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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電子体温計
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20240701BHJP
【FI】
G01K13/20 361P
G01K13/20 341G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020137096
(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公開番号】P2022032844
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504384561
【氏名又は名称】有限会社ナオトフカサワデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 勝
(72)【発明者】
【氏名】園田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】深澤 直人
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体のモーションを検出するモーションセンサと、
被測定者の検温の処理を実行する制御部と、
を備える電子体温計であって、
前記制御部は、
当該電子体温計の電源がオフの状態において、前記電子体温計を変位させる第1モーションを前記モーションセンサが検出した場合、当該電子体温計の電源をオンの状態にするとともに、当該電子体温計を前記被測定者の検温が可能な待機状態にし、
当該電子体温計の電源がオンであり、且つ、前記待機状態でない状態において、前記被測定者の腋に接触される測定部と反対側の端部が把持されて、前記測定部側を大きく変位させるように振る第2モーションを前記モーションセンサが検出した場合、当該電子体温計を前記待機状態にする、
電子体温計。
【請求項2】
前記第1モーションは、前記電子体温計の合成加速度の絶対値が1.2g以上であるモーションと、前記電子体温計の合成加速度の向きが1秒以内に45度以上変化するモーションとの少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記第2モーションは、前記電子体温計の合成加速度の絶対値が2.0g以上となるピークを1秒間以内に2回以上含むモーションを含む、請求項1又は2に記載の電子体温計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定者の体温を検温する電子体温計が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-156206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子体温計には、例えば特許文献1に記載されているスイッチ12のように、被測定者等が操作を行うための操作ボタンが設けられている。電子体温計は、通常腋に挟んで使用されるため、小型化されることが望ましい。電子体温計を小型化すると、操作ボタンも小さくならざるを得ない。しかしながら、操作ボタンが小さくなると、被測定者等は、操作ボタンを操作しにくくなる。
【0005】
本開示は、操作ボタンを有さずに検温のための操作を受付可能な電子体温計及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての電子体温計は、筐体と、前記筐体のモーションを検出するモーションセンサと、被測定者の検温の処理を実行する制御部と、を備える電子体温計であって、前記制御部は、前記モーションセンサにおいて、特定のモーションを検出した場合、当該電子体温計を、前記被測定者の検温が可能な待機状態にする。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記特定のモーションは、前記被測定者の腋に接触される測定部と反対側の端部が把持されて、前記エンドキャップ側を大きく変位させるように振られた場合のモーションである。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記モーションセンサは、加速度センサであり、前記制御部は、前記加速度センサで検出されるモーションの合成加速度の絶対値が2.0g以上となるピークを1秒間以内に2回以上検出した場合に、前記特定のモーションを検出したと判定する。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、当該電子体温計の電源がオフの状態で、前記モーションセンサにおいて、特定のモーションを検出した場合、当該電子体温計の電源をオンの状態にし、且つ、当該電子体温計を前記待機状態にする。
【0010】
本開示の第2の態様としての情報処理方法は、筐体と、前記筐体のモーションを検出するモーションセンサと、を備える電子体温計が実行する情報処理方法であって、前記モーションセンサにおいて、特定のモーションが検出されたか否かを判定するステップと、前記特定のモーションが検出されたと判定した場合に、前記電子体温計を、被測定者の検温が可能な待機状態にするステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、操作ボタンを有さずに検温のための操作を受付可能な電子体温計及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る電子体温計を、表示部と反対側から見た外観斜視図である。
図2図1に例示される電子体温計を表示部側から見た外観斜視図である。
図3図1に例示される電子体温計の概略構成を示す機能ブロック図である。
図4図3の制御部が実行する検温の処理の一例を示すフローチャートである。
図5図1の電子体温計がケースとともに用いられる場合における、制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る電子体温計及び情報処理方法の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
図1及び図2に示されるように、一実施形態に係る電子体温計1は、本体ハウジング2と、尾部ハウジング3と、エンドキャップ4と、内部構造8とを備える。本体ハウジング2と、尾部ハウジング3と、エンドキャップ4とは、筐体と総称される。筐体は、内部構造8を収容する。
【0015】
図3は、図1に例示される電子体温計1の概略構成を示す機能ブロック図であり、内部構造8に含まれる機能ブロックを示すものである。図3に示すように、電子体温計1は、制御部11と、記憶部12と、温度計測部13と、モーションセンサ14と、報知部15と、表示部16と、を備える。電子体温計1が備える各機能ブロックには、筐体内に設けられた、図示しないバッテリから電力が供給される。
【0016】
本明細書において、図1及び図2に示すように、電子体温計1の長軸方向をZ軸方向とする。Z軸の正の方向は電子体温計1の先端方向(すなわちエンドキャップ4側の方向)であり、Z軸の負の方向は尾部ハウジング3側の方向を指す。本明細書において、電子体温計1の厚み方向をY軸方向とする。Y軸の正の方向は、後述する表示領域6を有する方向である。本明細書において、電子体温計1の長軸方向(Z軸方向)及び厚み方向(Y軸方向)に直交する方向をX軸方向とする。X軸方向は、本体ハウジング2の幅方向となる。
【0017】
本体ハウジング2は、例えば、ブチレン・スチレン樹脂等の、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂で構成されてよい。尾部ハウジング3は、例えば、ハイインパクトスチロール樹脂等の、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂で構成されてよい。本体ハウジング2は、エンドキャップ4と反対側に開口部を有し、尾部ハウジング3によって封止される。尾部ハウジング3は、超音波融着又は接着剤等により、本体ハウジング2に取り付けられる。なお、尾部ハウジング3は、締結部材により本体ハウジング2に取り付けられてもよい。この場合、締結部材は、ボルト又はビス等の螺合部材であってよい。ただし、本体ハウジング2はこの構成に限られない。例えば、本体ハウジング2をZ方向に2分割して(すなわち、後述の表示領域6側と、表示領域6側の反対の底面側)、それらを上下方向に融着することで形成してもよい。この場合、尾部ハウジング3は、本体ハウジング2の形成時に同時に成形される。
【0018】
エンドキャップ4は、エンドキャップ4の内部に配置された温度計測部13を保護する。温度計測部13は、エンドキャップ4の温度を検出する。エンドキャップ4は、温度計測部13に対して被測定者の体温が伝導しやすいように、例えばステンレス等の金属部材に被覆された態様で構成される。エンドキャップ4は、被測定者が電子体温計1を腋に挟んで体温を測定する場合に、被測定者の腋下に接触する部材である。
【0019】
本体ハウジング2は、内部構造8に含まれる表示部16が筐体外から見えるようにするための表示領域6を有している。表示領域6は、所定の透過率で光を透過する熱可塑性樹脂で構成されてよい。所定の透過率は、表示部16が筐体外から見えるように適宜決定されてよい。表示領域6は、高い液密性を有するように、本体ハウジング2と二色成形されてよい。表示領域6は、本体ハウジング2と別体として成形され、本体ハウジング2に接着又は溶着等によって取り付けられてもよい。
【0020】
電子体温計1は、温度計測部13で検出した温度に基づいて、被検者の検温を行う。具体的には、電子体温計1は、温度計測部13で検出した温度に基づいて、被測定者の体温を算出する。電子体温計1は、被測定者の体温の算出が完了した場合、報知部15から、体温の算出の完了を被測定者等に報知する。電子体温計1は、体温の算出結果(つまり検温の結果)を表示部16に表示する。
【0021】
なお、本明細書において、被測定者は、電子体温計1を用いて体温を測定する対象となる者であり、被測定者等は、被測定者の他、被測定者による体温の測定を補助する者等を含む。例えば、被測定者等には、被測定者の家族や医療従事者等が含まれる。
【0022】
再び図3を参照すると、制御部11は、電子体温計1の各機能部をはじめとして、電子体温計1の全体を制御及び管理する。制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成される。制御部11は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成される。このようなプログラムは、記憶部12又は電子体温計1の外部の記憶媒体に記憶されている。
【0023】
本実施形態において、制御部11は、モーションセンサ14で検出される電子体温計1のモーションと、温度計測部13で検出される温度と、に基づいて、被測定者の検温の処理を実行する。被測定者の検温は、被測定者の体温を測定することである。制御部11が実行する検温の処理の詳細については、後述する。
【0024】
記憶部12は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成することができる。記憶部12は、例えば、各種情報、及び電子体温計1を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部12は、ワークメモリとしても機能してもよい。
【0025】
温度計測部13は、エンドキャップ4の温度を検出する。温度計測部13は、温度を検出する温度センサを含んで構成される。温度計測部13は、公知の電子温度計における温度計測部と同様の構成を有していてよい。温度計測部13は、検出した温度の情報を制御部11に出力可能に構成されている。
【0026】
モーションセンサ14は、電子体温計1の筐体のモーション(動き)を検出する。モーションセンサ14は、電子体温計1のモーションを検出可能な任意のセンサにより構成されていてよい。例えば、モーションセンサ14は、電子体温計1の加速度を検出可能な加速度センサにより構成されていてよい。あるいは、モーションセンサ14は、例えば、電子体温計1の角速度を検出可能な角速度センサにより構成されていてもよい。モーションセンサ14は、加速度センサと角速度センサとの双方を含んで構成されていてもよい。加速度センサ又は角速度センサは、それぞれ1軸から3軸の任意の検出軸数を有していてもよい。ただし、3軸である方が、より正確に電子体温計1のモーションを検出可能である。本実施形態では、モーションセンサ14が3軸の加速度センサにより構成されているとして、以下説明する。
【0027】
モーションセンサ14は、電子体温計1の電源がオンの状態であるかオフの状態であるかにかかわらず、電子体温計1のモーションを検出する。モーションセンサ14は、検出したモーションの情報を制御部11に出力可能に構成されている。
【0028】
報知部15は、被測定者等に情報を報知する。報知部15は、音、振動又は画像等により情報を報知可能である。報知部15は、例えばスピーカを含んで構成され、音により情報を報知してよい。報知部15は、例えば振動子を含んで構成され、振動により情報を報知してもよい。表示部16が報知部15としても機能し、画像を表示したり、発光したりすることにより情報を報知してもよい。報知部15は、例えば、現在の電子体温計1のステータスや、検温の結果等を報知する。電子体温計1のステータスは、検温の処理における電子体温計1の状態を示すものであり、例えば、電源オフ、検温待ち(待機)、検温中、検温終了等の状態を含む。電源オフは、電子体温計1の電源が入っていない状態である。待機状態(すなわち検温待ちの状態)は、電子体温計1の電源が入っており、被測定者の検温開始が可能な状態である。検温中は、被測定者の検温を実行している状態である。検温終了は、被測定者の検温が終了した状態であり、例えば検温結果を表示している状態である。
【0029】
表示部16は、制御部11による制御に基づき、各種情報を表示する。表示部16は、情報を表示可能な表示デバイスを含んで構成されている。表示デバイスは、外部光を吸収又は反射することで表示を行うデバイスでも、自発光するデバイスでもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等とすることができる。
【0030】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る電子体温計1の制御部11が実行する検温の処理の詳細について説明する。図4は、制御部11が実行する検温の処理の一例を示すフローチャートである。図4の開始時点において、電子体温計1は、電源がオフの状態である。
【0031】
モーションセンサ14は、電子体温計1のモーションを検出し、検出したモーションの情報を制御部11に送信する。制御部11は、モーションセンサ14において、第1のモーションを検出したか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、制御部11は、モーションセンサ14から取得したモーションの情報が、第1のモーションの条件を満たすか否かを判定する。第1のモーションは、電子体温計1の形状及び仕様等に基づき、適宜定めることができる。
【0032】
例えば、第1のモーションは、変位とすることができる。この場合、電子体温計1が変位した(動かされた)場合、つまり静止状態でなくなった場合、制御部11は第1のモーションを検出したと判定する。この場合、後述するステップS2及びステップS3により、電子体温計1の電源がオンとなり、検温待ちの状態(待機状態)となる。電子体温計1の電源がオンの状態になったとき、又は、電子体温計1が検温待ちの状態になったとき、制御部11は、表示部16の表示をオンの状態にしてもよいし、報知部15から音や振動を発するようにしてもよい。すなわち、制御部11が第1のモーションを検出したと判定した場合に、制御部11は、報知部15や、表示部16を動作させることで、第1のモーションを検出したことを被測定者に報知できる。例えば、被測定者等が、電子体温計1を用いて検温を行おうとして、電子体温計1を手に取る。このときに電子体温計1に与えられるモーションにより、電子体温計1が待機状態となる。このとき、電子体温計1からの音や振動、発光によって、被測定者等は、電子体温計1が待機状態になったことを認識できる。これにより、被測定者等が電子体温計1に対して何らの入力操作をしなくとも、検温することができる。さらには、電子体温計1の収容ケース等にスイッチ機構を別途設ける必要がない。
【0033】
他の例では、第1のモーションは、特定のモーションとすることができる。具体的には、例えば、第1のモーションは、水銀体温計を検温可能な状態とするために振った場合のモーションと同様のモーションとすることができる。水銀体温計では、検温可能な状態とするために、腋に接触させる検温部と反対側の端部を把持して、検温部側を大きく変位させるように振ることにより、水銀体温計内部の水銀を検温部側に移動させる動作が行われていた。第1のモーションは、このような水銀体温計に対して行われていたモーションと同様のモーションとすることができる。より具体的には、モーションセンサ14は、電子体温計1の一端側を中心にして、他端側を略回転運動させたときに、回転方向への角加速度、遠心加速度の少なくともいずれかを検知する。あるいは、電子体温計1の一端側と他端側とにかかる加速度の差を検出できる。このモーションを、以下、本明細書において、単に「初期化モーション」と称する。電子体温計1で初期化モーションを行う場合、被測定者等は、エンドキャップ4と反対側の端部(つまり尾部ハウジング3側)を手で把持し、エンドキャップ4側を大きく素早く変位させる。
【0034】
この場合、制御部11は、モーションセンサ14から取得したモーションの情報が、初期化モーションの条件を満たす場合に、第1のモーションを検出したと判定する。初期化モーションの条件は、水銀体温計内部の水銀を検温部側に移動させるための動作が行われたことを検出可能な条件として設定される。この初期化モーションは、水銀体温計内部の水銀を検温部側に移動させるための素早いモーションである。そこで、初期化モーションの条件は、例えば、モーションセンサ14が加速度センサの場合、モーションセンサ14で検出されるモーションの合成加速度の絶対値が2.0g以上となるピークを1秒間以内に2回以上検出すること、のように定めることができる。なお、ここで「g」は、重力加速度を意味する。また、合成加速度は、加速度センサが3軸の場合は、3軸の合成加速度であり、加速度センサが1軸の場合は、当該1軸の加速度である。この場合、制御部11は、初期化モーションの条件が満たされた場合に、第1のモーションを検出したと判定する。この場合、後述するステップS2及びステップS3により、電子体温計1の電源がオンとなり、待機状態となる。そのため、例えば被測定者等は、電子体温計1を用いて検温を行う場合に、従来水銀体温計を検温可能な状態とするために行ってきた動作と同様の動作を行うことにより、電子体温計1に対して何らの入力操作をしなくとも、電子体温計1が待機状態となり、速やかに検温をすることができる。また、この場合、制御部11は、初期化モーションの条件が満たされた場合に、待機状態となるため、例えば、初期化モーションの条件が満たされない他のモーションを検出しても、待機状態とならない。そのため、電子体温計1に何らかのモーションがあったとしても、被測定者等が意図せず電源がオンの状態となることがない。
【0035】
ここでは、初期化モーションの条件として、モーションセンサ14が加速度センサの場合の例について説明したが、モーションセンサ14が角速度センサの場合も、上述の例で説明した条件を適宜角速度センサの例に置き換えて設定することができる。
【0036】
本実施形態では、第1のモーションは、変位であるとする。つまり、本実施形態では、電子体温計1が静止状態でなくなった場合に、制御部11は、第1のモーションを検出したと判定する。
【0037】
制御部11は、モーションセンサ14において、第1のモーションを検出していないと判定した場合(ステップS1のNo)、第1のモーションを検出したと判定するまで、ステップS1を繰り返す。
【0038】
制御部11は、モーションセンサ14において、第1のモーションを検出したと判定した場合(ステップS1のYes)、電子体温計1の電源をオンの状態にする(ステップS2)。
【0039】
そして、制御部11は、電子体温計1を待機状態にする(ステップS3)。
【0040】
電子体温計1は、待機状態になると、所定の条件が満たされた場合に検温を開始する。検温を開始するための所定の条件、及び、検温の方法については、従来公知の電子体温計1と同様であってよい。
【0041】
例えば、制御部11は、エンドキャップ4の温度上昇を検出したか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御部11は、温度計測部13から取得した温度が上昇しているか否かを判定する。制御部11は、例えば温度計測部13から取得した温度が、予め設定された所定温度以上上昇した場合に、温度上昇を検出したと判定することができる。
【0042】
制御部11は、エンドキャップ4の温度上昇を検出していないと判定した場合(ステップS4のNo)、電子体温計1が待機状態となってから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。一定時間は、任意に設定されてよく、例えば1分間等とすることができる。
【0043】
制御部11は、一定時間が経過していないと判定した場合(ステップS5のNo)、ステップS4に移行する。
【0044】
制御部11は、一定時間が経過したと判定した場合(ステップS5のYes)、電子体温計1の電源をオフにする(ステップS16)。そして、このフローを終了する。これにより、被測定者等が検温を使用としていない場合に、自動的に電源をオフにすることができ、不要な電力消費を抑えることができる。
【0045】
制御部11は、ステップS4において、エンドキャップ4の温度上昇を検出したと判定した場合(ステップS4のYes)、検温を開始する(ステップS6)。エンドキャップ4の温度上昇を検出した場合、被測定者が、電子体温計1を腋に挟んで検温を開始したと推定されるためである。ステップS6において検温を開始することにより、電子体温計1は、検温中の状態となる。
【0046】
制御部11は、検温中に、エラーを検出したか否かを判定する(ステップS7)。エラーは、適切に検温ができない状態である。具体的には、エラーは、例えばエンドキャップ4の温度が下降していることであってよい。この場合、制御部11は、温度計測部13から取得した温度が下降している場合に、エラーを検出したと判定する。温度の下降が検出された場合、被測定者が、電子体温計1を適切に腋に挟めていないことが推定されるため、正しい検温結果が得られない。
【0047】
制御部11は、エラーを検出したと判定した場合(ステップS7のYes)、検温を終了(中止)し、表示部16に検温結果を表示する(ステップS9)。この場合、検温結果として、適切に検温ができなかったことを示すエラー情報が表示される。なお、この場合、制御部11は、報知部15から、検温が中止されたことを、被測定者に報知してよい。例えば、制御部11は、音や振動により、検温が中止されたことを報知することができる。報知により、被測定者は、検温が中止されたことを認識することができる。また、この場合、電子体温計1は、検温終了の状態となる。
【0048】
制御部11は、エラーを検出していないと判定した場合(ステップS7のNo)、検温が終了したか否かを判定する(ステップS8)。検温が終了したか否かの判定基準は、予測の検温を行うか、実測の検温を行うかに応じて、適宜定めることができる。予測の検温とは、温度上昇のタイムコースと所定の算出式に基づき、数秒から90秒の間に体温を算出する体温測定方法である。実測の検温とは、被測定者の測定部位と測定部(ここではエンドキャップ4部)とが平衡状態になったときの温度を被測定者の体温として決定する測定方法で、通常、腋に測定部を所定時間挟んで測定する。予測の検温が行われる場合、制御部11は、被測定者の体温の予測が成立した場合に、検温が終了したと判定できる。被測定者の体温の予測が成立した場合とは、被測定者の体温を所定以上の精度で予測できたと判定した場合をいい、具体的には、従来公知の予測検温の方法を用いることができる。実測の検温が行われる場合、制御部11は、検温開始から所定時間(例えば10分)が経過した場合、又は、温度計測部13から取得した温度が一定時間変化せず、平衡に達したと判定した場合に、検温が終了したと判定できる。
【0049】
制御部11は、検温が終了していないと判定した場合(ステップS8のNo)、ステップS7に移行する。
【0050】
制御部11は、検温が終了したと判定した場合(ステップS8のYes)、検温を終了し、表示部16に検温結果を表示する(ステップS9)。検温結果の表示により、被測定者等は、検温結果を知ることができる。なお、検温が終了したと判定した場合(ステップS8のYes)、制御部11は、報知部15から、検温が終了したことを、被測定者に報知してよい。例えば、制御部11は、音や振動により、検温が終了したことを報知することができる。報知により、被測定者は、検温が終了したことを認識することができる。また、この場合、電子体温計1は、検温終了の状態となる。
【0051】
次に、制御部11は、モーションセンサ14において、第2のモーションを検出したか否かを判定する(ステップS10)。第2のモーションは、被測定者等が、電子体温計1を用いて検温を開始しようとしていることが認識可能なモーションであり、電子体温計1の形状及び仕様等に基づき、適宜定めることができる。例えば、第2のモーションは、初期化モーションとすることができる。ただし、第2のモーションは、初期化モーションに限られず、他のモーションとすることができる。第2のモーションは、第1のモーションと同一のモーションとしてもよく、第1のモーションと異なるモーションとしてもよい。
【0052】
制御部11は、モーションセンサ14において、第2のモーションを検出したと判定した場合(ステップS10のYes)、電子体温計1を待機状態にする(ステップS3)。この場合、被測定者が、電子体温計1を腋に挟むことによってエンドキャップ4の温度上昇が検出されると(ステップS4のYes)、検温が開始される(ステップS6)。
【0053】
制御部11は、モーションセンサ14において、第2のモーションを検出していないと判定した場合(ステップS10のNo)、ステップS9で検温結果を表示してから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。一定時間は、任意に設定されてよく、例えば3分間等とすることができる。
【0054】
制御部11は、ステップS9で検温結果を表示してから一定時間が経過していないと判定した場合(ステップS11のNo)、ステップS10に移行する。
【0055】
制御部11は、ステップS9で検温結果を表示してから一定時間が経過したと判定した場合(ステップS11のYes)、表示部16の表示をオフにする(ステップS12)。すなわち、制御部11は、表示部16の表示画面を消灯させる。これにより、電子体温計1の電力消費を抑えることができる。
【0056】
そして、制御部11は、モーションセンサ14において、第3のモーションを検出したか否かを判定する(ステップS13)。第3のモーションは、被測定者等が、電子体温計1を継続して使用しようとしている可能性がある場合のモーションであり、電子体温計1の形状及び仕様等に基づき、適宜定めることができる。例えば、第3のモーションは、変位とすることができる。この場合、電子体温計1が変位した場合、つまり静止状態でなくなった場合、制御部11は第3のモーションを検出したと判定する。ただし、第3のモーションは、これに限られず、他のモーションとすることができる。第3のモーションは、第1のモーションと同一のモーションとしてもよく、第1のモーションと異なるモーションとしてもよい。
【0057】
制御部11は、モーションセンサ14において、第3のモーションを検出したと判定した場合(ステップS13のYes)、表示部16の表示をオンにする(ステップS14)。すなわち、制御部11は、表示部16の表示画面を点灯させる。この場合、制御部11は、ステップS10に移行する。
【0058】
制御部11は、モーションセンサ14において、第3のモーションを検出していないと判定した場合(ステップS13のNo)、ステップS12で表示画面の表示をオフにしてから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。一定時間は、任意に設定されてよく、例えば3分間等とすることができる。
【0059】
制御部11は、ステップS12で表示画面の表示をオフにしてから一定時間が経過していないと判定した場合(ステップS15のNo)、ステップS13に移行する。
【0060】
制御部11は、ステップS12で表示画面の表示をオフにしてから一定時間が経過したと判定した場合(ステップS15のYes)、電子体温計1の電源をオフにする(ステップS16)。そして、このフローを終了する。これにより、被測定者等が検温を使用としていない場合に、自動的に電源をオフにすることができ、不要な電力消費を抑えることができる。
【0061】
このように、本実施形態に係る電子体温計1によれば、制御部11が、上述した実施形態における第1のモーション及び第2のモーションのような特定のモーションを検出した場合、電子体温計1を、待機状態にする。そのため、電子体温計1に操作入力を行うための操作ボタンを設けなくても、被測定者等は、電子体温計1を待機状態にすることができる。このように、電子体温計1は、操作ボタンを有さずに検温のための操作を受付可能である。
【0062】
特に、特定のモーションを初期化モーションとした場合には、被測定者等は、電子体温計1に対して従来の水銀体温計と同様の動作を行うことにより、電子体温計1を待機状態にすることができる。そのため、水銀体温計の取り扱いに慣れている被測定者等にとって、馴染みのある動作で、所望の電子体温計1の状態を実現させることができる。
【0063】
上記実施形態において、制御部11は、第1のモーションと第2のモーションとを区別して検出してもよい。第1のモーションは、第2のモーションよりも緩やかな(つまり変化率が低い)変化として設定されていてもよい。例えば、第1のモーションは、机や台に静置した状態から、電子体温計1を持ち上げた場合の動きに相当するモーションとすることができる。この場合、第1のモーションは、例えば、合成加速度の絶対値が1.2g以上、または、合成加速度の向きが1秒以内に45度以上変化した場合に検出されるものとすることができる。一方、第2のモーションは、合成加速度の絶対値が2.0g以上となるピークを1秒以内に2回以上検出した場合に検出されるものとすることができる。第1のモーションと第2のモーションとを区別することで、電子体温計1に与えられる加速度や加速度の方向に応じて入力操作できるように設定してもよい。第1のモーションの継続時間は、第2のモーションの継続時間と同じまたは短い期間で検出されるように設定されるのが好ましい。
【0064】
また、本実施形態に係る電子体温計1の制御部11は、電源がオフの状態において、特定のモーションとしての第1のモーションを検出した場合、電子体温計1を、電源をオンの状態にするとともに、待機状態にする。これにより、電子体温計1に操作入力を行うための操作ボタンを設けなくても、電子体温計1の電源をオフの状態からオンの状態にすることができる。これにより、電子体温計1は、操作ボタンを有さずに検温のための操作を受付可能となる。
【0065】
なお、上記実施形態で説明した図4のフローでは、ステップS1において第1のモーションを検出した場合に、電源をオンの状態にし(ステップS2)、ステップS10において、第2のモーションを検出した場合に、電子体温計1を待機状態にし(ステップS3)、ステップS13において、第3のモーションを検出した場合に、表示部16の表示をオンにする(ステップS14)と説明した。しかしながら、制御部11は、これらのステップS1、S10及びS13以外のタイミングにおいても、モーションセンサ14で検出されたモーションに基づく処理を実行してよい。例えば、制御部11は、図4のフローの任意のタイミングで、モーションセンサ14において特定のモーションが検出された場合に、電子体温計1を待機状態にしてもよい。つまり、制御部11は、特定のモーションが検出された場合、どの処理段階にあっても、電子体温計1を待機状態にしてもよい。この場合における特定のモーションは、初期化モーションであることが好ましい。
【0066】
上述した電子体温計1は、電子体温計1を収納するケースとともに用いられるものであってもよい。この場合、電子体温計1を待機状態にするまでの処理が、上述した図4のフローと異なっていてもよい。
【0067】
図5は、電子体温計1がケースとともに用いられる場合における、制御部11が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図5の開始時点において、電子体温計1は、ケースに収容された状態であり、且つ、電源がオフの状態である。
【0068】
制御部11は、まず、電子体温計1がケースから取り出されたか否かを判定する(ステップS20)。制御部11は、多様な方法で、電子体温計1がケースから取り出されたか否かを判定できる。例えば、電子体温計1が、ケースに収容されている状態において、ケースから電子体温計1のバッテリに給電を受けることができるように構成されている場合、制御部11は、給電を受けている場合にケースに収容された状態であり、給電を受けていない場合にケースから取り出されたと判定することができる。制御部11は、これに限られず、他の公知の方法によっても、電子体温計1がケースから取り出されたか否かを判定できる。
【0069】
制御部11は、電子体温計1がケースから取り出されていないと判定した場合(ステップS20のNo)、電子体温計1がケースから取り出されたと判定するまで、ステップS20を繰り返す。
【0070】
制御部11は、電子体温計1がケースから取り出されたと判定した場合(ステップS20のYes)、電子体温計1の電源をオンの状態にする(ステップS2)。
【0071】
次に、制御部11は、モーションセンサ14において、第4のモーションを検出したか否かを判定する(ステップS1)。第4のモーションは、被測定者等が、電子体温計1を用いて検温を開始しようとしていることが認識可能なモーションであり、電子体温計1の形状及び仕様等に基づき、適宜定めることができる。例えば、第4のモーションは、初期化モーションとすることができる。ただし、第4のモーションは、初期化モーションに限られず、他のモーションとすることができる。例えば、第4のモーションとして、机や台に静置した状態から、電子体温計1を持ち上げた場合に相当する動きを検出させてもよい。この場合、合成加速度が1.2g以上、または、合成加速度の向きが1秒以内に45度以上変化した場合に、第4のモーションを検出するものとすることができる。
【0072】
制御部11は、モーションセンサ14において、第4のモーションを検出していないと判定した場合(ステップS21のNo)、電子体温計1の電源がオンの状態となってから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。一定時間は、任意に設定されてよく、例えば1分間等とすることができる。
【0073】
制御部11は、一定時間が経過していないと判定した場合(ステップS22のNo)、ステップS21に移行する。
【0074】
制御部11は、一定時間が経過したと判定した場合(ステップS22のYes)、図4のステップS16に移行する。この場合、制御部11は、電子体温計1の電源をオフにし、このフローを終了する。
【0075】
制御部11は、ステップS21において、第4のモーションを検出したと判定した場合(ステップS21のYes)、電子体温計1を待機状態にする(ステップS3)。この場合、制御部11は、図4のステップS4に移行し、図4のフローに従って、ステップS4以降の処理を実行する。
【0076】
このように、電子体温計1がケースとともに用いられる場合、電子体温計1がケースから取り出されたときに、被測定者等が電子体温計1を使用する意思があると考えられる。この場合に、電子体温計1の電源をオンにすることができる。このようにして、電子体温計1に操作入力を行うための操作ボタンを設けなくても、電子体温計1の電源をオフの状態からオンの状態にすることができる。
【0077】
本開示に係る電子体温計1は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電子体温計及び情報処理方法に関する。
【符号の説明】
【0079】
1:電子体温計
2:本体ハウジング
3:尾部ハウジング
4:エンドキャップ(測定部)
6:表示領域
8:内部構造
11:制御部
12:記憶部
13:温度計測部
14:モーションセンサ
15:報知部
16:表示部
図1
図2
図3
図4
図5