(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240701BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20240701BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240701BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/511 500
A61F13/512 100
A61F13/534
A61F13/537 210
A61F13/537 310
(21)【出願番号】P 2020200660
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】豊島 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】村井 淳
(72)【発明者】
【氏名】長島 啓介
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0087169(US,A1)
【文献】特開2016-097107(JP,A)
【文献】特表2002-514469(JP,A)
【文献】特開2016-189856(JP,A)
【文献】特表2009-519097(JP,A)
【文献】特開2013-208320(JP,A)
【文献】特開2017-099458(JP,A)
【文献】特開2014-068991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向と前記縦方向に直交する横方向を有し、
前記縦方向の中央部に位置する排泄部対向領域と、前記排泄部対向領域から縦方向前方に位置する前方領域と、前記排泄部対向領域から縦方向後方に位置する後方領域とを有し、
肌側面に位置する表面シートと、
非肌側面に位置する裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置し、縦方向長さが、前記表面シート及び前記裏面シートよりも短い吸収体と
を備える吸収性物品であって、
前記表面シートと前記吸収体との間に、平面視で前記吸収体を覆って位置する有色セカンドシートを備え、
前記吸収体は、前記吸収性物品を構成する部材のうち最も吸収容量が高い部材であり、
前記吸収性物品の肌側面は、前記吸収性物品の非肌側面に向かって前記吸収体まで到達しない前記表面シートと前記有色セカンドシートが一体的に圧搾された前後一対の防漏横溝を有し、該一対の防漏横溝のそれぞれは、平面視で縦方向外方に向かって突出する凸状を有し、前記一対の防漏横溝の凸部先端は、平面視で前記吸収体の縦方向における領域内に位置し、
前記吸収性物品は、前記排泄部対向領域の縦方向に沿う左右両側縁に設けられた左右一対の第1の括れ部と左右一対の第2の括れ部を有し、
前記防漏横溝は、平面視で、前記一対の第1の括れ部間を結ぶ第1仮想線及び前記一対の第2の括れ部間を結ぶ第2仮想線を跨らない
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は高吸収性ポリマーを内包し、且つ、全面が非圧搾である
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記有色セカンドシートは吸水性を有し、前記吸収性物品の全面に配される
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記有色セカンドシートと前記表面シートとの間に間欠塗工パターンで配された第1の疎水性接着剤を備え、
前記第1の疎水性接着剤は、平面視で前記有色セカンドシートと前記表面シートとが重なる領域の全面に配される
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記有色セカンドシートと前記吸収体との間に間欠塗工パターンで配された第2の疎水性接着剤を備え、
前記第2の疎水性接着剤は、平面視で前記有色セカンドシートと前記吸収体とが重なる領域の一部に配される
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第2の疎水性接着剤は、平面視で、前記前後一対の防漏横溝間に位置する
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品の肌側面は、前記表面シートと前記有色セカンドシートが一体的に圧搾された凹陥部を有し、前記凹陥部は、前記吸収体の前方端部領域の左右両側方部及び前記吸収体の後方端部領域の左右両側方部のそれぞれと少なくとも一部が接して位置し、
平面視で前記吸収体の周囲部に配され、前記裏面シートと前記セカンドシートとを接合する固定材を備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、横方向中央に、前記表面シートに設けられた複数の開孔部が縦方向に沿って配されてなる開孔部列を有し、
前記凹陥部は、平面視で、前記開孔部列と重ならない
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品は、横方向中央に、前記表面シートに設けられた複数の開孔部が縦方向に沿って配されてなる開孔部列を有し、前記開孔部列は前記吸収性物品の縦方向両端部を除く縦方向全長に亘って配される
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記前後一対の防漏横溝それぞれは、前記第1仮想線及び前記第2仮想線それぞれよりも、前記吸収性物品の縦方向外方に位置し、且つ、前記一対の防漏横溝それぞれは、前記前方領域及び前記後方領域それぞれの、前記排泄部対向領域の横方向における最大幅と同じ幅を有する位置よりも、前記排泄部対向領域側に位置する
請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記防漏横溝は、平面視で、前記吸収性物品の個包装時に縦方向に折り畳まれることで形成された個装折
り線に跨らず位置する
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
個包装状態で、前記前後一対の防漏横溝のうち少なくとも一方は、前記第1仮想線及び前記第2仮想線の少なくとも一方と前記個装折り線との間に位置し、平面視で互いに重ならない
請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品の左右両側縁は、前記左右一対の第1の括れ部と前記左右一対の第2の括れ部との間で、横方向外方に向かって突出する左右一対の凸形状を有し、
前記吸収性物品における、前記左右一対の第1の括れ部と前記左右一対の第2の括れ部との間の領域での横方向における最大幅は、前記前方領域及び前記後方領域の横方向における最大幅よりも狭い
請求項1から12のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンティライナー、おりものシート、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、表面シートと裏面シートとの間に吸収体が配置されて構成される。一般に、吸収性物品は、着用者の幅方向にあたる横方向が狭く、前後方向にあたる縦方向に長い形状を有していることから、意図的に吸収体の縦方向長さに合わせて液拡散を制御したり吸収容量を高めたりすることがある。吸収性物品を構成する表面シートにおける液拡散は濡れ不快感に繋がることから、表面シートと吸収体を一体的に圧搾して形成した防漏溝を設け、意図しない液拡散を防いだり吸収体への液引き込み性を高めたりすることがなされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品において、防漏溝は、表面シート側から吸収体まで一体的に圧搾された密度が高い領域であり、着用者からの体液がより引き込まれ易く、液溜まりが生じやすい領域である。このため、防漏溝では、体液色が目立ちやすく、着用者に対して視覚的に不快感を与える場合がある。
また、吸収性物品において、吸収体が好ましくない変形をすることによって吸収性能が低下し、その結果、着用者に対して体感的に着用時の不快感を与える場合がある。
【0005】
本発明の課題は、着用者に与える視覚的不快感及び体感的不快感が軽減される吸収性物品の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、吸収体とを備える。
上記吸収性物品は、着用者の前後方向に対応する縦方向と上記縦方向に直交する横方向を有する。
上記吸収性物品は、上記縦方向の中央部に位置する排泄部対向領域と、上記排泄部対向領域から縦方向前方に位置する前方領域と、上記排泄部対向領域から縦方向後方に位置する後方領域とを有する。
上記表面シートは、吸収性物品の肌側面に位置する。
上記裏面シートは、吸収性物品の非肌側面に位置する。
上記吸収体は、上記表面シートと上記裏面シートとの間に位置し、縦方向長さが、上記表面シート及び上記裏面シートよりも短い。上記吸収体は、上記吸収性物品を構成する部材のうち最も吸収容量が高い部材である。
上記吸収性物品は、上記表面シートと上記吸収体との間に、平面視で上記吸収体を覆って位置する有色セカンドシートを備える。
上記吸収性物品の肌側面は、上記吸収性物品の非肌側面に向かって上記吸収体まで到達しない上記表面シートと上記有色セカンドシートが一体的に圧搾された前後一対の防漏横溝を有し、該一対の防漏横溝のそれぞれは、平面視で縦方向外方に向かって突出する凸状を有し、上記一対の防漏横溝の凸部先端は、平面視で上記吸収体の縦方向における領域内に位置する。
上記吸収性物品は、上記排泄部対向領域の縦方向に沿う左右両側縁に設けられた左右一対の第1の括れ部と左右一対の第2の括れ部を有する。
上記防漏横溝は、平面視で、上記一対の第1の括れ部間を結ぶ第1仮想線及び上記一対の第2の括れ部間を結ぶ第2仮想線を跨らない。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の吸収性物品によれば、着用時の不快感を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、折り畳んで個包装された吸収性物品を開封して広げた、個装シートをつけた状態の吸収性物品を示す平面図である。
【
図2】個装シートの図示を省略した、
図1のII-II線で切断した断面を示す拡大断面図である。
【
図3】上記吸収性物品を平面視したときの、表面シートと有色セカンドシートの間に配される第1接着剤S1の塗工領域及び塗工パターンの一例を示す平面図である。
【
図4】上記吸収性物品を平面視したときの、有色セカンドシートと吸収体との間に配される第2接着剤S2の塗工領域及び塗工パターンの一例を示す平面図である。
【
図5】上記吸収性物品を平面視したときの、裏面シートと吸収体との間に配される第3接着剤S3の塗工領域及び塗工パターンの一例を示す平面図である。
【
図6】上記吸収性物品の一部を構成する吸収体に用いられる第4接着剤S4の塗工領域及び塗工パターンの一例を示す平面図である。
【
図7】吸収性物品において、有色セカンドシートと吸収体との間に配される第2接着剤S2の塗工パターンの他の例を示す平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、他の吸収性物品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ここでは、吸収性物品の一実施形態としてパンティライナーを例にあげ、説明する。パンティライナーは、一般に生理後期の経血量が少なくなる時期から非生理期間においてショーツ等の下着の股部分における内面に取り付けられ、おりものや経血、又は尿等の体液を吸収するために用いられる。そのため、パンティライナーは、多くの経血を吸収することを目的に使用されることが少ないため、一般に他の体液吸収性物品、例えば生理用ナプキン等と比較して幅が狭く、厚みが薄く構成される。
【0010】
<パンティライナーの全体構成>
図1に示すように、本発明の吸収性物品としてのパンティライナー1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。パンティライナー1における横方向はパンティライナー1の幅方向に対応する。
なお、本明細書では、パンティライナー1の厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上又は肌側、着衣に近い側を下又は非肌側という事がある。また、本明細書において、「肌側面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側である。「非肌側面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。また、本明細書において、「平面視」とは、厚み方向Zから見た平面視を意味する。
また、ここでは、着用時における前後方向を基準として、便宜的に前、後と称する。パンティライナー1は、縦方向Xを二等分するY方向に延びる仮想横線を引いたときに、該仮想横線を軸として線対称となる外形形状を有しており、パンティライナー1の縦方向Xにおける両端部のうちどちらを前方にして着用してもよいように構成される。
【0011】
図1に示すように、パンティライナー1は、縦方向Xに沿って延び、着用時に着用者の着衣の内面に、パンティライナー1の非肌側面1bに配された粘着部によって固定される。パンティライナー1は、後述する吸収体4を有しており、着用者の経血、おりもの、尿等の液状物(以下、「体液」とも称する)を吸収する機能を有する。
【0012】
パンティライナー1は、縦方向Xに沿って、前方領域51と、排泄部対向領域52と、後方領域53とに区分される。
排泄部対向領域52は、着用時に着用者の液排泄部(膣口、尿道口)に対向し、体液が主に供給される領域である。排泄部対向領域52は、パンティライナー1の縦方向Xの中央部に配置される。
図1のパンティライナー1において、排泄部対向領域52の縦方向Xの領域は、後述する吸収体4の縦方向Xにおける全長、すなわち吸収体4の前方先端部から後方先端部までの領域に対応する。
前方領域51は、排泄部対向領域52の前方(着用者の腹側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部対向領域の前方に対向するように構成される。
後方領域53は、排泄部対向領域52の後方(着用者の背側)に配置される領域であり、装着時に着用者の排泄部対向領域の後方に対向するように構成される。
【0013】
パンティライナー1は、衛生面や携帯性の観点から個装シートで包装されることがある。
図1に示すように個包装状態のパンティライナー10は、パンティライナー1と、パンティライナー1の非肌側面1bに配された個装シート9を有する。
図2に示すように、パンティライナー1は、肌側面1aと非肌側面1bを有する。
パンティライナー1は、個包装時において、パンティライナー1の肌側面1aを上面とした場合に2箇所で谷折りされ、3つ折りの状態に保持される。このため、パンティライナー1には、
図1に示すように、縦方向Xに折り畳まれることで、横方向Yに沿った2本の第1個装折り線31及び第2個装折り線32が形成される。第1個装折り線31は、第2個装折り線32よりも前方に位置する。
図1に示す例では、第1個装折り線31は、後述する吸収体4の縦方向Xにおける前方先端部を通る横方向Yと平行に延在する仮想横線34と同じ位置にある。第2個装折り線32は、後述する一対の第2の括れ部12間を結ぶ第2仮想線22と同じ位置にある。
個包装されたパンティライナー10の状態では、パンティライナー1は、例えば、肌側面1aが内側となるように第2個装折り線32で折り畳まれ、次に、肌側面1aが内側となるように第1個装折り線31で折り畳まれている。
以下、三つ折りされた個包装状態のパンティライナーの構成について説明をする場合は、個包装状態のパンティライナーであることを明記する。該明記がない場合は、
図1に示すように、広げた状態のパンティライナーに係る構成の説明である。
【0014】
図2に示すように、パンティライナー1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、有色セカンドシート5といった部材から構成される。表面シート2はパンティライナー1の肌側面1aを構成する。裏面シート3はパンティライナー1の非肌側面1bを構成する。パンティライナー1において、裏面シート3、吸収体4、有色セカンドシート5及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、接着剤やヒートシール等による接合、及び圧搾溝によるエンボス加工等によって、適宜接合されている。詳細については後述する。
【0015】
<パンティライナーの外形形状>
パンティライナー1は、前端縁16a、後端縁16b、左側縁17a及び右側縁17bを有する。
平面視において、パンティライナー1は、パンティライナー1を縦方向Xに沿って3つに区分する、左右一対の第1の括れ部11と、左右一対の第2の括れ部12を有する。左右一対の第1の括れ部11と、左右一対の第2の括れ部12は、パンティライナー1の縦方向Xに沿う左右両側縁17a、17bに設けられる。パンティライナー1は、計4つの括れ部を有する。
平面視で、左右一対の第1の括れ部11及び左右一対の第2の括れ部12は、排泄部対向領域52内に位置する。左右一対の第1の括れ部11及び左右一対の第2の括れ部12は縦方向Xに間欠配置される。パンティライナー1において、第1の括れ部11は縦方向Xにおける前方に位置し、第2の括れ部12は後方に位置する。
【0016】
第1の括れ部11及び第2の括れ部12は、それぞれ、パンティライナー1を縦方向Xに沿って前方領域51から後方領域53に向けて幅(横方向Yにおける寸法)をみたとき、該幅が減少から増加に転じる部位である。第1の括れ部11及び第2の括れ部12は、パンティライナー1の縦方向Xに関して、ある長さを有する部位であってもよく、或いは長さを有さない一点で特定される部位であってもよい。
図1に示すパンティライナー1においては、第1の括れ部11及び第2の括れ部12の位置は一点で特定される。左側縁17aにおける第1の括れ部11と、右側縁17bにおける第1の括れ部11とは、パンティライナー1を縦方向Xに沿ってみたとき、同じ位置に位置している。第2の括れ部12に関しても同様である。
【0017】
左右一対の第1の括れ部11を通る線分を第1仮想線21という。左右一対の第2の括れ部12を通る線分を第2仮想線22という。第1仮想線21及び第2仮想線22は、横方向Yに平行に延在する直線である。尚、第1の括れ部11及び第2の括れ部12が、パンティライナー1の縦方向Xに関して、ある長さ、例えば数mmといった長さを有する部位である場合、当該部位の縦方向の長さを幅とする、横方向Yに平行に延在する直線状の仮想の幅太線を第1仮想線21及び第2仮想線22とする。
【0018】
パンティライナー1は、左右一対の第1の括れ部11及び左右一対の第2の括れ部12によって、縦方向Xに沿って、前方部F、中央部C及び後方部Rの3つに区分される。中央部Cは、第1仮想線21と第2仮想線22との間の領域である。前方部Fは、中央部Cよりも前方に位置する。後方部Rは、中央部Cよりも後方に位置する。パンティライナー1は、第1仮想線21及び第2仮想線22により縦方向Xに沿ってほぼ三等分され、前方部F、中央部C及び後方部Rそれぞれの縦方向Xの長さはほぼ同じである。
平面視で、第1仮想線21及び第2仮想線22は排泄部対向領域52に位置する。排泄部対向領域52は、中央部Cと、前方部Fの一部と、後方部Rの一部を含む。
【0019】
図1に示すように、パンティライナー1の縦方向Xに沿ってみたとき、前方部Fは、その幅が一定ではなく、最大幅を有する部位b(この部位を「最大幅部b」という。)を、1か所有する。最大幅部bは、前方部Fにおいて、幅が増加から減少に転じる箇所であり、前方領域51に位置する。
前方部Fは、最大幅部bから第1の括れ部11に向けてその幅が漸減している。また前方部Fは、最大幅部bから前端縁16aの先端部に向けてその幅が漸減している。最大幅部bから第1の括れ部11までの間においては、前方部Fの両側縁17a、17bは略直線状となっている。一方、最大幅部bから前端縁16aの先端部までの間においては、該先端部に向けて凸の緩やかな弧状になっている。前端縁16aと両側縁17a、17bとは滑らかに連なっている。
【0020】
パンティライナー1を縦方向Xに沿ってみたとき、後方部Rは、その幅が一定ではなく、最大幅を有する部位c(この部位を「最大幅部c」という。)を、1か所有する。最大幅部cは、後方部Rにおいて、幅が増加から減少に転じる箇所であり、平面視で後方領域53に位置する。
後方部Rは、最大幅部cから第2の括れ部12に向けてその幅が漸減している。また後方部Rは、最大幅部cから後端縁16bの先端部に向けてその幅が漸減している。最大幅部cから第2の括れ部12までの間においては、後方部Rの両側縁17a、17bは略直線状となっている。一方、最大幅部cから後端縁16bの先端部までの間においては、該先端部に向けて凸の緩やかな弧状になっている。後端縁16bと両側縁17a、17bとは滑らかに連なっている。
【0021】
図1に示すように、パンティライナー1の両側縁17a、17bは、左右一対の第1の括れ部11と左右一対の第2の括れ部12との間、すなわち中央部Cにおいて、横方向Y外方に向かって突出する左右一対の凸形状部15を有する。
パンティライナー1を縦方向Xに沿ってみたとき、中央部Cは、その幅が一定ではなく、最大幅を有する部位a(この部位を「最大幅部a」という。)を、1か所有する。最大幅部aは、左右一対の凸形状部15間の横方向Yにおける最大幅部である。最大幅部aは、中央部Cにおいて、幅が増加から減少に転じる箇所である。
凸形状部15は、横方向Y外方に向けて凸の緩やかな弧状となっている。最大幅部aは、中央部Cを縦方向Xに前後二等分する位置に形成されている。中央部Cは、最大幅部aから第1の括れ部11に向けてその幅が漸減している。中央部Cは、最大幅部aから第2の括れ部12に向けてその幅が漸減している。
【0022】
第1の括れ部11及び第2の括れ部12は、着用時、着用者の動き等に伴ってパンティライナー1に力が加わった際、パンティライナー1の側縁等を介して縦方向Xに伝播されるよれあるいは応力に緩衝してその影響力を低下させる機能を有する。これにより、前方部F、中央部C、後方部Rでよれが生じても、そのよれがパンティライナーの全体に波及しがたく、パンティライナー1におけるよれが効果的に防止される。
更に、中央部Cの両側縁17a、17b(左側縁17a、右側縁17b)が、横方向Yの外方へ向けて凸の弧状を有することにより、着用時、着用者の両脚からパンティライナー1に横方向Y内方に向かう力が加わった場合に、中央部Cの変形が、両側縁の形状に起因して生じる抵抗力によって阻止されるので、中央部Cによれが生じにくい。
ここで、パンティライナーは、生理用ナプキン等の他の吸収性物品と比較して、一般に薄手であり、厚みを増やすことによる剛性を利用したよれ防止を図ることが難しい。しかしながら、本実施形態では、第1の括れ部11及び第2の括れ部12を設け、中央部Cの両側縁17a、17bを横方向Y外方に凸の形状にすることで、パンティライナーの厚みを増やさなくても、よれ防止を図ることができる。これにより、よれによる着用違和感を与えにくいものとすることができ、また、よれによる吸収性能の低下等の発生が抑制され、着用者に対して与える体感的な不快感を軽減することができる。
【0023】
また、中央部Cの両側縁17a、17bが、横方向Yの外方へ向けて突出した形状となっていることにより、中央部Cの面積が視覚的に広く感じられることから、横洩れ防止といった吸収性能に対する安心感を着用者に与えることができる。しかも、実際に中央部Cの面積を広く確保できるので、体液の吸収容量を高くすることができる。
【0024】
また、
図1に示すように、パンティライナー1では、最大幅部aは、前方領域51における最大幅部b及び後方領域53における最大幅部cよりも狭くなっている。このように、着用者の両脚からの力を受けやすい排泄部対向領域52を、排泄部対向領域52と比較して着用者の両脚からの力を受けにくい前方領域51及び後方領域53の幅(横方向Yの寸法)よりも狭くすることにより、排泄部対向領域52の幅を広くするのと比較して、着用違和感を少なくすることができる。また、前方領域51における最大幅部b及び後方領域53における最大幅部cを、排泄部対向領域52の最大幅部aよりも広くすることで、パンティライナー1全体の吸収面積を広く確保することができ、吸収容量を高めることができる。仮に多量の体液が一気に排泄された場合においても、意図しない液流れに対処でき、着用者に安心感を与えることができる。
【0025】
<各部構成>
以下、パンティライナー1を構成する各部材について説明する。
【0026】
[吸収体]
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、有色セカンドシート5と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、体液を肌側面4aから吸収し、内部で拡散させて体液を保持する。吸収体4は、パンティライナー1を構成する部材のうち最も吸収容量が高い部材である。
【0027】
吸収体4としては、パルプ繊維等の繊維材料を含み、かつ、必要に応じ高吸収性ポリマーの粒子を内包する積繊体、パルプ繊維等の繊維材料を含み、かつ必要に応じ高吸収性ポリマーの粒子を内包する吸収紙、2枚の吸収紙の間に高吸収性ポリマーの粒子が配置されてなる吸収シートなどを用いることができる。
繊維材料としては、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。
高吸収性ポリマーとしては、自重の5倍以上の体液を吸収・保持でき、かつゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり得る。高吸収性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル線にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用し得る。
【0028】
図2に示すように、吸収体4は、例えば、繊維材料41と高吸収性ポリマー42を含んで構成される。パンティライナー1において、吸収体4はシート状の吸収シートが折り畳まれた状態で配され、2層以上の積層構造を有しているが、折り畳まずに単層構造の吸収体であってもよい。また、吸収体4は、繊維材料を積繊した吸収性コア又は該繊維に高吸収性ポリマーの粒子を担持させた混合積繊物である吸収性コアをコアラップシートで被覆したものであってもよい。
【0029】
パンティライナー1では、表面シート2、有色セカンドシート5及び裏面シート3は同一形状を有し、これらは平面視で重なってパンティライナー1の外形形状を構成する。
図1に示すように、平面視において、吸収体4は、表面シート2、有色セカンドシート5及び裏面シート3が存在する領域内に位置している。吸収体4は、中央部Cの長手方向全域にわたって存在し、かつ前方部F及び後方部Rの一部にも存在している。
吸収体4は、縦方向Xの長さが表面シート2、有色セカンドシート5及び裏面シート3よりも短く、横方向Yの長さが表面シート2、有色セカンドシート5及び裏面シート3の最狭幅の寸法よりも短くなっている。平面視で、表面シート2、有色セカンドシート5及び裏面シート3は、吸収体4の全周縁から外方に延出しており、それらの延出域どうしが互いに後述する接着剤によって接合されている。更に、延出域どうしは、パンティライナー1の周縁よりも内方に位置する、パンティライナー1の全周にわたる連続した、例えばヒートシール等による周縁接合部13によって接合されている。
パンティライナー1では、平面視で、吸収体4は縦方向Xに長辺を有する矩形形状をしている。尚、吸収体4の平面形状は限定されない。
【0030】
パンティライナー1は、防漏横溝6、凹陥部8、防漏縦溝7といった圧搾溝を有する。圧搾溝は表面シート2及び有色セカンドシート5が一体的に凹陥して構成される。圧搾溝は、吸収体4まで到達しておらず、吸収体4の肌側面4a全面は非圧搾状態となっている。圧搾溝の詳細な構成については後述する。
「非圧搾」とは、全く圧搾されていない形態の他、次のような形態も含まれる。表面シート2と有色セカンドシート5が一体化した圧搾溝を有する表面シート2及び有色セカンドシート5を、吸収体4上に重ねて配置することによって、吸収体4の表面に圧搾溝に起因する僅かな窪みが生じる場合がある。このような形態も、「非圧搾」に含まれる。このような形態では、表面シート、有色セカンドシート及び吸収体が圧搾溝で一体化しておらず、容易に吸収体と有色セカンドシートとが離間可能となっている。
【0031】
吸収体4の肌側面4a全面が非圧搾状態となっていることにより、圧搾された密度が高い領域による局所的な液溜まりを生じさせることなく、面内全体で効果的に吸収体4の吸収能を使用することができる。また、吸収体4の剛性が高まることが防止されるとともに、圧搾状態の違いによる剛性差がなくなるため、良好な吸液性及び柔軟性を備えた吸収体4とすることができる。
更に、吸収体4が高吸収性ポリマー42を含む場合、吸収体4を非圧搾状態とすることにより、吸収体4に含まれる高吸収性ポリマー42の、圧搾溝による膨潤阻害の発生を防ぐことができ、高吸収性ポリマー42による吸液特性を効果的なものとすることができる。
【0032】
[表面シート]
表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、有色セカンドシート5の厚み方向Z上方に配置される。
表面シート2は、パンティライナー1の外形形状を構成する。
表面シート2としては、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。
表面シート2は、例えば、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維等から構成される。
【0033】
図1に示すように、表面シート2は、複数の開孔14を有していてもよい。開孔14は、表面シート2を厚さ方向Zに貫通する貫通孔である。
図1に示す例では、複数の開孔14が縦方向Xに沿って配されてなる開孔部列140が7列、横方向Yに沿って間欠配置される。複数の開孔部列140からなる開孔部列群は、表面シート2の横方向Yの中央部に配されており、両側方には配されていない。また、複数の開孔部列140は、パンティライナー1の縦方向X両端部を除く縦方向X全長に亘って配される。平面視で、複数の開孔部列140は、周縁接合部13で囲まれる領域内に位置し、パンティライナー1の周縁接合部13よりも内方に位置し、外方には位置していない。
複数の開孔14は、例えば千鳥状に配されている。開孔14の平面視形状は、
図1に示す楕円形に限定されず、例えば、三角形、正方形、長方形などの多角形、星形等であってもよい。尚、
図2の断面図においては、開孔の図示を省略している。
【0034】
複数の開孔部列140を設けることにより、表面シート2に供給された体液の下方への液移行性が向上する。複数の開孔140を縦方向Xに沿って配置し開孔部列140を構成することにより、体液の排泄速度が速い場合でも、横方向Yにおける寸法よりも縦方向Xにおける寸法が長いパンティライナー1において、縦方向Xに体液が拡散しやすくなり、横洩れを防ぎやすくなる。
また、複数(
図1においては、7列)の開孔部列140からなる開孔部列群の横方向Yの寸法は、吸収体4の横方向Yの寸法よりも短く、後述する防漏横溝6の横方向Yの寸法よりも短い。防漏横溝6を間に挟んでその横方向Y両側に配される、後述する凹陥部8は、開孔部列140と平面視で重なっていない。パンティライナー1の排泄部対向領域52において、平面視で、開孔部列140が、吸収体4が存在する領域に位置していることにより、体液が下方に移行した際に吸収体4に到達するため、横方向Yへの横漏れが抑制しやすくなっている。
【0035】
表面シート2は、パンティライナー1を表面シート2側からみたときに、後述する有色セカンドシート5が透けて視認可能となるように構成される。表面シート2は、例えば白色である。尚、表面シート2の色は白色に限定されず、表面シート2側からパンティライナー1を見たときに、有色セカンドシート5の色が透けて視認できればよい。
【0036】
表面シート2の肌側面、すなわちパンティライナー1の肌側面1aには、表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成される防漏横溝6、凹陥部8、防漏縦溝7といった圧搾溝が形成されている。圧搾溝については後述する。
【0037】
[有色セカンドシート]
有色セカンドシート5は、表面シート2と吸収体4との間に配される。有色セカンドシート5は、表面シート2からの体液の引き込みを促進し吸収体4への体液の透過性を向上させ、吸収体4に吸収された体液の表面シート2への液戻りを低減させるなどの役割をするシートである。
有色セカンドシート5は、吸水性の材料で構成される。吸水性は、JIS P 8141 の「紙及び板紙-吸水度試験方法」に記載されているクレム法によって評価することができる。有色セカンドシート5のクレム吸水高さは、表面シート2のクレム吸水高さよりも1mm以上高いことが好ましく、5mm以上高いことがより好ましい。表面シート2のクレム吸水高さは1mm以上20mm以下であることが好ましい。有色セカンドシート5のクレム吸水高さは、5mm以上40mm以下であることが好ましい。
有色セカンドシート5としては、親水性不織布や親水性の繊維集合体を用いることができる。不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、レジンボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。有色セカンドシート5は、親水性不織布や親水性繊維集合体を、例えば染料等によって着色して構成される。
【0038】
有色セカンドシート5は、平面視で吸収体4よりも大きく、吸収体4を覆うように位置する。本実施形態のパンティライナー1においては、有色セカンドシート5は表面シート2及び裏面シート3と同一形状を有し、パンティライナー1の全面に配されている。これにより、パンティライナー1を白色の表面シート2側から平面視した際、表面シート2を介して、パンティライナー1の全面が、有色セカンドシート5に起因する色で視認される。このように全面が同じ色で視認されることにより製品に統一感が生まれるとともに、有色によって液隠蔽効果があることを着用者に想起させ、安心感を与えることができる。また、吸水性の有色セカンドシート5をパンティライナー1の全面に配することにより、着用時の着用者からの汗や体液などがパンティライナー1に供給されたときのパンティライナー1全体におけるムレ感を軽減することができ、着用不快感が軽減される。
【0039】
ここで「白色」とは、CIE-L*a*b*表色系におけるL*値が95以上の色を意味する。
「有色」とは、無色透明を除くのに加え、L*値が95以上の色(白色)も除くことを意味する。また、従来の吸収性物品において隠蔽性を高めるために、例えば、酸化チタン等の剤を配合して白濁化させてL*値を95未満とすることは、本発明の有色の概念には含まれない。
本明細書において、CIE-L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値は色差計によって測定できる。例えば日本電色工業(株)のハンディ型分光色差計NF333(商品名)を用い、光源C、視野角2°の測定条件で、シートの反射光を測定して求めることができる。このとき、背景板としてL*値が95以上の白色板を用いて測定することが好ましい。
【0040】
有色セカンドシート5の色は、着用後の体液が供給されたパンティライナー1において、着用者がみて吸収された体液が目立ちにくい、視覚的な液隠蔽効果を奏する色とすることが好ましい。例えば、経血の赤色は暖色系であるので、これと対照的な緑色、水色、紫色などの寒色系を用いることが好ましい。これにより、平面視でパンティライナー1の有色セカンドシート5が位置する領域に経血が付着した場合、当該経血の色を見難くできる。これにより、着用者に対して与える視覚的不快感を軽減することができる。
【0041】
有色セカンドシート5には、抗菌剤や消臭剤といった特定の機能を発揮し得る機能剤が含まれていてもよい。機能剤を含む有色セカンドシートは、例えば、その作製時に機能剤を配合することにより作製することができる。
抗菌剤や消臭剤を用いることにより、着用時の着用者に対して与える匂い不快感を軽減することができ、有色セカンドシート5の有色による視覚的不快感軽減効果と相まって、着用者により不快感を与えにくい。
また、パンティライナー1において、液保持層である吸収体4よりも肌側に抗菌剤や消臭剤を含む有色セカンドシート5を配置することにより、吸収体4に保持された体液から発せられる匂いに対する消臭効果がより効果的に得られやすい。これにより、においによる不快感が軽減され、視覚的、体感的不快感軽減と相まって、着用者に与える不快感をより軽減することができる。
【0042】
抗菌剤には既知のものを用いることができる。抗菌剤としては、有機性の抗菌剤を用いることが好ましい。有機性の抗菌剤は、排泄物中の匂い発生原因物質が有機性である場合、匂い発生原因物質との良好な親和性から高い抗菌・消臭性が期待できる。有機性の匂い原因物質や菌との親和性の観点から、有機性のカチオン性抗菌剤が特に好ましい。カチオン性抗菌剤は、悪臭産生の制御として強い腐敗臭の発生を抑えることができる。このため、本明細書において、抗菌剤は消臭剤に含まれる概念である。
カチオン性抗菌剤は、有機化合物系の抗菌剤で、銀、亜鉛、銅等の金属イオン系よりも尿等の排泄物への溶出が多く抗菌作用が広範囲である。特に、ジデシルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これらのカチオン性抗菌剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
【0043】
消臭剤としては、それ自体が臭気に直接作用して、即ち臭気を吸着、中和、分解等して、消臭効果を発現し得る物質であり、当該技術分野においても消臭用途に汎用されているものを用いることができる。臭気に対する広い消臭スペクトルを有する点から、多孔性の消臭粒体が好ましい。多孔性の消臭粒体としては、無機消臭粒体や、有機消臭粒体などがある。無機消臭粒体とは無機化合物を主体とする消臭粒体、即ち消臭粒体の骨格となる化合物が無機化合物である消臭粒体のことである。有機消臭粒体とは有機化合物を主体とする消臭粒体、即ち消臭粒体の骨格となる化合物が有機化合物である消臭粒体のことである。
このように、抗菌剤に加え消臭剤を用いることにより、更に悪臭の発生を抑制することができる。
好ましい無機消臭粒体としては、カンクリナイト様鉱物、ゼオライト、モンモリロナイト、活性炭等が挙げられる。これらの中でも極性を有している多孔性消臭粒体が水溶性の臭い原因物質の消臭に適しているので好ましく、更には、カンクリナイト様鉱物とゼオライトが広い消臭スペクトルを有する点から好ましい。なお、活性炭は非極性に属するので、有機性の臭い成分の消臭に有効であり、例えば、椰子殻炭、木炭、暦青炭、泥炭、亜炭等が挙げられる。
好ましい有機消臭粒体としては、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる粒子が挙げられる。
【0044】
[裏面シート]
裏面シート3は、吸収体4の厚み方向Z下方に配置される。裏面シート3の非肌側面は、パンティライナー1の非肌側面1bを構成する。
裏面シート3は、パンティライナー1の外形形状を構成する。
裏面シート3としては、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。
裏面シート3は、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。当該シート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等を用いることができる。
裏面シート3の非肌側面には、図示はしないが、着衣に対してパンティライナー1を固定する粘着部が設けられている。
【0045】
[圧搾溝]
上述したように、表面シート2の肌側面、すなわちパンティライナー1の肌側面1aには、表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成される、防漏横溝6、凹陥部8、防漏縦溝7といった圧搾溝が形成されている(
図1及び2参照。)。圧搾溝は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
【0046】
図2に示すように、防漏横溝6、凹陥部8、または
図2には図示していないが、防漏縦溝7といった圧搾溝は、表面シート2及び有色セカンドシート5が、パンティライナー1の非肌側面1b(裏面シート3側)に向かって一体的に圧搾されて形成された凹陥した構成を有する。圧搾溝は吸収体4まで到達していない。
【0047】
パンティライナー1において、防漏横溝6、凹陥部8、防漏縦溝7といった圧搾溝は、厚さ方向Zにおいて、吸収体4まで到達していないため、表面シート、有色セカンドシート及び吸収体を一体的に圧搾されて形成される圧搾溝(以下、「吸収体まで到達した圧搾溝」ということがある。)と比較して、繊維密度が低く、また、剛性も低くなっている。このため、パンティライナー1における防漏横溝6、凹陥部8、防漏縦溝7といった圧搾溝では、他の圧搾されていない領域と比較して経血等の色が濃くでやすいものの、吸収体まで到達した圧搾溝と比較して、体液の色が目立ちにくく、着用者に対して、視覚的な不快感を与えにくい。
【0048】
次に、各圧搾溝について説明する。
(防漏横溝)
図1に示すように、平面視で、防漏横溝6は、パンティライナー1の排泄部対向領域52に前後に一対配置される。
前後一対の防漏横溝6のうち前方に位置する防漏横溝を前方防漏横溝6aといい、後方に位置する防漏横溝を後方防漏横溝6bという。特に両者を区別しない場合は防漏横溝6という。
【0049】
前方防漏横溝6aは、横方向Yに沿って延び、前方にむかって突出する凸状を有する。
図1に示す例では、前方防漏横溝6aは、パンティライナー1の縦方向X外方へ向けて凸の緩やか弧状を有するが、これに限定されない。例えば逆V字形状であってもよく、前方に向かって突出する凸状であればよい。前方防漏横溝6aは、前方部Fに位置する。
後方防漏横溝6bは、横方向Yに沿って延び、後方に向かって突出する凸状を有する。
図1に示す例では、後方防漏横溝6bは、パンティライナー1の縦方向X外方へ向けて凸の緩やか弧状を有するが、これに限定されない。例えばV字形状であってもよく、後方に向かって突出する凸状であればよい。後方防漏横溝6bは、後方部Rに位置する。
【0050】
防漏横溝6は、複数の凹陥圧搾部60が間欠的に配されて列をなし全体的に連続した線として見做せる線状となっている。本実施形態では、複数の凹陥圧搾部60それぞれは平面形状が互いに異なっており、防漏横溝6は、全体で、防漏横溝6の長さ方向の中央域における幅が最も大きく、かつその端部に向かうにつれてその幅が漸減している形状となっている。
防漏横溝6における「連続」した線状とは、連続した線状の凹陥圧搾部によって防漏横溝が形成される形態と、本実施形態のように不連続な複数の凹陥圧搾部が列をなした集合体によって防漏横溝が形成され、全体的に連続した線と見做せる形態と、を含む。防漏横溝6は、1つの連続した線状の凹陥圧搾部によって構成されていてもよい。尚、
図4及び7では、防漏横溝6の形状を、簡略化して、連続した線状で形成された弧状に図示している。
防漏横溝6における「線状」は、防漏横溝の形状が平面視において直線状の態様に限られず、曲線状の態様を含む。
「横方向Yに延びる」とは、横方向Yに完全に平行な態様に限られず、右側から左側に向かって延びていればよい。同様に、「縦方向Xに延びる」とは、縦方向Xに完全に平行な態様に限られず、前方から後方に向かって延びていればよい
【0051】
防漏横溝6は、周囲の圧搾されていない領域と比較して繊維の密度が高くなるため、毛管作用によって排泄された体液を吸液及び保持することができる。前後一対の防漏横溝6は、パンティライナー1における縦方向Xへの体液の拡散を抑制し、縦方向X外方への液漏れを防止する防漏作用を有する。
【0052】
前方防漏横溝6aの凸部先端及び後方防漏横溝6bの凸部先端は吸収体4内に位置する。すなわち、前後一対の防漏横溝6は、平面視で、吸収体4が位置する領域内に位置し、ひいては、吸収体4を覆うように配置される有色セカンドシート5が位置する領域内に位置している。
【0053】
前後一対の防漏横溝6は、周囲の圧搾されていない領域と比較して液溜まりしやすいが、防漏横溝6は厚さ方向Zに吸収体4まで到達していない形状であるため、吸収体まで到達した防漏溝と比較して繊維密度が低く、液溜まりが発生しにくい形態であり、また、剛性が低い。これにより、パンティライナー1の柔軟性が向上し着用違和感を与えにくくするとともに、防漏横溝6での液溜まりによる体液の色を目立ちにくくすることができる。更に、平面視で前後一対の防漏横溝6が有色セカンドシート5内に位置しているので、液溜まりによる体液の色がより目立ちにくい。
【0054】
一対の防漏横溝6は、前後で吸収体4をほぼ囲うように位置している。前後一対の防漏横溝6は、それぞれ、パンティライナー1の縦方向X外方に向けて凸状を有しているので、体液が縦方向Xに拡散し、防漏横溝6まで到達した場合でも、防漏横溝6によって体液をせき止め、かつ、横方向Yに拡散させつつ、縦方向X内方に戻すことができ、体液をパンティライナー1の中央部に集約させやすくなっている。一対の防漏横溝6は、平面視で、吸収体4上に位置するので、縦方向Xへの液拡散範囲を、液保持層である吸収体4内におさめやすく、パンティライナー1の吸液性を良好なものとすることができる。
【0055】
そのうえ、パンティライナー1において、吸収体4は、有色セカンドシート5よりも吸収容量が高いため、防漏横溝を含む圧搾溝が吸収体まで到達していなくとも、吸収体4への液移行が促進される。
すなわち、表面シート2と有色セカンドシート5とは、これらを一体的に凹陥する圧搾溝によって、表面シート2に供給された着用者からの体液は有色セカンドシート5への移行が促進される。そして、吸収体4はパンティライナー1を構成する部材のうち最も吸収容量が大きい部材であり、吸収体4と有色セカンドシート5との吸収容量勾配によって、有色セカンドシート5から吸収体4への体液の移行が促進される。従って、効率よく、吸収体4への液移行が行われ、パンティライナー1の吸液性をより良好なものとすることができる。
【0056】
このように、着用者からの体液は主に吸収体4で保持され、吸収体4の上方に吸収体4を覆うように有色セカンドシート5が配置される。着用者が表面シート2側からパンティライナー1をみたときに、体液が主に保持される吸収体4の手前に有色セカンドシート5が位置することになり、体液の存在が視認しづらくなり、視覚的な不快感を軽減することができる。
【0057】
前後一対の防漏横溝6、第1仮想線21、第2仮想線22、第1個装折り線31、第2個装折り線32の位置関係については後述する。
【0058】
(防漏縦溝)
図1に示すように、平面視で、防漏縦溝7は、パンティライナー1の排泄部対向領域52における縦方向Xの中央部に、左右に一対配置される。左右一対の防漏縦溝7は、それぞれ、縦方向Xに連続して延びている。左右一対の防漏縦溝7は、それぞれ、パンティライナー1の横方向Y外方に向けて凸の緩やかな弧状を有する。
防漏縦溝7は、吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側縁よりも横方向外方に位置している。防漏縦溝7は、その長さ方向の中央域における幅が最も大きく、かつその端部に向かうにつれてその幅が漸減している形状となっている。
【0059】
左右一対の防漏縦溝7は、周囲の領域と比較して繊維の密度が高くなるため、毛管作用によって排泄された体液を吸液及び保持することができる。これにより、左右一対の防漏縦溝7は、吸収体4の横方向Y外方への体液の漏れ(横洩れ)を防止する防漏作用も有する。本実施形態においては、左右一対の防漏縦溝7は、それぞれ、パンティライナー1の横方向Y外方に向けて凸の緩やかな弧状を有しているので、体液が横方向Yに拡散し、防漏縦溝7まで到達した場合でも、防漏縦溝7によって体液をせき止め、かつ、縦方向Xに拡散させつつ、横方向Y内方に戻すことができる。これにより、中央部Cにおける横洩れが一層抑制される。
【0060】
左右一対の防漏縦溝7は、他の圧搾されていない領域と比較して剛性が高く、変形しにくい部分となる。このため、パンティライナー1の着用時、パンティライナー1が横方向Yから外力を受けた場合に、左右一対の防漏縦溝7は、周囲の低剛性領域の変形を促す変形起点や、外力に対する抗力を発揮する部分として機能し得る。これにより、中央部Cにおいて、吸収体4に伝わる外力が弱まり、よれといった吸収体4の好ましくない変形の発生が抑制され、パンティライナー1の吸収性能を良好に保つことができる。
【0061】
左右一対の防漏縦溝7は、パンティライナー1の中央部Cにおける左右両側縁の凸形状部15の形状に略倣うように弧状に形成されている。このように、パンティライナー1の中央部Cにおける左右両側縁の凸形状部15の凸の向きと弧状の左右一対の防漏縦溝7の凸の向きとを同じくすることで、防漏縦溝7の保形性が向上する。着用時、パンティライナー1に横方向Yからの外力が加わった場合にも、防漏縦溝7の形状が崩れにくく、防漏効果が効果的に発現し得る。また、防漏縦溝7を凸形状部15の形状に略倣うように形成することによって、着用時、着用者から加わる外力による中央部Cの変形が、左右一対の防漏縦溝7の形状に起因して生じる抵抗力によって阻止されるので、中央部Cによれが一層生じにくくなる。
【0062】
(凹陥部)
図1に示すように、平面視で、凹陥部8は、前方部Fに位置する前方防漏横溝6aの左右両側それぞれに1つずつ、後方部Rに位置する後方防漏横溝6bの左右両側それぞれに1つずつ設けられている。前方部Fに位置する左右一対の凹陥部それぞれを前方凹陥部8aという。後方部Rに位置する左右一対の凹陥部それぞれを後方凹陥部8bという。特に両者を区別する必要がない場合は、凹陥部8という。
【0063】
左右一対の前方凹陥部8aそれぞれは、吸収体4の前方端部領域43aの左右両側方部44a及び44b(左側方部44a及び右側方部44b)それぞれと接して位置する。
左右一対の後方凹陥部8bそれぞれは、吸収体4の後方端部領域43bの左右両側方部44a及び44bそれぞれと少なくとも一部が接して位置する。
言い換えると、本実施形態では、吸収体4は矩形の平面形状を有しており、吸収体4の四隅それぞれは、4つの凹陥部8それぞれと少なくとも一部が接している。吸収体4の四隅それぞれと4つの凹陥部8それぞれは、平面視で重なって位置する。
縦方向Xに延在する4つの凹陥部8それぞれが、吸収体4の四隅それぞれで接して位置することにより、体液の横方向Yへの拡散をより抑制することができ、横洩れを防止することができる。
【0064】
各凹陥部8aは、縦方向Xに連続して延びる形状を有する。各凹陥部8は、パンティライナー1の横方向Y内方に向かって凸の弧状を有している。
【0065】
<防漏横溝、第1及び第2仮想線、第1及び第2個装折り線の位置関係>
パンティライナー1において、平面視で、前後一対の防漏横溝6は、第1仮想線21及び第2仮想線22を跨らない。
「跨らない」形態には、平面視で第1及び第2仮想線と防漏横溝6が全く重ならない形態の他、第1及び第2仮想線21及び22と防漏横溝6が点で接する形態も含まれる。例えば、平面視において、防漏横溝6の凸部先端と仮想線21又は22とが1点で接する形態や、線状の防漏横溝6の両端部と仮想線21又は22とが接する形態、すなわち2点で接する形態も含まれる。
【0066】
第1の括れ部11及び第2の括れ部12は、パンティライナー1の側縁等を介して縦方向Xに伝播される応力に緩衝してその影響力を低下させ、パンティライナー1のよれ発生を抑制する機能を有する。このため、第1仮想線21及び第2仮想線22の位置は、その前後の他の領域と比して応力を受けやすく変形しやすい。
パンティライナー1において、この応力を受けやすい第1仮想線21及び第2仮想線22に跨らないように、防漏横溝6が配置されることにより、防漏横溝6の形状がくずれにくく、防漏横溝6の保形性を向上させることができる。これにより、吸収体まで到達しない圧搾溝とすることによってパンティライナー1の柔軟性を向上させつつ、防漏横溝6の保形性を向上させる構成とすることができ、防漏横溝6の防漏機能が効率よく発現され得る。
【0067】
加えて、パンティライナー1では、第1個装折り線31及び第2個装折り線32に跨らないように、防漏横溝6が配置される。これにより、個装折り線31及び32による防漏横溝6の変形が抑制され、防漏横溝6の保形性がより向上し、個装開封時に既に防漏横溝6が意図せずに崩れているといったことが防止される。従って、着用時、パンティライナー1において、防漏横溝6の防漏機能が効率よく発現され得る。
「跨らない」形態には、平面視で第1個装折り線31及び第2個装折り線32と、防漏横溝6とが全く重ならない形態の他、個装折り線31又は32と防漏横溝6が点で接する形態も含まれる。例えば、平面視において、防漏横溝6の凸部先端と個装折り線31又は32とが1点で接する形態や、線状の防漏横溝6の両端部と個装折り線31又は32とが接する形態、すなわち2点で接する形態も含まれる。
【0068】
このように、パンティライナー1において、防漏横溝6は、第1及び第2個装折り線31及び32、第1及び第2仮想線21及び22のいずれにも跨って位置していないため、防漏横溝6の保形性が向上する。これにより、防漏機能が効率よく発現され得るとともに、剛性の高い防漏横溝6の存在によってパンティライナー1の変形が抑制され、良好な吸液特性が保持される。
【0069】
また、パンティライナー1が縦方向に三つ折りで折り畳まれた個包装状態のパンティライナー10において、前後一対の防漏横溝6のうち少なくとも一方は、第1仮想線21及び第2仮想線22の少なくとも一方と個装折り線との間に位置する。
図1に示すように、三つ折りすることにより、個包装状態のパンティライナー10では、前方防漏横溝6aは、第1仮想線21と第1個装折り線31との間に位置する。後方防漏横溝6bは、第2仮想線22と第2個装折り線32の縦方向Xにおける後方領域53側の外方に位置する。また、個包装状態のパンティライナー10では、前方防漏横溝6aと後方防漏横溝6bとは平面視で互いに重なっていない。仮に、前方防漏横溝6aと後方防漏横溝6bとが平面視で互いに重なっている個包装状態の場合、個包装状態のパンティライナー10に防漏横溝が存在する位置に横方向Yに力が加わった際、一対の防漏横溝6のいずれもが形状をくずしてしまう場合がある。これに対し、前方防漏横溝6aと後方防漏横溝6bとを平面視で互いに重ならない個包装状態とすることにより、一対の防漏横溝6の双方の形状がくずれてしまう可能性を低くすることができる。
上述のような形態の個包装状態とすることにより、防漏横溝6の形状を一層崩れにくいものとすることができ、個装開封時に既に防漏横溝6が意図せずに崩れているといったことを防止することができる。
【0070】
図1に示すように、前方防漏横溝6aは、排泄部対向領域52に位置し、吸収体4が位置する領域内に位置する。前方防漏横溝6aは、第1個装折り線31と第1仮想線21との間の領域に位置する。前方防漏横溝6aは、第1個装折り線31の近傍に位置している。
第1個装折り線31は、吸収体4の前方先端部を通る横方向Yと平行に延在する仮想横線34と同じ位置にある。第1個装折り線31は、パンティライナー1において、吸収体4が位置する領域と位置しない領域との境界に位置している。
【0071】
一方、後方防漏横溝6bは、排泄部対向領域52に位置し、吸収体4が位置する領域内に位置する。後方防漏横溝6bは、第2個装折り線32よりも縦方向X外方に位置する。後方防漏横溝6bは、第2個装折り線32の近傍に位置している。第2個装折り線32は、第2仮想線22と同じ位置である。
【0072】
着用時、パンティライナー1の排泄部対向領域52に位置する中間部Cに着用者の両脚から横方向Y内方に力が加わった場合、一対の第1の括れ部11及び一対の第2の括れ部12は、よれ緩和起点となって、前方部F及び後方部Rにおいて、第1仮想線21及び第2仮想線22から縦方向Xに延びるように皺が発生しやすくなり、この皺を起点として前方防漏横溝6a及び後方防漏横溝6bがよれてしまう可能性がある。
しかしながら、本実施形態のパンティライナー1では、
図1に示すように、前方防漏横溝6aは、前方領域51における排泄部対向領域52の最大幅部aと同じ幅を有する位置36よりも縦方向X内方(排泄部対向領域側)に位置し、第1仮想線21よりも縦方向X外方(縦方向Xの前端部側)に位置する。このように、上記皺が発生しやすい領域において、前方防漏横溝6aを吸収体4上に配置することにより、着用時に上記皺によって前方防漏横溝6aがよれて形状が崩れるのを抑制しやすくなる。
後方防漏横溝6bについても同様である。後方防漏横溝6bは、後方領域53における排泄部対向領域52の最大幅部aと同じ幅を有する位置37よりも縦方向X内方(排泄部対向領域側)に位置し、第2仮想線22よりも縦方向X外方(縦方向Xの前端部側)に位置する。このように、上記皺が発生しやすい領域において、後方防漏横溝6bを吸収体4上に配置することにより、着用時に上記皺によって後方防漏横溝6bがよれて形状が崩れるのを抑制しやすくなる。
【0073】
以上のように、パンティライナー1では、吸収体4まで到達しない防漏横溝6、吸収体4を覆う有色セカンドシート5、有色セカンドシートと吸収体との吸収容量勾配によって、視覚的な液隠蔽性が向上し、一対の括れ部を結ぶ仮想線及び個装折り線に跨らないように防漏横溝6を設けて防漏横溝6の保形性を向上させ、よれといった好ましくない変形の発生を効果的に抑制することができる。これにより、着用者に与える視覚的不快感及び体感的不快感を軽減することができる。
【0074】
<凹陥部、第1及び第2仮想線、第1及び第2個装折り線の位置関係>
各凹陥部8は、縦方向Xに連続して延びる、パンティライナー1の横方向Y内方に向かって凸の弧状を有する。
【0075】
前方凹陥部8aは、平面視で、第1個装折り線31と第1仮想線21との間に位置する。前方凹陥部8aは、仮想線及び個装折り線のいずれも跨いで位置しておらず、防漏横溝6と同様に、前方凹陥部8aの形状が崩れにくい形態となっている。
パンティライナー1では、一対の前方凹陥部8aそれぞれは、一端が第1仮想線21上、又は、その近傍に位置しており、
図1に示す例では近傍に位置している。一対の前方凹陥部8aそれぞれは、他端が、第1個装折り線31上、又はその近傍に位置しており、
図1に示す例では第1個装折り線31上に位置している。前方凹陥部8aの一端は、第1の括れ部11の近傍に位置している。剛性が高い前方凹陥部8aが第1の括れ部11の近傍に位置することにより、パンティライナー1の第1の括れ部11付近の側縁のよれが抑制されやすい。
【0076】
後方凹陥部8bは、平面視で、吸収体4の後方先端部を通る横方向Yと平行に延在する仮想横線35と、互いに同じ位置にある第2個装折り線32及び第2仮想線22と、の間に位置する。後方凹陥部8bは、個装折り線及び仮想線のいずれも跨いで位置しておらず、防漏横溝6と同様に、後方凹陥部8bの形状が崩れにくい形態となっている。
パンティライナー1では、一対の後方凹陥部8bそれぞれは、一端が第2仮想線22上、又はその近傍に位置しており、
図1に示す例では近傍に位置している。一対の後方凹陥部8bそれぞれは、他端が、仮想横線35上、又はその近傍に位置しており、
図1に示す例では仮想横線35上に位置している。後方凹陥部8bの一端は、第2の括れ部12の近傍に位置している。剛性が高い後方凹陥部8bが第2の括れ部12の近傍に位置することにより、パンティライナー1の第2の括れ部12付近の側縁のよれが抑制されやすい。
【0077】
一対の前方凹陥部8aは、前方防漏横溝6aを間に挟んで横方向Y両側に配置されるので、パンティライナー1に横方向Y内方に向かう外力が加わった場合、前方凹陥部8aの存在によって、前方防漏横溝6aに及ぶ力を軽減することができ、前方防漏横溝6aの保形性が向上する。更に、上述したように、一対の前方凹陥部8aは、その形状が崩れにくく構成されているので、より一層、前方防漏横溝6aの保形性を向上させることができる。後方凹陥部8bについても、同様のことがいえる。
【0078】
<接着剤>
パンティライナー1において、表面シート2と有色セカンドシート5は、間に配された第1接着剤S1によって接合されている。
有色セカンドシート5と吸収体4とは、間に配された第2接着剤S2によって接合されている。
吸収体4と裏面シート3、裏面シート3と有色セカンドシート5は、それぞれ、間に配された第3接着剤S3によって接合されている。
積層構造を有する吸収体4において、複数の層は、間に配された第4接着剤S4によって接合されている。これにより、吸収体4の保形性が向上する。
以下に各接着剤について説明する。
【0079】
[第1接着剤S1]
図3に示すように、表面シート2と有色セカンドシート5の間に配される第1接着剤S1の塗工領域71は、表面シート2及び有色セカンドシートの全面に亘って形成される。言い換えると、第1接着剤S1は、表面シート2と有色セカンドシート5の界面を全面で被覆している。
【0080】
第1接着剤S1の塗工パターンは、第1接着剤S1が塗工される塗工部76と、塗工されていない非塗工部77とが混在する間欠塗工パターンとなっている。第1接着剤S1の塗工領域71とは、第1接着剤S1が存在している範囲の領域を意味し、非塗工部77が含まれていてもよく、以下第2接着剤S2、第3接着剤S3及び第4接着剤S4においても同様である。
第1接着剤S1を間欠塗工パターンで塗工することで、表面シート2と有色セカンドシート5の界面での柔軟性を高め、かつ、接着剤による通液阻害の発生が抑制され、吸収体4に効果的に体液が移行する、良好な吸液性が保持されたパンティライナー1とすることができる。
間欠塗工パターンの例としては、スパイラル状、サミット状、オメガ状、ストライプ状等が挙げられ、以下第2接着剤S2、第3接着剤S3及び第4接着剤S4においても同様の間欠塗工パターンを用いることができる。
【0081】
第1接着剤S1には、疎水性接着剤を用いることが好ましい。これにより、体液が表面シート2に残りにくく、視覚的な液隠蔽性がより向上する。更に、第1接着剤S1が全面で形成されて表面シート2が有色セカンドシート5から浮きにくいため、表面シート2で吸液された体液は有色セカンドシート5に移行しやすくなっており、疎水性接着剤を用いることによる表面シート2上の液残りの抑制と相まって、有色セカンドシート5への液移行性をより良好なものとすることができる。また、第1接着剤S1が全面に形成されていることにより、着用時、着用者の肌に触れる表面シート2の変形に追随して有色セカンドシート5が変形しやすく、表面シート2と有色セカンドシート5の界面での捩れが抑制され、着用時の体感的な不快感を軽減することができる。
第1の疎水性接着剤としての第1接着剤S1には、例えば、SBS系、SEBS系、オレフィン系ホットメルト等を用いることができる。
【0082】
[第2接着剤S2]
図4に示すように、有色セカンドシート5と吸収体4との間に配される第2接着剤S2の塗工領域72は、有色セカンドシート5と吸収体4とが平面視で重なる領域の一部分に位置する。言い換えると、第2接着剤S2は、有色セカンドシート5と吸収体4の界面を非全面で被覆している。更に、第2接着剤S2は、平面視で、前後一対の防漏横溝6間に位置しており、防漏横溝6と重なって位置していない。図に示す例では、第2接着剤S2の塗工領域72は、吸収体4の横方向Y中央部の縦方向X中央部に、縦方向Xに延在する帯状である。
【0083】
第2接着剤S2の塗工領域72は面内で部分的であるが、有色セカンドシート5の上方にある表面シート2の存在によって、有色セカンドシート5は全体的に吸収体4から浮きにくい状態となっている。また、上述したように、吸収体4は、パンティライナー1を構成する部材のうち最も吸収容量が高い部材で構成されているので、吸収容量の勾配によって有色セカンドシート5から吸収体4へ液が移行しやすい状態となっている。
このように、第2接着剤S2を部分的に塗工することにより接着剤による通液阻害の発生が抑制される。更に、有色セカンドシート5が吸収体4から浮きにくい状態となっており、かつ、隣接して配置される有色セカンドシート5と吸収体4とに吸収容量の勾配があることにより、有色セカンドシート5から吸収体4への液移行性が良好となり、吸液性が良好に保持されたパンティライナー1とすることができる。
【0084】
第2接着剤S2の塗工パターンは、第1接着剤S1と同様に、第2接着剤S2が塗工される塗工部76と、塗工されていない非塗工部77とが混在する間欠塗工パターンとなっている。間欠塗工パターンとすることにより、有色セカンドシート5と吸収体4の界面の柔軟性を高め、接着剤による通液阻害の発生が抑制され、通液性を良好なものとすることができる。
【0085】
第2接着剤S2には、疎水性接着剤を用いることが好ましい。これにより、体液が有色セカンドシート5に残りにくく、上述した第2接着剤S2を面内で部分的に設けることによる吸液性の向上及び有色セカンドシート5と吸収体4の間に吸収容量の勾配を設けることによる液移行性の向上と相まって、体液が吸収体4へ更に移行しやすい状態とすることができる。これにより、血液等の色のついた体液の多くが吸収体4で保持されることとなる。従って、着用者が表面シート2側からパンティライナー1をみたときに、体液が主に保持される吸収体4の手前に有色セカンドシート5が位置することになり、体液の存在が視認しづらくなり、視覚的な液隠蔽性が向上する。
第2の疎水性接着剤としての第2接着剤S2には、例えば、SBS系、SEBS系、オレフィン系ホットメルト等を用いることができる。
【0086】
また、第2接着剤S2が全面ではなく、吸収体4の横方向Y中央部に配されることにより、吸収体4の横方向Yの両側方部は、接着剤によって固定されず、接着剤が配される領域と比べて剛性が低く、微小な動きではあるがフレキシブルに可動する。これにより、パンティライナー1の着用時、吸収体4の剛性に由来する硬さを感じにくく、着用者に着用違和感を与えにくくすることができる。
ここで、例えば、第2接着剤S2が平面視で吸収体の全面に配された場合、パンティライナーにおいて、平面視で吸収体4が位置する領域と、位置しない領域との剛性差が大きくなる。
一方、本実施形態では、平面視で吸収体4が位置する領域の一部に第2接着剤S2が配されるため、パンティライナー1において、平面視で吸収体4が位置する領域の第2接着剤S2が配される領域と配されない領域との剛性差、及び、平面視で吸収体4が位置し第2接着剤S2が配されない領域と吸収体4が位置しない領域との剛性差を、上述の第2接着剤S2が平面視で吸収体の全面に配された場合での剛性差よりも小さくすることができる。剛性差が大きいほど着用違和感を与えやすいので、本実施形態のように、第2接着剤S2を非全面に配し、吸収体4の両側方部をフレキシブルな構成とすることにより剛性差を小さくし、着用違和感を与えにくくすることができ、体感的な不快感を軽減することができる。
【0087】
有色セカンドシート5と吸収体4との間に配される第2接着剤S2は、平面視で防漏横溝6と重なって位置していない。
このため、防漏横溝6の直下に位置する、吸収体4と有色セカンドシート5との界面は、吸収体4と有色セカンドシート5が非固定で柔軟に動ける状態にある。これにより、着用時、一度吸収体4に吸収された体液が着用者からの圧等によって表面シート2側に戻る、所謂液戻りの発生が抑制される。
従って、吸収体4における液保持性が向上し、吸収体4上に配置された有色セカンドシート5によって、吸収体4により保持された体液の色を効果的に遮蔽することができ、液隠蔽性が向上し、視覚的な不快感をより軽減することができる。
更に、剛性の高い吸収体がよれた場合、防漏横溝6の直下において吸収体4は有色セカンドシート5に非固定であるため、有色セカンドシート5は吸収体4の変形に追随しにくく、元の状態に戻ろうとする復元力が発揮されやすい。従って、吸収体がよれても、吸収体に追従して、有色セカンドシート5と防漏横溝6で一体化している表面シート2に、よれが発生しにくい。
【0088】
また、液溜まりしやすい防漏横溝6の直下に第2接着剤S2が配置されないことで、有色セカンドシート5から吸収体4への液移行が阻害されず、一般に液溜まりにより体液の色が濃く見えやすい防漏溝における液隠蔽性が向上する。
【0089】
また、第2接着剤S2は吸収体4の全面ではなく部分的に配されており、吸収体4は、防漏横溝6の直下以外にも、着色セカンドシート5との界面で、有色セカンドシート5に対して非固定な柔軟に動ける状態にある部分を有している。これにより、液溜まりが生じやすい防漏横溝6が位置しない領域においても、液戻りの発生が抑制され、吸収体4で液が効果的に保持されやすく、液隠蔽性を向上させることができる。
【0090】
[第3接着剤S3]
図5に示すように、吸収体4と裏面シート3の間、有色セカンドシート5と裏面シート3の間に配される第3接着剤S3の塗工領域73は、裏面シート3の全面に亘って形成される。
図5において、斜線をいれた第1領域61は、パンティライナー1において、吸収体4と裏面シート3が平面視で重なる領域である。パンティライナー1において、第1領域61以外の領域である第2領域62は、吸収体4が位置しない領域である。
第1領域61において、吸収体4と裏面シート3は第3接着剤S3により接合されている。第2領域62において、有色セカンドシート5と裏面シート3は第3接着剤S3により接合されている。つまり、第3接着剤S3は、第1領域61において吸収体4と裏面シート3の界面を全面で被覆し、第2領域62において有色セカンドシート5と裏面シート3の界面を全面で被覆している。
【0091】
第3接着剤S3の塗工パターンは、第3接着剤S3が塗工される塗工部76と、塗工されていない非塗工部77とが混在する間欠塗工パターンとなっている。第3接着剤S3を間欠塗工パターンで塗工することで、第1領域61における吸収体4と裏面シート3の界面、第2領域62における有色セカンドシート5と裏面シート3の界面での柔軟性を高めることができる。
第3接着剤S3は、特に限定されず、通常、接着剤に用いられるものを使用することができる。
【0092】
図5に示すように、第2領域62は、第1領域61の全周囲を囲うように位置しており、吸収体4の周囲部といえる。第2領域62において、第3接着剤S3は、裏面シート3と有色セカンドシート5を固定する固定材であり、吸収体4の周囲部には固定材が位置する。第2領域62において、第3接着剤S3は、パンティライナー1の内部での吸収体4が位置する領域を規定する。
吸収体4の周囲部は、第2領域62に配される第3接着剤S3(固定材)によって固定されているため、吸収体4がよれにくくなっており、良好な吸液性を発揮し得る構成となっている。更に、よれにくくなっている吸収体4の四隅に重なって、剛性が高い凹陥部8が位置することにより、排泄部対向領域52における表面シート2のよれの発生が抑制される。これにより、よれに起因する着用時の体感的な不快感が軽減されるとともに、防漏横溝6の保形性も向上する。
【0093】
[第4接着剤S4]
本実施形態では、パンティライナー1の一部を構成する吸収体4が、1枚の吸収性シートを折り畳んだ積層構造を有する例をあげた。このような積層構造を有する場合、吸収体の、折り畳んだ時に内側となる面に、
図6に示すように第4接着剤S4が配されていてよい。これにより、吸収体4の開きが抑制され、吸収体4の保形性が向上する。
図6に示す吸収体4は、折り畳んだ状態の吸収体4の平面図である。
図6に示すように、第4接着剤S4の塗工領域74は、例えば吸収体4の横方向Y中央部に位置している。
第4接着剤S4の塗工パターンは、第4接着剤S4が塗工される塗工部76と、塗工されていない非塗工部77とが混在する間欠塗工パターンとなっている。間欠塗工パターンとすることにより、第4接着剤S4の塗工領域74における柔軟性を高め、接着剤による通液阻害の発生が抑制され、通液性を良好なものとすることができる。
第4接着剤S4は、特に限定されず、通常、接着剤に用いられるものを使用することができる。
【0094】
<本実施形態の追加説明>
以下、本実施形態の説明を補足する。
【0095】
[吸収容量の測定方法]
パンティライナー1を構成する部材である、表面シート2、有色セカンドシート5、吸収体4それぞれについて、次の測定方法により吸収容量を測定することができる。
測定対象の各部材に対して、高吸水性樹脂の吸水試験法であるJIS K 7223-1996に準拠して吸収容量の測定をおこなう。吸収性物品(パンティライナー1)から各部材を取り出して所定の大きさの試料に切り出す。試料を25℃に調温した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水)に全体が浸かるように浸漬させる。浸漬開始から10分後にサンプルを生理食塩水から取り出し、遠心脱水機(コクサン(株)、型式130c特型)を用いて脱水する。脱水条件は800rpm×5分とする。脱水後、試料の質量を測定し、次式に従って遠心保持量(単位:g/g)を算出し、その算出値を測定対象の部材の吸収容量とする。次式中、各質量はg単位である。
遠心保持量=(遠心脱水後の試料の質量-吸水前の試料の質量)/給水前の試料の質量
測定は5回行い、上下各1点の値を除外し、残る3点の平均値を測定値とした。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前には試料である吸収体を測定と同じ環境で24時間以上保存する。
【0096】
[塗工部と非塗工部の確認方法]
接着剤の塗工領域が塗工部及び非塗工部を有することは、以下の方法により確認することができる。
接着剤が塗工されている領域をトナーで着色し、画像処理機能を有する顕微鏡を用いてトナーで着色されている部分を観察する。これにより、塗工部76と非塗工部77が混在していることを確認することができる。また、顕微鏡を用いた観察と画像処理によって、塗工領域の面積、トナーで着色されている部分となる塗工部76の面積、非塗工部77の横方向Yの寸法等を算出することができる。
また、観察対象部材の、接着剤が塗工されている領域を有する面をトナーで着色し、観察することにより、塗工範囲を確認することができる。
【0097】
[接着剤の塗工例]
(第1接着剤S1)
表面シート2での液残りの発生を抑制し、第1の疎水性接着剤である第1接着剤S1の塗工領域71における柔軟性を高め、更に、接着剤による通液阻害の発生を抑制する観点から、第1接着剤S1の塗工領域71における非塗工部77が占める割合は50%以上90%以下であることが好ましい。
【0098】
(第2接着剤S2)
第2の疎水性接着剤である第2接着剤S2の塗工幅(塗工領域72の横方向Yにおける寸法)は、有色セカンドシート5の吸収体4からの浮きを抑制して液移行性を良好なものとしつつ、液戻りの発生を抑制する観点から、防漏横溝6の横方向Yにおける寸法よりも短いことが好ましい。第2接着剤S2の塗工幅は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、防漏横溝6の横方向Yにおける寸法の90%以下、より好ましくは70%以下である。
【0099】
有色セカンドシート5での液残りの発生を抑制し、第2接着剤S2の塗工領域72における柔軟性を高め、更に、接着剤による通液阻害の発生を抑制する観点から、第2接着剤S2の塗工領域72における非塗工部77が占める割合は50%以上90%以下であることが好ましい。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品としてパンティライナー(おりものシート)の例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、尿取りパットや生理用ナプキン等であってもよい。
【0101】
また、例えば、上述の実施形態においては、有色セカンドシート5と吸収体4との間に配される第2接着剤S2は、スパイラル状の間欠塗工パターンで塗工される例をあげたが、塗工パターン形状はこれに限定されない。例えば
図7に示すパンティライナー1のように、平面視で、横方向Yに平行に延びる複数の直線状の第2接着剤S2が縦方向Xに間欠して位置する形状であってもよい。
【0102】
また、例えば、上述の実施形態においては、有色セカンドシート5の平面形状が表面シート2及び裏面シート3とほぼ同一の形状を有する例をあげたが、これに限定されない。有色セカンドシート5が吸収体4を覆うように配置されていればよく、平面視したときに、有色セカンドシート5が位置する領域内に吸収体4が位置すればよい。これにより、体液を保持した吸収体4は、有色セカンドシート5により覆われるので、液隠蔽効果を奏する。
図8に、有色セカンドシートの他の例を示す。
図8に示すパンティライナー101は、上記パンティライナー1と比較して、有色セカンドシートの外形形状が異なる点でのみ相違する。
図8において、パンティライナー1と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
図8に示すように、平面視で、有色セカンドシート105は、吸収体4よりもやや大きい矩形状を有していてもよい。
図8において、有色セカンドシート105は、一点鎖線で示している。
図8に示す例では、有色セカンドシート105は縦方向Xにおける全長寸法が吸収体4と同じである。有色セカンドシート105の前端縁と吸収体4の前端縁とは平面視で同じ位置にある。有色セカンドシート105の後端縁と吸収体4の後端縁とは平面視で同じ位置にある。有色セカンドシート105は、横方向Yにおける寸法が吸収体4よりも大きい。有色セカンドシート105の左側縁は、吸収体4の左側縁よりも横方向Y外方に位置する。有色セカンドシート105の右側縁は、吸収体4の右側縁よりも横方向Y外方に位置する。
パンティライナー101では、有色セカンドシート105が存在する領域と存在しない領域との色の違いから、着用者は、有色セカンドシート105の存在を直感的に認識することができる。有色によって液隠蔽効果があることを着用者に想起させ、安心感を与えることができる。
【0103】
パンティライナー101において、吸収体4と有色セカンドシート105とが重なる領域では、吸収体4と裏面シート3は第3接着剤S3で接合される。パンティライナー101において、有色セカンドシート105が位置する領域の吸収体4が位置しない領域では、有色セカンドシート105と裏面シート3は第3接着剤S3で接合される。パンティライナー101において、有色セカンドシート105が位置しない領域では、表面シート2と裏面シート3が第3接着剤S3で接合される。
パンティライナー101において、吸収体4が位置しない領域は
図5におけるパンティライナー1の第2領域62に対応する領域であり、吸収体4の全周囲を囲う周囲部である。パンティライナー101の吸収体4が位置しない領域において、第3接着剤S3は、有色セカンドシート105と裏面シート3とを固定する、又は、表面シート2と裏面シート3とを固定する固定材であり、吸収体4の周囲部には固定材が位置する。
【符号の説明】
【0104】
1、101…パンティライナー(吸収性物品)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
5、105…有色セカンドシート
6…防漏横溝
11…第1の括れ部
12…第2の括れ部
17a…左側側縁
17b…右側側縁
21…第1仮想線
22…第2仮想線
51…前方領域
52…排泄部対向領域
53…後方領域