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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】液体収容体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 143
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2020196187
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2021130303
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2020026485
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 武志
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065373(JP,A)
【文献】特開2019-198990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットと、
前記カセットに載置され、液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容袋と、
前記液体収容袋の一端の開口部分に備えられた接続部材と、
前記接続部材に接続され、前記液体収容袋内方の中ほどに延在する連結部材と、前記連結部材と接続されたスペーサー部とを備えた保持部材と、
前記接続部材と前記スペーサー部とに取り付けられ、前記液体収容袋から液体を導出するチューブと、
を備えた液体収容容器であって、
前記スペーサー部は、前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝と、を有しており、前記主溝の内側面と嵌合された前記チューブの外側面との間に一部非接触空間を構成しており、前記補助溝は前記非接触空間と連通している、液体収容体。
【請求項2】
前記非接触空間は、少なくとも前記チューブが嵌合される前記溝の開口に対して対向した領域に構成される、請求項1に記載の液体収容体。
【請求項3】
前記溝の前記非接触空間を構成する部分は、前記溝の延在方向に垂直の断面に関して、直角もしくは鈍角を構成する内側面の組み合わせを有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の液体収容体。
【請求項4】
前記保持部材は、前記連結部材と前記スペーサー部とが一体的に構成されている、請求項1に記載の液体収容体。
【請求項5】
前記液体収容袋は可撓性を有しており、前記スペーサー部は前記液体収容体が前記液体吐出装置に搭載された状態で、前記液体収容袋の上面と下面との間に介在する、請求項1に記載の液体収容体。
【請求項6】
前記主溝は前記スペーサー部の一面側に第1の溝、前記一面と異なる他面側に第2の溝を備えており、
前記チューブは前記第1の溝と嵌合する第1のチューブと、前記第2の溝と嵌合する第2のチューブを備えている、請求項1に記載の液体収容体。
【請求項7】
前記液体収容体が液体吐出装置に搭載された状態で、前記第1の溝は前記スペーサー部の上部に位置し、前記第2の主溝は前記スペーサー部の下部に位置する、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項8】
前記スペーサー部は、前記液体収容袋の上面に最も近接する第1の頂部と、前記下面に最も近接する第2の頂部とを有している、請求項5に記載の液体収容体。
【請求項9】
前記第1の主溝は前記スペーサー部の前記一面側の第1の頂部に設けられ、前記第2の主溝は前記スペーサー部の前記他面側の第2の頂部に設けられている、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項10】
前記チューブは、前記主溝に対して、その外径以上の長さの部分で嵌合している、請求項1に記載の液体収容体。
【請求項11】
前記チューブは、その外径の1/2以上の部分が前記主溝に対して嵌合している、請求項10に記載の液体収容体。
【請求項12】
前記第1の溝の幅は前記第1のチューブの外径以下であり、前記第2の溝の幅は前記第2のチューブの外径以下である、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項13】
前記第1のチューブと前記第2のチューブは同一の外径と肉厚を有し、前記第2の溝の幅は前記第1の溝の幅より大きく、前記第2のチューブの外径より小さい、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項14】
前記第2のチューブの前記第2の溝に嵌合する部分の流路断面積は、前記第1のチューブの前記第1の溝に嵌合する部分の流路断面積より大きい、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項15】
前記第1のチューブと前記第2のチューブは同一の外径を有し、前記第2のチューブは前記第1のチューブより肉厚が小さく、前記第1の溝と前記第2の溝の幅は同じである、請求項6に記載の液体収容体。
【請求項16】
液体吐出装置に搭載され、前記液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容体であって、
液体を収容する液体収容袋と、前記液体収容袋の内部空間に設けられ、第1の端部が前記内部空間に開口する少なくとも一つのチューブと、前記液体収容袋の開口部に取り付けられ、前記少なくとも一つのチューブの第2の端部が接続された接続部材と、前記接続部材に支持され、前記内部空間に設けられ、前記少なくとも一つのチューブを保持する保持部材と、を有し、
前記保持部材は、前記少なくとも一つのチューブの前記第2の端部以外の部位が嵌合する少なくとも一つの溝を有しており、
前記溝は、溝が延在する方向に垂直の断面が角部を有する形状である、液体収容体。
【請求項17】
前記保持部材は、連結部材とスペーサー部とを備えており、
前記スペーサー部は前記液体収容体が前記液体吐出装置に搭載された状態で、前記液体収容袋の上面と下面との間に、前記液体収容袋の上面に最も近接する第1の頂部と、前記下面に最も近接する第2の頂部とを有して配されており、
前記第1の頂部に第1のチューブの一端側が嵌合される第1の主溝と、前記第1の主溝に連通する第1の補助溝と、
前記第2の頂部に第2のチューブの一端側が嵌合される第2の主溝と、前記第2の主溝に連通する第2の補助溝と、を有している、請求項16に記載の液体収容体。
【請求項18】
前記チューブは、前記主溝に対して、その外径以上の長さの部分で嵌合している、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項19】
前記チューブは、その外径の1/2以上の部分が前記主溝に対して嵌合している、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項20】
前記第1の溝の幅は前記第1のチューブの外径以下であり、前記第2の溝の幅は前記第2のチューブの外径以下である、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項21】
前記第1のチューブと前記第2のチューブは同一の外径と肉厚を有し、前記第2の溝の幅は前記第1の溝の幅より大きく、前記第2のチューブの外径より小さい、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項22】
前記第2のチューブの前記第2の溝に嵌合する部分の流路断面積は、前記第1のチューブの前記第1の溝に嵌合する部分の流路断面積より大きい、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項23】
前記第1のチューブと前記第2のチューブは同一の外径を有し、前記第2のチューブは前記第1のチューブより肉厚が小さく、前記第1の溝と前記第2の溝の幅は同じである、請求項17に記載の液体収容体。
【請求項24】
カセットと、
前記カセットに載置され、液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容袋と、
前記液体収容袋の一端の開口部分に備えられた接続部材と、
前記接続部材に接続され、前記液体収容袋内方の中ほどに延在する連結部材と、前記連結部材と接続されたスペーサー部とを備えた保持部材と、
前記接続部材と前記スペーサー部とに取り付けられ、前記液体収容袋から液体を導出するチューブと、
を備えた液体収容体を構成する保持部材の製造方法であって、
前記保持部材の前記スペーサー部の一方の側面に対して前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝、及び前記接続部材の一方の側面を構成する壁部を備えた第1の型と、
前記保持部材の前記スペーサー部の他方の側面に対して前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝、及び前記接続部材の他方の側面を構成する壁部を備えた第2の型と、が用いられ、さらに、
前記第1の型と第2の型の前記壁部のうち前記主溝を形成する壁部が、前記主溝の延在方向に垂直の断面が直角もしくは鈍角を構成する側面の組み合わせを有する壁部となっている、液体収容体を構成する保持部材の製造方法。
【請求項25】
前記保持部材は、前記第1の型と第2の型を用いてモールド一体成型される、請求項24に記載の液体収容体を構成する保持部材の製造方法。
【請求項26】
液体吐出装置で使用される液体を収容する液体収容袋と、
前記液体収容袋の一端の開口部分に備えられた接続部材と、
前記接続部材に接続され、前記液体収容袋内方の中ほどに延在する連結部材と、
前記連結部材と接続されたスペーサー部と、
前記接続部材と前記スペーサー部とに取り付けられ、前記液体収容袋から液体を導出するチューブと、を備え、
前記スペーサー部は、前記連結部材の延在方向に沿って凹部として設けられた主溝と、前記主溝の延在方向に対して交差する方向に複数設けられた補助溝と、を有し、前記チューブは、その端部前記主溝の途中に位置するように前記主溝を構成する前記凹部に対して嵌合されている液体収容体。
【請求項27】
前記主溝は第1の主溝と第2の主溝とを備え、
前記スペーサー部は、前記主溝の延在方向に交差する方向の断面が概ね菱形形状であり、
前記液体収容体の使用状態において、前記菱形形状の前記スペーサー部の上方の頂点部分に前記第1の主溝が、下方の頂点部分に前記第2の主溝が、それぞれ前記スペーサー部の前記連結部材との接合部分と反対の端部まで貫いた凹部として設けられ、
前記補助溝は前記スペーサー部の側面に対して開口する凹部として、前記第1の主溝および前記第2の主溝それぞれに対して複数設けられている、請求項26に記載の液体収容体。
【請求項28】
前記チューブは前記第1の主溝と嵌合する第1のチューブと、前記第2の主溝と嵌合する第2のチューブと、を備えている、請求項27に記載の液体収容体。
【請求項29】
前記第1のチューブと前記第2のチューブは、それぞれ前記接続部材と連結している、請求項28に記載の液体収容体。
【請求項30】
前記連結部材と前記スペーサー部とは、一体的に構成されている、請求項26から29のいずれか1項に記載の液体収容体。
【請求項31】
前記液体収容袋は可撓性を有しており、前記スペーサー部は前記液体収容体が前記液体吐出装置に搭載された状態で、前記液体収容袋の上面と下面との間に介在する、請求項26から30のいずれか1項に記載の液体収容体。
【請求項32】
前記主溝に嵌合した前記チューブの端部の位置は、前記チューブの外径寸法以上の位置である、請求項26から31のいずれか1項に記載の液体収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出装置に搭載され、液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容体が広く利用されている。特許文献1に開示された液体収容体は、液体を収容する液体収容袋と、液体収容袋の内部空間に設けられ、第1の端部と第2の端部とを有する2つのチューブと、液体収容袋の開口部に取り付けられた接続部材と、を有している。チューブの第1の端部は液体収容袋の内部空間に開口し、第2の端部は接続部材に接続されている。液体収容体はさらに、内部空間に設けられたチューブの保持部材を有している。チューブの第1の端部は保持部材に形成されたノズルに係止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-107823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された保持部材は2つの部材からなっている。これは、保持部材をモールドで作成する際に、型とノズルの干渉を避けるためであると考えられる。そのため、この保持部材は2つの部材を別々の型で製作し、その後それらを合体する必要があり、製造コストが増加する可能性がある。
本発明は、保持部材に対するチューブの取り付け箇所の構造を変更することで、一体成型可能で、インクの供給性も改善される保持部材を備えた液体収容体を提供することを目的とする。また、液体収容体に使用される保持部材を一体成型するための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体収容体液体吐出装置に搭載され、前記液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容体と、液体収容体に備えられた保持部材の製法に関する。液体収容体は、カセットと、前記カセットに載置され、液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容袋と、前記液体収容袋の一端の開口部分に備えられた接続部材と、前記接続部材に接続され、前記液体収容袋内方の中ほどに延在する連結部材と、前記連結部材と接続されたスペーサー部とを備えた保持部材と、前記接続部材と前記スペーサー部とに取り付けられ、前記液体収容袋から液体を導出するチューブと、を備えた液体収容容器であって、前記スペーサー部は、前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝と、を有しており、前記主溝の内側面と嵌合された前記チューブの外側面との間に一部非接触空間を構成しており、前記補助溝は前記非接触空間と連通している。
また、液体収容体を構成する保持部材の製造方法は、カセットと、前記カセットに載置され、液体吐出装置から吐出される液体を収容する液体収容袋と、前記液体収容袋の一端の開口部分に備えられた接続部材と、前記接続部材に接続され、前記液体収容袋内方の中ほどに延在する連結部材と、前記連結部材と接続されたスペーサー部とを備えた保持部材と、前記接続部材と前記スペーサー部とに取り付けられ、前記液体収容袋から液体を導出するチューブと、を備えた液体収容体を構成する保持部材の製造方法であって、前記保持部材の前記スペーサー部の一方の側面に対して前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝、及び前記接続部材の一方の側面を構成する壁部を備えた第1の型と、前記保持部材の前記スペーサー部の他方の側面に対して前記チューブの一端側が嵌合される主溝と、前記主溝に連通する補助溝、及び前記接続部材の他方の側面を構成する壁部を備えた第2の型と、が用いられ、さらに、前記第1の型と第2の型の前記壁部のうち前記主溝を形成する壁部が、前記主溝の延在方向に垂直の断面が直角もしくは鈍角を構成する側面の組み合わせを有する壁部となっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保持部材に対するチューブの取り付け箇所の構造を変更することで、一体成型可能で、インクの供給性も改善される保持部材を備えた液体収容体を提供することができる。また、液体収容体に使用される保持部材を一体成型するための製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の液体収容体が搭載された液体吐出装置の斜視図である。
図2】(a)は本発明の一実施形態に係る液体収容体の斜視図、(b)は液体収容体の概略分解斜視図である。
図3】(a)は図2に示す液体収容体の側断面図であり、(b)は保持部材と接続部材を分解して示す概略図、(c)は図3(a)におけるA領域を拡大して示す概略図である。
図4図2に示す液体収容体の保持部材と接続部材を示す上面図であり、(b)は保持部材と接続部材を分解して示す概略図、(c)は図4(a)におけるB領域を拡大して示す概略図である。
図5】は図3(c)に示す保持部材の一構成例のC-C断面図、(b)は図3(c)に示す保持部材の一構成例のD-D断面図、(c)は図8(a)に示される保持部材のE-E断面図、(d)は保持部材の別の構成例を示す断面図である。
図6】は図3(c)のF-F断面図である。
図7】(a)ないし(c)は本発明が適用された保持部材の別の構成例をしめす概略断面図である。
図8】比較例の液体収容体の保持部材の製造方法を示す側断面図である。
図9図3及び図4に示す液体収容体の保持部材の製造方法を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、液体吐出装置としてはインクジェットプリンタを、液体としてはインクを適用して説明する。しかし、これらの具体例には限定されない。以下の図面中に示される矢印Xの方向(X方向)は、液体収容体1の液体吐出装置100への着脱時に、液体収容体1が液体吐出装置100に対して進退する方向である。矢印Yの方向(Y方向)は液体収容体1の幅方向であり、矢印Zの方向(Z方向)は液体収容体1の厚さ方向である。X方向とY方向とZ方向は互いに直交している。ここで、液体収容体1が液体吐出装置100に搭載された状態を搭載状態と呼ぶ。液体収容体1は厚さ方向が鉛直方向と一致する向きで液体吐出装置100に搭載されるため、搭載状態でZ方向は鉛直方向に一致する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体収容体1が搭載された液体吐出装置100の斜視図である。液体吐出装置100は記録ヘッド、記録媒体の収容部、記録媒体の搬送機構(これらは図示せず)などを備えている。液体吐出装置100にはカセット2に収容された液体収容体1が搭載される。液体収容体1は液体吐出装置100の記録ヘッドから吐出されるインクを収容している。本実施形態では、それぞれがシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),黒(K)のインクを収容する4つの液体収容体1が液体吐出装置100に搭載される。4つの液体収容体1の大きさは同じであるが、例えば黒インクの液体収容体1を他の色のインクの液体収容体1より大きくしてもよい。液体収容体1が収容されたカセット2は液体吐出装置100に対して着脱可能に、X方向に進退する。
【0010】
図2(a)は液体収容体1の斜視図、図2(b)は液体収容体1の組立手順を示す分解斜視図である。図3(a)は液体収容体1の側面図、図3(b)は内部構造物の組立手順を示す液体収容体1の分解斜視図、図3(c)は図3(a)のA部拡大図である。図4(a)は液体収容体1の上面図、図4(b)はチューブの取付方法を示す液体収容体1の分解斜視図、図4(c)は図4(a)のB部拡大図である。
【0011】
図2においては、保持部材4は後述する通り、連結部材7とスペーサー部材6とを備えて構成されるが、これらを省略して保持部材4として示している。また、インクを導出するためのチューブ5も省略している。
図2に示される通り、液体収容体1は、インクを収容する液体収容袋3を有している。液体収容袋3は可撓性を有する材料から形成されている。液体収容袋3の内部空間には袋内から記録ヘッドに対してインクを導出するチューブ(不図示)と保持部材4とが設けられている。ここで、チューブの数は限定されず、少なくとも1つ設けられていればよいが、本実施形態では例えば図3(a)ないし(c)に示されるように2つのチューブが設けられている。以下、これらのチューブを第1のチューブ5A、第2のチューブ5Bという。第1のチューブ5Aと第2のチューブ5Bは、インクが流通するインク流路を形成する。第1及び第2のチューブ5A,5Bは、エラストマーなどの弾性を有する材料で形成されている。第1のチューブ5Aと第2のチューブ5Bはそれぞれ、第1の端部51と第2の端部52とを有し、後述するスペーサー部6と接続部材8との間を概ねX方向に延びて配設されている。第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51は詳細は後述するが、スペーサー部6に設けられた溝の部分に対して嵌め合わされて取り付けられ、液体収容袋3の内部空間31に開口している。また、第2の端部52は接続部材8に接続されている。なお、Z方向からみた場合には、第1の端部51の開口部分は液体収容袋3のほぼ中央部に位置している。さらに、搭載状態では、第1のチューブ5Aの第1の端部51は内部空間31の上部に位置し、第2のチューブ5Bの第1の端部51は内部空間31の下部に位置している。本実施形態で使用されるインクは沈降成分(例えば顔料)を含んでおり、時間の経過とともに、液体収容袋3の上部では沈降成分の濃度が低くなり、下部では沈降成分の濃度が高まることになる。そのため、インクの供給(導出)時には第1のチューブ5Aから濃度の低いインクが、第2のチューブ5Bから濃度の高いインクが同時に供給(導出)されることになり、液体収容体1から供給されるインクの濃度が平均化され、記録品質の経時的な変化が抑制される。
【0012】
図3(a)ないし(c)に示される通り、保持部材4は、搭載状態で液体収容袋3の上面32と下面33との間に介在するスペーサー部6と、スペーサー部6に接続され、搭載状態でチューブ5A,5Bと同じ方向(X方向)に延びる連結部7と、を有している。保持部材4は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなり、後述するようにモールドによって一体成型される。
【0013】
図3図4に示される通り、スペーサー部6は、X方向の中心線に関し、X-Z面においてもX-Y面においてもほぼ対称である。スペーサー部6は、図3(c)に示されるようにY方向からみて三角形状の前方部61と矩形形状の後方部62とを有する五角形形状を有し、図4(c)に示されるようにZ方向からみて概ね矩形形状を有している。図3(c)に示されるように前方部61の高さ(Z方向寸法)は後方部62に向けて大きくなっており、後方部62の高さ(Z方向寸法)はほぼ一定である。また、図5(a)に示すように、前方部61は、Z方向の中心から離れるに従い幅(Y方向寸法)が小さくなるテーパ形状を有している。換言すれば、前方部61は、図3(c)に示される通りX方向においては後方部62から離れる方向に下り傾斜となっており、図5(a)に示される通りY方向においてX方向中心線からY方向に離れる方向に下り傾斜となっている。図3(c)に示す通り後方部62の高さは保持部材4の中で最も高く、搭載時に後方部62の底部64は液体収容袋3の下面33に当接している。後方部62の頂部63は、液体収容袋3のインク残量によっては、液体収容袋3の上面32に当接していなくてもよい。しかし、インクが消費されて液体収容袋3が収縮すると、後方部62の頂部63は液体収容袋3の上面32に当接する。スペーサー部6は液体収容袋3のインク残量に拘わらず、液体収容袋3の中央部で一定の高さを確保する。すなわち、スペーサー部6は液体収容袋3の中央部に一定の空間を確保する。図3(a)に破線Sで示すように、インクが消費されると液体収容袋3の上面32が下面33に接近し、最後には下面33に密着して、インクを導出することができなくなる。後述のように、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51はスペーサー部6に嵌合支持されるように構成されているため、第1の端部51の周囲にはスペーサー部6によって空間が確保されることになり、最後までインクを導出することが可能になる。このように、スペーサー部6はインク残量が少なくなっても第1の端部51の周囲を閉塞してしまうようなことにはならずインクを導出することを可能とし、インクの利用効率を高める。
【0014】
図3に示されるように、スペーサー部6は、上下方向(Z方向)に延びX方向に互いに並行して設けられた複数の壁65を有している。複数の壁65の間には液体収容袋3の内部空間31に連通する溝66A(図4(c)参照)、66Bが形成されている。図4(c)に示すように、溝はX方向にスペーサー部6を貫通する主溝66A(以下で第1の主溝という)と、第1の主溝66Aと直交しY方向に延びる複数の補助溝66B(以下で第1の補助溝という)と、を有している。そして、第1の補助溝66Bは第1の主溝66AのY方向両側に設けられている。また、図4(c)で示されるスペーサー部6は、図5(a)に示されるように、その裏面側も同様の溝構造を有しており、第1の主溝66Aの裏側に破線で示すように第1の主溝より幅の広い主溝67A(以下で第2の主溝という)を有している。さらに第2の主溝67Aと直交しY方向に延びる複数の補助溝67B(以下で第2の補助溝という)を有しており、第2の補助溝67Bは第2の主溝67AのY方向両側に設けられている(なお、第2の主溝67A、第2の補助溝67Bは図中破線で仮想的に示している)。インク残量が減少し、液体収容袋3の上面32がスペーサー部6に密着した場合も、インクは第1の主溝66Aと第1の補助溝66Bからスペーサー部6の内部に流入する。また、液体収容袋3の下面33側に対してもスペーサー部6に設けられた第2の主溝67Aと第2の補助溝67Bによってスペーサー部6の内部にインクが良好に流入する。これらの第1の主溝66A、第2の主溝67Aと第1の補助溝66B、第2の補助溝67Bはインクの利用効率を有効に高める。
スぺーサー部6の構成について図6図3(c)のE-E断面図)を用いてさらに説明する。なお、説明を簡単にするためスぺーサー部6の上方側の第1の主溝66A、第1の補助溝66B、チューブ5Aを用いて説明する。第1の主溝66Aは、溝を構成する側面と底面に相当する側面との間(便宜的に角部6Cと称する)の角度がほぼ直角となっている。溝が角部6Cを備えることによって、溝に取り付けられたチューブ(一般にチューブは円柱形であることを前提として)は、図6に示すように角部6Cに対して接触しない非接触空間66Cを構成する。そして、例えばインクは第1の補助溝66Bから第1の主溝66Aの角部6Cに構成された非接触空間66Cに流入し、この非接触空間66Cをインクが流れてチューブ5Aの第1の端部51側に移動することができ、第1の補助溝66Bの間に残ってしまうインクを極めて少なくすることができ、インクの使用効率を向上させることができる。しかし、角部6Cが直角ではなく、チューブと同程度の曲率を有する曲面である場合、角部6Cに相当する領域には非接触空間66Cが構成されないため、第1の補助溝66Bから第1の主溝66Aに流れたインクはチューブ5Aによって堰き止めてしまう。そのため、インクの移動ができなくなり、第1の補助溝66Bの間に残ってしまうインクが増えインクの使用効率が低減してしまう。
角部6Cを含む主溝の構成は、例えば図7(a)ないし(c)に示されるような構成としてもよい。すなわち、図7(a)は溝の底面に相当する側面に凸部を設けた構成、図7(b)は溝の底面に相当する側面に凹部を設けた構成となっている。このような構成とすることでチューブの可撓性によってチューブが溝に沿って変形してしまい非接触空間66Cが実質的になくなってしまうことが抑制でき、角部6Cにインクが流れる非接触空間66Cを確実に構成することができる。また、実質的なチューブの変形がない場合には図7(c)に示すように角部6Cを鈍角によって構成し、溝の底面を多角にすることも可能である。なお、角部6Cを鋭角で構成することが可能であることは言うまでもない。しかし、後述する保持部材4の簡便な製造方法を考慮すると、型抜きが容易にできる例えば直角以上の鈍角であることが好ましい。
【0015】
図3図4に示されるように、本実施形態では保持部材4は、連結部7とスペーサー部6とを一体成型によって構成されている。連結部7はスペーサー部6に接続された五角形形状の遷移部71と、遷移部71に接続されX方向に延びる軸部72と、から構成されている。軸部72のY-Z断面はX方向にほぼ一定である。連結部7は、スペーサー部6と反対側の端部41に設けられた係止部73によって、接続部材8に係止接続されている。接続部材8は連結部7(保持部材4)との対向部に円柱状の係止突起81(図3(b)参照)を有し、連結部7の係止部73は係止突起81に係止されている。係止部73は上面または下面に係止突起81と嵌合する開口74を有し、開口74を係止突起81に挿入、嵌合させることで保持部材4の端部41を接続部材8に支持させることができる。
【0016】
図3(a)に示されるように、接続部材8は、液体収容袋3の開口部34に取り付けられている。また、図4(b)に示されるように、接続部材8は、第1のチューブ5Aの第2の端部52が取り付けられる第1のノズル82Aと、第2のチューブ5Bの第2の端部52が取り付けられる第2のノズル82Bと、を有している。第1及び第2のチューブ5A,5Bの第2の端部52それぞれを第1及び第2のノズル82A,82Bに装着することによって、第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2のノズル82A,82Bと接続される。第1のノズル82Aと第2のノズル82Bは接続部材8の内部流路83と連通しており、第1のチューブ5Aから流入したインクと第2のチューブ5Bから流入したインクは内部流路83で合流する。接続部材8の第1及び第2のノズル82A,82Bと反対側の面には、液体吐出装置100に接続される、インクの供給口84が設けられている。図4(a)のC-C断面図を図5(c)に示す。図5(c)に示されるように、第1のノズル82Aと第2のノズル82Bと係止突起81はZ方向に同じ高さに設けられ、係止突起81が第1のノズル82Aと第2のノズル82Bの間に位置している。図2に示すように、接続部材8は把持部材9に収容されている。把持部材9は回転可能な取っ手91(図1参照)とガイド部(図示せず)とを有しており、取っ手91をつかみながらカセット2の対応するガイド部(図示せず)に沿って液体収容体1を出し入れすることができる。
【0017】
前述したとおり保持部材4のスペーサー部6には、第1のチューブ5Aの第1の端部51が嵌合する第1の主溝66Aと、第2のチューブ5Bの第1の端部51が嵌合する第2の主溝67Aと、を有している。図3(c)のD-D断面を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、搭載状態において、第1の主溝66Aはスペーサー部6の上部に、第2の主溝67Aはスペーサー部6の下部に設けられている。第1及び第2の主溝66A,67Aの設置位置は特に限定されないが、好ましくは、第1の主溝66Aは液体収容袋3の上面32に最も近接する第1の頂部68Aに、第2の主溝67Aは液体収容袋3の下面33に最も近接する第2の頂部68Bに設けられる。これらの位置ではスペーサー部6の高さ(Z方向寸法)が高いため、第1及び第2の主溝66A,67Aの深さを確保することが容易である。
【0018】
第1及び第2のチューブ5A,5Bは接続部材8と保持部材4のスペーサー部6とによって保持される。第1及び第2のチューブ5A,5Bを安定して保持するため、第1及び第2のチューブ5A,5Bは第1の端部51で第1及び第2の溝66A,67Aと嵌合することが好ましい。しかし、嵌合する位置は第1の端部51に限定されず、第2の端部以外の部位であればよい。例えば、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51を含む端部領域が第1及び第2の主溝66A,67Aから片持ち梁状にX方向に突き出していてもよい。しかし、最も安定的に保持され、インクの取り出し位置が不安定にならない取り付けは、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51を第1及び第2の溝66A,67Aと嵌合することである。
【0019】
第1のチューブ5Aと第2のチューブ5Bはそれぞれ、少なくともその外径以上の長さの部分が、第1の主溝66Aと第2の主溝67Aに嵌合していることが好ましい。図3(c)に示すように、第1のチューブ5Aの外径をD1、第2のチューブ5Bの外径をD2、第1のチューブ5Aの第1の主溝66Aに挿入される長さをL1、第2のチューブ5Bの第2の主溝67Aに挿入される長さをL2とする。この場合、L1≧D1且つL2≧D2であることが好ましい。また、図5(a)に示すように、第1及び第2のチューブ5A,5Bは、少なくともその外径の1/2以上の高さの部分が第1の主溝66Aと第2の主溝67Aに嵌合していることが好ましい。すなわち、第1のチューブ5Aの第1の主溝66Aに挿入される深さをH1、第2のチューブ5Bの第2の主溝67Aに挿入される深さをH2とすると、H1≧D1/2且つH2≧D2/2であることが好ましい。外径D1,D2は、図5(b)に示す通り、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1及び第2の主溝66A,67Aに嵌合していない部分の寸法で定義される。あるいは第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2の主溝66A,67Aに嵌合する前の状態で定義してもよい。すなわち、何もストレスのかかっていない状態のチューブの外径をD1,D2とする。第1及び第2のチューブ5A,5Bは第1及び第2の主溝66A,67Aの底部まで挿入されることが好ましい。この場合、深さH1,H2は実質的に、第1及び第2の主溝66A,67Aの深さに一致する。さらに、第1の主溝66Aの幅は第1のチューブ5Aの外径未満であり、第2の主溝67Aの幅は第2のチューブ5Bの外径未満であることが好ましい。すなわち、図5(a)に示すように、第1の主溝66Aの幅をW1、第2の主溝67Aの幅をW2とすると、D1>W1且つD2>W2であることが好ましい。換言すれば、第1のチューブ5Aは第1の主溝66Aで圧縮され、第2のチューブ5Bは第2の主溝67Aで圧縮された状態で取り付けられていることが好ましい。第1及び第2のチューブ5A,5Bと第1及び第2の主溝66A,67Aとの間の摩擦力によって、第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2の主溝66A,67Aにしっかりと固定される。
【0020】
上記条件の少なくともいずれか、好ましくはすべてを満たすことで、第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2の主溝66A,67Aに安定して保持され、第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2の主溝66A,67Aから脱落しにくくなる。一例では、第1のチューブ5A及び第2のチューブ5Bの外径D1,D2は6mm、内径は4mmである。第1の主溝66Aの幅W1は3mm、第2の主溝67Aの幅W2は4mmである。また、第1及び第2の主溝66A,67Aの深さは6mm、第1及び第2のチューブ5A,5Bが第1及び第2の主溝66A,67Aに挿入される長さL1,L2は6mmである。なお、第1の主溝66Aの幅W1が第1のチューブ5Aの外径D1と同じであっても、第1のチューブ5Aが第1の溝67Aの側面に接して摩擦を生じている状態であれば、第1のチューブ5Aは第1の溝67Aに保持される。第2の主溝67Aの幅W2と第2のチューブ5Bの外径D2との関係も同様である。すなわち、第1の溝67Aの幅W1は第1のチューブ5Aの外径以下であり、第2の溝67Bの幅W2は第2のチューブ5Bの外径以下であればよい。
【0021】
前述したとおり、本実施形態で使用されるインクは沈降成分を含んでおり、時間の経過とともに、液体収容袋3の上部では沈降成分の濃度が低くなり、下部では沈降成分の濃度が高まる。そして、上述したインクを導出するチューブの配置によれば、第1のチューブ5Aは比較的沈降成分の少ないインクを吸い込み、第2のチューブ5Bは比較的沈降成分の多いインクを吸い込む。その際に、沈降成分の濃度の増加を抑制するためには第2のチューブ5Bからより多くのインクを吸い込むことが好ましい。このため、図5(a)で示すように、本実施形態では、第2のチューブ5Bの最小流路断面積を第1のチューブ5Aの最小流路断面積より大きくなるようにしている。具体的には、第2のチューブ5Bの第2の主溝67Aに嵌合する部分の流路断面積SBが、第1のチューブ5Aの第1の主溝66Aに嵌合する部分の流路断面積SAより大きくされている。これによって、第2のチューブ5Bの流路抵抗が第1のチューブ5Aの流路抵抗より小さくなり、沈降成分の濃度の高いインクを吸い込みやすくなる。このため、沈降成分の濃度が高い液体収容袋3の下層のインクを効率よく第2のチューブ5Bへ導くことができる。図5(a)に示される形態では、第1のチューブ5Aと第2のチューブ5Bが同一の外径と同一の肉厚を有したものが用いられている。そして、第1の主溝66A、第2の主溝67Aの深さH1、H2が同一、第2の主溝67Aの幅W2が第1の主溝66Aの幅W1より大きく、第2のチューブ5Bの外径より小さい寸法が選定されている。この形態では、第1及び第2のチューブ5A,5Bとして同じチューブを使用することができるため、生産管理上有利である。なお、図5(d)に示すような構成も可能である。すなわち、スペーサー部6の第1の主溝66Aと第2の主溝67Aの幅Wと深さHを同一とし、第1及び第2のチューブ5A,5Bの外径が同一のものを使用する。この場合には、第2のチューブ5Bの肉厚t2が第1のチューブ5Aの肉厚t1より小さい(第2のチューブ5Bの内径が第1のチューブ5Aの内径より大きく)種類のチューブを選定することによって、チューブの流路断面積の関係がSB>SAを満たすため、所望の効果が期待できる。図5(d)では、第1の溝66Aと第2の溝67Aの幅を同じものとしたが、チューブの流路断面積がSB>SAの関係を満たす限り異なる幅であっていてもよい。第1及び第2の溝66A,67Aの幅と深さは、第1及び第2のチューブ5A,5Bが完全に閉塞されない限り適宜変更することができる。また、第2のチューブ5Bにより多くのインクを流すため、第2のチューブ5Bの外径を第1のチューブ5Aの外径より大きくしてもよい。
【0022】
本実施形態によれば、保持部材4は一体成型に適した構成となっているため、保持部材4の製造プロセスが簡略化される。この点について本実施形態を比較例と対比して説明する。図8(a)は比較例の保持部材104の側面図を示している。比較例では、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51を保持する追加のノズル10A,10Bがスペーサー部6に設けられている。追加のノズル10A,10Bは図3(b)に示されている接続部材8の第1及び第2のノズル82A,82Bと同様の構成を有している。第1及び第2のチューブ5A,5Bを追加のノズル10A,10Bにかぶせるように装着することによって、第1及び第2のチューブ5A,5Bをスペーサー部6に保持させることができる。
図8(b)は、比較例の保持部材104を射出成型によって作成する状況を示している。保持部材4は、上型M101と下型M102とを有するモールドで作成される。スペーサー部6の主溝66Aと補助溝66Bは上型M101と下型M102によって形成することができる。しかし、追加のノズル10A,10Bが上型M101及び下型M102と干渉するため、実際には図6(b)に示すモールドでは、比較例の保持部材104を形成することができない。そのため、図6(c)に示すように、保持部材104をスペーサー部106と連結部107とに分割し、それぞれを別の型で作成する必要がある。連結部107は専用の上型M103と下型M104で作成する。スペーサー部106も専用の上型M105と下型M106で作成するが、追加のノズル10A,10Bの型抜きのため、横方向にスライドする型M107が必要となる。さらに、このようにして作成したスペーサー部106と連結部107とを接合するため、スペーサー部106と連結部107の双方に嵌合部を設ける必要がある。この様に、比較例の保持部材104を作成するには、スペーサー部106と連結部107を別々の型で作成し、さらにそれらを一体化する必要があり、製造プロセスが複雑化する。
【0023】
図9は、本実施形態の保持部材4を、上型M1と下型M2を有するモールドで、射出成型によって形成する状況を示している。比較例と異なり、スペーサー部6に追加のノズル10A,10Bが設けられていない。このため、保持部材4の全体を一対の上型M1と下型M2で製作することができる。保持部材4の接続部材8側の端部41は上方または下方に開口しているため、端部41の開口74の型抜きも下型M2によって行うことができる。追加のノズル10A,10Bが不要であるため、比較例と比べて圧力損失が低減し、インクの吸い込み効率が向上する効果も得られる。なお、第1の主溝66A、第2の主溝67Aの角部6Cの構成に関しては前述したように型抜きができる角度で構成されている。
【0024】
液体収容体1は以下の手順で製造することができる。まず、上述の手順によって一体の保持部材4を形成する。次に、図2(b)、図3(b)の手順P1に示すように、保持部材4を接続部材8に取り付ける。次に、図3(b)、図4(b)の手順P2に示すように、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第2の端部52を接続部材8に取り付ける。次に、図3(b)、図4(b)の手順P3に示すように、第1及び第2のチューブ5A,5Bの第1の端部51を、スペーサー部6の第1及び第2の溝67A,67Bに嵌合させ、第1及び第2のチューブ5A,5Bを保持部材4に保持させる。第1及び第2のチューブ5A,5Bを保持部材4にしっかりと保持させるためには、手順P2の後に手順P3を実施するほうが好ましいが、手順P3の後に手順P2を実施してもよい。その後、図2(b)、図3(b)の手順P4に示すように、接続部材8を把持部材9に取り付ける。以上で、保持部材4と、接続部材8と、保持部材4と接続部材8とで保持された第1及び第2のチューブ5A,5Bと、把持部材9の組立体が完成する。そして、図2(b)の手順P5に示すように、保持部材4と第1及び第2のチューブ5A,5Bを、第1の端部51が液体収容袋3の内部空間31に開口するように、液体収容袋3の内部空間31に設置する。その後、液体収容袋3の接続部材8が取り付けられた開口部34を封止する。以上の工程によって液体収容体1が完成する。液体収容体1を液体吐出装置100に搭載するには、図2(b)の手順P6に示すように、液体収容体1をカセット2に取り付ける。そして、液体収容体1が取り付けられたカセット2をX方向にスライドさせて液体吐出装置100に搭載する。
【符号の説明】
【0025】
1 液体収容体
3 液体収容袋
4 保持部材
6 スペーサー部
7 連結部材
51,52 第1及び第2の端部
5A,5B 第1及び第2のチューブ
66A,67A 第1及び第2の溝
66B,67B 第1及び第2の補助溝
66C 非接触空間
8 接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9