(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】残油分解触媒のための反応性シリカ-アルミナマトリックス成分組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 21/16 20060101AFI20240701BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20240701BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240701BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240701BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20240701BHJP
C01B 39/24 20060101ALI20240701BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01J21/16 M
B01J29/08 M
B01J37/00 F
B01J37/04 102
C01B33/40
C01B39/24
C10G11/18
(21)【出願番号】P 2020531702
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018064738
(87)【国際公開番号】W WO2019118344
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エム. ストックウェル
(72)【発明者】
【氏名】ジュンメイ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンタオ ガオ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エイチ. ハリス
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0329639(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0166453(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0078468(US,A1)
【文献】国際公開第2009/145311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 33/20 - 39/54
C10G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
残油分解触媒組成物であって、
30
~60重量%アルミナと、
酸化物として測定して、0超
~10重量%のイッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパントと、
2~20重量%反応性シリカと、
成
分3~20重量%の解膠性ベーマイト
、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含むと、
10
~50重量%のカオリンと、を含む、残油分解触媒組成物。
【請求項2】
前記ドーパントが、酸化物として測定して、前記組成物
の0.1
~5重量%の量で存在する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ドーパントが
、4重量%の量で存在する、請求項1または2のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項4】
前記ドーパントが、ランタンを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記ドーパントが、前記アルミナに含浸さ
れているか、または前記アルミナ上にコーティングさ
れているか、または前記ドーパントが、前記アルミナと共沈さ
れている、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
70~95ミクロンの平均粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記組成物中にゼオライトをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記ゼオライトが、Yゼオライトである、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
ゼオライトを含まない、請求項1~
7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
前記アルミナが、か焼アルミナである、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
残油分解触媒を製作する方法であって、
乾燥重量ベースで、
30
~60重量%アルミナと、
酸化物として測定して、0超
~10重量%のイッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパントと、
2~20重量%反応性シリカと、
3~20重量%の解膠性ベーマイト
、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、
10
~50重量%のカオリンと、を含有する水性スラリーを形成することと、
前記水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記ミクロスフェアをか焼することをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミナが、か焼アルミナである、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素供給物を分解する方法であって、前記供給物と、ゼオライト成分および残油分解触媒を含む流動接触分解(FCC)触媒とを接触させることを含み、前記残油分解触媒が、
30
~60重量%アルミナと、
酸化物として測定して、0超
~10重量%のイッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパントと、
2~20重量%反応性シリカと、
3~20重量%の解膠性ベーマイト
、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、
10
~50重量%のカオリンと、を含む、方法。
【請求項16】
前記触媒が、酸化物として測定して
、0.1
~5重量%の量の前記ドーパントを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記
ドーパントが、ランタンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記残油分解触媒を含まない同じ物理的特性を有する触媒と前記供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で測定して、コークス収率が10%超低くなる、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ゼオライトが、Yゼオライトを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記FCC触媒が、少なくとも15重量%の前記残油分解触媒を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記FCC触媒が、少なくとも50重量%の前記ゼオライト成分を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記FCC触媒が、15重量%~80重量%の前記残油分解触媒を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記FCC触媒が、50重量%~80重量%の前記残油分解触媒を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記FCC触媒が、15重量%~50重量%の前記残油分解触媒と、85重量%~50重量%の前記ゼオライト成分と、任意で他の粘土ベースの成分と、を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記FCC触媒が、バナジウムトラップまたは結晶性ベーマイトニッケルトラップをさらに含む、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アルミナが、か焼アルミナである、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
残油分解触媒組成物であって、
30
~60重量%アルミナと、
0超
~10重量%の炭酸イッテルビウム、炭酸ガドリニウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含む希土類炭酸塩と、
2~20重量%反応性シリカと、
3~20重量%の解膠性ベーマイト
、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、
10~
50重量%のカオリンと、を含む、残油分解触媒組成物。
【請求項28】
前記希土類炭酸塩が、酸化物として測定して、前記組成物
の0.1
~5重量%の量で存在する、請求項27に記載の触媒。
【請求項29】
前記希土類元素が、ランタンを含む、請求項27または28のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項30】
70~95ミクロンの平均粒径を有する、請求項27~29のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項31】
4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する、請求項27~30のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項32】
前記アルミナが、か焼アルミナである、請求項27~31のいずれか一項に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年12月11日に出願された米国仮特許出願第62/597,176号の優先権に対する利益を主張するものであり、その開示の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
技術分野
本技術は、一般的に、石油精製触媒に関する。より具体的には、この技術は、アルミナと、ドーパントと、反応性シリカと、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロールを含む成分と、カオリンと、を含む残油分解触媒、ならびにそのような触媒を製作する方法および使用に関する。
【0003】
発明の概要
一態様において、残油分解触媒組成物は、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0004】
別の態様において、残油分解触媒を製作するための方法であって、乾燥重量基準で、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む方法が提供される。
【0005】
別の態様において、炭化水素供給物を分解する方法であって、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒と、供給物とを接触させることを含む方法が提供される。
【0006】
別の態様において、残油分解触媒組成物は、アルミナ約30~約60重量%と、希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む。希土類は、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。
【0007】
別の態様において、残油分解触媒を製作するための方法であって、乾燥重量基準で、アルミナ約30~約60重量%と、希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む方法が提供される。希土類は、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。
【0008】
別の態様において、炭化水素供給物を分解するための方法であって、供給物を、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒と接触させることを含む方法が提供される。希土類は、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。
【0009】
別の態様において、残油分解触媒組成物は、希土類交換Yゼオライトの約10~約20重量%と、シリカおよびベーマイトを含むバインダーの約10~約30重量%と、アルミナおよび任意で結晶性ベーマイトを含む添加剤の約30~約60重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む。そのような実施形態において、希土類交換Yゼオライトは、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、希土類交換Yゼオライトは、ランタンを含む。そのような実施形態において、触媒は、約70~95ミクロンの平均粒径を有し得る。そのような実施形態において、触媒は、4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有し得る。
【0010】
別の態様において、残油分解触媒を製作する方法は、乾燥重量基準で、希土類交換Yゼオライトの約10~約20重量%と、シリカおよびベーマイトを含むバインダーの約10~約30重量%と、アルミナおよび任意で結晶性ベーマイトを含む添加剤の約30~約60重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む。この方法は、ミクロスフェアをか焼することをさらに含み得る。
【0011】
別の態様において、炭化水素供給物を分解する方法は、供給物を上記の残油分解触媒のいずれかと接触させることを含む。そのような方法では、同等の物理的特性を示すが残油分解触媒を含まない触媒と、供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で測定して、コークス収率が10%超低くなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例2に記載されているように、実施例の触媒ブレンド(ブレンド2、4、および6)および比較用の触媒ブレンド(ブレンド1、3、および5)の触媒生成物転化率を示す。
【
図2】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについてのコークス生成に応じた残油のグラフである。
【
図3】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについての生成物転化率に応じた水素生成のグラフである。
【
図4】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについての生成物転化率に応じた乾燥ガス生成のグラフである。
【
図5】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについての生成物転化率に応じた液化石油ガス(LPG)生成のグラフである。
【
図6】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについての生成物転化率に応じたガソリン生成のグラフである。
【
図7】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについての生成物転化率に応じたコークス生成のグラフである。
【
図8】実施例2に記載の例示および比較用の触媒ブレンドについてのコークス選択率に応じた残油転化率に対するライトサイクルオイル(LCO)生成のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で、さまざまな実施形態について説明する。特定の実施形態は、網羅的な説明として、または本明細書で論じられるより広範な態様を限定するものとして意図されていないことに留意されたい。特定の実施形態に関連して説明される1つの態様は、必ずしもその実施形態に限定されてはおらず、任意の他の実施形態(複数可)で実施することができる。
【0014】
本明細書で使用する場合、「約」とは、当業者により理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者に明らかではない用語が使用されている場合、それが使用されている文脈を前提として、「約」は、特定の用語の±10%までを意味する。
【0015】
要素を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語である「1つの(a、an)」、「その(the)」、および同様の指示語の使用は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈から明らかに矛盾しない限り、単数および複数の双方を含むと解釈される。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意およびすべての例または例示的言葉(例えば「など」)の使用は、実施形態をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途記載されない限り、請求項の範囲を限定することはない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を必須なものとして示すと解釈されるべきではない。
【0016】
ガソリン、軽質オレフィン、軽質サイクルオイルなどの製油所製品の製品価値は、時間および/または場所により異なるものの、これらは、常に残油留分よりも価値がある。精製業者は、これらの重要な留分のそれぞれを最大化させると同時に低価値の残油の収率を最小化させる触媒選択を必要とし、そのため、いつでも平衡触媒組成を調整して収益性を最大化させ得る。ゼオライト分解はガソリンを最大化させ、マトリックス分解は軽質オレフィンおよび軽質サイクル油(LCO)を最大化させると理解されている。本発明者等は、最小のコーキングで、また精製業者用のLCO(ディーゼル)および軽質オレフィンを最大化させるのに必要な選択率で、残油を分解する触媒添加剤を開発した。さらに、本明細書に記載の技術の発明者等は、残油分解触媒組成物が、驚くほど低いコークス選択率を示し、調製がより容易であることを発見した。
【0017】
本明細書では、残油分解触媒組成物、残油分解触媒組成物を製作する方法、および炭化水素供給物を分解する方法が提供される。この組成物は、ドーパントで安定化させられたアルミナを含む。ドーパントは、酸化物として測定される希土類金属を含み得る。いくつかの実施形態において、ゼオライトを用いた残油分解触媒組成物の使用が企図される一方で、ゼオライトをほとんどまたはまったく含まない他の実施形態が提示されている。
【0018】
一態様において、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒組成物が提供される。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0019】
残油分解触媒組成物は、アルミナ約30~約60重量%を含む。これは、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含み得るが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、アルミナの量は、約30~約60重量%、約35~約55重量%、約40~約55重量%、または約45~約55重量%を含む。適切な種類のアルミナとしては、γ-Al2O3、η-Al2O3、δ-Al2O3、θ-Al2O3、κ-Al2O3、およびそれらのいずれか2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0020】
残油分解触媒組成物は、ドーパントで安定化させられたアルミナを含み得る。いくつかの実施形態において、アルミナは、アルミナに含浸されるか、これにコーティングされるか、またはこれと共沈されることにより、ドーパントでドープされている。
【0021】
いくつかの実施形態において、ドーパントで安定化させられたアルミナを有する残油分解触媒組成物は、酸化物として測定して、ドーパントの0重量%超~約10重量%を含む。ドーパントの適切な量としては、0超~約10重量%、0.01重量%~約7重量%、約0.1重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約4重量%が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、ドーパントは、約4重量%の量で存在する。
【0022】
ドーパントは、希土類またはアルカリ土類金属酸化物であってもよい。例えば、酸化物として測定されるドーパントは、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、ドーパントは、ランタンである。理論に縛られるものではないが、希土類材料は、触媒中の酸性部位の密度を修正し、それによりコークス選択率を低下させると考えられている。
【0023】
いくつかの実施形態において、残油分解触媒組成物は、反応性シリカ約2~約20重量%を含む。例えば、反応性シリカの適切な量としては、約2~約20重量%、約5~15重量%、または約7~約12重量%が挙げられるが、これらに限定されることはない。反応性シリカの適切な種類としては、コロイド状シリカ、沈降SiO2、SiO2ゲル、揮発可能な高表面積シリカ、またはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。理論に縛られるものではないが、反応性シリカは、ブレンステッド酸部位を生成するのに必要なSiを提供する一方で、コークスを製作するルイス酸部位を低減または排除すると考えられている。
【0024】
残油分解触媒組成物は、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3重量%~約20重量%含む。いくつかの実施形態において、この成分は、コロイド状シリカおよび解膠性ベーマイトを含む。成分の適切な量としては、約3重量%、約5重量%、約7重量%、約10重量%、約12重量%、約15重量%、約18重量%、約20重量%、またはこれらの値のいずれかの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、この成分は、約3~約18重量%、約5~約15重量%、約7~約12重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、この成分は、ベーマイト約5~約10重量%およびコロイド状シリカ約5~15重量%を含む。
【0025】
残油分解触媒組成物は、カオリンの約10重量%~約50重量%を含む。例えば、カオリンの適切な量としては、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、存在するカオリンの量は、約10~約50重量%、約15~約45重量%、または約20~約30重量%を含む。いくつかの実施形態において、カオリンは、メタカオリン(脱ヒドロキシル化に関連する強い吸熱反応を受けるようにか焼されたカオリン)と、カオリンをメタカオリンに転化させるために使用される条件よりも厳しい条件下でか焼されたカオリン、すなわち、スピネル型か焼カオリンと称されることもある、特徴的なカオリン発熱反応を受けるようにか焼されたカオリンと、を含む。
【0026】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、約70~約95ミクロンの平均粒径を有する。例えば、適切な粒径としては、約70ミクロン、約75ミクロン、約80ミクロン、約85ミクロン、約90ミクロン、約95ミクロン、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、粒径としては、約70~約95ミクロン、約70~約85ミクロン、または約70~約80ミクロンが挙げられる。
【0027】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する。例えば、適切な水銀細孔容積量としては、0.30cc/g、0.35cc/g、0.40cc/g、0.45cc/g、0.50cc/g、0.56cc/g、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられる。いくつかの実施形態において、水銀細孔容積としては、0.3~0.56cc/g、0.40~0.56cc/g、または0.45~0.56cc/gの量が挙げられる。
【0028】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒は、約100~約200m2/gのBET(「ブルナウアー-エメット-テラー」)表面積を有する。例えば、BET表面積としては、約100~約200m2/g、約125~約190m2/g、または約150~約180m2/gが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0029】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、ゼオライトをさらに含み得る。例えば、適切なゼオライトとしては、Yゼオライト、超安定Y、脱アルミニウムY(DeAlY)、超疎水性Y(UHPY)、脱アルミニウムシリコン濃縮ゼオライト(例えば、LZ-210)、ZSM-5、ZSM-20、ゼオライトL、天然に存在するゼオライト(例えば、フォージャサイト、モルデナイトなど)、ゼオライトベータなど、およびそれらの2種以上のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、Yゼオライトまたは希土類交換Yゼオライトである。
【0030】
任意の実施形態によると、ゼオライトを明示的に含まない限り、残油分解触媒組成物は、ゼオライトを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよい。本明細書で使用する場合、ゼオライトを「実質的に含まない」とは、残油分解触媒中に存在するゼオライトが0重量%~約10重量%であることを指す。いくつかの実施形態において、ゼオライトを実質的に含まないとは、残油分解触媒中に存在するゼオライトが、0重量%~約5重量%、0重量%~約2重量%、0重量%~約1重量%、0重量%~約0.5重量%、0重量%~約0.05重量%、または0重量%~約0.01重量%であることを含む。いくつかの実施形態において、残油分解触媒はゼオライトを含まない。例えば、残油分解触媒は、0重量%のゼオライトを有する。
【0031】
バインダー成分に関して、コロイド状シリカおよび解膠性擬ベーマイトを使用してもよく、例えば、ベーマイトについては、CatapalまたはDisperal製品を使用してもよく、またはコロイド状シリカについては、小粒径のコロイド状シリカまたはポリケイ酸を使用してもよく、前者のものは、アンモニウムポリシリケートとしても知られている。これらのコロイド種またはポリマー種については、小さな粒径が好ましいと知られている。SiO2の場合、50Å未満が好ましく、新たに調製された(ポリ)ケイ酸が最も好ましい。前述のバインダー系は、ナトリウムなどを実質的に含まないという点で有利である。したがって、上記の実施形態のいずれかにおいて、組成物は、ナトリウムを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよい。本明細書で使用する場合、ナトリウムを実質的に含まないとは、組成物が0.5重量%未満のナトリウムを有することを指す。硫酸中でケイ酸ナトリウムとミョウバンとを迅速に混合することにより調製されたアルミニウム安定化コロイド状シリカでFCC触媒を結合することも当技術分野においてよく知られているが、この系は、ナトリウムを含むため、あまり好ましくないものの、シリカを含むため、最も好ましい組成物と同等に機能することが期待され得る。
【0032】
より一般的には、好ましいバインダー系はナトリウムを含まないため、イオン交換および他のプロセスを回避することができ、(か焼された)噴霧乾燥生成物が最終生成物である。これは、本発明の触媒が、接触分解で一般的に使用される他の公知の機能を組み込むための有用な媒体であることを意味する。したがって、希土類系またはアルカリ土類系のバナジウムトラップを少量、または耐火性酸化物に担持された貴金属CO酸化もしくはNOx還元触媒を少量、および放出制御用のモノリス担体へのウォッシュコーティングですでに知られている酸素貯蔵化合物を少量、または公知のSOx酸化または吸着剤を少量、現在の配合物にすべて添加して、当業者により期待される結果を得ることができる。本明細書に記載されているように、ZSM-5または他のゼオライトも加えてもよい。
【0033】
別の態様において、本明細書において任意の実施形態に記載の残油分解触媒を製作する方法が提供される。残油分解触媒を製作する方法は、乾燥重量基準で、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0034】
本明細書に記載の方法は、本明細書において実施形態に記載のように、酸化物として測定されるドーパントでドープされたアルミナと、反応性シリカと、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、カオリンと、を含む水性スラリーを形成することを含む。例えば、水性スラリーを形成することは、耐摩耗性を改善するためにドープまたは非ドープアルミナを湿式粉砕することを含み得る。
【0035】
ゼオライトまたは添加剤などの他の粒状成分も粉砕してもよい。粒状成分の組み合わせを事前に混合し、その後、まとめて粉砕してもよい。いくつかの実施形態において、適切な粉砕粒径の目標は、90%が3ミクロン未満であることを含む。一般的に、ギブサイト、バイヤライト、か焼アルミナは、容易に粉砕される。解膠性または部分解膠性ベーマイトは、粉砕が困難または不必要な場合がある。いくつかの実施形態において、ベーマイトまたは擬ベーマイトの解膠は、90%が3ミクロン未満であることを含むが、これに限定されることはない粒径目標に達する。いくつかの実施形態において、個々の成分を製作し、まとめてまたは別々に粉砕し、酸性pHにて任意の順序で簡単に混合してもよい。いくつかの実施形態において、方法は、コロイド状SiO2を最後に添加することを含む。例えば、コロイド状SiO2は、塩基性pHを有していてもよく、したがって、スラリー中の解膠アルミナと反応することができる。いくつかの場合において、SiO2により混合物の全体的なpHが上昇すると、スラリーが粘稠化してゲル化することがある。いくつかの実施形態において、コロイド状SiO2は、Nalco2326SiO2であり、解膠性ベーマイトは、PB-950CatapalAまたはCatapalBである。
【0036】
いくつかの実施形態において、形成は、酸性pH条件で実施される。いくつかの実施形態において、形成は、約pH5、約pH4、約pH3、約pH2.5、約pH2、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲で実施される。
【0037】
いくつかの実施形態において、水性スラリーの形成は、少なくとも約10℃の温度で実施される。例えば、適切な温度としては、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、もしくは100℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0038】
水性スラリーの形成に続いて、この方法は、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることを含む。いくつかの実施形態において、ミクロスフェアは、本明細書において任意の実施形態に記載のように、粒径、BET表面積、および/または水銀細孔容積を含む。例えば、ミクロスフェアは、約70~約95ミクロンの粒径、約100~約200m2/gのBET表面積、および0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を含む。
【0039】
本明細書に記載の方法は、ミクロスフェアの静的なか焼をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃~約850℃の温度で実施される。ミクロスフェアをか焼するための適切な温度としては、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃、500℃、525℃、550℃、575℃、600℃、625℃、650℃、675℃、700℃、725℃、750℃、775℃、800℃、825℃、もしくは850℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の温度で行われる。
【0040】
いくつかの実施形態において、静的なか焼は、少なくとも約15分(「分」)にわたり実施される。例えば、か焼に適した期間としては、少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約15分~約5時間、約45分~約3時間、または約1時間~約2時間にわたり実施される。
【0041】
いくつかの実施形態において、か焼は、回転式か焼炉内で実施される。回転か焼は、約1分~約1時間の滞留時間を含み得る。例えば、適切な回転か焼滞留時間としては、約1分~約1時間、約5分~約30分、約10分~約20分が挙げられるが、これらに限定されることはない。回転か焼は、静的なか焼について本明細書に記載されている温度で実施することが可能である。例えば、適切な回転か焼温度は、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃であり得る。
【0042】
別の関連する態様において、前述の供給物を残油分解触媒と接触させることを含む、炭化水素供給物を分解する方法が提供される。任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒のいずれも、炭化水素供給物の接触分解に使用することができる。
【0043】
炭化水素供給物を分解する方法は、該炭化水素供給物を、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定してドーパントの0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒と接触させることを含む。
【0044】
本明細書に記載の方法による炭化水素供給物の分解は、残油分解触媒を含まない同等の物理的特性を有する触媒と、供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で、少なくとも10%低いコークス収率をもたらす。
【0045】
この方法は、ゼオライト系分解成分を残油分解触媒に添加して、触媒のブレンドを形成することをさらに含む。例えば、適切なゼオライト系分解成分は、本明細書に記載のゼオライトを含む。いくつかの実施形態において、ゼオライト系分解成分は、Yゼオライトである。残油分解成分に対するゼオライト系分解成分の比は、さまざまなガスオイルまたは残油供給物に応じて変わり得る。ゼオライト系分解成分は、任意の公知のゼオライト系FCC触媒であり得る。特に有用な組み合わせとしては、ゼオライトの豊富な残油分解触媒と、蒸気処理ZSA/MSA(ゼオライト表面積/マトリックス表面積)比が約2超の高活性FCC触媒とのブレンドが挙げられる。これらの高ゼオライト触媒の類似部分を残油分解触媒と一緒に含むブレンドにより、ZSA/MSA値が0.5~約1のより低活性の配合物を得ることができる。そのような配合物の利点は、それらのより低い活性が、残油分解および軽質オレフィン生成の増加に加えて、FCC再生器の温度をかなり低下させることができることである。再生器を冷却することは、これにより、操作上の冶金学的制限を回避し、触媒の失活率を低下させることができるため、残油供給物の適用において特に有用である。有用な高活性触媒の例としては、特に、米国特許第6,656,347号、同第6,942,784号、および同第6,673,235号に記載されているものが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、炭化水素供給物を分解する方法は、ゼオライトを含まない残油分解触媒を含む。
【0047】
本明細書では、別の態様において、残油分解触媒組成物、残油分解触媒組成物を製作する方法、および炭化水素供給物を分解する方法が提供される。組成物は、希土類炭酸塩を含み得る。希土類炭酸塩は、炭酸イッテルビウム、炭酸ガドリニウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。そのような実施形態において、残油分解触媒組成物は、ゼオライトを含んでもよく、他の実施形態において、残油分解触媒は、ゼオライトをほとんどまたはまったく含んでいなくてもよい。
【0048】
一態様において、アルミナ約30~約60重量%と、希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒組成物が提供される。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0049】
残油分解触媒組成物は、アルミナ約30~約60重量%を含む。これは、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、アルミナの量は、約30~約60重量%、約35~約55重量%、約40~約55重量%、または約45~約55重量%を含む。適切な種類のアルミナとしては、γ-Al2O3、η-Al2O3、δ-Al2O3、θ-Al2O3、κ-Al2O3、およびそれらのいずれか2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0050】
いくつかの実施形態において、希土類炭酸塩は、残油分解触媒中に0重量%超~約10重量%存在する。希土類炭酸塩の適切な量としては、0超~約10重量%、0.01重量%~約7重量%、約0.1重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約4重量%が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、希土類炭酸塩は、約4重量%の量で存在する。
【0051】
希土類炭酸塩は、炭酸イッテルビウム、炭酸ガドリニウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。いくつかの実施形態において、希土類炭酸塩は、炭酸ランタンである。他の実施形態において、希土類炭酸塩は、炭酸セリウムであり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、残油分解触媒組成物は、反応性シリカ約2~約20重量%を含む。例えば、反応性シリカの適切な量としては、約2~約20重量%、約5~15重量%、または約7~約12重量%が挙げられるが、これらに限定されることはない。反応性シリカの適切な種類としては、コロイド状シリカ、沈降SiO2、SiO2ゲル、揮発可能な高表面積シリカ、またはそれら2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。理論に縛られるものではないが、反応性シリカは、ブレンステッド酸部位を生成するのに必要なSiをもたらす一方で、コークスを製作するルイス酸部位を低減または排除すると考えられている。
【0053】
残油分解触媒組成物は、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分を約3重量%~約20重量%含む。いくつかの実施形態において、この成分は、コロイド状シリカおよび解膠性ベーマイトである。成分の適切な量としては、約3重量%、約5重量%、約7重量%、約10重量%、約12重量%、約15重量%、約18重量%、約20重量%、またはこれらの値のいずれかの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、この成分は、約3~約18重量%、約5~約15重量%、約7~約12重量%の量で存在する。
【0054】
残油分解触媒組成物は、約10重量%~約50重量%のカオリンを含む。例えば、カオリンの適切な量としては、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、存在するカオリンの量は、約10~約50重量%、約15~約45重量%、または約20~約30重量%を含む。いくつかの実施形態において、カオリンは、メタカオリン(脱ヒドロキシル化に関連する強い吸熱反応を受けるようにか焼されたカオリン)と、カオリンをメタカオリンに転化させるために使用される条件よりも厳しい条件下でか焼されたカオリン、すなわち、スピネル型か焼カオリンと称されることもある、特徴的なカオリン発熱反応を受けるようにか焼されたカオリンと、を含む。
【0055】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、約70~約95ミクロンの平均粒径を有する。例えば、適切な粒径としては、約70ミクロン、約75ミクロン、約80ミクロン、約85ミクロン、約90ミクロン、約95ミクロン、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、粒径としては、約70~約95ミクロン、約70~約85ミクロン、または約70~約80ミクロンが挙げられる。
【0056】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有し得る。例えば、適切な水銀細孔容積量としては、0.30cc/g、0.35cc/g、0.40cc/g、0.45cc/g、0.50cc/g、0.56cc/g、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられる。いくつかの実施形態において、水銀細孔容積としては、0.3~0.56cc/g、0.40~0.56cc/g、または0.45~0.56cc/gの量が挙げられる。アルミナ成分が、粒状酸化アルミニウム、または非解膠性もしくは部分的にのみ解膠性の水和アルミナである場合、水銀細孔径分布は、マクロ多孔性を含む。そうではなく、アルミナが完全にまたはほぼ解膠性である場合、残油分解触媒は、マクロ多孔性をほとんどまたはまったく有さないだろう。驚くべきことに、ガスオイル供給物の残油分解を強化するために、マクロ多孔性は必要とされず、主にまたは完全に解膠性ベーマイトが効果的であることがわかった。
【0057】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒は、約100~約200m2/gのBET表面積を有し得る。例えば、BET表面積としては、約100~約200m2/g、約125~約190m2/g、または約150~約180m2/gが挙げられるが、これらに限定されることはない。また製造直後の表面積は、本発明を定義するのに有用であるが、蒸気処理された表面積は、製油所におけるそれらの価値をより示している。使用される蒸気処理条件としては、100%の蒸気中で1450F/24時間、または100%の蒸気中で1600F/4時間が挙げられ、これらは、同様の結果をもたらす。1600F/4時間の蒸気処理後、特に好ましいLa安定化アルミナは、50%の負荷で、約100m2/gの表面積をもたらす。他方で、部分的または完全に解膠性のベーマイトは、120~140m2/gの蒸気処理表面積をもたらし、Laドープガンマアルミナよりも10~20%高い比分解活性を有することが分かった。Laドープアルミナの単位表面積あたりの活性がより低いことは、サイトブロッカー(site blocker)としてのLaの役割と一致している。しかしながら、驚くべきことに、ベーマイトのコークス選択率は、許容可能であり続ける。炭酸Laは、バナジウムをトラップすることにより全体的な触媒活性を高めながら、比活性を過度に失うことなくこれらの後者の配合物に加えることが可能である。
【0058】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、ゼオライトをさらに含み得る。例えば、適切なゼオライトとしては、Yゼオライト、超安定Y、脱アルミニウムY(DeAlY)、超疎水性Y(UHPY)、脱アルミニウムシリコン濃縮ゼオライト(例えば、LZ-210)、ZSM-5、ZSM-20、ゼオライトL、天然に存在するゼオライト(例えば、フォージャサイト、モルデナイトなど)、ゼオライトベータなど、およびそれら2種以上のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、Yゼオライトまたは希土類交換Yゼオライトである。ゼオライトの量は、組成物の0~約10重量%の範囲であり得る。
【0059】
任意の実施形態によると、ゼオライトを含むように明示的に指示されない限り、残油分解触媒組成物は、ゼオライトを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよく、組成物がゼオライトを含むと明示的に示されていない限り、残油分解触媒組成物は、ゼオライトを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよい。本明細書で使用する場合、ゼオライトを「実質的に含まない」とは、残油分解触媒中に存在するゼオライトが0重量%~約10重量%であることを指す。いくつかの実施形態において、ゼオライトを実質的に含まないとは、残油分解触媒中に存在するゼオライトが、0重量%~約5重量%、0重量%~約2重量%、0重量%~約1重量%、0重量%~約0.5重量%、0重量%~約0.05重量%、または0重量%~約0.01重量%であることを含む。いくつかの実施形態において、残油分解触媒はゼオライトを含まない。例えば、残油分解触媒は、0重量%のゼオライトを有する。
【0060】
バインダー成分に関して、コロイド状シリカおよび解膠性擬ベーマイトを使用してもよく、例えば、ベーマイトについては、CatapalまたはDisperal製品を使用してもよく、またはコロイド状シリカについては、小粒径のコロイド状シリカまたはポリケイ酸を使用してもよく、前者のものは、アンモニウムポリシリケートとしても知られている。これらのコロイド種またはポリマー種については、小さな粒径が好ましいと知られている。SiO2の場合、50Å未満が好ましく、新たに調製された(ポリ)ケイ酸が最も好ましい。前述のバインダー系は、実質的にナトリウムなどを含まないという点で有利である。したがって、上記の実施形態のいずれかにおいて、組成物は、ナトリウムを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよい。本明細書で使用する場合、ナトリウムを実質的に含まないとは、組成物が0.5重量%未満のナトリウムを含むことを指す。硫酸中でケイ酸ナトリウムとミョウバンとを迅速に混合することにより調製されたアルミニウム安定化コロイド状シリカでFCC触媒を結合することも当技術分野においてよく知られているが、この系は、ナトリウムを含むため、あまり好ましくないものの、シリカを含むため、最も好ましい組成物と同等に機能することが期待され得る。
【0061】
より一般的には、好ましいバインダー系はナトリウムを含まないため、イオン交換および他のプロセスを回避することができ、(か焼された)噴霧乾燥生成物が最終生成物である。これは、本発明の触媒が、接触分解で一般的に使用される他の公知の機能を組み込むための有用な媒体であることを意味する。したがって、希土類系またはアルカリ土類系のバナジウムトラップを少量、または耐火性酸化物に担持された貴金属CO酸化もしくはNOx還元触媒を少量、および放出制御用のモノリス担体へのウォッシュコーティングですでに知られている酸素貯蔵化合物を少量、または公知のSOx酸化または吸着剤を少量、現在の配合物にすべて添加して、当業者により期待される結果を得ることができる。
【0062】
別の態様において、本明細書において任意の実施形態に記載の残油分解触媒を製作する方法が提供される。残油分解触媒を製作する方法は、乾燥重量基準で、アルミナ約30~約60重量%と、希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥してミクロスフェアを得ることと、を含む。これらの方法では、ドーパントをアルミナ上にドープすることができる。
【0063】
本明細書に記載の方法は、本明細書において実施形態に記載のように、アルミナと、希土類炭酸塩と、反応性シリカと、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、カオリンと、を含む水性スラリーを形成することを含む。例えば、水性スラリーを形成することは、耐摩耗性を改善するためにアルミナを湿式粉砕することを含み得る。
【0064】
他の粒状成分も粉砕してもよい。粒状成分の組み合わせを事前に混合し、その後、まとめて粉砕してもよい。いくつかの実施形態において、適切な粉砕粒径の目標は、3ミクロン未満で90%を含む。一般的に、ギブサイト、バイヤライト、か焼アルミナは、容易に粉砕される。解膠性または部分解膠性ベーマイトは、粉砕が困難または不必要な場合がある。いくつかの実施形態において、ベーマイトまたは擬ベーマイトの解膠は、90%が3ミクロン未満であることを含むが、これに限定されることはない粒径目標に達する。いくつかの実施形態において、個々の成分を製作し、まとめてまたは別々に粉砕し、酸性pHにて任意の順序で簡単に混合してもよい。いくつかの実施形態において、方法は、コロイド状SiO2を最後に添加することを含む。例えば、コロイド状SiO2は、塩基性pHを有していてもよく、したがって、スラリー中の解膠アルミナと反応することができる。いくつかの場合において、SiO2により混合物の全体的なpHが上昇すると、スラリーが粘稠化してゲル化することがある。いくつかの実施形態において、コロイド状SiO2は、Nalco2326SiO2であり、解膠性ベーマイトは、PB-950CatapalAまたはCatapalBである。
【0065】
いくつかの実施形態において、形成は、酸性pH条件で実施される。いくつかの実施形態において、形成は、約pH5、約pH4、約pH3、約pH2.5、約pH2、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲で実施される。
【0066】
いくつかの実施形態において、水性スラリーの形成は、少なくとも約10℃の温度で実施される。例えば、適切な温度としては、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、もしくは100℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0067】
水性スラリーの形成に続いて、この方法は、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることを含む。いくつかの実施形態において、ミクロスフェアは、本明細書において任意の実施形態に記載のように、粒径、BET表面積、および/または水銀細孔容積を含む。例えば、ミクロスフェアは、約70~約95ミクロンの粒径、約100~約200m2/gのBET表面積、および0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を含む。
【0068】
本明細書に記載の方法は、ミクロスフェアの静的なか焼をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃~約850℃の温度で実施される。ミクロスフェアをか焼するための適切な温度としては、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃、500℃、525℃、550℃、575℃、600℃、625℃、650℃、675℃、700℃、725℃、750℃、775℃、800℃、825℃、もしくは850℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の温度で行われる。
【0069】
いくつかの実施形態において、静的なか焼は、少なくとも約15分(「分」)にわたり実施される。例えば、か焼に適した期間としては、少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約15分~約5時間、約45分~約3時間、または約1時間~約2時間にわたり実施される。
【0070】
いくつかの実施形態において、か焼は、回転式か焼炉内で実施される。回転か焼は、約1分~約1時間の滞留時間を含み得る。例えば、適切な回転か焼滞留時間としては、約1分~約1時間、約5分~約30分、約10分~約20分が挙げられるが、これらに限定されることはない。回転か焼は、静的なか焼について本明細書に記載されている温度で実施することが可能である。例えば、適切な回転か焼温度は、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃であり得る。
【0071】
別の関連する態様において、前述の供給物を残油分解触媒と接触させることを含む、炭化水素供給物を分解する方法が提供される。任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒のいずれも、炭化水素供給物の接触分解に使用することができる。
【0072】
炭化水素供給物を分解する方法は、該炭化水素供給物を、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定して希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む残油分解触媒と接触させることを含む。
【0073】
本明細書に記載の方法による炭化水素供給物の分解は、残油分解触媒を含まない同等の物理的特性を有する触媒と供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で、少なくとも10%低いコークス収率をもたらす。
【0074】
いくつかの実施形態において、炭化水素供給物を分解する方法は、ゼオライトを含まない残油分解触媒を含む。
【0075】
別の態様において、残油分解触媒組成物は、希土類交換Yゼオライトを含む。そのような実施形態において、希土類元素は、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物であり得る。組成物は、希土類交換Yゼオライトの約10~約20重量%と、シリカおよびベーマイトを含むバインダーの約10~約30重量%と、アルミナおよび任意で結晶性ベーマイトを含む添加剤の約30~約60重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含み得る。
【0076】
残油分解触媒組成物は、アルミナ約30~約60重量%を含む。これは、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、アルミナの量は、約30~約60重量%、約35~約55重量%、約40~約55重量%、または約45~約55重量%を含む。適切な種類のアルミナとしては、γ-Al2O3、η-Al2O3、δ-Al2O3、θ-Al2O3、κ-Al2O3、およびそれらのいずれか2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0077】
いくつかの実施形態において、残油分解触媒組成物は、反応性シリカ約2~約20重量%を含む。例えば、反応性シリカの適切な量としては、約2~約20重量%、約5~15重量%、または約7~約12重量%が挙げられるが、これらに限定されることはない。反応性シリカの適切な種類としては、コロイド状シリカ、沈降SiO2、SiO2ゲル、揮発可能な高表面積シリカ、またはそれら2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。理論に縛られるものではないが、反応性シリカは、ブレンステッド酸部位を生成するのに必要なSiをもたらす一方で、コークスを製作するルイス酸部位を低減または排除すると考えられている。
【0078】
残油分解触媒組成物は、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分を約3重量%~約20重量%含む。いくつかの実施形態において、成分は、コロイド状シリカおよび解膠性ベーマイトである。成分の適切な量としては、約3重量%、約5重量%、約7重量%、約10重量%、約12重量%、約15重量%、約18重量%、約20重量%、またはこれらの値のいずれかの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、この成分は、約3~約18重量%、約5~約15重量%、約7~約12重量%の量で存在する。
【0079】
残油分解触媒組成物は、カオリンの約10重量%~約50重量%を含む。例えば、カオリンの適切な量としては、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、存在するカオリンの量は、約10~約50重量%、約15~約45重量%、または約20~約30重量%を含む。いくつかの実施形態において、カオリンは、メタカオリン(脱ヒドロキシル化に関連する強い吸熱反応を受けるようにか焼されたカオリン)と、カオリンをメタカオリンに転化させるために使用される条件よりも厳しい条件下でか焼されたカオリン、すなわち、スピネル型か焼カオリンと称されることもある、特徴的なカオリン発熱反応を受けるようにか焼されたカオリンとを含む。
【0080】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、約70~約95ミクロンの平均粒径を有する。例えば、適切な粒径としては、約70ミクロン、約75ミクロン、約80ミクロン、約85ミクロン、約90ミクロン、約95ミクロン、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、粒径としては、約70~約95ミクロン、約70~約85ミクロン、または約70~約80ミクロンが挙げられる。
【0081】
任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒組成物は、4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有し得る。例えば、適切な水銀細孔容積量としては、0.30cc/g、0.35cc/g、0.40cc/g、0.45cc/g、0.50cc/g、0.56cc/g、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられる。いくつかの実施形態において、水銀細孔容積としては、0.3~0.56cc/g、0.40~0.56cc/g、または0.45~0.56cc/gの量が挙げられる。
【0082】
残油分解触媒が希土類交換Yゼオライトを含む場合、触媒は、約200~約350m2/gのBET表面積を有し得る。例えば、BET表面積としては、約220~約320m2/g、約225~約310m2/g、または約230~約300m2/gが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0083】
バインダー成分に関して、コロイド状シリカおよび解膠性擬ベーマイトを使用してもよく、例えば、ベーマイトについては、CatapalまたはDisperal製品を使用してもよく、またコロイド状シリカについては、小粒径のコロイド状シリカまたはポリケイ酸を使用してもよく、前者のものは、アンモニウムポリシリケートとしても知られている。これらのコロイド種またはポリマー種については、小さな粒径が好ましいと知られている。SiO2の場合、50Å未満が好ましく、新たに調製された(ポリ)ケイ酸が最も好ましい。前述のバインダー系は、実質的にナトリウムなどを含まないという点で有利である。したがって、上記の実施形態のいずれかにおいて、組成物は、ナトリウムを実質的に含んでいなくても、または含んでいなくてもよい。本明細書で使用する場合、ナトリウムを実質的に含まないとは、組成物が0.5重量%未満のナトリウムを含むことを指す。硫酸中でケイ酸ナトリウムとミョウバンとを迅速に混合することにより調製されたアルミニウム安定化コロイド状シリカでFCC触媒を結合することも当技術分野においてよく知られているが、この系は、ナトリウムを含むため、あまり好ましくないものの、シリカを含むため、最も好ましい組成物と同等に機能することが期待され得る。
【0084】
より一般的には、好ましいバインダー系はナトリウムを含まないため、イオン交換および他のプロセスを回避することができ、(か焼された)噴霧乾燥生成物が最終生成物である。これは、本発明の触媒が、接触分解で一般的に使用される他の公知の機能を組み込むための有用な媒体であることを意味する。したがって、希土類系またはアルカリ土類系のバナジウムトラップを少量、または耐火性酸化物に担持された貴金属CO酸化もしくはNOx還元触媒を少量、および放出制御用のモノリス担体へのウォッシュコーティングですでに知られている酸素貯蔵化合物を少量、または公知のSOx酸化または吸着剤を少量、現在の配合物にすべて添加して、当業者により期待される結果を得ることができる。
【0085】
別の態様において、本明細書において任意の実施形態に記載の残油分解触媒を製作する方法が提供される。残油分解触媒を製作する方法は、乾燥重量基準で、アルミナ約30~約60重量%と、希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、カオリンの約10~約50重量%と、を含む水性スラリーを形成することと、水性スラリーを噴霧乾燥してミクロスフェアを得ることと、を含む。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0086】
本明細書に記載の方法は、本明細書において実施形態に記載のように、アルミナと、希土類炭酸塩と、反応性シリカと、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分と、カオリンとを含む水性スラリーを形成することを含む。例えば、水性スラリーを形成することは、耐摩耗性を改善するためにアルミナを湿式粉砕することを含み得る。
【0087】
他の粒状成分も粉砕してもよい。粒状成分の組み合わせを事前に混合し、その後、まとめて粉砕してもよい。いくつかの実施形態において、適切な粉砕粒径の目標は、3ミクロン未満で90%を含む。一般的に、ギブサイト、バイヤライト、か焼アルミナは、容易に粉砕される。解膠性または部分解膠性ベーマイトは、粉砕が困難または不必要な場合がある。いくつかの実施形態において、ベーマイトまたは擬ベーマイトの解膠は、90%が3ミクロン未満であることを含むが、これに限定されることはない粒径目標に達する。いくつかの実施形態において、個々の成分を製作し、まとめてまたは別々に粉砕し、酸性pHにて任意の順序で簡単に混合してもよい。いくつかの実施形態において、方法は、コロイド状SiO2を最後に添加することを含む。例えば、コロイド状SiO2は、塩基性pHを有していてもよく、したがって、スラリー中の解膠アルミナと反応することができる。いくつかの場合において、SiO2により混合物の全体的なpHが上昇すると、スラリーが粘稠化してゲル化することがある。いくつかの実施形態において、コロイド状SiO2は、Nalco2326SiO2であり、解膠性ベーマイトは、PB-950CatapalAまたはCatapalBである。
【0088】
いくつかの実施形態において、形成は、酸性pH条件で実施される。いくつかの実施形態において、形成は、約pH5、約pH4、約pH3、約pH2.5、約pH2、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲で実施される。
【0089】
いくつかの実施形態において、水性スラリーの形成は、少なくとも約10℃の温度で実施される。例えば、適切な温度としては、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、もしくは100℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0090】
水性スラリーの形成に続いて、この方法は、水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることを含む。いくつかの実施形態において、ミクロスフェアは、本明細書において任意の実施形態に記載のように、粒径、BET表面積、および/または水銀細孔容積を含む。例えば、ミクロスフェアは、約70~約95ミクロンの粒径、約100~約200m2/gのBET表面積、および0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を含む。残油分解触媒が希土類交換Yゼオライトを含む場合、触媒は、約200~約350m2/gのBET表面積を有し得る。例えば、BET表面積としては、約220~約320m2/g、約225~約310m2/g、または約230~約300m2/gが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0091】
本明細書に記載の方法は、ミクロスフェアの静的なか焼をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃~約850℃の温度で実施される。ミクロスフェアをか焼するための適切な温度としては、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約400℃、500℃、525℃、550℃、575℃、600℃、625℃、650℃、675℃、700℃、725℃、750℃、775℃、800℃、825℃、もしくは850℃、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲の温度で行われる。
【0092】
いくつかの実施形態において、静的なか焼は、少なくとも約15分(「分」)にわたり実施される。例えば、か焼に適した期間としては、少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、か焼は、約15分~約5時間、約45分~約3時間、または約1時間~約2時間にわたり実施される。
【0093】
いくつかの実施形態において、か焼は、回転式か焼炉内で実施される。回転か焼は、約1分~約1時間の滞留時間を含み得る。例えば、適切な回転か焼滞留時間としては、約1分~約1時間、約5分~約30分、約10分~約20分が挙げられるが、これらに限定されることはない。回転か焼は、静的なか焼について本明細書に記載されている温度で実施することが可能である。例えば、適切な回転か焼温度は、約400℃~約850℃、約480℃~約740℃、約500℃~約650℃、または約600℃~約700℃であり得る。
【0094】
別の関連する態様において、該供給物を残油分解触媒と接触させることを含む、炭化水素供給物を分解する方法が提供される。任意の実施形態における本明細書に記載の残油分解触媒のいずれも、炭化水素供給物の接触分解に使用することができる。
【0095】
炭化水素供給物を分解する方法は、前述の炭化水素供給物を、アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定して希土類炭酸塩0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分約3~約20重量%と、カオリン約10~約50重量%とを含む残油分解触媒と接触させることを含む。
【0096】
本明細書に記載の方法による炭化水素供給物の分解は、残油分解触媒を含まない同等の物理的特性を有する触媒と供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で、少なくとも10%低いコークス収率をもたらす。
【0097】
このように一般的に記載された本技術は、説明として設けられ、かつ本技術を限定することを意図しない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるだろう。
【実施例】
【0098】
例1.サンプル触媒(A-E)を、以下の通りにアルミナ充填ラダーとして調製した:ランタンで安定化させられたアルミナマトリックスを、90%が約3μm未満になるように湿式粉砕し、その後、それぞれ揮発分不含(VF)ベースで、15重量%のVFコロイド状SiO
2ゾルおよび6.5%のVF解膠擬似ベーマイトバインダー系を用いて噴霧乾燥させた。配合のバランスを、表1に示すように、アルファアルミナおよびカオリンで整えた。アルミナを、pH調整なしで粉砕したが、いくつかの場合において、粘度を下げるために、粉砕後に4~5のpHに調整した。擬似ベーマイトの解膠を、数時間または好ましくは一晩のエージング期間で、製造業者の指示に従って実施した。市販のコロイド状シリカをそのまま使用し、合したスラリーに、最後の成分としてゆっくりと添加した。他の成分を、表1に記載の順序で合した。噴霧乾燥を、約20重量%のスラリー固形物を用いて、圧力噴霧式単一流体ノズル乾燥機で実施した。サンプル触媒を1300°Fでか焼し、1450°Fで24時間にわたり蒸気失活させた。例示的な触媒A~Eの配合および特性は、表1に記載されている。代替的な不活性カオリン活性調整ミクロスフェアについて一般的な特性を有する比較用触媒(F)を、上記の手順に従って調製した。サンプルC、D、およびEは、許容可能なかさ密度および耐摩耗性とともに、高い表面積を示した。
【表1】
【0099】
例2.触媒ブレンドの触媒評価。触媒ブレンドの触媒評価を、触媒ブレンドのバルクの物理的および化学的特性のみの修正が触媒性能に及ぼす影響を評価するために行った。表2は、実施例1に記載の残油分解触媒組成物(サンプルD)を含む例示的な触媒ブレンドについてのACE試験の配合を示す。サンプルDを、他の粘土ベースのインサイチュゼオライト成分のより低いSZ/Mに適合するように、比較的高い蒸気処理ZSA/MSA(SZ/M)の市販の粘土ベースのインサイチュゼオライト成分とブレンドした。SZ/Mの目標が0.25である場合、粘土ベースのインサイチュ制御は利用できなかったため、比較用のブレンド5は、44%のサンプルDも含み、対応する実施例のブレンド6は、78%のサンプルDを含んでいた。すべての触媒を、個別に1450°Fで24時間にわたり蒸気処理し、その後、ACE試験について説明したようにブレンドした。これらのブレンドを、一定の総表面積(TSA)、ABD、および3つのレベルのSZ/Mで製造した(表2)。粘土ベースのインサイチュゼオライト成分のみが、ゼオライトを含んでいた。より高い密度(粘土MS、表1の比較F)およびより低い密度の不活性カオリン活性調整ミクロスフェアを使用して、混ざった表面積およびかさ密度を均一化した。ブレンドの特性が非常によく適合しているため、性能の違いが見られたら驚くべきことであろう。
【表2】
【0100】
実施例および比較用の触媒ブレンドを、高度触媒評価(ACE)流動床を使用して評価した。
図1は、実施例の触媒ブレンド(ブレンド2、4、および6)および比較用の触媒ブレンド(1、3、および5)がほぼ同じ活性を有することを示す。表3のACEの結果は、比較例と比較して、実施例の組成物について、残油が一定の場合、11~24%のコークスの低減を示す。具体的には、サンプルD触媒を有する実施例の触媒ブレンド(実施例1)は、13重量%、17重量%、および20重量%の残油収率の場合、比較用の触媒ブレンドよりも、11%、24%、および15%低いコークス選択率を示した(
図2)。
図2および表3は、SZ/Mが変わると触媒の活性が変わるため、さまざまな残油転化率での相対的なコークス低減をさらに示す。蒸気処理単位セルサイズ(SUCS)は、比較用のブレンド1、ならびに実施例のブレンド4および6(24.33Å)、ならびに比較用のブレンド3(24.32Å)で同等であったが、実施例ブレンド2(24.27Å)については差異を示した。SUCSが低いことは、ゼオライト活性が低く、それにより、Z/M活性比が押し下げられ、コークス選択率が増加し得ることを示す。そのため、実施例のブレンド2と比較用のブレンド1との間のSUCSのこの差異は、利益の差異がより小さいことを説明している。
【0101】
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、および
図8は、さまざまな生成物であるLCO、H
2、乾燥ガス、液化石油ガス(LPG)、およびガソリンの収率をそれぞれ示す。図に見られるように、サンプルDを有する実施例触媒ブレンド(ブレンド2、4、および6)は、ガソリン生成を2%まで増加させ、LPG、H
2、および乾燥ガスの生成を減少させた。
図7は、比較用のブレンド(ブレンド1、3、および5)について、SZ/Mが減少するにつれてコークスが体系的に増加することを示す。現在の技術の触媒を使用すると、コークスの増加は、より少ない。言い換えると、例示的な触媒ブレンド(2、4、および6)は、コークス選択率が改善されているため、一定のコークスおよびSZ/Mで、転化率を増加させる。
図8は、2.5重量%の一定のコークス収率の場合、残油転化率に対するLCO生成の比が2%(Z/M=1.06)、15%(Z/M=0.5)、および12%(Z/M=0.25)増加することを示す。
【表3】
【0102】
例3.希土類炭酸塩を有し、ゼオライトを有しない残油触媒配合物。以下の表は、残油触媒を形成するための材料範囲を示す。
【表4】
【0103】
例4.希土類交換Yゼオライトをベースとする残油触媒配合物。
【表5】
【0104】
項目A1.アルミナ約30~約60重量%と、酸化物として測定して、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパント0超~約10重量%と、反応性シリカ約2~約20重量%と、解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分約3~約20重量%と、カオリン約10~約50重量%とを含む、残油分解触媒組成物。いくつかの実施形態において、ドーパントはアルミナ上にドープされているが、他の実施形態において、ドーパントはアルミナと混合されている。さらに、アルミナは、いくつかの実施形態において、か焼アルミナであってもよい。
【0105】
項目A1.項目A1に記載の触媒であって、ドーパントが、酸化物として測定して、組成物の約0.1~約5重量%の量で存在する、項目A1に記載の触媒。
【0106】
項目A3.ドーパントが、約4重量%の量で存在する、項目A1またはA2のいずれか一項に記載の触媒。
【0107】
項目A4.ドーパントが、ランタンを含む、項目A1に記載の触媒。
【0108】
項目A5.ドーパントが、アルミナに含浸されるか、またはアルミナ上にコーティングされるか、またはアルミナと共沈される、項目A1~A4のいずれか一項に記載の触媒。
【0109】
項目A6.約70~95ミクロンの平均粒径を有する、項目A1~A5のいずれか一項に記載の触媒。
【0110】
項目A7.4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する、項目A1~A6のいずれか一項に記載の触媒。
【0111】
項目A8.組成物中にゼオライトをさらに含む、項目A1~A7のいずれか一項に記載の触媒。
【0112】
項目A9.ゼオライトが、Yゼオライトである、項目A8に記載の触媒。
【0113】
項目A10.ゼオライトを含まない、項目A1~A8のいずれか一項に記載の触媒。
【0114】
項目A10a.アルミナが、か焼アルミナである、項目A1~A10のいずれか一項に記載の触媒。
【0115】
項目A11.残油分解触媒を製作する方法であって、
乾燥重量ベースで、
アルミナ約30~約60重量%と、
酸化物として測定して、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパントの0超~約10重量%と、
反応性シリカ約2~約20重量%と、
解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、
カオリンの約10~約50重量%と、を含有する水性スラリーを形成することと、
水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む、方法。
【0116】
項目A12.ミクロスフェアをか焼することをさらに含む、項目A11に記載の方法。
【0117】
項目A13.炭化水素供給物を分解する方法であって、該供給物と、ゼオライト成分および残油分解触媒を含む流動接触分解(FCC)触媒とを接触させることを含み、残油分解触媒が、
アルミナ約30~約60重量%と、
アルミナに対し酸化物として測定して、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、バリウム、マグネシウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含むドーパントの0超~約10重量%と、
反応性シリカ約2~約20重量%と、
解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、
カオリンの約10~約50重量%と、を含む、方法。
【0118】
項目A14.触媒が、酸化物として測定して、約0.1~約5重量%の量のドーパントを含む、項目A13に記載の方法。
【0119】
項目A15.希土類元素が、ランタンを含む、項目A13に記載の方法。
【0120】
項目A16.方法が、残油分解触媒を含まない同じ物理的特性を有する触媒と供給物とを接触させる場合と比較して、残油13重量%で測定して、コークス収率が10%超低くなる、項目A13~1A5のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
項目A17.ゼオライトが、Yゼオライトを含む、項目A13~1A6のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
項目A19.項目A13~A16のいずれか1つに記載の方法であって、FCC触媒が、残油分解触媒の少なくとも15重量%を含む、項目A13~A16のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
項目A20.FCC触媒が、ゼオライト成分の少なくとも50重量%を含む、項目A19に記載の方法。
【0124】
項目A21.FCC触媒が、残油分解触媒の15重量%~50重量%を含む、またはFCC触媒が、ゼオライト成分の85重量%~50重量%を含む、項目A13~A16のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
項目A22.FCC触媒が、残油分解触媒の15重量%~80重量%と、ゼオライトの85重量%~20重量%と、任意で他の粘土ベースの成分と、を含む、項目A13~A16のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
項目A23.FCC触媒が、バナジウムトラップまたは結晶性ベーマイトニッケルトラップをさらに含む、項目A13~A22のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
項目A25.残油分解触媒組成物であって、
アルミナ約30~約60重量%と、
酸化物として測定して、炭酸イッテルビウム、炭酸ガドリニウム、炭酸セリウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、またはそれらのいずれか2種以上の混合物を含む希土類炭酸塩の0超~約10重量%と、
反応性シリカ約2~約20重量%と、
解膠性ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミニウムクロロヒドロール、またはそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含む成分の約3~約20重量%と、
カオリンの約10~約50重量%と、を含む、残油分解触媒組成物。
【0128】
項目A26.希土類炭酸塩が、組成物の約0.1~約5重量%の量で存在する、項目25に記載の触媒。
【0129】
項目A27.希土類炭酸塩が、約4重量%の量で存在する、項目A25またはA26のいずれか一項に記載の触媒。
【0130】
項目A28.希土類元素が、ランタンを含む、項目A25~A27のいずれか一項に記載の触媒。
【0131】
項目A29.約70~95ミクロンの平均粒径を有する、項目A25~A28のいずれか一項に記載の触媒。
【0132】
項目A30.4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する、項目A25~A29のいずれか一項に記載の触媒。
【0133】
項目A31.残油分解触媒組成物であって、
希土類交換Yゼオライトの約10~約20重量%と、
シリカおよびベーマイトを含むバインダーの約10~約30重量%と、
アルミナおよび任意で結晶性ベーマイトを含む添加剤の約30~約60重量%と、
カオリンの約10~約50重量%と、を含む、残油分解触媒組成物。
【0134】
項目A32.項目A31に記載の残油分解触媒組成物であって、希土類交換Yゼオライトが、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、またはそれら2種以上の混合物を含む、項目A31に記載の残油分解触媒組成物。
【0135】
項目A33.希土類交換Yゼオライトが、ランタンを含む、項目A31またはA32のいずれか一項に記載の残油分解触媒組成物。
【0136】
項目A34.約70~95ミクロンの平均粒径を有する、項目A31、A32またはA33のいずれか一項に記載の残油分解触媒組成物。
【0137】
項目A35.4~2,000nmの直径範囲で0.3~0.56cc/gの水銀細孔容積を有する、項目A31~A34のいずれか一項に記載の残油分解触媒組成物。
【0138】
項目A36.残油分解触媒を製作する方法であって、
乾燥重量ベースで、
希土類交換Yゼオライトの約10~約20重量%と、
シリカおよびベーマイトを含むバインダーの約10~約30重量%と、
アルミナおよび任意で結晶性ベーマイトを含む添加剤の約30~約60重量%と、
カオリンの約10~約50重量%と、を含有する水性スラリーを形成することと、
水性スラリーを噴霧乾燥させてミクロスフェアを得ることと、を含む、方法。
【0139】
項目A37.ミクロスフェアをか焼することをさらに含む、項目A36に記載の方法。
【0140】
項目A38.Yゼオライトが、希土類の約1~10重量%と交換される、項目A36またはA37に記載の方法。
【0141】
項目A39.炭化水素供給物を分解する方法であって、該供給物と、項目A31~A35のいずれか一項に記載の残油分解触媒とを接触させることを含む、方法。
【0142】
特定の実施形態を図示し説明してきたが、以下の特許請求の範囲で定義されるそのより広い態様の技術から逸脱することなく、当業者により変更および修正を加えることが可能であると理解されるべきである。
【0143】
本明細書に例示的に記載されている実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない、要素(複数可)、限定(複数可)がなくても適切に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising、including、containing)」などの用語は、限定的ではなく、拡張的に解釈されるべきである。さらに、本明細書で用いられている用語および表現は、説明的な用語として使用されるのであって、限定的な用語として使用されてはおらず、示され説明される特徴またはそれらの一部のいずれの等価物も除外する用語および表現を使用する意図はないが、特許請求された技術の範囲内でさまざまな修正が可能であると認識されている。さらに、「から実質的になる」という語句は、具体的に列挙された要素と、特許請求された技術の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないさらなる要素とを含むと理解される。「からなる」という語句は、指定されていない要素を除外する。
【0144】
本開示は、本願に記載の特定の実施形態に関して限定されるべきではない。当業者には明らかなように、その趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変更を行うことができる。本明細書に列挙されているものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および組成物は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。本開示は、そのような請求項の権利が与えられる等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的システムに限定されず、もちろん変化し得ると理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0145】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群の観点で説明される場合、当業者は、開示がまた、マーカッシュ群のいずれかの個々の員または下位群の員の観点で、それによっても説明されると認識するであろう。
【0146】
当業者に理解されるように、特に書面による説明を提供するという観点から、ありとあらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲は、ありとあらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。一覧にされた範囲は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分けられた同じ範囲を十分に説明し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、真ん中3分の1、上3分の1に簡単に分けることが可能である。当業者によっても理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの言葉はすべて、列挙された数を含み、上記のように、後に部分範囲に分けることが可能な範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は個々の員をそれぞれ含む。
【0147】
本明細書で言及されている出版物、特許出願、発行済み特許、および他の文書はすべて、個々の出版物、特許出願、発行済み特許、または他の文書がそれぞれ、参照によりその全体が組み込まれると具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた文章に含まれる定義は、これらが本開示の定義と矛盾する場合、除外される。
【0148】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。