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▶ ハーテーエー・ゲーエムベーハー・ザ・ハイ・スループット・イクスペリメンテイション・カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】反応を調べるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240701BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240701BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N1/00 101R
G01N1/22 B
G01N1/00 101S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021521421
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019077871
(87)【国際公開番号】W WO2020078952
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】18201023.1
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501389637
【氏名又は名称】ハーテーエー・ゲーエムベーハー・ザ・ハイ・スループット・イクスペリメンテイション・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】キルヒマン,マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ハウバー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】フィンガー,クルト-エーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フリース,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ケヒェル,オリファー
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004039378(DE,A1)
【文献】特開平06-167487(JP,A)
【文献】独国特許発明第102014110544(DE,B3)
【文献】特開2001-059799(JP,A)
【文献】特表2008-535654(JP,A)
【文献】特表2007-501109(JP,A)
【文献】特表2007-515646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
G01N 1/00、 1/22、
35/00-37/00
G01F 1/00-25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応器(1)を備えた反応分析装置であって、
前記反応器(1)のそれぞれは前記各反応器(1)にのみ割り当てられた少なくとも2つのサンプル容器(13)に接続され、前記サンプル容器(13)のそれぞれは調整可能な容積を有している、反応分析装置。
【請求項2】
前記サンプル容器(13)のそれぞれは、内部に可動のピストン(17)を有するシリンダーを有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動のピストン(17)の位置を検出するセンサ(31,33)が前記サンプル容器(13)に設けられている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記反応器(1)のそれぞれが多方向バルブ(49)に接続された出口を有し、前記多方向バルブ(49)の前記出口のそれぞれがサンプル容器に接続されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプル容器(13)への供給を制御することができる切替可能バルブが、前記反応器(1)と前記サンプル容器(13)との間に収容されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
反応媒体が前記反応器(1)を通って連続的に流れることができる、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記サンプル容器(13)は加熱可能である、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記サンプル容器(13)は不活性媒体の供給源に接続されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置における反応を分析する方法であって、
(a) 各反応器(1)で反応を行うことであって、すべての反応が同一の反応条件で行われるか、又は反応条件が各反応器(1)で変化させられているかの反応を行うこと;
(b) 所定の時間に前記各反応器(1)から試料を採取してサンプル容器(13)に入れることであって、前記試料は前記各反応器から所定の時間に採取されること、又は、パルスサンプリングであって、各パルスサンプリングとともに前記反応器(1)から採取された反応媒体が新たなサンプル容器(13)に導入されること;
(c) 前記サンプル容器(13)に存在する試料を分析すること、
を含む、方法。
【請求項10】
圧力及び/又は温度が、反応中に各反応器(1)で検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器(1)から採取された試料が前記サンプル容器(13)内で不活性媒体と混合される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器から連続して採取された試料が、工程(c)で分析される前に、前記サンプル容器(13)からさらなる容器に移され、前記容器で生成された様々な時間に採取された試料の混合物が分析される、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料の前記分析が、クロマトグラフィー法、スペクトロメトリック法及び分光法、又はそれらの組み合わせの群からの分析方法によって行われる、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
異なる時間に採取された試料の混合物が計量化学法のモデルを生成するのに使用される、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの反応器と、分析されるべき反応生成物を収容するためのサンプル容器を備える、反応を分析するための装置から発している。さらに、本発明は、このような装置での反応を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力、温度、反応物流の異なる組成、又は異なる触媒の効果など、さまざまなパラメータが1つの反応に及ぼす影響を調べるためには、一般的に多数の実験が必要となる。ここで、比較可能な結果を得るために、特定の期間にわたって狙った方法で試料を採取する必要がある場合、特に、例えば長時間を要する分析のために、例えば反応混合物の組成に関するクロマトグラフィー分析など、実験中に連続して分析を行うことができない場合に問題となる。
【0003】
多成分混合物を分析する装置及び方法は、例えば、WO2008/012073A1から知られている。WO2008/012073A1に記載されている装置は、少なくとも2つの平行な反応チャンバと各反応チャンバに対して少なくとも1つの高圧分離器と1つの低圧分離器を有し、そこでは、高圧分離器は反応チャンバに接続され、低圧分離器は高圧分離器に接続されている。また、高圧分離器は、分析ユニットに接続された出力導管を有している。
【0004】
反応混合物の分析を行うことを可能にするためには、試料を、典型的には、反応中に採取する。この目的のために、例えば、DE10157664A1は、シリンダーとその中で移動可能なピストンを備えた試料採取装置を使用することを開示している。反応に有害なガスが反応器内に侵入すること又は反応器からガスが流出することを防止するために、該装置は、反応器からの出口を閉じることができるか、又は、反応器から試料採取装置への接続若しくは試料採取装置から出口への接続を開くことができるバルブによって、反応器に接続されている。
【0005】
正確な流体容積を搬送するため、したがって連続測定の比較可能性を確保するために、WO2004/104576は、アルコール測定装置において、流体リザーバに接続された、電動モーター駆動のピストンシリンダーユニットを有する搬送装置であって、該ピストンが磁気的、電気的及び/又は電磁的特性を有し、シリンダーの周囲に配置されたコイルによって作動され得る、搬送装置の使用を開示している。該搬送装置は、ピストンが一方向に移動した場合には、流体リザーバから特定の流体量を測定チャンバ内に吸引し、ピストンが他方向に移動した場合には、それを再び測定チャンバから排出する。
【0006】
ガスリザーバから規定量のガスを採取し、リザーバ容器に供給する装置がUS3,485,105から知られている。この装置は、特に、代表的な試料を検出するためにリザーバ容器に集められる等量のガスを採取するために使用される。ここでは特に、ガスリザーバとリザーバ容器が異なる圧力ヘッドを有することが可能である。
【0007】
先行技術から知られている装置の欠点は、比較可能な時間における反応の試料採取、又は、反応の過程、特に連続的に測定することができず、特定の時間にわたって試料を評価する必要があるものにおける反応パラメータの分析については、困難を伴ってのみ可能であるということである。既知の装置を用いて連続的な分析を行い、及び、比較可能な時間に試料を採取することも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、反応中の比較可能な時間に試料を採取したり、又は、オンラインでは不可能な分析を行うことができるように、反応の過程で試料を採取したりすることができる反応分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、少なくとも1つの反応器と少なくとも2つのサンプル容器を備えた反応分析装置によって達成され、ここで、1つの反応器を有する装置の場合には、反応器は少なくとも2つのサンプル容器に接続され、2つ以上の反応器を有する装置の場合には、各反応器が少なくとも1つのサンプル容器に接続されている。
【0010】
反応器を少なくとも2つのサンプル容器に接続することで、試料が採取された時間に関係なく分析を行うことができる。より具体的には、規定時間に試料を採取し、2つの試料採取時間の間隔よりも長い時間をかけて分析を行うことが可能である。複数の反応器を有し、各反応器が少なくとも1つのサンプル容器に接続されている装置の場合、適切に切替可能バルブを使用して、各反応器から同時に試料を採取することが可能である。ここでは、反応の進行における変動を検出するために、すべての反応器で同じ反応を行うことが可能であり、又は代替的に、反応パラメータの変化が反応に及ぼす影響を調べるために、このように、各反応器でパラメータを変更して反応を行うことも可能である。この目的のためにも、試料採取は各場合において同時に行う必要である。時間依存性をさらに調べる場合は、複数の反応器を有する装置であっても、少なくとも2つのサンプル容器が各場合において各反応器に接続される。各反応器を少なくとも2つのサンプル容器、好ましくは少なくとも4つのサンプル容器、より好ましくは少なくとも8つのサンプル容器、特に少なくとも16個のサンプル容器に接続することで、反応中に各規定時間に1つの試料を採取し、反応の進行から独立してこれらを分析することが可能になる。サンプル容器の最大数は、利用可能な構築スペースとサンプル容器のサイズによって規定される。好ましくは、各反応器のサンプル容器の最大数は100個、特に50個である。反応器に接続されているサンプル容器の数よりも多くの試料を採取する場合、反応の実行中に試料を採取した後にサンプル容器を取り外し、新しい空のサンプル容器と交換することができるように、サンプル容器を反応器に接続することも可能である。固定的に設置されるサンプル容器の場合、サンプル容器に存在する試料を採取後に別の容器に移すことができる適切なバルブを使用して、これらを反応器に接続することも可能である。この場合、反応中の特定の時間の結果を与えることを目的とする分析のために、試料を個別に小さな分析容器に移すことが可能である。反応時間にわたって平均値を検出したい場合は、個別に採取した試料をより大きな容器に収集して混合してもよく、その場合はこのようにして収集した混合物に対して分析を行う。
【0011】
サンプル容器を反応器に接続するために制御可能なバルブを使用する場合は、自動化された方法で試料を採取することも可能である。制御可能なバルブが適切なインターフェースを有していれば、該インターフェースに接続されたプロセス制御システム、コンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータなどの適切な入力デバイスを用いて、オンラインで試料採取を制御することも可能である。
【0012】
反応器から採取された分析すべき反応生成物と同様に、サンプル容器に不純物が混入することを防ぎ、及び試料採取を容易にするために、各サンプル容器は調整可能な容積を有することが好ましい。より好ましくは、試料採取開始前の容積はゼロであり、試料採取中に採取された試料に応じて増加する。発生する減圧によって反応ガスがサンプル容器に流入するように、サンプル容器の容積を増加させることによって、減圧を発生させることも可能である。サンプル容器の容積を調整できるようにするために、サンプル容器がその中に移動可能なピストンを備えるシリンダーを含んでいることが特に有利である。試料採取のために減圧を発生させる場合は、ピストンを動かすことで簡単に行うことができる。ピストンの動きは、試料が流れ込むことができるシリンダー内の空間を生成する。試料として採取される反応混合物が周囲の圧力よりも高い圧力である場合、ピストンは入ってくる反応混合物によってシリンダーから好ましくは押し出され、サンプル容器の容積が増加する。あるいは、ピストンに減圧をかけ、その減圧によってピストンを移動させ、試料が流入する空間を作ることも可能である。この場合、ピストンの油圧制御または空気圧制御のいずれかが可能である。空気圧制御の場合、任意の所望のガス、好ましくは空気を利用することができる。油圧制御は、例えば、任意の所望の液体、特に作動油又は水によって実現することができる。
【0013】
サンプル容器を形成するシリンダーは、任意の断面形状を有してよい。例えば、円形の設置面積を有するシリンダー、又は、角度を有する設置面積、例えば三角形、四角形、五角形あるいは六角形の設置面積を有するシリンダーを使用することができる。その他のすべての形状も可能だが、特に円形の設置面積を有するシリンダーが好ましい。シリンダー内で移動可能なピストンは、ピストンが移動する際にシリンダーの内壁に隣接するように、シリンダーの設置面積に対応する形状を有する。好ましくは、ピストンはさらに、ピストンによってシリンダーの内壁に押し付けられるOリングやシールコードなどのシール要素によって包囲され、試料として採取された反応混合物が、ピストンとシリンダーの内壁の間のあり得る隙間から漏れ出すのを防止するようになっている。
【0014】
サンプル容器から可能な不純物を除去するために、収容される反応混合物に対して不活性なパージ剤によって、サンプル容器を使用する前にパージすることが有利である。この目的のために、例えば、窒素や希ガスなどのガスを使用することが可能である。不活性パージ剤は、パージ導管を介してサンプル容器に供給されることが好ましく、パージ導管は、サンプル容器に直接接続されるか、又はサンプル容器への供給に開口している。パージ導管がサンプル容器への供給に開口している場合、バルブであって、それへは供給とパージ導管が開き、それからはサンプル容器への供給が分岐するバルブを使用することが好ましい。ここでは、サンプル容器のパージを自動化することもできるように、制御可能なバルブを使用することが好ましい。試料として採取された反応混合物を不活性媒体で希釈する場合は、同じ不活性媒体をパージに使用することが有利である。
【0015】
採取された試料を不活性媒体で混合することができるようにするために、サンプル容器は不活性媒体の供給源に接続するのが好ましい。この目的のために、例えば、不活性導管がサンプル容器又はサンプル容器への供給に開口してよい。不活性媒体の供給源は、例えば、不活性媒体を含むリザーバ容器である。不活性媒体が液体の場合は、不活性媒体の供給源として例えば液体タンク又はその他の液体容器を使用することが可能である。不活性媒体が気体の場合、不活性媒体の供給源は、適切な気体リザーバ、例えば気体を含む圧力容器である。不活性媒体が反応混合物を希釈するためだけでなくパージするためにも使用される場合、パージ用の不活性媒体を、反応混合物の希釈用にも供給される同じ導管を介して供給するのが有利である。この場合、不活性導管とパージ導管を別々に設ける必要はない。
【0016】
各サンプル容器で明確に規定された量の試料を採取するために、サンプル容器としてピストンが内部で移動可能なシリンダーを使用する場合、ピストンの位置を検出できる少なくとも1つの位置センサがシリンダーに取り付けられていることが好ましい。この目的に適した例としては、ピストンのそれぞれの最終位置、すなわちサンプル容器が空の状態の位置と試料を採取した後のサンプル容器が満杯の状態の位置を検出するセンサがある。これは、例えば、光学式、誘導式、機械式、超音波式のセンサによってもたらすことができる。代替的に、例えば、ピストンの移動にステップモータを使用することで、試料採取中の任意の時点で正確な位置、したがって正確な試料量を検出することも可能である。移動可能なピストンを備えたサンプル容器を使用することのさらなる利点は、試料を採取するために移動用のガスを追加する必要がないことである。試料をサンプル容器から分析ユニットに搬送するために試料をガスによって移動させる方法では、移動に使用するガスが反応混合物と混合し、誤った結果を導いてしまう危険性がある。さらに別の利点は、例えばステップモータなどの適切な駆動手段を用いてピストンを作動させる場合には、分析ユニットに供給するために試料を自動的に引き抜くことも可能であるということである。これは、ピストンが油圧又は空気圧によって制御されている場合、ピストンを試料の方向に移動させて試料をサンプル容器から押し出すように、試料から遠いピストンの側に圧力を発生させることによって代替的に達成することができる。これにより、例えば、試料をサンプル容器に受け入れ、試料を分析ユニットに搬送し、次いでさらなる試料を受け入れる前にサンプル容器をパージすることを、完全に自動化された方法で可能にする。
【0017】
規定された時間で連続して反応器から試料を採取することを可能にするため、反応器は多方向バルブに接続された出口を有し、該多方向バルブの各出口はサンプル容器に接続されていることが好ましい。多方向バルブを使用することで、直に連続して試料を採取し、各試料を新しいサンプル容器に導入することができる。この目的のために、試料の採取が終了した後の各場合において、例えば規定の試料採取期間又は規定の試料量の採取後に、多方向バルブをさらに切り替え、まだ空のサンプル容器への供給を開くことができる。代替的に、試料を採取した後、まずすべてのサンプル容器を閉じ、後の規定された時間に、まだ空のサンプル容器への供給部をさらに開き、試料をさらに採取することも可能である。この場合も、規定された試料採取期間が経過した後、又は規定された試料量が採取された後に、対応するサンプル容器を閉じることによって、試料採取を終了することが好ましい。すべてのバリエーションにおいて、規定量の試料を採取した後に試料採取を終了することが好ましい。
【0018】
試料量は、サンプル容器のピストンの位置を介して検出するのが好ましい。ピストンが、採取する試料量に対応する規定の位置に到達すると、試料採取が終了する。ピストンをシリンダーから引き抜くことによって減圧して試料採取を行う場合は、試料採取は、サンプル容器内の圧力を測定することによって、又は規定された試料採取期間によって、調整することができる。反応持続期間と使用する反応器のサイズに応じて、異なるサイズのサンプル容器を使用することが可能である。短い間隔での頻繁な試料採取の場合、例えば反応の進行を調べるためには、20~1000ml、好ましくは100~500mlの範囲の容積を有するより小さなサンプル容器を使用することが好ましく、一方、より長い期間にわたって連続的に試料を採取し、これらを1つのサンプル容器で混合する長い反応の研究の場合、又はより大きな反応器の場合には、100ml~20l、好ましくは1~15lの容積を有するサンプル容器を使用することができる。
【0019】
特に、複数の反応器を並行して運転し、分析のために各反応器から同じ反応時間で試料を採取する場合には、各反応器と関連のサンプル容器との間に切替可能バルブを収容し、サンプル容器への供給が制御できることが有利である。例えば、切替可能バルブの使用は、例えばすべてのバルブの同時開閉を可能にし、したがってすべての反応器から同時に試料が採取することができる。これは、反応器内で同じ反応が行われており、すべての反応器が共通の反応物供給に接続されており、したがってすべての反応器内で同時に反応が開始される場合には、特に望ましい。代替的に、制御可能なバルブも、反応器内で反応が開始された後に規定時間で試料を採取することを可能にする。この場合、試料を採取する間隔が規定され、第1の間隔の測定の開始点は、例えば、規定されたプロセスパラメータの達成又は対応する反応器への反応物の供給の開始である。
【0020】
採取する試料量がサンプル容器よりも多い場合、複数のサンプル容器を1つの反応器に接続することも可能である。この場合、切替可能バルブは各サンプル容器の上流側に配置される。試料採取のために、切替可能バルブは第1サンプル容器の上流で、試料がサンプル容器に流入できるように開いている。サンプル容器が充填されるとすぐに切替可能バルブは閉じられ、さらなるサンプル容器の切替可能バルブが開かれる。これは、すべてのサンプル容器が充填されるまで繰り返されることができる。さらに、この場合、さらなるサンプル容器がまだ充填されている間に、既に充填されたサンプル容器からこの早い段階で試料を採取し、それを分析することも可能である。この場合、サンプル容器から試料が採取され、サンプル容器がおそらくパージされた後に、再び新しい試料を採取することが可能である。
【0021】
異なる時間に複数の反応器から試料を採取する場合には、同じサンプル容器を複数の反応器に接続すること、例えば、反応器とサンプル容器の間に多方向バルブであって、各反応器が該多方向バルブの入口に接続され、該多方向バルブは導管に接続された出口を有し、該導管から各サンプル容器への接続が分岐している多方向バルブを使用することにより、接続することも可能である。切替可能バルブは、したがって、サンプル容器への各接続内にある。
【0022】
変位可能なピストンを備えた上述したサンプル容器の代替として、規定容積を有し、試料採取前に排出されるサンプル容器を使用することも可能である。この場合も、切替可能バルブは各サンプル容器の上流に配置される。サンプル容器内の減圧のおかげで、切替可能バルブが開かれると、試料はサンプル容器内に吸引される。試料を採取するため、不活性ガスで試料を置換すること、又は、サンプル容器として、分析のためにそれから試料が採取されるかあるいは適切な分析装置に挿入され得る使い捨てカートリッジを使用することにより、試料を変位させることができる。
【0023】
反応分析装置に使用される反応器は、バッチ式反応器でも連続運転式反応器でもよい。バッチ式反応器では、連続的に充填される複数のサンプル容器を使用することによって、例えば反応の進行を分析することができる。一方、連続運転式反応器では、連続的に充填される複数のサンプル容器を使用することによって、反応の過程で変動が起こるかどうか、あるいは定常状態が確立されるまでにどれくらい時間がかかるかを調べることができる。
【0024】
反応分析装置が複数の反応器を含む場合、すべての反応器で同じ反応を行い、このようにして反応の進行の変動や違いを調べることができる。代替的に、複数の反応器の使用は、個々の反応パラメータの変動も可能にし、したがって、反応の個々の反応パラメータ影響を調べることを可能にする。変動させることができる反応パラメータとしては、例えば、温度、圧力、及び連続反応の場合は、使用する反応物の流速と個々の反応物の比率、及びバッチ式反応の場合は、対応して、使用する個々の反応物の量が挙げられる。さらに、異なる触媒を使用し、したがって、ある反応に対する異なる触媒の有効性を調べることもできる。
【0025】
反応パラメータが変動されたり、異なる触媒が使用されたりする分析で比較可能な分析結果を得るためには、各反応から規定された時間で試料をそれぞれ採取し、試料量も同じにすることが必要である。個々のサンプル容器に存在する試料は、例えば変換を確認するために、又は反応中に形成された副生成物を検出するために、試料採取後に分析することができる。この目的のために、化学分析で知られている分析方法、例えば、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法、質量分析法などのスペクトロメトリック法、赤外分光法やUV/VISなどの分光法、あるいは異なる方法の組み合わせなどを使用してよい。
【0026】
本装置は、サンプル容器内での収集および熱平衡化によって反応器からの可変生成物混合物から均質な試料を生成することができるため、分析装置の校正にも適している。試料は、異なる分析方法の組み合わせを通して導くことができ、これは、既知の校正を有する1つの方法を使用して、未知の校正を有する他の方法を校正することが可能であることを意味する。例えば、同じ試料を、容易に校正されたクロマトグラフィー法(例えばガスクロマトグラフィー)を用いる分析装置と、続いて反応器からの反応生成物をクロマトグラフィー法よりも高い時間分解能で監視することができる分光法を有する分析装置の校正を得るために、分光法(例えばIR)を用いた分析装置に、流すことができる。これは特に計量化学の分野で使用することができ、そこでは、数学的及び統計的方法によって実験測定データから化学情報を抽出することができ、既知の組成の試料から対応するモデルを事前に生成しておく必要がある。
【0027】
本装置は、気相反応、液相反応、及び気液反応の分析に適している。本装置は特に、気相反応又は気液反応、ここでは特に反応生成物が気体であり、少なくとも1つの反応物が液体であるような反応の分析に適している。反応が複数の生成物を形成する場合、又は平衡反応において反応物の一部のみが変換される場合には、試料採取の前に、まず反応器から取り出した反応混合物の分離を行うことが可能である。この目的のために、例えば、WO2008/012073A1に記載されているように、高圧分離器と低圧分離器を使用することができる。サンプル容器は、高圧分離器からの出口と低圧分離器からの出口の両方に接続してよく、このようにして反応器から出た反応混合物が分離される高圧分離器と低圧分離器の異なる組成を調べるためである。
【0028】
特に、反応混合物が反応器からガス状で取り出され、冷却時に反応混合物の少なくとも一部が凝縮するような、周囲温度を超える凝縮点を有する場合には、サンプル容器が加熱可能であることが好ましい。その結果、サンプル容器を反応混合物の凝縮温度よりも高い温度まで温めることができ、反応混合物がサンプル容器内でガス状のままであることが可能である。これは、特に後続の反応又分析が気相で行われる場合、又は、特に反応混合物の正確な組成を検出するときに不正確な測定結果をもたらす可能性がある、反応混合物が冷却時に気相と液相に分離する場合に有利である。サンプル容器は、好ましくは100℃まで、特に150℃までの温度に加熱することができ、対応して高沸点成分を含む反応の分析の場合には、より高い温度に加熱することも考えられる。サンプル容器は好ましくは電気的に加熱されるが、サンプル容器が固定的に組み込まれている場合には、加熱媒体、例えば熱油又はその他蒸気による加熱も可能である。非固定的な組み込みの場合、例えばサンプル容器を分析ユニットに搬送するために試料採取後に取り外す場合には、搬送中に適切な蓄電池で維持できる電気加熱を備えることが有利である。代替的に、サンプル容器の絶縁も搬送には十分であり得、その場合には、電源供給の接続と切断によって、より簡単な取り扱いのために電気加熱がここでは好ましい。
【0029】
サンプル容器内の圧力は、好ましくは、反応の圧力に対応している。これは、一般的には0~10バール(絶体圧力)の範囲、好ましくは1~5バール(絶体圧力)の範囲である。しかしながら、サンプル容器と反応器とで異なる圧力を設定することも可能であり、その場合、好ましくは、加圧下での反応の場合には、サンプル容器により低い圧力、例えば周囲圧力を設定し、周囲圧力より低い反応の場合には、サンプル容器により高い圧力、例えば周囲気圧を設定する。
【0030】
このような装置での反応を分析する方法は、典型的には次のようなステップを含む:
(a) 各反応器で反応を行うことであって、すべての反応が同一の反応条件で行われるか、又は、反応条件が各反応器で変化させられているかの反応を行うこと。
(b) 所定の時間に各反応器から試料を採取してサンプル容器に入れることであって、試料は各反応器から所定の時間に採取されること、又は、パルスサンプリングであって、各サンプリングパルスとともに反応器から採取された反応媒体が新たなサンプル容器に導入されること。
(c) サンプル容器に存在する試料を分析すること。
【0031】
上述したように、工程(a)の反応器の運転は、調べる特性によって異なる。反応の変動を調べることが目的であれば、すべての反応は同じ条件で行われる。異なる反応条件、例えば異なる量の反応物、異なる温度又は異なる圧力あるいは異なる触媒などの影響を調べる場合は、各反応器の反応条件を変えることが好ましい。この場合、もし反応の変動も調べるのであれば、さらに、それぞれの場合において、特定の数の反応器を同じ反応条件で運転することも可能である。
【0032】
反応の進行は、規定の間隔でここでは試料採取を行うことで、パルス状で試料採取することによって、ステップ(b)で調べられる。ここで、いずれの場合もサンプル容器への試料採取が終了した直後に、次のサンプル容器への試料採取を開始することも可能である。試料採取時間が固定されているか、又は、規定量の試料がサンプル容器内に存在するまで、それぞれの場合で試料が採取されるかである。この目的のために、例えば、サンプル容器内のピストンの位置が検出されることができる。
【0033】
容器内に特定量の試料が存在するまで試料採取を行う場合、複数の反応器から試料を並行して採取する場合においてすべての反応器でサンプル容器への試料採取が終了したときにのみ、後続のサンプル容器への試料採取を開始することも有利である。これは、試料が同時に採取され、したがって採取された試料の分析は比較可能な結果を与えることを保証する。
【0034】
ステップ(c)における試料の分析は、既知の分析装置、例えば既に上述したように、クロマトグラフィー法、スペクトロメトリック法又は分光法によって行われ得る。
【0035】
反応を調べるために、好ましくは、採取された試料とともに、さらなる反応パラメータも検出し、その組成を調べることができる。これらのさらなる反応パラメータとしては、例えば、反応器内の圧力や温度などが挙げられる。
【0036】
調べる反応や実施する分析に応じて、採取された試料を不活性媒体と混合することができる。不活性媒体との混合は、サンプル容器の中で行われ得る。あるいは、サンプル容器からさらなる容器に試料を移し、該さらなる容器で不活性媒体と混合することも可能である。
【0037】
特に、連続的に行われる反応を調べる場合には、反応の過程にわたって平均化された値を検出することが望ましいこともある。この目的のために、例えば、反応器から連続して採取された試料が、さらなる容器に導入され、その容器内で混合されることが可能である。連続して採取されたこれらの混合試料を用いることによって、したがって、例えば反応混合物の平均組成を確定することができる。試料として採取された反応混合物のさらなる容器への移動は、好ましくはステップ(c)の分析に先行して行われる。同一の反応が複数の反応器で行われ、規定された時間に確立された平均値が検出される場合は、個々の反応器から同時にそれぞれ採取された試料を共通の容器に移し、分析前にそれらを混合することも可能である。
【0038】
本発明の装置はこのようにして連続した研究を実施し、実施された各反応について比較可能なデータを検出すること、又は、反応の進行を正確に分析することを可能にする。
【0039】
本発明の例示的な実施形態は、図に示されており、以下の説明で詳細に解明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】反応器とサンプル容器を備えた反応分析装置の断面図。
図2】分離器を備えた反応分析装置の断面図。
図3】1つの反応器と複数のサンプル容器を備えた反応分析装置の断面図。
図4】複数の反応器を備えた反応分析装置の断面図。
図5】さらなる実施形態における、複数の反応器を有する反応分析装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、反応器とサンプル容器を備える反応分析装置の断面図である。
【0042】
反応を分析するために、反応物は供給3を介して反応器1に供給される。これらは、反応に応じて反応物の完全な変換又は部分的変換の可能性はあるが、反応器内で反応生成物に変換される。さらに、反応器に不活性媒体を供給することも可能である。反応物は、それぞれ別々の供給3を介して個別に反応器に供給されてもよく、代わりに、ここに示されるように、混合器5で混合された後、供給3を介して反応器に導入されてもよい。
【0043】
分析される反応に適した任意の所望の触媒を反応器1で使用することが可能である。均一系触媒が使用される場合は、反応物に混合されるのが好ましい。反応に関与しないさらなる物質、例えば開始剤などが必要な場合でも、これらは反応器に直接導入されるか、又は、反応器に導入される前に、例えば混合器5で既に反応物と混合される。
【0044】
不均一系触媒反応の場合、触媒は、反応器内に固定された方式で、例えばパッキングや床として収容されるのが好ましい。しかし、代替的に、触媒を流動床又は移動床の形態で使用することも可能である。特に、触媒を定期的に交換又は再生する必要がある場合は、移動床が好ましい。
【0045】
流出導管7が、反応器1で生成された反応混合物を反応器から引き出すために使用される。反応混合物を分析することを可能にするためには、反応混合物の試料が採取されなければならない。この目的のために、試料導管9が流出導管7から分岐している。これは、第1バルブ11を介してサンプル容器13に接続されている。反応器で生成される反応混合物全体を分析することを意図している場合は、流出導管7から分岐する試料導管9を設ける必要はない。この場合、流出導管7はサンプル容器13に直接接続されてもよく、その場合、サンプル容器13への反応混合物の流れを止めることができるようにするために、サンプル容器13への供給の上流に第1バルブ11も必要とされる。
【0046】
試料を採取するために、第1バルブ11が開かれる。第1バルブ11が開いている状態で、反応混合物は、試料導管9を介して反応器3から流出してサンプル容器13内の試料チャンバ15に流入することができる。試料チャンバ15は、好ましくは、ここに示すように、サンプル容器13内で移動可能なピストン17によって片側が境界付けられている。ピストン17は、サンプル容器13内の試料チャンバ15の容積を調整するのに使用され得る。試料採取の開始時には、ピストン17は、試料チャンバ15の容積が最小となる第1位置にあることが好ましい。試料採取の開始とともに、ピストン17は、試料チャンバ15の容積が最大となる第2位置の方向に移動する。ピストン17が第2位置に到達するとすぐに、又はピストンが第2位置17に到達する前に試料採取を終了する場合には、バルブ11は、それ以上の反応混合物がサンプル容器17内の試料チャンバ15に流入できないように、閉じられる。
【0047】
ピストン17の動きは、ピストン17の試料チャンバ15から遠い側に、反応混合物の圧力よりも低い圧力が適用されることで、補助されることができる。これは同時に、反応混合物の試料チャンバ15への吸引につながる。ピストン17の試料チャンバ15から遠い側により低い圧力を加えるために、例えば、ガス導管19がピストン17の試料チャンバ15から遠い側でサンプル容器13に開口するようにすることができる。より低い圧力を加えるために、ガス導管19は、ピストン17がその第2位置の方向に移動するように、サンプル容器からガスを吸引する。試料採取が終了するとすぐに、ガスの吸引は終了する。
【0048】
試料チャンバ15内に存在する反応混合物は、次いで、次のステップで分析ユニット21に送られる。ここでは、ガス混合物に関する所望の分析を行うことができる任意の所望の分析ユニットを使用することができる。慣用的な分析ユニットは、特に、反応混合物の組成を決定することができるものである。反応混合物を分析ユニット21に供給できるようにするために、分析ユニット21は、測定導管23を介してサンプル容器13の試料チャンバ15に接続されている。測定導管23を閉じることができるようにするために、第2バルブ25が測定導管23に設けられている。試料採取中は、第2バルブ25は閉じられている。
【0049】
試料を分析ユニット21に供給するためには、第2バルブ25が開かれる。次に、ピストン17がその第1位置の方向に移動させられることによって、試料チャンバ15内に存在する反応混合物は、ピストン17の移動によって試料チャンバ15から測定導管23に押し出され、測定導管23を介して分析ユニット21に供給される。ピストン17は、適切な駆動装置を用いて動かされ、又は、ここに示すように、ガス導管19を介してサンプル容器に流入し、したがって、ピストン17の試料チャンバ15から遠い側に作用する加圧ガスの助けを借りて、動かされることができる。加圧ガスによってピストン17に加えられる圧力は、ピストン17を試料チャンバの方向に押しやり、試料チャンバ内に存在する反応混合物が測定導管23に押し込まれる。ピストン17が試料チャンバの容積が最小となる第1位置に到達するとすぐに、加圧ガスの供給が終了される。この目的のために、第3バルブ27がガス導管19内に設けられることが好ましい。加圧ガスの供給は、第3バルブ27を閉じることによって終了される。
【0050】
試料チャンバ15が完全に空にされた後に、別の試料が採取されることができる。
【0051】
特に高温の反応混合物の場合、サンプル容器が加熱可能であることが有利である。この目的のために、電気ヒーター29を使用することが好ましい。電気加熱は、例えば、サンプル容器13を囲む加熱コイルによって実行することができる。代替的に、加熱ジャケットを使用することも可能である。
【0052】
ピストン17の動きを制御するために、位置センサが好ましくは設けられる。第1位置センサ31は、ピストン17が第1位置にあるかどうかを検出し、第2位置センサ33は、ピストン17が第2位置にあるかどうかを検出する。位置センサ31,33は、特に、減圧又は昇圧の適用によってピストンの移動を制御するために利用される。サンプルを採取する場合、反応混合物の圧力より低い圧力を発生させるためのガスの除去は、ピストン17が第2位置に到達したことを第2位置センサ33が検出すると、終了される。したがって、試料チャンバ15からサンプルを取り出すときの加圧ガスの供給は、ピストン17が第1位置に到達したことを第1位置センサ31が検出すると、終了される。
【0053】
ピストン17の空気圧の移動を伴う上述の実施形態の代替として、ピストンが油圧で移動されることも可能である。この場合、ガスではなく流体が使用され、該流体は、ピストン17が第2位置に移動する際はサンプル容器13から吸い出され、ピストン17を第1位置に移動させるためにサンプル容器13に押し込まれる。
【0054】
ピストンの空気圧式又は油圧式の補助された移動に加え、ピストンの移動は、代わりに、例えばステップモータなどの駆動装置の助けを借りることも可能である。ステップモータが用いられる場合、ピストンの位置を直接検出することも可能であり、この場合、位置センサ31,33は不要とすることができる。しかし、ピストン位置を決定できない駆動装置がピストンに用いられている場合、位置センサ31、33の使用は、対応する位置センサ31,33がピストンを検出するとすぐに駆動装置を止めてピストンのそれぞれの方向への動きを終了させるために、有利である。
【0055】
図2は、反応器及び該反応器に接続されたサンプル容器を備える、反応分析装置の代替実施形態の断面図を示している。図1に示された実施形態とは対照的に、ここでは反応器1は分離器35を備えられている。分離器35では、反応で形成された液体を分離することができる。これは特に、分析ユニット21にガスを供給してはならない場合に必要である。この目的のために、反応器からの流出導管7が分離器35に開口しており、それによって反応器1からの反応混合物が流出導管7を介して分離器35に供給されるようになっている。液体はしたがって分離器内で反応混合物から分離され、引き抜き導管37を介して引き抜かれる。引き抜き導管37は第4バルブ39によって閉じられることができ、これにより、分離器35は各場合において所望の時間又は既定の時間に空にされ得る。これは、例えば、規定された時間間隔で、又は規定された液体レベルの達成時に、可能である。さらに、分離器35で分離された液体を分析ユニットに供給し、分離された液体を定量的及び/又は定性的に分析し、特に液体中に存在する成分を決定し、さらに任意に液体中に存在する個々の成分の量を決定することも可能である。
【0056】
さらに、分離器に不活性ガス導管41を導通させることができる。該不活性ガス導管により、反応混合物を希釈することができる。このことは、例えば、個々の成分の濃度が分析するには高すぎる場合などに必要となり得る。あるいは、不活性ガス導管41を介して供給されるガスを用いて、分離器内に溜まった液体中に残存するガスを排除することも可能である。このことは、例えば、反応混合物の定量的分析などにとって必要である。液体からガスを追い出すことをさらに可能にするために、不活性ガス導管41は、浸漬管として分離器35に収集された液体内に開口しているのが好ましい。これを確実にするために、その場合、液体は、不活性ガス導管41が液体中に浸漬されるのに十分な高さの最低限の液位を得る程度にのみ、除去されるのが好ましい。不活性ガス導管41を介して供給される適切な不活性ガスは、例えば、窒素又は希ガス、好ましくは窒素である。
【0057】
最大液位より上の位置で、試料導管9は分離器35から分岐し、それを通してガス状の反応混合物はサンプル容器13に導入され得る。試料採取は、図1について上述したのと同じ方法で行われる。
【0058】
分離器35からの試料採取を容易にするために、真空ポンプ43が設けられている。真空ポンプ43は、分離器内の圧力よりも低い圧力を、ピストン17の試料チャンバ15と異なる側に加えるために使用され得る。その結果、第1バルブ11が開いている状態では、ガス状の反応混合物は分離器35から試料チャンバ15に吸引される。真空ポンプ43は、反応が周囲気圧又は周囲気圧より低い圧力で行われる場合に特に有利である。反応が周囲圧力より高い圧力で行われる場合、一般に、周囲への出口は1つで十分であり、なぜなら、この場合、反応混合物の正圧が反応混合物を試料チャンバ15内に押し込み、ピストン17を上方に移動させるからである。ピストンが急激に上昇するのを防ぐために、この場合、ピストンに重りを設けるか、又は好ましくは、ピストンが所望の速度で上昇する程度までしか開かないバルブを、周囲への出口に挿入することができる。図1に示した構造はこの目的のためには十分である。
【0059】
あるいは、ポンプ43を不要とし、不活性ガス導管41を通して不活性ガスを供給することにより、分離器35に必要な正圧を発生させることも可能である。
【0060】
反応混合物が試料チャンバ15から引き抜かれるために、上述したように、正圧が次いでピストン17の試料チャンバ15の反対側に加えられ、それによってピストン17が試料チャンバ15の方向に押され、その結果、試料チャンバ15内に存在する混合物が試料チャンバ15から測定導管23を介して分析ユニット21に導かれる。
【0061】
ピストン17の制御のために、図2に示す実施形態では、制御可能バルブ45がガス導管19に設けられている。この目的のために、サンプル容器13と制御可能バルブ45との間のガス導管19内の圧力が測定され、該バルブは圧力調整器47により制御される。ガス導管19内で測定された圧力が所望の圧力と異なる場合には、制御可能バルブ45はそれに応じて設定される。制御可能バルブ45は、低すぎる圧力が測定された場合はさらに開かれ、高すぎる圧力が測定された場合はさらに閉じられる。低すぎる圧力が測定された場合、試料採取中は、ピストン17はその第2位置にあまりにも速く移動し、試料チャンバ15の容積は増大し、ピストン17がその第1位置に移動するときは、ピストン17はあまりにもゆっくり移動し、試料チャンバ15内に存在する反応混合物は、試料チャンバ15から分析ユニット21へあまりにもゆっくりと導かれる。高すぎる圧力が測定された場合、試料採取中は、ピストン17はあまりにもゆっくり移動し、その結果試料採取が十分な速度で行われないか、又は、ピストン17に作用する圧力が高すぎて、ピストン17が移動せず、したがって、サンプルが採取されないこととなる。ピストン17がその第1位置に移動するとき、過度に高い圧力の影響は、第1位置での過度に急速な移動であり、その結果、反応混合物が試料チャンバ15からあまりにも速く移動する。
【0062】
より長い期間にわたる反応の進行を分析するために、複数のサンプル容器が反応器に接続され、それらはそれぞれ連続的に試料を収容することができる。これは、例として図3の反応器で示される。
【0063】
反応器から複数の試料を連続して採取できるようにするために、反応器は多方向バルブ49を介して複数のサンプル容器13に接続されている。反応器と多方向バルブ49の間には、さらに三方向バルブ51が設けられている。三方向バルブ51は、反応器1からサンプル容器13への接続を確立するため、又は代替的に、サンプル容器13から分析ユニット21への接続を確立するために利用される。試料を採取できるようにするために、三方向バルブ51は、反応器1から多方向バルブ49への接続が開かれ、多方向バルブ49から分析ユニット21への接続は閉じられるように、調整される。次いで、多方向バルブ49は、試料採取時に充填されるそれぞれのサンプル容器13への接続を開くように使用される。したがって、サンプル容器13内に存在する試料の分析のために、三方向バルブ51は、三方向バルブ51から分析ユニット21への接続は開かれているようにして、多方向バルブ49を介してサンプル容器13への接続に接続され、該接続からは所望の試料は取得されて分析ユニット21へ案内される。
【0064】
多方向バルブ49により、1つのサンプル容器13への試料採取が終了した後、多方向バルブ49を切り替えて次のサンプル容器13への接続を開くことにより、簡単な方法で複数の試料を連続して採取することができる。これは、すべてのサンプル容器13に試料が存在するまで繰り返すことができる。したがって、1つのサンプル容器13が空になったら直ちに多方向バルブ49を別のサンプル容器13に切り替えることにより、試料採取の途中でも、個々のサンプル容器13から分析ユニット21に試料を連続して供給することも可能である。サンプル容器内のピストン17の移動を補助するために、各サンプル容器13はここでもガス導管19に接続され、その結果、図1及び図2について上述したように、ピストン17の動きは、試料チャンバ15から遠い側に圧力を加えることによって、又は、試料チャンバ15から遠い側に減圧を加えることによって、補助されることができる。この場合、多方向バルブ49を介して接続が開かれているサンプル容器13においてのみ、試料を収容し又は空にするためにピストン17を移動させることが可能であるため、すべてのピストンに同時に圧力をかけること、又はすべてのピストン17に同時に減圧をかけることが可能である。他のサンプル容器では、閉じられた接続のために、圧力平衡が確立され、ピストンの移動が防止される。
【0065】
ここでも、第3バルブ27が、ピストンの移動を補助するためにガスが案内されるガス導管19内に、収容されている。該バルブは、サンプル容器13が現在充填されているか、又は空にされているかを制御するために、圧力ゲージ52を備えていてもよい。反応器圧力より低い圧力の場合、サンプル容器13は充填され、反応器圧力より高い圧力の場合、サンプル容器13からの試料が分析ユニット21に供給される。
【0066】
図4は、反応分析装置のさらなる実施形態を示している。
【0067】
図4に示す実施形態は、複数の反応器1をサンプル容器13に接続する点で、図3に示す実施形態と異なる。反応器1をサンプル容器に接続するために、第2多方向バルブ53が含まれており、これを介して反応器1が三方向バルブ51に接続されている。ここに示す実施形態では、試料はいずれの場合も1つの反応器1から採取されることができる。この目的のために、第2多方向バルブ53は、試料が採取される反応器1から三方向バルブ51への接続が開かれているように、接続されている。他の反応器1から三方向バルブ51への接続は閉じられている。多方向バルブ49により、複数の試料を連続して採取することが可能となる。あるいは、各反応器から1つだけ試料を採取することも可能である。この場合、試料採取後、多方向バルブ49,53の両方が、さらなる反応器1からさらなるサンプル容器13への接続を開くように、切り替えられる。これは、すべての反応器から試料が採取され、すべての試料チャンバ15が試料を有するまで繰り返されることができる。
【0068】
試料採取後、試料は分析ユニット21に供給されることができる。これは、図3について上述したように行われる。ここに示す構造により、1つの試料を採取すること、又は1つの試料をサンプル容器13から分析ユニット21に導くことのみが可能である。反応器から試料を採取することと、既に採取した試料を別のサンプル容器13から分析ユニット21に供給することとを同時に行うことはできない。
【0069】
複数の反応器で同じ反応を行うためには、同じ反応物組成物を供給されるすべての反応器を共通混合器55に接続するのが有利である。異なる反応物組成物を供給される反応器は、異なる混合器5に接続される。各反応器で異なる組成物を調べる場合は、各反応器1を別々の混合器5に接続する必要がある。
【0070】
あるいは、すべての実施形態において、反応物を反応器1に直接導入し、上流の混合器5、55を不要にすることももちろん可能である。また、個々の反応物が適切な接続サイトを介して供給3に導入されることで、混合が供給3で行われることも可能である。
【0071】
さらに、複数の反応器が設けられ、それぞれが複数のサンプル容器に接続されるように装置を構成することも可能である。この場合、各反応器がそれぞれのサンプル容器群を有するため、第2多方向バルブ53は要求されない。
【0072】
図5は、さらなる実施形態における反応分析装置を示す。図4とは対照的に、図5に示される実施形態では、反応器1はそれぞれ分離器35に接続されている。反応器と分離器の構造は、図2に示すものに対応している。試料採取は、図4について上述したように行われる。
【0073】
図1図4について上述した実施形態とは異なり、分析領域は複数の分析ユニット21を有している。この目的のために、複数の三方向バルブ59,63が測定導管23内に収容されている。各三方向バルブ59,63を分析ユニット61,65への接続を開くために使用すること、又は、下流の三方向バルブ又は出口57への接続を開くことのいずれかが可能である。例えば、最初に、反応混合物が第1分析ユニット61に供給されるように、第1三方向バルブ59を切り替えることができる。続いて、反応混合物が第1分析ユニット61を通過して第2三方向バルブ63に導かれるように、第1三方向バルブ59を切り替える。次いで、反応混合物が第2分析ユニット65に導かれるように、第2三方向バルブ63を切り替える。試料が採取されない場合は、三方向バルブ59,63の両方が、反応混合物が出口57に行くように、切り替えられる。ここで、試料を分析ユニット61,65の1つのみに導くことも可能であり、利用される分析ユニット61,65は実施される分析に依存する。さらに、特に長く続く分析の場合には、第1の分析ユニット61に試料を供給し、その試料がまだ分析されている間に、別のサンプル容器から第2分析ユニット65へさらなる試料を供給することも可能である。分析に非常に長い時間がかかる場合は、分析を加速させるために、それぞれが並行して操作されることができるさらなる分析ユニットを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 反応器
3 供給
5 混合器
7 流出導管
9 試料導管
11 第1バルブ
13 サンプル容器
15 試料チャンバ
17 ピストン
19 ガス導管
21 分析ユニット
23 測定導管
25 第2バルブ
27 第3バルブ
29 ヒーター
31 第1位置センサ
33 第2位置センサ
35 分離器
37 引き抜き導管
39 第4バルブ
41 不活性ガス導管
43 ポンプ
45 制御可能バルブ
47 圧力調整器
49 多方向バルブ
51 三方向バルブ
52 圧力ゲージ
53 第2多方向バルブ
55 共通混合器
57 出口
図1
図2
図3
図4
図5