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  • 特許-放射線遮蔽体および放射線測定装置 図1
  • 特許-放射線遮蔽体および放射線測定装置 図2
  • 特許-放射線遮蔽体および放射線測定装置 図3
  • 特許-放射線遮蔽体および放射線測定装置 図4
  • 特許-放射線遮蔽体および放射線測定装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】放射線遮蔽体および放射線測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20240701BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20240701BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20240701BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20240701BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/167 C
G01T1/16 A
G21F1/08
G21F3/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020181584
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072244
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小迫 和明
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112066(JP,A)
【文献】特開2014-235031(JP,A)
【文献】特開2014-149201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 -1/16
1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を測定する測定対象物に近接配置して使用され、放射線を検出するための放射線検出器を収容する略箱状のケースからなる放射線遮蔽体であって、
放射線を遮蔽する略箱状のケースと、
測定対象物に対向配置されるケース端面をなす第一遮蔽板と、第一遮蔽板に設けられるとともにケース内部の放射線検出器を嵌め込むための第一開口部と、ケース内部に設けられるとともにケース内部を放射線検出器がある側とない側とに仕切る少なくとも一枚の第二遮蔽板と、第二遮蔽板に設けられるとともに放射線検出器と接続するケーブルを通すための第二開口部と、第一遮蔽板とは反対側のケース端面をなす第三遮蔽板と、第三遮蔽板に設けられるとともにケース内部のケーブルをケース外部に通すための第三開口部とを備え、
ケース外部より第三開口部を介して第二開口部は直視できない位置に配置されていることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項2】
第一遮蔽板、第二遮蔽板、第三遮蔽板およびケースがタングステンからなることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射線遮蔽体と、第一開口部に嵌め込まれた放射線検出器とを備えることを特徴とする放射線測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽体および放射線測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの表面から内部が放射性物質により汚染されているかどうかは、表面汚染サーベイメータや高純度Ge検出器等の測定器により放射性物質が崩壊時に放出する放射線を測定することによって調べている。測定は、対象物の表面に検出器を設置または表面上を移動しながら行うが、個々の測定器のプローブは鉛遮蔽体で取り囲むことにより周囲からのバックグランド放射線(BG)の影響を低減して行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-159517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定器のプローブを取り囲む鉛遮蔽体は、一般に円筒形のプローブ形状に合わせて筒型のもの(鉛遮蔽筒)を使用している。図3に示すように、鉛遮蔽筒1(コリメータ)の両端2、3は開放されており、後端2からプローブ4を差し込み、前端3にプローブ4の先端が位置するように挿入される。プローブ4からは、図4に示すように、測定器本体5を繋ぐケーブル6が後端4Aから出ているため後端2は塞がれていない。そのため、後端2から鉛遮蔽筒1内に流入するBGの影響を排除できないおそれがある。また、円筒形状以外のプローブに対する鉛遮蔽体は一般には存在しないため、そのようなプローブを使用する測定器はBGの影響を遮蔽なしに被ることになる。表面汚染の濃度が低い場合、BGの影響が汚染レベルを超越してしまい測定可能な放射能濃度が高くなり、有効な表面汚染のサーベイができなくなるおそれがある。
【0005】
また、図5に示すように、鉛遮蔽筒1の内径D1は、プローブ4の外径D2より少し大きいが、プローブ4に密着している訳ではない。すなわち鉛遮蔽筒1とプローブ4との間には、若干の隙間7が存在している。対象物の表面汚染部Pから前端3の開口を通じて隙間7に流入した放射線は、鉛遮蔽筒1内で散乱してプローブ4に直接入射するためBGとして大きな寄与を及ぼす。そのため、鉛遮蔽筒1を含む検出効率の評価が不可欠となるが、流入する放射線により検出効率は変化するため、評価は容易ではない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表面汚染部とBGによる検出器のプローブの検出効率を悪化させる要因を低減することができる放射線遮蔽体および放射線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る放射線遮蔽体は、放射線を測定する測定対象物に近接配置して使用され、放射線を検出するための放射線検出器を収容する略箱状のケースからなる放射線遮蔽体であって、測定対象物に対向配置されるケース端面をなす第一遮蔽板と、第一遮蔽板に設けられるとともにケース内部の放射線検出器を嵌め込むための第一開口部と、ケース内部に設けられるとともにケース内部を放射線検出器がある側とない側とに仕切る少なくとも一枚の第二遮蔽板と、第二遮蔽板に設けられるとともに放射線検出器と接続するケーブルを通すための第二開口部と、第一遮蔽板とは反対側のケース端面をなす第三遮蔽板と、第三遮蔽板に設けられるとともにケース内部のケーブルをケース外部に通すための第三開口部とを備え、ケース外部より第三開口部を介して第二開口部は直視できない位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の放射線遮蔽体は、上述した発明において、タングステンからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る放射線測定装置は、上述した放射線遮蔽体と、第一開口部に嵌め込まれた放射線検出器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る放射線遮蔽体によれば、放射線を測定する測定対象物に近接配置して使用され、放射線を検出するための放射線検出器を収容する略箱状のケースからなる放射線遮蔽体であって、測定対象物に対向配置されるケース端面をなす第一遮蔽板と、第一遮蔽板に設けられるとともにケース内部の放射線検出器を嵌め込むための第一開口部と、ケース内部に設けられるとともにケース内部を放射線検出器がある側とない側とに仕切る少なくとも一枚の第二遮蔽板と、第二遮蔽板に設けられるとともに放射線検出器と接続するケーブルを通すための第二開口部と、第一遮蔽板とは反対側のケース端面をなす第三遮蔽板と、第三遮蔽板に設けられるとともにケース内部のケーブルをケース外部に通すための第三開口部とを備え、ケース外部より第三開口部を介して第二開口部は直視できない位置に配置されているので、表面汚染部とBGによる放射線検出器の検出効率を悪化させる要因を低減することができる。このため、低レベルの表面汚染の放射能濃度を測定することができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の放射線遮蔽体によれば、タングステンからなるので、β線とγ線を遮蔽するために遮蔽板の板厚を薄くすることができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る放射線測定装置によれば、上述した放射線遮蔽体と、第一開口部に嵌め込まれた放射線検出器とを備えるので、表面汚染部とBGによる放射線検出器の検出効率を悪化させる要因を低減することができる。このため、低レベルの表面汚染の放射能濃度を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る放射線遮蔽体および放射線測定装置の実施の形態を示す概略図であり、(1)は正面断面図、(2)は上面図である。
図2図2は、各遮蔽板の正面図であり、(1)は側板、(2)は上段板、(3)は中段板、(4)は下段板である。
図3図3は、従来の放射線遮蔽体の一例を示す概略図であり、(1)は円筒形プローブの場合、(2)は先端部が拡径した円筒形プローブの場合である。
図4図4は、従来の放射線測定器の構成例を示す概略斜視図である。
図5図5は、従来の放射線遮蔽体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る放射線遮蔽体および放射線測定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽体10は、放射線を検出するためのプローブ12(放射線検出器)を収容するケースからなり、放射線を測定する表面汚染部P(測定対象物)に近接配置して使用される。また、本実施の形態に係る放射線測定装置は、放射線遮蔽体10と、プローブ12とを備える。
【0016】
この放射線遮蔽体10は、図1および図2に示すように、タングステン製の4枚の矩形の側板14と、上中下3段の棚板16~20(上段板16、中段板18、下段板20)を備えており、これらの遮蔽板を図示しない治具で組み合わせることによって、上下2段の収容室22、24を備えた略直方体箱型の遮蔽構造体を形成している。下段の収容室24には、放射線検出器であるプローブ12を設置し、固定できるようにしてある。上段の収容室22には、測定器本体26を設置し、固定できるようにしてある。放射線遮蔽体10の大きさは、設置するプローブ12と測定器本体26のサイズと個数によって決定される。この放射線遮蔽体10は、例えば室内の床、側壁と天井の壁面に密着または例えば10mm程度の隙間を開けて設置できるように、治具で放射線遮蔽体10の位置を固定できる構造とするのが望ましい。
【0017】
本実施の形態においては、タングステンからなる側板14、上段板16、中段板18、下段板20の厚さは、BGの強度に応じて5~10mm程度を想定している。遮蔽板の材料としてタングステンを選定した理由は、β線とγ線を遮蔽するために原子番号Zが大きくかつ密度が高いものが厚さを薄くできるためであり、Z=74と19.4g/cmのタングステンが最適である。なお、鉛や鉄も遮蔽板の材料として使用可能であるが、使用の際はそれぞれ留意が必要である。鉛は、Z=82と11.34g/cmであり、密度が低く柔らかい点に留意する。鉄は、Z=26と7.8g/cmであり、相当な厚さが必要になる点に留意する。
【0018】
下段板20は、放射線遮蔽体10の下端面をなす矩形の第一遮蔽板であり、表面汚染部Pに対向配置される。この下段板20には、開口部28(第一開口部)が設けられる。開口部28は、収容室24内のプローブ12を嵌め込むための孔である。表面汚染部Pからの放射線は、開口部28に嵌め込まれたプローブ12によって検出される。開口部28の形状は、嵌め込むプローブ12の形状に合わせて形成してあり、開口部28とプローブ12との間に隙間を生じないようにしている。上記の従来の鉛遮蔽筒1における隙間7から流入して鉛遮蔽筒1内で散乱しプローブ4に直接入射する成分は、この開口部28により大幅に低減することができる。なお、図の例では、円形と矩形のプローブ12を嵌め込み可能なように、下段板20に2箇所の円形の開口部28Aと、1箇所の矩形の開口部28Bを設けた場合を示しているが、本発明はこれに限るものではない。下段板20に設ける開口部28の形状と配置位置、配置数はこれ以外であってもよく、使用するプローブ12の形状等に応じて適宜設定可能である。
【0019】
下段板20の上面側には、開口部28に嵌め込まれたプローブ12が外れたりずれたりしないように固定するための図示しないアタッチメントが取り付けられている。また、プローブ12を嵌めない開口部28から放射線が入射しないよう、開口部28は遮蔽体からなる蓋などで遮蔽可能な形状および構造としてある。
【0020】
中段板18は、放射線遮蔽体10の内部を上下2段に仕切る矩形の第二遮蔽板である。この中段板18には、開口部32(第二開口部)が設けられる。開口部32は、プローブ12と測定機本体26とを接続する電源および通信ケーブル30を通すための孔である。開口部32の位置は、後述の上段板16に設ける開口部34の位置と上下方向視で左右対称となるように配置され、かつ、放射線遮蔽体10の外部より開口部34を介して開口部32が直視できない位置に配置されている。また、中段板18の上面には、測定器本体26を固定するための図示しないアタッチメントが取り付けられており、測定器本体26はこのアタッチメントを介して中段板18の上面に固定される。
【0021】
上段板16は、放射線遮蔽体10の上端面をなす矩形の第三遮蔽板である。この上段板16には、放射線遮蔽体10の内部のケーブル30を外部に通すための開口部34(第三開口部)が設けられる。上述したように、開口部34は、放射線遮蔽体10の外部から開口部32が直視できない位置に配置されている。上段板16の設置高さは、側板14の上端36よりも低い位置に設定することが望ましい。
【0022】
上記の構成によれば、上下2段の箱型の遮蔽構造体によりプローブ12と測定器本体26への全方位からのBGを遮蔽することができる。ケーブル30等を通すための開口部32、34についても、BGが直接影響を及ぼさないように配置されている。このため、本実施の形態によれば、表面汚染部PとBGによるプローブ12の検出効率を悪化させる要因を低減することができる。したがって、低レベルの表面汚染の放射能濃度を測定することができる。
【0023】
上記の実施の形態においては、第三開口部が上段板16に形成される開口部34である場合を例にとり説明したが、本発明の第三開口部はこれに限るものではない。例えば、第三開口部を上段板16に形成する代わりに側板14の上端側に形成してあってもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
また、上記の実施の形態においては、第二遮蔽板が一枚の中段板18で構成される場合を例にとり説明したが、本発明の第二遮蔽板はこれに限るものではなく、例えば、二枚以上の第二遮蔽板を設けることにより放射線遮蔽体の内部を三室以上に仕切るとともに、各第二遮蔽板における左右対称位置に第二開口部を設けてもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0025】
上記の実施の形態においては、放射線遮蔽体が略直方体箱型の遮蔽構造体である場合を例にとり説明したが、本発明の放射線遮蔽体はこれに限るものではない。例えば、放射線遮蔽体の全体の形状が略円柱体箱型の遮蔽構造体であってもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る放射線遮蔽体によれば、放射線を測定する測定対象物に近接配置して使用され、放射線を検出するための放射線検出器を収容する略箱状のケースからなる放射線遮蔽体であって、測定対象物に対向配置されるケース端面をなす第一遮蔽板と、第一遮蔽板に設けられるとともにケース内部の放射線検出器を嵌め込むための第一開口部と、ケース内部に設けられるとともにケース内部を放射線検出器がある側とない側とに仕切る少なくとも一枚の第二遮蔽板と、第二遮蔽板に設けられるとともに放射線検出器と接続するケーブルを通すための第二開口部と、第一遮蔽板とは反対側のケース端面をなす第三遮蔽板と、第三遮蔽板に設けられるとともにケース内部のケーブルをケース外部に通すための第三開口部とを備え、ケース外部より第三開口部を介して第二開口部は直視できない位置に配置されているので、表面汚染部とBGによる放射線検出器の検出効率を悪化させる要因を低減することができる。このため、低レベルの表面汚染の放射能濃度を測定することができる。
【0027】
また、本発明に係る他の放射線遮蔽体によれば、タングステンからなるので、β線とγ線を遮蔽するために遮蔽板の板厚を薄くすることができる。
【0028】
また、本発明に係る放射線測定装置によれば、上述した放射線遮蔽体と、第一開口部に嵌め込まれた放射線検出器とを備えるので、表面汚染部とBGによる放射線検出器の検出効率を悪化させる要因を低減することができる。このため、低レベルの表面汚染の放射能濃度を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る放射線遮蔽体および放射線測定装置は、放射能によるコンクリート等の表面汚染を検査するのに有用であり、特に、表面汚染部とBGによる検出器のプローブの検出効率を悪化させる要因を低減するのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 放射線遮蔽体
12 プローブ(放射線検出器)
14 側板
16 上段板
18 中段板
20 下段板
22,24 収容室
26 測定器本体
28 開口部(第一開口部)
30 ケーブル
32 開口部(第二開口部)
34 開口部(第三開口部)
36 上端
P 表面汚染部(測定対象物)
図1
図2
図3
図4
図5