(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ミトコンドリア障害を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/26 20060101AFI20240701BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240701BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240701BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240701BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240701BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240701BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240701BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240701BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240701BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240701BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240701BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K31/26
A23L33/10
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/69
A61P3/02
A61P3/10
A61P5/14
A61P13/08
A61P15/08
A61P17/00
A61P25/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2020564788
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 US2019017150
(87)【国際公開番号】W WO2019157245
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520298905
【氏名又は名称】リウ, シャオユン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シャオユン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0243057(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0220526(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106924213(CN,A)
【文献】医学のあゆみ,2015年,Vol.254, No.5,pp.452-458
【文献】Carbohydrate Polymers,2015年,Vol.122,pp.5-10
【文献】日本甲状腺学会雑誌,2012年,Vol.3, No.1,pp.5-9
【文献】脳と発達,2010年,Vol.42,pp.124-129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L 33/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における
ATP生成を増加させることによってミトコンドリア障害を処置するための安定なスルホラフェン組成物であって、
前記ミトコンドリア障害
はATPを生成するための前記被験体におけるミトコンドリアの酸化的リン酸化の異常によって引き起こされ、前記安定なスルホラフェン組成物は、単離されたスルホラフェンおよび安定化剤を含み、前記安定なスルホラフェン組成物の投与は、前記ミトコンドリア障害を有効に処置し、前記ミトコンドリア障害は、乾癬、皮膚の老化、がん、および腫瘍を除く、安定なスルホラフェン組成物。
【請求項2】
前記安定なスルホラフェン組成物は、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体から本質的になる、請求項1に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項3】
前記スルホラフェン/シクロデキストリン複合体は、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体である、請求項
2に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項4】
前記シクロデキストリンは、βシクロデキストリンまたはそのヒドロキシアルキル誘導体である、請求項
2に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項5】
前記安定なスルホラフェン組成物は、医薬製剤または栄養補助組成物として投与されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項6】
前記医薬
製剤または栄養補助組成物は、経口投与されるか、注射によって投与されるか、または局所投与されるものであることを特徴とする、請求項
5に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項7】
前記医薬
製剤または栄養補助組成物は、経口投与されるものであることを特徴とする、請求項
6に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項8】
前記医薬
製剤または栄養補助組成物は、散剤、丸剤、または液体製剤である、請求項
5に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項9】
前記被験体は、ヒトである、請求項1に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項10】
前記安定なスルホラフェン組成物は、前記被験体に1日に少なくとも1回投与されるものであることを特徴とする、請求項
2~9のいずれか1項に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【請求項11】
前記安定なスルホラフェン組成物は、前記被験体に少なくとも2週間にわたって1日に2回投与されるものであることを特徴とする、請求項
10に記載の安定なスルホラフェン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、2018年2月9日出願の米国仮特許出願第62/628,353号(その内容全体は、本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
開示の分野
本開示は、ミトコンドリア障害を処置することにおける使用のための医薬組成物および栄養補助組成物を提供する。より具体的には、本開示は、安定なスルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物を投与することによって、ミトコンドリア障害を有する被験体を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
例えば、ダイコン(Raphanus sativus)のようなBrassicaceae科の野菜の種子に見出されるある種の構成成分は、抗がん活性および抗微生物特性を有することが公知である。PCT/US2006/010032を参照のこと。1つのこのような構成成分であるスルフォラファンは、グルコラファニン(グルコシノレート)として結合した形態でこのような植物に存在する。天然では、スルフォラファン、C
6H
11NOS
2は、以下の化学構造
【化1】
を有し、酵素反応後にグルコラファニンから形成される。しかし、多くの研究が、スルフォラファンの単離および使用に焦点を当ててきた一方で、他の構成成分(例えば、スルホラフェン)は、単離後のそれらの溶解度の欠如、バイオアベイラビリティーおよび安定性の欠如に起因して、見過ごされてきた。
【0004】
ミトコンドリア障害は、ミトコンドリアが酸化的リン酸化によってアデノシン5-三リン酸(ATP)を生成できない場合に起こる、疾患または欠陥である。ミトコンドリアは、全ての哺乳動物細胞に存在する必須のオルガネラである。簡潔には、ミトコンドリアは、細胞呼吸の間に、NADHまたはFADH2からO2へと電子伝達体を介して電子を伝達する(電子伝達系として公知のプロセス)ことによって、アデノシン二リン酸(ADP)からATPを生成する。ここで、電子が、高エネルギーNADHまたはFADH2から低エネルギーO2へと変化する場合に放出されるエネルギーは、ADPをリン酸化し、ATPを生成するために必要とされる。ADPからATPを生成するために使用されるそのエネルギーはその電子伝達系によって支配され、酸化的リン酸化によって生成される。その電子伝達系は、細胞エネルギーを生成し、細胞生存度を維持するために必須である。従って、ミトコンドリアの電子伝達系における機能不全は、細胞ATP生成の低減、嫌気的代謝の増加、およびフリーラジカル生成の増加を生じ、酸化的ストレスおよび細胞死をもたらす。
【0005】
ミトコンドリア障害は、1またはこれより多くの関連状態(例えば、異常: ミトコンドリアの酸化的代謝、好気的代謝、筋力低下、疲労、心不全または機能不全、可動性の制限および発作)を含み得る。
【0006】
その既存の処置と関連する欠点およびその増加しつつあるミトコンドリア障害と診断された患者の数を考慮すれば、ミトコンドリア障害の処置のための新たな組成物および方法を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の要旨
本開示の方法および組成物は、スルホラフェンが、ダイコン種子から単離されたときは、非常に不安定であるが、ある種のミトコンドリア障害の処置のために有効な化合物であるという発見に基づく。より具体的には、本発明者らは、スルホラフェンの有効性およびバイオアベイラビリティーが、単離後わずかな日数でひどく減少されることを発見した。スルホラフェンの任意の潜在的治療用途を排除する知見である。しかし、本発明者らはまた、安定なスルホラフェンから構成される医薬組成物および栄養補助組成物が、スルホラフェンの生物活性を延長し、細胞のATP生成を増加させることによって、ミトコンドリア障害を処置するスルホラフェンの能力を有意に改善することを発見した。
【0008】
よって、本開示の一局面は、安定化スルホラフェンから構成される医薬組成物または栄養補助組成物を被験体に投与することを包含するミトコンドリア障害を処置するための方法を提供する。ある場合には、本開示は、安定化スルホラフェンから構成される医薬組成物または栄養補助組成物を被験体に投与することを通じて細胞のATP生成を増加させることによって、ミトコンドリア機能を増加させるための方法を提供する。
【0009】
本開示の方法は、安定化スルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物の使用を含む。いくつかの実施形態において、上記安定化スルホラフェンは、上記スルホラフェン化合物の溶解度を改善するために化学的に改変され得る。他の実施形態において、上記スルホラフェンは、上記医薬組成物または栄養補助組成物中の1またはこれより多くの可溶化剤の存在によって安定化され得る。一実施形態において、上記安定化剤は、シクロデキストリン、アルコール、グリコール、ケトン、油、またはこれらの組み合わせである。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物または栄養補助組成物は、スルホラフェンおよびシクロデキストリンを含む。ある種の実施形態において、上記シクロデキストリンは、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、またはγシクロデキストリンのうちの1または複数である。
【0011】
好ましい実施形態において、上記医薬組成物または栄養補助組成物は、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。従って、具体的実施形態において、本発明の方法は、被験体に、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体(すなわち、安定化スルホラフェン)を含む医薬組成物を投与することを包含する。
【0012】
一実施形態において、上記医薬組成物または栄養補助組成物は、安定化スルホラフェンから本質的になる。他の実施形態において、上記組成物は、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)と複合体化したスルホラフェンから本質的になる。
【0013】
場合によっては、本開示は、医薬組成物または栄養補助組成物を被験体に投与することを包含する方法に関する。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内または局所であり得る。具体的実施形態において、上記被験体は、安定なスルホラフェン組成物を含む医薬組成物または栄養補助組成物を経口投与される。他の実施形態において、上記組成物は、注射によって(例えば、静脈内注射または腹腔内注射によって)上記被験体に投与される。ある種の実施形態において、上記組成物は、丸剤、液体、散剤、またはこれらの組み合わせとして経口投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によって処置されている被験体は、哺乳動物である。ある種の実施形態において、上記被験体は、ヒト、マウスまたはラットである。1つの例示的実施形態において、上記処置されている被験体は、ミトコンドリア障害を有するヒト被験体である。ある場合には、上記処置されている被験体は、ミトコンドリア機能(例えば、ATP生成)の低減を示し得る。具体的実施形態において、上記被験体は、ミトコンドリア障害と診断され、それによって上記ミトコンドリア障害が、上記被験体がミトコンドリアの酸化的リン酸化によってATPを生成する能力に影響を及ぼすヒトである。ミトコンドリア障害は、1またはこれより多くの関連状態(例えば、異常:ミトコンドリアの酸化的代謝、好気的代謝、筋力低下、疲労、心不全または機能不全、可動性の制限および発作)を含み得る。
【0015】
本発明の方法によって処置され得る例示的なミトコンドリア障害としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ミトコンドリアミオパチー、本態性振戦、パーキンソン病、被験体による炭水化物、脂質(脂肪)、タンパク質、および/または核酸の異常な代謝を生じる代謝障害、例えば、ミトコンドリア糖尿病、慢性疲労症候群(CFS)、皮膚の老化、前立腺疾患(例えば、良性前立腺肥大(BPH)、甲状腺機能亢進症、耐糖能異常、高コレステロール血症、脂質異常症、高インスリン血症、甲状腺機能不全、多発性硬化症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、乾癬および冠動脈疾患。
【0016】
一実施形態において、可溶化スルホラフェンの投与によって処置されている上記ミトコンドリア障害は、ミトコンドリアミオパチーである。具体的実施形態において、本開示の方法は、ミトコンドリアミオパチーと診断された被験体に、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物または栄養補助組成物を経口投与することを包含する。
【0017】
他の実施形態において、本開示の方法は、本態性振戦と診断された被験体に、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物を経口投与することを包含する。
【0018】
別の実施形態において、本開示の方法は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された被験体に、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物を経口投与することを包含する。
【0019】
他の実施形態において、本開示の方法は、皮膚障害(例えば、乾癬)と診断された被験体に、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物を経口投与することを包含する。ある場合には、本開示の方法は、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物の投与によって、乾癬性関節炎、または皮膚の老化を有する被験体を処置するために使用される。
【0020】
他の実施形態において、本開示の方法は、慢性疲労症候群(CFS)と診断された被験体に、有効量の、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物を経口投与することを包含する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ミトコンドリア障害を処置するための方法であって、前記方法は、
有効量の安定なスルホラフェン組成物を被験体に投与することであって、ここで前記被験体は、ミトコンドリア障害を有し、前記安定なスルホラフェン組成物は、単離されたスルホラフェンおよび安定化剤を含み、前記投与は、前記ミトコンドリア障害を有効に処置すること、
を包含する方法。
(項目2)
前記ミトコンドリア障害は、ミトコンドリアミオパチーである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ミトコンドリアミオパチーは、慢性疲労症候群、本態性振戦、乾癬、皮膚の老化、多嚢胞性卵巣症候群、ミトコンドリア糖尿病、甲状腺疾患、前立腺肥大、および多発性硬化症からなる群より選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ミトコンドリアミオパチーは、慢性疲労症候群、本態性振戦、多嚢胞性卵巣症候群、または乾癬である、項目3に記載の方法。
(項目5)
ミトコンドリアミオパチーは、慢性疲労症候群である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記安定なスルホラフェン組成物は、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体から本質的になる、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記スルホラフェン/シクロデキストリン複合体は、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記シクロデキストリンは、βシクロデキストリンまたはそのヒドロキシアルキル誘導体である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記安定なスルホラフェン組成物は、医薬製剤または栄養補助組成物として投与される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記医薬組成物または栄養補助組成物は、経口投与されるか、注射によって投与されるか、または局所投与される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記医薬組成物または栄養補助組成物は、経口投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記医薬組成物または栄養補助組成物は、散剤、丸剤、または液体製剤である、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記被験体は、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記安定なスルホラフェン組成物は、前記被験体に1日に少なくとも1回投与される、項目6~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記安定なスルホラフェン組成物は、前記被験体に少なくとも2週間にわたって1日に2回投与される、項目14に記載の方法。
(項目16)
細胞においてATP生成を増加させるための方法であって、前記方法は、
安定なスルホラフェン組成物を細胞に投与することであって、ここで前記安定なスルホラフェン組成物は、単離されたスルホラフェンおよび安定化剤を含み、前記投与は、安定なスルホラフェン組成物を投与しない細胞と比較した場合に、前記細胞によるATP生成を増加させること、
を包含する方法。
(項目17)
前記安定なスルホラフェン組成物は、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体から本質的になる、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記スルホラフェン/シクロデキストリン複合体は、スルホラフェンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの複合体である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記シクロデキストリンは、βシクロデキストリンまたはそのヒドロキシアルキル誘導体である、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記安定なスルホラフェン組成物は、医薬製剤または栄養補助組成物として投与される、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A-1B】安定化スルホラフェンは、皮膚細胞においてミトコンドリアのATP生成を誘導する。SK-MEL-31ヒト皮膚細胞を培養し、細胞密度15,000細胞/ウェルにおいて96ウェルプレートに蒔いた。次いで、細胞をスタウロスポリン(STSP)(ミトコンドリア機能およびATP生成の公知の阻害剤)で処理した。STSPとともにインキュベートした後、次いで、細胞に、100μMのスルホラフェン・ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離した17.5μg/μLの安定化スルホラフェン組成物(化合物2)またはATP生成を誘導することが公知の17.5μg/μLの陽性コントロール(化合物3)のいずれかを投与した。次いで、細胞を、4時間(データは示さず)、48時間(A)または72時間(B)にわたってインキュベートした。安定化スルホラフェン組成物で4時間超にわたって処理した皮膚細胞は、陽性コントロールで処理した細胞のものに類似し、STSP単独で処理した細胞のものを有意に上回る、ミトコンドリア機能の増加を示した。
【0022】
【
図2A-2B】安定化スルホラフェンは、筋肉においてミトコンドリアのATP生成を誘導する。A204ヒト筋細胞を培養し、細胞密度15,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに蒔いた。次いで、細胞を、スタウロスポリン(STSP)(ミトコンドリア機能およびATP生成の公知の阻害剤)で処理した。STSPとともにインキュベートした後、次いで、細胞に、100μMのスルホラフェン・ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離した17.5μg/μLの安定化スルホラフェン組成物(化合物2)またはATP生成を誘導することが公知の17.5μg/μLの陽性コントロール(化合物3)のいずれかを投与した。次いで、細胞を、4時間(データは示さず)、48時間(A)または72時間(B)にわたってインキュベートした。安定化スルホラフェン組成物で処理した筋細胞は、陽性コントロールで処理した細胞のものに類似し、STSP単独で処理した細胞のものを有意に上回る、ミトコンドリア機能の増加を示した。
【0023】
【
図3A-3B】安定化スルホラフェンは、膵臓細胞においてミトコンドリアのATP生成を誘導する。PANC-1ヒト膵臓細胞を培養し、細胞密度15,000細胞/ウェルにおいて96ウェルプレートに蒔いた。次いで、細胞をスタウロスポリン(STSP)(ミトコンドリア機能およびATP生成の公知の阻害剤)で処理した。STSPとともにインキュベートした後、次いで、細胞に、100μMのスルホラフェン・ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離した17.5μg/μLの安定化スルホラフェン組成物(化合物2)またはATP生成を誘導することが公知の17.5μg/μLの陽性コントロール(化合物3)のいずれかを投与した。次いで、細胞を、4時間(データは示さず)、48時間(A)または72時間(B)にわたってインキュベートした。安定化スルホラフェン組成物で処理した膵臓細胞は、陽性コントロールで処理した細胞のものに類似し、STSP単独で処理した細胞のものを有意に上回る、ミトコンドリア機能の増加を示した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
開示の詳細な説明
いかなる1つの特定の理論によっても拘束されることなく、本発明の方法は、スルホラフェンが天然に形成するRaphanus sativus(ダイコン)のようなBrassicaceae科の植物からのスルホラフェン化合物の単離直後に、スルホラフェンが不安定になりかつ有効でなくなるという発見に基づく。さらに、本発明者らは、ミトコンドリア障害の処置のためのダイコン種子抽出物中の活性化合物が、スルホラフェンを安定化することを発見した。例えば、本明細書で示されるように、安定化スルホラフェンは、ダイコン種子抽出物と比較した場合にミトコンドリアのATP生成を改善し、これは、細胞生存度および維持の増加を生じる。本発明者らは従って、安定化スルホラフェン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと複合体化したスルホラフェン)から構成される医薬組成物および栄養補助組成物が、スルホラフェンのバイオアベイラビリティーを延長し、スルホラフェンが例えば、ミトコンドリアミオパチー(例えば、慢性疲労症候群(CFS))、本態性振戦、ミトコンドリア糖尿病、PCOS、および皮膚障害(例えば、乾癬および老化皮膚)のようなミトコンドリア障害を処置する能力を有意に改善することを決定した。
【0025】
よって、本開示は、安定化スルホラフェンから構成される医薬組成物または栄養補助組成物を被験体に投与することを包含する、ミトコンドリア障害を処置するための方法を提供する。
【0026】
本開示の治療法は、安定化スルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物の投与を包含する。用語「スルホラフェン(sulforaphene)」または「ラファニン」とは、本明細書で使用される場合、分子式C
6H
9NOS
2を有しかつ以下の構造:
【化2】
を有する化合物を意味するものとする。スルホラフェンは、いくつかの公知の別名(例えば、スルホラフェン(sulforaphen)、スルホラフェン(sulphoraphen)、4-イソチオシアナト-1-(メチルスルフィニル)-1-ブテン、4-メチルスルフィニル-3-ブテニルイソチオシアネート)を有する。スルホラフェンは、およそ175.26g/molの公知の分子量を有する。スルホラフェンは、本明細書で使用される場合、スルホラフェンのものとは異なる構造および活性を有するスルフォラファンを含むとは意図しない。上記で述べられるように、スルフォラファンは、分子式C
6H
11NOS
2を有し、これは、例えば、1-イソチオシアナト-4-[(R)-メチルスルフィニル]-ブタンとしても公知の分子の第1の炭素と第2の炭素との間に二重結合を欠いている。
【0027】
スルホラフェンは、有機化学においてMichaelアクセプターとしての役割を果たす、構造式R-S(=O)-R’を概して有するビニルスルホキシド(vinylic sulfoxide)である。ビニルスルホキシドは、ミトコンドリアにおいて嫌気的酸化的リン酸化をモジュレートする化合物である。
【0028】
スルホラフェンは、例えば、ミロシナーゼによるグルコラフェニン(グルコシノレート)の加水分解によって作られる、ダイコン(Raphani semen)の種子において見出される天然に存在する化合物である。従って、ある種の実施形態において、スルホラフェンは、ダイコンのような、ある種の根菜から単離され得る。天然に存在する、単離されたスルホラフェンはまた、本発明の方法における使用のために精製され得る。
【0029】
用語「単離された」とは、スルホラフェンのような化合物に言及して使用される場合、その化合物がその天然に存在する環境から取り出されていること、またはその化合物が形成されかつ他の分子材料を実質的に含まないその環境を意味する。「実質的に含まない」とは、単離された化合物が、組成物または調製物のうちの少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%(乾燥重量または容積で)を占めることを意味する。例えば、単離されたスルホラフェン組成物は、他の化合物(タンパク質、脂質、コラーゲン)またはそのスルホラフェンが得られた植物の材料を実質的に含まない可能性がある。すなわち、スルホラフェンは、その調製物の容積のうちの約80%超、その調製物の容積のうちの約90%超またはその調製物の容積のうちの約95%超を表す。精製レベルは、その意図される用途に基づき得る。
【0030】
スルホラフェンをダイコン種子から単離および精製するための方法は、当業者に公知であり、任意のこのような方法は、ここで使用され得る。例えば、ダイコン種子は、West, L. et al., J Agric. Food Chem. (2004) 52, pp. 916-926(その内容全体は参考として援用される)に示されるもののような公知の脱脂手順を使用して水性抽出物を形成する前に脱脂され得る。ここで、その植物またはその一部は、すり砕かれ得るか、粉砕され得るか、または水性抽出物の添加の前にもしくは水性抽出物の添加と同時にブレンドされ得る。スルホラフェンの抽出は、水または有機溶媒(例えば、エチルアルコール)を含む水で行われ得る。具体的には、場合によっては、アブラナ科植物の水性抽出物は、アブラナ科植物種子と、60~110℃の温度を有する水とを、少なくとも5分間接触させることによって形成される。次いで、その水性抽出物は、抽出物中の他の化合物の代わりに、スルホラフェンに優先的に吸着する吸着剤(例えば、活性炭、シリカ、化学改変されたシリカ、漂白土(bleaching clay)など、およびこれらの混合物)と接触され得る。その所望の化合物が一旦吸着されれば、その化合物は、より高い分子量のタンパク質または化合物から単離され得る。
【0031】
他の実施形態において、そのスルホラフェンは、合成して生成され得る(例えば、クリックケミストリー、コンビナトリアルケミストリー(combinatory chemistry)、環化付加反応または固相合成のような)。しかし、合成スルホラフェンを形成するための他の公知の方法は、当業者によって容易に公知である。
【0032】
上記で述べられるように、本開示の医薬組成物または栄養補助組成物は、「安定化スルホラフェン」を含む。本明細書で使用される場合、「安定化スルホラフェン」または「安定なスルホラフェン」とは、スルホラフェン化合物または時間を経て天然に単離されたスルホラフェンより生物活性であるスルホラフェン含有化合物(例えば、複合体)を意味するために、本明細書で交換可能に使用される。生物活性は、当業者に公知の方法(例えば、細胞培養アッセイ、インビボ研究、レセプター結合アッセイ、分光測光法など)によって決定され得る。ある種の場合には、スルホラフェンは、公知の方法(例えば、側基の改変、分子の電荷の改変、またはメチル基の付加のような)によって化学構造を変化させることによって安定化される。他の場合には、そのスルホラフェンは、安定化剤の使用を通じて安定化される。
【0033】
用語「薬剤(agent)」とは、本明細書で使用される場合、任意の種類の組成物または組成物の組み合わせに言及する。本開示の一実施形態において、その薬剤は、低分子である。本開示の別の実施形態において、その薬剤は、生物学的分子であり、その分子としては、タンパク質、ポリペプチド、抗体または核酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、その安定化剤は、シクロデキストリン、アルコール、グリコール、ケトン、油、またはこれらの組み合わせである。具体的実施形態において、その安定化スルホラフェンは、スルホラフェンおよび安定化剤の複合体を含む。1つの例示的実施形態において、その安定化剤は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0034】
いくつかの実施形態において、その医薬組成物または栄養補助組成物は、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体である安定化スルホラフェンを含む。そのシクロデキストリンは、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、γシクロデキストリン、またはそれらのヒドロキシアルキル誘導体のうちの1または複数であり得る。
【0035】
具体的実施形態において、その医薬組成物または栄養補助組成物は、以下のスルホラフェン/シクロデキストリン複合体: スルホラフェンおよびβシクロデキストリン、またはそのヒドロキシアルキル誘導体、のうちの1または複数から選択される安定化スルホラフェンを含む。
【0036】
一実施形態において、医薬組成物または栄養補助組成物は、安定化スルホラフェンから本質的になり得、これは、その組成物の唯一の必須要素が安定化スルホラフェン(すなわち、活性薬剤)であることを意味するものとする。他の実施形態において、その医薬組成物は、安定化スルホラフェンから本質的になり、それによってその安定化スルホラフェンが、シクロデキストリンまたはそのヒドロキシアルキル誘導体と複合体化したスルホラフェンであり、これは、その組成物の唯一の必須要素がスルホラフェン(すなわち、活性薬剤)およびシクロデキストリンであることを意味するものとする。
【0037】
なお他の実施形態において、その組成物は、安定化スルホラフェンから本質的になり、それによって、その安定化スルホラフェンは、βシクロデキストリンまたはそのヒドロキシアルキル誘導体と複合体化したスルホラフェンであり、これは、その組成物の唯一の必須要素がスルホラフェン(すなわち、活性薬剤)およびβシクロデキストリンであることを意味するものとする。これらの医薬組成物は、他の要素(例えば、添加剤または溶媒)を含み得る一方で、そのような他の要素は、他の類似のまたは同様の要素に容易に置換され得る。
【0038】
1つの例示的実施形態において、その医薬組成物または栄養補助組成物は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびスルホラフェンからなる安定化スルホラフェン/シクロデキストリン複合体を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、75%より純度の高いスルホラフェン、80%より純度の高いスルホラフェン、85%より純度の高いスルホラフェン、90%より純度の高いスルホラフェン、95%より純度の高いスルホラフェンまたは99%より純度の高いスルホラフェンである安定化スルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物を利用する。場合によっては、安定なスルホラフェン 対 その医薬組成物の他の要素のモル比は、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1またはこれより大きい範囲内である。
【0040】
安定化スルホラフェンおよびシクロデキストリンを含むその医薬組成物または栄養補助組成物は、そのスルホラフェンまたはその天然供給源と適切な溶媒中のシクロデキストリンとを混合して、沈殿物を形成することによって形成され得る。当該分野で公知の任意の適切な溶媒が利用され得る。ある種の場合には、その溶媒は、水および必要に応じて1またはこれより多くの水に混和性の溶媒(例えば、エタノール)を含む水性溶媒である。他の場合には、その溶媒は水である、溶媒中にシクロデキストリンを溶解させることは、当該分野で公知の任意の溶解法によって達成され得る。例えば、そのシクロデキストリンは、シクロデキストリンを溶媒中に入れ、その混合物を加熱することによって、その溶媒中に完全にまたは部分的に溶解され得る。別の例では、シクロデキストリンをその溶媒中に完全にまたは部分的にいずれでも溶解させるために、超音波処理が利用され得る。そのスルホラフェンおよびシクロデキストリンが、溶液中で一旦混ぜ合わされた後に、それらは、混合および冷却されて、沈殿物(安定化スルホラフェン)を形成し得る。次いで、その沈殿物は、安定なスルホラフェン-シクロデキストリン複合体を得るために濾過され得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、75%より純度が高いスルホラフェン、80%より純度の高いスルホラフェン、85%より純度の高いスルホラフェン、90%より純度の高いスルホラフェン、95%より純度の高いスルホラフェンまたは99%より純度の高いスルホラフェンである、そのシクロデキストリン複合体内のスルホラフェンを含む医薬組成物を利用する。場合によっては、得られた複合体中のスルホラフェン 対 シクロデキストリンのモル比は、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:またはこれより大きい範囲の中である。具体例では、スルホラフェン 対 シクロデキストリンの比は、0.8:1~1:1、0.9:1~1:1、0.95:1~1:1または0.98:1~1:1である。
【0042】
いくつかの実施形態において、その医薬組成物は、単位用量組成物、例えば、錠剤、散剤または液体として製剤化され、約0.1重量%~100重量%、0.1重量%~90重量%、0.1重量%~80重量%、0.1重量%~70重量%、0.1重量%~60重量%、0.1重量%~50重量%、0.1重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~20重量%または0.1重量%~10重量%のその活性化合物(すなわち、安定化スルホラフェン)を含み得る。一実施形態において、その医薬組成物は、5.0重量%~30重量%、10重量%~25重量%または10重量%~20重量%の安定化スルホラフェンを含む。具体的実施形態において、その医薬組成物は、10重量%~22重量%の安定化スルホラフェンを含む。
【0043】
ある種の非限定的な実施形態において、本開示の医薬組成物または栄養補助組成物は、安定化スルホラフェンおよび少なくとも1種の添加剤を含む。具体的実施形態において、その医薬組成物は、安定化スルホラフェン/シクロデキストリン複合体および少なくとも1種の添加剤を含む。添加剤としては、スルホラフェンの性能を、処置が無効であるそのような程度まで変化させない、キャリア、安定化剤、抗酸化剤、着色料、希釈剤および賦形剤を含み得る。
【0044】
例示的キャリアとしては、生理食塩水、リンゲル液、リン酸溶液または緩衝液、緩衝化食塩水、および当該分野で公知の他のキャリアが挙げられるが、これらに限定されない。そのキャリアは、固体もしくは液体、または両方であり得、単位用量組成物(例えば、錠剤、散剤または液体)としてその医薬組成物とともに製剤化され得、その単位用量組成物は、約0.1重量%~100重量%、0.1重量%~90重量%、0.1重量%~80重量%、0.1重量%~70重量%、0.1重量%~60重量%、0.1重量%~50重量%、0.1重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~20重量%または0.1重量%~10重量%の活性化合物(すなわち、安定化スルホラフェン)を含み得る。一実施形態において、その医薬組成物は、5.0重量%~30重量%、10重量%~25重量%または10重量%~20重量%の安定化スルホラフェンを含む。具体的実施形態において、その医薬組成物は、10重量%~22重量%の安定化スルホラフェンを含む。
【0045】
医薬組成物または栄養補助組成物は、その安定化スルホラフェンの望ましい投与経路に基づいて製剤化され得る。その望ましい投与経路は、経口、経腸、非経口、注射、頬側、および局所のうちの1または複数であり得る。例えば、1つの実施形態において、組成物は、経口投与に適している。いくつかの実施形態において、その組成物は、被験体の皮膚、腸または血流へのその組成物の送達を促進するために適したキャリアおよび/または添加剤を含む。
【0046】
特に、本開示の医薬組成物または栄養補助組成物、またはそれらが含まれる製剤は、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の懸濁剤、分散性の散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬質もしくは軟質のカプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として、経口投与され得る。経口使用が意図される組成物は、医薬組成物の製造に関して当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、医薬に受容可能なおよび口に合う調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤からなる群より選択される1種またはこれより多くの添加剤を含み得る。
【0047】
錠剤は、コーティングされなくてもよいか、または消化管の中での崩壊および吸着を遅らせ、それによって、長期間にわたる持続した作用を提供するための公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような時間遅延材料が使用され得る。
【0048】
本開示の医薬組成物または栄養補助組成物はまた、非毒性賦形剤を含み得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシアガム)、ならびに滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)であり得る。
【0049】
医薬組成物または栄養補助組成物はまた、硬質ゼラチンカプセル剤として(ここでその活性成分(安定化スルホラフェン、例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)は、不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような)と混合され得る)製剤化され得るか、または軟質ゼラチンカプセル剤(ここでその活性成分は、水または油媒体(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、種々の草本抽出物のうちのいずれか、ミルク、またはオリーブ油のような)とともに存在するかまたはこれらと混合される)として製剤化され得る。
【0050】
水性懸濁剤が生成され得、その懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合された状態で、その活性成分(安定化スルホラフェン)を含む。このような賦形剤としては、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガムのような)が挙げられる;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチンのような)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレートのような)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールのような)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートのような)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。
【0051】
その水性懸濁剤はまた、1種もしくはこれより多くの保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルのような)、1種もしくはこれより多くの着色添加剤、1種もしくはこれより多くの矯味矯臭添加剤、または1種もしくはこれより多くの甘味剤(例えば、スクロース、グリセロール、ソルビトールまたはサッカリン)を含み得る。
【0052】
油性懸濁剤は、その活性成分(安定化スルホラフェン、例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)をω-3脂肪酸、植物性油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油のような)中で、または鉱油(例えば、流動パラフィン)の中で懸濁することによって、製剤化され得る。その油性懸濁剤は、増粘添加剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールのような)を含み得る。
【0053】
甘味添加剤(例えば、上記に示されるもの)および矯味矯臭剤は、口に合う経口調製物を提供するために添加され得る。
【0054】
水の添加によって医薬組成物の調製に適した分散性の粉末および顆粒は、その活性成分(安定化スルホラフェン)を、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および1種またはこれより多くの保存剤と混合した状態で提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、既に上記で述べたものによって例示される。さらなる賦形剤(例えば、甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤)はまた、存在し得る。
【0055】
その安定なスルホラフェン(例えば、スルフォラファン/シクロデキストリン複合体)を含むシロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトール、またはスクロースのような)とともに製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、ならびに/または矯味矯臭剤および着色剤を含み得る。経口投与のための液体剤形としては、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水)を含む、医薬に受容可能なエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、および/またはエリキシル剤が挙げられ得る。このような組成物はまた、佐剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および/または懸濁化剤)、ならびに甘味剤、矯味矯臭剤、および/または芳香剤を含み得る。
【0056】
経口投与に適した医薬組成物または栄養補助組成物は、別個の単位で(各々は、処置をもたらすために所定の量の安定化スルホラフェンを含む);散剤または顆粒剤として;液剤または水性もしくは非水性の液体中の懸濁剤として;あるいは水中油型または油中水型のエマルジョンとして、提示され得る。示されるように、このような組成物は、その活性成分(安定化スルホラフェン、例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)およびそのキャリア(1種またはこれより多くの添加剤を構成し得る)を会合した状態にする工程を包含し得る、任意の適切な薬学の方法によって調製され得る。
【0057】
例えば、錠剤は、安定化スルホラフェンの粉末または顆粒を、必要に応じて、1種またはこれより多くの補助成分とともに圧縮または成形することによって調製され得る。圧縮した錠剤は、適切な機械の中で、自由に流動する形態にあるその化合物(例えば、粉末または顆粒)を、必要に応じて、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤および/または界面活性剤/分散剤(複数可)と混合して圧縮することによって、調製され得る。成形された錠剤は、適切な機械の中で、不活性な液体希釈剤で湿らせたその粉末化化合物を成形することによって作製され得る。
【0058】
本開示の医薬組成物または栄養補助組成物は、消化管での崩壊および吸収を遅らせ、それによって、長期間にわたる遅延作用を提供するために、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。例えば、時間遅延材料(例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレート)が使用され得る。
【0059】
本発明の方法における使用のための組成物は、注射剤であり得る。例えば、その医薬組成物は、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤または懸濁剤(例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤のような)であり得る。使用され得るその受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として、従来どおり使用される。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油が使用され得る(合成モノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる)。さらに、n-3多価不飽和脂肪酸は、注射剤の調製における使用が見出され得る。
【0060】
医薬組成物および栄養補助組成物はまた、その安定なスルホラフェンと水とを混合し、その得られた溶液を、滅菌し血液と等張性にすることによって調製される滅菌水性調製物を含み得る。本発明に従う注射用医薬組成物は、概して5%~40% w/wの安定なスルホラフェンを含む。
【0061】
その注射用組成物はまた、適切なキャリアとして、食塩水、デキストロース、または水を含み得る。安定化スルホラフェン、例えば、スルホラフェン(sulfuraphene)/シクロデキストリン複合体の適切な用量は、上記のものと比較的同じ血清レベルを達成するものである。
【0062】
本開示の医薬組成物はまた、皮膚への局所的調製物であり得、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、パスタ剤、ゲル剤、スプレー剤、散剤、ゼリー剤、洗眼剤(collyrium)、液剤、懸濁剤、エアロゾル剤、または油剤の形態をとり得る。キャリアが使用され得、ワセリン(例えば、Vaseline(登録商標))、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらのうちの2またはこれより多くの組み合わせが挙げられる。その活性成分(安定化スルホラフェン、例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)は、約0.1重量%~100重量%、0.1重量%~90重量%、0.1重量%~80重量%、0.1重量%~70重量%、0.1重量%~60重量%、0.1重量%~50重量%、0.1重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~20重量%または0.1重量%~10重量%の濃度の活性化合物、すなわち、安定化スルホラフェンで概して存在する。一実施形態において、その医薬組成物は、5.0重量%~30重量%、10重量%~25重量%または10重量%~20重量%の安定化スルホラフェンを含む。具体的実施形態において、その医薬組成物は、10重量%~22重量%の安定化スルホラフェンを含む。
【0063】
本発明の医薬組成物および栄養補助組成物はまた、安全かつ有効な量の、塩(例えば、塩化ナトリウム)を含む等張剤(isotonicity agent)、および/または非電解質等張化剤(例えば、ソルビトールおよびマンニトール)を含み得る。
【0064】
本発明の医薬組成物および栄養補助組成物はまた、界面活性剤または共溶媒を組み込むことによって増強され得る。このような共溶媒としては、ポリソルベート20、60、および80、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(例えば、Pluronic F-68、F-84およびP-103(BASF(登録商標)から市販))または当業者に公知の他の剤を含み得る。このような共溶媒は、約0.01重量%~約2重量%のレベルで使用され得る。
【0065】
有効な製剤化および投与手順は、当該分野で周知であり、標準的教科書に記載される。例えば、Gennaro, A. R.,Remington: The Scienc and Practice of Pharmacy,第20版,(Lippincott, Williams and Wilkins), 2000; Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1975; Liberman, et al.,編, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびKibbe, et al.,編, Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版), American Pharmaceutical Association, Washington, 1999を参照のこと。
【0066】
上記で述べられるように、ある種の実施形態において、その安定化スルホラフェンは、栄養補助組成物の中に含まれる。「栄養補助組成物」とは、本明細書で使用される場合、多剤組成物を意味し、それによって、1つの薬剤が安定なスルホラフェンであり、他の薬剤が被験体に複数の治療効果を提供するために1またはこれより多くの異なる生化学的経路を標的とし得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、栄養補助組成物は、安定なスルホラフェンおよび以下の群からの少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、または少なくとも6種、またはこれより多くの薬剤を含み、そのメンバーは、1またはこれより多くの哺乳動物の状態(例えば、ミトコンドリア障害)に対して治療効果を有する。群1:ミネラル、ビタミン、および栄養補助食品;群2:生薬(herbal product)(例えば、ニンニク(アリシン)、ショウガ、エキナセア、チョウセンニンジン、スペインカンゾウ、タマネギ、センナ、ウコン(クルクミン)またはこれらの一部のような);群3:食事性酵素(dietary enzyme)(例えば、ブロメラインおよびパパインのような);群4:線維;群5:加水分解タンパク質;群6:植物栄養素(例えば、レスベラトロール);群7:カロテノイド(例えば、リコピンのような);群8:プレバイオティクスおよびプロバイオティクス。
【0068】
別の実施形態において、その栄養補助組成物は、安定なスルホラフェンおよび上記の群のうちの少なくとも1種の活性成分を含む。具体的実施形態において、その栄養補助組成物は、安定なスルホラフェンおよび上記の群のうちの少なくとも1種の活性成分を含み、粉末のような食品添加物として提供される。ある種の実施形態において、その栄養補助組成物は、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体および上記の群のうちの少なくとも1つに由来する少なくとも1種の活性成分を含む。一実施形態において、その栄養補助組成物は、安定なスルホラフェンおよび上記の群のうちの各々に由来する少なくとも1種の活性成分を含む。
【0069】
本発明の方法は、被験体に、安定化スルホラフェン(スルホラフェン/シクロデキストリン複合体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む栄養補助組成物を投与することを包含する。例えば、被験体への、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体から構成される栄養補助組成物の投与。
【0070】
栄養補助製剤を調製するための任意の方法は、本発明の方法に従って使用され得る。ある種の場合には、本開示の栄養補助組成物を調製するための方法は、医薬組成物を調製するために使用されるものと同じまたは実質的に同じである。一実施形態において、本開示の栄養補助組成物は、上記の医薬組成物を調製するために使用されるその同じ方法によって調製される。他の実施形態において、その栄養補助組成物は、上記の方法に従って製剤化および投与される。なお別の実施形態において、本開示の栄養補助組成物は、当業者に公知の方法を使用して調製される。
【0071】
「被験体」は、本明細書で用語「患者」と交換可能に使用され、ヒトまたは任意の他の哺乳動物(霊長類、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ネコまたはイヌが挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。「被験体」は、本明細書で使用される場合、開業医(例えば、臨床医または獣医師)の判断において、ミトコンドリア障害を示す状態(直接、関連または他の点で)を有する任意の被験体である。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によって処置されているその被験体は、哺乳動物である。ある種の実施形態において、その被験体は、ヒト、マウスまたはラットである。1つの例示的実施形態において、処置されているその被験体は、ミトコンドリア障害を示す状態を有するヒト被験体である。具体的実施形態において、その被験体は、ミトコンドリア障害と診断されており、それによって、そのミトコンドリア障害が、その被験体が炭水化物、脂質(脂肪)、タンパク質、および/または核酸を代謝し、ATPを生成する能力に影響を及ぼすヒトである。
【0073】
場合によっては、その被験体は、以下のミトコンドリア障害と関連する状態(例えば、異常:ミトコンドリアの酸化的代謝、低減したATP生成および/または低減した細胞生存度)のうちの1または複数を有する。
【0074】
投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内または局所であり得る。具体的実施形態において、その被験体は、安定なスルホラフェン組成物を経口投与される、他の実施形態において、その組成物は、注射によって(例えば、静脈内注射または腹腔内注射によって)その被験体に投与される。別の実施形態において、その医薬組成物は、局所投与される。
【0075】
本発明の方法において、本明細書で記載されるミトコンドリア障害またはその状態のうちの1または複数の処置および/または防止の必要のある被験体は、安定なスルホラフェンから構成される医薬組成物または栄養補助組成物のある量の投与によって処置され得、その結果、その活性構成成分(複数可)(安定なスルホラフェン、例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)の量は、そのミトコンドリア障害またはその症状の処置または防止を構成するために十分な投与量または量(すなわち、「有効量」)を提供する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、ミトコンドリア障害またはその症状の低減または根治を生じる、被験体に投与される安定なスルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物の用量または量を意味する。その組成物の有効量は、当業者によって、公知の技術の使用によって、および類似の状況下で得られる結果を観察することによって、容易に決定され得る。
【0077】
1つの例示的実施形態において、被験体に投与される安定なスルホラフェンを含む医薬組成物または栄養補助組成物の有効量は、その被験体の細胞によるATP生成の増加を生じる。
【0078】
安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/シクロデキストリン複合体)から構成される医薬組成物または栄養補助組成物の有効量は、多くの要因(例えば、使用される具体的な安定化剤または方法、被験体、投与様式、および処置されている障害)に依存し得る。例えば、その投与量は、その被験体の体重、その被験体の年齢および健康状態、ならびに投与されている組成物に関する耐容性に基づいて調整され得る。
【0079】
医薬組成物の注射に関する適切な投与量範囲のある種の非限定的な例としては、40kgまたはこれより軽い体重を有する個体に関しては、0.06mg/kg/日の用量が挙げられるが、これらに限定されず、このような用量は、40kgより重い体重を有する個体については最大日用量0.13mg/kg(2.5mg/日の用量)まで0.02mg/kgずつ増加または減少させてもよく、このような用量は、40kgより重い体重を有する女性については最大用量10mg/日まで1.25mg~2.5mg/日ずつ増加または減少させてもよく、5mg/日の用量が適切であり、このような用量は、最大用量10mg/日まで1.25mg~2.5mg/日ずつ増加または減少させてもよい。なお別の例では、本開示の医薬組成物は、30mcg/mL、60mcg/mL、90mcg/mLまたは120mcg/mL 用量において被験体に送達され得る。
【0080】
他の例では、本明細書で提供される本発明の組成物および方法の投与量は、治療効果を提供するにあたって示されるその有効性に基づいて決定および調整され得る。さらに、当業者は、本発明の方法に従う処置の後に、ミトコンドリア障害またはその症状の存在または非存在を測定および定量する方法を知っている。場合によっては、治療上有効な量は、被験体における以下の異常な状態:ミトコンドリアの酸化的代謝、アミノ酸代謝、有機酸代謝、細胞(例えば、皮膚細胞または筋細胞)によるATP生成、細胞生存度、脂肪酸代謝、炭水化物代謝、尿酸形成およびペルオキシソームの代謝、のうちの1またはこれより多くを改善または低減する。
【0081】
例えば、ミトコンドリアミオパチー(例えば、慢性疲労症候群または本態性振戦)の症例では、有効量の安定なスルホラフェンは、細胞代謝における不規則性を低減または消失させるか、ミトコンドリア機能(すなわち、ATP生成)を増加させるか、1種もしくはこれより多くのアミノ酸の排出を増加させるか、または前述の状態のうちの任意の組み合わせを行う。
【0082】
皮膚障害(例えば、乾癬、老化皮膚または乾癬性関節炎)の症例では、有効な処置は、皮膚病変または炎症を改善し得る。
【0083】
PCOSの症例では、安定なスルホラフェン/シクロデキストリン複合体での有効な処置は、被験体において以下のうちの1または複数を低減または消失させる:不規則な月経、異常なアンドロゲン、多嚢胞性卵巣または以下で示される関連状態。
【0084】
有効用量はまた、インビトロシステムまたは動物モデルシステムから(例えば、マウスモデルにおいて)得られる用量応答曲線から外挿され得る。当業者は、投与量がまた、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition (1996), Appendix II, pp. 1707-1711のガイダンスで決定され得ることを理解する。
【0085】
本開示の医薬組成物または栄養補助組成物は、必要な場合、1日あたり1回または複数回投与され得る。投与頻度は、1日あたり単回投与から1日あたり複数回投与まで変動し得る。一実施形態において、その組成物は、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回または1年に2回投与され得る。ある種の実施形態において、その組成物は、例えば、ミトコンドリア障害を有する被験体が、炎症、皮膚病変、筋振戦、疲労または処置投与を保証する他の症状を示す場合に、投与され得る。
【0086】
本発明の方法は、ミトコンドリア障害の処置を含む。
【0087】
用語「処置」とは、患者または被験体におけるミトコンドリア障害、またはその1もしくはこれより多くの症状の防止または改善に言及する。ミトコンドリア疾患を「処置すること」は、その疾患を完全に治癒または根治させることを要求することは意図しない。その処置は、その障害を低減または阻害すること、すなわち、「治療効果」を有することのみが必要である。同様に、障害の進行は、開業医の判断において、その障害の進行の特徴的兆候のうちの1または複数が低減または阻害される場合に、「低減される」または「阻害される」と本明細書では考えられる。用語「治療効果」とは、被験体においてミトコンドリア障害またはその症状(例えば、ミトコンドリアミオパチー、皮膚障害、筋障害または代謝障害(例えば、2型糖尿病)のような)を引き起こすかまたは寄与する要因の阻害、活性化または置き換えに言及する。
【0088】
用語「ミトコンドリア障害」または「ミトコンドリア疾患」とは、被験体の細胞が、炭水化物、脂質(脂肪)、タンパク質、または核酸を、酸化的リン酸化によって適切に代謝できない場合に起こる障害または欠陥に言及するために、本明細書で交換可能に使用される。よって、本発明の方法の状況において、ATPを生成する被験体の能力の異常に関する障害は全て、用語「ミトコンドリア障害」の中に包含される。ミトコンドリア障害の例としては、ミトコンドリアミオパチー、代謝障害、皮膚障害、前立腺障害、または中枢神経系の障害が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の目的のために、代謝障害ががんを含むことは意図されない。
【0089】
本発明の方法によって処置され得る例示的なミトコンドリア障害としては、ミトコンドリアミオパチーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「ミトコンドリアミオパチー」とは、被験体の筋細胞および/または中枢神経系(CNS)の細胞によるミトコンドリアの酸化的リン酸化によるATPの生成における機能不全を意味するものとする。ミトコンドリアミオパチーの症状としては、筋力低下または運動不耐性、心不全または調律異常、認知症、運動障害、脳卒中様エピソード、難聴、失明、眼瞼下垂、眼の可動性の制限、嘔吐、および発作が挙げられる。いくつかの例示的なミトコンドリアミオパチー(これは、有効量のスルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体の投与によって処置され得る)としては、慢性疲労症候群(CFS)、前立腺疾患(すなわち、前立腺肥大)、本態性振戦、パーキンソン病、および多発性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
例示的実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、慢性疲労症候群(CFS)のようなミトコンドリアミオパチーを有する。「慢性疲労症候群(CFS)」とは、本明細書で使用される場合、長期の肉体的および精神的疲労として現れるミトコンドリア障害を意味する。CFSは、以下の症状のうちの1または複数と関連する:疼痛および増加した感受性、異常な代謝(例えば、エネルギー代謝、アミノ酸代謝、ヌクレオチド代謝、窒素代謝、ホルモン代謝、および酸化的ストレス代謝)、低減したミトコンドリア機能、細胞によるアミノ酸および窒素の低減した排出。被験体は、当業者によって、ミトコンドリアによる細胞代謝(例えば、メタボロミクスの使用によってATP生成または細胞生存度)における変化を検出するために公知の方法を使用して、CFSであると容易に診断され得る。
【0091】
例示的実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、前立腺疾患のようなミトコンドリアミオパチーを有する。「前立腺肥大」または「前立腺疾患」は、大きくなった前立腺として現れる(例えば、「良性前立腺肥大(BPH)」において存在する)ミトコンドリア障害を意味するために、本明細書で交換可能に使用される。前立腺肥大は、以下の症状のうちの1または複数と関連する:膀胱からの尿の流れの低減または妨害、頻尿、膀胱を空にできない、尿路感染、または血尿。被験体は、当業者によって、ミトコンドリアによる細胞代謝(例えば、メタボロミクスの使用によってATP生成または細胞生存度)における変化を検出するために公知の方法を使用して、BPHであると容易に診断され得る。
【0092】
ミトコンドリアは、ドパミン作動性ニューロンが適切に機能するために必要なエネルギーを提供するにあたって必須の役割を果たす。従って、本開示のいくつかの実施形態において、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、中枢神経系のミトコンドリアミオパチーを有する。例示的な、中枢神経系のミトコンドリアミオパチーとしては、本態性振戦、多発性硬化症、認知症およびパーキンソン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
例示的実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、本態性振戦のようなミトコンドリアミオパチーを有する。用語「本態性振戦」は、本明細書で使用される場合、四肢の不随意的かつ律動的な震えを引き起こす神経学的障害を意味するものとする。本態性振戦は、手、頭もしくは声が使用中に不随意に震えるか、または被験体が異常な歩行を示す場合に、明らかである。
【0094】
一実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、多発性硬化症(MS)のようなミトコンドリアミオパチーを有する。用語「多発性硬化症」とは、本明細書で使用される場合、ATP生成の低減を生じるミトコンドリアの酸化的リン酸化における異常によって引き起こされ、中枢神経系の軸索傷害、ニューロン喪失(低減した細胞生存度)、および萎縮をもたらす神経変性障害を意味する。
【0095】
ミトコンドリア機能はまた、内分泌系によるホルモン生成を調節する。甲状腺は、首の前側に位置し、2つのタイプの甲状腺ホルモン:T4(サイロキシン)およびT3(トリヨードサイロニン)を分泌する。甲状腺ホルモンは、細胞の基礎代謝状態および酸化的代謝を調節することが公知である。例えば、甲状腺ホルモンは、ミトコンドリアにおける酸化的呼吸を変化させるそれらの能力に起因して、酸化的ストレスおよび抗酸化状態と関連する。さらに、甲状腺は、ミトコンドリアによるATP生成の減少、従って、細胞死を生じる酸化的ストレスをシグナル伝達するホルモンを生成し得る。このような酸化的ストレスは、例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、ミトコンドリア糖尿病、甲状腺機能低下症および甲状腺機能亢進症において存在する。
【0096】
従って、例示的実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、PCOSを有する。「多嚢胞性卵巣症候群」とは、本明細書で使用される場合、以下の症状のうちの1または複数を有する女性被験体に存在するミトコンドリア障害を意味する:不規則な月経、異常なアンドロゲン、および多嚢胞性卵巣。PCOSはまた、インスリン抵抗性、肥満、耐糖能異常、脂質異常症、および/または高血圧症のような他の一般的な障害(「関連症状または状態」)をともに示す。
【0097】
ミトコンドリアは、皮膚細胞が適切に機能するために必要なエネルギーを提供するにあたって必須の役割を果たす。従って、本開示のいくつかの実施形態において、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、皮膚のミトコンドリアミオパチーを有する。例示的な皮膚のミトコンドリアミオパチーとしては、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚の老化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
従って、一実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、乾癬のようなミトコンドリアミオパチーを有する。用語「乾癬」とは、本明細書で使用される場合、ミトコンドリア障害と関連しているTh-1およびTh-17媒介性疾患に言及する。乾癬は、皮膚の炎症、刺激、鱗屑の提示および以下のうちの1または複数によって特徴づけられる:乾燥病変、固いまたは腫脹した関節、肥満、高血圧症、脂質異常症、およびインスリン抵抗性疾患。
【0099】
別の実施形態において、本開示に従って、安定化スルホラフェン(例えば、スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)から構成される組成物が投与されている被験体は、老化皮膚のようなミトコンドリアミオパチーを有する。用語「老化皮膚(aging skin)」とは、本明細書で使用される場合、皮膚の表皮の進行性の構造的かつ機能的変性を意味するものとする。老化皮膚は、ミトコンドリアの細胞代謝の副生成物として活性酸素(ROS)の増加によって主に引き起こされる。ROSは、次に、膜、酵素、およびデオキシリボ核酸(DNA)のような重要な細胞構成成分に損傷を引き起こし、細胞死を生じる。さらに、老化皮膚において、細胞増殖速度は表皮において低下し、皮膚の構造および機能の着実な悪化を誘導する。老化皮膚は、他の皮膚障害(例えば、湿疹、皮膚炎、角化症、および種々の形態の新生物(例えば、基底細胞癌および扁平上皮癌ならびに悪性黒色腫))の前兆であり得る。
【0100】
ここで請求項の範囲内の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書で開示されるとおりの方法の実施から当業者に明らかである。本明細書および以下の実験結果は、例示として考慮されるに過ぎず、本発明の範囲および趣旨は、以下の請求項によって示されることが意図される。
【実施例】
【0101】
実施例1. 材料および方法
細胞培養。 全ての細胞ベースのアッセイのために、以下の細胞株および培養法を使用した。SK-MEL-31ヒト皮膚細胞およびA204ヒト筋細胞を、ATCC(登録商標)から得、10% FBS、ならびに1% ペニシリンおよびストレプトマイシンを有するMoCoy-5A培地中で培養および維持した。PANC-1ヒト膵臓がん細胞を、ATCC(登録商標)から得、10% FBS、ならびに1% ペニシリンおよびストレプトマイシンを有するDMEM培地中で培養および維持した。
【0102】
96ウェルプレートに蒔く前に、細胞をトリプシン処理し、細胞計測器(Countess(登録商標) Automated Cell Counter, Invitrogen)を使用して計数した。次いで、細胞を、播種する前に、試験される各細胞タイプに適切な細胞密度へと懸濁した。具体的には、その細胞懸濁物を、SK-MEL-31細胞およびA204細胞の両方に関しては100μLの細胞培地あたり15,000細胞を、ならびにPANC-1細胞に関しては100μLの細胞培地あたり12,000細胞を含むように組み立てた。次いで、100μLの細胞懸濁物を、白い壁の組織培養処理した96ウェルプレート(Corning)の各ウェルに播種し、24時間、37℃で維持した。
【0103】
Cell Titer-Glo(CTG) ATPアッセイ。 細胞播種の24時間後、細胞に、100μLの1μM スタウロスポリン(Sigma-Aldrich)の1/3希釈物および以下の組成物のうちの1つを、Tecan D300e Digital Dispenser(Tecan)を使用して投与した; 100μM 合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1);ダイコン種子抽出物から単離された17.5μg/ml スルホラフェン(化合物2)および17.5μg/ml 陽性コントロール(化合物3)。試験した各細胞株に合計9箇所を使用した。
【0104】
細胞を、試験化合物で4時間(データは示さず)、48時間または72時間のいずれかにわたって処理した後、細胞を、およそ30分間にわたって室温で静置した。次いで、100μlのCellTiter-Glo Reagent(Promega)をプレートの各ウェルに添加し、各プレートをオービタルシェーカーで2分間混合して、細胞溶解を誘導した。振盪後、各プレートを室温で10分間インキュベートして、発光シグナルを安定化させた。次いで、そのシグナルを、EnVision Multilabel Reader(Perkin Elmer)で製造業者のプロトコールに従って読み取った。ミトコンドリア機能に対する各組成物の効果を、各ウェルに存在するATPの定量に基づいて決定し、それによって、存在するATPの量は、各ウェルに存在する細胞量に正比例する。具体的には、各化合物の効果を、以下の式を使用して計算した: 効果%=(X-コントロール培地のみ)/(コントロール-コントロールDMSO効果)×100%。
【0105】
実施例2: 安定なスルホラフェンの結果は、皮膚細胞においてミトコンドリアのATP生成を増加させる
安定化スルホラフェン(すなわち、合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)が、乾癬、または皮膚の老化のような皮膚のミトコンドリア障害を処置し得るかどうかを決定するために、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayを、上記のように、SK-MEL-31ヒト皮膚細胞に対して行った。このアッセイは、各ウェルに存在するATPの量を測定することによって、各ウェルに存在する生存皮膚細胞の数を決定した。簡潔には、検出は、ルシフェラーゼ反応を使用して、生細胞から存在するATPの量を測定することに基づいた。ミトコンドリア機能(すなわち、酸化的リン酸化からのATP生成)が、スタウロスポリン単独で処理した細胞と比較したときに、安定なスルホラフェンの投与後に増加した場合、その例示的な安定化スルホラフェン組成物は、皮膚のミトコンドリア障害を処置するために使用され得る。
【0106】
スタウロスポリン(STSP)は、Streptomyces staurosporeusから単離された細胞透過性アルカロイドである。スタウロスポリンは、プロテインキナーゼ(プロテインキナーゼCを含む)の強力な非選択的阻害剤であり、それは、細胞においてアポトーシスを誘導する。従って、スタウロスポリン単独で処理した細胞を、陰性コントロールとして使用した。
【0107】
STSPでの処理後に、SK-MEL-31ヒト皮膚細胞に、100μMの合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離された17.5μg/mLのスルホラフェン(化合物2)、または17.5μg/mLの陽性コントロール(化合物3)を投与し、
図1A~1Bに示されるように、4時間(データは示さず)、48時間または72時間のいずれかにわたってインキュベートした。
【0108】
図1A~1Bに示されるデータは、安定化スルホラフェンを含む両方の化合物(すなわち、化合物1および化合物2)が、STSPでの処理後に皮膚細胞においてATP生成の増加を生じ、これは、陽性コントロール化合物(化合物3)での処理後に示されたものに匹敵することを示す。従って、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、酸化的リン酸化およびATP生成をインビトロで増加させることによって、ミトコンドリア機能を増加させることが示されている。まとめると、これらのデータは、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、乾癬および皮膚の老化のような皮膚のミトコンドリア障害を処置するために使用され得ることを示す。
【0109】
実施例3: 安定なスルホラフェンの結果は、筋細胞においてミトコンドリアのATP生成を増加させる
安定化スルホラフェン(すなわち、合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)が、筋組織におけるミトコンドリアミオパチー(例えば、慢性疲労症候群(CFS)、本態性振戦、またはパーキンソン)を処置し得るかどうかを決定するために、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayを、上記のように、A204ヒト筋細胞に対して行った。実験を、実施例2(上記)で示されるように行った。従って、ミトコンドリア機能(すなわち、酸化的リン酸化からのATP生成)が、スタウロスポリン単独で処理した細胞と比較したときに、安定なスルホラフェンの投与後に増加した場合、その例示的な安定化スルホラフェン組成物は、筋のミトコンドリアミオパチーを処置するために使用され得る。
【0110】
STSPでの処理後に、A204ヒト筋細胞に、100μMの合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離された17.5μg/mLのスルホラフェン(化合物2)、または17.5μg/mLの陽性コントロール(化合物3)を投与し、
図2A~2Bに示されるように、4時間(データは示さず)、48時間または72時間のいずれかにわたってインキュベートした。
【0111】
図2A~2Bに示されるデータは、安定化スルホラフェンを含む両方の化合物(すなわち、化合物1および化合物2)が、STSPでの処理後に筋細胞においてATP生成の増加を生じ、これは、陽性コントロール化合物(化合物3)での処理後に示されたものに匹敵することを示す。従って、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、酸化的リン酸化およびATP生成をインビトロで増加させることによって、ミトコンドリア機能を増加させることが示されている。まとめると、これらのデータは、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、ミトコンドリアミオパチー(例えば、CFSおよび本態性振戦)を処置するために使用され得ることを示す。
【0112】
実施例4: 安定なスルホラフェンの結果は、他の(膵臓)細胞においてミトコンドリアのATP生成を増加させる
安定化スルホラフェン(すなわち、合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体)が、他の細胞タイプ(例えば、内分泌機能をモジュレートする膵臓)におけるミトコンドリア障害を処置し得るかどうかを決定するために、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayを、上記のように、PANC-1ヒト膵臓細胞に対して行った。実験を、実施例2および3(上記)で示されるように行った。従って、ミトコンドリア機能(すなわち、酸化的リン酸化からのATP生成)が、スタウロスポリン単独で処理した細胞と比較したときに、安定なスルホラフェンの投与後に増加した場合、その例示的な安定化スルホラフェン組成物は、他の器官からの、またはPCOS、前立腺ミオパチー、および甲状腺障害のようなホルモンベースのミトコンドリア障害を処置するために使用され得る。
【0113】
ここでは、実施例2および3にあるように、STSPでの処理後に、PANC-1細胞に、100μMの合成スルホラフェン/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体(化合物1)、ダイコン種子抽出物から単離された17.5μg/mLのスルホラフェン(化合物2)、または17.5μg/mLの陽性コントロール(化合物3)を投与し、4時間(データは示さず)、48時間または72時間のいずれかにわたってインキュベートした。
【0114】
図3A~3Bに示されるデータは、安定化スルホラフェンを含む両方の化合物(すなわち、化合物1および化合物2)が、STSPでの処理後に膵臓細胞においてATP生成の増加を生じ、これは、陽性コントロール化合物(化合物3)での処理後に示されたものに匹敵することを示す。従って、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、酸化的リン酸化およびATP生成をインビトロで増加させることによって、ミトコンドリア機能を増加させることが示されている。まとめると、これらのデータは、本開示の安定化スルホラフェン組成物が、膵臓のような他の組織におけるミトコンドリア障害を処置するために使用され得ることを示す。