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  • 特許-施策効果推定装置 図1
  • 特許-施策効果推定装置 図2
  • 特許-施策効果推定装置 図3
  • 特許-施策効果推定装置 図4
  • 特許-施策効果推定装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】施策効果推定装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240701BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020161909
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054727
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 裕治
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-140461(JP,A)
【文献】特開2019-117503(JP,A)
【文献】特開2020-135231(JP,A)
【文献】特開2019-215606(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定装置であって、
まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として蓄積する効果データベースと、
効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出する抽出手段と、
抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定する推定手段とを備えることを特徴とする施策効果推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動実態データによってまちづくり施策の効果を推定する施策効果推定方法および施策効果推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市における交通や観光の実態を把握して、まちづくり施策に活かされている。個人の位置情報を基にして実態を分析する従来の手法としては、例えば特許文献1、2が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の施設混雑度情報提供装置は、取得した施設毎に滞在するユーザの滞在時間に基づいて施設毎の滞在時間関連情報を計算し滞在時間関連情報に基づいて施設毎の施設タイプを推定し施設毎の滞在人数と平均滞在時間との対応関係を推定する施設タイプ推定部と、滞在人数と平均滞在時間との対応関係を施設毎に記憶する施設タイプ記憶部とを備えたものである。また、特許文献2は、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-004168号公報
【文献】特開2018-106567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の特許文献1、2の分析方法は、行動実態の分析に留まっている。また、これらの分析結果を有効活用して都市計画の施策が検討されているが、施策の効果を推定する方法は確立されていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、行動実態によって、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定方法および施策効果推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る施策効果推定方法は、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定方法であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として評価し、評価結果を効果データベースに蓄積するステップと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出するステップと、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定するステップとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る施策効果推定装置は、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定装置であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として蓄積する効果データベースと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出する抽出手段と、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定する推定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る施策効果推定方法によれば、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定方法であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として評価し、評価結果を効果データベースに蓄積するステップと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出するステップと、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定するステップとを有するので、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る施策効果推定装置によれば、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定装置であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として蓄積する効果データベースと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出する抽出手段と、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定する推定手段とを備えるので、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る施策効果推定方法および施策効果推定装置の実施の形態を示す概略フロー図である。
図2図2は、行動実態の分析対象を示す図である。
図3図3は、まちづくり施策別の行動実態の時系列の効果を示す図である。
図4図4は、各エリアの結果の統合例を示す図である。
図5図5は、エリアの類似度の評価例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る施策効果推定方法および施策効果推定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
<施策効果推定方法>
まず、本発明に係る施策効果推定方法の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る施策効果推定方法の概略フローである。この図に示すように、本方法は、データ蓄積のステップ(図の左側)と、効果推定のステップ(図の右側)により構成される。データ蓄積のステップでは、既存エリアの行動実態データベースD1を用いて行動実態を分析する一方(ステップS1)、まちづくり施策を実施する(ステップS2)。そしてこれらを関連付けして(ステップS3)、時系列での変化を効果としてエリア別時系列の効果データベースD2にデータ蓄積する(ステップS4、S5)。
【0015】
効果推定のステップは、新規エリアでのまちづくり施策を検討する際に使用する。その際、新規エリアの行動実態データD3を用いて行動実態を分析する一方(ステップT1)、まちづくり施策を実施(立案)する(ステップT2)。そして、上記の効果データベースD2を活用して、新規エリアに類似する既存エリアでの効果を集積することで(ステップS6)、まちづくり施策の効果を推定する(ステップS7)。
【0016】
以下に、上記の各ステップの内容について具体的に説明する。
【0017】
(ステップS1、T1:行動実態の分析)
図2は、対象エリアでの訪問地から滞在地に移動して次の行先に移動する流れのなかで、行動実態の分析対象の関連を示している。人の行動実態を把握するための分析の種類として、例えば以下のような分析が挙げられる。これらは表1で一覧にしている。
【0018】
(1)訪問者の居住地分析
性別・年齢層別に来訪者数を算出し、どこからどんな属性の人がどれくらい来訪したかを分析する。
(2)滞在地への流入出分析
エリアごとに来訪者の時間帯別流入出者数を算出する。
(3)交通経路分析
主要流入交通手段別の来訪者数を算出して、どのような経路で来訪したかを分析する。
(4)時間帯に観光客が集まる場所を知るための分析(時間帯別の混雑度分析)
いつどのくらいの人がエリア内に滞在したかを分析する。
(5)滞在時間分析
市区町村ごとの宿泊人数を算出し、どこに宿泊したかを分析する。
(6)滞在地と宿泊形態分析
日帰り・宿泊別の宿泊数を算出し、分析する。
(7)滞在地からの行先分析
市区町村ごとの立ち寄り者数を算出し、来訪者がどこを訪問したか行先を分析する。
【0019】
【表1】
【0020】
表2は、各行動実態の分析で取り扱うデータの構造の一例である。この表には、効果を判定する変数(●の項目)と新規エリアの類似度を判定する変数(★の項目)が含まれている。なお、行動実態の分析で取り扱われるデータは、既存エリアの行動実態データベースD1や、新規エリアの行動実態データD3から抽出する。既存エリアの行動実態データベースD1、新規エリアの行動実態データD3には、各エリアに対応する行動実態に関するデータがあらかじめ格納されているものとする。
【0021】
【表2】
【0022】
(ステップS2、T2:まちづくり施策の実施)
対象エリアに対するまちづくり施策の例を以下に列挙する。
1)施設の適正配置
対象エリアにおいて、商業施設、福祉施設、保育施設、図書館をはじめとする公共施設等を適切に配置する。
2)広場などを利活用した場づくり
広場等を活用したイベント、オープンカフェ、レクリエーション活動、スポーツ等による場づくりを行う。
3)店舗設え、街並みを改善
道路の沿道店舗の設えを整えて街並みを改善することで、回遊経路や回遊範囲を変化させる。
4)歩行のバリアフリー化
歩道のバリアフリー化によって段差や障害をなくし、歩行者が多い場所では幅の広い歩道を設け、幹線道路や鉄道などで地域が分断されている場合には歩車分離信号を導入する。
5)休憩施設の設置
歩行者デッキや地下歩道の設置、適度に休憩できる休憩施設(ベンチやトイレ)の配置を行う。
6)バス停の設置
バスによる来街者のためのバス停を設置する。
7)駐車場・駐輪場の配置
自動車による来街者のための駐車場、自転車による来街者のための駐輪場を配置する。
8)回遊を促進する交通サービスの導入
路面電車、LRT、コミュニティサイクルなどを導入する。
【0023】
まちづくり施策を実施する際には、例えば表3に示すように、施策の開始日時、終了日時、施策の重み付けを入力する。
【0024】
【表3】
【0025】
(ステップS3:行動実態とまちづくり施策の組合せマトリックスの作成)
表1と表3を組合わせて、行動実態とまちづくり施策の組合せマトリックス(一覧)を作成する。作成したマトリックスの一例を表4に示す。
【0026】
【表4】
【0027】
(ステップS4:行動実態の時系列の効果の分析)
まちづくり施策の開始日時と終了日時から各分析の変化を効果として評価する。図3は、行動実態の時系列の効果を判定する変数(表2の●の変数)により、大中小で評価した例を示している。この例では、分析結果の変数が初期値と比べて50%以上変化した場合を「変化大」、30%以上変化した場合を「変化中」、10%以上変化した場合を「変化小」と評価している。
【0028】
(ステップS5:既存エリアの結果を統合)
既存エリアの時系列の効果をエリア別時系列の効果データベースD2に蓄積する。例えば、図4に示すように、Aエリア、Bエリア、Cエリア、Dエリア、Eエリアの各既存エリアの時系列の効果を蓄積し、既存エリアの結果を統合する。
【0029】
(ステップS6:まちづくり施策による効果抽出)
エリア別時系列の効果データベースD2から新規エリアと類似するデータを抽出する。新規エリアとの類似性は、例えば、新規エリアとの類似性を判定する変数(表2の★)により判定する。具体的には、来訪者数、流入者数、流出者数、滞在者数、日帰り者数、宿泊者数を比較して類似度を判定する。図5は、各まちづくり施策の既存エリアとの類似度の判定結果を示している。
【0030】
(ステップS7:まちづくり施策の効果推定)
まちづくり施策別に既存エリアの類似度を重み付けして、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定する。この効果は、例えば、下記の式(1)を用いて推定することができる。
【0031】
新規エリアのまちづくり施策の効果=Σ(既存エリアの施策の効果×類似度による重み付け)・・・式(1)
【0032】
類似度による重み付けは、例えば、類似度小は0.1、類似度中は0.3.類似度大は0.5と設定することができる。また、既存エリアのデータ数が多くなれば、深層学習により類似度を算出することができる。
【0033】
本実施の形態によれば、過去の既存エリアの行動実態データを有効活用して、新規エリアの行動実態データから、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定することができる。また、行動実態の分析結果を有効活用して、他の行動実態のまちづくり施策の効果を推定できる。行動実態とまちづくり施策の関係性を可視化して説明でき、多様なまちづくり施策を計画できる。さらに、まちづくり施策の効果が見込める行動実態のパターンを推定できる。また、観光客のみを抽出した分析や、交通手段や駅の利用状況の分析、まちの中の人の動きを住居者、就業者、ビジネス利用などの目的別に分析して、課題やニーズを抽出することも可能である。
【0034】
<施策効果推定装置>
次に、本発明に係る施策効果推定装置の実施の形態について説明する。
本実施の形態の施策効果推定装置は、上記の施策効果推定方法を装置として具体化したものである。この施策効果推定装置は、上記のエリア別時系列の効果データベースD2と、抽出手段と、推定手段とを備えている。
【0035】
効果データベースD2は、上記のステップS1~S5により構築することができる。抽出手段は、効果データベースD2から新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出するものである。この抽出手段による処理は、上記のステップS6で説明したとおりである。推定手段は、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定するものである。この推定手段による処理は、上記のステップS7で説明したとおりである。上記の各手段は、例えば各種演算処理を行うコンピュータなどを用いて構成することができる。本実施の形態によれば、上記の施策効果推定方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0036】
以上説明したように、本発明に係る施策効果推定方法によれば、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定方法であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として評価し、評価結果を効果データベースに蓄積するステップと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出するステップと、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定するステップとを有するので、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定することができる。
【0037】
また、本発明に係る施策効果推定装置によれば、まちづくり施策の効果を推定する施策効果推定装置であって、まちづくり施策の既存エリアについて、まちづくり施策による人の行動実態の時系列での変化を効果として蓄積する効果データベースと、効果データベースから新規エリアと類似する既存エリアのまちづくり施策による効果を抽出する抽出手段と、抽出結果に基づいて、新規エリアにおけるまちづくり施策の効果を推定する推定手段とを備えるので、新規エリアのまちづくり施策の効果を推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る施策効果推定方法および施策効果推定装置は、都市計画の立案に有用であり、特に、まちづくり施策の効果を推定するのに適している。
図1
図2
図3
図4
図5