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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F16L59/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158483
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052228
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 紀章
(72)【発明者】
【氏名】村上 優介
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-105483(JP,A)
【文献】特開2019-173968(JP,A)
【文献】特開2019-044841(JP,A)
【文献】特開2019-044804(JP,A)
【文献】特開平09-184583(JP,A)
【文献】特開2020-073809(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00475755(GB,A)
【文献】中国実用新案第204328353(CN,U)
【文献】特開2018-141505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層を備える管本体部と、前記管本体部の開口部を囲う筒状の受口部と、前記受口部内に配置される環状の弾性体と、を備え、
前記受口部と前記管本体部の境界部分には、前記受口部の内面よりも内側に突き出る環状の段差が形成され、
前記段差の前記受口部の開口端に向く面は、前記受口部に挿入される管を受け止める受け止め面であり、
前記受け止め面に当接して前記弾性体が配置され、
前記弾性体の表面は、JIS B 0633-2001に定義される算術平均表面粗さが2μm以上100μm以下であり、
前記弾性体は、その外方に向かう復元力により、前記受口部の内面を押圧
前記受口部は、発泡樹脂層を有しかつ端面に前記発泡樹脂層が露出した断熱管が挿入される、断熱管用の管継手。
【請求項2】
前記受口部内に配置される前の前記弾性体は、平面視にて前記受口部の内径よりも外側に位置する部位を有する、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記弾性体は平面視にて円環状であり、前記受口部内に配置される前の前記弾性体の外径は前記受口部の内径よりも大きい、請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記弾性体は平面視にて回転対称の形状であり、前記受口部内に配置される前の前記弾性体は、平面視にて前記受口部の内径よりも外側に突出する複数の突部を有する、請求項1または2に記載の管継手。
【請求項5】
前記弾性体は、中心から外縁までの距離が軸線回りに変化する、請求項1または2に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の排水等に用いられる配管としては、断熱層となる発泡樹脂層を備える断熱管や管継手が広く用いられている。管継手は、断熱管の端部が挿入される受口部を備えており、受口部の奥には内面から内側に突き出る段差からなるストッパーが設けられている。断熱管と管継手との接続構造としては、断熱管の端部の外周面に粘着剤を塗布し、管継手の受口部内のストッパーの位置まで挿入して接続する構造が知られている。
【0003】
しかし、断熱管の端面には発泡樹脂層が露出しているため、この接続構造では断熱管の端面から発泡樹脂層に水が浸入して断熱効果が低下しやすい。そこで、特許文献1には、水が浸透しない環状の弾性体をストッパーの開口端側に接着層を介して接着した管継手を用い、受口部に挿入した断熱管の端面を弾性体に押し付け、弾性体が圧縮された状態で接続する接続構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-184583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の管継手は、弾性体をストッパーに接着する際、受口部内の予期せぬ部分に粘着剤が付着したり、弾性体が曲がったりしやすい。粘着剤の予期せぬ付着や弾性体の曲がりが生じると、弾性体の接着位置がずれたり、弾性体の接着が不十分になったりする不具合が生じ、弾性体による断熱管の発泡樹脂層への水の浸入抑制効果が発現されにくくなる。一旦接着した弾性体を剥がして接着しなおすことは困難であることから、弾性体の接着には高度な精密性が必要とされ、製造が煩雑である。また、接着層の接着が弱く、弾性体が容易に剥離する場合、管継手の市場流通時に弾性体が剥がれるおそれがある。
【0006】
本発明は、製造が容易で、弾性体のずれや剥がれが抑制され、断熱管の端面からの発泡樹脂層への水の浸入抑制効果を十分に発現できる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]断熱層を備える管本体部と、前記管本体部の開口部を囲う筒状の受口部と、前記受口部内に配置される環状の弾性体と、を備え、
前記受口部と前記管本体部の境界部分には、前記受口部の内面よりも内側に突き出る環状の段差が形成され、
前記段差の前記受口部の開口端に向く面は、前記受口部に挿入される管を受け止める受け止め面であり、
前記受け止め面に当接して前記弾性体が配置され、
前記弾性体は、その外方に向かう復元力により、前記受口部の内面を押圧している、管継手。
[2]前記受口部内に配置される前の前記弾性体は、平面視にて前記受口部の内径よりも外側に位置する部位を有する、[1]に記載の管継手。
[3]前記弾性体は平面視にて円環状であり、前記受口部内に配置される前の前記弾性体の外径は前記受口部の内径よりも大きい、[1]または[2]に記載の管継手。
[4]前記弾性体は平面視にて回転対称の形状であり、前記受口部内に配置される前の前記弾性体は、平面視にて前記受口部の内径よりも外側に突出する複数の突部を有する、[1]または[2]に記載の管継手。
[5]前記弾性体は、中心から外縁までの距離が軸線回りに変化する、[1]または[2]に記載の管継手。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が容易で、弾性体のずれや剥がれが抑制され、断熱管の端面からの発泡樹脂層への水の浸入抑制効果を十分に発現できる管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手を示す側面図である。
図2図1の管継手の縦断面図である。
図3】管継手の受口部と弾性体の関係を示す正面図である。
図4図2の管継手の受口部を拡大した図である。
図5図4の管継手の受口部に断熱管を挿入した様子を示した断面図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る管継手を示す断面図である。
図7】管継手の受口部と弾性体の関係を示す正面図である。
図8】管継手の受口部と弾性体の関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
(管継手)
以下、本発明の実施の形態による管継手について、図面に基づいて説明する。
図1図5に示すように、本実施形態の管継手1は、ドレンパイプ等の接続に使用される継手(一般的に「エルボ」(elbow)と称されるL形の配管接合継手)の一例である。本実施形態の管継手1は、管本体部10と、2つの受口部20a,20bと、2つの弾性体30a,30bと、を備えている。
【0011】
管本体部10は、円筒状で、L字状に屈曲しており、内部に屈曲した流路を有している。管本体部10の第1端部10aには開口部12aが形成され、第2端部10bには開口部12bが形成されている。
【0012】
受口部20aは、内形形状が開口端21aから受け止め面25aに向かって内径が徐々に小さくなる略円筒状であり、外形形状が円筒状であり、管本体部10の開口部12aを囲うように管本体部10の第1端部10aから延在している。受口部20bは、内形形状が開口端21bから受け止め面25bに向かって内径が徐々に小さくなる略円筒状であり、外形形状が円筒状であり、管本体部10の開口部11bを囲うように管本体部10の第2端部10bから延在している。管本体部10と、受口部20aと、受口部20bとは、一体に形成されている。
【0013】
受口部20aと管本体部10の第1端部10aとの境界部分には、受口部20aの内面22aよりも内側に突き出る環状の段差24aが形成されている。段差24aの受口部20aの開口端21aに向く面は、受口部20aに挿入される管を受け止める受け止め面25a、いわゆるストッパーになっている。
【0014】
同様に、受口部20bと管本体部10の第2端部10bとの境界部分には、受口部20bの内面22bよりも内側に突き出る環状の段差24bが形成されている。段差24bの受口部20bの開口端21bに向く面は、受口部20bに挿入される管を受け止める受け止め面25b、いわゆるストッパーになっている。
【0015】
本実施形態における受け止め面25a,25bは、管本体部10と受口部20aおよび受口部20bとの境界部分に周方向に全周に亘って形成されており、それぞれ開口端側から見た正面視形状が円環状になっている。なお、受け止め面25a,25bの正面視での環形状は、円には限定されず、楕円、多角形等であってもよい。
【0016】
段差24a、24bの受け止め面25a,25bの幅w1は、挿入される断熱管の端部を受け止めることができる範囲であればよく、例えば、挿入される断熱管の厚さと同程度に設定される。
【0017】
受口部20a,20bの内径や断熱管の外径は特に限定されるものではないが、断熱管は外径が大きくなるほど断熱管を切断するときに管軸と直交する面から傾いて切断されやすくなり、断熱管の端面と受け止め面25a,25bとの間の間隔が不均一になりやすい。そのため、受口部20a,20bの内径や断熱管の外径が大きなものほど弾性体による止水効果や断熱効果が得られやすい。具体的に止水効果や断熱効果が得られやすい受口部20a,20bの内径または断熱管の外径としては60mm以上であり、75mm以上がより効果が得られやすく、88mm以上がさらに効果が得られやすい。
【0018】
管本体部10は、円筒状の発泡樹脂層40と、発泡樹脂層40の内面と外面の全体を覆う非発泡樹脂層50とを備えている。受口部20aと受口部20bは、非発泡樹脂層50で形成されている。発泡樹脂層40の受口部20a側の一部は受口部20aの非発泡樹脂層50に食い込んでいる。また、発泡樹脂層40の受口部20b側の一部は、受口部20bの非発泡樹脂層50に食い込んでいる。なお、発泡樹脂層は受口部に食い込んでいなくてもよい。
【0019】
発泡樹脂層40は、発泡性樹脂組成物を発泡して成形された層であり、断熱層として機能する。
発泡樹脂層40における発泡倍率は、1.0倍以上8.0倍以下が好ましく、1.1倍以上5.0倍以下がより好ましく、1.2倍以上3.0倍以下がさらに好ましい。発泡倍率が前記数値範囲内であれば、断熱性能に優れる。発泡倍率は、樹脂の種類または量、発泡剤の種類または量、製造条件等により調整できる。
【0020】
発泡倍率は以下の方法で測定できる。
管本体部10の円周方向10mm以上、軸方向50mmの部分を切り出し、非発泡樹脂層50を切削し、発泡樹脂層40だけを長さ約50mm程度の板状に加工したものを試験片とする。なお、試験片は円周方向に均等に4分割した点を中心に4個作製する。
JIS K 7122に従い、23℃±2℃で水置換式比重測定器を用いて試験片の見かけ密度を小数点以下3桁まで求め、下記式(1)により発泡倍率を算出する。
m=γc/γ・・・(1)
(式(1)中、mは発泡倍率であり、γは発泡樹脂層の見かけ密度(g/cm)であり、γcは発泡樹脂層の未発泡時の密度(g/cm)である。なお、発泡樹脂層の未発泡時の密度は、発泡樹脂層を溶融したものから測定できる。)
【0021】
発泡樹脂層40においては、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は、相互に連通していない独立気泡になっている。
発泡樹脂層40の独立気泡率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
上限値は、特に限定されないが、実質的には99%以下とされる。発泡樹脂層40の独立気泡率が前記数値範囲内であれば、低い熱伝導率を長期に亘って保つことができ、断熱性により優れる。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
【0022】
発泡性樹脂組成物としては、例えば、樹脂と発泡剤とを含む組成物が挙げられる。
樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂が好ましい。
樹脂としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
揮発性発泡剤としては、例えば、脂肪族炭化水素(プロパン、ブタン、ペンタン等)、脂環族炭化水素(シクロペンタン、シクロへキサン等)、ハロゲン化炭化水素(トリクロロフルオロメタン等)、エーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
【0024】
分解型発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤が挙げられる。
その他、炭酸ガス、窒素、空気等のガスを発泡剤として用いてもよい。
【0025】
発泡剤としては、発泡性能に優れる観点から、分解型発泡剤が好ましく、なかでも、重曹、アゾジカルボンアミドがより好ましい。発泡剤としては、1種のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
発泡性樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上8質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
発泡性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂および発泡剤以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。任意成分としては、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
発泡性樹脂組成物中の任意成分の含有量は、樹脂100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
非発泡樹脂層50は、非発泡性樹脂組成物を成形して形成される層である。管継手1が非発泡樹脂層50を有することで、管継手1の強度が高まる。非発泡樹脂層50は、透明であることが好ましい。
【0028】
非発泡性樹脂組成物としては、例えば、樹脂を含む組成物が挙げられる。
樹脂としては、発泡性樹脂組成物で挙げた樹脂と同じ樹脂が挙げられ、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂が好ましい。樹脂としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
非発泡性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。任意成分としては、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
非発泡性樹脂組成物中の任意成分の含有量は、樹脂100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0030】
なお、非発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでいる必要はないが、発泡剤を含んでいてもよい。非発泡性樹脂組成物に含まれる発泡剤の量は、樹脂100質量部に対して、0質量部以上8質量部以下が好ましく、0質量部以上5質量部以下がより好ましく、0質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
非発泡樹脂層50における発泡倍率は、0倍であることが好ましいが、1.5倍以下で低発泡しているものも本発明からは排除されない。
【0031】
弾性体30aは、環状の弾性体である。弾性体30aは、受口部20aの受け止め面25aに当接して配置される。弾性体30aは、その外方に向かう復元力および受口部20aの内面22aと弾性体30aの側面との間の摩擦力により、受口部20aの内面22aを押圧している。なお、受口部20aは開口端21aから受け止め面25aに向かって内径が徐々に小さくなっており、少なくとも受口部20aの受け止め面25aに当接して配置されたときに弾性体30aの側面が受口部20aの内面22aに接触すればよい。
図3に示すように、弾性体30aは、少なくとも、受口部20a内に配置される前に、平面視にて受口部20aの開口端21aから最も遠い箇所の内径d1(=受口部20aと受け止め面25aとの接続部における受口部20aの内径)よりも外側に位置する部位を有する。なお、弾性体30aは、受口部20aの開口端21aにおける受口部20aの内径d1よりも外側に位置する部位を有していてもよいが、弾性体30aを受口部20a内に配置しやすくするため、受口部20aの開口端21aにおける受口部20aの内径d1よりも外側に位置する部位を有していない、すなわち、受口部20a内に配置される前の弾性体30aの外径d2の大きさは、受口部20aの開口端21aにおける受口部20aの内径d1よりも小さくてもよい。
【0032】
本実施形態では、図3に示すように、弾性体30aは、平面視にて円環状の弾性体である。受口部20a内に配置される前の弾性体30aの外径d2は受口部20aの内径d1よりも大きい。受口部20aの内径d1に対する、受口部20a内に配置される前の弾性体30aの外径d2の大きさは、受口部20a内に弾性体30aを配置して、固定することができれば特に限定されず、弾性体30aの材質等を考慮して決定する。
円環状の弾性体30aは、全体を、その一面(表面)30cに沿って、中心c1方向に圧縮した状態で、受口部20a内に配置される。中心c1方向への圧縮を止めると、弾性体30aは、圧縮した方向とは反対側(円の外周方向)に、元の状態に戻ろうとする。そのため、弾性体30aは、その外方に向かう復元力により、受口部20aの内面22aを押圧して、受口部20aの内面22aに密着する。これにより、弾性体30aは、受口部20a内にて、受け止め面25aに接するように固定されている。そのため、弾性体30aによる断熱管の発泡樹脂層40への水の浸入抑制効果が十分に得られる。
弾性体30aの受口部20aの開口端21a側から見た正面視形状は、受け止め面25aの正面視での環形状と相似であることが好ましく、円環状が好ましい。なお、弾性体30aの正面視形状は、受け止め面25aの正面視形状と異なっていてもよく、楕円、多角形等であってもよい。
【0033】
弾性体30aの復元力は、JIS K 6767に準拠した圧縮永久ひずみが、圧縮終了30分後で20%以下、圧縮終了24時間後で6%以下であることが好ましい。なお、圧縮永久ひずみは、25%圧縮状態で22時間、23℃下に放置し、圧縮終了30分後および24時間後の厚さを測定し、[元の厚さー測定時の厚さ]×100/[元の厚さ]で算出することができる。
【0034】
弾性体30aの摩擦力は弾性体30aの表面粗さを高めることで調整が可能であり、弾性体30aの表面粗さは、JIS B 0633-2001に定義された算術平均表面粗さ(Ra)が2μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上20μm以下が最も好ましい。上記下限値未満であると、受口部20aの内面22aと弾性体30aの側面との間の摩擦力が小さく、弾性体30aを保持することができない。一方、上記上限を超えると、弾性体30aの表面の凹凸が大きすぎ、受口部20aの内面22aとの間の摩擦力が低下して弾性体30aを保持することができない。
なお、受口部20aの内面22aの表面粗さによっても調整が可能であり、受口部20aの内面22aの算術平均表面粗さ(Ra)を2μm以上50μm以下としてもよい。ただし、管継手1が射出成型により製造される場合、金型から管継手1を取り出しやすくするため、通常、内面22aの算術平均表面粗さ(Ra)は2μm以下とされる。
【0035】
本実施形態では、弾性体30aの厚さ方向の断面の形状が矩形状である。
断面形状が矩形状の弾性体30aは、例えば、弾性シートを環状に打ち抜くことで得られる。
なお、弾性体30aの厚さ方向の断面の形状は、矩形状には限定されず、円形状、楕円状、多角形状等であってもよい。
【0036】
弾性体30aの厚さは、2mm以上15mm以下が好ましく、4mm以上12mm以下がより好ましく、6mm以上10mm以下がさらに好ましい。弾性体30aの厚さが前記下限値以上であれば、弾性体30aが適度な剛性を保ち折れ曲がり難く、特に、弾性体30aの外径が大きい、例えば、60mm以上の場合でも折れ曲がり難く保持しやすいため、受け止め面25aに固定しやすい。また、断熱管の端面と弾性体との間に隙間が生じ難いため止水効果が得られやすい。弾性体30aの厚さが前記上限値以下であれば、受口部20aの長さを短くでき、受口部20aの強度を保つことができる。
【0037】
なお、「弾性体の外径」とは、弾性体の外縁形状が円である場合にはその外縁の直径を指し、円以外である場合は外縁の外接円の直径を指す。また、「受口部の内径」とは、筒状の受口部の軸方向に垂直な断面の内縁形状が円である場合にはその内縁の直径を指し、円以外である場合は内縁の外接円の直径を指す。
【0038】
本発明においては、断熱管や弾性体を挿入しやすい点から、図4および図5に示すように、受口部20aの内面22aが、段差24aの受け止め面25aとの境界から開口端21aに向かうにつれて漸次拡径するテーパー状であることが好ましい。なお、受口部20aの内面22aがテーパー状でなくてもよい。
受口部20aの内面22aが、段差24aの受け止め面25aとの境界から開口端21aに向かうにつれて漸次拡径するテーパー状である場合、弾性体30aの外径は、前記境界よりも開口端21a側の受口部20aの内径未満であることが好ましい。この場合、受口部20aの内面22aにおける段差24aの受け止め面25aとの境界の内径(段差24aの受け止め面25aの外径)と、弾性体30aの外径との差は0mmであってもよい。
【0039】
弾性体30aの内径は、段差24aの内径以上であることが好ましい。すなわち、図4に示すように、弾性体30aの内径をd3、段差24aの内径をd4としたとき、d3≧d4になっていることが好ましい。これにより、管継手と断熱管の接続部分における流体の流れが弾性体30aによって阻害され難くなる。
【0040】
弾性体30aの内径d3と段差24aの内径d4との差(d3-d4)は、0mm以上4mm以下が好ましく、0mm以上2mm以下がより好ましく、実質的に0mmであってもよい。差(d3-d4)が前記数値範囲内であれば、断熱管で弾性体30aが押しつぶされても、弾性体30aが通水部に突出し難く、管継手と断熱管の接続部分における流体の流れが阻害され難い。
【0041】
弾性体30bは、弾性体30aと同様に、円環状の弾性体である。弾性体30bは、受口部20b内の受け止め面25bに、上述の弾性体30aと同様に固定されている。弾性体30bは、弾性体30aと同様の態様であり、好ましい態様も同じである。
【0042】
受口部20bの内径に対する、受口部20b内に配置される前の弾性体30bの外径の大きさは、受口部20b内に弾性体30bを配置して、固定することができれば特に限定されず、弾性体30bの材質等を考慮して決定する。例えば、弾性体30bの外径と受口部20bの内径との差の好ましい範囲は、上記の弾性体30aの外径d2と受口部20aの内径d1の差(d2-d1)の好ましい範囲と同様である。弾性体30bの外径と受口部20bの内径との差は、差(d2-d1)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
弾性体30bの内径は、段差24bの内径以上であることが好ましい。弾性体30bの内径と段差24bの内径との差の好ましい範囲は、差(d3-d4)の好ましい範囲と同じである。弾性体30bの内径と段差24bの内径との差は、差(d3-d4)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
弾性体30aおよび弾性体30bは、樹脂弾性体で構成されている。弾性体30aおよび弾性体30bは、表層にスキン層が設けられていてもよいが、弾性体30aおよび弾性体30bと受口の内面との摩擦力を向上させるため、表層に発泡層が露出していることが好ましい。
弾性体30aおよび弾性体30bに用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムが挙げられる。樹脂としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
弾性体30aおよび弾性体30bを構成する樹脂弾性体としては、複数の気泡が形成され、気泡壁には実質的に孔が存在せず、それら複数の気泡が相互に連通していない独立気泡を有する樹脂発泡体が好ましい。
【0046】
弾性体30aおよび弾性体30bを構成する樹脂発泡体の独立気泡率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限値は、特に限定されないが、実質的には99%以下とされ、80%以下であれば弾性体30aの復元力が得られやすい。弾性体30a,30bの独立気泡率が前記数値範囲内であれば、管継手の受口部に挿入された断熱管の発泡樹脂層への水の浸入を抑制できる。
【0047】
樹脂発泡体の発泡倍率は、1.1倍以上50倍以下が好ましく、5.0倍以上45倍以下がより好ましく、10倍以上40倍以下がさらに好ましい。発泡倍率が前記下限値以上であれば、断熱性に優れるため弾性体30a,30bが設置されている部分における受口部20a,20bの外面に結露が発生するのを防止できる。また、柔軟性に優れ、断熱管の端面と弾性体との間に隙間が生じ難いため止水効果が得られやすい。発泡倍率が前記上限値以下であれば、弾性体30a,30bが適度な剛性を保ち折れ曲がり難く、保持しやすいため受け止め面25a,25bに密着しやすい。発泡倍率は、樹脂の種類または量、発泡剤の種類または量、製造条件等により調整できる。
【0048】
弾性体30aおよび弾性体30bを構成する樹脂発泡体の発泡倍率は、管継手から樹脂発泡体を切除したものを試験片とし、発泡樹脂層40の発泡倍率と同様にして測定することができる。
【0049】
弾性体30aおよび弾性体30bは、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂および発泡剤以外の他の成分(任意成分)を含んでもよい。任意成分としては、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0050】
図5に示すように、管継手1においては、発泡樹脂層(断熱層)110の内面側と外面側に非発泡樹脂層120が設けられた断熱管100を受口部20a内に挿入し、断熱管100を弾性体30aに押し付けて圧縮させた状態で接続することができる。これにより、弾性体30aによって断熱管100の発泡樹脂層110に水が浸入することが抑制される。同様に、別の断熱管100を受口部20b内に挿入し、断熱管100を弾性体30bに押し付けて圧縮させた状態で接続することで、弾性体30bによって断熱管100の発泡樹脂層110に水が浸入することが抑制される。
【0051】
なお、本実施形態の管継手1では、中心c1方向に圧縮した円環状の弾性体30a,30bが元の状態に戻ろうとすることを利用して、弾性体30a,30bを受け止め面25a,25bに固定しているが、接着層を介して、受け止め面25a,25bに弾性体30a,30bを固定してもよい。
【0052】
接着層としては、例えば、粘着剤を溶剤に溶解または分散させた液状粘着剤や、溶剤揮発型や反応硬化性、熱硬化性等の液状接着剤を弾性体または受け止め面25a,25bに塗布することで形成される層が挙げられる。液状粘着剤や液状接着剤の20℃における粘度としては300mPa・s以上15000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以上10000mPa・s以下がより好ましい。この範囲の粘度であれば、液だれして受口部20a,20bの内面22a,22bに粘着剤や接着剤が付着するのを防ぐことができる。また、接着層は、基材両面に粘着剤を設けた両面テープで形成されていてもよく、この場合にも受口部20a,20bの内面22a,22bに粘着剤や接着剤が付着するのを防ぐことができる。なかでも、管継手1の非発泡樹脂層60がABS樹脂で構成されている場合には溶剤への耐性が低いため、粘着剤を少量の溶剤に溶解又は分散させたものをあらかじめ弾性体に塗布し乾燥させたもの、もしくは両面テープが好ましい。
【0053】
粘着剤としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、スチレン/ブタジエンラテックス系粘着剤、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、熱可塑性ゴムABAブロックポリマー(ただし、Aは熱可塑性のポリスチレンブロック、Bはポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリブチレンブロックを表す。)、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤の主成分は(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であり、いかなる(メタ)アクリル酸エステルも使用することが可能である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を表す。粘着剤としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
(管継手の製造方法)
管継手の製造方法としては、例えば、以下の工程(a)と工程(b)とを有する方法が挙げられる。
工程(a)管本体部10、受口部20aおよび受口部20bを成形する。
工程(b)弾性体30aおよび弾性体30bを作製し、弾性体30aを受口部20a内にて受け止め面25aに固定し、弾性体30bを受口部20b内にて受け止め面25bに固定する。
【0055】
工程(a)の管本体部10、受口部20aおよび受口部20bの成形方法としては、特に限定されず、例えば、特許第3699579号公報に記載の射出成形法を利用できる。具体的には、例えば、管本体部10、受口部20aおよび受口部20bを形成するキャビティを有する金型内に、非発泡樹脂層50を形成する非発泡性樹脂組成物を射出して途中まで充填する。次いで、発泡樹脂層40を形成する発泡性樹脂組成物を射出し、発泡性樹脂組成物の注入圧と発泡圧を利用して、発泡性樹脂組成物を非発泡性樹脂組成物の内側に入り込ませつつキャビティ内にそれらを密に充填する。次いで、冷却固化し、発泡樹脂層40が非発泡樹脂層50で覆われている、管本体部10、受口部20aおよび受口部20bが一体となった一体物を得る。
【0056】
工程(b)では、弾性体30aを中心c1方向に圧縮した状態で受口部20a内にて受け止め面25aに接触させて配置する。その後、弾性体30aに対する中心c1方向への圧縮を止めて、弾性体30aを、受口部20aの内面22aに密着させて、受け止め面25aに固定する。同様に、弾性体30bを中心方向に圧縮した状態で受口部20b内にて受け止め面25aに接触させて配置する。その後、弾性体30bに対する中心方向への圧縮を止めて、弾性体30bを、受口部20bの内面22bに密着させて、受け止め面25bに固定する。
弾性体30a,30bは、弾性シートを環状に打ち抜いて形成する。
【0057】
[第2実施形態]
本発明の実施の形態に係る管継手は、一般的に「チーズ」(tees)と称される3方向分岐のT形の管継手であってもよい。具体的には、例えば、図6に例示した管継手2であってもよい。
管継手2は、管本体部210と、3つの受口部220a~220cと、3つの弾性体230a~230cと、を備えている。
【0058】
管本体部210は、内部に3方向に分岐した流路を有し、3つの開口部212a~212cが形成されている。開口部212aから開口部212bまでの直線状の第1の管軸O1と、開口部212cから管本体部210の中心部までの直線状の第2の管軸O2とは、90.0°~91.1°の角度で交差している。
【0059】
3つの受口部220a~220cは、管本体部210の3つの開口部212a~212cをそれぞれ囲うように設けられている。管本体部210において、第1の管軸O1を挟んで開口部212cに対向する位置には、成形時に射出される位置となる射出ゲート部214が設けられている。
【0060】
受口部220aと管本体部210の開口部212aとの境界部分には、受口部220aの内面221aよりも内側に突き出る環状の段差224aが形成されている。段差224aの受口部220aの開口端223aに向く面は、受口部220aに挿入される管を受け止める受け止め面225a、いわゆるストッパーになっている。
【0061】
同様に、受口部220bと管本体部210の開口部212bとの境界部分に環状の段差224bが形成され、その開口端223bに向く面が受け止め面225bになっている。
また、受口部220cと管本体部210の開口部212cとの境界部分に環状の段差224cが形成され、その開口端223cに向く面が受け止め面225cになっている。
【0062】
管本体部210は、発泡樹脂層(断熱層)240と、非発泡樹脂層250とを備える。
発泡樹脂層240の内面と外面は非発泡樹脂層250に覆われている。受口部220aと受口部220bと受口部220cとは、非発泡樹脂層250で形成されている。
【0063】
弾性体230a~230cは、受口部220a~220c内に配置される前に、平面視にて受口部220a~220cの内径よりも外側に位置する部位を有する。本実施形態では、弾性体230a~230cは、平面視にて円環状の弾性体である。受口部220a~220c内に配置される前の弾性体230a~230cの外径は受口部220a~220cの内径よりも大きい。受口部220a~220cの内径に対する、受口部220a~220c内に配置される前の弾性体230a~230cの外径の大きさは、受口部220a~220c内に弾性体230a~230cを配置して、固定することができれば特に限定されず、弾性体230a~230cの材質等を考慮して決定する。
円環状の弾性体230a~230cは、その一面(表面)に沿って、中心方向に圧縮した状態で、受口部220a~220c内に配置される。中心方向への圧縮を止めると、弾性体230a~230cは、圧縮した方向とは反対側(円の外周方向)に、元の状態に戻ろうとする。そのため、弾性体230a~230cは、受口部220a~220cの内面221a~221cに密着する。これにより、弾性体230a~230cは、受口部220a~220c内にて、受け止め面225a~225cに接するように固定されている。
【0064】
弾性体230a~230cの正面視形状は、受け止め面225a~225cの正面視での環形状と相似であることが好ましく、円環状が好ましい。なお、弾性体230a~230cの正面視形状は、受け止め面225a~225cの正面視形状と異なっていてもよく、楕円、多角形等であってもよい。
【0065】
本実施形態では、弾性体230a~230cの厚さ方向の断面の形状が矩形状である。なお、弾性体230a~230cの厚さ方向の断面の形状は、矩形状には限定されず、円形状、楕円状、多角形状等であってもよい。
【0066】
弾性体230a~230cの厚さの好ましい範囲は、弾性体30aの厚さの好ましい範囲と同様である。
弾性体230aの外径は受口部220aの内径以下になっている。同様に、弾性体230bの外径は受口部220bの内径以下になっている。弾性体230cの外径は、受口部220cの内径以下になっている。これにより、弾性体230a~230cを受け止め面225a~225cに固定する際に、弾性体230a~230cが曲がったりすることを抑制でき、弾性体230a~230cの固定位置がずれることを抑制できる。
【0067】
受口部220a内に配置される前の弾性体230aの外径と受口部220aの内径との差、受口部220b内に配置される前の弾性体230bの外径と受口部220bの内径との差、受口部220c内に配置される前の弾性体230cの外径と受口部220cの内径との差の好ましい範囲は、上記差(d1-d2)の好ましい範囲と同じである。これらの差は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
弾性体230aの内径は段差224aの内径以上であることが好ましい。同様に、弾性体230bの内径は段差224bの内径以上であることが好ましい。弾性体230cの内径は段差224cの内径以上であることが好ましい。
【0069】
弾性体230aの内径と段差224aの内径との差、弾性体230bの内径と段差224bの内径との差、弾性体230cの内径と段差224cの内径との差の好ましい範囲は、差d3-d4の好ましい範囲と同様である。これらの差は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0070】
管継手2においては、3つの断熱管100をそれぞれ受口部220a~220c内に挿入し、断熱管100を弾性体230a~230cに押し付けて圧縮させた状態で接続することができる。これにより、弾性体230a~230cによって断熱管100の発泡樹脂層110に水が浸入することが抑制される。
【0071】
管継手2は、管継手1と同様の方法で製造できる。例えば、管継手1で説明した方法と同様の射出成形によって、管本体部210および受口部220a~220cの一体物を成形する。
次いで、弾性シートを環状に打ち抜いて弾性体230a~230cを形成する。
次いで、弾性体230aを中心方向に圧縮した状態で受口部220a内にて受け止め面225aに接触させて配置する。その後、弾性体230aに対する中心方向への圧縮を止めて、弾性体230aを、受口部220aの内面221aに密着させて、受け止め面225aに固定する。同様に、弾性体230bを中心方向に圧縮した状態で受口部220b内にて受け止め面225bに接触させて配置する。その後、弾性体230bに対する中心方向への圧縮を止めて、弾性体230bを、受口部220bの内面221bに密着させて、受け止め面225bに固定する。同様に、弾性体230cを中心方向に圧縮した状態で受口部220c内にて受け止め面225cに接触させて配置する。その後、弾性体230cに対する中心方向への圧縮を止めて、弾性体230cを、受口部220cの内面221cに密着させて、受け止め面225cに固定する。
【0072】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0073】
例えば、図7図8に示すような変形例を採用してもよい。なお、変形例では、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0074】
図7に示す変形例では、弾性体330a,330bは、平面視にて回転対称の形状であり、受口部20a,20b内に配置される前の弾性体330a,330bは、平面視にて受口部20a,20bの内径d5よりも外側に突出する複数の突部を有する。言い換えれば、弾性体330a,330bは、中心c2から外縁までの距離が軸線回りに変化している。図7に示すように、弾性体330a,330bは、受口部20a,20b内に配置される前に、平面視にて正十二角形状の弾性体である。弾性体330a,330bは、受口部20a,20b内に配置される前に、12回転対称の形状である。正十二角形状の弾性体330a,330bは、外径d6(正十二角形の向かい合う2つの頂点330c,330cを結ぶ線分に相当)が、図7に示すように、弾性体330a,330bの外周に対して、受口部20a,20bの内面22a,22bを示す円が内接する大きさであることが好ましい。弾性体330a,330bの外周と受口部20a,20bの内面22a,22bを示す円がこのような関係にある場合、受口部20a,20b内に配置される前の弾性体330a,330bは、平面視にて受口部20a,20bの内径d5よりも外側に突出する12個の頂点(突部)330cを有する。
【0075】
円環状の弾性体330a,330bは、全体を、その一面(表面)330dに沿って、中心c2方向に圧縮した状態で、受口部20a,20b内に配置される。中心c2方向への圧縮を止めると、弾性体330a,330bは、圧縮した方向とは反対側(頂点330c方向)に、元の状態に戻ろうとする。そのため、弾性体330a,330bは、その外方に向かう復元力により、受口部20a,20bの内面22a,22bを押圧して、受口部20a,20bの内面22a,22bに密着する。これにより、弾性体330a,330bは、受口部20a,20b内にて、受け止め面25a,25bに接するように固定されている。そのため、弾性体330a,330bによる断熱管の発泡樹脂層40への水の浸入抑制効果が十分に得られる。
【0076】
なお、本変形例では、弾性体330a,330bが平面視にて正十二角形状である場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明では、弾性体が、平面視にて正五角形状、正六角形状、正八角形状、正九角形状、正十角形状等の正多角形であってもよい。これらの場合も、正多角形状の弾性体は、外径(正多角形の向かい合う2つの頂点を結ぶ線分に相当)が、弾性体の外周に対して、受口部の内面を示す円が内接する大きさであることが好ましい。
【0077】
図8に示す変形例では、弾性体430a,430bは、平面視にて回転対称の形状であり、受口部20a,20b内に配置される前の弾性体430a,430bは、平面視にて受口部20a,20bの内径d7よりも外側に突出する複数の突部を有する。言い換えれば、弾性体430a,430bは、中心c3から外縁までの距離が軸線回りに変化している。図8に示すように、弾性体430a,430bは、受口部20a,20b内に配置される前に、平面視にて、受口部20a,20bの内径d7よりも外径d8が大きい円の外縁の一部を90°毎に、外径d8を示す線分と平行に切り欠いた形状の弾性体である。弾性体430a,430bは、受口部20a,20b内に配置される前に、4回転対称の形状である。弾性体430a,430bでは、図8に示すように、前記の切り欠いた部分に、受口部20a,20bの内面22a,22bを示す円が内接することが好ましい。弾性体430a,430bと受口部20a,20bの内面22a,22bを示す円がこのような関係にある場合、受口部20a,20b内に配置される前の弾性体430a,430bは、平面視にて受口部20a,20bの内径d7よりも外側に突出する4個の突部430cを有する。
【0078】
弾性体430a,430bは、全体を、その一面(表面)430dに沿って、中心c3方向に圧縮した状態で、受口部20a,20b内に配置される。中心c3方向への圧縮を止めると、弾性体430a,430bは、圧縮した方向とは反対側(突部430c方向)に、元の状態に戻ろうとする。そのため、弾性体430a,430bは、その外方に向かう復元力により、受口部20a,20bの内面22a,22bを押圧して、受口部20a,20bの内面22a,22bに密着する。これにより、弾性体430a,430bは、受口部20a,20b内にて、受け止め面25a,25bに接するように固定されている。そのため、弾性体430a,430bによる断熱管の発泡樹脂層40への水の浸入抑制効果が十分に得られる。
【0079】
なお、本変形例では、弾性体430a,430bが、平面視にて、受口部20a,20bの内径d7よりも外径d8が大きい円の外縁の一部が90°毎に4個所切り欠いた形状である場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明では、弾性体が、受口部の内径よりも外径が大きい円の外縁の一部が所定の間隔をおいて、回転対称となるように、複数の個所で切り欠いた形状であってもよい。
【0080】
以上説明したように、本発明においては、受口部内に配置される前の弾性体は、平面視にて受口部の内径よりも外側に位置する部位を有する。これにより、中心方向に圧縮した弾性体を受口部内に配置した後、圧縮を止めると、弾性体が元の状態に戻ろうとする。弾性体が元の状態に戻ろうとすることを利用して、弾性体を受け止め面に密着して固定することができる。これにより、輸送時の振動や衝撃、接続された断熱管の収縮等による弾性体の剥がれが抑制される。これらのことから、弾性体による断熱管の発泡樹脂層への水の浸入抑制効果が十分に発現される。
【0081】
なお、本発明の管継手は、前記した管継手1,2には限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明の管継手は、直管状のもの、一端の開口部から他端の開口部にかけて内径が次第に縮小するレデューサー、バルブ付きの管継手等であってもよい。
また、本発明の実施形態では、管本体部が発泡性樹脂組成物と非発泡性樹脂組成物で構成されているとしたが、これに限るものではない。例えば、受口部と管本体部が非発泡性樹脂組成物のみで構成され、管本体部が、受口部と一体に形成された内管部と、この内管部の外側を覆う外管部とを備え、内管部の外面と外管部の内面とを離間させることで断熱層としての中空層が形成された管継手としてもよい。
【実施例
【0082】
[実施例1]
図1~4に例示した管継手1を製造した。
具体的には、ABS樹脂に、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを加えて混練した発泡性樹脂組成物と、ABS樹脂とポリメタクリル酸メチルを混練した非発泡性樹脂組成物を調製した。射出成形により、前記発泡性樹脂組成物で形成される発泡樹脂層40と、非発泡性樹脂組成物で形成される非発泡樹脂層50とを備える、管本体部10、受口部20a及び受口部20bの一体物を成形した。受口部20a,20bの内径d1は88.65mm、段差24a,24bの内径d4は69mmとした。
図7に示した中心に穴の開いた正十二角形状の弾性体30a(材質:発泡ポリエチレン、発泡倍率:30倍、厚さ:6mm、表面粗さRa:10μm、圧縮永久ひずみ(30分後):12%、圧縮永久ひずみ(24時間後):5%)を受口部20a内に挿入し、受け止め面25aに配置した。弾性体30aと同一形状の弾性体30bを受口部20b内に挿入し、弾性体30bを受け止め面25bに配置し、管継手1を得た。
得られた管継手を高さ2mの位置から落下させ、弾性体30aおよび30bが受口部から脱落していないか確認したところ、いずれも脱落していなかった。
【符号の説明】
【0083】
1,2 管継手
10 管本体部
12a,12b 開口部
20a,20b 受口部
21a,21b 開口端
24a,24b 段差
25a,25b 受け止め面
30a,30b,330a,330b,430a,430b 弾性体
40 発泡樹脂層
50 非発泡樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8