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特許7512270フラクション間情報を使用して画像を再構成および補正する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】フラクション間情報を使用して画像を再構成および補正する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240701BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61B6/03 560E
A61B6/03 560D
A61B6/03 577
A61N5/10 M
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021521751
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019063087
(87)【国際公開番号】W WO2020112685
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】62/773,712
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/773,700
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/796,831
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/800,287
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/801,260
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/813,335
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,116
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/836,357
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/836,352
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/843,796
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/878,364
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】1240 Deming Way, Madison, WI 53717 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイ チーツォン
(72)【発明者】
【氏名】パイ チョアンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン アミット
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シア ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンリー
(72)【発明者】
【氏名】マウラー カルヴィン アール. ジュニア
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0144510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61M 36/10 - 36/14
A61N 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフラクションにまたがって撮像する撮像装置であって、
放射線ビームを放出する回転する放射線源と、
前記放射線源からの放射線を受信するように配置されている検出器と、
データ処理システムであって、
以前のフラクションから以前のフラクションの散乱測定値を受信し、
現在のフラクションから現在のフラクションの散乱測定値を受信し、前記現在のフラクション中の一次対散乱比が、前記以前のフラクション中よりも大きく、
現在のフラクションの散乱測定値および以前のフラクションの散乱測定値に基づいて、現在のフラクションの散乱推定値を求める、
ように構成されている、前記データ処理システムと、
を備えている、撮像装置。
【請求項2】
現在のフラクションのスキャン構成が、以前のスキャン構成とは異なるスキャンパラメータ設定を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スキャンパラメータ設定が、治療計画および患者の特性に基づく、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
以前のフラクションのスキャン構成が、小さいヘリカルピッチ及び小さいビームフォーマ開口部に関連付けられるスキャンパラメータ設定を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記放射線源によって放出される前記放射線ビームの形状を調整するように構成されているビームフォーマ開口部を備えたビームフォーマ、
をさらに備えており、
前記現在のフラクション中の前記ビームフォーマ開口部が、前記以前のフラクション中の前記ビームフォーマ開口部より大きい、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記現在のフラクション中のヘリカルスキャンのピッチまたは円形スキャンのステップサイズが、前記以前のフラクション中の前記ピッチまたは前記ステップサイズより大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記データ処理システムが、
前記現在のフラクションのスキャンパラメータ設定がスキャンパラメータ限界値より小さいかを判定し、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さい場合、以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を調整し、前記以降のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整されたスキャンパラメータ設定に基づいて前記現在のフラクション中より大きく、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さくない場合、前記以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を保持する、
ようにさらに構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
放射線ビームを放出する回転する放射線源と、
前記放射線源からの放射線を受信するように配置されている検出器と、
データ処理システムと、
を有する撮像装置の作動方法であって、
前記データ処理システムが、
以前のフラクションから以前のフラクションの散乱測定値を受信するステップと、
現在のフラクションから現在のフラクションの散乱測定値を受信するステップであって、前記現在のフラクション中の一次対散乱比が、前記以前のフラクション中よりも大きい、受信するステップと、
前記現在のフラクションの散乱測定値および前記以前のフラクションの散乱測定値に基づいて、現在のフラクションの散乱推定値を求めるステップと、
実行する、方法。
【請求項9】
前記現在のフラクションの散乱推定値を求める前記ステップが、
前記現在のフラクションの散乱測定値に基づいてフラクション内散乱推定値を求めるステップと、
少なくとも1つの以前のフラクションの散乱測定値と、散乱とスキャンパラメータ設定との間の関係とに基づいて、フラクション間散乱推定値を求めるステップであって、現在のフラクションのスキャン構成が、以前のスキャン構成とは異なる少なくとも1つのスキャンパラメータ設定を備えている、求めるステップと、
前記フラクション内散乱推定値および前記フラクション間散乱推定値に基づいて、前記現在のフラクションの散乱推定値を求めるステップと、
を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記散乱と前記スキャンパラメータ設定との間の前記関係が、ビームフォーマ開口部に基づく前記一次対散乱比を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記データ処理システムが、
現在のフラクションのスキャンデータを、少なくとも1つの以前のフラクションのスキャンデータとレジスタリングするステップ、をさらに実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記データ処理システムが、
以降のフラクションの少なくとも1つのスキャンパラメータ設定を、現在のフラクションのデータおよび以前のフラクションのデータに基づいて調整するステップであって、前記以降のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整された少なくとも1つのスキャンパラメータ設定に基づいて前記現在のフラクション中より大きい、調整するステップ、をさらに実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
以降のフラクションの少なくとも1つのスキャンパラメータ設定を調整する前記ステップが、患者の特性にさらに基づく、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのスキャンパラメータ設定が、ヘリカルスキャンのピッチ、円形スキャンのステップサイズ、またはビームフォーマ開口部サイズを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
以降のフラクションの前記少なくとも1つのスキャンパラメータ設定を調整する前記ステップが、複数の異なるフラクションにまたがって散乱推定の質、ワークフロー、または患者線量の少なくとも1つを最適化するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記データ処理システムが、
前記現在のフラクションのスキャンパラメータ設定がスキャンパラメータ限界値より小さいかを判定するステップと、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さい場合、以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を調整するステップであって、前記以降のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整されたスキャンパラメータ設定に基づいて前記現在のフラクション中より大きい、調整するステップと、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さくない場合、前記以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を保持するステップと、
をさらに実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記データ処理システムが、
患者の特性が特性のしきい値を超えているかを判定するステップと、
前記患者の特性が前記特性のしきい値を超えている場合、次のフラクションのスキャンパラメータ設定を調整するステップであって、前記次のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整されたスキャンパラメータ設定に基づいて以前のフラクション中より小さい、調整するステップと、
をさらに実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記スキャンパラメータ設定を調整する前記ステップが、前記スキャンパラメータ設定を、初期スキャン構成に関連付けられる初期設定にリセットするステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記データ処理システムが、
前記現在のフラクションのスキャンパラメータ設定がスキャンパラメータ限界値より小さいかを判定するステップと、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さい場合、以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を調整するステップであって、前記以降のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整されたスキャンパラメータ設定に基づいて前記現在のフラクション中より大きい、調整するステップと、
前記現在のフラクションの前記スキャンパラメータ設定が前記スキャンパラメータ限界値より小さくない場合、患者の特性が特性のしきい値を超えているかを判定するステップと、
前記患者の特性が前記特性のしきい値を超えている場合、前記以降のフラクションの前記スキャンパラメータ設定を調整するステップであって、前記以降のフラクション中の前記一次対散乱比が、前記調整されたスキャンパラメータ設定に基づいて前記現在のフラクション中より小さい、調整するステップと、
をさらに実行する、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
放射線治療送達装置であって、
少なくとも部分的に患者支持台の周囲に配置されている回転可能なガントリーシステムと、
前記回転可能なガントリーシステムに結合されている第1の放射線源であって、治療用放射線源として構成されている、前記第1の放射線源と、
前記回転可能なガントリーシステムに結合されている第2の放射線源であって、前記治療用放射線源より小さいエネルギレベルを有する撮像用放射線源として構成されている、前記第2の放射線源と、
前記回転可能なガントリーシステムに結合されており、前記第2の放射線源からの放射線を受信するように配置されている放射線検出器と、
データ処理システムであって、
以前のフラクションから以前のフラクションの散乱測定値を受信し、
現在のフラクションから現在のフラクションの散乱測定値を受信し、前記現在のフラクション中の一次対散乱比が、前記以前のフラクション中より大きく、
前記現在のフラクションの散乱測定値および前記以前のフラクションの散乱測定値に基づいて、現在のフラクションの散乱推定値を求め、
前記現在のフラクションの散乱推定値に基づいて、前記現在のフラクションの患者画像を再構成し、
適応IGRT時、前記患者画像に基づいて前記第1の放射線源を介して治療放射線量を前記患者支持台上の患者に送達する、
ように構成されている、前記データ処理システムと、
を備えている、放射線治療送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、11個の米国仮特許出願、すなわち、第62/773,712号(出願日2018年11月30日)(代理人整理番号:38935/04001)、第62/773,700号(出願日2018年11月30日)(代理人整理番号:38935/04002)、第62/796,831号(出願日2019年1月25日)(代理人整理番号:38935/04004)、第62/800,287号(出願日2019年2月1日)(代理人整理番号:38935/04003)、第62/801,260号(出願日2019年2月5日)(代理人整理番号:38935/04006)、第62/813,335号(出願日2019年3月4日)(代理人整理番号:38935/04007)、第62/821,116号(出願日2019年3月20日)(代理人整理番号:38935/04009)、第62/836,357号(出願日2019年4月19日)(代理人整理番号:38935/04016)、第62/836,352号(出願日2019年4月19日)(代理人整理番号:38935/04017)、第62/843,796号(出願日2019年5月6日)(代理人整理番号:38935/04005)、第62/878,364号(出願日2019年7月25日)(代理人整理番号:38935/04008)、の利益を主張する。さらに本出願は、同じ日に出願された10個の米国非仮特許出願、すなわち、代理人整理番号38935/04019、タイトル「MULTIMODAL RADIATION APPARATUS AND METHODS」、代理人整理番号38935/04020、タイトル「APPARATUS AND METHODS FOR SCALABLE FIELD OF VIEW IMAGING USING A MULTI-SOURCE SYSTEM」、代理人整理番号38935/04011、タイトル「INTEGRATED HELICAL FAN-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY IN IMAGE-GUIDED RADIATION TREATMENT DEVICE」、代理人整理番号38935/04010、タイトル「COMPUTED TOMOGRAPHY SYSTEM AND METHOD FOR IMAGE IMPROVEMENT USING PRIOR IMAGE」、代理人整理番号38935/04013、タイトル「OPTIMIZED SCANNING METHODS AND TOMOGRAPHY SYSTEM USING REGION OF INTEREST DATA」、代理人整理番号38935/04015、タイトル「HELICAL CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY IMAGING WITH AN OFF-CENTERED DETECTOR」、代理人整理番号38935/04021、タイトル「MULTI-PASS COMPUTED TOMOGRAPHY SCANS FOR IMPROVED WORKFLOW AND PERFORMANCE」、代理人整理番号38935/04012、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR SCATTER ESTIMATION IN CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY」、代理人整理番号38935/04014、タイトル「ASYMMETRIC SCATTER FITTING FOR OPTIMAL PANEL READOUT IN CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY」、代理人整理番号38935/04018、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR IMPROVING SCATTER ESTIMATION AND CORRECTION IN IMAGING」、にも関連する。上に記載した特許出願および特許の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
開示する技術の態様は、コンピュータ断層撮影撮像に関し、詳細には、投影データにおける画像の再構成および補正に関し、より詳細には、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン中にフラクション間情報を利用して一次領域の投影データにおける散乱を推定する装置および方法、に関する。
【背景技術】
【0003】
コーンビームCTにおける散乱は、広いコリメーション開口部によって検出される光子の相当な部分を占めることがある(散乱防止グリッドが使用されていない場合を含む)。散乱は、画質(コントラストおよび定量精度を含む)に悪影響を与えることがある。したがって、画像誘導放射線治療(IGRT)の場合を含めて、コーンビームCTデータ処理および画像再構成には、散乱測定および散乱補正を適用することができる。IGRTでは、治療前、治療中、および/または治療後に、医用撮像技術(CTなど)を利用して患者の画像を収集することができる。
【0004】
散乱測定および散乱補正の方法のほとんどは、以下のカテゴリに分類される。第1のカテゴリは、モデルに基づく方法である。これらの方法では、データ取得システムと、X線と物質の間の相互作用プロセスの両方をモデル化する。データ取得システムをモデル化するには、撮像チェーン全体の主要な構成要素の詳しい知識と、患者の情報とが必要であり、患者の情報は、計画CTから、または散乱補正が行われていないファーストパス再構成(first-pass reconstruction)から取得することができる。これらの方法は、確率論的(例:モンテカルロシミュレーションに基づく方法)、または決定論的(例:放射伝達方程式に基づく方法)のいずれかで実現することができる。前者は計算コストが大きく、後者は、一般にこの分野で未解決の問題とみなされている。モデルに基づく方法は、一般に患者に固有であり、より正確である。しかしながら、これらの方法では、データ取得システムおよび患者に関する相当に多量の事前情報が必要であり、したがってこれらの方法の有効性は、モデル化の精度に大きく依存する。さらに、これらの方法は、要求される計算能力および計算時間も非常に大きく、ワークフローおよびスループットに重大な悪影響を及ぼす。
【0005】
第2のカテゴリには、デコンボリューションカーネル(deconvolution-kernel)に基づく方法がある。測定されるX線投影データは、一次カーネルと散乱カーネルの畳み込み結果とみなされる。これらの方法では、事前に確立される適切なカーネルを使用することによって、デコンボリューションプロセスを実行して一次カーネルと散乱カーネルを分離する。これらの方法は、ある程度実用的であり有効である。しかしながらこれらの方法は、特に、スキャンされるオブジェクトの物質および形状に関して、カーネルの設計に大きく左右される。
【0006】
第3のカテゴリには、直接的な測定に基づく方法(ビームストッパーアレイ(beam-stopper-array)や一次変調など)がある。これらの方法は、投影データを取得しながら散乱を測定することができる。事前情報は必要なく、したがって極めて堅牢かつ実用的である。このような方法の欠点としては、線量の浪費および/または画質の低下が挙げられる。
【0007】
直接的な測定に基づく別の方法では、縦方向において検出器の影領域から散乱を測定し、それを使用して、コリメーション開口部(一次領域)の内側に位置する散乱を推定する。ただしこの方法は、単一の円形スキャン用に設計されており(すなわち一次領域および散乱領域における測定が同じ回転中に同時に行われる)、コリメーション開口部の(縦方向における)両側の外側で検出器が使用できる必要があり、推定精度の点でも制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態においては、複数のフラクションにまたがって撮像中に散乱を推定する方法は、以前のフラクションから以前のフラクションの散乱測定値を受信するステップと、現在のフラクションから現在のフラクションの散乱測定値を受信するステップであって、現在のフラクション中の一次対散乱比(scatter-to-primary ratio)が、以前のフラクション中よりも大きい、ステップと、現在のフラクションの散乱測定値および以前のフラクションの散乱測定値に基づいて、現在のフラクションの散乱の推定値を求めるステップと、を含む。
【0009】
一実施形態に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたは複数の別の実施形態において同じ方法で、または類似する方法で、および/または、別の実施形態の特徴と組み合わせて、または別の実施形態の特徴の代わりに、使用することができる。
【0010】
本発明の説明は、請求項で使用されている単語、または請求項もしくは本発明の範囲を、限定するものではない。請求項で使用されている単語は、すべての通常の意味を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面(本明細書に組み込まれており本明細書の一部を構成している)には、本発明の実施形態が図解されており、上に記載した本発明の一般的な説明および以下に記載する詳細な説明と合わせて、本発明の実施形態を例示する役割を果たす。なお図に示した要素の境界(例:長方形、長方形のグループ、またはその他の形状)は、境界の一実施形態を表すことが理解されよう。いくつかの実施形態においては、1つの要素を複数の要素として設計することができる、または複数の要素を1つの要素として設計することができる。いくつかの実施形態においては、別の要素の内部の構成要素として示されている要素は、外部の構成要素として実施することができ、逆も同様である。さらに、要素は正しい縮尺で描かれていないことがある。
図1】開示する技術の一態様による例示的な撮像装置の斜視図である。
図2】開示する技術の一態様による、例示的な放射線治療装置に統合された撮像装置の概略図である。
図3】フラクション間情報を使用して散乱を推定する例示的な方法を描いた流れ図である。
図4】フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法を描いた流れ図である。
図5】フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法を描いた流れ図である。
図6】フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法を描いた流れ図である。
図7】複数の異なるフラクションにわたるビームフォーマの開口部に対する一次対散乱比(SPR)の、例示的なフィッティングプロセスの図である。
図8】フラクション間データを使用して散乱を推定および補正する例示的な方法を描いた流れ図である。
図9】フラクション間データを使用して散乱を推定および補正する別の例示的な方法を描いた流れ図である。
図10】放射線治療装置を使用するIGRTの例示的な方法を描いた流れ図である。
図11】例示的な画像に基づく送達前ステップを描いたブロック図である。
図12】撮像または画像に基づく送達前ステップ時に利用することのできる例示的なデータ源を描いたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示全体を通じて使用される例示的な用語を定義しておく。すべての用語の単数形および複数形は、いずれも各用語の意味を持つ。
【0013】
本明細書で使用される「構成要素」は、ハードウェアの一部、ソフトウェアの一部、またはこれらの組合せとして定義することができる。ハードウェアの一部は、少なくともプロセッサおよびメモリの一部を含むことができ、メモリは、実行するための命令を含む。構成要素は装置に関連付けられることがある。
【0014】
本明細書で使用される「ロジック」(「回路」と同義)は、(1つまたは複数の)機能または(1つまたは複数の)動作を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはそれぞれの組合せを含み、ただしこれらに限定されない。例えばロジックは、所望の用途またはニーズに基づいて、ソフトウェアによって制御されるマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)などのディスクリートロジック、または他のプログラマブルロジックデバイスおよび/またはコントローラを含むことができる。ロジックは、完全にソフトウェアとして実施することもできる。
【0015】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、実質的に任意の数のプロセッサシステムまたはスタンドアロンプロセッサ(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、およびデジタルシグナルプロセッサ(DSP)など)の1つまたは複数を任意の組合せで含み、ただしこれらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなど、プロセッサの動作をサポートする様々な別の回路に関連付けることができる。これらのサポート回路は、プロセッサまたはそれに関連する電子パッケージの内部または外部であってよい。サポート回路は、プロセッサと動作可能に通信する。ブロック図または他の図面において、サポート回路は必ずしもプロセッサとは別に示されていない。
【0016】
本明細書で使用される「信号」は、1つまたは複数の電気信号(アナログ信号またはデジタル信号を含む)、1つまたは複数のコンピュータ命令、ビットまたはビットストリームなどを含み、ただしこれらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される「ソフトウェア」は、コンピュータ、プロセッサ、ロジック、および/または他の電子デバイスに、機能、動作を実行させる、および/または所望の方法で挙動させる、1つまたは複数のコンピュータ可読および/またはコンピュータ実行可能の命令を含み、ただしこれらに限定されない。命令は、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、または動的にリンクされるソースまたはライブラリからの個別のアプリケーションまたはコードを含むプログラムなど、さまざまな形式で実施することができる。
【0018】
上の例示的な定義を示したが、本出願人は、これらの用語および別の用語には、本明細書に矛盾しない最も広義の妥当な解釈が使用されることを意図している。
【0019】
後からさらに詳しく説明するように、開示する技術の実施形態は、ワークフローおよび/または性能を改善するためのマルチパススキャンに関する。いくつかの実施形態においては、放射線治療送達装置および方法は、IGRTと組み合わせて、またはIGRTの一部として使用するための、CT用の統合された低エネルギ放射線源を利用することができる。特に、例えば、放射線治療送達装置および方法は、治療処置用の高エネルギ放射線源とともに、回転画像取得法を使用してガントリー内で撮像するための低エネルギのコリメート放射線源を組み合わせることができる。いくつかの実施形態においては、低エネルギ放射線源(例:kV)は、撮像の目的には、高エネルギ放射線源(例:MV)を使用するよりも高い画質を生成することができる。kVエネルギによって生成された画像は、MVエネルギによる画像よりも組織のコントラストが良好でありうる。ターゲットおよびリスク臓器(OARS)の可視化、適応治療モニタリング、および治療計画/再計画のためには、高い品質のボリューム撮像が必要となることがある。いくつかの実施形態においては、kV撮像システムは、位置決め、動き追跡、および/または、特性解析または補正機能のために使用することもできる。
【0020】
画像取得方法は、複数回転スキャン(multiple rotation scan)を含む、または利用することができ、複数回転スキャンは、例えば、連続スキャン(例:患者支持台をガントリーボアの中を縦方向に動かしながら中心軸の周りのヘリカル線源軌道を使用する)や、患者支持台を縦方向に段階的に動かしながらの不連続の円形のストップアンドリバーススキャン(non-continuous circular stop-and-reverse scan)とすることができる。
【0021】
様々な実施形態によれば、撮像装置は、例えばビームフォーマを使用して放射線源をコリメートする(例えばコーンビームまたはファンビームにコリメートすることを含む)。一実施形態においては、コリメートされるビームを、患者が移動する間に連続的に回転するガントリーと組み合わせることができ、結果としてヘリカル画像が得られる。
【0022】
いくつかの実施形態においては、高い品質のボリューム画像を完成させるためにスキャン回転が増えることに付随する時間は、放射線治療送達プラットフォームにおいてkV CT撮像を提供するために、高いガントリーレート/速度(例:高速スリップリング回転を使用し、例えば最大10回転/分(rpm)、最大20rpm、最大60rpm、またはそれ以上のrpmを含む)、高いkVフレームレート、および/またはスパースデータ再構成手法(sparse data reconstruction techniques)によって、軽減することができる。検出器(様々な列/スライスサイズ、構造、ダイナミックレンジなどを有する)、スキャンピッチ、および/または動的なコリメーションは、様々な実施形態における追加の特徴である(検出器の一部を選択的に照射するためと、アクティブな読み出し領域を選択的に定義するためを含む)。
【0023】
ヘリカルスキャン軌道は、円形スキャンと比較して、いくつかの利点を有し得る。例えばコーンビームアーチファクトが減少し、なぜならヘリカルスキャンでは、画像再構成のためのより完全な投影データが得られるためである。また、ヘリカルスキャンでは、狭い軸方向開口を使用して、縦方向の大きなカバー範囲にわたり投影データを取得することができ、これにより投影データにおける散乱汚染(scatter contamination)が相当に減少しうる。再構成された画像は、アーチファクトの頻度が低い点で著しく改善された画質を有することができ、結果として軟組織のコントラストが大きく向上する。さらに、ヘリカルスキャンでは、大きなピッチを使用してスキャン速度を改善することができる。
【0024】
図1および図2を参照し、これらの図は撮像装置10(例:X線撮像装置)を示している。X線撮像装置10は(図2に示したように)、様々な用途(IGRTを含む、ただしこれに限定されない)に使用できる放射線治療装置に関連付ける、および/または、放射線治療装置に統合できることが理解されよう。X線撮像装置10は、支持ユニットまたはハウジング14によって支持されている、またはハウジング14に収容されている回転可能なガントリーシステム(ガントリー12と称する)を含む。本明細書におけるガントリーとは、ターゲットの周りを回転するときに1つまたは複数の放射線源および/または関連する検出器を支持することのできる1つまたは複数のガントリー(例:リングまたはCアーム)を備えたガントリーシステムを指す。例えば、一実施形態においては、第1の放射線源および関連する検出器を、ガントリーシステムの第1のガントリーに取り付けることができ、第2の放射線源および関連する検出器を、ガントリーシステムの第2のガントリーに取り付けることができる。別の実施形態においては、2つ以上の放射線源および関連する(1つまたは複数の)検出器を、ガントリーシステムの同じガントリーに取り付けることができる(例えばガントリーシステムが1つのガントリーのみから構成される場合を含む)。ガントリー、放射線源、および放射線検出器の様々な組合せを、様々なガントリーシステム構成に組み合わせて、同じ装置内で同じボリュームを撮像および/または治療することができる。例えば、kV放射線源およびMV放射線源を、ガントリーシステムの同じガントリーまたは異なるガントリーに取り付けて、IGRTシステムの一部としての撮像および/または治療に、選択的に使用することができる。異なるガントリーに取り付けられる場合、これらの放射線源は独立して回転することができるが、依然として同じ(またはほぼ同じ)ボリュームを同時に撮像することができる。回転可能なリングガントリー12は、上に述べたように、10rpm以上の能力とすることができる。回転可能なガントリー12には、ガントリーボア16が画成されており、撮像および/または治療のために患者をこのボアの中に入れて位置決めすることができる。一実施形態によれば、回転可能なガントリー12は、スリップリングガントリーとして構成されており、撮像用放射線源(例:X線)および関連する放射線検出器の連続的な回転を提供する一方で、検出器によって受信される高品質の撮像データのための十分な帯域幅を提供する。スリップリングガントリーでは、装置に関連付けられる電力および信号を伝えるケーブルが巻き付く、および巻き付きが解除されるように、ガントリーの回転方向を交互にする必要がない。このような構成によって、たとえIGRTシステムに統合されているときでも、連続的なヘリカル(例:ファンビーム、コーンビームなど)コンピュータ断層撮影が可能になる。
【0025】
患者支持台18またはテーブル/寝台は、回転可能なガントリー12に隣接して配置されており、回転可能なガントリー12の中に移動させる、およびガントリー12の中で縦方向に移動させることができるように、一般には水平姿勢で患者を支持するように構成されている。患者支持台18は、例えばガントリー12の回転面に垂直な方向に(ガントリー12の回転軸に沿って、または回転軸に平行に)患者を動かすことができる。患者支持台18は、患者および患者支持台18の動きを制御する患者支持台コントローラに動作可能に結合することができる。命令された撮像計画および/または治療計画に従って患者の長手方向軸を中心に回転するように、患者支持台コントローラを、回転可能なガントリー12と、回転するガントリーに取り付けられている放射線源とに同期させることができる。いくつかの実施形態においては、患者支持台がボア16の中に入った時点で、最適な治療のために患者の位置を調整する目的で、患者支持台を限られた範囲内で上下左右に動かすこともできる。
【0026】
図2に示したように、X線撮像装置10は、回転可能なガントリー12に結合されている、またはガントリー12によって支持されている撮像用放射線源30を含む。撮像用放射線源30は、高品質の画像を生成するための放射線ビーム(全体を32として示してある)を放出する。この実施形態においては、撮像用放射線源は、キロボルト(kV)線源(例:約20kV~約150kVの範囲内のエネルギレベルを有する臨床用X線源)として構成されているX線源30である。一実施形態においては、kV放射線源は、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギ(keV)を備えている。撮像用放射線源は、撮像に適切な任意のタイプの透過スキャン用線源(transmission source)とすることができる。例えば、撮像用放射線源は、X線生成源(CT用を含む)、または十分なエネルギおよびフラックスを有する光子を生成する任意の別の方法(例えばガンマ線源(例:コバルト57、エネルギピーク122keV)、蛍光X線源(Pb k線を通じた蛍光源など、2つのピーク約70keVおよび約82keV)など)とすることができる。本明細書におけるX線、X線撮像、撮像用X線源などの言及は、特定の実施形態において例示的である。さまざまな別の実施形態においては、これらに代えて別の撮像用透過スキャン用線源を使用することができる。
【0027】
検出器34(例:2次元のフラットな検出器または湾曲した検出器)は、回転可能なガントリー12に結合する、またはガントリー12によって支持することができる。X線検出器34は、X線源30からの放射線を受信するように配置されており、X線源30と一緒に回転することができる。検出器34は、減衰されていない放射線量を検出する、または測定することができ、したがって患者または関連する患者のROIによって実際に減衰されたものを(最初に生成されたものと比較して)推測することができる。検出器34は、X線源30が患者の周囲を回転して患者の方に放射線を放出するときに、様々な角度からの減衰データを検出する、または収集することができる。
【0028】
X線検出器34は、開示する技術の範囲から逸脱することなく、複数の構造をとり得ることが理解されよう。図2に示したように、X線検出器34を、フラットパネル検出器(例:複数列フラットパネル検出器)として構成することができる。別の例示的な実施形態によれば、X線検出器34を、湾曲した検出器として構成することができる。検出器34は、チャネル方向および/または軸方向にオフセットした(すなわちシフトした)位置に調整することができる。
【0029】
図1および図2は、リングガントリー12に取り付けられた放射線源30を有するX線撮像装置10を描いているが、別の実施形態は、別のタイプの回転可能な撮像装置(例えば、Cアームガントリーおよびロボットアームベースのシステムを含む)を含むことができる。ガントリーベースのシステムでは、ガントリーが、アイソセンターを通る軸を中心に撮像用放射線源30を回転させる。ガントリーベースのシステムとしてはCアームガントリーが挙げられ、Cアームガントリーでは、撮像用放射線源30が、片持ち梁に似た方法で取り付けられており、アイソセンターを通る軸を中心に回転する。さらにガントリーベースのシステムとしては、ほぼトロイダル形状を有するリングガントリー(例えば回転可能なガントリー12)が挙げられ、リングガントリーでは、患者の身体がリング/トロイドのボアの中に延び、撮像用放射線源30がリングの周囲に取り付けられており、アイソセンターを通る軸を中心に回転する。いくつかの実施形態においては、ガントリー12は連続的に回転する。別の実施形態においては、ガントリー12は、順方向と逆方向とに反復的に回転するケーブルベースのシステムを利用する。
【0030】
コリメータまたはビームフォーマアセンブリ(全体を36として示してある)は、X線検出器34のアクティブ領域の一部分または領域を選択的に照射するために、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を選択的に制御および調整する目的で、X線源30に対して配置されている。ビームフォーマは、X線検出器34における放射線ビーム32の配置状態も制御することができる。一実施形態においては、ビームフォーマ36は、(例えばより薄い、またはより厚いスリットを形成するために)1つの角度/寸法を動かすことができる。別の実施形態においては、ビームフォーマ36は、(例えば様々なサイズの長方形を形成するために)2つの角度/寸法を動かすことができる。別の実施形態においては、ビームフォーマ36は、様々な別の動的に制御される形状(例えば平行四辺形を含む)に対応することができる。これらのすべての形状は、スキャン中に動的に調整することができる。いくつかの実施形態においては、ビームフォーマの遮断部分を回転させる、および/または平行移動させることができる。
【0031】
ビームフォーマ36は、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を、複数の幾何学形状に動的に調整するように制御することができ、複数の幾何学形状は、ファンビーム、または1つの検出器列の幅と同程度に小さいビーム厚さ(幅)を有するコーンビーム、または複数の検出器列(これは検出器のアクティブ領域の一部分のみである)を含むビーム厚さ(幅)を有するコーンビームを含み、ただしこれらに限定されない。様々な実施形態においては、ビームの厚さは、より大きな検出器のアクティブ領域の数センチメールを照射することができる。例えば、5~6センチメートルの検出器のうち(検出器平面において縦方向に測定される)3~4センチメートルを、撮像用放射線32によって選択的に照射することができる。この実施形態においては、投影画像データの3~4センチメートルを各読み出し部によってキャプチャすることができ、このとき検出器領域の片側または両側の約1~2センチメートルが照射されず、後から説明するように、この部分を使用して散乱データをキャプチャすることができる。
【0032】
別の実施形態においては、アクティブな検出器の、より多くの部分またはより少ない部分を撮像用放射線に選択的に照射させることができる。例えば、いくつかの実施形態においては、ビーム厚さを、約2センチメートル、1センチメートル、1センチメートル未満、または同程度のサイズの範囲まで低減することができる(より小型の検出器の場合を含む)。別の実施形態においては、ビーム厚さを、約4センチメートル、5センチメートル、5センチメートル超、または同程度のサイズの範囲に増大させることができる(より大きい検出器の場合を含む)。様々な実施形態においては、検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の比率を、30~90%または50~75%とすることができる。別の実施形態においては、検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の比率を、60~70%とすることができる。しかしながら、別の実施形態においては、照射される領域およびアクティブ領域の様々な別のサイズ、または検出器のアクティブ領域に対する照射される領域の様々な別の比率が適切であることもある。半影領域を超える散乱データをキャプチャするのに、検出器の影領域(アクティブであるが放射線によって直接照射されない領域)が十分であるように、ビームおよび検出器を構成することができる。
【0033】
様々な実施形態は、測定されるデータが、主(照射)領域および影領域に関して十分であるのみならず、速度および線量の制御に関しても最適化されるように、検出器34の選択的な照射を制御する形状・寸法(例:ビームサイズ、ビーム/開口中心、コリメーション、ピッチ、検出器読み出し範囲、検出器読み出し中心など)を最適化するステップを含むことができる。X線源30からの放射線ビーム32が、実行されている特定の撮像タスクに基づいてX線検出器34の大きな部分または小さな部分をカバーするように、ビームフォーマ36の形状/位置および検出器34の読み出し範囲を制御することができる。ビーム32は、様々な形状(例えば平行四辺形を含む)に成形することができる。ビームフォーマ36は、ビームフォーマ36のX線減衰材料の回転および/または並進によって放射線ビーム32の形状を調整するように構成することができる。
【0034】
コリメータ/ビームフォーマ36は、X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状を調整することを可能にする様々な方法で構成することができる。例えば、X線源30からの放射線ビームが通過できる開口部のサイズを定義および選択的に調整する一連の顎部または他の適切な部材を含むように、コリメータ36を構成することができる。1つの例示的な構成によれば、X線源30からの放射線ビームが通過する開口部のサイズを調整する目的と、撮像を最適化しかつ患者の線量を最小にするために、撮像されるべき患者の部分のみが照射されるように患者に対してビームの位置を調整する目的で、コリメータ36は上側顎部および下側顎部を含むことができ、上側顎部および下側顎部は異なる方向(例:平行な方向)に可動である。
【0035】
一実施形態によれば、X線源30からの放射線ビーム32の形状を、画像の取得中に変化させることができる。言い換えれば、例示的な一実装形態によれば、ビームフォーマ36のリーフ位置および/または開口部の幅を、スキャンの前またはスキャン中に調整することができる。例えば、一実施形態によれば、放射線ビーム32が、十分な主領域/影領域を持つ形状を有し、撮像中に関心オブジェクト(例:前立腺)のみを含むように調整されるように、X線源30の回転中にビームフォーマ36を選択的に制御し、動的に調整することができる。X線源30によって放出される放射線ビーム32の形状は、所望の画像取得に応じて、スキャン中またはスキャン後に変更することができ、所望の画像取得は、後からさらに詳しく説明するように、撮像および/または治療のフィードバックに基づくことができる。
【0036】
図2に示したように、X線撮像装置10は、回転可能なガントリー12に結合されている、または回転可能なガントリー12によって支持されている治療用放射線源20を含む放射線治療装置に統合することができる。一実施形態によれば、治療用放射線源20は、治療用放射線の線源(患者の中の関心領域内の腫瘍の治療に使用される高エネルギ放射線源など)として構成されている。治療用放射線源は、高エネルギX線ビーム(例:メガボルト(MV)X線ビーム)、および/または高エネルギ粒子ビーム(例:電子のビーム、光子のビーム、またはより重いイオン(炭素など)のビーム)、または別の適切な形態の高エネルギ放射線とすることができることが理解されよう。一実施形態においては、第1の放射線源20は、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギ(MeV)を備えている。一実施形態においては、高エネルギX線ビームは、0.8MeVより高い平均エネルギを有する。別の実施形態においては、高エネルギX線ビームは、0.2MeVより高い平均エネルギを有する。別の実施形態においては、高エネルギX線ビームは、150keVより高い平均エネルギを有する。一般的に、第1の放射線源20は、第2の放射線源30より高いエネルギレベル(ピークおよび/または平均など)を有する。
【0037】
一実施形態においては、治療用放射線源20は、治療用放射線を生成する直線加速器(LINAC)であり(例:MV線源)、撮像システムは、比較的低い強度かつ低エネルギの撮像用放射線を生成する独立したX線撮像用放射線源(例:kV線源)を備えている。別の実施形態においては、治療用放射線源20は、放射性同位元素(例えばCo-60など)とすることができ、一般に1MeVを超えるエネルギを有することができる。治療用放射線源20は、患者支持台18上に支持されている患者内の関心領域(ROI)の方に、治療計画に従って1本または複数の放射線ビーム(全体を22によって示してある)を放出することができる。いくつかの実施形態においては、治療用放射線源20を撮像用に使用することができる。
【0038】
検出器24は、回転可能なガントリー12に結合する、またはガントリー12によって支持することができ、治療用放射線源20からの放射線22を受信するように配置されている。検出器24は、減衰されていない放射線量を検出する、または測定することができ、したがって患者または関連する患者のROIによって実際に減衰されたものを(最初に生成されたものと比較して)推測することができる。検出器24は、治療用放射線源20が患者の周囲を回転して患者の方に放射線を放出するときに、様々な角度からの減衰データを検出する、または収集することができる。
【0039】
治療用放射線源20は、コリメータを含む、またはコリメータに関連付けることができることをさらに理解されたい。治療用放射線源20に関連付けられるコリメータは、撮像用線源30に関連付けられるコリメータ/ビームフォーマ36と同様に、複数の方法で構成することができる。例えば、コリメータ/ビームフォーマは、マルチリーフコリメータ(MLC:multi-leaf collimator)として構成することができ、マルチリーフコリメータは、最小限に開いた位置または閉じた位置と、最大限に開いた位置との間の1つまたは複数の位置に動くように動作可能な複数のインターレースリーフ(interlaced leaves)を含むことができる。放射線源によって放出される放射線ビームの望ましい形状が達成されるように、リーフを所望の位置に動かすことができることが理解されよう。一実施形態においては、マルチリーフコリメータ(MLC)は、ミリメートル以下のターゲティング精度が可能である。
【0040】
治療用放射線源20は、撮像用線源30と同じ平面または異なる平面(オフセット)に取り付ける、構成する、および/または動かすことができる。いくつかの実施形態においては、放射線源20,30を同時に作動させることに起因する散乱は、放射線の平面をずらすことによって低減することができる。
【0041】
放射線治療装置に統合されたとき、X線撮像装置10は、放射線送達手順(治療)を準備する(例:位置合わせおよび/またはレジストレーション)、計画する、および/または誘導するために使用される画像を提供することができる。一般的な準備は、現在の(治療中)画像を、治療前画像情報と比較することによって達成される。治療前画像情報は、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)データ、コーンビームCTデータ、磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)データ、ポジトロン放出断層撮影法(PET:positron emission tomography)データ、または3D回転血管造影法(3DRA:3D rotational angiography)データ、および/または、これらまたは別の画像診断法から得られた任意の情報、を含むことができる。いくつかの実施形態においては、X線撮像装置10は、治療中の患者、ターゲット、またはROIの動きを追跡することができる。
【0042】
再構成プロセッサ40は、検出器24および/またはX線検出器34に、動作可能に結合することができる。一実施形態においては、再構成プロセッサ40は、X線源30からX線検出器34によって受信される放射線に基づいて患者画像を生成するように構成されている。再構成プロセッサ40は、後からさらに詳しく説明する本方法を実行するために使用されるように構成できることが理解されよう。本装置は、情報(処理および再構成のアルゴリズムおよびソフトウェア、撮像パラメータ、以前の画像または以前に取得された画像(例:計画画像)からの画像データ、治療計画などを含む、ただしこれらに限定されない)を格納するのに適するメモリ44、をさらに含むことができる。
【0043】
X線撮像装置10は、オペレータ/ユーザインタフェース48を含むことができ、X線撮像装置10のオペレータは、X線撮像装置10と対話する、または制御して、スキャンパラメータまたは撮像パラメータなどに関連する入力を行うことができる。オペレータインタフェース48は、任意の適切な入力デバイス(キーボード、マウス、音声作動式コントローラなど)を含むことができる。X線撮像装置10は、X線撮像装置10のオペレータに出力を提供するためのディスプレイ52、または人が読むことのできる他の要素も含むことができる。例えば、ディスプレイ52は、再構成された患者画像や、X線撮像装置10の動作に関連する他の情報(撮像パラメータまたはスキャンパラメータなど)をオペレータが確認できるようにすることができる。
【0044】
図2に示したように、X線撮像装置10は、装置10の1つまたは複数の構成要素に動作可能に結合されているコントローラ(全体を60として示してある)を含む。コントローラ60は、装置10の全体的な機能および動作を制御する(X線源30および/または治療用放射線源20と、回転可能なガントリー12の回転速度および位置を制御するガントリーモータコントローラとに、電力およびタイミング信号を提供することを含む)。コントローラ60は、以下、すなわち、患者支持台コントローラ、ガントリーコントローラ、治療用放射線源20および/またはX線源30に結合されているコントローラ、ビームフォーマ36のコントローラ、検出器24および/またはX線検出器34に結合されているコントローラ、その他、の1つまたは複数を包含し得ることが理解されよう。一実施形態においては、コントローラ60は、他の構成要素、装置、および/またはコントローラを制御することのできるシステムコントローラである。
【0045】
様々な実施形態においては、再構成プロセッサ40、オペレータインタフェース48、ディスプレイ52、コントローラ60、および/または他の構成要素を組み合わせて、1つまたは複数の構成要素または装置にすることができる。
【0046】
装置10は、様々な構成要素、ロジック、およびソフトウェアを含むことができる。一実施形態においては、コントローラ60は、プロセッサ、メモリ、およびソフトウェアを備えている。本発明を制限することのない一例として、X線撮像装置および/または放射線治療システムは、特定の用途における撮像および/またはIGRTに関連する1つまたは複数のルーチンまたはステップを実施できる様々な他の装置および構成要素(例:特に、ガントリー、放射線源、コリメータ、検出器、コントローラ、電源、患者支持台)を含むことができ、ルーチンは、撮像、画像に基づく送達前ステップ、および/または治療送達を含むことができる(メモリに格納することのできるそれぞれの装置の設定、構成、および/または位置(例:経路/軌道)を含む)。さらに、(1つまたは複数の)コントローラは、メモリに格納されている1つまたは複数のルーチンまたはプロセスに従って、1つまたは複数の装置および/または構成要素を直接的または間接的に制御することができる。直接的な制御の例は、撮像または治療に関連付けられる様々な放射線源またはコリメータのパラメータ(出力、速度、位置、タイミング、変調など)の設定である。間接的な制御の例は、患者支持台コントローラまたは別の周辺装置に、位置、経路、速度などを伝えることである。X線撮像装置に関連付けることのできる様々なコントローラの階層は、適切な命令および/または情報が所望の装置および構成要素に伝えられるように、任意の適切な方法で編成することができる。
【0047】
さらに、本システムおよび本方法を別のコンピュータシステム構成を使用して実施できることが、当業者には理解されるであろう。本発明の図示した態様は、分散コンピューティング環境において実施することができ、分散コンピューティング環境では、特定のタスクが、通信ネットワークを通じてリンクされているローカルまたはリモートの処理装置によって実行される。例えば、一実施形態においては、再構成プロセッサ40を個別のシステムに関連付けることができる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールを、ローカルのメモリ記憶装置およびリモートのメモリ記憶装置の両方に配置することができる。例えば、X線撮像装置10とともに、リモートデータベース、ローカルデータベース、クラウドコンピューティングプラットフォーム、クラウドデータベース、またはこれらの組合せを利用することができる。
【0048】
X線撮像装置10は、本発明の様々な態様を実施するために、コンピュータを含む例示的な環境を利用することができ、コンピュータは、コントローラ60(例:プロセッサおよびメモリ(メモリ44とすることができる)を含む)およびシステムバスを含む。システムバスは、システムの構成要素(メモリを含む、ただしこれに限定されない)をプロセッサに結合することができ、他のシステム、コントローラ、構成要素、装置、およびプロセッサと通信することができる。メモリは、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、フラッシュドライブ、および任意の他の形式のコンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、ルーチンおよびパラメータを含む様々なソフトウェアおよびデータ(例えば治療計画を含みうる)を格納することができる。
【0049】
治療用放射線源20および/またはX線源30は、治療用放射線源20およびX線源30の相対的な動作を制御するように構成されているコントローラ60に動作可能に結合することができる。例えば、X線源30を、治療用放射線源20と同時に制御および動作させることができる。これに加えて、またはこれに代えて、実施されている特定の治療計画および/または撮像計画に応じて、X線源30を治療用放射線源20と順次に制御および動作させることができる。
【0050】
X線源30およびX線検出器34を、撮像スキャン時に患者の周囲を回転するように複数の方法で構成できることが理解されよう。一実施形態においては、X線源30の動きおよび照射を、患者支持体18の縦方向の動きに同期させることによって、手順中に患者画像の連続ヘリカル取得(a continuous helical acquisition)をもたらすことができる。放射線源20,30および検出器24,34の連続的な回転(例:患者を一定速度で移動させながらガントリーを連続的かつ一定に回転させる)に加えて、開示する技術の範囲から逸脱することなく、別のバリエーションを採用できることが理解されよう。例えば、回転可能なガントリー12に対して(一定速度または可変速度で)移動するように支持台が制御されるとき、患者支持台の上に支持されている患者の周りを、(上に説明したような連続的な回転ではなく)ガントリー12が「交互方向に」(例:時計回りの回転および反時計回りの回転の交互に)回転するように、回転可能なガントリー12および患者支持台を制御することができる。別の実施形態においては、連続的なステップアンドシュート円形スキャン(step-and-shoot circular scans)の場合、所望のボリュームがキャプチャされるまで、縦方向における患者支持台18の移動(ステップ)と、回転可能なガントリー12によるスキャン回転とを交互に行う。
【0051】
放射線源および/または患者支持台の様々な別のタイプの動きを利用して、投影データを生成するための、放射線源と患者の相対運動を達成することができる。放射線源および/または患者支持台の不連続な運動、連続的であるが可変/非一定の(線形および非線形を含む)運動、速度、および/または軌道など、およびこれらの組合せを使用することができる(上に説明した放射線治療装置10の様々な実施形態との組合せを含む)。
【0052】
一般的に、患者の治療コース(treatment course)は、複数のフラクションを含むことができる。様々な実施形態においては、治療コース全体は、全体として、フラクション間情報を利用して画像の再構成および補正(散乱の推定を含む)を最適化することができる。これは例えば、治療コースの最初に高い精度の散乱推定を実行するステップを含むことができる。以降のフラクションにおいては、ワークフローを改善し患者線量を減らすために、スキャン構成を徐々に変化させることができ、ただし散乱測定の質が低下する(すなわち一次データに対する散乱データの比率が増大する)可能性がある。散乱の含有量は、一般にビーム幅が大きいほど増大し、散乱の分布のサンプリングは、ビーム幅が大きいほど低密度に(低い精度に)なり、一次対散乱比が増大する。後から詳しく説明するように、例えばワークフローを改善する、および/または患者線量を減らす目的で、(例えばスキャンパラメータ設定を介して)スキャン構成を調整する(例えば緩和するまたはタイトにする)ことは、一次データ対散乱比に影響することがある。緩和された構成からの散乱の測定は、以前のフラクションからの測定と比較して、より高い一次対散乱比に関連付けられることがあるが、現在のフラクションにおける散乱推定の質は依然として十分でありうる。例えば、より高い一次対散乱比を有する散乱推定の質は、低下しうるが、以前のフラクションからの散乱推定を組み合わせることによって、少なくとも2つの理由で、十分である、または以前のフラクションと同じである、または改善されることがある。第一に、散乱は極めて低い頻度であり得、フラクションごとにほとんど変化しないものと予期され、したがって最初のフラクションからの非常に高い精度の散乱推定を、現在のフラクションの散乱において依然として有効であるとみなすことができる。第二に、複数の異なるフラクションにわたり、より多くの散乱測定値が生成され、したがって散乱推定用により多くのデータが利用可能であり、これにより散乱推定が改善されて外れ値が除外される可能性がある。
【0053】
この手法は、患者の体形が安定している(これは少ない数の(例:5つ前後の)フラクションを含む少数フラクション化治療(hypofractionation treatment)の場合にあてはまる)場合にはうまく機能するが、多数の(例:30前後の)フラクションを含む従来のフラクション化ではうまく機能しないことがある。したがって、いくつかの実施形態においては、患者情報(体重、肥満度指数(BMI)、体形など)を、フラクションごとに監視することもできる。患者に相当な変化が観察された時点で、タイトなスキャン構成を再び有効にすることができ、フラクション間プロセスを再開することができる。
【0054】
いくつかの実施形態においては、この手法を適応ワークフローに統合することができ、この場合、高い精度のスキャン散乱推定の質が低下することを適応ソフトウェアがユーザに伝えることができる。
【0055】
以降の流れ図およびブロック図は、上に説明したシステムによる散乱推定に関連付けられる例示的な構成および方法を示している。例示的な方法は、ロジック、ソフトウェア、ハードウェア、またはこれらの組合せにおいて実行することができる。さらに、これらの手順および方法は、ある順序で提示されているが、ブロックを異なる順序(連続的および/または並行を含む)で実行することができる。したがって以下のステップ(撮像、画像に基づく送達前ステップ、および治療送達を含む)は、ある順序で示してあるが、同時に実行することができる(リアルタイムでの実行を含む)。さらには、追加のステップを使用する、またはより少ないステップを使用することができる。
【0056】
図3は、フラクション間情報を使用して散乱を推定する例示的な方法300を描いた流れ図である。方法300は、治療コースを全体として考慮することができ、フラクション間情報を使用して、散乱推定、患者線量、および/またはワークフローの間のバランスを最適化することができる。一般的に、方法300は、例えば、治療コース全体の最初の段階において質の高い散乱推定を行うために、タイトなスキャン構成(小さいヘリカルピッチや小さいビームフォーマ開口部など)から開始することができる。推定の質および/または安定性を改善するため、各フラクションの散乱は、現在の測定値および以前のフラクションからの測定値を使用して推定される。散乱推定の十分な質(例えば同じかまたは改善される散乱推定の質を含む)を維持しながらワークフローを改善し患者線量を減らすため、フラクションごとにスキャン構成を緩和することができる。
【0057】
構成がその(1つまたは複数の)限界値の範囲内である限り(例えば、許容される最大ピッチ以下、および/または最大ビームフォーマ開口部以下にある)、ワークフローを継続的に調整することができる(例えば、それぞれ異なる一次対散乱比に関連付けられる、低下した質の散乱測定値が許容されるように緩和する、または改善された質の散乱測定値を生成するためにタイトにすることを含む)。方法300は、(患者の大きな変化が予測されない)少ない数のフラクションを含む治療コースの場合に十分でありうる。
【0058】
方法300は、入力305(タイトなスキャン構成による初期化を含む)から開始することができる。タイトなスキャン構成に関して、最初のフラクションの散乱推定が極めて正確であるように、スキャンプロトコルを、散乱推定に有利であるように(例:タイトに)(例えば、ビームフォーマの小さい開口部および小さいピッチを使用して)良好に設計することができる。このプロトコルに必要な時間は比較的長くなりうるが、この状況が起こりうるのは最初のうち(例えば1回または2回)であり、その影響は治療全体からすると許容可能であるとみなすことができる。
【0059】
ステップ310は、現在のフラクションの散乱を測定するステップを含む。散乱測定は、ターゲットの方に向けられた放射線源からの投影データ(一次データを含む)の全体的な測定および処理に関連付けることができ、例えば、上述したスキャン構成およびスキャンパラメータの設定を有する、放射線ビームを放出するための回転する放射線源、放射線源からの放射線を受信するように配置された検出器、放射線源によって放出される放射線ビームの形状を調整するように構成されたビームフォーマ開口部を有するビームフォーマ、および/または、データ処理システムを使用することを含む。様々な散乱測定方法(例えば、ビームストッパーアレイ、または参照によって本明細書に組み込まれている出願に記載されている任意の別の手法の使用を含む)を適用することができる。(例:代理人整理番号38935/04012、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR SCATTER ESTIMATION IN CONE-BEAM COMPUTED TOMOGRAPHY」、および代理人整理番号38935/04018、タイトル「METHOD AND APPARATUS FOR IMPROVING SCATTER ESTIMATE AND CORRECTION IN X-RAY IMAGING」)なお、すべてのフラクションの散乱測定はデータ記憶装置315に格納することができ、以降のフラクション(存在時)において利用することができる。
【0060】
ステップ320においては、現在のフラクションからのデータを、1つまたは複数の以前のフラクションとレジストレーションすることができる。様々な実施形態においては、このレジストレーションは、実際の考慮に応じて、剛体レジストレーションまたは変形可能なレジストレーションとすることができる。これらの考慮では、速度、リソース、およびニーズの間でバランスを取ることができる。変形可能なレジストレーションの方が良好な結果が得られるが、計算負荷が大きく、時間もかかる。散乱は一般に低頻度であるため、様々な用途において剛体レジストレーションで十分でありうる。したがって、両方のタイプのレジストレーション手法がオプションであり、様々な実施形態は、特定のレジストレーション手法に限定されない。また、データ記憶装置315は、レジストレーションされたデータおよびレジストレーション情報と、開示する技術に関連付けられる任意の別のデータ(例:現在のフラクションおよび/または以降のフラクション中に必要なデータ)を格納するために使用することができる。
【0061】
ステップ330においては、本方法は、現在のフラクションの散乱測定値と少なくとも1つの以前のフラクションの散乱測定値とに基づいて、現在のフラクションの散乱推定値を求めることができる。一実施形態においては、このステップは、現在のフラクションの散乱測定値に基づいてフラクション内散乱推定値を求めるステップと、少なくとも1つの以前のフラクションの散乱測定値と、散乱とスキャンパラメータ設定との間の関係とに基づいてフラクション間散乱推定値を求めるステップ(例:現在のフラクションのスキャン構成は、以前のスキャン構成とは異なる少なくとも1つのスキャンパラメータ設定を含む)と、フラクション内散乱推定値とフラクション間散乱推定値とを組み合わせることによって現在のフラクションの散乱推定値を求めるステップと、を含む。
【0062】
ステップ330は、現在のフラクションおよび以前のフラクションの両方からのデータを使用する最適化プロセスを含むことができる。例えば、最適化プロセスを使用して、散乱、一次、および/または一次対散乱比(SPR)の改善された推定を求めることができる。この最適化では、フラクション内情報およびフラクション間情報(利用可能時)の両方を考慮することができる。例えば、現在のフラクションを対象に、ステップ330では、選択された手法に基づき、フラクション内情報を使用して、最初に、散乱、一次、および/またはSPR情報を推定することができる。次に、散乱情報に関してフラクションの間に固有な関係が存在するものと想定して、データを改善または最適化することができる。
【0063】
例えば、さらに図7も参照し、SPRが、スキャンパラメータ設定であるビームフォーマ開口部サイズの関数であると想定すると、最適化では、異なるフラクションにわたる、ビームフォーマ開口部に対するSPRのフィッティングプロセスを実行することができる。図7は、ファントムおよび肺+脂肪層の場合の、ビームフォーマ開口部とSPRとの間の例示的な線形関係を示している。スキャンパラメータ設定と散乱測定値との間の様々な別の関係を使用することができる(非線形フィッティング手法の使用を含む)。このようなプロセスは、例えば散乱推定に使用されるビューに関与する生体構造の急激な変化に起因して起こる不正確な散乱測定値を除外する目的にも使用することもできる。
【0064】
次いで、次のフラクションの準備において、方法300は、例えばワークフローを改善する、または患者線量を減らすためにスキャン構成を緩和することができるか(ただしより高い一次対散乱比が許容される)を判定する。スキャンパラメータ設定の構成限界値は、緩和プロセス時に散乱測定の最小レベルの質が維持されるように設定することができる。ステップ340において、本方法は、(例えばスキャンパラメータ設定に関連付けられる)1つまたは複数の構成限界値に達しているかを判定する。ワークフローの改善および患者線量の低減に関連して、散乱測定の特定の品質(例:最大SPR)を維持しなければならない。様々な実施形態においては、スキャンパラメータの構成限界値は、関連する散乱測定値が、用途のニーズに応じた最小限の画質要件を満たすように、設定することができる。
【0065】
1つまたは複数のスキャンパラメータ設定が、それぞれの構成限界値にまだ達していない場合、本方法はステップ350に進み、スキャン構成を調整する。このステップは、スキャン構成をさらに緩和しても最終的な散乱推定の質が最小レベルより低下しないと判定される場合にのみ、実行される。スキャンパラメータ設定の調整は、任意の適切なアルゴリズムまたは手法に従って行うことができる(例えば、直線軌道または非直線軌道に沿った所定の増分、構成限界値に達するまでの残りの許容量の割合、パラメータ設定値の組合せ(例:ピッチ/ステップサイズに依存するビームフォーマ開口部またはこの逆)、患者の特性(例:BMI)、これらの組合せ、に基づくことを含む)。様々な実施形態においては、調整は、少ない数のパラメータ(例えばビームフォーマ開口部、患者支持台の移動のステップサイズ、または有効ピッチなど)に適用されるように制限することができる。様々な実施形態においては、調整では、他のパラメータ(例えば管電流、管電位、フィルタ、回転時間など)の変更を回避することができる。
【0066】
一実施形態においては、ステップ350において以降のフラクションのスキャンパラメータ設定を緩和するステップは、現在のフラクションのデータおよび以前のフラクションのデータに基づいており、この場合、スキャンパラメータ設定が緩和される理由で、以降のフラクションの散乱測定値が、現在のフラクションの散乱測定値より高いSPRに関連付けられる。様々な実施形態においては、以降のフラクションのスキャンパラメータ設定を調整するステップは、用途/治療に関連付けられる様々な優先度に従って、複数の異なるフラクションにわたり散乱推定の質、ワークフロー、および/または患者線量を最適化するステップを含む。例えば、異なる状況において、品質、時間、および/または線量を異なる程度に最適化する、またはバランスをとるために、上で述べた構成限界値および/または調整をすべて異なって重み付けることができる。
【0067】
利用可能なスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値に達した場合、本方法はステップ360に進み、さらに緩和する、または質を低下させることなく、次のフラクションのスキャン構成を保持または維持する。
【0068】
次に本方法は、ステップ310において次のフラクションの散乱測定に進み、これを治療が完了するまで継続する。
【0069】
図4は、フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法400を描いた流れ図である。方法400は、方法300と同様に、治療コースを全体として考慮することができ、フラクション間情報を利用して、散乱推定、患者線量、および/またはワークフローの間のバランスを最適化することができる。しかしながら方法400では、スキャン構成をタイトにするかまたはリセットが必要となりうる患者の変化を考慮するステップが追加される。このことは、例えば、患者の変化によって、現在の患者の状況への以前のフラクションの散乱測定値の適用性が低下する状況において起こりうる。(すなわち、現在のフラクションにおいて以前のフラクションの散乱測定値を使用する上述した想定は、フラクション間での患者の安定性または一貫性のレベルに基づいており、患者情報が変化すると適用性または信頼性が低下する。)この方法400は、方法300と同様にスキャン構成を調整する内側ループと、患者情報を監視する外側ループとから構成されるものとみなすことができ、例えば内側ループが外側ループの構成要素である。
【0070】
一般的には、方法400は、治療コース全体の最初の段階において質の高い散乱推定を行う目的で、タイトなスキャン構成(例えば小さいヘリカルピッチおよび小さいビームフォーマ開口部など)から開始することができる。内側ループでは、方法300と同様に、推定の質および安定性を改善するため、現在の測定値と、利用可能な以前のフラクションからの測定値を使用して、各フラクションの散乱を推定する。同じかまたは改善される散乱推定の質を維持しながら、ワークフローを改善し、患者線量を減らすため、フラクションごとにスキャン構成を調整する(例:緩和する)ことができる。方法300と同様に、様々なスキャンパラメータ設定について構成が構成限界値の範囲内である限り、ワークフローを継続的に調整することができる。例えば、許容される最大ピッチ以下である、および/または、最大ビームフォーマ開口部以下であるときである。
【0071】
しかしながら方法400では、方法400の安定性を改善する目的で、外側ループが、患者情報(例えば肥満度指数(BMI)を含む)を監視するように設計されている。例えば測定可能値をしきい値と比較することによって、患者の情報または特性が相当に変化したと判定される場合、例えばもう一度内側ループを開始する前に、スキャン構成をタイトにする、またはタイトなスキャン構成にリセットすることができる。
【0072】
例えば、一実施形態においては、(患者の大きな変化が予測されない)小さい数のフラクションを含む治療コースの場合、ワークフローは(例えば上述した方法300と同様に)内側ループ内にとどまることができる。別の実施形態においては、大きい数のフラクションを含む治療コースの場合、治療コース中に患者に起こる変化量に応じて、外側ループを利用することができる。
【0073】
ステップ440においては、方法400は、上述した方法300のステップ340と同様に次のフラクションのための準備において、例えばワークフローを改善する、または患者線量を減らすために、スキャン構成を緩和することができるか(ただしより高い一次対散乱比が許容される)を判定する。1つまたは複数のスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値にまだ達していない場合、本方法はステップ350に進み、スキャン構成を調整する。
【0074】
しかしながら、利用可能なスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値に達している場合、本方法400はステップ460に進み、患者情報をチェックする。患者情報を使用して、患者に起きた変化(例えば、体形、体重、BMIなど)の量を監視することができる。監視される情報の変化量が特定のしきい値(例:BMIの10%の変化)を超えている場合、次のフラクションが、タイトにされた、またはリセットされたスキャンパラメータ設定を有するスキャン構成を含む(より低いSPRにつながる)ことができるように、様々なしきい値を定義することができる。様々な実施形態においては、患者情報がしきい値を超えたかを判定するステップは、1つの測定可能値、複数の測定可能値、および/または、測定可能値の組合せに基づくことができる(測定可能値が体重および/または優先度を有する場合を含む)。
【0075】
患者情報がしきい値を超えている場合、本方法はステップ480に進み、スキャンパラメータ設定が調整される理由で次のフラクションの散乱測定が以前のフラクションの散乱測定に対して改善されるように、以降のフラクションのスキャンパラメータ設定を調整することによって、スキャン構成をリセットする。この実施形態においては、スキャン構成をリセットするステップは、改善された精度または質で散乱を再推定する目的で、ステップ305において次のフラクションをタイトなスキャン構成から開始するステップを含む。様々な実施形態においては、再設定では、用途に応じて、最初のフラクションの構成に戻ることができる、または散乱測定の質を改善するために専用のアルゴリズムによって調整する(例:タイトにする)ことができる。
【0076】
患者情報がしきい値を超えていない場合、本方法はステップ470に進み、緩和するかまたはタイトにして散乱測定の質を調整することなく、次のフラクションのスキャン構成を保持または維持する。
【0077】
次いで本方法は、ステップ310における次のフラクションの散乱測定に進み、これを治療が完了するまで継続する。
【0078】
なお、様々な実施形態においては、現在のフラクションのスキャンパラメータ設定がスキャンパラメータの限界値より小さいかを判定するステップと、患者の特性が特性のしきい値を超えているかを判定するステップは、異なる順序で、異なるタイミングで実行できることを理解されたい。
【0079】
例えば、一実施形態においては、図5は、フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法500を描いた流れ図である。この実施形態では、構成の限界値がチェックされる前に、ステップ540において、患者情報がしきい値を超えているかを判定する。
【0080】
患者情報がしきい値を超えていない場合、方法500はステップ550に進み、利用可能なスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値に達しているかを判定する。上述したように、利用可能なスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値に達していない場合、本方法はステップ560に進み、スキャン構成を調整する(例:スキャンパラメータ設定を緩和する)。利用可能なスキャンパラメータ設定がそれぞれの構成限界値に達している場合、本方法はステップ570に進み、現在の構成を保持する。
【0081】
患者情報がしきい値を超えている場合、方法500はステップ580に進み、上述したようにスキャン構成をリセットする。それ以外のステップは、方法300のステップと同様に実施することができる。
【0082】
別の実施形態においては、図6は、フラクション間情報を使用して散乱を推定する別の例示的な方法600を描いた流れ図である。この実施形態においては、ステップ310で現在のフラクションの散乱を測定する前に、ステップ670において、患者情報がしきい値を超えているかを判定する。
【0083】
患者情報がしきい値を超えていない場合、方法600はステップ310に進み、上述したように現在のフラクションの散乱を測定する。患者情報がしきい値を超えている場合、方法600はステップ680に進み、上述したようにスキャン構成をリセットする。残りのステップは、方法300のステップと同様に実施することができる。
【0084】
図8は、上述した方法など、フラクション間データを使用して散乱を推定および補正する例示的な方法800を描いた流れ図である。入力は、任意のオプションの以前のデータおよび/またはスキャン設計を含むことができる。この実施形態においては、ステップ810は、データを取得するステップを含む。例えば、コリメートされる放射線ビームをターゲットおよび放射線検出器の方に投影する放射線源の回転中、本方法は、上述した実施形態のいずれかに従って、現在のフラクションの間に投影データ(一次+散乱)を測定する。
【0085】
ステップ810におけるデータを取得するステップは、スキャンの前および/またはスキャン中に放射線ビームの形状/位置をビームフォーマによって調整するステップをさらに含むことができる。ビームフォーマによって放射線ビームを調整するステップは、放射線ビームの形状/サイズを変化させるためにスキャン中にビームフォーマの強い減衰材料を回転および平行移動させるステップを含むことができる(スキャン中により多くの、またはより少ない散乱を生成するためを含む)。
【0086】
次にステップ820は、散乱を推定するステップを含む。例えば、本方法は、上述した実施形態のいずれかに従って、現在のフラクションおよび以前のフラクションからの散乱測定値を使用して投影データにおける散乱を推定する。次にステップ830は、散乱を補正するステップを含む。例えば、投影データから、ステップ820からの推定された散乱を差し引いて、散乱が補正された投影データを取得する。出力は、撮像に適する、散乱が補正された投影データを含む。様々な実施形態では、異なるスキャン構成、検出器の配置/アクティブ領域、ビームフォーマの配置/窓形状などを利用することができる。
【0087】
図9は、上述した方法など、フラクション間データを使用して散乱を推定および補正する別の例示的な方法900を描いた流れ図である。入力は、任意のオプションの以前のデータおよび/またはスキャン設計を含むことができる。この実施形態においては、ステップ910は、フラクション1(以前のフラクションとすることができる)の間にデータを取得するステップを含み、本方法は、フラクション1の間に投影データ(一次+散乱)を測定する。次にステップ920においては、本方法は、上述したように、測定された散乱、以前の構成設定、および/または患者情報に基づいて、スキャン構成のスキャンパラメータ設定を調整する。例えば、ステップ920では、ビームフォーマ開口部および/またはスキャンピッチ/ステップサイズを調整することができる。次にステップ930は、フラクション2の間にデータを取得するステップを含み、本方法は、フラクション2の間に投影データ(一次+散乱)を測定する。次にステップ940においては、本方法は、フラクション1およびフラクション2からの測定された散乱データを組み合わせることができる(様々なモデルフィッティング手法の使用を含む)。
【0088】
次にステップ950は、散乱を推定するステップを含み、本方法は、フラクション1およびフラクション2からの散乱測定値を使用して、フラクション2の投影データの散乱を推定する。次にステップ960は、散乱を補正するステップを含み、本方法は、投影データから、推定された散乱を差し引いて、散乱が補正された投影データを取得する。出力は、撮像に適する、散乱が補正された投影データを含む。方法900のステップは、方法800のステップと同様に、上述した実施形態のいずれかに従って実施することができる。
【0089】
スキャンパラメータ、調整値、限界値、しきい値などを求めるために、1つまたは複数の最適化プロセスも上の実施形態のすべてに適用可能である。
【0090】
図10は、放射線治療装置(例えばX線撮像装置10を含む)を使用するIGRTの例示的な方法1000を描いた流れ図である。患者の以前の画像データ1005を使用することが可能であり、この画像は、以前に取得された計画画像(以前のCT画像を含む)とすることができる。以前のデータ1005は、治療計画、ファントム情報、モデル、事前情報などを含むこともできる。いくつかの実施形態においては、以前の画像データ1005は、同じ放射線治療装置によって、ただしより早い時間に、生成される。ここで以前の画像データ1005は、以前のフラクションからのデータを含むこともできる。ステップ1010においては、低エネルギ放射線源(例:X線源30からのkV放射線)を使用して、患者の撮像を実行する。一実施形態においては、撮像は、ファンビーム形状またはコーンビーム形状によるヘリカルスキャンを含む。ステップ1010は、上述した投影データ処理手法を使用して(1つまたは複数の)高品質(HQ)画像または撮像データ1015を生成することができる。いくつかの実施形態においては、画質/解像度と線量との間のバランスを最適化するために、画質を調整することができる。言い換えれば、すべての画像が最高品質である必要はない、または、画質/解像度と画像取得時間との間のバランスを最適化するかまたはトレードオフする目的で、画質を調整することができる。撮像ステップ1010は、(例えば上述した方法に従って)撮像データに基づいて患者画像を生成するための画像処理をさらに含むことができる。画像処理ステップ1020は、撮像ステップ1010の一部として示してあるが、いくつかの実施形態においては、画像処理ステップ1020は個別のステップである(画像処理が個別の装置によって実行される場合を含む)。
【0091】
次にステップ1030においては、1つまたは複数の、画像に基づく送達前ステップ(後から説明する)を、ステップ1010からの撮像データ1015に少なくとも部分的に基づいて実行する。後からさらに詳しく説明するように、ステップ1030は、治療処置および(次の)撮像計画に関連付けられる様々なパラメータを決定するステップを含むことができる。いくつかの実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ(1030)では、治療送達(1040)前に、より多くの撮像(1010)を必要とすることがある。ステップ1030は、適応放射線治療ルーチン(adaptive radiotherapy routine)の一部として、撮像データ1015に基づいて治療計画を適応させるステップを含むことができる。いくつかの実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ1030は、リアルタイムの治療計画を含むことができる。実施形態は、撮像用放射線源および治療用放射線源を同時に作動させる、一部が重なるように作動させる、および/または交互に作動させることを含むこともできる。リアルタイムの治療計画は、撮像用放射線および治療用放射線のこれらのタイプの作動手法(同時、重なり、および/または交互)のいずれかまたはすべてを含むことができる。
【0092】
次にステップ1040においては、高エネルギ放射線源(例:治療用放射線源20からのMV放射線)を使用して治療処置送達を実行する。ステップ1040では、治療計画に従って患者に治療線量1045を送達する。いくつかの実施形態においては、IGRT方法1000は、様々な間隔での追加の撮像のためにステップ1010に戻ることを含むことができ、続いて必要に応じて、画像に基づく送達前ステップ(1030)および/または治療送達(1040)を行うことができる。このようにして、適応治療が可能な1台の装置10を使用して、IGRT中に高品質の撮像データ1015を生成して利用することができる。上に述べたように、ステップ1010、ステップ1020、ステップ1030、および/またはステップ1040は、同時に、一部が重なるように、および/または交互に、実行することができる。
【0093】
IGRTは、少なくとも2つの一般的な目標、すなわち(i)高いレベルで適合する線量分布をターゲットボリュームに送達すること、および(ii)すべての治療フラクションを通じて高い精度で治療用ビームを送達すること、を含むことができる。第3の目標は、上記2つの一般的な目標を、フラクションあたりできる限り短時間で達成すること、とすることができる。治療用ビームを正確に送達するには、高品質の画像を使用して、フラクションにおけるターゲットボリュームの位置を識別および/または追跡する能力が要求される。送達速度を高めるためには、治療計画に従って放射線源を正確かつ高精度で迅速に動かす能力が要求される。
【0094】
図11は、上のステップ1030に関連付けることのできる、例示的な、画像に基づく送達前ステップ/オプションを描いたブロック図1100である。(例えば放射線治療装置の一部としての)上述したX線撮像装置10は、本発明の範囲から逸脱することなく、画像に基づく送達前ステップ(1030)を含めて様々に使用することのできるkV画像を生成できることが理解されよう。例えば、放射線治療装置によって生成される画像1015を使用して、治療の前に患者を位置合わせすることができる(1110)。患者の位置合わせは、現在の撮像データ1015を、より早い時点での治療前のスキャンおよび/または計画(治療計画を含む)に関連する撮像データに関連付ける、またはレジストレーションするステップを含むことができる。また、患者の位置合わせは、患者が送達システムの範囲内に物理的に位置しているかを確認する目的で、放射線源に対する患者の物理的位置に関するフィードバックを含むことができる。必要な場合、フィードバックに応じて患者を調整することができる。いくつかの実施形態においては、線量を最小限にし、ただし十分な位置合わせ情報が提供されるように、患者位置合わせ用の撮像を意図的に低い画質で行うことができる。
【0095】
X線撮像装置10によって生成される画像は、治療の計画または再計画(1120)にも使用することができる。様々な実施形態においては、ステップ1120は、治療計画を確認するステップ、治療計画を修正するステップ、新しい治療計画を生成するステップ、および/または、治療計画のセットから治療計画(場合によっては「本日の計画」とも称される)を選択するステップ、を含むことができる。例えば、ターゲットボリュームまたはROIが、治療計画が作成されたときと同じであることを撮像データ1015が示している場合、その治療計画を確認することができる。しかしながらターゲットボリュームまたはROIが同じではない場合、治療処置の再計画が必要でありうる。再計画の場合、(ステップ1010においてX線撮像装置10によって生成される)撮像データ1015の品質が高いため、この撮像データ1015を治療の計画または再計画に使用することができる(例:新しい治療計画または修正された治療計画を生成する)。このようにして、治療前に別の装置によってCT撮像を行う必要がない。いくつかの実施形態においては、確認および/または再計画は、様々な治療の前および/または後に行われる手順とすることができる。
【0096】
別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を使用して、撮像線量を計算する(1130)ことができ、この撮像線量は、患者への総線量の継続的な決定、および/またはその後の撮像計画において、使用することができる。例えば画質と線量のバランスをとる目的で、その後の撮像の品質を、治療計画の一部として決定することもできる。別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を使用して、治療線量を計算する(1140)ことができ、この治療線量は、患者への総線量の継続的な決定に使用することができる、および/または、治療の計画または再計画の一部として含めることができる。
【0097】
別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を、別の撮像(1150)および/または別の治療(1160)のパラメータまたは計画を計画または調整することに関連して、使用することができる(例えば適応治療および/または治療計画の生成の一部として使用することを含む)。別の例示的な使用例によれば、X線撮像装置10によって生成される画像を、適応治療モニタリング(1170)に関連して使用することができ、適応治療モニタリング(1170)は、治療送達のモニタリングおよび必要に応じた適合化を含むことができる。
【0098】
画像に基づく送達前ステップ(1030)は、互いに排他的ではないことを理解されたい。例えば、様々な実施形態において、治療線量の計算(1140)を、それ自体を1ステップとすることができる、および/または、適応治療モニタリング(1170)もしくは治療計画(1120)またはその両方の一部とすることができる。様々な実施形態においては、画像に基づく送達前ステップ(1030)は、自動的に実行する、および/または人の関与を伴って手動で実行することができる。
【0099】
図12は、撮像(1010)時に、および/またはその後の画像に基づく送達前ステップ(1030)時に利用することのできる例示的なデータ源を描いたブロック図1200である。検出器データ1210は、画像放射線検出器34によって受信されるすべてのデータを表す。投影データ1220は、コリメートされたビーム領域に入射する放射線によって生成されるデータである。半影データ1230は、半影領域に入射する放射線によって生成されるデータである。散乱データ1240は、半影領域の外側の周辺領域(影領域と称されることもある)に入射する放射線によって生成されるデータである。いくつかの実施形態においては、散乱データは、検出器の影領域に入射する放射線とは個別に、または放射線に加えて、生成することができる。
【0100】
一実施形態においては、半影データ1230を使用して、投影データおよび/または散乱データを分離または識別することができる。いくつかの実施形態においては、散乱データ1240を使用して、投影データ1220における散乱放射線を推定することができる。別の実施形態においては、2つの線源20,30が同時に、またはインターリーブ式に動作するとき、散乱データ1240を使用して、治療用放射線源20(例:MV)からの散乱の残留効果を求めることができる。
【0101】
このようにして、半影データ1230および/または散乱データ1240を利用して、撮像ステップ1010によって生成される画像の品質を改善することができる。いくつかの実施形態においては、適用可能な撮像設定1250と、治療設定1260(例:撮像用放射線および治療用放射線が同時の場合)と、撮像検出器34におけるデータ収集の時点でX線撮像装置10に関連付けられる任意の他のデータ1270とを考慮して、半影データ1230および/または散乱データ1240を投影データ1220と組み合わせることができる、および/または、半影データ1230および/または散乱データ1240を分析することができる。別の実施形態においては、データを治療計画ステップ1030において使用することができる。
【0102】
開示する技術を、特定の態様、一実施形態、または複数の実施形態に関連して図示および説明してきたが、当業者には、本明細書を添付の図面と併せて読み進めて理解した時点で、同等の変更および修正が明らかであろう。特に、上述した要素(構成要素、アセンブリ、装置、部材、合成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用されている用語(「手段」の言及を含む)は、特に明記されていない限り、説明されている要素の指定された機能を実行する(すなわち機能的に同等である)任意の要素に対応するように意図されており、このことは、たとえ開示する技術の本明細書に示した例示的な態様、一実施形態、または複数の実施形態においてこれらの機能を実行する開示されている構造に構造的に同等でない場合にも、あてはまる。さらに、開示する技術の特定の特徴が、いくつかの図示した態様または実施形態のうちの1つまたは複数のみに関連して上に説明されているが、このような特徴は、任意の所与の用途または特定の用途において望ましく有利であるとき、別の実施形態の1つまたは複数の別の特徴と組み合わせることができる。
【0103】
本明細書で説明した実施形態は、上述したシステムおよび方法に関連しているが、これらの実施形態は例示を目的としており、これらの実施形態の適用性を本明細書に記載されている説明のみに制限するようには意図していない。本発明はその実施形態の説明によって示されており、これらの実施形態はある程度詳細に説明されているが、本出願人は、添付されている請求項の範囲をそのような細部に制限する、またはいかようにも限定するようには意図していない。当業者には、さらなる利点および修正がただちに明らかであろう。したがって、より広い態様における本発明は、特定の細部、代表的な装置および方法、ならびに図示および説明されている例示的な例に制限されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような細部の修正・変更を行うことができる。
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