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  • 特許-渡り桟橋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】渡り桟橋
(51)【国際特許分類】
   E01D 18/00 20060101AFI20240701BHJP
   E01D 15/24 20060101ALI20240701BHJP
   E01D 15/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E01D18/00 C
E01D15/24
E01D15/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020206422
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093779
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】八坂 雅利
(72)【発明者】
【氏名】川中 徹人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義之
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-008610(JP,U)
【文献】特開昭62-025604(JP,A)
【文献】特開2017-025511(JP,A)
【文献】特開2016-033318(JP,A)
【文献】特開平11-350424(JP,A)
【文献】特開昭57-009903(JP,A)
【文献】特開昭57-009904(JP,A)
【文献】米国特許第06892409(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0084704(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 18/00
E01D 15/24
E01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域に対して壁状をなす固定構造物と、これに水域側から接近させた浮体構造物との間に架け渡される渡り桟橋であって、
側面視で一端部から他端部にかけてアーチ状をなす歩廊部と、
浮体構造物上に旋回可能に設けられたターンテーブルと、
前記歩廊部の一端部に設けられて前記ターンテーブルとヒンジ結合するヒンジ部と、
前記歩廊部の他端部に設けられて固定構造物上をスライド可能なローラ部と、
前記歩廊部の左右に立設された一対の手摺りと、
を含み、
前記歩廊部は、前記アーチ状に湾曲させた左右一対の主桁と、前記左右一対の主桁を所定の幅を保って連結する連結材と、前記連結材上に配置される床板と、を備える、
り桟橋。
【請求項2】
前記床板はエキスパンドメタルからなる、請求項1に記載の渡り桟橋。
【請求項3】
前記アーチの半径が6mである、請求項1又は請求項2に記載の渡り桟橋。
【請求項4】
前記固定構造物が導流堤であり、前記浮体構造物が台船である、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の渡り桟橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域に対して壁状をなす岸壁、堤体などの固定構造物と、これに水域側から接近させた台船などの浮体構造物との間に架け渡される、渡り桟橋に関する。
【背景技術】
【0002】
堤体の1つとして導流堤がある。導流堤は、河川が海などに注ぐ場合に、流路を一定にする目的で水流を導く堤防である。河口部などでは、川が土砂を運ぶ掃流力が小さくなり、漂砂によって河口部の港内が土砂で埋まってしまう場合があり、これを防ぐために、港を囲むように導流堤が設置されている。
【0003】
このような導流堤の補修工事に際しては、導流堤に港側から接近させた台船から、工事関係者が導流堤に渡る必要があり、梯子状の渡り足場を使用していた。
【0004】
また、特許文献1には、渡り桟橋(可動橋)として、第1のランプウエイと、これに直列に連結される第2のランプウエイとを備え、第1及び第2のランプウエイは平面視で連結部にて互いに回動自在で、また側面視で連結部にて折曲可能に構成されたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭54-006326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の梯子状の渡り足場では、潮の干満、潮流、降雨時の河川流及び漁船の航行波等の影響により、次のような理由で、安心して渡ることはできなかった。
【0007】
(1)台船の上下動が大きくなると、渡り桟橋が急勾配となり、滑落の危険がある。また、渡り足場の先端が跳ね上がり、不便で危険である。
(2)台船が上下・左右(導流堤に対し接離する方向)・前後(導流堤に沿う方向)に動くと、渡り桟橋が摩擦抵抗を受けながらズレ動く。渡り足場が急にズレ動いたりした場合、転落・挟まれの危険がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の渡り桟橋(可動橋)は、構造が複雑な割に、追従性に乏しかった。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑み、簡単な構造で、台船などの浮体構造物の動きに追従でき、何時でも安全に安心して渡ることができる渡り桟橋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る渡り桟橋は、水域に対して壁状をなす岸壁、堤体などの固定構造物と、これに水域側から接近させた台船などの浮体構造物との間に架け渡されるものであって、側面視で一端部から他端部にかけてアーチ状をなす歩廊部と、浮体構造物上に旋回可能に設けられたターンテーブルと、前記歩廊部の一端部に設けられて前記ターンテーブルとヒンジ結合するヒンジ部と、前記歩廊部の他端部に設けられて固定構造物上をスライド可能なローラ部と、前記歩廊部の左右に立設された一対の手摺りと、を含む。
【0011】
前記歩廊部は、前記アーチ状に湾曲させた左右一対の主桁と、前記左右一対の主桁を所定の幅を保って連結する連結材と、前記連結材上に配置される床板と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、側面視で一端部から他端部にかけてアーチ状をなす歩廊部を備えることで、岸壁、堤体などの固定構造物と、台船などの浮体構造物との高低差や、浮体構造物の上下の動きによる高低差の変化にかかわらず、常に両端部が安定状態で接地できるので、安全に安心して渡ることができる。
【0013】
また、ヒンジ部とローラ部とを備えることで、台船などの浮体構造物の上下、左右(固定構造物に対し接離する方向)の動きに効果的に追従できる。
更に、ターンテーブルを備えることで、台船などの浮体構造物の前後(固定構造物に沿う方向)の動きにも効果的に追従できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態として導流堤と台船との間の渡り桟橋を示す全体図
図2】渡り桟橋の側面図
図3】渡り桟橋の平面図
図4】渡り桟橋の歩廊部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態として導流堤(固定構造物)と台船(浮体構造物)との間の渡り桟橋を示す全体図である。
【0016】
本実施形態は、導流堤10の補修工事の例であり、導流堤10は図1で右側の図示しない港の岸壁を囲むように設けられている。導流堤10の補修工事に際しては、岸壁側から作業用の台船(クレーン台船)20が導流堤10に接近し、台船20と導流堤10との間に渡り桟橋30を架け渡して、工事関係者が台船20から導流堤10に渡ることができるようにする。
【0017】
なお、図示の既設の導流堤10は、鋼矢板二重締切り構造であり、一対の鋼矢板11、11間に中詰土砂12を充填し、その上にフーチングコンクリート13を打設してなり、その上面には波返し(パラペット)14が設けられている。補修工事では、既設の導流堤の中詰土砂を撤去してコンクリートと置換え、重力式導流堤を築造する。
【0018】
また、導流堤10と台船20との間には、1.2m程度の高低差があり、潮位や、台船20の上下の動きなどによって変化する。台船20の左右(導流堤10に対し接離する方向)の動きに関しては、導流堤10と台船20との間に最大で1m程度の隙間ができる。台船20の前後方向(導流堤10に沿う方向)の動きに関しては、1m程度の流動移動を生じる。
【0019】
次に本実施形態での渡り桟橋30について図2図4を参照して説明する。図2は渡り桟橋の側面図、図3は渡り桟橋の平面図、図4は渡り桟橋の歩廊部の拡大断面図である。
【0020】
渡り桟橋30は、側面視アーチ状の歩廊部31と、歩廊部31の左右に立設された一対の手摺り32とを含んで構成される。例えば、アーチの半径は6m程度、周長は5m程度である。但し、ここでいう「アーチ状」とは、幾何学上の円弧である必要はなく、上に凸の湾曲部を有していればよく、両端部が直状になっていてもよい。
【0021】
歩廊部31は、上記アーチ状に湾曲させた左右一対の主桁31a、31aと、これらを所定の幅を保って連結する連結材31bと、連結材31b上に配置される床板31cとを含んで構成される。
【0022】
主桁31a、31aは、本例では溝形鋼からなり、溝部を外側にして、ウェブ部どうしを対向させてある。
【0023】
連結材31bは、歩廊部31の幅を規定するように、左右一対の主桁31a、31a間に配置されて溶着されており、渡り方向(橋軸方向)の複数箇所で左右一対の主桁31a、31aを連結している。
【0024】
床板31cは、本例では格子状のエキスパンドメタルであり、連結材31bの上に載せて溶着固定してある。
【0025】
左右一対の手摺り32、32は、歩廊部31の主桁(溝形鋼)31a、31a上に構築されている。
【0026】
渡り桟橋30はまた、歩廊部31の一端部(台船20側の端部)に、台船20とヒンジ結合するヒンジ部33を有している。
【0027】
ヒンジ部33は、歩廊部31の主桁(溝形鋼)31aの台船20側の延長端部であり、台船20側に水平に支持されたヒンジピン36に垂直面内を回動可能に取付けられている。
これにより、渡り桟橋30(歩廊部31)は、その一端部(台船20側のヒンジピン36)を回動中心として、垂直面内にて回動(傾動)可能となる。
【0028】
前記ピン36の支持のため、台船20側には、台座34とターンテーブル(回転台)35とが設けられる。
【0029】
台座34は、台船20上の所定位置に固定されている。
ターンテーブル35は、台座34上に配置され、台座34の中央の垂直方向の回転中心軸34aに旋回可能(水平面内にて回転可能)に取付けられている。
そして、ターンテーブル35上に、一対の支持部35aが立設され、支持部35aが前記ピン36を支持している。
【0030】
従って、ヒンジ部33は、ターンテーブル35とヒンジ結合している。
ヒンジ部33がターンテーブル35とヒンジ結合することにより、渡り桟橋30(歩廊部31)は、その一端部(台船20側のターンテーブル35)を回動(旋回中心)として、水平面内にて回動(旋回)可能となる。
【0031】
従って、渡り桟橋30(歩廊部31)は、その一端部を中心として、ターンテーブル35により、水平面内を回動(旋回)でき、また、その一端部を中心として、ヒンジピン36により、垂直面内を回動(傾動)可能となる。
【0032】
渡り桟橋30はまた、歩廊部31の他端部(導流堤10側の端部)、すなわち、導流堤10の上面との接地部に、その上面上をスライド可能なローラ部、本実施形態では車輪37を有している。車輪37は、導流堤10の上面に接地して、転動可能となっている。
【0033】
なお、車輪37としては、車輪とフォーク状車軸支持部とからなるキャスターと呼ばれる車輪ユニットを用いることができる。また、車輪ユニットとして、車軸支持部が旋回可能なものを用いてもよいが、旋回可能でなくてもよく、この場合、車輪は橋軸方向に向いていればよい。
【0034】
本実施形態によれば、渡り桟橋30が側面視アーチ状の歩廊部31を備えることにより、導流堤10と台船20との高低差や、台船20の上下の動きによる高低差の変化にかかわらず、常に両端部が安定状態で接地できるので、安全に安心して渡ることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、一端部側にヒンジ部33を備え、他端部側に車輪37を備えることにより、台船20の上下の動きや、左右(導流堤10と接離する方向)の動きに効果的に追従することができる。
【0036】
すなわち、台船20の上下の動きに対しては、ヒンジ部33(ヒンジピン36)を中心として、渡り桟橋30(歩廊部31)が垂直面内で回動(傾動し)、導流堤10上では車輪37により接地することができる。
【0037】
また、台船20の左右(導流堤10と接離する方向)の動きに対しては、導流堤10上で車輪37が転動して位置を変えることで、安定した接地状態を維持することができる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、ターンテーブル35を備えることにより、台船20の前後(導流堤10に沿う方向)の動きに効果的に追従することができる。
【0039】
すなわち、台船20、したがってターンテーブル35自体の前後の動きに、ターンテーブル35上での渡り桟橋30(歩廊部31)の水平面内での角度を変化させて対応でき、導流堤10上での車輪37の位置はほぼ一定に保つことができる。従って、車輪37は旋回部を持つ必要はなく、橋軸方向を向いていればよい。
【0040】
従って、本実施形態の渡り桟橋30では、簡単な構造で、台船20の上下、左右、前後の動きに追従でき、何時でも安全に安心して渡ることができ、転落や挟まれの危険を回避することができる。
【0041】
また、本実施形態では、台船20はクレーン(図示せず)を備えており、導流堤10に対してはクレーンより渡り桟橋30の自由端部を吊って架け渡す。作業後は、クレーンにより渡り桟橋30の導流堤10側の自由端部を吊って台船20上に回収する。
【0042】
なお、以上の説明では、導流堤の補修工事のために導流堤と台船との間に架け渡される渡り桟橋について説明したが、本発明は、岸壁、堤体などの固定構造物と、台船などの浮体構造物との間に架け渡される渡り桟橋に適用可能である。
また、導流堤を含む堤体の補修工事の他、洋上風力発電設備の工事、離島の観測設備の工事、海上に架台を組んでそこに渡る場合などにおいて、渡り桟橋として使用することができる。
【0043】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
なお、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
水域に対して壁状をなす固定構造物と、これに水域側から接近させた浮体構造物との間に架け渡される渡り桟橋であって、
側面視アーチ状の歩廊部を含むことを特徴とする、渡り桟橋。
[請求項2]
前記歩廊部の浮体構造物側に設けられて浮体構造物とヒンジ結合するヒンジ部と、
前記歩廊部の固定構造物側に設けられて固定構造物上をスライド可能なローラ部と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1記載の渡り桟橋。
[請求項3]
浮体構造物上に旋回可能に設けられたターンテーブルを更に含み、
前記ヒンジ部が、前記ターンテーブルとヒンジ結合することを特徴とする、請求項2記載の渡り桟橋。
【符号の説明】
【0044】
10 導流堤
20 台船
30 渡り桟橋
31 歩廊部
31a 主桁(溝形鋼)
31b 連結材
31c 床板(エキスパンドメタル)
32 手摺り
33 ヒンジ部
34 台座
34a 回転中心軸
35 ターンテーブル
35a 支持部
36 ヒンジピン
37 車輪
図1
図2
図3
図4