(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240701BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 530
(21)【出願番号】P 2020123051
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舘澤 英和
(72)【発明者】
【氏名】筑後 陽一
(72)【発明者】
【氏名】武正 力也
(72)【発明者】
【氏名】津野 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼妻 武史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200814(JP,A)
【文献】特開2011-107219(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045120(WO,A1)
【文献】特開2011-191398(JP,A)
【文献】特開平08-211819(JP,A)
【文献】特開昭58-154867(JP,A)
【文献】特開2006-163134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
記録材に形成されたトナー像と当接して、トナー像を記録材に加熱定着するための回転可能な第1回転体と、
前記第1回転体と協働して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成
し、鉛直方向において前記第1回転体よりも下に位置する回転可能な第2回転体と、
前記装置本体の内部に設けられ、前記第1回転体及び前記第2回転体を収容する筐体と、
記録材搬送方向において、前記ニップ部よりも下流に設けられた前記筐体の側部に開閉可能に設けられ、記録材を前記筐体から排出する排出口を有し、記録材の搬送路を開閉する開閉部材と、
前記搬送路から空気を吸引するため
の吸引口を有するダクトと、
前記吸引口から前記ダクトを介して空気を吸引するためのファンと、を備
え、
前記ダクトは、前記開閉部材に設けられ、前記ダクトの前記吸引口が前記搬送路に対して前記第1回転体側に設けられている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吸引口は、前記搬送路に対向するように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送路に対して前記第1回転体側に設けられ、貫通孔を有し、記録材を前記排出口に案内するガイド部を備え、
前記吸引口は、前記ガイド部に対向している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記装置本体は、記録材にトナー像を形成する画像形成部を有する第1装置と、前記筐体を有する第2装置と、から構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ダクトの一側面は、前記開閉部材の壁面で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ダクトは、前記搬送路に対して前記第1回転体側に設けられている、
ことを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ダクト内に、吸引された空気を整流する整流リブを備える、
ことを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記装置本体から引き出し可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送路の下流に設けられ、前記筐体とは別の筐体を備え、
前記別の筐体を鉛直方向の上から見た場合に、前記別の筐体は、前記ダクトと重なり合わない、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記別の筐体は、記録材を冷却する冷却装置が収納される、
ことを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記吸引口は、鉛直方向において、前記ニップ部よりも上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等の画像形成装置に適用される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、定着装置として、2つの回転体の間のニップ部に記録材を挟持して搬送し、熱と圧力を付与してトナーを熱で溶融させて記録材に押圧することにより、トナー像を記録材に定着するものが普及している。記録材には水分が含まれており、定着装置で加熱されることによりその記録材に含まれる水分が水蒸気となって蒸発する可能性がある。特に、空気中の湿度が高い場合には含水率が大きくなり、記録材から発生する水蒸気の量が多くなってしまう。したがって、従来の画像形成装置では、定着装置から排出される水蒸気により、シート排出路のガイド板に結露を生じる可能性がある。これにより、記録材の搬送が円滑に行われなくなる搬送不良や、ガイド板に結露した水分が記録材に付着することによる画像不良等の不具合が発生する虞がある。
【0003】
これを解決するために、定着装置のシート搬送方向の下流側にニップ部を通過した後の記録材から発生する水蒸気による結露を防止するための排気手段を設けることが提案されている。例えば、画像形成装置内において、定着装置のシート搬送方向の下流側に、排気手段として、シート排出路に送風を行うファンを設けたものが知られている(特許文献1参照)。この画像形成装置では、定着装置から排出される高温の記録材から水蒸気が発生しても、ファンによってシート排出路に送風することで水蒸気がガイド板に付着しないようにしている。あるいは、画像形成装置に対して後処理装置を設置する場合において、後処理装置のガイド板に排気手段として吸引ダクトを設けたものが知られている(特許文献2参照)。この後処理装置では、定着装置から排出される高温の記録材から水蒸気が発生しても、吸引ダクトによって水蒸気が後処理装置のガイド板に付着しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-154867号公報
【文献】特開平8-211819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の画像形成装置や特許文献2に記載の後処理装置では、定着装置のシート搬送方向の下流側で記録材の水分の排気を行っている。このため、定着装置のシート搬送方向の下流側に排気手段による空気の流れを形成するための空間が必要になるので、そのような空間を設けない場合に比べて定着装置のシート搬送方向の下流側に位置する画像形成装置の部位や後処理装置が大型化する虞がある。
【0006】
本発明は、大型化を抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、装置本体と、記録材に形成されたトナー像と当接して、トナー像を記録材に加熱定着するための回転可能な第1回転体と、前記第1回転体と協働して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成し、鉛直方向において前記第1回転体よりも下に位置する回転可能な第2回転体と、前記装置本体の内部に設けられ、前記第1回転体及び前記第2回転体を収容する筐体と、記録材搬送方向において、前記ニップ部よりも下流に設けられた前記筐体の側部に開閉可能に設けられ、記録材を前記筐体から排出する排出口を有し、記録材の搬送路を開閉する開閉部材と、前記搬送路から空気を吸引するための吸引口を有するダクトと、前記吸引口から前記ダクトを介して空気を吸引するためのファンと、を備え、前記ダクトは、前記開閉部材に設けられ、前記ダクトの前記吸引口が前記搬送路に対して前記第1回転体側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置や後処理装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る定着装置の排出側ガイド部材を示す分解斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る定着装置の扉を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【
図6】第2の実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図7】(a)は第3の実施形態に係る画像形成装置及び後処理装置の概略構成を示す断面図であり、(b)は比較例に係る画像形成装置及び後処理装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1~
図5を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置1の一例としてタンデム型のフルカラープリンタについて説明している。但し、本発明はタンデム型の画像形成装置1に限られず、他の方式の画像形成装置であってもよく、また、フルカラーであることにも限られず、モノクロやモノカラーであってもよい。
【0012】
[画像形成装置]
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体内に4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト7の回転方向に沿って配置した中間転写タンデム方式としている。画像形成装置1は、装置本体に接続された不図示の原稿読み取り装置又は装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材Sとしては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。また、画像形成装置1は、画像形成プロセスなどの各種制御を行うための制御部20を備えている。
【0013】
画像形成手段による画像形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY、PM、PC、PKについて説明する。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKは、トナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。
【0014】
画像形成部PYは、感光ドラム2と、帯電装置3と、露光装置4と、現像装置5とを有している。回転駆動される像担持体の一例としての感光ドラム2の表面は、帯電装置3により予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置4によって静電潜像が形成される。即ち、感光ドラム2には、静電潜像が形成される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像装置5によってトナーにより現像され、トナー像として可視像化される。また、画像形成で消費された現像剤中のトナーは、不図示のトナーカートリッジからキャリアと共に補給される。
【0015】
その後、感光ドラム2と中間転写ベルト7を挟んで対向配置される一次転写ローラ6により所定の加圧力及び一次転写バイアスが与えられ、感光ドラム2上に形成されたトナー像が中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2上に僅かに残る転写残トナーは、クリーニング装置8により除去され、再び次の画像形成プロセスに備える。
【0016】
中間転写ベルト7は、テンションローラ10、二次転写内ローラ11、駆動ローラ12によって張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ12によって回転方向R1へと移動するように駆動される。上述の画像形成部PY、PM、PC、PKにより処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト7上に一次転写された移動方向上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7上に形成され、二次転写部15へと搬送される。二次転写部15は、中間転写ベルト7の二次転写内ローラ11に張架された部分と二次転写外ローラ13とにより形成される転写ニップ部である。なお、二次転写部15を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置14によって中間転写ベルト7から除去される。
【0017】
二次転写部15まで送られて来るトナー像の形成プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部15までの記録材Sの搬送プロセスが実行される。搬送プロセスでは、記録材Sは、不図示のシートカセット等から給送され、画像形成タイミングに合わせて二次転写部15へと送られる。二次転写部15では、二次転写内ローラ11に二次転写電圧が印加される。
【0018】
以上、画像形成プロセス及び搬送プロセスにより、二次転写部15において中間転写ベルト7から記録材Sにトナー像が二次転写される。即ち、画像形成手段は、感光ドラム2にトナー像を形成し、感光ドラム2に担持されたトナー像を記録材Sに転写する。その後、記録材Sは定着装置30へと搬送され、定着装置30により加熱及び加圧されることにより、トナー像が記録材S上に溶融固着される。即ち、定着装置30は、画像形成部で形成された未定着のトナー像を記録材Sに定着する。こうしてトナー像が定着された記録材Sは、排出ローラにより不図示の排出トレイに排出される。
【0019】
[制御部]
画像形成装置1は、上記した画像形成動作などの各種制御を行うための制御部20を備えている。画像形成装置1の各部の動作は、画像形成装置1に設けられた制御部20によって制御される。一連の画像形成動作は、装置本体の上面の操作部、あるいは、ネットワークを経由した各入力信号に従って制御部20が制御している。
【0020】
図2に示すように、制御部20は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23等を有する。CPU21は、ROM22に格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら画像形成装置1の各部の制御を行う。RAM23には、作業用データや入力データが格納されており、CPU21は、前述のプログラム等に基づいてRAM23に収納されたデータを参照して制御を行う。制御部20には、後述する吸引ファン16や、定着ベルト41を駆動するための駆動モータM1などが接続されており、定着装置30を制御可能である。
【0021】
[定着装置]
次に、定着装置30について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3に示すように、定着装置30は、ベルト加熱方式の加熱装置であり、画像形成装置1(
図1参照)の装置本体に対して着脱可能なカートリッジ状に形成されている。定着装置30は、筐体31と、加熱部40と、第2回転体の一例である加圧ローラ32と、排出側ガイド部50と、エアダクト60とを有している。
【0022】
加熱部40は、無端状で回転方向R2に回転可能な第1回転体の一例である定着ベルト41と、ニップ形成部材である加圧パッド42と、加熱ローラ43と、ステアローラ44と、ステイ45とを有している。加熱部40は、上述した各構成要素が不図示のユニット側板によりカートリッジ状に一体化され、筐体31に対して着脱可能に装着される。
【0023】
定着ベルト41は、記録材Sに当接して加熱可能であり、熱伝導性や耐熱性等を有する薄肉の円筒形状のベルト部材である。本実施形態においては、定着ベルト41は、基層、基層の外周に弾性層、その外周に離型性層を形成した3層構造である。基層は厚さ60μmで材質はポリイミド樹脂(PI)を用い、弾性層は厚さ300μmでシリコーンゴムを用いている。離型性層は、厚さ30μmで、フッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。定着ベルト41は、加圧パッド42と、張架ローラの一例である加熱ローラ43と、ステアローラ44とによって張架されている。本実施形態では、定着ベルト41の外径は例えば120mmとし、定着ベルト41の回転速度は例えば300mm/sとしている。
【0024】
加圧パッド42は、ステイ45に支持され、定着ベルト41を挟んで加圧ローラ32に押圧されている。ステイ45の材質はステンレスで、ステイ45は副走査方向の両端部を定着装置30の筐体31によって支持されている。尚、副走査方向とは、定着ニップ部Nを通過した記録材Sの搬送方向に直交する副走査方向であり、例えば、定着ベルト41の回転軸線方向である。定着ベルト41と加圧ローラ32との当接部により、ニップ部の一例である定着ニップ部Nが形成されている。即ち、加圧パッド42は、定着ベルト41を挟んで加圧ローラ32と対向するように配置されると共に、定着ベルト41と加圧ローラ32との間で定着ニップ部Nを形成させる。
【0025】
加圧パッド42の材質は、例えば、LCP(液晶ポリマ)樹脂を用いている。加圧パッド42と定着ベルト41の間には、不図示の潤滑シートを介在させている。潤滑シートとしては、例えば、厚さ100μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたPI(ポリイミド)シートを用いている。このPIシートには、1mm間隔で100μmの突起形状を形成していて、定着ベルト41との接触面積を減らすことにより摺動抵抗を低減させている。定着ベルト41の内面には潤滑剤を塗布しており、定着ベルト41は加圧パッド42に対して滑らかに摺動するようにしている。
【0026】
潤滑シートの定着ベルト41との接触面側には、摺動性を向上させるために不図示の潤滑剤が予め塗布されている。本実施形態では、潤滑剤としてオイルを使用している。オイルとしては、耐熱性などの観点からシリコーンオイルが好適に使用され、使用条件に応じて種々の粘度のものが使用されるが、粘度が高すぎるものは塗布時の流動性が劣るため、通常30000cSt以下のものが使用される。オイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
加熱ローラ43は厚み1mmのステンレス製パイプで、その内部に例えばハロゲンヒータからなる不図示の加熱ヒータが配設されており、加熱ローラ43を所定の温度、例えば180℃に加熱可能である。定着ベルト41は、加熱ローラ43によって加熱され、不図示のサーミスタによる検知温度に基づき、シート種に応じた所定の目標温度に制御される。また、加熱ローラ43は、回転軸線方向の一端部に不図示のギヤが固定されており、ギヤを介して駆動モータM1(
図2参照)に接続されて回転駆動される。定着ベルト41は、加熱ローラ43の回転に倣って従動回転する。本実施形態では、加熱ヒータは定着ベルト41を加熱可能である場合について説明しているが、これには限られず定着ベルト41及び加圧ローラ32の少なくとも一方を加熱可能とすることができる。
【0028】
ステアローラ44は、回転軸線方向の一端部、又は中央部近傍に略鉛直方向の回動中心を有し、定着ベルト41に対して回動することで主走査方向に張力差を発生させ、定着ベルト41の主走査方向の位置を調整することができる。尚、ステアローラ44は加熱部40のフレームによって支持された不図示の付勢ばねによって付勢されており、定着ベルト41に所定の張力を与えるテンションローラでもある。
【0029】
加圧ローラ32は、定着ベルト41に対向して互いに当接し、定着ベルト41との間で加圧された定着ニップ部Nを形成する。加圧ローラ32は、軸の外周に弾性層を、その外周に離型性層を形成したローラである。この加圧ローラ32では、軸にステンレスを用い、弾性層は厚さ5mmで導電シリコーンゴムを用いている。離型性層は、厚さ50μmで、フッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。加圧ローラ32は、定着装置30の筐体31によって軸支持されており、回転軸線方向の一端部にギヤが固定され、ギヤを介して駆動モータM1(
図2参照)に接続されて回転駆動される。
【0030】
定着ベルト41と加圧ローラ32との間に形成される定着ニップ部Nにおいて、トナー画像を担持した記録材S(
図1参照)を挟持し、搬送しながらトナー画像を加熱する。このように、定着装置30は、記録材Sを挟持搬送しながら、記録材Sにトナー画像を定着させる。よって、熱や圧力を加えるという機能と、記録材Sを搬送するという機能の両立が必要である。
【0031】
加圧ローラ32は、不図示の加圧フレームを介して不図示の加圧ばねにより加圧される。ステイ45を筐体31に固定した後、加圧フレームが加熱部40の側に移動することで、加圧ローラ32が定着ベルト41を介して加圧パッド42に対して加圧される。画像形成時における加圧ローラ32の加圧パッド42への加圧力は、例えば1000Nとしている。また、筐体31には、定着ニップ部Nを通過した記録材Sを定着ベルト41から分離する分離部材46が揺動可能に軸支されている。分離部材46は回転軸線方向に沿った長方形状の板状であるが、記録材Sと定着ベルト41の粘着力やトナー像の条件によっては接触式の分離爪などを長手方向に1つ又は複数配置するようにしてもよい。
【0032】
筐体31は、本体33と、本体33の上側に設けられて開閉可能なカバー34と、を有し、加熱部40及び加圧ローラ32を収容している。また、筐体31は、記録材Sを搬入するための搬入口36と、定着ニップ部Nを通過した記録材Sを排出するための排出口37と、有している。排出口37は、筐体31の搬送方向下流側の側部31aに設けられている。搬入口36から排出口37までは、加熱定着するトナー像を担持する記録材Sを搬入して排出する直線状の搬送路であるシート搬送路38が形成されている。本実施形態では、シート搬送路38は水平方向に設けられている。
【0033】
筐体31は、側部31aにおいて定着ニップ部Nより搬送方向下流側のシート搬送路38にアクセス可能にする開口部31bと、開口部31bを開閉可能な扉35とを有している。扉35は、ジャム処理を容易にするために、筐体31を開閉可能に設けられている。本実施形態では、排出口37は扉35に設けられている。
【0034】
シート搬送路38において、搬入口36と定着ニップ部Nとの間には、搬入側ガイド部39が設けられている。シート搬送路38において、定着ニップ部Nと排出口37との間には、排出側ガイド部50が設けられている。排出側ガイド部50は、シート搬送路38を挟んで対向配置され、上側に設けられた第1ガイド部の一例である上ガイド51と、下側に設けられた第2ガイド部の一例である下ガイド52とを有している。定着ニップ部Nで加熱定着された記録材Sは、上ガイド51と下ガイド52の間を通って、排出口37から定着装置30の外部へ排出される。
【0035】
[排出側ガイド部]
次に、排出側ガイド部50の構成について、
図4を用いて詳細に説明する。以下、図中、幅方向Wは副走査方向、例えば定着ベルト41の回転軸線方向を示す。上ガイド51及び下ガイド52は、上ガイド51及び下ガイド52の間の空気が上方へと通過が容易となるように、上ガイド51及び下ガイド52のそれぞれに通気穴53,54が設けられている。通気穴53,54は、シート搬送路38に交差する方向に貫通しており、本実施形態では、上下方向に貫通している。
【0036】
通気穴53,54を設ける理由は、以下の通りである。上ガイド51と下ガイド52の間の空間の空気は、記録材Sに含まれる水分が定着ベルト41と加圧ローラ32との挟持する定着ニップ部Nで加熱されて蒸発するために、多量の水分を含んでいる。そのために、この空気を定着装置30の内部に留めておくと、やがて飽和水蒸気量に達して結露し、画像不良や搬送不良などの様々な不具合の原因になる虞がある。そこで、上ガイド51及び下ガイド52に通気穴53,54を設けることで、上ガイド51と下ガイド52との間の空気を上ガイド51及び下ガイド52の間の空間から放出し易くする。これにより、加熱定着の過程で発生した水蒸気が定着装置30内、又は定着装置30のシート搬送方向下流側の後処理装置に漏洩することや結露の発生を抑制することができる。
【0037】
尚、本実施形態では上ガイド51及び下ガイド52に通気穴53,54を設けることで空気の移動を容易にしているが、これには限られず、上ガイド51及び下ガイド52の少なくとも一方に通気穴を設けることで空気の移動を容易にすることができる。また、本実施形態では、上ガイド51及び下ガイド52に通気穴53,54を設けているが、空気の移動を容易にするものであれば穴形状には限られない。例えば、上ガイド51及び下ガイド52の通紙面に通常より高いリブを設けることで、空気の滞留を抑止し、あるいは結露したとしても記録材Sとは高さ方向に離れた位置にすることで、結露した水分が記録材Sに付着することを抑制するようにしてもよい。
【0038】
[エアダクト]
次に、エアダクト60の構成について、
図5を用いて詳細に説明する。エアダクト60は、筐体31において定着ニップ部Nより記録材Sの搬送方向下流側に設けられており、定着ニップ部Nで加熱時に発生する記録材Sの水蒸気を含む空気を吸引する。エアダクト60には、画像形成装置1(
図1参照)の装置本体に設けられた吸引手段の一例である吸引ファン16が連結されており、吸引ファン16がエアダクト60を介して筐体31の定着ニップ部Nより搬送方向下流側の空気を吸引する。尚、吸引ファン16は、エアダクト60の専用のファンであってもよく、あるいは他の用途と兼用されるファンであってもよい。
【0039】
エアダクト60は、扉35に設けられており、排出口37より上側に配置されている。エアダクト60は、下側に向けて開口した吸引口61と、幅方向Wの奥側W1、即ち、装置本体の背面側に設けられた連通口62と、を有している。
図3に示すように、吸引口61は、排出側ガイド部50を向いて形成されている。
図5に示すように、連通口62は、吸引ファン16に連結されている。エアダクト60は、幅方向Wを長手方向として設けられており、記録材Sから発生した水蒸気を含む空気を長手方向の全域に亘って吸引できるようになっている。
【0040】
本実施形態では、エアダクト60は、定着ニップ部Nより搬送方向下流側のシート搬送路38に対して定着ベルト41側(第1回転体側)、即ち上側に配置されている。このように、エアダクト60は、シート搬送路38の上側に配置しているので、上ガイド51及び下ガイド52の近傍に発生した水蒸気を含む熱い空気が上昇すると効率的に吸引することができる。但し、エアダクト60の配置位置はシート搬送路38の上側には限られず、下側であってもよく、この場合も上ガイド51及び下ガイド52の近傍に発生した水蒸気を含む空気を吸引することができる。また、エアダクト60の配置位置はシート搬送路38の上側及び下側の両側であってもよい。
【0041】
エアダクト60は、筐体31の扉35と、扉35に取り付けられたダクト部材63とにより形成されている。ダクト部材63は、略板形状で、幅方向Wを長手方向としている。ダクト部材63は、扉35の内側面に取り付けられている。これにより、扉35の内側面と、扉35の内側面に形成されたリブ64と、ダクト部材63とにより筒状のエアダクト60が形成されている。リブ64は、吸引口61から連通口62までに亘って複数設けられ、エアダクト60に吸引された空気を吸引口61から連通口62まで整流する整流リブとして機能する。このように、リブ64が設けられていることにより、長手方向である幅方向Wの全域に亘って空気を均一に吸引することができる。本実施形態では、整流リブの一例であるリブ64は扉35に設けられているが、これには限られず、扉35とダクト部材63との少なくとも一方に設けられていればよい。
【0042】
上述したように、本実施形態の定着装置30では、筐体31において定着ニップ部Nより記録材Sの搬送方向下流側に設けられたエアダクト60を有している。このため、画像形成装置1において、エアダクト60を定着装置30とは別個に離れた箇所に設けた場合に比べて、画像形成装置1の大型化を抑制することができる。即ち、画像形成装置1において定着装置30とは別個に離れた箇所にエアダクト60を設けた場合は、定着装置30とエアダクト60とのクリアランスを設ける必要があるため、画像形成装置1の大型化を招く虞がある。これに対し、本実施形態の定着装置30では、このようなクリアランスが不要になるので、画像形成装置1の小型化を図ることができる。また、エアダクト60を扉35に設けているので、他の部位に設ける場合に比べて、定着装置30内のレイアウトに関して省スペース化を図ることができる。
【0043】
また、画像形成装置1において定着装置30とは別個に離れた箇所にエアダクト60を設けた場合は、定着ニップ部Nを通過した直後の記録材Sから発生する水蒸気を除去することが困難となる。これに対し、本実施形態の定着装置30では、エアダクト60が筐体31に設けられているので、定着ニップ部Nを通過した直後の記録材Sから発生する水蒸気を効果的に除去することができる。しかも、エアダクト60は定着ニップ部Nとは離れて設けられているので、定着ニップ部Nにおいて記録材Sを定着するのに必要な熱が損失することを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態の定着装置30では、上ガイド51及び下ガイド52に通気穴53,54を設けている。これにより、シート搬送路38において、上ガイド51と下ガイド52の間に溜まる水蒸気を含む空気を、エアダクト60によって上方へ容易に吸引することができる。このため、加熱定着の過程で発生した水蒸気が排出口37から漏洩したり、上ガイド51及び下ガイド52の間に滞留することなく、効果的にエアダクト60で吸引可能となるので、定着装置30内での結露の発生を抑制することができる。
【0045】
尚、上述した本実施形態の定着装置30では、エアダクト60は、扉35とダクト部材63とにより形成されている場合について説明したが、これには限られない。例えば、管状のエアダクトを扉35に取り付けるようにしてもよい。また、本実施形態の定着装置30では、エアダクト60の内部に整流リブとしての複数のリブ64を設けた場合について説明したが、これには限られず、リブ64は1つでもよく、あるいは無くてもよい。
【0046】
また、上述した本実施形態の定着装置30では、エアダクト60は、筐体31の内側に形成されている場合について説明したが、これには限られない。例えば、ダクト部材を筐体の外側面に取り付けたり、あるいは管状のエアダクトを筐体31の外面に取り付けることで、筐体31と一体化したエアダクトを得ることができる。この場合、エアダクトの吸引口は、筐体31を貫通して筐体31の内部でシート搬送路38に対向するようにする。この場合も、エアダクト60を定着装置130とは別個に離れた箇所に設けた場合に比べて、画像形成装置1の大型化を抑制することができる。
【0047】
また、上述した本実施形態の定着装置30では、シート搬送路38が水平方向に形成されているが、これには限られず、鉛直方向に形成されていてもよい。この場合、排出側ガイド部50の水平方向の側方にエアダクト60を設けることにより、上述と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、上述した本実施形態の定着装置30では、第1回転体は定着ベルト41であり、第2回転体は加圧ローラ32である場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1回転体は定着ローラであってもよく、第2回転体は加圧ベルトであってもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図6を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、定着装置130の筐体131が本体133及びカバー134を有し、扉を有さない点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、カバー134は、シート搬送路38を覆い、本体133との間で搬入口36及び排出口37を形成している。排出口37は、筐体131の搬送方向下流側の側部131aに設けられている。エアダクト60は、筐体131の側部131aの側壁135に設けられており、排出口37より上側に配置されている。エアダクト60は、筐体131の側壁135と、側壁135に取り付けられたダクト部材63とにより形成されている。その他のエアダクト60の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
本実施形態の定着装置130によっても、第1の実施形態と同様に、画像形成装置1において、エアダクト60を定着装置130とは別個に離れた箇所に設けた場合に比べて、画像形成装置1の大型化を抑制することができる。また、エアダクト60を側壁135に設けているので、他の部位に設ける場合に比べて、定着装置130内のレイアウトに関して省スペース化を図ることができる。
【0052】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、
図7(a)を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、第1の実施形態の定着装置30を適用した画像形成装置1に後処理装置9を接続している。定着装置30の構成は、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。尚、後処理装置9としては、ソータ等の排紙装置や冷却装置等を広く適用することができる。
【0053】
ここで、
図7(b)に示す比較例のように、画像形成装置101の定着装置230がエアダクト60を有さない場合について説明する。この場合、定着ニップ部Nより搬送方向下流側の排出側ガイド部50(
図3参照)や、後処理装置9のガイド板191,192において、記録材Sの水蒸気が結露する虞がある。これを解決するために、後処理装置9において、ガイド板191,192より上流側にエアダクト160を設けることもできるが、この場合は定着装置230の排出側ガイド部50での結露を抑制できない。同様に、エアダクトを定着装置230と画像形成装置101の排出口との間に設けたとしても、定着装置230の排出側ガイド部50での結露を抑制できない。
【0054】
そこで、
図7(a)に示すように、第1の実施形態の定着装置30を適用することで、エアダクト60が定着装置30に設けられるので、後処理装置9にエアダクトを設ける必要がなくなる。これにより、
図7(b)に示すエアダクト160を有する後処理装置109に比べて、後処理装置9の小型化を図ることができる。しかも、定着ニップ部Nの通過後に発生した記録材Sからの水蒸気を効率良く吸引でき、定着ニップ部Nより搬送方向下流側の全域において結露の発生を低減させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…画像形成装置、16…吸引ファン(吸引手段)、30,130…定着装置、31,131…筐体、31a…側部、31b…開口部、32…加圧ローラ(第2回転体)、35…扉、37…排出口、38…シート搬送路(搬送路)、41…定着ベルト(第1回転体)、51…上ガイド(第1ガイド部)、52…下ガイド(第2ガイド部)、53,54…通気穴、60…エアダクト、63…ダクト部材、64…リブ(整流リブ)、N…定着ニップ部(ニップ部)、S…記録材