め保持している。このため、制御計算装置31は、回転ガントリ12の回転中にX線撮像部14から画像データ29を取得しながら、呼吸波形分割部32によりこれらの画像データ29を、画像データ29撮像時の回転ガントリ12の回転角度値θと共に振幅範囲β毎に分類できる。この結果、回転ガントリ12の回転中に画像データ29等の各振幅範囲βへの分類が行われることになるので、X線撮像部14からの画像データ29の取得後速やかに3次元再構成画像を作成することができる。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…患者、10…放射線治療用CT撮像システム、11…治療台、12…回転ガントリ、13…X線発生部、14…X線撮像部、15…呼吸監視装置、16…制御計算装置、17…放射線照射部、22…呼吸波形分割部、23…画像データ等分類部、24…3次元再構成部、25…立体画像作成部、26…呼吸波形、30…放射線治療用CT撮像システム、31…制御計算装置、32…呼吸波形分割部、33…画像データ等分類部、34…3次元再構成部、35…立体画像作成部、36…呼吸波形、S…周期、L…振幅、α…位相範囲、β…振幅範囲、θ…回転角度値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8