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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電極群、二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240701BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240701BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240701BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240701BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240701BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/485
H01M4/131
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020154463
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048578
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2022-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】草間 知枝
(72)【発明者】
【氏名】吉間 一臣
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169252(JP,A)
【文献】特開2013-152825(JP,A)
【文献】特開2002-164084(JP,A)
【文献】特開2010-135265(JP,A)
【文献】特開2007-265661(JP,A)
【文献】特表2015-525452(JP,A)
【文献】特開2001-052742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
H01M 50/40-497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、少なくとも一部が前記正極と対向する負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するゲルポリマー層とを備え、
前記負極は負極活物質含有層を備え、
前記負極活物質含有層は150ppm以上500ppm以下の水分を含み、
前記ゲルポリマー層は、プロトン移動を抑制できるポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩のみからなるゲル電解質と、前記ゲル電解質を担持するシート基材とからなり、前記ゲルポリマー層は、更に液状非水電解質を保持している電極群。
【請求項2】
前記ポリマー材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート及びポリエチレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載の電極群。
【請求項3】
前記ゲルポリマー層の少なくとも一部は、前記正極及び前記負極のうちの少なくとも一方に含浸している請求項1又は2に記載の電極群。
【請求項4】
前記電極群は、前記正極及び前記負極の間に前記ゲルポリマー層のみを備える請求項1~3の何れか1項に記載の電極群。
【請求項5】
前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータを更に備える請求項1~3の何れか1項に記載の電極群。
【請求項6】
前記ゲルポリマー層の厚さは、0.01μm~300μmの範囲内にある請求項1~の何れか1項に記載の電極群。
【請求項7】
前記シート基材は、不織布、多孔質フィルム、紙及び有機繊維層からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~の何れか1項に記載の電極群。
【請求項8】
前記ゲル電解質に占める前記ポリマー材料の質量の割合は、0.5質量%~10質量%の範囲内にある請求項1~の何れか1項に記載の電極群。
【請求項9】
前記ゲル電解質中の前記リチウム塩の濃度は、0.5mol/L~3mol/Lの範囲内にある請求項1~の何れか1項に記載の電極群。
【請求項10】
前記負極活物質含有層はニオブチタン複合酸化物を含む請求項1~の何れか1項に記載の電極群。
【請求項11】
前記ニオブチタン複合酸化物は、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物であり、
前記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、一般式LixTi1-yM1yNb2-zM2z7+δで表される複合酸化物、及び、一般式LixTi1-yM3y+zNb2-z7-δで表される複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つであり、前記M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、前記M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記xは0≦x≦5を満たし、前記yは0≦y<1を満たし、前記zは0≦z<2を満たし、前記δは、-0.3≦δ≦0.3を満たす請求項10に記載の電極群。
【請求項12】
請求項1~1の何れか1項に記載の電極群と、非水電解質とを含む二次電池。
【請求項13】
請求項1に記載の二次電池を具備する電池パック。
【請求項14】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項1に記載の電池パック。
【請求項15】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項1又は1に記載の電池パック。
【請求項16】
請求項1~1の何れか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項17】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極群、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池のような非水電解質二次電池などの二次電池の研究開発が盛んに進められている。非水電解質二次電池などの二次電池は、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の車両用、携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されている。そのため、二次電池は、高エネルギー密度に加えて、急速充放電性能、長期信頼性のような他の性能にも優れていることも要求されている。例えば、急速充放電が可能な二次電池は、充電時間が大幅に短縮されるだけでなく、ハイブリッド電気自動車等の車両の動力性能の向上や動力の回生エネルギーの効率的な回収も可能である。
【0003】
急速充放電を可能にするためには、電子及びリチウムイオンが正極と負極との間を速やかに移動できることが必要である。しかしながら、カーボン系負極を用いた電池は、急速充放電を繰り返すと、電極上に金属リチウムのデンドライト析出が生じ、内部短絡による発熱や発火の虞があった。
【0004】
そこで、炭素質物の代わりに金属複合酸化物を負極に用いた電池が開発された。中でも、チタン酸化物を負極に用いた電池は、安定的な急速充放電が可能であり、カーボン系負極を用いた場合に比べて寿命も長いという特性を有する。
【0005】
しかしながら、チタン酸化物は炭素質物に比べて金属リチウムに対する電位が高い、すなわち貴である。その上、チタン酸化物は、重量あたりの容量が低い。このため、チタン酸化物を負極に用いた電池は、エネルギー密度が低いという問題がある。
【0006】
例えば、チタン酸化物の電極電位は、金属リチウム基準で約1.5V(vs.Li/Li)であり、カーボン系負極の電位に比べて高い(貴である)。チタン酸化物の電位は、リチウムを電気化学的に挿入脱離する際のTi3+とTi4+の間での酸化還元反応に起因するものであるため、電気化学的に制約されている。また、1.5V(vs.Li/Li)程度の高い電極電位においてリチウムイオンの急速充放電が安定的に行えるという事実もある。
【0007】
一方、単位重量あたりの容量については、二酸化チタン(アナターゼ構造)の理論容量は165mAh/g程度であり、Li4Ti512のようなスピネル型リチウムチタン複合酸化物の理論容量も180mAh/g程度である。一方、一般的な黒鉛系電極材料の理論容量は385mAh/g以上である。このように、チタン酸化物の容量密度はカーボン系負極のものと比較して著しく低い。これは、チタン酸化物の結晶構造中に、リチウムを吸蔵するサイトが少ないことや、構造中でリチウムが安定化し易いため、実質的な容量が低下することによるものである。
【0008】
以上に鑑みて、Ti及びNbを含む新たな電極材料が検討されている。このようなニオブチタン複合酸化物材料は、高い充放電容量を有すると期待されている。特に、TiNb27で表される複合酸化物は380mAh/gを超える高い理論容量を有する。しかしながら、電極中に多くの水分が残存している場合、充放電の際に当該水分の電気分解によってプロトンが生じる。生じたプロトンに起因してガス発生量が増大し、電池抵抗が上昇するため、入出力特性の低下及びサイクル寿命特性の低下を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-160420号公報
【文献】特開2008-159576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を示す二次電池を実現可能な電極群、この電極群を備えた二次電池、この二次電池を具備した電池パック、及びこの電池パックを具備した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によると、電極群が提供される。電極群は、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在するゲルポリマー層とを備える。負極の少なくとも一部は正極と対向している。負極は、負極活物質含有層を備える。負極活物質含有層は、150ppm以上500ppm以下の水分を含む。ゲルポリマー層は、プロトン移動を抑制できるポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩のみからなるゲル電解質と、ゲル電解質を担持するシート基材とからなる。ゲルポリマー層は、更に液状非水電解質を保持している。
【0012】
他の実施形態によると、二次電池が提供される。二次電池は、実施形態に係る電極群と、電解質とを具備する。
【0013】
他の実施形態によると、電池パックが提供される。電池パックは、実施形態に係る二次電池を含む。
【0014】
他の実施形態によると、車両が提供される。車両は、実施形態に係る電池パックを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る電極群の一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図。
図3】実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図。
図4】実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図。
図5】実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図。
図6】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
図7図6に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
図8】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
図9図8に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
図10】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
図11】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
図12図11に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
図13】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
図14】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0017】
従来、電極抵抗を小さくする目的で、電極中のバインダ量を低減する試みがなされている。しかしながら、バインダ量を低減すると、電極を構成する活物質などの電極材料同士の結着力が低下するため、電極を乾燥させた際に、活物質含有層のひび割れ、及び、集電体からの活物質含有層の剥離が生じる可能性がある。活物質含有層のひび割れ又は剥離が生じると、例えば、抵抗上昇により入出力特性及びサイクル寿命特性が低下するなど、電池特性に悪影響を及ぼす。
【0018】
そこで、電極乾燥時に、活物質含有層中の水分を完全に乾燥しきらないことにより、活物質含有層のひび割れ及び集電体からの剥離を、ある程度抑制している。ところが、水分を多く含む活物質含有層を備える電極では、充放電時に水が分解することによりプロトンが生じ、生じたプロトンの一部は、更に水素に変化しうる。こうしてガス発生量が増大すると、結局のところ電池抵抗が上昇するという課題がある。
【0019】
水は、電気分解によって、高い電位においては下記式1に示す酸化反応を生じ、低い電位においては下記式2に示す還元反応を生じる。酸化反応及び還元反応では、それぞれ、酸素ガス及び水素ガスが発生する。反応電位の低い負極では式2に示す還元反応が進行しやすく、反応電位の高い正極では、式1に示す酸化反応が進行しやすい。
2H2O ⇔ O2↑ + 4H+ + 4e (1)
2O + H+ +2e- ⇔ H2↑ + OH- (2)
正負極間においてプロトンが自由に電気泳動可能な状態にあると、例えば、式2に示す還元反応が進行して、負極にて水素が生成しやすいことが分かっている。本発明者らは、正負極の間にゲルポリマー層を介在させることにより、正負極間でのプロトンの電気泳動を抑制可能であることを見出した。
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態によると、電極群が提供される。電極群は、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在するゲルポリマー層とを備える。負極の少なくとも一部は正極と対向している。ゲルポリマー層は、ポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩からなるゲル電解質と、ゲル電解質を担持するシート基材とからなるか、又は、当該ゲル電解質のみからなる。
【0021】
ゲルポリマー層が正負極間に介在することによって、正負極間におけるプロトン移動を抑制できる理由は明らかになっていないが、ゲルポリマー層に含まれるポリマー材料がプロトン移動を阻害していると考えられる。プロトン移動が抑制されると、例えば負極における水素発生が抑制されるため、電池抵抗の上昇が抑制され、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を達成することができる。
【0022】
以下、実施形態に係る電極群について詳述する。
【0023】
電極群は、正極、負極、並びに、正極及び負極の間に介在するゲルポリマー層を備える。電極群は、正極及び負極の間に介在するセパレータを更に具備することができる。電極群が正負極間にセパレータを更に具備する場合、ゲルポリマー層は、例えば、正極とセパレータとの間、又は、負極とセパレータとの間に具備されうる。ゲルポリマー層は、正極とセパレータとの間、及び、負極とセパレータとの間の両方に存在していてもよい。
【0024】
(A)ゲルポリマー層
ゲルポリマー層は、例えば、シート基材と、シート基材に保持されたゲル電解質とからなる。ゲルポリマー層は、ゲル電解質のみからなっていてもよい。即ち、ゲルポリマー層が備えうるシート基材は省略することができる。ゲル電解質のみからなるゲルポリマー層も、シート形状を有する自立膜として取り扱うことができる。この自立膜は、例えば、ポリマー材料からなるポリマー鎖と、有機溶媒と、リチウム塩とからなるゲルポリマーシートでありうる。正負極間にゲルポリマー層のみが介在している場合、正負極間の距離を近くすることができるため、ゲルポリマー層によるガス発生抑制の効果を得ると共に、電気抵抗を低減することができる。ゲルポリマー層は、当該ゲルポリマー層が2枚以上積層された積層体であってもよい。
【0025】
ゲルポリマー層の少なくとも一部は、正極及び負極のうちの少なくとも一方に含浸していてもよい。この場合、ゲルポリマー層はシート基材を備えていなくてもよく、備えていてもよい。ゲルポリマー層がシート基材を備えていない場合、例えば、ゲルポリマー層の厚さを或る程度厚くするか、又は、正負極間にセパレータを介在させることによって、正負極間の電気的な絶縁性を確保することができる。ゲルポリマー層が正極及び負極のうちの少なくとも一方に含浸していれば、含浸している正極又は負極の表面上にはゲルポリマー層が存在しているため、正負極間にゲルポリマー層が介在しているといえる。
【0026】
ゲルポリマー層の厚さは、例えば0.01μm~300μmの範囲内にあり、好ましくは0.1μm~100μmの範囲内にある。ゲルポリマー層が正極及び負極のうちの一方に含浸している場合、ゲルポリマー層の厚さは0.01μm~50μmの範囲内にありうる。ゲルポリマー層の厚さが小さい場合、例えばゲル電解質が正極及び負極の少なくとも一方に含浸している場合、電池抵抗を小さくできるため好ましい。ゲルポリマー層が過度に厚いと、電池抵抗が上昇するため好ましくない。ゲルポリマー層が独立した膜として存在する場合(実質的に正負極に含浸していない場合)には、ゲルポリマー層の厚さは、例えば1μm~300μmの範囲内にありうる。正負極間にセパレータが存在せず、ゲルポリマー層のみが存在する場合、ゲルポリマー層の厚さは、例えば5μm~300μmの範囲内にありうる。
【0027】
シート基材は、例えば、ゲル電解質を保持し、ゲルポリマー層を自立膜として取扱い可能にし得る。但し、上述の通り、ゲル電解質のみを自立膜として取扱い可能とすることもできる。また、シート基材は、正負極間の絶縁性を確保するための絶縁性基材として機能し得る。シート基材は、ゲル電解質が含浸することが可能な多孔質自立膜でありうる。シート基材には、ゲル電解質が含浸することによって保持されうる。そのため、シート基材は、一定の多孔度を有する多孔質自立膜であることが好ましい。
【0028】
シート基材の多孔度は、例えば、15%~80%の範囲内にあり、好ましくは20%~70%の範囲内にある。シート基材の多孔度が低すぎると、シート基材の内部にまでゲル電解質が含浸しにくくなるため、リチウムイオン伝導性が低下し、入出力特性が低下する可能性がある。シート基材の多孔度が高すぎると、ゲル電解質を保持することができない可能性がある。この場合には、ゲル電解質が流出し電極間でプロトンの移動を抑制する効果が得られにくいため好ましくない。
【0029】
シート基材の例には、不織布、多孔質フィルム及び紙などの多孔質自立膜、並びに、電極と一体となるように電極表面上に形成された有機繊維層が含まれる。有機繊維層は、多孔質構造を有するシート状の膜でありうる。有機繊維層は、エレクトロスピニング法で形成される層でありうる。ゲルポリマー層は、シート基材を1種類のみ備えていてもよく、2種類以上のシート基材を備えていてもよい。
【0030】
不織布及び多孔質フィルムの構成材料の例に、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、並びに、セルロースが含まれる。シート基材としてこれらを採用すると、柔軟性や強度に優れるため、取り扱いが容易となるメリットがある。
【0031】
有機繊維層は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリスルホン、セルロース、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される少なくとも1つの有機材料を含む。
【0032】
PVdFおよびPIは、一般的に、繊維状とすることが困難な材料であるとされているが、エレクトロスピニング法を採用すると、こうした材料も繊維状として層を形成することが可能である。有機繊維層が含む有機材料の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
【0033】
シート基材の厚さは、例えば、5μm~40μmの範囲内にあり、好ましくは5μm~20μmの範囲内にある。シート基材が過度に厚いと、正負極間の距離が離れすぎてしまい、電池抵抗が上昇するため好ましくない。
【0034】
ゲルポリマー層に含まれるゲル電解質は、ポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩からなる。ポリマー材料を構成する高分子鎖は三次元的に絡み合っており、この高分子鎖の内部に、有機溶媒及びリチウム塩を含む電解液が保持されている。上述のように、ゲル電解質に含まれるポリマー材料は正負極間のプロトン移動を抑制しうる。一方で、ゲル電解質はリチウムイオン伝導性を有している。なお、ゲル電解質に含まれる電解液は、微量の添加剤を含むことができる。
【0035】
ゲル電解質に占めるポリマー材料の質量の割合は、例えば、0.5質量%~10質量%の範囲内にあり、好ましくは1.5質量%~8質量%の範囲内にある。この割合が小さすぎると、ゲル電解質が適切にゲル化しない可能性があり、また、正負極間のプロトン移動を抑制する効果が得られにくい傾向がある。この割合が大きすぎると、イオン伝導抵抗が上昇しすぎて、入出力特性に劣る傾向がある。
【0036】
ゲル電解質に占める有機溶媒の質量の割合は、例えば、80質量%~97質量%の範囲内にあり、好ましくは80質量%~90質量%の範囲内にある。ゲル電解質に占める有機溶媒の質量の割合を適宜調整することにより、ポリマー材料の濃度(質量割合)及びリチウム塩の濃度を調整する可能である。
【0037】
ゲル電解質中のリチウム塩濃度は、例えば0.5mol/L~3mol/Lの範囲内にあり、好ましくは0.5mol/L~2mol/Lの範囲内にある。リチウム塩濃度をこの範囲内とすることにより、電解質の粘度が適度なものとなり、比較的高いイオン伝導性を維持することができる。
【0038】
ゲル電解質は、例えば、実質的に有機溶媒及びリチウム塩からなる電解液と、ポリマー材料の前駆体であるポストポリマーを含む溶液(ポストポリマー液)とを混合し、ポストポリマーを重合させることにより調製される。ゲル電解質の具体的な作製方法は後述する。
【0039】
ポストポリマーは、後述するポリマー材料の前駆体となるモノマー、及び/又は、オリゴマーなどであり得る。ポストポリマーは、例えば、ポリメチルメタクリレートなどの、カーボネート類とゲル化する材料である。
【0040】
ポリマー材料の重量平均分子量は、例えば、3000以上である。ポリマー材料の重量平均分子量は、3000以上5000000以下であることが好ましく、5000以上2000000以下であることがより好ましく、10000以上1000000以下であることが更に好ましい。ポリマー材料の重量平均分子量が低すぎるとゲル電解質が緩くなるため、ゲルポリマー層としての取扱いが困難になる可能性がある。例えば、電極表面にゲルポリマー層を留まらせるのが困難になる可能性がある。高分子材料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により求めることができる。
【0041】
ポリマー材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポリマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又はこれらの混合物であり得る。ポリマー材料は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有する炭化水素で構成されるモノマーユニットを含んでいることが好ましい。ポリマー材料において、モノマーユニットで構成された部分が占める割合は70モル%以上であることが好ましい。以下、このモノマーユニットを、第1モノマーユニットと称する。また、共重合体において、第1モノマーユニット以外のものを、第2モノマーユニットと称する。第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとの共重合体は、交互共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又は、ブロック共重合体であってもよい。
【0042】
ポリマー材料において、第1モノマーユニットで構成された部分が占める割合が70モル%より低いと、ゲルポリマー層によりプロトン移動を遮る能力が低下するおそれがある。ポリマー材料において、第1モノマーユニットで構成された部分の割合は、90モル%以上であることが好ましい。ポリマー材料は、第1モノマーユニットで構成された部分の割合が100モル%、即ち、第1モノマーユニットのみからなる重合体であることが最も好ましい。
【0043】
第1モノマーユニットは、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を側鎖に有し、主鎖が炭素-炭素結合により構成された化合物であってもよい。炭化水素は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を、1種類又は2種類以上有していてもよい。第1モノマーユニットにおける上記官能基は、ゲルポリマー層を通過するリチウムイオンの伝導性を高めることができる。
【0044】
第1モノマーユニットを構成する炭化水素は、酸素(O)、硫黄(S)、及び窒素(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む官能基を有することが好ましい。第1モノマーユニットが、このような官能基を有すると、ゲルポリマー層におけるリチウムイオンの伝導性がより高まり、内部抵抗が低まる傾向にある。
【0045】
第1モノマーユニットに含まれる官能基としては、ホルマール基、ブチラール基、カルボキシメチルエステル基、アセチル基、カルボニル基、水酸基及びフルオロ基からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。また、第1モノマーユニットは、カルボニル基及び水酸基の少なくとも一方を官能基に含むことがより好ましく、両方を含むことが更に好ましい。
【0046】
第1モノマーユニットとしては、例えば、ビニルホルマール、ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルアセタール、ビニルブチラール、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリロニトリル、アクリルアミド及びその誘導体、スチレンスルホン酸、ポリフッ化ビニリデン、及びテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0047】
第2モノマーユニットとは、第1モノマーユニット以外の化合物、すなわち、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有さないか、又は、この官能基を有していても炭化水素ではないものである。第2モノマーユニットとしては、例えば、エチレンオキシド及びスチレンを挙げることができる。第2モノマーユニットからなる重合体としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリスチレン(PS)を挙げることができる。
【0048】
第1モノマーユニット及び第2モノマーユニットに含まれる官能基の種類は、赤外線分光分析法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy;FT-IR)により同定できる。また、第1モノマーユニットが炭化水素からなることは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;NMR)により判断できる。また、第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとの共重合体において、第1モノマーユニットで構成された部分が占める割合は、NMRにより算出できる。
【0049】
ポリマー材料は、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリメチルメタクリレート(Poly Methyl Methacrylate;PMMA)及びポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。ポリマー材料は、これらのうちの1種であってもよく、2種類以上を含む混合物であってもよい。
【0050】
ゲル電解質は、無機粒子を含まないことが好ましい。ゲル電解質が無機粒子を含まない場合、ゲルポリマー層における単位体積当たりの電解液量(有機溶媒及びリチウム塩の質量)を増大させることができる。それ故、この場合、ゲルポリマー層におけるリチウムイオン伝導性を高めることができる。結果として、優れた入出力特性、ひいてはサイクル寿命特性を達成することができる。
【0051】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0052】
リチウム塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0053】
ゲル電解質が含むことができる添加剤の例として、ビニレンカーボネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、フルオロエチレンカーボネート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、プロパンスルトン及びビスオキサレートボラートを挙げることができる。
【0054】
ゲル電解質は、例えば、電解液と、ポストポリマー液との混合液を、ポストポリマーのゲル化反応が生じうる温度以上の温度で十分な時間に亘り静置して、混合液をゲル化させることで得られる。ゲル電解質の調製は、Arガスなどの不活性雰囲気中で実施することが望ましい。混合液を調製する際には、有機溶媒及びリチウム塩を含む電解液と、ポストポリマー液とを、例えば1:1~5:1の質量比で混合する。ポストポリマー液中のポストポリマーの濃度は、例えば、0.5質量%~20質量%の範囲内とする。
【0055】
ゲル電解質をシート基材に担持させる場合の一例としては、まず、電解液と、ポストポリマー液との混合液中にシート基材を浸漬させ、シート基材に混合液を含浸させる。このとき、混合液及びシート基材を減圧環境下に置いて、シート基材内部に混合液を含浸させてもよい。シート基材に混合液が含浸した状態で、これらをゲル化反応が生じうる温度以上の温度で十分な時間に亘り静置して、混合液をゲル化させることにより、シート基材の内部及び表面にゲル電解質が担持されたゲルポリマー層を得ることができる。シート基材に代えて、正極又は負極を上述の操作に供することにより、正極活物質含有層又は負極活物質含有層に対してゲル電解質を担持(含浸)させることもできる。
【0056】
<ゲルポリマー層の分析>
アルゴン雰囲気としたグローブボックス内で二次電池を解体し、電極群を取り出す。取り出した電極群を、エチレンカーボネートなどの有機溶媒に浸漬させて、正極及び負極から、電解液及びリチウム塩を除去する。電極群がセパレータを含む場合には、セパレータを除去する。ゲル電解質がシート材料に含浸されている場合には、当該シート材料の表面若しくは内部に残留した固形分についてゲル浸透クロマトグラフィーを実施する。他方、ゲル電解質が電極(正極又は負極)に含浸されている場合には、電極の表面若しくは内部に残留した固形分についてゲル浸透クロマトグラフィーを実施する。こうして、ゲル電解質が含むポリマー材料の分子量を求めることができる。
【0057】
ゲルポリマー層に含まれるポリマー材料は、下記の手順で同定することができる。まず、上で述べた手順で二次電池を分解し、ゲルポリマー層に含まれるゲル電解質を適切な溶媒を用いて抽出する。適切な溶媒としては、電極に含まれ得るバインダを溶解せず、且つポリマー材料を溶解する溶媒が選択される。このような溶媒の選択のために、ポリマー材料の同定よりも先にバインダの同定を実施してもよい。抽出して得られたポリマー材料に対して、NMR及び赤外分光法(IR:Infrared spectroscopy)を実施することで構造解析が可能である。加えて、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光法による元素分析を実施してもよい。こうして、ポリマー材料の同定が可能である。また、電極群の分解前に、予め電極群の重量を測定しておき、ポリマー材料の抽出後に再度電極群の重量を測定することで、ゲルポリマー層に含まれるポリマー材料の含有量を質量割合で算出することが可能である。
【0058】
(B)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。負極活物質含有層には、ゲルポリマー層としてのゲル電解質が含浸していてもよい。負極活物質含有層にゲル電解質が含浸しているか否かは、上述のゲル浸透クロマトグラフィーにより確認することができる。
【0059】
負極活物質としては、例えば、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi512、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、及び直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物が挙げられる。中でも、高い容量と高いレート性能を両立できる観点から、負極活物質は単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を含むことが好ましい。負極活物質として単斜晶型ニオブチタン複合酸化物のみを含んでいてもよい。
【0060】
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0061】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、Ti1-yM3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦y<1、0≦z≦2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0062】
上記斜方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)d14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つでる。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。斜方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0≦a≦6)が挙げられる。
【0063】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0064】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0065】
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、負極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ、70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0066】
負極集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位、例えば、1.0V(vs.Li/Li)よりも貴である電位において、電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0067】
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0068】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0069】
負極活物質含有層内の水分量は、例えば、150ppm~500ppmである。水分量が少なすぎると、活物質含有層のひび割れ及び集電体からの剥離が生じる可能性がある。水分量が多すぎると、充放電サイクル時に発生する水素ガスが増えるため好ましくない。なお、当該水分量は、二次電池の出荷後の時点(初回充放電後)で測定することとする。
【0070】
負極活物質含有層の水分量の測定方法を説明する。
電池から電極を取り出し、この電極を3mm×2cmの大きさの電極片を用意する。用意した電極片は、水分量の測定前にその乾燥が進まないようにする。具体的には、例えば、電極片を用意した後、密閉容器に収容して測定器まで持って行くようにする。或いは、測定器のある場所で電極の解体を行い、その場ですぐに測定を行う。
【0071】
上記のように準備した試料について、カールフィッシャー水分計(VA-06型、三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて、電量滴定法で水分量の測定を行う。具体的には、試料を140℃に加熱し、200ml/minの流量で窒素ガスを流入させる条件で測定を行う。水とヨウ素との反応に消費された電気量から、水分量を換算する。
【0072】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。溶媒の例として、水及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられる。溶媒として水を使用した場合、上述した通り、結着剤量を低減したとしても、活物質含有層内の水分を一定程度残すことにより、塗膜(活物質含有層)乾燥時における活物質含有層のひび割れ及び集電体からの剥離を抑制できる。調製したスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と負極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
【0073】
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを負極集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
【0074】
(C)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。正極活物質含有層には、ゲルポリマー層としてのゲル電解質が含浸していてもよい。正極活物質含有層にゲル電解質が含浸しているか否かは、上述のゲル浸透クロマトグラフィーにより確認することができる。
【0075】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0076】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0077】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0078】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0079】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0080】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0081】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0082】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0083】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0084】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0085】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0086】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0087】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0088】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0089】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0090】
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。
【0091】
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
【0092】
(D)セパレータ
セパレータは、ゲルポリマー層とは別体のシート状絶縁材料である。セパレータの例には、不織布、多孔質フィルム及び紙などの多孔質自立膜、電極と一体となるように電極表面上に形成された有機繊維層、並びに、固体電解質粒子を含む固体電解質層が含まれる。つまり、セパレータは、例えば、不織布、多孔質フィルム、紙、有機繊維層及び固体電解質層からなる群より選択される少なくとも1種でありうる。
多孔質自立膜及び有機繊維層は、上述のシート基材に使用可能なものと同様のものを使用することができる。セパレータは、これらのうちの2種以上を積層した積層体であってもよい。2種類以上のセパレータが積層されている場合、これらセパレータの間にゲルポリマー層が介在していてもよい。
【0093】
電極群がセパレータを更に備えている場合、セパレータには電解液が含浸するため、正負極間におけるリチウムイオン伝導性が向上し、入出力特性に優れる傾向がある。
【0094】
多孔質自立膜及び有機繊維層は、厚さが8μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少なく、良好な高温貯蔵性能を実現できる。固体電解質層の厚さは、例えば1μm~50μmの範囲内にあり、好ましくは1μm~20μmの範囲内にある。
【0095】
固体電解質層は、1種類の固体電解質粒子を含んでいても良く、複数種類の固体電解質粒子を含んでいてもよい。固体電解質層は、固体電解質粒子を含む固体電解質複合膜であってもよい。固体電解質複合膜は、例えば、固体電解質粒子を、高分子結着材を用いて膜状に成形したものである。固体電解質層は、可塑剤及びリチウム塩からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。固体電解質層がリチウム塩を含んでいると、例えば、固体電解質層のリチウムイオン伝導性をより高めることができる。リチウム塩としては、上述したゲル電解質が含み得るものを使用することができる。
【0096】
固体電解質複合膜に含まれる高分子結着材の例は、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエチレン系、シリコーン系及びポリスルフィド系を含む。
【0097】
固体電解質粒子としては、無機固体電解質を用いることが好ましい。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造を有し、一般式LiM2(PO43で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素であることが好ましい。元素Mは、Ge、Zr及びTiの何れか1つの元素と、Alとを含むことがより好ましい。
【0098】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+xAlTi2-x(PO)、Li1+xAlGe2-x(PO、Li1+xAlZr2-x(POを挙げることができる。上記式におけるxは、0<x≦5の範囲内にあり、0.1≦x≦0.5の範囲内にあることが好ましい。
【0099】
酸化物系固体電解質としては、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.30.46)、又はガーネット型構造のLLZ(Li7La3Zr212)を用いてもよい。
【0100】
次に、実施形態に係る電極群の構成について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0101】
図1は、実施形態に係る電極群の一例を概略的に示す断面図である。電極群1は、負極3と、正極5と、負極3及び正極5の間に介在するゲルポリマー層10とを備えている。負極3と正極5との間にはゲルポリマー層10のみが介在している。図1において、Z方向は、負極3、ゲルポリマー層10及び正極5の積層方向である。X方向及びY方向は、いずれもZ方向に対して直交する方向である。X方向及びY方向は、互いに直交する方向であり、ゲルポリマー層10の主面の面内方向に沿った方向である。図1は、電極群1のZ方向に沿った断面を概略的に示している。
【0102】
負極3は、帯状の負極集電体3aと、負極集電体3aの両面上に担持された負極活物質含有層3bとを含む。負極集電体3aは、例えば、Y方向が長手方向である矩形の帯状を有している。正極5は、帯状の正極集電体5aと、正極集電体5aの両面上に担持された正極活物質含有層5bとを含む。正極集電体5aは、例えば、Y方向が長手方向である矩形の帯状を有している。
【0103】
負極3は、その少なくとも一部が正極5と対向している。具体的には、負極活物質含有層3bの少なくとも一部が、正極活物質含有層5bと対向している。図1では一例として、負極3(負極活物質含有層3b)の全面が正極5(正極活物質含有層5b)と対向している場合を示している。ゲルポリマー層10が有する2つの主面のうち、一方の主面は負極活物質含有層3bと接している。ゲルポリマー層10が有する2つの主面のうち、他方の主面は正極活物質含有層5bと接している。
【0104】
図1に示すように、負極集電体3aの一部には負極活物質含有層3bが担持されておらず、且つ、当該部分は、正極集電体5aとも正極活物質含有層5bとも対向していない。この部分は負極集電タブ3cとして機能する。負極集電タブ3cは、X方向に沿って、負極活物質含有層3bから突出している。同様に、正極集電体5aの一部には正極活物質含有層5bが担持されておらず、且つ、当該部分は、負極集電体3aとも負極活物質含有層3bとも対向していない。この部分は正極集電タブ5cとして機能する。正極集電タブ5cは、X方向に沿って、正極活物質含有層5bから突出している。負極集電タブ3c及び正極集電タブ5cは、X方向に沿って、互いに反対の方向に向かって突出している。
【0105】
ゲルポリマー層10は、例えば、Y方向が長手方向である矩形の帯状を有している。ゲルポリマー層10は、例えば、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bが互いに対向している部分のうちの全体に設けられている。ゲルポリマー層10は、当該部分のうちの少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0106】
図1では、X方向について、ゲルポリマー層10の幅は、負極活物質含有層3b及び正極活物質含有層5bの幅と同一である。X方向について、ゲルポリマー層10の幅は、負極活物質含有層3b及び正極活物質含有層5bの幅と比較して大きいことが好ましい。この合、負極3と正極5との短絡を抑制しやすい効果がある。
【0107】
図2は、実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図である。図2に示す電極群1は、正極5とゲルポリマー層10との間に、セパレータとしての多孔質自立膜4を更に備えていることを除いて、図1で説明したのと同様の構成を有している。多孔質自立膜4が有する2つの主面のうち、一方の主面はゲルポリマー層10と接している。多孔質自立膜4が有する2つの主面のうち、他方の主面は正極活物質含有層5bと接している。
【0108】
X方向について、多孔質自立膜4の幅は、負極活物質含有層3b及び正極活物質含有層5bの幅と比較して大きい。そのため、図2のように多孔質自立膜4を更に有している場合には、負極3と正極5との短絡を抑制しやすい効果がある。また、多孔質自立膜4は、典型的には、ゲルポリマー層10と比較して電解液を多く保持することができる。液状の電解液は、ゲル状のゲルポリマー層と比較してリチウムイオン伝導性に優れる傾向がある。従って、電極群1が多孔質自立膜4を更に備える場合、優れた入出力特性を達成できる傾向がある。
【0109】
図3は、実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図である。図3に示す電極群1は、負極3とゲルポリマー層10との間に、セパレータとしての多孔質自立膜4を更に備えていることを除いて、図2で説明したのと同様の構成を有している。多孔質自立膜4が有する2つの主面のうち、一方の主面はゲルポリマー層10と接している。多孔質自立膜4が有する2つの主面のうち、他方の主面は負極活物質含有層3bと接している。
【0110】
図4は、実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図である。図4に示す電極群1では、負極3(負極活物質含有層3b)にゲル電解質が含浸している。それ故、負極3の表面上にはゲルポリマー層10としてゲル電解質が存在している。言い換えると、負極3と正極5の間には、ゲルポリマー層10としてゲル電解質が介在している。電極群1は、負極3及び正極5の間に、多孔質自立膜4を更に備えている。図4の態様によると、ゲルポリマー層10が正負極間のプロトン移動を抑制すると共に、電極群におけるゲルポリマー層10が占める体積を小さくすることができる。それ故、正負極の活物質含有層の占める体積を増大させることができ、結果として電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0111】
図5は、実施形態に係る電極群の他の例を概略的に示す断面図である。図5に示す電極群1は、負極3とゲルポリマー層10との間に、セパレータとしての有機繊維層8を備え、且つ、正極5とゲルポリマー層10との間に、セパレータとしての固体電解質層9を備えることを除いて、図1で説明したのと同様の構成を有している。
【0112】
有機繊維層8は、負極活物質含有層3b上に、有機繊維層8の少なくとも一部が溶着した状態で積層されている。有機繊維層8において、負極活物質含有層3bと接していない側の主面はゲルポリマー層10と接している。固体電解質層9が有する2つの主面のうち、一方の主面は正極活物質含有層5bと接しており、他方の主面はゲルポリマー層10と接している。
【0113】
図5に係る態様では、セパレータとしての固体電解質層9及び有機繊維層8が存在するため、万が一、固体電解質層9の一部に剥がれなどが生じた場合であっても、有機繊維層8が正負極間の短絡を抑制できる。有機繊維層8は非常に薄く、密度も小さいため、電解液の含浸性に優れている。加えて、ゲルポリマー層10が固体電解質層9及び有機繊維層8の間に介在しているため、より短絡が生じにくく、且つ、正負極間でのプロトン移動を抑制可能な効果が得られる。ゲルポリマー層10は、固体電解質層9及び有機繊維層8の間ではなく、固体電解質層9及び正極活物質含有層5bの間に介在していてもよい。有機繊維層8又は固体電解質層9は省略してもよい。
【0114】
第1実施形態に係る電極群は、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在するゲルポリマー層とを備える。負極の少なくとも一部は正極と対向している。ゲルポリマー層は、ポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩からなるゲル電解質と、ゲル電解質を担持するシート基材とからなるか、又は、当該ゲル電解質のみからなる。ゲルポリマー層が正負極間におけるプロトン移動を抑制できるため、第1実施形態に係る電極群は、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を示す二次電池を実現可能である。
【0115】
(第2実施形態)
第2実施形態によると、第1実施形態に係る電極群と、電解質とを含む二次電池が提供される。二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池であり得る。
【0116】
二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。電解質は、電極群に保持され得る。電解質は、例えば、負極活物質含有層、正極活物質含有層、セパレータ及びこれらの層間に保持されうる。
【0117】
二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子、及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0118】
以下、負極、正極、セパレータ、電解質、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0119】
(1)負極
第2実施形態に係る二次電池が具備する負極は、例えば、第1実施形態において説明した負極でありうる。
【0120】
(2)正極
第2実施形態に係る二次電池が具備する正極は、例えば、第1実施形態において説明した正極でありうる。
【0121】
(3)セパレータ
第2実施形態に係る二次電池が具備するセパレータは、例えば、第1実施形態において説明したセパレータでありうる。
【0122】
(4)電解質
二次電池が具備する電解質は、例えば液状非水電解質である。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5mol/L以上3mol/L以下であることが好ましい。有機溶媒としては、第1実施形態に係るゲル電解質が含む有機溶媒と同様のものを使用することができる。電解質塩としては、第1実施形態に係るゲル電解質が含むリチウム塩と同様のものを使用することができる。
【0123】
或いは、電解質塩としてリチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)を用いてもよい。常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0124】
(5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0125】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0126】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0127】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0128】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0129】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0130】
(6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0131】
(7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0132】
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0133】
図6は、実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図7は、図6に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0134】
図6及び図7に示す二次電池100は、図6に示す袋状外装部材2と、図6及び図7に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0135】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0136】
図6に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図7に示すように、負極3と、セパレータとしての多孔質自立膜4と、正極5とを含む。多孔質自立膜4は、負極3と正極5との間に介在している。負極活物質含有層3bには、ゲル電解質が含浸している。図2及び図3を参照しながら説明したように、負極3と多孔質自立膜4との間、及び/又は、正極5と多孔質自立膜4との間には、自立膜としてのゲルポリマー層10が介在していてもよい。
【0137】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図7に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0138】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0139】
図6に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、袋状外装部材2の開口部が閉じられている。
【0140】
実施形態に係る二次電池は、図1及び図2に示す構成の二次電池に限らず、例えば図8及び図9に示す構成の電池であってもよい。
【0141】
図8は、実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図9は、図8に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0142】
図8及び図9に示す二次電池100は、図8及び図9に示す電極群1と、図8に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0143】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0144】
電極群1は、図9に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間に多孔質自立膜4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0145】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。負極活物質含有層3bにはゲル電解質が含浸している。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0146】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図9に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0147】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0148】
第2実施形態に係る二次電池は、第1実施形態に係る電極群を含んでいる。そのため、第2実施形態に係る二次電池は、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を達成することができる。
【0149】
(第3実施形態)
第3実施形態によると、組電池が提供される。第3実施形態に係る組電池は、第2実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0150】
実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0151】
次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0152】
図10は、実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図10に示す組電池200は、5つの単電池100a-100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a-100eのそれぞれは、第2実施形態に係る二次電池である。
【0153】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0154】
5つの単電池100a-100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a-100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0155】
第3実施形態に係る組電池は、第2実施形態に係る二次電池を具備する。従って、第3実施形態に係る組電池は、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を達成することができる。
【0156】
(第4実施形態)
第4実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0157】
実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0158】
また、実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0159】
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0160】
図11は、実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図12は、図11に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0161】
図11及び図12に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0162】
図11に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0163】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0164】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第2実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図12に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0165】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0166】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0167】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0168】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0169】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0170】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0171】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0172】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0173】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0174】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0175】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0176】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0177】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子の正側端子と負側端子としてそれぞれ用いてもよい。
【0178】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0179】
第4実施形態に係る電池パックは、第2実施形態に係る二次電池又は第3実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第4実施形態によると、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を実現することができる二次電池又は組電池を備えた電池パックを提供することができる。
【0180】
(第5実施形態)
第5実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0181】
第5実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含んでいてもよい。
【0182】
第5実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0183】
第5実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0184】
第5実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0185】
次に、第5実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0186】
図13は、実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0187】
図13に示す車両400は、車両本体40と、実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図13に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0188】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0189】
図13では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0190】
次に、図14を参照しながら、第5実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0191】
図14は、第5実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図14に示す車両400は、電気自動車である。
【0192】
図14に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0193】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図14に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0194】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0195】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a-300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a-200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a-200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0196】
組電池200a-200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2実施形態に係る二次電池である。組電池200a-200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0197】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a-301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a-200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0198】
電池管理装置411と組電池監視装置301a-301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a-301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0199】
組電池監視装置301a-301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a-200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0200】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図14に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a-200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a-200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0201】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0202】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0203】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0204】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0205】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0206】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0207】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0208】
第5実施形態に係る車両は、第4実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5実施形態によると、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を実現することができる電池パックを備えた車両を提供することができる。
【0209】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0210】
(実施例1)
<正極の作製>
以下のようにして正極を作製した。
まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。正極活物質、導電剤及び結着剤の割合は、それぞれ、93質量%、5質量%及び2質量%であった。正極活物質としては、二次粒子径が6μmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.32)粉末を用いた。導電剤としては、アセチレンブラックとカーボンブラックとの混合物を用いた。混合物におけるアセチレンブラックとカーボンブラックとの質量比は、2:1であった。結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。溶媒としてはN-メチルピロリドン(NMP)を用いた。
【0211】
次いで、調製したスラリーを、正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることで正極活物質含有層を形成した。正極集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム合金箔を用いた。次いで、正極集電体と正極活物質含有層とをプレスして、正極を作製した。
【0212】
<負極の作製>
以下のようにして負極を作製した。
まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。負極活物質、導電剤及び結着剤の割合は、それぞれ、95質量%、3質量%及び2質量%とした。負極活物質としては、二次粒子径が4μmのニオブチタン複合酸化物(NbTiO)粉末を用いた。ニオブチタン酸化物のリチウムイオン吸蔵放出電位は、1.3V(vs.Li/Li)以上1.5V(vs.Li/Li)以下であった。導電剤としては、アセチレンブラックとカーボンブラックとの混合物を用いた。混合物におけるアセチレンブラックとカーボンブラックとの質量比は、2:1であった。結着剤としては、SBRを用いた。溶媒としては、純水を用いた。
【0213】
次いで、得られたスラリーを、負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることで負極活物質含有層を形成した。負極集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム合金箔を用いた。次いで、負極集電体と負極活物質含有層とをプレスして、負極を得た。
【0214】
<非水電解質の調製>
電解質塩を有機溶媒に溶解させて、液状非水電解質を調製した。電解質塩としては、LiPF6を用いた。非水電解質におけるLiPF6のモル濃度は、1.5mol/Lとした。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒を用いた。PCとDECとの体積比は、1:2であった。
【0215】
<ゲルポリマー層の作製>
Arボックス内において、先に調製した液状非水電解質に対して、ポストポリマー溶液を加えてゲルポリマー層形成用の混合液を得た。ポストポリマーとしては、メチルメタクリレートを用いた。混合液におけるポストポリマーの濃度は2質量%とした。次いで、シート基材として厚さ29μmのポリプロピレン製多孔質フィルムを用意した。用意したシート基材を混合液に浸漬させて、シート基材の内部に混合液を減圧含浸させた。混合液が含浸したシート基材を取り出して、60℃の温度で24時間に亘って加熱することにより、液状非水電解質をゲル化させた。このようにして、イオン伝導性を有する、自立膜としてのゲルポリマー層を得た。得られたゲルポリマー層の厚さは30μmであった。ポストポリマーとしてメチルメタクリレートを用いたため、ゲル電解質が含むポリマーはポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。
【0216】
<二次電池の作製>
Ar雰囲気のグローブボックス内で、正極、ゲルポリマー層及び負極の順でこれらを積層して扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。次いで、この金属缶に、先に調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。
【0217】
(実施例2)
ゲルポリマー層として、以下に示すように作製したものを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0218】
まず、実施例1と同様の方法で、ゲルポリマー層形成用の混合液を調製した。混合液を、シリコーン系剥離剤がコートされた剥離面を有する剥離紙の剥離面上に伸ばし、60℃の温度で24時間に亘って加熱することにより、液状非水電解質をゲル化させた。その後、剥離紙からゲルポリマー層(ゲルポリマーシート)を剥離した。
【0219】
(実施例3)
二次電池を作製する際に、正極、セパレータ、ゲルポリマー層及び負極の順でこれらを積層したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。但し、シート基材の厚さを14μmに変更したため、得られたゲルポリマー層の厚さは15μmであった。こうして得られた電極群は、図2に示す態様を有していた。つまり、ゲルポリマー層がセパレータよりも負極側に位置していた。また、使用したセパレータは、厚さ12μmのセルロースからなる不織布であった。
【0220】
(実施例4)
まず、実施例1と同様の方法で調製した混合液に対して、実施例1と同様の方法で作製した負極(負極活物質含有層)を浸漬させて、当該混合液を負極活物質含有層の内部に減圧含浸させた。この負極を取り出して、60℃の温度で24時間に亘って加熱することにより、液状非水電解質をゲル化させた。このようにしてゲルポリマー層が含浸された負極を得た。得られた負極の両面には、ゲルポリマー層が含浸された負極活物質含有層が担持されていた。ゲルポリマー層の厚さは0.5μmであった。
【0221】
次いで、Ar雰囲気のグローブボックス内で、実施例1と同様の方法で作製した正極、セパレータ及び負極の順でこれらを積層させて扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群は、図4に示す態様を有していた。その後、得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。次いで、この金属缶に、実施例1と同様の方法で調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。
【0222】
(実施例5)
二次電池を作製する際に、正極、ゲルポリマー層、セパレータ及び負極の順でこれらを積層したことを除いて、実施例3と同様の方法で二次電池を作製した。得られた電極群は、図3に示す態様を有していた。つまり、ゲルポリマー層がセパレータよりも正極側に位置していた。
【0223】
(実施例6)
正極に対してゲルポリマー層を担持させて、負極にはゲルポリマー層を担持させなかったことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。
【0224】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で、正極及び負極を作製した。次に、混合液におけるポストポリマーの濃度を5質量%に変更したことを除いて、実施例3と同様の方法でゲルポリマー層を作製した。これと同じゲルポリマー層を更にもう1枚作製し、合計2枚のゲルポリマー層を作製した。
【0225】
次いで、Ar雰囲気のグローブボックス内で、正極、ゲルポリマー層、セパレータ、ゲルポリマー層及び負極の順でこれらを積層させて扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。続いて、この金属缶に、実施例1と同様の方法で調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。使用したセパレータは実施例3で使用したものと同一であった。
【0226】
(実施例8)
まず、ゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマーの濃度を5質量%に変更したことを除いて、実施例4と同様の方法で負極を作製した。次に、混合液におけるポストポリマーの濃度を5質量%に変更したことを除いて、実施例6と同様の方法で正極を作製した。
【0227】
次いで、Ar雰囲気のグローブボックス内で、正極、セパレータ及び負極の順でこれらを積層させて扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。続いて、この金属缶に、実施例1と同様の方法で調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。使用したセパレータは実施例3で使用したものと同一であった。
【0228】
(実施例9)
<負極の作製>
実施例4と同様の方法で、ゲルポリマー層が含浸された負極活物質含有層が両面に担持された負極を得た。片面の負極活物質含有層上に、エレクトロスピニング法で有機繊維を堆積させることにより、有機繊維層を形成した。エレクトロスピニング法に供する原料溶液として、ポリアミドイミドを20質量%の濃度で含むN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液を使用した。形成された有機繊維層の厚さは6μmであった。
【0229】
<正極の作製>
実施例1と同様の方法で正極を作製した後、以下に説明するように片面の正極活物質含有層上に、固体電解質層を形成した。固体電解質としてのLATP(Li2Al3-SiO2-P25-TiO2)粉末と高分子材料としてのPVdFを30:2の質量比でNMPに分散させたスラリーを、片面の正極活物質含有層上に塗布した。その後、塗膜を乾燥させて積層体を得た。更に、常温プレスに供して、片面の正極活物質含有層上に固体電解質層が積層された正極を作製した。
【0230】
<二次電池の作製>
Ar雰囲気のグローブボックス内で、有機繊維層と固体電解質層とが対面するように正極と負極とを積層させて、扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。続いて、この金属缶に、実施例1と同様の方法で調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。
【0231】
(実施例10)
まず、実施例1と同様の方法で負極を作製した後、実施例9と同様の方法で負極の片面上に有機繊維層を形成した。次いで、実施例1と同様の方法で正極を作製した後、実施例9と同様の方法で正極の片面上に固体電解質層を形成した。但し、固体電解質としてはLZCP(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO43)粉末を使用した。
【0232】
こうして得られた負極及び正極を、Ar雰囲気のグローブボックス内で、有機繊維層と固体電解質層とが対面するように積層させて、扁平状の積層型電極群を得た。得られた電極群を薄型の金属缶に収納した。続いて、この金属缶に、実施例1と同様の方法で調製した液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。
【0233】
(実施例11)
ゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマーとして、フッ化ビニリデンを使用し、その濃度を0.5質量%とし、且つ、セパレータとして厚さが15μmのポリエチレンからなる不織布を使用したことを除いて、実施例4と同様に二次電池を作製した。
【0234】
(実施例12)
ゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマーとして、フッ化ビニリデンを使用し、その濃度を10質量%とし、且つ、セパレータとして厚さが12μmのポリプロピレンからなる不織布を使用したことを除いて、実施例4と同様に二次電池を作製した。
【0235】
(実施例13)
ゲルポリマー層形成用の混合液におけるメチルメタクリレートの濃度を3質量%とし、ゲルポリマー層の厚さを0.1μmに変更したことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。
【0236】
(実施例14)
ゲルポリマー層の厚さを300μmに変更したことを除いて、実施例3と同様の方法で二次電池を作製した。
【0237】
(実施例15)
ゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマーとして、アクリロニトリルを使用し、その濃度を5質量%としたことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。ゲル電解質が含むポリマーはポリアクリロニトリル(PAN)であった。
【0238】
(実施例16)
ゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマーとして、エチレンオキサイドを使用し、その濃度を5質量%としたことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。ゲル電解質が含むポリマーはポリエチレンオキサイド(PEO)であった。
【0239】
(実施例17)
負極活物質として、平均粒子径D50が1μmのリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti512)を使用したことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。
【0240】
(実施例18)
負極活物質として、平均粒子径D50が5μmの直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物(Li2.2Na1.7Ti5.7Nb0.314)を使用したことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。
【0241】
(実施例19)
負極活物質としてブロンズ型酸化チタン(TiO2(B))を使用したことを除いて、実施例4と同様の方法で二次電池を作製した。
【0242】
(比較例1)
ゲルポリマー層の形成を省略したことを除いて、実施例3と同様の方法で二次電池を作製した。
【0243】
(比較例2)
ゲルポリマー層が、無機粒子として、固体電解質であるLZCP(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO43)粉末を含んでいたことを除いて、実施例3と同様の方法で二次電池を作製した。具体的には、ゲルポリマー層形成用の混合液として、上記固体電解質粒子を5質量%の濃度で更に含む混合液を使用した。
【0244】
(比較例3)
ゲルポリマー層が、無機粒子としてアルミナ(Al23)を含み、且つ、当該ゲルポリマー層の厚さを10μmに変更したことを除いて、実施例3と同様の方法で二次電池を作製した。具体的には、ゲルポリマー層形成用の混合液として、アルミナを5質量%の濃度で更に含む混合液を使用した。
【0245】
<レート特性>
各例において作製した二次電池に対して、以下の方法でレート特性を測定した。
具体的には、まず、二次電池を1CのレートでSOCが100%となるまで定電流充電を行った。その後、レートが1/20Cとなるまで定電圧充電を行った。次いで、二次電池を3Cのレートで、SOCが0%となるまで放電した。このときの放電容量を3C放電容量とした。次いで、この二次電池を、再び1Cのレートで、SOCが100%となるまで充電した。その後、レートが1/20Cとなるまで定電圧充電を行った。次いで、二次電池を0.2Cのレートで、SOCが0%となるまで放電した。このときの放電容量を0.2C放電容量とした。3C放電容量を0.2C放電容量で除することにより、容量比3C放電容量/0.2C放電容量を算出した。
【0246】
<45℃サイクル寿命評価>
45℃環境下で、二次電池を4A(4C)の定電流でSOCが100%となるまで充電した後、SOCが0%となるまで4A(4C)で放電するサイクルを繰り返し、初期容量に対して80%容量に達した時点でのサイクル数をサイクル寿命(回)とした。
【0247】
得られた結果を下記表1にまとめる。表1中、「ポストポリマー含有量」の列には、ゲルポリマー層の形成に用いたゲルポリマー層形成用の混合液におけるポストポリマー含有量を示している。「ゲルポリマー層」の列における「位置」について、「負極側」又は「正極側」と記載している場合、ゲルポリマー層が、セパレータを基準として負極側又は正極側、或いは両側に存在していたことを示している。また、「負極」又は「正極」と記載している場合には、ゲルポリマー層(ゲル電解質)が正極又は負極、或いは両方に含浸していたことを示している。「‐」は該当する部材を有していなかったことを意味する。「サイクル回数(回)」の列は、初期容量に対して、n回サイクル後の容量が80%に達した時点でのサイクル数nを示している。
【0248】
【表1】
【0249】
表1から以下のことが分かる。
ゲルポリマー層が正極及び負極の少なくとも一方に含浸している場合、レート特性に優れる傾向がある。この理由の1つとして、正極活物質粒子及び/又は負極活物質粒子がゲル電解質で覆われることにより、プロトンが対極に移動しにくいためと考えられる。即ち、正極及び/又は負極におけるガス発生が抑制されやすい傾向がある。
【0250】
ゲルポリマー層が正負極に含浸していない場合であっても、正負極間にゲルポリマー層が存在することにより優れたレート特性及びサイクル寿命特性を達成することができた。ゲルポリマー層が正極側のみに配置されていても、負極側のみに配置されていても、上記効果が得られた。更に、実施例1及び2に示す通り、正負極間にゲルポリマー層のみを備えていたとしても優れたレート特性及びサイクル寿命特性を達成することができた。
【0251】
実施例3、15及び16などに示しているように、ゲルポリマー層が含むポリマー材料の種類が変化しても優れたレート特性及びサイクル寿命特性を達成できた。実施例17~19に示しているように、負極活物質の種類が変化したとしても優れたレート特性及びサイクル寿命特性を達成できた。
【0252】
比較例1に示す通り、ゲルポリマー層を備えず、セパレータのみを備えた電極群を含む二次電池の場合、レート特性及びサイクル寿命特性が劣ることが分かる。
【0253】
比較例2に示すように、ゲルポリマー層が固体電解質粒子(LZCP)を更に含む場合、サイクル寿命特性が劣る。これは、ゲル電解質の重量が減少しガス発生抑制効果が低下したためと考えられる。
【0254】
比較例3で使用したアルミナは、リチウムイオン伝導性を有していないため、比較例2と比較して更に電池特性が劣っていた。
【0255】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、電極群が提供される。電極群は、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在するゲルポリマー層とを備える。負極の少なくとも一部は正極と対向している。ゲルポリマー層は、ポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩からなるゲル電解質と、ゲル電解質を担持するシート基材とからなるか、又は、当該ゲル電解質のみからなる。ゲルポリマー層が正負極間におけるプロトン移動を抑制できるため、第1実施形態に係る電極群は、優れた入出力特性及びサイクル寿命特性を示す二次電池を実現可能である。
【0256】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 正極と、少なくとも一部が前記正極と対向する負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するゲルポリマー層とを備え、
前記ゲルポリマー層は、ポリマー材料、有機溶媒及びリチウム塩からなるゲル電解質と、前記ゲル電解質を担持するシート基材とからなるか、又は、前記ゲル電解質のみからなる電極群。
[2] 前記ゲルポリマー層の少なくとも一部は、前記正極及び前記負極のうちの少なくとも一方に含浸している[1]に記載の電極群。
[3] 前記電極群は、前記正極及び前記負極の間に前記ゲルポリマー層のみを備える[1]又は[2]に記載の電極群。
[4] 前記ゲルポリマー層は、前記ゲル電解質と、前記ゲル電解質を担持する前記シート基材とからなる[1]~[3]の何れか1項に記載の電極群。
[5] 前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータを更に備える[1]~[4]の何れか1項に記載の電極群。
[6] 前記ゲルポリマー層の厚さは、0.01μm~300μmの範囲内にある[1]~[5]の何れか1項に記載の電極群。
[7] 前記シート基材は、不織布、多孔質フィルム、紙及び有機繊維層からなる群より選択される少なくとも1種である[1]~[6]の何れか1項に記載の電極群。
[8] 前記ゲル電解質に占める前記ポリマー材料の質量の割合は、0.5質量%~10質量%の範囲内にある[1]~[7]の何れか1項に記載の電極群。
[9] 前記ゲル電解質中の前記リチウム塩の濃度は、0.5mol/L~3mol/Lの範囲内にある[1]~[8]の何れか1項に記載の電極群。
[10] 前記負極は負極活物質含有層を備え、
前記負極活物質含有層はニオブチタン複合酸化物を含む[1]~[9]の何れか1項に記載の電極群。
[11] 前記ニオブチタン複合酸化物は、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物であり、
前記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、一般式Li x Ti 1-y M1 y Nb 2-z M2 z 7+δ で表される複合酸化物、及び、一般式Li x Ti 1-y M3 y+z Nb 2-z 7-δ で表される複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つであり、前記M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、前記M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記xは0≦x≦5を満たし、前記yは0≦y<1を満たし、前記zは0≦z<2を満たし、前記δは、-0.3≦δ≦0.3を満たす[10]に記載の電極群。
[12] [1]~[11]の何れか1項に記載の電極群と、非水電解質とを含む二次電池。
[13] [12]に記載の二次電池を具備する電池パック。
[14] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[13]に記載の電池パック。
[15] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[13]又は[14]に記載の電池パック。
[16] [13]~[15]の何れか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
[17] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[16]に記載の車両。
【符号の説明】
【0257】
1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…多孔質自立膜、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…正極端子、8…有機繊維層、9…固体電解質層、10…ゲルポリマー層、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。
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