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▶ イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】新規インターロイキン2およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/55 20060101AFI20240701BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240701BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240701BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240701BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240701BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240701BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240701BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 K
A61K47/68
A61K38/20
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/26
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020571641
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2019107055
(87)【国際公開番号】W WO2020057646
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】201811108649.X
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】カン、リーシャン
(72)【発明者】
【氏名】クー、チュンイン
(72)【発明者】
【氏名】フー、フォンケン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ショアイシアン
(72)【発明者】
【氏名】シー、シンチェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンジャン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104231068(CN,A)
【文献】特表2014-506793(JP,A)
【文献】特表2017-518361(JP,A)
【文献】特表2020-529977(JP,A)
【文献】特表2021-531013(JP,A)
【文献】Nature Communications,2017年,Vol.8,15373
【文献】Nature,2012年,Vol.484, No.7395,pp.529-533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型IL-2と比較して、
(1)K35E/R38E/F42A/T37E、
(2)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、
(3)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、
(4)K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、
(5)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、
(6)K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37D、
(7)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R/T37D、
(8)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R/T37D、
(9)K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37D、
(10)K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37E、
(11)K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E、
(12)K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y/L72K
(13)K35D/T37E/R38D/T41E/K43E/L72F、
(14)K35E/R38E/T41E/K43Y/Y45K/L72F、
(15)K35D/T37E/R38D/K43E/L72F、
(16)K35E/T37D/R38D/K43E/L72F、
(17)K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F、および
(18)K35D/R38E/T41E/K43E
からなる群から選択される変異の組み合わせを含み、
前記野生型IL-2がヒトIL-2であるか、または配列番号1で表される配列もしくはそれに対して少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%を有する配列を含み、かつ
野生型IL-2と比較して、排除または低減されたIL-2Rα受容体への結合親和性、増強されたIL-2Rβ受容体への結合親和性、ならびに哺乳動物細胞においてFc融合タンパク質の形態で発現されるとき、改善された発現量および/または純度を有
配列番号1で表される配列と90%以上の同一性を有するものである、
IL-2変異タンパク質。
【請求項2】
125位にアミノ酸残基S有する、請求項1に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項3】
K35E/R38E/F42A/T37Eの変異の組み合わせを含む、請求項1に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項4】
野生型IL-2と比較して、
(1)K35D/T37E/R38E/T41E/K43E/Y45K/L72F/H79E/R81D/P82I/R83E/S87D、
(2)K35E/R38D/T41E/K43E/L72F/R81D/P82A/R83E/S87E/I92M、
(3)K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61L/E68R/R81D/P82A/R83E/S87E/I92L、
(4)K35D/T37K/R38E/T41K/F42Q/K43D/E68Y/H79E/R81D/P82T/R83E/S87E/V91L、
(5)K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F/R81D/P82T/R83E/S87D/I92L、
(6)K35E/T37Y/R38W/T41Y/F42E/K43E/Y45K/L72K/H79Q/R81D/P82A/R83E/S87E、
(7)K35D/R38W/F42E/K43E/Y45K/E68K/R81D/P82T/R83E/S87E/I92M、
(8)K35E/T41Q/F42R/K43D/E68Y/H79D/R81D/S87D/I92L、
(9)K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y/H79E/R81N/P82A/R83E/S87D/I92L、
(10)K35D/R38F/T41E/F42E/Y45K/E68Y/R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92L、および
(11)K35E/T37K/R38E/T41E/K43E/L72F/H79E/R81D/P82A/R83E/S87E/I92M
からなる群から選択される変異の組み合わせを含み、
前記野生型IL-2がヒトIL-2であるか、または配列番号1で表される配列もしくはそれに対して少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%を有する配列を含み、かつ
野生型IL-2と比較して、排除または低減されたIL-2Rα受容体への結合親和性、増強されたIL-2Rβ受容体への結合親和性、ならびに哺乳動物細胞においてFc融合タンパク質の形態で発現されるとき、改善された発現量および/または純度を有
配列番号1で表される配列と90%以上の同一性を有するものである、
IL-2変異タンパク質。
【請求項5】
125位にアミノ酸残基S有する、請求項4に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項6】
野生型IL-2と比較して、以下の特性:
-低減された高親和性IL-2R受容体(IL-2Rαβγ)への結合親和性、
-増加された中程度の親和性IL-2R受容体(IL-2Rβγ)への結合親和性、
-低下されたCD25細胞に対する活性化、
-低減されたCD25CD8T細胞におけるIL-2が介在するシグナル伝達への刺激、
-除去または低減されたCD25Treg細胞の活性化に対する偏向性、
-低下されたIL-2誘導性Treg細胞による免疫反応のダウンレギュレート作用、
-維持または増強されたCD25細胞に対する活性化作用、
-増加されたエフェクターT細胞とNK細胞のIL-2が介在する増殖と活性化の刺激、ならびに
-向上された抗腫瘍効果
の1つ以上を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項7】
哺乳動物細胞においてFc抗体断片に融合した形態で発現されるとき、ワンステップタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー精製後、SEC-HPLCによって検出される純度が70%以上、80%以上、または90%以上に達する、請求項1~6のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項8】
哺乳動物細胞においてFc抗体断片に融合した形態で発現されるとき、野生型IL-2タンパク質よりも優れた発現量を有し、以下:
-K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、
-K35E/R38E/F42A/T37E、および
-K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E、
からなる群から選択される変異の組み合わせを含む、または
野生型IL-2と比較して、低減されたCD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力を有し、かつ、以下:
K35E/R38E/F42A/T37E、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37E、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E、および
K35D/R38E/T41E/K43E
からなる群から選択される変異の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項9】
野生型IL-2と比較して、CD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力が低減されており、かつ、CD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力が増強されており、以下:
K35D/R38W/F42E/K43E/Y45K/E68K/R81D/P82T/R83E/S87E/I92M、および
K35D/R38F/T41E/F42E/Y45K/E68Y/R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92L
から選択される変異の組み合わせを含む、請求項4または5に記載のIL-2変異タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質を含む、融合タンパク質。
【請求項11】
Fc抗体断片と融合している、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質および抗原結合分子を含む、免疫複合体。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質、請求項10または11に記載の融合タンパク質、または請求項12に記載の免疫複合体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチドまたは請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
IL-2変異タンパク質またはその融合タンパク質もしくは免疫複合体を製造する方法であって、請求項15に記載の宿主細胞を、IL-2変異タンパク質または融合タンパク質または免疫複合体の発現に適した条件下で培養することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質、請求項10または11に記載の融合タンパク質、または請求項12に記載の免疫複合体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
癌の治療のための医薬の製造における、請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質、請求項10または11に記載の融合タンパク質、請求項12に記載の免疫複合体、または請求項17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
対象における免疫系を刺激するための医薬の製造における、請求項1~9のいずれか1項に記載のIL-2変異タンパク質、請求項10または11に記載の融合タンパク質、または請求項12に記載の免疫複合体の使用。
【請求項20】
(i)IL-2Rα受容体への野生型IL-2タンパク質の結合親和性を排除または低減するか、および/またはIL-2Rβ受容体への結合親和性を増強し、かつ(ii)哺乳動物細胞においてFc融合タンパク質の形態で発現されるとき、野生型IL-2タンパク質の発現量および/または純度が改善される方法であって、前記方法が請求項1~5のいずれか1項に記載の変異の組み合わせを野生型IL-2タンパク質に導入し、IL-2変異タンパク質を生成することを含み、前記野生型IL-2タンパク質が配列番号1と少なくとも90%の同一性を有前記IL-2変異タンパク質が配列番号1で表される配列と90%以上の同一性を有するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規インターロイキン2(IL-2)変異タンパク質およびその使用に関する。特に、本発明は、野生型IL-2 2と比較して、IL-2Rα受容体結合能が低減され、および/またはIL-2Rβ受容体結合能が増加されたIL-2変異タンパク質に関する。本発明はまた、当該IL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質、免疫複合体、および当該IL-2変異タンパク質をコードする核酸、当該核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。本発明はさらに、当該IL-2変異タンパク質を調製する方法、当該IL-2変異タンパク質を含む医薬組成物、および当該変異タンパク質の治療的使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
T細胞成長因子(TCGF)とも呼ばれるインターロイキン2(IL-2)は、活性化T細胞、特にCD4+ Tヘルパー細胞によって主に産生される多能性サイトカインである。真核細胞において、ヒトIL-2(uniprot:P60568)は153アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、N末端20アミノ酸を除去した後、成熟した分泌性IL-2を産生する。他の種のIL-2の配列も開示されており、NCBI Ref Seq No. NP032392(マウス)、NP446288(ラット)またはNP517425(チンパンジー)を参照されたい。
【0003】
インターロイキン2は、その機能に不可欠な4次構造を形成する4つの反平行両親媒性 αヘリックスを有する(Smith,Science 240,1169-76(1988);Bazan,Science257,410-413(1992))。ほとんどの場合、IL-2は、インターロイキン2受容体α(IL-2Rα;CD25)、インターロイキン2受容体β(IL-2Rβ;CD122)およびインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ;CD132)の3つの異なる受容体によって機能する。IL-2RβおよびIL-2RγはIL-2のシグナル伝達に重要であるが、IL-2Rα(CD25)はシグナル伝達に必要ではないが、IL-2の受容体への高い親和力結合を与えることができる(Krieg etal., Proc Natl Acad Sci 107,11906-11(2010))。IL-2R α、β、およびγの組み合わせから形成される三量体受容体(IL-2αβγ)は、IL-2高親和力受容体(Kは約10pM)であり、βおよびγからなる二量体受容体(IL-2βγ)は、中間親和力受容体(Kは約1nM)であり、αサブユニットのみから形成されるIL-2受容体は、低親和力受容体である。
【0004】
免疫細胞は二量体または三量体IL-2受容体を発現する。二量体受容体は細胞傷害性CD8 T細胞とナチュラルキラー細胞(NK)で発現し、三量体受容体は主に活性化リンパ球とCD4 CD25FoxP3抑制的制御性T細胞(Treg)で発現する(Byman, O.およびSprent. J. Nat. Rev. Immunol. 12, 180-190(2012))。静止状態のエフェクターT細胞およびNK細胞は、細胞表面上にCD25を有さないので、IL-2に対して比較的非感受性である。一方、Treg細胞は体内で常に最高レベルのCD25を発現しているため、通常IL-2はTreg細胞の増殖を優先的に刺激する。
【0005】
IL-2は、異なる細胞上のIL-2受容体との結合を介して、免疫反応における多重作用を介在する。一方、IL-2は免疫系刺激剤として、T細胞の増殖と分化を刺激し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成を誘導し、B細胞の増殖と分化と免疫グロブリンの合成を促進し、そしてナチュラルキラー(NK)細胞の生産、増殖、活性化を刺激することから、免疫治療剤としてがんやレンチウイルス感染の治療に使用されることが承認されている。一方、IL-2は、免疫抑制性CD4+CD25+制御性T細胞(すなわち、Treg細胞)の活性化および増殖を促進でき(Fontenot etal.,Nature Immunol 6,1142-51(2005);D’CruzおよびKlein,Nature Immunol 6,1152-59(2005);MaloyおよびPowrie,Nature Immunol6,1171-72(2005))、免疫抑制をもたらす。さらに、高用量IL-2は、患者において血管漏出症候群(VLS)を引き起こす可能性がある。IL-2は、肺内皮細胞上のIL-2三量体受容体(IL-2αβγ)と直接結合することによって肺浮腫を誘導することが示されている(Krieg etal., Proc Nat Acad Sci USA107,11906-11(2010))。
【0006】
IL-2免疫療法に関連する上述の問題を克服するために、IL-2の様々な受容体に対する選択性または選好性を変化させることにより、IL-2療法の毒性を低下させ、および/またはその有効性を増大させることが提案されている。例えば、IL-2モノクローナル抗体とIL-2との複合物を用いて、CD25ではなくCD122を発現する細胞をIL-2に標的化することにより、CD122high集団の優先的増幅を誘導し、インビボIL-2治療効果を増強することが提案されている (Boyman etal., Science 311, 1924-1927(2006))。Oliver AST etal.(US2018/0142037)は、IL-2Rα受容体に対する親和性を低下させるために、IL-2のアミノ酸残基位置42、45および72に三重変異F42A/Y45A/L72Gを導入することを提案している。Aron M. Levin etal.(Nature, Vol 484, p529-533, DOI:10.1038/nature10975)は、「superkine」と呼ばれるIL-2変異体IL-2H9を提案し、当該変異体は、IL-2Rβ結合の増強を伴う五重変異L80F/R81D/L85V/I86V/I92Fを含み、これによりCD25細胞に対する刺激効果を増強した。Rodrigo Vazquez-Lombardi etal.(Nature Communications, 8:15373, DOI: 10.1038/ncomms15373)は、アミノ酸残基位置38、43および61にそれぞれ残基変異R38D/K43E/E61Rを有する三重変異ヒトIL-2変異タンパク質IL-23Xを提案し、これによりIL-2Rαに対する当該変異タンパク質の非結合がもたらされ、CD25細胞に対するIL-2の活性化偏向性の排除を達成する。しかし、CD25細胞に対するIL-23Xの活性化偏向性は依然として存在し、かつ当該変異タンパク質の発現量は比較的低く、その後の薬物としての大量生産には不利である。
【0007】
免疫調節および疾患におけるIL-2の役割を考慮すると、改善された特性を有する新規IL-2分子を開発する必要性が本分野において依然として存在する。
【発明の内容】
【0008】
本発明は、野生型IL-2と比較して改善されたIL-2受容体選択性/偏向性を有する新規IL-2変異タンパク質を提供することによって、上記の要件を満たす。
【0009】
したがって、1つの態様において、本発明は、新規IL-2変異タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、以下の1つ以上の特性を有する。
【0010】
(i)野生型IL-2と比較して、IL-2Rα受容体への結合親和性が低下すること、
(ii)野生型IL-2と比較して、IL-2Rβ受容体への結合親和性が増強すること、
(iii)CD25細胞に対するIL-2の活性化偏向性を効果的に低下させること、
(iv)CD25細胞を効果的に活性化すること。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、高い発現量の特性を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、IL-2のアミノ酸残基領域35-72に少なくとも1つの変異を含むIL-2変異タンパク質を提供する。他の実施形態において、本発明は、IL-2のアミノ酸残基領域79-92に少なくとも1つの変異を含むIL-2変異タンパク質を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、アミノ酸領域35-72および79-92に2つ以上、好ましくは3つ以上の変異を含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、IL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質および免疫複合体、医薬組成物および組み合わせ製品、IL-2変異タンパク質をコードする核酸、前記核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに本発明のIL-変異タンパク質、融合タンパク質および免疫複合体を産生する方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明のIL-2変異タンパク質を用いて疾患を治療する方法、および対象の免疫系を刺激する方法および使用を提供する。
【0015】
以下、本発明を、図面および実施形態を参照してさらに説明する。しかし、これらの図面および実施形態は、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではなく、当業者が容易に思いつく変更は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、IL-2とIL-2Rαとの複合物の結晶構造を示す。
図2図2は、IL-2とIL-2Rβとの複合物の結晶構造を示す。
図3A-B】図3A-Bは、変異ライブラリーIBYDL029並びに変異ライブラリーIBYDL030およびIBYDL031を構築するためのプライマー設計を示す。
図4A-D】図4A-Dは、変異ライブラリーIBYDL029およびIBYDL031からスクリーニングされたいくつかのIL-2変異タンパク質およびその配列、並びに2つのライブラリーから選択された変異の組み合わせから生成されたいくつかの新規変異タンパク質およびその配列を示す。
図5A-D】図5A-Dは、選択および構築されたいくつかのIL-2mutant-FCがCD8 CD25/CD25 T細胞上でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図6図6は、ヒトインターロイキン(IL-2)の成熟タンパク質配列(配列番号1)およびそのアミノ酸残基番号を示し、かつ変異タンパク質IL-23XおよびIL-2H9との配列アラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別に定義しない限り、本出願に用いられる全ての技術と科学用語はいずれも、当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、下記の用語を定義する。
【0018】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0019】
用語「および/または」は選択可能オプションのうちのいずれか1項または選択可能オプションのいずれか2項または複数項の組み合わせを指すと理解すべきである。
【0020】
本出願に使用される場合、用語「包含する」または「含む」とは、前記要素、整数またはステップを含むが、他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本出願において、用語「包含する」または「含む」を用いる場合、特記しない限り、述べられた要素、整数またはステップからなる場合を含む必要がある。例えば、ある変異または変異の組み合わせを「包含する」または「含む」IL-2変異タンパク質に言及する場合、その変異または変異の組み合わせのみを有するIL-2変異タンパク質を包含することも意図される。
【0021】
本明細書において、野生型「インターロイキン-2」または「IL-2」とは、本発明の変異または変異の組み合わせを導入するテンプレートである親IL-2タンパク質、好ましくは天然に存在するIL-2タンパク質、例えば、未処理(例えば、シグナルペプチドの除去なし)の形態および処理済み(例えば、シグナルペプチドの除去あり)の形態を含む、ヒト、マウス、ラット、非ヒト霊長類由来の天然IL-2タンパク質を指す。さらに、この表現には、天然に存在するIL-2対立遺伝子変異体およびスプライシング変異体、アイソタイプ、相同体、および種相同体も含まれる。この表現には、天然IL-2の変異体も含まれ、例えば、前記変異体は、天然IL-2と少なくとも95%-99%またはそれ以上の同一性を有してもよく、または1-10個以下または1-5個以下のアミノ酸変異(特に保存的アミノ酸置換)を有してもよく、天然IL-2タンパク質と実質的に同じIL-2Rα結合親和性および/またはIL2Rβ結合親和性を有する。したがって、いくつかの実施形態において、野生型IL-2は、天然IL-2タンパク質と比較して、IL-2受容体へのその結合に影響を及ぼさないアミノ酸変異、例えば、変異C125Sを125位に導入した天然ヒトIL-2タンパク質(uniprot:P60568)は、本発明の野生型IL-2に属する。野生型ヒトIL-2タンパク質の例を配列番号1に示す。いくつかの実施形態において、野生型ヒトIL-2配列は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、さらには少なくとも96%、97%、98%、または99%またはさらに高いアミノ酸配列同一性を有する。
【0022】
本明細書において、アミノ酸変異は、アミノ酸置換、欠失、挿入、および付加であってもよい。置換、欠失、挿入および付加の任意の組み合わせを行って、所望の特性(例えば、IL-2Rα結合親和性の低下)を有する最終変異タンパク質構築物を得ることができる。アミノ酸の欠失および挿入は、ポリペプチド配列のアミノおよび/またはカルボキシ基末端における欠失および挿入を含む。例えば、アラニン残基は、全長ヒトIL-2位置1で欠失することができる。好ましいアミノ酸変異はアミノ酸置換である。いくつかの実施形態において、本発明に記載の特定の変異アミノ酸位置に変異を導入することによって、変化した受容体結合特性を有するIL-2変異タンパク質を得ることが意図される場合、位置的に非保存的アミノ酸置換を行うことが好ましい。いくつかの実施形態において、好ましい非保存的アミノ酸置換は、疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸で置換すること、または異なる極性または反対電荷のアミノ酸で置換することを含む。
【0023】
本発明において、アミノ酸位置を言及する場合、配列番号1の野生型ヒトIL-2タンパク質(IL-2WTとも呼ばれる)アミノ酸配列(図6に示す)を参照することにより決定される。アミノ酸配列アラインメントを実施することによって(例えば、BLASTを使用して、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov /Blast.cgi?PROGRAM=blastp& PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthomeから取得可能なBasic Local Alignment Search Tool、デフォルトパラメータを使用して、アラインメントを実施する)、他のIL-2タンパク質またはポリペプチド(全長配列または切断断片を含む)上の対応するアミノ酸位置を同定する。したがって、本発明において、例えば、「F42」を言及する場合、配列番号1の42位のフェニルアラニン残基F、または他のIL-2配列上の対応する位置にアラインメントしたアミノ酸残基を指す。複数の位置の組み合わせを言及する場合、例えばF42位、R81位およびS87位をF42/R81/S87と表すことができる。
【0024】
本明細書において、IL-2変異タンパク質に言及するとき、変異は以下のように記載される。アミノ酸置換は、[元のアミノ酸残基/位置/置換されたアミノ酸残基]として表される。例えば、位置92のイソロイシンはロイシンに置換され、I92Lと表すことができる。所与の位置(例えば、H79位)に複数の代替アミノ酸置換方式(例えばD、E、Q)が存在し得る場合、置換は、(1)H79D、E、Q、または(2)H79D/E/Qと表すことができる。相応して、複数の所与の位置(例えばR81、R83およびS87)における組み合わせ変異は、1)R81D/N、R83E、I92L/F/Y、または(2)R81D/S87D/I92Lと表すことができる。
【0025】
本明細書では、「配列同一性パーセント」は、比較ウィンドウ内で2つの最適アラインメント配列を比較することによって決定することができる。好ましくは、配列同一性は、参照配列(例えば、配列番号1)の全長にわたって決定される。比較のための配列アラインメント方法は、本分野において周知である。配列同一性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムは、例えば、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムを含む(Altschul etal.,Nuc. Acids Res.25: 3389-402,1977およびAltschul etal. J.Mol. Biol. 215: 403-10, 1990参照)。BLAST分析のためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)から公的に入手可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。本出願の目的のために、同一性パーセントは、通常、デフォルトパラメータとして設定されたBLAST2.0アルゴリズムを用いて決定される。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「保存的置換」は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの生物学的機能に悪影響を及ぼさない、または変化させないアミノ酸置換を意味する。例えば、保存的置換は、部位特異的変異誘発およびPCR介在性変異誘発などの本分野で公知の標準的な技術によって導入することができる。典型的な保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を、類似の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸に置換することを意味する。以下の6組はそれぞれ、互いに典型的な保存的置換が可能なアミノ酸を含む。1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。例えば、野生型IL-2タンパク質は、配列番号1に対して保存的アミノ酸置換を有してもよく、または保存的アミノ酸置換のみを有してもよい。さらに例えば、本発明の変異IL-2タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、本発明の特徴的な変異に加えて保存的アミノ酸置換を有してもよく、または保存的アミノ酸置換のみを有してもよい。
【0027】
「親和性」または「結合親和性」は、結合組のメンバー間の相互作用の固有結合能を反映する。分子Xのその結合配偶子Yに対する親和性は、平衡解離定数(K)によって示され、平衡解離定数は、解離速度定数と結合速度定数(それぞれkdisとkonである)との比値である。結合親和性は本分野の既知の常用方法で測定される。親和性を測定するための具体的な方法は、本明細書におけるバイオレイヤー干渉法(BLI)技術によって測定されることである。さらに、IL-2変異タンパク質の異なる受容体に対する親和性の変化は、本明細書に記載のフローサイトメトリーによって予備的に評価することもできる。例えば、酵母細胞上に提示された野生型IL-2および変異IL-2タンパク質をビオチン化したIL-2RβまたはIL-2Rα受容体で染色分析することにより、野生型IL-2と比較して、IL-2R受容体IL-2RβまたはIL-2Rαとの結合親和性が変化するIL-2変異タンパク質を同定する。
【0028】
本明細書において、抗体結合分子は、抗原と特異的に結合し得るポリペプチド分子、例えば免疫グロブリン分子、抗体または抗体断片、例えばFab断片およびscFv断片である。
【0029】
本明細書において、抗体Fc断片とは、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を意味し、天然配列Fc断片および変異体Fc断片を含むことができる。1つの実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc断片は重鎖のCys226からまたはPro230からカルボキシル基末端に延伸する。他の実施形態において、Fc-断片のC-末端リジン(Lys447)が存在してもよく、存在しなくてもよい。他の実施形態において、Fc断片は、L234A/L235A変異などの変異を含んでもよい。本出願では特記しない限り、Fc断片におけるアミノ酸残基の番号付けは、EU番号付けシステムによるものであり、EU索引とも呼ばれる。例えば、Kabat、E.A. et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載される。
【0030】
本発明の種々の態様は、以下の各セクションにおいてさらに詳細に説明される。
【0031】
1.本発明のIL-2変異タンパク質
本発明は、1つの態様において、IL-2受容体選択性/偏向性が改善され、より具体的には、IL-2Rα受容体への結合親和性が低減または排除され、および/またはIL-2Rβ受容体への結合親和性が増強された新規IL-2変異タンパク質を提供する。
【0032】
本発明のIL-2変異タンパク質の有利な生物学的性質
IL-2タンパク質は、IL-2受容体と相互作用することによってシグナル伝達を誘発し、機能する。野生型IL-2は、異なるIL-2受容体に対して異なる親和性を示す。野生型IL-2との親和性が低いIL-2βおよびIL-2γ受容体を、静止エフェクター細胞(CD8細胞傷害性T細胞およびNK細胞を含む)上で発現した。野生型IL-2との親和性が高いIL-2Rαを、制御性T細胞(Treg)細胞および活性化エフェクター細胞上で発現した。高い親和性のために、野生型IL-2は、細胞表面のIL-2Rαと優先的に結合し、IL-2Rβγを動員し、IL-2Rβγを介して下流のp-STAT5シグナルを放出し、Treg細胞および活性化エフェクター細胞を刺激する。したがって、理論に束縛されるものではないが、IL-2Rα受容体に対するIL-2の親和性を低減または排除することは、IL-2がCD25細胞を優先的に活性化する偏向を低減し、IL-2介在性Treg細胞の免疫ダウンレギュレート作用を低減するであろう。理論に束縛されるものではないが、IL-2β受容体に対する親和性の維持または増強は、CD8細胞傷害性T細胞およびNK細胞などのエフェクター細胞に対するIL-2の活性化作用を維持または増強し、それによって免疫刺激作用を達成する。
【0033】
本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2がIL-2Rαと相互作用する領域(アミノ酸残基35-72位)および/またはIL-2がIL-2Rβと相互作用する領域(アミノ酸残基79-92位)に1つ以上の変異、特に3つ以上の変異を導入することによって、IL-2変異タンパク質のIL-2Rαへの結合を減少または非結合にし、および/またはIL-2Rβへの結合を不変または増強させる。これにより、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して改善された性質を有し、例えば、以下の1つ以上を含む。
【0034】
(1)IL-2Rα受容体への結合親和性の低減または排除、
(2)IL-2Rβ受容体への結合親和性の増強、
(3)高親和性IL-2R受容体(IL-2Rαβγ)への結合親和性の低減、
(4)中程度の親和性IL-2R受容体(IL-2Rβγ)への結合親和性の増加、
(5)CD25細胞(特に活性化CD8T細胞およびTreg細胞)におけるIL-2シグナル伝達の活性化、特にSTAT5リン酸化シグナルの活性化能の低下、
(6)IL-2介在性CD25細胞(特に、活性化CD8T細胞およびTreg細胞)の活性化および増殖の減少、
(7)Treg細胞の増殖を優先的に刺激するIL-2の偏向の低減または解消、
(8)IL-2誘導下でのTreg細胞の免疫ダウンレギュレート作用の低減、
(9)特に、CD25細胞(特にCD25Tエフェクター細胞およびNK細胞)に対する活性化作用の保持または増強、
(10)IL-2介在性エフェクターT細胞およびNK細胞の活性化および増殖の増加、
(11)免疫刺激作用の向上、
(12)抗腫瘍効果の向上。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、上記(1)の特性を有し、好ましくは、(3)および(5)-(8)からなる群から選択される1つ以上、特に全ての特性をさらに有し、より好ましくは(2)および(9)-(12)からなる群から選択される1つ以上、特に全ての特性をさらに有する。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、上記(2)の特性を有し、好ましくは、(9)-(12)から選択される1つ以上、特に全ての特性をさらに有し、より好ましくは(1)、(3)および(5)-(8)からなる群から選択される1つ以上、特に全ての特性をさらに有する。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質はまた、高親和性受容体IL-2αβγへのIL-2の結合が介在するインビボ毒性の減少という特性を野生型IL-2に対して有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、改善された薬物形成特性を有し、例えば、哺乳動物細胞、例えばH293T細胞において発現される場合、(i)野生型IL-2タンパク質よりも優れた発現量、(ii)野生型IL-2タンパク質よりも優れた均質性、および(iii)より高いタンパク質純度まで精製しやすいこと、から選択される1つ以上の特性を有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して発現レベルの増加を示す。本発明のいくつかの実施形態において、発現の増加は哺乳動物細胞発現系で起こる。発現レベルは、細胞培養上清(好ましくはワンステップアフィニティークロマトグラフィー精製後の上清)中の組換えIL-2タンパク質の量を定量的または半定量的に分析することを可能にする任意の適切な方法によって決定することができる。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、哺乳動物細胞において発現量を少なくとも1.1倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、または4倍以上増加させる。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、一次タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー精製後、本発明のIL-2変異タンパク質産物の純度は、70%以上、または80%以上、または90%以上に達することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質純度は、SEC-HPLC技術によって検出される。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2(例えば、配列番号1に示されるIL-2WT)と比較して、IL-2Rα受容体に対する親和性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも25倍、特に少なくとも30倍、50倍、または100倍以上低下させる。好ましい実施形態において、本発明の変異タンパク質はIL-2Rα受容体と結合しない。結合親和性は、本発明のIL-2変異タンパク質、例えばFc断片と融合した本発明のIL-2変異タンパク質と受容体IL-2Rα受容体との平衡解離定数(K)をバイオレイヤー干渉法(BLI)技術によって測定することによって決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質(例えば配列番号1に示されるIL-2WT)は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rβ受容体に対する親和性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも25倍、特に少なくとも30倍、50倍、または100倍、より好ましくは少なくとも150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、または500倍、または550倍以上増強させる。結合親和性は、本発明のIL-2変異タンパク質、例えばFc断片と融合した本発明のIL-2変異タンパク質と受容体IL-2Rβ受容体との平衡解離定数(K)をバイオレイヤー干渉法(BLI)技術によって測定することによって決定することができる。1つの実施形態において、受容体IL-2Rβ受容体に対する本発明のIL-2変異タンパク質の結合親和性K値は、IL-2-Fc融合タンパク質の形態でBLI測定において10.0E-09M未満、例えば6.0E-09M、3.0E-09M、2.0E-09M、1.0E-09M未満であり、さらに好ましくは9.0E-10M未満であり、例えば6.0E-10M、5.0E-10M、4.0E-10M、3.0E-10M、2.0E-10M、1.0E-10M未満であり、さらに好ましくは9.0E-11M、8.0E-11M、または7.0E-11M未満である。
【0042】
1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2介在性CD25細胞活性化および増殖の減少をもたらす。1つの実施形態において、CD25細胞はCD25 CD8 T細胞である。別の実施形態において、CD25細胞はTreg細胞である。1つの実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、IL-2変異タンパク質がCD25細胞中でSTAT5リン酸化シグナルを活性化することを検出することにより、IL-2変異タンパク質がCD25細胞を活性化する能力を同定する。例えば、半最大有効濃度(EC50)は、本出願の実施例に記載されるように、フローサイトメトリーによって細胞中のSTAT5リン酸化を分析することによって決定することができる。1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、例えばFC融合タンパク質の形態で、STAT5リン酸化測定試験において測定されるように、野生型IL-2タンパク質(例えば、配列番号1のヒトIL-2)と比較して、CD25細胞を活性化する能力を少なくとも10倍、50倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍またはそれ以上低下させる。
【0043】
1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2介在性CD25エフェクター細胞の維持されたかまたは増強された活性化および増殖をもたらす。1つの実施形態において、CD25細胞はCD8エフェクターT細胞またはNK細胞である。1つの実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、CD25細胞におけるSTAT5リン酸化シグナルを活性化するIL-2変異タンパク質のEC50値を検出することによって、CD25細胞を活性化するIL-2変異タンパク質の能力を同定する。1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、STAT5リン酸化測定試験において測定されるように、野生型IL-2タンパク質(例えば、配列番号1のヒトIL-2)と比較して、CD25細胞を活性化する能力が少なくとも1倍、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍、20倍、50倍、100倍、または150倍増加する。
【0044】
1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較してIL-2がCD25細胞に対して優先的に活性化する偏向性を除去または減少させる。1つの実施形態において、CD25細胞はCD25CD8T細胞である。別の実施形態において、CD25細胞はTreg細胞である。1つの実施形態において、IL-2変異体がCD25細胞を活性化する能力は、STAT5リン酸化測定試験において、それぞれCD25細胞およびCD25細胞においてSTAT5リン酸化シグナルを活性化するIL-2変異タンパク質のEC50値を検出することによって同定される。例えば、CD25細胞に対するIL-2変異タンパク質の活性化偏向は、CD25およびCD25T細胞上のSTAT5リン酸化シグナルを活性化するEC50値の比を計算することによって決定される。好ましくは、変異タンパク質のCD25に対する偏向性は、野生型タンパク質と比較して少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、2000倍、3000倍減少する。
【0045】
本発明の変異タンパク質
IL-2タンパク質は、4つのαヘリックス(A、B、C、D)構造を有する短鎖I型サイトカインファミリーのメンバーである。結晶構造(PDB:1Z92)の分析によれば、IL-2は、アミノ酸残基領域35-72において、CD25と相互作用する以下のアミノ酸部位35、37、38、41、42、43、45、61、62、68、72を有する。結晶構造(PDB:2ERJ)の分析によれば、IL-2は、アミノ酸残基領域12-23およびアミノ酸領域79-92においてCD122と相互作用する以下の部位12、13、15、16、19、20、23、79、81、82、83、84、87、88、91、92を有する。
【0046】
本発明者らは、IL-2のアミノ酸残基領域35-72(以下、「CD25結合領域」と略称する)のCD25相互作用部位(すなわち、部位35、37、38、41、42、43、45、61、62、68、72)に特定の変異を導入することにより、IL-2Rβへの結合を維持または増強しながら、IL-2RαへのIL-2の結合を低減または排除できることを見出した。本発明者らはまた、IL-2のアミノ酸残基領域79-92(以下、「CD122結合領域」と略称する)のCD122相互作用部位(すなわち、部位79、81、82、83、84、87、88、91、92)に特定の変異を導入することによって、IL-2βへのIL-2の結合を増強することができることを見出した。さらに、本発明者らは、2つの領域の変異を組み合わせて、IL-2Rα結合の低減または排除とIL-2β結合の増強の両方を有するIL-2変異体を提供できることも見出した。
【0047】
これにより、本発明は、野生型IL-2(好ましくはヒトIL-2、より好ましくは配列番号1で表される配列を含むIL-2)と比較して、IL-2Rα受容体への結合親和性を排除または低減し、および/またはIL-2Rβ受容体への結合親和性を増強する少なくとも1つの変異を含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【0048】
CD25結合領域の変異
1つの態様において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2がIL-2Rα受容体(CD25)と相互作用する部位、好ましくは配列番号1の35、37、38、41、42、43、45、61、62、68および72に対応する位置に、IL-2Rα受容体への結合親和性を排除または低減し、好ましくはIL-2Rβ結合親和性の増強をもたらす1つ以上の変異(好ましくは少なくとも3つ)を含む。好ましくは、上述したこれらの位置における変異はアミノ酸置換である。より好ましくは、これらの位置における変異は、それぞれ、35位:K35D,E、37位:T37D,E,R,K,F,Y,W、38位:R38D,E,F,Y,W,A,V、41位:T41K,R,M,F,Y,W,Q,E、42位:F42K,R,A,E,Q、43位:K43E,D,F,Y,W、45位:Y45R,K、61位:E61R,K,W,Y,L、62位:E62R,K,W,Y,L、68位:E68R,K,W,Y、72位:L72R,K,F,Y,Wから選択される置換残基である。より好ましくは、これらの位置における置換残基は、それぞれ、K35D,E、T37E,D,K,W,Y、R38W,E,D,V,F,K、T41E,Y,R,K,Q、F42E,R,K,Q,A、K43E,Y,D,W、Y45K,R、E61K,R,L,W、E68R,Y,W,K、L72K,Fから選択される。さらに好ましくは、これらの位置における置換残基は、それぞれ、K35D,E、T37D,E、R38D,E,F、T41E、F42A,E,Q、K43E,D,Y、Y45R,K、E61R,K,W,Y,L、E62R,W、E68R,K,W,Y、L72K,Fから選択される。最も好ましくは、前記変異タンパク質は、K35D,E、T37E、R38F,E、T41E、F42A,E、Y45K、E68Yから選択される1つ以上の変異を含む。さらなる実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、配列番号1の以下の位置に対応する位置における変異から選択される変異を含む。
【0049】
K35/T37/R38/T41/K43、
K35/T37/R38/T41/K43/L72、
K35/T37/R38/K43/Y45/L72、

K35/R38/T41/K43、
K35/R38/T41/K43/L72、
K35/R38/T41/K43/E61/L72、
K35/R38/T41/K43/Y45/L72、
K35/R38/T41/K43/Y45/E61/L72、

K35/R38/F42/Y45、
K35/R38/F42/Y45/E61/E68、
K35/R38/F42/E68/L72、
K35/R38/F42/K43/Y45/E68、
K35/R38/F42/K43/Y45/E61/E68、
K35/R38/F42/K43/Y45/E61/E68/L72、

K35/T37/R38/F42、
K35/T37/R38/F42/Y45/E61/E68、
K35/T37/R38/F42/K43/Y45/E61/E68、
K35/T37/R38/T41/F42/K43/Y45/E61/E68、
K35/T37/R38/F42/Y45/E61/E62/E68/L72。
【0050】
K35/T37/R38/F42/Y45/E62/E68、
K35/T37/R38/F42/K43/E68、
K35/T37/F42/K43、

K35/T37/R38/T41/L72、
K35/T37/R38/T41/F42、
K35/T37/R38/T41/F42/K43/E68、
K35/T37/R38/T41/F42/K43/Y45、
K35/T37/R38/T41/F42/K43/Y45/L72、
T37/R38/T41/F42/K43/Y45、
K35/T37/T41/F42/K43/Y45、
K35/T37/T41/F42/K43/E61/E68/L72、
K35/T41/F42/K43/E68、

K35/T37/R38/T41/K43/Y45、
K35/T37/R38/T41/K43/Y45/L72、
K35/T37/R38/T41/K43/Y45/E61/L72、
K35/T37/R38/K43/L72、

K35/R38/K43/L72、
K35/T37/E61/L72、
K35/Y45/E61/E68、

K35/R38/T41/F42、
K35/R38/T41/F42/Y45、
K35/R38/T41/F42/Y45/E68、
K35/R38/T41/E68、
K35/R38/Y45/E68/L72、

T37/K43/E68/L72、
T37/K43/Y45/E68/L72、
T37/K43/Y45/E61/E68/L72、
T37/F42/Y45/E61/E68/L72、
T37/T41/Y45/E61/E68/L72、

R38/T41/F42/Y45/E61/E68、
T41/K43/Y45/E61/E68/L72。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、以下から選択される変異の組み合わせを含む。
【0052】
K35D/T37K/R38E/T41K/F42Q/K43D/E68Y、K35D/T37D/T41F/F42E/K43D/Y45K、K35D/T37K/R38D/T41E/K43E、K35D/R38E/T41E/K43E、K35D/R38F/F42E/Y45K、K35E/R38D/T41E/K43E/L72F、K35D/T37E/R38D/K43E/L72F、K35E/R38D/T41E/K43E/E61K/L72F、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、T37E/K43E/Y45K/E68K/L72K、K35E/R38E/T41M/F42E/Y45K、K35D/T37E/R38D/T41E/K43E、K35D/T37D/R38E/K43E/L72F、K35E/T37D/R38D/K43E/L72F、K35D/R38D/T41E/K43E/Y45K/E61W/L72F、K35D/T37E/R38D/T41E/K43E/L72F、K35D/R38W/F42E/E68R/L72F、K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F、K35E/T37D/R38W/T41E/F42A/K43F/Y45K、K35D/T37E/R38D/T41R/F42Q、K35E/R38D/T41E/K43D/L72F、K35E/T41Q/F42R/K43D/E68Y、K35E/T37Y/R38W/T41Y/F42E/K43E/Y45K/L72K、K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45R/L72F、K35E/T37E/R38D/T41E/K43Y、T37E/T41K/Y45R/E61L/E68K/L72K、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61W/E68R、K35D/T37E/R38E/T41E/L72F、K35D/T37D/R38D/T41E/L72F、K35D/R38E/T41E/K43E/L72F、K35E/T37D/R38D/T41E/K43Y/Y45K、K35D/T37D/F42A/K43E、K35E/R38E/T41E/K43Y/Y45K/L72F、K35D/R38W/F42E/K43Y/Y45R/E61R/E68Y、R38K/T41R/F42Q/Y45K/E61Y/E68W、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61L/E68R、K35D/T37E/R38E/T41E/K43E/Y45K/L72F、K35E/R38D/K43E/L72F、K35E/R38E/K43E/L72F、K35D/T37E/R38D/L72F、K35E/R38E/T41E/K43E/L72F、K35E/T37E/R38E/F42A、K35D/R38F/T41E/F42E/Y45K/E68Y、K35E/T37K/R38E/T41E/K43E/L72F、K35D/R38D/K43E/L72F、K35D/R38A/T41Q/F42R、K35D/T37E/R38F/F42E/K43E/E68R、K35D/T37E/R38D/T41E/K43E/Y45K/E61W/L72F、T37D/R38F/T41F/F42E/K43E/Y45R、K35D/R38W/F42E/K43E/Y45K/E68K、K35E/T37D/R38E/T41E/K43Y、K35E/R38W/F42E/Y45K、K35E/T37D/R38W/F42E/Y45K/E68Y/L72R、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45R/E62R/E68R、K35E/T37D/T41F/F42A/K43E/E61W/E68K/L72W、T41K/K43D/Y45R/E61L/E68K/L72K、K35E/T37E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R、K35E/R38D/Y45K/E68R/L72K、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、T37E/K43D/E68Y/L72R、K35E/Y45R/E61L/E68W、K35E/T37D/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、K35E/T37D/R38V/F42E/K43W/Y45R/E61L/E68W、K35E/T37A/ R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R、K35E/T37W/R38E/T41Y/F42R/K43D/Y45K/E61K/E68W、K35D/R38W/F42K/K43Y/Y45R/E61R/E68W/L72K、K35E/T37E/E61W/L72K、K35E/R38Y/T41E/E68Y、K35E/T37E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R、T37D/K43D/Y45R/E61Y/E68K/L72R、K35D/R38W/F42E/K43Y/Y45R/E61R/E68Y/L72K、T37E/F42R/Y45R/E61Y/E68K/L72K、K35E/T37D/R38V/F42A/Y45K/E61R/E62W/E68Y/L72R。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、K35/R38/F42/T37、K35/R38/F42/Y45/E61/E68、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/T37から選択される位置における変異を含む。好ましくは、前記変異は、K35E,R38E,F42A,T37E、またはK35E,R38W,F42Q,Y45R/K,E61K/W/R,E68R、および場合によりT37D/Eを含む。最も好ましくは、前記変異は、以下から選択される変異の組み合わせである。
【0054】
K35E/R38E/F42A/T37E、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37E、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E。好ましくは、これらの変異の組み合わせを含む本発明のIL-2タンパク質は、野生型IL-2と比較してIL-2Rβ結合親和性を増加させ、より好ましくは、CD25細胞の活性化偏向性を減少させる。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/K43、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/K43/L72、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/K43/T37、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/K43/T37/T41から選択される位置における変異を含む。好ましくは、前記変異は、K35D/E,R38W/V/E,F42E/K/R,Y45R/K,E61R/L/K,E68Y/W,K43Y/W/Dを含み、場合によりT37D/W,T41Y、L72Kのうちの1つ以上をさらに含む。より好ましくは、前記変異は、以下から選択される変異の組み合わせである。
【0056】
K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y、K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y/L72K、K35D/R38W/F42K/Y45R/E61R/E68W/K43Y/L72K、K35E/R38V/F42E/Y45R/E61L/E68W/T37D/K43W、K35E/R38E/F42R/Y45K/E61K/E68W/T37W/K43D/T41Y。より好ましくは、前記変異は、
K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y/L72Kである。好ましくは、これらの変異の組み合わせを含む本発明のIL-2タンパク質は、野生型IL-2と比較してIL-2Rα受容体結合親和性が低減または排除され、IL-2Rβ結合親和性が向上する。
【0057】
いくつかの実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、K35/R38/T41/K43、K35/R38/T41/K43/T37、K35/R38/T41/K43/L72、K35/R38/T41/K43/T37/L72、K35/R38/T41/K43/E61/L72、K35/R38/T41/K43/Y45/L72、K35/R38/K43/T37/L72、K35/R38/K43/T37/L72/Y45から選択される位置における変異を含む。好ましくは、前記変異は、K35D/E,R38D/E,T41E,K43E/Yを含み、場合によりT37K/E,Y45K,E61K,L72Fから選択される1つまたは2つをさらに含む。または、好ましくは、前記変異は、K35D/E,R38D,K43E/Y,T37D/E,L72Fを含み、場合によりY45Kをさらに含む。より好ましくは、前記変異は、以下から選択される変異の組み合わせである。
【0058】
K35D/R38E/T41E/K43E、K35D/T37K/R38D/T41E/K43E、K35E/R38E/T41E/K43E/L72F、K35D/T37E/R38D/T41E/K43E/L72F、K35E/R38D/T41E/K43E/E61K/L72F、K35E/R38E/T41E/K43Y/Y45K/L72F、K35D/T37E/R38D/K43E/L72F、K35E/T37D/R38D/K43E/L72F、K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F。
より好ましくは、前記変異は、以下から選択される変異の組み合わせである。
【0059】
K35D/T37E/R38D/T41E/K43E/L72F、K35E/R38D/T41E/K43E/E61K/L72F、K35E/R38E/T41E/K43Y/Y45K/L72F、K35D/T37E/R38D/K43E/L72F、K35E/T37D/R38D/K43E/L72F、K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F。最も好ましくは、前記変異は、K35D/R38E/T41E/K43Eである。これらの変異の組み合わせを含む本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較してIL-2Rα受容体結合親和性が低減または排除され、IL-2Rβ結合親和性が向上することが好ましく、CD25細胞に対する活性化偏向性が低減することがより好ましい。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体に対する結合親和性を低減または排除する変異は、K35/R38/F42/Y45/E61/E68、K35/R38/F42/Y45/E61/E68/T37、K35/R38/F42/T37、K35/R38/T41/K43から選択される位置における変異を含む。
【0061】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、K35E/R38E/F42A/T37E、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37D、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37E、K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E、K35D/R38E/T41E/K43Eから選択される変異の組み合わせを含む。これらの変異の組み合わせは、本発明のIL-2変異タンパク質が野生型IL-2と比較してIL-2Rα受容体結合親和性を低減または排除し、IL-2Rβ結合親和性を増加させることを可能にし、CD25細胞の活性化偏向性を減少させる一方で、CD25エフェクター細胞の活性化および/または増殖を維持または増強する。
【0062】
さらに好ましい実施形態において、IL-2Rα受容体への結合親和性を低減または排除する変異は、K35D/T37E/R38E/T41E/K43E/Y45K/L72F、K35E/R38D/T41E/K43E/L72F、K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61L/E68R、K35D/T37K/R38E/T41K/F42Q/K43D/E68Y、K35D/T37E/R38D/K43Y/Y45K/L72F、K35E/T37Y/R38W/T41Y/F42E/K43E/Y45K/L72K、K35D/R38W/F42E/K43E/Y45K/E68K、K35E/T41Q/F42R/K43D/E68Y、K35D/R38W/F42E/Y45R/E61R/E68Y/K43Y、K35D/R38F/T41E/F42E/Y45K/E68Y、K35E/T37K/R38E/T41E/K43E/L72F、R38K/T41R/F42Q/Y45K/E61Y/E68Wから選択される変異の組み合わせを含む。有利には、これらの変異の組み合わせは、IL-2Rβ結合を増加させる本発明の79-92領域の変異と組み合わせて、IL-2Rαと結合せずにIL-2Rβとの結合を増強するIL-2変異タンパク質を提供することができる。
【0063】
CD122結合領域の変異
さらに別の態様において、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2がそのβ受容体CD122(すなわちIL-2Rβ)と相互作用する部位、好ましくは配列番号1の位置79、81、82、83、84、87、88、91、92に対応する位置に、IL-2Rβへの結合親和性を増強する1つ以上の変異を含むことができる。好ましくは、上述したこれらの位置における変異はアミノ酸置換である。より好ましくは、これらの位置における変異は、それぞれ、H79R,K,Y,W,D,E,Q、R81D,E,N,Q,T,H,Y,W、P82I,T,A、R83E、D84E,N,Q,H,T,V、S87T,D,N,E,Q,K,R,Y,W、N88D,E,Q,H,Y,W、V91T,L,I,M,D,N,E,Q,H、I92V,L,M,F,Y,W,N,D,E,Qから選択される置換残基である。
1つの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、配列番号1の位置79、81、82、83、87、91、92に対応する位置に1つ以上の変異、好ましくはアミノ酸置換、特にH79D,E,Q、R81D,N、P82I,T,A、R83E、S87D,E、V91L,I、I92L,M,F,Yから選択される1つ以上の置換を含む。1つの実施形態において、本発明の変異タンパク質は、配列番号1の位置12、13、15、16、19、20、23に対応する位置で、野生型IL-2タンパク質と比較して不変のままである。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rβへの結合親和性を増強する前記変異は、H79/R81/S87/I92、H79/R81/S87/I92/P82から選択される位置における変異を含む。好ましくは、前記変異は、H79D/E、R81D、S87D/E、I92L/Fを含み、場合によりP82Tをさらに含む。より好ましくは、前記変異は、H79D/R81D/S87D/I92L、およびH79D/R81D/P82T/S87D/I92Lから選択される組み合わせ変異を含む。好ましくは、前記変異の組み合わせは、野生型IL-2と比較して本発明のIL-2変異タンパク質のIL-2Rβ結合親和性の有意な増加を可能にし、より好ましくは、CD25エフェクター細胞の活性化および/または増殖の増強をもたらす。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態において、IL-2Rβへの結合親和性を増強する前記変異は、R81/R83/S87、R81/R83/S87/I92、R81/P82/R83/S87、またはR81/P82/R83/S87/I92から選択される位置における変異を含み、好ましくは、H79およびV91の一方または両方の位置における変異をさらに含む。好ましくは、前記変異は、R81D, P82T/I/A,R83E,S87E/D、R81D/N,P82T/I/A,R83E,S87E/D,I92/L/M/F/Y、R81D,R83E,S87E/D、R81D,R83E,S87E/D,I92Lから選択される組み合わせ変異を含み、より好ましくは、H79D/E/QおよびV91L/Iの一方または両方をさらに含む。より好ましくは、前記変異は、H79D/R81D/S87D/I92L、H79D/R81D/P82T/S87D/I92L、R81D/P82T/R83E/S87E、R81D/P82T/R83E/S87E/V91L、R81D/P82A/R83E/S87E/V91L、H79E/R81D/P82T/R83E/S87E/V91L、H79E/R81D/P82I/R83E/S87D、H79Q/R81D/P82A/R83E/S87E、R81N/P82T/R83E/S87E/V91L/I92F、H79D/R81N/P82T/R83E/S87E/V91L/I92F、R81D/P82T/R83E/S87D/I92M、H79E/R81D/P82I/R83E/S87E/I92M、H79Q/R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92Y、R81D/P82I/R83E/S87D/V91I/I92Y、R81D/P82T/R83E/S87D/I92L、R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92L、R81D/P82A/R83E/S87E/I92L、H79E/R81N/P82A/R83E/S87D/I92L、R81D/P82T/R83E/S87E/I92M、R81D/P82A/R83E/S87E/I92M、H79E/R81D/P82A/R83E/S87E/I92M、R81D/R83E/S87D/I92L、R81D/R83E/S87E/I92L、H79D/R81D/R83E/S87D、H79D/R81D/R83E/S87E/V91I/I92Lから選択される変異の組み合わせである。好ましくは、前記変異の組み合わせは、野生型IL-2と比較して本発明のIL-2変異タンパク質のIL-2Rβ結合親和性の有意な増加を可能にし、より好ましくは、CD25エフェクター細胞の活性化および/または増殖の増強をもたらす。
【0066】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβへの結合親和性を増強する変異は、以下から選択される組み合わせ変異である。
【0067】
H79D/R81D/S87D/I92L、H79E/R81D/P82T/R83E/S87E/V91L、H79E/R81D/P82I/R83E/S87D、H79Q/R81D/P82A/R83E/S87E、R81D/P82T/R83E/S87D/I92L、R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92L、R81D/P82A/R83E/S87E/I92L、H79E/R81N/P82A/R83E/S87D/I92L、R81D/P82T/R83E/S87E/I92M、R81D/P82A/R83E/S87E/I92M、H79E/R81D/P82A/R83E/S87E/I92M、H79D/R81D/R83E/S87E/V91I/I92L。有利には、これらの変異の組み合わせは、IL-2Rα結合親和性を低減する本発明の35-72位置領域の変異と組み合わせて、IL-2Rαと結合せず、IL-2Rβとの結合を増強するIL-2変異タンパク質を提供することができる。
【0068】
CD25結合領域の変異とCD122結合領域の変異の組み合わせ
さらに別の態様において、本発明は、CD25結合領域の変異およびCD122結合領域の変異を含むIL-2変異タンパク質を提供し、好ましくは、前記変異タンパク質は、IL-2Rα結合を低減(または排除)し、IL-2Rβ結合を増強し、より好ましくは、より高い発現量および製品純度などの改善された薬物形成性能をさらに有する。
【0069】
いくつかの好ましい態様において、本発明は、以下の変異の組み合わせから選択される組み合わせを含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【表1】
【0070】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較してCD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力が低下しているIL-2変異タンパク質を提供し、好ましくは、前記変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質(例えば、配列番号1のヒトIL-2タンパク質)と比較して、以下から選択される変異の組み合わせ(のみ)を含む。
【0071】
K35E/R38E/F42A/T37E、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61K/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61W/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45K/E61R/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37D、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61R/E68R/T37E、
K35E/R38W/F42Q/Y45R/E61K/E68R/T37E。
K35D/R38E/T41E/K43E。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較してCD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力が低下し、CD25T細胞におけるシグナル伝達を刺激する能力が増強するIL-2変異タンパク質を提供し、好ましくは、前記変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質(例えば、配列番号1のヒトIL-2タンパク質)と比較して、以下から選択される変異の組み合わせ(のみ)を含む。
【0073】
K35D/R38W/F42E/K43E/Y45K/E68K/R81D/P82T/R83E/S87E/I92M、
K35D/R38F/T41E/F42E/Y45K/E68Y/R81D/P82T/R83E/S87D/V91L/I92L。
【0074】
その他の変異
上記の領域および位置における変異に加えて、本発明のIL-2変異タンパク質は、それが本発明のIL-2変異タンパク質の上記の1つ以上の有益な特性を保持する限り、他の領域または位置に1つ以上の変異を有してもよい。例えば、本発明のIL-2変異タンパク質はまた、C125S.C125A、C125T、またはC125Vなどの位置125における置換を含むことができ、改善された発現または均質性または安定性などのさらなる利点を提供する(例えば、米国特許第4,518,584号を参照)。当業者は、本発明のIL-2変異タンパク質に組み込むことができる追加の変異を決定する方法を知っている。
【0075】
IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間の配列の相違は、配列同一性によって、または両者の間の異なるアミノ酸の数によって表すことができる。1つの実施形態において、IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%の同一性、好ましくは90%以上の同一性、好ましくは95%であるが、好ましくは97%以下、より好ましくは96%以下の同一性を有する。別の実施形態において、IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間には、上述の本発明のCD25結合領域の変異またはCD122結合領域の変異、またはそれらの組み合わせ変異に加えて、15個以下、例えば1-10個、または1-5個の変異が存在し得る。1つの実施形態において、前記他の変異は保存的置換であり得る。1つの実施形態において、前記他の変異はIL-2の他の改善された性質を付与する変異であり得る。
【0076】
2.融合タンパク質および免疫複合体
本発明はまた、本発明のIL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。1つの好ましい実施形態において、本発明のIL-変異タンパク質は、改善された薬物動態特性を付与することができる別のポリペプチド、例えばアルブミン、より好ましくは抗体Fc断片と融合される。好ましくは、Fc断片は、Fcγ受容体への結合を低減するL234A/L235A変異またはL234A/L235E/G237Aなどのエフェクター機能を減少または除去する変異を含む。好ましくは、Fcを含む融合タンパク質は、増加した血清半減期を有する。1つの好ましい実施形態において、Fcを含む融合タンパク質は、同時に、Fc領域が介在するエフェクター機能、例えば、ADCCまたはADCPまたはCDCを減少させる。
【0077】
本発明はまた、本発明のIL-2変異タンパク質および抗原結合分子を含む免疫複合体を提供する。好ましくは、抗原結合分子は、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、または抗体もしくは抗体断片、特にFab分子およびscFv分子である。いくつかの実施形態において、前記抗原結合分子は、腫瘍細胞上または腫瘍環境中に存在する抗原、例えば、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシンCのA1ドメイン(TNC A1)、テネイシンCのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンの外部ドメインB(Extra Domain B、EDB)、癌胎児抗原(CEA)、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)からなる群から選択される抗原と特異的に結合する。したがって、本発明の免疫複合体は、対象への投与後に腫瘍細胞または腫瘍環境を標的とすることができ、さらなる治療上の利点、例えば、より低い用量での治療の可能性およびそれによる副作用の低減、抗腫瘍効果の増強などを提供する。
【0078】
本発明の融合タンパク質および免疫複合体において、本発明のIL-2変異タンパク質は、別の分子または抗原結合分子に直接またはリンカーを介して結合することができ、いくつかの実施形態において、タンパク質加水分解切断部位が両者の間に含まれる。
【0079】
3.ポリヌクレオチド、ベクターと宿主
本発明は、上記IL-2変異タンパク質または融合体または複合体のいずれかをコードする核酸を提供する。本発明の変異タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野において周知の方法を用いて、新規固相DNA合成、または野生型IL-2をコードする既存の配列のPCR変異誘発によって生成することができる。さらに、本発明のポリヌクレオチドおよび核酸は、分泌シグナルペプチドをコードするセグメントを含み、本発明の変異タンパク質をコードするセグメントに作動可能に連結されて、本発明の変異タンパク質の分泌発現を誘導することができる。
【0080】
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターを提供する。1つの実施形態において、ベクターは発現ベクターで、例えば、真核発現ベクターである。ベクターの非限定的な例は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含む。好ましい実施形態において、本発明の発現ベクターはpYDO_017発現ベクター(配列番号13)である。
【0081】
本発明はまた、前記核酸または前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。変異IL-2タンパク質または融合体または免疫複合体の発現を複製および支持するのに適した宿主細胞は、当該技術分野において周知である。このような細胞は、特定の発現ベクターでトランスフェクションまたは形質導入することができ、しかもベクターを含む多くの細胞を培養して大型の発酵槽に接種して、臨床用として十分な量のIL-2変異体または融合体または免疫複合体が得られる。1つの実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)から選択される。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化を必要としない場合、細菌中で生成することができる。発現後、可溶性画分においてポリペプチドを細菌細胞のペースト状物から分離して、さらに精製することができる。原核生物の他、糸状菌または酵母などのような真核微生物は、ポリペプチドコーディングベクターのための適切なクローンまたは発現の宿主であり、グリコシル化経路が既に「ヒト化」される真菌と酵母菌株を含み、これは、一部または完全のヒトグリコシル化モードを有するポリペプチドの生成を引き起こす。Gerngross,NatBiotech22,1409-1414(2004)およびLi etal.,NatBiotech24,210-215(2006)が参照される。有用の哺乳動物宿主細胞系の実例は、SV40形質転換のサル腎臓CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(例えばGraham etal.,JGenVirol36,59(1977)に説明した293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ(sertoli)細胞(例えばMather,BiolReprod23,243-251(1980)に説明したTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、犬腎臓細胞(MDCK)、buffaloラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、TRI細胞(例えばMather etal.,AnnalsN.Y.AcadSci383,44-68(1982)に説明)、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。使用可能な他の哺乳動物宿主細胞株は、dhfr-CHO細胞(Urlaub etal.,ProcNatlAcadSciUSA77,4216(1980))などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、YO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。1つの実施形態において、宿主細胞は真核生物細胞、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎(HEK)細胞、またはリンパ球(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)などの哺乳動物細胞である。
【0082】
4.調製方法
さらに別の態様において、本発明は、本発明のIL-2変異タンパク質または融合体または複合体を調製する方法を提供し、前記方法は、IL-2変異タンパク質または融合体または複合体の発現に適した条件下で、前記タンパク質または融合体または複合体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、場合により宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記タンパク質または融合体または複合体を回収することとを含む。
【0083】
5.測定手法
本分野において既知の様々な測定手法を利用して、本発明のIL-2変異タンパク質に対して同定、スクリーニング、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性の特性評価を行うことができる。
【0084】
1つの態様において、本発明のIL-2変異タンパク質に対してIL-2受容体への結合活性を測定することができる。例えば、ELISA、Westernブロットなどのような本分野において既知の方法、または本出願の実施例に開示されている例示的な方法を利用して、ヒトIL-2Rαまたはβタンパク質との結合を測定することができる。例えば、細胞表面上で変異タンパク質を発現するようにトランスフェクトされた細胞、例えば酵母ディスプレイ細胞を、標識された(例えばビオチン標識された)IL-2Rαまたはβタンパク質と反応させるフローサイトメトリーを用いて測定することができる。あるいは、結合動力学(例えば、K値)を含む変異タンパク質の受容体への結合は、組換え変異タンパク質-Fc融合体を使用してバイオレイヤー干渉法(BLI)測定手法において測定することができる。いくつかの実施形態において、例えば実施例に記載のBLI測定手法を使用する。
【0085】
さらに別の態様において、受容体結合の下流で起こるシグナル伝達および/または免疫賦活効果を測定することによって、IL-2変異タンパク質がIL-2受容体と結合する能力を間接的に測定することができる。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態において、生物学的活性を有する変異IL-2タンパク質を同定するための測定手法をさらに提供する。生物学的活性には、例えば、IL-2受容体を有するTおよび/またはNK細胞の増殖を誘導する能力、IL-2受容体を有するTおよび/またはNK細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力、二次サイトカインとしてNK細胞を介してインターフェロン(IFN)-γを産生する能力、T細胞におけるアポトーシスを誘導する能力の低下、腫瘍の退縮および/または生存の改善を誘導する能力、並びに血管透過性の低下などのインビボ毒性特性の低下が含まれ得る。本発明は、インビボおよび/またはインビトロにおいて、かかる生物学的活性を有する変異IL-2タンパク質も提供する。
【0087】
IL-2の生物学的活性を決定するために、当技術分野で公知の様な方法を使用することができる。例えば、本発明のIL-2変異タンパク質がNK細胞のIFN-γ産生を刺激する能力を試験するための適切な測定手法は、培養されたNK細胞を本発明の変異IL-2タンパク質または融合または免疫複合体とインキュベートし、その後、培地中のIFN-γ濃度をELISAにより測定することを含む。IL-2シグナル伝達は、いくつかのシグナル伝達経路を誘導し、JAK(Janusキナーゼ)およびSTAT(シグナル伝達物質および転写活性化因子)シグナル伝達分子に関与する。
【0088】
IL-2と受容体βおよびγサブユニットとの相互作用は、受容体ならびにJAK1およびJAK3(βおよびγサブユニットとそれぞれ結合する)のリン酸化をもたらす。次に、STAT5はリン酸化受容体と結合し、それ自体が非常に重要なチロシン残基上でリン酸化される。これは、標的遺伝子の転写を促進する、受容体解離、STAT5二量体化、およびSTAT5二量体から核へのSTAT5のシフトをもたらす。したがって、変異体IL-2ポリペプチドがIL-2受容体を介してシグナル伝達を誘導する能力は、例えばSTAT5のリン酸化を測定することによって評価することができる。この方法の詳細は、実施例に開示されている。例えば、PBMCを本発明の変異体IL-2ポリペプチドまたは融合体または免疫複合体で処理し、リン酸化STAT5のレベルをフローサイトメトリーによって決定することができる。
【0089】
さらに、T細胞またはNK細胞応答IL-2の増殖は、血液から単離されたT細胞またはNK細胞を本発明の変異体IL-2ポリペプチドまたは免疫複合体とインキュベートし、次いで処理細胞の溶解物中のATP含量を測定することによって測定することができる。処理前に、T細胞を植物レクチン(PHA-M)で予備刺激することができる。この測定手法は、生存細胞数の高感度定量を可能にし、多数の適切な代替測定手法(例えば、[3H]-チミジン取り込み測定手法、細胞滴定GloATP測定手法、AlamarBlue測定手法、WST-1測定手法、MTT測定手法)も当技術分野で知られている。
【0090】
さらに、腫瘍成長および生存に対する変異IL-2の効果は、当技術分野で公知の様々な動物腫瘍モデルにおいて評価することができる。例えば、ヒト癌細胞株の異種移植片を免疫不全マウスに移植し、本発明の変異体IL-2ポリペプチドまたは融合体または免疫複合体で処理することができる。死亡率、生命期観察(行動、体重、体温などの有害作用の可視症状)、ならびに臨床病理学および解剖病理学(血液化学測定および/または組織病理学分析など)に基づいて、本発明の変異体IL-2ポリペプチド、融合および免疫複合体のインビボでの毒性を測定することができる。例えば、IL-2処理によって誘発された血管透過性は、血管透過性前処理動物モデルにおいて、血管滲出レポータ分子を用いて検査することができる。好ましくは、血管滲出レポータ分子は、前処理のためのIL-2野生型形態の透過性を明らかにするのに十分な大きさである。
【0091】
6.スクリーニング方法
さらに別の態様において、本発明は、IL-2Rα受容体に対するIL-2タンパク質の結合親和性を排除または低減し、および/またはIL-2Rβ受容体に対する結合親和性を増強する方法であって、野生型IL-2タンパク質に、本明細書に記載される変異または変異の組み合わせを導入することと、野生型IL-2タンパク質と比較して、ILRαまたはβに対して変化している結合親和性、および/または改善されている生物学的活性、例えば前述のとおり本発明のIL-2変異タンパク質に関して説明した特性のうちの1つ以上を有する変異タンパク質を(例えば、前述の測定方法を用いて)同定することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、変異テンプレートとして使用される親野生型IL-2タンパク質は、好ましくは配列番号1と少なくとも80%、または少なくとも95%または99%またはそれ以上の同一性を有し、より好ましくはヒト由来IL-2タンパク質である。
【0092】
7.医薬組成物と薬物製剤
本発明はまた、IL-2変異タンパク質またはその融合体または免疫複合体を含む組成物(医薬組成物または薬物製剤を含む)、およびIL-2変異タンパク質またはその融合体または免疫複合体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を含む。これらの組成物はまた、本分野で既知の薬学的に許容可能な担体、緩衝剤を含む薬用賦形剤などの適切な医薬品添加物を必要に応じて含んでもよい。
【0093】
本発明に適する薬学的に許容可能な担体は、石油、動物もしくは植物に由来するまたは合成された、ピーナッツオイル、大豆油、鉱油、ごま油など、水、油などの滅菌液体であってもよい。医薬組成物を静脉内に投与する場合、水はベクターとして好ましい。さらに、生理塩水溶液、水性デキストロースとグリセリン溶液を液体ベクターとして、特に注射溶液に用いることができる。適切な薬用賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、ジオール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用およびその用途に関しては、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」,5th editon,R.C.Rowe,P.J.Seskey、S.C.Owen,PharmaceuticalPress,London,Chicagoが参照される。必要があれば、前記組成物は湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに少量に含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、持続性放出製剤などの形態を採用できる。経口製剤は、薬用マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的なベクターを含んでもよい。
【0094】
所望の純度を有する本発明のIL-2変異タンパク質、融合体または免疫複合体を任意の1つまたは複数の医薬品添加物(Remington′ s Pharmaceutical Sciences,16th edition,edited by Osol,A.(1980))と混合することによって、本発明を含む薬物製剤を調製し、好ましくは凍結乾燥製剤または水溶液の形式で調製する。例示的な凍結乾燥抗体製剤に関する説明は、米国特許第6,267,958号が参照される。水性抗体製剤に関しては、米国特許第6,171,586号、世界特許WO2006/044908が参照され、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝剤を含む。また、持続性放出製剤を調製できる。持続性放出製剤の適切な例は、タンパク質を含有する疎水性固体ポリマーによる半透性マトリックスを含み、前記マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどのように一定の形態を有する。
【0095】
本発明の医薬組成物または製剤は、1種以上の他の活性成分をさらに含んでもよく、前記活性成分は、特定の適応症の治療に必要であり、好ましくは互いにマイナスの影響を与えない活性的に相補な活性成分を含む。例えば、好ましくは、化学療法剤、PD-1軸結合拮抗剤(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体)などの他の抗がん活性成分をさらに提供する。前記活性成分は、目的用途において有効な量で適切に組み合わせた形で存在する。
【0096】
したがって、1つの実施形態において、組成物は、第2の治療剤をさらに含む。例えば、第2の治療剤は免疫チェックポイント阻害剤であってもよい。例えば、第2の治療剤は、例えば、抗-CTLA-4抗体、抗CD47抗体、抗-PD-1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CD40抗体、抗-OX40 (CD134、TNFRSF4、ACT35および/またはTXGP1Lとも呼ばれる)抗体、抗-LAG-3抗体、抗-CD73抗体、抗-CD137抗体、抗-CD27抗体、抗-CSF-1R抗体、TLRアゴニストまたはIDOまたはTGFβの小分子アンタゴニストを含むが、これらに限定されない1つ以上から選択することができる。好ましくは、第2の治療剤は、PD-1拮抗剤であり、特に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG-3、抗CD47である。免疫治療薬物に加えて、第2の治療剤は、他の放射線療法または化学療法薬物であってもよい。
【0097】
8.組み合わせ製品
1つの態様において、本発明は、本発明の変異タンパク質またはその融合体または免疫複合体、および1種以上の他の治療剤(例えば、化学療法剤、他の抗体、細胞傷害剤、ワクチン、抗感染症剤など)を含む組み合わせ製品をさらに提供する。本発明の組み合わせ製品は、本発明の治療方法において使用できる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明は、組み合わせ製品を提供し、ここで、前記他の治療剤が、例えば、免疫応答を刺激して対象の免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御するのに有効な、抗体などの治療剤である。いくつかの実施形態において、他の抗体は、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体または抗-LAG-3抗体または抗-CTLA-4抗体または抗TIM-3抗体である。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品は、腫瘍の予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、腫瘍は、がん、例えば、胃がん、直腸がん、結腸がん、結腸直腸がんなどの胃腸管がん、または悪性黒色腫などの皮膚がん、または腎細胞癌、膀胱癌、非小細胞肺癌などである。いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品は、例えば細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原生動物感染などの感染の予防または治療に用いられる。
【0100】
9.治療方法と使用
本出願では、用語「個体」または「対象」は、互いに切り替えて用いることができ、哺乳動物を指す。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌとウマ)、霊長類(例えば、ヒトとサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。特に、対象はヒトである。
【0101】
本明細書では、用語「治療」は、治療を受けている個体における疾病の天然過程を変化させようとする臨床介入を指す。所望の治療效果は、疾病の出現または再発を防止すること、症状を軽減すること、疾病の如何なる直接的または間接的病理学結果を減少すること、転移を防止すること、病状進展速度を低減すること、疾病の状態を改善または緩和させること、および、予後を緩和または改善させることを含むが、これらに限定されない。
【0102】
1つの態様において、本発明は、対象の免疫系を刺激する方法であって、本発明のIL-2変異タンパク質または融合体または免疫複合体を含む医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。本発明のIL-2変異タンパク質は、CD25CD122エフェクター細胞(細胞傷害性CD8T細胞およびNK細胞)に対して高い活性および選択性を有し、CD25Treg細胞に対する刺激作用を低減および除去する。したがって、本発明のIL-2変異タンパク質は、対象の免疫系を刺激するために低用量で使用することができる。
【0103】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、対象における身体の免疫応答を増強する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質、またはその融合体または免疫複合体の有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質またはその融合体または免疫複合体を、抗腫瘍免疫応答を刺激するように、腫瘍を携帯する対象に投与する。別の一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分を、抗感染免疫応答を刺激するように、感染を携帯する対象に投与する。1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、Tregによる免疫抑制をさらに低減するために、Treg枯渇抗体(例えば、FcγR介在性Treg枯渇)と組み合わせて使用することができる。1つの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、例えば、抗PD-1および抗CTLA-4と組み合わせて、癌免疫治療効果を増強するために投与することができる。
【0104】
別の態様において、本発明は、腫瘍および癌および感染症などの対象の疾患を治療する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質、またはその融合体または免疫複合体の有効量を前記対象に投与することを含む。
【0105】
がんは、早期、中期または末期にあるがんまたは転移性がんであってもよい。いくつかの実施形態において、腫瘍または腫瘍細胞は、結腸直腸腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、肺腫瘍、肝腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、胃腸腫瘍、黒色腫、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、神経膠芽腫および頭頸部腫瘍から選択され得る。いくつかの実施形態において、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、胃腸がん、黒色腫、子宮頸がん、膀胱がん、神経膠芽腫および頭頸部がんから選択され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍はメラノーマ、腎細胞癌、結腸直腸癌、膀胱癌、非小細胞肺癌である。
【0106】
別の態様において、本発明は、対象における感染性疾患、例えば慢性感染の治療方法に関し、前記方法は、本明細書に係る任意のIL-2変異タンパク質またはその断片、または前記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含む。1つの実施形態において、前記感染はウイルス感染である。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質またはその融合体または複合体の他、本発明の方法は、前記対象に1種以上の療法(例えば、治療法および/または他の治療剤)を組み合わせて適用することをさらに含む。いくつかの実施形態において、治療法は、手術治療および/または放射線治療を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1種の他の免疫刺激性抗体、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗-LAG-3抗体、抗CD43抗体、および/または抗CTLA-4抗体を投与することをさらに含み、これらの抗体は、例えば、完全ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、IBI308(シンディリマブ、WO2017/025016A1)、MDX-1106(nivolumab、OPDIVO)、Merck 3475(MK-3475、pembrolizumab、KEYTRUDA)、CT-011(Pidilizumab)から選択される。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体はMDX-1106である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、nivolumab(CAS登録番号:946414-94-4)である。さらに、いくつかの実施形態において、IL-2変異タンパク質またはその断片は、単独でまたはPD-1拮抗剤との組み合わせとして、1種以上の他の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態において、治療法は、外科的手術(例えば、腫瘍切除)、放射線治療(例えば、照射領域が設定された三次元原体放射線療法などの外部粒子ビーム療法)、局所照射(例えば、所定の標的もしくは器官に対する照射)または集中的照射などを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書は、本発明の変異タンパク質およびCTLA-4拮抗性抗体を対象に投与することを含む、疾患(例えば、腫瘍)を治療する方法を提供する。抗-CTLA-4抗体は、例えば、YERVOY(R)(ipilimumabまたは抗体10D1、PCT公開番号WO 01/14424に記載されている)、tremelimumab(旧称ticilimumab,CP-675,206)、およびWO 98/42752、WO 00/37504、米国特許第6,207,156号、Hurwitzetal.(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(17):10067-10071、Camacho etal.(2004) J. Clin. Oncology 22(145): Abstract No. 2505 (抗体CP-675206)、およびMokyr etal.(1998) Cancer Res. 58:5301-5304に記載されている抗-CTLA-4抗体からなる群から選択される抗体であり得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書は、本発明の抗-変異タンパク質および抗-LAG-3拮抗剤抗体を対象に投与することを含む、疾患(例えば、腫瘍)を治療する方法を提供する。抗-LAG3抗体は、例えば、米国特許出願番号US2011/0150892およびWO2014/008218に記載されている抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2、または17E5、またはこれらの抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体、BMS-986016、US2011/007023に記載されているIMP731から選択され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、化学療法または化学療法剤と併用して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、放射線療法または放射線療法剤と併用して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、標的療法または標的治療剤と併用して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、免疫療法または免疫治療剤、例えばモノクローナル抗体と併用して投与されてもよい。
【0112】
本発明の変異(およびそれを含む医薬組成物またはその融合体または免疫複合体、任意の他の治療剤)は、非経口投与、肺内投与、鼻腔内投与を含む任意の適切な方法により投与されてもよく、かつ、局所治療の場合は、病巣内に投与されてもよい。非経口注入は、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与または皮下投与を含む。なお、投与期間の長さによって、例えば、静脈内注射投与または皮下注射投与などの注射を含む任意の適切な経路にすることができる。本発明において、非限定的であるが、単回投与または複数の時刻での複数回投与、ボーラス投与、パルス療法などの様々な頻度の投与が含まれる。
【0113】
本発明の変異タンパク質は、疾患の予防または治療に用いられる場合、その適切な投与量(単独で投与される場合または1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与される場合)が、治療対象疾患の種類、抗体のタイプ、疾患の重症度とその経過、予防目的であるか治療目的であるか、これまでの治療歴、患者の臨床病歴、前記抗体に対する応答、主治医の判断によって決定される。前記抗体は、単回の治療として、または一連の治療において患者に適切に投与される。
【0114】
さらに別の態様において、本発明は、上述の方法(例えば治療のため)の医薬の調製における、本発明のIL-2変異タンパク質、組成物、免疫複合体、融合体の使用を提供する。
【0115】
以下の実施例を本発明の理解を補助するように説明する。如何なる形式で実施例を、本発明の保護範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0116】
実施例
実施例1:インターロイキン2変異ライブラリーの設計と構築
インターロイキン2変異ライブラリーの設計
インターロイキン2(Interleukin-2、IL-2と略称)とそのα受容体CD25(IL-2Rαと略称)複合物の結晶構造(PDB:1Z92)(図1に示す)に基づき、相互作用部位のIL-2残基を表1に示されるように変異した。各部位のオリジナルアミノ酸は50%の割合を占め、残りの50%の割合は表1の「変異アミノ酸」で等分した。IL-2とIL-2Rαの相互結合部位に対して設計されたライブラリーの理論的多様性は、3×8×8×9×6×6×3×6×6×5×6≒2.0×10であり、ライブラリーはIBYDL029(Innoventbio Yeast Display Library)と命名された。
【表2】
【0117】
IL-2とそのβ受容体CD122(IL-2Rβと略称)複合物の結晶構造(PDB:2ERJ)(図2に示す)に基づいて、相互作用部位のIL-2残基を表2に示されるように変異した。各部位のオリジナルアミノ酸は50%の割合を占め、残りの50%の割合は表2の「変異アミノ酸」で等分した。IL-2とIL-2Rβの相互結合部位が多いため、ライブラリーの理論的多様性が大きすぎ、ライブラリーを2つの小さいライブラリーに分け、部位12-23の変異ライブラリーはIBYDL030で、理論的多様性は12×8×9×12×13×7×12≒1.1×10であり、部位79-92の変異ライブラリーはIBYDL031であり、理論的多様性は8×9×4×2×7×10×7×10×11≒3.1×10である。
【表3】
【0118】
インターロイキン2変異ライブラリーの構築
野生型IL-2(uniprot:P60568,aa21-153,C125S、IL-2WTと略称)を、酵母ディスプレイプラスミドpYDC011の2つのBamH I酵素切断部位の間に置いた。IL-2WTの配列は、ジスルフィド架橋IL-2二量体形成を回避するために125位にC125S変異が導入された配列番号1で本出願に示されている。プラスミド構築の具体的な手順は以下のとおりである。
【0119】
1.IL-2WT遺伝子をテンプレートとしてプライマーAMP0210およびAMP0211で増幅したこと、
2.プラスミドpYDC011をBamHI(New England Biolab、製品番号:R3136V)で酵素切断した後、ゲルで回収したこと(QIAGEN Gel Extraction Kit、Cat.28704)、
3.1%アガロースゲルで増幅産物および酵素切断産物を回収したこと、
4.回収した後、One Step Cloning Kit(Vazyme製品番号:C113-02)でインビトロ相同組換えを行ったこと、
5.組換え後産物を大腸菌Top10受容性細胞(天根、製品番号:CB104-02)に移し、アンモニアリブ耐性LBプレートにコーティングし、37℃で一晩培養したこと、
6.成長したモノクローナルコロニーを配列決定した後、正しいプラスミドをpYDC035と命名したこと。
【0120】
既存の文献によれば、IL-2変異体IL-23XはIL-2Rαと結合せず、IL-2Rβとの結合力を維持したままである(Rodrigo Vazquez-Lombardi etal.,Nature Communications, 8:15373, DOI: 10.1038/ncomms15373)。IL-2変異体IL-2H9はIL-2Rβとの結合が増強され、IL-2Rαとの結合を維持したままである(Aron M. Levin etal., Nature, Vol 484, p529-533, DOI:10.1038/nature10975)。IL-23XとIL-2H9を酵母表面に示し、対照として使用した。IL-23XとIL-2H9の配列は、それぞれ配列番号2および3に示され、2つのタンパク質は、IL-2WTと同様にC125S変異も含む。
【0121】
表1および表2のライブラリー構築プロトコルに従って、所望のプライマー(図3に示す)を設計し、蘇州金唯智生物科技有限公司によって合成した。
【0122】
IBYDL029ライブラリーDNA増幅:1.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0191、AMP0200を用いて断片029-Fを増幅し、2.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0201、AMP0199を用いて断片029-Rを増幅し、3.断片029-F、029-Rをゲルで回収してPCR増幅テンプレートとし、プライマーAMP0191とAMP0199を用いて全長断片029を増幅した。
【0123】
IBYDL030ライブラリーDNA増幅:1.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0191、AMP0224を用いて断片030-Fを増幅し、2.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0222、AMP0199を用いて断片030-Rを増幅し、3.断片030-F、030-Rをゲルで回収してPCR増幅テンプレートとし、プライマーAMP0191とAMP0199を用いて全長断片030を増幅した。
【0124】
IBYDL031ライブラリーDNA増幅:1.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0191、AMP0225を用いて断片031-Fを増幅し、2.pYDC035をテンプレートとし、プライマーAMP0223、AMP0199を用いて断片031-Rを増幅し、3.断片031-F、031-Rをゲルで回収してPCR増幅テンプレートとし、プライマーAMP0191とAMP0199を用いて全長断片031を増幅した。
【0125】
100μgのプラスミドpYDC011をBamHIで酵素切断し、酵素切断後にPCR産物回収キット(QIAGEN PCR Purification Kit、Cat.28104)で回収し、十分な量の線状化プラスミドを得た。線状化プラスミドとライブラリーDNAを4μg:12μgで混合し、既存の方法(Lorenzo Benatuil etal.,An improved yeast transformation method for the generation of very large human antibody libraries. Protein Engineering, Design & Selection vol. 23 no. 4 pp. 155-159, 2010)で各ライブラリーと線状化プラスミドとの混合物をEBY100酵母株に電気的に導入した。電気的導入後のライブラリーを勾配希釈してSD-Trp(TAKARA、製品番号:630309)のプレートにコーディングし、成長したコロニー数をカウントしたところ、得られたライブラリーの実際の多様性はIBYDL029:4.2×10、IBYDL030:4.5×10、IBYDL031:3.8×10であり、いずれもライブラリーの理論的多様性より大きい。
【0126】
実施例2:IL-2WT-FC、IL-23X-FC、IL-2Rα、IL-2Rβタンパク質製造およびビオチン標識
発現プラスミドの構築
IL-2WT-FCとIL-23X-FC融合タンパク質を発現するために、IL-2WT、IL-23X遺伝子配列をベクターpYDO_017の2つのBamHI酵素切断部位の間に置き、本発明で使用されるFcは、ヒトIgG1のFc(L234A、L235A、FcLALAと略称)を指す。IL-2Rα(Uiprot:P01589,aa22-217)とIL-2Rβ(Uiprot:P14784,aa27-240)に対して配列のC末端にaviタグおよび6つのヒスチジンタグ(配列は配列番号11および12に示す)を取り付け、pTT5ベクター上にそれぞれ構築して、IL-2RαおよびIL-2Rβタンパク質を発現する。
【0127】
タンパク質の発現および精製
上記で構築した発現プラスミドベクターを、化学トランスフェクション法を用いてHEK293-F(Invitrogen、製品番号:R79007)細胞に導入した。化学トランスフェクション試薬ポリエチレンイミン(PEIと略称、Polysciences、製品番号:23966)を用いて、培養されたHEK293-F細胞を、製造業者によって提供されたプロトコルに従って一過性トランスフェクションした。最終体積の1/10(v/v)のOpti-MEM培地(Gibco製品番号:31985-070)をトランスフェクション緩衝液として使用し、プラスミドを加えて、均一に混合し、0.22μmのフィルターヘッドで濾過して準備した。前の手順のプラスミドにポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、23966)を加え(293F細胞におけるプラスミドとPEIの質量比率は1:3)、均一に混合してから室温で10minインキュベートすることによって、DNA/PEI混合物を得た。DNA/PEI混合物をHEK293細胞に穏やかに注ぎ、均一に混合し、37℃、8% COの条件下で24h培養した後、VPAVPA(Sigma、製品番号:P4543-100G)を追加し、最終濃度を2 mMおよび2%(v/v)Feed(1g/L Phytone Peptone + 1g/L Difco Select Phytone)にし、6d培養を継続した。
IL-2WT-FCとIL-23X-FCとの融合タンパク質を発現する細胞培養液を、13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、前カラムHitrap Mabselect Sure(GE,11-0034-95)を用いて上清を精製した。操作は以下のとおりである。精製前に5倍カラム体積の平衡液(0.2 M Tris, 1.5 M NaCl, pH7.2)で充填カラムを平衡化し、収集した上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の平衡液で充填カラムを洗浄し、非特異的結合タンパク質を除去し、5倍カラム体積の溶離緩衝液(1M sodium citrate,pH3.5)で充填剤を洗浄し、溶離液を収集した。溶離液1mlあたり80μLのTris(2M Tris)を加え、限外濾過濃縮管(上海拓開生物科技有限公司、MCPM02C67)を用いてPBS緩衝液(Gibco、70011-044)に交換し、濃度を測定した。精製後のタンパク質100μgに対して、濃度を1mg/mLに調整し、ゲル濾過カラム(TOSOH製品番号:18675)を用いてタンパク質純度を測定した。
【0128】
IL-2RαおよびIL-2Rβタンパク質を発現する細胞培養液を、13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、0.22μmのフィルターで濾過し、ニッケルカラム(5mL Histrap excel, GE, 17-3712-06)を0.1M NaOHに2h浸漬した後、10倍カラム体積の超純水で洗浄し、アルカリ液を除去し、さらに5倍カラム体積の結合緩衝液(20mM Tris, 300mM NaCl, pH7.4)で精製カラムを平衡化し、細胞上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の洗浄緩衝液(20mM Tris, 300mM NaCl, 10mM imidazole, pH7.4)でカラムを洗浄し、非特異的結合ヘテロタンパク質を除去し、最後に5倍カラム体積の溶離液(20 mM Tris, 300mM NaCl, 100mM imidazole, pH7.4)で目的タンパク質を溶離し、タンパク質限外濾過濃縮によりPBSに交換し、精製してタンパク質の発現量および純度を測定した(表3参照)。
【表4】
【0129】
IL-2RαとIL-2Rβ IHタンパク質のビオチン化標識
酵素触媒法によりIL-2RαとIL-2Rβタンパク質をビオチン標識する方法は、以下のとおりである。適量のIL-2RαとIL-2Rβ IHタンパク質溶液に、1/10(m/m)質量のHis-BirAタンパク質(uniprot: P06709)を加え、同時に最終濃度2mM ATP(sigma製品番号:A2383-10G)、5mM MgCl2、0.5mM D-ビオチン (AVIDITY製品番号:K0717)を加え、30℃で1hインキュベートし、Superdex200 increase(GE,10/300GL,10245605)により精製し、余分なビオチンとHis-BirAを除去し、精製後の試料をFortebioのStreptavidin(SA)センサ(PALL、18-5019)により検証し、ビオチン標識の成功を確認した。本実施例で得られたビオチン標識されたIL-2Rα、IL-2Rβ IHタンパク質は、それぞれIL-2Rα-BiotinおよびIL-2Rβ IH-Biotinと略称される。
【0130】
実施例3:IL-2変異ライブラリーのスクリーニングによるIL-2mutantの取得および染色鑑定
IL-2Rβと親和力の高いIL-2mutant のスクリーニング
酵母ベースのIL-2mutantディスプレイライブラリーIBYDL029、IBYDL030、IBYDL031は、いずれも2.0×10の酵母細胞を培養および誘導し、ここで、ライブラリーの多様性は、それぞれ2.0×10、1.1×10、3.1×10であった。IBYDL029ライブラリーの多様性が比較的大きいため、1回目のスクリーニングにおいて、Miltenyi社のMACSシステムを利用して磁気ビーズ細胞選別を行う。まず、FACS洗浄緩衝液(1×PBS、1%ウシ血清アルブミン含有)において、2×10酵母細胞を室温で30minインキュベートし、緩衝液に500nMのビオチン標識された市販のIL-2Rβ(Acro Biosystems、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinビオチン標識、IL-2Rβ-Biotinと略称)を含有する。予め冷却されたFACS洗浄緩衝液50mlで洗浄し、次に同洗浄緩衝液10mlで細胞を再懸濁し、ストレプトアビジンマイシンビーズ(Miltenyi biotec、製品番号:130-090-485)40μlを加えて4℃で15minインキュベートした。3000rpmで3min遠心分離して上清を捨て、FACS洗浄緩衝液10mlで細胞を再懸濁し、細胞溶液をMiltenyi LSカラムに加える。試料をロードした後、カラムを3回洗浄し、各回にFACS洗浄緩衝液3mlを使用した。磁気領域からMiltenyi LSカラムを取り外し、成長培地5mlで溶出し、溶出された酵母細胞を回収し、30 ℃で一晩成長させた。IBYDL030、IBYDL031ライブラリーの多様性が比較的小さいため、フローサイトメトリーを直接用いて1回目の選別を行うことができる。各1×10、2.5×10の酵母細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、100nM IL-2Rβ-Biotin、Anti Flag抗体(Sigma製品番号:F18041、1:1000希釈)を含有するFACS緩衝液で室温で30minインキュベートし、細胞をFACS洗浄緩衝液で2回洗浄した後、細胞をSA-PE(ストレプトアビジン-PE、Thermo Fisher製品番号:S21388、1:200希釈)、ヤギ抗マウス結合Alex Flour-647(Thermo Fisher製品番号:A21235、1:200希釈)を含有するFACS洗浄緩衝液と混合し、4℃で15min遮光インキュベートした。予め冷却されたFACS洗浄緩衝液で2回洗浄し、緩衝液1mlに再懸濁し、フィルターを備える単離管に細胞を移した。細胞をFACS MoFlo_XDP(Beckman)で選別し、選別した酵母細胞を30℃で一晩増殖させた。
【0131】
1回目のスクリーニングで得られた各ライブラリー細胞を20℃で24h振とう誘導してIL-2mutantを示し、フローサイトメトリーを用いて2回目の選別を行った。各ライブラリーから3×10酵母細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、異なる濃度のIL-2Rβ-Biotin(029:300nM,030/031:100nM)、Anti Flag抗体を含有するFACS緩衝液を加え、室温で30minインキュベートし、細胞をFACS洗浄緩衝液で2回洗浄した後、細胞をSA-PE、ヤギ抗マウス結合Alex Flour-647を含有するFACS洗浄緩衝液と混合し、4℃で15min遮光インキュベートし、予め冷却されたFACS洗浄緩衝液で2回洗浄し、1mLの緩衝液に再懸濁し、細胞を、フィルターを備える単離管に移した。細胞をMoFlo_XDPで選別し、選別した酵母細胞を30℃で一晩増殖させた。3回目の選別プロトコルは2回目と同じで、3回の選別を経た後、モノクロナールを選んで配列決定した。
【0132】
IL-2Rβ-Biotinを用いた3回のスクリーニングにより、IBYDL029は53個の変異配列を獲得し、IBYDL030は変異配列を獲得せず、IBYDL031は71個の変異配列を獲得した。
【0133】
酵母ベースのIL-2変異体ディスプレイライブラリーIBYDL029、IBYDL030、IBYDL031に対して、実施例2で得られた自家製IL-2Rβ IH-Biotinを用いて第2バッチのスクリーニングを行った。1回目のスクリーニングにおいて、MACSシステムを利用して磁気ビーズ細胞選別を行った。まず、各ライブラリーから2×10酵母細胞を異なる濃度のIL-2Rβ IH-Biotin(IBYDL029:500nM,IBYDL030/031:200nM)を含有するFACS洗浄緩衝液で室温で30minインキュベートし、次の手順で第1バッチの磁気ビーズ選別と同様にして、磁気ビーズ選別後に得られた酵母細胞を30℃で一晩増殖させた。フローサイトメトリーを用いて2回目、3回目の選別を行い、2回のスクリーニングにおいてIL-2Rβ IH-Biotin濃度はいずれもIBYDL 029:500nM、IBYDL 030/031:100nMを選び、残りの手順は第1バッチの2、3回目のスクリーニングと同じである。
【0134】
IL-2Rβ IH-Biotinを用いた3回のスクリーニングにより、モノクロナールを選んで配列決定し、IBYDL029は25個の変異配列を追加し、IBYDL030も同様に変異配列を獲得せず、IBYDL031は41個の変異配列を追加した。
【0135】
IL-2mutant染色鑑定
配列決定後の単一変異配列を含む酵母細胞を20℃で24h振とう誘導してIL-2mutantを示し、その受容体IL-2Rα-Biotin、IL-2Rβ IH-Biotinとそれぞれ染色し、具体的な手順は以下のとおりである。
【0136】
一、 IL-2mutantにより示された酵母細胞とIL-2Rα-Biotin染色分析:
1. 各試料からの1×10細胞を遠心分離により上清を捨ててFACS緩衝液で1回洗浄した後に使用した。
2. 50nM IL-2Rα-BiotinとAnti Flag抗体を含むFACS緩衝液100μLに加えて室温で30minインキュベートした。
3. 予め冷却されたFACS緩衝液を用いて3000rpm、4℃で3min遠心分離して2回洗浄した。
4. SA-PE、ヤギ抗マウス結合Alex Flour-647を含むFACS緩衝液100μLを加え、氷上で20min遮光インキュベートした。
5. 予め冷却されたFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を100μLの緩衝液で再懸濁し、フローアナライザー(BD,ACCURI C6)でIL-2mutantとIL-2Rαの結合レベルを分析した。
【0137】
二、 IL-2mutantにより示された酵母細胞とIL-2Rβ IH-Biotin染色分析:
1. 各試料からの1×10細胞を遠心分離により上清を捨ててFACS緩衝液で1回洗浄した後に使用した。
2. IL-2Rβ IH-Biotin(30nM-100nM)とAnti Flag抗体を含むFACS緩衝液100μLに加えて室温で30minインキュベートした。
3. IL-2mutantとIL-2Rβとの結合レベルを、手順3~5と同様にして分析した。
【0138】
フロー染色の結果から、IBYDL029の1回目のスクリーニングで得られた53個のIL-2mutant(具体的な配列は図4Aを参照)がIL-2Rαと結合した平均蛍光シグナル強度はIL-23Xに近く、いずれも結合せず、IL-2Rβと結合した平均蛍光シグナル強度はIL-23Xより強かったがIL-2H9より弱く、IL-2Rβ結合シグナルが最も高かった12個の変異を以下の表3-1に示す。第2バッチのスクリーニングで得られた25個のIL-2mutant(具体的な配列は図4Bを参照)はIL-2Rαと結合せず、IL-23Xと比較して、IL-2Rβとの結合が異なる程度で向上し、IL-2Rβ結合シグナルが最も高い14個の変異を以下の表3-1に示す。IBYDL031の2バッチのスクリーニングで得られた112個のIL-2mutantはIL-2Rα、IL-2Rβの両方とも結合し、IL-2Rβ結合シグナルが比較的高い25個の変異(具体的な配列は図4Cを参照)を下の表3-1に示し、当該25個の変異がIL-2Rβと結合した平均蛍光シグナル強度はIL-23Xより著しく強く、IL-2H9と同等またはわずかに弱い。
【表5】
【0139】
さらに、IBYDL029由来の変異をIBYDL031由来の変異と組み合わせ(具体的な配列は図4Dを参照)、IL-2Rαと結合せずにIL-2Rβとの結合を増強する新規変異体を得て、表3-2に示されるとおりである。
【表6】
【0140】
実施例4:IL-2mutant-FC融合の発現および受容体との親和性(avidity)測定
発現プラスミドの構築
IL-2mutant配列をベクターpYDO_017の2つのBamHI酵素切断部位の間に置き、IL-2mutant-FC融合タンパク質を発現するために用いられる。IL-2mutantの遺伝子を含む酵母ディスプレイプラスミドを等比率で混合してテンプレートとし、両端プライマーを用いて断片を増幅し、増幅後に1%アガロースゲルを用いてDNA断片を回収し、pYDO_017 BamHI酵素切断ベクターは回収した断片と相同組換え、組換え後の産物は大腸菌受容性細胞を転化し、得られたIL-2mutant-FCの発現プラスミドを配列決定により確認した。
【0141】
IL-2mutantとFC融合タンパク質の発現および精製
融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを、化学トランスフェクション法を用いてHEK293細胞に導入した。使用した化学トランスフェクション試薬はPEIであり、培養されたHEK293細胞を、製造業者によって提供されたプロトコルに従って一過性トランスフェクションした。まずクリーンベンチでプラスミドDNAとトランスフェクション試薬を準備し、3mLのOpti-MEM培地(Gibco製品番号:31985-070)を50mLの遠心管に入れ、30μgの対応プラスミドのDNAを加え、プラスミドを含むOpti-MEM培地を0.22μmのフィルターヘッドで濾過し、続いて90μgのPEI(1g/L)を加え、20min静置した。DNA/PEI混合物を27mLのHEK293細胞に穏やかに注ぎ、均一に混合し、37℃、8%COで20h培養した後、VPAを加えて最終濃度を2mMおよび2%(v/v)Feedにし、6日間培養を続けた。
【0142】
細胞培養後、13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、前カラムHitrap Mabselect Sureを用いて上清を精製した。操作は以下のとおりである。精製前に5倍カラム体積の平衡液(0.2M Tris, 1.5M NaCl,pH7.2)充填カラムを平衡化し、収集した上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の平衡液で充填カラムを洗浄し、非特異的結合タンパク質を除去し、5倍カラム体積の溶離緩衝液(1M sodium citrate,pH3.5)で充填剤を洗浄して溶離液を収集し、溶離液1mlあたり80μLのTris(2M Tris)を加え、限外濾過濃縮管を用いてPBS緩衝液に交換し、濃度を測定した。精製後のタンパク質100μgに対して、濃度を1mg/mLに調整し、ゲル濾過カラムを用いてタンパク質純度を測定した。47個の本発明のIL-2mutantの発現および精製結果を表4に示す。
【表7】
【0143】
IL-2mutant-FCとその受容体との親和性測定
バイオレイヤー干渉法(BLI)技術を用いて本発明の34個のIL-2mutant-FCとその受容体の平衡解離定数(K)を測定した。
【0144】
BLI法による親和力測定は従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8)で行った。センサを分析緩衝液中で20min予備湿潤させた後、確立された方法に従って、Octet Red96で候補IL-2mutant-FCとIL-2Rα、IL-2Rβのそれぞれとの親和性を測定する。まず基線を120s平衡化し、次いでIL-2Rα-BiotinまたはIL-2Rβ IH-BiotinをSAセンサ(PALL,18-5019)に固定化し、固定化したIL-2Rα-BiotinまたはIL-2Rβ IH-Biotinのセンサを、100nM IL-2mutant-FCを含む溶液にプラトー期間(100秒)まで置いた後、センサを分析緩衝液に移して少なくとも2min解離させ、結合および解離をそれぞれ測定した。実験結果に対して1:1結合モデルを利用して動力学的分析を行った。
【0145】
上記の測定手法に従って行った実験において、36個のHEK293-Fによって発現されたIL-2mutant-FCとその受容体の親和性K値を表5に示す。
【表8】
【0146】
上の表の結果から、(1)ライブラリーのスクリーニングによって得られた各IL-2mutant-FCとIL-2Rβの親和性はIL-2WTとIL-23Xと比較して有意に強くなった。(2)Y27D2、Y27F6、Y28A2、Y28A5のほか、各IL-2mutant-FCのIL-2Rαへの親和性はIL-2WTと比較して有意に低下または非結合であり、IL-23Xに近い。表4、5の結果を総合し、Y29A2、Y29B2、Y30E1、Y07、Y10、Y33A4、Y33A5、Y33A6、Y33B1、Y33B4、Y33B5、Y33C5、Y33F4、Y34F4を選んでインビトロ機能実験を行った。
【0147】
実施例5:IL-2mutant-FCインビトロ機能試験
IL-2WTとIL-2Rαの親和力はIL-2Rβ、IL-2Rγより高く、細胞表面のIL-2Rαと優先的に結合し、さらにIL-2Rβγを動員し、IL-2Rβγを介して下流のp-STAT5シグナルを放出し、T細胞とNK細胞の増殖を刺激する。Treg細胞表面にIL-2Rαがあり、エフェクターT細胞とNK細胞表面にIL-2Rαがないため、正常時にIL-2WTはTreg細胞増殖を優先的に刺激し、免疫反応をダウンレギュレートさせる。IL-2mutantはIL-2Rαと結合せず、Treg細胞の増殖を優先的に刺激する選好を解消し、同時にT細胞とNK細胞の増殖を刺激し、エフェクターT細胞とNK細胞の数を効果的に増加させ、抗腫瘍効果を高める。
【0148】
本実施例は各IL-2mutant-FCの初代ヒトCD8 T細胞p-STAT5シグナルに対する活性化を検出することにより、各変異体のCD25細胞の活性化偏向性の除去を検証し、CD25細胞の活性化作用が強い変異体をスクリーニングした。具体的な工程は以下のとおりである。
【0149】
1. PBMC細胞の蘇生
a) 液体窒素からPBMC細胞(Allcells製品番号:PB005F、100M入り)を取り出し、37℃の水浴鍋に迅速に入れ、PBMC細胞を蘇生した。
b) 細胞を予熱した5%ヒトAB血清(GemCell製品番号:100-512)と1‰ DNA酵素(STRMCELL製品番号:07900)を含むX-VIVO15(Lonza製品番号:04-418Q)培地10mLに添加し、400G、25℃で10min遠心分離し(後続遠心分離はすべてこの条件)洗浄した。
c) 20mLの培地を加えて細胞を再懸濁し、37℃の二酸化炭素インキュベーターで一晩培養した。
【0150】
2. ヒトCD8 T細胞の精製:
a) 工程1で懸濁した細胞液を吸引し、遠心分離して上清を捨てた。
b) Robosep緩衝液(STEMCELL 製品番号:20104)1mLとヒトAB血清100μLおよびヒトCD8 T細胞精製キット(Invitrogen 製品番号:11348D)100μLに抗体混合液を陰性スクリーニングして細胞を再懸濁した。
c) 均一に混合した後、4℃で20minインキュベートし、5minごとに振とうした。
d) インキュベートした後、10mLのRobosep緩衝液を加え、遠心分離して2回洗浄した。
e) 同時に、1mLの磁性微小球(ヒトCD8 T細胞精製キット)を用意し、7mLのRobosep緩衝液を加えて磁気スタンドに入れて1min上清を捨て、磁性微小球を予備洗浄した。
f) 各1mL Robosep緩衝液を加えてそれぞれ微小球と細胞を再懸濁し、均一に混合した後に室温で30min回転インキュベートした。
g) インキュベートした後、 6mLのRobosep緩衝液を加え、磁気スタンドに1min置き、上清を収集した。
h) 収集液を再び磁気スタンドに1min置き、上清を収集した。
i) 遠心分離して上清を捨て、予熱したT培地で再懸濁し、密度を1×10/mLに調整した。
j) 1/3の細胞を用意してCD25の発現を刺激し、残りの細胞は37℃の二酸化炭素インキュベーターで一晩培養した。
【0151】
3. CD8 T細胞を、CD25を発現するように刺激した:
a) 1/3工程2で精製したCD8 T細胞を用意し、抗ヒトCD3/CD28抗体の磁性微小球(GIBCO製品番号:11131D)を加え、細胞と微小球の割合は3:1であった。
b) 37 ℃の二酸化炭素インキュベーターに3min静置した。
c) 培地10mLを加えて2回洗浄した。
d) 培地を加えて細胞密度を1×10/mLに調整し、 37℃の炭酸ガスインキュベーターで2d静置培養した。
【0152】
4. 細胞純度と発現レベルの測定:
a) 抗ヒトCD8-PE(Invitrogen製品番号:12-0086-42)、抗ヒトCD25-PE(eBioscience製品番号:12-0259-42)、同型対照抗体(BD製品番号:556653)を用いて細胞のCD8とCD25を検出した。
b) 工程2において細胞はCD8 CD25T細胞であり、工程3において細胞はCD8 CD25 T細胞であった。
【0153】
5. 各IL-2mutant-FCによるCD8 CD25T細胞に対するp-STAT5シグナル活性化のEC50の検出:
a) CD8 CD25T細胞を用意し、1ウェルあたり1×10細胞で96ウェルU底培養プレート(Costar製品番号:CLS3799-50EA)を敷いた。
b) 100μLの各IL-2mutant-FC、市販IL-2(R&D製品番号:202-IL-500)、IL-2WT-FC、IL-23X-FCを添加し、最高濃度266.7nMから始めて合計12段階の4倍の濃度勾配で希釈し、37℃のインキュベーター中で20minインキュベートした。
c) 4.2% ホルムアルデヒド溶液55.5μLを加え、室温で10min固定した。
d) 上清を遠心分離し、200μLの氷メタノール(Fisher製品番号:A452-4)を加えて細胞を再懸濁し、4℃の冷蔵庫で30minインキュベートした。
e) 上清を遠心分離し、200μL染色緩衝液(BD製品番号:554657)で3回洗浄した。
f) 抗p-STAT5-AlexFlour647(BD製品番号:562076、1:200希釈)を含む破膜・固定緩衝液(BD製品番号:51-2091KZ)200μLを加え、室温で遮光して3hインキュベートした。
g) 染色緩衝液を用いて3回洗浄し、100μLの染色緩衝液で細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー検出を行った。
h) 抗体濃度を横軸、AlexFlour647中間蛍光度値を縦軸として、p-STAT5シグナルのEC50値および曲線を作成した結果を図5.A、Cに示す。
【0154】
6. 各IL-2mutant-FCによるCD8 CD25T細胞に対するp-STAT5シグナル活性化のEC50の検出:
a) CD8 CD25T細胞を用意し、1ウェルあたり1×10細胞で96ウェルU底培養プレートを敷いた。
b) 手順5におけるb)-h)と同様にして、p-STAT5シグナルのEC50値および曲線を作成した結果を図5.B、Dに示す。
【0155】
実験結果に基づき、IL-2mutant-FCのCD8CD25T細胞に対する活性化効果とCD8CD25T細胞に対する活性化効果との比を比較したところ(表6.1、6.2)、1)本発明の各IL-2mutant-FCのCD8CD25T細胞に対する活性化効果はIL-23X-FCよりも優れており、IL-2WT-FCと比較的近く、ここで、Y07およびY10効果は市販のIL-2よりも強い。2)CD25発現を刺激した後、本発明の各IL-2mutant-FCのCD8CD25T細胞に対する活性化効果は、CD25時よりもわずかに増加したが、市販のIL-2、IL-2WT-FCの大きな幅と比較して有意差があったことがわかった。まとめると、CD25 EC50/CD25 EC50の倍数から明らかなように、本発明の各IL-2の変異体は、CD25細胞活性化への偏向性を効果的に排除し、Y07、Y10がCD25細胞を活性化する効果は、残りの変異より優れている。
【表9】
【表10】
【0156】
配列表
IL-2WT(配列番号1)、変異(C125S)を有する
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLT

IL-23X(配列番号2)、変異(C125S,R38D,K43E,E61R)を有する
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTDMLTFEFYMPKKATELKHLQCLERELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLT

IL-2H9(配列番号3)、変異(C125S,L80F,R81D,L85V,I86V,I92F)を有する
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHFDPRDVVSNINVFVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLT

酵母ディスプレイプラスミドpYDC011(配列番号4)
ACGGATTAGAAGCCGCCGAGCGGGTGACAGCCCTCCGAAGGAAGACTCTCCTCCGTGCGTCCTCGTCTTCACCGGTCGCGTTCCTGAAACGCAGATGTGCCTCGCGCCGCACTGCTCCGAACAATAAAGATTCTACAATACTAGCTTTTATGGTTATGAAGAGGAAAAATTGGCAGTAACCTGGCCCCACAAACCTTCAAATGAACGAATCAAATTAACAACCATAGGATGATAATGCGATTAGTTTTTTAGCCTTATTTCTGGGGTAATTAATCAGCGAAGCGATGATTTTTGATCTATTAACAGATATATAAATGCAAAAACTGCATAACCACTTTAACTAATACTTTCAACATTTTCGGTTTGTATTACTTCTTATTCAAATGTAATAAAAGTATCAACAAAAAATTGTTAATATACCTCTATACTTTAACGTCAAGGAGAAAAAACCCCGGATCGGACTACTAGCAGCTGTAATACGACTCACTATAGGGAATATTAAGCTAATTCCCTACTTCATACATTTTCAATTAAGATGCAGTTACTTCGCTGTTTTTCAATATTTTCTGTTATTGCTTCAGTTTTAGCAGGaTCctgacatagtagggattataaGGaGGcGGtGGaTCcGATTACAAGGATGACGATGACAAGGGCGGAGGAGGCTCcCAGGAACTGACAACTATATGCGAGCAAATCCCCTCACCAACTTTAGAATCGACGCCGTACTCTTTGTCAACGACTACTATTTTGGCCAACGGGAAGGCAATGCAAGGAGTTTTTGAATATTACAAATCAGTAACGTTTGTCAGTAATTGCGGTTCTCACCCCTCAACgACTAGCAAAGGCAGCCCCATAAACACACAGTATGTTTTTtaaTGAGTTTAAACCCGCTGATCTGATAACAACAGTGTAGATGTAACAAAATCGACTTTGTTCCCACTGTACTTTTAGCTCGTACAAAATACAATATACTTTTCATTTCTCCGTAAACAACATGTTTTCCCATGTAATATCCTTTTCTATTTTTCGTTCCGTTACCAACTTTACACATACTTTATATAGCTATTCACTTCTATACACTAAAAAACTAAGACAATTTTAATTTTGCTGCCTGCCATATTTCAATTTGTTATAAATTCCTATAATTTATCCTATTAGTAGCTAAAAAAAGATGAATGTGAATCGAATCCTAAGAGAATTGGGCAAGTGCACAAACAATACTTAAATAAATACTACTCAGTAATAACCTATTTCTTAGCATTTTTGACGAAATTTGCTATTTTGTTAGAGTCTTTTACACCATTTGTCTCCACACCTCCGCTTACATCAACACCAATAACGCCATTTAATCTAAGCGCATCACCAACATTTTCTGGCGTCAGTCCACCAGCTAACATAAAATGTAAGCTCTCGGGGCTCTCTTGCCTTCCAACCCAGTCAGAAATCGAGTTCCAATCCAAAAGTTCACCTGTCCCACCTGCTTCTGAATCAAACAAGGGAATAAACGAATGAGGTTTCTGTGAAGCTGCACTGAGTAGTATGTTGCAGTCTTTTGGAAATACGAGTCTTTTAATAACTGGCAAACCGAGGAACTCTTGGTATTCTTGCCACGACTCATCTCCGTGCAGTTGGACGATATCAATGCCGTAATCATTGACCAGAGCCAAAACATCCTCCTTAGGTTGATTACGAAACACGCCAACCAAGTATTTCGGAGTGCCTGAACTATTTTTATATGCTTTTACAAGACTTGAAATTTTCCTTGCAATAACCGGGTCAATTGTTCTCTTTCTATTGGGCACACATATAATACCCAGCAAGTCAGCATCGGAATCTAGAGCACATTCTGCGGCCTCTGTGCTCTGCAAGCCGCAAACTTTCACCAATGGACCAGAACTACCTGTGAAATTAATAACAGACATACTCCAAGCTGCCTTTGTGTGCTTAATCACGTATACTCACGTGCTCAATAGTCACCAATGCCCTCCCTCTTGGCCCTCTCCTTTTCTTTTTTCGACCGAATTTCTTGAAGACGAAAGGGCCTCGTGATACGCCTATTTTTATAGGTTAATGTCATGATAATAATGGTTTCTTAGGACGGATCGCTTGCCTGTAACTTACACGCGCCTCGTATCTTTTAATGATGGAATAATTTGGGAATTTACTCTGTGTTTATTTATTTTTATGTTTTGTATTTGGATTTTAGAAAGTAAATAAAGAAGGTAGAAGAGTTACGGAATGAAGAAAAAAAAATAAACAAAGGTTTAAAAAATTTCAACAAAAAGCGTACTTTACATATATATTTATTAGACAAGAAAAGCAGATTAAATAGATATACATTCGATTAACGATAAGTAAAATGTAAAATCACAGGATTTTCGTGTGTGGTCTTCTACACAGACAAGATGAAACAATTCGGCATTAATACCTGAGAGCAGGAAGAGCAAGATAAAAGGTAGTATTTGTTGGCGATCCCCCTAGAGTCTTTTACATCTTCGGAAAACAAAAACTATTTTTTCTTTAATTTCTTTTTTTACTTTCTATTTTTAATTTATATATTTATATTAAAAAATTTAAATTATAATTATTTTTATAGCACGTGATGAAAAGGACCCAGGTGGCACTTTTCGGGGAAATGTGCGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTTCGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTGTTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTTACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGACAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGTAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAACTGGCGAACTACTTACTCTAGCTTCCCGGCAACAATTAATAGACTGGATGGAGGCGGATAAAGTTGCAGGACCACTTCTGCGCTCGGCCCTTCCGGCTGGCTGGTTTATTGCTGATAAATCTGGAGCCGGTGAGCGTGGGTCTCGCGGTATCATTGCAGCACTGGGGCCAGATGGTAAGCCCTCCCGTATCGTAGTTATCTACACGACGGGCAGTCAGGCAACTATGGATGAACGAAATAGACAGATCGCTGAGATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTGGTAACTGTCAGACCAAGTTTACTCATATATACTTTAGATTGATTTAAAACTTCATTTTTAATTTAAAAGGATCTAGGTGAAGATCCTTTTTGATAATCTCATGACCAAAATCCCTTAACGTGAGTTTTCGTTCCACTGAGCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCTACCAACTCTTTTTCCGAAGGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTCCTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACTCTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTTACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACCGGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGCGGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAGCTTGGAGCGAACGACCTACACCGAACTGAGATACCTACAGCGTGAGCATTGAGAAAGCGCCACGCTTCCCGAAGGGAGAAAGGCGGACAGGTATCCGGTAAGCGGCAGGGTCGGAACAGGAGAGCGCACGAGGGAGCTTCCAGGGGGGAACGCCTGGTATCTTTATAGTCCTGTCGGGTTTCGCCACCTCTGACTTGAGCGTCGATTTTTGTGATGCTCGTCAGGGGGGCCGAGCCTATGGAAAAACGCCAGCAACGCGGCCTTTTTACGGTTCCTGGCCTTTTGCTGGCCTTTTGCTCACATGTTCTTTCCTGCGTTATCCCCTGATTCTGTGGATAACCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCGAACGACCGAGCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGGAAGAGCGCCCAATACGCAAACCGCCTCTCCCCGCGCGTTGGCCGATTCATTAATGCAGCTGGCACGACAGGTTTCCCGACTGGAAAGCGGGCAGTGAGCGCAACGCAATTAATGTGAGTTACCTCACTCATTAGGCACCCCAGGCTTTACACTTTATGCTTCCGGCTCCTATGTTGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTACGCCAAGCTCGGAATTAACCCTCACTAAAGGGAACAAAAGCTGGCTAGT
【表11】
IL-2受容体配列:
IL-2Rα受容体(配列番号11)、C末端にaviタグおよびHis6タグを付ける
ELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTGEMETSQFPGEEKPQASPEGRPESETSCLVTTGLNDIFEAQKIEWHEHHHHHH

IL-2Rβ受容体(配列番号12)、C末端にaviタグおよびHis6タグを付ける
AVNGTSQFTCFYNSRANISCVWSQDGALQDTSCQVHAWPDRRRWNQTCELLPVSQASWACNLILGAPDSQKLTTVDIVTLRVLCREGVRWRVMAIQDFKPFENLRLMAPISLQVVHVETHRCNISWEISQASHYFERHLEFEARTLSPGHTWEEAPLLTLKQKQEWICLETLTPDTQYEFQVRVKPLQGEFTTWSPWSQPLAFRTKPAALGKDTGLNDIFEAQKIEWHEHHHHHH

ベクターpYDO_017:(配列番号13)
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図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C-D】
図5A-B】
図5C-D】
図6
【配列表】
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