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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】熱検出器のための吸収体構造
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240701BHJP
   G01J 5/02 20220101ALI20240701BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 R
G01J5/02 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523049
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 FI2019050776
(87)【国際公開番号】W WO2020094916
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】20185945
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】タップラ キルシ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルプラ アーポ
(72)【発明者】
【氏名】ペルンニラ ミカ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090054(JP,A)
【文献】米国特許第09528881(US,B1)
【文献】特表2014-501913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
G01J 5/00-5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱検出器のための吸収体構造であって、前記吸収体構造は、
基本形状を画成する複数の端縁と、
複数の開口部を有するグリッドを前記吸収体構造の前記端縁間に形成するために導電接合された導電材料製の複数の第1脚であって、前記吸収体構造の、対向する前記端縁間に少なくとも1つの連続的な接続を形成して単一構造メッシュを形成する複数の第1脚と、
前記第1脚に導電接合された導電材料製の複数の第2脚であって、前記第1脚から前記グリッドの前記開口部内に突出し、隣接する前記第1脚から離れた位置にある終端点において終端する、複数の第2脚と、
を備え、前記少なくとも1つの連続的な接続は前記吸収体構造を一体に保つ、吸収体構造。
【請求項2】
熱検出器のための吸収体構造であって、前記吸収体構造は、
基本形状を画成する複数の端縁と、
複数の開口部を有するグリッドを前記吸収体構造の前記端縁間に形成するために導電接合された導電材料製の複数の第1脚であって、前記吸収体構造の前記端縁間に少なくとも1つの連続的な接続を形成する複数の第1脚と、
前記第1脚に導電接合された導電材料製の複数の第2脚であって、前記第1脚から前記グリッドの前記開口部内に突出し、隣接する前記第1脚から離れた位置にある終端点において終端する、複数の第2脚と、
を備え、前記第2脚は、他の第2脚への直接の導電接続を更に備える吸収体構造。
【請求項3】
熱検出器のための吸収体構造であって、前記吸収体構造は、
基本形状を画成する複数の端縁と、
複数の開口部を有するグリッドを前記吸収体構造の前記端縁間に形成するために導電接合された導電材料製の複数の第1脚であって、前記吸収体構造の前記端縁間に少なくとも1つの連続的な接続を形成する複数の第1脚と、
前記第1脚に導電接合された導電材料製の複数の第2脚であって、前記第1脚から前記グリッドの前記開口部内に突出し、隣接する前記第1脚から離れた位置にある終端点において終端する、複数の第2脚と、
を備え、前記第2脚は、前記終端点において、前記第2脚とは異なる電気接続特性を有する第2材料片に接続される吸収体構造。
【請求項4】
前記第2脚は、前記終端点において、前記第2脚とは異なる電気接続特性を有する第2材料片に接続される、請求項1又は2に記載の吸収体構造。
【請求項5】
前記第2材料片は、前記第2脚の材料とは異なる材料製である、および/または前記第2脚の形状とは異なる形状を有する、請求項3又は4に記載の吸収体構造。
【請求項6】
前記異なる形状は、前記第2脚より小さな横断面を有する導電材料製のワイヤによってもたらされる、請求項に記載の吸収体構造。
【請求項7】
前記異なる材料は、誘電体、半導体、または低導電材料である、請求項またはに記載の吸収体構造。
【請求項8】
前記第2材料片は、第2脚を別の第1脚に、または別の第2脚に、接続する、請求項からの何れか一項に記載の吸収体構造。
【請求項9】
前記導電材料は、金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料を含む、請求項1からの何れか一項に記載の吸収体構造。
【請求項10】
前記導電材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、およびアルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnOのうちの少なくとも1つを含む、請求項1からの何れか一項に記載の吸収体構造。
【請求項11】
第2脚が周期的パターンを形成する、請求項1から10の何れか一項に記載の吸収体構造。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の吸収体構造を備えた熱検出器。
【請求項13】
前記熱検出器は熱電脚を備え、前記吸収体構造は前記熱電脚間に接点を形成する、請求項12に記載の熱検出器。
【請求項14】
前記熱検出器は、前記吸収体構造との積層構成になった反射素子と、前記吸収体構造と前記反射素子との間に形成されたキャビティとを備える、請求項12または13に記載の熱検出器。
【請求項15】
前記吸収体構造と前記反射素子との間に形成される前記キャビティの深さは、目標吸収波長のλ/4とは異なる、請求項14に記載の熱検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全般的には、熱検出器に適した吸収体構造に関する。
【背景】
【0002】
本節では有用な背景情報を示すが、ここに記載されている何れの手法も従来技術の代表例であるとは認めていない。
【0003】
ボロメータ型熱検出器は、反射素子の上方に懸架された吸収性ナノ/マイクロブリッジまたはメンブレンを備えている。この検出器に波長選択をもたらすために、メタマテリアル吸収体を適用できる。ただし、メタマテリアル吸収体の使用は、一般に熱質量を増加させ、低熱容量の吸収体を設計する可能性を制限する傾向があり、ひいては検出器の速度を制限する傾向がある。
【0004】
高速動作のために、ボロメータの全ての感知素子は、低い熱容量と高い熱伝導率とを有する必要がある一方で、熱出力への良好な応答性は、熱経路への低い熱伝導率と高吸収性メンブレンとを必要とする。ただし、既存の諸解決策は、必要とされる支持、温度検出変換器(温度計)、および/または追加の吸収体(例えば金属-絶縁体-金属、MIM:metal-insulator-metal)構造の故に、熱質量(熱容量)を大幅に低減させることができない。更に、超広帯域および超狭帯域の吸収、ならびに同調可能な帯域吸収、は従来の手段では達成が困難および/または高価である。
【0005】
そこで、新しい吸収体構造が提供される。
【摘要】
【0006】
本発明の複数の例のさまざまな態様が特許請求の範囲に示されている。
【0007】
本発明の第1の例示的態様によると、熱検出器のための吸収体構造が提供される。前記吸収体構造は、
基本形状を画成する複数の端縁と、
複数の開口部を有するグリッドを前記吸収体構造の前記端縁間に形成するために導電接合された導電材料製の複数の第1脚であって、前記吸収体構造の前記端縁間に少なくとも1つの連続的な接続を形成する複数の第1脚と、
を備える。
前記吸収体構造は更に、前記第1脚に導電接合された導電材料製の複数の第2脚であって、前記第2脚は前記第1脚から前記グリッドの前記複数の開口部内に突出し、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点において終端する、複数の第2脚を更に備える。
【0008】
実施形態によっては、前記終端点で電気接続特性が変化する。
【0009】
実施形態によっては、前記終端点はフリースペースを備える。
【0010】
実施形態によっては、前記第2脚は、前記終端点で、前記第2脚とは異なる電気接続特性を有する第2材料片に接続される。
【0011】
実施形態によっては、前記第2材料片は、前記第2脚の材料とは異なる材料製である、および/または前記第2脚の形状とは異なる形状を有する。
【0012】
実施形態によっては、前記異なる形状は、前記第2脚より小さな横断面を有する導電材料製のワイヤによってもたらされる。
【0013】
実施形態によっては、前記異なる材料は、誘電体、半導体、または低導電材料である。
【0014】
実施形態によっては、前記第2材料片は、第2脚を別の第1脚に、または別の第2脚に、接続する。
【0015】
実施形態によっては、前記導電材料は、金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料を含む。
【0016】
実施形態によっては、前記導電材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、およびアルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnOのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
実施形態によっては、前記第2脚は、周期的パターンを形成する。
【0018】
実施形態によっては、前記吸収体構造は、前記第2脚に導電接合された導電材料製の第3脚を更に備える。
【0019】
実施形態によっては、前記第2脚は、他の第2脚への直接の導電接続を更に備える。
【0020】
本発明の第2の例示的態様によると、前記第1の態様、または対応付けられた何れかの実施形態、の吸収体構造を備えた熱検出器が提供される。
【0021】
実施形態によっては、前記熱検出器は複数の熱電脚を備え、前記吸収体構造は前記熱電脚間に接点を形成する。
【0022】
実施形態によっては、前記熱検出器は、前記吸収体構造との積層構成になった反射素子と、前記吸収体構造と前記反射素子との間に形成されたキャビティとを備える。
【0023】
実施形態によっては、前記吸収体構造と前記反射素子との間に形成される前記キャビティの深さは、目標吸収波長のλ/4とは異なる。
【0024】
実施形態によっては、前記吸収体構造は、前記熱検出器の支持構造としての役割を果たす。
【0025】
以上、本発明のさまざまな非拘束性の例示的態様および実施形態を示した。上記の各実施形態は、本発明の実施に利用され得る選択された態様またはステップを説明するためにのみ使用されている。一部の実施形態が本発明の特定の例示的態様にのみ言及して提示されている場合もある。対応する実施形態は他の例示的態様にも当てはまり得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明の例示的実施形態のより完全な理解のために、添付の図面に関連付けられた以下の説明を引用する。
【0027】
図1】第1の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0028】
図2】第2の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0029】
図3】第3の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0030】
図4】第4の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0031】
図5図4の複数の吸収体構造で形成された吸収体構造を示す。
【0032】
図6】第5の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0033】
図7図6の複数の吸収体構造で形成された吸収体構造を示す。
【0034】
図8】第6の例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0035】
図9図8の複数の吸収体構造で形成された吸収体構造を示す。
【0036】
図10A】更なる例示的実施形態の吸収体構造を示す。
図10B】更なる例示的実施形態の吸収体構造を示す。
図10C】更なる例示的実施形態の吸収体構造を示す。
【0037】
図11A】特定の実施形態による熱検出器の断面図を示す。
図11B】特定の実施形態による熱検出器の断面図を示す。
図11C】特定の実施形態による熱検出器の断面図を示す。
【0038】
図12】一部の実施形態の吸収体についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図面の詳細説明】
【0039】
本発明およびその潜在的利点は、添付図面の図1図12を参照することによって理解される。本文献において、同様の参照符号は、同様の部品またはステップを示している。
【0040】
本発明の複数の実施形態は、熱検出器のための高性能(高い応答性)低熱質量(高速)吸収体を可能にする吸収体構造を提供する。熱検出器という用語は、全般的には、吸収体素子の発熱によって電磁輻射線を監視する装置を指す。本熱検出器は、熱型光検出器とも称され得る。複数の例示的実施形態の吸収体構造は、温度検出変換器(例えば温度計、サーモパイル、等々)として、および/または熱検出器の複数の電気接点として(または、それらの一部として)、の役割も担い得る。複数の例示的実施形態の吸収体構造は、金属-絶縁体-金属構造を必要としない熱検出器の提供を可能にする。代わりに、真空、ガス、ガス混合物、またはエアキャビティを使用できる。複数の異なるスペクトル域および帯域幅のために、複数の異なる実施形態によるさまざまなメタマテリアル型吸収体の設計が可能である。
【0041】
複数の例示的実施形態による吸収体構造のさまざまな例を以下に説明する。これら吸収体構造は、単一構造メッシュを形成する金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。使用され得る例示的材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、アルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnO、およびSrTiOを少なくとも含む。他の導電材料も使用できる。一実施形態において、構造化された吸収体メッシュは、サーモパイルとして機能する高濃度不純物添加シリコンと、または断熱支持構造と、組み合わされる。ただし、複数の例示的実施形態の吸収体構造は、これらの材料および組み合わせだけに限定されない。
【0042】
図1は、第1の例示的実施形態の吸収体構造101を示す。吸収体構造101は、基本形状を画成する複数の端縁を備える。この形状は、平面形状にし得る。この例において、この形状は正方形である。吸収体構造101は、導電材料製の複数の第1脚103~106、133~134を備える。第1脚103~106、133~134は、他の第1脚103~106、133~134に導電接続されてグリッド102を形成する。グリッド102は、これら第1脚とこれら第1脚間の接続とによって画成された正方形の開口部を複数有する。第1脚は、材料ストランドとも称され得る。グリッド102は、吸収体構造101の端縁間に延在する。
【0043】
第1脚103~106、133~134は、吸収体構造の端縁間に連続的な接続をもたらすことによって、吸収体構造を一体にまとめ、吸収体構造を例えば熱検出器の反射素子の上方に懸架可能にする。
【0044】
加えて、吸収体構造101は、導電材料製の複数の第2脚107~110を備える。第2脚107~110は、第1脚に導電接合される。この接続は、例えば、第2脚の一端または第2脚の真ん中で行われ得る。第2脚107~110は、第1脚からグリッド102の開口部内に突出し、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点において終端する。前記終端点で電気接続特性が変化する。換言すると、第2脚は、別の第1脚まで直接延在しない、または別の第1脚と接点を形成しない。例えば図1では、第1脚134に接合された第2脚108が、隣接する第1脚133から離れた位置にある終端点135において、終端することが分かる。図1の例では、この終端点にフリースペースまたは空きスペースが存在する。あるいは、第2脚は、終端点において第2材料片に接続され得る。第2材料片は、第2脚の電気接続特性とは異なる電気接続特性を示す。第2材料片は、異なる材料製、および/または異なる形状の材料製、にし得る。この異なる材料は、誘電体、半導体、または低導電材料など、導電性が相対的に低い材料にし得る。この異なる形状は、例えば、第2脚の横断面より小さい横断面を有する材料にし得る。これにより、終端点は、非連続点と称され得る。第2脚107~110は、吸収体構造101の端縁間に非連続的な接続をもたらす。
【0045】
実施形態によっては、第1および第2脚は平面構造を形成し、第2脚はグリッドと同じ平面においてグリッドの開口部内に突出する。第2脚は、図1に示されている例のように、第1脚に対して垂直に位置付けられ得る。あるいは、第2脚は、何れか選択された角度で第1脚から突出し得る。一実施形態において、第2脚は、吸収体構造の複数の端縁によって画成された形状にわたって繰り返される周期的パターンを形成する。
【0046】
実施形態によっては、吸収体構造101は、第2脚107~110に導電接合された導電材料製の第3脚(図1には不図示)を備える。
【0047】
図2は、第2の例示的実施形態の吸収体構造201を示す。この例は図1の例と同様であり、図1の開示内容は、吸収体構造201が90度とは異なる角度で第1脚から突出する第2脚207~210を備える点以外は、図2にも当てはまる。
【0048】
図3は、第3の例示的実施形態の吸収体構造301を示す。この例は図1の例と同様であり、図1の開示内容は、図3が三角形の開口部を有するグリッド302を画成する第1脚304~306を示している点以外は、図3にも当てはまる。他の形状も使用され得ること、および第1脚によって画成される開口部を例えば六角形または八角形にし得ること、に注目されたい。図1および図2と同様に、図3の吸収体構造301は、導電材料製の第2脚308~309を備える。第2脚308~309は、第1脚に導電接合される。この接続は、例えば、第2脚の一端または第2脚の真ん中で行われ得る。第2脚308~309は、第1脚からグリッド302の開口部内に突出し、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点において終端する。
【0049】
図1図3に示されている第2脚は、図示されていないが、吸収体構造全体にわたって周期的に繰り返され得ることに注目されたい。
【0050】
図4は、第4の例示的実施形態の吸収体構造401を示す。図示の吸収体構造401は単位セルであり、一般には、所望の吸収体エリアにわたって繰り返される。図5は、図4の吸収体構造または単位セルを複数隣接させて形成された吸収体構造501を示す。
【0051】
吸収体構造401は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚407~410とを備える。第1脚404~405は、互いに導電接続される。図5において、隣接する複数の単位セルの第1脚はグリッドを形成する。このグリッドは、第1脚404~405と第1脚間の接続とによって画成された開口部を複数有する。形成されたグリッドは、吸収体構造501の端縁間に延在する。
【0052】
第1脚404~405は、吸収体構造の端縁間に連続的な接続をもたらすことによって、吸収体構造を一体にまとめ、吸収体構造を熱検出器の反射素子の上方に懸架可能にする。
【0053】
第2脚407~410は、第1脚404~405に導電接合される。図示の例では、この接続は、第2脚の真ん中で行われている。第2脚407~410は、第1脚404~405から突出する。第2脚は、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点420~421において終端する。隣接する第1脚は、実際には隣接する単位セルの一部にし得ることに注目されたい。このような場合、第2脚は、単位セルの端縁から離れた位置にある、ひいては他の単位セルの第1脚から離れた位置にある、終端点において終端する。前記終端点420~421で電気接続特性が変化する。換言すると、第2脚は、別の第1脚まで直接延在しない、または別の第1脚と接点を形成しない。図4の例では、フリースペースまたは空きスペース411~412が終端点420~421に存在する。これにより、第2脚407~410は、図4の吸収体構造401または図5の吸収体構造501の端縁間に非連続的な接続をもたらす。
【0054】
図5は、図4の単位セル401を図示の構造の左側に備えている。単位セル401の第2脚409が終端する終端点420は、隣接する単位セルの第1脚404'から離れた位置にあることが分かる。
【0055】
図6は、第5の例示的実施形態の吸収体構造601を示す。図示の吸収体構造601は単位セルであり、一般には、所望の吸収体エリアにわたって繰り返される。図7は、図6の吸収体構造または単位セルを複数隣接させて形成された吸収体構造701を示す。
【0056】
吸収体構造601は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚607~610とを備える。第1脚404~405は、互いに導電接続される。図7において、隣接する複数の単位セルの第1脚はグリッドを形成する。このグリッドは、第1脚404~405と第1脚間の接続とによって画成された開口部を有する。形成されたグリッドは、吸収体構造701の端縁間に延在する。
【0057】
第1脚404~405は、吸収体構造の端縁間に連続的な接続をもたらすことによって、吸収体構造を一体にまとめ、吸収体構造を熱検出器の反射素子の上方に懸架可能にする。
【0058】
第2脚607~610は、第1脚404~405に導電接合される。図示の例では、この接続は、第2脚の真ん中で行われている。第2脚607~610は第1脚404~405から突出し、第2脚は、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点420~421において終端する。隣接する第1脚は、実際には隣接する単位セルの一部にし得ることに注目されたい。このような場合、第2脚は、単位セルの端縁から離れた位置にある、ひいては他の単位セルの第1脚から離れた位置にある、終端点において終端する。前記終端点420~421で電気接続特性が変化する。換言すると、第2脚は、別の第1脚まで直接延在しない、または別の第1脚と接点を形成しない。図6の例において、第2脚607~610は、終端点420~421で第2材料片611~612に接続される。第2材料片611~612は、第2脚607~610の電気接続特性とは異なる電気接続特性を示す。より具体的には、第2脚より小さな横断面を有する導電材料製のワイヤ611、612が存在し、非連続点を形成する。これらワイヤは、第2脚と同じ材料製または異なる材料製にし得る。これにより、第2脚607~610は、図6の吸収体構造601または図7の吸収体構造701の端縁間に非連続的な接続をもたらす。それにも拘わらず、ワイヤ部分は、第2脚の全長にわたって第2脚の下方または上方に延在し得る。
【0059】
更に、ワイヤ611、612は、吸収体構造に応じて、第2脚を別の第1脚に、または別の第2脚に、接続し得る。
【0060】
図8は、第6の例示的実施形態の吸収体構造801を示す。図示の吸収体構造801は単位セルであり、一般には、所望の吸収体エリアにわたって繰り返される。図9は、図8の吸収体構造または単位セルを複数隣接させて形成された吸収体構造901を示す。
【0061】
吸収体構造801は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚808、810とを備える。第1脚404~405は互いに導電接続される。図9において、隣接する複数の単位セルの第1脚はグリッドを形成する。このグリッドは、第1脚404~405と第1脚間の接続とによって画成された開口部を有する。形成されたグリッドは、吸収体構造901の端縁間に延在する。
【0062】
第1脚404~405は、吸収体構造の端縁間に連続的な接続をもたらすことによって、吸収体構造を一体にまとめ、吸収体構造を熱検出器の反射素子の上方に懸架可能にする。
【0063】
第2脚808、810は、第1脚404~405に導電接合される。図示の例では、この接続は、第2脚の真ん中で行われている。第2脚808、810は、第1脚404~405から突出する。第2脚は、隣接する第1脚から離れた位置にある終端点420~421において終端する。隣接する第1脚は、実際には隣接する単位セルの一部にし得ることに注目されたい。このような場合、第2脚は、単位セルの端縁から離れた位置にある、ひいては他の単位セルの第1脚から離れた位置にある、終端点において終端する。前記終端点420~421で電気接続特性が変化する。換言すると、第2脚は、別の第1脚まで直接延在しない、または別の第1脚と接点を形成しない。図8の例において、第2脚808、810は、終端点420~421において第2材料片811~812に接続されている。第2材料片811~812は、第2脚807~810の電気接続特性とは異なる電気接続特性を示す。図8の例において、第2材料片811~812は、第2脚808、810とは異なる材料製である。この異なる材料は、誘電体、半導体、または低導電材料などの低導電材料にし得る。これにより、第2脚808、810は、図8の吸収体構造801または図9の吸収体構造901の端縁間に非連続的な接続をもたらす。
【0064】
更に、第2材料片811、812は、吸収体構造に応じて、別の第1脚への、または別の第2脚への、接続をもたらし得る。図8の例示的実施形態において、第2脚808は、他の第2脚810にも導電接続されている。点822を参照。
【0065】
図10A図10Cは、更なる例示的実施形態の吸収体構造1001、1002、および1003を示す。
【0066】
図10Aの吸収体構造1001は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚808、810とを備える。構造1001は、図8に示されている第2材料片の代わりにフリースペースまたは空きスペース411、412が存在する点以外は、図8の構造801と同様である。
【0067】
図10Bの吸収体構造1002は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚808、810とを備える。構造1002は、図8に示されている異なる材料811、812の代わりに、第2脚より横断面が小さい導電材料製のワイヤ611、612が存在する点以外は、図8の構造801と同様である。ワイヤ611、612は、第2脚と同じ材料製にし得る、または異なる材料が使用され得る。
【0068】
図10Cの吸収体構造1003は、導電材料製の第1脚404~405と導電材料製の第2脚408、410とを備える。構造1003は、図4に示されているフリースペースまたは空きスペース411、412の代わりに、異なる材料片811、812が存在する点以外は、図4の構造401と同様である。
【0069】
図11A図11Cは、特定の実施形態による熱検出器150、160、170の側断面図を示す。
【0070】
図11Aの熱検出器150は、パターン化された吸収体構造159と、反射素子154と、電気活性材料製の電極151および152とを備える。
【0071】
パターン化された吸収体構造159は、例えば、図1図9および図10A図10Cに示されている吸収体構造のうちの1つを備え得る。一実施形態において、吸収体構造159は、単一構造メッシュを形成する金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。使用され得る例示的材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、アルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnO、およびSrTiOを少なくとも含む。他の導電材料も使用できる。一実施形態において、電極151は、高濃度不純物添加N型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体などのN型熱電材料製であり、電極152は、高濃度不純物添加P型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体などのP型熱電材料製である。BiTeおよびBiSeなど、他の熱電材料も電極151および152に使用できる。反射素子154は、例えば、分布ブラッグミラー用の金属および/または誘電体を備える。あるいは、この反射素子は、N++添加シリコンなどの高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。
【0072】
吸収体構造159は、電極151および152の間に懸架され、電極151および152に接続される。吸収体構造159と反射素子154とは積層構成であり、吸収体構造159と反射素子154との間に深さdのキャビティが形成される。キャビティ内に真空を存在させ得る。あるいは、キャビティに適切なガス、ガス混合物、または空気が充填され得る。深さdは、所望の波長に合わせて選択され得る。一実施形態において、深さdは、目標吸収波長のλ/4とは異なる。更に別の実施形態において、深さdは、目標吸収波長のλ/4未満である。更に別の実施形態において、深さdは、目標吸収波長のλ/4である。
【0073】
吸収体構造159は、矢印153で示されている輻射線を吸収し、電極151および152に電気的変化を引き起こす。
【0074】
図11Bの熱検出器160は、パターン化された吸収体構造159と、反射素子154と、電気活性材料製の電極161および162とを備える。
【0075】
パターン化された吸収体構造159は、例えば、図1図9および図10A図10Cに示されている吸収体構造のうちの1つを備え得る。一実施形態において、吸収体構造159は、単一構造メッシュを形成する金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。使用され得る例示的材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、アルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnO、およびSrTiOを少なくとも含む。他の導電材料も使用できる。一実施形態において、電極161は、高濃度不純物添加N型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体など、N型熱電材料製であり、電極162は、高濃度不純物添加P型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体など、P型熱電材料製である。BiTeおよびBiSeなど、他の熱電材料も電極161および162に使用できる。反射素子154は、例えば、分布ブラッグミラー用の金属および/または誘電体を備える。あるいは、反射素子は、N++添加シリコンなどの高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。
【0076】
吸収体構造159は、吸収体構造159の下に延在する電極161および162の間に懸架され、電極161および162に接続される。吸収体構造159と、電極161、162と、反射素子154とは積層構成であり、電極161および162を有する電極層と反射素子154との間に深さd'のキャビティが形成される。キャビティ内に真空を存在させ得る。あるいは、キャビティに適切なガス、ガス混合物、または空気が充填され得る。深さd'は、所望の波長に合わせて選択され得る。一実施形態において、深さd'は目標吸収波長のλ/4とは異なる。更に別の実施形態において、深さd'は目標吸収波長のλ/4未満である。更に別の実施形態において、深さd'は目標吸収波長のλ/4である。
【0077】
吸収体構造159は、矢印153で示されている輻射線を吸収し、電極161および162に電気的変化を引き起こす。
【0078】
図11Cの熱検出器170は、パターン化された吸収体構造159および175と、反射素子154と、電気活性材料製の電極161および162とを備える。
【0079】
パターン化された吸収体構造159および175は、例えば、図1図9および図10A図10Cに示されている吸収体構造のうちの1つを備え得る。一実施形態において、吸収体構造159は、単一構造メッシュを形成する金属、半金属、または高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。使用され得る例示的材料は、チタンTi、窒化チタンTiN、チタンタングステンTiW、タングステンW、アルミニウム添加酸化亜鉛Al:ZnO、およびSrTiOを少なくとも含む。他の導電材料も使用できる。吸収体構造159および175は、同じ材料製または異なる材料製にし得る。吸収体構造159および175は、同じパターンまたは異なるパターンを有し得る。
【0080】
実施形態によっては、電極161は、高濃度不純物添加N型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体など、N型熱電材料製であり、電極162は、高濃度不純物添加P型シリコンSi、ポリシリコン、または他の半導体など、P型熱電材料製である。BiTeおよびBiSeなど、他の熱電材料も電極161および162に使用できる。反射素子154は、例えば、分布ブラッグミラー用に金属および/または誘電体を備える。あるいは、反射素子は、N++添加シリコンなどの高濃度不純物添加半導体材料製にし得る。
【0081】
吸収体構造159は、吸収体構造159の下に延在する電極161および162の上方に載置される。吸収体構造175は、電極161および162の下に載置される。吸収体構造159と、電極161、162と、吸収体構造175と、反射素子154とは積層構成であり、吸収体構造175を有する下側吸収体層と反射素子154との間に深さd"のキャビティが形成される。キャビティ内に真空を存在させ得る。あるいは、キャビティに適切なガス、ガス混合物、または空気が充填され得る。深さd"は、所望の波長に合わせて選択され得る。一実施形態において、深さd"は目標吸収波長のλ/4とは異なる。更に別の実施形態において、深さd"は目標吸収波長のλ/4未満である。更に別の実施形態において、深さd"は目標吸収波長のλ/4である。
【0082】
吸収体構造159および175は、矢印153で示されている輻射線を吸収し、電極161および162に電気的変化を引き起こす。
【0083】
図12は、一部の実施形態の吸収体についてのシミュレーション結果を示すグラフである。広帯域にわたる高い吸収性は、図4図5図6、および図7の吸収体構造401、501、601、および701など、いくつかの吸収体構造で得られる一方で、狭帯域にわたる高い吸収性も、例えば、図8および図9の吸収体構造801および901によって設計可能である。曲線191は、図4の吸収体構造401での例示的シミュレーション結果を示す。曲線192は、図6の吸収体構造601での例示的シミュレーション結果を示す。曲線193は、図10Cの吸収体構造1003での例示的シミュレーション結果を示す。曲線194は、図10Aの吸収体構造1001での例示的シミュレーション結果を示す。
【0084】
複数の例示的実施形態の吸収体構造がもたらすのは、吸収体の熱質量の最小化の可能性であり、ひいては熱検出器の性能の最大化の可能性である。複数の例示的実施形態の吸収体構造の開発における一課題は、吸収体の熱質量を増加させずに熱検出器の性能要件を満たす効率的な吸収体構造を見つけ出すことであった。
【0085】
従来の吸収体構造に比べ、本吸収体構造の相対的に低い熱質量が複数の例示的実施形態において実現されるのは、複数の例示的実施形態の吸収体構造が極めて薄く、まばらであり、必要とされる追加の支持構造が皆無か最小限であるという事実の故である(例えば図11を参照)。更に、複数の例示的実施形態の吸収体構造は、温度変換部としても、または熱検出器の複数の電気接点 (またはそれらの一部)としても、使用できる。従来は、複数の異なる機能(支持、温度変換、吸収、電気接続)のために、複数の異なる材料または層を必要としていた。複数の例示的実施形態の吸収体構造は、金属-絶縁体-金属構造を必要としない熱検出器の提供も可能にする。代わりに、真空、ガス、ガス混合物、またはエアキャビティを使用できる。
【0086】
熱電温度感知に関する一実施形態において、本吸収体構造は、熱検出器の熱電脚間に接点を形成する。抵抗感知に関する一実施形態において、本吸収体構造はそれ自体が感温抵抗を有する抵抗素子としての役割を果たし得る。これらの機能が可能になるのは、必要な電気回路を形成する連続的な第1脚の故である。
【0087】
実施形態によっては、さまざまなメタマテリアル型吸収体構造は、抵抗およびプラズモニックまたはプラズモン模倣吸収体構造の両方を採用したハイブリッド構造を備える。熱検出器において、吸収体構造は、反射鏡および真空、ガス、ガス混合物、またはエアキャビティと組み合わされ得る。
【0088】
さまざまな実施形態の吸収体構造は、さまざまな波長帯で、例えば、赤外線(IR)、テトラヘルツ、および/または、無線周波数(RF)波長域で、使用され得る。
【0089】
添付の特許請求の範囲の範囲、解釈、または適用を何ら制限することなく、複数の例示的実施形態の吸収体構造によってもたらされる一技術的効果は、複数の異なる機能を実現するために、いくつかの材料層を熱検出器の吸収体メンブレンに組み込む必要がないことである。これを可能にしたのは開示された効率的な吸収体デザインであり、すなわち、メタマテリアルMIM型構造が空気、ガス、ガス混合物、または真空ギャップに置き換えられた吸収体デザインであり、また、熱変換器(の一部)としての役割及び支持構造としての役割をも果たす連続的な第1脚が吸収体に設けられた吸収体デザインである。
本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の別の技術的効果は、新規なメタマテリアル型吸収体構造が提供されることである。
このような吸収体構造は、抵抗、インピーダンス整合、およびプラズモン模倣吸収体デザインの両方を採用し得る、更には、熱検出器において、金属-絶縁体-金属構造を必要とする代わりに、反射鏡および真空、ガス、ガス混合物、またはエアキャビティとの併用が可能である。このような解決策は、高い吸収率の維持を可能にする。
【0090】
本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の別の技術的効果は、高性能、高速、室温、IR検出器、および撮像アレイが妥当なコストで設けられ得ることである。本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の別の技術的効果は、最小の支持構造を有する吸収体として機能する、および熱電脚間の接点としての、または抵抗温度計(の一部)としての、役割も果たし得る、メッシュ様吸収体構造が提供されることである。これは、低い熱質量および熱容量を可能にし、高速動作を熱検出器にもたらす。
【0091】
本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の別の技術的効果は、ほぼ完全な吸収が、熱浴に対する極薄メンブレンの低熱伝導率と共に、高い応答性を可能にすることである。本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の別の技術的効果は、さまざまな実施形態の吸収体構造の使用によって、複数のフィルタまたは多層構造を必要とせずに、検出波長の固有制御を有する波長選択型、広帯域、非冷却式IRセンサを実現できることである。本願明細書に開示されている例示的実施形態のうちの1つ以上の更に別の技術的効果は、極めて効率的な高速広帯域IRセンサに加え、新規な多色撮像センサの開発への寄与である。
【0092】
本発明のさまざまな側面が独立請求項に示されているが、本発明の他の側面は、特許請求の範囲に明示的に示されている組み合わせだけでなく、記載の実施形態および/または従属請求項からの特徴と独立請求項の特徴との他の組み合わせを含む。
【0093】
上では本発明の例示的実施形態を説明してきたが、これら説明は限定的な意味で見られるべきではないことにも留意されたい。むしろ、添付の特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲を逸脱せずに行い得るいくつかの変形および修正が存在する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12