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特許7512211クロマトグラフィービーズ、その製造、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】クロマトグラフィービーズ、その製造、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/285 20060101AFI20240701BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 20/289 20060101ALI20240701BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240701BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20240701BHJP
   C08B 37/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01J20/285 N
B01J20/281 G
B01J20/281 X
B01J20/281 R
B01J20/289
G01N30/02 B
B01D15/38
B01J20/26 L
B01J20/30
B01J20/24 C
C08B37/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020572792
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019066781
(87)【国際公開番号】W WO2020002300
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】1810690.6
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・フレドリック・エーマン
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー・ウルフ・ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤスミン・ファロク
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ・ホルムグレン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド・ブロール・レンナルト・ヤンソン
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05135650(US,A)
【文献】特開2008-058302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
B01D 15/38
B01J 20/30
B01J 20/24
C08B 37/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8~20%(w/w)のアガロース濃度を有する溶液中の、5~50μmの直径を有するアガロースビーズを用意する工程;前記溶液中の前記アガロースビーズを乳化し、ビーズを加熱してアガロース孔構造を崩壊させる工程;前記ビーズを少なくとも一度架橋結合させる工程;、及び、前記ビーズを活性化し、前記アガロースビーズ内に残存する孔を収縮させ、埋め込む工程を含む、100g/モルの分子量を有する化合物に対して不浸透性である架橋結合アガロースビーズを製造する方法。
【請求項2】
リガンドを前記ビーズに付加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リガンドが、ビーズにグラフト化されたポリマーテンタクル上に提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リガンドが、親和性リガンド、イオン交換リガンド、及び疎水性相互作用リガンドから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
磁性粒子が、前記乳化する工程の前に前記溶液に添加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
体分子を分析するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって製造された架橋結合アガロースビーズの使用。
【請求項7】
前記生体分子が、タンパク質又はペプチドである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ビーズが、直径1~15μmであり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用途において使用される、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
前記ビーズが、直径15~25μmであり、分取用途において使用される、請求項6又は7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィービーズ、その製造、及びその使用に関する。より詳細には、本発明は、例えば、ペプチド及びタンパク質等の生体分子の分析用の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の固定相として主に好適な、小さくて硬質であり且つ不浸透性のアガロースビーズ、並びにこうしたビーズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)とは、化学化合物及び生化学化合物の研究、製造、及び診断に必須の液体クロマトグラフィー法である。ペプチド、タンパク質、及びその可能な変異体等の生体分子の特徴決定及び分析は、典型的には、得られる速度及び分解能のために、通常、高圧クロマトグラフィーシステムにおいて行われる。2種のカラムが、主にルーチン分析に用いられる。それらは、充填カラム又は一体型カラムのいずれかである。充填カラムは、大抵の場合、3~30cmの範囲のカラムベッド高で、互いに対して密に充填された、最も多くの場合球状ビーズの形状の粒子固定相を含む。HPLCカラムで用いられる市販の固定相は、典型的には、その硬質性のために、シリカ又はポリスチレン等の合成有機樹脂をベースとする。より短いカラムの、より小さな直径のビーズの使用は、高速度での高性能分離を達成するために極めて効率的な方法であるが、大幅により高い背圧も意味する。したがって、極めて硬質の固定相材料のみが使用される。最も一般的な技術は、逆相クロマトグラフィーである。
【0003】
現在利用可能な充填カラム用HPLC固定相は、1.7~10μmのビーズ状シリカ又は合成ポリマーをベースとし、ここで、小さな直径のビーズが、クロマトグラフィー効率の増大を説明する。
【0004】
分析的なタンパク質分離における、主な課題は、高分解能及び低い非特異吸着で、速い分離を得ることである。充填カラムのビーズは、多孔質又は非多孔質のいずれかであり、別々の利点及び欠点を有する。シリカ粒子及び合成非多孔質粒子は、ビーズの表面のみへの結合を伴う短い拡散経路という利点を有し、これは、より速い物質移動を意味する。多孔質ビーズにより、より大きな表面積がもたらされ、これは、分析物との相互作用のためのより多くの拠点、及びより高い結合能力を意味する。
【0005】
他の種類の、HPLC用の固定相が記載されている。米国特許第5135650号において、Hjerten等は、ビーズを収縮させるか、又は孔を埋め込むことによって、多孔質アガロースビーズを、タンパク質に実質的に不浸透性であるビーズに変換する方法を記載している。Hjertenの方法による収縮は、架橋結合と組み合わされた、様々な有機溶媒、例えば、ジオキサン及びクロロホルムによる連続処理によって行われる。埋め込みは、内部孔に部分的に結合し、且つビーズ表面にも部分的に結合することができる、グリシドール等の重合性物質を添加することによって行われる。最終的に、ビーズは、分子量3kDa以上のタンパク質による浸透を妨げるように、十分に減じた多孔性を有するものとして説明され、これらのビーズで充填されたカラムは、40バールの圧力まで耐えることを示した。収縮法による主な欠点は、環境的理由、健康状の理由、及び安全上の理由故に、一般に避けられる、ジオキサン等の溶媒の使用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5135650号
【文献】米国特許第6602990号
【文献】米国特許第7396467号
【文献】欧州特許出願公開第1357988号
【文献】欧州特許第2841177号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ペプチド及びタンパク質等の生体分子の分析用の、またより大規模の分取用途用の、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の固定相として好適な、小さくて硬質であり且つ不浸透性のアガロースビーズを提供する。
【0008】
本発明は、100g/モルもの小さな化合物を排除する硬質性を有する、すなわち、最も単純なジペプチドでさえも本質的に排除する、中実アガロースビーズを提供する。
【0009】
第1の態様において、本発明は、硬質性であり、3000g/モルもの低い分子量、好ましくは100g/モルもの低い分子量を有する化合物に対して不浸透性である、中実アガロースビーズに関する。
【0010】
好ましくは、ビーズは、1~25μmの直径を有し、好ましくは、HPLC用に1~15μmの直径を、及び分取用途用に15~25μmの直径を有する。
【0011】
本発明の中実アガロースビーズは、高圧での高速分析用途での使用、及び低圧でのより大規模な分取用途における使用のために、100バールを超える圧力、好ましくは、300バール以上の圧力に耐える。小さなビーズ-高圧 大きなビーズ-より低圧。
【0012】
好ましくは、中実アガロースビーズは、テンタクル(tentacle)/グラフト化ポリマーを備えて、表面積を増加させ、機能化を可能にする。
【0013】
テンタクル又はビーズ表面は、リガンド、例えば、カチオンリガンド、アニオンリガンド、親和性リガンド(タンパク質A、IMAC)、疎水性相互作用リガンド、又はその組み合わせを備えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、中実アガロースビーズは、直径1~15μmであり、HPLCカラムに充填される。1種又は複数のHPLCカラムが、HPLCシステムに取り付けられていてもよい。2種以上のカラムが備えられる場合、カラム中のビーズは、好ましくは、異なる機能性(異なるリガンドが付加される)を有する。
【0015】
第2の態様において、本発明は、8~20%(w/w)のアガロース濃度を有する溶液中の、5~50μmの直径を有するアガロースビーズを用意する工程;約45~99℃の一定の温度まで上記溶液を加熱し、上記溶液中の上記アガロースビーズを乳化する工程;上記ビーズを少なくとも一度架橋結合させる工程; 上記ビーズを、例えばアリル化することにより活性化させる工程;場合により、上記ビーズにポリマーテンタクルをグラフト化させて、リガンドを付加する工程を含む、上記の中実アガロースビーズを製造する方法に関する。或いは、リガンドを、ビーズの表面に付加することができる。他の活性化の例は、エポキシ活性化、NHS活性化、又はCNBr活性化である。
【0016】
好ましくは、リガンド、例えば、親和性リガンド、イオン交換リガンド、及び疎水性相互作用リガンドが、上記ポリマーテンタクルに提供される。
【0017】
一実施形態において、マグネタイト粒子等の磁性粒子が、乳化する工程の前に、溶液に添加される。
【0018】
第3の態様において、本発明は、タンパク質及びペプチド等の生体分子を、例えば、分析物濃度、電荷変異体又は疎水性変異体、及び特徴決定に関して分析するための、上記の中実アガロースビーズの使用に関する。100g/モルもの小さな分子は、ビーズから排除される。
【0019】
一実施形態において、上記ビーズは、直径1~15μmであり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用途で使用される。
【0020】
別の実施形態において、上記ビーズは、直径15~25μmであり、分取用途及び/又は大規模用途、例えば研磨において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1からの非多孔質アガロースビーズで充填され、連結された4.6mm(i.d.)×10cm のPEEKカラムにわたる、様々な流速での、平均HPLCシステム圧力を示す図である。
図2A】アプロチニン分離の比較クロマトグラムを示す図である。4.6mm(i.d.)×10cmのPEEKカラムに充填された、実施例2からの非多孔質アガロースビーズにおける10分間のアプロチニンの分離を示す。線勾配、塩化ナトリウム0~500mM、1.66ml/分。
図2B】アプロチニン分離の比較クロマトグラムを示す図である。先行技術の3.2mm(i.d.)×3cm のMini Sカラムにおける10分間のアプロチニンの分離を示す。線勾配、塩化ナトリウム0~500mM、0.80ml/分。214nmでのmAU単位。
図3A】PEEKカラムにおける実施例2からの非多孔質アガロースビーズによる、mAb分離のピーク分解能の比較クロマトグラムを示す図である。モノクローナル抗体電荷変異体の分離は、上昇するpH勾配を用いて、イオン交換カラムで行われた。モノクローナル抗体46μgをそれぞれのカラムに投入した。280nmでのmAU単位。
図3B】先行技術のMono Sカラムによる、mAb分離のピーク分解能の比較クロマトグラムを示す図である。モノクローナル抗体電荷変異体の分離は、上昇するpH勾配を用いて、イオン交換カラムで行われた。モノクローナル抗体46μgをそれぞれのカラムに投入した。280nmでのmAU単位。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者等は、天然の孔構造を崩壊させることによって、アガロースビーズを、高い圧力に耐えるほど十分に硬質にし、分解能及び効率の点で、現在利用可能なHPLC樹脂と競合するほど十分小さくし得るとの仮説を立てた。また、これらの非多孔質ビーズで充填されたカラム中の分析物の物質移動は改善されて、より鋭いピークをもたらすことになる。ビーズに対して固定化されたリガンドとの分析物相互作用を増すために、崩壊に続いて、表面グラフト化を施して、利用可能な表面積を増す。製造する方法は、アガロースを乳化する第1の工程、続いて、ビーズがポリマー-テンタクルグラフト化される前に、架橋結合と組み合わせた、孔を崩壊させる第2の工程に基づく。ビーズは、通常の、多孔質アガロースベースの樹脂に用いられている、同じ種類のリガンドで後で機能化することができ、したがって、例えば、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーが可能になる。シリカベースのHPLCビーズと比較した利点は、とりわけ、アルカリ性pHでのpH耐性を増すことである。アガロースベースのビーズは、無極性の合成ポリマーHPLCビーズと比較して、本来、親水性でもある。これは、分析物とゲル樹脂との間の望ましくない疎水性相互作用を最小化することが所望される技術において有利である。
【0023】
本発明者等は、3~6μmの平均直径を有するアガロースビーズを製造することができ、これらのビーズで充填されたカラムがHPLCに適合し、少なくとも300バールの圧力で操作することができることを示した。意外なことに、ビーズは、100g/モルもの小さな化合物を排除し、本質的に、最も単純なジペプチドでさえも排除した。これにより、全てのサイズの、関連の生体分子について、効率的な物質移動及び鋭く狭いピークが可能になる。更に、より鋭いピークから、信号対ノイズ比に利点がもたらされる。
【0024】
本発明の一実施形態において、本発明のビーズは弱カチオン交換リガンドで機能化され、6kDa~160kDaの範囲のペプチド及びタンパク質を含む試料を用いて機能性試験を行い、先行技術と比較して優れた分解能及び分析速度であった。
【0025】
本発明は、分析用HPLC用途又は高分解能分取用途用の、ポリマー-テンタクルをグラフト化した、中実又は非多孔質のアガロースビーズを製造する方法を説明し、既に報告されている固定相と比較して、特異な、利点の組み合わせ:アルカリ安定性、親水性樹脂、及び増加した表面積による迅速な物質移動をもたらす。
【0026】
以下に、本発明の中実アガロースビーズを製造するための、いくつかの一般的且つ例示的な原則を説明する。
【0027】
1.乳化
水中8~20%(w/w)のアガロース濃度の、直径5~50μmのアガロースビーズを、本発明の、小さなアガロースビーズを製造する出発点として使用する。例えば、有機連続相、好ましくはトルエンを用いること、好適な孔径を有する膜装置を用いる若しくは用いないこと、又は撹拌によるもの等の、任意の好適な乳化する方法を使用することができる。アガロースビーズを乳化する方法は、米国特許第6602990号及び米国特許第7396467号に記載されている。
【0028】
2.中実化及び崩壊
架橋結合前の高温の工程を用いて、ビーズ状アガロース孔構造を中実化させ、ビーズを非多孔質にする。予備工程によって、アガロース孔構造を崩壊させ、架橋結合前により密にする。この工程の間、温度は、典型的には45~99℃に設定される。
【0029】
3.架橋結合
予備工程に続いて、水酸化ナトリウムの存在下で、架橋剤、例えばエピクロロヒドリンを用いて、架橋結合させる工程を行う。アガロースを架橋結合させる方法は、米国特許第6602990号及び米国特許第7396467号に記載されている。
【0030】
4.孔埋め込み
残存の孔容積の埋め込みは、水酸化ナトリウムの存在下で、例えば、エピクロロヒドリンを用いて広範囲に架橋結合するいくつかの追加の工程によって行われる。
【0031】
残存の孔容積はまた、水酸化ナトリウムの存在下で、アリルグリシジルエーテル(AGE)をカップリングさせ、続いて、不活性化及び加水分解を行うことによって、埋め込むこともできる。アリルグリシジルエーテルで活性化させ、臭素で不活性化させる方法は、欧州特許出願公開第1357988号に記載されている。
【0032】
5.機能化(任意)
機能化は、活性化されたマトリックス上にポリマーを重合によってグラフト化することによって行われる。活性化は、アリルグリシジルエーテル(AGE)をカップリングすることによって行われ得る。この工程の方法は、欧州特許第2841177号に記載されている。
【0033】
【化1】
【0034】
残存の孔容積の活性化、又は埋め込みに用いることができる、アリルグリシジルエーテルのカップリング
【0035】
活性化ビーズ上へのモノマーのグラフト化は、1種、2種、又は複数の異なるモノマーを、水中粒子懸濁液及びラジカル開始剤と混合することによって施される。活性化ビーズ上へのグラフト化は、フリーラジカル重合によって行われる。活性化ビーズへモノマーをグラフト化する方法もまた、欧州特許第2841177号に説明されている。
【実施例
【0036】
(実施例1)
非多孔質アガロースビーズの製造
乳化
中実ビーズを、以下の手順によって、ビーズ状アガロースから製造した。アガロース209gを、水1800ml中に懸濁し、95℃まで加熱してアガロースを溶解させ(10%(w/w))、その後、温度を70℃まで下げる。アガロース溶液を、トルエン2250ml、テンシド(tenside)、及びセルロース乳化剤を含む有機相へ60℃で添加して、粗エマルジョンを生成する。このエマルジョンは、疎水性SPG膜を通して、ポンプで送り込まれ(押し込まれ)通過を繰り返して、狭い粒径分布を得る。回収したエマルジョンを、22~20℃まで冷却し、エタノールで洗浄してトルエン及び乳化剤を取り除く。乳化アガロースビーズを、水で最後に洗浄して、架橋結合前にエタノールを取り除いた。
【0037】
2つの並行の手順を実施して、異なる乳化(emulgated)アガロースビーズサイズ、すなわち、それぞれ5μm及び10μmを製造した。
【0038】
中実化及び崩壊
乳化アガロースゲル樹脂を計量し、スラリー濃度を水中75%に設定した(ゲル容量419mlスラリー559ml)。ゲルを撹拌しながら反応器へ移し、水浴に置いた。ゲル樹脂を35℃まで加熱し、Na2SO4 218gを混合物に添加した。混合物を35℃で70分間放置した。次いで、混合物を、設定収縮温度まで加熱し、評価された温度は87℃であった。反応物を、設定温度で60分間放置した。温度を47.5(±1℃)まで下げた後、25M NaOH溶液5.6mlを反応物に添加し、その後、NaBH40.5gを反応物に添加した。
【0039】
架橋結合
架橋剤試薬(エピクロロヒドリン)及び25M NaOH溶液を、注入装置を用いて5時間添加し、添加された、25M NaOH及びエピクロロヒドリンの全量は、それぞれ容量61.5mlであった。反応物を、47.5℃で撹拌しながら19±2時間(架橋剤試薬を添加する5時間を含む)放置した。次いで、ゲル樹脂を、ガラスフィルター上で、蒸留水(6×2ゲル容量)を用いて洗浄した。
【0040】
架橋結合させたゲル樹脂を計量し、スラリー濃度を、水中70%に設定した。ゲルを、撹拌しながら丸底フラスコに移した。NaAc4.32gを添加し、15分間放置して溶解させた。次いで、臭化物をスラリーに0.345ml添加し、混合物が黄色に変わった後、反応物を15分間放置した。15分後、残った臭化物をギ酸Na0.7gを用いて、スラリーが白色に変わるまで破壊した。ギ酸Naを、15分間放置して溶解させ、その後、温度を40℃まで上げ、Na2SO448.1gを添加し、反応物を60分間放置した。25M NaOH溶液13.75mlを混合物に添加し、反応物を、撹拌しながら40℃で16~20時間放置した。次いで、ゲル樹脂を、ガラスフィルターで、蒸留水(6×2ゲル容量)を用いて洗浄した。
【0041】
架橋結合の繰り返しによる孔埋め込み
加水分解されたゲル樹脂を計量し、スラリー濃度を、75%ゲル及び残り蒸留水に設定した。ゲル樹脂を、水浴及び撹拌を備えた反応器へ移した。ゲルを33℃まで加熱し、Na2SO4 42.6gを混合物に添加した。混合物を33℃で70分間放置した。その後、温度を47.5(±1℃)まで上げ、混合物を、撹拌しながら60分間放置した。25M NaOH溶液1.1mlを反応物に添加した。架橋剤(エピクロロヒドリン)及びNaOHを、ドジマットで5時間添加し、添加された、NaOH及びエピクロロヒドリンの全量は、それぞれ容量12mlであった。反応物を、撹拌しながら47.5℃で19(±2時間)放置した。次いで、ゲルを、ガラスフィルター上で、蒸留水(6×2ゲル容量)を用いて洗浄した。
【0042】
アリル化による孔埋め込み
ゲルスラリーを計量し、ガラスフィルターに加え、50% NaOH溶液(2x1ゲル容量)で洗浄した。ゲルを流出させ、等量の25M NaOH(例えば、流出させたゲル100gに25M NaOH 100mlを添加する)と共に反応器に加えた。撹拌を200rpmで開始した。その後、NaBH4を添加した(ゲル100gに対し1g)。ゲルスラリーを50℃まで加熱し、次いで、アリルグリシジルエーテル(AGE)を添加した(ゲル100gにAGE 200mlを添加する)。撹拌を300rpmまで増した。反応物を50℃で終夜放置した(16~20時間)。翌日、ゲルスラリーをガラスフィルターに加え、蒸留水(3×2ゲル容量)、エタノール(5×2ゲル容量)、及び蒸留水(5×2ゲル容量)を用いて洗浄した。
【0043】
結果
サイズの測定
得られたビーズを、レーザー回折粒径分析機で実施されたサイズの測定によって分析した。最初に5μm及び10μmの乳化アガロースビーズから始めた場合、この手順の後、収縮したアガロースビーズの平均直径は、それぞれ、約3μm及び5μmであった。
【0044】
多孔性の測定
4.6mm(i.d.)×10cmのPEEKカラムを、100バールの一定圧力下、実施例1からの非多孔質ビーズ5μmで15分間充填した。KAV値を決定するために、ボイドを知ることが必要であり、それは、大きな分子量を有する化合物、例えば、ブルーデキストラン2000の保持容量によって測定される。多孔性の測定は、注入された化合物、ブルーデキストラン2000(2x106g/モル)、硝酸カリウム(101.1g/モル)、及びアセトン(58.1g/モル)の溶出容量を測定することによって行われた。ブルーデキストラン2000の保持容量は、0.78mlであり、硝酸カリウム(Ve0.78ml)、及びアセトン(0.79ml)について得られたKAV-値は、Vtとして幾何学量1.66mlを用いたところ、それぞれ0及び0.01であった。一般に、カラムの内部容量は、小さな分子の溶出容量からボイド体積を減じることによって測定され、この場合、0~0.01ml、すなわち、極めて小さな化合物を除いた全てのための非多孔質クロマトグラフィー固定相をもたらす。
【0045】
(実施例2)
カチオン交換リガンドを有する非多孔質アガロースビーズの製造
本実施例は、5μmの非多孔質アガロースビーズから始まる、実施例1の非多孔質アガロースビーズの誘導体化によるカチオン交換体の製造を説明する。
【0046】
流出させたゲル樹脂を、三ツ口丸底フラスコに注いだ。イオン性モノマーVSA、中性モノマーVP、及び水を添加した。以下のスキームを参照されたい。pHを、酢酸及びNaOHでpH7~8に調節した。開始剤2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩(ADBA)を添加し、窒素ガスの連続流を有する管を、分散液中に下げた。次いで、フラスコを、水浴又はグリセロール浴中に下げ、反応物を、48~50℃で撹拌しながら16~20時間放置した。次いで、ゲル樹脂を、ガラスフィルター上で、蒸留水(6×2ゲル容量)を用いて洗浄した。ゲル樹脂を滴定して、反応後のイオン能を測定した。
【0047】
【化2】
【0048】
ビニルピロリドン(VP)及びビニルスルホン酸塩(VSA)を用いた、活性化ビーズへのモノマーの重合
【0049】
(実施例3)
非多孔質アガロースビーズの圧力対流速性能
本実施例は、本発明の非多孔質アガロースビーズの圧力-流速性能を示す。
【0050】
4.6mm(i.d.)×10cmのPEEKカラムを、100バールの一定圧力下、実施例1から得た平均直径5μmの非多孔質ビーズで15分間充填した。次いで、PEEKカラムを、PEEKフィンガータイトコネクターを用いて、高圧HPLCシステム(Agilent1260 Infinity II)に連結した。水を、カラムにわたって注ぎ入れ、流速0.5ml/分(線流速181cm/時間)から始めて、3.9ml/分(1408cm/時間)まで少しずつ増加させた。平均システム圧力は、様々な流速で示された。図1によれば、流速とシステム圧力との関係は、全範囲において線形であり、缶カラムが、少なくとも流速4ml/分まで操作されたことを示した。
【0051】
(実施例4)
クロマトグラフィー分離(比較の例)
4A
本実施例では、Mini Sカラム(GE Healthcare社)及び実施例2からの非多孔質ビーズで充填されたPEEKカラムで、低塩から高塩の勾配で分離された、アプロチニン(6.5kDa)のピーク効率を比較する。また、増加するpH勾配pH6~9での、モノクローナル抗体(160kDa)の分離からのクロマトグラムの比較を、Mono Sカラムと実施例のPEEKカラムとの間で示す。
【0052】
平均直径5μm及びイオン能37μmol/mlを有する実施例2のビーズを含む充填カラムを、実施例3で行ったようにして用意した。カラムを、20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)で平衡化した。アプロチニン(1mg)を平衡緩衝剤1ml中に溶解させ、20μgに等しい20μlをカラムに注入した。結合アプロチニンを、10分間で、線流速600cm/時間で、0~500mMのNaCl線勾配で溶出した。3.2mm(i.d.)×3cm Mini Sカラムを、比較で、同じ方法及び同じ線流速であるが、アプロチニン5μgを注入して実施した。半分のピーク高さでの幅で表されるピーク効率は、Mini Sカラムでの17.5秒と比較して、非多孔質アガロースビーズで充填されたカラムでは5.5秒であった(それぞれ、図2A及び図2B)。
【0053】
4B
実施例2からの非多孔質アガロースビーズで充填されたPEEKカラムを、10mMクエン酸ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、10mMトリス(pH5.3)で平衡化した。モノクローナル抗体(CHO細胞において組み換え技術によってつくられ、プロテインA親和性カラムで精製された)を、10mMリン酸ナトリウム(pH6.5)中28g/L~2g/Lに希釈し、抗体46μgに等しい23μlをカラムに注入した。結合抗体を、平衡緩衝剤pH5.3から溶出緩衝剤pH8.7までの線勾配で、600cm/時間で10分間溶出した。5mm(i.d.)×5cm Mono Sカラムを、比較で、同じ方法であるが、減じた線流速及び増加させた勾配時間で300cm/時間で20分間実施した。図3において、主要ピーク(最も高いピーク)間の分解能比較、及びそれぞれ、主要ピーク前後の、酸性変異体及びアルカリ性変異体を認めることができる。非多孔質ビーズで充填されたPEEKカラムは、2倍の速度で、性能を増したことを示す。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B