(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】臭気ガス低減剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240701BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q7/00
A61Q15/00
A61Q19/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020199698
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2016007805の分割
【原出願日】2016-01-19
【審査請求日】2020-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2015017489
(32)【優先日】2015-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮地 いつき
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184896(JP,A)
【文献】特開2001-95524(JP,A)
【文献】特開2006-83131(JP,A)
【文献】特開2000-136145(JP,A)
【文献】特開2006-87903(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073614(WO,A1)
【文献】特開2008-161150(JP,A)
【文献】特表2012-516332(JP,A)
【文献】特開2002-254058(JP,A)
【文献】特開2004-148046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99,A61Q1/00-90/00
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580 JDREAMIII
JAPIO-GPG/FX
SCIENCE DIRECT
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブナ科コナラ属ヨーロッパナラのエタノール水溶液抽出物を有効成分として含有し、
アンモニア、トリメチルアミン、
及びイソ吉草
酸からなる群より選ばれる1以上の臭気成分の量を低下する
、化粧料、外用医薬品、又は外用医薬部外品として用いるための臭気ガス低減
剤。
【請求項2】
前記エタノール水溶液抽出物は、20質量%以上80質量%以下のエタノール水溶液抽出物である請求項1記載の臭気ガス低減
剤。
【請求項3】
前記臭気成分は、
ヒトから発せられる臭気成分である請求項1又は2に記載の臭気ガス低減
剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デオドラント剤に関する。より詳しくは、一般的な消臭剤とは異なり、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分に対して除去効果を有するデオドラント剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エチケット意識の高まりに伴い、汗や体臭を気にする人が増えている。汗はほぼ全身の各部から分泌されるが、その中でも腋や足などから分泌される汗は細菌が繁殖しやすく匂いやすい。そのため、自己や他人の腋臭などの体臭を気にする人が特に増えてきている。
【0003】
体臭を防止するための主たる方法としては、これまでに、体表の微生物を抑える技術(殺菌剤、抗菌剤等)、汗の分泌を収斂作用で抑える技術(金属酸化物などの収斂剤等)、発生した不快な体臭を消臭する技術及び香りによるマスキング技術(例えば、特許文献1)などが報告されている。
【0004】
しかし、生物学上発汗を完全に止めることは不可能である。また、マスキングでは効果が持続せず隠し切れない臭いも存在する。さらに、体表の微生物を抑える技術では、体臭の発生原因菌以外の皮膚常在菌をも殺菌することで、皮膚の一次バリア機能を低下させる可能性がある。
【0005】
ここで、本発明に関連のあるブナ科コナラ属ヨーロッパナラについて、以下説明する。ブナ科(Fagaceae)コナラ属(Quercus sp)ヨーロッパナラ(Quercus robur L.)は、ヨーロッパから小アジア、カフカース、北アフリカの一部に原生する、25~35m程度の高さを持つ落葉樹である。学名はラテン語で「硬い樽」を意味し、古来、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられてきた。
【0006】
近年、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラが有する効果について、様々な研究がなされている。例えば、特許文献2には、有効成分としてブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を含有する抗老化剤が提案されている。さらに、特許文献3には、有効成分としてブナ科コナラ属植物の抽出溶媒を含有する美白剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-63192号公報
【文献】特開2006-249018号公報
【文献】特開2011-236238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、体臭等を防止するための技術は様々に開発が進められているが、まだまだその効果は満足のいくものでなく、更なる開発が期待されていた。
【0009】
そこで、本発明では、ヒトなどを含む動物から発せられる臭気を抑制することができる新規なデオドラント剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、デオドラント剤について鋭意研究を行った結果、天然由来の成分である
ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物に着目し、該溶媒抽出物が、ヒトなどを含む動物から発せられる臭気成分にダイレクトに作用することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明では、まず、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物を有効成分として含有するデオドラント剤を提供する。
本発明に係るデオドラント剤に有効成分として用いることができるブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物について、具体的に用いる抽出溶媒などは特に限定されないが、抽出溶媒としてエタノール水溶液を用いることができる。
また、抽出溶媒として、エタノール水溶液を用いた場合、その濃度は特に限定されないが、20質量%以上80質量%以下のエタノール水溶液を用いることができる。
本発明に係るデオドラント剤は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分の量を低下させることにより、デオドラント効果を発揮する。臭気成分としては、アンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸、硫化水素、メチルメルカプタン及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる1以上の臭気成分が挙げられ、これらの量を低下させることにより、デオドラント効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るデオドラント剤は、ヒトなどを含む動物から発せられる臭気成分にダイレクトに作用し、該臭気成分の量を低下させることができるため、非常に高いデオドラント効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実験例1におけるアンモニア消臭効果を示す図面代用グラフである。
【
図2】実験例1におけるトリメチルアミン消臭効果を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
本発明に係るデオドラント剤は、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物を有効成分として含有する。ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物とは、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの幹、葉、枝、樹皮、花、実などを、適当な溶媒で抽出して得られる抽出物のことであり、通常、抽出した溶媒の濃厚溶液として使用する。また、当該濃厚溶液を凍結乾燥させたものも、本発明に係るデオドラント剤に用いることが可能である。
【0016】
ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの具体的な抽出部位は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されないが、幹及び主枝から樹皮を除いた心材を選択することが好ましい。
また、前記抽出部位は採取直後でもよいし、乾燥させた後に、抽出に用いてもよい。必要に応じて、粉砕、切断、細切、成形等の加工を行ってから抽出に用いることもできる。さらに、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの木材から得られるチップ、木粉、樽等の加工品も抽出に用いることができる。樽を用いる場合は、溶媒抽出に使用する前に、内面を焼く等の加熱処理をするのが好ましい。
【0017】
抽出に用いる溶媒も特に限定されず、通常、植物抽出に用いることができる溶媒を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノール及びプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコー
ル及びプロピレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独或いは水溶液として用いてもよく、任意の2種又は3種以上の混合溶媒として用いてもよい。本発明においては、この中でも特に、エタノールを用いることが好ましい。細胞毒性が低いため安全性が高く、得られた抽出物を凍結乾燥させて用いることも可能だからである。
【0018】
本発明において、エタノールを抽出溶媒として用いる場合、その濃度も特に限定されないが、溶存する脂溶性成分が析出し製剤安定性に影響を与えることから、80質量%以下が好ましく、60質量%以下が特に好ましい。また、消臭成分の抽出効率の観点から、20質量%以上が好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
【0019】
抽出方法も特に限定されず、通常、植物抽出で行う抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、前記溶媒にブナ科コナラ属ヨーロッパナラの任意の部位を24時間浸漬した後に濾過する方法、溶媒の沸点以下の温度で加温、攪拌等しながら抽出した後に濾過する方法などが挙げられる。
【0020】
ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物は、そのままでも本発明に係るデオドラント剤の有効成分として用いることができるが、当該溶媒抽出物を、さらに、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマト法、逆相若しくは順相の高速液体クロマト法など)により活性の高い画分を分画して用いることも可能である。
【0021】
本発明に係るデオドラント剤に用いるブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物の乾燥固形分濃度は、本発明の効果を損なわなければ、用いる抽出溶媒の種類、抽出方法などに応じて自由に設定することが可能である。本発明においては、特に、乾燥固形分濃度は、0.0000001質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.000001質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。特に好ましくは0.00001質量%以上0.05質量%以下である。0.00001質量%以上とすることで、より高いデオドラント効果を発揮することができ、また、0.05質量%以下とすることで、植物に由来する匂いの発生や沈殿の発生を防止することができる。
【0022】
本発明に係るデオドラント剤は、化粧料、外用医薬品又は医薬部外品などの各種製剤として用いることができる。
【0023】
化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、ボディローション、日焼け止め化粧料、ボディソープ、洗顔料等のスキンケア化粧料や、シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料などに適用することができる。
【0024】
また、化粧料に適用する場合の供給態様も特に限定されず、例えば、一般的な各化粧品に適用される容器以外に、スプレー式容器やエアゾール式容器などを用いて供給することも可能である。
【0025】
外用医薬品としては、例えば、ローション剤、軟膏剤、リニメント剤、噴霧剤、エアゾール剤などに適用することができる。
【0026】
本発明に係るデオドラント剤には、有効成分であるブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物以外にも、通常医薬品や化粧料に用いることができる成分を、1種又は2種以上
自由に選択して配合することが可能である。
【0027】
化粧料、医薬品及び医薬部外品に用いることができる他の成分としては、例えば、基剤、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、多価アルコール、水、油剤、増粘剤、粉体、キレート剤、酵素、pH調整剤などの、化粧料、医薬品及び医薬部外品分野で通常使用し得る全ての添加剤を、自由に選択して含有させることができる。
【0028】
また、本発明に係るデオドラント剤に有効成分として含有されるブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物は、天然由来の成分であるため、他の有効成分との併用を注意する必要性が低い。そのため、本発明に係るデオドラント剤には、前記溶媒抽出物に加え、他の有効成分を必要に応じて自由に配合することができる。例えば、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、美白剤、活性酵素除去剤など、あらゆる有効成分を配合することができる。
【0029】
また、上述した化粧料、外用医薬品又は医薬部外品等には、天然又は合成された多孔性金属酸化物の微粒子粉体、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛等の金属を成分とする収斂性化合物、殺菌剤、抗菌剤、抗生物質などを適宜配合することにより、デオドラント効果を増強させることもできる。
【0030】
天然又は合成された多孔性金属酸化物の微粒子粉体としてはシリカ、ゼオライト、またこれらの空隙に銀、銅、亜鉛などの金属を坦持させたものが好ましい。
【0031】
抗菌剤の一例としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。
【0032】
さらに、本発明のデオドラント剤は、足、腋、頭部、陰部等の臭気成分が発生しやすい箇所に適用することにより、臭気成分の量を低減し、その結果、各部位において高いデオドラント効果を発揮することができる。かかる場合の製剤の使用量は、有効成分の含有量により異なるが、例えば、液状製剤の場合、皮膚面1cm2当たり0.001~1000mgが好ましく、固形状の製剤の場合1cm2当たり0.01~100mgが好ましい。
【0033】
以上説明した本発明に係るデオドラント剤は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分の量を低下させることにより、デオドラント効果を発揮する。本発明に係るデオドラント剤が低下させる臭気成分としては、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分であれば、特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、イソ吉草酸、硫化水素、メチルメルカプタン及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる1以上の臭気成分が挙げられる。
【0034】
本発明に係るデオドラント剤は、天然由来の成分であるブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物を有効成分として含有するデオドラント剤であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用も可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0036】
<実験例1>
実験例1では、ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物のデオドラント効果について、検証を行った。
【0037】
(1)溶媒抽出物の調製例1
ブナ科コナラ属ヨーロッパナラの心材部500gを、50質量%エタノール水溶液2Lに浸漬した。3日後にろ過して得られた抽出物を蒸発乾固させ、この乾燥固形分を0.5質量%になるよう70%1,3-ブチレングリコール水溶液に溶解しヨーロッパナラ溶媒抽出物を得た。
【0038】
(2)消臭率の測定
500mL集気瓶3本に、前記で得られたブナ科コナラ属ヨーロッパナラの溶媒抽出物を10mLずつ入れた後、25質量%アンモニア水溶液(和光純薬工業製)100μL、イソ吉草酸(東京化成工業社製)5μL、またはトリメチルアミン(和光純薬工業製)50μLをそれぞれ添加し、素早くパラフィンフィルムにて密閉した。次に、各集気瓶を、37℃の恒温槽中で30分間振盪した後、集気瓶内上部のヘッドスペースのガス濃度をガス検知管〔株式会社ガステック(アンモニア;No.3La、イソ吉草酸;No.81L、トリエチアルアミン;No.180L)〕を用いて測定した。同一サンプルについて3回試験を行って、その平均ガス濃度を求めた。69.95%1,3-ブチレングリコール水溶液を試料として同様に測定した場合の濃度をガス残存率100%として、各試料溶液のガス残存率(%)を消臭率とした。結果を表1に示す。また、アンモニア消臭効果については
図1に、トリメチルアミン消臭効果については
図2にそれぞれ示す。なお、緑茶抽出物を、乾燥固形分濃度をヨーロッパナラ溶媒抽出物と同じ0.5質量%となるように、70質量%1,3ブチレングリコール水溶液に溶解した緑茶抽出液の実験結果も、参考として
図1及び
図2に併せて示す。
【0039】
【0040】
(3)考察
表1、
図1及び
図2に示す通り、ヨーロッパナラ溶媒抽出物には、アンモニア、イソ吉草酸及びトリメチルアミンに対し、消臭効果を有することが分かった。これらの臭気成分は、体臭に含まれる臭気成分である。そのため、ヨーロッパナラ溶媒抽出物には、高いデオドラント効果があることが分かった。
【0041】
また、従来から消臭効果が高いことが知られている緑茶抽出物との比較では、
図1及び
図2に示す通り、ヨーロッパナラ溶媒抽出物の方が、アンモニア及びトリメチルアミンに対する消臭効果が高いことが分かった。即ち、体臭成分に対するデオドラント効果については、緑茶抽出物よりも、ヨーロッパナラ溶媒抽出物の方が、効果が高いことが示された。
【0042】
<実験例2>
実験例2では、ヨーロッパナラ溶媒抽出物を含むボディローションについて、デオドラント効果及びその持続性を調べた。また、安定性についても検討した。
【0043】
(1)ボディローションの製造
前記実験例1で調製したヨーロッパナラ溶媒抽出物及び下記表2に示す各成分を用いて、実施例1~5のボディローションを製造した。具体的な製造方法は、以下の通りである。
また、比較例として、ヨーロッパナラ溶媒抽出物を用いずに、ボディローションを製造した。
A:成分5~9を混合溶解した。
B:成分1~4、10~11を混合溶解した。
C:BにAを添加混合してボディローションを得た。
【0044】
(2)デオドラント効果の評価
20~40代の男性10名ずつに、実施例1~5及び比較例1のボディローション使用量が2mg/cm2になるように使用してもらい、デオドラント効果について専門パネル
3名で評価した。評価基準は、以下の通りである。
【0045】
[評価基準]
5点:デオドラント効果に特に優れる
4点:デオドラント効果に優れる
3点:デオドラント効果がある
2点:デオドラント効果がわずかにある
1点:デオドラント効果がない
結果は、平均値から、下記基準に基づき示した。
◎:平均点が4点以上
○:平均点が3点以上4点未満
△:平均点が2点以上3点未満
×:平均点が2点未満
【0046】
(3)安定性の評価
実施例及び比較例のボディローションを50℃の恒温層に保管し、1ヵ月後の状態を観察した。評価基準は、以下の通りである。評価基準は、以下の通りである。
[評価基準]
◎:変化なし
○:わずかに変化があるが使用上問題ない。
△:変化が認められる
×:沈殿・変色などが発生して使用できない。
【0047】
(4)結果
結果を下記表2に示す。表2に示す通り、比較例1に比べて、実施例1~5のボディローションは、高いデオドラント効果を示した。実施例の中だけで比較すると、ヨーロッパナラ溶媒抽出物の配合量が多くなるほど、デオドラント効果が高くなり、ヨーロッパナラ溶媒抽出物の配合量が少ないほど、安定性が向上することが分かった。
【0048】
【0049】
<実験例3>
実験例3では、ヨーロッパナラ溶媒抽出物を含む各種化粧料等を製造し、その効果を検証した。
【0050】
[実施例6:ボディローション]
(1)成分 質量%
1.グリセリン 5.0
2.1,3-ブチレングリコール 5.0
3.乳酸 0.05
4.乳酸ナトリウム 0.1
5.PPG-6デシルテトラデセス-20 0.1
6.エタノール 30.0
7.メチルパラベン 0.1
8.香料 0.2
9.カンファ 0.05
10.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.5
11.精製水 残量
【0051】
(2)製造方法
A:成分5~9を混合溶解した。
B:成分1~4、10、11を混合溶解した。
C:BにAを添加混合してボディローションを得た。
【0052】
(3)効果の検証
実施例6のボディローションは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデ
オドラント効果に優れたボディローションであった。
【0053】
[実施例7:制汗スプレー]
(1)成分 質量%
1.クロルヒドロキシアルミニウム 0.22
2.ゼオライト 0.5
3.ミリスチン酸イソプロピル 1.6
4.トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.2
5.無水ケイ酸 1.7
6.エチルアルコール(99%) 1.5
7.ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸 0.02
8.イソプロピルメチルフェノール 0.01
9.香料 0.3
10.メントール 0.00511.L-メンチルグリセリルエーテル 0.00512.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.3
13.液化石油ガス 残量
【0054】
(2)製造方法
A.成分1及び4を混合し、更に成分2、3、5~12を加えて混合し、制汗スプレーの原液を得た。
B.Aをエアゾール容器に入れ、成分13をAに加えて制汗スプレーを得た。
【0055】
(3)効果の検証
実施例7は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れた制汗スプレーであった。
【0056】
[実施例8:シャンプー]
(1)成分 質量%
1.ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.0
(2E.O.;30%水溶液)
2.テトラデセンスルホン酸ナトリウム(30%水溶液) 16.0
3.ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(30%水溶液) 10.0
4.ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(30%水溶液) 3.0
5.ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(30%水溶液) 1.0
6.ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5.0
7.ジステアリン酸ナトリウム 2.0
8.クエン酸 0.7
9.塩化ナトリウム 0.5
10.安息香酸ナトリウム 0.5
11.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 7.0
12.精製水 残量
13.香料 0.2
【0057】
(2)製造方法
A:成分1~12を80℃にて均一に混合した。
B:Aを冷却後、成分13を加え、均一に混合して、シャンプーを得た。
【0058】
(3)効果の検証
実施例8は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優
れたシャンプーであった。
【0059】
[実施例9:ボディソープ]
(1)成分 質量%
1.N-ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン 20.0
2.N-ヤシ油脂肪酸-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム 10.0
3.モノオレイン酸ポリグリセリル 5.0
4.ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 5.0
5.塩化ナトリウム 1.0
6.プロピレングリコール 2.0
7.香料 0.2
8.精製水 残量
9.クエン酸 0.1
10.クエン酸ナトリウム 0.1
11.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 5.0
12.エタノール 5.0
【0060】
(2)製造方法
A:成分1~7及び9~11を加熱混合し、70℃に保った。
B:Aを50℃まで冷却し、成分8、12を加え、さらに40℃まで冷却することにより、ボディソープを得た。
(3)効果の検証
実施例9のボディソープは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたボディソープであった。
【0061】
[実施例10:水中油型ボディクリーム]
(1)成分 質量%
1.スクワラン 5.0
2.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 3.0
3.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 0.8
4.エチルヘキサン酸セチル 4.0
5.デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
6.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 2.0
7.ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート 0.5
8.モノオレイン酸ソルビタン 1.5
9.セトステアリルアルコール 0.5
10.ベヘニルアルコール 0.5
11.1,3-ブチレングリコール 7.0
12.グリセリン 5.0
13.アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C10-30)共重合体 0.2
14.防腐剤 適量
15.トリエタノールアミン 0.2
16.エデト酸二ナトリウム 0.02
17.精製水 残量
18.香料 0.5
19.ジプロピレングリコール 7.0
20.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.01
21.精製水 10.0
【0062】
(2)製造方法
A:成分1~10を70℃にて加熱溶解した。
B:成分11~17を70℃にて加熱後、Aに添加し乳化した。
C:Bを室温まで冷却後した。
D:Cに成分18~21を添加し、水中油型乳液を得た。
【0063】
(3)効果の検証
実施例10のボディクリームは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたボディクリームであった。
【0064】
[実施例11:洗顔料]
(1)成分 質量%
1.ラウリン酸 10.0
2.ミリスチン酸 10.0
3.パルミチン酸 10.0
4.精製水 50.0
5.グリセリン 10.0
6.ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
7.水酸化カリウム 7.0
8.防腐剤 適量
9.ソルビトール 1.0
10.精製水 残量
11.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.5
【0065】
(2)製造方法
A:成分1~10を加熱溶解した。
B:Aを混合しながら徐々に冷却し、11を添加した。
C:Bを容器に充填し、洗顔料を得た。
【0066】
(3)効果の検証
実施例11の洗顔料は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れた洗顔料であった。
【0067】
[実施例12:ロールオン制汗剤]
(1)成分 質量%
1.焼ミョウバン 10.0
2.ゼオライト 5.0
3.イソプロピルメチルフェノール 5.3
4.メントール 0.3
5.水添ヒマシ油 5.0
6.POPブチルエーテル-1 0.5
7.セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
8.ステアリルアルコール 残量
9.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.5
【0068】
(2)製造方法
A:成分1~8を加熱溶解した。
B:Aを混合しながら徐々に冷却し、9を添加した。
C:Bを容器に充填し、ロールオン制汗剤を得た。
【0069】
(3)効果の検証
実施例12のロールオン制汗剤は、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたロールオン制汗剤であった。
【0070】
[実施例13:粉末状ボディパウダー]
(1)成分 質量%
1.タルク 30
2.酸化チタン 1.0
3.赤色226号 0.1
4.黄色4号 0.2
5.黒酸化鉄 0.05
6.ベンガラ 0.2
7.シリコーン樹脂粉末 7
8.マイカ 残量
9.多孔質シリカ *1 5
10.香料 1
11.L-メントール 0.3
12.カンファ 0.02
13.乳酸メンチル 0.2
14.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽 0.2
*1:サイロスフェアC-1504(富士シリシア社製)
【0071】
(2)製造方法
A:成分1~9をヘンシェルミキサーで均一に混合した。
B:Aに成分10~14を加え均一に混合した。
C:Bを容器に充填し、粉末状ボディパウダーを得た。
【0072】
(3)効果の検証
実施例13の粉末状ボディパウダーは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れた粉末状ボディパウダーであった。
【0073】
[実施例14:ヘアトリートメントローション(ヘアミスト)]
(1)成分 質量%
1.ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 0.4
2.モノステアリン酸グリセリル 0.1
3.セトステアリルアルコール 0.05
4.塩化ジココイルジメチルアンモニウム 0.1
5.シア脂 0.01
6.ミリスチン酸イソプロピル 0.2
7.エタノール 20
8.カルボキシビニルポリマー 0.01
9.精製水 残量
10.メチルパラベン 0.1
11.クエン酸ナトリウム 0.01
12.ヒアルロン酸Na 0.05
13.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 1.5
14.香料 0.5
【0074】
(2)製造方法
A:成分1~6を70℃にて均一に溶解した。
B:Aに成分7~12を加え均一に混合した。
C:Bを混合しながら徐々に冷却し、13、14を添加した。
D:Cをアトマイザー容器に充填してヘアトリートメントローションを得た。
【0075】
(3)効果の検証
実施例14のヘアトリートメントローションは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたヘアトリートメントローションであった。
【0076】
[実施例15:ヘアトリートメント]
(1)成分 質量%
1.セトステアリルアルコール 3.5
2.ベヘニルアルコール 2.5
3.ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
4.モノステアリン酸グリセリル 2.2
5.N―ラウロイル―L―グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル) 1.0
6.ミリスチン酸イソプロピル 3.0
7.ジメチコン 4.0
8.ポリオキシプロピレン(40)ブチルエーテル 2.0
9.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 0.5
10.精製水 残量
11.プロピレングリコール 10.0
12.1,2-ペンタンジオール 0.1
13.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.5
14.フェノキシエタノール 0.1
15.香料 適量
【0077】
(2)製造方法
A:成分1~8を均一に加熱溶解した。
B:成分10~14を均一に加熱溶解した。
C:BにAを添加し、均一に乳化混合し、冷却した。
D.Cに成分9、15を添加混合した後、容器に充填してヘアトリートメントを得た。
【0078】
(3)効果の検証
実施例15のヘアトリートメントは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたヘアトリートメントであった。
【0079】
[実施例16:スカルプエッセンス]
(1)成分 質量%
1.イソプロピルメチルフェノール 0.02
2.パントテニルアルコール 0.1
3.1,3-ブチレングリコール 5.0
4.イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
5.エタノール 60.0
6.メチルパラベン 0.1
7.香料 0.2
8.乳酸メンチル 0.05
9.調製例1のヨーロッパナラ溶媒抽出物 3.5
10.精製水 残量
【0080】
(2)製造方法
A:成分5~8を混合溶解した。
B:成分1~4、9、10を混合溶解した。
C:BにAを添加混合してスカルプエッセンスを得た。
【0081】
(3)効果の検証
実施例16のスカルプエッセンスは、ヒトなどの動物から発せられる臭気成分を除去するデオドラント効果に優れたスカルプエッセンスであった。