(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】フラックス用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/34 20060101AFI20240701BHJP
C11D 7/04 20060101ALI20240701BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20240701BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240701BHJP
C23G 1/18 20060101ALI20240701BHJP
C23G 1/20 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C11D7/34
C11D7/04
C11D7/22
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
C23G1/18
C23G1/20
(21)【出願番号】P 2021144049
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2020149279
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】司馬 寛也
(72)【発明者】
【氏名】照屋 友太
(72)【発明者】
【氏名】高田 真吾
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0137132(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0137130(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0137131(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
B08B3/08
H05K3/34
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスを有する被洗浄物を
、フラックス用洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、
前記フラックス用洗浄剤組成物は、アルカリ剤(成分A)、チオグリセロール(成分B)、有機溶媒(成分C)及び水(成分D)を含み、成分Dの含有量が4質量%以上75質量%以下であり、pHが6以上10以下であるフラックス用洗浄剤組成物であり、
フラックスを有する被洗浄物は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程を経た基板であ
り、前記金属部材の金属が銅を含む、洗浄方法。
【請求項2】
成分Bの分子量が、150以下である、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記フラックス用洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量が、0.5質量%以上25質量%以下である、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記フラックス用洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量が、4質量%以上50質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
被洗浄物の基板表面及び/又は金属部材は、金属が加熱により酸化した部分を含む、請求項
1から4のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄工程は、前記被洗浄物を80℃以下の前記フラックス用洗浄剤組成物に浸漬する工程である、請求項
1から
5のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記スラリーは、金属粒子をさらに含む、請求項
1から
6のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フラックス用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の電子基板の回路を形成する電極は、製造コストを低減する為に銅、銅合金等の金属が用いられている。
【0003】
プリント配線板の実装方法として、実装密度を向上させた表面実装が広く採用されている。実装密度を向上するために、基板上の配線と電子素子の端子間にナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させ、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる技術が知られている。
例えば、特許文献1には、特定の銀微粒子と特定の銀粉と珪素含有トリアジン化合物とを含み、さらに沸点が100~300℃の酸無水物であるカルボン酸化合物を焼結助剤として含むペースト組成物からなるダイアタッチ材料を介して接着し、基板上に固定された半導体素子が開示されている。そして、カルボン酸化合物の沸点が300℃を超えると、焼結の際に揮発せず膜中にフラックス成分(有機酸等の有機物)が残存することとなるので好ましくないことが開示されている。
【0004】
一方、はんだ付け後の電子部品のはんだフラックスを洗浄する技術が知られている。例えば、特許文献2には、全体量に対して、グリコール化合物の含有量が1重量%未満の場合には、ベンジルアルコールの含有量を70~99.9重量%の範囲およびアミノアルコールの含有量を0.1~30重量%の範囲とし、グリコール化合物の含有量が1~40重量%の場合には、ベンジルアルコールの含有量を15~99重量%の範囲およびアミノアルコールの含有量を0.1~30重量%の範囲とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤が開示されている。
特許文献3には、電極にはんだを固化させる工程で得られた回路基板のフラックス残渣を、グリコールエーテルと、アルカノールアミンと、特定のイミダゾール化合物とを含有する洗浄剤を用いて洗浄する工程を含む、はんだが固化された回路基板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-35721号公報
【文献】国際公開第2005/021700号
【文献】特開2015-216276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸(フラックス成分)を含むナノ金属ペーストを塗布し、加熱によりナノ金属を溶融及び固化させて、基板上の配線と電子素子の端子間を結合させる際には、金属を溶融させるために基板を200℃以上の高温で保持する工程が必要となる。この工程を経た基板上に酸を主成分とするフラックスが残存すると、これを洗浄する必要がある。しかしながら、特許文献2及び3のはんだフラックス用洗浄剤では、200℃以上の高温で保持する工程を経た酸に由来するフラックスに対する洗浄性(フラックス除去性)が十分ではない。
また、基板表面や金属部材の金属の種類によっては、200℃以上の高温で保持することによって表面が酸化して変色する場合がある。そのため、200℃以上の加熱処理により変色した部分、すなわち、酸化した金属(金属酸化物)を除去できる洗浄剤組成物が求められる。
【0007】
そこで、本開示は、200℃以上の加熱処理後の金属の変色及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、アルカリ剤(成分A)、メルカプト基を有する還元性化合物(成分B)、有機溶媒(成分C)及び水(成分D)を含み、pHが6以上10以下である、フラックス用洗浄剤組成物に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、フラックスを有する被洗浄物を、本開示のフラックス用洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含み、フラックスを有する被洗浄物は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程を経た基板である、洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の金属の変色及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物及び洗浄方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、メルカプト基を有する還元性化合物を用いることで、200℃以上の加熱処理後の金属の変色及びフラックスの両方の除去性を向上できるという知見に基づく。
【0012】
すなわち、本開示は、一態様において、アルカリ剤(成分A)、メルカプト基を有する還元性化合物(成分B)、有機溶媒(成分C)及び水(成分D)を含み、pHが6以上10以下である、フラックス用洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
【0013】
本開示によれば、200℃以上の加熱処理後の金属の変色及びフラックスの両方の除去性に優れるフラックス用洗浄剤組成物を提供できる。
【0014】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分はあるが、以下のように推察される。
特定のpHにおいて、還元性化合物が金属表面(基板表面及び/又は金属部材)に吸着し、還元反応を引き起こすことで、変色した金属表面の状態が変化し、金属表面の変色が除去されると考えられる。有機溶媒がフラックスへの浸透性を高め、それに伴い、金属とフラックスとの界面剥離が生じるため、従来のようなアルカリ剤による易溶解化や溶剤による溶解に加えて、高い洗浄力を示すと推察される。
ただし、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
本開示における「フラックス」とは、一又は複数の形態において、焼結工程(例えば、200℃以上の高温で保持する工程)により2つの部材間を接合するために用いられるフラックスであり、例えば、放熱板と半導体素子との接合や、放熱板と基板との接合に用いられる。フラックスは、一又は複数の実施形態において、酸を主成分とする接合助剤である。
本開示における「フラックス用洗浄剤組成物」は、一又は複数の実施形態において、焼結工程により2つの部材間を接合した後に残存するフラックスを除去するための洗浄剤組成物をいう。
【0016】
[成分A:アルカリ剤]
本開示の洗浄剤組成物は、アルカリ剤(以下、単に「成分A」ともいう)を含む。成分Aとしては、一又は複数の実施形態において、無機アルカリ及び有機アルカリから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0017】
無機アルカリとしては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらの中でも、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、アンモニア及び水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0018】
有機アルカリとしては、一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される第4級アンモニウム水酸化物、下記式(II)で表されるアミン、アルキルイミダゾール等が挙げられる。
【0019】
【0020】
上記式(I)において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
式(I)で表される第4級アンモニウム水酸化物としては、例えば、第4級アンモニウムカチオンとヒドロキシドとからなる塩等が挙げられる。第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジエチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)エチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、及びテトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アンモニウムヒドロキシドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)がより好ましい。
【0022】
【0023】
式(II)中、R5は水素原子、水酸基、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数1~6のアミノアルキル基であり、R6及びR7はそれぞれ同一又は異なり、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数1~6のアミノアルキル基であり、R5、R6及びR7は同時に水素原子とはならない。
【0024】
式(II)で表されるアミンとしては、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-エチルジイソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、及びN,N-ジブチルエタノールアミンが好ましい。
【0025】
アルキルイミダゾールとしては、ブチルイミダゾール、プロピルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、エチルイミダゾール、メチルイミダゾール、1,2ジメチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのなかでも、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、メチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、及び、1,2ジメチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0026】
成分Aとしては、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、水酸化ナトリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、及びメチルイミダゾールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0027】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は洗浄剤組成物のpHが特定範囲になるよう設定することができる。
【0028】
[成分B:メルカプト基を有する還元性化合物]
本開示の洗浄剤組成物は、メルカプト基を有する還元性化合物(以下、単に「成分B」ともいう)を含む。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
成分Bとしては、一又は複数の実施形態において、メルカプト基及びカルボキシル基を有する還元性化合物、又はメルカプト基及び水酸基を有する還元性化合物等が挙げられる。メルカプト基及びカルボキシル基を有する還元性化合物としては、例えば、チオグリコール酸又はその塩、3-メルカプトプロピオン酸、L-システイン、N-アセチルシステイン等が挙げられる。メルカプト基及び水酸基を有する還元性化合物としては、例えば、チオグリセロール等が挙げられる。
【0029】
成分Bの分子量は、揮発性の観点から、40以上が好ましく、60以上がより好ましく、70以上が更に好ましく、そして、フラックスへの浸透速度の観点から、150以下がより好ましく、130以下が更に好ましく、110以下が更に好ましい。
【0030】
成分Bとしては、一又は複数の実施形態において、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、チオグリコール酸又はその塩、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、L-システイン、及びN-アセチルシステインから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Bとしては、一又は複数の実施形態において、鉄又はその合金(例えば、鋼、ステンレス鋼等)の腐食を抑制できる観点から、チオグリセロールが好ましい。
【0031】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、酸化物除去性の観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、再酸化抑制の観点から、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、12質量%以下が更に好ましい。本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、0.5質量%以上25質量%以下が好ましく、0.8質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上12質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0032】
[成分C:有機溶剤]
本開示の洗浄剤組成物は、有機溶剤(以下、「成分C」ともいう)を含む。成分Cとしては、一又は複数の実施形態において、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、下記式(III)で表される化合物、下記式(IV)で表される化合物、下記式(V)で表される化合物、アルキルスルホキシド、及びα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の溶剤であることが好ましい。成分Cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0033】
R8-O-(AO)n-R9 (III)
【0034】
上記式(III)において、R8は、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、フェニル基又は炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数4以上6以下のアルキル基が更に好ましい。R9は、同様の観点から、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数2以上4以下のアルキル基がより好ましい。AOは、エチレンオキシド基(EO)又はプロピレンオキシド基(PO)であり、同様の観点から、エチレンオキシド基が好ましい。nは、AOの付加モル数であり、同様の観点から、1以上3以下の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましい。
【0035】
上記式(III)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等のモノフェニルエーテル;炭素数1以上8以下のアルキル基を有するエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルキルエーテル;炭素数1以上8以下のアルキル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル等のジアルキルエーテル;フェニル基及び炭素数1以上4以下のアルキル基を有するエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、ジエチレングリコールフェニルアルキルエーテル、トリエチレングリコールフェニルアルキルエーテル等のフェニルアルキルエーテル;等が挙げられる。これらのなかでも、上記式(III)で表される化合物としては、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びジエチレングリコールジアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(2-エチルヘキシルジグリコール)及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
R10-CH2OH (IV)
【0037】
上記式(IV)において、R10は、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基であることが好ましく、フェニル基、シクロヘキシル基又はテトラヒドロフリル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0038】
上記式(IV)で表される化合物としては、例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコールが挙げられる。これらのなかでも、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、ベンジルアルコールが好ましい。
【0039】
【0040】
上記式(V)において、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基又は水酸基であることが好ましく、R11、R12、R13、R14のいずれか一つが炭素数1以上8以下の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1以上6以下の炭化水素基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、ビニル基のいずれかであることが更に好ましい。
【0041】
上記式(V)で表される化合物としては、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン、3-ヒドロキシプロピル-2-ピロリドン、4-ヒドロキシ-2-ピロリドン、4-フェニル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。上記式(V)で表される化合物としては、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ビニル-2-ピロリドン、1-フェニル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-オクチル-2-ピロリドン及び5-メチル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン及び1-ビニル-2-ピロリドンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがさらに好ましい。
【0042】
アルキルスルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0043】
α-オレフィンとしては、炭素数8~20のα-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、1-ドデセン等が挙げられる。
【0044】
成分Cとしては、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、ブチルジグリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、2-エチルヘキシルジグリコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び1-ドデセンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、15質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましく、45質量%以上80質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0046】
本開示の洗浄剤組成物において、成分Bと成分Cとの質量比(B/C)は、還元力の観点から、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.3以上が更に好ましく、そして、再酸化抑制の観点から、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1以下が更に好ましく、0.8以下が更に好ましく、0.5以下が更に好ましい。質量比(B/C)は、0.001以上2以下が好ましく、0.01以上1.5以下がより好ましく、0.1以上1以下がさらに好ましく、0.3以上0.8以下が更に好ましい。
【0047】
[成分D:水]
本開示の洗浄剤組成物は、水(以下、「成分D」ともいう)を含む。成分Dとしては、イオン交換水、RO水(逆浸透膜処理水)、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量は、引火点を下げ取り扱い性を向上する観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、フラックス洗浄性の観点から、75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が更に好ましい。本開示の洗浄剤組成物における成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、3質量%以上40質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下が更に好ましい。本開示の洗浄剤組成物における成分Dの含有量は、その他の一又は複数の実施形態において、4質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0048】
[その他の成分]
本開示の洗浄剤組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常洗浄剤に用いられる、キレート剤、ベンゾトリアゾール(BTA)等の防錆剤、増粘剤、分散剤、成分A以外の塩基性物質、高分子化合物、アルキルグルコシド等の界面活性剤、カプリル酸等の可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消泡剤、酸化防止剤を適宜含有することができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるその他の成分の含有量は、0質量%以上25質量%以下が好ましく、0質量%以上20質量%以下がより好ましく、0質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0049】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物は、例えば、成分A、成分B、成分C、成分D、及び、必要に応じて上述したその他の成分を公知の方法で配合することにより製造できる。一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも成分Aと成分Bと成分Cと成分Dとを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも成分A、成分B、成分C及び成分Dを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、成分C、成分D及び必要に応じてその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量と同じとすることができる。本開示において「洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。
【0050】
[洗浄剤組成物のpH]
本開示の洗浄剤組成物のpHは、6以上10以下であって、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、pH7以上10以下が好ましく、pH7以上9以下がより好ましい。pHは、必要により、硝酸、硫酸等の無機酸、オキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、アミノ酸等の有機酸、及びそれらの金属塩やアンモニウム塩、アルカリ剤(成分A)等を用いて調整することができる。本開示において洗浄剤組成物のpHは、25℃における洗浄剤組成物の使用時のpHである。
【0051】
[被洗浄物]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、フラックスを有する被洗浄物の洗浄に使用される。
フラックスを有する被洗浄物は、一又は複数の実施形態において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(加熱工程)を経た基板が挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材の間にフラックスを含むスラリーを塗布した後、200℃以上に加熱する工程(加熱工程)を経た基板の洗浄における、本開示のフラックス用洗浄剤組成物の使用に関する。
前記加熱工程において、加熱温度は、例えば、200℃~350℃が挙げられる。加熱時間は、例えば、3分~5時間が挙げられる。フラックスの熱による変性に対する洗浄性を発揮する観点から、1時間以上加熱された被洗浄物が好ましい。被洗浄物の基板表面及び/又は金属部材は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により変色した部分、すなわち、酸化した部分(金属酸化物)を含む。
前記フラックスは、一又は複数の実施形態において、主成分として酸を含む。酸としては、例えば、アビエチン酸等の有機酸が挙げられる。
前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、金属粒子をさらに含むことができる。金属粒子は、焼結温度(硬化温度)が300℃以下の金属粒子が好ましく、例えば、錫、銅、銀、又はそれらの混合金属等が挙げられ、銅、銀、又はそれらの混合金属が好ましく、銀がより好ましい。金属粒子は、基板と金属部材との間又は基板上の2つの金属部材間を接合可能な接合材となる。前記フラックスを含有するスラリーは、一又は複数の実施形態において、ダイアタッチペーストとして使用できる。前記フラックスを含有するスラリーが金属粒子をさらに含む場合、前記スラリーは、一又は複数の実施形態において、導電型ダイアタッチペーストとして使用できる。
前記金属部材は、一又は複数の実施形態において、基板上に固定されている。
前記金属部材の金属は、一又は複数の実施形態において、銅、鉄等の金属を含む。前記金属部材としては、例えば、放熱板、電気回路等が挙げられる。
前記基板としては、一又は複数の実施形態において、金属表面を有する基板が挙げられ、例えば、銅板、鋼板、ステンレス鋼板等が挙げられる。
【0052】
[洗浄方法]
本開示は、一態様において、フラックスを有する被洗浄物を、本開示の洗浄剤組成物で洗浄する洗浄工程を含む、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。前記フラックスを有する被洗浄物としては、上述した被洗浄物が挙げられる。前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、フラックスを有する被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に接触させることを含む。本開示の洗浄方法によれば、200℃以上の高温処理後の金属の変色及びフラックスの両方を効率よく除去できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、本開示のフラックス用洗浄剤組成物を用いて金属の変色を除去することを含む。したがって、本開示は、一態様において、本開示のフラックス用洗浄剤組成物の、金属の変色及びフラックスの除去への使用に関する。金属の変色は、一又は複数の実施形態において、金属が加熱により酸化した部分(金属酸化物)を含む。
被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物で洗浄する方法、又は、被洗浄物に本開示の洗浄剤組成物を接触させる方法としては、例えば、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)等が挙げられる。本開示の洗浄剤組成物は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。
前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、前記被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に浸漬する工程である。浸漬温度は、金属の変色及びフラックスの両方の除去性向上の観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、そして、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。浸漬時間は、同様の観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、そして、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましく、1時間以下が更に好ましい。
本開示の洗浄方法は、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水及び/又はメタノール等のアルコールでリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。
本開示の洗浄方法は、本開示の洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示の洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。前記超音波の周波数としては、同様の観点から、26~72Hz、80~1500Wが好ましく、36~72Hz、80~1500Wがより好ましい。
【0053】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法に使用するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物を製造するためのキットである。
【0054】
本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分B及び成分Cを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されていない状態で含み、第1液と第2液とが使用時に混合されるキット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。前記第1液及び第2液には、各々必要に応じて上述したその他の成分が含まれていても良い。前記第1液及び第2液の少なくとも一方は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物の調製に用いられる成分Dの一部又は全部を含有することができる。一又は複数の実施形態において、前記第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて水(成分D)で希釈されてもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1~34、比較例1~7)
100mLガラスビーカーに、下記表1~5に記載の組成となるように各成分を配合し、下記条件で混合することにより、実施例1~34及び比較例1~7の洗浄剤組成物を調製した。表1~5中の各成分の数値は、断りのない限り、調製した洗浄剤組成物における含有量(質量%)を示す。実施例1~32及び比較例1~5のpHは7~9の範囲であった。実施例33~34のpHは7.2~7.6であった。比較例6のpHは11.8、比較例7のpHは13.6であった。pHは、25℃における洗浄剤組成物のpHであり、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM-30G)の電極を洗浄剤組成物に浸漬して3分後の数値を測定した。
<混合条件>
液温度:25℃
攪拌機:マグネチックスターラー(50mm回転子)
回転数:300rpm
攪拌時間:10分
【0057】
洗浄剤組成物の成分として下記のものを使用する。
(成分A)
NaOH:水酸化ナトリウム[南海化学株式会社製]
アンモニア[富士フイルム和光純薬株式会社製]
モノエタノールアミン[東京化成工業株式会社製]
メチルエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
ブチルエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
ジブチルエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
トリエタノールアミン[株式会社日本触媒製]
メチルジエタノールアミン[日本乳化剤株式会社製]
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[東京化成工業株式会社製]
N-メチルイミダゾール(メチルイミダゾール)[花王株式会社製]
(成分B)
チオグリコール酸[富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量92]
チオグリコール酸アンモニウム[富士フイルム和光純薬社製、分子量109]
3-メルカプトプロピオン酸[富士フイルム和光純薬和光純薬社製、分子量106]
チオグリセロール[東京化成工業株式会社製、分子量108]
L-システイン[富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量121]
N-アセチルシステイン[富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量163]
(成分C)
ブチルジグリコール(BDG)[ジエチレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤株式会社製]
トリプロピレングリコールメチルエーテル[富士フイルム和光純薬株式会社製]
2-エチルヘキシルジグリコール[日本乳化剤株式会社製]
ベンジルアルコール[ランクセス株式会社製]
ジエチレングリコールジエチルエーテル[富士フイルム和光純薬株式会社製]
NMP[N-メチル-2-ピロリドン、富士フイルム和光純薬株式会社製]
DMSO[ジメチルスルホキシド、富士フイルム和光純薬株式会社製]
C12-αオレフィン[1-ドデセン]
2-メチルイミダゾール[四国化成工業株式会社製]
p-トルエンスルホン酸[東京化成工業株式会社製]
(成分D)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
(その他の成分)
アクリル酸/マレイン酸共重合体[花王株式会社製、ポイズ]
ノニオン界面活性剤[花王株式会社製](界面活性剤)
C7COOH[花王株式会社、カプリル酸](可溶化剤)
アルキルグルコシド[花王株式会社製](界面活性剤)
ベンゾトリアゾール(BTA)[1,2,3-ベンゾトリアゾール、東京化成工業株式会社製](防錆剤)
【0058】
2.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~34及び比較例1~7の洗浄剤組成物を用いて洗浄性及び金属の変色除去性について試験を行い、評価した。
【0059】
<テスト基板>
50mm×20mmのタフピッチ銅板上にアビエチン酸(フラックス)を0.05g塗布し、ホットプレートにて300℃で3時間加熱することで、テスト基板を作製した。アビエチン酸は銅板表面の一部に乗った状態である。
ここで作製された基板は、加熱温度並びに、保持時間から、基板上の金属同士を接合することを模したモデルである。例えば、特許文献1の実施例では200℃で60分保持している。
また、ナノ粒子接合材により接合された半導体素子を有する半導体装置に関する特開2020―74498号公報の[0025]段落には、ナノ粒子接合材は、概ね300℃ 以下の低温で接合可能な接合材であり、ナノ粒子接合材が焼結された銀すなわち焼結銀である場合、その焼結温度すなわち硬化温度はおよそ210℃であることが記載されている。
【0060】
[洗浄性(フラックス除去性)の評価]
テスト基板を各洗浄剤組成物100gに25℃にて1分間浸漬した後、引き上げ、水すすぎを行い、エアブローにて乾燥し、洗浄後の基板を得た。フラックス除去性の評価は、外観を観察し、洗浄前の外観と同様になった部分の面積(フラックスが付着した面積)を洗浄可能な面積から除去率を算出した。除去率は下記式により算出した。
除去率=洗浄後にフラックス除去された面積/洗浄前のフラックスが付着している面積×100
【0061】
[金属の変色除去性]
銅板上にアビエチン酸を乗せずに行った以外は、フラックス洗浄性の評価と同様にして、洗浄後基板を得た。銅板は、高温で処理されたことにより表面が酸化し、黒色化する。金属の変色除去性の評価は、外観を観察し、洗浄前の外観と同様になった部分の面積を洗浄可能な面積から除去率を算出した。変色除去率は下記式により算出した。
変色除去率=洗浄後に金属の変色が除去された面積/洗浄前の金属の変色面積×100
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
上記表1~4に示すとおり、実施例1~34の洗浄剤組成物は、金属の変色及びフラックスの両方の除去性に優れていた。
【0067】
[鉄の腐食性]
さらに、洗浄装置の洗浄槽やリンス槽等に用いられる鋼板及びステンレス鋼板の腐食を想定し、実施例19及び実施例12の洗浄剤組成物を用いて鉄の腐食性の評価を行った。洗浄槽を想定した場合の洗浄剤組成物(原液)での評価と、被洗浄物に付着した洗浄液がリンス槽のリンス液に持ち込まれたことを想定した場合の洗浄剤組成物の5%水溶液も評価した。
<テスト基板>
鋼板:50mm×20mmのSPCC鋼板
ステンレス鋼板:50mm×20mmのSUS304鋼板
<評価方法>
各液の原液及び5%水溶液を準備する。
作製した各液を室温にし、テスト基板を浸漬した。
浸漬して1日後及び5日後の溶液を採取し、ICP測定により溶出した鉄の量(単位:ppm)を求めた。
【0068】
【0069】
上記表5に示すとおり、還元剤(成分B)としてチオグリセロールを用いた実施例19は、還元剤(成分B)としてチオグリコール酸を用いた実施例12に比べて、鋼板及びステンレス鋼板の腐食が抑制されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の洗浄剤組成物を用いることにより、金属の変色及びフラックスの両方を効率よく除去できることから、例えば、半導体装置の製造プロセスにおけるフラックスの洗浄工程の短縮化及び製造される半導体装置の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。