IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-風向調整装置 図1
  • 特許-風向調整装置 図2
  • 特許-風向調整装置 図3
  • 特許-風向調整装置 図4
  • 特許-風向調整装置 図5
  • 特許-風向調整装置 図6
  • 特許-風向調整装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/15 20060101AFI20240701BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F24F13/15 C
F24F13/15 B
B60H1/34 611B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020128442
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025551
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 真吾
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-012926(JP,U)
【文献】特開2006-273054(JP,A)
【文献】実開平07-022347(JP,U)
【文献】特開平08-142659(JP,A)
【文献】中国実用新案第204300123(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/15
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、前記ハウジング内に配される少なくとも1つの羽根部材とを有し、前記ハウジング及び前記羽根部材の一方に回転軸部が設けられるとともに、他方に前記回転軸部を支持する軸受け部が設けられ、前記回転軸部及び前記軸受け部により前記ハウジングに前記羽根部材が回転可能に連結される風向調整装置であって、
前記軸受け部は、弾性を備えるブッシュ体と、前記ブッシュ体を収容して保持する保持部とを有し、
前記ブッシュ体は、ブッシュ本体部と、前記ブッシュ本体部に設けられるとともに前記回転軸部を嵌合させる嵌合孔部とを有し、
前記ブッシュ本体部の外周側面に、複数の凹部及び凸部が前記回転軸部の回転方向に交互に設けられ、
前記凹部の底面及び前記凸部の先端面は、前記回転方向に沿った円弧状の湾曲面に形成され、
前記保持部は、前記ブッシュ本体部の外形に沿った形状に形成され、少なくとも前記ブッシュ体に前記回転軸部が嵌合されたときに、前記ブッシュ体における前記凹部の底面に面接触して前記ブッシュ本体部を前記回転軸部に向けて圧縮する複数の抵抗付与部を有し、
前記保持部は、前記ブッシュ体における前記凸部の先端面に対応して配されるとともに、少なくとも前記ブッシュ体に前記回転軸部が嵌合されたときに、前記ブッシュ本体部を前記抵抗付与部よりも弱く圧縮する又は圧縮しない複数の抵抗緩和部を有する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
前記ブッシュ体における複数の前記凹部、及び前記保持部における複数の抵抗付与部は、それぞれ、前記回転方向に沿って等間隔で配置されている請求項記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記ブッシュ体は、前記嵌合孔部に前記回転軸部を挿入する側から見たときに、線対称又は点対称な形状を有する請求項1又は2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられる風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、ベンチレータ、レジスタ、エアアウトレット(又は略してアウトレット)などとも呼ばれており、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール部などの車両部分に設置されている。このような風向調整装置は、冷暖房による車内の快適性能の向上に寄与している。
【0003】
通常、風向調整装置は、筒状のハウジングと、ハウジング内に配される羽根部材とを有しており、羽根部材はハウジングに回転可能に連結されている。このため、羽根部材を回転させて任意の向きで保持することにより、風向調整装置から風を所望の方向に吹き出すことができる。
【0004】
風向調整装置では、羽根部材の回転軸に対し、適切な摩擦抵抗を意図的に与えて、羽根部材の操作トルクを発生させることが一般的に行われている。この場合、付与する摩擦抵抗が小さ過ぎると、羽根部材の回転操作に対する手応えが不足する。このため、羽根部材を軽く操作しても、羽根部材が大きく回転してしまい、風を所望の方向に向けることが難しくなることが考えられる。また、車両走行時の振動やエンジンの回転に伴う振動で羽根部材が回転し、所望の風向設定が維持できない虞もある。一方、回転軸の摩擦抵抗が大き過ぎると、羽根部材の操作性の低下を招き、風向きを微調整する場合等で力の加減が難しくなることも考えられる。
【0005】
これに対し、例えば実開平4-1358号公報(特許文献1)には、羽根部材の操作トルクを発生させるための車両用ベンチレータ(風向調整装置)が開示されている。特許文献1のベンチレータは、羽根部材が固定されたグリル体を回転させるための回転軸部と、回転軸部を支持する軸受け部とを有しており、軸受け部には弾性を有するブッシュ体が装着されている。
【0006】
ブッシュ体には、回転軸部を嵌合させる軸孔が設けられている。軸受け部には、ブッシュ体を固定するための直方体状の収容保持部が設けられており、その収容保持部の4つの各内周壁面には、収容保持部内に保持されたブッシュ体を圧着する圧着リブが突設されている。このような圧着リブにより、ブッシュ体の軸孔の孔径を縮小し、それによって、羽根部材の操作トルクを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平4-1358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の車両用ベンチレータでは、ブッシュ体を圧着する圧着リブが、収容保持部の内周壁面の一部に小さく突設されているため、ブッシュ体を収容保持部に保持したときに、圧着リブがブッシュ体を局部的に押圧する。
【0009】
しかしこの場合、圧着リブがブッシュ体に食い込み易くなる傾向があり、それによって、圧着リブでブッシュ体を塑性変形させる可能性がある。このようにブッシュ体に塑性変形が生じると、圧着リブによってブッシュ体の軸孔の孔径を適切に縮小させることができなくなる。それにより、回転軸部に対するブッシュ体の押圧力の低下を招く虞があり、その結果、羽根部材の操作トルクを適切に発生させることができなくなることが考えられる。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ハウジングに対する羽根部材の操作トルクを適切に発生させて羽根部材の良好な操作性を得ることが可能な風向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明により提供される風向調整装置は、筒状のハウジングと、前記ハウジング内に配される少なくとも1つの羽根部材とを有し、前記ハウジング及び前記羽根部材の一方に回転軸部が設けられるとともに、他方に前記回転軸部を支持する軸受け部が設けられ、前記回転軸部及び前記軸受け部により前記ハウジングに前記羽根部材が回転可能に連結される風向調整装置であって、前記軸受け部は、弾性を備えるブッシュ体と、前記ブッシュ体を収容して保持する保持部とを有し、前記ブッシュ体は、ブッシュ本体部と、前記ブッシュ本体部に設けられるとともに前記回転軸部を嵌合させる嵌合孔部とを有し、前記ブッシュ本体部の外周側面に、複数の凹部及び凸部が前記回転軸部の回転方向に交互に設けられ、前記凹部の底面及び前記凸部の先端面は、前記回転方向に沿った円弧状の湾曲面に形成され、前記保持部は、前記ブッシュ本体部の外形に沿った形状に形成され、少なくとも前記ブッシュ体に前記回転軸部が嵌合されたときに、前記ブッシュ体における前記凹部の底面に面接触して前記ブッシュ本体部を前記回転軸部に向けて圧縮する複数の抵抗付与部を有し、前記保持部は、前記ブッシュ体における前記凸部の先端面に対応して配されるとともに、少なくとも前記ブッシュ体に前記回転軸部が嵌合されたときに、前記ブッシュ本体部を前記抵抗付与部よりも弱く圧縮する又は圧縮しない複数の抵抗緩和部を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、前記ブッシュ体における複数の前記凹部、及び前記保持部における複数の抵抗付与部は、それぞれ、前記回転方向に沿って等間隔で配置されていることが好ましい。
更に、前記ブッシュ体は、前記嵌合孔部に前記回転軸部を挿入する側から見たときに、線対称又は点対称な形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の風向調整装置によれば、ハウジングに対する羽根部材の操作トルクを適切に発生させて羽根部材の良好な操作性を得ることができ、風向を安定して調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る風向調整装置を模式的に示す斜視図である。
図2】風向調整装置が分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
図3】風向調整装置のブッシュ体を示す模式図である。
図4】風向調整装置の軸受け部を拡大して示す拡大斜視図である。
図5図4に示したV-V線における軸受け部と回転軸部の関係を模式的に示す断面図である。
図6】変形例に係る風向調整装置の軸受け部と回転軸部の関係を模式的に示す断面図である。
図7】変形例に係るブッシュ体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る風向調整装置を模式的に示す斜視図である。図2は、風向調整装置が分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示した本実施例の風向調整装置10は、例えば、自動車の車室内におけるインストルメントパネルやセンターコンソール部等の図示しない内装部材に装着される。また、風向調整装置10は、車両に設置された空調装置に接続されることによって、空調装置から供給される空気を車室内に吹き出すことが可能である。
【0018】
ここで、風向調整装置10に関して、前後方向は、後述する羽根部材20がニュートラルの位置(水平位置)に保持されているときに風向調整装置10から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向である。この場合、空気の流れの下流側を前方とし、上流側を後方とする。上下方向及び左右方向は、風向調整装置10を吹出口側から見たときにおける垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。
【0019】
本実施例の風向調整装置10は、供給される空気を流通させるハウジング11と、ハウジング11の空気吹出口の開口部に配される複数の羽根部材20とを有する。本実施例において、風向調整装置10には、左右方向に延びる3つの羽根部材20が上下方向に並べられて、互いに平行に配されている。
【0020】
羽根部材20は、ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリプロピレン、PET-G(変性ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂により形成されている。また、羽根部材20は、上段に配される第1羽根部材21と、中段に配される第2羽根部材22と、下段に配される第3羽根部材23とを有する。第1羽根部材21~第3羽根部材23は、図示しないリンク部材によって、各羽根部材20が連動して回転するように連結されている。なお本発明において、風向調整装置に設置する羽根部材の個数は特に限定されない。
【0021】
3つの羽根部材20は、互いに同じ形状及び同じ大きさに形成されている。各羽根部材20は、薄板状の羽根本体部25と、羽根本体部25の左右側縁部から左右方向に突出する一対の回転軸部26と、羽根本体部25の右側縁部に設けられるとともにリンク部材に連結されるリンク連結軸部27とを有する。左右一対の回転軸部26は、羽根部材20の前端部に設けられている。
【0022】
第1羽根部材21及び第3羽根部材23は、左右の回転軸部26がハウジング11に設けられる後述の挿入孔部13に挿入されて保持されることにより、ハウジング11に回転可能に連結される。第2羽根部材22は、左側の回転軸部26がハウジング11に設けられる挿入孔部13に挿入されて保持されるとともに、右側の回転軸部26が後述する軸受け部30に保持されることにより、ハウジング11に回転可能に連結される。リンク連結軸部27は、回転軸部26より後方の位置で、羽根本体部25の右側縁部から右側に向けて突出している。本実施例では、ハウジング11の軸受け部30に第2羽根部材22が連結されているが、本発明では、軸受け部30の設置位置を変更して、第1羽根部材21又は第3羽根部材23が軸受け部30に回転可能に連結されていてもよい。
【0023】
ハウジング11は、筒状のハウジング本体部12と、ハウジング本体部12に固定される固定部材15とを有する。ハウジング本体部12は、ABS樹脂、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。ハウジング本体部12は、一対の上板部12a及び下板部12bと、左右一対の側板部12cとを有しており、前後方向に直交する断面が長方形状を呈する四角筒状に形成されている。ハウジング本体部12の左側側板部12cには、羽根部材20の一端部(左側端部)に設けられた回転軸部26が挿入されて回転可能に支持される3つの挿入孔部13が形成されている。
【0024】
固定部材15は、ハウジング本体部12に固定されるベース部16と、ベース部16に組み付けられて保持されるブッシュ体40とを有する。
ベース部16は、硬質の合成樹脂により形成されている。本実施例におけるベース部16の材質には、例えばポリプロピレン、ABS樹脂等の合成樹脂が採用される。ベース部16は、一定の厚さ(左右方向の寸法)を有する板状に形成されているとともに、上下方向の略中央部に設けられた後述する保持部50を有する。
【0025】
ブッシュ体40は、弾性を備える軟質の合成樹脂により形成されており、例えばオレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(SEBS)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、酢酸ビニル共重合ポリエチレン等によって、ブッシュ体40を形成することが可能である。なお、風向調整装置10の羽根部材20、ハウジング本体部12、ベース部16、及びブッシュ体40における上述した材質は好ましい一例であり、本発明の風向調整装置を形成する部品又は部材の材質は特に限定されるものではない。
【0026】
固定部材15は、3つの羽根部材20の他端部(右側端部)に設けられた回転軸部26を回転可能に支持するとともに、ハウジング本体部12の右側側板部12cの内壁面に固定される。なお、固定部材15をハウジング本体部12に固定する方法及び手段は特に限定されない。また、固定部材15はハウジング本体部に一体的に形成されていてもよい。
【0027】
固定部材15は、第2羽根部材22に設けられた回転軸部26を回転可能に支持する軸受け部30と、軸受け部30の上側と下側とに設けられる挿入孔部13とを有する。上下の挿入孔部13は、固定部材15のベース部16に直接設けられており、第1羽根部材21及び第3羽根部材23に設けられた回転軸部26をそれぞれ受け入れて回転可能に支持する。
【0028】
固定部材15の軸受け部30は、ブッシュ体40と、そのブッシュ体40を収容して保持する保持部50とにより形成されている。ブッシュ体40は、ブッシュ本体部41と、ブッシュ本体部41に設けられる嵌合孔部42と、ブッシュ本体部41に一体的に形成される円板状のフランジ部43とを有する。本実施例において、ブッシュ体40は、当該ブッシュ体40を羽根部材20の回転軸部26が挿入される左右方向の一方側(左側)から見たときに、前後方向及び上下方向に対称的な形状を有し、また、点対称な形状を有する。
【0029】
ブッシュ本体部41は、左右方向に直交する断面が一定の形状を呈するとともに厚さ(左右方向の寸法)が小さい柱状体に形成されている。本実施例のブッシュ本体部41は、ベース部16と同じ厚さで形成されている。
【0030】
ブッシュ本体部41の外周側面には、複数の凹部46と複数の凸部47とが、羽根部材20の回転軸部26の回転方向に沿って交互に設けられており、本実施例では、4つの凹部46と4つの凸部47とが1つのブッシュ本体部41に設けられている。ブッシュ本体部41を左右方向の一方側(左側)から見たときに又はブッシュ本体部41の左右方向に直交する断面を見たときに、各凹部46は、円弧状に湾曲する底面46aを有しており、各凸部47は、円弧状に湾曲する先端面(突出面)47aを有する。
【0031】
この場合、凹部46の底面46aは、嵌合孔部42の中心位置に対して一定の第1半径を有する円弧状の湾曲面に形成されており、凸部47の先端面47aは、嵌合孔部42の中心位置に対し、第1半径よりも大きな一定の第2半径を有する円弧状の湾曲面に形成されている。すなわち、凹部46の円弧状の底面46a、及び凸部47の円弧状の先端面47aは、それぞれ回転軸部26の回転方向に沿った湾曲面に形成されている。このため、ブッシュ本体部41の凹部46及び凸部47は、第1半径を有する小径部及び第2半径を有する大径部とそれぞれ言い換えることもできる。
【0032】
ブッシュ本体部41を左右方向の一方側(左側)から見たときに、4つの凹部46及び4つの凸部47は、それぞれ、嵌合孔部42の中心位置を基準に45°の角度範囲に亘って設けられており、また、回転軸部26の回転方向に沿って等間隔で配置されている。凹部46と凸部47の間には、嵌合孔部42の中心位置に対して半径方向に延びる平面状の段差面48が形成されている。
【0033】
なお本発明において、凹部46及び凸部47間に形成される段差面48は、半径方向に沿って形成されていなくてもよい。また段差面48は、平面ではなく、曲面に形成されていてもよい。更に、凸部47の先端面47aは、上述のような円弧状の湾曲面ではなく、平面等のその他の面形状に形成されていてもよい。
【0034】
ブッシュ体40の嵌合孔部42は、ブッシュ体40を左側から見たときに、ブッシュ本体部41及びフランジ部43の中央部に、ブッシュ本体部41及びフランジ部43を左右方向に貫通して形成されている。嵌合孔部42は、第2羽根部材22の回転軸部26を隙間なく嵌合可能に形成されている。ブッシュ体40のフランジ部43は、薄板状に形成されている。フランジ部43が固定部材15に接することにより、固定部材15に対するブッシュ体40の左右方向における位置決めを行うことができる。
【0035】
軸受け部30を形成する保持部50は、固定部材15のベース部16に、ベース部16を左右方向に貫通して設けられている。この保持部50に、ブッシュ体40が収容されて保持される。保持部50は、円形を呈する第1収容空間部51と、第1収容空間部51からその半径方向に上下方向及び左右方向に凹設される4つの第2収容空間部52とを有する。また、第1収容空間部51及び第2収容空間部52は、ブッシュ体40を収容可能な大きさで形成されており、固定部材15を左右方向から見たときに、ブッシュ本体部41の外形に沿った形状を有する。
【0036】
また、保持部50は、第1収容空間部51の中心部に向けて突出する4つの抵抗付与部53と、第2収容空間部52の円弧状の内壁面を形成する4つの抵抗緩和部54とを有する。各抵抗付与部53は、回転軸部26の回転方向(円周方向)に隣接する第2収容空間部52間に挟まれて配されている。
【0037】
各抵抗付与部53は、ブッシュ体40の凹部46(小径部)の底面46aに対応して設けられる押圧先端面53aと、押圧先端面53aの両側に設けられる一対の側壁面53bとを有する。抵抗付与部53の押圧先端面53aは、抵抗付与部53の先端部に設けられており、第1収容空間部51の内壁面を形成している。この押圧先端面53aは、ブッシュ体40の凹部46の底面46aに対応して配され、固定部材15を左右方向から見たときに円弧状に湾曲する曲面に形成されている。抵抗付与部53の一対の側壁面53bは、第1収容空間部51の半径方向に沿って形成されている。
【0038】
抵抗付与部53は、ブッシュ体40が保持部50の第1収容空間部51及び第2収容空間部52に収容され、更に第2羽根部材22の回転軸部26がブッシュ体40の嵌合孔部42に挿入されたときに、その押圧先端面53aをブッシュ体40の凹部46の底面46aに面接触させることができる。また、抵抗付与部53は、ブッシュ体40のブッシュ本体部41を、抵抗付与部53の押圧先端面53aと回転軸部26の間で圧縮することができる。
【0039】
抵抗緩和部54は、ブッシュ体40の凸部47(大径部)の先端面47aに対向する凸部対向面54aを有する。本実施例において、抵抗緩和部54の凸部対向面54aは、固定部材15を左右方向から見たときに円弧状に湾曲する曲面に形成されている。この抵抗緩和部54は、ブッシュ体40が保持部50の第1収容空間部51及び第2収容空間部52に収容され、更に第2羽根部材22の回転軸部26がブッシュ体40の嵌合孔部42に挿入されたときに、その凸部対向面54aをブッシュ体40の凸部47の先端面47aに面接触させることができる。また、抵抗緩和部54は、抵抗緩和部54の凸部対向面54aと回転軸部26の間でブッシュ本体部41を抵抗付与部53よりも弱く圧縮する弱圧縮部として形成されている。
【0040】
なお本発明において、抵抗緩和部54の凸部対向面54aは、抵抗緩和部54の凸部対向面54aに対応しない曲面や平面に形成されていてもよい。また、凸部対向面54aは、ブッシュ体40を圧縮しない非圧縮部として形成されていてもよい。
【0041】
以上のような風向調整装置10を組み立てる場合、図2に示したように、先ず、固定部材15のベース部16に設けた保持部50にブッシュ体40を右側から挿入して収容する。このとき、ブッシュ体40のフランジ部43が固定部材15のベース部16に接するまでブッシュ体40を保持部50内に挿入して収容する。これにより、固定部材15に軸受け部30が形成される。
【0042】
続いて、形成した軸受け部30の嵌合孔部42に、第2羽根部材22の回転軸部26を挿入する。これにより、第2羽根部材22が固定部材15の軸受け部30に回転可能に連結される。このとき、軸受け部30において、保持部50の抵抗付与部53が、上述したように回転軸部26の回転中心に向けて突出して形成されているため、ブッシュ体40は、抵抗付与部53と第2羽根部材22の回転軸部26との間で強く圧縮される(高圧縮率の圧縮が生じる)。それによって、例えば第2羽根部材22を回転させるときに、抵抗付与部53が設けられている回転範囲で、ブッシュ体40と第2羽根部材22の回転軸部26との間の摩擦抵抗を容易に増大させることができる。
【0043】
更に、軸受け部30のブッシュ体40は、保持部50の抵抗緩和部54と第2羽根部材22の回転軸部26との間で、抵抗付与部53よりも弱く圧縮されており(比較的低圧縮率の圧縮が生じており)、抵抗緩和部54が設けられている回転範囲でブッシュ体40が受ける圧縮を緩和できる。それによって、第2羽根部材22を回転させるとききに、抵抗緩和部54が設けられている回転範囲で、ブッシュ体40と第2羽根部材22の回転軸部26との間の摩擦抵抗を低下させることができる。
【0044】
また本実施例では、上述のように軸受け部30に第2羽根部材22の回転軸部26を連結して支持するとともに、固定部材15に設けた上下の挿入孔部13に第1羽根部材21及び第3羽根部材23の回転軸部26をそれぞれ挿入して回転可能に支持する。更に、第1羽根部材21~第3羽根部材23の各リンク連結軸部27に、図示しないリンク部材を取り付ける。
【0045】
次に、固定部材15に連結した第1羽根部材21~第3羽根部材23の左側の回転軸部26を、ハウジング本体部12の左側側板部12cに設けた3つの挿入孔部13にそれぞれ挿入して回転可能に支持する。それとともに、固定部材15をハウジング本体部12の右側側板部12cの内壁面に固定する。
これにより、図1に示した本実施例の風向調整装置10が製造される。
【0046】
以上のような本実施例の風向調整装置10では、第2羽根部材22の回転軸部26がハウジング11に設けた軸受け部30のブッシュ体40に回転可能に支持されている。また、回転軸部26は、その回転時に、抵抗付与部53が設けられている角度範囲において、高い圧縮を受けてブッシュ体40との摩擦抵抗を増大させ、且つ、抵抗緩和部54が設けられている角度範囲において、受ける圧縮が緩和されてブッシュ体40との摩擦抵抗を低下させる。更に、摩擦抵抗を増大させる4つの領域(抵抗付与部53の設置領域)と、摩擦抵抗を低下させる4つの領域(抵抗緩和部54の設置領域)とは、回転軸部26の回転方向に同じ角度範囲で交互に設けられている。
【0047】
このため、羽根部材20(第2羽根部材22)の回転操作時に、回転軸部26の軸回り方向で、回転軸部26の摩擦抵抗を増大させる領域と摩擦抵抗を減少させる領域とを交互に発生させる。またこの場合、回転軸部26がブッシュ体40から高い圧縮を受ける部分から、比較的低い圧縮を受ける部分に向けて応力を逃がすように応力の受け渡し(やり取り)が行われる。これによって、例えば設計時に見込まれる所望の摩擦抵抗を発生させ易くして、羽根部材20の適切な操作トルクを安定して得ることができる。従って、本実施例の風向調整装置10では、羽根部材20の良好な操作性を容易に且つ安定して得ることができ、また、羽根部材20(第2羽根部材22)の操作によって、風向調整装置10から吹き出す風の向きを安定して調整できる。
【0048】
更に本実施例において、ブッシュ体40は、抵抗付与部53が略45°の角度範囲に亘って連続して面接触することによって押圧されているため、例えば特許文献1のように小さな圧着リブによってブッシュ体40が局部的な押圧を受けることはない。このため、ブッシュ体40に塑性変形が生じることを抑制し、それによって、羽根部材20の適切な操作トルクを長期に亘って発生させることが可能となる。
【0049】
また本実施例では、軸受け部30における抵抗付与部53の設置角度範囲、及び、ブッシュ体40に対する抵抗付与部53の突出量等を変更することにより、羽根部材20の回転操作時に回転軸部26に生じる摩擦抵抗を変化させて、羽根部材20の操作トルクを適切な大きさに又は所望の大きさに容易に調整することが可能である。
【0050】
すなわち、本実施例によれば、ブッシュ体40の形状及び大きさを変更することなく、保持部50の抵抗付与部53の大きさを変更することによって、羽根部材20のトルク調整(トルク管理)を容易に行うことができる。これにより、同一のブッシュ体40を用いる場合でも、保持部50の調整によって羽根部材20の操作トルクのバリエーションを増やすことができるため、風向調整装置の商品展開を行い易くすることが期待できる。また、ブッシュ体の部品標準化による製造コストの大幅な削減も期待できる。
【0051】
なお、本発明の風向調整装置は、上述した実施例の風向調整装置10に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、上述した実施例において、ブッシュ体40の嵌合孔部42、及びベース部16に設けた保持部50の第1収容空間部51は、図2及び図5に示したように、風向調整装置10の左右方向と平行に形成されているとともに、嵌合孔部42の左右方向に直交する断面と、第1収容空間部51の左右方向に直交する断面とは、左右方向の全体に亘って同じ形状及び同じ大きさを呈する。
【0052】
しかし本発明では、例えば図6に変形例に係る風向調整装置の軸受け部と回転軸部の断面図を示すように、ブッシュ体40aの嵌合孔部42aと、ベース部16aに設けた第1収容空間部51aとは、それぞれの左右方向に直交する断面の面積が、羽根部材20の回転軸部26が挿入される側の開口に向けて漸増するような円錐台状に形成されていてもよい。
【0053】
このような変形例に係る風向調整装置では、前述の実施例で説明した風向調整装置10と同様の効果が得られるだけでなく、嵌合孔部42a及び第1収容空間部51aの左側端部における開口面積が大きいため、羽根部材20の回転軸部26を固定部材の保持部に組み付け易くすることができ、それによって、風向調整装置の組立作業性を向上させることができる。
【0054】
また上述した実施例において、ブッシュ体40は、ブッシュ本体部41の外周側面に4つの凹部46と4つの凸部47とが回転軸部26の回転方向に等間隔で交互に配置されて形成されている。しかし本発明では、ブッシュ本体部の外周側面に形成する凹部及び凸部の設置数は、複数であれば特に限定されない。例えば図7に示すように、ブッシュ体40bには、3つの凹部46と3つの凸部47とがブッシュ本体部41bの外周側面にそれぞれ等間隔で配置されていてもよく、又は、2つの凹部と2つの凸部とがそれぞれ90°の角度範囲で交互に配置されていてもよい。更に、ブッシュ体には、5つ以上の複数の凹部及び凸部がブッシュ本体部の外周側面に等間隔で配置されて形成されてもよい。
【0055】
更に本発明では、複数の凹部及び凸部を、回転軸部の回転方向に等間隔ではなく、偏らせた位置関係で配置することや、2つ以上の異なる角度範囲で配置することによってブッシュ体が形成されていてもよい。また、これらの場合、軸受け部においてブッシュ体を収容して保持する保持部には、ブッシュ本体部に対応する形状を備えた第1収容空間部及び第2収容空間部が形成される。
【符号の説明】
【0056】
10 風向調整装置
11 ハウジング
12 ハウジング本体部
12a 上板部
12b 下板部
12c 側板部
13 挿入孔部
15 固定部材
16,16a ベース部
20 羽根部材
21 第1羽根部材
22 第2羽根部材
23 第3羽根部材
25 羽根本体部
26 回転軸部
27 リンク連結軸部
30 軸受け部
40 ブッシュ体
40a,40b ブッシュ体
41,41b ブッシュ本体部
42,42a 嵌合孔部
43 フランジ部
46 凹部
46a 底面
47 凸部
47a 先端面(突出面)
48 段差面
50 保持部
51,51a 第1収容空間部
52 第2収容空間部
53 抵抗付与部
53a 押圧先端面
53b 側壁面
54 抵抗緩和部
54a 凸部対向面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7