(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ガス濃縮装置、ガス検出システム、ガス濃縮方法、及びガス検出方法。
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240701BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01N1/00 101R
G01N1/40
(21)【出願番号】P 2021048503
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100149629
【氏名又は名称】柘 周作
(74)【代理人】
【識別番号】100200148
【氏名又は名称】今野 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100139538
【氏名又は名称】高橋 航介
(74)【代理人】
【識別番号】100200115
【氏名又は名称】杉山 元勇
(74)【代理人】
【識別番号】100200137
【氏名又は名称】浅野 良介
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 浩史
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 吉昭
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0086376(US,A1)
【文献】特開2005-003387(JP,A)
【文献】特開2019-128189(JP,A)
【文献】特開2019-168289(JP,A)
【文献】特開平11-101720(JP,A)
【文献】特開2013-050424(JP,A)
【文献】特開2004-132879(JP,A)
【文献】米国特許第05465578(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0324347(US,A1)
【文献】国際公開第2020/183203(WO,A1)
【文献】特開2012-181123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1隔壁によって囲われた、検体を格納する第1空間を有する第1容器と、
前記第1容器と第1経路によって気密に接続され、第2隔壁によって囲われた第2空間を有する第2容器と、
前記第2空間の容積を縮小または増大させる圧力制御装置と、
前記第2空間の内部の気体を排出する第2経路と、
前記第1空間と第3経路によって気密に接続され、前記第1空間内部の気体を排出する第1減圧装置と、
を有し、
前記第1空間内部の前記気体が排出され、その後、前記検体から発生したガスが前記第1容器に放出され、
前記
第2容器内部の気体が排出され、その後、前記検体から発生した前記ガスが前記第1容器から前記第2容器に送られ、
前記第2容器の容積が縮小することで、前記検体から発生した前記ガスが前記第2容器内部において圧縮され濃縮ガスとなり、
前記濃縮ガスが前記第2経路から排出される、
ガス濃縮装置。
【請求項2】
前記第2空間と第4経路によって気密に接続され、前記第2空間内部を減圧する第2減圧装置をさらに有する、請求項1に記載のガス濃縮装置。
【請求項3】
前記第2隔壁は筒形の形状を有し、
前記圧力制御装置は、前記第2隔壁の内壁に密着し、前記筒形の形状が伸びる方向に動く第3隔壁と、前記第3隔壁を動かす第1駆動装置と、をさらに有する、請求項1又は請求項2に記載のガス濃縮装置。
【請求項4】
前記圧力制御装置は、前記第2空間内部に設けられ、通気口があいた袋型の形状を有する第4隔壁と、前記通気口と気密に接続され、前記第2空間の外部から前記第4隔壁内部に流体を出し入れするポンプと、をさらに有する、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項5】
前記圧力制御装置は、前記第2空間内部に設けられ、前記第2空間外部に接続され前記第2空間に対し気密な空間を内部に有し、伸縮可能な第5隔壁と、第5隔壁を伸縮させる第2駆動装置と、をさらに有する、請求項1又は請求項2に記載のガス濃縮装置。
【請求項6】
前記第1空間の容積を増大又は縮小させる第2圧力制御装置をさらに有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項7】
前記第1容器は、前記検体を加熱するヒータをさらに有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項8】
前記第1経路を冷却する冷却器をさらに有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項9】
前記第1経路を、気体が流通可能な開状態と不可能な閉状態とのいずれかに切り替える第1シャッタと、
前記第2経路を、気体が流通可能な開状態と不可能な閉状態とのいずれかに切り替える第2シャッタと、
をさらに有する請求項1から請求項8に記載のガス濃縮装置。
【請求項10】
前記圧力制御装置は、前記第2空間の容積を増大させることで、前記第1空間内部を減圧する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項11】
前記圧力制御装置は、前記第2空間の容積を増大させることで、前記第2空間内部を減圧する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項12】
前記圧力制御装置は、前記第2空間内部の圧力が前記第2空間外部の圧力を超えるまで前記第2空間の容積を縮小させる、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のガス濃縮装置。
【請求項13】
前記第1経路を、気体が流通可能な開状態と不可能な閉状態とのいずれかに切り替える第1シャッタと、
前記第2経路を、気体が流通可能な開状態と不可能な閉状態とのいずれかに切り替える第2シャッタと、
前記第1シャッタ、前記第2シャッタ、前記第1減圧装置、前記第2減圧装置、及び前記圧力制御装置を制御する制御回路と、をさらに有し、
前記制御回路は、
前記第1シャッタが閉状態で、前記第1減圧装置が前記第1空間を減圧する動作と、
前記第1シャッタと前記第2シャッタが閉状態で、前記第2減圧装置が前記第2空間を減圧する動作と、
前記第1シャッタが開状態に切り替わる動作と、
前記第1シャッタが閉状態に切り替わり、前記圧力制御装置が前記第2空間の容積を縮小させる動作と、
前記第2シャッタが開状態に切り替わる動作と、を制御する
請求項2に記載のガス濃縮装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のガス濃縮装置と、
前記第2経路から排出された前記濃縮ガスから検出対象の物質を検出するケミカルセンサと、
を有するガス検出システム。
【請求項15】
前記ケミカルセンサの出力と接続され、前記ケミカルセンサが前記検出対象の物質を検出したか否かを判定し、判定結果を出力する判定回路をさらに有する請求項14に記載のガス検出システム。
【請求項16】
気密性を有する第1容器に気体と検体を格納するステップと、
第1減圧装置が前記第1容器内部の前記気体を排出した後、ガスが前記検体から前記第1容器内部に放出されるステップと、
圧力装置が
第2容器内部の気体を排出した後、前記検体から発生した前記ガスを前記第1容器から前記第2容器に送るステップと、
前記圧力装置が前記第2容器の容積を縮小することで、前記検体から発生した前記ガスを前記第2容器内部において圧縮して濃縮ガスとするステップと、
前記圧力装置が前記濃縮ガスを第2経路から排出するステップと、
を含むガス濃縮方法。
【請求項17】
気密性を有する第1容器に気体と検体とを格納するステップと、
第1減圧装置が前記第1容器内部の前記気体を排出した後、ガスが前記検体から前記第1容器内部に放出されるステップと、
圧力装置が
第2容器内部の気体を排出した後、前記検体から発生した前記ガスを前記第1容器から前記第2容器に送るステップと、
前記圧力装置が前記第2容器の容積を縮小することで、前記検体から発生した前記ガスを前記第2容器内部において圧縮して濃縮ガスとするステップと、
前記圧力装置が前記濃縮ガスを前記第2容器からケミカルセンサ上に排出するステップと、
を含むガス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガス濃縮装置、ガス検出システム、ガス濃縮方法、及びガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気中の物質を検出するケミカルセンサは、検体から空気中に放出される成分を検出することでガス検出や匂い検出に利用することができる。ガス検出や匂い検出には高い感度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、検体から放出される物質の濃度を高めるガス濃縮装置、高感度なガス検出システム、ガス濃縮方法、及びガス検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガス濃縮装置は、第1隔壁によって囲われた、検体を格納する第1空間を有する第1容器と、前記第1容器と第1経路によって気密に接続され、第2隔壁によって囲われた第2空間を有する第2容器と、前記第2空間の容積を縮小または増大させる圧力制御装置と、前記第2空間の内部の気体を排出する第2経路と、前記第1空間と第3経路によって気密に接続され、前記第1空間内部の気体を排出する第1減圧装置と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態に係るガス検出システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【
図5】第3の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【
図6】第4の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【
図7】第5の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【
図8】第6の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同様のものを示す。なお、図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1をもとに、第1の実施形態のガス検出システム1000を説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態のガス検出システム1000の構成を示す概略図である。
【0010】
ガス検出システム1000は、検体1から雰囲気に放出される検出対象の物質(匂い成分)を検出するシステムである。ガス検出システム1000はガス濃縮装置100、ケミカルセンサ200、判定回路300、不活性ガス供給部400、インタフェース500、を有する。本明細書において、匂い成分は、ケミカルセンサによって検出可能な気相中の物質を指し、必ずしも生体の嗅覚受容体に反応する物質ではない。
【0011】
ガス濃縮装置100は、第1容器10、第2容器20、圧力制御装置30、第1~第6気密経路41、42、43、44、45、46、第1~第4シャッタ51、52、53、54第1真空ポンプ61、第2真空ポンプ62、及び制御装置70を有する。
【0012】
第1容器10は、検体1を出し入れするために図示しない取り込み口を有し、取り込み口から取り込まれる検体1を格納する気密容器である。第1容器10は、第1隔壁11、及び第1隔壁11に囲われた第1空間12を有する。第1隔壁11は、第1空間12の内部と外部との間で気体が自由に移動できない構造を有する。第1空間12は検体1を格納する空間である。第1空間12の内部と外部との間に圧力差が生じても、第1隔壁11は大きく変形せず、第1空間12の体積が維持される。第1空間12の容積V1とは、第1空間12に収容できる体積のことであり、換言すると第1空間12に格納された気体の体積である。
【0013】
第1真空ポンプ61は、第1容器10と第1気密経路41を介して接続される。第1シャッタ51は、第1気密経路41に設けられる。ここで、気密経路とは、外部との気密を保ちながら経路内部に気体を流通させることが可能な構造を指す。気密経路として、樹脂や金属製のパイプを用いることができる。第1シャッタ51は、第1気密経路41内部を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。よって、第1シャッタ51は、第1真空ポンプ61と第1容器10との間を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。第1シャッタ51が開状態で第1真空ポンプ61が動作すると、第1容器10の第1空間12に格納された気体が第1気密経路41及び第1真空ポンプ61を介して大気中に排出され、第1空間12内部が減圧される。なお、第1気密経路41の流通状態の切り替えは、第1真空ポンプ61のオンオフの切り替えによって実現することもできる。第1気密経路41の流通状態の切り替えを、第1真空ポンプ61のオンオフの切り替えによって実現する場合、第1シャッタ51を省略することができる。
【0014】
第2容器20は、第1空間12から送りこまれた検出対象の物質を含む気体を格納し、圧縮する気密容器である。第2容器20は、第2隔壁21、及び第2隔壁21に囲われた第2空間22を有する。第2隔壁21は、第2空間22内部と外部とで気体が自由に移動できない構造を有する。第2空間22は第1空間12から送り込まれた気体を格納する空間である。第2容器20は、第2気密経路42を介して第1容器10と接続される。第2シャッタ52は、第1容器10と第2容器20の間の第2気密経路42に設けられる。第2シャッタ52は、第2気密経路42内部を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。よって、第2シャッタ52は、第1容器10と第2容器20との間を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。
【0015】
第2真空ポンプ62は、第3気密経路43を介して第2容器20と接続される。第3シャッタ53は、第3気密経路43に設けられる。第3シャッタ53は第3気密経路43を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。よって、第3シャッタ53は、第2容器20と第2真空ポンプ63との間を気体流通可能な開状態と、気体流通不能な閉状態とに切り替えることができる。第3シャッタ53が開状態で第2真空ポンプ62が動作すると、第2空間22に格納された気体が第3気密経路43を介して排出され、第2空間22内部が減圧される。なお、第3気密経路43の流通状態の切り替えは、第2真空ポンプ62のオンオフの切り替えによって実現することもできる。第3気密経路43の流通状態の切り替えを、第2真空ポンプ62のオンオフの切り替えによって実現する場合、第3シャッタ53を省略することができる。
【0016】
第2容器20は、第4気密経路44を介してケミカルセンサ200とつながっている。第4気密経路44には、第4シャッタ54が設けられる。第4シャッタ54は、例えば3方弁である。3方弁の一端は、第5気密経路45を介して不活性ガス供給部400につながっている。第4シャッタ54は、第2空間22とケミカルセンサ200とが気体流通可能な第1開状態、不活性ガス供給部400とケミカルセンサ200とが気体流通可能な第2開状態、及び第2空間22とケミカルセンサ200と不活性ガス供給部400とのいずれの間も気体流通不能な閉状態と、の少なくとも3つの状態に切り替えることができる。第4シャッタ54は、第2容器20とケミカルセンサ200との間を気体流通可能な第1開状態と、気体流通不能な閉状態(又は第2開状態)とに切り替えることができる。第4シャッタ54は、不活性ガス供給部400とケミカルセンサ200との間を気体流通可能な第2開状態と、気体流通不能な閉状態(又は第1開状態)とに切り替えることができる。
【0017】
圧力制御装置30は、第2空間22の容積を増大・縮小する装置である。第2空間22の容積V2とは、第2空間22に収容できる体積のことであり、換言すると第2空間22の内部に格納された気体の体積である。容積V2は最大値V2Lから最小値V2Sまでの値をとる。望ましくは、容積V2の最大値V2Lは容積V1よりも大きい。
【0018】
圧力制御装置30は、第2空間22の内部に格納された気体圧力を制御できる。圧力制御装置30は、第2シャッタ52が開状態で第2空間22の容積を増大・縮小させることで、開状態の気密経路から第2空間22内に気体を出し入れできる。例えば、第2シャッタ52が閉状態、かつ第3シャッタ53が閉状態、かつ第4シャッタが第1開状態で、圧力制御装置30が第2空間22の容積をゆっくりと縮小させることで、第2空間22内部の気体をケミカルセンサ200に送り出すことができる。圧力制御装置30は、第2シャッタ52、第3シャッタ53、第4シャッタ54のすべてが閉状態で第2空間22の容積を増大・縮小させることで、第2空間22の内部の気体を膨張あるいは収縮させることができる。第2空間22内部の気体が膨張すると内部の気体圧力は減少する。第2空間22内部の気体が収縮すると気体圧力は増大する。
【0019】
圧力制御装置30の構造は、第2空間22の容積を可変とするものであれば、特に限定されない。圧力制御装置30の一例として、
図1にはピストン型の圧縮機構を記載した。ピストン型の圧縮機構では、シリンダ型の第2隔壁21内部に密着する可動隔壁であるピストン34が設けられる。圧力制御装置30内部のモータ等の動力によってピストン34を
図1の紙面横方向に動かすことで、第2空間22の容積を増大・縮小させることができる。
【0020】
制御回路70は、ガス濃縮装置100の各部を制御する回路である。制御装置70は、第1~第4シャッタ51~54及び圧力制御装置30と接続され、制御信号を出力する。
図4には、制御装置70と第1~第4シャッタ51~54及び圧力制御装置30とが、図示しない無線を介して接続された例を示すが、配線を介して有線接続されてもよい。制御回路70は、制御信号の出力によって、第1~第4シャッタ51~54の開閉タイミングや圧力制御装置30の動作を制御することで、ガス濃縮装置100にガス濃縮動作を実施させる。制御回路70は、I/F500に接続される。I/F500からガス濃縮動作の開始を指示されたとき、制御回路70はガス濃縮装置100の各部を制御し、ガス濃縮装置100はガス濃縮動作を実施する。なお、制御回路70はガス濃縮装置100の動作だけでなくケミカルセンサ200、判定回路300、及び不活性ガス供給部400に接続され、ガス検出システム1000全体の動作を制御してもよい。また、ケミカルセンサ200は、気体を液体に取り込む機構を含んで、液体の匂い成分を検知するものであってもよい。
【0021】
ケミカルセンサ200は、第2容器20から第4気密経路44を介して送り込まれた気体中に含まれる検出対象の物質を検出し、
図1中の電圧値や電流値等で表される電気信号として判定回路300に出力する装置である。ケミカルセンサ200は、第4気密経路44を介して送り込まれた気体を連続的に検出する構成であっても、送り込まれた気体が検出に十分な量に達するまで捕集容器にためこんで検出部に送り込む構成であってもよい。
【0022】
ケミカルセンサ200の一例として、
図2に示すグラフェンFET装置を説明する。
図2は、ケミカルセンサの一例を示す構成図である。グラフェンFET装置は、基板221上にグラフェンによって形成された感応膜222をチャネルとして利用した電界効果トランジスタである。感応膜222の一端にはソース電極223が電気的に接続される。感応膜222他端にはドレイン電極224が設けられる。ソース電極223とドレイン電極224の間に位置する感応膜表面222a上にはゲート絶縁膜225aを介してゲート電極225が設けられる。感応膜222上に検出対象の物質229と結合する受容体227などが設けられ、感応膜222を覆うように液膜228が設けられる。液膜228に検出対象の物質229を含む気体を吹き付けられると、検出対象の物質229が液膜228に取り込まれ、受容体227と結合する。グラフェンFET装置は、受容体227との結合によって変化するドレイン電流特性から検出対象の物質229の有無を判別できる。グラフェンFET装置は、感応膜222にかかる応力によって導電度が変わるため、高圧の気体に対する検出精度が低く、常圧に近い気体に対する検出精度が高いという特性を有する。
【0023】
なお、ケミカルセンサ200の種類及び検出方法はグラフェンFET装置に限定されず、ガスクロマトグラフィ装置(GC)、ガスクロマトグラフィ質量分析装置(GCMS)、核磁気共鳴分析装置(NMR)、等任意の検査装置及び検査方法を用いることができる。
【0024】
図1に示す判定回路300は、ケミカルセンサ200の出力と接続される。判定回路300は、ケミカルセンサ200の出力信号を解析し、ケミカルセンサ200が検査した気体中に特定の物質が規定以上含まれているかを判定する。判定回路300は、ケミカルセンサ200が検査した気体に含まれる検出対象の物質の特性や種類を特定してもよい。判定回路300の判定方法は特に限定されず、ケミカルセンサ200の種類・特性に応じて適宜選択できる。例えば、判定回路300は信号強度が規定値以上であるか否かを判別してもよいし、判定回路300内部に保持される参照パラメータと比較して近似性を判定し物質の種類を同定してもよい。判定回路300は、判定結果をI/F500に出力する。
【0025】
不活性ガス供給部400は、第4シャッタが第2開状態のときに、窒素ガスをケミカルセンサ200の検出部に送り込む。検査動作を完了した後のケミカルセンサ200に窒素ガスを送りこんで残留した検体成分を排出させることで、次サイクルの検査時に残留した検体成分が反応して検出精度(信号ノイズ比)が悪化するのを防ぐことができる。なお、不活性ガス供給部400は、供給するガスを窒素ガスからケミカルセンサ200を汚染しない任意の種類のガスに置き換えてもよい。
【0026】
図3をもとに、第1の実施形態のガス検出システム1000の動作を説明する。
図3は第1の実施形態に係るガス検出システムの動作を示すフローチャートである。
【0027】
ここでは、第1空間の容積をV1、第1空間12内部の気体圧力をP1、第2空間の容積をV2、第2空間22内部の気体圧力をP2、大気圧をP0、として表現する。簡単のため、検体1の体積は無視して説明する。簡単のために、第2空間の容積V2は最大値V2Lと最小値V2Sの2値をとるものとして説明するが、V2はV2LとV2Sとの中間値をとることができる。ガス濃縮装置100各部の動作は制御回路70によって制御されるが、簡単のために各ステップでの説明を省略する。
【0028】
ステップS0では、ガス濃縮装置100が初期状態に設定される。すなわち、第1~第4シャッタ51~54は閉状態、V2=V2L、P2=P0に設定される。
【0029】
ステップS1~S6は、ガス濃縮装置100のガス濃縮動作である。
【0030】
ステップS1では、図示しない取り込み口から取り込まれる検体1が第1容器10の第1空間12内部に格納される。
【0031】
ステップS2は、第1空間12から気体が排出されるステップである。まず、第1シャッタ51が開状態にされる。次に、第1真空ポンプ61によって気体が第1空間12から大気中に排出されて第1空間12が減圧される。その後、第1シャッタ51が閉状態にされる。十分に時間が経過すると、既に気体が排出された第1空間12内部に検体1から検出対象、例えば匂い成分を含んだ気体が放出される。第1空間12内部の気体は、高濃度(容量%基準)の匂い成分を含んでおり、気体圧力は大気圧よりも小さくなる(P1<P0)。
【0032】
ステップS3は、第2空間22から気体が排出されるステップである。ステップS3では、まず、第3シャッタ53が開状態にされる。次に、第2真空ポンプ62によって気体が第2空間22から大気中に排出されて減圧される。その後、第3シャッタ53が閉状態にされる。ステップS3終了時、第2空間22内部の気体圧力P2は、第1空間内部の気体圧力P1よりも小さい(P2<P1)。ステップS3終了時、第2空間22が真空状態あるいは真空状態に近いこと(P2=0)が望ましい。
【0033】
ステップS4は、第1空間12に格納された高濃度の匂い成分を含んだ気体が、第2空間22に送り出されるステップである。ステップS4では、第2シャッタ52が開状態にされる。この時、第1空間12と第2空間22の圧力差によって、P1=P2となるまで第1空間12から第2空間22に気体が流れ込む。ステップS4において第2空間22の容積V2=V2Lが第1空間12の容積V1よりも大きくしておくと、第1空間12に格納された気体の大部分が第2空間22に流れ込むため、より望ましい。ステップS4の終了時、P2<P0である。
【0034】
ステップS5は、第2空間22に格納された気体が圧縮されるステップである。ステップS5では、まず、第2シャッタ52が閉態にされる。その後、圧力制御装置30は、第2空間内部の圧力が第2空間外部の圧力をわずかに超える(P2>P0)まで圧縮する。このとき、第2空間22の容積V2は、V2LからV2Sに縮小する。ステップS5終了時、第2空間22に格納された気体は高濃度の匂い成分を含んだ濃縮気体となる。
【0035】
ステップS6は、第2空間22に格納された濃縮気体が、ケミカルセンサ200に送り出されるステップである。ステップS6では、第4シャッタ54が第1開状態にされる。この時、第2空間22の気体圧力とケミカルセンサ200検出部の圧力(大気圧P0)と差によって、ケミカルセンサ200にほぼ大気圧P0の濃縮気体が流れ込む。
【0036】
ステップS7では、ケミカルセンサ200が送り込まれた濃縮気体中に含まれる物質を検出し、検出結果の電気信号を判定回路300に出力する。
【0037】
ステップS8では、判定回路300がケミカルセンサ200の出力信号を解析し、解析した気体中に特定の物質が規定以上含まれているかを判定する。判定回路300は、判定結果をI/F500に出力する。ユーザは、I/F500を介して接続された任意の装置に判定結果を出力し、検体1に特定の匂い成分が含まれるか否かを知ることができる。
【0038】
ステップS9では、第4シャッタ54が第2開状態になり、不活性ガス供給部400から窒素ガスがケミカルセンサ200の検出部に送り込まれる。
【0039】
異なる種類の検体を連続して検査する場合、ステップS1、S2は、ステップS5以降と並行して行ってもよい。
【0040】
以上説明したステップS0~S9によって、ガス検出システム1000は高濃度の匂い成分が含まれる濃縮気体を検査する。
【0041】
第1の実施形態のガス検出システム1000の効果について説明する。
【0042】
匂い成分、すなわち気相に拡散する物質の中には、常温常圧でごく少量・低濃度しか気相に存在しないものがある。一般的なケミカルセンサが精度よく、感度よい検出を実現するには、検出対象の物は大量・高濃度であることが望ましい。
【0043】
例えば、検体付近の気体を捕集して圧縮すれば、単位体積当たりの物質量(mol/L)基準で高濃度の匂い成分含有気体を作ることができるが、ケミカルセンサ200の種類ごとに精度よく検査可能な気体圧力が決まっているため利用できない。例えば、グラフェンFETの感応膜は、圧力を検知して導電度が変化するため、所定以上に加圧したガスを検出部に吹き付けることで出力信号にノイズが発生してしまう。
【0044】
また、例えば、匂い成分の吸着と脱離あるは凝縮を利用して匂い成分を濃縮できるが、濃縮に時間がかかるだけでなく、匂い成分の種類によって吸着性や沸点が異なり、検体から放出される匂い成分全体を濃縮することができない。
【0045】
ガス検出システム1000は、低圧状態の第1空間12に検体1を格納することで、匂い成分が第1空間12に充満し、容量比(%)基準で高濃度の匂い成分を含む気体を作ることができる。第1空間12内部の気体は第2空間22に移され、大気圧P0近くまで圧縮されることで、匂い成分は単位体積当たりの物質量(mol/L)基準でさらに高濃度に濃縮される。
【0046】
ガス濃縮装置100が濃縮した気体には、検体1から放出された匂い成分が容量比(%)基準で高濃度に含まれる。つまり、濃縮気体に含まれる検体1以外に由来する成分が少ないため、ケミカルセンサ200はノイズを検出しにくくなり、高い精度で匂い成分を検出できる。
【0047】
ガス濃縮器100が濃縮した気体には、検出対象から放出された匂い成分が単位体積当たりの物質量(mol/L)基準で高濃度に含まれる。つまり、1サイクルの検査に使用する匂い成分の量が多くなり、高い感度で匂い成分を検出できる。
【0048】
ガス濃縮器100が濃縮した気体は、大気圧に近い状態でケミカルセンサ200に送られる。ケミカルセンサ200の種類によらず安定した条件でセンシングが可能となり、高い精度で匂い成分を検出できる。
【0049】
ガス濃縮器100は、検体1から第1空間12に拡散した匂い成分全体を濃縮できる。ガス検出システム1000は、検体1に含まれる匂い成分の種類や物性によらず短時間で濃縮できるため、高い信頼性で匂い成分を検出できる。
【0050】
以上説明した通り、第1の実施形態によれば、検体由来の匂い成分を濃縮して気体を検査することで高感度かつ高精度の検出を実現するガス検出システム1000を提供できる。
【0051】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例では、ガス検出システム1001の第1空間12及び第2空間22内部の減圧に第1真空ポンプ61及び第2真空ポンプ62を使用しない点で第1の実施形態と異なる。第1の実施形態の変形例に係るガス濃縮装置101とガス検出システム1001の構成は、
図1に示すガス濃縮装置100とガス検出システム1000と同等のものであるが、第1真空ポンプ61及び第2真空ポンプ62が停止状態である。第1の実施形態の変形例では、第1気密経路41の第1真空ポンプ61に接続された端部と、第2気密経路43の第2真空ポンプ62に接続された端部とが大気(圧力P0)に解放されたものとして考える。
【0052】
以下、ガス検出システム1001の動作を説明する。
【0053】
第1の実施形態の変形例では、圧力制御装置30によって、第1空間12の減圧及び第2空間22の減圧が実現される。ガス検出システム1001の動作は、第1の実施形態で説明したステップS0~S3をそれぞれステップS20~S23に置き換えて実現できる。
【0054】
ステップS20では、ガス濃縮装置100が初期状態に設定される。すなわち、第1~第4シャッタ51~54は閉状態、V2=V2S、P2=P0に設定される。
【0055】
ステップS21では、検体1が第1空間12内部に格納される。
【0056】
ステップS22は、第1空間12から気体が排出されるステップである。ステップS22では、まず、第2シャッタ52が開状態にされる。次に、圧力制御装置30によって第2空間22の容積V2がV2SからV2Lに増大する。続いて、第2シャッタ52が閉状態、第3シャッタ53が開状態になる。その後、第2空間22の容積V2がV2LからV2Sに縮小する。最後に、第3シャッタ53が閉状態となる。容積V2の増大と縮小を任意の回数繰り返すことで、第1空間12内部の気体が大気中に排出される。
【0057】
ステップS23では、第2シャッタ52、第3シャッタ53及び第4シャッタが閉状態で、第2空間22の容積V2がV2SからV2Lに増大する。第2空間22の気密を確保したまま、容積V2が増大するため第2空間22内部の気体圧力が低下する。
【0058】
第1の実施形態の変形例では、減圧に圧力制御装置30を使用するため、第1真空ポンプ61、第2真空ポンプ62の一方又は両方が故障した状態でも動作できる。このように、第1の実施形態の変形例によれば、第1の実施形態よりも簡易な構成で濃縮動作を実現でき、故障に対する冗長性を備えたガス濃縮装置101とガス検出システム1001とを提供できる。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のガス検出システム1002及びガス濃縮装置102は、圧力制御装置31として隔壁膜型(風船型)圧縮機構を用いる点で第1の実施形態と異なる。
【0060】
図4をもとに、第2の実施形態のガス検出システム1002について説明する。
図4は、第2の実施形態に係るガス検出システムの構成を示す概略図である。
【0061】
第2の実施形態の圧力制御装置31は、隔壁膜35とポンプ36を有する。隔壁膜35は、気体を透過しない膜質材料で構成され、通気口が空いた袋型の形状を有する。隔壁膜35は、例えば樹脂製の密封バッグである。隔壁膜35は、気密状態が保たれた第2空間22内部に設けられる。隔壁膜35の通気口は、第2容器20外部のポンプ36に第2隔壁21を貫通して接続される。ポンプ36は、第2空間22の外部から隔壁膜35内部に流体、例えば空気を出し入れすることで、隔壁膜35及び内部の気体の体積を膨張あるいは収縮させる。圧力制御装置31は、第2空間22の体積全体に占める隔壁膜35の体積を変化させることで第2空間22の容積V2を変化させる。
【0062】
第2の実施形態の圧力制御装置31は、第2空間22の気密を保つ隔壁に密着させた構造物が駆動する圧縮機構をもたない。このため、隔壁と構造物との隙間、例えばピストン型の圧縮機構におけるピストンとシリンダの間から気体が漏れることがない。つまり、ガス濃縮装置102の濃縮効率が向上し、ガス検出システム1002は高い検出感度を実現できる。
【0063】
また、第2の実施形態の圧力制御装置31は、機械的に駆動して摩擦する部分を持たないため、摩擦によって揮発した潤滑剤や摩耗した部品に由来する成分が濃縮気体に混入しにくい。このため、ケミカルセンサ200の検出精度と信頼性が向上する。
【0064】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態よりも高い濃縮効率を有するガス濃縮装置102と、第1の実施形態よりも高い感度と高い精度を有するガス検出システム1002とを提供できる。
【0065】
(第3の実施形態)
第3の変形例のガス検出システム1003は、圧力制御装置32として伸縮チャンバー型(アコーディオン型)圧縮機構を用いる点で第1の実施形態の濃縮装置と異なる。
【0066】
図5をもとに、第3の実施形態のガス検出システム1003について説明する。
図5は、第3の実施形態に係るガス検出システム1003の構成を示す概略図である。
【0067】
第3の変形例の圧力制御装置32は、隔壁37と駆動装置38を有する。隔壁37は、内部に気密な構造を有し、伸縮することで隔壁37が変形し、隔壁37内部の気密空間の体積が変化する。隔壁37は、例えば折り畳み可能な蛇腹構造を備え、隔壁37の気密空間とつながる通気口が空いたふいご型の形状を有する。隔壁37は、気密状態が保たれた第2容器20の第2空間22内部に設けられる。通気口は、第2空間22の気密を保つように第2隔壁21を貫通して第2空間22外部のポンプ36に接続される。隔壁37は、隔壁37内部の気密空間と第2空間22との間で気体が流通することを妨ぐ。駆動装置38は、隔壁37の蛇腹構造の両端の距離を伸縮させることで、隔壁37及び内部空間の体積を変化させる。駆動装置38は、隔壁37の内部に設けてもよい。なお、駆動装置38に代えて、第2の実施形態に示すポンプ36を隔壁37の内部空間に流体を出し入れすることで、隔壁37の体積を変化させてもかまわない。
【0068】
圧力制御装置32は、隔壁37及び内部の気密空間の体積を変化させることで第2空間22の容積V2を変化させる。
【0069】
第3の実施形態の圧力制御装置32は、隔壁の隙間から気体が漏れることがない。つまり、ガス検出システム1003は、高い濃縮効率と高い感度を実現できる。第3の実施形態の圧力制御装置32は、機械的に駆動して摩擦する部分を持たないため、摩擦によって揮発した潤滑剤や摩耗した部品に由来する成分が濃縮気体に含まれにくい。このため、ケミカルセンサ200の検出精度、信頼性が向上する。
【0070】
第3の実施形態の圧力制御装置32は、第2の実施形態の圧力制御装置31とは異なり、必ずしもポンプ36を必要としない。圧力制御装置32は、ポンプ36を省略することで、圧力制御装置31と比して小型化することができる。圧力制御装置32の隔壁37の体積は、駆動装置38の駆動や変位量によって制御される。つまり、圧力制御装置32の隔壁37の体積は、各ステップの動作で大きく変化する第2空間22の内部圧力P2の影響を受けにくい。圧力制御装置32は、圧力制御装置31と比して第2空間22の容積V2を高い精度で制御できる。
【0071】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態よりも高い濃縮効率を有する濃縮装置103と、第1の実施形態よりも高い感度と高い精度を有するガス検出システム1003とを提供できる。
【0072】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のガス濃縮装置104及びガス検出システム1004は、第1容器10にも圧力制御装置33を有する点で第1の実施形態と異なる。
【0073】
図6をもとに、第4の実施形態のガス検出システム1004について説明する。
図6は、第4の実施形態に係るガス検出システム1004の構成を示す概略図である。
【0074】
圧力制御装置33は第1空間12の容積を変化させる装置であり、圧力制御装置30と同様の構造で実現することができる。第1の実施形態のステップS4において、圧力制御装置33が第1空間12の容積を収縮させる。ステップS4において、第2シャッタ52が開状態にされるとP1=P2になるまで、V2と(V1+V2)との比に応じた量の気体が第1空間12内部から第2空間に流れ込む。第1空間12の容積V1が小さくなることで、V2/(V1+V2)の値が大きくなる。第1空間12内部から第2空間22に送り出す気体の量が増加し、第2空間22で圧縮できる気体の量が増加する。このため、濃縮される匂い成分の量が増え、ガス濃縮装置104の濃縮効率が向上する。
【0075】
このように、第4の実施形態によれば、第1の実施形態よりも高い濃縮効率を有するガス濃縮装置104と、高い感度を有するガス検出システム1004を提供できる。
【0076】
(第5の実施形態)
第5の実施形態のガス濃縮装置105及びガス検出システム1005は、ヒータ80を有する点で第1の実施形態と異なる。
【0077】
図7をもとに、第5の実施形態のガス検出システム1005について説明する。
図7は、第5の実施形態に係るガス検出システム1005の構成を示す概略図である。
【0078】
第5の実施形態の第1容器10にはヒータ80が設けられる。ヒータ80は、検体1を直接あるいは間接的に温めることで匂い成分の揮発を促し、濃縮される匂い成分の量を増やす。加熱された検体1の温度は、ガス検出システム1005が置かれた環境温度よりも高い。
【0079】
第5の実施形態の第1容器10の内部あるは気密経路42には、さらに冷却装置81が設けられてもよい。冷却装置81は、ヒータ80によって検体1から蒸発した水分を冷却することで凝縮・分離する。水分の分離により、第2空間22に流入する気体に含まれる匂い成分の割合が増加し、ガス濃縮装置105の濃縮効率が向上する。特に、匂い成分の凝固点が水の凝固点より低い場合、両者の凝固点の中間の温度に冷却装置81の温度を設定することで、水分は除去しながら匂い成分は除去しない構成を実現可能である。
【0080】
このように、第5の実施形態によれば、第1の実施形態よりも高い濃縮効率を有するガス濃縮装置105と、高い感度を有するガス検出システム1005を提供できる。
【0081】
(第6の実施形態)
第6の実施形態のガス濃縮装置106及びガス検出システム1006は、第1容器10を有さない点で第1の実施形態と異なる。
【0082】
図8をもとに、第6の実施形態のガス検出システム1006について説明する。
図8は、第6の実施形態に係るガス検出システム1006の構成を示す概略図である。
【0083】
第6の実施形態のガス濃縮装置106では、第2空間22に検体1が格納される。
【0084】
ガス検出システム1006の動作を説明する。ガス検出システム1006の動作は、第1の実施形態で説明したステップS1~ステップS4をステップS11、S12に置き換えて実現できる。
【0085】
ステップS11では、検体1が第2空間22内部に格納される。
【0086】
ステップS12は、第2空間22から気体が排出されるステップである。ステップS12では、まず、第3シャッタ53が開状態にされる。次に、第2真空ポンプ62によって第2空間22から気体が大気中に排出される、その後、第3シャッタ53が閉状態にされる。十分に時間が経過すると、既に気体が排出された第2空間22内部に検体1から匂い成分が放出される。
【0087】
ガス検出システム1006は、低圧環境下で匂い成分を拡散させるステップS12と匂い成分を圧縮するステップS5が同じ第2容器20で実現される。このため、複数ステップを並行して進めることができず連続サイクルの動作に時間がかかる一方、簡易な構成で濃縮動作を実現できる。
【0088】
このように、第6の実施形態によれば、第1の実施形態よりも簡易な構成で濃縮動作を実現できるガス濃縮装置106とガス検出システム1006とを提供できる。
【0089】
第1~第6の実施形態は、適宜組み合わせて実現できる。例えば、第1容器10に設けられる圧力制御装置33に隔壁膜型圧縮機構や伸縮チャンバー型圧縮機構を採用してもよい。以上、説明した第1~第6の実施形態によれば、検体由来の匂い成分を濃縮して気体を検査することで高感度かつ高精度の検出を実現するガス検出システムを提供できる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、説明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 検体
10 第1容器
11 第1隔壁
12 第1空間
20 第2容器
21 第2隔壁
22 第2空間
30~33 圧力制御装置
34 ピストン
35 隔壁膜
36 ポンプ
37 隔壁
38 駆動装置
41 第1気密経路
42 第2気密経路
43 第3気密経路
44 第4気密経路
45 第5気密経路
51 第1シャッタ
52 第2シャッタ
53 第3シャッタ
54 第4シャッタ
61 第1真空ポンプ
62 第2真空ポンプ
70 制御回路
80 ヒータ
81 冷却装置
100~106 ガス濃縮装置
200 ケミカルセンサ
300 判定回路
400 不活性ガス供給部
1000~1006 ガス検出システム