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▶ ファルマシル・アクチボラグの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】病的炎症の新しい医療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240701BHJP
   A61K 31/606 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240701BHJP
   C07C 237/42 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/606
A61K31/635
A61K31/655
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P43/00 121
C07C237/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021506258
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019071903
(87)【国際公開番号】W WO2020035554
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】18189194.6
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521046918
【氏名又は名称】ファルマシル・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヘドルンド,グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ビェルク,アンデルス
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-517439(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037103(WO,A1)
【文献】日本臨床,1999年,Vol.57, No.11,pp.2476-2480
【文献】J Clin Invest.,1998年,Vol.101, No.5,pp.1163-1174
【文献】Molecular Immunology,2001年,Vol.38,pp.267-277
【文献】British Journal of Cancer,1999年,VOl.81, No.6,pp.981-988
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07C
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患の治療のための医薬組成物であって、前記組成物は、
式(I)
【化1】
[式中、Rは、C1~Cアルキルであり
2、 、R 、R 、およびR が各々水素であり
は、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオおよびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
およびRは、独立に、C1~Cアルキルから選択される]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含み、
メサラジン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジド、5-アミノサリチル酸グリシン、および5-アミノサリチル酸タウリンから選択される5-ASA剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせで使用される、前記組成物。
【請求項2】
は、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、およびハロゲンから選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
は、水素、C1~C3アルキル、およびハロゲンから選択される、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
は、水素およびハロゲンから選択される、請求項3に記載の組成物
【請求項5】
式(I)の化合物が、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(プロパンアミド)ベンズアミド、および
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(イソブタンアミド)ベンズアミド
から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物が、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物が、4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)の化合物が、4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物が、4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎である、請求項1~9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
炎症性腸疾患が、クローン病である、請求項1~9の何れか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病的炎症に起因する疾患の治療における使用のための化合物に関する。より詳細には、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の治療における5-アミノサリチル酸(5-ASA)剤と組み合わせた使用のための4-アルカノイルアミノベンズアミド誘導体に関する。さらに、本発明は、4-アルカノイルアミノベンズアミド誘導体と5-ASA剤との組合せ、ならびにこのような組合せを含む医薬製剤およびキットオブパーツに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願を通して、様々な(非特許)刊行物が、第一著者および刊行年により言及される。これらの刊行物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前の参考文献の項に提示される。本明細書で言及されるこれらの文書および刊行物の開示は、本発明に関連する最先端技術をより完全に記載するために、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
炎症性腸疾患(IBD)
クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)から主になるIBDは、生涯にわたって治療を必要とする、消化管の慢性で、しばしば進行性の状態である。状態の自然史は、疾患活動性の再発による中断を挟んで繰り返される寛解期の自然史である。CDおよびUCは、多くの類似性を有する疾患であるが、局在およびこれらの管理方法についてはしばしば異なる。UCは、直腸において開始し、結腸の近位部に及ぶ粘膜炎症の再発および寛解を特徴とし、組織学的に急性炎症と慢性炎症の両方の存在を特徴とする。UCの診断は、症状と、内視鏡所見と、組織診断との組合せに基づくものである。病態は、遺伝的素因、調節不全免疫応答および環境因子を含む多因子性である。CDは、消化管系のあらゆる部分に関与し得る。CD患者のおよそ60%は結腸障害に罹患している。これらの患者の半分は、結腸に限定される疾患を有する(Mills、2007)。
【0004】
疾患の程度に応じて、UC患者は、1)直腸のみが関与する潰瘍性直腸炎、2)結腸直腸の遠位部から脾彎曲部までが関与する左側UC、および3)結腸の近位部から脾彎曲部までが関与する広範囲UC(全大腸炎を含む)を有すると分類され得る。症状は、炎症の程度および範囲に応じて異なり得る。患者は、疾患の重症度の1つまたは複数の尺度に従って軽度、中程度または重度の疾患活動性を有すると分類される。UCの特徴的な症状は、便意逼迫を伴う血性下痢である。他の症状としては、痙攣性の腹痛、食欲喪失、疲労、体重減少および発熱が挙げられる。伝統的に、CDとUCの両方の最も高い出現率は、北米およびヨーロッパの先進国で見出される。有病率は、100,000人あたり70~500症例と推定され、男女等しく罹患する。人は、15~35歳でUCと診断されることがより多く、より低い第2のピークは55~65歳である。診断時の中位年齢は30歳である。症例の15%において、UCが小児期に診断され、就学年齢まで存在する場合がある。CDおよびUCは、医療制度および社会に対する費用のかなりの部分を占める。
【0005】
UCは、早期発症および治療法の欠如により患者の生活の質にかなりの影響を与える。現在の薬物療法は中程度に有効であり、有害作用が問題である。したがって、新しい治療戦略を確立することにより臨床管理を改善することが急務である。治療目標は、寛解の誘導および維持、ならびに合併症の予防である。徴候および症状が全くないか、またはこれらが非常に軽微である粘膜治癒患者は寛解期にあるとみなされる。全UC患者の最終治療目標は、ステロイドなしでの臨床的および内視鏡的寛解である。炎症の制御の欠如は、症状が制御されていても、不良な長期予後と相関するため、炎症過程に対する影響は必須である。結腸切除および結腸直腸癌のリスクは、医学管理に対して応答できない患者において増加する。UCの腸外徴候としては、原発性硬化性胆管炎、ならびに関節、皮膚および眼の徴候が挙げられる。
【0006】
IBDの治療
治療勧告は、疾患の位置、疾患の重症度および疾患の合併症に依存する。軽度から中程度のUCの一次治療は、5-アミノサリチル酸(5-ASA;メサラジン[CAS No.89-57-6])剤の投与を含む。スルファサラジン(SASP[CAS No.599-79-1])、アゾ結合した5-ASAのプロドラッグは、親5-ASA剤である。SASPは、軽度から中程度の活動性のCDの治療に、小さな利益を付与する(Lim、2016)。5-ASA薬に失敗したか、またはこれに完全に応答しない患者は、コルチコステロイドまたは免疫調節剤(チオプリン)で治療され得る。腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)遮断は、中程度から重度の活動性のUCを有し、従来の治療に失敗したUC患者の治療に適応される。しかし、深刻な副作用はこれらの種類の薬物の使用を制限する。明確には、臨床的および内視鏡的寛解の誘導およびその後の維持に高い有効性および安全性を有する新薬が明らかに必要とされる。
【0007】
UCにおける5-ASA
軽度から中程度のUCの治療法の中心は5-ASA剤である(Hanauer、2004)。UCの管理の成功は、SASPの導入後、大いに促進された(Svartz 1942)。5-ASAは、SASPの治療活性部分に相当すると一般に考えられる(Azad Khan 1977;van Hees 1980)。経口摂取されたSASPは、結腸で5-ASAとスルファピリジン(CAS No.144-83-2)に酵素的に分割されることにより(Peppercorn 1972)、結腸粘膜で局所的に作用する5-ASAを放出する。他のアゾ結合した5-ASA剤としては、オルサラジン(CAS No.15722-48-2)およびバルサラジン(CAS No.80573-04-2)が挙げられる。他の5-ASA誘導系は、例えば、pH依存性遅延放出製剤を使用して、5-ASAを十分な濃度で直接結腸において遊離する(Amidon2015)。経口療法と直腸療法の両方が、寛解の誘導および維持に有効である。最適な投薬は1日1回であり、2400mg/日を超える有意な用量応答効果についてのエビデンスはわずかである。
【0008】
5-ASAとプラセボとを比較した、活動性の軽度から中程度のUC患者の体系的レビューとメタ分析は、5-ASAがプラセボよりも著しく優れていることを示した(Wang 2016a;Wang 2016b)。プラセボ患者の83%と比較して、臨床的寛解に到達できなかった5-ASA患者は71%であった。5-ASAは、治療法の維持についてもプラセボより優れていることが見出された。プラセボ患者の58%と比較して、再発した5-ASA患者は41%であった。5-ASAとSASPとの間で、有効性における統計学的有意差は、寛解の誘導については見出されなかった(Wang 2016a)。しかし、SASPは、寛解の維持については5-ASAより著しく優れていることが見出された(Wang 2016b)
5-ASA作用機構
5-ASA剤により発揮される作用機構は、不明なままであるが、複数の炎症経路に対する5-ASAの阻害効果を説明する中心的な機構は、それによる核内因子カッパB(NFkB)活性化の阻害によるものであり得る(MacDermott、2000)。SASPは、NFkB活性化の強力なインヒビターであり、NFkB依存性転写を抑制でき、阻害性Bα(IkBα)リン酸化およびその後の分解の阻害によってNFkBの核移行を防止できることが示された(Wahl、1998;Zhao、2010)。5-ASAは、TNFαの刺激によるNFkBの活性化、NFkBの核移行およびIkBαの分解を阻害することが実証された(Kaiser、1999)。
【0009】
NFkBの活性化
NFkBは、転写因子(TF)のRelファミリーに属するタンパク質のヘテロ二量体とみなされる。Relファミリーに属するTFの調節の一般的な特徴は、IkBとして公知の、あるクラスの阻害分子との不活性複合体としての細胞質におけるその隔離である。様々な誘導因子、例えば、TNFαでの細胞の処置は、細胞質複合体の解離および遊離NFkBの核への移行をもたらす。哺乳動物細胞におけるIkBタンパク質の2つの主要な生化学的に特徴付けられた形態、IkBαおよびIkBβが存在する。IkBαとIkBβとの間の主な違いは、NFkB活性の様々な誘導因子に対するこれらの応答にある。あるクラスの誘導因子は、主にIkBα複合体に影響を与えることによりNFkBを迅速であるが一時的に活性化させるが、別のクラスの誘導因子は、IkBαとIkBβ複合体の両方に影響を与えることによりNFkBを持続的に活性化させる。したがって、NFkBの活性化全体は、IkBαが媒介する一時的な相とIkBβが媒介する持続的な相の2つの重複する相からなる。刺激後の2つのIkBの異なる挙動は、複数のIkBアイソフォームの存在により示唆される様々な調節の可能性を満たす。2つの主なIkBアイソフォームは同じRelタンパク質と相互作用するが、これらは、異なるシグナル伝達経路により活性化され、おそらく全く異なる生理応答を誘発する。IkBα応答は、一時的なストレス状況に対する即時応答のために用いられるが、IkBβによる持続的な応答は、慢性的な炎症、感染、ストレスまたは分化の状況に利用され得る(Thompson、1995)
4-アミノベンズアミド
メトクロプラミド(CAS No.364-62-5)およびプロカインアミド(CAS No.51-06-9)を含む4-アミノベンズアミドは、いくつかの臨床適用のために開発され、制吐剤、抗不整脈剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤および放射線/化学増感剤としてスクリーニングされてきたか、または用いられてきたあるクラスの化合物を構成する(Stanley、1982;Rang、1995;Pero、1998および1999)。これらの薬物の多様な臨床適用は、同等に多様な作用様式のプロファイルに匹敵する。米国特許第3,177,252号は、嘔吐および行動障害の治療ための4-アミノベンズアミドを開示する。メトクロプラミドは、ドーパミンアンタゴニストのカテゴリーに属する。EP0927030B1は、腫瘍または癌細胞を阻害または死滅させるためのデクロプラミド(CAS No.891-60-1)の使用を包含する。多数の小分子NFkBインヒビターの中で、IBDを含む自己免疫疾患の治療のための潜在的な治療剤として、デクロプラミドが列挙された(Ivanenkov、2011)。組み合わせられた5-ASAとプロカインアミドは、5-ASAの抗大腸炎の有効性を改善する試みにおいて用いられた。組み合わせられた5-ASAとプロカインアミドの直腸投与は、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸誘導性ラット大腸炎モデルにおける付加的な抗大腸炎効果を誘発した(Kim、2016)。組み合わせられた5-ASAとプロカインアミドの直腸投与も、プロカインアミドとアゾ結合した5-ASA(5-ASA-アゾ-PA)の経口投与も、経口SASP単独に対する優位性を示さなかった。
【0010】
潜在的に重度の神経および心血管有害事象の周知のリスクおよび抗核抗体の形成は、長期治療における4-アミノベンズアミドの使用の潜在的な臨床的利益を上回り得る(Harrington、1983;Harron、1990)。
【0011】
4-アルカノイルアミノベンズアミド
米国特許第3,177,252号は、嘔吐および行動障害の治療のための4-アルカノイルアミノベンズアミドを開示する。WO99/63987は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド(N-アセチルデクロプラミド;以降、Cpd A)を開示し、腫瘍または癌細胞を阻害または死滅させるため、および炎症性障害を治療するための潜在的な治療剤としてこれらを使用する。N-アセチルプロカインアミド(アセカイニド、CAS No.32795-44-1)は、心臓不整脈の治療または予防に用いられてきた。
【0012】
4-アミノベンズアミドは、NFkBを阻害することが公知であり、これらの化合物は、アポトーシスを誘導することも見出された(Liberg、1999)。Cpd Aを付与するデクロプラミドのアセチル化は、対応する4-アミノベンズアミドと比較してNFkB阻害を著しく増強するにもかかわらず(Liberg、1999;Lindgren 2001)、アポトーシス誘導を消失させる(Liberg 1999;Lindgren 2003)。4-アミノベンズアミドはIkBα遮断およびNFkBレスキュー経路を阻害し、4-アルカノイルアミノベンズアミド類似体は、IkBβ遮断を阻害し、NFkBレスキュー経路に影響を与えない(Lindgren、2003)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様は、病的炎症に起因する疾患の治療における、5-ASA剤と組み合わせた使用のための、式(I)
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、ハロゲン、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、または
およびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、式(II)
【0016】
【化2】
【0017】
の部分を形成し、
rは、0または1であり、
10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
Qは、CHR11、NR11およびOから選択され、
11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
12およびR13は、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、
QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、
QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0018】
一態様は、
(i)式(I)
【0019】
【化3】
【0020】
[式中、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択され、
は、HおよびC1~C3アルキルから選択され、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、ハロゲン、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されており、
は、水素およびC1~C3アルキルから選択され、
およびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、または
およびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、式(II)
【0021】
【化4】
【0022】
の部分を形成し、
rは、0または1であり、
10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
Qは、CHR11、NR11およびOから選択され、
11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されており、
12およびR13は、独立に、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、
QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、
QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、
(ii)5-ASA剤と
の組合せである。
【0023】
さらなる態様は、本明細書で定義される組合せ、および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。組成物は、病的炎症の治療に、特にIBDの治療に有用である。
【0024】
さらなる態様は、本明細書で定義される組合せを含むキットオブパーツであって、成分(i)および(ii)が各々、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤と混合して製剤化される、前記キットオブパーツである。キットオブパーツは、病的炎症の治療に、特に、IBD治療に有用である。
【0025】
さらにさらなる態様は、病的炎症に起因する疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、本明細書で定義される式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用であって、治療が、5-ASA剤の投与をさらに含む使用である。
【0026】
さらにさらなる態様は、病的炎症に起因する疾患の治療における使用のための薬剤の製造における、本明細書で定義される式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用であって、薬剤が、5-ASA剤をさらに含む使用である。
【0027】
さらにさらなる態様は、病的炎症、例えば、IBDの治療における使用のためのキットオブパーツの製造における、式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の、および5-ASA剤の使用である。
【0028】
さらにさらなる態様は、病的炎症に起因する疾患の治療の方法であって、治療有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、5-ASA剤の哺乳動物への投与と組み合わせて、このような治療を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法である。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例を参照することにより理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本明細書で使用し、かつ別段の記載がないか別段文脈から明らかでない限り、以下の用語は各々、以下に示される定義を有するものとする。
【0031】
用語「Cnアルキル」は、n個の炭素原子を鎖中に含有する直鎖または分岐鎖の飽和ヒドロカルビルラジカル、すなわち、式C2n+1の部分を指す。
用語「Cn~Cmアルキル」は、nとmの両方が整数であり、mがnより大きい、n~m個の範囲の数の炭素原子を鎖中に含有する直鎖または分岐鎖のアルキルラジカルを指す。
【0032】
用語「Cnシクロアルキル」は、式C2n-1の環状ヒドロカルビルラジカルを指す。
用語「Cn~Cmシクロアルキル」は、nとmの両方が整数であり、mがnより大きい、n~m個の範囲の数の炭素原子を環中に含有する環状ヒドロカルビルラジカルを指す。
【0033】
用語「Cn~Cmアルコキシ」は、式
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、RはCn~Cmアルキルである)
の部分を指す。例えば、メトキシは、C1アルコキシである。
用語「Cn~Cmアルキルチオ」は、式
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、RはCn~Cmアルキルである)
の部分を指す。例えば、メチルチオは、C1アルキルチオである。
用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、好ましくはF、ClまたはBrを指す。
【0038】
用語「ヒドロキシ」は、
【0039】
【化7】
【0040】
の部分を指す。
用語「フェニル」は、式
【0041】
【化8】
【0042】
のラジカルを指す。
用語「ベンジル」は、式
【0043】
【化9】
【0044】
のラジカルを指す。
本明細書で使用する「AABZ」は、本明細書に記載される式(I)の化合物を意味する。別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、該用語はまた、その薬学的に許容される塩または溶媒和物(水和物を含む)を含む。
【0045】
本明細書で使用する「約」は、数値または範囲の文脈において、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%を意味する。
本明細書で使用する「アドオン」または「アドオン療法」は、治療法を受ける対象が、1つまたは複数の試薬の第1の治療レジメンを開始した後、第1の治療レジメンに加えて、1つまたは複数の異なる試薬の第2の治療レジメンを開始するので、治療法で用いられる試薬すべてが同時に開始されるわけではないことを意味する。
【0046】
本明細書で使用する「投与」、「投与する」などは、病的状態を軽減または治癒するための、医薬、薬物または治療薬の、対象(例えば、哺乳動物対象、好ましくはヒト)への付与、分配または適用を意味する。経口投与は、インスタント化合物を対象に投与する一つの方法である。
【0047】
本明細書で使用する、ミリグラムで測定される化合物(例えば、AABZ)の「量」または「用量」は、調製物の形態にかかわらず、調製物中に存在する化合物のミリグラムを指す。「5.0mgの化合物の用量」は、調製物の形態にかかわらず、調製物中の化合物の量が5.0mgであることを意味する。したがって、塩の形態、例えば、塩酸塩の形態の場合、5.0mgの用量の遊離塩基化合物を得るのに必要な塩形態の重量は、付加的な酸の存在により5.0mgを上回る。
【0048】
本明細書で使用する用語「5-ASA剤」は、5-アミノサリチル酸部分を含有する化合物を意味する。別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する用語は、化合物の塩または溶媒和物も含む。
【0049】
本明細書で使用する「組合せ」は、同時または別々(例えば、逐次または併用)投与のいずれかによる治療法における使用のための化合物の集合体を意味する。同時投与は、2つの活性成分(例えば、AABZおよび5-ASA剤)の混合物(真の混合物、懸濁液、エマルジョンまたは他の物理的組合せのいずれか)の投与を指す。この場合、組合せは、AABZと5-ASA剤との混合物であってもよく、またはAABZおよび5-ASA剤が、別々の容器で提供され、投与直前に組み合わせられてもよい。別々の投与は、逐次(すなわち、連続)または併用(すなわち、同時に起こる)であり得る。
【0050】
別々の投与は、AABZおよび5-ASA剤を別々の製剤として併用または逐次投与することを指すが、AABZおよび5-ASA剤のいずれか1つの単独での活性と比べて、少なくとも相加的である活性が観察される、同時または十分に近接した時点での投与である。
【0051】
本明細書で使用する「CD」はクローン病を意味する。
本明細書で使用する「Cpd A」は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド(N-アセチルデクロプラミド)ハイドロクロリドを意味する。
【0052】
本明細書で使用する「DSS」は、デキストラン硫酸ナトリウムを意味する。
本明細書で使用する「有効」は、AABZまたは5-ASA剤の量を指す場合、本発明の方式で使用したとき、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激またはアレルギー応答)を伴わず、妥当な利益/リスク比に相応する、所望される治療応答を得るのに十分な量を指す。
【0053】
本明細書で使用する「賦形剤」は、長期安定化、固形製剤に嵩を与えるため、担体および/または希釈剤として作用するため、例えば、吸収を促進するか、粘度を低下させるか、または溶解度を高めることにより最終剤形中の活性成分に対して治療強化を付与するためなどの目的のために含まれる、医薬品の活性成分と一緒に製剤化される物質を指す。賦形剤はまた、粉末流動性を促進するか、または非付着性を提供することにより、製造過程において有用であり得る。賦形剤の例としては、接着防止剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、香味料、流動促進剤、潤滑剤、保存料、吸着剤、甘味料およびビヒクル(担体)がある。
【0054】
本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患」は、炎症性腸疾患、リウマチ性疾患、自己免疫疾患および障害、ならびにさらに炎症が主要な役割を果たすような疾患、例えば、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症および卒中などの疾患を指す。より詳細には、本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患」は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性ループスエリテマトーデス、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症およびI型糖尿病からなる群から選択される疾患および障害、ならびに特に、潰瘍性大腸炎およびクローン病からなる群から選択される疾患を指す。
【0055】
本明細書で使用する「IBD」は炎症性腸疾患を意味する。
本明細書で使用する、対象における疾患の進行または疾患の合併症の「阻害」は、対象における疾患の進行および/または疾患の合併症の予防または低減を意味する。
【0056】
本明細書で使用する「NFkB」は、核内因子カッパBを意味する。
本明細書で使用する「IkB」はカッパBのインヒビターを意味する。
本明細書で使用する「薬学的に許容される」は、ヒトおよび/または動物による使用に好適であり、一般に、通常の使用で安全および非毒性である、すなわち、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激およびアレルギー応答)を伴わず、妥当な利益/リスク比に相応するものを指す。
【0057】
本明細書で使用する「SASP」は、スルファサラジンを意味する。
本明細書で使用する「その塩」は、化合物の酸または塩基塩を製造することにより修飾されたインスタント化合物の塩である。この点で、用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性、無機および有機の酸または塩基付加塩を指す。例えば、このような塩を調製する1つの手段は、本発明の化合物を無機酸で処理することによるものである。
【0058】
本明細書で使用する「溶媒和物」は、化合物(例えば、式(I)の化合物)と1つまたは複数の溶媒分子との、例えば、水素結合による物理的会合を意味する。「溶媒和物」は、溶液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。例示的な溶媒和物としては、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物およびイソプロパノール溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒和の方法は、一般に当業者に公知である。
【0059】
本明細書で使用する「病的炎症に起因する疾患に罹患している対象」は、このような疾患を有すると臨床的に診断された対象を意味する。
本明細書で使用する、病的炎症に起因する疾患に関連する「症状」は、疾患に関連する任意の臨床的または実験的徴候を含み、対象が、感知または観察できるものに限定されない。
【0060】
本明細書で使用する「TF」は、転写因子を意味する。
本明細書で使用する「TNF」は、腫瘍壊死因子を意味する。
本明細書で使用する「TNF-α」は、腫瘍壊死因子アルファを意味する。
【0061】
本明細書で使用する「治療する」は、例えば、疾患もしくは障害、例えば、IBDの阻害、退行もしくは停滞を誘導すること、あるいは疾患もしくは障害の症状を軽減すること、減少させること、抑制すること、阻害すること、その重症度を低下させること、または排除もしくは実質的に排除すること、または改善することを包含する。
【0062】
本明細書で使用する「UC」は、潰瘍性大腸炎を意味する。
UCおよびCDを含むIBDは、決定的な治療法がない、慢性で再発寛解型の状態である。現在の薬物療法は、臨床的および内視鏡的寛解の誘導および維持に中程度に有効であり、有害作用が問題である。したがって、IBD患者がすべて、現在利用できる疾患修飾薬に十分に応答するわけではない。
【0063】
本発明の重要な目的は、疾患経過を変化させることを最終目的として、病的炎症に起因する疾患、例えば、IBDの新しい薬物療法および治療の方法を提供することである。任意の理論に拘束されることは望まないが、本発明者らは、例えば、このような疾患のより有効な治療は、NFkBの阻害だけでなく、組み合わされるとNFkB活性に対する二重作用を発揮できるNFkBインヒビターの使用を含むという結論を出した。NFkBインヒビターを組み合わせ、これらが一緒になって、IkBタンパク質の2つの主な形態、すなわち、IkBαおよびIkBβの分解を同時に阻害することによって、5-ASA単独での既存の治療法より優れた治療が達成できる。本発明者らは、意外にも、かつ驚くべきことに、式(I)の化合物と本明細書で上に定義される最小有効量を上回る5-ASA剤とを組み合わせることが、好ましい安全性プロファイルと共に相乗的に増強された治療効果をもたらすことを見出した。
【0064】
したがって、1つのさらなる態様は、NFkB活性に関連する(例えば、これにより媒介される)、障害(病的炎症に起因する疾患、例えば、IBD)の治療における、5-ASA剤と組み合わせた使用のためのAABZである。さらなる態様は、NFkB活性に関連する(例えば、これにより媒介される)障害(病的炎症に起因する疾患、例えば、IBD)の治療のための、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞におけるNFkB活性を阻害するための5-ASA剤と組み合わせた使用のためのAABZである。さらなる態様は、細胞におけるNFkB活性に関連する(例えば、これにより媒介される)障害(病的炎症に起因する疾患、例えば、IBD)の治療のための、細胞におけるIkBαおよびIkBβの分解を阻害するための5-ASA剤と組み合わせた使用のためのAABZである。さらなる態様は、NFkB活性に関連する(例えば、これにより媒介される)障害(病的炎症に起因する疾患、例えば、IBD)の治療の方法であって、治療有効量のAABZを治療有効量の5-ASA剤と組み合わせて、このような治療を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法である。
【0065】
式(I)の化合物
本明細書で定義される式(I)の化合物において、Rは、C1~C6アルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、C1~C5アルキルおよびC3~C5シクロアルキル、例えば、C1~C4アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、またはC1~C3アルキルおよびC3シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルから、例えば、C1~C5アルキルから、またはC1~C4アルキルから、またはC1~C3アルキルから、またはC1~C2アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、neo-ペンチルおよびシクロペンチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチルおよびneo-ペンチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチルおよびシクロブチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチルおよびneo-ペンチルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルから、またはメチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、メチル、エチル、およびiso-プロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態において、Rは、メチルである。いくつかの実施形態において、Rは、エチルである。いくつかの実施形態において、Rは、iso-プロピルである。
【0066】
部分は、水素およびC1~C3アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、水素、メチルおよびエチルから、または水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素である。
【0067】
、R、RおよびR部分は、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、ハロゲン、フェニルおよびベンジルから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。
【0068】
いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、およびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、およびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシおよびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルキル、およびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルコキシ、およびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらに他の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルキルチオ、およびハロゲンから選択され、任意のアルキルは、1つまたは複数のフルオロで任意選択で置換されている。さらにさらなる実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、およびハロゲンから選択される。
【0069】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルキルから選択される場合、これは、例えば、メチルおよびエチルから選択され得、特に、これはメチルであり得る。
【0070】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルコキシから選択される場合、これは、例えば、メトキシおよびエトキシから選択され得、特に、これはメトキシであり得る。
【0071】
、R、RおよびRのいずれか1つが、C1~C3アルキルチオから選択される場合、これは、例えば、メチルチオおよびエチルチオから選択され得、特に、これはメチルチオであり得る。
【0072】
、R、RおよびRのいずれか1つが、ハロゲンから選択される場合、前記ハロゲンは、例えば、フルオロ、クロロおよびブロモから選択され得、特に、前記ハロゲンは、クロロまたはブロモ、例えば、クロロであり得る。いくつかのさらなる実施形態において、R、R、RおよびRのいずれか1つが、ハロゲンから選択される場合、前記ハロゲンはより詳細には、フルオロおよびクロロから選択される。
【0073】
いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、フェニルおよびベンジルから、例えば、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、または、水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、例えば、水素、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびトリフルオロメチルから、または水素、メチル、メトキシ、クロロおよびトリフルオロメチルから、または水素、メチル、メトキシおよびクロロから、または、水素、メトキシおよびクロロから、または水素、メチルおよびクロロから、例えば、水素およびクロロから選択される。
【0074】
上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの2つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの3つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRは各々水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、水素とは異なる。上記実施形態のいくつかにおいて、R、R、RおよびRのうちの1つは、水素とは異なり、他の3つは水素であり、例えば、R、R、RおよびRのうちの1つ(例えば、R)は、ハロゲン、例えば、クロロであり、他の3つは水素である。上記実施形態のいくつかにおいて、Rは水素とは異なり、R、RおよびRは各々水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素とは異なり、R、RおよびRは各々水素である。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRのうちの1つ(例えば、R)は、フルオロ、クロロまたはブロモ、特にクロロであり、他の3つは水素である。いくつかの実施形態において、Rは水素またはハロゲン、水素およびクロロであり、R、RおよびRは水素である。いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。
【0075】
いくつかの実施形態において、RおよびRは水素であり、例えば、RおよびRは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素とは異なり、例えば、RとRの両方が、水素とは異なる。上記実施形態のいくつかにおいて、RおよびRは、メトキシまたはエトキシではない。
【0076】
部分は、水素およびC1~C3アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチル、エチル、プロピルおよびiso-プロピルから、例えば、水素、メチル、エチルおよびプロピルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素、メチルおよびエチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、水素である。
【0077】
およびR部分は、独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、またはRおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成する。いくつかの実施形態において、RおよびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択される。RおよびRがC1~C6アルキルから選択される場合、RおよびRは、例えば、C1~C5アルキルから、またはC1~C4アルキルから、またはC1~C3アルキルから、例えば、メチルおよびエチルから選択され得る。いくつかの実施形態において、RおよびRがC1~C6アルキルから選択される場合、RとRの両方がエチルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成し、この場合、式(I)の化合物は、式(Ia)
【0078】
【化10】
【0079】
(式中、R~R、R10、Q、pおよびrは、本明細書で定義される通りである)
で表され得る。
式(II)の部分において、rは0または1である。いくつかの実施形態において、rは0である。いくつかの実施形態において、rは1である。
【0080】
10部分は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R10は、メチル、エチルおよびシクロプロピルから選択され、前記メチル、エチルおよびシクロプロピルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R10は、ヒドロキシ、ハロゲンおよびシアノで、例えば、ハロゲン、例えば、フルオロで任意選択で置換されているC1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R10は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキル、例えば、メチル、エチルおよびシクロプロピル、例えば、メチルから選択される。
【0081】
Q部分は、CHR11、NR11およびOから選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11およびNR11から選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11およびOから選択される。いくつかの実施形態において、Qは、CHR11である。いくつかの他の実施形態において、Qは、NR11およびOから選択される。
【0082】
11部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、メチル、エチルおよびシクロプロピルから選択され、前記メチル、エチルおよびシクロプロピルは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択され、前記アルキルおよびシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロゲンまたはシアノ、例えば、ハロゲン、例えば、フルオロで任意選択で置換されている。いくつかの実施形態において、R11は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、水素、メチル、エチルおよびシクロプロピル、または水素、メチルおよびエチルから、特に、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R11は、水素である。いくつかの他の実施形態において、R11は、本明細書で上に定義される通りであるが、水素とは異なる。
【0083】
11が、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、COOR12またはNHR13で置換されているC1~C3アルキルまたはC3~C4シクロアルキルである場合、このような置換基の数は、1つまたは複数、例えば、1~3または1~2または1であり得る。
【0084】
12部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、または水素、メチルおよびエチルから、例えば、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R12は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、またはメチルおよびエチルから選択され、例えば、R12は、メチルである。いくつかの他の実施形態において、R12は、水素である。
【0085】
13部分は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、または水素、メチルおよびエチルから、例えば、水素およびメチルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、水素、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R13は、C1~C3アルキルおよびC3~C4シクロアルキルから、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピルおよびシクロプロピルから、メチル、エチル、n-プロピルおよびiso-プロピルから、またはメチルおよびエチルから選択され、例えば、R13は、メチルである。いくつかの他の実施形態において、R13は、水素である。
【0086】
式(II)の部分において、QがCHR11である場合、pは1、2または3であり、QがNR11およびOから選択される場合、pは2または3である。いくつかの実施形態において、pは2または3である。いくつかの実施形態において、pは2である。いくつかの実施形態において、QはCHR11であり、pは1または2である。いくつかの実施形態において、QはCHR11であり、pは2である。いくつかの他の実施形態において、QはCHR11であり、pは1である。
【0087】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RおよびRは独立に、C1~C6アルキルから選択されるか、またはRおよびRは、これらの両方が結合している窒素原子と一緒になって、本明細書で定義される式(II)の部分を形成し、R10はC1~C3アルキルであり、QはCHR11であり、R11は水素およびC1~C3アルキルから選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、Rは、C1~C6アルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RおよびRは、独立に、C1~C6アルキルから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、R、RおよびRは、独立に、C1~C3アルキルから選択される。
【0089】
いくつかのさらなる実施形態において、Rは、C1~C3アルキルであり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、独立に、C1~C3アルキルから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0090】
いくつかのさらなる実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、R、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、Rは、水素およびメチルから選択され、R、R、RおよびRは独立に水素およびクロロから選択され、Rは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0092】
いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素またはメチルであり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。いくつかのさらなる実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素またはメチルであり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、エチルである。いくつかの他の実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素であり、Rは、クロロまたは水素であり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0093】
いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチルおよびiso-プロピルから選択され、Rは、水素であり、Rは、クロロであり、R、R、RおよびRは水素であり、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、メチル、エチルおよびn-プロピルから選択される。
【0094】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブタンアミノ-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(プロパンアミド)ベンズアミド、および
N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(イソブタンアミド)ベンズアミド
から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、
4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド、および
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド
から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(プロパンアミド)ベンズアミドである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-4-(イソブタンアミド)ベンズアミドである。
【0097】
いくつかの実施形態において、AABZは、式(I)の化合物の塩酸塩、例えば、上に列挙された式(I)の化合物のいずれかの塩酸塩であり、例えば、AABZは、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩である。
【0098】
本明細書で言及されるいくつかの化合物の構造式を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
式(I)の化合物の調製方法
式(I)の化合物は、例えば、米国特許出願公開第2011/0027179号およびWO2005/025498に開示される一般的な手順に従って当業者により容易に調製され得る。例えば、式(I)の化合物は、以下の反応スキーム
【0101】
【化11】
【0102】
により表される2つの連続的な求核置換反応を含む方法により調製され得る。
上記の反応スキームにおいて、Rが、例えば、C1~C3アルキルである化合物1を、Lが好適な脱離基、例えば、Clである化合物2と反応させて、化合物3を得る。その後、化合物3を、反応のための触媒として塩化アンモニウムの存在下で第2のアミン4と反応させて、本明細書で定義される式(I)の化合物を得る。式(I)の化合物は、任意選択で、好適な薬学的に許容される塩または溶媒和物、例えば、ハロゲン化水素塩に変換され得る。
【0103】
5-ASA剤
本発明の5-ASA剤の例としては、メサラジン、スルファサラジン、オルサラジンまたはバルサラジド(これは、バルサラジンとも称され得る)、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの5-ASA剤の構造式を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、メサラジン、スルファサラジン、オルサラジンもしくはバルサラジド、またはこれらの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。しかし、本発明がこれらの化合物に限定されないことに注意されるべきである。むしろ、5-ASAの任意のプロドラッグ、あるいは5-ASAまたはその塩もしくは溶媒和物をインビボで放出できる製剤は、本発明に従って有用であると想定される。
【0106】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、メサラジン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、スルファサラジン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、オルサラジン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、バルサラジド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0107】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、結腸送達を達成するように設計された5-ASAの結腸特異的プロドラッグである。このようなプロドラッグは、5-ASAのカルボキシルまたはヒドロキシ官能基を介して5-ASAに結合した担体部分を含む。5-ASAの結腸特異的プロドラッグとしては、エステルおよびアミドが報告されており(Amidon、2015)、任意のこのようなプロドラッグは、本明細書において有用であると想定される。
【0108】
特に、Amidonら(2015)731頁は、結腸特異的薬物送達の基準を記載する。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、結腸特異的送達のこのような基準を満たす結腸特異的プロドラッグである。
【0109】
本明細書において有用な5-ASAのプロドラッグのさらなる例、例えば、5-アミノサリチル酸グリシンおよび5-アミノサリチル酸タウリンは、例えば、米国特許第7,157,444号およびJung(1988)およびJung(2003)に開示される。
【0110】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、5-ASAまたはその塩もしくは溶媒和物を放出できるか、または5-ASAのプロドラッグをインビボ、例えば、結腸で放出できる製剤である。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、5-ASAまたはその塩、例えば、塩酸塩を結腸で遅延放出できる製剤である。
【0111】
薬学的に許容される塩
AABZは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩として提供され得る。同様に、5-ASA剤は、薬学的に許容される塩、例えば、塩基付加塩として提供され得る。酸または塩基付加塩の調製において、好ましくは、好適な治療上許容される塩を形成するこのような酸または塩基が用いられる。このような酸の例としては、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、脂肪族、脂環式、芳香族または複素乾式のカルボン酸またはスルホン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸がある。塩基付加塩としては、無機塩基、例えば、アンモニウムまたはアルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など、ならびに有機塩基、例えば、アルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリールアミンから誘導されるものなどが挙げられる。本発明の塩の調製に有用な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0112】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、塩酸塩として提供される。いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、強塩基の塩、例えば、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩として提供される。
【0113】
本明細書で使用する塩製剤に関する当該教示、およびその調製方法は、例えば、米国特許第3,177,252号に記載されており、このような教示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0114】
薬学的に許容される溶媒和物
任意の薬学的に許容される溶媒和物は、本発明に従って可能であると想定される。例示的な溶媒和物としては、水和物、エタノール溶媒和物、メタノール溶媒和物およびイソプロパノール溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、溶媒和物は水和物である。
【0115】
AABZと5-ASA剤とを組み合わせた使用
一態様は、病的炎症に起因する疾患の治療における、5-ASA剤と組み合わせた使用のための、本明細書で定義される式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(AABZ)である。
【0116】
いくつかの実施形態において、治療は、ある量のAABZ、および最小有効量を上回る5-ASA剤を対象(哺乳動物患者、例えば、ヒト患者)に投与するステップを含み、該量は一緒に接種された場合、対象を治療するのに有効である。いくつかの実施形態において、AABZと5-ASA剤との総量は、対象を治療するために一緒に投与された場合、同じ総量でいずれかの成分が単独で投与された場合に得られる効果の単純和より良好な全体的効果、すなわち、相乗効果をもたらす。
【0117】
いくつかの実施形態において、治療は、病的炎症であるIBD(例えば、UCまたはCD)に罹患している対象の治療において、アドオン療法として、または5-ASA剤と組み合わせてAABZを対象(哺乳動物患者、例えば、ヒト患者)に投与するステップを含む。好ましくは、治療は、軽度から中程度、重度までの疾患活動性を有する患者における臨床的および内視鏡的寛解の誘導および維持をもたらす。いくつかの実施形態において、治療は寛解期の患者を対象とし、疾患の再発を予防する。
【0118】
いくつかの実施形態において、AABZは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、特に塩酸塩である。
いくつかの実施形態において、AABZは、経口投与により投与される。いくつかの実施形態において、AABZは、好ましくは固体単位製剤で投与され、これはより好ましくは錠剤である。
【0119】
いくつかの実施形態において、投与されるAABZの量は、1日0.1~25mg/kg(対象の体重1kgあたりの薬物のmg)である(任意の重量値は、非塩、非溶媒和形態に基づく)。他の実施形態において、AABZの投与量は、1日0.3~10mg/kgである。
【0120】
いくつかの実施形態において、投与されるAABZの量は、5.0~2000mg/日または10~1000mg/日である。
いくつかの実施形態において、AABZは、毎日、例えば、1日1回投与される。他の実施形態において、AABZは、1日2回投与される。他の実施形態において、AABZは、1日3回投与される。さらに他の実施形態において、AABZは、1日4回投与される。
【0121】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、経口投与により投与される。さらに他の実施形態において、5-ASA剤は、直腸投与により投与される。
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、毎日投与される。いくつかの実施形態において、投与される5-ASA剤の量は、250mg/日~8000mg/日である(任意の重量値は、非塩、非溶媒和形態に基づく)。いくつかの実施形態において、投与される5-ASA剤の量は、8000mg/日未満である。他の実施形態において、投与される5-ASA剤の量は、6750mg/日未満である。他の実施形態において、投与される5-ASA剤の量は、4000mg/日未満である。他の実施形態において、投与される5-ASA剤の量は、2000mg/日未満である。
【0122】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤は、1日1回投与される。他の実施形態において、5-ASA剤は、1日2回投与される。他の実施形態において、5-ASA剤は、1日3回投与される。さらに他の実施形態において、5-ASA剤は、1日4回投与される。
【0123】
AABZの量および5-ASA剤の量は、一緒に摂取された場合、好ましくは対象の病的炎症、例えば、IBDの症状を緩和するのに有効である。症状は、炎症の重症度に応じて異なり、軽度から重度の範囲であり得る。CDとUCの両方に共通する徴候および症状としては、下痢および切迫感、発熱および疲労、腹痛および痙攣、便中の血液ならびに食欲減退が挙げられる。自己免疫疾患の症状は疾患によって異なる。
【0124】
いくつかの実施形態において、5-ASA剤の投与は、実質的にAABZの投与に先行する。すなわち、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、5-ASA剤の投与による治療法を受ける。
【0125】
いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、5-ASA剤の投与による治療法を少なくとも6カ月間受ける。いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、5-ASA剤の投与による治療法を少なくとも12カ月間受ける。いくつかの実施形態において、対象は、AABZの投与による治療法を開始する前に、5-ASA剤の投与による治療法を少なくとも24カ月間受ける。
【0126】
いくつかの実施形態において、治療は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、細胞毒性薬、免疫抑制薬および抗体から選択される、少なくとも1つのさらなる薬物の投与を含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、AABZおよび5-ASA剤の投与は、少なくとも2週間継続する。他の実施形態において、AABZおよび5-ASA剤の投与は3カ月以上継続する。さらに他の実施形態において、AABZおよび5-ASA剤の投与は、12カ月以上継続する。
【0128】
いくつかの実施形態において、AABZおよび5-ASA剤は、1:100~100:1、例えば、1:50~50:1、1:20~20:1、1:10~10:1、1:5~5:1または1:2~2:1の範囲、例えば、約1:1の範囲のAABZ対5-ASAのモル比で、互いに組み合わせて(同時または別々および併用または逐次)投与される。
【0129】
いくつかの実施形態において、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、およびスルファサラジン、またはその薬学的に許容される塩、例えば、ナトリウム塩は、互いに組み合わせて投与される。
【0130】
AABZは、意図される投与形態に関して、かつ従来の薬務と一致するように好適に選択される、好適な医薬希釈剤、増量剤もしくは担体、または任意の他の薬学的に許容される賦形剤と混合して投与され得る。好ましい投与量単位は、経口投与に好適な形態である。AABZは、単独で投与できるが、一般に薬学的に許容される担体と混合され、錠剤またはカプセル、リポソームの形態で、または凝集粉として共投与される。好適な固体担体の例としては、ラクトース、スクロース、ゼラチンおよび寒天が挙げられる。カプセルまたは錠剤は容易に製剤化され得、嚥下または咀嚼しやすいものであり得る。他の固体形態としては、顆粒および原末が挙げられる。
【0131】
錠剤は、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、流動誘導剤および融解剤を含有し得る。例えば、錠剤またはカプセルの投与量単位形態での経口投与のために、活性薬物成分は、経口で非毒性の薬学的に許容される不活性な担体、例えば、ラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、微結晶セルロースなどと組み合わせられ得る。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコースもしくはβ-ラクトース、コーンスターチ、天然および合成ガム、例えば、アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形で用いられる潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
さらなる態様は、病的炎症、例えば、IBDに罹患している対象の治療における、アドオン療法として、または5-ASA剤と組み合わせた使用のためのAABZである。
さらなる態様は、対象に5-ASA剤およびAABZを投与することによる、病的炎症、例えば、IBDに罹患している対象の治療における使用のための5-ASA剤である。
【0133】
治療される対象
本発明に従って治療される対象は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(動物)を含む哺乳動物である。非ヒト哺乳動物の例としては、霊長類、家畜動物、例えば、農場動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど、ならびに愛玩動物、例えば、イヌおよびネコなどがある。好ましい実施形態において、対象はヒトである。いくつかの他の実施形態において、対象は、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌまたはウマである。
【0134】
疾患
本発明により治療される疾患は、本明細書で定義される病的炎症に起因する疾患である。いくつかの実施形態において、疾患は、IBDである。いくつかの実施形態において、疾患はUCである。いくつかの実施形態において、疾患はCDである。本明細書で上に言及されるように、CDは、消化管の任意の部分に影響を与え得る。いくつかの実施形態において、CDは結腸に影響を与える。
【0135】
キットオブパーツ
一態様は、AABZと5-ASA剤との組合せを含むキットオブパーツであり、成分AABZおよび5-ASA剤は各々、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体と混合して製剤化される。いくつかの実施形態において、a)ある量のAABZおよび薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物、b)ある量の5-ASA剤および薬学的に許容される担体を含む第2の医薬組成物、ならびにc)第1の医薬組成物と第2の医薬組成物との一緒の使用について、例えば、IBDの治療における使用についての説明書を含む、キットオブパーツが提供される。
【0136】
医薬組成物
一態様は、ある量のAABZ、ある量の5-ASA剤、および任意選択で(しかし好ましくは)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、IBDに罹患している対象の治療における使用のためのものである。
【0137】
一般に、好適な医薬組成物は、AABZの医薬製剤に関連する本明細書で上に記載されるものであるが、組成物は、AABZに加えて、5-ASA剤も含有する。
いくつかの実施形態において、AABZは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩である。
【0138】
いくつかの実施形態において、組成物中のAABZの量は、5~500mgである(任意の量は、非塩の形態および非溶媒和形態の式(I)の化合物に基づく)。他の実施形態において、AABZの量は、10~100mgである。他の実施形態において、AABZの量は、5~25mgである。一実施形態において、組成物中のAABZの量は、500mgである。他の実施形態において、AABZの量は、25mgである。他の実施形態において、AABZの量は、100mgである。他の実施形態において、AABZの量は、10mgである。他の実施形態において、AABZの量は、10mg未満である。
【0139】
いくつかの実施形態において、組成物中の5-ASA剤の量は、225~1200mgである(任意の量は、非塩の形態および非溶媒和形態の式(I)の化合物に基づく)。他の実施形態において、5-ASA剤の量は、500~1000mgである。他の実施形態において、5-ASA剤の量は、225~450mgである。一実施形態において、組成物中の5-ASA剤の量は、750mgである。
【0140】
いくつかの実施形態において、医薬組成物中のAABZ対5-ASAのモル比は、1:100~100:1、例えば、1:50~50:1、1:20~20:1、1:10~10:1、1:5~5:1または1:2~2:1の範囲であり、例えば、これは約1:1であり得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、AABZおよび5-ASA剤の総量は、製剤の0.1~95重量%、例えば、0.5~50重量%、または1~20重量%であり、残りは、例えば、担体および任意の他の賦形剤を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、およびスルファサラジン、またはその薬学的に許容される塩、例えば、ナトリウム塩を含む。
【0143】
本発明の経口剤形を製剤化するために用いられ得る、技術、薬学的に許容される担体および賦形剤の具体例は、例えば、EP1720531B1に記載される。本発明において有用な剤形を製造するための一般的な技術および組成は、以下の参考文献に記載される:Modern Pharmaceutics、9および10章(Banker & Rhodes編、1979);Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Liebermanら、1981);Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms第2版(1976);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985)(および改訂版);Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton、Trevor Jones編、1992);Advances in Pharmaceutical Sciences第7巻(David Ganderton、Trevor Jones、James McGinity編、1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms (Drugs and the Pharmaceutical Sciences、 シリーズ36(James McGinity編、1989);Pharmaceutical Particulate Carriers:Therapeutic Applications:Drugs and the Pharmaceutical Sciences第61巻(Alain Rolland編、1993);Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract(Ellis Horwood Books in the Biological Sciences. Series in Pharmaceutical Technology;J.G. Hardy、S.S. Davis、Clive G.Wilson編);およびModern Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences第40巻(Gilbert S. Banker、Christopher T. Rhodes編)。これらの参考文献は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0144】
以下の実施例は、その範囲を制限することなく、本発明を例示することが意図される。
【実施例
【0145】
中間体1
エチル-4-アセトアミド-3-クロロベンゾエート
エチル-4-アミノ-3-クロロベンゾエート(2.0g、10mmol)および1.4gのトリエチルアミンを20mLのジクロロメタンに溶解した。5mLのジクロロメタン中0.9gの塩化アセチルを0℃で滴下で添加した。反応混合物を室温に到達させ、3時間撹拌し、水で洗浄し、乾燥した。溶媒を蒸発させて、2.0gの表題生成物を得た。
【0146】
実施例1
4-アセトアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
1.5gのエチル-4-アセトアミド-3-クロロベンゾエート(1.5g、6.2mmol)を、触媒量の塩化アンモニウムと共に、15mLのN’,N’-ジエチルエタン-1,2-ジアミンに溶解した。反応混合物を3時間還流した。ジクロロメタンを添加し、水で4回洗浄して、過剰なジアミンを除去した。溶媒の乾燥および蒸発により、表題化合物の遊離塩基を得た。残渣をエタノール-エーテルに溶解し、エタノールHClで酸性化した。沈殿した固体を回収し、表題化合物(1.1g、3.1mmol、収率50%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6): δ1,23 (t, 6H), 2,15 (s, 3H), 3,17-3,23 (6H), 3,65 (q, 2H), 7,88 (d, 1H), 7,94 (s, 1H), 8,06 (s, 1H), 9,05 (t, 1H), 9,68 (s, 1H), 10,42 (s, 1H).
実施例2
4-プロパンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
4-アミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩(0.5g、1.6mmol)、ピリジン(5.0mL)および無水プロピオン酸(5.0mL)を50℃で2.5時間撹拌した。次いで、揮発物を、ロータリーエバポレーターを用いて除去した。水(5mL)を添加し、蒸発させた。残渣を水から凍結乾燥し、表題化合物(0.6g、収率100%、HPLC純度98%)を得た。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.07 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.01 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 8.6, 2.0 Hz, 1H), 3.76 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.39 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.34 (q, J = 7.3 Hz, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
実施例3
4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
化合物4-イソブタンアミド-3-クロロ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩を、無水プロピオン酸の代わりに、無水イソ酪酸の使用により、本質的に同じ方式で得た。HPLCによる純度99%。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.01 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 3.76 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.39 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.34 (q, J = 7.3 Hz, 4H), 2.80 (七重線, J = 6.8 Hz, 1H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.24 (d, J = 6.9 Hz, 6H).
実施例4
4-アセトアミド-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩
4-アミノ-N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ベンズアミド塩酸塩(2.5g、9.1mmol)の懸濁液を、20mLの無水ピリジン中で撹拌した。懸濁液に、10mLの無水酢酸を添加した。反応は、わずかに発熱性であった。1時間後、沈殿物を濾過除去し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、表題化合物(2.83g、9.0mmol、収率99%)を得た。NMRによる純度98%。
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 7.84 (d, 2H), 7.68 (d, 2H), 3.74 (t, 2H), 3.37 (t, 2H), 3.35 - 3.29 (m, 4H), 2.14 (s, 3H), 1.35 (t, 6H).
生物学的アッセイ
UCは、病変結腸への炎症細胞、例えば、マクロファージの浸潤を特徴とする、炎症性疾患である。マクロファージは、炎症誘発性メディエーター、例えば、TNF-αを放出することにより、炎症応答の開始および伝播において重要な役割を果たす。リポポリサッカリド(LPS)は、炎症応答の強力なイニシエーターである。LPS刺激中、NF-kBシグナル伝達が活性化されて、免疫および炎症に関わる様々な遺伝子転写を調節し、炎症誘発性サイトカイン、例えば、TNF-αを産生する。AABZで処置したRAW264.7マクロファージにおけるLPS-誘導性TNF-α産生の抑制を、TNF-αの産生の評価により調査した。この試験の目的は、AABZの抗炎症活性を評価することであった。
【0147】
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎とトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発性大腸炎の両方が、粘膜炎症の十分に確立された動物モデルであり、これらはIBD病原体の研究および新しい治療法の前臨床研究において20年超にわたって用いられてきた。DSS誘発性大腸炎モデルは、大腸炎の他の動物モデルと比較した場合、いくつかの利点を有し(Perse 2012)、したがって、組合せ治療の効果の分析のために選択された。
【0148】
実施例5
AABZで処置したマクロファージにおけるLPS-誘導性TNF-α産生の抑制
RAW264.7マクロファージラインを、5%FBSを補充したDMEM中37℃、5%CO2加湿空気環境下で維持した。RAW264.7細胞を、1×105/mlの密度および200μl/ウェルの体積で96ウェルプレートに播種した。細胞を、10%FBSを補充した培地中で24時間インキュベートし、次いでLPS(1μg/ml)の添加前に、指示された濃度の試験物質ありまたはなしで2時間プレインキュベートした。その後、上清を様々な時点で採取し、培養培地中の炎症誘発性サイトカインTNF-αの産生を、製造業者のプロトコルに従って市販の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)キットを用いて決定した。
【0149】
RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるLPS-誘導性TNF産生に対する1mMの本発明のいくつかのAABZの効果を表3に示す。
【0150】
【表3】
【0151】
様々な濃度(0.3、1.0および3.0mM)の化合物は、LPS処置対照群と比較して、TNFの発現レベルを有意に低下させたことが観察された。これらの結果は、病的炎症に起因する疾患の治療のための、本明細書に開示される化合物の有用性を支持する。
【0152】
実施例6
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患におけるCpd A単独のまたはSASPと組み合わせた有効性の評価
1週間の順化期間後、生後6~8週の雌Balb/cマウスを用いて実験を行った。体重18~25gのマウスをTaconic(Denmark)から購入し、温度および光が制御された施設内で維持し、標準的なげっ歯類用飼料および水を自由に摂取させた。処置開始の5日前に、マウスを各群に無作為化し、1ケージあたり5~6匹の動物を収容した。順化期間後、飲料水を介して5%DSS溶液(TdB Consultary AB、SwedenからのDSS;MW約40000)を5日間(0日目~5日目)投与して、急性大腸炎を誘発させ、下痢、直腸出血、体重減少、粘膜潰瘍、陰窩の破壊および白血球浸潤を特徴とする再現性のある大腸炎を引き起こした。DSS摂取量を毎日評価した。
【0153】
最初に、SASP(Sigma-Aldrich、Swedenから)を、必要な最終濃度より高い濃度で、0.2M水酸化ナトリウム(NaOH)に溶解した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加して所望の濃度にし、pHをNaOHまたは塩酸で7.5~8.0に調整した。SASPは、このpHで完全に溶解した状態を保った。Cpd A塩酸塩をPBSに溶解して、所望の濃度にした。
【0154】
動物群はすべて、5%DSS水溶液を全試験期間自由に摂取した。処置は、0日目から5日目に、経管栄養により経口(SASP)または腹腔内(Cpd A)のいずれかで、および5ml/kgの投与量で、およそ8時間間隔で1日2回行った。対照群(DSSのみ)は水(0.2ml)を1日2回経口で摂取した。実験で記録されたパラメーターは、便硬度(0、正常;2、軟便;4、水様下痢)、便中の血液の出現(0、正常;2、潜血+;4、肉眼的出血)、および体重減少(0、なし;1、1~5%;2、5~10%;3、10~20%;4、>20%)であった。これらの3つのパラメーターのスコアを要約することにより、疾患活動性指数(DAI)を計算した。また、結腸の長さおよびミエロペルオキシダーゼ(MPO)の結腸含有量を記録した。データを、分散分析(ANOVA)により統計的に評価した。最小二乗平均(LS平均)およびLS平均の標準誤差(SE)を計算した。
【0155】
表4は、デキストラン硫酸ナトリウム効果の5日目の記録された阻害パーセンテージを示す(100%=完全に正常化、0%=効果なし)。
【0156】
【表4】
【0157】
5%DSSの5日間の投与は、下痢、糞便中の血液および体重減少を伴う重度の急性大腸炎を引き起こした。下痢および糞便中の血液は、3日目から出現し、これらの症状は、5日目の試験終了まで悪化した。SASP(40mg/kg/日、1日2回は最適な用量であることが見出された)による経口処置は、大腸炎のこれらの徴候のいくつかを改善した。3日目以降、下痢および糞便中の血液の改善が見られた。3日目、下痢の頻度(便硬度スコア2および4)は、対照群において22%およびSASP40mg/kg/日、1日2回群において8%となった。5日目、対応する数字は各々98%および71%であった。Cpd A(50mg/kg/日、1日2回)とSASP(20mg/kg/日、1日2回)との組合せは、大腸炎パラメーターの優れた改善をもたらした(表4)。SASPと組み合わせたCpdAは、DSS誘発性急性大腸炎の改善において相乗的に作用した(p<0.008)。疾患活動性指数(DAI)スコアは、組合せ治療によって対照群に対して51%(p<0.0001)およびSASP(20m/kg/日、1日2回)単独群に対して47%(p<0.0002)に有意に低下した。
【0158】
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