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特許7512153エンコーダ、およびエンコーダの通信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】エンコーダ、およびエンコーダの通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240701BHJP
   H04L 69/00 20220101ALI20240701BHJP
【FI】
G01D5/244 Z
H04L69/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020161637
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054536
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 正吾
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082334(WO,A1)
【文献】特開2006-10446(JP,A)
【文献】特開昭61-234154(JP,A)
【文献】特開2010-187245(JP,A)
【文献】特開2005-45429(JP,A)
【文献】特開2006-17509(JP,A)
【文献】特開2006-197153(JP,A)
【文献】特表2008-526536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G08C 13/00-25/04
B25J 1/00-21/02
H04L 12/00-12/46、
27/00-27/38、
69/00
H04B 10/00-10/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダにおいて、
前記通信部は、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期と所定時間とが経過した第1時点で前記制御信号を受信しない場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定部を備え
前記通信速度設定部は、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、前記シフトレジスタを制御するレジスタ制御部と、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、前記通信速度を前記第2速度に設定する設定部と、を備え、
前記レジスタ制御部は、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、
前記設定部は、前記シフトレジスタに0が入力されたときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダにおいて、
前記通信部は、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期および所定時間が経過した第1時点で前記制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの前記制御信号の間隔が前記第2周期の場合に、前記通信速度を
前記第2速度に切り換える通信速度設定部を備え
前記通信速度設定部は、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、前記シフトレジスタを制御するレジスタ制御部と、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、前記通信速度を前記第2速度に設定する設定部と、を備え、
前記レジスタ制御部は、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、
前記設定部は、前記シフトレジスタに0が入力された後に前記カウンタ値が前記第2周期の長さに一致する第3カウンタ値に達したときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定することを特徴とするエンコーダ。
【請求項3】
前記通信部は、電源が投入されたときに、前記通信速度を前記第1速度に設定する初期設定部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダの通信制御方法において、
前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期と所定時間とが経過した第1時点で前記制御信号を受信しない場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定工程を備え
前記通信部に、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、を備えておき、
前記通信速度設定工程では、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、前記シフトレジスタに0が入力されたときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定することを特徴とする通信制御方法。
【請求項5】
通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダの通信制御方法において、
前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期および所定時間が経過した第1時点で前記制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの前記制御信号の間隔が前記第2周期の場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定工程を備え
前記通信部に、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマ
ーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、を備えておき、
前記通信速度設定工程では、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、前記シフトレジスタに0が入力された後に前記カウンタ値が前記第2周期の長さに一致する第3カウンタ値に達したときに前記カウンタ値が0になると、前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定することを特徴とする通信制御方法。
【請求項6】
電源が投入されたときに、前記通信速度を前記第1速度に設定することを特徴とする請求項4または5に記載のエンコーダの通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報を送信する通信線を介して外部の機器との間で通信を行うエンコーダ、およびエンコーダの通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、駆動源を駆動して可動部を動作させる装置に取り付けられる。エンコーダから出力される位置情報は、通信線を介して、制御装置に送信される。制御装置は、受信した位置情報に基づいて、駆動源を駆動制御する。駆動源は、例えば、モータである。装置は、例えば、産業用のロボットである。
【0003】
エンコーダを装置に取り付けた後に、使用環境や用途に合わせてエンコーダの分解能を設定する必要が生じる場合がある。また、エンコーダを装置に取り付けた後に、エンコーダに、位置情報の基準となる原点位置を設定する必要が生じる場合がある。特許文献1には、外部の装置からエンコーダに入力される信号によって設定を変更できるエンコーダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-178303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンコーダを設定する際に、エンコーダ設定用のアプリケーションソフトウエアが動作するコンピュータとエンコーダとを接続して、アプリケーションソフトウエアが発行する設定指令をエンコーダに送信すれば、設定作業が容易となる。また、このようにすれば、エンコーダと制御装置とを接続する前に、エンコーダの設定を完了させておくことができる。
【0006】
ここで、エンコーダとコンピュータとを接続する際に、エンコーダと制御装置とを接続する通信線とは別に専用の通信線を用意すれば、エンコーダとコンピュータとの接続が容易となる。しかし、この場合には、通信線の本数が増加するので、これらを纏めるケーブルの径が増大して、エンコーダを取り付ける装置の小型化が阻害される場合がある。
【0007】
一方、エンコーダと制御装置とを接続する通信線を利用してエンコーダとコンピュータとを接続すれば、通信線の本数は、増加しない。しかし、一般的に、エンコーダと制御装置との間で行われる通信の通信速度は、コンピュータが外部の機器との間で行う通信の通信速度と比較して、著しく速い。従って、通信線を介してエンコーダとコンピュータを接続してコンピュータから設定指令を送信しても、通信速度に起因する情報の欠落などが発生してしまい、エンコーダの側で制御命令を認識することができない場合がある。
【0008】
本発明の課題は、エンコーダと制御装置とを接続する通信線を利用してコンピュータなどの外部の機器との通信を可能とするエンコーダ、およびエンコーダの通信制御方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装
置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダにおいて、前記通信部は、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期と所定時間とが経過した第1時点で前記制御信号を受信しない場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、通信部は、通信線を介した通信の通信速度が第1速度に設定されているときに、第1周期よりも長い第2周期で制御信号を複数回受信した後に第2周期と所定時間とが経過した時点で制御信号を受信しない場合に、通信速度を第1速度から第2速度に切り換える。ここで、制御信号は、エンコーダの設定を行う場合に通信線に接続された外侮の機器からエンコーダに送信されるものである。また、制御信号の第2周期は、位置情報を取得するために制御装置からエンコーダに送信される問い合わせ指令の第1周期と比較して長い。従って、外部の機器が通信を行う通信速度が第1速度よりも遅い第2速度の場合でも、外部の機器は第2周期で制御信号を送信することが容易である。また、制御信号の第2周期が問い合わせ指令の第1周期よりも長いので、通信速度設定部は、制御信号と問い合わせ指令とを区別して、制御信号を認識できる。よって、通信速度設定部は、制御信号を受信したときに、通信速度を、外部の機器に適合する第2速度に設定できる。そして、通信速度が第1速度よりも遅い第2速度に設定された後は、外部の機器とエンコーダとの間で、情報を欠落させることなく、設定指令などを送受信できる。
【0011】
ここで、エンコーダの設置環境によっては、磁気ノイズや静電気などに起因して、通信線に意図しない信号が乗り、この信号がエンコーダに入力されてしまう場合がある。また、このような意図しない信号が外部の機器からの制御信号と一致或いは酷似する場合には、エンコーダと制御装置とが接続され制御装置が装置を駆動制御しているときに、誤って、通信速度設定部に誤動作が発生してしまい、通信速度を第1速度から第2速度に切り換えてしまう可能性がある。このような問題に対して、本発明では、通信速度の切り換えには、制御信号を予め定めた第2周期で複数回受信する必要がある。また、制御信号を複数回受信した次の第2周期において制御信号を受信しない必要がある。これにより、通信速度設定部では、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。よって、通信速度設定部に誤動作が発生することを防止あるいは抑制できる。
【0012】
本発明において、前記通信速度設定部は、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、前記シフトレジスタを制御するレジスタ制御部と、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、前記通信速度を前記第2速度に設定する設定部と、を備え、前記レジスタ制御部は、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、前記設定部は、前記シフトレジスタに0が入力されたときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定するものとすることができる。このようにすれば、タイマーと、シフトレジスタと、記憶部に記憶保持された設定値を使用して、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。
【0013】
次に、本発明の別の形態は、通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第
2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダにおいて、前記通信部は、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期および所定時間が経過した第1時点で前記制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの前記制御信号の間隔が前記第2周期の場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、通信部は、通信線を介した通信の通信速度が第1速度に設定されているときに、第1周期よりも長い第2周期で制御信号を複数回受信した後に第2周期と所定時間とが経過した時点で制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの制御信号の間隔が第2周期の場合に、通信速度を第1速度から第2速度に切り換える。ここで、制御信号は、エンコーダの設定を行う場合に通信線に接続された外侮の機器からエンコーダに送信されるものである。また、制御信号の第2周期は、位置情報を取得するために制御装置からエンコーダに送信される問い合わせ指令の第1周期と比較して長い。従って、外部の機器が通信を行う通信速度が第1速度よりも遅い第2速度の場合でも、外部の機器は第2周期で制御信号を送信することが容易である。また、制御信号の第2周期が問い合わせ指令の第1周期よりも長いので、通信速度設定部は、制御信号と問い合わせ指令とを区別して、制御信号を認識できる。よって、通信速度設定部は、制御信号を受信したときに、通信速度を、外部の機器に適合する第2速度に設定できる。そして、通信速度が第1速度よりも遅い第2速度に設定された後は、外部の機器とエンコーダとの間で、情報を欠落させることなく、設定指令などを送受信できる。
【0015】
ここで、エンコーダの設置環境によっては、磁気ノイズや静電気などに起因して、通信線に意図しない信号が乗り、この信号がエンコーダに入力されてしまう場合がある。また、このような意図しない信号が外部の機器からの制御信号と一致或いは酷似する場合には、エンコーダと制御装置とが接続され制御装置が装置を駆動制御しているときに、誤って、通信速度設定部に誤動作が発生してしまい、通信速度を第1速度から第2速度に切り換えてしまう可能性がある。このような問題に対して、本発明では、通信速度の切り換えには、制御信号を予め定めた第2周期で複数回受信する必要がある。また、制御信号を複数回受信した次の第2周期において制御信号を受信せず、その後に、第2周期の間隔で2つの制御信号を受信する必要がある。これにより、通信速度設定部では、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。よって、通信速度設定部に誤動作が発生することを防止あるいは抑制できる。
【0016】
本発明において、前記通信速度設定部は、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、前記シフトレジスタを制御するレジスタ制御部と、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、前記通信速度を前記第2速度に設定する設定部と、を備え、前記レジスタ制御部は、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力し、前記設定部は、前記シフトレジスタに0が入力された後に前記カウンタ値が前記第2周期の長さに一致する第3カウンタ値に達したときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定するものとすることができる。このようにすれば、タイマーと、シフトレジスタと、記憶部に記憶保持
された設定値を使用して、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。
【0017】
本発明において、前記通信部は、電源が投入されたときに、前記通信速度を前記第1速度に設定する初期設定部を備えるものとすることができる。このようにすれば、エンコーダの電源を投入したときに、通信線を介した通信の通信速度を第1速度とすることができる。従って、外部の機器との間で第2速度の通信を行った後に、エンコーダの電源を切断して、電源を再投入すれば、通信速度を第1速度に戻すことができる。
【0018】
次に、本発明は、通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダの通信制御方法において、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期と所定時間とが経過した第1時点で前記制御信号を受信しない場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定工程を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、通信線を介してエンコーダに接続された外部の機器から制御信号が送信されたときに、エンコーダにおいて第2周期で制御信号を複数回受信した後に第2周期と所定時間とが経過した時点で制御信号を受信しない場合に、通信速度を第1速度から第2速度に切り換える。従って、通信速度が第2速度に設定された後は、外部の機器とエンコーダとの間で、情報を欠落させることなく、設定指令などを送受信できる。ここで、制御信号の第2周期が指令の第1周期よりも長いので、通信速度設定部は、制御信号と問い合わせ指令とを区別して、制御信号を認識できる。また、通信速度設定部が通信速度を第2速度に切り替えるためには、所定の受信パターンで制御信号を受信する必要があるので、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。従って、エンコーダが、誤動作により、通信速度を切り換えてしまうことを防止あるいは抑制できる。
【0020】
本発明において、前記通信部に、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、を備えておき、前記通信速度設定工程では、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力するレジスタ制御工程と、前記シフトレジスタに0が入力されたときに前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定する設定工程と、を備えるものとすることができる。このようにすれば、タイマーと、シフトレジスタと、記憶部に記憶保持された設定値を使用して、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。
【0021】
次に、本発明の別の形態は、通信線を介して第1速度または当該第1速度よりも遅い第2速度の通信が可能な通信部を備え、前記通信線を介して接続された制御装置との間で前記第1速度の双方向通信を行い、第1周期で前記制御装置からの問い合わせ指令を受信する毎に当該制御装置に位置情報を送信するエンコーダの通信制御方法において、前記通信の通信速度が前記第1速度に設定されているときに前記第1周期よりも長い第2周期で所
定の制御信号を複数回受信し、最後に前記制御信号を受信してから前記第2周期および所定時間が経過した第1時点で前記制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの前記制御信号の間隔が前記第2周期の場合に、前記通信速度を前記第2速度に切り換える通信速度設定工程を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、通信線を介してエンコーダに接続された外部の機器から制御信号が送信されたときに、エンコーダにおいて第2周期で制御信号を複数回受信した後に第2周期と所定時間とが経過した時点で制御信号を受信しないときに、その後に受信した2つの制御信号の間隔が第2周期の場合に通信速度を第1速度から第2速度に切り換える。従って、通信速度が第2速度に設定された後は、外部の機器とエンコーダとの間で、情報を欠落させることなく、設定指令などを送受信できる。ここで、制御信号の第2周期が指令の第1周期よりも長いので、通信速度設定部は、制御信号と問い合わせ指令とを区別して、制御信号を認識できる。また、通信速度設定部が通信速度を第2速度に切り替えるためには、所定の受信パターンで制御信号を受信する必要があるので、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。従って、エンコーダが、誤動作により、通信速度を切り換えてしまうことを防止あるいは抑制できる。
【0023】
本発明において、前記通信部に、前記制御信号を受信するとカウンタ値を0にして計数を開始するタイマーと、前記カウンタ値が前記第1周期よりも長く前記第2周期よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部と、前記カウンタ値が前記第2周期よりも所定時間長い第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部と、シフトレジスタと、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部と、を備えておき、前記通信速度設定工程では、前記制御信号を最初に受信したときに前記シフトレジスタの全てのビットを0に設定し、前記カウンタ値が前記第1カウンタ値に達する毎に前記シフトレジスタのビットをシフトさせて1を入力し、前記カウンタ値が前記第2カウンタ値に達すると前記シフトレジスタのビットをシフトさせて0を入力するレジスタ制御工程と、前記シフトレジスタに0が入力された後に前記カウンタ値が前記第2周期の長さに一致する第3カウンタ値に達したときに前記カウンタ値が0になると、前記設定値と前記シフトレジスタの値とを比較して、前記シフトレジスタの値と前記設定値とが一致する場合に前記通信速度を前記第2速度に設定するものとすることができる。このようにすれば、タイマーと、シフトレジスタと、記憶部に記憶保持された設定値を使用して、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号の受信パターンとを区別できる。
【0024】
本発明において、電源が投入されたときに、前記通信速度を前記第1速度に設定する初期設定工程を備えるものとすることができる。このようにすれば、エンコーダの電源を投入したときに、通信線を介した通信の通信速度を第1速度とすることができる。従って、外部の機器との間で第2速度の通信を行った後に、エンコーダの電源を切断して、電源を再投入すれば、通信速度を第1速度に戻すことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、通信線を介してエンコーダに接続された外部の機器から制御信号が送信されたときに、制御信号の受信パターンに基づいて通信速度を第2速度に設定する。通信速度が外部の機器に適合する第2速度に設定されれば、その後に外部の機器から設定指令などの各種の設定指令が送信されたときに、エンコーダの側では、設定指令に含まれる情報を欠落させることなく受信できる。従って、エンコーダは、設定指令に基づいて、自己の設定や制御プログラムをアップデートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明を適用したエンコーダの制御系の概略説明図である。
図2】エンコーダと制御装置との間で行う通信の説明図である。
図3】通信速度を変更するための制御信号の受信パターンの説明図である。
図4】エンコーダを設定する設定動作の説明図である。
図5】変形例の通信速度設定部が通信速度を変更する際の制御信号の受信パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したエンコーダの実施の形態を説明する。
【0028】
(エンコーダ)
図1は、本発明を適用したエンコーダの制御系の概略説明図である。図2は、エンコーダと制御装置との間で行う通信の説明図である。図3は、エンコーダの通信速度を変更するための制御信号の受信パターンの説明図である。図4は、エンコーダを設定する設定動作の説明図である。
【0029】
エンコーダ1は、駆動源を駆動して可動部を動作させる装置に取り付けられる。図1に示すように、エンコーダ1から出力される位置情報は、通信線2を介して、装置を駆動制御するための制御装置3に送信される。制御装置3は、受信した位置情報に基づいて、駆動源を駆動制御する。以下の説明では、駆動源はモータであり、装置は産業用のロボットである。制御装置3は、産業用ロボットを制御するための専用の装置である。制御装置3は、エンコーダ1からの位置情報に基づいてモータを駆動制御することにより、産業用ロボットの動作を制御する。
【0030】
エンコーダ1は、センサ5と、センサ5の出力側に接続された制御部6と、制御部6に接続された設定記憶部7と、を備える。センサ5は、磁気センサであり、モータの回転軸に固定されたマグネットの磁束を検出する。マグネットは、回転軸の回転角度位置を検出するために、モータの駆動用マグネットとは別に設けられている。
【0031】
制御部6は、CPUおよびメモリを備える。制御部6は、センサ5からの出力に基づいて、回転軸の回転角度位置を表す位置情報を生成する位置情報生成部11を備える。設定記憶部7には、位置情報生成部11が生成する位置情報の分解能や位置情報の基準となる原点位置など、エンコーダ1の各種の設定情報が記憶保持されている。位置情報生成部11は、設定情報に基づいて、位置情報を生成する。設定記憶部7は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。エンコーダ1の設定は、設定記憶部7の設定情報を書き換えることにより、変更できる。
【0032】
また、エンコーダ1は、制御部6に接続された通信部12を備える。通信線2には、通信部12が接続されている。通信部12は、外部の機器と制御部6との間で、通信線2を介した双方向通信を可能とする。本例では、通信部12は、外部の機器との間で、半二重通信を可能とする。また、通信部12は、外部の機器との間で、第1速度、または第1速度よりも遅い第2速度で、通信を行う。本例では、第1速度は、4Mbpsである。第2速度は、38400bpsである。
【0033】
通信部12は、エンコーダ1に電源が投入されたときに通信速度を第1速度に設定する初期設定部15を備える。また、通信部12は、通信速度が第1速度に設定されているときに予め定めた受信パターンで所定の制御信号S1を受信すると、通信速度を第1速度から第2速度に切り替える通信速度設定部16を備える。
【0034】
ここで、図2に示すように、エンコーダ1と制御装置3との間の通信は、第1速度(4Mbps)で行われる。制御装置3からは、第1周期T1でロータの回転角度位置を問い
合わせる問い合わせ指令O1が送信される。制御部6は、第1周期T1で問い合わせ指令O1を受信する毎に、通信部12を介して、位置情報Pを制御装置3に送信する。本例において、第1周期Tは、50μsである。
【0035】
通信速度設定部16は、通信速度が第1速度に設定されているときに第1周期T1よりも長い第2周期T2で所定の制御信号S1を複数回受信し、最後に前記制御信号S1を受信してから第2周期T2と所定時間とが経過した第1時点で制御信号S1を受信しない場合に、通信速度を第1速度から第2速度に切り換える速度設定動作を行う。図3に示すように、本例では、通信速度を第2速度に設定する際には、制御信号S1を第2周期T2で2回受信する。第2周期T2は0.5sである。
【0036】
より具体的には、通信速度設定部16は、図1に示すように、タイマー17と、タイマー17のカウンタ値が所定の第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部18と、タイマー17のカウンタ値が所定の第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部19と、を備える。また、通信速度設定部16は、シフトレジスタ20と、シフトレジスタ20を制御するレジスタ制御部21と、予め設定した設定値を記憶保持する記憶部22と、通信速度を第2速度に設定する設定部23と、を備える。
【0037】
タイマー17は、通信線2を介して通信部12が受信する指令や制御信号S1を監視しており、通信部12が問い合わせ指令O1や制御信号S1を受信すると、カウンタ値を0にリセットして計数を再開する。第1判定部18は、タイマー17のカウンタ値が第1周期T1よりも長く第2周期T2よりも短い第1カウンタ値に達したことを判定する。本例のタイマー17は、第2周期T2において、0から1000050まで計数する。第1カウンタ値は、タイマー17が第2周期T2よりも所定時間だけ短い期間計数した場合の値である。所定時間は、第1周期T1以下であり、タイマー17が0から50まで計数する時間である。従って、第1カウンタ値は1000000である。第2判定部19は、タイマー17のカウンタ値が第2周期T2よりも所定時間だけ長い期間計数した第2カウンタ値に達したことを判定する。第2カウンタ値は、1000100である。
【0038】
レジスタ制御部21は、制御信号S1、第1判定部18、および第2判定部19の判定結果に基づいてシフトレジスタ20を制御する。レジスタ制御部21は、制御信号S1を最初に受信したときにシフトレジスタ20の全てのビットを0に設定する。また、レジスタ制御部21は、カウンタ値が第1カウンタ値に達する毎にシフトレジスタ20のビットを左にシフトさせて1を入力する。さらに、レジスタ制御部21は、カウンタ値が第2カウンタ値に達するとシフトレジスタ20のビットを左にシフトさせて0を入力する。
【0039】
設定部23は、シフトレジスタ20に0が入力されたときに記憶部22を参照して設定値とシフトレジスタ20の値とを比較する。言い換えれば、設定部23は、第2判定部19がタイマー17のカウンタ値が第2カウンタ値に達したと判定したときに、シフトレジスタ20の値とを比較する。そして、設定部23は、シフトレジスタ20の値と設定値とが一致する場合に、通信速度を第2速度に設定する。本例では、シフトレジスタ20の値が、設定値の“00001110”と一致する場合に、通信速度を第2速度に設定する。
【0040】
(エンコーダと制御装置との通信)
ここで、図2を参照してエンコーダと制御装置との通信を説明する。エンコーダ1と制御装置3との通信で通信を行う際には、通信線2を介してエンコーダ1と制御装置3とを接続する。しかる後に、エンコーダ1の電源をオンとする。電源が投入されると、初期設定部15は、エンコーダ1の通信速度は第1速度に設定する。
【0041】
エンコーダ1と制御装置3とが接続されると、制御装置3からエンコーダ1には、第1
周期Tで、問い合わせ指令O1が送信される。これに対して、エンコーダ1の制御部6は、問い合わせ指令O1を受信する毎に、位置情報Pを制御装置3に送信する。ここで、タイマー17は、通信部12が問い合わせ指令O1を受信する毎に、そのカウンタ値を0にリセットする。レジスタ制御部21は、エンコーダ1に電源が投入されたときにシフトレジスタ20の全てのビットを0に設定する。
【0042】
(エンコーダとコンピュータとの通信)
次に、エンコーダ1の設定が必要な場合には、図1に点線で示すように、エンコーダ1とコンピュータ100とを通信線2を介して接続する。そして、コンピュータ100でエンコーダ設定用のアプリケーションソフトウエアを動作させ、アプリケーションソフトウエアが発行する設定指令O2をエンコーダ1に送信する。設定指令O2は、エンコーダ1の制御部6を動作させて、設定記憶部7の設定情報を所望の値に書き換えさせる指令である。
【0043】
ここで、エンコーダ1と制御装置3との間で行われる通信の第1速度(4Mbps)は、コンピュータ100が外部の機器との間で行う通信の第2速度(38400bps)と比較して、著しく速い。従って、エンコーダ1の通信速度が第1速度に設定されているときに、通信線2を介してコンピュータ100からエンコーダ1に設定指令O2を送信しても、エンコーダ1の側で設定指令O2を認識することができず、設定情報を所望の値に書き換えることができない場合がある。すなわち、コンピュータ100が行う通信の第2速度とエンコーダ1が行う通信の第1速度との差に起因して、設定指令O2に含まれる情報に欠落などが発生し、エンコーダ1の側で設定指令O2を認識することができない場合がある。
【0044】
従って、図4に示すように、エンコーダ1を設定する設定動作では、まず、エンコーダ1とコンピュータ100との間で行う通信の通信速度を第1速度から第2速度に切り替える通信速度設定工程(ステップST1)を行う。次に、コンピュータ100からエンコーダ1に設定指令O2を送信し、エンコーダ1の設定情報を書き換えて自己の設定を変更する設定情報書き換え工程を行う(ステップST2)
【0045】
通信速度設定工程(ST1)では、エンコーダ1は、通信線2を介して受信する制御信号S1を監視する。そして、エンコーダ1は、所定の受信パターンで制御信号S1を受信すると、通信速度を第2速度に設定する。より、具体的には、図3に示すように、エンコーダ1は、制御信号S1を最初に受信したときにシフトレジスタ20の全てのビットを0に設定する。そして、エンコーダ1は、カウンタ値が第1カウンタ値に達する毎にシフトレジスタ20のビットをシフトさせて1を入力し、カウンタ値が第2カウンタ値に達するとシフトレジスタ20のビットをシフトさせて0を入力する。さらに、エンコーダ1は、シフトレジスタ20に0が入力されたときに記憶部22を参照して、設定値とシフトレジスタ20の値とを比較する。ここで、シフトレジスタ20の値と設定値とが一致する場合に、エンコーダ1は、通信速度を第2速度に設定する。
【0046】
設定情報書き換え工程(ステップST2)では、エンコーダ1は、コンピュータ100から第2速度で送信される設定指令O2を受信する。設定指令O2を受信すると、エンコーダ1は、設定指令O2に基づいて、設定記憶部7に記録されていた設定情報を書き換える。これにより、エンコーダ1の設定は変更される。
【0047】
ここで、設定指令O2の送受信は第2速度で行われる。従って、エンコーダ1の側では、設定指令O2に含まれる情報などを欠落させることなく受信できる。よって、エンコーダ1は、設定指令O2に基づいて、自己を設定することができる。なお、エンコーダ1では、設定指令O2により、制御部6で動作するファームウエアのアップデートを行うこと
も可能である。
【0048】
設定指令O2によりエンコーダ1の設定を変更した後は、一旦、エンコーダ1の電源をオフとし、しかる後に電源を再投入する。これにより、エンコーダ1では、通信線2を介した通信の通信速度が第1速度に設定される。従って、通信線2を介してエンコーダ1と制御装置3とを接続すれば、制御装置3とエンコーダ1との間では、第1速度の双方向通信が可能となる。よって、エンコーダ1と制御装置3とを接続した後には、エンコーダ1は、制御装置3からの問い合わせ指令O1を第1速度で受信して、位置情報Pを第1速度で制御装置3に送信する。
【0049】
(作用効果)
本発明によれば、通信部12は、通信線2を介した通信の通信速度が第1速度に設定されているときに、第1周期T1よりも長い第2周期T2で制御信号S1を複数回受信した後に第2周期T2と所定時間とが経過した時点で制御信号S1を受信しない場合に、通信速度を第1速度から第2速度に切り換える。ここで、制御信号S1の第2周期T2は、位置情報Pを取得するために制御装置3からエンコーダ1に送信される問い合わせ指令O1の第1周期T1と比較して長い。従って、外部の機器が通信を行う通信速度が第1速度よりも遅い第2速度の場合でも、外部の機器から第2周期T2で制御信号S1を送信することが容易である。また、制御信号S1の第2周期T2が問い合わせ指令O1の第1周期T1よりも長いので、通信速度設定部16は、制御信号S1と問い合わせ指令O1とを区別して、制御信号S1を認識できる。よって、通信速度設定部16は、制御信号S1を受信したときに、通信速度を、外部の機器に適合する第2速度に設定できる。これにより、外部の機器とエンコーダ1との間で、情報を欠落させることなく、設定指令O2などを送受信できる。
【0050】
ここで、エンコーダ1の設置環境によっては、磁気ノイズや静電気などに起因して、通信線2に意図しない信号が乗り、この信号がエンコーダ1に入力されてしまう場合がある。また、このような意図しない信号が外部の機器からの制御信号S1と一致或いは酷似する類似する場合には、エンコーダ1と制御装置3とが接続され制御装置3が装置を駆動制御しているときに、通信速度設定部16に誤動作が発生してしまい、通信速度を第1速度から第2速度に切り換えてしまう可能性がある。このような問題に対して、本例では、通信速度の切り換えには、制御信号S1を予め定めた第2周期T2で複数回受信する必要がある。また、制御信号S1を複数回受信した次の第2周期T2において制御信号S1を受信しない必要がある。これにより、通信速度設定部16では、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号S1の受信パターンとを区別できるので、通信速度設定部16に誤動作が発生することを防止あるいは抑制できる。
【0051】
また、本例によれば、タイマー17と、シフトレジスタ20と、記憶部22に記憶保持した設定値と、を使用して、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号S1の受信パターンとを区別できる。
【0052】
さらに、本例では、記憶部22に記憶保持した設定値を変更することにより、第2周期T2で制御信号S1を受信する回数を、3回以上に設定することができる。これにより、制御信号S1の受信パターンが複雑になる。従って、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号S1の受信パターンとを、より確実に、区別することが可能となる。
【0053】
(通信速度設定部の別の例)
次に、図5を参照して、変形例の通信速度設定部16を説明する。図5は、変形例の通信速度設定部16が通信速度を変更する際の制御信号S1の受信パターンの説明図である
。本例の通信速度設定部16は、上記の通信速度設定部16と同様に、タイマー17と、カウンタ値が第1カウンタ値に達したことを判定する第1判定部18と、カウンタ値が第2カウンタ値に達したことを判定する第2判定部19と、を備える。また、本例の通信速度設定部16は、上記の通信速度設定部16と同様に、シフトレジスタ20と、シフトレジスタ20を制御するレジスタ制御部21と、記憶部22と、通信速度を第2速度に設定する設定部23と、を備える。第1カウンタ値、第2カウンタ値は、上記の通信速度設定部16と同一である。記憶部22に記憶保持される設定値は、上記の通信速度設定部16の記憶部22に記憶された設定値とは異なる。レジスタ制御部21は、制御信号S1、第1判定部18、および第2判定部19の判定結果に基づいてシフトレジスタ20を制御する。
【0054】
本例の通信速度設定部16は、通信速度が第1速度に設定されているときに第2周期T2で制御信号S1を複数回受信し、最後に制御信号S1を受信してから第2周期T2および所定時間が経過した第1時点で制御信号S1を受信しないときに、その後に受信した2つの制御信号S1の間隔が第2周期T2の場合に、通信速度を第2速度に切り換える。
【0055】
より具体的には、レジスタ制御部21は、制御信号S1を最初に受信したときにシフトレジスタ20の全てのビットを0に設定する。また、レジスタ制御部21は、カウンタ値が第1カウンタ値に達する毎にシフトレジスタ20のビットを左にシフトさせて1を入力する。さらに、レジスタ制御部21は、カウンタ値が第2カウンタ値に達するとシフトレジスタ20のビットを左にシフトさせて0を入力する。設定部23は、シフトレジスタ20に0が入力された後にカウンタ値が第2周期T2の長さに一致する第3カウンタ値に達したときに設定値とシフトレジスタ20の値とを比較する。そして、設定部23は、シフトレジスタ20の値と設定値とが一致する場合に、通信速度を第2速度に設定する。
【0056】
これにより、通信速度設定工程(ST1)では、エンコーダ1は、制御信号S1を最初に受信したときにシフトレジスタ20の全てのビットを0に設定する。そして、エンコーダ1は、カウンタ値が第1カウンタ値に達する毎にシフトレジスタ20のビットをシフトさせて1を入力し、カウンタ値が第2カウンタ値に達するとシフトレジスタ20のビットをシフトさせて0を入力する。さらに、エンコーダ1は、シフトレジスタ20に0が入力された後にカウンタ値が第2周期T2の長さに一致する第3カウンタ値に達したときにカウンタ値が0になると、設定値とシフトレジスタ20の値とを比較して、シフトレジスタ20の値と設定値とが一致する場合に通信速度を第2速度に設定する。
【0057】
そして、設定情報書き換え工程(ステップST2)では、エンコーダ1は、コンピュータ100から第2速度で送信される設定指令O2を受信する。設定指令O2を受信すると、エンコーダ1は、設定指令O2に基づいて、設定記憶部7に記録されていた設定情報を書き換える。これにより、エンコーダ1の設定は変更される。ここで、設定指令O2の送受信は第2速度で行われる。従って、エンコーダ1の側では、設定指令O2に含まれる情報などを欠落させることなく受信できる。よって、エンコーダ1は、設定指令O2に基づいて、自己を設定することができる。
【0058】
設定指令O2によりエンコーダ1の設定を変更した後は、一旦、エンコーダ1の電源をオフとし、しかる後に電源を再投入する。これにより、エンコーダ1では、通信線2を介した通信の通信速度が第1速度に設定される。従って、通信線2を介してエンコーダ1と制御装置3とを接続すれば、制御装置3とエンコーダ1との間では、第1速度の双方向通信が可能となる。よって、エンコーダ1は、制御装置3からの問い合わせ指令O1を第1速度で受信して、位置情報Pを第1速度で制御装置3に送信する。
【0059】
本例の通信速度設定部16を備える場合でも、エンコーダ1は、上記のエンコーダ1と
同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
ここで、本例の制御信号S1の受信パターンでは、制御信号S1を、第2周期T2で受信する場合と、第2周期T2よりも長い第3周期で受信する場合と、を含む。これにより、制御信号S1の受信パターンが複雑になるので、磁気ノイズなどに起因する信号と、通信速度を切り替えるための制御信号S1の受信パターンとを、より確実に、区別できる。よって、通信速度設定部16に誤動作が発生することを防止あるいは抑制しやすい。
【符号の説明】
【0061】
1…エンコーダ、2…通信線、3…制御装置、5…センサ、6…制御部、7…設定記憶部、11…位置情報生成部、12…通信部、15…初期設定部、16…通信速度設定部、17…タイマー、18…第1判定部、19…第2判定部、20…シフトレジスタ、21…レジスタ制御部、22…記憶部、23…設定部、100…コンピュータ、O1…問い合わせ指令、O2…設定指令、S1…制御信号、T1…第1周期、T2…第2周期
図1
図2
図3
図4
図5