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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】車両用合わせガラス及び車両
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240701BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240701BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240701BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240701BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/00 H
B32B17/10
B32B7/023
B32B27/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020542347
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011866
(87)【国際公開番号】W WO2020203278
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019065478
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野原 敦
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/200108(WO,A1)
【文献】特開2010-180090(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025937(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/176813(WO,A1)
【文献】特開2016-069259(JP,A)
【文献】特開2012-218972(JP,A)
【文献】国際公開第2011/019062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
B60J 1/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用合わせガラスであって、
車外側に配置される第1の合わせガラス部材と、
車内側に配置される第2の合わせガラス部材と、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備え、
前記中間膜は、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有し、
前記中間膜において、前記赤外線反射層は前記着色層よりも前記第2の合わせガラス部材側に配置されており、かつ、前記着色層は前記赤外線反射層よりも前記第1の合わせガラス部材側に配置されており、
下記の第1の構成を満たす、車両用合わせガラス。
第1の構成:前記着色層を2枚のクリアガラスの間に挟み込んで積層体を得たときに、前記着色層は、以下の構成Aと以下の構成Bとの双方を満たす層であり、前記着色層に含まれる前記着色剤が、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、又はグラフェンを含む。
構成A:前記積層体の波長650nmでの吸光度をA650とし、前記積層体の波長550nmでの吸光度をA550とし、前記積層体の波長450nmでの吸光度をA450としたときに、A650/A550の値、A650/A450の値及びA550/A450の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である。
構成B:前記積層体の可視光線透過率が82%以下である
【請求項2】
下記の第2の構成を満たす、請求項に記載の車両用合わせガラス。
第2の構成:前記着色層が前記着色剤としてカーボンブラックを含む。
【請求項3】
前記着色層が熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項4】
前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む樹脂層を有し、
前記中間膜において、前記樹脂層は前記赤外線反射層よりも前記第2の合わせガラス部材側に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項5】
車両用合わせガラスの波長650nmでの吸光度をA650’とし、車両用合わせガラスの波長550nmでの吸光度をA550’とし、車両用合わせガラスの波長450nmでの吸光度をA450’としたときに、車両用合わせガラスの全平面積100%中、A650’/A550’の値、A650’/A450’の値及びA550’/A450’の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である部分の平面積が30%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項6】
車両用合わせガラスの波長650nmでの吸光度をA650’とし、車両用合わせガラスの波長550nmでの吸光度をA550’とし、車両用合わせガラスの波長450nmでの吸光度をA450’としたときに、車両用合わせガラスの縦方向における中央の位置かつ横方向における中央の位置におけるA650’/A550’の値、A650’/A450’の値及びA550’/A450’の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項7】
湾曲した凸表面を有し、
前記湾曲した凸表面が前記第1の合わせガラス部材の外側の表面である、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項8】
車両本体と、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用合わせガラスとを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間膜を用いた車両用合わせガラスに関する。また、本発明は、上記車両用合わせガラスを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
車両に用いられる合わせガラスには、高い遮熱性が求められる。遮熱性を高めるために、赤外線反射層を備える中間膜が用いられることがある。
【0004】
下記の特許文献1,2には、2枚の合わせガラス部材の間に中間膜が配置された合わせガラスが記載されている。上記中間膜は、赤外線反射層と、有機色素であるシアニン系化合物を含む樹脂層とを有する。また、特許文献2には、該合わせガラスにおける赤外線反射層が外部空間側に位置するように、かつ該合わせガラスにおける樹脂層が内部空間側に位置するように、合わせガラスが取り付けられることが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/200108A1
【文献】WO2014/021406A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する中間膜を備える合わせガラスでは、合わせガラスの表面で光が反射した際に、反射色が赤褐色や虹色等に色づくことがある。特に、背景の色が暗い環境で合わせガラスが用いられた場合には、反射色の色づきがより強調される。また、特に、合わせガラスに水滴が付着した場合等には、反射色の色づきによって、水滴の色づきが強調される。この結果、合わせガラスの美観が損なわれることがある。なお、このような反射色の色づきは、一般的に赤外線反射層を有しない中間膜を備える合わせガラスにおいては課題とならず、赤外線反射層を有する中間膜を備える合わせガラスにおいては大きな課題となる。このような反射色の色づきの課題は、赤外線反射層を有する中間膜を備える合わせガラスにおける特有の課題である。
【0007】
本発明の目的は、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する中間膜を備える合わせガラスにおいて、反射色の色づきを抑えることができる車両用合わせガラスを提供することである。また、本発明は、上記車両用合わせガラスを備える車両を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、車両用合わせガラスであって、車外側に配置される第1の合わせガラス部材と、車内側に配置される第2の合わせガラス部材と、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備え、前記中間膜は、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有し、前記中間膜において、前記赤外線反射層は前記着色層よりも前記第2の合わせガラス部材側に配置されており、かつ、前記着色層は前記赤外線反射層よりも前記第1の合わせガラス部材側に配置されており、下記の第1の構成又は下記の第2の構成を満たす、車両用合わせガラス(本明細書において、「車両用合わせガラス」を「合わせガラス」と略記することがある)が提供される。
【0009】
第1の構成:前記着色層を2枚のクリアガラスの間に挟み込んで積層体を得たときに、前記着色層は、以下の構成Aと以下の構成Bとの双方を満たす層である。
【0010】
構成A:前記積層体の波長650nmでの吸光度をA650とし、前記積層体の波長550nmでの吸光度をA550とし、前記積層体の波長450nmでの吸光度をA450としたときに、A650/A550の値、A650/A450の値及びA550/A450の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である。
【0011】
構成B:前記積層体の可視光線透過率が82%以下である。
【0012】
第2の構成:前記着色層が前記着色剤としてカーボンブラックを含む。
【0013】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスは、前記第1の構成を満たす。
【0014】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスは、前記第2の構成を満たす。
【0015】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記着色層が熱可塑性樹脂を含む。
【0016】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む樹脂層を有し、前記中間膜において、前記樹脂層は前記赤外線反射層よりも前記第2の合わせガラス部材側に配置されている。
【0017】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、車両用合わせガラスの波長650nmでの吸光度をA650’とし、車両用合わせガラスの波長550nmでの吸光度をA550’とし、車両用合わせガラスの波長450nmでの吸光度をA450’としたときに、車両用合わせガラスの全平面積100%中、A650’/A550’の値、A650’/A450’の値及びA550’/A450’の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である部分の平面積が30%以上である。
【0018】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、車両用合わせガラスの波長650nmでの吸光度をA650’とし、車両用合わせガラスの波長550nmでの吸光度をA550’とし、車両用合わせガラスの波長450nmでの吸光度をA450’としたときに、車両用合わせガラスの縦方向における中央の位置かつ横方向における中央の位置におけるA650’/A550’の値、A650’/A450’の値及びA550’/A450’の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である。
【0019】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスは、湾曲した凸表面を有し、前記湾曲した凸表面が前記第1の合わせガラス部材の外側の表面である。
【0020】
本発明の広い局面によれば、車両本体と、上述した車両用合わせガラスとを備える、車両が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用合わせガラスは、車外側に配置される第1の合わせガラス部材と、車内側に配置される第2の合わせガラス部材と、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備える。本発明に係る車両用合わせガラスでは、上記中間膜は、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する。上記中間膜において、上記赤外線反射層は上記着色層よりも上記第2の合わせガラス部材側に配置されており、かつ、上記着色層は上記赤外線反射層よりも上記第1の合わせガラス部材側に配置されている。本発明に係る車両用合わせガラスは、上記の第1の構成又は上記の第2の構成を満たす。本発明に係る車両用合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する中間膜を備える合わせガラスにおいて、反射色の色づきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用合わせガラスを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る車両用合わせガラスを模式的に示す断面図である。
図3図3(a),(b),(c)及び(d)は、実施例で得られた車両用合わせガラスの観察結果を示す写真である。
図4図4(a),(b),(c),(d)及び(e)は、比較例で得られた車両用合わせガラスの観察結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明に係る車両用合わせガラス(以下、「合わせガラス」と略記することがある)は、車外側に配置される第1の合わせガラス部材と、車内側に配置される第2の合わせガラス部材と、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備える。
【0025】
本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜は、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜において、上記赤外線反射層は上記着色層よりも上記第2の合わせガラス部材側に配置されており、かつ、上記着色層は上記赤外線反射層よりも上記第1の合わせガラス部材側に配置されている。
【0026】
本発明に係る合わせガラスでは、下記の第1の構成又は下記の第2の構成を満たす。
【0027】
第1の構成:上記着色層を2枚のクリアガラスの間に挟み込んで積層体を得たときに、上記着色層は、以下の構成(A)と以下の構成(B)との双方を満たす層である。
【0028】
構成(A):上記積層体の波長650nmでの吸光度をA650とし、上記積層体の波長550nmでの吸光度をA550とし、上記積層体の波長450nmでの吸光度をA450としたときに、A650/A550の値、A650/A450の値及びA550/A450の値がそれぞれ0.6以上1.4以下である。
【0029】
構成(B):上記積層体の可視光線透過率が82%以下である。
【0030】
第2の構成:上記着色層が上記着色剤としてカーボンブラックを含む。
【0031】
本発明に係る車両用合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、赤外線を反射する赤外線反射層と、着色剤を含む着色層とを有する中間膜を備える合わせガラスにおいて、反射色の色づきを抑えることができる。本発明に係る車両用合わせガラスでは、該合わせガラスの美観性を高めることができる。
【0032】
本発明に係る車両用合わせガラスでは、背景の色が暗い環境で該合わせガラスが用いられた場合であっても、反射色の色づきを抑えることができる。また、本発明に係る車両用合わせガラスでは反射色の色づきが抑えられるので、該合わせガラスに水滴が付着した場合であっても、水滴の色づきを抑えることができる。このため、本発明に係る車両用合わせガラス及び該合わせガラスを備える車両では、夜間時や雨天時であっても、美観性を高めることができる。
【0033】
本発明に係る合わせガラスは、(車外側)第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/第2の合わせガラス部材(車内側)の構造を有する。上記中間膜は、上記赤外線反射層と、上記着色層とを有するため、少なくとも2層の構造を有する。上記中間膜は、2層以上の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜は、上記赤外線反射層と上記着色層とに加えて、熱可塑性樹脂を含む樹脂層を有していてもよい。本発明に係る合わせガラスは、例えば、(車外側)第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/樹脂層/第2の合わせガラス部材(車内側)の構造を有していてもよい。
【0034】
本発明に係る合わせガラスは、車両において、車外(外部空間)と車外から熱線が入射される車内(内部空間)との間の開口部に、上記第1の合わせガラス部材が上記車外側に位置するように取り付けることができる。この場合に、太陽光などの熱線は、赤外線反射層によって十分に反射される。このため、本発明に係る合わせガラスは、遮熱性を高めることができる。
【0035】
本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の構成又は上記第2の構成を満たす。本発明に係る合わせガラスは、上記第1の構成を満たしていてもよく、上記第2の構成を満たしていてもよく、上記第1の構成と上記第2の構成との双方を満たしていてもよい。
【0036】
本発明に係る合わせガラスが上記第1の構成を備えることにより、本発明の効果を発揮させることができる。
【0037】
上記第1の構成において、上記積層体を作製する際に用いる上記クリアガラスの厚みは、2.5mmであることが好ましい。
【0038】
上記積層体は、以下のように作製されることが好ましい。
【0039】
2枚のクリアガラスの間に着色層を挟み、圧着前積層体を得る。得られた圧着前積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、圧着前積層体を予備圧着する。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された圧着前積層体を20分間圧着し、積層体を得る。
【0040】
上記積層体を作製する際の上記着色層は、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0041】
(1)中間膜における各層間を剥離して、着色層を得る方法。なお、合わせガラスを液体窒素等で冷却した後、合わせガラス部材と中間膜とを剥離し、剥離した中間膜における各層間を剥離して、着色層を得てもよい。(2)中間膜における着色層の材料と同一の材料(組成物)を用いて、該着色層と同一の厚みを有する着色層(吸光度及び可視光線透過率測定用着色層)を作製する方法。
【0042】
上記積層体は、各吸光度及び可視光線透過率を測定するために作製される。
【0043】
反射色の色づきを抑える観点から、A650/A550(積層体の波長650nmでの吸光度の積層体の波長550nmでの吸光度に対する比)の値は、0.6以上1.4以下である。反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A650/A550(積層体の波長650nmでの吸光度の積層体の波長550nmでの吸光度に対する比)の値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0044】
反射色の色づきを抑える観点から、A650/A450(積層体の波長650nmでの吸光度の積層体の波長450nmでの吸光度に対する比)の値は、0.6以上1.4以下である。反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A650/A450(積層体の波長650nmでの吸光度の積層体の波長450nmでの吸光度に対する比)の値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0045】
反射色の色づきを抑える観点から、A550/A450(積層体の波長550nmでの吸光度の積層体の波長450nmでの吸光度に対する比)の値は、0.6以上1.4以下である。反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A550/A450(積層体の波長550nmでの吸光度の積層体の波長450nmでの吸光度に対する比)の値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0046】
反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A650(積層体の波長650nmでの吸光度)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
【0047】
反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A550(積層体の波長550nmでの吸光度)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
【0048】
反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、A450(積層体の波長450nmでの吸光度)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
【0049】
積層体の波長650nmでの吸光度、波長550nmでの吸光度、波長450nmでの吸光度は、例えば分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて測定することができる。
【0050】
反射色の色づきを抑える観点から、上記積層体の可視光線透過率は82%以下である。反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点からは、上記積層体の可視光線透過率は、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。合わせガラスの透明性を高める観点からは、上記積層体の可視光線透過率は、好ましくは1%以上、より好ましくは17%以上、更に好ましくは75%以上である。
【0051】
上記積層体の可視光線透過率は、分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、波長380nm~780nmにて測定される。
【0052】
本発明に係る合わせガラスが上記第2の構成を備えることにより、本発明の効果を発揮させることができる。すなわち、上記着色層がカーボンブラックを含むことにより、反射色の色づきを効果的に抑えることができる。
【0053】
なお、本発明に係る合わせガラスが上記第1の構成を備える場合に、上記赤外線反射層はカーボンブラックを含んでいてもよく、含んでいてなくてもよい。本発明に係る合わせガラスが上記第1の構成を備える場合に、上記着色層はカーボンブラックを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明に係る合わせガラスが上記第1の構成を備える場合に、上記着色層は、上記着色剤として、カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0054】
合わせガラスの波長650nmでの吸光度をA650’とし、合わせガラスの波長550nmでの吸光度をA550’とし、合わせガラスの波長450nmでの吸光度をA450’とする。
【0055】
合わせガラスの全平面積100%中、A650’/A550’(合わせガラスの波長650nmでの吸光度の合わせガラスの波長550nmでの吸光度に対する比)の値が0.6以上1.4以下である部分の平面積は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。上記平面積が上記下限以上であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0056】
合わせガラスの全平面積100%中、A650’/A450’(合わせガラスの波長650nmでの吸光度の合わせガラスの波長450nmでの吸光度に対する比)の値が0.6以上1.4以下である部分の平面積は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。上記平面積が上記下限以上であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0057】
合わせガラスの全平面積100%中、A550’/A450’(合わせガラスの波長550nmでの吸光度の合わせガラスの波長450nmでの吸光度に対する比)の値が0.6以上1.4以下である部分の平面積は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。上記平面積が上記下限以上であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0058】
合わせガラスは、一般に、縦方向と横方向と厚み方向とを有する。
【0059】
合わせガラスの縦方向における中央の位置かつ横方向における中央の位置におけるA650’/A550’の値は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。上記A650’/A550’は、合わせガラスの波長650nmでの吸光度の合わせガラスの波長550nmでの吸光度に対する比である。上記A650’/A550’の値が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0060】
合わせガラスの縦方向における中央の位置かつ横方向における中央の位置におけるA650’/A450’の値は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。上記A650’/A450’は、合わせガラスの波長650nmでの吸光度の合わせガラスの波長450nmでの吸光度に対する比である。上記A650’/A450’の値が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0061】
合わせガラスの縦方向における中央の位置かつ横方向における中央の位置におけるA550’/A450’の値は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。上記A550’/A450’は、合わせガラスの波長550nmでの吸光度の合わせガラスの波長450nmでの吸光度に対する比である。上記A550’/A450’の値が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層効果的に抑えることができる。
【0062】
合わせガラスの波長650nmでの吸光度、波長550nmでの吸光度、波長450nmでの吸光度は、例えば分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて測定することができる。
【0063】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0064】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0065】
図1に示す車両用合わせガラス11は、第1の合わせガラス部材1と、第2の合わせガラス部材2と、中間膜3とを有する。第1の合わせガラス部材1は、車外側に配置される合わせガラス部材である。第2の合わせガラス2は、車内側に配置される合わせガラス部材である。中間膜3は、合わせガラス用中間膜である。中間膜3の第1の表面3aに、第1の合わせガラス部材1が積層されている。中間膜3の第1の表面3aとは反対の第2の表面3bに、第2の合わせガラス部材2が積層されている。中間膜3は、赤外線反射層31と、着色層32と、樹脂層33とを有する。中間膜3は、3層の構造を有する。中間膜3において、赤外線反射層31は着色層32よりも第2の合わせガラス2側に配置されている。中間膜3において、着色層32は赤外線反射層31よりも第1の合わせガラス部材1側に配置されている。中間膜3において、樹脂層33は赤外線反射層31よりも第2の合わせガラス部材2側に配置されている。
【0066】
赤外線反射層31の第1の表面31a側に着色層32が配置されており、積層されている。赤外線反射層31の第1の表面31aとは反対の第2の表面31b側に、樹脂層33が配置されており、積層されている。中間膜3において、赤外線反射層31は中間層である。中間膜3において、着色層32及び樹脂層33はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。赤外線反射層31は、樹脂層33と着色層32との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜3は、着色層32と赤外線反射層31と樹脂層33とがこの順で積層された多層構造(着色層32/赤外線反射層31/樹脂層33)を有する。
【0067】
中間膜3は、第1の合わせガラス部材1と第2の合わせガラス部材2との間に配置されており、挟み込まれている。
【0068】
着色層32の外側の表面32aに第1の合わせガラス部材1が配置されており、積層されている。樹脂層33の外側の表面33aに第2の合わせガラス部材2が配置されており、積層されている。
【0069】
車両用合わせガラス11は、(車外側)第1の合わせガラス部材1/着色層32/赤外線反射層31/樹脂層33/第2の合わせガラス部材2(車内側)の構造を有する。
【0070】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る車両用合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0071】
図2に示す車両用合わせガラス11Aは、第1の合わせガラス部材1と、第2の合わせガラス部材2と、中間膜3Aとを有する。第1の合わせガラス部材1は、車外側に配置される合わせガラス部材である。第2の合わせガラス2は、車内側に配置される合わせガラス部材である。中間膜3Aは、合わせガラス用中間膜である。中間膜3Aの第1の表面3Aaに、第1の合わせガラス部材1が積層されている。中間膜3Aの第1の表面3Aaとは反対の第2の表面3Abに、第2の合わせガラス部材2が積層されている。中間膜3Aは、赤外線反射層31と、着色層32とを有する。中間膜3Aは、2層の構造を有する。中間膜3Aにおいて、赤外線反射層31は着色層32よりも第2の合わせガラス2側に配置されている。中間膜3Aにおいて、着色層32は赤外線反射層31よりも第1の合わせガラス部材1側に配置されている。
【0072】
赤外線反射層31の第1の表面31a側に着色層32が配置されており、積層されている。中間膜3Aは、着色層32と赤外線反射層31とがこの順で積層された多層構造(着色層32/赤外線反射層31)を有する。
【0073】
中間膜3Aは、第1の合わせガラス部材1と第2の合わせガラス部材2との間に配置されており、挟み込まれている。
【0074】
着色層32の外側の表面32aに第1の合わせガラス部材1が配置されており、積層されている。赤外線反射層31の第2の表面(外側の表面)31bに第2の合わせガラス部材2が配置されており、積層されている。
【0075】
車両用合わせガラス11Aは、(車外側)第1の合わせガラス部材1/着色層32/赤外線反射層31/第2の合わせガラス部材2(車内側)の構造を有する。
【0076】
なお、着色層32と赤外線反射層31との間、及び、赤外線反射層31と樹脂層33との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。着色層32と赤外線反射層31、及び、赤外線反射層31と樹脂層33とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、接着層、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0077】
以下、本発明に係る車両用合わせガラスを構成する各部材の他の詳細を説明する。
【0078】
(中間膜)
<赤外線反射層>
上記赤外線反射層は赤外線を反射する。上記赤外線反射層は、赤外線を反射する性能を有していれば特に限定されない。
【0079】
上記赤外線反射層としては、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、赤外線を反射する性能を有する。
【0080】
上記赤外線反射層は、金属箔付き樹脂フィルム、多層樹脂フィルム又は液晶フィルムであることが特に好ましい。これらのフィルムは、赤外線の反射性能にかなり優れている。従って、これらのフィルムの使用により、遮熱性がより一層高く、高い可視光線透過率をより一層長期間に渡り維持できる合わせガラスが得られる。
【0081】
上記金属箔付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの外表面に積層された金属箔とを備える。上記樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。上記金属箔の材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、パラジウム、及びこれらを含む合金等が挙げられる。
【0082】
上記樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルムは、樹脂層(樹脂フィルム)に、金属層及び誘電層が交互に任意の層数で積層された多層積層フィルムである。なお、上記樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルムでは、金属層及び誘電層の全てが交互に積層されていることが好ましいが、金属層/誘電層/金属層/誘電層/金属層/金属層/誘電層/金属層のように、一部が交互に積層されていない構造部分があってもよい。
【0083】
上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料としては、上記金属箔付き樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの材料と同様の材料が挙げられる。上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリフッ化ビニリデン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナイロン6,11,12,66などのポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルイミド等が挙げられる。上記多層積層フィルムにおける上記金属層の材料としては、上記金属箔付き樹脂フィルムにおける上記金属箔の材料と同様の材料が挙げられる。上記金属層の両面もしくは片面に、金属もしくは金属の混合酸化物のコート層を付与することができる。上記コート層の材料としては、ZnO、Al、Ga、InO、MgO、Ti、NiCr及びCu等が挙げられる。
【0084】
上記多層積層フィルムにおける上記誘電層の材料としては、例えば酸化インジウム等が挙げられる。
【0085】
上記多層樹脂フィルムは、複数の樹脂フィルムが積層された積層フィルムである。上記多層樹脂フィルムの材料としては、上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料と同様の材料が挙げられる。上記多層樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの積層数は、2以上であり、3以上であってもよく、5以上であってもよい。上記多層樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの積層数は、1000以下であってもよく、100以下であってもよく、50以下であってもよい。
【0086】
上記多層樹脂フィルムは、異なる光学的性質(屈折率)を有する2種類以上の熱可塑性樹脂層が交互に又はランダムに任意の層数で積層された多層樹脂フィルムであってもよい。このような多層樹脂フィルムは、所望の赤外線反射性能が得られるように構成される。
【0087】
上記液晶フィルムとしては、任意の波長の光を反射するコレステリック液晶層を任意の層数で積層したフィルムが挙げられる。このような液晶フィルムは、所望の赤外線反射性能が得られるように構成される。
【0088】
本発明の効果を良好に発揮する観点から、上記赤外線反射層は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0089】
上記赤外線反射層が上記金属箔付き樹脂フィルムである場合には、上記金属箔付き樹脂フィルムにおける上記樹脂フィルムが上記カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0090】
上記赤外線反射層が上記樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルムである場合には、上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)が上記カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0091】
上記赤外線反射層が上記多層樹脂フィルムである場合には、上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)が上記カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0092】
<着色層及び樹脂層>
上記着色層について、並びに、上記赤外線反射層及び上記着色層の双方とは異なる樹脂層(例えば、車両用合わせガラスが、(車外側)第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/樹脂層/第2の合わせガラス部材(車内側)の構造を有する場合の該樹脂層)について説明する。
【0093】
熱可塑性樹脂:
上記着色層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記着色層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記樹脂層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記樹脂層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。
【0094】
上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記熱可塑性樹脂(1)及び上記熱可塑性樹脂(2)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(2)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0096】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材及び赤外線反射層などの他の層に対する着色層及び樹脂層の接着力がより一層高くなる。
【0097】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70モル%~99.9モル%の範囲内である。
【0098】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、着色層及び樹脂層の成形が容易になる。
【0099】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0100】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、着色層及び樹脂層のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0101】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは28モル%以上であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは32モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、着色層及び樹脂層の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、着色層及び樹脂層の柔軟性が高くなり、着色層及び樹脂層の取扱いが容易になる。
【0103】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0104】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、最も好ましくは3モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0105】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0106】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上であり、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0107】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。先ず、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算してモル分率を求める。このモル分率を百分率で示した値がアセタール化度である。
【0108】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0109】
上記中間膜中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記中間膜の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0110】
可塑剤:
着色層の接着力をより一層高める観点からは、上記着色層は、可塑剤を含むことが好ましい。樹脂層の接着力をより一層高める観点からは、上記樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましい。着色層及び樹脂層に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、着色層及び樹脂層は、可塑剤を含むことが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を含む層は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0111】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は有機エステル可塑剤であることが好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0113】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0114】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0115】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0116】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0117】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0118】
【化1】
【0119】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6~10の有機基であることが好ましい。
【0120】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0121】
上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記可塑剤を含む層(着色層又は樹脂層)において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上である。上記可塑剤を含む層(着色層又は樹脂層)において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは75重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。
【0122】
着色剤:
上記着色層は、着色剤を含む。上記樹脂層は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂層における着色剤の含有量は、上記着色層における着色剤の含有量よりも少なくてもよい。上記着色剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0123】
上記着色剤としては、顔料及び染料等が挙げられる。
【0124】
顔料と染料とは、以下のように判別される。
【0125】
ポリビニルブチラール樹脂(ポリビニルアルコールの重合度1700、水酸基の含有率30モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度69モル%)を用意する。このポリビニルブチラール樹脂100重量部と、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、得られる樹脂膜100重量%(ポリビニルブチラール樹脂と3GOと着色剤との合計量100重量%)中で0.015重量%となる量の着色剤とを混練し、混練物を得る。この混練物を押し出して、厚さ760μmの樹脂膜を得る。この樹脂膜を、JIS R3106:1998に準拠して測定された可視光線透過率が90%の2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に配置して、合わせガラスを作製する。得られる合わせガラスのヘーズ値が0.35%以上となる着色剤を顔料と定義する。ヘーズ値が0.35%未満となる着色剤は染料と定義する。
【0126】
上記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。上記有機顔料は、金属原子を有する有機顔料であってもよく、金属原子を有さない有機顔料であってもよい。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
上記有機顔料としては、フタロシアニン化合物、キナクドリン化合物、アゾ化合物、ペンタフェン化合物、ジオキサジン化合物、ペリレン化合物、インドール化合物及びジオキサジン化合物等が挙げられる。
【0128】
上記無機顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、グラフェン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化チタン等が挙げられる。
【0129】
反射色の色づきをより一層効果的に抑える観点及び上記第1の構成を満足させやすくする観点からは、上記着色層に含まれる上記着色剤は、カーボンブラックを含むことが好ましく、カーボンブラックであることがより好ましい。
【0130】
上記カーボンブラックの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下である。上記平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層抑えることができ、また、上記第1の構成を満足させやすくすることができる。
【0131】
上記平均粒子径は、重量平均粒子径を示す。上記平均粒子径は、光散乱測定装置を用いて、Arレーザーを光源として動的光散乱法により測定できる。上記光散乱測定装置としては、例えば、大塚電子社製「DLS-6000AL」等が挙げられる。
【0132】
上記樹脂層が上記着色剤を含む場合に、上記樹脂層に含まれる上記着色剤は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物、キナクドリン化合物、アゾ化合物、ペンタフェン化合物、ジオキサジン化合物、ペリレン化合物、インドール化合物又はカーボンブラックであることが好ましい。
【0133】
意匠性及びデザイン性を効果的に高め、かつ光及び熱による変色を効果的に抑える観点からは、上記樹脂層に含まれる上記着色剤は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xであることが好ましい。なお、上記成分Xは、後述の遮熱性物質にも相当する。
【0134】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0135】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0136】
遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン又はナフタロシアニンの誘導体であることが好ましく、フタロシアニン又はフタロシアニンの誘導体であることがより好ましい。
【0137】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。合わせガラスの多重像を更に一層抑え、遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0138】
上記着色層100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上、更に好ましくは0.003重量%以上、特に好ましくは0.004重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上である。上記着色層100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.04重量%以下、更に好ましくは0.03重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下、最も好ましくは0.01重量%以下である。上記着色剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層抑えることができ、また、上記第1の構成を満足させやすくすることができる。
【0139】
上記着色層100重量%中、上記カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上、更に好ましくは0.003重量%以上、特に好ましくは0.004重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上である。上記着色層100重量%中、上記カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.18重量%以下、より好ましくは0.16重量%以下、更に好ましくは0.14重量%以下、特に好ましくは0.12重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下である。上記カーボンブラックの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、反射色の色づきをより一層抑えることができ、また、上記第1の構成を満足させやすくすることができる。
【0140】
上記樹脂層が上記着色剤を含む場合に、上記樹脂層100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上、更に好ましくは0.003重量%以上、特に好ましくは0.004重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上である。上記樹脂層が上記着色剤を含む場合に、上記樹脂層100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、更に好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下である。上記着色剤の含有量が上記下限以上であると、意匠性及びデザイン性がより一層高くなる。上記着色剤の含有量が上記上限以下であると、合わせガラスを介した視認性がより一層高くなる。
【0141】
遮熱性物質:
上記着色層は、遮熱性物質を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂層は、遮熱性物質を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記着色層における遮熱性物質の含有量は、上記樹脂層における遮熱性物質の含有量よりも少なくてもよい。上記樹脂層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0142】
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。なお、上記成分Xは、上記着色剤にも相当する。
【0143】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0144】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0145】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン又はナフタロシアニンの誘導体であることが好ましく、フタロシアニン又はフタロシアニンの誘導体であることがより好ましい。
【0146】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0147】
上記成分Xを含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記成分Xを含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0148】
上記着色層は、遮熱粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂層は、遮熱粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記着色層における遮熱粒子の含有量は、上記樹脂層における遮熱粒子の含有量よりも少なくてもよい。上記樹脂層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0149】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0150】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0151】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子(CWO粒子)、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0152】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0153】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0154】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0155】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0156】
上記遮熱粒子を含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記遮熱粒子を含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0157】
金属塩:
上記着色層は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記樹脂層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。なお、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの6種の金属を意味する。上記金属塩Mの使用により、着色層又は樹脂層と赤外線反射層及び合わせガラス部材との接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0158】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記着色層中に含まれている金属塩は、K又はMgを含むことが好ましい。上記樹脂層中に含まれている金属塩は、K又はMgを含むことが好ましい。
【0159】
また、上記金属塩Mとして、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、及び炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩を用いることができる。上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0160】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0161】
上記金属塩Mを含む層(着色層、又は樹脂層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上であり、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、着色層又は樹脂層と赤外線反射層及び合わせガラス部材との接着性をより一層良好に制御できる。
【0162】
紫外線遮蔽剤:
上記着色層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0163】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0164】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0165】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0166】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤である。上記紫外線遮蔽剤は、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0167】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0168】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0169】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を遮蔽する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0170】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0171】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0172】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0173】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0174】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0175】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0176】
上記紫外線遮蔽剤を含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。上記紫外線遮蔽剤を含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、期間経過後の可視光線透過率の低下がより一層抑制される。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0177】
酸化防止剤:
上記着色層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記樹脂層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0178】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0179】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0180】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0181】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0182】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H-BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0183】
合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記酸化防止剤を含む層(着色層、又は樹脂層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0184】
他の成分:
上記着色層及び上記樹脂層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0185】
中間膜の他の詳細:
上記中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.8mm以上であり、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
【0186】
上記赤外線反射層の厚みは、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.04mm以上、更に好ましくは0.07mm以上であり、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.2mm以下、更に好ましくは0.18mm以下、特に好ましくは0.16mm以下である。上記赤外線反射層の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなる。上記赤外線反射層の厚みが上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。
【0187】
上記着色層の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.25mm以上、特に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.6mm以下、より一層好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.45mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。上記着色層の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記着色層の厚みが上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。
【0188】
上記樹脂層の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.25mm以上、特に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.6mm以下、より一層好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.45mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。上記樹脂層の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記樹脂層の厚みが上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。
【0189】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0190】
中間膜は、巻かれて、中間膜のロール体とされてもよい。ロール体は、巻き芯と、該巻き芯の外周に巻かれた中間膜とを備えていてもよい。
【0191】
上記中間膜の一端と他端との距離は、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上である。
【0192】
上記中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上述した各成分を混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。特に、上記着色層及び上記樹脂層は、押出成形により形成することが好ましい。
【0193】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。なお、上記中間膜を得る際に、着色層と赤外線反射層と樹脂層とを別々に作製した後、着色層と赤外線反射層と樹脂層とを積層して中間膜を得てもよく、着色層と赤外線反射層と樹脂層とを共押出により積層して中間膜を得てもよい。
【0194】
また、赤外線反射層の表面に、着色層及び樹脂層を形成するための組成物を塗工して、着色層及び樹脂層を形成して、中間膜を得てもよい。
【0195】
中間膜の製造効率が優れることから、着色層と樹脂層とが、同一のポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましく、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤を含むことがより好ましい。
【0196】
(第1,第2の合わせガラス部材)
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間層が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間層が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材がそれぞれガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスが、上記第1,第2の合わせガラス部材として、少なくとも1枚のガラス板を含むことが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0197】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0198】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材はそれぞれ、クリアガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましい。赤外線透過率が高く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第1の合わせガラス部材は、クリアガラスであることが好ましい。赤外線透過率が低く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第2の合わせガラス部材は、熱線吸収板ガラスであることが好ましい。熱線吸収板ガラスは、グリーンガラスであることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材が、クリアガラスであり、かつ上記第2の合わせガラス部材が熱線吸収板ガラスであることが好ましい。上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスである。
【0199】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の各厚みは、好ましくは1mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記第1,第2の合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記第1,第2の合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0200】
上記第1,第2の合わせガラス部材は、湾曲していてもよく、湾曲していなくてもよい。
【0201】
上記車両用合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70℃~110℃で予備圧着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120℃~150℃及び1MPa~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、車両用合わせガラスを得ることができる。
【0202】
(車両用合わせガラスの他の詳細)
上記車両用合わせガラスの使用時には、上記車両の開口部において、上記第1の合わせガラス部材が、車外側(外部空間側)に位置するように、かつ上記第2の合わせガラス部材が車内側(内部空間側)に位置するように、上記合わせガラスを開口部に取り付ける。
【0203】
具体的には、第1の合わせガラス部材が、車外側(外部空間側)に位置するように、かつ第2の合わせガラス部材が、車内側(内部空間側)に位置するように、合わせガラスを開口部に取り付ける。すなわち、車外/第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/(樹脂層/)第2の合わせガラス部材/車内の順に配置されるように、合わせガラスを取り付ける。上記の配置形態には、車外と第1の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれ、車内と第2の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれる。
【0204】
本発明に係る車両は、車両本体と、上述した車両用合わせガラスとを備える。上記車両用合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上記中間膜とを備える。上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。本発明に係る車両において、第1の合わせガラス部材は車外側に位置しており、かつ第2の合わせガラス部材は車内側に位置している。
【0205】
本発明に係る車両は、車両の窓ガラスとして、上記車両用合わせガラスを備えることが好ましい。
【0206】
上記車両としては、自動車、鉄道車両、航空機、及び船舶等が挙げられる。上記車両本体としては、自動車本体、鉄道車両本体、航空機本体、及び船舶本体等が挙げられる。
【0207】
上記車両用合わせガラスは、湾曲した凸表面を有していてもよく、湾曲していなくてもよい。上記車両用合わせガラスは、湾曲した凸表面を有し、該湾曲した凸表面が上記第1の合わせガラス部材の外側の表面であってもよい。この場合、上記第1の合わせガラス部材の曲率半径は、上記第2の合わせガラス部材の曲率半径よりも大きくてもよい。上記車両用合わせガラスは、一方側に湾曲した凸表面を有し、他方側に平坦な表面又は湾曲した凹表面を有することが好ましい。上記車両用合わせガラスは、一方側に湾曲した凸表面を有し、他方側に湾曲した凹表面を有することが好ましい。湾曲した凹表面が上記第2の合わせガラス部材の外側の表面であってもよい。
【0208】
上記車両用合わせガラスは、車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記車両用合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記車両用合わせガラスは、自動車の合わせガラスを得るために好適に用いられる。上記車両用合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス及びルーフガラスに好適に用いられる。
【0209】
上記フロントガラスは、湾曲した凸表面を有することがある。
【0210】
上記車両用合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイであってもよい。上記車両用合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイの表示領域を有していてもよい。
【0211】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0212】
用いたポリビニルアセタール樹脂では、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0213】
以下の材料を用意した。
【0214】
(熱可塑性樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂(PVB、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度68.5モル%)
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
(遮熱粒子)
ITO粒子
CWO粒子
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
(着色剤)
カーボンブラック(オリオン社製「FW-200カーボン」、平均粒子径1μm)
フタロシアニン化合物(大日精化工業製「シアニンブルー5029」)
インダンスレン(ドミニオン社製「クロモフタールブルーA3R」)
グラフェン(シグマアルドリッチ社製「Graphene ink」)
チタンブラック(三菱マテリアル電子化成社製「12S」)
アニリンブラック(東京色材社製「No.3アニリンブラック」)
【0215】
以下の赤外線反射層を用意した。
【0216】
(赤外線反射層)
Nano 90S(3M、超多層樹脂フィルム、住友スリーエム社製「マルチレイヤー Nano 90S」)
【0217】
以下の合わせガラス部材を用意した。
【0218】
(合わせガラス部材)
クリアガラス(厚さ2.5mm)
【0219】
(実施例1)
着色層の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、着色層を形成するための組成物を得た。
【0220】
ポリビニルアセタール樹脂(PVB、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度68.5モル%)100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部
得られる着色層中で0.008重量%となる量のカーボンブラック
得られる着色層中で0.2重量%となる量のTinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
得られる着色層中で0.2重量%となる量のBHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0221】
得られた着色層を形成するための組成物を押出機により押出して、下記の表1に示す厚み着色層を得た。
【0222】
樹脂層の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、樹脂層を形成するための組成物を得た。
【0223】
ポリビニルアセタール樹脂(PVB、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度68.5モル%)100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部
得られる樹脂層中で0.2重量%となる量のTinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
得られる樹脂層中で0.2重量%となる量のBHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0224】
得られた樹脂層を形成するための組成物を押出機により押出して、下記の表1に示す厚み着色層を得た。
【0225】
赤外線反射層、第1,第2の合わせガラス部材の準備:
赤外線反射層として、Nano 90Sを用意した。
【0226】
第1,第2の合わせガラス部材として、クリアガラス(厚さ2.5mm)を用意した。
【0227】
車両用合わせガラスの作製:
第1の合わせガラス部材と、着色層と、赤外線反射層と、樹脂層と、第2の合わせガラス部材とをこの順で積層して、第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/樹脂層/第2の合わせガラス部材の構造を有する車両用合わせガラスを得た。
【0228】
(実施例2~19)
中間膜の構成を下記の表1,2,5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/樹脂層/第2の合わせガラス部材の構造を有する車両用合わせガラスを得た。なお、実施例2~19で作製した中間膜も実施例1で作製した中間膜と同様、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を含む。
【0229】
(比較例1)
実施例1と同様にして、着色層及び樹脂層を得た。第1の合わせガラス部材と、樹脂層と、赤外線反射層と、着色層と、第2の合わせガラス部材とをこの順で積層して、第1の合わせガラス部材/樹脂層/赤外線反射層/着色層/第2の合わせガラス部材の構造を有する車両用合わせガラスを得た。なお、比較例1で作製した中間膜も実施例1で作製した中間膜と同様、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を含む。
【0230】
(比較例2~7,12,13)
中間膜の構成を下記の表3,6に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして、第1の合わせガラス部材/樹脂層/赤外線反射層/着色層/第2の合わせガラス部材の構造を有する車両用合わせガラスを得た。なお、比較例2~7,12,13で作製した中間膜も実施例1で作製した中間膜と同様、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を含む。
【0231】
(比較例8~11)
中間膜の構成を下記の表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第1の合わせガラス部材/着色層/赤外線反射層/樹脂層/第2の合わせガラス部材の構造を有する車両用合わせガラスを得た。なお、比較例8~11で作製した中間膜も実施例1で作製した中間膜と同様、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を含む。
【0232】
(評価)
(1)積層体の吸光度測定
得られた着色層及び樹脂層について、以下の手順でクリアフロートガラス/着色層/クリアフロートガラスの構造を有する積層体(1)、及び、クリアフロートガラス/樹脂層/クリアフロートガラスの構造を有する積層体(2)を作製した。
【0233】
厚み2.5mmのクリアフロートガラス2枚の間に得られた着色層を挟み、圧着前積層体を得た。得られた圧着前積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、圧着前積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された圧着前積層体を20分間圧着し、積層体(1)を得た。
【0234】
また、得られた着色層の代わりに得られた樹脂層を用いて、上記と同様の方法で積層体(2)を得た。
【0235】
得られた積層体(1),(2)の波長650nmでの吸光度(A650)、波長550nmでの吸光度(A550)、波長450nmでの吸光度(A450)を、分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて測定した。得られた各吸光度から、以下の比を算出した。
【0236】
650/A550(積層体(1),(2)の波長650nmでの吸光度の積層体(1),(2)の波長550nmでの吸光度に対する比)
650/A450(積層体(1),(2)の波長650nmでの吸光度の積層体(1),(2)の波長450nmでの吸光度に対する比)
550/A450(積層体(1),(2)の波長550nmでの吸光度の積層体(1),(2)の波長450nmでの吸光度に対する比)
【0237】
(2)積層体の可視光線透過率
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、得られた積層体(1),(2)の波長380nm~780nmにおける可視光線透過率(Visible Transmittance)を測定した。
【0238】
(3)合わせガラスの可視光線透過率
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、得られた合わせガラスの波長380nm~780nmにおける可視光線透過率(Visible Transmittance)を測定した。
【0239】
(4)日射透過率(初期Ts2500(300nm~2500nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、得られた合わせガラスの波長300nm~2500nmでの日射透過率Ts(Ts2500)を求めた。
【0240】
(5)透過色
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS Z8701:1999に準拠して、得られた合わせガラスの透過色を測定した。なお、標準光としてD65光源を用い、10度視野の条件で測定した。
【0241】
(6)反射色
分光光度計(日立ハイテク社製「U―4100」)を用いて、JIS Z8701:1999に準拠して、得られた合わせガラスの透過色を測定した。なお、標準光としてD65光源を用い、10度視野の条件で測定した。
【0242】
(7)水滴の色づき
得られた合わせガラスの第1の合わせガラス部材の外側の表面上に水を垂らした。背景の色が暗い環境及び背景の色が明るい環境において、目視にて水滴の色づきを観察した。
【0243】
[水滴の色づきの判定基準]
○:水滴の色づきが認められない
×:水滴の色づきが認められる
【0244】
図3(a),(b),(c),(d)は、実施例で得られた車両用合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(a),(b),(c),(d)は、上記判定結果が「○」である場合の観察結果を示す写真である。
【0245】
図3(a)は、実施例1で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(b)は、実施例2で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(c)は、実施例3で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(d)は、実施例10で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(a),(b),(c)は、背景の色が暗い環境において観察された合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(d)は、背景の色が明るい環境において観察された合わせガラスの観察結果を示す写真である。図3(a),(b),(c),(d)では、第1の合わせガラス部材の外側の表面上に垂らされた水滴に色づきは見られていない。
【0246】
図4(a),(b),(c),(d),(e)は、比較例で得られた車両用合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(a),(b),(c),(d),(e)は、上記判定結果が「×」である場合の観察結果を示す写真である。
【0247】
図4(a)は、比較例1で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(b)は、比較例2で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(c)は、比較例3で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(d)は、比較例4で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(e)は、比較例8で得られた合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(a),(b),(c)は、背景の色が暗い環境において観察された合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(d),(e)は、背景の色が明るい環境において観察された合わせガラスの観察結果を示す写真である。図4(a),(b),(c)では、第1の合わせガラス部材の外側の表面上に垂らされた水滴に赤褐色の色づきが見られた。図4(d),(e)では、第1の合わせガラス部材の外側の表面上に垂らされた水滴に虹色の色づきが見られた。なお、図4(a),(b),(c),(d),(e)において、色づきが見られた水滴の一部又は領域を矢印又は丸で示した。
【0248】
詳細及び結果を下記の表1~6に示す。なお、表中、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の記載は省略した。また、表中、着色剤の含有量及び遮熱粒子の含有量は、着色層又は樹脂層100重量%中での含有量である。
【0249】
【表1】
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
【0253】
【表5】
【0254】
【表6】
【0255】
なお、平坦な表面を有するクリアガラスを用いた合わせガラスについて、評価を行った。実施例の中間膜を用いて、湾曲した凸表面を有し、該湾曲した凸表面が第1の合わせガラス部材の外側の表面である合わせガラスを得た場合にも、同様の評価結果が得られる。
【符号の説明】
【0256】
1…第1の合わせガラス部材
2…第2の合わせガラス部材
3,3A…中間膜
3a,3Aa…第1の表面
3b,3Ab…第2の表面
11,11A…車両用合わせガラス
31…赤外線反射層
31a…第1の表面
31b…第2の表面
32…着色層
32a…外側の表面
33…樹脂層
33a…外側の表面
図1
図2
図3
図4