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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】半導体レーザ素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/343 20060101AFI20240701BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020133418
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029865
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】狩野 隆司
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116580(JP,A)
【文献】特開平10-335757(JP,A)
【文献】特開2010-103429(JP,A)
【文献】特開2010-206092(JP,A)
【文献】特許第6391207(JP,B1)
【文献】特開2002-100837(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001692(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/193487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/343
H01S 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上方に位置する活性層と、
前記活性層の上方に位置する第2クラッド層とを備え、
前記第2クラッド層は、AlGaN層とGaN層とが複数繰り返して積層された積層構造を有し、
複数の前記AlGaN層の各々の膜厚は、2原子層以下であり、
前記AlGaN層の膜厚は、前記GaN層の膜厚未満である、
半導体レーザ素子。
【請求項2】
第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上方に位置する活性層と、
前記活性層の上方に位置する第2クラッド層とを備え、
前記第2クラッド層は、AlGaN層とGaN層とが複数繰り返して積層された積層構造を有し、
前記積層構造の断面において、複数の前記AlGaN層の各々は、分断している
半導体レーザ素子。
【請求項3】
複数の前記AlGaN層の各々の膜厚は、2原子層以下である、
請求項2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
複数の前記AlGaN層の各々の膜厚は、1原子層以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記AlGaN層及び前記GaN層の一方には、不純物がドープされておらず、
前記AlGaN層及び前記GaN層の他方には、不純物がドープされている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記GaN層には、不純物がドープされておらず、
前記AlGaN層には、不純物がドープされている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記AlGaN層の膜厚は、前記GaN層の膜厚以下である、
請求項2又は3に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記AlGaN層の膜厚は、前記GaN層の膜厚未満である、
請求項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記第2クラッド層は、p側クラッド層である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記第2クラッド層にはリッジ部が形成されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ素子に関し、特に、窒化物半導体材料からなる窒化物半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子は、長寿命、高効率及び小型等のメリットがあるため、プロジェクタ、光ディスク、車載ヘッドランプ、照明装置又はレーザ加工装置等の様々な製品の光源として利用されている。
【0003】
この種の半導体レーザ素子として、紫外から青色までの波長帯をカバーする窒化物半導体レーザ素子の研究開発が進められている。窒化物半導体レーザ素子は、n側クラッド層、活性層及びp側クラッド層等からなる半導体層積層構造が窒化物半導体材料によって構成されている。
【0004】
窒化物半導体レーザ素子では、さらなる高出力化と長寿命化に加えて、高効率化も求められている。このため、窒化物半導体レーザ素子では、レーザ発振時の消費電力のさらなる低減化が求められている。
【0005】
そこで、従来、p側クラッド層をAlGaN層とGaN層とが交互に積層された超格子構造とした窒化物半導体レーザ素子が提案されている(例えば特許文献1)。このように、p側クラッド層を超格子構造にすることで、p側クラッド層を低抵抗化することができ、動作電圧を低くして消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-18963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AlGaN層とGaN層とが交互に積層された超格子構造をp側クラッド層に採用した窒化物半導体レーザ素子では、p型クラッド層におけるAlGaN層とGaN層とのヘテロ界面で生成される正孔が横方向(基板面内方向)に容易に移動できるため、横方向の抵抗を低減することができる。
【0008】
しかしながら、縦方向(積層方向)では、障壁となるAlGaN層によって正孔の移動が阻まれて抵抗を充分に低減することができない。
【0009】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、AlGaN層とGaN層とが積層された積層構造を有するクラッド層の縦方向(積層方向)の抵抗を低減することができる半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示に係る第1の半導体レーザ素子の一態様は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上方に位置する活性層と、前記活性層の上方に位置する第2クラッド層とを備え、前記第2クラッド層は、AlGaN層とGaN層とが複数繰り返して積層された積層構造を有し、複数の前記AlGaN層の各々の膜厚は、2原子層以下である。
【0011】
また、本開示に係る第2の半導体レーザ素子の一態様は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上方に位置する活性層と、前記活性層の上方に位置する第2クラッド層とを備え、前記第2クラッド層は、AlGaN層とGaN層とが複数繰り返して積層された積層構造を有し、前記積層構造の断面において、複数の前記AlGaN層の各々は、分断している。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、AlGaN層とGaN層とが積層された積層構造を有する第2クラッド層の縦方向の抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る半導体レーザ素子の断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体レーザ素子におけるp型クラッド層の層構造を示す断面図である。
図3】窒化物半導体の結晶構造を示す図である。
図4】実施例1、2及び比較例1の各半導体レーザ素子における動作電圧とAlGaN層の膜厚との関係を示す図である。
図5】実施例1、3、4、5及び比較例2の各半導体レーザ素子における動作電圧とAlGaN層のAl組成との関係を示す図である。
図6】実施例4、6、7及び比較例2の各半導体レーザ素子における電流電圧特性を示す図である。
図7】p側クラッド層が均一ドープである場合とp側クラッド層が変調ドープである場合とのそれぞれにおける伝導帯と価電子帯とを示す図である。
図8】実施の形態2に係る半導体レーザ素子におけるp型クラッド層の層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0016】
なお、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における鉛直上方及び鉛直下方を示すものではなく、積層構成における積層順をもとにした相対的な位置関係により規定される用語として用いられる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0017】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る半導体レーザ素子1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る半導体レーザ素子1の断面図である。
【0018】
図1に示すように、半導体レーザ素子1は、第1クラッド層であるn側クラッド層20と、n側クラッド層20の上方に位置する活性層40と、活性層40の上方に位置する第2クラッド層であるp側クラッド層とを備える。
【0019】
具体的には、半導体レーザ素子は、基板10と、n側クラッド層20と、n側光ガイド層30と、活性層40と、p側光ガイド層50と、オーバーフロー抑制層60と、p側クラッド層70と、コンタクト層80と、p側電極90と、パッド電極100と、n側電極110とを備える。
【0020】
本実施の形態における半導体レーザ素子1は、n側クラッド層20、n側光ガイド層30、活性層40、p側光ガイド層50、オーバーフロー抑制層60、p側クラッド層70及びコンタクト層80が窒化物半導体材料によって構成された窒化物半導体レーザ素子である。具体的には、半導体レーザ素子1は、GaN系の窒化物半導体レーザ素子である。半導体レーザ素子1から出射するレーザ光は、例えば、紫外から青色までの波長帯域の光である。
【0021】
基板10は、GaN又はSiC等からなる半導体基板、又は、サファイア基板等である。本実施の形態では、基板10として、六方晶系GaN単結晶からなるn型GaN基板を用いている。具体的には、基板10として、主面が(0001)面であるn型GaN基板を用いている。
【0022】
基板10の上には、n側クラッド層20、n側光ガイド層30、活性層40、p側光ガイド層50、オーバーフロー抑制層60、p側クラッド層70及びコンタクト層80がこの順で積層されている。n側クラッド層20、n側光ガイド層30、活性層40、p側光ガイド層50、オーバーフロー抑制層60、p側クラッド層70及びコンタクト層80は、例えば、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)法によって形成することができる。なお、基板10に形成される窒化物半導体層には、これらの半導体層以外のものも含まれていてもよい。
【0023】
n側クラッド層20は、基板10の上方に形成されている。本実施の形態において、n側クラッド層20は、不純物がドープされたn型のクラッド層である。n側クラッド層20は、例えば、n型のAlGa1-xN(0<x<1)によって構成されている。
【0024】
本実施の形態において、n側クラッド層20は、不純物としてシリコン(Si)がドープされたn型のAl0.03Ga0.97Nからなるn-AlGaN層である。この場合、n側クラッド層20におけるシリコンの不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3である。また、一例として、n側クラッド層20の膜厚は、3μmである。
【0025】
n側クラッド層20の上方には、第1光ガイド層として、n側光ガイド層30が形成されている。n側光ガイド層30は、不純物を意図的にドープしないアンドープのInGa1-xN(0≦x<1)又は不純物がドープされたn型のInGa1-xN(0≦x<1)によって構成されている。n側光ガイド層30は、単層及び複数層のいずれであってもよい。
【0026】
本実施の形態において、n側光ガイド層30は、複数層であり、アンドープのIn0.01Ga0.99Nからなるun-InGaN層と、不純物としてシリコンがドープされたn型のGaNからなるn-GaN層とによって構成されている。この場合、n-GaN層におけるシリコンの不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3である。また、一例として、un-InGaN層の膜厚は、220nmであり、n-GaN層の膜厚は、40nmである。
【0027】
n側光ガイド層30の上方には、活性層40が形成されている。活性層40は、アンドープのInGaN(0<x<1)及び/又はAlInGaN(x,y≧1)によって構成されている。活性層40は、単層及び複数層のいずれであってもよい。また、活性層40は、単一量子井戸構造(SQW;Single Quantum Well)及び多重量子井戸構造(MQW;multi quantum well)のいずれであってもよい。
【0028】
本実施の形態において、活性層40は、アンドープのInGaNからなる量子井戸層41とアンドープのInGaNからなる量子障壁層42とによって構成された単一量子井戸構造である。具体的には、活性層40は、膜厚14nmのアンドープのIn0.02Ga0.98Nからなるun-InGaN層である量子障壁層42と、膜厚7.5nmのアンドープのIn0.07Ga0.93Nからなるun-InGaN層である量子井戸層41と、膜厚14nmのアンドープのIn0.02Ga0.98Nからなるun-InGaN層である量子障壁層42とが順に積層された3層構造である。
【0029】
活性層40の上方には、第2光ガイド層として、p側光ガイド層50が形成されている。p側光ガイド層50は、アンドープのInGa1-xN(0≦x<1)又はp型のInGa1-xN(0≦x<1)によって構成されている。p側光ガイド層50は、単層及び複数層のいずれであってもよい。
【0030】
本実施の形態において、p側光ガイド層50は、単層であり、アンドープのIn0.01Ga0.99Nからなるun-InGaN層である。一例として、p側光ガイド層50の膜厚は、110nmである。
【0031】
p側光ガイド層50の上方には、オーバーフロー抑制層60が形成されている。オーバーフロー抑制層60は、活性層40から電子が漏れることを抑制する。オーバーフロー抑制層60は、不純物がドープされたp型のAlGa1-xN(0≦x<1)によって構成されている。
【0032】
本実施の形態において、オーバーフロー抑制層60は、不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされたp型のAl0.3Ga0.7Nからなるp-AlGaN層である。この場合、オーバーフロー抑制層60におけるマグネシウムの不純物濃度は、例えば、2×1018cm-3である。また、一例として、オーバーフロー抑制層60の膜厚は、5nmである。
【0033】
オーバーフロー抑制層60の上方には、p側クラッド層70が形成されている。p側クラッド層70は、レーザ共振器長方向に延在する突条のリッジ部70a(リッジ導波路)と、リッジ部70aの根元から横方向に広がる平坦部70bとを有する。リッジ部70aの幅及び高さは、特に限定されるものではないが、一例として、リッジ部70aの幅(ストライプ幅)は1μm以上100μm以下であり、リッジ部70aの高さは100nm以上1μm以下である。
【0034】
p側クラッド層70は、AlGa1-xN(0≦x<1)によって構成されている。本実施の形態において、p側クラッド層70は、超格子構造を有する超格子層である。具体的には、p側クラッド層70は、AlGaN層とGaN層とが複数繰り返して積層された積層構造を有する。p側クラッド層70において、AlGaN層の膜厚は、2原子層以下である。なお、p側クラッド層70の具体的な構造については後述する。
【0035】
p側クラッド層70の上方には、コンタクト層80が形成されている。具体的には、コンタクト層80は、p側クラッド層70のリッジ部70aの上面に接して形成されている。コンタクト層80の幅は、リッジ部70aのリッジ幅と同じである。コンタクト層80は、不純物がドープされたp型のコンタクト層である。
【0036】
本実施の形態において、コンタクト層80は、p型のGaNによって構成されている。具体的には、コンタクト層80は、複数層であり、不純物濃度と膜厚とが異なる2層のp型のGaNによって構成されている。一例として、コンタクト層80は、マグネシウムの不純物濃度が2×1018cm-3で膜厚が50nmのp型のGaNからなるp-GaN層と、マグネシウムの不純物濃度が2×1020cm-3で膜厚が10nmのp型のGaNからなるp-GaN層とによって構成されている。
【0037】
リッジ部70aの側面と平坦部70bの上面とを覆うように絶縁膜120が形成されている。具体的には、絶縁膜120は、リッジ部70aの側面と平坦部70bの上面とにわたって連続的に形成されている。絶縁膜120は、リッジ部70aの上方には形成されていない。したがって、リッジ部70aの上面に形成されたコンタクト層80の上面は、絶縁膜120で覆われておらず、絶縁膜120から露出している。このため、リッジ部70aの上方(コンタクト層80上)の絶縁膜120には開口部が形成されている。この絶縁膜120の開口部を通って活性層40に電流が注入される。絶縁膜120は、絶縁材料によって構成されている。例えば、絶縁膜120は、SiO等の誘電体材料によって構成されている。絶縁膜120の膜厚は、一例として、300nmである。
【0038】
絶縁膜120から露出するコンタクト層80の上方には、第1電極として、p側電極90が形成されている。p側電極90は、例えば、Cr、Ti、Ni、Pd、Pt及びAu等の金属材料を少なくとも1つ以上用いて形成されている。また、p側電極90は、単層及び複数層のいずれであってもよい。本実施の形態において、p側電極90は、Pdからなる膜厚40nmのPd層とPtからなる膜厚35nmのPt層との2層構造の電極である。
【0039】
p側電極90の上方には、パッド電極100が形成されている。具体的には、パッド電極100は、p側電極90の上面に接して形成されている。また、パッド電極100は、p側電極90を覆うように、リッジ部70aの上方及び側方と平面部70bの上方とにわたって形成されている。具体的には、パッド電極100は、p側電極90及び絶縁膜120を覆うように形成されている。パッド電極100は、例えば、Ti(0.1μm)/Pt(0.2μm)/Au(0.2μm)の3層構造の電極である。
【0040】
基板10の下面(裏面)には、第2電極として、n側電極110が形成されている。n側電極110は、半導体基板である基板10とオーミック接触するオーミック電極である。n側電極110は、例えば、Cr、Ti、Ni、Pd、Pt及びAu等の金属材料を少なくとも1つ以上用いて形成されている。また、n側電極110は、単層及び複数層のいずれであってもよい。本実施の形態において、n側電極110は、Ti/Pt/Auの3層構造の電極である。
【0041】
なお、図示しないが、半導体レーザ素子1の前端面及び後端面には、誘電体多層膜で構成された端面コート膜が形成されている。具体的には、前端面には、低反射率の端面コート膜が形成されており、後端面には、高反射率の端面コート膜が形成されている。一例として、前端面に形成された端面コート膜は、AlとTaとの多層膜によって構成された反射率が2%の低反射膜である。また、後端面に形成された端面コート膜は、例えば、AlとSiOとTaとの多層膜によって構成された反射率が95%の高反射膜である。
【0042】
次に、本実施の形態に係る半導体レーザ素子1の作用効果について、本開示の一態様を得るに至った経緯も含めて説明する。
【0043】
AlGaN層とGaN層とが交互に積層された超格子構造をp側クラッド層に採用した窒化物半導体レーザ素子では、p側クラッド層におけるAlGaN層及びGaN層の膜厚を薄くすればするほどp側クラッド層を低抵抗化できる。
【0044】
しかしながら、これまでは、AlGaN層とGaN層との界面での格子ひずみによるピエゾ分極の影響を考慮すると、AlGaN層及びGaN層の膜厚は、2nm程度までしか薄くすることができないと考えられていた。つまり、AlGaN層及びGaN層からなる超格子構造のp側クラッド層については、AlGaN層及びGaN層の膜厚の最小値は2nm程度であると考えられていた。このことは、当業者の技術常識であり、実際、市場の窒化物半導体レーザ素子においても、p側クラッド層におけるAlGaN層及びGaN層の膜厚の最小値は2nm程度であった。例えば、従来の窒化物半導体レーザ素子では、p側クラッド層におけるAlGaN層及びGaN層は、膜厚がそれぞれ2nmであり、165回繰り返して積層されている。
【0045】
このように構成されたp側クラッド層を用いることで、横方向(基板面内方向)の抵抗を効果的に低減することができるので、p側クラッド層を低抵抗化することができる。
【0046】
しかしながら、この場合、縦方向(積層方向)では障壁となるAlGaN層を正孔が超える必要があるため、AlGaN層に対して縦方向での抵抗は僅かに低減できる程度に過ぎなかった。つまり、縦方向ではAlGaN層によって正孔の移動が阻まれことになり正孔が容易に移動することができず、縦方向の抵抗が充分に下げることができないという課題がある。
【0047】
このように、AlGaN層とGaN層とが交互に積層された超格子構造をp側クラッド層に採用したこれまでの窒化物半導体レーザ素子では、横方向の抵抗を効果的に低減できるものの、縦方向の抵抗を十分に低減することができなかった。
【0048】
そこで、本願発明者らは、AlGaN層及びGaN層の膜厚の最小値は2nm程度であったという技術常識にとらわれずにAlGaN層及びGaN層の膜厚を変えて実験を繰り返して鋭意検討した結果、AlGaN層及びGaN層で構成されたp側クラッド層におけるAlGaN層の膜厚を2nmよりも薄くすることで、横方向の抵抗だけではなく縦方向の抵抗も低減できることを見出した。
【0049】
以下、この点について、実験結果を含めて詳細に説明する。まず、実施の形態1に係る半導体レーザ素子1におけるp側クラッド層70の詳細な構成について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子1におけるp側クラッド層70の層構造を示す断面図である。
【0050】
図1に示される半導体レーザ素子1において、p側クラッド層70は、超格子構造を有する超格子層である。具体的には、図2に示すように、p側クラッド層70は、超格子構造として、AlGaN層71とGaN層72とが複数繰り返して積層された積層構造を有する。本実施の形態において、AlGaN層71とGaN層72とは、1層ずつ交互に複数回繰り返して積層されている。AlGaN層71とGaN層72との繰り返し回数は、特に限定されるものではないが、数十回以上である。
【0051】
AlGaN層71は、不純物を意図的にドープしないアンドープのAlGa1-xN(0≦x<1)からなるun-AlGaN層、又は、不純物がドープされたp型のAlGa1-xN(0≦x<1)からなるp-AlGaN層である。
【0052】
GaN層72は、不純物を意図的にドープしないアンドープのGaNからなるun-GaN層、又は、不純物がドープされたp型のGaNからなるp-GaN層である。
【0053】
p側クラッド層70は、AlGaN層71及びGaN層72の少なくとも一方がp型の窒化物半導体によって構成されたp型クラッド層である。つまり、AlGaN層71及びGaN層72の少なくとも一方は、不純物が意図的にドープされたドープ層である。
【0054】
この場合、p側クラッド層70は、AlGaN層71及びGaN層72の両方に不純物がドープされた均一ドープのp型クラッド層(p-AlGaN層/p-GaN層)であってもよいし、AlGaN層71及びGaN層72のいずれか一方のみに不純物がドープされた変調ドープのp型クラッド層であってもよい。
【0055】
また、p側クラッド層70が変調ドープのp型クラッド層である場合、p側クラッド層70は、不純物がドープされていないun-AlGaN層であるAlGaN層71と不純物がドープされたp-GaN層であるGaN層72とによって構成されていてもよいし、不純物がドープされたun-AlGaN層であるAlGaN層71と不純物がドープされていないun-GaN層であるGaN層72とによって構成されていてもよい。
【0056】
ここで、AlGaN層71及びGaN層72の結晶構造は、図3に示されるウルツ鉱型構造を有する。図3は、GaN、AlN及びAlGaNの窒化物半導体の結晶構造を示している。図3に示すように、GaN、AlN及びAlGaNの窒化物半導体は、Ga及び/又はAlのIII族原子とNのV族原子とが交互に積層された構成になっている。図3において、黒球は、Ga原子又はAl原子を示しており、白球は、N原子を示している。
【0057】
図3がGaNの結晶構造である場合、縦方向(c軸方向)の格子定数は、0.519nmとなる。また、図3がAlNの結晶構造である場合、縦方向の格子定数は、0.498nmとなる。したがって、図3がAlGaNの結晶構造である場合、縦方向の格子定数は、AlとGaの存在比率に応じて、0.498nm以上0.519nm以下となる。
【0058】
このように、図3に示される結晶構造の窒化物半導体では、縦方向であるc軸方向の格子定数(図3のx)は、約0.5nmであり、2原子層に相当する。つまり、図3に示される結晶構造の窒化物半導体において、1原子層(=x/2)は、約0.25nmであり、4原子層は、約1nmとなる。
【0059】
そして、本願発明者らは、図3に示される窒化物半導体の結晶構造に着目して、AlGaN層71及びGaN層72で構成された超格子構造のp側クラッド層70について、AlGaN層71の膜厚を2原子層以下にまで薄くするという新たな着想をもとに、AlGaN層71の膜厚を種々変化させた実験を行った。以下の表1は、その実験における実施例1~実施例7及び比較例1、2の半導体レーザ素子1のp側クラッド層70(超格子層)の構成を示しており、図4図6は、その実験結果を示している。なお、表1に示すように、実施例1~実施例7及び比較例1、2において、AlGaN層71とGaN層72との繰り返し回数は異なるが、p側クラッド層70全体の総膜厚、平均アルミニウム組成及び平均マグネシウム濃度は、同じにしている。また、本実験において、AlGaN層71及びGaN層72はMOCVD装置にて成膜した。
【0060】
【表1】
【0061】
図4は、実施例1、2及び比較例1の各半導体レーザ素子1における動作電圧VfとAlGaN層71の膜厚との関係を示している。つまり、動作電圧VfのAlGaN層71の膜厚依存性を示している。なお、図4では、電流密度が4.78kA/cmのときの動作電圧Vfを示している。
【0062】
図4において、比較例1及び実施例1、2は、表1に示すように、互いにAlGaN層71及びGaN層72の組成が同じであり、AlGaN層71及びGaN層72の膜厚のみが異なっている。
【0063】
図4に示すように、AlGaN層71の膜厚は、1nm(4原子層)、0.5nm(2原子層)、0.25nm(1原子層)と、薄くなればなるほど動作電圧が低くなっていくことが分かる。特に、AlGaN層71の膜厚を0.5nm(2原子層)及び0.25nm(1原子層)にして、これまので技術常識であった2nm(8原子層)よりもさらに薄い1nm(4原子層)を大きく下回るようにしたとしても、動作電圧が低くなることが分かった。
【0064】
これは、AlGaN層71の膜厚が小さくなるにしたがって、AlGaN層71とGaN層72とのヘテロ界面で生成したキャリア(正孔)が、障壁層となるAlGaN層71をトンネル効果で通り抜けて縦方向を移動した結果、p側クラッド層70の縦方向の抵抗が小さくなったからであると考えられる。
【0065】
図5は、実施例1、3、4、5及び比較例2の各半導体レーザ素子1における動作電圧VfとAlGaN層71のAl組成との関係を示している。つまり、動作電圧VfのAlGaN層71のAl組成依存性を示している。なお、図5でも、電流密度が4.78kA/cmのときの動作電圧Vfを示している。
【0066】
図5において、実施例1と実施例3とを比較して分かるように、AlGaN層71のAl組成もAlGaN層71及びGaN層72の各々の膜厚も変えずに、GaN層72をドープ層にしたままでAlGaN層71をドープ層からアンドープ層に変更してp側クラッド層70を変調ドープにすることで、動作電圧を小さくできることが分かる。つまり、AlGaN層71及びGaN層72をいずれもドープ層とした場合(実施例1)と比べて、AlGaN層71をアンドープ層とし且つGaN層72をドープ層とした場合(実施例3)の方がp側クラッド層70の抵抗を小さくできることが分かる。
【0067】
また、比較例2と実施例5とを比較して分かるように、AlGaN層71のAl組成を変えずに、AlGaN層71をアンドープ層のままで且つGaN層72もドープ層のままでAlGaN層71及びGaN層72の膜厚を薄くすることで、動作電圧を小さくできることが分かる。つまり、AlGaN層71及びGaN層72の膜厚が厚い場合(比較例2)よりも、AlGaN層71及びGaN層72の膜厚が薄い場合(実施例5)の方がp側クラッド層70の抵抗を小さくできることが分かる。
【0068】
また、図5において、実施例3~5は、いずれもAlGaN層71が膜厚0.25nmのun-AlGaNによって構成されている。つまり、実施例3~5に関して破線で示される図5の曲線は、AlGaN層71がun-AlGaN(膜厚0.25nm)における動作電圧VfのAl組成依存性の傾向を示している。
【0069】
図5の破線で示される曲線(実施例3~5)から分かるように、AlGaN層71は、Al組成が12%のときに最も動作電圧が小さくなる。また、AlGaN層71のAl組成が少なくとも5%~25%であれば、比較例2及び実施例1の場合よりも動作電圧が小さくなることも分かる。なお、AlGaN層71のAl組成は、好ましくは10%~15%である。
【0070】
図6は、実施例4、6、7及び比較例2の各半導体レーザ素子1における電流電圧特性(I-V特性)を示している。図6において、実施例4、6、7は、互いにAlGaN層71のAl組成とAlGaN層71及びGaN層72の膜厚とが同じであり、AlGaN層71及びGaN層72における不純物のドープの有無のみが異なっている。
【0071】
図6において、実施例4、6、7と比較例2とを比較して分かるように、AlGaN層71及びGaN層72の膜厚を薄くすることで閾値電圧が低くなる。また、実施例4、6と実施例7とを比較して分かるように、p側クラッド層70を変調ドープにした場合(実施例4、6)は、p側クラッド層70を均一ドープにした場合(実施例7)と比べて、閾値電圧が低くなる。さらに、p側クラッド層70を変調ドープにした場合(実施例4、6)であっても、AlGaN層71をドープ層としGaN層72をアンドープ層とした場合(実施例6)の方が、GaN層72をドープ層としAlGaN層71をアンドープ層とした場合(実施例4)よりも閾値電圧を低くできることも分かった。
【0072】
以上の実験結果によれば、実施例1~実施例7の各半導体レーザ素子1のように、p側クラッド層70における複数のAlGaN層71の各々の膜厚は、2原子層以下であるとよい。つまり、超格子層であるp側クラッド層70におけるAlGaN層71の膜厚は、約0.5nm以下であるとよい。
【0073】
このように、p側クラッド層70におけるAlGaN層71の膜厚を2原子層(約0.5nm)以下にすることで、p側クラッド層70におけるAlGaN層71とGaN層72とのヘテロ界面で生成されたキャリア(正孔)が、障壁層となるAlGaN層71をトンネル効果で容易に通り抜けることができる。つまり、p側クラッド層70における正孔の縦方向の移動が容易になる。この結果、p側クラッド層70を超格子層とすることでp側クラッド層70の横方向(基板面内方向)の抵抗を効果的に低減することができるだけではなく、p側クラッド層70の縦方向の抵抗を低減することができる。これにより、半導体レーザ素子1の動作電圧を低くすることができるので、レーザ発振時の消費電力を低減することができる。
【0074】
また、実施例1、3~7の各半導体レーザ素子1のように、p側クラッド層70におけるAlGaN層71の膜厚は、1原子層以下(つまり約0.25nm以下)であるとよい。
【0075】
これにより、p側クラッド層70の縦方向の抵抗をさらに低減することができるので、図4及び図5に示すように、半導体レーザ素子1の動作電圧をさらに低くすることができる。なお、AlGaN層71の膜厚は、実施例2のように、1原子層よりも厚く2原子層以下(つまり約0.25nm超0.5nm以下)であってもよい。
【0076】
また、本実施の形態において、AlGaN層71の膜厚は、2原子層以下であるが、GaN層72の膜厚は、2原子層以下にする必要はない。GaN層72の膜厚は、AlGaN層71の膜厚よりも厚くても薄くてもよいが、AlGaN層71の膜厚よりも厚い方がよい。つまり、AlGaN層71の膜厚とGaN層72の膜厚とは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、AlGaN層71の膜厚は、GaN層72の膜厚以下であるとよい。より好ましくは、AlGaN層71の膜厚は、GaN層72の膜厚未満であるとよい。これにより、p側クラッド層70の縦方向の抵抗を効果的に低減することができる。
【0077】
また、上記のように、p側クラッド層70は、変調ドープのp型クラッド層であるとよい。つまり、p側クラッド層70において、AlGaN層71及びGaN層72の一方には、不純物がドープされておらず、AlGaN層71及びGaN層72の他方には、不純物がドープされているとよい。
【0078】
これにより、p側クラッド層70の縦方向の抵抗を一層低減することができる。このことは、図6で説明した実験結果のとおりであるが、この効果の原理を考察したので、この点について、図7を用いて説明する。図7は、AlGaN層71及びGaN層72が繰り返して積層された構造のp側クラッド層70について、p側クラッド層70が均一ドープである場合(図7の左側)とp側クラッド層70が変調ドープである場合(図7の右側)とのそれぞれにおける伝導帯(Ec)と価電子帯(Ev)とを示す図である。
【0079】
図7に示すように、p側クラッド層70が変調ドープである場合は、p側クラッド層70が均一ドープである場合と比べて、キャリア(正孔)の障壁となるAlGaN層71での伝導帯及び価電子帯の傾斜が急峻になる。この結果、AlGaN層71の障壁が実効的に薄くなる。この結果、AlGaN層71とGaN層72とのヘテロ界面で生成したキャリア(正孔)は、p側クラッド層70が変調ドープである場合の方がp側クラッド層70が均一ドープである場合よりも、障壁となるAlGaN層71をトンネル効果で通り抜けやすくなる。これにより、正孔は、p側クラッド層70の縦方向における移動が容易になる。したがって、p側クラッド層70の縦方向の抵抗を一層低減することができる。
【0080】
なお、p側クラッド層70を変調ドープにする場合、実施例4のように、GaN層72のみに不純物をドープし、AlGaN層71に不純物をドープしない構成とするのではなく、実施例6のように、AlGaN層71のみに不純物をドープし、GaN層72に不純物をドープしない構成にするがよい。
【0081】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る半導体レーザ素子1Aについて、図8を用いて説明する。図8は、実施の形態2に係る半導体レーザ素子1Aにおけるp型クラッド層70Aの層構造を示す断面図である。
【0082】
本実施の形態に係る半導体レーザ素子1Aは、上記実施の形態1に係る半導体レーザ素子1と同様に、n側クラッド層20と、n側クラッド層20の上方に位置する活性層40と、活性層40の上方に位置するp側クラッド層70Aとを備えており、p側クラッド層70Aは、図8に示すように、AlGaN層71AとGaN層72Aとが複数繰り返して積層された積層構造を有する。
【0083】
本実施の形態における半導体レーザ素子1Aが上記実施の形態1における半導体レーザ素子1と異なる点は、p側クラッド層70Aの構成である。具体的には、上記実施の形態1における半導体レーザ素子1では、p側クラッド層70における複数のAlGaN層71の各々が横方向に分断されることなく連続して形成されていたのに対して、本実施の形態における半導体レーザ素子1Aでは、図8に示すように、p側クラッド層70Aにおける複数のAlGaN層71Aの各々が横方向に不連続に形成されている。つまり、本実施の形態では、p側クラッド層70の積層構造の断面において、複数のAlGaN層71Aの各々が分断しており、各層において、AlGaN層71Aが横方向に複数に分割されている。したがって、各AlGaN層71Aには途切れた箇所が1つ又は複数存在している。
【0084】
このように横方向に分断されたAlGaN層71Aは、MOCVD装置にてウエハ(基板10)を回転させながらAlGaN層71Aを成膜する際に、アルミニウムを含む原料を断続的にMOCVD装置内に供給することで形成することができる。例えば、10rpmでウエハを回転させながらAlGaN層71Aを成膜する場合、MOCVD装置内へのアルミニウムを含む原料の供給と供給停止とを1秒又は2秒間隔で行うことによって、図8に示されるように、各層で横方向に複数に分断されたAlGaN層71Aを形成することができる。なお、p側クラッド層70A以外の構成は、上記実施の形態1と同様である。
【0085】
このように、本実施の形態に係る半導体レーザ素子1Aでは、p側クラッド層70Aの積層構造の断面において、複数のAlGaN層71Aの各々が分断している。
【0086】
この構成により、p側クラッド層70AにおけるAlGaN層71AとGaN層72Aとのヘテロ界面で生成されたキャリア(正孔)は、Al組成が高いところに溜まってAl組成が低いAlGaN層71Aの途切れた部分を通って縦方向に移動することができる。この結果、仮にAlGaN層71Aが分断されていない半導体レーザ素子と比べて、p側クラッド層70Aの縦方向の抵抗を低減することができる。つまり、本実施の形態に係る半導体レーザ素子1Aでも、上記実施の形態1に係る半導体レーザ素子1と同様に、p側クラッド層70Aの横方向(基板面内方向)の抵抗を低減することができるだけではなく、p側クラッド層70Aの縦方向の抵抗を低減することができる。これにより、半導体レーザ素子1Aの動作電圧を低くすることができるので、レーザ発振時の消費電力を低減することができる。
【0087】
なお、本実施の形態において、p側クラッド層70Aにおける各AlGaN層71Aの膜厚は、2原子層(約0.5nm)よりも厚くてもよいが、上記実施の形態1と同様に、各AlGaN層71Aの膜厚は、2原子層以下であることが好ましく、1原子層以下であることがよい好ましい。
【0088】
このように、p側クラッド層70Aにおいて、各AlGaN層71Aが分断されているとともに、各AlGaN層71Aの膜厚が2原子層以下にすることで、p側クラッド層70Aの縦方向の抵抗をさらに低減することができる。これにより、半導体レーザ素子1Aの動作電圧をさらに低くすることができる。
【0089】
(変形例)
以上、本開示に係る半導体レーザ素子について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0090】
例えば、上記実施の形態1、2では、紫外から青色までの波長帯をカバーするGaN系窒化物半導体レーザ素子について説明したが、これに限るものではない。本開示の技術は、他の波長帯の半導体レーザ素子に適用してもよい。
【0091】
なお、その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示に係る半導体レーザ素子は、光ディスク、ディスプレイ、車載ヘッドランプ、照明又はレーザ加工装置等の様々な分野の製品の光源として有用である。
【符号の説明】
【0093】
1、1A 半導体レーザ素子
10 基板
20 n側クラッド層
30 n側光ガイド層
40 活性層
41 量子井戸層
42 量子障壁層
50 p側光ガイド層
60 オーバーフロー抑制層
70、70A p側クラッド層
70a リッジ部
70b 平坦部
71、71A AlGaN層
72、72A GaN層
80 コンタクト層
90 p側電極
100 パッド電極
110 n側電極
120 絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8