(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】吸気管加熱装置の製造方法および吸気管加熱装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020152912
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020069829
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
(72)【発明者】
【氏名】日置 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石井 正人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀任
(72)【発明者】
【氏名】山口 智広
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-114167(JP,A)
【文献】特開昭61-66632(JP,A)
【文献】特開2001-214995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂から形成された絶縁性フィルムの裏面に沿って延びるように金属材料から形成される電熱部を配置し、
ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む第2の樹脂から形成された支持部に対して前記電熱部が密着するように、前記電熱部を間に挟んで前記絶縁性フィルムを前記支持部に対して圧着し、
エンジンの吸気管内に前記絶縁性フィルムが露出するように前記支持部を前記吸気管に取り付ける吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項2】
前記電熱部にエポキシ系の接着剤を塗布し、前記接着剤が塗布された前記電熱部を間に挟んで前記支持部に前記絶縁性フィルムを圧着する請求項1に記載の吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項3】
前記電熱部を成型空間側に向けて前記絶縁性フィルムを金型内に配置し、
前記第2の樹脂を前記成型空間に注入することにより、前記支持部の表面に前記電熱部を間に挟んで前記絶縁性フィルムを圧着する請求項1または2に記載の吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項4】
前記電熱部は、所定の方向に延びる複数の延在部が前記所定の方向と交差する方向に並ぶように蛇行して配置され、
前記第2の樹脂は、前記所定の方向に沿って前記成型空間に注入される請求項3に記載の吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項5】
液状に形成された前記ポリイミド樹脂の前駆体を金属板の表面上に塗布し、前記ポリイミド樹脂の前駆体を硬化して前記金属板に前記絶縁性フィルムを接着した後、前記金属板を加工して前記絶縁性フィルムの裏面に沿って延びるように前記電熱部を形成する請求項1~4のいずれか一項に記載の吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイミド樹脂の前駆体は、ポリイミドワニスである請求項5に記載の吸気管加熱装置の製造方法。
【請求項7】
ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂から形成された絶縁性フィルムと、
前記絶縁性フィルムの裏面に沿って延びるように配置され、金属材料から形成されて通電により加熱する電熱部と、
ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む第2の樹脂から形成され、前記電熱部を密着させた状態で前記電熱部を間に挟んで前記絶縁性フィルムが接着されて、エンジンの吸気管内に前記絶縁性フィルムの表面が露出するように前記吸気管に取り付けられる支持部とを備える吸気管加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸気管加熱装置の製造方法および吸気管加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、溶液を加熱して溶液の混合度を向上させる加熱装置が提案されている。一般的に、加熱装置は、通電により加熱される電熱部が絶縁性フィルム内に配置され、この絶縁性フィルムが支持部に対して接着されている。このとき、絶縁性フィルムを支持部に対して容易に接着することが求められる。
【0003】
そこで、絶縁性フィルムを容易に接着する技術として、例えば、特許文献1には、暖房便座の製造に際して、成形品の裏面に発熱体を手作業で取り付ける手間を解消する暖房便座の製造方法が提案されている。この方法は、発熱体を覆う樹脂層が成形品に対して接着されるため、樹脂層を容易に接着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、発熱体を覆う樹脂層を成形品に対して直接的に接着するため、成形品に対して接着力の低い材料を樹脂層に用いることが困難であった。例えば、エンジンの吸気管に用いられるポリフェニレンサルファイド樹脂は、ポリイミド樹脂に対して接着力が低いため、吸気管を加熱する吸気管加熱装置において、支持部を吸気管に対応してポリフェニレンサルファイド樹脂で形成すると、ポリイミド樹脂を含む絶縁性フィルムを支持部に接着させることが困難となる。
【0006】
本開示は、ポリイミド樹脂を含む絶縁性フィルムが支持部に確実に接着した吸気管加熱装置の製造方法および吸気管加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る吸気管加熱装置の製造方法は、ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂から形成された絶縁性フィルムの裏面に沿って延びるように金属材料から形成される電熱部を配置し、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む第2の樹脂から形成された支持部に対して電熱部が密着するように、電熱部を間に挟んで絶縁性フィルムを支持部に対して圧着し、エンジンの吸気管内に絶縁性フィルムが露出するように支持部を吸気管に取り付けるものである。
【0008】
本開示に係る吸気管加熱装置は、ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂から形成された絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの裏面に沿って延びるように配置され、金属材料から形成されて通電により加熱する電熱部と、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む第2の樹脂から形成され、電熱部を密着させた状態で電熱部を間に挟んで絶縁性フィルムが接着されて、エンジンの吸気管内に絶縁性フィルムの表面が露出するように吸気管に取り付けられる支持部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ポリイミド樹脂を含む絶縁性フィルムを支持部に確実に接着させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る吸気管加熱装置を備えたエンジンの構成を示す図である。
【
図2】吸気管加熱装置の要部の構成を示す図である。
【
図4】絶縁性フィルムが金型内に配置された様子を示す図である。
【
図5】実施の形態2に係る加熱装置の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1に、本開示の実施の形態1に係る吸気管加熱装置を備えたエンジンの構成を示す。エンジンは、例えば、吸気工程、圧縮工程、膨張工程および排気工程の4つの工程を繰り返す、いわゆる4ストローク機関であり、シリンダー1aと、ピストン1bと、点火プラグ1cと、吸気バルブ1dと、排気バルブ1eと、吸気管2と、排気管3と、インジェクタ4と、吸気管加熱装置5とを有する。
【0013】
シリンダー1aは、内部に燃焼室Cが形成され、上部には吸気口P1および排気口P2が形成されている。
【0014】
ピストン1bは、シリンダー1aの燃焼室Cに配置され、燃焼室Cを往復運動する。ピストン1bは、上昇することで燃焼室C内の混合気を圧縮した後、点火プラグ1cにより混合気が燃焼され、その燃焼ガスの膨張により下降する。そして、ピストン1bは、再び上昇することで燃焼室Cから燃焼ガスを排気口P2から排出した後、下降して吸気口P1から燃焼室Cに混合気を吸入する。
【0015】
点火プラグ1cは、ピストン1bで圧縮された混合気に点火して燃焼させるもので、燃焼室Cの上部に配置されている。
【0016】
吸気バルブ1dは、吸気口P1に配置され、燃焼室Cに混合気を吸入するときに吸気口P1を開くように形成されている。
排気バルブ1eは、排気口P2に配置され、燃焼室Cから燃焼ガスを排出するときに排気バルブ1eを開くように形成されている。
【0017】
吸気管2は、シリンダー1aに向かって空気を導くもので、先端部がシリンダー1aの吸気口P1に接続され、その先端部近傍において空気と燃料が混合される。そして、吸気管2は、先端部近傍で混合された混合気をシリンダー1aの吸気口P1を介して燃焼室Cに導く。ここで、吸気管2は、ポリフェニレンサルファイド樹脂から形成されている。
【0018】
排気管3は、シリンダー1aの燃焼室Cから排出された燃焼ガスを外部に導くもので、シリンダー1aの排気口P2に接続されている。
インジェクタ4は、吸気管2に配置され、吸気管2の先端部近傍に向かって燃料を噴射する。
【0019】
なお、シリンダー1a、ピストン1b、吸気バルブ1d、排気バルブ1eおよび排気管3は、例えば、金属から形成することができる。
【0020】
吸気管加熱装置5は、絶縁性フィルム6と、電熱部7と、支持部8と、温度測定部9と、温度制御部10とを有する。
絶縁性フィルム6は、吸気管2の先端部近傍において吸気管2内に露出するように配置、すなわち空気と燃料が混合される部分に露出するように配置される。絶縁性フィルム6は、フィルム形状を有し、耐熱性、耐燃料性(燃料に対する耐性)および絶縁性を有するポリイミド樹脂から形成されている。
【0021】
電熱部7は、絶縁性フィルム6の裏面に沿って延びるように配置されている。電熱部7は、金属材料から形成されており、通電により加熱する。これにより、電熱部7は、絶縁性フィルム6の表面側、すなわち吸気管2において空気と燃料が混合される部分を加熱する。電熱部7は、例えば、銅などから構成することができる。
【0022】
支持部8は、絶縁性フィルム6および電熱部7を支持するもので、吸気管2内に絶縁性フィルム6が露出するように吸気管2に一体に固定されている。ここで、支持部8は、吸気管2と同様に、ポリフェニレンサルファイド樹脂から形成されている。すなわち、支持部8は、絶縁性フィルム6を構成するポリイミド樹脂との接着力が電熱部7を構成する金属材料より低い材料から形成されることになる。このため、支持部8は、電熱部7を間に挟んで電熱部7を密着させた状態で絶縁性フィルム6が接着されている。
【0023】
温度測定部9は、吸気管2内の温度を測定するもので、吸気管2内に露出するように配置されている。
温度制御部10は、温度測定部9で測定された吸気管2内の温度に基づいて、電熱部7への給電を制御して加熱温度を調節する。
【0024】
図2に示すように、支持部8は、吸気管2に沿って湾曲した形状を有し、その表面に沿って絶縁性フィルム6および電熱部7が配置されている。電熱部7は、所定の方向に延びる複数の延在部7aが所定の方向と直交する方向に並ぶように蛇行して配置されている。
【0025】
次に、吸気管加熱装置5の製造方法について説明する。
【0026】
まず、
図3に示すように、ポリイミド樹脂から形成された絶縁性フィルム6の裏面6aに沿って延びるように電熱部7を配置する。このとき、絶縁性フィルム6の裏面6a上に金属膜用の接着剤を塗布することにより、絶縁性フィルム6に対して電熱部7を接着することができる。
【0027】
このように、ポリイミド樹脂から絶縁性フィルム6を形成することにより、絶縁性フィルム6を平坦なフィルム形状に形成することができ、電熱部7を絶縁性フィルム6上に容易に配置することができる。
【0028】
ここで、電熱部7は、端子11aと端子11bの間を、絶縁性フィルム6の裏面6aに沿って延びるように配置される。具体的には、電熱部7は、所定の方向Xに延びる複数の延在部7aが所定の方向Xと直交する方向Yに等間隔で並ぶように蛇行して形成されている。
このように、電熱部7は、蛇行して形成されることにより、絶縁性フィルム6の全面に広がるように配置することができる。
【0029】
続いて、
図4に示すように、電熱部7を配置した絶縁性フィルム6が、金型12内に配置される。ここで、電熱部7および絶縁性フィルム6の裏面6a上に接着剤を塗布した状態で、絶縁性フィルム6が金型12内に配置される。
このとき、絶縁性フィルム6は、電熱部7を金型12の成型空間(キャビティ)Ca側に向けて金型12内に配置される。すなわち、絶縁性フィルム6は、表面6bが金型12に当接すると共に裏面6aが成型空間Ca側を向くように配置される。
【0030】
このようにして、絶縁性フィルム6が金型12内に配置されると、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rが金型12の流入口Fから成型空間Caに注入される。これにより、
図2に示すように、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rから構成された支持部8が成型されると同時に、支持部8の表面に電熱部7が密着するように電熱部7を間に挟んで絶縁性フィルム6がインサート成形で支持部8に圧着される。
【0031】
一般的に、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rは、ポリイミド樹脂に対する接着力が低く、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rから形成された支持部8に対して、ポリイミド樹脂から形成された絶縁性フィルム6を直接的に接着させることが困難であった。このため、絶縁性フィルム6は、例えば、両面テープなどの接着部材を介して支持部8に接着されていた。
【0032】
そこで、上記のように、支持部8に対して電熱部7が密着するように電熱部7を間に挟んで絶縁性フィルム6を支持部8に対して圧着させることにより、金属材料から形成された電熱部7を介して支持部8に絶縁性フィルム6を確実に接着することができる。
このように、両面テープなどの接着部材を介さずに、絶縁性フィルム6を支持部8に直接的に接着させるため、絶縁性フィルム6を平坦に形成することができる。また、絶縁性フィルム6をインサート成形で圧着するため、絶縁性フィルム6を支持部8に対して容易に接着させることができる。
【0033】
また、支持部8に対して電熱部7を間に挟んだ状態で絶縁性フィルム6を圧着することにより、電熱部7が支持部8内に入り込んだ状態で接着される。これにより、絶縁性フィルム6を支持部8に対して強固に接着させることができる。
【0034】
なお、電熱部7は、側方に突出する返し部を配置することもできる。ここで、返し部は、電熱部7から側方に突出していればよく、例えば電熱部7を粗面加工することで形成してもよい。これにより、返し部が支持部8に係合するため、絶縁性フィルム6を支持部8に対してより強固に接着させることができる。
【0035】
また、接着剤が塗布された電熱部7を間に挟んで支持部8に絶縁性フィルム6が圧着されるため、絶縁性フィルム6を支持部8に対して強固に接着させることができる。
【0036】
実際に、接着剤が塗布された電熱部7を間に挟んで、ポリイミド樹脂から構成された絶縁性フィルム6をポリフェニレンサルファイド樹脂Rから構成された支持部8に対してインサート成形で圧着した。その結果、絶縁性フィルム6が、電熱部7に接着剤を塗布しない場合と比較して、支持部8に対して強固に接着することがわかった。特に、エポキシ系の接着剤を塗布することにより、絶縁性フィルム6が、支持部8に対してより強固に接着された。
【0037】
ここで、金型12の流入口Fから成型空間Caに注入されるポリフェニレンサルファイド樹脂Rは、
図3に示すように、所定の方向Xに沿うように成型空間Caに注入されることが好ましい。これにより、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rは、複数の延在部7aに沿って注入されるため、電熱部7がポリフェニレンサルファイド樹脂Rの注入圧力で破損するのを抑制することができる。
【0038】
そして、絶縁性フィルム6が支持部8に接着されると、エンジンの吸気管2内に絶縁性フィルム6が露出するように支持部8を配置して、吸気管2に対して支持部8一体に固定する。例えば、支持部8は、再度、成型することにより、吸気管2に対して一体に固定することができる。
このようにして、吸気管加熱装置を製造することができる。
【0039】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0040】
まず、
図1に示すように、吸気管2からシリンダー1aに向かって空気が導かれる一方、吸気管2の先端部近傍に向かって、すなわち吸気管加熱装置5の絶縁性フィルム6の表面上に向かってインジェクタ4から燃料が噴射される。これにより、絶縁性フィルム6の表面上において空気と燃料が混合された混合気が形成され、その混合気が吸気口P1を介してシリンダー1aの燃焼室Cに流入する。そして、燃焼室Cに流入した混合気は、ピストン1bで圧縮された後、点火プラグ1cで燃焼されて、燃焼ガスとして排気口P2から排気管3に排出される。
【0041】
このとき、温度測定部9が、吸気管2内の温度を測定し、その温度情報を温度制御部10に順次出力する。温度制御部10は、温度測定部9で測定された温度情報に基づいて電熱部7に給電し、これにより電熱部7が加熱される。電熱部7は、例えば、約100度以上に加熱することができる。
【0042】
電熱部7の加熱により、絶縁性フィルム6の表面が加熱されるため、絶縁性フィルム6の表面に付着した燃料を加熱して気化させることがきる。これにより、絶縁性フィルム6の表面上において空気と燃料を確実に混合することができ、混合度の高い混合気を形成することができる。これにより、混合度の高い混合気がシリンダー1aの燃焼室Cに供給されるため、混合気を確実に燃焼させることができ、一酸化炭素などの有害物質の発生を抑制することができる。
このようにして、温度制御部10が、温度測定部9の温度情報に基づいて電熱部7の加熱温度を調節することにより、混合度の高い混合気をシリンダー1aの燃焼室Cに順次供給することができる。
【0043】
このとき、絶縁性フィルム6は、ポリイミド樹脂から構成されるため、吸気管2内の燃料から電熱部7を確実に保護することができる。また、支持部8は、ポリフェニレンサルファイド樹脂から構成されるため、絶縁性フィルム6および電熱部7を強固に支持することができる。
【0044】
また、絶縁性フィルム6は、金属材料から形成された電熱部7を支持部8に密着させた状態で支持部8に確実に接着されるため、燃料、エンジンオイル、凝縮水、排気再循環ガス成分などの流体の侵入を防ぎ、電熱部7を確実に保護することができる。
また、絶縁性フィルム6は、支持部8に対して平坦に配置されるため、電熱部7の熱を厚み方向に均一に伝導させることができ、燃料を効率的に加熱することができる。
【0045】
本実施の形態によれば、ポリイミド樹脂を含む樹脂から形成された絶縁性フィルム6が、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂から形成された支持部8に対して、金属材料から形成された電熱部7が密着するように電熱部7を間に挟んで支持部8に圧着される。このため、ポリイミド樹脂を含む絶縁性フィルム6を支持部8に対して確実に接着させることができる。
【0046】
(実施の形態2)
以下、本開示の実施の形態2について説明する。ここでは、上記の実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0047】
上記の実施の形態1では、電熱部7は、接着剤により絶縁性フィルム6の裏面6a上に接着されたが、絶縁性フィルム6の裏面6aに沿って延びるように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0048】
例えば、
図5(a)に示すように、液状に形成されたポリイミド樹脂の前駆体、例えばポリイミドワニス21を金属板22の表面上に塗布することができる。
【0049】
金属板22に塗布されたポリイミドワニス21は、
図5(b)に示すように、熱処理することによりイミド化して硬化されて、ポリイミド樹脂からなる絶縁性フィルム6が金属板22上に生成される。このとき、液状のポリイミドワニス21が金属板22の表面に密着した状態で硬化されるため、接着剤などを介さずに、金属板22の表面上に絶縁性フィルム6を直接的に接着させることができる。
【0050】
ここで、液状のポリイミドワニス21は、金属板22の表面上に凹凸部を形成した後に、金属板22の表面上に塗布することが好ましい。これにより、ポリイミドワニス21が金属板22の凹凸部の間に入り込んで、絶縁性フィルム6を金属板22の表面上に強固に接着させることができる。
【0051】
このようにして、金属板22に絶縁性フィルム6が接着されると、
図5(c)に示すように、金属板22が加工されて、絶縁性フィルム6の裏面6aに沿って延びるように電熱部7が形成される。例えば、電熱部7は、金属板22をエッチング加工することにより形成することができる。これにより、絶縁性フィルム6の裏面6aに直接的に接着させた状態で電熱部7を配置することができる。
【0052】
そして、実施の形態1と同様に、電熱部7が配置された絶縁性フィルム6を金型12内に配置して、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rが金型12内に注入される。これにより、ポリフェニレンサルファイド樹脂Rから構成された支持部8が、電熱部7を間に挟んで絶縁性フィルム6に圧着されることになる。
【0053】
このとき、絶縁性フィルム6と電熱部7は、接着剤などを介さずに直接的に接着されているため、金型12内に注入されるポリフェニレンサルファイド樹脂Rの熱などで接着力が低下することを抑制することができ、電熱部7の姿勢を維持しつつ絶縁性フィルム6を支持部8に強固に接着させることができる。
【0054】
また、絶縁性フィルム6と電熱部7が、直接的に接着されているため、製造された吸気管加熱装置を吸気管2に配置した場合に、吸気管2内の熱などで接着力が低下することを抑制することができる。
【0055】
本実施の形態によれば、液状に形成されたポリイミドワニス21を金属板22の表面上に塗布した後に、ポリイミドワニス21を硬化して金属板22に絶縁性フィルム6を接着させる。これにより、絶縁性フィルム6と電熱部7が、直接的に接着されるため、外部からの熱などで接着力が低下することを抑制することができる。
【0056】
なお、上記の実施の形態1および2では、電熱部7は、複数の延在部7aが所定の方向Xと直交する方向Yに並ぶように配置されたが、所定の方向Xと交差する方向に並ぶように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0057】
また、上記の実施の形態1および2では、絶縁性フィルム6は、ポリイミド樹脂から形成されたが、ポリイミド樹脂を含む樹脂から形成されていればよく、ポリイミド樹脂のみから形成されるものに限られるものではない。
また、上記の実施の形態1および2では、支持部8は、ポリフェニレンサルファイド樹脂から形成されたが、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂から形成されていればよく、ポリフェニレンサルファイド樹脂のみから形成されるものに限られるものではない。
【0058】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示に係る吸気管加熱装置の製造方法は、支持部と絶縁性フィルムの間に電熱部が配置された吸気管加熱装置の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1a シリンダー
1b ピストン
1c 点火プラグ
1d 吸気バルブ
1e 排気バルブ
2 吸気管
3 排気管
4 インジェクタ
5 吸気管加熱装置
6 絶縁性フィルム
6a 裏面
6b 表面
7 電熱部
7a 延在部
8 支持部
9 温度測定部
10 温度制御部
11a,11b 端子
12 金型
21 ポリイミドワニス
22 金属板
C 燃焼室
P1 吸気口
P2 排気口
X 方向
Y 方向
Ca 成型空間
F 流入口
R ポリフェニレンサルファイド樹脂