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特許7512193AEF領域におけるインサイチュでのビームラインフィルムの安定化または除去のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】AEF領域におけるインサイチュでのビームラインフィルムの安定化または除去のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H01L21/265 603A
H01L21/265 603B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020517431
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018054963
(87)【国際公開番号】W WO2019074899
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】62/569,846
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】テン-チャオ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】カークウッド,デビッド
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】松川 直樹
【審判官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0365225(US,A1)
【文献】特開2015-141834(JP,A)
【文献】特開2016-9551(JP,A)
【文献】特開2003-257357(JP,A)
【文献】特開平6-174348(JP,A)
【文献】特開2000-216136(JP,A)
【文献】特表2009-516392(JP,A)
【文献】米国特許第5879574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/317
H01L21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
角度エネルギーフィルタ(AEF)と、
ガス源と、を備え、
前記角度エネルギーフィルタは、AEF領域を有しており、
前記ガス源は、前記AEF領域にガスを供給し、
前記ガス源は、前記AEFに存在するフィルムと前記ガスとの反応により、前記フィルムをパッシベートおよび/またはエッチングし、
記イオン注入システムは、マニホルドディストリビュータをさらに備えており、
前記AEFは
1つ以上のAEF電極と、
前記AEFの内部に組み込まれた補助ヒータと、を備えており、
前記マニホルドディストリビュータは、前記ガス源に動作可能に接続され、前記ガスを前記1つ以上のAEF電極に供給し、
前記マニホルドディストリビュータは、前記マニホルドディストリビュータ内において画定される複数の孔を有するチューブを備え、
前記複数の孔は、前記1つ以上のAEF電極に前記ガスを分散させる、イオン注入システム。
【請求項2】
前記ガス源は、(i)前記AEF領域に酸化性ガスを選択的に供給する酸化性ガス源、および、(ii)前記AEF領域にフッ素含有ガスを選択的に供給するフッ素含有ガス源、のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスは、NFおよびXeFのうちの1つ以上を含む、請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記酸化性ガスは、空気および水のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記ガス源は、前記イオンビームの形成と同時に前記AEF領域に前記ガスを選択的に供給し、
前記イオンビームからの熱は、前記AEFを加熱し、前記AEFに存在する前記フィルムのパッシベートおよび/またはエッチングを補助する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は、2017年10月9日出願の米国仮出願第62/569,846号、発明の名称「SYSTEM AND METHOD FOR IN-SITU BEAMLINE FILM STABILIZATION OR REMOVAL IN THE AEF REGION」の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、概してイオン注入システムに関し、より具体的には、イオン注入システムにおけるビームラインコンポーネント上に形成されるフィルムを安定化するためのシステムおよび方法、ならびにフィルムをクリーニングし、イオン注入システムの角度エネルギーフィルタから除去するためのシステム、装置および方法に関する。
【0003】
〔背景〕
半導体デバイスの製造においては、半導体に不純物をドープするためにイオン注入が用いられる。イオン注入システムは、n型材料のドーピングもしくはp型材料のドーピングのため、または集積回路の製造中にパッシベーション層を形成するために、半導体ウエハなどのワークピースを、イオンビームからのイオンでドープするためにしばしば利用される。このようなビーム処理は、集積回路の製造中に、所定のエネルギーレベルで、制御された濃度で特定のドーパント材料である不純物をウエハに選択的に注入して、半導体材料を生成するために、しばしば使用される。半導体ウエハをドーピングするために使用される場合、イオン注入システムは、選択されたイオン種をワークピースに注入して、所望の外因性材料(extrinsic material)を生成する。例えば、アンチモン、ヒ素、またはリンなどの原材料から生成されるイオンを注入すると、「n型」の外因性材料ウエハが得られる一方、「p型」の外因性材料ウエハは、ホウ素、ガリウム、またはインジウムなどの原材料で生成されたイオンから得られることが多い。
【0004】
典型的なイオン注入装置は、イオン源と、イオン引出(抽出)装置と、質量分析装置と、ビーム輸送装置と、ウエハ処理装置とを含む。イオン源は、所望の原子ドーパント種のイオンまたは分子ドーパント種のイオンを生成する。これらのイオンは、イオン源からのイオンの流れを励起し、方向付ける引出システム(典型的には一組の電極)によってイオン源から引き出され、イオンビームを形成する。所望のイオンは、質量分析装置、典型的には引き出されたイオンビームの質量分散または質量分離を行う磁気双極子においてイオンビームから分離される。ビーム輸送装置は、典型的には一連の集束装置を含む真空システムであり、イオンビームの所望の特性を維持しながら、イオンビームをウエハ処理装置に輸送する。最終的に、半導体ウエハは、ウエハハンドリングシステムによって、ウエハ処理装置内に輸送され、またウエハ処理装置から出される。ウエハハンドリングシステムは、イオンビームの前方に処理されるウエハを配置して、処理されたウエハを注入装置から取り外すための1つ以上のロボットアームを含み得る。
【0005】
〔概要〕
本開示は、概して、システムに関連するコンポーネント上に形成されたフィルムをパッシベート(不動態化:passivate)および/またはクリーニングすることを含む、イオン注入のためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、大量の反応ガスを導入し、イオンビームまたは補助熱源によってコンポーネントを加熱することにより、化学反応によって、イオン注入システムのコンポーネント上に形成されるフィルムを安定化および/または除去するためのシステムおよび方法に関する。
【0006】
したがって、以下では、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。この概要は、本開示の広範な概要ではない。これは、本発明の重要な要素を特定するものでも、本発明の範囲を規定するものでもない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することである。
【0007】
例示的な一態様によれば、イオンビームを形成するように構成されたイオン源を備えるイオン注入システムが提供される。一例では、角度エネルギーフィルタ(AEF)などの1つ以上のコンポーネントがイオン注入システム内に設けられる。前記AEFは、前記AEFに関連するAEF領域を有する。例えば、ガス源がさらに設けられ、前記AEF領域にガスを供給するようにさらに構成される場合、前記ガスは、前記フィルムと前記ガスとの反応により、前記AEF上に存在するフィルムをパッシベートおよび/またはエッチングするように構成される。前記ガス源は、例えば、(i)前記AEF領域に酸化性ガスを選択的に供給するように構成される酸化性ガス源、および、(ii)前記AEF領域にフッ素含有ガスを選択的に供給するように構成されるフッ素含有ガス源、のうちの1つ以上を含む。一例では、前記フッ素含有ガスは、NFおよびXeFのうちの1つ以上を含み、前記酸化性ガスは、空気および水のうちの1つ以上を含む。
【0008】
前記ガス源は、例えば、前記イオンビームの形成と同時に前記AEF領域に前記ガスを選択的に供給するように構成され、前記イオンビームに関連する熱は、前記AEFを加熱して、前記AEF上に存在するフィルムのパッシベーションおよび/またはエッチングを補助するように構成される。別の例では、補助ヒータが前記AEFを選択的に加熱し、それにより、前記AEF上に存在する前記フィルムのパッシベーションおよび/またはエッチングを補助するように構成される。
【0009】
別の例では、マニホルドディストリビュータが、1つ以上のAEF電極を備える前記AEFに接続されている。前記マニホルドディストリビュータは、例えば、前記ガス源に操作可能に接続され、前記1つ以上のAEF電極に前記ガスを供給するように構成される。前記マニホルドディストリビュータは、例えば、当該マニホルドディストリビュータ内において画定される複数の穴を有するチューブを備え、当該複数の穴は、前記1つ以上のAEF電極に前記ガスを分散(disperse)させるように構成される。
【0010】
別の例によれば、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネントにおけるフィルムの堆積を軽減するための方法が提供される。当該方法は、1つ以上のコンポーネントのそれぞれに関連する1つ以上の領域にガスを供給する工程を含み、前記ガスは、前記フィルムと前記ガスとの反応によって、前記1つ以上のコンポーネント上に存在する前記フィルムをパッシベートおよび/またはエッチングするように構成される。例えば、イオンビームに関連する熱は、前記1つ以上のコンポーネントを加熱して、前記1つ以上のコンポーネント上に存在する前記フィルムのパッシベーションおよび/またはエッチングを補助するように構成されてもよい。代替的に、または付加的に、補助ヒータを介して1つ以上のコンポーネントに熱を供給してもよい。
【0011】
前記イオン注入システムは、さらに真空引きされてもよく、これにより、当該イオン注入システムから、フィルムとガスとの反応の1つ以上の副生成物を除去する。一例では、前記ガスは、インサイチュで(その場で:in-situ)供給されてもよい。
【0012】
上記の概要は単に、本開示のいくつかの実施形態のいくつかの特徴の簡単な概要を与えることを意図したものであり、他の実施形態は、上記のものに追加の特徴および/または上記のものとは異なる特徴を含んでもよい。特に、この概要は、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちのいくつかを示す。本開示の他の目的、利点、および新規な特徴は、以下の本開示の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって明らかになるのであろう。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示のいくつかの態様による例示的な真空システムのブロック図である。
【0014】
図2は、本開示の別の態様による例示的な角度エネルギーフィルタ(AEF)のブロック図である。
【0015】
図3は、本開示のさらに別の態様による例示的なAEFの斜視図を示す。
【0016】
図4は、本開示のさらに別の態様による例示的なAEFの側面図を示す。
【0017】
図5は、本開示の別の態様による、ガスマニホルドを有する例示的なAEFの斜視図を示す。
【0018】
図6は、イオン注入システムにおいてフィルムを安定化させ、クリーニングするための例示的な方法を示す。
【0019】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、関連するコンポーネント上に形成されたフィルムをパッシベートおよび/またはクリーニングすることを含む、イオン注入のための装置、システム、および方法を対象とする。より詳細には、本開示は、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネント上に形成されたフィルムの安定化および/または除去のためのシステムおよび方法を対象とする。当該システムおよび方法は、(i)1つ以上のコンポーネントに関連する領域への大量の反応ガスの導入に由来する化学反応、および(ii)例えば、イオンビームによる、1つ以上のコンポーネントの同時加熱を介する。具体的には、前記1つ以上のコンポーネントは、前記イオン注入システムのビームラインの角度エネルギーフィルタ(Angular Energy Filter:AEF)領域内に電極または他のコンポーネントを備えることができる。したがって、本開示は、前記イオン注入システムの通常の動作の一部として有利に組み込むことができ、それにより、前記フィルムの安定化および/または除去を、インサイチュで(in-situ)、または予定された予防保全中に実行することができる。
【0020】
したがって、本発明は、図面を参照して説明され、ここで、同様の参照番号は全体を通して同様の要素を指すために使用され得る。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明目的のために、本発明の完全な理解を提供すべく、様々な特定の内容が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本発明は、これらの特定の内容でなくても実施できることが明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に記載される実施形態または例によって限定されることを意図されず、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図される。
【0021】
また、図面は、本開示の実施形態のいくつかの態様の例示を与えるために提供され、したがって、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示される要素は必ずしも互いに縮尺通りではなく、図面における様々な要素の配置はそれぞれの実施形態の明確な理解を提供するように選択され、本発明の実施形態による実装形態における様々なコンポーネントの実際の相対位置の表現であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書で説明される様々な実施形態および例の特徴は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0022】
また、以下の説明では、図面に示された、または本明細書で説明された、機能ブロック、デバイス、コンポーネント、回路要素、または他の物理的ユニットもしくは機能的ユニット間の直接的な接続または結合のいずれも、間接的な接続または結合によって実施され得ることを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたはユニットは、一実施形態では別個の特徴または回路として実装されてもよい。また、代替として、別の実施形態では、共通の特徴または回路において完全にかまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの機能ブロックは、シグナルプロセッサのような一般的なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、以下の明細書において有線ベースとして説明される任意の接続は、そうではないと言及されない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0023】
ここで図面を参照すると、本開示の一態様によれば、図1は、例示的なイオン注入システム100を示す。イオン注入システム100は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。概して、ターミナル102内のイオン源108は、電源110に接続されており、ドーパントガスを複数のイオンにイオン化し、イオンビーム112を形成する。本実施例におけるイオンビーム112は、質量分析器114を通って、開口部(開口)116を出て、エンドステーション106に向かって導かれる。エンドステーション106において、イオンビーム112は、チャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプまたは取り付けられたワークピース118(例えば、シリコンウエハ、ディスプレイパネルなどの半導体ワークピース)に衝突する。ワークピース118の格子に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的特性および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造や金属仕上げ、ならびに材料科学研究における様々な用途に使用されている。
【0024】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルビームもしくはスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンがエンドステーション106に導かれている任意の他の形態のような任意の形態をとることができる。このような形態はすべて、本開示の範囲内に入ると考えられる。好ましい実施形態において、イオンビーム112は、スポットビームを含む。当該スポットビームは、開口部116の下流に配置されたビームスキャナ122を介して走査される。ビームスキャナ122は、例えば、第1軸124に沿って(例えば、x方向に)イオンビーム112を静電的又は磁気的に走査して、複数のビームレット128を含む走査イオンビーム126を概ね(generally)画定する。イオンビーム112(例えば、走査されたイオンビーム126)の複数のビームレット128は、平行化装置130によってビームスキャナ122の下流でさらに平行化され得る。これにより、走査され平行化されたイオンビーム132を画定することができる。さらに、ワークピーススキャナ134を利用して、イオンビーム112を介してワークピース118を走査することができる(例えば、ワークピースは、走査され平行化されたイオンビーム132によってy方向に機械的に走査される)。
【0025】
本開示はさらに、イオン注入システム100に設けられる角度エネルギーフィルタ(angular energy filter)(AEF)136を導入する。例えば、AEF136は、Axcelis Technologies、Inc.(Beverly、MA)によって製造されるPurion Ion Implantation Systemにおいて設けられる1つ以上の特徴を備えることができる。AEF136は、例えば、図2に示されるように、走査され平行化されたイオンビーム132を受け入れ、第2軸140に沿って(例えば、垂直方向またはy方向に)、入射ビームライン軸138からワークピース118に向かってイオンビームを実質的に偏向するように構成される。これにより中性粒子がワークピースに到達するのを防止する。
【0026】
例えば、Benvenisteらの米国特許第6,881,966号は、ハイブリッド偏向システムを形成するために静電偏向器と共に使用される磁気偏向器を開示している。ハイブリッド偏向システムでは、概ね低いイオンビームエネルギーでの偏向のためには磁気偏向器モジュールが使用される。一方、概ね高いビームエネルギーでは静電偏向モジュールが使用される。AEF136(例:図1図5に示すAEF)は、例えば、図1のAEF領域142に配置されてよい。AEF136は、イオンビーム112の軌道を、当該イオンビーム112のエネルギーの関数(function)として変化させ、イオンビームの進行経路に沿って進行する中性イオンに由来する、注入されるべき所望のイオンを偏向させるように制御されてもよい。AEFシステムのさらなる開示は、例えば、公知となっている、Rathmellらによる米国特許第6,777,696号および第7,022,984号、ならびにGrafらによる米国特許公開第2010/0065761号(これらの全体は、参照により本明細書に組み込まれる)において見ることができる。
【0027】
本開示は、特に、図1に概略的に示されるAEF136に関連するAEF領域142において、これらの操作中に、1つ以上のフィルム144が、イオン注入システム100の種々のコンポーネント146(例えば、電極、開口部、または他のビームラインコンポーネント)上に形成され得ることを認識する。本開示は、有利には1つ以上のフィルムとの1つ以上の化学反応を誘導することによって、イオン注入システム100の種々のコンポーネント146上に形成された1つ以上のフィルム144を安定化し、パッシベートするか、さもなくば1つ以上のフィルム144の除去を補助する。したがって、本開示は、1つ以上のフィルム144の層間剥離または劣化によって引き起こされるワークピース118の汚染(contamination)のような、通常のイオン注入機動作に関連する1つ以上のフィルム144によって引き起こされる様々な有害な問題を軽減するための統合された解決策を提供する。
【0028】
一例では、ガス供給システム148が提供される。ガス供給システム148は、AEF領域142に関連しており、AEF領域内に展開(develop)され得る1つ以上のフィルム144をパッシベートまたはエッチングするために、AEF領域142に関連するAEF環境152内に1つ(1種)以上のガス150(例えば、酸化性ガスおよび反応ガスのうちの1つ以上)を供給するように構成される。1つ以上のガス150は、例えば、ガス源154によってイオン注入システム100に導入される大量の反応ガスを含むことができる。一例では、イオンビーム112は、1つ以上のフィルム144が形成された種々のコンポーネント146に熱を提供することができる。その結果、イオンビームからの熱は、1つ以上のガス150との反応と併せて、種々のコンポーネントからの1つ以上のフィルム144のパッシベーションまたは除去を補助する。
【0029】
一例によれば、ガス源154によって供給される1つ以上のガス150は、空気および/または水(例えば、水蒸気)などの酸化性ガスを含む。当該酸化性ガスは、1つ以上のフィルム144をパッシベートするために(例えば、イオンビーム112から)熱とともに導入され得ることにより、1つ以上のフィルムを概ね安定化し、それに加えさらなる汚染を軽減する。例えば、AEF136(またはその種々のコンポーネント)は、イオンビーム112からの衝突によってさらに加熱され、したがって、1つ以上のフィルム144をパッシベートすることができる。
【0030】
別の例では、ガス源154によって供給される1つ以上のガス150がフッ素含有ガス(例えば、NF、XeFまたは他のフッ素含有ガス)を含む。当該フッ素含有ガスは、必要に応じて(例えば、イオンビーム112からの)熱と組み合わされて、1つ以上のフィルム144をエッチングすることができる。結果として生じる反応ガスは、図1に示す真空源156(バキューム)を介してイオン注入システム100からさらに除去される。例えば、真空源156(例えば、真空ポンプ)は、イオン注入システム100をさらに全体的に排気するために設けられてもよい。
【0031】
別の例では、1つ以上のガス150に関連する上述のパッシベーションまたは反応プロセスを強化および/または加速させるために補助熱源158が、設けられてもよい。当該補助熱源は、AEF136などの種々のコンポーネント146に関連するか、または種々のコンポーネント146に組み込まれる。したがって、例えば、1つ以上のフィルム144の加熱は、イオンビーム112および補助熱源158のうちの1つ以上によって提供され得る。補助熱源158は、例えば、AEF136に関連する1つ以上のヒータ160(例えば、1つ以上の抵抗ヒータ、導電ヒータ、流体ベースのヒータ、放射ヒータなど)を含むことができる。
【0032】
さらに、コントローラ162が図1に示される。コントローラ162は、AEF136、ビームスキャナ122、ガス源154、真空源156、補助熱源158、および/またはイオン注入システム100の様々な他のコンポーネントのうちの1つ以上などの、イオン注入システム100の一部またはすべてを制御するように動作可能である。
【0033】
本開示のさらに別の例によれば、図1の1つ以上のガス150は、図3に示すように、マニホルドディストリビュータ164を通して送達される。マニホルドディストリビュータ164は、例えば、図3のAEF136に関連する1つ以上のAEF電極165を横切るような、種々のコンポーネント146を横切る1つ以上のガス150のほぼ均一な流れを提供するように構成される。図4に示されるように、例えば、1つ以上のAEF電極165は、AEF頂部プレート166、AEF底部プレート168、末端抑制電極170、AEF抑制電極172、およびAEF接地開口部174のうちの1つ以上を含み得る。
【0034】
図3のマニホルドディストリビュータ164は、例えば、マニホルドディストリビュータ164内において画定される複数の孔178を有するチューブ176を備えてもよい。マニホルドディストリビュータ164は、図1のガス源154に動作可能に接続され、AEF環境152内の様々なAEF電極165に1つ以上のガス150の分散を提供する。複数の孔178は、例えば、図5により詳細に示される。複数の穴178は、図1の1つ以上のガス150(例えば、フッ素含有ガス、空気、および/または水蒸気)の分散を提供するために、所定の角度(例えば、45°)だけオフセットされてもよい。
【0035】
さらに別の例では、高パワー(高出力)イオンビーム180(例えば、図1のイオンビーム112)は、図4に示されるAEF電極165を横切って掃引され得る。これにより、高パワーイオンビーム180に関連する熱は、図1の1つ以上のガス150を1つ以上のフィルム144と反応させることを補助する。代替的に又は追加的に、図1から図4に示される1つ以上のヒータ160(例えば、1つ以上の抵抗ヒータ、導電性ヒータ、流体ベースのヒータ、放射ヒータなど)が、上述の化学反応プロセスを加速するように構成されてもよい。図4に示されるように、例えば、高パワーイオンビーム180は、垂直方向および水平方向の両方のような直交方向に掃引されてもよい(例えば、当該イオンビームは、最大幅まで垂直に延在しながら、紙面に向かう方向および紙面から出る方向に走査される)。
【0036】
したがって、本開示はさらに、イオン注入システム100のAEF136および/または他のコンポーネントをインサイチュでクリーニングし、イオン注入システム100内で形成された1つ以上のフィルム144をパッシベーションおよび/または除去する技術を提供する。本開示は、例えば、予防保全(preventive maintenance:PM)、システムポストベントコンディショニング(system Post-Vent Conditioning:PVC)、またはパージクリーニングルーチンの一部としてクリーニングを作動させることができるソフトウェアにさらに統合することができる。
【0037】
別の例示的な態様によれば、本開示は、図1のイオン注入システム100などの様々なイオン注入システムにおける低エネルギー粒子性能を改善する。例えば、イオン注入は、イオンビーム112を低エネルギーで動作させる場合、注入されている注入種によって種々のコンポーネントが飽和される時点まで、種々のコンポーネント146上に1つ以上のフィルム144を蓄積する傾向を有する場合がある。時間が経つと、1つ以上のフィルム144は、剥離するか、さもなければ、ワークピース118上に堆積した粒子に関連する欠陥を引き起こし、点欠陥を導く場合がある。本開示のシステムおよび装置は、例えば、そのような欠陥を軽減するために、種々のコンポーネント146に空気または湿った空気を有利に提供することができる。例えば、ある期間にわたって、粒子汚染が蓄積する場合、空気または湿った空気を、ガス供給システム148を介して導入することができる。これにより、1つ以上のフィルム144を酸化プロセスによって安定化させることができる。例えば、大気への通気は、粒子性能をさらに回復させることができる。本開示は、例えば、イオンビーム112の形成と同時に所定の間隔でシステム100に空気を意図的に導入することができる。したがって、1つ以上のフィルム144を酸化および/またはパッシベートすることができる。
【0038】
あるいは、フッ素化ガスなどの異なる化学物質が、フィルムをパッシベートする代わりに、1つ以上のフィルム144を変換(convert)して1つ以上のフィルム144をエッチングすることができる。例えば、AEF領域142は、イオンビーム112のサイズの変化に特にさらされるため、クリーニングまたは安定化は、より大きな影響を有することができる。さらに、上述のように、注入中に熱を導入することによって、フィルム除去またはクリーニング/パッシベーションプロセスを増加または加速することができる。例えば、パージルーチンは、1つ以上のガス150を導入して、イオン注入システム100を定期的にクリーニングするため実施され得る。当該パージルーチンは、例えば、予防保全として、または注入の間に開始されてもよい。当該パージルーチンは、ビームラインを安定化させるために実行され得る。従って、当該パージルーチンは、イオンビーム112が通過する種々のコンポーネント146の表面を安定化させる。
【0039】
本開示は、1つ以上のフィルム144からの粒子の脱落を軽減することが所望されるイオン注入システム100における任意の表面に対する注入を企図する。本開示は、1つ以上のフィルム144を、水および/または空気でパッシベートすることを企図し、代替的にまたは追加的に、1つ以上のフィルムをフッ素含有ガスでエッチングして当該フィルムを完全に除去することを含んでもよい。上述のパッシベーションは、例えば、所定の回数実行されてもよく、その後、1回以上のエッチングが続く。例えば、空気/水によるパッシベーションは、100時間毎に実行されてもよく、一方、フッ素化ガスによるエッチングは、1000時間又は所定の予防保全(PM)時間及び/又はポストベントコンディショニング(PVC)で実行されてもよい。
【0040】
1つ以上のガス150は、例えば、トンネル領域、またはビームラインアセンブリ104に関連する任意の他の上流要素(補正磁石もしくは他の要素など)に導入することができる。1つ以上のガス150は、ビームトンネルなどの下流要素に、さらにまたは代替的に導入されてもよい。例えば、本開示は、イオン源108の下流で実施することができ、様々なノズル、チューブ、または他のガスディストリビュータを使用して達成することができる。図3のマニホルドディストリビュータ164は、所望の領域全体にわたって1つ以上のガス150を導くか、または図1のイオン注入システム100全体にわたって所望の位置に導く、マニホルドまたは任意の導管を備えることができる。別の例では、イオンビーム112(例えば、図4の高パワーイオンビーム180)は、熱を導入し、かつ/または1つ以上の領域に衝突するように構成されたアルゴンイオンビームを含むことができる。
【0041】
本開示の別の態様において、図6は、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネント上のフィルムの堆積を軽減するための方法200を示す。例示的な方法が、一連の動作または事象として本明細書に示され、説明されるが、いくつかのステップは、開示に従って、本明細書に示され、説明されたものとは別の他のステップと異なる順序で、および/または同時に起こり得るので、本開示はそのような動作または事象の示された順序によって限定されないことに留意されたい。さらに、本開示による方法を実施するために、図示されたすべてのステップが必要とされるわけではない。さらに、これらの方法は、ここで図示しかつ記載されたシステムと関連させ、また、説明していない他のシステムとも関連させて包含され得る。
【0042】
図6に示す方法200は、動作202において、イオン注入システム内の1つ以上のコンポーネント上にフィルムを形成することを示している。当該フィルムは、例えば、ワークピース上で実行されるイオン注入の副産物であってもよい。よって、イオンビームの様々な種または他のコンポーネントが、1つ以上のコンポーネント上に堆積されるか、さもなければ形成される。1つ以上のコンポーネントは、例えば、上述のように、様々な電極またはAEFのコンポーネントを含むことができる。
【0043】
動作204では、空気、水蒸気、またはフッ素含有ガスなどのガスが、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネントに関連する1つ以上の領域に導入される。動作206では、ガスがフィルムと反応し、それによってフィルムがパッシベートおよび/またはエッチングされる。場合により、動作208において、1つ以上のコンポーネントは、イオンビームによって(例えば、ビームストライク(ビーム衝突)によって)、または関連するヒータによって加熱される。このイオンビームまたは関連するヒータからの熱は、動作206のパッシベーションおよび/またはエッチングを補助する。動作210では、動作206の反応および動作208の加熱の副産物がイオン注入システムから排出され、それによってシステムから汚染物質が除去される。
【0044】
本発明は、1つ以上の特定の実施形態に関して示され、説明されてきたが、上述の実施形態は本発明のいくつかの実施形態の実行のための例としてのみ役立ち、本発明の適用はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に上述のコンポーネント(アセンブリ、装置、回路、システム等)によって実行される種々の機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても本発明のここで図示された例示的実施形態においてその機能を果たすものであれば、説明されたコンポーネントの特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかのコンポーネントに相当するものと意図されている。更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施形態のただ一つに対して開示されてきたが、そのような特徴はいずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。したがって、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本開示のいくつかの態様による例示的な真空システムのブロック図である。
図2】本開示の別の態様による例示的な角度エネルギーフィルタ(AEF)のブロック図である。
図3】本開示のさらに別の態様による例示的なAEFの斜視図を示す。
図4】本開示のさらに別の態様による例示的なAEFの側面図を示す。
図5】本開示の別の態様による、ガスマニホルドを有する例示的なAEFの斜視図を示す。
図6】イオン注入システムにおいてフィルムを安定化させ、クリーニングするための例示的な方法を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6