(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】逐次比較型ADコンバータ、Iotセンサ、及び生体センサ
(51)【国際特許分類】
H03M 1/40 20060101AFI20240701BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240701BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20240701BHJP
H03M 1/14 20060101ALI20240701BHJP
H03M 1/16 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H03M1/40
A61B5/00 B
H03M1/08 A
H03M1/14 B
H03M1/16 B
(21)【出願番号】P 2021501660
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2020000063
(87)【国際公開番号】W WO2020170617
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019028210
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 一徳
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/088041(WO,A1)
【文献】特表2010-517327(JP,A)
【文献】特開2012-74919(JP,A)
【文献】特開2016-25552(JP,A)
【文献】特開2018-125652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M1/06-1/08
H03M1/12-1/64
A61B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極性の第1コンデンサと、
第1極性の第2コンデンサと、
第1極性の第3コンデンサと、
第2極性の第1コンデンサと、
第2極性の第2コンデンサと、
第2極性の第3コンデンサと、
積分器アンプと、
コンパレータと、
フィルタ回路と、を備え、
前記第1極性の第1コンデンサと、前記第1極性の第2コンデンサと、前記第1極性の第3コンデンサのそれぞれが、
同一の容量を有し、
前記第2極性の第1コンデンサと、前記第2極性の第2コンデンサと、前記第2極性の第3コンデンサのそれぞれが、
同一の容量を有し、
前記第1極性の第1コンデンサ及び前記第2極性の第1コンデンサのそれぞれに、所定の電荷が蓄積され、
前記第1極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第1電荷を蓄積するとともに、当該第1電荷を前記第1極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第1極性の第3コンデンサに転送された前記第1電荷を積分して、第1積分値を生成し、
前記第2極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第2電荷を蓄積するとともに、当該第2電荷を前記第2極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第2極性の第3コンデンサに転送された前記第2電荷を積分して、第2積分値を生成し、
前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとがリセットされ、
前記第1積分値が前記第2積分値よりも大きいときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2コンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
前記第1積分値が前記第2積分値
と同等以下であるときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2のコンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
所定の分解能のビット数が得られるまで、前記コンパレータが前記第1積分値と前記第2積分値とを前記比較することと、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされることと、前記リセットされた、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとに前記再配分することと、を繰り返し、
前記所定の分解能のビット数が得られた後、前記フィルタ回路に、前記第1極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と、前記第2極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷とを、残差電圧として入力する、逐次比較型ADコンバータ。
【請求項2】
前記第1極性が、正極性であって、
前記第2極性が、負極性である、請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項3】
前記所定の分解能の最下位ビットについて、前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされた後、当該第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとについて前記再配分が完了するまでの間に、前記フィルタ回路が、前記残差電圧のサンプリングを開始する、請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項4】
前記フィルタ回路が、前記積分器アンプによって駆動される、請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項5】
前記フィルタ回路が、オペアンプを含んで構成されるアクティブ型である請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項6】
前記フィルタ回路が、コンデンサを含み、オペアンプを含まないで構成されるパッシブ型である請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項7】
請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータを備える、IoTセンサ。
【請求項8】
請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータを備える、生体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、逐次比較型ADコンバータ、Iotセンサ、及び生体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SAR ADC(Successive Approximation Resister Analog Digital Converter:逐次比較型AD変換器)が知られている。SAR ADCは、容量DA変換器の残差電圧を保持し、保持した残差電圧を次の変換サイクルで容量DA変換器に加算してノイズシェーピングを行っている。
【0003】
ここで、ノイズシェーピングとは、量子化ノイズとコンパレータノイズを削減するための技術である。ノイズシェーピングを行うことにより、信号を測定したときの信号とノイズとの比を示すSNDR(Signal to noise and distortion)が向上する。
【0004】
SNDRの値を高くするためには、ノイズシェーピングの次数を高くすることが望まれる。上述したSAR ADCに関し、単純で、非常に効率的なSAR ADCが提案されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】C.-H.Chen, Y.Zhang, J.L.Ceballos, and G.C.Ternes,“Noise-Shaping SAR ADC Using Three Capacitors”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、SAR ADCは、ΔΣADCと異なり、ノイズシェーピングの次数を上げることが不向きであるため、達成できるSNDRの精度には限界があった。
【0007】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ノイズシェーピングの高次化を図ることができる逐次比較型ADコンバータ、Iotセンサ、及び生体センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述の目的を解決するために鋭意研究を行った結果、ノイズシェーピングの高次化を図ることができる逐次比較型ADコンバータ、Iotセンサ、及び生体センサを提供することに成功し、本技術を完成するに至った。
【0009】
即ち、本技術では、 第1極性の第1コンデンサと、
第1極性の第2コンデンサと、
第1極性の第3コンデンサと、
第2極性の第1コンデンサと、
第2極性の第2コンデンサと、
第2極性の第3コンデンサと、
積分器アンプと、
コンパレータと、
フィルタ回路と、を備え、
前記第1極性の第1コンデンサと、前記第1極性の第2コンデンサと、前記第1極性の第3コンデンサのそれぞれが、同一の容量を有し、
前記第2極性の第1コンデンサと、前記第2極性の第2コンデンサと、前記第2極性の第3コンデンサのそれぞれが、同一の容量を有し、
前記第1極性の第1コンデンサ及び前記第2極性の第1コンデンサのそれぞれに、所定の電荷が蓄積され、
前記第1極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第1電荷を蓄積するとともに、当該第1電荷を前記第1極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第1極性の第3コンデンサに転送された前記第1電荷を積分して、第1積分値を生成し、
前記第2極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第2電荷を蓄積するとともに、当該第2電荷を前記第2極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第2極性の第3コンデンサに転送された前記第2電荷を積分して、第2積分値を生成し、
前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとがリセットされ、
前記第1積分値が前記第2積分値よりも大きいときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2コンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
前記第1積分値が前記第2積分値と同等以下であるときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2のコンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
所定の分解能のビット数が得られるまで、前記コンパレータが前記第1積分値と前記第2積分値とを前記比較することと、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされることと、前記リセットされた、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとに前記再配分することと、を繰り返し、
前記所定の分解能のビット数が得られた後、前記フィルタ回路に、前記第1極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と、前記第2極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷とを、残差電圧として入力する、逐次比較型ADコンバータを提供する。
【0010】
本技術に係る逐次比較型ADコンバータにおいて、前記第1極性が、正極性であって、前記第2極性が、負極性であってもよい。
【0011】
本技術に係る逐次比較型ADコンバータにおいて、前記所定の分解能の最下位ビットについて、前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされた後、当該第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとについて前記再配分が完了するまでの間に、前記フィルタ回路が、前記残差電圧のサンプリングを開始してもよい。
【0012】
本技術に係る逐次比較型ADコンバータにおいて、前記フィルタ回路が、前記積分器アンプによって駆動されるようにしてもよい。
【0013】
本技術に係る逐次比較型ADコンバータにおいて、前記フィルタ回路が、オペアンプを含んで構成されるアクティブ型であってもよい。
【0014】
本技術に係る逐次比較型ADコンバータにおいて、前記フィルタ回路が、コンデンサを含み、オペアンプを含まないで構成されるパッシブ型であってもよい。
【0015】
また、本技術では、前記逐次比較型ADコンバータを備える、IoTセンサを提供する。
【0016】
また、本技術では、前記逐次比較型ADコンバータを備える、生体センサを提供する。
【0017】
本技術によれば、逐次比較型ADコンバータ、Iotセンサ、及び生体センサは、ノイズシェーピングの高次化を実現することができる。なお、本技術の効果は、必ずしも上記の効果に限定されるものではなく、本技術に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本技術に係る第1の実施形態の逐次比較型ADコンバータの一例であるCharge Share SAR ADCの構成の例を示すブロック図である。
【
図2】本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADCが、スイッチをオンにするタイミングを示したタイミングチャートである。
【
図3】本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADCのノイズビヘイビアモデルを示した図である。
【
図4】本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADCが、フィルタ回路を有している場合の回路図である。
【
図5】ノイズシェーピングにより、低周波帯域に位置する量子化雑音を高周波帯域に移動させることを示した説明図である。
【
図6】次数が高くなると、ノイズシェーピングの効果が高くなることを示した説明図である。
【
図7】本技術を適用したCharge Share SAR ADCの構成例を示すブロック図である。
【
図8】本技術を適用したCharge Share SAR ADCの構成例を示すブロック図である。
【
図9】本技術を適用したIoTセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図10】本技術を適用した生体センサの構成例を示すブロック図である。
【
図11】従来から知られているCharge Redistribution SAR ADCに、ノイズシェーピングを実行するためのフィルタ回路が追加された回路図である。
【
図12】Charge Redistribution SAR ADCに実装されるフィルタ回路の例である。
【
図13】Charge Redistribution SAR ADCのノイズビヘイビアモデルを示した図である。
【
図14】Charge Share SAR ADCの構成を示した回路図である。
【
図15】Charge Share SAR ADCの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図16】Charge Share SAR ADCのサンプリング時の状態を示した回路図である。
【
図17】Charge Share SAR ADCの全電荷転送の状態を示した回路図である。
【
図18】Charge Share SAR ADCの比較判定&C2リセットの状態を示した回路図である。
【
図19】Charge Share SAR ADCの比較結果フィードバックの状態を示した回路図である。
【
図20】Charge Share SAR ADCの電荷再配分の状態を示した回路図である。
【
図21】Charge Share SAR ADCのノイズビヘイビアモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0020】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本技術の概要
2.第1の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例1)
3.第2の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例2)
4.第3の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例3)
5.第4の実施形態(IoTセンサの例)
6.第5の実施形態(生体センサの例)
【0021】
<1.本技術の概要>
一般的なSAR ADC(Successive Approximation Resister Analog Digital Converter)を、
図11に示す。
図11に示されるSAR ADCは、従来から知られているCharge Redistribution SAR ADCに、ノイズシェーピングを実行するためのフィルタ回路FLT1が追加された回路図である。
【0022】
図11に示されるCharge Redistribution SAR ADC101は、複数のコンデンサCP0~コンデンサCP6(コンデンサCP0、コンデンサCP1、・・・コンデンサCP2、コンデンサCP3、コンデンサCP4、コンデンサCP5、及びコンデンサCP6)と、スイッチSW1~スイッチSW7(スイッチSW1、スイッチSW2、・・・スイッチSW3、スイッチSW4、スイッチSW5、スイッチSW6、及びスイッチSW7)と、フィルタ回路FLT1と、コンパレータCMP1とを備えている。
【0023】
Charge Redistribution SAR ADC101が有する複数のコンデンサCP0~CP6は、容量アレイを構成し、バイナリウエイト(Binary Weight)構成となっている。また、Charge Redistribution SAR ADC101は、完全差動回路で実装されるが、ここでは、説明を簡略化するため、シングルエンドで構成されている。なお、バイナリウエイトとは、公比2の等比数列をなす重み(容量値)の集合である。
【0024】
Charge Redistribution SAR ADC101は、逐次比較変換後の残差電圧をフィルタ回路FLT1に入力することにより、ノイズ伝達関数(NTF)にハイパス特性を持たせることができる。
図11に示されるCharge Redistribution SAR ADC101は、一例として、
図12に示されたフィルタ回路FLT1を実装する。
【0025】
図12(A)に、Charge Redistribution SAR ADC101に実装されるフィルタ回路FLT1を示す。また、
図12(B)に、フィルタ回路FLT1が有するスイッチΦ7~スイッチΦ12(スイッチΦ7a~スイッチΦ12a、及びスイッチΦ7b~スイッチΦ12b)の切り替えタイミングを示す。
【0026】
図12Aに示されるフィルタ回路FLT1は、バッファAbuf、コンデンサC41a、コンデンサC42a、コンデンサC43a、コンデンサC41b、コンデンサC42b、コンデンサC43b、コンデンサC5a、コンデンサC5b、スイッチΦ7~スイッチΦ12(スイッチΦ7a~スイッチΦ12a、及びスイッチΦ7b~スイッチΦ12b)、及び積分器アンプIPFを備えて構成されている。なお、コンデンサC41a及びコンデンサC41bは、略同等の容量となっている。ここで、略同等の容量とは、例えば、同一の容量値を含み、同一の容量値に対して、95%~105%以内にある容量値のことをいう。また、コンデンサC42a及びコンデンサC43aは、コンデンサC41aの略1/3の容量となっている。また、コンデンサC42b及びコンデンサC43bは、コンデンサC41bの略1/3の容量となっている。ここで、略1/3の容量とは、1/3の容量値を含み、1/3の容量値に対して、95%~105%以内にある容量値のことをいう。
【0027】
この場合、フィルタ回路FLT1の伝達関数L(z)は、次式(式(1))で表される。
【0028】
【0029】
また、この場合のCharge Redistribution SAR ADC101のノイズビヘイビアモデルを、
図13に示す。
図13は、Charge Redistribution SAR ADC101のノイズビヘイビアモデルを示した図である。なお、ノイズビヘイビアモデルとは、ノイズの入出力特性を示したものである。
【0030】
Charge Redistribution SAR ADC101のノイズビヘイビアモデルは、減算器SB1、フィルタ回路FLT1、加算器AD1、及びSAR量子化器SQ1を備えている。そして、Charge Redistribution SAR ADC101のノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(2))で表される。
【0031】
【0032】
式(2)に示されたノイズ伝達関数NTF(z)は、1次のハイパス特性を有している。このため、フィルタ回路FLT1の伝達関数L(z)を複雑にすることで、高次のNoise Shapingを実現することができるが、Charge Redistribution SAR ADC101の設計において、占有面積・消費電力・設計難易度等が増加する。
【0033】
ここで、Charge Redistribution SAR ADC101が高いSNDRを得るためには、リファレンス電圧を安定させなければならない。
【0034】
リファレンス電圧を安定させるためには、リファレンス電圧を生成しているバッファアンプを高性能化するか、又は、コンデンサを複数搭載し、電圧変動を抑えることが一般的である。しかしながら、バッファアンプを高性能化すると、又は、コンデンサを複数搭載すると、消費電力の増加や占有面積の増加が生じてしまう。
【0035】
そこで、消費電力の増加や占有面積の増加を回避すべく、Charge Share SAR ADCに関するCharge Share SAR ADC102の回路を用いることを検討する。ここで、シングルエンドで構成されたCharge Share SAR ADC102を、
図14に示す。
図14は、Charge Share SAR ADC102の構成を示した回路図である。なお、
図14では、Charge Share SAR ADCの動作の説明を簡略化するため、Charge Share SAR ADC102が、シングルエンドで構成されている。
【0036】
図14に示されたCharge Share SAR ADC102は、スイッチΦ1x、スイッチΦ1y、スイッチΦ1z、スイッチΦ2、スイッチΦ3、スイッチΦ4、コンデンサC1P、コンデンサC1N、コンデンサC2、コンデンサC3、積分器アンプIP1、及びコンパレータCMP2を備えて構成されている。
【0037】
このCharge Share SAR ADC102の動作について、
図15に示されるフローチャートを用いて説明する。
図15は、Charge Share SAR ADC102の動作を説明するためのフローチャートである。
【0038】
まず、サンプリング時(ステップS001)のCharge Share SAR ADC102の回路の状態を、
図16に示す。
図16では、Charge Share SAR ADC102は、スイッチΦ1x、スイッチΦ1y、スイッチΦ1z、及びスイッチΦ2がオンとなり(閉じており)、電圧Vip、電圧Vrefp、及び電圧Vrefnの電圧がサンプリングされる。
【0039】
この場合、コンデンサC1P、コンデンサC1N、コンデンサC2、及びコンデンサC3の各電荷は、次式(式(3)から式(6))で表される。
【0040】
Q1P=C1P × Vrep ・・・(3)
Q1N=C1N × Vren ・・・(4)
Q2 =C2 × Vip ・・・(5)
Q3 =0 ・・・(6)
【0041】
次に、全電荷転送(ステップS003)の状態を、
図17に示す。
図17では、Charge Share SAR ADC102は、スイッチΦ1x、スイッチΦ1y、スイッチΦ1z、及びスイッチΦ2がオフとなり(開き)、スイッチΦ3及びスイッチΦ4がオンとなっている(閉じている)。これにより、コンデンサC2に蓄えられていた電荷Q2が、コンデンサC3に全電荷転送される。
【0042】
この場合、コンデンサC1P、コンデンサC1N、コンデンサC2、及びコンデンサC3の各電荷は、次式(式(3)、式(4)、式(7)、式(8))のようになる。
【0043】
Q1P=C1P × Vrep ・・・(3)
Q1N=C1N × Vren ・・・(4)
Q2 =0 ・・・(7)
Q3 =C2 × Vip ・・・(8)
∵C2P=C3P
【0044】
次に、比較判定&C2リセット(ステップS005)の状態を、
図18に示す。
図18では、Charge Share SAR ADC102は、スイッチΦ4をオフにして(開いて)、コンパレータCMP2において、電荷Q3の積分値と接地電位とを比較すると同時に、スイッチΦ2及びスイッチΦ3をオンにして(閉じて)、コンデンサC2をリセットする。コンパレータCMP2は、電荷Q3の積分値と接地電位とを比較した結果として、判定結果D又は判定結果DNを出力する。
【0045】
次に、比較結果フィードバック(ステップS007)の状態を、
図19に示す。
図19では、Charge Share SAR ADC102は、コンパレータCMP2において、判定結果Dが出力されたと仮定する。この場合、スイッチDΦ5がオンとなる(閉じる)。
【0046】
電荷再配分(ステップS009)の状態を、
図20に示す。
図20では、Charge Share SAR ADC102は、コンデンサC2において、コンデンサC1Pの電荷Q1PとコンデンサC3の電荷Q3との電荷再配分を行う。
【0047】
この場合、コンデンサC1P、コンデンサC2、及びコンデンサC3の各電荷は、次式(式(9)から式(12))のようになる。
【0048】
Q1P= C1P × Vrefp/2 ・・・(9)
Q2 = C1P × Vrefp/2 ・・・(10)
Q3 = C2 × Vip - C1P × Vrefp/2
・・・(11)
Vo = Q3/C3 = Vip - Vrefp/2・・・(12)
∵C1P=C1N=C2=C3
【0049】
式(9)では、コンデンサC1Pの電荷Q1Pが半分になっており、式(12)の電圧Voでは、Charge Redistribution SAR ADC101と同じ電圧になっている。そのため、
図15のステップ011において、分解能をNビットとした場合、所定のNビットの分解能が得られていなければ(ステップS011のNo)、ステップS005の比較判定&C2リセットに戻り、ステップS005からステップS009を繰り返すことにより、(MSB-1)bit以降の分解能を取得する。
【0050】
このアクティブ型のCharge Share SAR ADC102は、コンデンサC3に前回のSAR ADC変換残差電圧を保持することにより、ノイズ伝達関数は、1次のハイパス特性を有している。コンデンサC3と積分器アンプIP1の伝達関数L(z)は、次式(式(13))で表される。
【0051】
【0052】
また、この場合のCharge Share SAR ADC102のビヘイビアモデルを、
図21に示す。
図21は、Charge Share SAR ADC102のノイズビヘイビアモデルを示したものである。
【0053】
図21に示されたCharge Share SAR ADC102は、減算器SB1、積分器ITG1、加算器AD1、及びSAR量子化器SQ2を備えている。そして、Charge Share SAR ADC102のノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(14))で表される。
【0054】
【0055】
式(14)に示されるように、アクティブ型のCharge Share SAR ADC102では、ノイズシェーピングの次数は、1次にとどまっていた。
【0056】
そこで、本技術によれば、ノイズシェーピングの高次化を図ることができるCharge Share SAR ADCを提供する。これにより、Charge Share SAR ADCは、高いSNDRを実現することができる。
【0057】
<2.第1の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例1)>
本技術に係る第1の実施形態の逐次比較型ADコンバータは、第1極性の第1コンデンサと、第1極性の第2コンデンサと、第1極性の第3コンデンサと、第2極性の第1コンデンサと、第2極性の第2コンデンサと、第2極性の第3コンデンサと、積分器アンプと、コンパレータと、フィルタ回路と、を備えている。
【0058】
本技術に係る第1の実施形態の逐次比較型ADコンバータは、第1極性の第1コンデンサと、第1極性の第2コンデンサと、第1極性の第3コンデンサのそれぞれが、略同一の容量を有し、第2極性の第1コンデンサと、第2極性の第2コンデンサと、第2極性の第3コンデンサのそれぞれが、略同一の容量を有している。第1極性の第1コンデンサ及び第2極性の第1コンデンサのそれぞれに、所定の電荷が蓄積される。
【0059】
第1極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第1電荷を蓄積するとともに、当該第1電荷を第1極性の第3コンデンサに転送する。積分器アンプが、第1極性の第3コンデンサに転送された第1電荷を積分して、第1積分値を生成する。
【0060】
第2極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第2電荷を蓄積するとともに、当該第2電荷を第2極性の第3コンデンサに転送する。積分器アンプが、第2極性の第3コンデンサに転送された第2電荷を積分して、第2積分値を生成する。
【0061】
コンパレータが、第1積分値と第2積分値とを比較する。第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとがリセットされる。第1積分値が第2積分値よりも大きいときは、第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた第1極性の第2コンデンサに再配分するとともに、第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた第2極性の第2コンデンサに再配分する。
【0062】
第1積分値が第2積分値よりも略同等以下であるときは、第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた第1極性の第2のコンデンサに再配分するとともに、第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた第2極性の第2コンデンサに再配分する。
【0063】
所定の分解能のビット数が得られるまで、コンパレータが第1積分値と第2積分値とを比較することと、第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとがリセットされることと、リセットされた、第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとに再配分することと、を繰り返す。
【0064】
所定の分解能のビット数が得られた後、フィルタ回路に、第1極性の第2コンデンサに再配分して第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と、第2極性の第2コンデンサに再配分して第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷とを、残差電圧として入力する、逐次比較型ADコンバータである。
【0065】
本技術に係る第1の実施形態の逐次比較型ADコンバータによれば、ノイズシェーピングの高次化を図ることができる。
【0066】
[逐次比較型ADコンバータの構成]
図1に、本技術に係る第1の実施形態の逐次比較型ADコンバータの一例であるCharge Share SAR ADC100を示す。
図1は、本技術を適用したCharge Share SAR ADC100の構成例を示すブロック図である。なお、上述した構成と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0067】
図1に示されるように、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100は、第1極性の第1コンデンサC1a、第1極性の第2コンデンサC2a、第1極性の第3コンデンサC3a、スイッチΦ1a1、スイッチΦ1a2、スイッチΦ2a、スイッチΦ3a、スイッチΦ4a、スイッチDΦ5a、スイッチDNΦ5a、スイッチΦ6a、スイッチΦRESTa、第2極性の第1コンデンサC1b、第2極性の第2コンデンサC2b、第2極性の第3コンデンサC3b、スイッチΦ1b1、スイッチΦ1b2、スイッチΦ2b、スイッチΦ3b、スイッチΦ4b、スイッチDΦ5b、スイッチDNΦ5b、スイッチΦ6b、スイッチΦRESTb、積分器アンプIP、フィルタ回路FLT、及びコンパレータCMPを備えて構成されている。
【0068】
本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100は、例えば、一例として、第1極性が正極性であって、第2極性が負極性である。また、積分器ITGは、スイッチΦRESTa、第1極性の第3コンデンサ、積分器アンプIP、第2極性の第3コンデンサC3b、スイッチΦRESTbを備えて構成されている。
【0069】
[逐次比較型ADコンバータの動作]
次に、第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100の動作について、上述した
図15のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
まず、Charge Share SAR ADC100は、初期リセット動作を行う。初期リセット動作を行った後、Charge Share SAR ADC100は、全てのスイッチΦをオフにする(開く)。なお、スイッチΦRESTa及びスイッチΦRESTbは、初期リセットの解除によってオフになった後は(開いた後は)、Charge Share SAR ADC100が再びリセットされるまでオフの状態(開いた状態)を継続する。
【0071】
次に、サンプリング時(
図15のステップS001)において、Charge Share SAR ADC100は、スイッチΦ1a1、スイッチΦ1a2、スイッチΦ2a、スイッチΦ1b1、スイッチΦ1b2、及びスイッチΦ2bがオンとなり(閉じて)、電圧Vip、電圧Vrefp、電圧Vrefn、及び電圧Vinの電圧がサンプリングされる。
【0072】
これにより、第1極性の第1コンデンサC1a、第2極性の第1コンデンサC1b、第1極性の第2のコンデンサC2a、第2極性の第2のコンデンサC2bのそれぞれに、所定の電荷が蓄積される。また、第1極性の第2のコンデンサC2aは、入力されるアナログ電圧の第1電荷を蓄積するとともに、第2極性の第2のコンデンサC2bは、入力されるアナログ電圧の第2電荷を蓄積する。
【0073】
この場合、第1極性の第1コンデンサC1a、第2極性の第1コンデンサC1b、第1極性の第2のコンデンサC2a、及び第2極性の第2のコンデンサC2bの各電荷は、次式(式(15)から式(18))のようになる。
【0074】
Q1a=C1a × Vrep ・・・(15)
Q1b=C1b × Vren ・・・(16)
Q2a=C2a × Vip ・・・(17)
Q2b=C2b × Vin ・・・(18)
【0075】
次に、全電荷転送(ステップS003)において、Charge Share SAR ADC100は、スイッチΦ1a1、スイッチΦ1a2、スイッチΦ2a、スイッチΦ1b1、スイッチΦ1b2、及びスイッチΦ2bをオフにする(開く)とともに、スイッチΦ3a、スイッチΦ4a、スイッチΦ3b、及びスイッチΦ4bをオンにする(閉じる)。これにより、第1極性の第2のコンデンサC2aに蓄えられた第1電荷は、第1極性の第3のコンデンサC3aに全電荷転送されるとともに、第2極性の第2のコンデンサC2bに蓄えられた第2電荷は、第2極性の第3のコンデンサC3bに全電荷転送される。
【0076】
この場合、第1極性の第1コンデンサC1a、第1極性の第2のコンデンサC2a、第2極性の第1コンデンサC1b、及び第2極性の第2のコンデンサC2bの各電荷は、次式(式(15)、式(16)、式(19)から式(22))のようになる。
【0077】
Q1a=C1a × Vrep ・・・(15)
Q1b=C1b × Vren ・・・(16)
Q2a=0 ・・・(19)
Q2b=0 ・・・(20)
Q3a=C2a × Vin ・・・(21)
Q3b=C2b × Vin ・・・(22)
∵C1a=C2a=C3a=C1b=C2b=C3b
【0078】
次に、比較判定&C2リセット(ステップS005)において、Charge Share SAR ADC100は、積分器アンプIPにより、第1極性の第3コンデンサC3aに転送された第1電荷を積分して、第1積分値を生成し、第2極性の第3コンデンサC3bに転送された第2電荷を積分して、第2積分値を生成する。そして、コンパレータCMPは、第1積分値と第2積分値とを比較し、比較した結果として判定結果D又は判定結果DNを出力する。また、同時に、第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとがリセットされる。
【0079】
次に、比較結果フィードバック(ステップS007)において、Charge Share SAR ADC100は、コンパレータCMPにより、第1積分値が第2積分値よりも大きいことを示す判定結果Dが出力されたと仮定する。この場合、Charge Share SAR ADC100は、スイッチDΦ5a及びスイッチDΦ5bをオンにする(閉じる)。
【0080】
電荷再配分(ステップS009)において、Charge Share SAR ADC100は、第1極性の第3コンデンサC3aに蓄積された電荷と第1極性の第1コンデンサC1aに蓄積された電荷とを、リセットされた第1極性の第2コンデンサC2aに再配分する。同時に、Charge Share SAR ADC100は、第2極性の第3コンデンサC3bに蓄積された電荷と第2極性の第1コンデンサC1bに蓄積された電荷とを、リセットされた第2極性の第2コンデンサC2bに再配分する。
【0081】
この場合、第1極性の第1コンデンサC1a、第1極性の第2コンデンサC2a、第1極性の第3コンデンサC3a、第2極性の第1コンデンサC1b、第2極性の第2コンデンサC2b、第2極性の第3コンデンサC3bの各電荷は、次式(式(23)から式(30))のようになる。
【0082】
Q1a = C1a × Vrefp/2 ・・・(23)
Q1b = C1b × Vrefn/2 ・・・(24)
Q2a = C1a × Vrefp/2 ・・・(25)
Q2b = C1b × Vrefn/2 ・・・(26)
Q3a = C2a × Vip - C1a × Vrefp/2
・・・(27)
Q3b = C2b × Vin - C1b × Vrefn/2
・・・(28)
Vop = Q3a/C3a = Vip - Vrefp/2
・・・(29)
Von = Q3b/C3b = Vin - Vrefn/2
・・・(30)
∵C1a=C2a=C3a=C1b=C2b=C3b
【0083】
これに対し、比較結果フィードバック(ステップS007)において、Charge Share SAR ADC100は、コンパレータCMPにより、第1積分値が第2積分値よりも略同等以下であることを示す判定結果DNが出力されたと仮定する。この場合、Charge Share SAR ADC100は、スイッチDNΦ5a及びスイッチDNΦ5bをオンにする(閉じる)。
【0084】
電荷再配分(ステップS009)において、Charge Share SAR ADC100は、第1極性の第3コンデンサC3aに蓄積された電荷と第2極性の第1コンデンサC1bに蓄積された電荷とを、リセットされた第1極性の第2コンデンサC2aに再配分する。同時に、Charge Share SAR ADC100は、第2極性の第3コンデンサC3bに蓄積された電荷と第1極性の第1コンデンサC1aに蓄積された電荷とを、リセットされた第2極性の第2コンデンサC2bに再配分する。
【0085】
この場合、第1極性の第1コンデンサC1a、第1極性の第2コンデンサC2a、第1極性の第3コンデンサC3a、第2極性の第1コンデンサC1b、第2極性の第コンデンサC2b、第2極性の第3コンデンサC3bの各電荷は、次式(式(31)から式(38))のようになる。
【0086】
Q1a = C1a × Vrefp/2 ・・・(31)
Q1b = C1b × Vrefn/2 ・・・(32)
Q2a = C1b × Vrefn/2 ・・・(33)
Q2b = C1a × Vrefp/2 ・・・(34)
Q3a = C2a × Vip - C1b × Vrefn/2
・・・(35)
Q3b = C2b × Vin - C1a × Vrefp/2
・・・(36)
Vop = Q3a/C3a = Vip-(Vrefn/2)
・・・(37)
Von = Q3b/C3b = Vin-(Vrefp/2)
・・・(38)
∵C1a=C2a=C3a=C1b=C2b=C3b
【0087】
Charge Share SAR ADC100は、所定の分解能のビット数が得られるまで(ステップS011)、コンパレータCMPが第1積分値と第2積分値とを比較することと(ステップS005のYes)、第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとがリセットされることと(ステップS005)、リセットされた、第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとに再配分することと(ステップS007及びステップS009)、を繰り返す(ステップS013)。
【0088】
Charge Share SAR ADC100は、ステップS005からステップS009を繰り返すことにより、(MSB-1)bit以降の分解能を取得する。
【0089】
そして、Charge Share SAR ADC100は、所定の分解能のビット数が得られた後、フィルタ回路FLTに、第1極性の第2コンデンサC2aに再配分して第1極性の第3コンデンサC3aに蓄積された電荷と、第2極性の第2コンデンサC2bに再配分して第2極性の第3コンデンサC3bに蓄積された電荷とを、残差電圧として入力する。
【0090】
図2は、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100が、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)をオンにする(閉じる)タイミングを示したタイミングチャートである。スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)は、所定の分解能の最下位ビットの判定結果をCharge Share SAR ADC100にフィードバックし、電荷再配分するタイミングの前後でオンになる(閉じられる)。
【0091】
換言すれば、Charge Share SAR ADC100は、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)を、最下位ビットの再配分後の残差電圧をフィルタ回路FLTでサンプリングする際にオンにする(閉じる)。
【0092】
図2では、所定の分解能の最下位ビット(LSB bit)について、コンパレータCMPが、第1積分値と第2積分値とを比較し、第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとがリセットされた後、当該第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとについて再配分が完了するまでの間に、フィルタ回路FLTが、残差電圧のサンプリングを開始することを示している。
【0093】
すなわち、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)は、所定の分解能の最下位ビット(LSB bit)について、スイッチΦ2(スイッチΦ2a及びスイッチΦ2b)及びスイッチΦ3(スイッチΦ3a及びスイッチΦ3b)がオンとなり(閉じて)、第1極性の第2コンデンサC2aと第2極性の第2コンデンサC2bとがリセットされてから、スイッチΦ4(スイッチΦ4a及びスイッチΦ4b)がオフするまでに(開くまでに)、オンになればよい(閉じればよい)。
【0094】
また、積分器アンプIPは、フィルタ回路FLTの入力に対してバッファの役割を果たしているため、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)をオンする(閉じる)タイミングには、自由度がある。そのため、電圧分解能やアンプバッファリング能力を考慮して、セトリングが最短となるように、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)をオンにするタイミング(閉じるタイミング)を最適化することができる。
【0095】
次に、
図1に示すCharge Share SAR ADC100のビヘイビアモデルを、
図3に示す。
図3は、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100のノイズビヘイビアモデルを示した図である。
【0096】
Charge Share SAR ADC100のノイズビヘイビアモデルは、減算器SB、積分器ITG、フィルタ回路FLT、加算器AD、及びSAR量子化器SQを備えている。そして、Charge Share SAR ADC100のノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(39))で表される。
【0097】
【0098】
これにより、Charge Share SAR ADC100は、ノイズシェーピングの次数を高次にすることができる。例えば、積分器ITGの伝達関数L1(z)は、式(13)と同様である。
【0099】
一方、フィルタ回路FLTについては、いくつかの実施形態が想定される。まず、フィルタ回路FLTの回路トポロジとして考えらえるのは、
図12示されたCharge Redistribution SAR ADCに実装されるフィルタ回路FLT1をそのまま適用することである。この場合、Charge Share SAR ADC100は、フィルタ回路FLT1が、オペアンプ(積分器アンプIPF)を含んで構成される、アクティブ型のCharge Share SAR ADCを構成する。
【0100】
図4は、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100が、
図12に示されたフィルタ回路FLT1を有している場合の回路図を示したものである。この場合のフィルタ回路FLT1の伝達関数L
2(z)とノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(40)、式(41))で表される。
【0101】
【0102】
よって、アクティブ型のCharge Share SAR ADC100で使用している積分器ITGをノイズシェーピングに流用することにより、フィルタ回路FLT1内の積分器アンプIPF1つでノイズシェーピングを2次化することができる。
【0103】
図5は、ノイズシェーピングにより、低周波帯域に位置する量子化雑音を高周波帯域に移動させることを示した説明図である。
図5に示されるように、ノイズシェーピングは、周波数帯で一様に分布する量子化雑音とコンパレータ雑音を、低周波帯域で減少させるとともに高周波帯域で上昇させることができる。なお、
図5では、1次のノイズシェーピングを示している。
【0104】
図6は、次数が高くなると、ノイズシェーピングの効果が高くなることを示した説明図である。なお、
図6では、次数を「q」とする。
図6に示されるように、1次で示されたノイズ伝達関数を高次化できると、ノイズを除去する効果を高めることができることを示している。例えば、2次化できた場合には、1次の場合よりも、より多くの雑音成分(ノイズ成分)を高周波帯域に移動させることができるので、Charge Share SAR ADC100の出力に対して、ローパスフィルタを適用することにより雑音成分(ノイズ成分)をカットすることができる。
【0105】
以上説明したように、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100は、積分器ITGをノイズシェーピングに流用することができるので、フィルタ回路FLTが有する積分器アンプIPF1つで、ノイズシェーピングを2次化することができる。
【0106】
これにより、本技術に係る第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100は、高精度に雑音成分(ノイズ成分)を除去することができる。
【0107】
<3.第2の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例2)>
本技術に係る第2の実施形態の逐次比較型ADコンバータは、フィルタ回路が、積分器アンプによって駆動される、逐次比較型ADコンバータである。
【0108】
図7に、本技術に係る第2の実施形態の逐次比較型ADコンバータの一例であるCharge Share SAR ADC100aを示す。
図7は、本技術を適用したCharge Share SAR ADC100aの構成例を示すブロック図である。なお、上述した構成と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。なお、特に断りがない限り、「左」とは、
図7中の左方向を意味し、「上」とは、
図7中の上方向を意味するものとする。
【0109】
図7に示された第2の実施形態のCharge Share SAR ADC100aが、
図1に示された第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100と異なる点は、フィルタ回路FLT2が、バッファAbufと、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)とを有さない点である。
【0110】
第2の実施形態のCharge Share SAR ADC100aは、積分器アンプIPがフィルタ回路FLT2の入力に対してバッファとして機能するため、フィルタ回路FLT2における入力バッファを削除することができる。また、フィルタ回路FLT2内のサンプリング容量(コンデンサC5a、コンデンサC5b)の左側に位置するスイッチΦ7~スイッチΦ12(スイッチΦ7a~スイッチΦ12a、及びスイッチΦ7b~スイッチΦ12b)をサンプリングスイッチとして使うことができるため、スイッチΦ6(スイッチΦ6a及びスイッチΦ6b)を削除することができる。
【0111】
この場合のフィルタ回路FLT2の伝達関数L2(z)とノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(42)、式(43))で表される。
【0112】
【0113】
式(43)に示されるように、ノイズ伝達関数NTF(z)の分子の(1-z-1)2は、維持されている。これにより、本技術に係る第2の実施形態のCharge Share SAR ADC100aは、ノイズシェーピングの次数を高次で維持することができる。
【0114】
<4.第3の実施形態(逐次比較型ADコンバータの例3)>
本技術に係る第3の実施形態の逐次比較型ADコンバータは、フィルタ回路が、コンデンサを含み、オペアンプを含まないで構成されるパッシブ型である、逐次比較型ADコンバータである。
【0115】
図8に、本技術に係る第3の実施形態の逐次比較型ADコンバータの一例であるCharge Share SAR ADC100bを示す。
図8は、本技術を適用したCharge Share SAR ADC100bの構成例を示すブロック図である。なお、上述した構成と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。なお、特に断りがない限り、「左」とは、
図8中の左方向を意味し、「上」とは、
図8中の上方向を意味するものとする。
【0116】
図8に示された第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bが、
図1に示された第1の実施形態のCharge Share SAR ADC100と異なる点は、フィルタ回路FLT3が、コンデンサ(コンデンサCAa、コンデンサCAb、コンデンサCBa、及びコンデンサCBb)を含み、オペアンプを含まないで構成されるパッシブ型である点である。
【0117】
図8Aには、第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bの回路図を示し、
図8Bには、フィルタ回路FLT3の回路図を示し、
図8Cには、フィルタ回路FLT3のタイミングチャートを示す。
【0118】
Charge Share SAR ADC100bのフィルタ回路FLT3は、コンデンサCAa、コンデンサCAb、コンデンサCBa、コンデンサCBb、スイッチΦ13(スイッチΦ13a及びスイッチΦ13b)、スイッチΦ14(スイッチΦ14a及びスイッチΦ14b)を備えて構成されている。
【0119】
ここで、例えば、
図11に示されたCharge Redistribution SAR ADC101のフィルタ回路FLT1をパッシブ型にした場合、容量アレイ(複数のコンデンサCP0~CP6)とフィルタ回路FLT1の容量とにおいて、電荷再配分が起こる。このため、Charge Redistribution SAR ADC101では、SAR ADC変換後の残差電圧が減衰する。
【0120】
これに対し、本技術に係る第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bは、積分器アンプIPがフィルタ回路FLT3の入力に対してバッファとなっているため、SAR ADC変換後の残差電圧が減衰することがない。具体的には、第1極性の第3コンデンサC3a及び第2極性の第3コンデンサC3bと、コンデンサCAa及びコンデンサCAbとにおいて電荷再配分が起らないため、SAR ADC変換後の残差電圧に減衰がない。
【0121】
このため、SNDRは、本技術に係る第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bは、従来のCharge Redistribution SAR ADC101の回路構成よりも有利な値となる。また、第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bは、フィルタ回路FLT3のサンプリングが電荷再配分に依存しないため、コンデンサCAa及びコンデンサCAbを、ノイズの要求仕様が満たす範囲で小さくすることができる。
【0122】
この場合のフィルタ回路FLT3の伝達関数L2(z)とノイズ伝達関数NTF(z)は、次式(式(44)、式(45))で表される。
【0123】
【0124】
このように、第3の実施形態のCharge Share SAR ADC100bは、フィルタ回路FLT3の伝達関数L2(z)が、1次パッシブ型で、ノイズ伝達関数NTF(z)が、2次に近いノイズシェーピング特性を得ることができる。
【0125】
<5.第4の実施形態(IoTセンサの例)>
本技術に係る第4の実施形態のIoT(Internet of Things)センサは、逐次比較型ADコンバータが搭載されて、逐次比較型ADコンバータが、第1極性の第1コンデンサと、第1極性の第2コンデンサと、第1極性の第3コンデンサと、第2極性の第1コンデンサと、第2極性の第2コンデンサと、第2極性の第3コンデンサと、積分器アンプと、コンパレータと、フィルタ回路と、を備える、IoTセンサである。また、本技術に係る第4の実施形態のIoTtセンサは、本技術に係る第1乃至第3の実施形態のいずれか1つの逐次比較型ADコンバータが搭載されたIoTセンサであってもよい。
【0126】
例えば、上述で説明されたCharge Share SAR ADC100を、IoTセンサに適用することができる。
図9に、その一例として、IoTセンサ200の概略構成を示す。
図9は、本技術を適用したIoTセンサの構成例を示すブロック図である。
【0127】
図9に示される第4の実施形態のIoTセンサ200は、センサ素子S1、センサ素子S2・・・センサ素子SN、MUX(Multiplexer)210、PGA AMP(Programmable Gain Amplifier)220、Charge Share SAR ADC100(
図9では、ADC100と表記する。)、信号処理ブロック230、RF240、アンテナ250、LCD Driver260、ディスプレイ270、Power Management280、及び電源290を有している。
【0128】
IoTセンサ200は、多数のセンサ素子(センサ素子S1、センサ素子S2・・・センサ素子SN)を有している。IoTセンサ200は、センサ素子として、例えば、センサ素子S1が加速度センサであり、センサ素子S2がジャイロセンサとして、複数のセンサ素子を備えることができる。また、他のセンサとして、磁気センサ、温度センサ、気圧センサ、感圧センサなどを備えるようにしてもよい。
【0129】
MUX210は、複数のセンサ(センサ素子S1、センサ素子S2・・・センサ素子SN)によって取得したデータ(アナログ信号)の中から選択するマルチプレクサである。
【0130】
PGA AMP220は、ユーザにより必要なゲインを調整できる増幅器である。
【0131】
Charge Share SAR ADC100(
図9のADC100)は、本技術に係る第1の実施形態で説明した逐次比較型ADコンバータである。
【0132】
信号処理ブロック230は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成され、データ(デジタル信号)を処理する信号処理部である。
【0133】
RF(Radio Frequency)240は、高周波で無線通信を行う無線回路である。RF240は、アンテナ250を介して、信号処理ブロック230で処理された信号(デジタル信号)を、図示しない通信端末に送信する。
【0134】
LCD Driver260は、例えば、液晶ディスプレイで構成されるディスプレイ270を駆動するモジュールである。LCD Driver260は、信号処理ブロック230で処理された信号をディスプレイ260に表示させる。
【0135】
Power Management280は、電源290から供給される電力を信号処理ブロック230に供給する。
【0136】
IoTセンサ200は、このような構成を備えることにより、多数のセンサ素子(センサ素子S1、センサ素子S2・・・センサ素子SN)で取得したデータ(アナログ信号)をデジタル信号に変換した後に、所定の信号処理を実行し、図示しない通信端末に送信することができるようになっている。
【0137】
なお、本技術に係る第4の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0138】
<6.第5の実施形態(生体センサの例)>
本技術に係る第5の実施形態の生体センサは、逐次比較型ADコンバータが搭載されて、逐次比較型ADコンバータが、第1極性の第1コンデンサと、第1極性の第2コンデンサと、第1極性の第3コンデンサと、第2極性の第1コンデンサと、第2極性の第2コンデンサと、第2極性の第3コンデンサと、積分器アンプと、コンパレータと、フィルタ回路と、を備える、生体センサである。また、本技術に係る第5の実施形態の生体センサは、本技術に係る第1乃至第3の実施形態のいずれか1つの逐次比較型ADコンバータが搭載された生体センサであってもよい。
【0139】
例えば、上述で説明されたCharge Share SAR ADC100を、生体センサに適用することができる。
図10に、その一例として、生体センサ300の概略構成を示す。
図10は、本技術を適用した生体センサ300の構成例を示すブロック図である。なお、
図9に示されたIoTセンサと同一の構成については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0140】
図10に示された第5の実施形態の生体センサ00が
図9に示された第4の実施形態のIoTセンサ200と異なる点は、PGA AMP220の代わりにAnalog Front-End310を備えており、信号処理ブロック230で信号処理したデータを、Serial I/F330から、図示しない情報処理端末に出力するようになっている点である。
【0141】
Analog Front-End310は、アンプやフィルタを備えて構成されており、センサ素子(センサ素子S1、センサ素子S2・・・センサ素子SN)で検出したデータ(アナログ信号)を調整する機能を有している。
【0142】
生体センサ300では、例えば、センサ素子S1に体温を検知させ、センサ素子S2に心拍数を検知させる。そして、生体センサ300は、検知された体温や心拍数を、Analog Front-End310で調整し、信号処理ブロック230において信号処理を行う。そして、生体センサ300は、信号処理された体温や心拍数を、Serial I/F330を介して、図示しない情報処理端末に出力する。
【0143】
なお、本技術に係る第5の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0144】
また、本技術に係る第1乃至第5の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0145】
また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0146】
また、本技術は、以下のような構成を取ることができる。
(1)第1極性の第1コンデンサと、
第1極性の第2コンデンサと、
第1極性の第3コンデンサと、
第2極性の第1コンデンサと、
第2極性の第2コンデンサと、
第2極性の第3コンデンサと、
積分器アンプと、
コンパレータと、
フィルタ回路と、を備え、
前記第1極性の第1コンデンサと、前記第1極性の第2コンデンサと、前記第1極性の第3コンデンサのそれぞれが、略同一の容量を有し、
前記第2極性の第1コンデンサと、前記第2極性の第2コンデンサと、前記第2極性の第3コンデンサのそれぞれが、略同一の容量を有し、
前記第1極性の第1コンデンサ及び前記第2極性の第1コンデンサのそれぞれに、所定の電荷が蓄積され、
前記第1極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第1電荷を蓄積するとともに、当該第1電荷を前記第1極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第1極性の第3コンデンサに転送された前記第1電荷を積分して、第1積分値を生成し、
前記第2極性の第2コンデンサが、入力されるアナログ電圧の第2電荷を蓄積するとともに、当該第2電荷を前記第2極性の第3コンデンサに転送し、
前記積分器アンプが、前記第2極性の第3コンデンサに転送された前記第2電荷を積分して、第2積分値を生成し、
前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとがリセットされ、
前記第1積分値が前記第2積分値よりも大きいときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2コンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
前記第1積分値が前記第2積分値よりも略同等以下であるときは、
前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第2極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第1極性の第2のコンデンサに再配分するとともに、
前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と前記第1極性の第1コンデンサに蓄積された電荷とを、リセットされた前記第2極性の第2コンデンサに再配分し、
所定の分解能のビット数が得られるまで、前記コンパレータが前記第1積分値と前記第2積分値とを前記比較することと、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされることと、前記リセットされた、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとに前記再配分することと、を繰り返し、
前記所定の分解能のビット数が得られた後、前記フィルタ回路に、前記第1極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第1極性の第3コンデンサに蓄積された電荷と、前記第2極性の第2コンデンサに前記再配分して前記第2極性の第3コンデンサに蓄積された電荷とを、残差電圧として入力する、逐次比較型ADコンバータ。
(2)前記第1極性が、正極性であって、
前記第2極性が、負極性である、前記(1)に記載の逐次比較型ADコンバータ。
(3)前記所定の分解能の最下位ビットについて、前記コンパレータが、前記第1積分値と前記第2積分値とを比較し、前記第1極性の第2コンデンサと前記第2極性の第2コンデンサとが前記リセットされた後、当該第1極性の第2コンデンサと第2極性の第2コンデンサとについて前記再配分が完了するまでの間に、前記フィルタ回路が、前記残差電圧のサンプリングを開始する、前記(1)又は(2)に記載の逐次比較型ADコンバータ。
(4)前記フィルタ回路が、前記積分器アンプによって駆動される、前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の逐次比較型ADコンバータ。
(5)前記フィルタ回路が、オペアンプを含んで構成されるアクティブ型である、前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の逐次比較型ADコンバータ。
(6)前記フィルタ回路が、コンデンサを含み、オペアンプを含まないで構成されるパッシブ型である、前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の逐次比較型ADコンバータ。
(7)前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の逐次比較型ADコンバータを備える、IoTセンサ。
(8)前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の逐次比較型ADコンバータを備える、生体センサ。
【符号の説明】
【0147】
C1a 第1極性の第1コンデンサ
C2a 第1極性の第2コンデンサ
C3a 第1極性の第3コンデンサ
C1b 第2極性の第1コンデンサ
C2b 第2極性の第2コンデンサ
C3b 第2極性の第3コンデンサ
IP、IP1 積分器アンプ
CMP、CMP1 コンパレータ
FLT、FLT1 フィルタ回路
ITG、ITG1 積分器