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特許7512230設備故障予測システム、設備故障予測方法、および、設備故障予測プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】設備故障予測システム、設備故障予測方法、および、設備故障予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240701BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240701BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240701BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20240701BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021086223
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022008107
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020108806
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 恵
(72)【発明者】
【氏名】福岡 雅之
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180759(JP,A)
【文献】特表2010-533903(JP,A)
【文献】特開2018-181063(JP,A)
【文献】特開2019-096008(JP,A)
【文献】特開2019-195136(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087490(WO,A1)
【文献】特開2010-135913(JP,A)
【文献】特開平11-161889(JP,A)
【文献】特開2019-139304(JP,A)
【文献】特開2018-084988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設けられた設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、
前記設備の異常状態の頻度に関するデータである異常頻度データと、前記設備の故障の要因に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障要因データと、を教師データとして、入力を前記設備故障要因データとし、出力を前記設備の故障の要因とする設備故障要因モデルを機械学習により生成する設備故障要因学習部と、
リアルタイムの前記設備故障時期データを入力データとして、前記設備故障時期モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力するとともに、リアルタイムの前記設備故障要因データを入力データとして、前記設備故障要因モデルを用いて、前記設備の故障の要因を予測して出力する予測処理部と、
を備える設備故障予測システム。
【請求項2】
道路に設けられた設備に対して設置された設備環境センサによる出力データに基づいて作成される動作環境データと、前記設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、を教師データとして、入力を前記動作環境データとし、出力を前記設備の劣化への影響の度合いを示す劣化影響度とする設備劣化推定モデルを機械学習により生成する劣化影響度学習部と、
前記異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、前記動作環境データと、を教師データとして、さらに、前記設備劣化推定モデルを用いて、入力を前記設備故障時期データおよび前記動作環境データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、
リアルタイムの前記設備故障時期データおよび前記動作環境データを入力データとして、前記設備故障時期モデルおよび前記設備劣化推定モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力する予測処理部と、
を備える設備故障予測システム。
【請求項3】
前記設備故障時期データは、前記道路の交通量データ、設備稼働時間データ、設備修理情報データの少なくともいずれかを含む、
請求項1または請求項2に記載の設備故障予測システム。
【請求項4】
前記設備故障要因データは、前記道路の交通量データ、設備稼働時間データ、設備修理情報データ、前記設備の動作環境データの少なくともいずれかを含む、
請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項5】
前記劣化影響度学習部は、前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、当該設備の動作環境に関係し少なくとも交通状況、前記道路に関するイベント、気象状況のいずれかに関する所定の履歴のデータである動作環境関連データを用いて当該設備の動作環境を推定して動作環境推定データを生成し、前記動作環境データの代わりに前記動作環境推定データを用いて前記設備劣化推定モデルを機械学習により生成する、請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項6】
前記劣化影響度学習部は、前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記動作環境データの代わりに、前記設備環境センサが設置されていて動作環境が類似する前記設備の前記動作環境データを用いて前記設備劣化推定モデルを機械学習により生成する、請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項7】
前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記道路に対して設置されたカメラの映像を用いて前記道路を走行する車両の大きさを認識して前記設備に対する振動を推定して振動推定データを生成する振動推定部を、さらに備え、
前記劣化影響度学習部は、前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記動作環境データの代わりに前記振動推定データを用いて前記設備劣化推定モデルを機械学習により生成する、請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項8】
前記劣化影響度学習部は、前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記道路に対して設置されたカメラの映像を解析して気象状況データを生成し、前記動作環境データの代わりに前記気象状況データを用いて前記設備劣化推定モデルを機械学習により生成する、請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項9】
前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記道路の料金収受システムから取得した前記道路を走行する車両の車両種別データを用いて前記設備に対する振動を推定して振動推定データを生成する振動推定部を、さらに備え、
前記劣化影響度学習部は、前記設備環境センサが設置されていない前記設備に関し、前記動作環境データの代わりに前記振動推定データを用いて前記設備劣化推定モデルを機械学習により生成する、請求項に記載の設備故障予測システム。
【請求項10】
道路に設けられた設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習ステップと、
前記設備の異常状態の頻度に関するデータである異常頻度データと、前記設備の故障の要因に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障要因データと、を教師データとして、入力を前記設備故障要因データとし、出力を前記設備の故障の要因とする設備故障要因モデルを機械学習により生成する設備故障要因学習ステップと、
リアルタイムの前記設備故障時期データを入力データとして、前記設備故障時期モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力するとともに、リアルタイムの前記設備故障要因データを入力データとして、前記設備故障要因モデルを用いて、前記設備の故障の要因を予測して出力する予測処理ステップと、
を含む設備故障予測方法。
【請求項11】
道路に設けられた設備に対して設置された設備環境センサによる出力データに基づいて作成される動作環境データと、前記設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、を教師データとして、入力を前記動作環境データとし、出力を前記設備の劣化への影響の度合いを示す劣化影響度とする設備劣化推定モデルを機械学習により生成する劣化影響度学習ステップと、
前記異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、前記動作環境データと、を教師データとして、さらに、前記設備劣化推定モデルを用いて、入力を前記設備故障時期データおよび前記動作環境データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習ステップと、
リアルタイムの前記設備故障時期データおよび前記動作環境データを入力データとして、前記設備故障時期モデルおよび前記設備劣化推定モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力する予測処理ステップと、
を含む設備故障予測方法。
【請求項12】
コンピュータに、
道路に設けられた設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習ステップと、
前記設備の異常状態の頻度に関するデータである異常頻度データと、前記設備の故障の要因に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障要因データと、を教師データとして、入力を前記設備故障要因データとし、出力を前記設備の故障の要因とする設備故障要因モデルを機械学習により生成する設備故障要因学習ステップと、
リアルタイムの前記設備故障時期データを入力データとして、前記設備故障時期モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力するとともに、リアルタイムの前記設備故障要因データを入力データとして、前記設備故障要因モデルを用いて、前記設備の故障の要因を予測して出力する予測処理ステップと、
を実行させるための設備故障予測プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
道路に設けられた設備に対して設置された設備環境センサによる出力データに基づいて作成される動作環境データと、前記設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、を教師データとして、入力を前記動作環境データとし、出力を前記設備の劣化への影響の度合いを示す劣化影響度とする設備劣化推定モデルを機械学習により生成する劣化影響度学習ステップと、
前記異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、前記動作環境データと、を教師データとして、さらに、前記設備劣化推定モデルを用いて、入力を前記設備故障時期データおよび前記動作環境データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習ステップと、
リアルタイムの前記設備故障時期データおよび前記動作環境データを入力データとして、前記設備故障時期モデルおよび前記設備劣化推定モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力する予測処理ステップと、
を実行させるための設備故障予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設備故障予測システム、設備故障予測方法、および、設備故障予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路(高速道路等)には、道路の付帯設備として、車両と通信する路側機や、走行車両に対して情報を表示する情報板や、照明装置、トンネル内の換気設備などの各種設備が設けられている。それらの道路付帯設備については、故障等の予防として、定期点検などが行われている。
【0003】
一般に、高速道路の施設管制制御システムの運用業務では、高速道路上に設置された各種設備(情報板やトンネルの換気設備など)の稼動状態を監視し、障害や故障の発生時に現地保守員に連絡し、障害復帰の対応を行っている。
【0004】
また、定期点検や定期設備交換などの基本的な保守業務は、「時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)」が中心で実施されるが、実際は各種設備の動作環境(屋内、屋外など)や経年によって障害や故障の発生の頻度に差が生じており、必ずしもTBMが適切な保守業務であるとは限らない。本来であれば、設備毎の状態に応じて保守を行う「状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)」を行うべきであるが、設備の状態監視と保守業務が連携できていない現状がある。
【0005】
このため、リアルタイムで機器の故障状態を検知する施設制御システムと、各種設備の稼働状態を管理している設備管理システムを人が確認し、設備の点検・修理で対処可能なものは即時処理を行い、そうではないものは設備の交換・更新を行うといった運用を行っている。
【0006】
しかし、リアルタイムな機器の故障状態監視を保守業務のトリガーとする従来の保守業務では、限られた保守業務の担当者でそれら全ての対処を迅速に行うことが困難である。そして、状況によっては夜間や休日にも緊急対応を行う必要があるなど、限られたリソースの最適化に限界が生じる課題に直面している。
【0007】
この課題に対し、以下の特許文献1の技術では、路側機の通信性能の劣化を検知し、故障して通信不能となる前にメンテナンスを可能としている。この技術では、高速道路の本線上に設置された車両感知器から得られる交通状況(車両台数)とその車両に搭載されている車載器から発信された無線信号と、路側機が所定時間内に受信する受信予定回数とを比較し、予定回数に対する実際の通信回数との差分から、路側機の通信性能の劣化を推定している。
【0008】
しかし、この技術では監視対象設備(路側機)に応答する車載器が存在することが前提となっており、スタンドアロン(単独)で動作を行う(応答相手の存在しない)情報板や換気設備に応用するのは困難で、限られた設備に対してのみの言及しかされていない点に課題が残る。また、この技術では、個別の路側機ごとの劣化を推定できるが、実際の劣化発生を前提としており、交通量や設備の稼働状況や動作環境などに基づいて設備の故障の時期を予測するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-134662号公報
【文献】特開2010-117837号公報
【文献】特開2020-28054号公報
【文献】特開2016-207118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そして、従来技術における設備の定期点検などでは、設備の故障の時期が交通量や設備の稼働状況や動作環境などによってばらばらであることが考慮されておらず、改善の余地がある。
【0011】
そこで、本実施形態の課題は、道路に設けられた設備の故障の時期を高精度に予測することができる設備故障予測システム、設備故障予測方法、および、設備故障予測プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の設備故障予測システムは、道路に設けられた設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、前記設備の故障の時期に関係し前記道路に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、を教師データとして、入力を前記設備故障時期データとし、出力を前記設備の故障の時期とする設備故障時期モデルを機械学習により生成する設備故障時期学習部と、リアルタイムの前記設備故障時期データを入力データとして、前記設備故障時期モデルを用いて、前記設備の故障の時期を予測して出力する予測処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態の道路施設管制システムの概略を示す全体構成図である。
図2A図2Aは、異常状態変化データの例を示す図である。
図2B図2Bは、異常頻度データの例を示す図である。
図3図3は、交通量データの例を示す図である。
図4図4は、設備稼働時間データの例を示す図である。
図5図5は、設備修理情報データの例を示す図である。
図6A図6Aは、動作環境データ(気象データ)の例を示す図である。
図6B図6Bは、動作環境データ(地震データ)の例を示す図である。
図7A図7Aは、第1実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障時期モデルの学習処理を示すフローチャートである。
図7B図7Bは、第1実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障時期モデルの検証処理を示すフローチャートである。
図8A図8Aは、第1実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障要因モデルの学習処理を示すフローチャートである。
図8B図8Bは、第1実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障要因モデルの検証処理を示すフローチャートである。
図9図9は、第1実施形態の設備故障予測システムにおける予測処理を示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態の道路施設管制システムの概略を示す全体構成図である。
図11図11は、第2実施形態において、動作環境が類似する設備についての説明図である。
図12A図12Aは、第2実施形態の設備故障予測システムにおける設備劣化推定モデルの学習処理を示すフローチャートである。
図12B図12Bは、第2実施形態の設備故障予測システムにおける設備劣化推定モデルの検証処理を示すフローチャートである。
図13図13は、第2実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障時期モデルの学習処理を示すフローチャートである。
図14図14は、第2実施形態の設備故障予測システムにおける設備故障要因モデルの学習処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態(第1実施形態、第2実施形態)にかかる設備故障予測システム、設備故障予測方法、および、設備故障予測プログラムについて説明する。なお、本実施形態では、道路として高速道路の場合を例にとって説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の道路施設管制システムSの概略を示す全体構成図である。
道路施設管制システムSは、施設制御システム1と、設備管理システム3と、設備修理情報システム4と、動作環境システム5と、設備故障予測システム6と、を備える。また、道路施設管制システムSと連携する構成として、交通管制システム2、計測器7、観測局9等を有している。
【0016】
計測器7は、例えば、車両感知器、監視カメラ、火災感知器、その他の各種センサ等である。
車両感知器は、高速道路の路側に設置され、交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報を収集する感知器であり、感知した情報を交通管制システム2に送信する。
【0017】
監視カメラは、高速道路の路側に設置され、高速道路を撮影するカメラであり、撮影した映像を施設制御システム1や交通管制システム2に送信する。
【0018】
火災感知器は、高速道路の本線上、トンネル内、サービスエリア、パーキングエリア等に設置され、火災を感知すると感知した情報を施設制御システム1、設備管理システム3や、交通管制システム2に送信する。
【0019】
各種センサは、検出した各種センサ値を外部装置に送信する。
【0020】
なお、各システム1~6は、すべて別々のコンピュータ装置である必要はなく、それらのうち2つ以上が同じコンピュータ装置で実現されてもよい。
【0021】
その場合、各システム1~6は、例えば、情報交換サーバや中央処理装置等の複数のコンピュータ装置によって実現される。なお、各システム1~6に関し、説明を簡潔にするために、処理部、記憶部、入力部、表示部、通信部等についての図示や説明を適宜省略する。
【0022】
施設制御システム1は、道路の付帯設備である、情報板、照明装置、トンネル(換気設備等)、電源装置他を監視制御するシステムで、異常状態変化データ抽出部11と、異常頻度データ生成部12と、を備える。また、施設制御システム1は、計測器7からデータを受信する。
【0023】
異常状態変化データ抽出部11は、計測器7からのデータに基づいて、道路に設けられた付帯設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データを抽出する。
【0024】
図2Aは、異常状態変化データの例を示す図である。異常状態変化データは、ID(Identifier)、発生日時、管理事務所、場所、設備、(道路の)方向、(設備の)異常状態、動作、処理状況の各項目から構成される。ここでは、換気設備の駆動部に故障が発生したこと等を示している。
異常状態変化データ抽出部11で抽出された異常状態変化データは、管理事務所8に駐在する作業者81にも提供され、また、必要な時に閲覧できるようになっている。
【0025】
図1に戻って、異常頻度データ生成部12は、計測器7からのデータに基づいて、設備の異常状態の頻度に関するデータである異常頻度データを抽出する。
【0026】
図2Bは、異常頻度データの例を示す図である。異常頻度データは、ID、期間、管理事務所、場所、設備、(道路の)方向、異常状態、動作、頻度の各項目から構成される。ここでは、対象期間内に図2Aに示す換気設備の駆動部の故障が12回発生したこと等を示している。
【0027】
図1に戻って、設備管理システム3は、設備稼働時間データ作成部31を備える。設備稼働時間データ作成部31は、計測器7からのデータに基づいて、設備稼働時間データを作成する。
【0028】
図4は、設備稼働時間データの例を示す図である。設備稼働時間データは、ID、施設名、(道路の)方向、設備名、環境、竣工年月、製造会社、経過年数、保守期限の各項目から構成される。ここでは、図2Aに示す換気設備の保守期限等について示している。
【0029】
図1に戻って、設備修理情報システム4は、設備修理情報データ作成部41を備える。設備修理情報データ作成部41は、管理事務所8に駐在する作業者81による設備の修理や保守に関する入力情報(保守点検や作業の日報データ等の情報)に基づいて、設備修理情報データを作成する。
【0030】
図5は、設備修理情報データの例を示す図である。設備修理情報データは、ID、施設名、(道路の)方向、設備名、発生日時、故障種別、故障内容、処理内容の各項目から構成される。ここでは、図2Aに示す換気設備について、駆動部ユニットの交換によって復旧したこと等を示している。
【0031】
図1に戻って、動作環境システム5は、動作環境データ作成部51を備える。動作環境データ作成部51は、観測局9からのデータに基づいて、道路の区間ごとの設備の動作環境データを作成する。
観測局9は、例えば、気象情報(天候、気温、路温、風向、風速、雨量等)や地震情報(震度、SI値、加速度等)の観測局である。
【0032】
図6Aは、動作環境データ(気象データ)の例を示す図である。動作環境データ(気象データ)は、ID、発生日時、管理事務所、(道路の)区間、設備、(道路の)方向、天候、気温、路温、風向、風速、雨量の各項目から構成される。ここでは、図2Aに示す換気設備が存在する区間についての気象データ等を示している。
【0033】
図6Bは、動作環境データ(地震データ)の例を示す図である。動作環境データ(地震データ)は、ID、発生日時、管理事務所、(道路の)区間、設備、(道路の)方向、震度、SI値、加速度の各項目から構成される。ここでは、図2Aに示す換気設備が存在する区間についての地震データなどを示している。
【0034】
図1に戻って、交通管制システム2は、走行する車両の状況を監視することで、交通流を制御するシステムで、交通量データ作成部21を備える。交通量データ作成部21は、計測器7からのデータに基づいて、交通量データを作成する。
【0035】
図3は、交通量データの例を示す図である。交通量データは、ID、発生日時、管理事務所、(道路の)区間、設備、(道路の)方向、交通量、速度、時間占有率の各項目から構成される。ここでは、図2Aに示す換気設備の駆動部の故障が発生したときの交通量等を示している。
【0036】
図1に戻って、設備故障予測システム6は、処理部61と、記憶部62と、入力部63と、表示部64と、を備える。
【0037】
処理部61は、機能部として、設備故障時期学習部611と、設備故障要因学習部612と、予測処理部613と、出力制御部614と、を備える。
【0038】
処理部61は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。
ROMは、各種プログラムや各種データを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。
MPUは、設備故障予測システム6の動作を統括的に制御する。そして、MPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部62等に格納されたプログラムを実行する。
【0039】
設備故障時期学習部611は、設備故障時期モデル622を機械学習により生成する学習部である。設備故障時期学習部611は、道路に設けられた設備の異常状態の変化に関するデータである異常状態変化データと、設備の故障の時期に関する所定の履歴のデータである設備故障時期データと、を教師データとして、機械学習により後述する設備故障時期モデル622を生成する。設備故障時期データは、道路の交通量データ、設備稼働時間データ、設備修理情報データの少なくともいずれかを含む。設備故障時期モデル622の学習処理については、図7Aを用いて後述する。
【0040】
設備故障要因学習部612は、設備故障要因モデル623を生成する学習部である。設備故障要因学習部612は、設備の異常状態の頻度に関するデータである異常頻度データと、設備の故障の要因に関係し道路に関する所定の履歴のデータである設備故障要因データと、を教師データとして、機械学習により、後述する設備故障要因モデル623を生成する。設備故障要因データは、交通量データ、設備稼働時間データ、設備修理情報データ、設備の動作環境データの少なくともいずれかを含む。設備故障要因モデル623の学習処理については、図7Bを用いて後述する。
【0041】
記憶部62は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。記憶部22は、各種プログラム、各種データを記憶する。記憶部62は、例えば、設備故障予測モデル621を記憶する。設備故障予測モデル621は、例えば、設備故障時期モデル622と、設備故障要因モデル623と、から構成される。
【0042】
設備故障時期モデル622は、特定の状況下(交通量・設備稼働時間・設備修理情報(履歴)など)における設備の故障発生傾向に基づいて、どのような時にどの設備が壊れやすいかを推定するための学習モデルである。具体的には、設備故障時期モデル622は、設備故障時期データと入力とし、設備の故障の時期を出力するモデルとなる。
【0043】
設備故障要因モデル623は、特定の状況下(交通量、設備稼働時間、設備修理情報(履歴)、動作環境など)における設備の故障発生傾向に基づいて、どのような時になぜ壊れやすいか(要因)を推定するための学習モデルである。設備故障要因モデル623は、設備故障要因データを入力をとし、設備の故障の要因を出力とするモデルとなる。
【0044】
予測処理部613は、設備故障時期モデル622と設備故障要因モデル623を用いて、設備故障を予測する予測部である。予測処理部613は、設備故障時期モデル622を用いて、リアルタイムの設備故障時期データを入力データとして、設備の故障の時期を予測して出力する。また、予測処理部613は、さらに、設備故障要因モデル623を用いて、リアルタイムの設備故障要因データを入力データとして、設備の故障の要因を予測して出力する。なお、予測処理部613は、設備故障時期モデル622と設備故障要因モデル623のそれぞれについて、予測処理と同様の処理と正解データを用いて検証処理を実行することもできる(詳細は後述)。
【0045】
出力制御部614は、予測処理部613による予測結果を表示部64に表示させたり、記憶部62に記憶させたり、外部装置に送信したりする。
【0046】
入力部63は、設備故障予測システム6に対するユーザの操作を受け付ける入力装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0047】
表示部64は、情報を表示する装置であり、例えば、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等である。
【0048】
以下、本実施形態の動作を発明する。
まずは、設備故障時期モデル622の学習処理と検証処理について、説明する。
図7Aは、第1実施形態の設備故障予測システム6における設備故障時期モデル622の学習処理を示すフローチャートである。
ステップS11において、設備故障予測システム6の処理部61は、施設制御システム1の異常状態変化データ抽出部11から異常状態変化データ(図2A)を抽出(入力)する。
【0049】
次に、ステップS12において、処理部61は、設備の故障が短時間で復旧しているか否かを判定し、Yesの場合はステップS13に進み、Noの場合はステップS11に戻る。ここでは、設備の故障が短時間で復旧している場合の異常状態変化データについては学習ノイズとなるため排除することを意図している。
【0050】
ステップS13において、処理部61は、交通管制システム2の交通量データ作成部21から交通量データ(図3)を入力する。
【0051】
次に、ステップS14において、処理部61は、設備管理システム3の設備稼働時間データ作成部31から設備稼働時間データ(図4)を入力する。
【0052】
次に、ステップS15において、処理部61は、設備修理情報システム4の設備修理情報データ作成部41から設備修理情報データ(図5)を入力する。
【0053】
次に、ステップS16において、設備故障時期学習部611は、ステップS11、S13、S14、S15で入力した各データを教師データとして、記憶部62の設備故障時期モデル622に学習させる。
このように、異常状態変化データを繰り返し学習させることで、機械学習により設備故障時期モデル622を生成していく。
【0054】
図7Bは、第1実施形態の設備故障予測システム6における設備故障時期モデル622を使った検証処理を示すフローチャートである。
ステップS21において、設備故障予測システム6の処理部61は、状態変化リアルタイムデータ(ステップS11、S13、S14、S15の各データのリアルタイムデータ)を入力する。
【0055】
次に、ステップS22において、予測処理部613は、ステップS21で入力したデータと設備故障時期モデル622を用いて設備故障の時期を予測し、予測結果を出力する。
【0056】
次に、ステップS23において、予測処理部613は、予め記憶部62に記憶されている設備故障情報データ(正解データ)を入力する。
【0057】
次に、ステップS24において、予測処理部613は、予測結果と正解データに基づいて評価、検証を行う。あるいは、ユーザによる評価、検証の結果を設備故障予測システム6に入力してもよい。
【0058】
次に、ステップS25において、予測処理部613は、正解率等を算出する。ユーザは、例えば表示部64を介してこの正解率等を確認することで、設備故障時期モデル622の改善のための対応を行うことができる。
【0059】
次に、設備故障要因モデル623の学習処理と検証処理について、説明する。
図8Aは、第1実施形態の設備故障予測システム6における設備故障要因モデル623の学習処理を示すフローチャートである。
ステップS31において、設備故障予測システム6の処理部61は、施設制御システム1の異常頻度データ生成部12から異常頻度データ(図2B)を抽出(入力)する。
【0060】
ステップS32において、処理部61は、交通管制システム2の交通量データ作成部21から交通量データ(図3)を入力する。
【0061】
次に、ステップS33において、処理部61は、設備管理システム3の設備稼働時間データ作成部31から設備稼働時間データ(図4)を入力する。
【0062】
次に、ステップS34において、処理部61は、設備修理情報システム4の設備修理情報データ作成部41から設備修理情報データ(図5)を入力する。
【0063】
次に、ステップS35において、処理部61は、動作環境システム5の動作環境データ作成部51から動作環境データ(図6A図6B)を入力する。
【0064】
次に、ステップS36において、設備故障要因学習部612は、ステップS31~S35で入力した各データを教師データとして、設備故障要因モデル623を機械学習により生成し、記憶部62に記憶する。
【0065】
図8Bは、第1実施形態の設備故障予測システム6における設備故障要因モデル623の検証処理を示すフローチャートである。
ステップS41において、設備故障予測システム6の処理部61は、状態変化リアルタイムデータ(ステップS31~S35の各データのリアルタイムデータ)を入力する。
【0066】
次に、ステップS42において、予測処理部613は、ステップS41で入力したデータと設備故障要因モデル623を用いて設備故障の要因を予測し、予測結果を出力する。
【0067】
次に、ステップS43において、予測処理部613は、予め記憶部62に記憶されている設備故障情報データ(正解データ)を入力する。
【0068】
次に、ステップS44において、予測処理部613は、予測結果と正解データに基づいて評価、検証を行う。あるいは、ユーザによる評価、検証の結果を設備故障予測システム6に入力してもよい。
【0069】
次に、ステップS45において、予測処理部613は、正解率等を算出する。ユーザは、例えば表示部64を介してこの正解率等を確認することで、設備故障要因モデル623の改善のための対応を行うことができる。
【0070】
次に、予測処理部613で行われる設備故障の予測処理について説明する。
図9は、第1実施形態の設備故障予測システム6における予測処理を示すフローチャートである。ここでは、図7A図7Bの処理によって設備故障時期モデル622の作成と、図8A図8Bの処理によって設備故障要因モデル623の作成が完了しているものとする。
【0071】
ステップS51において、設備故障予測システム6の処理部61は、状態変化リアルタイムデータ(ステップS31~S35の各データのリアルタイムデータ)を入力する。
【0072】
次に、ステップS52において、予測処理部613は、ステップS51で入力したデータと設備故障時期モデル622、設備故障要因モデル623を用いて設備故障の時期、要因を予測し、予測結果を出力する。
【0073】
次に、ステップS53において、出力制御部614は、ステップS52による予測結果を出力する。つまり、出力制御部614は、予測結果を、表示部64に表示させたり、記憶部62に記憶させたり、外部装置に送信したりする。
【0074】
このように、第1実施形態の設備故障予測システム6によれば、設備故障時期モデル622を作成して用いることで、道路に設けられた設備の故障の時期を高精度に予測することができる。また、設備故障要因モデル623を作成して用いることで、設備の故障の要因を高精度に予測することができる。なお、設備故障を予測する対象時期としては、例えば、数時間後~数日後程度であってもよいし、あるいは、数か月後~1年後程度であってもよい。
【0075】
ユーザは、これらの予測結果に基づいて設備の点検や交換を行うこと等によって対応することができる。したがって、高速道路の各種設備の停止時間(ダウンタイム)を減らすことができる。また、高速道路の各種設備の更新計画を検討する上で定量的な根拠データとすることができる。さらに、保守業務を行う担当者が、夜間・休日の突発対応を行う頻度を減らすことができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。
【0077】
図10は、第2実施形態の道路施設管制システムSaの概略を示す全体構成図である。図10では、図1と比べて、道路施設管制システムSaと連携する構成として、設備環境センサ91、CCTV(Closed-Circuit Television)カメラ202、料金収受システム100、ETC(Electronic Toll Collection System)装置102、CCTVシステム200、が追加されている。なお、図10における矢印は、主な情報の流れを示すもので、矢印のない部分で情報の流れがあってもよい。
【0078】
設備環境センサ91は、設備に対して設置されている。設備環境センサ91は、例えば、設備の周辺温度を計測する温度センサ、設備の周辺湿度を計測する湿度センサ、設備に対する振動を計測する振動センサなどである。設備環境センサ91は、計測データを動作環境システム5に送信する。
【0079】
動作環境システム5の動作環境データ作成部51は、設備環境センサ91からの計測データに基づいて、設備の動作環境データを作成し、動作環境データを設備故障予測システム6aに送信する。
【0080】
CCTVカメラ202は、高速道路の路側に設置され、高速道路を撮影し、撮影した映像をCCTVシステム200に送信する。
【0081】
CCTVシステム200は、画像処理データ作成部201を備える。画像処理データ作成部201は、CCTVカメラ202から取得した映像に所定の画像処理を行い、画像処理後のデータ(画像処理データ)を設備故障予測システム6aに送信する。
【0082】
ETC装置102は、走行車両から通行料金を収受するために、料金所等に設けられている装置である。ETC装置102は、通過する車両の車載器と通信し、車両に関する各種のデータを取得し、データを料金収受システム100に送信する。
【0083】
料金収受システム100は、車両種別データ作成部101を備える。車両種別データ作成部101は、ETC装置102から取得したデータに基づいて、道路を走行する車両の車両種別データ(大型車、普通車などを示すデータ)を作成し、車両種別データを設備故障予測システム6aに送信する。
【0084】
なお、本実施形態の道路設備には、設備環境センサ91が設置されている設備(以下、「センサあり設備」ともいう。)と、設備環境センサ91が設置されていない設備(以下、「センサなし設備」ともいう。)の2種類がある。
【0085】
センサあり設備については、動作環境システム5から設備故障予測システム6aに動作環境データが送信される。そして、設備故障予測システム6aは、その動作環境データを用いて、設備劣化推定モデル624を生成することができる。一方、センサなし設備については、動作環境データに代わる情報を用いて、設備劣化推定モデル624を生成する(詳細は後述)。
【0086】
設備故障予測システム6aは、図1の設備故障予測システム6と比べて、処理部61aに振動推定部615と劣化影響度学習部616が追加され、記憶部62aに設備劣化推定モデル624が追加されている。
【0087】
劣化影響度学習部616は、設備劣化推定モデル624を機械学習により記憶部62aに生成する学習部である。
まず、センサあり設備の場合は、劣化影響度学習部616は、動作環境システム5から取得した動作環境データと、施設制御システム1から取得した異常状態変化データと、を教師データとして、機械学習により、設備劣化推定モデル624を記憶部62aに生成する。なお、設備劣化推定モデル624は、動作環境データを入力とし、設備の劣化への影響の度合いを示す劣化影響度を出力とするモデルである。ここで、予め、異常状態変化データなどに基づいて、劣化影響度の正解データは作成されているものとする。
【0088】
また、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに動作環境推定データなどを用いて、機械学習により、設備劣化推定モデル624を生成する。そして、設備劣化推定モデル624を用いて、設備の故障の時期を予測して出力する。ここで、劣化影響度学習部616は、当該設備の動作環境に関係し少なくとも交通状況、道路に関するイベント、気象状況(雨、雪、日照条件など)のいずれかに関する所定の履歴のデータである動作環境関連データを用いて当該設備の動作環境を推定して動作環境推定データを生成し、動作環境データの代わりに動作環境推定データを用いるようにしてもよい。
【0089】
ここで、動作環境関連データとしては、例えば、交通管制システム2から取得した交通データや、観測局9から動作環境システム5を経由して取得した気象データや、施設制御システム1から取得した火災、大雨等のイベントデータなどが挙げられる。
【0090】
また、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに、設備環境センサが設置されていて動作環境が類似する設備の動作環境データを用いるようにしてもよい。これについて、図11を用いて説明する。
【0091】
図11は、第2実施形態において、動作環境が類似する設備についての説明図である。図11(a)に示すように、長大トンネル400Aの近傍に、情報板300AとCCTVカメラ202Aが設置されている。
【0092】
情報板300Aには、設備環境センサ91(計測用センサ)として、湿度センサと、温度センサと、振動センサと、が設置されている。また、この位置での交通イベントとして、交通量と雨と雪に関する情報が設備故障予測システム6aで得られる。
【0093】
また、CCTVカメラ202Aには、設備環境センサ91(計測用センサ)が設置されていない。この場合、CCTVカメラ202Aの動作環境と、CCTVカメラ202Aの近隣の情報板300Aの動作環境は類似していると考えられる。したがって、情報板300Aの動作環境データを、CCTVカメラ202Aの動作環境データとして用いることができる。
【0094】
また、図11(b)に示すように、長大トンネル400Bの近傍に、情報板300BとCCTVカメラ202Bが設置されている。
【0095】
情報板300Aには、設備環境センサ91(計測用センサ)が設置されていない。また、この位置での交通イベントとして、交通量と雨と雪に関する情報が設備故障予測システム6aで得られる。そして、情報板300Aの交通イベントと情報板300Bの交通イベントは同じかあるいは類似している。よって、両者の動作環境は類似していると考えられる。したがって、情報板300Aの動作環境データを、情報板300Bの動作環境データとして用いることができる。
【0096】
また、CCTVカメラ202Bには、設備環境センサ91(計測用センサ)が設置されていない。この場合、CCTVカメラ202Bの動作環境と、CCTVカメラ202Bの近隣の情報板300Bの動作環境は類似していると考えられる。したがって、情報板300Bの動作環境データ(つまり、情報板300Aの動作環境データ)を、CCTVカメラ202Bの動作環境データとして用いることができる。
【0097】
このようにして、センサなし設備については、動作環境が類似するセンサあり設備の動作環境データを用いることができる。なお、この設定は、ユーザにより手動で行ってもよいし、あるいは、処理部61aによって自動で行ってもよい。
【0098】
また、動作環境が類似するか否かの判断には、道路構造や地形について考慮してもよい。道路構造とは、例えば、橋の上、トンネルの中や入口、坂道などである。地形とは、例えば、平野、山、谷などである。道路構造や地形が類似しているほど、動作環境も類似している可能性が高い。
【0099】
また、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、CCTVカメラ202の映像を解析して気象状況データを生成し、動作環境データの代わりに気象状況データを用いるようにしてもよい。
【0100】
図10に戻って、設備故障時期学習部611aは、設備故障時期モデル622aを記憶部62aに生成する学習部である。
設備故障時期学習部611aは、異常状態変化データと、設備故障時期データと、動作環境データと、を教師データとして機械学習させることで、設備劣化推定モデル624を用いて、設備故障時期モデル622aを記憶部62aに生成する。ここで、設備故障時期モデル622aは、設備故障時期データおよび動作環境データを入力とし、設備の故障の時期を出力とするモデルである。
【0101】
また、予測処理部613aは、設備の故障の時期を予測する処理部である。予測処理部613aは、リアルタイムの設備故障時期データおよび動作環境データを入力データとして、設備故障時期モデル622aおよび設備劣化推定モデル624を用いて、設備の故障の時期を予測して出力する。
【0102】
また、振動推定部615は、センサなし設備について、CCTVカメラ202の映像を用いて道路を走行する車両の大きさを認識して設備に対する振動を推定して振動推定データを生成するようにしてもよい。そして、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに振動推定データを用いる。
【0103】
また、振動推定部615は、センサなし設備について、料金収受システム100から取得した道路を走行する車両の車両種別データを用いて設備に対する振動を推定して振動推定データを生成するようにしてもよい。そして、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに振動推定データを用いる。
【0104】
以下、第2実施形態の設備故障予測処理について、説明する。記憶部62aに生成される、モデル毎に学習処理と検証処理について、それぞれ説明する。
まず、設備劣化推定モデル624の学習処理について、説明する。
図12Aは、第2実施形態の設備故障予測システム6aにおける設備劣化推定モデル624の学習処理を示すフローチャートである。
ステップS61において、設備故障予測システム6aの処理部61aは、施設制御システム1の異常状態変化データ抽出部11から異常状態変化データ(図2A)を入力する。
【0105】
次に、ステップS62において、処理部61aは、施設制御システム1の異常頻度データ生成部12から異常頻度データ(図2B)を入力する。
【0106】
次に、ステップS63において、処理部61aは、交通管制システム2の交通量データ作成部21から交通量データ(図3)を入力する。
【0107】
次に、ステップS64において、処理部61aは、予め記憶部62aに記憶されている設備故障情報データを入力する。
【0108】
次に、ステップS65において、処理部61aは、設備管理システム3の設備稼働時間データ作成部31から設備稼働時間データ(図4)を入力する。
【0109】
次に、ステップS66において、処理部61は、動作環境システム5の動作環境データ作成部51から動作環境データ(図6A図6Bなど)を入力する。
なお、センサあり設備に関しては、設備環境センサ91からの計測データに基づいて動作環境データ作成部51によって作成された動作環境データを入力する。
【0110】
また、センサなし設備に関しては、観測局9からのデータに基づいて動作環境データ作成部51によって作成された動作環境データを入力する。
【0111】
次に、ステップS67において、処理部61aは、センサなし設備に関して、振動推定部615から振動推定データを入力する。
【0112】
次に、ステップS68において、処理部61aは、センサなし設備に関して、CCTVシステム200の画像処理データ作成部201から画像処理データを入力する。
【0113】
次に、ステップ69において、劣化影響度学習部616は、設備劣化推定モデル624を機械学習により生成する。具体的には、例えば、センサあり設備について、劣化影響度学習部616は、ステップS66で取得した動作環境データと、ステップS61~S65で取得した各データを用いて、設備劣化推定モデル624を機械学習により生成する。
【0114】
また、例えば、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、設備の動作環境に関係し少なくとも交通状況、道路に関するイベント、気象状況(雨、雪、日照条件など)のいずれかに関する所定の履歴のデータである動作環境関連データを用いて当該設備の動作環境を推定して動作環境推定データを生成し、動作環境データの代わりに動作環境推定データを用いるようにしてもよい。
【0115】
また、例えば、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに、設備環境センサが設置されていて動作環境が類似する設備の動作環境データを用いるようにしてもよい。
【0116】
また、例えば、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、動作環境データの代わりに、振動推定部615によって作成された振動推定データを用いるようにしてもよい。
【0117】
また、例えば、センサなし設備について、劣化影響度学習部616は、CCTVカメラ202の映像を解析して気象状況データを生成し、動作環境データの代わりに気象状況データを用いるようにしてもよい。
【0118】
次に、設備劣化推定モデル624の検証処理について、説明する。
図12Bは、第2実施形態の設備故障予測システム6aにおける設備劣化推定モデル624の検証処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS71において、設備故障予測システム6aの処理部61aは、状態変化リアルタイムデータ(ステップS61~S68の各データのリアルタイムデータ)を入力する。
【0119】
次に、ステップS72において、予測処理部613aは、ステップS71で入力したデータと設備劣化推定モデル624を用いて劣化影響度を推定し、推定結果を出力する。
【0120】
次に、ステップS73において、予測処理部613aは、予め記憶部62に記憶されている劣化影響度データ(正解データ)を入力する。
【0121】
次に、ステップS74において、予測処理部613aは、予測結果と正解データに基づいて評価、検証を行う。あるいは、ユーザによる評価、検証の結果を設備故障予測システム6aに入力してもよい。
【0122】
次に、ステップS75において、予測処理部613aは、正解率等を算出する。ユーザは、例えば表示部64を介してこの正解率等を確認することで、設備劣化推定モデル624の改善のための対応を行うことができる。
【0123】
次に、設備故障時期モデル622aの学習処理について、説明する。
図13は、第2実施形態の設備故障予測システム6aにおける設備故障時期モデル622aの学習処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、設備故障予測システム6aの処理部61aは、施設制御システム1の異常状態変化データ抽出部11から異常状態変化データ(図2A)を入力する。
【0124】
次に、ステップS12において、処理部61aは、設備の故障が短時間で復旧しているか否かを判定する。ここで、Yesの場合はステップS13に進み、Noの場合はステップS11に戻る。
【0125】
ステップS13において、処理部61aは、交通管制システム2の交通量データ作成部21から交通量データ(図3)を入力する。
【0126】
次に、ステップS14において、処理部61aは、設備管理システム3の設備稼働時間データ作成部31から設備稼働時間データ(図4)を入力する。
【0127】
次に、ステップS15において、処理部61aは、設備修理情報システム4の設備修理情報データ作成部41から設備修理情報データ(図5)を入力する。
【0128】
次に、ステップS101において、処理部61aは、動作環境システム5の動作環境データ作成部51から動作環境データ(図6A図6Bなど)を入力する。
なお、センサあり設備に関しては、設備環境センサ91からの計測データに基づいて動作環境データ作成部51によって作成された動作環境データを入力する。
また、センサなし設備に関しては、動作環境データの代わりに使用する上述の各種データ(動作環境推定データ、動作環境が類似するセンサあり設備の動作環境データ、振動推定データ、気象状況データ)を入力する。
【0129】
次に、ステップS16aにおいて、設備故障時期学習部611は、ステップS11、S13、S14、S15、S101で入力した各データを教師データとして、また、さらに設備劣化推定モデル624を用いて、設備故障時期モデル622を機械学習により生成し、記憶部62に記憶する。
【0130】
次に、設備故障要因モデル623aの学習処理について説明する。
図14は、第2実施形態の設備故障予測システム6aにおける設備故障要因モデル623aの学習処理を示すフローチャートである。
ステップS31において、設備故障予測システム6の処理部61aは、施設制御システム1の異常頻度データ生成部12から異常頻度データ(図2B)を入力する。
【0131】
ステップS32において、処理部61aは、交通管制システム2の交通量データ作成部21から交通量データ(図3)を入力する。
【0132】
次に、ステップS33において、処理部61aは、設備管理システム3の設備稼働時間データ作成部31から設備稼働時間データ(図4)を入力する。
【0133】
次に、ステップS34において、処理部61aは、設備修理情報システム4の設備修理情報データ作成部41から設備修理情報データ(図5)を入力する。
【0134】
次に、ステップS35aにおいて、処理部61aは、動作環境システム5の動作環境データ作成部51から動作環境データ(図6A図6Bなど)を入力する。
なお、センサあり設備に関しては、設備環境センサ91からの計測データに基づいて動作環境データ作成部51によって作成された動作環境データを入力する。
また、センサなし設備に関しては、動作環境データの代わりに使用する上述の各種データ(動作環境推定データ、動作環境が類似するセンサあり設備の動作環境データ、振動推定データ、気象状況データ)を入力する。
【0135】
次に、ステップS36aにおいて、設備故障要因学習部612は、ステップS31~S35aで入力した各データを教師データとして、また、さらに設備劣化推定モデル624を用いて、設備故障要因モデル623を機械学習により生成し、記憶部62に記憶する。
【0136】
このように、第2実施形態の設備故障予測システム6aによれば、設備劣化推定モデル624を用いて設備の劣化影響度を推定し、その劣化影響度と、設備故障時期モデル622aや設備故障要因モデル623aを用いることで、道路に設けられた設備の故障の時期や要因をさらに高精度に予測することができる。
【0137】
また、センサあり設備については、設備環境センサ91からの出力データに基づく動作環境データを用いて、劣化影響度を高精度に推定できる。
【0138】
また、センサなし設備については、設備環境センサ91からの出力データに基づく動作環境データの代わりに、上述の動作環境推定データや、動作環境が類似するセンサあり設備の動作環境データや、CCTVカメラ202の映像に基づく振動推定データや、CCTVカメラ202の映像に基づく気象状況データや、料金収受システム100から取得した車両種別データに基づく振動推定データなどを用いることで、劣化影響度を高精度に推定できる。
【0139】
本実施形態において、設備環境センサ91によって計測するのは、上述の温度、湿度、振動に限定されず、ほかに、例えば、トンネル内の一酸化炭素濃度や煙霧透過率などであってもよい。トンネル内では、一酸化炭素濃度や煙霧透過率によって、換気設備の稼働の有無が決まるので、それらを劣化影響度の推定に用いることができる。
【0140】
なお、本実施形態の設備故障予測システム6で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。当該プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0141】
さらに、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0142】
当該プログラムは、上述した設備故障予測システム6の処理部61における各部611~616を含むモジュール構成となっている。つまり、CPUが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより、各部611~616が主記憶装置上にロードされる。
【0143】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0144】
例えば、対象の道路は、高速道路に限定されず、一般道路等の他の道路に設置された道路付帯設備にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0145】
S…道路施設管制システム、1…施設制御システム、2…交通管制システム、3…設備管理システム、4…設備修理情報システム、5…動作環境システム、6…設備故障予測システム、7…計測器、8…管理事務所、9…観測局、11…異常状態変化データ抽出部、12…異常頻度データ生成部、21…交通量データ作成部、31…設備稼働時間データ作成部、41…設備修理情報データ作成部、51…動作環境データ作成部、61…処理部、81…作業者、91…設備環境センサ、100…料金収受システム、101…車両種別データ作成部、102…ETC装置、200…CCTVシステム、201…画像処理データ作成部、202…CCTVカメラ、611…設備故障時期学習部、612…設備故障要因学習部、613…予測処理部、614…出力制御部、615…振動推定部、616…劣化影響度学習部、621…設備故障予測モデル、622…設備故障時期モデル、623…設備故障要因モデル、624…設備劣化推定モデル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14