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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240701BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20240701BHJP
   B65D 47/36 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B65D47/08 130
B65D51/22 120
B65D47/36 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020196208
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084368
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289389(JP,A)
【文献】特開2020-179923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
B65D 51/22
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設された上蓋とからなるヒンジキャップであって、
キャップ本体は、容器本体の口部を封鎖する隔壁と、隔壁に立設された注出筒と、注出筒内の隔壁に破断可能な薄肉弱化部によって画成され、開蓋時に、上蓋側に移行保持して開封される平坦な底面を有する移行栓と、を備え、
上蓋は、頂壁の下面から垂設され、注出筒内周に密接して内方を密封する密封筒を備え、
底面と密封筒下端との間の高さが0.2mm~3.5mmで、ヒンジ側の薄肉弱化部先端と密封筒内周との間の幅が2mm~5.5mmであることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
薄肉弱化部は、隔壁の内周上端と移行栓の底面とを連設することを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
移行栓は、ヒンジ側から立設された保持立壁を備え、
上蓋は、頂壁の下面から垂設され、保持立壁と係合または当接する保持受壁を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に装着して使用されるヒンジキャップに関し、とくに最初の開蓋時に薄肉弱化部を破断して上蓋側に移行する移行栓を有するヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設された上蓋とからなるヒンジキャップにおいて、容器本体の密封性を確保するため、キャップ本体の隔壁に注出口の開口予定部として、破断可能な薄肉弱化部によって画成され、プルリングなどを設けた開栓部を形成していた。
しかし、開栓部を開封するために、上蓋を開けた後、プルリングなどを引っ張り上げて開栓部を除去する作業が必要となり、手間がかかるともに、力の弱い利用者にとっては開封に苦労するという問題があった。
【0003】
そこで、開栓部をなくして、予め注出口を開口しておくことが考えられるが、この場合には、容器本体の密封性に問題が生じるため、プルリングを省略し、開栓部としての移行栓を成形後に、超音波接着などにより上蓋と接合させ、上蓋の開蓋とともに、移行栓を引っ張り上げて薄肉弱化部を破断し、開封するヒンジキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1に記載のヒンジキャップでは、成形後に、超音波接着などにより移行栓を上蓋と接合する必要があるため、移行栓に立設された引上げ部を上蓋から垂設された係着部と係合させることにより、上蓋の開蓋とともに、引上げ部ごと移行栓を引っ張り上げることで薄肉弱化部を破断し、開封するヒンジキャップも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-221643号公報
【文献】特開2015-34012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に記載のヒンジキャップでは、閉蓋時に内容液の入った容器本体が横倒しになったり、内容液を撹拌するために容器本体を大きく振った場合に、上蓋に移行された移行栓の底面に内容液が付着し、上蓋を開けた際に、付着した内容液が垂れ、容器外を汚すことがあった。
また、内容液を使用する際に、上蓋を開けたまま、容器を傾けると、上蓋に移行された移行栓の底面に付着した内容液が垂れて、上蓋内を汚すだけでなく、そのまま閉蓋すると、キャップ本体および容器自体も汚してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、開蓋時に、上蓋側に移行保持して開封される移行栓を備えるヒンジキャップにおいて、内容液が移行栓の底面に付着しても、上蓋を開蓋した際に、移行栓の底面に付着した内容液が上蓋内の密封筒の外側に垂れないようにしたヒンジキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、ヒンジキャップとして、容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設された上蓋とからなるヒンジキャップであって、キャップ本体は、容器本体の口部を封鎖する隔壁と、隔壁に立設された注出筒と、注出筒内の隔壁に破断可能な薄肉弱化部によって画成され、開蓋時に、上蓋側に移行保持して開封される平坦な底面を有する移行栓と、を備え、上蓋は、頂壁の下面から垂設され、注出筒内周に密接して内方を密封する密封筒を備え、底面と密封筒下端との間の高さが0.2mm~3.5mmで、ヒンジ側の薄肉弱化部先端と密封筒内周との間の幅が2mm~5.5mmであることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
ヒンジキャップの実施形態として、薄肉弱化部は、隔壁の内周上端と移行栓の底面とを連設することを特徴とする構成を採用し、また、移行栓は、ヒンジ側から立設された保持立壁を備え、上蓋は、頂壁の下面から垂設され、保持立壁と係合または当接する保持受壁を備えることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒンジキャップは、上記構成を採用することにより、使用前に容器本体を振って内容液を撹拌することにより、内容液が移行栓の底面に付着しても、上蓋を開蓋した際に、移行栓の底面に付着した内容液が上蓋内の密封筒の外側に垂れないようにすることができる。
また、本発明のヒンジキャップは、薄肉弱化部が、隔壁の内周上端と移行栓の底面とを連設することにより、移行栓の底面と密封筒下端との間の高さを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例であるヒンジキャップを容器本体に装着した開封前の状態を示す図で、(a)は側面断面図で、(b)は(a)の要部拡大図である。
図2】本発明の実施例であるヒンジキャップの製造直後の開蓋状態を示す図で、(a)は上面図で、(b)は側面断面図である。
図3】本発明の実施例であるヒンジキャップの変形例を示す図で、(a)は側面断面図で、(b)は(a)の要部拡大図である。
図4】本発明の実施例における比較実験の設定寸法を示す図で、(a)、(b)および(c)は、それぞれの実験例の開封後の拡大断面図である。
図5図4の(a)、(b)および(c)にそれぞれ対応する設定毎の比較実験結果を示す開蓋時の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のヒンジキャップについて、以下の実施例に示した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、図1(a)でみて、左方向を「前方(ヒンジと反対側)」とし、右方向を「後方(ヒンジ側)」とし、上方向を「上」とし、下方向を「下」とする。
【実施例
【0013】
図1において、Aは容器本体Dに装着されるキャップ本体、Bはキャップ本体AをヒンジCによって連結し、開閉する上蓋である。
容器本体Dの口部1の外周には、係合突条2が設けられている。
【0014】
図1および図2に示すように、キャップ本体Aは、容器本体Dの口部1を封鎖する隔壁5と、隔壁5の上面から立設された注出筒6と、口部1に装着され、内方に隔壁5が形成された装着部7とから構成されている。
【0015】
隔壁5は、注出筒6の内周側に、使用時に注出口を開口するため、破断可能な薄肉弱化部8によって画成された移行栓10が設けられている。
移行栓10は、薄肉弱化部8を介して隔壁5に連結され、平坦な底面19を有する底壁11を備え、底壁11の上面には、正面側(ヒンジCと反対側)に略円筒状の引上部12が立設され、ヒンジC側に薄肉弱化部8の内側に沿って保持立壁13が立設されている。底壁11の上面は、平坦に形成されているが、正面側からヒンジC側に下り勾配で傾斜した傾斜面としてもよい。
また、底壁11の底面19は、全体が平坦でなくてもよく、少なくとも、ヒンジC側に平坦な面(ヒンジC側の半分程度)があればよい。
【0016】
なお、本実施例においては、図2に示すように、正面側の底壁11の前端部11aの形状は、薄肉弱化部8の破断が容易となるように、尖った形状をしており、引上部12についても、同様に正面側は、尖った形状に形成されている。
また、保持立壁13は、背面側から引上部12の近くまで設けられているが、底壁11の後端部11bの変形(浮き上がり等)を抑制できるように、保持立壁13は、少なくとも底壁11の後端部11bの周囲に設けられていればよい。
【0017】
さらに、引上部12のヒンジC側には、その上部から底壁11上面に向けて補強リブ14が設けられている。
補強リブ14の形状は、引上部12のヒンジC側を補強し得る形状であればよく、底壁11側を広くした三角形状などとすることができる。
【0018】
本実施例では、引上部12の上面には、引上部12を覆うように、段部15を介して上方に山形状の係止突部16が設けられている。
係止突部16は、下部が太く、上部ほど細い山形状になっている。
係止突部16の上面は、本実施例では平面状であるが、丸くなっていても構わない。
また、引上部12は、下面に凹所17が形成され、空洞になっているが、中実になっていても構わない。
さらに、底壁11は、保持立壁13の外周側に、薄肉弱化部8の全周にわたって周設された周壁18が形成され、周壁18は、保持立壁13の高さよりも低い堤状をなしている。
【0019】
装着部7は、隔壁5の外周縁から垂設され、外周が容器本体Dの口部1の内周に挿入される内筒20と、内周が口部1の外周に係合する外筒21と、内筒20と外筒21の上端部で連設された環状の蓋係合部22とを備え、蓋係合部22の上部には、外方に突出する膨出部23が設けられている。
外筒21の内周には、口部1の外周に設けられる係合突条2と係合する係合突部24が突設されている。
【0020】
図2に示すように、外筒21のヒンジCの左右いずれかの近傍に、外周面に平面視で略V字状の外周切り込み部25が上方から切り込まれ、外周切り込み部25の内周側の上部の薄肉部を隔てた位置を起点としてヒンジC側の円周方向に所定の範囲延びるように、スリット溝26が上方から凹設されている。
このため、ヒンジキャップは、容器の廃棄時に、ヒンジCを介して上蓋Bを引き下げると、外周切り込み部25が縦方向引き裂きライン、スリット溝26が周方向引き裂きラインとなり、外筒21は、外周切り込み部25を起点に周方向に破断され、破断された部分の係合突部24と容器本体Dの口部1との係合が外されていき、簡単にヒンジキャップを容器本体Dから引き離し、分別して廃棄することができる。
【0021】
図1および図2に示すように、上蓋Bは、ヒンジCを介してキャップ本体Aの外筒21の外周上端に、回動自在に取着されており、平坦な頂壁30と、頂壁30の周縁から垂下された側周壁31とを備えている。
頂壁30は、下面から密封筒32と、密封筒32内側のヒンジC側に保持受壁34と、が垂設され、密封筒32は、外周がキャップ本体Aの注出筒6の内周に密接するように設けられ、保持受壁34は、内周先端が移行栓10の保持立壁13の外周上端と係合または当接するように設けられている。
【0022】
本実施例では、保持受壁34は、内周が保持立壁13の外周と係合または当接しているが、保持受壁34は、外周が保持立壁13の内周と係合または当接していてもよく、また、保持受壁34は、先端面が保持立壁13の上端面と係合または当接していてもよい。
なお、保持受壁34は、少なくとも、保持立壁13が立設された範囲に垂設されている。
また、保持受壁34は、内周のヒンジC側中央に当接リブ35が形成され、当接リブ35は、保持受壁34の内周が移行栓10の保持立壁13の外周と係合または当接する際に、保持立壁13の上端に近接または当接するように設けられている。
【0023】
さらに、頂壁30は、密封筒32内の正面側に、係合穴部36が開口され、係合穴部36の下部には、段部を設けて、引上部12上部の係止突部16と係合する係着部33が設けられている。
図2(b)に示すように、係着部33は、内周面が係止突部16の下部外周面に合わせて傾斜を有し、下面33aは、閉蓋時に引上部12の段部15と当接または近接するようになっている。
また、係合穴部36の段部上面に係止突起37が設けられている。
【0024】
本実施例では、図1に示すように、閉蓋時において、係止突部16の上部は、係合穴部36を突き抜けており、溶融や超音波接着等による抜け止め加工によって、係止突部16の上部は、係合穴部36を埋めるように拡げられ、係止突部16は、係着部33上面の係止突起37によって係着される。
なお、本実施例では、引上部12の上方に係止突部16を設け、さらに上蓋Bに係合穴部36を開口し、成形後の閉蓋時に、係止突部16の上部を抜け止め加工によって係着部33に係着させるものであるが、移行栓10の引上部12と上蓋Bの係着部33とを係着させる方法によっては、上蓋Bに係合穴部36を開口しなくてもよく、例えば、上蓋B下面に係止突部、引上部12に係合穴部を設けて結合させたり、引上部12を移行栓10の下方に膨出形成した凹部を設けて係止突部を結合させたり、また、引上部12を形成せず、移行栓10の底壁11に係合穴部を設けて係止突部と結合させてもよい。さらに、別部材の挿入体を使用し、例えば、挿入体を係合穴部36から挿入して移行栓10(引上部12)と結合させる形態でもよく、要は、移行栓10と上蓋Bをしっかり結合できるものであれば、どのような方法でもよい。
【0025】
側周壁31の正面側の下端外周には、円弧状に摘み38が設けられ、図2(b)に示すように、側周壁31の下端部は、内周側に、キャップ本体Aの蓋係合部22の内周側と係合する係止凸部39が垂設され、中央に、蓋係合部22の膨出部23と係合して閉蓋状態を維持する係合凹部40が周設されている。
【0026】
本実施例のヒンジキャップは、閉蓋後、図1(b)に示すように、ヒンジC側のキャップ本体Aの移行栓10の底壁11の底面19と、上蓋Bの密封筒32下端との間の高さをαとし、破断後に底壁11に残る薄肉弱化部8先端と、密封筒32内周との間の幅をβとし、また、上蓋Bの頂壁30の内側には、密封筒32内側の内側凹部γと、側周壁31と密封筒32との間の外側凹部δとが形成される。
【0027】
また、図3に示す変形例のように、キャップ本体Aの隔壁5の内周上端と底壁11の底面19外周とを薄肉弱化部8で連設することで、移行栓10の底壁11は、隔壁5よりも一段上げた位置に形成され、上蓋Bの密封筒32下端を隔壁5の上面に近接するように形成することで、底面19と密封筒32下端との間の高さαを小さくすることができる。
【0028】
なお、本実施例のヒンジキャップは、使用前の不正開封を防止するために、図示していないが、キャップ本体Aと上蓋Bとの間にシュリンクラベルや封緘部材等が設けられている。
【0029】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、金型を用いた射出成形によって一体成形で製造される。
一体成形で製造された本実施例のヒンジキャップは、図2に示すように、開蓋した状態で得られ、上蓋BをヒンジCを介して回動して図1に示す閉蓋状態にされる。
その際、引上部12上部の係止突部16は、上方が細くなっているため、係着部33の中に簡単に入り込み、上部は、係合穴部36に達するとともに、係止突部16の下部外周は、係着部33内周に収まり、係着部33の下面33aは、引上部12の段部15に当接または近接する。
さらに、保持立壁13の外周上端が保持受壁34の内周下端と係合または当接するとともに、保持立壁13の上端が当接リブ35の下端と当接または近接する。
【0030】
また、密封筒32は、注出筒6に密接してシール部を形成するとともに、キャップ本体Aの蓋係合部22と、上蓋Bの係止凸部39および係合凹部40とが嵌合して、閉蓋状態となる。
本実施例では、閉蓋状態で、係止突部16の上部は、溶融や超音波接着等により抜け止め加工が施され、図1に示すように、係止突部16は、係着部33に係着される。
次に、閉蓋されたヒンジキャップは、内容液が充填された容器本体Dの口部1に打栓して装着される。
【0031】
本実施例のヒンジキャップを最初に使用する際には、上蓋Bを開蓋することによって、キャップ本体Aの隔壁5に設けられた薄肉弱化部8を破断して開封することができる。
まず、上蓋Bの摘み38に手指を掛けて持ち上げると、正面側の底壁11が持ち上げられ、それによって正面側の薄肉弱化部8が破断し始め、さらに上蓋Bを持ち上げることにより、ヒンジC方向に薄肉弱化部8の破断が進み、最後にヒンジCに近い部分の薄肉弱化部8が破断され、移行栓10は、隔壁5から除去された後、上蓋Bに移行して保持される一方、キャップ本体Aは、隔壁5から除去された移行栓10の跡が注出口となって、容器本体D内の内容液の注出が可能となる。
移行栓10が開封された後は、上蓋Bを再び閉蓋すると、キャップ本体Aの注出筒6の内周に、上蓋Bの密封筒32の外周が密接し、注出筒6の内方を密封することができる。
【0032】
本実施例では、引上部12のヒンジC側に補強リブ14が設けられているため、正面側の薄肉弱化部8に応力が集中し、薄肉弱化部8の破断が容易となる。
さらに、本実施例では、正面側の底壁11の前端部11aは、尖った形状になっており、正面側の薄肉弱化部8への応力が集中し易くなっている。
【0033】
本実施例のヒンジキャップでは、内容液として、ドレッシングやタレ類などの調味料の場合、内容液を撹拌するために、閉蓋状態で容器本体Dを上下に振ると、上蓋Bに係着された移行栓10は、底壁11の底面19に内容液が付着する。
【0034】
次に、上蓋Bを開蓋すると、上蓋Bに係着された移行栓10は、底壁11がヒンジC側に向けて傾斜しながら開いていくので、底面19と密封筒32下端との間の高さαおよび薄肉弱化部8先端と密封筒32内周との間の幅βの設定によっては、底面19に残った液の一部は、密封筒32内側の内側凹部γに流下されて溜められるだけでなく、側周壁31と密封筒32との間の外側凹部δにも流下することがある。
さらに、上蓋Bを開蓋したままの状態で、容器本体Dを正面側に傾けると、容器本体D内の内容液は、注出筒6を介して注出することができる。
また、再度閉蓋した際に、内側凹部γに流下され溜められた液は、密封筒32内を伝い、注出筒6内に戻されるが、外側凹部δに流下された液は、注出筒6の外側のキャップ本体Aを汚すことになる。
【0035】
本実施例において、ヒンジC側の底面19と密封筒32下端との間の高さαと、薄肉弱化部8先端と密封筒32内周との間の幅βとの設定による効果を確認するために、高さαおよび幅βをそれぞれ変更したヒンジキャップについて、撹拌後に開蓋した際の底面19に付着した内容液の流下具合を比較する実験を行った。
なお、実験に用いた内容液は、焼肉のたれであり、ヒンジキャップは、口部1の内径が20mmの容器本体D用で、材質は、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)樹脂である。
【0036】
比較実験は、図4(a)~(c)に示す、高さαおよび幅βを設定したヒンジキャップを作成し、それぞれのヒンジキャップを容器本体Dに装着し、容器本体Dを上下に振って内容液を撹拌後、ヒンジキャップを開蓋した状態で写真を撮影することにより行い、撮影した写真を図5に示す。
図4(a)に示すヒンジキャップは、高さαを0.2mm、幅βを0.05mmに設定した場合、図5(a)に示すように、一回もしくは何度かの試験後、連続して外側凹部δに液だれした。
図4(b)に示すヒンジキャップは、高さαを1.2mm、幅βを1.5mmに設定した場合、図5(b)に示すように、複数回の試験後、まれに外側凹部δに液だれした。
図4(c)に示すヒンジキャップは、高さαを0.2mm、幅βを3.5mmに設定した場合、図5(c)に示すように、複数回の試験を行っても、外側凹部δに液だれしなかった。
【0037】
さらに、高さαを0.2mm~6mmの範囲、および幅βを0.05~5.5mmの範囲でそれぞれ変更した実験結果を、表1に示す。
なお、表1では、一回もしくは何度かの撹拌試験後、連続して外側凹部δに液だれしたものを「×」、複数回試験した結果、まれに外側凹部δに液だれしたものを「△」、複数回試験しても外側凹部δに液だれしなかったものを「○」とするとともに、「△」および「○」を可とし、「×」を不可とした。
【表1】
【0038】
以上の実験結果から、破断後の薄肉弱化部8先端と密封筒32下端とが近づき、高さαが0.2mmで、幅βが1.5mmでは、底面19から薄肉弱化部8先端と密封筒32下端との間に流れ込む液の表面張力により、底面19からの液が内側凹部γに流下し、外側凹部δに液だれを抑制することができた。
さらに、薄肉弱化部8先端と密封筒32下端とが接近し、幅βが0.8mm以下になると、底面19に付着した液が直接、密封筒32下端に流れ、外側凹部δに液だれしてしまう。
【0039】
また、薄肉弱化部8先端と密封筒32下端とが離れ、高さαおよび幅βが共に大きくなると、底面19から流下した液は、内側凹部γ内にだけ溜まるが、高さαが6mm以上になると、その分、密封筒32の頂壁30からの長さが短くなり、開蓋中に、例えば、上蓋Bがキャップ本体Aに対して90°以上開いた位置では、底面19からヒンジC側に垂れた液が密封筒32下端に留まらず、そのまま液が外側凹部δに液だれしてしまう。
表1に示した実験結果によれば、外側凹部δに液だれしないようにするためには、高さαが0.2mm~5mmの範囲で、かつ幅βが1.5mm~5.5mmの範囲が好ましく、さらに、高さαが0.2mm~3.5mmの範囲がより好ましく、また幅βが2mm~5.5mmの範囲がより好ましい。
【0040】
また、本実施例では、移行栓10は、保持立壁13の外周が上蓋Bの保持受壁34の内周と係合または当接し、底壁11の後端部11bをしっかり保持することができるため、底壁11によって注出口が閉鎖されるとともに、容器本体Dが横倒しになったり、大きく振られても、底壁11の後端部11bが変形し難いため、内容液が底壁11と隔壁5との隙間から入り込み難くなるとともに、底壁11と隔壁5との隙間から内容液が入り込んでも、保持立壁13によって内容液が移行栓10に流入するのを抑止できるので、再度、開蓋した場合にも、内容液によって容器本体Dの内外を汚すことが抑制される。
【0041】
さらに、本実施例では、上蓋Bの保持受壁34は、内周のヒンジC側中央に当接リブ35が形成され、当接リブ35は、保持受壁34の内周が移行栓10の保持立壁13の外周と係合または当接する際に、保持立壁13の上端に近接または当接するように設けられているために、上蓋Bの頂壁30が押し込まれても保持立壁13と保持受壁34との係合または当接が外れるのを抑制することができる。
なお、本実施例では、当接リブ35は、保持受壁34に1個所だけ設けているが、複数個所に設けてもよい。
また、移行栓10は、底壁11の全周にわたって周壁18が周設されているために、開封後に上蓋Bを閉蓋した場合に、移行栓10が開封前よりも下方に移動しても、注出口の閉鎖を損なうことがない。さらに、周壁18は、底壁11の全周に設けてあるので、移行栓10と上蓋Bの間の空間に内容液が入ることを抑制している。
【0042】
なお、上記の本実施例では、ヒンジキャップの容器本体Dへの装着を打栓としているが、ねじによる螺着であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のヒンジキャップは、使用前に容器本体を振って内容液を撹拌することにより、内容液が移行栓の底面に付着しても、上蓋を開蓋した際に、移行栓の底面に付着した内容液が上蓋内の密封筒の外側に垂れないようにできるので、撹拌する必要がある内容液を収納する容器用のヒンジキャップとして広い範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0044】
A キャップ本体
B 上蓋
C ヒンジ
D 容器本体
α 高さ
β 幅
γ 内側凹部
δ 外側凹部
1 口部
2 係合突条
5 隔壁
6 注出筒
7 装着部
8 薄肉弱化部
10 移行栓
11 底壁
11a 前端部
11b 後端部
12 引上部
13 保持立壁
14 補強リブ
15 段部
16 係止突部
17 凹所
18 周壁
19 底面
20 内筒
21 外筒
22 蓋係合部
23 膨出部
24 係合突部
25 外周切り込み部
26 スリット溝
30 頂壁
31 側周壁
32 密封筒
33 係着部
33a 下面
34 保持受壁
35 当接リブ
36 係合穴部
37 係止突起
38 摘み
39 係止凸部
40 係合凹部
図1
図2
図3
図4
図5