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  • 特許-マイクロRNAを用いた胃癌の診断方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】マイクロRNAを用いた胃癌の診断方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20240701BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021535309
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 SG2019050621
(87)【国際公開番号】W WO2020130944
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】10201811421Q
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】504354117
【氏名又は名称】エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】521266642
【氏名又は名称】ミレクサス ラブ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】トゥー ヘン フォン
(72)【発明者】
【氏名】チュン カ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クェク ジア ミン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ルイ ヤン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525350(JP,A)
【文献】特表2011-516032(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108048574(CN,A)
【文献】聖マリアンナ医科大学雑誌,2018年,Vol. 46,p. 111-118
【文献】膜,2015年,Vol.40, No.5,p.235-241
【文献】Drug Delivery System,Vol.26, No.1,2011年,p.10-14
【文献】BMC Medical Genomics,2011年,4:79,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6886
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃癌の検出方法であって、個体からの、又は個体の試料における細胞外小胞(EV)におけるmiRNAの発現レベルを検出する工程を含み、
前記miRNAがhsa-miR-484であり、
胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における前記miRNAの発現レベルと比較して変化した前記miRNAの発現レベルが、前記個体が胃癌に罹患しているか、又は胃癌に罹患している可能性が高いことを示す方法。
【請求項2】
sa-miR-484が、miRBase受入番号MIMAT0002174を有するポリヌクレオチド配列をむ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変化した前記miRNAの発現レベルが、hsa-miR-484の上昇した発現レベルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
つのmiRNA、4つのmiRNA、5つのmiRNA、6つのmiRNA及び7つのmiRNAよりなる群から選択される2つ以上のmiRNAの、試料における発現レベルを検出する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2つ以上のmiRNAが、hsa-miR-320d、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択され、1つのmiRNAがhsa-miR-484である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、上咽頭分泌物、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門及び膣内の分泌物、汗及び精液よりなる群から選択される体液試料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外小胞(EV)が、ポリマーベースの沈殿を用いて前記試料から単離されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出が、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(多重PCR)、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼプロテクション、マイクロアレイハイブリダイゼーション及びRNAシークエンシングよりなる群から選択されるポリメラーゼ連鎖反応を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
胃癌検出ための診断キットであって、
(a)細胞外小胞(EV)における2つ以上のmiRNAに結合することができる配列、及び
(b)細胞外小胞を単離する手段を含み、
前記2つ以上のmiRNAが、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pからなる群から選択され、1つのmiRNAがhsa-miR-484である、前記キット。
【請求項10】
前記(a)の配列がマイクロアレイ又はRNAシークエンシングに使用されるためのものである、請求項9に記載の診断キット。
【請求項11】
前記(a)の配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットに含まれる、請求項9に記載の診断キット。
【請求項12】
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットがマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットである、請求項11に記載の診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、細胞生物学、分子生物学及び遺伝学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(miRNA)は、タンパク質の発現を制御して、細胞の分化、増殖、アポトーシス等、いくつかの重要な細胞プロセスにおいて生理的意義を発揮する小さな非コードRNA(約19~22ヌクレオチド)である。血清、血漿、全血等の生体液中で容易に検出できる循環miRNAは、癌を含めた様々な疾患の非侵襲的な検出のための有望なリキッドバイオプシー(液体細胞診)のバイオマーカーである。加えて、miRNAに影響を与える異常は、癌の発生及び進行に大きく影響することが示されている。
【0003】
miRNAは血清/血漿中で安定しているため、疾患の循環バイオマーカーとして利用できる可能性が高く、早期発見、予後判定又は治療を目的としたmiRNAバイオマーカーの特定が大きく注目され、多大な努力が払われている。
【0004】
しかしながら、miRNAの変化した発現レベルは、疾患の発症時にはほとんど見られずに、診断が困難になることがある。理想的なリキッドバイオプシーのバイオマーカーは、癌試料と対照試料の間で高い信号対雑音比を有し、臨床現場で容易に検出できるものでなければならない。それゆえ、現在の課題は、疾患の個体と健常な個体とにおけるmiRNAの発現レベルのわずかな差を測定することである。バイオマーカーの信号対雑音比が低いことが多いため、罹患した試料と健常な試料との間の循環miRNA量の微妙な、しかし意味のある差を検出することは、臨床現場での重要な課題として残っている。
【0005】
異なる研究において特定されたmiRNAシグネチャーには大きなばらつきがある。そのようなばらつきの理由の1つは、試料の取り扱いが血液試料の溶血の度合いに影響を与える可能性があり、これが溶解した赤血球(RBC)からのmiRNAの放出につながり、それゆえmiRNAプロファイルを変化させることにある。
【0006】
細胞外小胞(EV)は、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たし、腫瘍の発生を促進する。EVにおけるmiRNAの発現は頻繁に制御異常になっており、癌細胞はmiRNAを含むEVを癌の微小環境に活発に分泌する可能性がある。それゆえ、EVからmiRNAを単離することで、生体液中に存在する潜在的な混入miRNAを低減できる可能性があり、それゆえ、癌又は他の疾患の早期診断に有用である。しかしながら、EVの単離には手間と時間がかかる可能性があるため、臨床現場での応用には限界がある。これまで、EV-miRNAの単離方法に関する体系的かつ包括的な評価は行われておらず、EV-miRNAの単離についての標準的なプロトコルは存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
miRNAは、胃癌を含む癌の診断に提案されているが、これまでのところ、同一疾患に対する異なる研究で特定されたmiRNAシグネチャーには、あまり良い相関性がない。
【0008】
例えば、Leidnerら(2013)及びTiberioら(2015)は、miRNAを診断マーカーとして使用する際に直面する問題の例を提示する。
・Leidner RS、Li L、Thompson CL. Dampening enthusiasm for circulating microRNA in breast cancer. PLoS One. 2013;8(3):e57841. doi:10.1371/journal.pone.0057841
・Tiberio P、Callari M、Angeloni V、Daidone MG、Appierto V. Challenges in using circulating miRNAs as cancer biomarkers. Biomed Res Int. 2015;2015:731479. doi:10.1155/2015/731479
【0009】
対照的に、請求項に係る発明では、信号対雑音比を向上させることができる改良が可能であり、それゆえ、胃癌で差次的に発現するmiRNAをより確実に特定することができ、それゆえ、請求項に係るアッセイの診断性能を当該技術分野のものよりも向上させることができる。
【0010】
さらには、胃癌に関連する症状の多くは胃癌に特異的ではない。それゆえ、症状が重くなって医師が関連する画像検査又は内視鏡検査を行うようになる後期まで、胃癌を特定することは容易ではない。
【0011】
早期に治療を受けた患者の生存率は、進行した癌が見つかった患者に比べてはるかに良好である。それゆえ、胃癌の早期診断に使用されてもよい信頼性の高い検査には価値がある。
【0012】
Pasechnikovら(2014)及びKimらに示されているように、現在のスクリーニング方法は、通常、侵襲的な方法(生検若しくは内視鏡検査)又はイメージング(撮像)ベースの方法(患者に放射能を浴びせ、かつ/又はコストがかかることが多い)を使用する。
・Pasechnikov V、Chukov S、Fedorov E、Kikuste I、Leja M. Gastric cancer: prevention, screening and early diagnosis. World J Gastroenterol. 2014;20(38):13842-13862. doi:10.3748/wjg.v20.i38.13842
・Kim GH、Liang PS、Bang SJ、Hwang JH. Screening and surveillance for gastric cancer in the United States: Is it needed? Gastrointest Endosc. 2016 Jul;84(1):18-28. doi: 10.1016/j.gie.2016.02.028. 2016年3月3日電子出版
【0013】
ペプシノゲンやピロリ菌検査等の現在利用できる非侵襲的な検査は、必要な特異性と感度を与えない。
【0014】
それゆえ、本発明者らは、現在利用できるものよりも改良されており全体集団における胃癌の診断に有用であると思われる非侵襲的な方法論を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
いくつかの実施形態では、この検査を用いた陽性診断は、内視鏡検査又は生検等のより侵襲的なゴールドスタンダード検査を用いたさらなる確認検査につながる可能性がある。これにより、そのような侵襲的で費用のかかる検査を受ける必要のある患者の数をそもそも減らすことができよう。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、胃癌の診断方法が提供される。この方法は、個体からの、又は個体の試料におけるmiRNAの発現レベルを検出する工程を含んでもよい。
【0017】
上記miRNAは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5からなる群から選択されてもよい。当該方法は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料におけるmiRNAの発現レベルと比較して変化したmiRNAの発現レベルが、その個体が胃癌に罹患しているか、又は胃癌に罹患している可能性が高いことを示すというものであってもよい。
【0018】
上記miRNAの発現レベルは、個体からの試料又は個体の試料の中の細胞外小胞(EV)で検出されてもよい。
【0019】
上記miRNAは、hsa-miR-484を含んでいてもよい。hsa-miR-484は、miRBase受入番号MIMAT0002174を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-484は、その変異体、相同体、誘導体又は断片(フラグメント)を含んでいてもよい。このその変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-484に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-484活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-484の発現レベルの上昇を含んでいてもよい。
【0020】
上記miRNAは、hsa-miR-186-5pを含んでいてもよい。hsa-miR-186-5pは、miRBase受入番号MIMAT0000456を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。hsa-miR-186-5pは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-186-5pに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-186-5p活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-186-5pの発現レベルの上昇を含んでいてもよい。
【0021】
上記miRNAは、hsa-miR-142-5pを含んでいてもよい。hsa-miR-142-5pは、miRBase受入番号MIMAT0000433を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-142-5pは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-142-5pに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-142-5p活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-142-5pの発現レベルの低下を含んでいてもよい。
【0022】
上記miRNAは、hsa-miR-320dを含んでいてもよい。hsa-miR-320dは、miRBase受入番号MIMAT0006764を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-320dは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320dに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320d活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-320dの発現レベルの上昇を含んでいてもよい。
【0023】
上記miRNAは、hsa-miR-320aを含んでいてもよい。hsa-miR-320aは、miRBase受入番号MI0000542を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-320aは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320aに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320a活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-320aの発現レベルの上昇を含んでいてもよい。
【0024】
上記miRNAは、hsa-miR-320bを含んでいてもよい。hsa-miR-320bは、miRBase受入番号MIMAT0005792を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-320bは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320bに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-320b活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-320bの発現レベルの上昇を含んでいてもよい。
【0025】
上記miRNAは、hsa-miR-17-5pを含んでいてもよい。hsa-miR-17-5pは、miRBase受入番号MIMAT0000070を有するポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また、hsa-miR-17-5pは、その変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-17-5pに対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含んでいてもよい。その変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-17-5p活性を含んでいてもよい。変化した発現レベルは、hsa-miR-17-5pの発現レベルの低下を含んでいてもよい。
【0026】
当該方法は、2つ以上のそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。当該方法は、3つのそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。当該方法は、4つのそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。当該方法は、5つのそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。当該方法は、6つのそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。当該方法は、7つのそのようなmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含んでもよい。
【0027】
当該方法は、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるいずれか1つ以上のmiRNAと組み合わせてさらなるmiRNAの、試料における、例えば上記試料の中の又は試料の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程をさらに含んでもよい。このさらなるmiRNAは、hsa-miR-423-5p(miRBase受入番号MIMAT0004748)を含んでいてもよい。さらなるmiRNAは、hsa-miR-423-5pと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列等、hsa-miR-423-5pの変異体、相同体、誘導体又は断片を含んでいてもよい。このようなhsa-miR-423-5pの変異体、相同体、誘導体又は断片は、hsa-miR-423-5p活性を含んでいてもよい。
【0028】
0.39以上のhsa-miR-484の発現レベルが検出された場合、胃癌が示されてもよい。log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-186-5pの発現レベルが0.15以上である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0029】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-142-5pの発現レベルが-0.35以下である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0030】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-320dの発現レベルが0.48以上である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0031】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-320aの発現レベルが0.49以上である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0032】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-320bの発現レベルが0.4以上である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0033】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-17-5pの発現レベルが-0.37以下である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0034】
log(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定されたhsa-miR-423-5pの発現レベルが0.54以上である場合に胃癌が示されてもよく、対照は、胃癌に罹患していないことが知られている個体からの、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における、例えば上記試料の中の若しくは上記試料の細胞外小胞(EV)におけるそのmiRNAの発現レベルが検出されていることを示す。
【0035】
試料は、体液試料を含んでもよい。試料は、個体の上咽頭(鼻咽頭)分泌物、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門及び膣内の分泌物、汗、又は精液を含んでもよい。
【0036】
個体中の又は個体の細胞外小胞(EV)は、個体中の又は個体の試料からのものであってもよい。細胞外小胞(EV)は、ポリマーベースの沈殿を用いて試料から単離されてもよい。
【0037】
miRNAの発現は、任意の手段で検出されてもよい。例えば、miRNAの検出は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(多重PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応の使用を含んでもよい。miRNAの検出は、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼプロテクション(RNAseプロテクション)、マイクロアレイハイブリダイゼーション、又はRNAシークエンシングを用いてしてもよい。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、上記で規定された2つ以上の核酸又はそれに特異的に結合することができるプローブの組み合わせが提供される。これは、基板上に固定化された核酸の組み合わせを含んでいてもよい。この組み合わせは、マイクロアレイの形態であっても、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットとしてであってもよい。
【0039】
当該組み合わせは、hsa-miR-484(miRBase受入番号MIMAT0002174)、hsa-miR-186-5p(miRbase受入番号MIMAT0000456)、hsa-miR-142-5p(miRBase受入番号MIMAT0000433)、hsa-miR-320d(miRBase受入番号MIMAT0006764)、hsa-miR-320a(miRBase受入番号MI0000542)、hsa-miR-320b(miRBase受入番号MIMAT0005792)、hsa-miR-17-5p(miRBase受入番号MIMAT0000070)及びhsa-miR-423-5p(miRBase受入番号MIMAT0004748)の各々にそれと特異的に結合することができるプローブを含んでいてもよい。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、胃癌の検出方法又は胃癌の重症度の決定方法において使用するためのhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列が提供される。
【0041】
本発明の第4の態様として、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pからなる群から選択される2つ以上のmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を、薬学的に許容できる賦形剤、担体又は希釈剤とともに含む医薬組成物が提供される。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、胃癌の診断キットであって、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pからなる群から選択される2つ以上のmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列に結合することができる配列を、使用説明書とともに含むキットが提供される。
【0043】
第6の態様では、本発明は、個体における胃癌の治療方法であって、上述の方法を実行する工程と、その個体が胃癌に罹患しているか又は胃癌に罹患する可能性が高いと判断される場合に、その個体に胃癌用治療剤を投与する工程とを含む方法が提供される。
【0044】
本発明の第7の態様では、個体における胃癌の治療方法であって、(a)個体の又は個体からの試料における、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列の発現レベルを測定するアッセイの結果を受け取る工程であって、この結果は上記試料における上記miRNAの発現レベルを示す工程と、(b)胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料における上記miRNAの発現レベルであるmiRNAの基準発現レベルと比較して上記試料における上記miRNAの発現が変調しており、これにより上記個体における胃癌の徴候を提供又は予測する場合、胃癌用治療剤を投与する工程とを含む方法が提供される。上記miRNA又は各miRNAの発現レベルは、上記試料又は各試料の細胞外小胞(EV)において測定されてもよい。
【0045】
本発明の第8の態様によれば、個体における胃癌の治療方法であって、(a)個体の又は個体からの試料における、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列の発現レベルの分析の結果を得る工程と、(b)胃癌に罹患していないことが知られている個体の試料、又は胃癌に罹患していないことが知られている個体からの試料における上記miRNAの発現レベルである基準発現レベルと比較して上記miRNAの発現レベルが変調している場合に、胃癌用治療剤を上記個体に投与する工程とを含む方法が提供される。上記miRNA又は各miRNAの発現レベルは、上記試料又は各試料の細胞外小胞(EV)において測定されてもよい。
【0046】
本発明の実施には、特に断らない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来の技術が採用され、これらは当業者の能力の範囲内である。そのような技術は、文献で説明されている。例えば、J.Sambrook、E.F.Fritsch、及びT.Maniatis、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第1-3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995及び定期的な補遺;Current Protocols in Molecular Biology、第9、13、及び16章、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州);B.Roe、J.Crabtree、及びA.Kahn、1996、DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques、John Wiley & Sons;J.M.Polak及びJames O’D.McGee、1990、In Situ Hybridization: Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(編)、1984、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、Irl Press;D.M.J.Lilley及びJ.E.Dahlberg、1992、Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology、Academic Press;Edward Harlow、David Lane、Ed HarlowによるUsing Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO. I(1999、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 0-87969-544-7);Ed Harlow(編)、David Lane(編)によるAntibodies:A Laboratory Manual(1988、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 0-87969-314-2)、1855. Ramakrishna Seethala、Prabhavathi B.Fernandesによる編集のHandbook of Drug Screening(2001、ニューヨーク、ニューヨーク州、Marcel Dekker、ISBN 0-8247-0562-9);並びにLab Ref:A Handbook of Recipes, Reagents, and Other Reference Tools for Use at the Bench、Jane Roskams及びLinda Rodgers編、2002、Cold Spring Harbor Laboratory、ISBN 0-87969-630-3を参照。これらの一般的なテキストの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A図1A及び図1Bは、EV画分からのmiRNAプロファイルを示す図である。図1A。200μlのプールしたヒト血清から、UC法(黒色)、カラムアフィニティ法(白色)、ペプチドアフィニティ法(薄灰色)、及びイムノビーズアフィニティ法(濃灰色)を用いてEVを単離した。次に、これらのEV画分及び200μlの血清(全体)からQIAzol溶解試薬を用いてRNAを抽出し、RT-qPCRによって11種のmiRNAを定量した。EV miRNAの回収率(%)は、2-(CT全-CTEV)を用いて算出した。各実験条件は3回実施し、データは平均±SEMとして提示した。
図1B図1A及び図1Bは、EV画分からのmiRNAプロファイルを示す図である。図1B。UC、カラムアフィニティ及びペプチドアフィニティを用いて単離したEVのウエスタンブロット解析。一般的なEVマーカーであるフロチリン、TSG101及びCD9の発現を提示する。
図2A図2A及び図2Bは、EV画分からのmiRNAプロファイルを示す図である。図2A。200μlのプールしたヒト血清から、UC法(黒色)、Invt法(白色)、SBI法(薄灰色)、Exi法(濃灰色)及びHan法(茶色)を用いてEVを単離した。次に、これらのEV画分及び200μlの血清(全体)からQIAzol溶解試薬を用いてRNAを抽出し、RT-qPCRによって11種のmiRNAを定量した。EV miRNAの回収率(%)は、2-(CT全-CTEV)を用いて算出した。各実験条件は3回実施し、データは平均±SEMとして提示した。
図2B図2A及び図2Bは、EV画分からのmiRNAプロファイルを示す図である。図2B。UC法及びポリマーベースの沈殿法を用いて単離したEVのウエスタンブロット解析。一般的なEVマーカーであるフロチリン、TSG101、CD9、CD63及びCD81の発現を提示した。
図3図3は、4つの異なるポリマーベースの沈殿法を用いたmiRNAプロファイリングを示す図である。4つの方法すべてにおいて、胃癌(Can)群及び対照(Ctrl)群で、全体とEV画分との間のmiRNA倍率変化を[log(コピー数EV/コピー数)]に基づいて算出した。
図4図4は、4つの異なるポリマーベースの沈殿法を用いたmiRNAプロファイリングを示す図である。各ポリマーベースの沈殿法についての癌と対照との間の倍率変化のp値と、全画分でのp値との比較。p値<0.05かつp値<全画分のEV関連miRNAは丸で囲った。
図5図5は、癌及び対照群において信号対雑音比を高めると特定された8つのmiRNAの発現レベルを示す箱ひげ図を示す図である。
図6図6A図6B図6Cは、EV画分からのmiRNAプロファイルを示す図である。図6A及び図6Bは、200μlのプールしたヒト血清を用いて、異なる方法でEVを単離したことを示す図である。次に、QIAzol溶解試薬を用いて、これらのEV画分及び200μlの血清からRNAを抽出し、RT-qPCRによって11種のmiRNAを定量した。各箱ひげ図は、測定した全11種のmiRNAの回収率(全血清からの回収率)(%)を表す。回収率(%)は2-(Ct全-CtEV)を用いて算出した。各実験条件は3回実施し、データは平均±SEMとして提示した。「+」は外れ値のデータ点を示した。図6Cは、PBPを用いて単離したEVのウエスタンブロット解析を示す図である。一般的なEVマーカーであるフロチリン、TSG101、CD9、CD63及びCD81の発現を提示した。
図7図7A図7Bは、4つの異なるPBP試薬を用いたmiRNAプロファイリングを示す図である。図7Aは、各試薬についての癌と対照との間の倍率変化のp値と、全画分でのp値との比較を示す図である。p値<0.05かつp値<全画分のEV関連miRNAを丸で囲った。破線はlog10(0.05)をカットオフ値として示した。図7Bは、Invtを用いて単離したmiRNA(白棒)のAUCを全血清(黒棒)と比較して示す図である。
図8図8A及び図8Bは、全血清と比較してEVの診断性能が良好なmiRNAを示す図である。図8Aは、胃癌及び対照群におけるmiRNAの倍率変化([log2(コピー数EV-コピー数)]に基づいて算出)を、全血清(黒棒)及びInvt(白棒)で示した図である。図8Bは、Invt(白棒)を用いて単離したmiRNAのAUCを、全血清(黒棒)と比較して示した図である。
図9図9は、全血清(全)中又は単離された細胞外小胞(EV)中の胃癌の検出のための個々のmiRNA(1-miRNAパネル)又は複数のmiRNAの組み合わせを使用した場合のAUC値の中央値を示す図である。8-miRNAパネルの場合、1つの組み合わせしか可能でないことを考慮して、中央値の代わりにただ1つのAUC値が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
EV関連のmiRNAは、細胞間のコミュニケーションプロセス及び腫瘍の発生に重要な役割を果たしていることから注目されている。癌の発生/進行の際には、EV関連のmiRNAの発現レベルは頻繁に制御異常になっている。それゆえ、EV画分を単離することで、癌診断の可能性を高められる可能性がある。
【0049】
細胞外小胞(EV)は、血清中の循環miRNAの主要な供給源であることから、本発明者らは、EVを単離することでmiRNAバイオマーカーが濃縮され、診断能力の向上及びバイオマーカーの性能向上につながるとの仮説を立てた。
【0050】
本発明者らは、EV関連のmiRNAの迅速な単離のための適切なハイスループット手法を特定し、その画分が血清中のこれらのmiRNAの検出を向上させることができるという仮説を検証しようとした。本発明者らはさらに、胃癌(GC)検出の非侵襲的な診断ツールとなりうるEV関連のmiRNAを特定しようとした。
【0051】
本研究では、胃癌(GC)のバイオマーカーとして、血清中miRNAに対するEV-miRNAの性能を評価した。
【0052】
本発明者らは、15人のGC患者の血清及び15人のマッチした健常な対照血清からEVを単離するために、5つの異なる単離方法を評価し、ポリマーベースの沈殿(PBP)アプローチを選択した。パイロット研究として、GCに関連する133種類のmiRNAのパネル(一団)を、血清画分及びEV画分の両方で測定した。これらのmiRNAのうち、11種類が癌と対照との間で有意に異なっていた。癌と対照血清との独立した20組を用いた別の検証セットでは、11の候補のうち8つが、全血清と比較してEV画分中のmiRNAの診断能力を高めることが判明した。以上の結果から、EV中のmiRNAを濃縮することで、GCの検出におけるmiRNAバイオマーカーの感度を大幅に向上させることができることが明らかになり、GCの診断にEV-miRNAを利用できる可能性が示唆された。
【0053】
具体的には、本発明者らは、最初に、超遠心分離、カラムアフィニティ、ペプチドアフィニティ、イムノビーズアフィニティによるEV精製と比較して、ポリマーベースの沈殿(PBP)が最も高いEV-miRNAの回収率を与えることを明らかにした。
【0054】
次に、本発明者らは、4種類のPBP試薬を用いて、15人のGC患者及び15人の健常な対照からEV-miRNAを単離し、RT-qPCRを用いてEV画分及び全血清から133種のGC関連miRNAをプロファイリングした。本発明者らは、最も多くのEV-miRNAバイオマーカーを生成したPBP試薬を選択し、それを用いて20人のGC患者及び20人の対照の独立のセットで11種のEV-miRNAを検証した。
【0055】
これらのEV-miRNAバイオマーカーのうち8つが、より良好なGCの検出精度を与えることが判明した(AUC>0.8)。これらの8つのmiRNAを使用することで、GC診断の感度と特異性が大幅に向上する。これらの8つのmiRNAを癌診断に使用することに関する報告は他には刊行されていない。
【0056】
以上のことから、EVのmiRNAは血清のmiRNAと比較してGCの検出性能を向上させることができるということが示され、8種類のEV-miRNAをGCの有望な非侵襲的バイオマーカーとして特定することにつながった。
【0057】
EVを単離して引き続いてmiRNAを検出する本発明者らの方法は、臨床現場に容易に適応できる。
【0058】
胃癌の診断におけるmiRNAの使用
本発明者らは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p等のmiRNAが癌においてある役割を果たすことを初めて明らかにした。
【0059】
具体的には、本発明者らは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pの各miRNAが、胃癌細胞で異なる発現をしていることを示す。
【0060】
例えば、本出願で開示されたデータは、胃癌に罹患している(又は罹患する可能性が高い)患者では、胃癌に罹患していないことが知られている個体と比較して、hsa-miR-484、has-miR-186-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a又はhsa-miR-320bの発現が増加していることを示す。
【0061】
さらには、本出願で開示されたデータは、胃癌に罹患している(又は罹患する可能性が高い)患者では、胃癌に罹患していないことが知られている個体と比較して、hsa-miR-142-5p及びhsa-miR-17-5pの発現が減少していることを示す。
【0062】
従って、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAは、胃癌の検出のためのマーカーとして使用されてもよい。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA発現のレベルは、癌、特に胃癌の指標として使用されてもよい。
【0063】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAの発現レベルは、そのような癌の可能性の高さの指標としても使用されてもよい。これらのmiRNAのいずれか1つ以上の発現のレベルがそのような目的で検出されてもよい。これは、任意に、hsa-miR-423-5pのレベルの検出と組み合わされてもよい。
【0064】
miRNA自体の発現レベルが検出されてもよい。あるいは、又は加えて、本明細書中に開示された方法は、関連するmiRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列等の、その変異体、相同体、誘導体又は断片の検出を含んでもよい。
【0065】
特に、特定のmiRNAの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている人と比較して上昇している場合に、胃癌が検出されてもよい。
【0066】
例えば、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-484が、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.39以上であり、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0067】
別の例として、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-186-5pの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.15以上である場合にも、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0068】
さらなる例として、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-320dの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.48以上である場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0069】
さらに別の例として、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-320aの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.49以上である場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0070】
さらに別のさらなる例として、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-320bの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.4以上である場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0071】
別の例としては、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-423-5pの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、0.54以上である場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0072】
他のmiRNAについては、胃癌に罹患していないことが知られている人と比較して、特定のmiRNAの発現レベルが低下している場合に、胃癌が検出されてもよい。
【0073】
例えば、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-142-5pの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、-0.35以下の場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0074】
別の例としては、log2(個体の発現レベル/対照の発現レベル)として測定された個体におけるhsa-miR-17-5pの発現レベルが、胃癌に罹患していないことが知られている個体に比べて、-0.37以下である場合に、胃癌が検出されてもよく、胃癌を示す(「対照」と表記)。
【0075】
それゆえ、本発明者らは、癌、特に胃癌の診断又は検出の方法を提供する。本発明者らはさらに、そのような癌の侵襲性若しくは浸潤性若しくは転移状態、又はこれらの任意の組み合わせの診断及び検出の方法を提供する。当該方法は、miRNAレベルの分析(例えば、インサイツハイブリダイゼーション又はRT-PCRによる)を含んでいてもよい。このような診断及び検出の方法については、以下でさらに詳しく説明する。
【0076】
細胞外小胞(EV)
細胞外小胞(EV)は、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たし、腫瘍の発生を促進する13-16。EVにおけるmiRNAの発現は頻繁に制御異常になっており、癌又は他の疾患の早期診断に有用である可能性がある15、17-25
【0077】
EVは血清中の循環miRNAの主要な供給源であることから、本発明者らは、EVを単離することでmiRNAバイオマーカーが濃縮され、信号対雑音比が向上し、従って診断性能が向上するとの仮説を立てた。
【0078】
細胞外小胞(EV)の単離
エクソソーム等の細胞外小胞は、当該技術分野で公知の任意の手段を使用して試料から単離されてもよい。
【0079】
当業者であれば、生体液から細胞外小胞を単離するための様々な方法が開発されていることを知っている。このような方法としては、遠心分離、クロマトグラフィー、濾過、ポリマーベースの沈殿、及び免疫学的単離を挙げてもよい。
【0080】
単離方法を選択する際に考慮すべき1つの点は、単離された細胞外小胞に細胞外小胞以外の粒子が混入することであろう。これは、得られた細胞外小胞の生物学的活性について誤った結論をもたらす可能性があるため、避けるべきである。さらには、当業者なら、異なる検体に由来する細胞外小胞は、異なるタンパク質/脂質及び内腔の含有量を有し、異なる沈降特性を有することを認識している。
【0081】
以下は、Konstantin Yakimchuk(2015) Exosomes:Isolation and Characterization Methods and Specific Markers. Mater Methods 2015;5:1450から改作したものである。
【0082】
分画遠心法
分画遠心法は、細胞、大きな小胞、破片を除去し、エクソソームを沈殿させることを目的とした複数の遠心分離工程から構成される。
【0083】
分画遠心法は、生体液及び培地からエクソソームを単離するために使用される標準的で、非常によく用いられている方法である。しかしながら、血漿及び血清等の粘性の高い生体液を分析に使用すると、この方法の効率は低下する。
【0084】
分画遠心法は、エクソソーム単離の最も一般的な方法のうちの1つであり続けている。
【0085】
詳細には、この方法は、(1)細胞及びアポトーシスの残骸を除去するための低速遠心分離、(2)より大きな小胞を除去するためのより高速の回転、そして最後に(3)エクソソームを沈殿させるための高速遠心分離、を含むいくつかの工程で構成されている。生体液の粘度は、単離されたエクソソームの純度と大きな相関関係がある。さらに、高粘度の生体試料では、超遠心分離工程の時間を長くしたり、遠心速度を上げたりする必要がある。
【0086】
例えば、エクソソームは、無血清培地で培養した細胞から、800×g及び2000×gの連続遠心分離工程により精製され、最後に100,000×gの超遠心でペレット化されてもよい。
【0087】
大脳皮質初代ニューロン由来のエクソソームは、上清を4℃で300×gで10分間、2000×gで10分間、10,000×gで30分間、及び100,000×gで90分間、連続的に遠心分離して得てもよく、最後のペレットは再懸濁して100,000×gで90分間再度遠心分離された。
【0088】
エクソソームの単離に超遠心分離を用いることを示すプロトコルは、例3として実施例に記載されている。
【0089】
密度勾配遠心分離法
密度勾配遠心分離法は、超遠心分離をショ糖密度勾配法の使用と組み合わせる。より具体的には、密度勾配遠心分離法は、エクソソームを、タンパク質及びタンパク質/RNAの凝集体等の非小胞性粒子から分離するために用いられる。従って、この方法は、異なる密度の粒子から小胞を単離する。
【0090】
適切な遠心分離時間を用いることが非常に重要である。そうしないと、混入粒子が同じような密度を持つ場合に、その混入粒子がエクソソーム画分の中に残る可能性がある。血液調製物からエクソソームを精製するために、密度勾配浮選(浮動)法が使用されてもよい。最近の研究では、超遠心分離法からのエクソソームのペレットをショ糖勾配に適用してから遠心分離を行うことが示唆されている。
【0091】
最近、クッション密度勾配超遠心法(Cushioned Density Gradient Ultracentrifugation)として導入された密度勾配ベースの方法の改良版のプロトコルが記載された。この方法は、単離されたエクソソームの最大限の回収及び高純度を提供し、その構造と機能を維持する。
【0092】
サイズ排除クロマトグラフィー
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、分子量ではなく、サイズに基づいて高分子を分離するために使用される。
【0093】
この技術は、複数の細孔及びトンネルを持つ多孔質ポリマービーズを充填したカラムを適用する。分子は、ビーズの直径に応じてビーズを通過する。小さな半径の分子はカラムの細孔を通過するのに時間がかかり、高分子はカラムから早く溶出する。
【0094】
サイズ排除クロマトグラフィーは、大分子及び小分子を正確に分離することができる。さらに、異なる溶出液をこの方法に適用することができる。クロマトグラフィーで単離したエクソソームは、小胞の構造を変化させる可能性のあるせん断力の影響を受けないため、クロマトグラフィー単離は、遠心分離法と比較してより多くの利点を有することが示されている。現在、SECは血液中及び尿中に存在するエクソソームを単離するための手法として広く受け入れられている。
【0095】
加えて、尿由来のエクソソームの単離及び解析には、SEC法と限外濾過の組み合わせが用いられている。UV分析器及び光散乱検出器と組み合わせたフローフィールドフロー分画法も、エクソソームのサイズ及び純度を分析するために応用されている。フローフィールドフロー分画法は、パラボリックフロー及びクロスフローを組み合わせてエクソソームを単離する。得られたエクソソームは、電子顕微鏡や質量分析法によって検出された。加えて、Laneらによる最近の論文(2017、Purification Protocols for Extracellular Vesicles. Methods Mol Biol. 2017;1660:111-130)は、超遠心分離、SEC及び密度勾配遠心分離法のプロトコルを含む、エクソソームの精製のための最新のプロトコルを提示している。
【0096】
エクソソームの単離のためのカラムアフィニティベースの精製の使用を示すプロトコルは、例5として実施例に記載されている。
【0097】
濾過
限外濾過膜も、エクソソームの単離に用いられてよい。マイクロベシクルのサイズにもよるが、この方法ではエクソソームをタンパク質及び他の高分子から分離することができる。エクソソームは、多孔質構造体を用いてエクソソームを捕捉することにより単離されてもよい。
【0098】
多くの一般的な濾過膜は、0.8μm、0.45μm、又は0.22μmの細孔サイズを有し、800nm、400nm、又は200nmよりも大きいエクソソームの回収に使用されてもよい。特に、40~100nmのエクソソームを単離するために、マイクロピラー多孔質シリコンの繊毛構造が設計された。最初の工程では、大きい小胞が取り除かれる。次の工程では、エクソソームの集団が濾過膜に濃縮される。単離の工程は比較的短いが、この方法ではシリコン構造体をPBSバッファで事前にインキュベートする必要がある。次の工程では、エクソソームの集団が濾過膜上で濃縮される。
【0099】
この方法は、まだ臨床試料を使っては検証されていない。標準的な濾過手法に加えて、タンジェンシャルフローフィルトレーションはエクソソームの効果的な単離に有望な結果を示しており、基礎研究及び臨床分析の両方に応用できる。この方法は、遊離ペプチド及び他の低分子化合物を除去することにより、サイズが十分に決定されたエクソソームの単離に用いられる。加えて、限外濾過とSECとの組み合わせは、インビトロの研究において、及び脂肪組織からのエクソソームの単離に非常に効率的であることが示された。
【0100】
ポリマーベースの沈殿
ポリマーベースの沈殿法は、通常、生体液を、ポリマーを含む沈殿液と混合し、4℃でインキュベートした後、低速で遠心分離することを含む。
【0101】
ポリマーベースの沈殿に使用される最も一般的なポリマーの一つはポリエチレングリコール(PEG)である。このポリマーを用いた沈殿は、単離されたエクソソームへの影響が少なく、中性のpHを利用できる等の多くの利点を有する。
【0102】
ExoQuick(商標)(System Biosciences(システム・バイオサイエンシーズ)、マウンテンビュー(Mountain View)、カリフォルニア州、米国)等、エクソソームの単離にPEGを適用する市販のキットがいくつか利用可能である。このキットは、簡単かつ迅速に行うことができ、追加の設備も必要ない。最近の研究では、最も高いエクソソームの収量が、ExoQuick(商標)法を用いた超遠心分離を用いて得られることが実証された。しかしながら、ポリマーベースの単離方法については、エクソソーム単離物に非エクソソーム物質が混入することが依然として問題となっている。加えて、単離物の中に存在するポリマー物質が、下流の分析に支障をきたす可能性もある。
【0103】
Niuらによる最近の研究は、ヒト子宮内膜細胞からエクソソームを単離するために、超遠心、限外濾過、及びポリマーベースの沈殿の適用を比較し、ポリマーベースの方法が最もタンパク質の混入が少ないことを見出した。
【0104】
免疫学的な分離
エクソソームの免疫学的な分離の技術がいくつか開発されている。イムノチップ法は、表面エクソソーム受容体に基づいており、この受容体は、エクソソームをその起源に応じて単離するために使用される。得られたエクソソームは直接分析されるか、又はDNA若しくは全RNAの単離に使用される。
【0105】
エクソソームの細胞内タンパク質は、エクソソームの単離のための特異的なマーカーとして使用できる。抗体をコーティングした磁気ビーズが、抗原提示細胞からエクソソームを単離するために有効に使用された。また、腫瘍関連のHER2及びEpCAMに対する抗体を用いて、腫瘍細胞から腫瘍由来のエクソソームが単離された。単離されたビーズ-エクソソーム複合体は、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット法及び電子顕微鏡によって分析できる。さらに、ウエスタンブロット法は、テトラスパニン、並びにエンドソーム選別輸送複合体(endosomal sorting complexes required for transport、ESCRT)タンパク質であるAlix及びTSG101を含めたエクソソーム特異的なタンパク質を検出するために適用される。しかしながら、抗体をコーティングしたビーズを用いた単離は、大きい体積からエクソソームを得るのに適していない。
【0106】
加えて、ELISAベースのExoTEST(商標)がエクソソームの単離に有効であることが実証された。エクソソームの抗体でコーティングしたExoTEST(商標)プレートを用いて、様々な生体液からエクソソームを単離することができる。この方法は、一般的なエクソソームタンパク質及び細胞種特異的なエクソソームタンパク質の両方の検出、分析並びに定量に適用される。
【0107】
最近の研究は、エクソソームを結合させるために、免疫親和性超常磁性ナノ粒子(ISPN)を応用している。その研究者らは、抗CD63抗体とナノ粒子とを結合させてISPNを生成し、それを用いて体液からエクソソームを単離した。
【0108】
エクソソームの単離に免疫親和性親和性ベースの精製を使用することを示すプロトコルは、例7として実施例に記載されている。
【0109】
篩い分けによる単離
この手法は、エクソソームを生体液から膜を介してふるいにかけ、加圧濾過又は電気泳動を行うことでエクソソームを単離する。この方法は、分離期間が短くて済むが、単離されたエクソソームの純度が高い。この方法は、エクソソームの特定の種類に関しては非選択的であると考えられている。篩い分けによる分離の唯一の欠点は、単離されたエクソソームの回収率が低いことである。
【0110】
超遠心分離(UC)
超遠心分離(UC)は、現在のEV単離のゴールドスタンダードである。しかしながら、この手順は時間がかかり、スループットが低く、操作者によってばらつきが大きいため、超遠心分離は、臨床現場での使用には適していない可能性がある26-29
【0111】
他の単離方法も利用できるが、これらは異なるサブタイプのEVを単離するようで、比較が難しい28、30-36
【0112】
本研究では、本発明者らは、以下の2つの目的で、市販のEV単離キット/試薬のEV関連miRNA(EV-miRNA)回収性能を系統的に比較した:(1)臨床現場での血清EV-miRNAの回収に適した堅牢なEV単離方法を特定すること、及び(2)胃癌(GC)の非侵襲的な検出に使用できる血清EV-miRNAバイオマーカーを特定すること。
【0113】
エクソソームの単離のための超遠心分離の使用を示すプロトコルは、例3として実施例に記載されている。
【0114】
ポリマーベースの沈殿を用いたエクソソームの単離
本明細書中に開示された方法では、エクソソーム等の細胞外小胞は、ポリマーベースの沈殿を用いて単離されてもよい。この目的のために、Invitrogen Total Exosome Isolation Reagent(from serum)(カタログ番号:4478360、ThermoFisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)、米国)等の市販のキットが使用されてもよい。
【0115】
ポリマーベースの沈殿を用いてエクソソームを単離するために、以下の例示的なプロトコルが使用されてもよい。エクソソームの単離のためのポリマーベースの沈殿の使用を示すさらなるプロトコルは、例4として実施例に記載されている。
【0116】
ポリマーベースの沈殿のプロトコル
試料の調製
1. 血清試料を保管場所から取り出し、氷上に置く。試料が凍結している場合は、25℃の水浴で完全に液状になるまで試料を解凍し、必要になるまで氷上に置いておく。
2. 血清試料を2000×gで30分間遠心分離し、細胞や破片を除去する。
3. 清澄化した血清を含む上清を、ペレットを崩さないように新しいチューブに移し、単離を行う準備ができるまで氷上に置いておく。
【0117】
エクソソームの単離
1. 必要量の清澄化した血清を新しいチューブに移し、0.2倍量のTotal Exosome Isolation(from serum)試薬を加える。
2. 血清/試薬の混合物をボルテックスにかけるか又は上下のピペッティング操作により、均一な溶液になるまでよく混合する。
注:溶液は白濁しているはずである。
3. 試料を2℃~8℃で30分間インキュベートする。
4. インキュベート後、試料を10,000×gで10分間、室温で遠心分離する。
5. 上清を吸引し、廃棄する。エクソソームはチューブの底にあるペレットに含まれている。
6. ピペットチップを用いて、ペレットを適量の1×PBS又は類似のバッファに完全に懸濁する。
開始血清量が100μLの場合、25~50μLの再懸濁量を使用するべきである。開始血清量が1mLの場合、100~500μLの再懸濁量を使用するべきである。
7. ペレットが再懸濁されると、エクソソームは下流の分析又はアフィニティ法によるさらなる精製の準備が整う。
単離したエクソソームは、2℃~8℃で1週間まで、又は20℃以下で長期保存する。
【0118】
マイクロRNA(miRNA)
マイクロRNA(miRNA)は、タンパク質の発現を制御して、細胞の分化、増殖、アポトーシス等、いくつかの重要な細胞プロセスにおいて生理的な意義を発揮する小さな非コードRNA(約19~22ヌクレオチド)である1、2。血清、血漿、全血等の生体液中で容易に検出できる循環miRNAは、癌を含めた様々な疾患の非侵襲的な検出のための有望なリキッドバイオプシーのバイオマーカーである。加えて、miRNAに影響を与える異常は、癌の発生及び進行に大きく影響することが示されている3-6。miRNAは血清/血漿中で安定しているため、早期発見、予後判定又は治療を目的としたmiRNAバイオマーカーの特定が大きく注目され、多大な努力が払われている7-9。しかしながら、miRNAの発現レベルの変化は、疾患の発症時にはほとんど見られずに、診断が困難になることがある10-12。理想的なリキッドバイオプシーのバイオマーカーは、癌試料と対照試料との間で高い信号対雑音比を有し、臨床現場で容易に検出できるものでなければならない。
【0119】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA
本明細書中に記載されている方法及び組成物は、個体における胃癌の診断、感受性の検出、治療、緩和又は予防のために、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及び任意にhsa-miR-423-5pのmiRNA、並びにこれらのいずれかのものの変異体、相同体、誘導体及び断片を利用してもよい。
【0120】
用語「hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA」並びに「hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p核酸」は、互換的に使用されてもよい。同様に、「hsa-miR-423-5pのmiRNA」及び「hsa-miR-423-5p核酸」という用語は、互換的に使用されてもよい。
【0121】
これらの用語は、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA(若しくは、hsa-miR-423-5pが使用される場合にはhsa-miR-423-5pも)並びに/又はこれの断片、誘導体、相同体若しくは変異体をコードすることができる核酸配列を含むことも意図されている。これらの用語は、本明細書に開示された特定の配列を有するhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5p(又は、hsa-miR-423-5pが使用される場合にはhsa-miR-423-5pも)ポリヌクレオチドの断片、誘導体、相同体若しくは変異体である核酸配列を含むことも意図されている。
【0122】
hsa-miR-484、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA(又は、hsa-miR-423-5pも)核酸への言及がなされる場合、これは、そのようなmiRNAをコードすることができる核酸配列への言及とみなされるべきである。そのようなmiRNAは、場合によっては、未変性のhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA(又は、hsa-miR-423-5pが関連する場合にはhsa-miR-423-5pも)の1つ以上の生物学的活性を含んでいてもよい。
【0123】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA、及び任意にhsa-miR-423-5pは、本明細書に記載されているように、様々な手段に使用されてもよい。例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA又はhsa-miR-423-5のmiRNAは、胃癌に罹患しているか、若しくは罹患していると疑われる個体を治療するために、又はそのような状態を予防するために、又はそのような状態の結果として生じる任意の症状を緩和するために使用されてもよい。他の使用は、当業者には明らかであり、本明細書にも包含されている。
【0124】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは未修飾のRNA又はDNAであってもよく、修飾されたRNA又はDNAであってもよい。「ポリヌクレオチド」には、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖であってもよく、より典型的には二本鎖であってもよく、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、1つ以上の修飾塩基を含むDNA又はRNA、及び安定性のために若しくは他の理由で骨格が修飾されたDNA又はRNAも含む。「修飾」塩基には、例えば、トリチル化された塩基や、イノシン等の通常ではない塩基が含まれる。DNA及びRNAには様々な修飾が施されているため、「ポリヌクレオチド」は、自然界で典型的に見られるポリヌクレオチドの化学的、酵素的、又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞に特徴的なDNA並びにRNAの化学的な形態を包含する。「ポリヌクレオチド」には、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い比較的短いポリヌクレオチドも包含する。
【0125】
遺伝コードの縮重の結果として、多数のヌクレオチド配列が同じポリペプチドをコードすることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0126】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド配列」という用語は、ヌクレオチド配列、オリゴヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列、及びそれらの変異体、相同体、断片及び誘導体(その一部等)を指す。ヌクレオチド配列は、二本鎖であっても一本鎖であっても、センス鎖を表していてもアンチセンス鎖を表していても、若しくはそれらの組み合わせであってもよい、ゲノム若しくは合成若しくは組換え起源のDNA又はRNAであってもよい。用語「ヌクレオチド配列」は、組換えDNA技術(例えば、組換えDNA)を用いて調製されてもよい。
【0127】
用語「ヌクレオチド配列」はDNA又はRNAを意味してもよい。
【0128】
他の核酸
本発明者らは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAの断片、相同体、変異体又は誘導体である核酸、並びにhsa-miR-423-5pのmiRNAが任意に使用される場合にはhsa-miR-423-5pのmiRNAの断片、相同体、変異体又は誘導体である核酸も提供する。
【0129】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAに関連する用語「変異体」、「相同体」、「誘導体」又は「断片(フラグメント)」には、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAの配列からの、若しくはその配列への1つ(以上)の核酸の任意の置換、変形、修飾、置き換え、欠失又は付加が含まれる。文脈上他に認められない限り、「hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA」、並びに「hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p核酸」、「hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pヌクレオチド配列」等への言及は、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNAのそのような変異体、相同体、誘導体及び断片への言及を含む。hsa-miR-423-5pについても同様である。
【0130】
ヌクレオチド配列は、いずれか1つ以上のhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA活性(又は関連する場合にはhsa-miR-423-5p活性)を有するポリペプチドをコードしてもよい。「相同体」という用語は、結果として得られるヌクレオチド配列が、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA活性(又はhsa-miR-423-5p活性)を有するポリペプチドをコードするような、構造及び/又は機能に関する同一性をカバーすることを意図してもよい。例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA又はhsa-miR-423-5pの相同体等は、胃癌に罹患している個体からの細胞において、正常な細胞と比較して発現レベルが上昇又は低下していてもよい。配列同一性(すなわち類似性)に関して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%又は少なくとも90%の配列同一性があってもよい。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNAの任意の核酸配列等の関連配列に対して、少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性があってもよい。これらの用語は、上記配列の対立遺伝子の変異も包含する。
【0131】
変異体、誘導体及び相同体
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA(並びに任意に使用される場合のhsa-miR-423-5pのmiRNA)の核酸変異体、断片、誘導体及び相同体は、RNAを含んでもよい。それらは一本鎖であってもよい。それらは、合成ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対する多くの異なるタイプの修飾が当該技術分野で公知である。オリゴヌクレオチドの修飾には、メチルホスホネート骨格及びホスホロチオエート骨格、分子の3’末端や5’末端にアクリジン鎖やポリリジン鎖を付加することを含む。本明細書の目的のためには、ポリヌクレオチドは、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾されてもよいことを理解されたい。このような修飾は、目的とするポリヌクレオチドのインビボでの活性又は寿命を高めるために行われてもよい。
【0132】
ポリヌクレオチドが二本鎖である場合、その二本鎖の両鎖は、個別に又は組み合わせて、本明細書に記載の方法及び組成物に包含される。ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補的配列も含まれることを理解されたい。
【0133】
ヌクレオチド配列に関する「変異体」、「相同体」又は「誘導体」という用語には、その配列から又はその配列への1つ(以上)の核酸の任意の置換、変形、修飾、置き換え、欠失又は付加が含まれる。この変異体、相同体又は誘導体は、生物学的活性を有するポリペプチドをコードしてもよい。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA又はhsa-miR-423-5pのそのような断片、相同体、変異体及び誘導体は、上述のように、変調した活性を含んでいてもよい。
【0134】
上述のように、配列同一性に関して、「相同体」は、関連配列、例えばhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNAの任意の核酸配列に対する少なくとも5%の同一性、少なくとも10%の同一性、少なくとも15%の同一性、少なくとも20%の同一性、少なくとも25%の同一性、少なくとも30%の同一性、少なくとも35%の同一性、少なくとも40%の同一性、少なくとも45%の同一性、少なくとも50%の同一性、少なくとも55%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、又は少なくとも95%の同一性を有していてもよい。
【0135】
少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は少なくとも99%の同一性があってもよい。ヌクレオチド同一性の比較は、上述のように実施されてもよい。使用されてもよい配列比較プログラムは、上述のGCG Wisconsin Bestfitプログラムである。デフォルトのスコアリングマトリックスは、各同一のヌクレオチドに対して10のマッチ値を有し、各ミスマッチに対して-9のマッチ値を有する。デフォルトのギャップ作成ペナルティは-50であり、デフォルトのギャップ拡張ペナルティは各ヌクレオチドに対して-3である。
【0136】
ハイブリダイゼーション
さらに、本明細書に提示された配列のいずれか、又はその変異体、断片若しくは誘導体、又はいずれかの上記のものの相補体に選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列が記載される。ヌクレオチド配列は、少なくとも5ヌクレオチド、10ヌクレオチド、又は15ヌクレオチドの長さ、例えば少なくとも20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、又は50ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0137】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、「核酸の鎖が塩基対形成を介して相補的な鎖と結合するプロセス」、及びポリメラーゼ連鎖反応技術で行われるような増幅のプロセスを含むものとする。
【0138】
本明細書に提示されているヌクレオチド配列又はその相補体に選択的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、本明細書中に提示される対応するヌクレオチド配列、例えばhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA(又は任意でhsa-miR-423-5p)の任意の核酸配列に対して少なくとも40%相同、少なくとも45%相同、少なくとも50%相同、少なくとも55%相同、少なくとも60%相同、少なくとも65%相同、少なくとも70%相同、少なくとも75%相同、少なくとも80%相同、少なくとも85%相同、少なくとも90%相同、又は少なくとも95%相同であってもよい。そのようなポリヌクレオチドは、少なくとも5、10、15又は20、例えば少なくとも25又は30、例えば少なくとも40、60又は100以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、対応するヌクレオチド配列に対して一般的に少なくとも70%、少なくとも80若しくは90%又は少なくとも95%又は98%相同であってもよい。
【0139】
用語「選択的にハイブリダイズする」は、プローブとして使用されるポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドがバックグラウンドを大幅に上回るレベルでそのプローブにハイブリダイズすることが見出される条件下で使用されることを意味する。バックグラウンドでのハイブリダイゼーションは、例えば、スクリーニングされるcDNA又はゲノムDNAライブラリ中に存在する他のポリヌクレオチドのために起こる可能性がある。この場合、バックグラウンドとは、プローブとライブラリの非特異的なDNAメンバーとの間の相互作用によって生成されるシグナルのレベルを意味し、それは、標的DNAとの間で観測される特異的な相互作用の10分の1未満、例えば100分の1未満の強度である。相互作用の強さは、例えば、プローブを32P又は33Pで放射性標識したり、非放射性プローブ(例えば蛍光色素、ビオチン、ジゴキシゲニン)で標識したりして測定されてもよい。
【0140】
ハイブリダイゼーションの条件は、Berger及びKimmel(1987、Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology、第152巻、Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア州)で教示されているように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づいており、本明細書の他の箇所で説明されているように、定義された「ストリンジェンシー」を付与する。
【0141】
最大ストリンジェンシーは、典型的には約Tm-5℃(プローブのTmより5℃低い)で発生し、高ストリンジェンシーはTmより約5℃~10℃C低い温度で発生し、中間ストリンジェンシーはTmより約10℃~20℃低い温度で発生し、低ストリンジェンシーはTmより約20℃~25℃低い温度で発生する。当業者であれば理解できるように、最大ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、同一のポリヌクレオチド配列を識別又は検出するために使用することができ、一方、中間(又は低)ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、類似又は関連するポリヌクレオチド配列を識別又は検出するために使用することができる。
【0142】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA(及び使用される場合のhsa-miR-423-5pのmiRNA)の核酸、断片、変異体、相同体、又は誘導体とストリンジェントな条件(例えば、65℃及び0.1×SSC)(1×SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸三ナトリウム、pH7.0)でハイブリダイズすることができてもよいヌクレオチド配列が提供される。
【0143】
相同体、変異体及び誘導体の生成
関連する配列(hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA)と100%同一ではないが、これも含まれるポリヌクレオチド、並びにhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAの相同体、変異体及び誘導体は、いくつかの方法で得ることができる。上記配列の他の変異体は、例えば、様々な個体、例えば、異なる集団からの個体から作られたRNAライブラリをプローブすることによって得られてもよい。例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA及びhsa-miR-423-5pの相同体は、他の個体、又は他の種から特定されてもよい。さらなる組換えのhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸及びポリペプチドは、相同体の対応する位置を特定し、本明細書の他の箇所に記載されているように分子を合成又は製造することによって製造されてもよい。
【0144】
加えて、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAの他のウイルス/細菌又は細胞性相同体、特に哺乳類細胞(例えば、ラット、マウス、ウシ、及び霊長類の細胞)で見出される細胞性相同体が得られてもよく、そのような相同体及びその断片は、一般に、ヒトのhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAに選択的にハイブリダイズすることができるであろう。そのような相同体は、非ヒトのhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸、断片、変異体及び相同体を設計するために使用されてもよい。さらなる多様性を生み出すために、当該技術分野で公知の手段で変異導入が行われてもよい。
【0145】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAの相同体の配列は、他の動物種から作製したライブラリをプローブすること、そのようなライブラリを、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA、並びにhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNAの断片、変異体及び相同体、又は他の断片のいずれかの全部又は一部を含むプローブで、中~高ストリンジェンシーの条件下でプローブすることによって得てもよい。
【0146】
本明細書中に開示されたポリペプチド配列又はヌクレオチド配列の種の相同体及び対立遺伝子の変異体を得るために、同様の考慮が適用される。
【0147】
変異体及び株/種相同体は、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変異体及び相同体内の配列を標的とするように設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得てもよい。保存された配列は、例えば、いくつかの変異体/相同体からのアミノ酸配列をアラインメントすることによって予測することができる。配列のアラインメントは、当該技術分野で公知のコンピュータソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く使われている。
【0148】
縮重PCRに使用されるプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、既知の配列に対する単一配列プライマーを用いた配列のクローニングに使用されるものよりも低いストリンジェンシー条件で使用される。遠縁の生物からの配列間の全体的なヌクレオチドの相同性は非常に低い可能性が高く、従って、このような状況では、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5pのmiRNA又はhsa-miR-423-5p配列の標識された断片でライブラリをスクリーニングするのではなく、縮重PCRが選択される可能性があることは当業者には理解されるであろう。
【0149】
加えて、BLASTプログラムセット等の検索アルゴリズムを使用して、ヌクレオチド及び/又はタンパク質のデータベースを検索することによって、相同配列が特定されてもよい。
【0150】
あるいは、そのようなポリヌクレオチドは、例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p若しくはhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片等の特徴的な配列の部位指向性変異誘発によって得られてもよい。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現している特定の宿主細胞に対するコドンの優先順位を最適化するために、配列にサイレントコドンの変更が必要な場合に有用であってもよい。制限酵素認識部位を導入するか、又はポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特性又は機能を変更するために、他の配列変更が望まれてもよい。
【0151】
本明細書中に記載されているポリヌクレオチドは、プライマー、例えばPCRプライマー、代替増幅反応のためのプライマー、プローブ、例えば放射性標識又は非放射性標識を用いた従来の手段により明らかにする標識で標識されたプローブを作成するために使用されてもよいし、又はこのポリヌクレオチドはベクターにクローニングされてもよい。そのようなプライマー、プローブ及び他の断片は、少なくとも8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、又は15ヌクレオチド、例えば少なくとも20ヌクレオチド、例えば少なくとも25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、又は40ヌクレオチドの長さを有するであろうし、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語にも包含される。
【0152】
DNAポリヌクレオチド及びプローブ等のポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、又は当業者が利用可能な任意の手段によって製造されてもよい。このポリヌクレオチドは、標準的な技術でクローニングされてもよい。
【0153】
一般に、プライマーは、所望の核酸配列を一度に1ヌクレオチドずつ段階的に製造することを含む合成的手段により製造される。自動化された技術を使用してこれを達成するための技術は、当該技術分野で容易に入手可能である。
【0154】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及び任意にhsa-miR-423-5pの断片を含むプライマーは、例えば胃癌に関連して、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA発現の上方制御又は下方制御の検出方法において特に有用である。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNAの増幅に好適なプライマーは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNA任意の好適なひとつながり(区間)から生成されてもよい。使用されてもよいプライマーとしては、特異的であるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNAの配列を増幅できるものが挙げられる。
【0155】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAプライマーは、単独で提供されてもよいが、順方向プライマー及び逆方向プライマーを含むプライマー対として提供されるのが最も有用である。
【0156】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を用いて、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて製造される。これは、一対のプライマー(例えば、約15~30ヌクレオチドのもの)を作製し、これらのプライマーを動物又はヒトの細胞から得たmRNA又はcDNAと接触させ、所望の領域を増幅させる条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を単離し(例えば、アガロースゲル上で反応混合物を精製することにより)、増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAが適切なクローニングベクターにクローニングされうるように、適切な制限酵素認識部位を含むように設計されていてもよい。
【0157】
ポリヌクレオチド又はプライマーには、明らかにするための標識が付いていてもよい。好適な標識としては、32P又は35S等の放射性同位元素、ジゴキシゲニン、蛍光色素、酵素標識、又はビオチン等のタンパク質標識が挙げられる。このような標識は、ポリヌクレオチド又はプライマーに付加されてもよく、公知の技術を用いて検出されてもよい。ポリヌクレオチド若しくはプライマー、又はそれらの断片は、標識されていても標識されていなくても、当業者によってヒトや動物の体内のポリヌクレオチドを検出又は配列決定するための核酸ベースの検査に使用されてもよい。
【0158】
検出するためのそのような検査は、一般に、DNA又はRNAを含む生体試料を、ポリヌクレオチド又はプライマーを含むプローブとハイブリダイズ条件下で接触させ、プローブと試料中の核酸との間に形成されたいずれかの二本鎖を検出することを含む。このような検出は、PCR等の手法を用いて、又はプローブを固体支持体上に固定化し、プローブとハイブリダイズしていない試料中の核酸を除去した後、プローブとハイブリダイズした核酸を検出することにより達成されてもよい。あるいは、試料の核酸が固体支持体に固定化されてもよく、そのような支持体に結合したプローブの量を検出することができる。この形式及び他の形式の適切なアッセイ方法は、例えば、国際公開第89/03891号パンフレット及び国際公開第90/13667号パンフレットに見出すことができる。
【0159】
ヌクレオチド、例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸の配列を決定するための試験は、標的のDNA又はRNAを含む生体試料を、ポリヌクレオチド又はプライマーを含むプローブと、ハイブリダイズ条件下で接触させ、例えばサンガーによるジデオキシ鎖伸長停止法(Sambrookらを参照)によって配列を決定することを含む。
【0160】
このような方法は、一般に、適切な試薬の存在下で、標的のDNA又はRNAに相補的な鎖の合成によりプライマーを伸長させ、伸長反応をA、C、G又はT/U残基の1つ以上で選択的に伸長停止させることと、鎖の伸長及び伸長停止反応を起こさせることと、伸長した生成物をサイズに応じて分離し、選択的伸長停止が起こったヌクレオチドの配列を決定することとを含む。適切な試薬としては、DNAポリメラーゼ酵素、デオキシヌクレオチドdATP、dCTP、dGTP、及びdTTP、バッファ、並びにATPが挙げられる。ジデオキシヌクレオチドは選択的伸長停止に用いられる。
【0161】
miRNAの単離
miRNAは、当該技術分野で公知の任意の手段を用いてエクソソームから単離されてもよい。
【0162】
当業者であれば、生体液からmiRNAを単離するための様々な方法が開発されていることを知っているであろう。例えば、miRNeasyキット(Qiagen(キアゲン)、カリフォルニア州)、miRVana PARISキット(Ambion(アンビオン)、テキサス州)、全RNA単離キット(Norgen Biotek(ノルゲン・バイオテック)、カナダ)の市販のmiRNA単離キットが入手可能である。試料からmiRNAを単離するためにこれらのいずれが使用されてもよい。
【0163】
miRNeasy Serum/Plasma Handbook(QIAGEN、2012年2月)から引用した以下のプロトコル例を用いて、miRNeasyキットを使用してmiRNAを単離してもよい。
1. 血清若しくは血漿を調製するか、又は凍結試料を解凍する。
2. QIAzol Lysis Reagentを5倍量加える(ガイドラインとして表2を参照)。ボルテックス又は上下のピペッティングにより混合する。
【表1】
注:血漿又は血清の量が限られていない場合は、本発明者らは、1回のRNA調製につき100~200μlの使用を推奨する。
注:QIAzol Lysis Reagentを添加した後、可溶化液は-70℃で数ヶ月間保存できる。
3. 上記可溶化液が入ったチューブを室温(15~25℃)で5分間、ベンチトップに置く。
4. 3.5μlのmiRNeasy Serum/Plasma Spike-In Control(1.6×10コピー/μlの作業溶液)を加え、十分に混合する。
miRNeasy Serum/Plasma Spike-In Controlの適切なストック及び作業溶液の作製に関する詳細については、付録Bの25頁を参照のこと。
5. 出発試料と同量のクロロホルムを上記可溶化液が入ったチューブに加え、しっかりとキャップする(ガイドラインとして表2を参照)。15秒間、ボルテックスにかけるか又は激しく振盪する。
十分に混合することが、その後の相単離に重要である。
6. 可溶化液が入ったチューブを室温(15~25℃)で2~3分間、ベンチトップに置く。
7. 4℃で12,000×gの遠心分離を15分間行う。遠心分離後、同じ遠心分離機を次の遠心分離工程で使用する場合は、遠心分離機を室温(15~25℃)に戻す。
遠心分離後、試料は、RNAを含む上層の無色の水相、白色の中間相、及び下層の赤色の有機相の3相に分離する。水相のおおよその体積については表2を参照。
8. 上層の水相を新しい採取チューブ(付属していない)に移す。中間相の物質を移さないようにすること。1.5倍量の100%エタノールを加え、上下に数回ピペッティングして十分に混合する。遠心分離はしない。遅滞なく工程9に進む。
エタノールを加えた後に沈殿物ができることがあるが、これは手順に影響を及ぼさない。
9. 沈殿物が生成していたらそれも含めて最大700μlの試料を、2ml採取チューブ(付属している)に入れたRNeasy MinEluteスピンカラムにピペッティングする。蓋を静かに閉め、室温(15~25℃)で8000×g以上(10,000rpm以上)で15秒間遠心する。フロースルーを捨てる
上記採取チューブは工程10で再利用する。
10. 試料の残りを用いて工程9を繰り返す。フロースルーを廃棄する
上記採取チューブは工程11で再利用する。
11. 700μlのBuffer RWTをRNeasy MinEluteスピンカラムに加える。蓋を静かに閉め、8000×g以上(10,000rpm以上)で15秒間遠心し、カラムを洗浄する。フロースルーを捨てる
上記採取チューブは工程12で再利用する。
12. 500μlのBuffer RPEを上記RNeasy MinEluteスピンカラムにピペッティングする。蓋を静かに閉め、8000×g以上(10,000rpm以上)で15秒間遠心し、カラムを洗浄する。フロースルーを捨てる。
上記採取チューブを工程13で再利用する。
13. 500μlの80%エタノールを上記RNeasy MinEluteスピンカラムにピペッティングする。蓋を静かに閉め、8000×g以上(10,000rpm以上)で2分間遠心し、スピンカラムのメンブレンを洗浄する。フロースルーが入った採取チューブを捨てる。
注:80%エタノールは、エタノール(96~100%)及びRNaseフリーの水で調製する必要がある。
注:遠心後、RNeasy MinEluteスピンカラムがフロースルーに接触しないように注意深く採取チューブからRNeasy MinEluteスピンカラムを取り出す。RNeasy MinEluteスピンカラムがフロースルーに接触すると、エタノールの持ち越しが発生することになる。
14. 上記RNeasy MinEluteスピンカラムを新しい2ml採取チューブ(付属している)に入れる。スピンカラムの蓋を開け、全速力で5分間遠心し、メンブレンを乾燥させる。フロースルーが入った採取チューブを捨てる。
蓋の破損を防ぐため、スピンカラムを、カラム間に少なくとも1本分の空き位置を設けて遠心機に入れること。蓋の向きは、蓋がローターの回転方向と逆になるようにする(例えば、ローターが時計回りに回転する場合は、蓋を反時計回りにする)。
残留エタノールは下流の反応に支障をきたす可能性があるので、スピンカラムのメンブレンを乾燥させることが重要である。蓋を開けた状態で遠心すると、RNAの溶出時にエタノールが持ち越されないことが確実になる。
15. 上記RNeasy MinEluteスピンカラムを新しい1.5ml採取チューブ(付属している)に入れる。14μlのRNaseフリーの水をスピンカラムのメンブレンの中央に直接加える。蓋を静かに閉め、全速力で1分間遠心し、RNAを溶出させる。
より高いRNA濃度が必要な場合は、少ない10μlのRNaseフリーの水を溶出に使用することもできるが、収量は約20%減少する。10μl未満のRNaseフリーの水ではスピンカラムのメンブレンが十分に水和しないため、10μl未満のRNaseフリーの水を用いて溶出しないこと。
RNeasy MinEluteスピンカラムのデッドボリュームは2μlであり、14μlのRNaseフリーの水で溶出すると12μlの溶出液が得られる。
【0164】
胃癌
胃癌(gastric cancer)は、stomach cancer(胃癌)としても知られる。
【0165】
胃癌についての情報は、American Cancer Society(米国癌協会)によって発行されており、https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancerから入手されてもよい。
【0166】
胃癌は、以下の文書に詳細に記載されている。
Lelloら、2007年、Short and long-term survival from gastric cancer. A population-based study from a county hospital during 25 years. Acta Oncologica 46:3、308-315.
Sanjeevaiah A、Cheedella N、Hester C、Porembka MR. Gastric Cancer:Recent Molecular Classification Advances, Racial Disparity, and Management Implications. J Oncol Pract. 2018 Apr;14(4):217-224. doi:10.1200/JOP.17.00025.
Rawla P、Barsouk A. Epidemiology of gastric cancer: global trends, risk factors and prevention. Prz Gastroenterol. 2019;14(1):26-38. doi:10.5114/pg.2018.80001. 2018年11月28日電子出版.
Pasechnikov V、Chukov S、Fedorov E、Kikuste I、Leja M. Gastric cancer: prevention, screening and early diagnosis. World J Gastroenterol. 2014;20(38):13842-13862. doi:10.3748/wjg.v20.i38.13842
Kim GH、Liang PS、Bang SJ、Hwang JH. Screening and surveillance for gastric cancer in the United States: Is it needed? Gastrointest Endosc. 2016 Jul;84(1):18-28. doi:10.1016/j.gie.2016.02.028. 2016年3月3日電子出版.
【0167】
胃癌の危険因子
以下は、American Cancer Societyからの改作である。
【0168】
胃癌の危険因子には以下のものがある。
【0169】
性別
胃癌は、女性よりも男性に多く見られる。
【0170】
年齢
50歳を超えた人に胃癌罹患率が急増する。胃癌と診断される人の多くは、60代後半から80代である。
【0171】
民族
米国では、胃癌は、非ヒスパニック系白人よりもヒスパニック系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民、アジア/太平洋諸島系アメリカ人で多く見られる。
【0172】
地理
世界的に見ると、胃癌は日本、中国、南東ヨーロッパ、及び南・中央アメリカで多く見られる。この疾患は、北西アフリカ、南中央アジア、及び北アメリカではあまり一般的ではない。
【0173】
ヘリコバクター・ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ菌(H pylori)の感染は、胃癌、とりわけ胃の下部(遠位部)の癌の主な原因と考えられている。胃がこの病原菌に長期間感染すると、胃の内壁に炎症(慢性萎縮性胃炎と呼ばれる)や前癌病変が生じることがある。
【0174】
胃癌の人は、この癌を持たない人に比べてピロリ菌の感染率が高い。ピロリ菌の感染は、いくつかのタイプの胃のリンパ腫にも関係している。そうではあっても、この病原菌を胃に持っているほとんどの人は決して癌を発症しない。
【0175】
胃のリンパ腫
粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫として知られるある種の胃のリンパ腫にかかったことのある人は、胃の腺癌になるリスクが高くなる。これは、おそらくは、胃のMALTリンパ腫がピロリ菌の感染によって引き起こされるからである。
【0176】
食生活
燻製、塩漬けの魚及び肉、及び漬物を多く摂る食生活をしている人では、胃癌のリスクの上昇が見られる。硝酸及び亜硝酸は、塩漬肉に多く見出される物質である。硝酸及び亜硝酸は、ピロリ菌等の特定の細菌によって、実験動物で胃癌の原因となると示されている化合物に変換されることが可能である。
【0177】
他方で、新鮮な果物や野菜をたくさん食べることは、胃癌のリスクを下げるようである。
【0178】
タバコの使用
喫煙は、胃癌のリスクを高め、特に食道に近い胃の上方部分の癌のリスクを高める。喫煙者では胃癌の発生率が約2倍になる。
【0179】
太りすぎ又は肥満
太りすぎ又は肥満は、噴門(食道に最も近い胃の上方部分)の癌の原因となる可能性があるが、その関連性の強さはまだ明らかになっていない。
【0180】
胃の手術歴
潰瘍等の非癌性疾患の治療のために胃の一部を切除したことのある人では、胃癌がより発生しやすい。これは、胃がより少ない酸しか分泌せず、そのため亜硝酸を生成する細菌がより多く存在することが可能になるためと考えられる。手術後の小腸から胃への胆汁の逆流(うっ滞)も、リスクの増加につながる可能性がある。これらの癌は通常、手術後何年も経ってから発症する。
【0181】
悪性貧血
胃壁にある特定の細胞は、通常、食物からビタミンB12を吸収するために必要な内因子(IF)と呼ばれる物質を作っている。IFが十分でない人は、ビタミンB12が欠乏してしまう可能性があり、そうなると、身体が新しい赤血球を作る能力に影響が出て、他の問題も引き起こす可能性がある。この状態は悪性貧血と呼ばれている。貧血(赤血球の数が少なすぎる)とともに、この疾患を抱える人は胃癌のリスクが高くなる。
【0182】
メネトリエ病(肥大性胃疾患)
この状態では、胃壁の過剰な増殖により胃壁に大きなひだができ、胃酸の分泌が低下する。この疾患は非常に稀であるため、これが胃癌のリスクがどの程度高めるかは正確にはわかっていない。
【0183】
A型の血液
血液型群は、赤血球及びその他の細胞の表面に通常存在する特定の物質を指す。これらの群は、輸血用の血液を照合するのに重要である。理由は不明だが、A型の血液の人は胃癌になるリスクが高い。
【0184】
遺伝性の癌症候群
いくつかの遺伝性病態は、人の胃癌のリスクを高める可能性がある。
【0185】
遺伝性びまん性胃癌
この遺伝性の症候群は、胃癌の発生リスクを大幅に高める。この病態は稀であるが、罹患者の生涯の胃癌リスクは約70~80%である。この症候群を持つ女性は、ある種の乳癌にかかるリスクも高くなる。この病態は、CDH1遺伝子の突然変異(欠損)によって引き起こされる。
【0186】
リンチ症候群又は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)
リンチ症候群(旧名:HNPCC)は、大腸癌(結直腸癌)、胃癌、その他の癌のリスクを高める遺伝性障害である。ほとんどの場合、この障害はMLH1遺伝子又はMSH2遺伝子の欠陥によって引き起こされるが、MLH3、MSH6、TGFBR2、PMS1、及びPMS2を含む他の遺伝子がリンチ症候群の原因となることもある。
【0187】
家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)
FAPでは、大腸(結腸)に多くのポリープが発生し、時には胃や腸にもポリープが発生する。この症候群を抱える人は、大腸癌(結直腸癌)のリスクが非常に高く、胃癌になるリスクもわずかに高い。これはAPC遺伝子の変異によって引き起こされる。
【0188】
BRCA1及びBRCA2
遺伝性乳癌遺伝子BRCA1又はBRCA2の変異を持つ人は、胃癌になる率も高くなる可能性がある。
【0189】
リ・フラウメニ症候群
この症候群を抱える人は、比較的若い年齢で胃癌を発症する等、いくつかのタイプの癌のリスクが高い。リ・フラウメニ症候群は、TP53遺伝子の突然変異によって引き起こされる。
【0190】
ポイツ・ジェガーズ症候群(PJS)
この病態の人は、胃及び腸のほか、鼻、肺の気道、及び膀胱等の他の部位にポリープを発症する。胃及び腸のポリープは、過誤腫と呼ばれる特殊なタイプのものである。それらは、腸の出血又は閉塞等の問題を引き起こす可能性がある。PJSは唇、頬の内側及び他の部位に黒いそばかすのような斑点を生じることもある。PJSを抱える人は、乳房、大腸(結腸)、膵臓、胃、及びその他のいくつかの器官の癌のリスクが高くなる。この症候群は、遺伝子STK1の突然変異によって引き起こされる。
【0191】
胃癌の家族歴
第一度近親者(両親、兄弟、子供)が胃癌に罹患したことがある人は、この疾患を発症する可能性が高くなる。
【0192】
胃ポリープのいくつかの種類
ポリープは、胃の内壁にできる非癌性の増殖物である。ほとんどの種類のポリープ(過形成性ポリープ又は炎症性ポリープ等)は、人の胃癌のリスクを上昇させないようであるが、腺腫性ポリープ(腺腫とも呼ばれる)は、時に癌に発展する可能性がある。
【0193】
エプスタインバーウイルス(EBV)感染
エプスタインバーウイルスは、伝染性単核球症(モノとも呼ばれる)の原因となる。ほとんどすべての成人は、生涯の何らかの時期に、通常は子供や10代の頃に、このウイルスに感染した経験がある。
【0194】
EBVは、いくつかの形態のリンパ腫に関連している。EBVは、胃癌を患う人のうちの約5~10%の人の癌細胞にも見出される。これらの人々は、増殖が遅く、侵襲性が低く、転移する傾向が低い癌を持つ傾向にある。EBVは一部の胃癌細胞で見出されているが、このウイルスが実際に胃癌を引き起こすかどうかはまだ明らかになっていない。
【0195】
特定の職業
石炭産業、金属産業、ゴム産業に従事している人は、胃癌になるリスクが高いようである。
【0196】
分類不能型免疫不全症(CVID)
CVIDを抱える人は、胃癌のリスクが高い。CVIDの人の免疫系は、病原菌に反応して十分な抗体を作ることができない。CVIDを抱える人は、頻繁に感染症にかかるほか、萎縮性胃炎及び悪性貧血等の問題も抱えている。そのような人は胃リンパ腫及び胃癌にもなりやすい。
【0197】
胃癌の症状
以下は、American Cancer Society、「Stomach Cancer Early Detection, Diagnosis, and Staging(胃癌の早期発見、診断、及び病期分類)」からの改作である。
【0198】
胃癌の症状には以下のようなものがある。
・食欲不振
・体重減少(努力せずに)
・腹腔(腹部)の痛み
・腹部、通常はへその上あたりの漠然とした不快感
・少量の食事をした後の上腹部の満腹感
・胸焼け又は消化不良
・吐き気
・血が混じった、又は混じらない嘔吐
・腹部の腫れや体液の貯留
・血便
・赤血球数の減少(貧血)
【0199】
早期の胃癌では、症状が出ることはほとんどない。これが、胃癌の早期発見が難しい理由のひとつである。
【0200】
胃癌の症状は、その疾患が進行しないと現れないことが多いため、米国では、身体の他の部位に転移する前の早期に発見されるのは胃癌の5人に1人程度にすぎない。
【0201】
上部内視鏡検査
上部内視鏡検査(食道胃十二指腸内視鏡検査、EGDとも呼ばれる)は、胃癌を発見するために使用される主な検査である。特定の危険因子がある人の場合、又は兆候及び症状からこの疾患が存在する可能性があると示唆される場合に、この検査は使用されてもよい。
【0202】
この検査の際、医師が内視鏡を個体の咽頭に通す。内視鏡は、先端に小さなビデオカメラが付いた、細くて柔軟な照明付きの管である。これにより、医師が食道、胃、及び小腸の先端部分の内壁を見ることができる。
【0203】
異常な部分が見えると、内視鏡に通した器具で生検(組織試料の採取)を行うことができる。この組織試料は検査室に送られ、そこで組織試料は顕微鏡で癌が存在するかを見るために観察される。
【0204】
内視鏡で見ると、胃癌は、潰瘍、キノコ状の若しくは突出した腫瘤、又は形成性胃炎として知られる粘膜のびまん性の扁平な肥厚した部位のように見える。遺伝性びまん性胃癌症候群の胃癌は、残念ながら内視鏡では確認できないことが多い。
【0205】
内視鏡検査は、後述する超音波内視鏡検査として知られる特殊な画像検査の一部として使用することもできる。
【0206】
この検査は通常、鎮静下で行われる。
【0207】
超音波内視鏡検査
超音波内視鏡検査(EUS)では、内視鏡の先端に小さなトランスデューサが装着される。患者が鎮静剤を投与された状態で、内視鏡が咽頭から下へ胃へと通される。これにより、トランスデューサが癌のある胃の壁に直接当たるようになる。その後、胃壁の層、並びに胃のすぐ外側にある近くのリンパ節及び他の構造が検査されてもよい。音波が移動すべき距離が短いため、標準的な超音波検査よりも画質が良い。
【0208】
EUSは、癌が胃の壁、近くの組織、及び近くのリンパ節にどれだけ広がっているかを確認するのに最も有用である。EUSは、疑わしい部位に針を刺して組織試料を採取する際(EUSガイド下針生検)にも使用される。
【0209】
生検
内視鏡検査や画像検査で異常な外観の部位が見られた場合、診断を確定するために生検が行われてもよい。
【0210】
胃癌を確認するための生検は、上部内視鏡検査の際に行われることがほとんどである。医師が内視鏡検査の際に胃壁に異常な部分を見つけると、内視鏡の中に器具を通し、それらを生検として採取することができる。胃癌の中には、胃壁の奥深くに存在するものがあり、それらは、標準的な内視鏡検査では生検が困難な場合がある。胃癌が胃壁の奥深くにあると医師が疑う場合は、超音波内視鏡検査を使って細い中空の針が胃の壁に刺され、生検試料が採取されてもよい。
【0211】
生検は、癌が広がっている可能性のある部位、例えば、近くのリンパ節又は身体の他の部分の疑わしい部位からも採取されてよい。
【0212】
生検試料の検査
生検試料は、顕微鏡で見るために検査室に送られる。その試料は、試料が癌を含むかどうか、含む場合はその種類(例えば、腺癌、カルチノイド、消化管間質性腫瘍、又はリンパ腫)を確認される。
【0213】
試料が特定の種類の癌細胞を含む場合は、さらに多くの検査が行われてもよい。例えば、腫瘍にHER2と呼ばれる増殖を促すタンパク質があまりに多く含まれているかどうかを調べるために腫瘍が検査されてもよい。HER2のレベルが上昇している腫瘍は、HER2陽性と呼ばれる。
【0214】
HER2陽性の胃癌は、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))等、HER2タンパク質を標的とする薬剤で治療されてもよい。
【0215】
生検試料は、2つの異なる方法で検査されてもよい。
・免疫組織化学(IHC):この検査では、HER2タンパク質に結合する特殊な抗体が試料に加えられる。これにより、コピーが多数存在する場合には細胞の色が変化する。この色の変化は、顕微鏡で見ることができる。検査結果は、0、1+、2+、又は3+として報告される。
・蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH):この検査は、細胞内のHER2遺伝子のコピーに特異的に結合する蛍光性のDNA片を使用する。これによりHER2遺伝子のコピーを特殊な顕微鏡でカウントすることができる。
【0216】
多くの場合、IHC検査が最初に使用される。
・検査結果が0又は1+であれば、その癌はHER2陰性である。HER2陰性の腫瘍を抱える人は、HER2を標的とする薬剤(トラスツズマブ等)では治療されない。
・検査の結果が3+であれば、その癌はHER2陽性である。HER2陽性の腫瘍を抱える患者は、トラスツズマブのような薬剤で治療されてもよい。
・検査結果が2+の場合、腫瘍のHER2の状態ははっきりしない。そのため、FISHによる腫瘍の検査を行うことが多い。
【0217】
腫瘍にPD-L1と呼ばれる免疫チェックポイントのタンパク質が一定量含まれているかどうかを調べるために腫瘍が検査されてもよいということもある。PD-L1が検出された場合、腫瘍は、ペムブロリズマブ(Keytruda(キイトルーダ)(登録商標))等の免疫チェックポイント阻害剤で治療されてもよい。この種の治療は、他の治療法が効かなくなった場合に行われてもよい。
【0218】
画像検査
画像検査は、X線、磁場、音波、又は放射性物質を用いて身体の内部の様子を撮影する。画像検査は、以下のような様々な理由で行われてもよい。
・疑いのある部位が癌性であるかどうかを把握する助けとするため
・癌がどの程度広がっているかを知るため
・治療が効果的であったかどうかを判断する助けとするため
【0219】
上部消化管(GI)X線検査
これは、食道、胃、及び小腸の先端部分の内壁を観察するためのX線検査である。この検査は異常な部位の一部を見逃す可能性があり、しかも医師が生検試料を採取することができないため、この検査は、胃癌又は他の胃の問題を調べるための内視鏡検査に比べて使用頻度は低い。しかし、内視鏡検査よりも侵襲性が低いため、状況によっては有効であることもあろう。
【0220】
この検査では、患者はバリウムと呼ばれる物質を含む白い石灰質の溶液を飲む。このバリウムは、食道、胃、及び小腸の内壁をコーティングする。その後、数枚のX線写真を撮影する。X線はバリウムのコーティングを通過できないので、これらの器官の内壁の異常があればそれを浮き彫りにすることになる。
【0221】
早期の胃癌を見つけるために、二重造影法が用いられてもよい。この手法では、バリウム溶液が飲み込まれた後に、細い管が胃の中に入れられて空気が送り込まれる。これにより、バリウムのコーティングが非常に薄くなるため、小さな異常でさえも映し出される。
【0222】
コンピュータ断層撮影(CT又はCAT)スキャン
CTスキャンは、X線を用いて身体の詳細な断面画像を作製する。通常のX線とは異なり、CTスキャンは身体の軟部組織の詳細な画像を作り出す。
【0223】
CTスキャンは、胃をかなり鮮明に示し、多くの場合、癌の位置を確認することができる。CTスキャンは、胃の近くにある肝臓等の器官、及び癌が転移している可能性のあるリンパ節及び離れた場所にある器官も示すことができる。CTスキャンは、癌の範囲(ステージ)、及び手術が良い治療の選択肢であるかどうかを判断するのを助けることができる。
【0224】
CTガイド下針生検:CTスキャンは、癌の転移が疑われる部位に生検針を誘導するためにも使用できる。患者はCTスキャン台に乗ったまま、医師が生検針を皮膚から腫瘤に向けて移動させる。針が腫瘤の中に入るまで、CTスキャンが繰り返される。その後、微細針生検試料(小さな組織の断片)又はコア針生検試料(細い円筒状の組織)が取り出され、顕微鏡下で観察される。
【0225】
磁気共鳴画像法(MRI)スキャン
MRIスキャンは、CTスキャンと同様に、身体内の軟部組織の詳細な画像を示す。しかし、MRIはX線の代わりに電磁波及び強力な磁石を使用する。
【0226】
ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン
PETスキャンでは、患者は、主に癌細胞に集まるわずかに放射性を帯びた形態の糖を注射される。その後、特殊なカメラを使用して、身体内の放射活性の領域の画像が作成される。この画像は、CTスキャン又はMRIスキャンのような詳細なものではないが、PETスキャンでは身体のすべての部位における癌の広がりの可能性のある部位を一度に調べることができる。
【0227】
より最近の一部の機械は、PETスキャン及びCTスキャンを同時に行うことができる(PET/CTスキャン)。これにより、PETスキャンで「光る」部位を医師がより詳しく見ることができる。
【0228】
PETは、医師が癌の転移を疑っているが、どこに転移しているかわからない場合に有用であることがある。画像は、CTスキャン又はMRIスキャンのように詳細なものではないが、その画像は体全体についての有用な情報を提供する。PETスキャンは、癌の広がり(転移)の部位を見出すためには有用でありうるが、PETスキャンは特定の種類の胃癌においては必ずしも役立たない。というのも、その特定の種類の胃癌は、ブドウ糖をあまり吸収しないからである。
【0229】
胸部X線
この検査は、癌が肺に転移しているかどうかを調べるのに役立つ可能性がある。この検査は、肺又は心臓に重篤な疾患があるかどうかも判定しうる。胸部のCTスキャンを行った場合は、この検査は必要ない。
【0230】
腹腔鏡検査
この手順が行われる場合、それは、通常、胃癌がすでに発見された後である。CTスキャン又はMRIスキャンは身体の内部の詳細な画像を作製することができるが、それらは、一部の腫瘍、とりわけ非常に小さな腫瘍を見逃してしまうことがある。医師は、癌がまだ胃の中にしか存在せず、手術で完全に取り除けることを確認することに役立てるために、他の手術の前に腹腔鏡検査を行うことがある。手術の前に化学療法及び/又は放射線療法が計画されている場合は、その前に腹腔鏡検査が行われてもよい。
【0231】
この手順は、患者が全身麻酔をしている(深い眠りにある)状態で、手術室で行われる。腹腔鏡(細くて柔軟な管)が患者の脇腹にある小さな手術用の開口部から挿入される。腹腔鏡は、その先端に小さなビデオカメラを備えており、そのカメラが腹部の内部の画像をテレビ画面に送る。医師は、器官の表面や近くのリンパ節を詳細に観察したり、又は組織の小さな試料を採取したりすることができる。癌が広がっているように見えない場合、医師は生理食塩水(塩水)で腹部を「洗浄」することがある。これは腹膜洗浄と呼ばれている。その後、その流体(腹水)は取り出され、それが癌細胞を含むかどうかが調べられる。癌細胞が含まれていれば、癌の広がりを見ることができなくても、癌はすでに広がっている。
【0232】
腹腔鏡検査を超音波検査と併用することで、癌のより良好な画像が得られることがある。
【0233】
臨床検査
胃癌の兆候を調べる際に、医師は貧血(癌が胃の中に出血することによって引き起こされる可能性がある)を調べるために、全血球計算(CBC)と呼ばれる血液検査を指示することがある。肉眼では見えない便(糞便)中の血液を調べるために、便潜血検査が行われてもよい。
【0234】
癌が発見された場合、とりわけ患者が手術を受ける場合、医師は他の検査を勧めることがある。例えば、肝臓及び腎臓の機能が正常であること、並びに血液が正常に凝固することを確認するために、血液検査が行われる。手術が予定されている場合、又は患者が心臓に影響を与える可能性がある薬を服用する予定である場合には、心臓が正常に機能していることを確認するために、患者は心電図(EKG)及び心エコー図(心臓の超音波検査)も受けてよい。
【0235】
胃癌の治療
胃癌の診断方法は、その疾患の治療を伴ってもよい。
【0236】
それゆえ、本発明者らは、個体における胃癌の治療方法を開示する。この方法は、本明細書に記載されている方法によって胃癌を診断する工程を含んでいてもよい。個体が胃癌に罹患しているか又は胃癌に罹患する可能性が高いと判断される場合には、当該方法は、その個体に胃癌用治療剤を投与する工程を含んでもよい。
【0237】
胃癌の治療は、一般的に、外科手術、放射線治療、化学療法剤の投与、免疫療法剤の投与、又はトラスツズマブ及びラムシルマブ等の標的療法の使用のうちの1つ以上の介入を含む。
【0238】
胃癌の治療のために投与されるべき有望な治療薬は、低分子、抗体、ワクチン又はペプチドを含んでもよい。
【0239】
胃癌の治療に使用するための化学療法剤としては、5-フルオロウラシル、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、エピルビシン、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、トリフルリジン、及びチピラシルが挙げられる。
【0240】
胃癌の治療に使用するための免疫療法剤としては、ペムブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤が挙げられる。
【0241】
早期胃癌のために選択される治療法は、通常、外科手術である。早期に特定された癌については、内視鏡的切除術による治療も可能である。
【0242】
早期胃癌が特定された患者の治療成績は、後期胃癌の患者よりも有意に良好であることが一般的に認められている(Lelloら、2007)。
【0243】
検出及び診断の方法
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p(並びに任意にhsa-miR-423-5p)のmiRNAの発現の検出
本発明者らは、実施例において、胃癌患者におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びにhsa-miR-423-5pの発現が、正常な個体と比較して変化している(上方制御されているか又は下方制御されている)ことを示す。
【0244】
従って、本発明者らは、転移性、侵襲性又は浸潤性の胃癌等の胃癌を含む癌の診断方法であって、個体の細胞若しくは組織における、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pの発現の変調、例えばhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p又はhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現の上方制御又は下方制御を検出することを含む方法を提供する。
【0245】
このような検出は、細胞が浸潤性又は侵襲性になるかどうかを判断するためにも使用されてよい。従って、細胞における、例えばその細胞を含む生物に由来する試料を介する、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性の変調されたレベルの検出は、その細胞が侵襲性、転移性若しくは浸潤性であるかまたはそのようになる可能性が高いことを示してもよい。
【0246】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAのレベルが腫瘍の侵襲性とともに変化するので、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量、又は活性の検出は、癌を患う個体の生存率を予測するためにも使用されてよいことが理解されるであろう。それゆえ、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAの発現、量又は活性の検出は、癌を患う個体の予後を予測する方法として使用されてもよい。
【0247】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又はレベルの検出は、癌を患う個体における特定の治療法の成功の可能性を判定するために使用されてもよい。上記検出は、ある個体の腫瘍が浸潤性若しくは転移性の腫瘍であるか、又はその可能性が高いかどうかを判定する方法に使用されてもよい。
【0248】
本明細書に記載された診断方法は、記載された治療方法と組み合わせられてもよい。従って、本発明者らは、個体における癌の治療、予防又は緩和の方法であって、個体におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性の変調を検出する工程と、適切な治療法をその個体に投与する工程とを含む方法を提供する。
【0249】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの存在及び量は、以下にさらに詳細に説明するように、試料において検出されてもよい。従って、胃癌は、被験者(対象)由来の試料から、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及びhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量若しくは活性の異常な減少又は増加、例えば発現、量又は活性の増加を判定する工程を含む方法によって診断することができる。
【0250】
試料は、発現、量若しくは活性のレベル若しくはパターンの空間的又は時間的変化を含めた、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量若しくは活性の増加、減少若しくはその他の異常に関連する疾患に罹患している、若しくは罹患していることが疑われる生物若しくは個体からの細胞又は組織の試料を含んでもよい。このような疾患に罹患しているか、又は罹患していると疑われる生物におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量若しくは活性のレベル又はパターンは、疾患の診断手段として、正常な生物における発現、量若しくは活性のレベル又はパターンと有用に比較されてもよい。
【0251】
試料は、胃癌に罹患しているか、又は罹患していると疑われる個体からの細胞又は組織の試料、例えば血清試料を含んでもよい。
【0252】
いくつかの実施形態では、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性のレベルの上昇が、試料において検出される。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAのレベルは、正常な細胞、又は癌性ではないことが知られている細胞と比較して、有意な程度に上昇又は低下していてもよい。このような細胞は、被検者、又は別の個体、例えば被検者と年齢、体重、生活習慣等が一致する別の個体から得られたものであってもよい。
【0253】
hsa-miR-484、has-miR-186-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a又はhsa-miR-320bの発現の増加
いくつかの実施形態では、miRNAの発現、量又は活性のレベルは、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、200%又はそれ以上上昇している。いくつかの実施形態では、miRNAの発現、量又は活性のレベルは、45%以上、例えば50%以上上昇している。
【0254】
例えば、胃癌に罹患していないことが知られている個体と比較して、hsa-miR-484、has-miR-186-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a又はhsa-miR-320bのうちの1つ以上の発現が増加している場合に、胃癌が診断されてもよい。
【0255】
hsa-miR-142-5p又はhsa-miR-17-5pの発現の減少
他の実施形態では、miRNAの発現、量又は活性のレベルは、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、200%又はそれ以上低下している。いくつかの実施形態では、miRNAの発現、量又は活性のレベルは、45%以上、例えば50%以上低下している。
【0256】
それゆえ、胃癌に罹患していないことが知られている個体と比較して、hsa-miR-142-5p及びhsa-miR-17-5pのうちの1つ以上の発現が低下している場合、胃癌と診断されてもよい。
【0257】
miRNAの発現の検出
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性は、当該技術分野で公知のように、そして以下にさらに詳細に説明するように、多くの方法で検出されてもよい。典型的には、個体からの組織試料中のhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びに任意にhsa-miR-423-5pの量が測定され、罹患していない個体からの試料と比較される。
【0258】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの量、活性又は発現の検出は、胃癌の悪性度を判定するために使用されてもよい。例えば、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの高いレベルの量、活性、又は発現は、侵襲性、浸潤性又は転移性の癌を示してもよい。同様に、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNAの低いレベルの量、活性、又は発現は、非侵襲性、非浸潤性、又は非転移性の癌を示してもよい。
【0259】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの遺伝子発現のレベルは、多くの異なる技術を用いて決定されてもよい。
【0260】
1つの実施形態では、本発明者らは、試料中のhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNA核酸を含む核酸の存在を検出する方法であって、その試料を、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAに特異的である少なくとも1種の核酸プローブと接触させることと、そのmiRNAの存在について試料をモニタリングすることによる方法を開示する。例えば、核酸プローブは、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b若しくはhsa-miR-17-5p、及び任意にhsa-miR-423-5pのmiRNA、又はその一部分に特異的に結合してもよく、両者の結合は検出され、複合体自体の存在も検出されてよい。
【0261】
従って、1つの実施形態では、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの量が、試料中で測定されてもよい。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びにhsa-miR-423-5pは、インサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット法又は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によってアッセイされてもよい。核酸配列は、特定のプライマーを用いてインサイツハイブリダイゼーション、サザンブロット法、一本鎖コンフォメーション多型、PCR増幅及びDNAチップ分析によって特定されてもよい(Kawasaki、1990;Sambrook、1992;Lichterら、1990;Oritaら、1989;Fodorら、1993;Peaseら、1994)。
【0262】
hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNA RNAは、例えば、酸性フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B;Biogenesis(バイオジェネシス))又はRNeasy RNA調製キット(Qiagen)等のRNA抽出技術を用いて、細胞から抽出されてもよい。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用した代表的なアッセイフォーマットとしては、核ランオンアッセイ、RT-PCR、及びRNase(リボヌクレアーゼ)プロテクションアッセイ(Meltonら、Nuc.Acids Res. 12:7035)が挙げられる。採用されてもよい検出方法としては、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、及び他の適切な標識が挙げられる。
【0263】
これらの方法はいずれも、定量的な測定を可能にするものであり、当該技術分野で周知である。それゆえ、減少又は増加したhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5p、及び任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性は、ポリヌクレオチドの定量のために当該技術分野で周知の方法のいずれかを使用して、RNAレベルで測定することができる。hsa-miR-17-5pのmiRNA配列からの任意の適切なプローブ、例えば、適切なヒトのhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNAの配列の任意の部分がプローブとして使用されてもよい。hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAプローブを設計するための配列は、関連するmiRBase受入番号を有する配列、又はそのような配列の一部に由来してもよい。
【0264】
RNA標的の増幅には、通常、RT-PCRが用いられる。このプロセスでは、逆転写酵素を用いてRNAを相補的なDNA(cDNA)に変換し、その後、この相補的なDNAは、検出を容易にするために増幅することができる。
【0265】
多くのDNA増幅方法が知られているが、その多くは酵素連鎖反応(ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、若しくは自家持続配列複製法等)、又はDNAがクローニングされたベクターの全部若しくは一部の複製に依っている。
【0266】
多くの標的増幅法やシグナル増幅法が、文献に、例えば、Landegren,U.ら、Science 242:229-237(1988)及びLewis,R.、Genetic Engineering News 10:1、54-55(1990)にあるこれらの方法の総説に記載されている。
【0267】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応は、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNAを検出するために採用されてもよい。
【0268】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、とりわけ米国特許第4,683,195号明細書及び第4,683,202号明細書に記載されている核酸増幅方法である。PCRは、診断上、任意の既知の核酸を増幅するために使用することができる(Mokら、1994、Gynaecologic Oncology 52:247-252)。自家持続配列複製法(3SR)は、酵素カクテル及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーによって媒介される逆転写酵素(RT)、ポリメラーゼ並びにヌクレアーゼの活性の連続したラウンドを介して核酸テンプレートの等温増幅を含むTASのバリエーションである(Guatelliら、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874)。ライゲーション増幅反応又はライゲーション増幅システムは、DNAリガーゼ及び4つのオリゴヌクレオチド(標的鎖ごとに2つ)を使用する。この技法は、Wu,D.Y.及びWallace,R.B.、1989、Genomics 4:560に記載されている。Qβレプリカーゼ技術では、Lizardiら、1988、Bio/Technology 6:1197に記載されているように、一本鎖のRNAを複製するバクテリオファージQβに対するRNAレプリカーゼを用いて標的DNAを増幅する。
【0269】
PCRの手順は、基本的に、(1)抽出したDNAを処理して一本鎖の相補鎖を形成する工程と、(2)一対のオリゴヌクレオチドプライマーを加える工程であって、その対の一方のプライマーはセンス鎖の配列の一部に実質的に相補的であり、各対の他方のプライマーは相補的なアンチセンス鎖の同じ配列の異なる部分に実質的に相補的である工程と、(3)対合したプライマーを相補的な配列にアニールする工程と、(4)アニールされたプライマーを各プライマーの3’末端から同時に伸長して、各プライマーにアニールされた鎖に相補的な伸長産物を合成する工程であって、相補体から単離した後の上記伸長産物が、各対の他方のプライマーに対する伸長産物を合成するための鋳型となる工程と、(5)上記伸長産物を上記鋳型から分離して、一本鎖分子を生成する工程と、(6)上記アニール、伸長及び分離の工程を少なくとも1回繰り返すことにより、上記一本鎖分子を増幅する工程とを含む。
【0270】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を採用してもよい。定量的RT-PCRを用いてもよい。このようなPCR技術は当該技術分野で周知であり、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b又はhsa-miR-17-5pのmiRNA配列からの任意の適切なプライマーを採用してもよい。
【0271】
代替の増幅技術を利用することもできる。例えば、ローリングサークル増幅(Lizardiら、1998、Nat Genet 19:225)は、DNAポリメラーゼによって駆動され、等温条件下で線形又は幾何級数的な動態で環状のオリゴヌクレオチドプローブを複製することができる、市販されている増幅技術である(RCAT(商標))。さらなる技術、鎖置換型増幅(strand displacement amplification、SDA;Walkerら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:392)は、特定の標的にユニークな特異的に規定された配列を用いて始める。
【0272】
診断キット
本発明者らは、個体における胃癌、又は個体における胃癌への易罹患性(罹患率)を検出するための診断キットも提供する。
【0273】
当該診断キットは、本明細書に記載されている任意の手段により、個体におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAの発現、量又は活性を検出する手段を含んでいてもよい。それゆえ、当該診断キットは、以下のいずれか1つ以上を含んでいてもよい:hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-17-5p及び任意にhsa-miR-423-5pのmiRNAポリヌクレオチド若しくはその断片、又はhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pのmiRNA、並びに任意にhsa-miR-423-5pのmiRNA、若しくはその断片に相補的なヌクレオチド配列。
【0274】
当該診断キットは、使用説明書、又は他の指標を含んでいてもよい。当該診断キットは、本明細書に記載されている組成物のいずれか、又は胃癌を治療するために当該技術分野で公知のいずれかの手段等、胃癌の治療又は予防のための手段をさらに含んでいてもよい。
【0275】
さらなる態様
本発明のさらなる態様及び実施形態をここで以下の番号のついた項に記載するが、本発明はこれらの態様を包含するものと理解されたい。
【0276】
項1. 胃癌の診断方法であって、個体における又は個体の細胞外小胞(EV)において、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列の発現レベルを、胃癌に罹患していないことが知られている個体における、又はそのような個体のEVにおけるmiRNAの発現レベルと比較して検出する工程を含み、miRNAの変化した発現レベル、例えば発現レベルの上昇又は低下、好ましくは発現レベルの上昇が、その個体が胃癌に罹患しているか、又は罹患している可能性が高いことを示す方法。
【0277】
項2. (a)hsa-miR-484が、miRBase受入番号MIMAT0002174を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-484活性を含む配列を含むか、(b)hsa-miR-186-5pが、miRbase受入番号MIMAT0000456を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-484活性を含む配列を含むか、(c)hsa-miR-142-5pが、miRBase受入番号MIMAT0000433を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-142-5p活性活性を含む配列を含むか、(d)hsa-miR-320dが、miRBase受入番号MIMAT0006764を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-320d活性を含む配列を含むか、(e)hsa-miR-320aが、miRBase受入番号MI0000542を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-320a活性を含む配列を含むか、(f)hsa-miR-320bが、miRBase受入番号MIMAT0005792を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-320b活性を含む配列を含むか、又は(g)hsa-miR-17-5pが、miRBase受入番号MIMAT0000070を有するポリヌクレオチド配列、若しくはその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば、上記ポリヌクレオチド配列に対して75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-17-5p活性を含む配列を含む項1に記載の方法。
【0278】
項3. 上記群の中の2つ以上のそのようなmiRNA、例えば3つのmiRNA、4つのmiRNA、5つのmiRNA、6つのmiRNA、又は7つのmiRNAの細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程を含む項1又は項2に記載の方法。
【0279】
項4. hsa-miR-423-5p(miRBase受入番号MIMAT0004748)、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えばそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有しかつhsa-miR-423-5p活性を含む配列の細胞外小胞(EV)における発現レベルを検出する工程をさらに含む項1、項2又は項3に記載の方法。
【0280】
項5. 上記検出が、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(多重PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼプロテクション、マイクロアレイハイブリダイゼーション、又はRNAシークエンシングを含む項1から項4のいずれかに記載の方法。
【0281】
項6. 上記個体における、又は上記個体の細胞外小胞(EV)が、個体の上咽頭分泌物、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門及び膣内の分泌物、汗、若しくは精液等の体液試料等、上記個体における、又は上記個体の試料から得られたものである、項1から項5のいずれかに記載の方法。
【0282】
項7. 好ましくはマイクロアレイの形態又はマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットとしての基板上に固定化された核酸の組み合わせ等の項1、項2又は項4のいずれかに記載の2つ以上の核酸又はそれに特異的に結合できるプローブの組み合わせ。
【0283】
項8. hsa-miR-484(miRBase受入番号MIMAT0002174)、hsa-miR-186-5p(miRBase受入番号MIMAT0000456)、hsa-miR-142-5p(miRBase受入番号MIMAT0000433)、hsa-miR-320d(miRBase受入番号MIMAT0006764)、hsa-miR-320a(miRBase受入番号MI0000542)、hsa-miR-320b(miRBase受入番号MIMAT0005792)、hsa-miR-17-5p(miRBase受入番号MIMAT0000070)及びhsa-miR-423-5p(miRBase受入番号MIMAT0004748)の各々に特異的に結合することができるプローブを含む項7に記載の組み合わせ。
【0284】
項9. 胃癌の検出方法又は胃癌の重症度の決定方法において使用するための、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列。
【0285】
項10. hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pからなる群から選択される2つ以上のmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を、薬学的に許容できる賦形剤、担体又は希釈剤とともに含む医薬組成物。
【0286】
項11. 胃癌の診断キットであって、hsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5p、並びに任意にhsa-miR-423-5pからなる群から選択される2つ以上のmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を、使用説明書とともに含むキット。
【0287】
項12. 個体における胃癌の治療方法であって、項1から項6のいずれかに記載の方法を実行する工程と、その個体が胃癌に罹患しているか又は胃癌に罹患する可能性が高いと判断される場合に、その個体に胃癌用治療剤を投与する工程とを含む方法。
【0288】
項13. 個体における胃癌の治療方法であって、(a)個体から得られた試料の細胞外小胞(EV)におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列の発現レベルを測定するアッセイの結果を受け取る工程であって、この結果は上記試料のEVにおける上記miRNAの発現レベルを示す工程と、(b)上記試料のEVにおける上記miRNAの発現が、胃癌に罹患していないことが知られている個体のEVにおける上記miRNAの発現レベルであるmiRNAの基準発現レベルよりも高く、これにより上記個体における胃癌の徴候を提供又は予測する場合、胃癌用治療剤を投与する工程とを含む方法。
【0289】
項14. 個体における胃癌の治療方法であって、(a)個体の細胞外小胞(EV)におけるhsa-miR-484、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b及びhsa-miR-17-5pからなる群から選択されるmiRNA、又はその変異体、相同体、誘導体若しくは断片、例えば上記miRNAに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列の発現レベルの分析の結果を得る工程と、(b)上記miRNAの発現レベルが胃癌に罹患していないことが知られている個体のEVにおける上記miRNAの発現レベルである基準発現レベルを超える場合に、胃癌用治療剤をその個体に投与する工程とを含む方法。
【0290】
項15. 添付の図面の図1から図5を参照して本明細書に実質的に記載され示されている方法、組み合わせ、miRNA、使用、医薬組成物又は診断。
【実施例
【0291】
例1. 材料及び方法 - 血漿/血清試料
プールされた正常ヒト血清(IPLA-SER)は、Innovative Research(イノベーティブ・リサーチ)、米国から購入した。胃癌及び健常な対照の血清は、BioIVT(バイオ・アイヴィーティー)、米国から購入した。
【0292】
例2. 材料及び方法 - 血清からのEVの単離
血清は、EV単離の前に、2,000gで20分間、その後10,000gで30分間の遠心分離を行い、前処理(事前の清澄化)工程に供した。
【0293】
次いで、200μlの前処理済み血清からEVを単離した。
【0294】
例3. 材料及び方法 - 超遠心分離
Optima MAX-XP Ultracentrifuge(Beckman Coulter(ベックマン・コールター)、米国)を用いて、200μlの前処理済み血清を100,000gで70分間、4℃で遠心分離した。上清を吸引してペレットを洗浄し、100,000gで70分間、4℃で再遠心分離した。EVを含むペレットを、後続のRNA抽出のために200μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。タンパク質分析のために、このペレットを30μlの5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に溶解した。
【0295】
例4. 材料及び方法 - ポリマーベースの沈殿
Total Exosome Isolation(from serum)(Invitrogen(インビトロジェン)、米国)、ExoQuick Exosome Precipitation Solution(System Biosciences、米国)、miRCURY Exosome Isolation Kit - Serum and Plasma(Exiqon(エキシコン)、デンマーク)、及びEXO-prep(HansaBioMed(ハンサバイオメド)、エストニア)の4種類の市販のポリマーベースの沈殿試薬を製造業者のプロトコルに従って用いて、200μlの前処理済み血清からEVを単離した。EVペレットを、後続のRNA抽出のために200μlのPBSに再懸濁した。ペレットを、タンパク質分析のために30μlの5% SDSに溶解した。
【0296】
例5. 材料及び方法 - カラムアフィニティベースの精製
exoRNeasy Serum/Plasma Midi Kit(Qiagen、ドイツ)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、200μlの前処理済み血清からEVを単離した。手短に言えば、血清を結合バッファと混合し、洗浄のためにメンブレンカラムにロードした。その後、QIAzolを加えてEVを直接溶解し、30μlのヌクレアーゼフリーの水でRNAを溶出した。
【0297】
例6. 材料及び方法 - ペプチドアフィニティベースの精製
ME(商標) Kit(New England Peptide(ニュー・イングランド・ペプチド、米国)を用いてEVを単離した。200μlの前処理済み血清を20μlのVn96ペプチドストックと4℃で一晩、エンドツーエンドで回転させながらインキュベートした。この混合物を17,000gで15分間、室温で遠心分離した。その後、上清を除去し、EV含有ペレットを500μlのPBSを用いて17,000gで10分間、2回洗浄した。EVを含むペレットを、後続のRNA抽出のために200μlのPBSに再懸濁した。
【0298】
例7. 材料及び方法 - 免疫親和性アフィニティベースの精製
ExoCap(商標) Composite Kit for serum Plasma(JSR Life Sciences(JSRライフサイエンス)、日本)を用いてEVを単離した。100μlのキャプチャービーズを1mlの処理バッファと混合し、200μlの前処理済み血清と4℃で一晩、エンドツーエンドで回転させながらインキュベートした。チューブを磁気チューブスタンドに1分間置くことにより上澄みを除去した。ビーズを500μlの洗浄/希釈用バッファで2回洗浄した。洗浄したビーズを200μlのPBSに再懸濁し、直ちにRNA抽出に進んだ。
【0299】
例8. 材料及び方法 - 全血清又はEV調製物からのRNAの単離
200μlのEV調製物又は200μlの未処理の血清からの全RNAを、miRNeasy serum/plasma miRNA isolation kit(Qiagen)を製造業者のプロトコルに従って用いて抽出した。
【0300】
RNA単離時の技術的なばらつきを正規化するために、1mlのQIAzol溶解バッファに3つの専売の合成miRNA(MiRXES(ミレクサス)、シンガポール)をスパイク(添加)してから試料に添加した。
【0301】
その後、200μlのクロロホルムを混合物に加えて十分に混合し、18,000gで15分間遠心分離して相単離させた。
【0302】
RNAの結合、洗浄、溶出を自動で行うために、各試料から得られた水相をQiaCube(Qiagen)に移した。
【0303】
RNAを30μlのヌクレアーゼフリーの水で溶出した。
【0304】
例9. 材料及び方法 - ウエスタンブロット
EV調製物を5%SDS溶解バッファで溶解した。タンパク質濃度は、DC Protein Assay(Bio-Rad(バイオラッド)、米国)を用いて測定した。30μgのタンパク質を4×SDS-PAGEバッファで懸濁し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)により120Vで1時間分離した後、Trans-Blot(登録商標) Turbo(商標) Transfer System(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜(0.2μm)(Bio-Rad)に転写した。この膜を5%のミルクを含むPBS+0.1% Tween(PBST)で30分間、室温でブロックし、その後、フロチリン(フロチリン)(Becton Dickinson(ベクトン・ディッキンソン)、米国)、TSG101、CD63、CD81(Santa Cruz Biotechnology(サンタクルーズ・バイオテクノロジー)、米国)、CD9、アルブミン(Abcam(アブカム)、英国)の一次抗体を用いて一晩ブロット法を行った。セイヨウワサビ ペルオキシダーゼ(HRP)標識の二次抗体(General Electric(ゼネラル・エレクトリック)、米国)からの化学発光シグナルを、検出試薬を製造業者の説明書(Thermo Scientific(サーモ・サイエンティフィック)、米国)に従って用いて検出した。
【0305】
例10. 材料及び方法 - 逆転写(RT)
ID3EAL cDNA合成試薬(MiRXES)を、11種の血清miRNA(let-7a-5p、miR-103a-3p、miR-146a-5p、miR-16-5p、miR-191-5p、miR-20a-5p、miR-21-5p、miR-23a-3p、miR-30c-5p、miR-451a及びmiR-93-5p)と3種の外来性スパイクインコントロールに対する改変されたステム-ループRTプライマープール(MiRXES)とともに用いてRNAを逆転写した。5μlの全RNAを、ID3EAL miRNA RTバッファ、ID3EAL逆転写酵素、及びRTプライマープールと混合し、総反応物量を15μlとした。C1000 Touch(商標) Thermal Cycler(Bio-Rad)を用いて、反応混合物を42℃で30分、続いて95℃で5分インキュベートし、逆転写酵素を失活させた。
【0306】
例11. 材料及び方法 - リアルタイム定量PCR(RT-qPCR)
ID3EAL miRNA qPCR試薬(MiRXES)を、用いて、上記11種のmiRNA標的及び3種類の外来性スパイクインコントロールのそれぞれに特異的なプライマー対とともに用いてqPCR反応を行った。
【0307】
各cDNA試料は、ヌクレアーゼフリーの水で10倍に希釈し、384ウェルプレート(Applied Biosystem(アプライド・バイオシステズ)、米国)に2連で加えた。
【0308】
5μlの希釈したcDNA、1×ID3EAL miRNA qPCRマスターミックス、1×ID3EAL miRNA qPCRプライマー(MiRXES)、ヌクレアーゼフリーの水を加えた15μlの総反応量でPCR増幅を行った。
【0309】
qPCRの増幅及び検出は、QuantStudio 5 Real-Time PCR System(Thermo Scientific)を用いて、以下のサイクリング条件で行った:95℃×10分、40℃×5分、続いて95℃×10秒及び60℃×30秒のサイクルを40回繰り返す(光学的読み取り)。
【0310】
生の閾値までのサイクル数(Ct)の値はQuantStudio Design & Analysis Software v1.5を用い、自動ベースライン設定及び0.4の閾値を用いて算出した。
【0311】
例12. 材料及び方法 - miRNAプロファイリング
miRNAプロファイリングのために、4つのマルチプレックスRTプライマープールに群分けした133種のヒトmiRNA(補足表1)を用いてRNAを逆転写した。この4つのマルチプレックスRTプライマープールは、ID3EAL cDNA合成試薬を用いて、各群の異なるRTプライマー(MiRXES)間の非特異的相互作用が最小限であることを試験した。
【0312】
これらの133種のヒトmiRNAは、過去のプロファイリング研究のデータ、及び正常な試料とGC試料との間で血清中での発現レベルに差があることを示す他の文献に基づいて選択した。
【0313】
miRNAコピー数の測定のために、合成miRNAテンプレートの6つの10倍連続希釈液を、単離したRNA試料を用いて逆転写し、同じマイクロプレートから標準曲線を作成した。
【0314】
miRNA特異的qPCRアッセイ(MiRXES)を用いて、各cDNA試料中で133種の候補miRNAを測定した。
【0315】
各miRNAの絶対発現コピー数は、Ct値を合成miRNA標準曲線のCt値に補間して決定し、RT-qPCR効率の変動を調整した。
【0316】
例13. 材料及び方法 - データ処理
RNA単離時の技術的変動を考慮して、試料からのCt値を3つの外来性スパイクインコントロールを用いて正規化した:(1)試料ごとに3つのスパイクインの平均Ctを算出し、(2)3つのスパイクインの平均Ctを全試料から算出し、(3)ΔCtを算出し(平均試料ごと-平均全試料)、(4)試料で測定した各miRNAの各Ct値からΔCtを差し引く37。未処理の血清からのEV miRNAの回収率(%)は、2-(Ct全-CtEV)×100%を用いて算出した。データは平均±平均の標準誤差(SEM)として提示し、少なくとも3回の独立した実験の代表値である。グラフはGraphPad Prism 8.0(GraphPad Software(グラフパッド・ソフトウェア)、米国)を用いてプロットした。
【0317】
探索セットを用いたプロファイリング研究では、上述のように、まず外来性スパイクインコントロールによりデータを正規化した。グローバルな正規化を行うために、すべてのmiRNAに対する平均Ct値を正規化係数(正規化因子)として使用し、各試料が最終的に同じ平均miRNA発現レベルになるように試料ごとに設定した。geNorm及びNormFinderを用いて5つの基準miRNAの1組を特定し(補足表2)、それを用いて、検証セットから導かれたデータを正規化した。各miRNAのLog2コピー数は、MATLAB(登録商標) vR2019a(MathWorks(マスワークス)、米国)を用いたデータ解析に使用した。真陽性率をy軸に、偽陽性率をx軸にしてROC曲線(Receiver Operating Characteristics、受信者操作特性)を計算した。選択したmiRNAについてのAUCは、MATLAB(登録商標)を用いて台形公式に基づいて推定した。
【0318】
例14. 結果 - 異なるEV単離方法が対照的なmiRNAの回収率を生じる
EV単離のためのUC及びポリマーベースの沈殿試薬以外にも、近年、いくつかの他の技術が市販されている。つまり、(1)カラムアフィニティベースのEV精製、(2)ペプチドアフィニティベースのEV精製、(3)イムノビーズアフィニティベースのEV精製である。これらの方法を用いた少量試料からのmiRNAの回収率を判定するために、200μlの血清からEVを単離し、ヒト血清中で一般的に発現している11種のmiRNAの発現レベルをリアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)により評価した。カラムアフィニティベース又はペプチドアフィニティベースの方法によるEVのmiRNAの回収率は、UCと同様(約10~20%の回収率)であった(図1A)が、カラムアフィニティベースの方法による7a-5p(約35%の回収率)は例外であった。なお、イムノビーズアフィニティベースのEV精製方法では、最小量のmiRNAしか回収できなかった。本発明者らは、次に、一般的なEVマーカーの発現をウエスタンブロット法により測定した(図1B)。ペプチドアフィニティを用いて単離したEVは、TSG101及びCD9を発現していなかった。同様に、TSG101の発現は、カラムベースの方法を用いて精製したEVには見られなかった(図1B)。これら2つの方法では、アルブミンの混入量もUCと比較して少なかった。イムノビーズアフィニティベースの方法からの画分は、分析するには収量が少なすぎたため、ウエスタンブロット法による分析は行わなかった。
【0319】
次に、本発明者らは、ポリマーベースの沈殿法を用いて回収したEV関連のmiRNAを評価した。前処理済み血清からEVを単離する性能を比較するために、市販の4種の沈殿試薬を試験した:Invitrogen(Invt)、SBI、Exiqon(Exi)、Hansa(Han)。UCと比較して、試験したほぼすべての試薬でmiRNAの回収率が高かった(図2A)。Invt及びSBIは同程度のmiRNA回収率を示したが、Exi及びHanはそれぞれ最高と最低のmiRNA回収率を示した。興味深いことに、7a-5p及び93-5pのmiRNAの回収率は、4つの試薬すべてにおいてUCと同程度であった。
【0320】
ウエスタンブロット解析は、ポリマーベースの沈殿及びUCを用いて単離した試料にEVマーカー(フロチリン、TSG101、CD9、CD63、及びCD81)が存在することを明らかにした(図2B)。同程度のmiRNA回収率を示したInvt及びSBIは、同程度の量のEVマーカーを示した。4つの方法すべてで、UCと比較してEVマーカーの発現が変化した。同じ量のタンパク質をウエスタンブロットにロードした場合、Han試薬を用いた調製物ではアルブミンの混入が多く見られた。これらは、Han試薬では試料調製後のEVの精製度が低いことを示唆していると考えられる。今回の結果は、ポリマーベースの沈殿法の違いにより、単離されるEVの種類が異なる可能性を示唆した。
【0321】
例15. 結果 - ポリマーベースの沈殿法を用いたmiRNAプロファイリング
本発明者らは、下流のmiRNAプロファイリング分析にポリマーベースの沈殿法を選択した。というのは、ポリマーベースの沈殿法は他の方法に比べていくつかの利点があるからである。これには、使いやすさ、比較的低コスト、高い拡張性、必要な試料量が少ない、迅速なワークフロー等が含まれる。そこで、本発明者らは、全血清中のmiRNAを測定するよりも、EV画分中のmiRNAを定量した方が、より高い信号対雑音比が得られるのではないかという仮説の検証を開始した。15人のGCの血清及び15人の対照から、Invt、SBI、Exi又はHanの沈殿試薬を用いてEVを単離した。
【0322】
全被験者についての臨床情報を表E1(下記)に示す。
【0323】
【表2】
【0324】
全血清及びEV画分の両方における133種のGC関連miRNAの発現を測定し、比較した。すべてのmiRNAが全血清画分で検出可能であった。133種のmiRNAのうち30種は、4種のポリマーベースの沈殿法のいずれかで単離した試料では検出されなかった。そのため、これらのmiRNAはその後の解析には使用しなかった。
【0325】
本発明者らは、まず、癌群並びに対照群の全血清及びEV分画におけるmiRNAの発現の違いを調べた(図3)。0に近い値は、EV画分中のmiRNAのレベルが全血清中のそれと同様であることを示す。Han試薬は、全血清と比較して、EV画分におけるmiRNAの発現レベルの最も大きい差を示した。Han試薬及びInvt試薬は、SBI試薬及びExi試薬に比べて、癌と対照群との間でmiRNAレベルのより良好な識別が可能であった(p値<0.05)。
【0326】
次に、本発明者らは、2つの基準を満たすことで、診断的価値が期待できるEV関連のmiRNAを特定した:(1)EV画分における癌と対照との間の倍率変化のp値が0.05未満である、(2)EV画分のp値が全画分よりも小さい(図4)。17種のmiRNAが特定され、全画分と比較したそれらのp値、倍率変化、AUCを表E2(下記)に示した。
【0327】
【表3】
【0328】
Invtは、他のポリマーベースの沈殿法と比較して、より有意なp値を持つmiRNAの数が最も多い。
【0329】
例16. 結果 - 血清EVはGC診断のためのユニークなmiRNAシグネチャーを保有する
上記の結果に基づいて、本発明者らはInvt試薬を選択し、20人のGC及び20人の対照からなる別の独立のセットで、これらのEV関連のmiRNAバイオマーカーを検証した。
【0330】
全被験者の臨床情報を、表E3(下記)に示した。
【0331】
【表4】
【0332】
miR-140-3p、miR-145-5p及びmiR-197-3pはHan試薬で増強されることが判明しただけなので、これらはそれ以上測定しなかった。結果はgeNorm及びNormFinderの両方で安定していると判断した5つのmiRNAで正規化した(下記の表E4)。
【0333】
【表5】
【0334】
測定した14種のmiRNAのうち、8種のEV関連miRNAが癌及び対照の試料で異なる発現をしていることが判明し、探索セットのデータと一致した(図5及び表E5、下記)。
【0335】
【表6】
【0336】
例17. 考察
癌細胞により放出された循環EVは、腫瘍微小環境とのコミュニケーション、細胞増殖の促進、及び免疫系の阻害により、癌の生物学においてある役割を果たしていることが広く報告されている[1、13、23、31、32、33]。バイオマーカーとしてのEVのmiRNAの発見を容易にするためには、これらの小胞を迅速に単離し、それらを生体液中で容易に検出する必要がある。面倒で特殊な装置に大きく依存しているUCに代わる方法として、いくつかのEV単離法が開発されている。これらの方法には、カラムアフィニティ[34]、ペプチドアフィニティ[35]、特定の抗原(例えばCD9、CD63、CD81又はEpCAM)に対するイムノビーズアフィニティ[36、37]、及びポリマーベースの沈殿法[24、38、39、40]が含まれ、それらは、主に低コスト、ハイスループット、及び必要な試料量の低さ(100μl程度)から、近年、採用されることが増えている。これらの方法は、有望なEVのmiRNAバイオマーカーの特定に成功裏に使用されている[4、41、42、43、44、45、46]。現在までに、幅広い範囲の方法にわたるEVのmiRNAの包括的な評価、標準化されたプロセス、及び疾患と対照との間の発現レベルの比較は行われていない[47]。本研究では、本発明者らは、将来の臨床応用に向けて、RT-qPCRを用いてEV画分中のシグナルが増強されたmiRNAを検出するための迅速かつ堅牢なプロセスを開発することを意図して、上記の多くの市販のEV単離法を評価した。
【0337】
まず、EV画分からRNAを抽出し、一般的に発現している11種のヒトmiRNAの回収率を定量した。今回の結果は、カラムアフィニティベースの方法又はペプチドアフィニティベースの方法によるEV miRNAの回収率は、let 7a-5pを除いてUCと同様であることを示した(図1A)。興味深いことに、これらの方法では、タンパク質マーカーのプロファイルが異なるEVが生成され、このことは、画分中のEVの種類が異なるか、複数の種類のEVが集まっていることを示す可能性がある(図1B)。TSG101の発現は、カラム-アフィニティ法を用いた場合には存在することが報告されているが[34]、本発明者らの研究では存在しなかった。この違いの理由は不明である。
【0338】
イムノビーズアフィニティベースの方法を用いても、miRNAを効率的に定量することができなかった。単離したEVに本研究で分析したmiRNAが含まれていなかったか、又は単離したEVの量が不足していた可能性がある。EVを捕捉するために使用したビーズには、CD9、CD63及びCD81等のEV表面抗原を認識する抗体が結合されている。これらの抗原は、他の方法を用いて単離したEVから容易に検出できるため(図1B及び図2B)、今回のプロトコルでは、200μlの血清からEVを引き出すのにイムノビーズが効率的でなかった可能性が高い。しかしながら、この方法は、細胞培養上清試料及び血漿試料のような他の生体液からEVを単離することが示されており、RT-qPCR分析のためにはるかに多くの入力量を必要とする[37、48]。本発明者らは、より大量の血清(最大1000μl)を用いて研究を繰り返したが、検出されたmiRNAの量は、アッセイの検出限界に近いか、それ未満であった(データは示していない)。
【0339】
現在、市場には多くのポリマーベースの沈殿試薬があるが、本発明者らは、これらの試薬が同様の性能を持っているかどうか疑問を持った。本発明者らは、4つの沈殿試薬(Invt、SBI、Exi及びHan)を比較し、EVのmiRNAの回収率及びプロファイルはキットによって異なることを見出した(図2A)。この違いは、使用したポリマー及びバッファの組成の違いに起因する可能性がある。試験した4つの試薬はすべて、UCと比較してmiRNAの回収率が高かった。しかしながら、ポリマーベースの沈殿から調製した試料の純度は、より多い量のアルブミン混入の存在から明らかなように、UCには及ばなかった(図2B)。ウエスタンブロット分析も、4つの沈殿試薬すべてのEV表面マーカーのプロファイルがUCとは異なることを明らかにし、これらがUCとは異なるEVサブタイプを単離した可能性を示唆した。
【0340】
本発明者らは、血清量が少なくても使用できて、UCと同等以上のmiRNA回収率が得られるいくつかのEV単離法を特定した。現在のところ、血清からEVを単離するための最良の方法については、一般的な合意はない。本発明者らの目的は、最小限の応答時間で臨床現場に適しており、ハイスループットの目的に容易に組み込むことができる方法を確立し、GC患者における循環miRNAの信号対雑音比を改善することであった。これらの基準に基づき、ポリマーベースの沈殿は、EV関連のmiRNAの単離方法として選択した方法であり、この画分が癌と対照の試料間のmiRNAの検出を向上させることができるという仮説を検証した。探索セットでは、Invt、SBI、Exi及びHanの試薬を用いて、15人のGC及び15人の対照の血清を単離した。EV関連画分におけるmiRNAの発現レベルを、全血清から単離したmiRNAと比較した。プロファイリングした133種のmiRNAのうち、30種はInvt、SBI、Exi又はHanの試薬を用いて単離した試料の一部で検出できなかった。本発明者らは、Hanキットで調製した試料のmiRNAコピー数が他の試料に比べて非常に少なく、これらの試料では多くのmiRNAが検出できないことを見出した。本発明者らは、Hanで処理した試料からの沈殿したペレットが、Invt、SBI及びExiと比較して例外的に小さいことも認めた。本発明者らは、HanからのEV miRNAの回収率が低いのは、その試薬が血清からEVを単離するのに適していないことによるか、又はHanがEVのサブセットを単離するのに有効で、その結果、本研究で検出されたmiRNAの濃度が低いのではないかと推測する。このように、Han試薬は、他の3つの試薬と比較して、EVに含まれる明確な一連のmiRNAバイオマーカー(miR-140-3p、miR-145-5p及びmiR-197-3p)を示した。しかし、EVに関連する17種のmiRNAは、4つの沈殿方法のいずれにおいても、全血清と比較して、より有意な倍率変化、p値及びAUCを有することが判明した。
【0341】
本発明者らは、次に、Invt試薬を用いて、これら17種のEV関連miRNAを、20個のGC血清及び20個の対照血清の独立のセットで検証した。今回のデータは、明確な一連の8種類のEV関連miRNAを明らかにし、これらは全循環miRNAと比較して、診断の信号対雑音比が大きく向上していることを示した(表E2)。興味深いことに、miR-423-5p、miR-484、miR-142-5p及びmiR-17-5pは、胃癌において制御異常になっており[12、42、43、49]、腫瘍形成/転移に関与している[41、44]。
【0342】
要約すれば、今回の結果は、癌と健常な対照との試料の間で発現が異なるmiRNAを、全画分でもEV関連画分においても、容易に定量化できることを明らかにした。8つのEV関連のmiRNAのパネルは、GC診断のための現行の循環miRNAの感度及び特異性を大幅に改善した。GCの腫瘍形成におけるこれらの8種のmiRNAの起源、特異的な役割及び機能を解明するためには、さらなる研究が必要である。
【0343】
例18. 結果:ポリマーベースの沈殿法が最も高いEV-miRNA回収率を与えた
全血清からEV-miRNAを単離するのに適した最良の市販のEV単離方法を特定するために、本発明者らは、ポリマーベースの沈殿法(PBP)、カラムアフィニティベースの精製法(CAP)、ペプチドアフィニティベースの精製法(PAP)、イムノビーズアフィニティベースの精製法(IAP)の4つの異なる方法のEV-miRNA回収性能を評価した。本発明者らは、臨床現場を想定して、低容量の試料(200μl)を使用した。本発明者らは、RT-qPCRを用いて、全血清とEVとに共通して発現している11種のmiRNAの量を測定し、それぞれの方法によるEV-miRNAの回収率を決定した。
【0344】
対照として、UCは血清中の全miRNAの4~15%を回収し、平均回収率は10%であった(図6A)。このベンチマークと比較すると、CAP及びPAPは同等の平均miRNAを回収したが、IAPは最小量のmiRNAしか回収しなかった(平均回収率は5%未満)。対照的に、PBPはUCと比較して有意に多くのmiRNAを回収した。PBP試薬はいくつか市販されているので、本発明者らは、これらの試薬を試験して、それらの性能が同等であるかどうかを調べた。本発明者らは、異なる製造業者の4つのPBP試薬(Invitrogen-Invt、System Biosciences-SBI、Exiqon-Exi、及びHansaBioMed-Han)を評価し、4つの試薬とも、UCと比較して血清中の全miRNAの回収率が高い(平均回収率は20~30%)(図6B)ことを見出した。Invt及びSBIは同程度のmiRNA回収率を示したが、Exi及びHanはそれぞれ最高及び最低のmiRNA収量を与えた。
【0345】
本発明者らは、次に、いくつかの一般的なEVマーカーであるフロチリン、TSG101、CD9、CD63及びCD81がPBPで単離した試料の中に存在するかをウエスタンブロット法を用いてアッセイし、すべての試料でこれらのマーカーを検出することができた(図6C)。これにより、各PBP試薬が全血清からEVを単離したことが確認された。しかしながら、EV画分の中に存在する各EVマーカーの量は試薬によって大きく異なり、異なる試薬が異なる量のEV又はEVのサブタイプを単離しているがことが示唆された。注目すべきは、Hanが最もEVマーカーの発現量が低く、試験したPBPプロトコルの中でEV-miRNAの回収量が最も少なかったことと一致していたことである(図6B図6C)。本発明者らは、PBPで単離したEVは、UCと比較してアルブミンの混入が多く、Invt及びSBIはアルブミンが最も少ないことも認めた(図6C)。
【0346】
それゆえ、本発明者らは、PBPを、全血清からのEV-miRNAの回収率が最も高い好ましいEV単離法であると特定した。本発明者らはさらに、試験した4種の市販のPBP試薬はすべて、現在のEV単離のためのゴールドスタンダードであるUCと比較して、EV-miRNAの回収率性能が高いということを示した。PBPは、EV-miRNAの回収率が高いだけでなく、使いやすさ、比較的低コスト、高い拡張性、必要な試料量の低さ、及び迅速なワークフローを持ち、臨床現場での使用に最も適していることから、本発明者らは、PBPを後続のEV-miRNAバイオマーカー探索にも採用した。
【0347】
例19. 結果:GC検出用EV-miRNA候補の特定
本発明者らは、次に、4種の市販のPBP試薬を用いて、15人のGC及び15人のマッチした健常な対照から採取した試料の中の血清EV-miRNAバイオマーカーを単離し特定した(臨床情報は下記表NS3に示す)。
【0348】
【表7】
【0349】
これを達成するために、本発明者らは、4つのPBP試薬を用いて単離した全血清及びEV画分中の133種のGC関連miRNAの量を測定した。30名の被験者全員の全血清中に133種のGC関連miRNAがすべて検出された。しかしながら、これらのmiRNAのうち、4つのPBP試薬を用いて単離したすべてのEV画分で一貫して検出可能であったのは104種だけであった(下記の表NS4)。それゆえ、本発明者らは、この104種のmiRNAに着目して後続の解析を行った。
【0350】
【表8】
【0351】
各PBP法について、本発明者らは、以下の基準を用いて、血清中の全miRNAバイオマーカーよりも信号対雑音比が向上した(GCと健常な被験者との間で発現レベルに差がある)有望なEV-miRNAバイオマーカーを探した:(1)GC試料と健常な試料との間でEV-miRNAの有意な発現差があり(潜在的バイオマーカー)、スチューデント(Student)のt検定のp値が0.05未満であること、(2)EV-miRNAのp値が全血清中の同じmiRNAのp値よりも低いこと(信号対雑音比の向上)(図7A)。これらの基準を用いて、本発明者らは、Invt、SBI、Exi及びHanを用いて単離したEV-miRNAのバイオマーカー候補を、それぞれ11個、5個、5個及び7個特定した(下記表N1)。
【0352】
【表9】
【0353】
Invtにより単離された11個のEV-miRNAバイオマーカー候補のうち、10個は血清miRNAと比較してGC検出精度(ROC曲線のAUC)が高かった(図7B及び下記表N2)。
【0354】
【表10】
【0355】
Invtが最も多くのEV-miRNAバイオマーカー候補を単離したことから、本発明者らは、この試薬を用いて検証研究を行った。
【0356】
例20. 結果:血清EVはGC診断のためのユニークなmiRNAシグネチャーを保有する
本発明者らは、Invt PBPプロトコルを用いて、20人のGC及び20人の健常な対照の別の独立のセットからEV-miRNAを単離した(臨床情報は下記表NS5に示す)。
【0357】
【表11】
【0358】
全11種のEV-miRNAバイオマーカー候補(表N1)の発現レベルを、全血清とEV画分とで定量した。EV-miRNAバイオマーカーの特定には、同じ基準(p値<0.05、EV p値<全血清p値)を用いた。本発明者らは、EVの単離によって血清中のmiRNAと比較して信号対雑音比が向上した8種類のEV-miRNAを検証した(図8A及び下記表N3)。
【0359】
【表12】
【0360】
これらはすべて、血清中のmiRNAと比較してGC検出についてのAUC値が高かった(図8B及び表N3)。それゆえ、この8つの検証したPBPで単離したEV-miRNAバイオマーカーは、血清よりもEV画分で測定した方がGC検出精度が高く、AUCは0.62~0.91であった。
【0361】
例21. 結果:胃癌の検出のための多変量のmiRNAパネル
上記に続いて、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つのmiRNAを含む多変量パネルについて、GC検出のAUC値を評価した。
【0362】
表N4は、これらの多変量パネルのAUC値の中央値(図9のグラフにも示されている)と、各パネルサイズで可能なmiRNAの組み合わせで得られた最高から最低までのAUC値の範囲を示す。
【0363】
8-miRNAパネルでは、提供した値はAUC値である(8つのmiRNAの組み合わせは1つしか可能ではないため)。
【0364】
【表13】
【0365】
例22. 考察
癌検出のためのバイオマーカーとしてのEV-miRNAを発見するためには、EVを迅速に単離し、EVを生体液中で容易に検出することが不可欠である。面倒で特殊な装置に大きく依存しているUCに代わる方法として、いくつかのEV単離法が開発されている。これらのEV単離法には、CAP38、PAP39、及び特定の抗原(例えばCD9、CD63、CD81又はEpCAM)を持つEVを単離するのに使用されている40、42IAP40、41がある。別のEV単離法であるPBPは、主にその低コスト、ハイスループット能力、及び必要な試料量の低さ(100μl試料程度)43-45から、近年、採用されることが増えている。上記のこれらのEV単離法はいずれも、有望なEV-miRNAバイオマーカーの特定に成功裏に使用されている46-49。しかしながら、これまで、EV-miRNAの単離方法を系統的かつ包括的に評価した例はなく、EV-miRNA単離の標準化されたプロトコルも存在しない。本研究では、本発明者らは、GCの臨床的検出のために、EV-miRNAバイオマーカーを検出するための迅速かつ堅牢なプロセスを開発することを目的として、市販のいくつかのEV単離法を評価した。具体的には、EV-miRNAの回収率が高いEV単離法を特定し、この方法を用いてEV-miRNAを単離することで、循環miRNAバイオマーカーの信号対雑音比及びGC検出性能が向上するという仮説を検証した。
【0366】
本発明者らは、まず、血清中及び血清から単離したEV画分中に存在する、一般的に発現している11種のヒトmiRNAの量を比較することにより、EV-miRNAの回収性能を判定した。本発明者らは、CAP及びPAPによるEV-miRNAの回収率はUCと同程度であったのに対し、PBPは優れた回収性能を有するということを示した。予想外にも、本発明者らは、IAPを用いると非常に少量のEV-miRNAしか認めなかった。これは、おそらくはIAPで単離したEVに本研究で分析したmiRNAが含まれていなかったか、又は本プロトコルで使用した血清が少量(200μl)であったために、単離されるEVの量が不十分であったことを示す可能性がある。IAPはこれまでにも、細胞培養上清試料及び血漿試料等の他の生体液からEVを効率的に単離することが示されているが、これらの研究ではRT-qPCR分析のためにはるかに大量の入力量を使用した40、42。投入量が少ないためにIAPがEVの単離に非効率的であるという可能性を排除するために、より大量の血清(最大1000μl)を用いてIAP研究を繰り返したところ、EVの回収率は最小限にとどまることが確認された(データは示していない)。そこで、本発明者らは、PBPに着目した。というのは、PBPは、試験した方法の中で最良のEV-miRNAの回収率を示したからである。
【0367】
現在、多くのPBP試薬が市販されており、本発明者らは、本研究においてそれらの試薬の中から4つの試薬(Invt、SBI、Exi及びHan)を評価のために選択した。本発明者らは、PBP試薬の違いにより、全血清からのEV-miRNAの回収率が異なることを見出した。この回収率の違いは、使用したポリマー及びバッファの組成の違いに起因する可能性がある。しかし、試験した4つのPBPプロトコルはすべて、UCと比較してEV-miRNAの回収率が高かった。しかしながら、Exi及びHanのPBPプロトコルは、より多い量のアルブミン混入の存在から認めることができるように、UCと比較してEVの純度が低かった。ウエスタンブロット解析も、4つの沈殿試薬すべてのEV表面マーカーのプロファイルがUCとは異なることを明らかにし、これらがUCとは異なるEVサブタイプを単離した可能性を示唆した。
【0368】
本発明者らは、次に、15人のGC及び15人の健常な対照からの血清を用いて、4種のPBPプロトコルを検証した。本発明者らは、合計133種のmiRNAをプロファイリングし、大部分(104種のmiRNA)がすべての4種類のPBP法で単離したすべてのEVで検出されることを見出した。本発明者らは、Invt、SBI、Exi及びHanを用いて単離したEV-miRNAバイオマーカー候補を、それぞれ11個、5個、5個及び7個特定した。Invt試薬は、最も多くのEV-miRNA候補を与え、これら11種のうち10種は、血清中のmiRNAと比較して高いGC検出精度(AUC)を示した。このように、本発明者らは、PBPを用いたEVの単離はmiRNAを濃縮し、GCのmiRNAバイオマーカーの性能を向上させることができることを示した。
【0369】
今回のパイロット研究で発見された11種のEV-miRNAは、20個GC血清及び20個の対照血清の独立のセットでさらに検証された。これら11種のEV-miRNAのうち8種は、全循環miRNAと比較して診断の信号対雑音比が大きく向上しており、PBPを用いてEVを単離した後のmiRNAバイオマーカーの性能が向上することが検証された。これらのmiRNAのうち4つ、すなわちmiR-423-5p、miR-484、miR-142-5p、及びmiR-17-5pは、GCにおいて制御異常になっていること、又はGCの腫瘍形成/転移に関与していることが示されている50-55
【0370】
要約すれば、本発明者らは、血清中のEV-miRNAを単離することで、GCのmiRNAバイオマーカーの性能が向上することを示した。特に、本発明者らは、Invt PBPプロトコルを、最も多くのEV-miRNAバイオマーカーを発見するプロトコルとして確立した。この試薬を用いて、本発明者らは、検証セットで有効性が確認された8つのEV-miRNA GCバイオマーカーを特定した。今回の研究により、EV-miRNAが実際にGCの診断マーカーになりうるという概念が証明された。GCの腫瘍形成におけるこれらの8種のmiRNAの起源、特異的な役割及び機能を解明するためには、さらなる研究が必要である。
【0371】
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【0373】
本明細書及び特許請求の範囲において、動詞「to comprise(…を含む)」及びその活用形は、その単語に続く項目は含まれるが、特に言及されていない項目は除外されないという意味で、非限定的に使用されている。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素の言及は、文脈上、要素が1つだけであることが明確に要求されない限り、複数の要素が存在する可能性を排除しない。従って、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0374】
本明細書に記載されている各出願及び特許、並びに上記各出願及び特許の手続中を含めて上記各出願及び特許で引用又は参照されている各文書(「出願引用文書」)、並びに各出願及び特許並びに出願引用文書のいずれかで引用若しくは言及されているすべての製品の製造業者の説明書又はカタログは、参照により本明細書に組み込まれる。さらには、本明細書で引用されているすべての文書、本明細書で引用されている文書で引用又は参照されているすべての文書、及び本明細書で引用若しくは言及されているすべての製品の製造業者の説明書又はカタログは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0375】
本発明の記載された方法及びシステムの様々な改変例及び変形例は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない範囲で当業者に明らかになるであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、請求項に係る発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際、分子生物学又は関連分野の当業者にとって明らかな、本発明を実施するための記述された態様の様々な改変例が、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9