(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240701BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61K39/395 U
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021539418
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020050203
(87)【国際公開番号】W WO2020144178
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520029974
【氏名又は名称】アイテオス ベルジャム エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】フーフド キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】ドリーセン グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】クエンド ジュリア
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/106302(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/053748(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/191643(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/030823(WO,A2)
【文献】Cancer Cell,2014年,26, [6],p.923-937
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
C07K 16/00-16/46
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療のための、ヒトTIGITに結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでなる医薬組成物であって、
前記がんが肝細胞癌腫、膵臓癌腫、肺癌腫、及びセザリー症候群から選択され、
前記抗体または抗原結合断片が、
配列番号16を含む重鎖CDR1(HCDR1)、配列番号17を含む重鎖CDR2(HCDR2)、配列番号18を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
配列番号61を含む軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号62を含む軽鎖CDR2(LCDR2)、及び配列番号63を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変ドメイン
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号221のアミノ酸配列、またはこれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する、重鎖可変ドメイン
を含み、且つ任意で、
配列番号222のアミノ酸配列、またはこれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する、軽鎖可変ドメイン
を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号219のアミノ酸配列、またはこれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する、重鎖可変ドメイン
を含み、且つ任意で、
配列番号220のアミノ酸配列、またはこれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する、軽鎖可変ドメイン
を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体のうちの1つ以上と組み合わせて使用
される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
がん免疫療法は腫瘍に対する認識及び応答を高める免疫系の調節に依存する。そのような調節は、免疫細胞上に存在する共刺激分子の活性化を含む、または共抑制性受容体の阻害を介した複数のメカニズムによって達成することができる。免疫応答の活性化は、抗原特異的応答の開始に重要な抗原提示細胞及び腫瘍細胞の破壊に関与するエフェクター細胞のような多数の細胞集団が関与する複雑なメカニズムである。細胞傷害性T細胞のようなエフェクター細胞の活性化を調節するメカニズムは多数であり、がん免疫療法の文脈では選択の標的を表す。
【0002】
TIGIT(IgドメインとITIMドメインを持つT細胞免疫受容体)は、WUCAM、VSIG9またはVstm3とも呼ばれ、NK細胞、CD8+T細胞及びCD4+T細胞と同様に抑制性T細胞(Treg細胞または単に「Treg」)にて優先的に発現される共抑制性受容体である。TIGITは、その細胞内部分における既知のITIMドメインと膜貫通ドメインと受容体の細胞外部における免疫グロブリン可変ドメインとを含有する膜貫通タンパク質である。いくつかのリガンドがTIGIT受容体に結合すると記載されており、CD155/PVRが最良の親和性を示し、CD113/PVRL3及びCD112/PVRL2がその後に続く(Yu,et al.(2009),Nat.Immunol.10:48(非特許文献1))。NK細胞及びT細胞にて発現される既知の共刺激受容体であるDNAM/CD226はCD155及びCD112の結合についてTIGITと競合するが、親和性が低く、それはCD155リガンドを発現している正常細胞に対する制御されない細胞傷害を回避するためのこれらエフェクター細胞の活性化の厳しい制御を示唆している。
【0003】
TIGITの発現は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びHIV感染症のような疾患状況で高められる。TIGITの発現は、TIGIT陰性の対応する細胞と比べて低いエフェクター機能を有する疲弊T細胞を特徴付ける(Kurtulus,et al.(2015),J.Clin.Invest.276:112(非特許文献2);Chew,et al.(2016),Plos.Pathogens.12(非特許文献3))。逆に、TIGITを発現しているTreg細胞はTIGIT陰性のTreg集団に比べて増強された免疫抑制活性を示す(Joller,et al.(2014),Immunity.40:569(非特許文献4))。
【0004】
免疫療法について関連する標的であることが判明している、且つそれについてアンタゴニスト抗体がヒトのがんの治療のために認可されている、T細胞上で発現される他の共抑制性受容体(PD1またはCTLA4)のように、アンタゴニスト抗TIGIT抗体の開発は免疫系のスイッチを入れ、がん細胞と良好に戦うのに役立ってもよい。単剤療法または抗PD1抗体との組み合わせにおけるアンタゴニスト抗TIGIT抗体は前臨床モデルにて強力な抗腫瘍有効性を達成し得ることが示唆されている(そのすべてが参照によって本明細書に組み入れられるJohnston,et al.(2014),Cancer Cell,26:1(非特許文献5);WO2016/028656(特許文献1);US2016/0176963(特許文献2);US2016/0376365(特許文献3))。
【0005】
従って、TIGIT受容体活性を阻害し得るTIGITに特異的なアンタゴニスト抗体は腫瘍微細環境に関連する免疫抑制効果を低下させる機会となり、それによって腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫応答を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2016/028656
【文献】US2016/0176963
【文献】US2016/0376365
【非特許文献】
【0007】
【文献】Yu,et al.(2009),Nat.Immunol.10:48
【文献】Kurtulus,et al.(2015),J.Clin.Invest.276:112
【文献】Chew,et al.(2016),Plos.Pathogens.12
【文献】Joller,et al.(2014),Immunity.40:569
【文献】Johnston,et al.(2014),Cancer Cell,26:1
【発明の概要】
【0008】
本発明は、TIGITが介在するシグナル伝達の免疫抑制効果を低下させることができる抗TIGIT抗体を提供する。特に、本発明の抗体または抗原結合断片は、T細胞(従来型のαβT細胞及び非従来型のγδT細胞)及びNK細胞におけるリガンド結合の阻止及び/またはTIGIT陽性Treg細胞の枯渇を介して、及び/またはTIGIT受容体の内部移行を誘導することによって、TIGITが介在する免疫抑制を阻害することができる。
【0009】
態様の1つでは、本発明は、ヒトTIGITに結合し、
図1に示すHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列から選択される重鎖CDR1(HCDR1)と重鎖CDR2(HCDR2)と重鎖CDR3(HCDR3)とを含む重鎖可変ドメインを含み、さらに
図2に示すLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列から選択される軽鎖CDR1(LCDR1)と軽鎖CDR2(LCDR2)と軽鎖CDR3(LCDR3)とを含む軽鎖可変ドメインを含む単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0010】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含み、その際、組み合わせは、
図1における各抗体に由来するLCDRと一緒に
図2における対応する抗体に由来するHCDRによって形成される組み合わせの群から選択される。
【0011】
特定の実施形態では、本発明に係る抗体または抗原結合断片は、配列番号211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、327、329、及び331、ならびにそれらに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含んでもよく;且つ任意で、配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、328、330、及び332のアミノ酸配列、ならびにそれらに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0012】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの組み合わせを含み、その際、組み合わせは、
図5における各抗体に由来するVHまたはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列と一緒に、
図5における同じ抗体に由来するVLまたはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列によって形成される組み合わせの群から選択される。
【0013】
本明細書で提供されている最も好ましい抗体及び抗原結合断片は本明細書で提供されている抗体31282のCDRまたは完全な可変ドメインに基づくものである。
【0014】
本明細書で実証されるように、抗体31282に基づくこれらの好ましい抗TIGIT抗体及び抗原結合断片は特に驚くべき且つ有利な特性を有する。これらの特性には、それぞれ以前記載され、調べた抗TIGIT抗体と比べてCD8T細胞(健常ドナーまたはがん患者に由来する)上で発現されるTIGITに対する高い親和性;それぞれ以前記載され、調べた抗TIGIT抗体と比べてCD155/PVRとの競合についてのさらに良好なIC50;それぞれ以前記載され、調べた抗TIGIT抗体と比べてT細胞活性化アッセイにおけるさらに良好なEC50;ならびに患者の末梢血に由来する、及び重要なことに腫瘍浸潤リンパ球に由来するT細胞にて活性を強く高めることが挙げられる。さらに、本発明に係る抗体及び抗原結合断片、特に抗体31282に基づくものはTreg細胞を優先的に枯渇させることが驚くべきことに本明細書で示されている。すなわち、提供されている抗TIGIT抗体に曝されたTIGITを発現しているTreg細胞は従来のCD4及びCD8のT細胞と比べて大きな割合まで溶解を受ける。従来のCD4及びCD8のT細胞もTIGITを発現しているが、抗体と接触して同じ程度には細胞溶解を受けないので、これは驚くべくことである。本発明に係る抗体及び抗原結合断片、特に抗体31282に基づくものは従来のT細胞の炎症誘発活性を促進するだけでなく、非従来型のγδT細胞の活性も高めることがさらに驚くべきことに示されている。
【0015】
従って、特定の好ましい実施形態では、本明細書で提供されるのはHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む抗体または抗原結合断片であり、その際、
HCDR1は配列番号16(YTFTSYYMH)を含み、またはそれから成り、
HCDR2は
を含み、またはそれから成り、
HCDR3は
を含み、またはそれから成り、
LCDR1は配列番号61(RASQSVRSSYLA)を含み、またはそれから成り、
LCDR2は配列番号62(GASSRAT)を含み、またはそれから成り、及び
LCDR3は配列番号63(QQYFSPPWT)を含み、またはそれから成る。
【0016】
特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号221に係るアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号222に係るアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、またはそれから成る。
【0017】
特定の好ましい実施形態では、抗TIGIT抗体は本明細書に記載されている抗体31282である。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、ヒトTIGITへの結合について本発明の第1の態様に係る抗体、たとえば、本明細書で例示されている抗体と交差競合する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る抗体、たとえば、本明細書で例示されている抗体と同じエピトープに結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、TIGIT残基Q56及びI109を含み、任意で残基Q56、N58及びI109を含むヒトTIGITのエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。好ましい実施形態では、提供されるのはTIGIT残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76及びI109を含むヒトTIGITのエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0021】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はTIGIT残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76及びI109から成るヒトTIGITのエピトープに結合する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、ヒトTIGITに結合し、且つTIGITの結合についてCD155と競合しない単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、ヒトTIGITに結合し、且つTIGITの結合についてCD155と競合しない抗体または抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、その際、HCDR1は配列番号280を含み、またはそれから成り、HCDR2は配列番号281を含み、またはそれから成り、HCDR3は配列番号282を含み、またはそれから成り、LCDR1は配列番号292を含み、またはそれから成り、LCDR2は配列番号293を含み、またはそれから成り、及びLCDR3は配列番号294を含み、またはそれから成る。
【0024】
特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号333として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号334として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、またはそれから成る。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、ヒトTIGITに結合し、且つTIGITの結合についてCD155と競合しない抗体は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含み、その際、HCDR1は配列番号353を含み、HCDR2は配列番号354を含み、HCDR3は配列番号355を含み、LCDR1は配列番号356を含み、LCDR2は配列番号357を含み、且つLCDR3は配列番号358を含む。
【0026】
特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号367として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよく、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号368として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、TIGITを発現しているTreg細胞を優先的に枯渇させる単離された抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を提供し、任意でその際、抗体または抗原結合断片は本発明の第1の態様に係る抗体または抗原結合断片、たとえば、本明細書で例示されている抗体である。
【0028】
さらなる態様では、本発明は本発明の他の態様に係る抗体、たとえば、本明細書で例示されている抗体の親和性変異体を提供する。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、本発明の他の態様に係る抗体または抗原結合断片、たとえば、本明細書で例示されている抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは単離されたポリヌクレオチドの組み合わせを提供する。
【0030】
さらなる態様では、本発明は抗TIGIT抗体のVH及び/またはVLのドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、その際、ポリヌクレオチドは配列番号241~270、335~342及び369~370から成る群から選択される1つ以上の配列を含む。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、宿主細胞または無細胞発現システムにおける抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする調節性配列に動作可能に連結された本発明に係るポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせを含む発現ベクターを提供する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る発現ベクターを含有する宿主細胞または無細胞発現システムを提供する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、抗体または抗原結合断片の発現を可能にする条件下で本発明に係る宿主細胞または無細胞発現システムを培養することと、発現された抗体または抗原結合断片を回収することとを含む、組換え抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を提供する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る抗体または抗原結合断片、たとえば、本明細書で例示されている抗体と、少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアまたは賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、治療法で使用するための本発明に係る抗体または抗原結合断片または本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、がんを治療する方法で使用するための本発明に係る抗体または抗原結合断片(たとえば、本明細書で例示されている抗体)または本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、有効量の本発明に係る抗体または抗原結合断片(たとえば、本明細書で例示されている抗体)または本発明に係る医薬組成物を対象に投与し、それによってがんを治療することを含む、対象にてがんを治療する方法を提供する。
【0038】
特定の好ましい実施形態では、方法は肺癌、膵臓癌、及びT細胞リンパ腫から選択されるがんを治療する方法である。特定の好ましい実施形態では、がんは肝細胞癌腫である。特定の好ましい実施形態では、がんは膵臓腺癌である。特定の好ましい実施形態では、がんは肺癌腫である。特定の好ましい実施形態では、がんはセザリー症候群である。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、ウイルス感染症、任意でCMV感染症を治療する方法で使用するための本発明に係る抗体または抗原結合断片(たとえば、本明細書で例示されている抗体)または本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0040】
さらなる態様では、提供されるのは、有効量の本発明に係る抗体または抗原結合断片または本発明に係る医薬組成物を対象に投与し、それによってウイルス感染症を治療することを含む、対象にてウイルス感染症を治療する方法である。好ましい実施形態では、ウイルス感染症はCMV感染症である。
【0041】
さらなる態様では、提供されるのは、T細胞の集団を、本発明に係る抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、T細胞の活性を促進する方法である。特定の実施形態では、方法はαβT細胞の活性を促進する。特定の実施形態では、方法はγδT細胞の活性を促進する。特定の実施形態では、方法はインビトロで実施される。特定の実施形態では、方法はインビボで、たとえば、ヒト対象にて実施される。
【0042】
特定の実施形態では、提供されるのは、本発明に係る方法、または本発明に係る方法で使用するための抗体または抗原結合断片または医薬組成物であり、その際、方法はさらに、1つ以上の追加の治療剤の投与を含む。特定の好ましい実施形態では、1つ以上の追加の作用物質は、化学療法剤、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体から選択される。
【0043】
さらなる態様では、提供されるのは、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と、化学療法剤、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体のうちの1つ以上とを含む組み合わせである。さらなる態様では、提供されるのは、治療法で使用するための本発明に係る組み合わせである。さらなる態様では、提供されるのは、がんを治療する方法で使用するための、またはウイルス感染症を治療する方法で使用するための、本発明に係る組み合わせである。さらなる態様では、提供されるのは、本発明に係る方法で使用するための本発明に係る組み合わせである。好ましい実施形態では、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は本発明の抗体またはその抗原結合断片である。
【0044】
さらなる態様では、提供されるのは腫瘍体積を減らす組成物または組み合わせである。いくつかの実施形態では、組み合わせはさらに、1つ以上の追加の治療剤の投与を含む。特定の好ましい実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は化学療法剤、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体から選択される。
【0045】
さらなる態様では、提供されるのは本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と化学療法剤とを含む組み合わせである。好ましい実施形態では、化学療法剤はドキソルビシンである。好ましい実施形態では、組み合わせはさらに、アデノシンA2A受容体(A2AR)アンタゴニストを含む。さらなる態様では、組み合わせは治療法で使用するために提供される。さらなる態様では、組み合わせはがんを治療するのに使用するために提供される。好ましい実施形態では、組み合わせは結腸癌を治療するのに使用するためのものである。
【0046】
さらなる態様では、提供されるのはがんを治療する方法で使用するための本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片であり、その際、方法は、化学療法剤と組み合わせて抗体を投与することを含む。好ましい実施形態では、方法はさらに、A2ARアンタゴニストを投与することを含み、抗体または抗原結合断片と化学療法剤とA2ARアンタゴニストとが、組み合わせで投与される。好ましい実施形態では、がんは結腸癌である。好ましい実施形態では、化学療法剤はドキソルビシンである。関連する態様すべてにおいて、治療される対象はヒト対象であることが好ましい。関連する態様すべてにおいて、本発明に係る抗体と接触する細胞(たとえば、T細胞)はヒト細胞(たとえば、ヒトT細胞)であることが好ましい。
【0047】
技術的に不適合でない限り、または反対に指示されない限り、記載されている好ましい実施形態は任意で、他の好ましいすべての実施形態のうちの1つ以上と組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の相補性決定領域(CDR)の配列を提供する表である。
【
図2】本発明の抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)のCDR配列を提供する表である。
【
図3-1】本発明の抗体の重鎖可変ドメイン(VH)のフレームワーク(FR)配列を提供する表である。
【
図4-1】本発明の抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)のフレームワーク(FR)配列を提供する表である。
【
図5-1】本発明の抗体の重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列を提供する表である。
【
図6-1】本発明に係る抗体のVHドメイン及びVLドメインをコードするポリヌクレオチドの配列を提供する表である。
【
図7】Jurkat-hTIGITへの結合についてのhCD155と抗TIGIT抗体との間での競合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図8】(A)7人の健常ヒトドナーに由来するPBMCの特異的T細胞集団内におけるTIGIT陽性細胞の比率を示すグラフである。(B)7人の健常ヒトドナーに由来するPBMCの様々な免疫集団内でのTIGIT陽性細胞の比率を示すグラフである。
【
図9】Jurkat-hTIGITにおける抗TIGIT抗体の結合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図10-1】(A及びB)ヒト健常PBMCに由来する初代CD8
+T細胞における抗TIGIT抗体の結合アッセイの結果を示すグラフである。(C)ヒト健常PBMCに由来する初代メモリーCD8
+T細胞及びTregにおける抗TIGIT抗体の結合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図11】カニクイザル健常PBMCに由来する初代CD8
+T細胞における抗TIGIT抗体の結合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図12-1】CHO-TCR-CD155及びJurkat-hTIGITのバイオアッセイにおける抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。
【
図13-1】CHO-TCR-CD155細胞で活性化した健常ドナーに由来するヒト初代CD8T細胞における機能的アッセイにてIFNgの分泌を高める抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。
【
図14】CHO-TCR-CD155細胞で活性化した卵巣腹水に由来するヒト初代CD8
+TILにおける機能的アッセイにてIFNgの分泌を高める抗TIGIT抗体の効果を示す柱状グラフのプロットである。
【
図15】(A)Jurkat-mTIGITへの結合についてのマウスCD155と抗TIGIT抗体との間での競合アッセイの結果を示すグラフである。(B)マウスOT-1T細胞における機能的アッセイにてIFNgの分泌を高める抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。(C)マウスOT-1T細胞における機能的アッセイにて細胞傷害性を高める抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。
【
図16】(A)CT26腫瘍モデルにおける単剤療法にて抗TIGIT抗体の抗腫瘍有効性を示すグラフである。(B及びC)CT26腫瘍モデルにて抗PD1との併用での抗TIGIT抗体の抗腫瘍有効性を示すグラフである。
【
図17-1】(A)CT26腫瘍モデルにおける単剤療法にて抗TIGIT抗体のアイソタイプ依存性の抗腫瘍有効性を示すグラフである。(B)CT26腫瘍モデルにて抗PD1との併用での抗TIGIT抗体のアイソタイプ依存性の抗腫瘍有効性を示すグラフである。
【
図18-1】(A及びG)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるCD4
+T細胞集団全体内でのTreg細胞の比率の調節を示すグラフである。(B及びH)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるCD45
+細胞集団全体内でのCD8
+T細胞の比率の調節を示すグラフである。(C及びI)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるCD8
+/TregT細胞の比の調節を示すグラフである。(D及びJ)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるIFNgを分泌するCD4
+T細胞の調節を示すグラフである。(E)抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるIFNgを分泌するCD8
+T細胞の調節を示すグラフである。(L及びF)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるIFNg/IL-10を分泌するCD4
+T細胞の比を示すグラフである。(K)抗PD1抗体との併用で抗TIGIT抗体によって処理したCT26腫瘍におけるIL-10を分泌するCD4
+T細胞の調節を示すグラフである。
【
図19】(A)CT26腫瘍にて遺伝子発現を調節する、及びNanoString解析によって測定した抗TIGIT抗体処理の効果を示す火山プロットである。(B)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍における細胞傷害性スコアの調節を示す箱ひげ図である。(C)単剤療法または抗PD1との併用にて抗TIGIT抗体で処理したCT26腫瘍におけるCD8
+T細胞のスコアの調節を示す箱ひげ図である。
【
図20】(A)ヒト健常ボランティアに由来するPBMCにおけるTIGIT
+、CD4
+、CD8
+T細胞及びTregの集団の比率を示す柱状グラフのプロットである。(B)ヒト健常ボランティアに由来するPBMCにおける従来型のCD4
+、CD8
+T細胞及びTregの集団に対する抗TIGIT抗体のインビトロ細胞傷害性効果を示すグラフである。
【
図21】CT26腫瘍における従来型のCD4
+、CD8
+T細胞及びTregの集団に対する抗TIGIT抗体のエクスビボ細胞傷害性効果を示すグラフである。
【
図22】(A)Jurkat-hTIGIT細胞における抗TIGIT抗体クローンの結合アッセイの結果を示すグラフである。(B)健常ヒトPBMCに由来する初代CD8
+T細胞における抗TIGIT抗体クローンの結合アッセイの結果を示すグラフである。(C)がん患者のPBMCに由来する初代CD8
+T細胞における抗TIGIT抗体クローンの結合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図23】Jurkat-hTIGITへの結合についてのヒトCD155と抗TIGIT抗体クローンとの間での競合アッセイの結果を示すグラフである。
【
図24-1】アンタゴニスト抗TIGITクローンの機能的特性評価を示すグラフである。(A)Jurkat-hTIGITエフェクター細胞を用いた機能的アッセイ(ルシフェラーゼレポーターアッセイ)における抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。(B)健常ボランティアに由来するヒト初代CD8
+T細胞によるIFNg分泌を測定する機能的アッセイにおける抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。(C)PBMCに由来するがん患者のCD3
+T細胞によるIFNg分泌を測定する機能的アッセイにおける抗TIGIT抗体クローン31282の効果を示すグラフである。(D)がん患者のTILまたはPBMCにて細胞内サイトカイン染色を測定する機能的アッセイにおける抗TIGIT抗体クローン31282の効果を示すグラフである。
【
図25】がん患者に由来するPBMCにおけるCD4
+またはCD8
+のメモリーT細胞全体及びTregの集団に対する抗TIGITクローン31282の細胞傷害活性を示すグラフである。
【
図26】がん患者に由来する免疫集団におけるTIGIT発現の特性評価を示すグラフである。(A)がん患者のPBMC及びTILに由来する免疫集団におけるTIGIT発現の頻度を示すグラフである。(B)がん患者のPBMC及びTILに由来する免疫集団におけるTIGIT発現の絶対的定量を示すグラフである。
【
図27A】Fabの構造:リボン図として示されるTIGIT複合体を示す図である。
【
図27B】クローン31282とTIGITの間の完全な結合界面を示す図である。
【
図27C】接触した残基を示すクローン31282とTIGITの間の結合界面を示す図である。
【
図28】抗TIGITクローンの31282と32959との間での競合アッセイを示すグラフである。
【
図29】カニクイザルにて0.1mg/kg(上の列)、1mg/kg(中の列)または10mg/kg(下の列)の単回用量をi.v.注射した後の抗TIGITクローン31282の血漿濃度の測定を示すグラフである。左の欄:31282 IgG1;右の欄:31282 IgG4。
【
図30】セザリー症候群患者に由来する悪性及び正常のCD4
+T細胞集団におけるTIGIT発現の特性評価を示すグラフである。(A)悪性及び正常のCD4
+T細胞を分離するゲート戦略。(B)2つの異なる集団におけるTIGIT染色についてのMFI。
【
図31】CLL患者に由来する悪性及び正常のB細胞集団におけるTIGIT発現の特性評価を示すグラフである。(A)悪性及び正常のB細胞を分離するゲート戦略。(B)2つの異なる集団におけるTIGIT染色についてのMFI。
【
図32】(A~C)EL4-mTIGIT腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(A)中央値腫瘍増殖曲線。(B)hIgG1アイソタイプ対照抗体で処理したマウスにおける個々の腫瘍増殖曲線。(C)マウス代替アンタゴニスト抗TIGIT抗体(hIgG1)で処理したマウスにおける個々の腫瘍増殖曲線。(D~F)EL4-GFP腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(D)中央値腫瘍増殖曲線。(E)hIgG1アイソタイプ対照抗体で処理したマウスにおける個々の腫瘍増殖曲線。(F)代替アンタゴニスト抗TIGIT(hIgG1)で処理したマウスにおける個々の腫瘍増殖曲線。
【
図33A】CT26腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(A)抗TIGIT抗体及び抗4-1BB抗体で処理したマウスについての中央値及び個々の腫瘍増殖曲線。
【
図33B】CT26腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(B)抗TIGIT抗体及び抗OX-40抗体で処理したマウスについての中央値及び個々の腫瘍増殖曲線。
【
図33C】CT26腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(C)抗TIGIT抗体及び抗GITR抗体で処理したマウスについての中央値及び個々の腫瘍増殖曲線。
【
図33D】CT26腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(D)抗TIGIT抗体及び抗ICOS抗体で処理したマウスについての中央値及び個々の腫瘍増殖曲線。
【
図34】γδT細胞に対する抗TIGIT抗体の効果を示すグラフである。(A)CMV陽性及び陰性のヒトドナーに由来するPBMCのVδ2
-γδT細胞集団内でのTIGIT陽性細胞の中央値比率及びTIGITのMFIシグナル。(B)単離されたヒト初代Vδ1
+γδT細胞における機能的アッセイにてIFNg分泌を高める抗TIGIT抗体の活性を示すグラフである。(C)PBMC全体における機能的アッセイにてIFNg分泌を高める抗TIGIT抗体の活性を示すグラフである。
【
図35】肝細胞癌腫マウスのモデルにおける単剤療法での抗TIGITmAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。データは(A)中央値腫瘍増殖及び(B)個々の曲線として表されている。
【
図36】皮下膵臓腺癌のマウスモデルにおける単剤療法及び抗4-1BB mAbとの併用での抗TIGIT mAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。データは(A)中央値腫瘍増殖及び(B)個々の曲線として表されている。
【
図37】皮下膵臓腺癌のマウスモデルにおける単剤療法及び抗OX40 mAbとの併用での抗TIGIT mAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。データは(A)中央値腫瘍増殖及び(B)個々の曲線として表されている。
【
図38】皮下膵臓腺癌のマウスモデルにおける単剤療法及び抗GITR mAbとの併用での抗TIGIT mAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。データは(A)中央値腫瘍増殖及び(B)個々の曲線として表されている。
【
図39-1】同所性膵臓腺癌のマウスモデルにおける単剤療法及び抗4-1BB mAbとの併用での抗TIGIT mAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。データは(A)中央値生物発光シグナル、(B)個々の曲線及び(C)生存曲線として表されている。
【
図40】ヒト化肺腫瘍モデルにおける単剤療法での抗TIGIT mAbの抗腫瘍有効性を示すグラフである。(A)ヒトA549肺腫瘍細胞株によるCD155、CD112及びCD113の発現を示す柱状グラフのプロットである。腫瘍増殖に対する抗TIGIT mAbの効果は(A)中央値腫瘍増殖及び(B)個々の曲線として示されている。
【
図41】全PBMCで実施した機能的アッセイにてγδT細胞によるIFNγの分泌を高める抗TIGIT mAbの活性を示すグラフである。
【
図42A】セザリー症候群患者における抗TIGIT mAbのインビトロ細胞傷害性活性を示すグラフである。(A)悪性CD4
+T細胞及び正常なCD4
+T細胞を分離するゲートかけ戦略。
【
図42B】セザリー症候群患者における抗TIGIT mAbのインビトロ細胞傷害性活性を示すグラフである。(B)セザリー症候群患者のPBMCにおける悪性CD4
+、非悪性CD4
+、及びNKの集団に対する抗TIGIT mAbのインビトロ細胞傷害性活性。
【
図43】CT26腫瘍を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を示すグラフである。(A)抗TIGIT、A
2ARアンタゴニスト及び/またはドキソルビシンで処理したマウスについての中央値腫瘍増殖曲線。(B)各処理群についての個々の腫瘍増殖曲線。
【
図44】抗TIGITクローン31282と共に予めインキュベートした細胞にてクローン31282-PEまたは32959-AF647を用いたTIGIT
+集団の検出。(A)抗TIGITクローン31282とのインキュベート及びクローン31282-PEによる検出の後のTIGIT
+細胞の正規化した頻度を示すグラフである。(B)抗TIGITクローン31282とのインキュベート及びクローン32959-AF647による検出の後のTIGIT
+細胞の正規化した頻度を示すグラフである。
【
図45】グラフは様々な希釈のクローン31282を添加し、抗イディオタイプ抗体32869で展開したMSD ELISAを用いて調べたヒト血清試料を表す。放たれた光シグナルは血清試料におけるクローン31282の濃度に比例する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本明細書で使用されるとき、用語「免疫グロブリン」には、それが関連する特異的な免疫反応性を持っていようと持っていまいと、2本の重鎖と2本の軽鎖の組み合わせを有するポリペプチドが含まれる。「抗体」は、対象とする抗原(たとえば、TIGIT)に対する有意な既知の特異的な免疫反応性活性を有するそのような集合体を指す。用語「TIGIT抗体」または「抗TIGIT抗体」はTIGITタンパク質に対する免疫的な特異性を示す抗体を指すのに本明細書で使用される。抗体及び免疫グロブリンは、それらの間での鎖間共有結合の有無にかかわらず、軽鎖及び重鎖を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリンの構造は相対的によく理解されている。
【0050】
総称「免疫グロブリン」は生化学的に区別することができる抗体の5つの異なるクラスを含む。抗体の5つのクラスはすべて本発明の範囲内にあるが、以下の議論は一般に免疫グロブリン分子のIgGクラスに向けられるであろう。IgGに関して、免疫グロブリンは分子量およそ23,000ダルトンの2本の同一軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000~70,000の2本の同一重鎖とを含む。4本の鎖は「Y」構造にてジスルフィド結合によって連結され、その際、軽鎖は「Y」の口元で開始し、重鎖を囲み、可変領域に至るまで続く。
【0051】
抗体の軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)にいずれかとして分類される。各クラスの重鎖はカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかに結合されてもよい。一般に、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合し、2本の重鎖の「尾」部は、免疫グロブリンがB細胞または遺伝子操作された宿主細胞によって生成される場合、共有ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合される。重鎖では、アミノ酸配列はY構造の分岐端でのN末端から各鎖の底でのC末端まで伸びる。当業者は、重鎖がそれらの間での一部のサブクラス(たとえば、γ1~γ4)を伴ってガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類されることを十分に理解するであろう。それはそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEとして抗体の「クラス」を決定するこの鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、等はよく特徴付けられており、機能的な特殊化を付与することが知られている。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの修飾された型は本開示を考えれば技量のある熟練者が容易に認識できるので本発明の範囲内にある。
【0052】
上記で示されているように、抗体の可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合できるようにする。すなわち、抗体のVLドメイン及びVHドメインは結合して三次元の抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この抗体の四元構造がYの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。さらに具体的には、抗原結合部位はVH鎖及びVL鎖のそれぞれにおける3つの相補性決定領域(CDR)によって定義される。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「TIGITタンパク質」または「TIGIT抗原」または「TIGIT」は相互交換可能に使用され、ポリオウイルス受容体(PVR-CD155としても知られる)を結合するヒトT細胞免疫受容体(GenBank受入番号:NM_173799)を指す。TIGITはまたVSIG9、VSTM3またはWUCAMとしても知られる。TIGITに対する言及には、ヒト宿主にて及び/またはヒト培養細胞株の表面にて天然に発現されるネイティブのヒトTIGITタンパク質、と同様にその組換え形態及び断片及び天然にも存在する突然変異体形態が含まれる。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「結合部位」は対象とする標的抗原(たとえば、TIGIT)に選択的に結合することに関与するポリペプチドの領域を含む。結合ドメインは少なくとも1つの結合部位を含む。例となる結合ドメインには抗体の可変ドメインが挙げられる。本発明の抗体分子は単一の結合部位または複数(たとえば、2、3または4)の結合部位を含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用されるとき、指定されたタンパク質(たとえば、TIGIT抗体またはその抗原結合断片)、用語「に由来する」はポリペプチドの起源を指す。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドに由来するポリペプチドまたはアミノ酸の配列はCDR配列またはそれに関連する配列である。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドに由来するアミノ酸配列は隣接しない。たとえば、一実施形態では、1、2、3、4、5または6つのCDRが1つの出発抗体に由来する。一実施形態では、特定の出発ポリペプチドまたはアミノ酸の配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸の配列は出発配列のものまたはその一部と本質的に同一であるアミノ酸配列を有し、その際、その一部は少なくとも3~5のアミノ酸、少なくとも5~10のアミノ酸、少なくとも10~20のアミノ酸、少なくとも20~30のアミノ酸、もしくは少なくとも30~50のアミノ酸から成り、またはさもなければ出発配列にその起源を有すると当業者が認識できる。一実施形態では、出発抗体に由来する1つ以上のCDR配列を変化させて変異体CDR、たとえば、親和性変異体を生じ、その際、変異体CDRの配列はTIGIT結合活性を維持する。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術で定義されている。従って、免疫グロブリンポリペプチドにおける必須ではないアミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸残基で置き換えられてもよい。別の実施形態では、1列のアミノ酸は側鎖ファミリーメンバーの系列及び/または組成で異なる構造的に類似する1列で置き換えることができる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(たとえば、上部、中部及び/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらの変異体または断片の少なくとも1つを含む。一実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、免疫グロブリン重鎖のFc部分(たとえば、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメイン)を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、定常ドメインの少なくとも一部(たとえば、CH2ドメインの全部または一部)を欠いてもよい。特定の実施形態では、定常ドメインの少なくとも1つ及び好ましくはすべてがヒト免疫グロブリン重鎖に由来する。たとえば、好ましい一実施形態では、重鎖部分は完全にヒトのヒンジドメインを含む。他の好ましい実施形態では、重鎖部分は完全にヒトのFc部分(たとえば、ヒト免疫グロブリンに由来するヒンジ、CH2及びCH3のドメインの配列)を含む。
【0058】
特定の実施形態では、重鎖部分の構成要素である定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子に由来する。たとえば、ポリペプチドの重鎖部分はIgG1分子に由来するCH2ドメインとIgG3またはIgG4の分子に由来するヒンジ領域とを含んでもよい。他の実施形態では、定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子の一部を含むキメラドメインである。たとえば、ヒンジはIgG1分子に由来する第1の部分とIgG3またはIgG4の分子に由来する第2の部分とを含んでもよい。上記で述べられているように、重鎖部分の定常ドメインは、それらが天然に存在する(野生型の)免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列で異なるように修飾されてもよい。すなわち、本明細書で開示されている本発明のポリペプチドは重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2またはCH3)及び/または軽鎖定常領域ドメイン(CL)の1つ以上に対する変化または修飾を含んでもよい。例となる修飾には、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「可変領域」及び「可変ドメイン」は相互交換可能に使用され、同等の意味を有するように意図される。用語「可変」は、可変ドメインVH及びVLの特定の部分が抗体間で配列にて広範に異なり、その標的抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性で使用されるという事実を指す。しかしながら、変異性は抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布するわけではない。それは、抗原結合部位の一部を形成するVLドメイン及びVHドメインのそれぞれにおける「超可変ループ」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。Vラムダ軽鎖ドメインの第1、第2及び第3の超可変ループは本明細書ではL1(λ)、L2(λ)及びL3(λ)と呼ばれ、VLドメインにて残基24~33(9、10または11のアミノ酸残基から成るL1(λ))、残基49~53(3つの残基から成るL2(λ))及び残基90~96(5つの残基から成るL3(λ))を含むと定義されてもよい(Morea,et al.,Methods,20,267-279,2000)。Vカッパ軽鎖ドメインの第1、第2及び第3の超可変ループは本明細書ではL1(κ)、L2(κ)及びL3(κ)と呼ばれ、VLドメインにて残基25~33(6、7、8、11、12、13の残基から成るL1(κ))、残基49~53(3つの残基から成るL2(κ))及び残基90~97(6つの残基から成るL3(κ))を含むと定義されてもよい(Morea,et al.,Methods,20,267-279,2000)。VHドメインの第1、第2及び第3の超可変ループは本明細書ではH1、H2及びH3と呼ばれ、VHドメインにて残基25~33(7、8、または9の残基から成るH1)、残基52~56(3または4の残基から成るH2)及び残基91~105(長さで高度に可変のH3)を含むと定義されてもよい(Morea,et al.,Methods,20,267-279,2000)。
【0060】
指示されない限り、用語L1、L2及びL3はそれぞれVLドメインの第1、第2及び第3の超可変ループを指し、Vカッパ及びVラムダのアイソタイプ双方から得られる超可変ループを包含する。用語H1、H2及びH3はそれぞれVHドメインの第1、第2及び第3の超可変ループを指し、γ、ε、δ、αまたはμを含む既知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られる超可変ループを包含する。
【0061】
超可変ループL1、L2、L3、H1、H2及びH3はそれぞれ、以下で定義されるような「相補性決定領域」または「CDR」の部分を含んでもよい。用語「超可変ループ」及び「相補性決定領域」は、超可変ループが(HV)が構造に基づいて定義されているのに対して相補性決定領域(CDR)は配列変異性に基づいて定義され(Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)、HV及びCDRの端は一部のVH及びVLのドメインで異なってもよいので、厳密には同義ではない。
【0062】
VLドメイン及びVHドメインのCDRは通常、以下のアミノ酸:軽鎖可変ドメインにおける残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)ならびに重鎖可変ドメインにおける残基31~35または31~35b(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)を含むと定義することができる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)。従って、HVは、VHの「超可変ループ」に相当するCDR及び本明細書でのそれへの参照の範囲内で構成されてもよく、VLドメインは相当するCDRも包含すると解釈されるべきであり、指示されない限り、逆もまた同様である。
【0063】
可変ドメインのさらに高度に保存された部分は以下で定義されるようにフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブの重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ3つの超可変ループによって接続される大部分βシート構造を導入する4つのFR(それぞれFR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。各鎖における超可変ループは、FRによって非常に近接して他の鎖の超可変ループと結び付けられて抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。抗体の構造的解析は、相補性決定領域によって形成される結合部位の配列と形状の間の関係性を明らかにした(Chothia,et al.,J.Mol.Biol.227,799-817,1992;Tramontano,et al.,J.Mol.Biol,215,175-182,1990)。その高度な配列変異性にもかかわらず、6つのループのうち5つは「正準構造」と呼ばれる主鎖構造の単に小さなレパトアを採用する。これらの構造は、先ず第1にループの長さによって決定され、第2にそのパッキング、水素結合または普通ではない主鎖構造を想定する能力を介して構造を決定するループ及びフレームワークの領域における特定な位置での重要な残基の存在によって決定される。
【0064】
本明細書で使用されるとき、用語「CDR」または「相補性決定領域」は重鎖及び軽鎖のポリペプチド双方の可変領域内で見いだされる不連続の抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域はKabat,et al.,J.Biol.Chem.252,6609-6616,1977によって、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991によって、Chothia,et al.,J.Mol.Biol.196,901-917,1987によって、及びMacCallum,et al.,J.Mol.Biol.262,732-745,1996によって記載されており、その際、互いに対して比べると、定義にはアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれている。上記の引用文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含するアミノ酸残基が比較のために示される。好ましくは、用語「CDR」は配列比較に基づいてKabatによって定義されるようなCDRである。
【0065】
(表1)CDRの定義
1残基の番号付けはKabat,et al,上記の命名法に従う。
2残基の番号付けはChothia,et al,上記の命名法に従う。
3残基の番号付けはMacCallum,et al,上記の命名法に従う。
【0066】
本明細書で使用されるとき、用語「フレームワーク領域」または「FR領域」には、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない(たとえば、CDRのKabat定義を用いて)アミノ酸残基が含まれる。従って、可変領域フレームワークは長さ約100~120の間のアミノ酸であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを含む。重鎖可変ドメインの具体例については及びKabat,et alによって定義されるようなCDRについては、フレームワーク1はアミノ酸1~30を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク2はアミノ酸36~49を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク3はアミノ酸66~94を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク4はアミノ酸103から可変領域の末端までの可変領域のドメインに相当する。軽鎖についてのフレームワーク領域は軽鎖可変領域CDRのそれぞれによって同様に分離される。同様に、Chothia,et alまたはMaCallum,et alによるCDRの定義を用いて、フレームワーク領域の境界は上記に記載されているようにそれぞれのCDR末端によって分離される。好ましい実施形態では、CDRはKabatによって定義される。
【0067】
天然に存在する抗体では、抗体は水性環境にてその三次元構造を前提とするので、各単量体抗体に存在する6つのCDRは、特異的に位置づけられて抗原結合部位を形成するアミノ酸の短い、不連続の配列である。重鎖及び軽鎖の可変ドメインの残りの部分はアミノ酸配列で分子間変異性が少なく、フレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は大部分βシート構造を採用し、CDRは接続するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。従って、これらのフレームワーク領域は、鎖間の非共有結合の相互作用によって正しい方向性で6つのCDRを位置づけることを提供する足場を形成するように作用する。位置づけられたCDRによって形成される抗原結合部位は免疫反応性の抗原上でのエピトープに対する表面相補性を定義する。この相補性の表面が抗体の免疫反応性抗原エピトープへの非共有結合を促進する。CDRの位置は当業者によって容易に定義され得る。
【0068】
本明細書で使用されるとき、用語「断片」はインタクトのまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。用語「抗原結合断片」は抗原を結合するまたは抗原結合(すなわち、TIGITへの特異的な結合)についてインタクトの抗体(すなわち、それらが由来したインタクトの抗体)と競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド断片を指す。本明細書で使用されるとき、抗体分子の、用語「断片」には、抗体の抗原結合断片、たとえば、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、及び単一ドメイン抗体断片(DAb)が挙げられる。断片は、たとえば、インタクトのまたは完全な抗体または抗体鎖の化学処理もしくは酵素処理を介して、または組換え手段によって得ることができる。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「価数」はポリペプチドにおける潜在的な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は1つの標的分子または標的分子の特異的な部位に特異的に結合する。ポリペプチドが1を超える標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は同一のまたは異なる分子を特異的に結合してもよい(たとえば、異なるリガンドまたは異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに結合してもよい)。主題の結合分子はTIGITに特異的な少なくとも1つの結合部位を有する。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「特異性」は所与の標的、たとえば、TIGITを結合する(たとえば、それと免疫反応性の)能力を指す。ポリペプチドは単一特異性であってもよく、標的を特異的に結合する1つ以上の結合部位を含有してもよく、またはポリペプチドは多重特異性であってもよく、同一のまたは異なる標的を特異的に結合する2以上の結合部位を含有してもよい。一実施形態では、本発明の抗体は1を超える標的に特異的である。たとえば、一実施形態では、本発明の多重特異性結合分子はTIGIT及び第2の標的分子を結合する。この文脈で、第2の標的分子はTIGIT以外の分子である。
【0071】
本明細書で使用されるとき、ポリペプチドに関して、用語「合成の」には、天然に存在しないアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。たとえば、天然に存在するポリペプチドの修飾された形態である(たとえば、付加、置換または欠失のような突然変異を含む)、または自然界ではそれが天然に連結しない第2のアミノ酸配列(天然に存在してもよいし、しなくてもよい)にアミノ酸の直鎖配列で連結される第1のアミノ酸配列(天然に存在してもよいし、しなくてもよい)を含む天然に存在しないポリペプチド。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「操作された」には、合成手段による(たとえば、組換え法、インビトロペプチド合成による、ペプチドの酵素的もしくは化学的なカップリング、またはこれらの技法の一部の組み合わせによる)核酸分子またはポリペプチド分子の操作を指す。好ましくは、本発明の抗体は、1つ以上の特性、たとえば、抗原結合、安定性/半減期またはエフェクター機能を改善するように操作されている。
【0073】
本明細書で使用されるとき、用語「修飾された抗体」には、天然に存在しないように変化させている抗体、たとえば、2つの完全な重鎖ではない少なくとも2つの重鎖部分を含む抗体(たとえば、ドメインを欠失させた抗体またはミニボディ)の合成形態;2以上の異なる抗原または単一抗原の異なるエピトープに結合するように変化させた抗体の多重特異性(たとえば、二重特異性、三重特異性、等)形態;scFv分子等に連結された重鎖分子が含まれる。scFv分子は当該技術で既知であり、たとえば、米国特許第5,892,019号に記載されている。加えて、用語「修飾された抗体」には、抗体の多価形態(たとえば、三価、四価、等、同じ抗原の3以上のコピーに結合する抗体)が含まれる。別の実施形態では、本発明の修飾された抗体はCH2ドメインを欠く少なくとも1つの重鎖部分を含み、且つ受容体リガンド対の一方のメンバーの結合部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0074】
用語「修飾された抗体」は本発明のTIGIT抗体のアミノ酸配列変異体を指すのに本明細書で使用されてもよい。本発明のTIGIT抗体を修飾して、それが由来したTIGIT抗体と比べてアミノ酸配列で異なる変異体TIGIT抗体を作り出してもよい。たとえば、「必須ではない」アミノ酸残基にて保存的な置換または変化につながるヌクレオチドまたはアミノ酸の置換を行ってもよい(たとえば、CDR及び/またはフレームワークの残基にて)。アミノ酸置換は天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置き換えを含むことができる。
【0075】
「抗体断片」は完全長の抗体の一部、一般に、その抗原結合ドメインまたは可変ドメインを含む。抗原結合抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、二重特異性Fab’、及びFv断片、ジアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、単鎖可変断片(scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる(その内容が参照によって本明細書に組み入れられるHolliger及びHudson,Nature Biotechnol.23:1126-1136,2005を参照のこと)。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「親和性変異体」は本発明の参照TIGIT抗体と比べてアミノ酸配列で1つ以上の変化を示す変異体抗体を指し、その際、親和性変異体は参照抗体と比べてTIGITに対して変化した親和性を示す。好ましくは、親和性変異体は、参照TIGIT抗体と比べてTIGITに対して改善された親和性を示す。改善は、TIGITに対して低いKDまたはTIGITに対して遅いオフ速度として明らかであってもよい。親和性変異体は通常、参照TIGIT抗体と比べてCDRにおけるアミノ酸配列で1つ以上の変化を示す。そのような置換は、天然に存在するアミノ酸残基または天然に存在しないアミノ酸残基であってもよい異なるアミノ酸残基による、CDRにおける所与の位置に存在する元々のアミノ酸の置き換えを生じてもよい。アミノ酸置換は保存的であってもよいし、または非保存的であってもよい。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「親和性」または「結合親和性」は抗体結合の文脈で当該技術における普通の意味に基づいて理解されるべきであり、抗原と抗体またはその抗原結合断片における結合部位との間での結合の強度及び/または安定性を反映する。本明細書で提供されている抗TIGIT抗体はヒトTIGITへの高親和性の結合を特徴とする。TIGITに対する結合親和性は当業者に既知の標準の技法を用いて評価されてもよい。
【0078】
結合親和性は特定の抗体についての解離定数またはKDとしても表現されてもよい。KD値が小さければ小さいほど、抗体とその標的抗原の間の結合相互作用は強い。一実施形態では、定義されたVH/VLの対合を含むFabクローンの結合親和性は、当該技術で既知の方法を用いて、たとえば、添付の実施例に記載されているように、ForteBio(商標)システムによって、MSD溶液均衡滴定(SET)によって、または表面プラスモン共鳴によって、たとえば、Biacore(商標)システムを用いて評価されてもよい。本発明に係る抗体のFab断片は通常、1×10-10~5×10-8M、任意で7×10-10~4×10-8Mの範囲でのForteBio(商標)によって測定されるTIGITに対するKDを示す。この範囲内のKDはFab及び相当する二価のmAbがhTIGITに対する高親和性結合を示す指標として解釈されてもよい。述べられた範囲内でhTIGITに対するKDを(個々に)示す2つのFabを含む二価のmAbもまたhTIGITに対して高親和性結合を示すと解釈される。1×10-11~5×10-9、任意で2×10-11~1×10-9の範囲でのMSDのKDはhTIGITに対する高親和性結合を示す指標として解釈されてもよい。本発明に係る抗体のFab断片は通常、1×10-10~1×10-9M、任意で1×10-10~7×10-10M、任意で2×10-10~7×10-10Mの範囲でのBiacore(商標)によって測定されるTIGITに対するKDを示す。この範囲内でのKDはFab及び相当する二価のmAbがhTIGITに対する高親和性結合を示す指標として解釈されてもよい。
【0079】
ヒトTIGITに対する結合親和性は添付の実施例に記載されているように細胞に基づく系を用いても評価することもでき、その際、mAbは、たとえば、ELISAまたはフローサイトメトリーを用いて哺乳類細胞(TIGITを発現している細胞株またはエクスビボ細胞)への結合について調べられる。TIGITに対する高親和性は、たとえば、実施例10に記載されているもののようなフローサイトメトリー(たとえば、FACS)解析により0.5nMを超えるEC50によって示されてもよい。特定の実施形態では、本発明の抗体は0.5nMを超える、任意で0.2nMを超える細胞結合EC50を示す。EC50として表現される親和性の細胞に基づく測定は好ましくは、hTIGITを発現しているJurkat細胞またはヒト末梢血単核細胞(PBMC)に由来する初代CD8T細胞を用いて測定される。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「Treg細胞」または単に「Treg」は抑制性CD4+T細胞―すなわち、従来のT細胞(CD8またはCD4のT細胞)のエフェクター機能(複数可)を低下させるT細胞を指す。Tregは当該技術で既知の方法に従って、たとえば、高レベルのCD25及び低レベルのCD127またはCD127の非存在を発現するCD4細胞を特定するフローサイトメトリーを用いて特定することができる。
【0081】
上記でまとめられているように、本発明は少なくともある程度、TIGITに結合する抗体及びその抗原結合断片に関する。本発明に係るTIGIT抗体及び抗体断片の特性及び特徴が今やさら詳細に記載されるであろう。
【0082】
抗TIGIT抗体
態様の1つでは、本発明は、ヒトTIGITに結合し、且つ
図1に示すHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列から選択される重鎖CDR1(HCDR1)と重鎖CDR2(HCDR2)と重鎖CDR3(HCDR3)とを含む重鎖可変ドメインを含み、さらに
図2に示すLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列から選択される軽鎖CDR1(LCDR1)と軽鎖CDR2(LCDR2)と軽鎖CDR3(LCDR3)とを含む軽鎖可変ドメインを含む単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。すなわち、本発明は、ヒトTIGITに結合し、且つ重鎖CDR1(HCDR1)と重鎖CDR2(HCDR2)と重鎖CDR3(HCDR3)とを含む重鎖可変ドメインを含み、その際、
(i)HCDR1は配列番号1、4、7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40、43、271、274、及び277から成る群から選択され;
(ii)HCDR2は配列番号2、5、8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41、44、272、275、及び278から成る群から選択され;
(iii)HCDR3は配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、273、276、及び279から成る群から選択され;
且つさらに軽鎖CDR1(LCDR1)と軽鎖CDR2(LCDR2)と軽鎖CDR3(LCDR3)とを含む軽鎖可変ドメインを含み、その際、
(iv)LCDR1は配列番号46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、283、286、及び289から成る群から選択され;
(v)LCDR2は配列番号47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83、86、89、284、287、及び290から成る群から選択され;
(vi)LCDR3は配列番号48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、285、288、及び291から成る群から選択される、
単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0083】
VLドメインと対合して抗原(ヒトTIGIT)のための結合部位を形成するVHドメインを含む所与の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、6つのCDR:可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変軽鎖CDR3(LCDR3)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)、及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組み合わせを含むであろう。上記でリストにされたCDRの配列群から選択される6つのCDRの多数の異なる組み合わせが許容され、本発明の範囲内であるが、6つのCDRの特定の組み合わせが特に好ましく;それらはヒトTIGITに対して高親和性結合を示す単一mAb内での「ネイティブ」の組み合わせである。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含み、その際、組み合わせは、
図2における相当する抗体に由来するLCDRと一緒に
図1における各抗体に由来するHCDRによって形成される組み合わせの群から選択される。
【0084】
すなわち、特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含み、その際、組み合わせは、
(i)配列番号1を含むHCDR1、配列番号2を含むHCDR2、配列番号3を含むHCDR3、配列番号46を含むLCDR1、配列番号47を含むLCDR2、及び配列番号48を含むLCDR3;
(ii)配列番号4を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、配列番号6を含むHCDR3、配列番号49を含むLCDR1、配列番号50を含むLCDR2、及び配列番号51を含むLCDR3;
(iii)配列番号7を含むHCDR1、配列番号8を含むHCDR2、配列番号9を含むHCDR3、配列番号52を含むLCDR1、配列番号53を含むLCDR2、及び配列番号54を含むLCDR3;
(iv)配列番号10を含むHCDR1、配列番号11を含むHCDR2、配列番号12を含むHCDR3、配列番号55を含むLCDR1、配列番号56を含むLCDR2、及び配列番号57を含むLCDR3;
(v)配列番号13を含むHCDR1、配列番号14を含むHCDR2、配列番号15を含むHCDR3、配列番号58を含むLCDR1、配列番号59を含むLCDR2、及び配列番号60を含むLCDR3;
(vi)配列番号16を含むHCDR1、配列番号17を含むHCDR2、配列番号18を含むHCDR3、配列番号61を含むLCDR1、配列番号62を含むLCDR2、及び配列番号63を含むLCDR3;
(vii)配列番号19を含むHCDR1、配列番号20を含むHCDR2、配列番号21を含むHCDR3、配列番号64を含むLCDR1、配列番号65を含むLCDR2、及び配列番号66を含むLCDR3;
(viii)配列番号22を含むHCDR1、配列番号23を含むHCDR2、配列番号24を含むHCDR3、配列番号67を含むLCDR1、配列番号68を含むLCDR2、及び配列番号69を含むLCDR3;
(ix)配列番号25を含むHCDR1、配列番号26を含むHCDR2、配列番号27を含むHCDR3、配列番号70を含むLCDR1、配列番号71を含むLCDR2、及び配列番号72を含むLCDR3;
(x)配列番号28を含むHCDR1、配列番号29を含むHCDR2、配列番号30を含むHCDR3、配列番号73を含むLCDR1、配列番号74を含むLCDR2、及び配列番号75を含むLCDR3;
(xi)配列番号31を含むHCDR1、配列番号32を含むHCDR2、配列番号33を含むHCDR3、配列番号76を含むLCDR1、配列番号77を含むLCDR2、及び配列番号78を含むLCDR3;
(xii)配列番号34を含むHCDR1、配列番号35を含むHCDR2、配列番号36を含むHCDR3、配列番号79を含むLCDR1、配列番号80を含むLCDR2、及び配列番号81を含むLCDR3;
(xiii)配列番号37を含むHCDR1、配列番号38を含むHCDR2、配列番号39を含むHCDR3、配列番号82を含むLCDR1、配列番号83を含むLCDR2、及び配列番号84を含むLCDR3;
(xiv)配列番号40を含むHCDR1、配列番号41を含むHCDR2、配列番号42を含むHCDR3、配列番号85を含むLCDR1、配列番号86を含むLCDR2、及び配列番号87を含むLCDR3;
(xv)配列番号43を含むHCDR1、配列番号44を含むHCDR2、配列番号45を含むHCDR3、配列番号88を含むLCDR1、配列番号89を含むLCDR2、及び配列番号90を含むLCDR3;
(xvi)配列番号271を含むHCDR1、配列番号272を含むHCDR2、配列番号273を含むHCDR3、配列番号283を含むLCDR1、配列番号284を含むLCDR2、及び配列番号285を含むLCDR3;
(xvii)配列番号274を含むHCDR1、配列番号275を含むHCDR2、配列番号276を含むHCDR3、配列番号286を含むLCDR1、配列番号287を含むLCDR2、及び配列番号288を含むLCDR3;
(xviii)配列番号277を含むHCDR1、配列番号278を含むHCDR2、配列番号279を含むHCDR3、配列番号289を含むLCDR1、配列番号290を含むLCDR2、及び配列番号291を含むLCDR3
から成る群から選択される。
【0085】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、327、329、及び331、ならびにそれらに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含み;任意で配列番号212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、328、330、及び332のアミノ酸配列、ならびにそれらに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0086】
上記でリストにされたVHドメイン及びVLドメインの配列群から選択されるVHドメイン及びVLドメインの考えられる対合すべてが許容でき、本発明の範囲内にあるが、特定の組み合わせのVH及びVLが特に好ましく;それらはヒトTIGITに対する高親和性結合を示す単一mAb内の「ネイティブの」組み合わせである。
【0087】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの組み合わせを含み、その際、組み合わせは
図5における各抗体に由来するVLまたはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列と一緒に、
図5における同じ抗体に由来するVHまたはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列によって形成される組み合わせの群から選択される。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの組み合わせを含み、その際、組み合わせは、
(i)配列番号211のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号212のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(ii)配列番号213のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号214のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(iii)配列番号215のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号216のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(iv)配列番号217のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号218のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(v)配列番号219のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号220のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(vi)配列番号221のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号222のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(vii)配列番号223のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号224のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(viii)配列番号225のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号226のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(ix)配列番号227のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号228のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(x)配列番号229のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号230のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xi)配列番号231のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号232のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xii)配列番号233のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号234のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xiii)配列番号235のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号236のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xiv)配列番号237のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号238のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xv)配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xvi)配列番号327のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号328のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;
(xvii)配列番号329のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号330のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;ならびに
(xviii)配列番号331のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号332のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
から成る群から選択される。
【0088】
上記でリストにした特定のVH/VLの組み合わせのそれぞれについては、引用されているVHドメイン配列に対して少なくとも90%、92%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するVHドメインを引用されているVLドメイン配列に対して少なくとも90%、92%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するVLドメインと組み合わせることも許容でき、本発明の範囲内である。VHドメインのアミノ酸配列が所与の参照VH配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態は、それにもかかわらず、参照配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と同一である重鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。同様に、VLドメインのアミノ酸配列が所与の参照配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態はそれにもかかわらず、参照配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と同一である軽鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域の範囲内でアミノ酸配列の変異を示す。
【0089】
先行する段落では、及び本明細書のどこか他では、抗体/抗原結合断片の構造は引用された参照配列との(所与の配列番号との)%配列同一性に基づいて定義される。この文脈で、2つのアミノ酸配列の間での%配列同一性は最適な方法で並べたこれら2つの配列を比較することによって決定されてもよく、その際、比較されるアミノ酸配列はこれら2つの配列間の最適な配列比較のために参照配列に関して付加または欠失を含むことができる。同一性の比率は、2つの配列間でアミノ酸残基が同一である同一の位置の数を決定し、同一の位置のこの数を比較ウインドウにおける位置の総数で割り、これら2つの配列間の同一性の比率を得るために、得られた結果に100を乗じることによって算出される。通常、比較ウインドウは比較される配列の完全長に相当する。たとえば、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで利用できるBLASTプログラムである「BLAST2配列」(Tatusova,et al,“Blast 2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”,FEMS.Microbiol.Lett.174:247-250)を使用することが可能であり、使用されるパラメーターは初期設定により与えられるもの(特にパラメーターについては、「開放ギャップペナルティ」が5及び「伸長ギャップペナルティ」が2;選択されるマトリクスは、たとえば、プログラムによって提案されるマトリクス「BLOSUM62」)であり、比較される2つの配列間の同一性の比率はプログラムによって直接算出される。参照配列に対するクエリ配列の配列同一性を決定することは、当業者の能力の範囲内であり、BLAST(商標)のような市販の解析ソフトウェアを用いて実施することができる。
【0090】
本発明の態様すべての特定の好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含んでもよく、その際、HCDR1は配列番号16を含み、HCDR2は配列番号17を含み、HCDR3は配列番号18を含み、LCDR1は配列番号61を含み、LCDR2は配列番号62を含み、LCDR3は配列番号63を含む。
【0091】
特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号221として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよく、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号222として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは本明細書で提供されている抗体31282のVHドメイン及びVLドメインである。
【0092】
本明細書で提供されている抗体31282は抗体29489に由来する。抗体31282はVHのFR4領域におけるアミノ酸116でのM-T置換によって抗体29489から作出された。この置換は、抗体の潜在的な酸化部位を取り除き、それによって機能に影響を及ぼすことなく安定性を改善すると理解されている。従って、抗体31282及び29489は、同一のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列を共有し、フレームワークでのみで異なる。
【0093】
従って、本発明の抗体または抗原結合断片の特定の実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号219として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよく、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号220として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは本明細書で提供されている抗体29489のVHドメイン及びVLドメインである。
【0094】
VHドメインのアミノ酸配列が配列番号221または219として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態は、それにもかかわらず、配列番号221及び219のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3(それぞれ配列番号16、17及び18)と同一である重鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。同様に、VLドメインのアミノ酸配列が配列番号222または220として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態は、それにもかかわらず、配列番号222及び220のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3(それぞれ配列番号61、62及び63)と同一である軽鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。
【0095】
【0096】
本明細書に記載されている及び
図1~5にて示された配列を有する例となるTIGIT抗体は5つの親型抗体クローンから発現させた。表2は本明細書に記載されている抗体の系列をまとめている。ナイーブな親型ヒト抗TIGIT抗体は酵母で発現させ、TIGITに対する高い機能的活性を示すものを選択し(灰色の列、26...と名付けた)、親和性成熟を受けさせた。選択した親和性成熟した抗体を次いで哺乳類細胞で発現させた(各親型の下の白色の列、29...または3....と名付けた)。加えて、抗体31282はVHのFR4領域におけるアミノ酸116でのM-T置換によって抗体29489から作出された。この置換は、抗体の潜在的な酸化部位を取り除き、それによって機能に影響を及ぼすことなく安定性を改善すると理解されている。加えて、抗体31288はVHのFR1領域におけるアミノ酸2でのV-L置換及びVHのFR4領域におけるアミノ酸120でのM-T置換によって抗体29494から作出された。V-L置換はVH4-39の生殖系列の配列を復元すると理解され、M-T置換は抗体の潜在的な酸化部位を取り除き、それによって機能に影響を及ぼすことなく安定性を改善すると理解されている。
【0097】
第2世代の抗体は各親型抗体よりも高い親和性を示す。
【0098】
特定の実施形態では、本発明は、VHドメインがVH3-07、VH3-30、VH1-46、VH4-0B、VH4-39、VH1-69、VH3-09、VH3-33、VH3-30から選択されるヒトV領域生殖系列の配列に由来する抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒトV領域生殖系列VH1-46に由来するVHドメインを含む。
【0099】
重鎖可変領域の配列がその他よりも所与の生殖系列に由来する可能性が高いのであれば、VHドメインは特定のV領域生殖系列の配列に「由来する」。
【0100】
TIGITエピトープ
本発明はまた、残基Q56及びI109を含むエピトープにてヒトTIGITに結合する抗体またはその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は少なくとも残基Q56、N58及びI109にてヒトTIGITを結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は残基Q56、N58及びI109及び任意でE60、I68、L73及びH76の1つ以上を含むエピトープにてヒトTIGITを結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76、及びI109を含むエピトープにてヒトTIGITを結合する。
【0101】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はTIGITの残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76、及びI109から成るエピトープにてヒトTIGITを結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は抗体31282と同じエピトープを結合する。
【0102】
抗体または抗原結合断片が示されたTIGIT残基を含むヒトTIGITのエピトープを結合する場合、抗体はこれらの残基及び任意でTIGITの他の残基のそれぞれを結合する。抗体または抗原結合断片がTIGITの残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76、及びI109から成るヒトTIGITのエピトープを結合する場合、抗体はこれらの残基のそれぞれを結合し、TIGITの他の残基を結合しない。
【0103】
TIGITに結合する際、示されたTIGITのアミノ酸残基(複数可)に接触すれば、抗体または抗原結合断片は所与のエピトープにてヒトTIGITに結合する。本明細書で使用されるとき、抗体・TIGIT結合によって形成されるタンパク質複合体にて、残基が以下の基準:(i)0.3キロカロリー/モルを超える算出された結合自由エネルギーの寄与を有する、(ii)X線構造にてすべての残基の平均B因子よりも低い実験的な平均B因子を有する、(iii)4.0オングストローム以下の距離で少なくとも3対の重原子を抗体原子と原子間接触させる、(iv)溶媒に曝されただけの水素結合またはイオン相互作用を行わない、(v)それが非芳香族の極性残基(Asn、Gin、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、またはArg)であれば、抗体との少なくとも1つの水素結合またはイオン相互作用を行う、のそれぞれを満たせば、抗体はTIGITの残基に接触する。結合自由エネルギーの算出は当業者の能力の範囲内である。好ましくは、結合自由エネルギーは経験的力場、好ましくはFoldXを用いて算出される。FoldXは当業者によく知られており、http://foldxsuite.crg.eu/にて公的に利用できる。FoldXを用いた結合自由エネルギーの算出は、参照によって本明細書に組み入れられるGuerois,et al.J.Mol.Biol.2002;320(2):369-87にも記載されている。当業者によく知られているように、重原子はすべての非水素原子(C、N、O、Sを含む)である。
【0104】
従って、本発明はまた、少なくとも残基Q56及びI109にてヒトTIGITに接触する抗体またはその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は少なくとも残基Q56、N58、及びI109にてヒトTIGITに接触する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも残基Q56、N58及びI109及び任意で残基E60、I68、L73及びH76の1つ以上にてヒトTIGITに接触する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76、及びI109にてヒトTIGITに接触する。
【0105】
特定のそのような実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76、及びI109でのみヒトTIGITに接触する。
【0106】
たとえば、実施例23に記載されているもののようなX線結晶学を含む、抗体またはその抗原結合断片がTIGITのどの残基に接触するのかを決定する手段は当業者によく知られている。
【0107】
提供されるのはまた、本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片と同じエピトープに結合する単離された抗体またはその抗原結合断片である。
【0108】
抗体のサブタイプ
TIGIT抗体はVHドメイン及びVLドメインの双方が存在する種々の異なる実施形態を取ることができる。用語「抗体」は本明細書では最も広い意味で使用され、それらがヒトTIGITタンパク質に対する適正な免疫的特異性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)を包含するが、これらに限定されない。用語「モノクローナル抗体」は本明細書で使用されるとき、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、軽微な量で存在してもよい天然に存在する考えられる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に向けられる。さらに、抗原上の異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を通常含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基またはエピトープに向けられる。
【0109】
非限定の実施形態では、本明細書で提供されているTIGIT抗体は、そのアミノ酸配列は完全にまたは実質的にヒトであるCH1ドメイン及び/またはCLドメインを含んでもよい。TIGIT抗体がヒトでの治療用途を対象とするのであれば、抗体の定常領域全体または少なくともその一部は完全にまたは実質的にヒトのアミノ酸配列を有することが典型的である。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(及び存在すればCH4ドメイン)の1つ以上またはその組み合わせはそのアミノ酸配列に関して完全にまたは実質的にヒトであってもよい。そのような抗体はヒトアイソタイプのものであってもよく、ヒトIgG4及びIgG1が特に好ましい。
【0110】
有利なことに、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCLドメイン(及び存在するならばCH4ドメイン)はすべて完全にまたは実質的にヒトのアミノ酸配列を有してもよい。ヒト化抗体またはキメラ抗体または抗体断片の定常領域の文脈では、用語「実質的にヒト」はヒト定常領域との少なくとも90%、または少なくとも92%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を指す。この文脈での用語「ヒトアミノ酸配列」は、生殖系列の遺伝子、再構成された遺伝子及び体細胞変異した遺伝子を含むヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を指す。そのような抗体は任意のヒトアイソタイプのものであってもよく、ヒトのIgG4及びIgG1が特に好ましい。
【0111】
提供されるのはまた、ヒト配列に関して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によって変えられている「ヒト」配列の定常ドメインを含むTIGIT抗体である。
【0112】
本明細書で提供されているTIGIT抗体は任意のアイソタイプのものであってもよい。ヒトでの治療用途を対象とする抗体は通常、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの型のものであり、IgG型のものが多く、その場合、それらは4つのサブクラスIgG1、IgG2a及びb、IgG3またはIgG4のいずれかに属することができる。これらのサブクラスのそれぞれの範囲内で、Fc部分内で1つ以上のアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失を行うこと、または、たとえば、Fc依存性の機能性を高めるまたは低下させるために他の構造的修飾を行うことが許される。
【0113】
特定の好ましい実施形態では、本明細書で提供されているTIGIT抗体はIgG抗体である。特定の実施形態では、本発明に係る抗体はIgG1抗体である。特定の代替の実施形態では、本発明に係る抗体はIgG4抗体である。
【0114】
IgG4抗体はFabアームの交換(FAE)を受けることが知られており、IgG4抗体の予測できない薬物動態特性を生じることができる。FAEはヒンジ領域におけるS228P突然変異によって阻止されることが示されている(Silva,et al.J.Biol.Chem.2015,Feb.27;290(9):5462-5469)。従って、本発明に係る抗体がIgG4抗体である特定のそのような実施形態では、抗体は突然変異S228P―すなわち、228位(EU番号付けに従って)におけるセリンからプロリンへの突然変異を含む。
【0115】
非限定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失が重鎖及び/または軽鎖の定常領域内、特にFc領域内で行われてもよいことが熟考される。アミノ酸置換は、異なる天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないまたは修飾されたアミノ酸によって置換されたアミノ酸の置き換えを生じてもよい。他の構造的修飾、たとえば、グリコシル化パターンの変化(たとえば、N連結またはO連結のグリコシル化部位の付加または欠失による)も許される。TIGIT抗体の目的とする用途に応じて、Fc受容体への結合特性に関して本発明の抗体を修飾して、たとえば、エフェクター機能を調節することが望ましくてもよい。
【0116】
特定の実施形態では、TIGIT抗体は所与の抗体アイソタイプ、たとえば、ヒトIgG1のFc領域を含んでもよく、それはその抗体アイソタイプに自然に関連する1つ以上の抗体のエフェクター機能を低下させるまたは実質的に排除するために修飾される。
【0117】
本明細書で実証されているように、細胞溶解のエフェクター機能を持つ抗体はTreg細胞集団を減らすことで有効であり得るが、驚くべきことに従来のエフェクターT細胞集団に有害効果を及ぼさない。この選択性は抗腫瘍エフェクターT細胞を保持しながら、Tregの抑制性効果のさらに強力な阻害を可能にすることができる。
【0118】
従って、特定の代替の実施形態では、TIGIT抗体はその抗体アイソタイプに自然に関連する抗体のエフェクター機能の1つ以上を保持する。たとえば、本発明のTIGIT抗体はADCC機能性を保持するIgG1抗体であってもよい。さらなる実施形態では、TIGIT抗体は所与の抗体アイソタイプ、たとえば、ヒトIgG1のFc領域を含んでもよく、それはその抗体アイソタイプに自然に関連する1つ以上の抗体エフェクター機能を高めるために修飾される。この文脈で、「抗体のエフェクター機能」には、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞性貪食(ADCP)の1つ以上またはすべてが含まれる。
【0119】
特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は修飾された抗体である。
【0120】
特定の実施形態では、提供されるのは、TIGITに特異的な第1のアームと第2の標的に特異的な第2のアームとを含む二重特異性抗体である。好ましい実施形態では、第2の標的は免疫チェックポイント分子である。特定の実施形態では、第2の標的はOX40である。特定の実施形態では、第2の標的はICOSである。特定の実施形態では、第2の標的はGITRである。特定の実施形態では、第2の標的は4-1BBである。特定の実施形態では、第2の標的はPD-1である。特定の実施形態では、第2の標的はPD-L1である。特定の実施形態では、TIGITに特異的な第1のアームは本発明に係る抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列の組み合わせを含む。特定の実施形態では、第1のアームは重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、その際、HCDR1は配列番号16を含み、HCDR2は配列番号17を含み、HCDR3は配列番号18を含み、LCDR1は配列番号61を含み、LCDR2は配列番号62を含み、LCDR3は配列番号63を含む。
【0121】
本明細書で開示されているTIGIT抗体と「交差競合する」モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本TIGIT抗体が結合する部位(複数可)と同一であるまたは重複する部位(複数可)にてヒトTIGITを結合するものである。競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、たとえば、抗体競合アッセイを介して特定することができる。たとえば、精製したまたは部分精製したヒトTIGITの試料を固形支持体に結合することができる。次いで、本発明の抗体化合物またはその抗原結合断片及びそのような本発明の抗体化合物と競合することができると疑われるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を加える。2つの分子の一方が標識される。標識した化合物及び未標識の化合物がTIGIT上の別々の異なる部位に結合するのであれば、疑われる競合化合物が存在しようと存在すまいと、標識した化合物は同じレベルに結合するであろう。しかしながら、相互作用の部位が同一であるならば、または重複するならば、未標識の化合物は競合するであろうし、抗原に結合する標識した化合物の量は低下するであろう。たとえあったとしても未標識の化合物が非常にわずかに過剰に存在するならば、標識した化合物は結合するであろう。
【0122】
本発明の目的で、競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本抗体化合物のTIGITへの結合を約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%低下させるものである。そのような競合アッセイを実施する手順の詳細は当該技術で周知であり、たとえば、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,New York,1988,567-569,1988,ISBN 0-87969-314-2に見いだすことができる。そのようなアッセイは精製抗体を用いて定量的に行うことができる。標準曲線はそれ自体に対して1つの抗体を滴定することによって確立され、すなわち、同じ抗体を標識及び競合相手の双方に使用する。プレートへの標識分子の結合を阻害する未標識の競合モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の能力が滴定される。結果をプロットし、結合阻害の所望の程度を達成するのに必要な濃度を比較する。
【0123】
本発明の抗体はTIGITに対して高親和性を示し、CD155と競合する
特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片はヒトTIGITに対して高親和性を示す。特定の実施形態では、本発明に係る抗体のFab断片は1×10-10~5×10-8M、任意で7×10-10~4×10-8Mの範囲のForteBio(商標)によって測定されるTIGITに対するKDを示す。特定の実施形態では、本発明に係る抗体は1×10-11~5×10-9M、任意で2×10-11~1×10-9Mの範囲のMSDのKDを示す。特定の実施形態では、本発明に係る抗体のFab断片は1×10-10~1×10-9M、任意で1×10-10~7×10-10M、任意で2×10-10~7×10-10Mの範囲でBiacore(商標)によって測定されるTIGITに対するKDを示す。
【0124】
【0125】
実施例で実証されているように、抗体31282は驚くべきことに、トランスジェニック細胞にて発現されたTIGITに対して高親和性を示す。従って、特定の実施形態では、本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片は0.5nM未満のヒトTIGITに対する結合EC50を示す。好ましいそのような実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.05~約0.4nM、好ましくは約0.05~約0.3nM、好ましくは約0.05~約0.2nM、好ましくは約0.05~0.15nMの結合EC50を示す。特定の好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は約0.1nMのヒトTIGITに対する結合EC50を示す。好ましい実施形態では、抗体は抗体31282のCDRを含む。好ましくは、EC50は実施例18に記載されているようにヒトTIGITを発現しているJurkat細胞を用いて決定される。特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、マウスTIGIT及び/またはカニクイザルTIGITと交差反応する。
【0126】
「29...」第2世代の抗体は高度に機能的な親型抗体の親和性成熟した子孫なので、それらは親型抗体と少なくとも類似のまたは同等の機能的特性を示すことが期待され、逆もまた同様である。
【0127】
本明細書に記載されているように、特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、CD8T細胞によって発現されるTIGIT及びTreg細胞によって発現されるTIGITに対して同等の親和性を有する。本明細書で使用されるとき、CD8T細胞に対する親和性がTreg細胞に対する親和性の0.5~1.5倍の範囲にあれば、抗体または抗原結合断片は、CD8T細胞及びTreg細胞に対して「同等の親和性」を有する。たとえば、0.03nMのTreg細胞に対する親和性を示す、CD8T細胞及びTreg細胞に対して同等の親和性を有する抗体は0.015~0.045nMの範囲でのCD8T細胞に対する親和性を示すことになる。
【0128】
表3は本発明の抗TIGIT抗体の親和性特性のまとめを提供し、灰色のマス目は親型抗体のクローンを示し、各系列の第2世代及び第3世代の抗体は各親型抗体のすぐ下に示されている(表2も参照のこと)。
【0129】
実施例で実証されているように、抗体31282は驚くべきことに、ヒト初代CD8+T細胞上に発現されるTIGITに対する高い親和性を示す。従って、特定の実施形態では、本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、0.5nM未満のヒトTIGITに対する結合EC50を示す。好ましいそのような実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.05~約0.4nM、好ましくは約0.1~約0.3nMの結合EC50を示す。特定の好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.2nMのヒトTIGITに対する結合EC50を示す。好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は、抗体31282のCDRを含む。好ましくは、EC50は、実施例18に記載されているようにヒトPBMC、好ましくは健常個体に由来するCD8+T細胞を用いて決定される。
【0130】
付随する実施例にて実証されているように、特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、TIGITを発現しているCD8T細胞に対する高い親和性及びTIGITを発現しているTreg細胞に対する高い親和性を示す。特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、0.5nM未満、好ましくは0.3nM未満、好ましくは0.2nM未満のEC50を特徴とする、TIGITを発現しているCD8T細胞及びTIGITを発現しているTreg細胞に対する親和性を示す。特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、TIGITを発現しているCD8T細胞及びTIGITを発現しているTreg細胞に対して同等の親和性を示す。
【0131】
本発明に係る抗体(たとえば、抗体31282)は驚くべきことに、がん患者に由来するCD8+T細胞に対する高い親和性を示す。TIGITのシグナル伝達の阻害によって、がん患者に由来するT細胞のエフェクター活性を高めることはさらに効果的な腫瘍制御につながり得るので、このことは特に有利である。従って、特定の実施形態では、本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、がん患者に由来するヒトCD8+T細胞上のヒトTIGITに対する0.5nM未満の結合EC50を示す。好ましいそのような実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.05~約0.4nM、好ましくは約0.1~約0.3nMの結合EC50を示す。特定の好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.1~約0.2nMのヒトTIGITに対するEC50を示す。好ましい実施形態では、抗体または抗原結合断片は抗体31282のCDRを含む。好ましくは、EC50は実施例18に記載されているようにがんの患者から採取したPBMCに由来するCD8+T細胞を用いて決定される。
【0132】
付随する実施例で実証されているように、特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、TIGITの結合についてCD155/PVRと競合する。特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、0.2nM以下、好ましくは0.1nM以下のIC50を特徴とするCD155との競合を示す。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.05nM以下のIC50を特徴とするCD155との競合を示す。特定の好ましい実施形態では、示されるIC50は約0.05nMである。理論によって束縛されることを望まないで、TIGIT結合についてのCD155との抗体の競合は、CD155が誘導しTIGITが介在するシグナル伝達のレベルを低下させ、それによってエフェクターT細胞の活性化のレベルを高めると予想される。
【0133】
本発明はさらに、本明細書に記載されている抗体の「親和性変異体」を提供する。
【0134】
本発明はまた、ヒトTIGITへの結合について本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片と交差競合する単離された抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0135】
本発明の抗体は炎症誘発性のT細胞活性を促進する
本発明に係る抗体(たとえば、抗体31282)は驚くべきことに、CD8+T細胞の炎症誘発性活性を促進することにて効果的である。実施例で実証されているように、本発明の抗体または抗原結合断片(特に31282)は、比較基準である抗TIGIT抗体よりも炎症誘発性CD8+T細胞の活性を促進すること(IFNgの放出によって示される)にてさらに効果的である(
図24を参照のこと)。比較基準抗体に対するこの改善された有効性はTIGITを発現しているトランスジェニックJurkatレポーター細胞及び初代CD8T細胞において実証された。従って、特定の実施形態では、本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、実施例19に記載されているようにJurkatレポーター細胞によって発現させたヒトTIGITに対する5nM未満の活性化EC
50を示す。好ましいそのような実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約1nM~約4nM、好ましくは約2nM~約4nMのEC
50を示す。
【0136】
特定の実施形態では、本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、実施例19に記載されているように健常な個体に由来するCD8T細胞に対して0.4nM未満の活性化EC50を示す。CD8T細胞の活性(すなわち、炎症誘発性活性)は炎症性サイトカイン(たとえば、IFNg)の産生によって測定されてもよい。好ましいそのような実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約0.05nM~約0.4nM、好ましくは約0.1nM~約0.2nMのEC50を示す。好ましくは、EC50は実施例19に記載されているように健常な個体から採取したPBMCに由来するCD8+T細胞を用いて決定される。
【0137】
提供されている抗TIGIT抗体はガンマ・デルタ(γδまたはg/d)T細胞(すなわち、従来のαβTCRサブユニットに対比するものとしてγδTCRサブユニットを発現しているT細胞)の活性を高めることにて効果的であることが付随する実施例においてさらに且つ驚くべきことに実証されている。そのようなγδT細胞は免疫系の異なる且つ重要な成分を形成し、これらの細胞の活性を促進する本明細書で提供されている抗体の能力は抗体の有用性を強調している。
【0138】
従って、本明細書で提供されるのはまた、γδT細胞の集団を抗TIGIT抗体に接触させることを含むγδT細胞の活性を促進する方法である。特定の実施形態では、方法はインビトロで実施される。特定の実施形態では、方法はヒト対象にてインビボで実施される。特定のそのような実施形態では、ヒト対象はがんを有する。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、本発明に係る抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列の組み合わせを含む。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含み、その際、HCDR1は配列番号16を含み、HCDR2は配列番号17を含み、HCDR3は配列番号18を含み、LCDR1は配列番号61を含み、LCDR2は配列番号62を含み、LCDR3は配列番号63を含む。
【0139】
Treg細胞の選択的枯渇
本明細書で実証されているように、抗TIGIT抗体はTIGITを発現しているTreg細胞を選択的に枯渇させることができる。すなわち、抗TIGIT抗体はそれらがエフェクターまたはメモリーのCD4またはCD8のT細胞の比率を減らすよりも大きな程度にT細胞の集団全体に対するTIGITを発現しているTreg細胞の比率を減らす。
【0140】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、TIGITを発現しているTreg細胞を選択的に枯渇させる。
【0141】
TIGITを発現しているTreg細胞のこの選択的枯渇にはTIGITを発現しているTreg細胞の選択的溶解が介在することができる(たとえば、ADCCまたはCDCによる(
図20、21及び25を参照のこと))。TIGITを発現しているTreg細胞はTIGITを発現していないTregよりもさらに強力な抑制性細胞であると理解されている。理論によって束縛されることを望まないで、TIGITを発現しているTreg細胞の溶解による選択的枯渇は、Tregの全体数を枯渇させるが、さらに強力な抑制性機能を示すTreg細胞も枯渇させることによってT細胞のエフェクター機能(たとえば、T細胞が介在する細胞傷害、炎症誘発性サイトカインの放出)を高めると予想される。この高められたT細胞のエフェクター機能は
図24にて実証されている。
【0142】
従って、特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片はTIGITを発現しているTreg細胞を選択的に溶解する。
【0143】
TIGITを発現しているTreg細胞の選択的枯渇には、それがもはや細胞膜で発現されないようにTIGIT受容体の内部移行を誘導することも介在することができる。理論によって束縛されることを望まないで、TIGIT+Treg細胞がTIGIT-Treg細胞になるようにTIGITの内部移行を誘導することによって、これらの細胞の抑制性機能はあまり強力ではなくなると予想される(TIGIT+Tregがさらに強力な抑制性細胞なので)。受容体の内部移行及びこれらTregの抑制性効力のその後の低下の結果、T細胞のエフェクター機能は高まると予想される。従って、特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、好ましくはTIGITを発現しているTreg細胞によるTIGITの内部移行を誘導することによってTIGITを発現しているTreg細胞の抑制活性を阻害する。
【0144】
CD8T細胞及びTreg細胞に対して高親和性を示し、Treg細胞の選択的枯渇も示し、それによって2つのメカニズムを介してT細胞のエフェクター機能を促進することは、本発明に係る抗TIGIT抗体にとって特に有利である。抗体エフェクター機能(たとえば、ADCC、CDC)の保持はTregの効果的な枯渇を生じ、選択性は抗体エフェクター機能がエフェクターT細胞の望まれていない枯渇を生じないことを意味する。抗TIGIT抗体を作り出す以前の試みはTIGITを発現しているエフェクターT細胞の溶解を回避するために抗体のエフェクター機能を排除しようとしていたので、選択性は特に驚くべきことである。さらに、本発明のTIGIT抗体はエフェクターT細胞(たとえば、CD8T細胞)に対する親和性を示すので、これらの細胞におけるTIGITが介在するシグナル伝達はCD155結合についての競合によって、及び/またはエフェクターT細胞上のTIGITの内部移行を誘発することによって阻害することができる。組み合わせて、本発明の抗体のこれらの効果はT細胞エフェクター機能の有意な上方調節を生じることができる。
【0145】
さらなる態様では、提供されるのはT細胞の集団を抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と接触させ、それによって抗TIGIT抗体がTreg細胞の集団を選択的に枯渇させることを含む、T細胞の集団からTreg細胞を選択的に枯渇させる方法である。特定の実施形態では、方法はインビトロで実施される。特定の実施形態では、方法はヒト対象にてインビボで実施される。特定のそのような実施形態では、ヒト対象はがんを有する。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体または抗原結合断片は本発明に係る抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列の組み合わせを含む。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は、HCDR1が配列番号16を含み、HCDR2が配列番号17を含み、HCDR3が配列番号18を含み、LCDR1が配列番号61を含み、LCDR2が配列番号62を含み、且つLCDR3が配列番号63を含む重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含む。
【0146】
さらに有利な特性
本発明に係る抗体または抗原結合断片によって示されたさらに驚くべき有利な特性には、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のT細胞エフェクター機能(たとえば、炎症誘発性サイトカインの放出)を高めることが挙げられる。腫瘍微小環境への曝露は、たぶん抗原過剰曝露及び/または免疫抑制性腫瘍微小環境のせいで、反応不顕性のまたはいわゆる「疲弊した」表現型を示すTILをもたらすことができる。腫瘍自体に浸潤しているので腫瘍のサイズまたは増殖を減らすのに最良に適する場所に位置する細胞なので、TILのエフェクター機能を高めることは望ましい;しかしながら、多数のTILの反応不顕性のまたは疲弊した表現型のせいでそのエフェクター機能を強化するのは難しいと予想される。従って、本発明の抗体への曝露に続くTILの炎症誘発性反応における上昇は驚くべきことであり、抗体が特に有効な治療剤であってもよいことを示している。
【0147】
抗体または抗原結合断片によって示されたその上さらに驚くべき有利な特性には、ガンマ・デルタ(γδ)T細胞の炎症誘発性活性を高める能力が挙げられる。たとえば、γδT細胞のような非従来型のT細胞の活性を促進する能力は抗TIGIT抗体については以前報告されておらず、γδT細胞が重要であることが知られているがん以外の疾患を治療する潜在力を提供している。たとえば、γδT細胞は、病原性感染(細菌、ウイルス(たとえば、CMV)、真菌)に対する応答に関与するとともに、自己免疫疾患から保護することにおいて役割を有することが報告されている。加えて、非従来型のT細胞の活性を促進する驚くべき能力は抗体の抗腫瘍効果にさらなる効力を提供する。
【0148】
抗体及び抗原結合断片によって示されたその上さらに驚くべき有利な特性には悪性T細胞を選択的に枯渇させる一方で正常T細胞を容認する能力が挙げられる。本発明の抗体(たとえば、31282)は十中八九ADCCを介して悪性T細胞(たとえば、CD4+T細胞)を選択的に枯渇させることができる。しかしながら、健常なT細胞に対して限定的な影響がある。このことは、たとえば、T細胞リンパ腫(たとえば、セザリー症候群)のようなT細胞疾患の治療に特に有用である本発明の抗体を指摘する。
【0149】
CD155と競合しないTIGIT抗体
付随する実施例で実証されているように、本発明はまた、TIGITの結合についてCD155/PVRと競合しない抗TIGIT抗体も提供する。従って、さらなる態様では、本発明はヒトTIGITの結合についてCD155/PVRと競合しないヒトTIGIT抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定のそのような実施形態では、本発明に係るCD155と競合しない抗TIGIT抗体のFab断片は5×10-9~5×10-8M、任意で1×10-8~3×10-8Mの範囲でのForteBio(商標)によって測定されるTIGITに対するKDを示す。
【0150】
特定の好ましい実施形態では、抗体は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含んでもよく、その際、HCDR1は配列番号280を含み、HCDR2は配列番号281を含み、HCDR3は配列番号282を含み、LCDR1は配列番号292を含み、LCDR2は配列番号293を含み、LCDR3は配列番号294を含む。特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号333として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよく、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号334として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。
【0151】
VHドメインのアミノ酸配列が配列番号333として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態はそれにもかかわらず、配列番号333のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3(それぞれ配列番号280、281、282)と同一である重鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。同様に、VLドメインのアミノ酸配列が配列番号334として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態はそれにもかかわらず、配列番号334のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3(それぞれ配列番号292、293、294)と同一である軽鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。
【0152】
特定の好ましい実施形態では、抗体は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを含んでもよく、その際、HCDR1は配列番号353を含み、HCDR2は配列番号354を含み、HCDR3は配列番号355を含み、LCDR1は配列番号356を含み、LCDR2は配列番号357を含み、LCDR3は配列番号358を含む。特定のそのような実施形態では、重鎖可変ドメインは配列番号367として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよく、且つ軽鎖可変ドメインは配列番号368として示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。
【0153】
VHドメインのアミノ酸配列が配列番号367として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態はそれにもかかわらず、配列番号367のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3(それぞれ配列番号353、354、355)と同一である重鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。同様に、VLドメインのアミノ酸配列が配列番号368として示される配列と100%未満の配列同一性を示す実施形態はそれにもかかわらず、配列番号368のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3(それぞれ配列番号356、357、358)と同一である軽鎖CDRを含んでもよい一方で、フレームワーク領域内でアミノ酸配列の変異を示す。
【0154】
ポリヌクレオチド、ベクター、及び発現システム
本発明はまた、本発明のTIGIT抗体をコードするポリヌクレオチド分子と、宿主細胞または無細胞発現システムにおける抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする調節配列に動作可能に連結された本発明のTIGIT抗体をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターと、この発現ベクターを含有する宿主細胞または無細胞発現システムとを提供する。
【0155】
本発明のTIGIT抗体をコードするポリヌクレオチド分子には、たとえば、組換えDNA分子が挙げられる。用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド分子」は本明細書では相互交換可能に使用され、一本鎖または二本鎖の任意のDNAまたはRNAの分子、及び一本鎖であれば、その相補性配列の分子を指す。核酸分子を議論することにおいて、特定の核酸分子の配列または構造は、5’から3’の方向での配列を提供する普通の慣例に従って本明細書で記載されてもよい。本発明の一部の実施形態では、核酸またはポリヌクレオチドは「単離される」。この用語は、核酸分子に適用される場合、それが由来した生物の天然に存在するゲノムにてそれが直接隣接する配列から分離されている核酸分子を指す。たとえば、「単離された核酸」は、たとえば、プラスミドもしくはウイルスベクターのようなベクターに挿入された、または原核細胞もしくは真核細胞もしくは非ヒト宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含んでもよい。RNAに適用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」は主として、上記で定義されたような単離されたDNA分子によってコードされたRNA分子を指す。あるいは、その用語は天然の状態(すなわち、細胞または組織にて)でそれが会合している他の核酸から精製されている/分離されているRNA分子を指してもよい。単離されたポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)はさらに、生物学的手段または合成手段によって直接作出され、作出の間に存在する他の成分から分離された分子を表してもよい。
【0156】
本発明に係るTIGIT抗体の組換え生産については、それをコードする組換えポリヌクレオチドを調製し(標準の分子生物学的技法を用いて)、選択した宿主細胞または無細胞発現システムでの発現のために複製可能なベクターに挿入してもよい。好適な宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、または高等真核細胞、具体的には哺乳類細胞であってもよい。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(293細胞または浮遊培養での増殖のためにサブクローン化した293細胞;Graham,et al.,J.Gen.Virol.36:59-74,1977);幼若ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980;またはCHO-K1、ATCC CCL-61のようなCHOに由来するクローン、Kao及びPuck,Genetics of somatic mammalian cells,VII. Induction and isolation of nutritional mutants in Chinese hamster cells,Proc.Natl.Acad.Sci.60:1275-1281,1968);マウスセルトリ細胞(TM4;Mather,Biol.Reprod.23:243-252,1980);マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581;ATCC CRL 8287)またはNS0(HPA culture collections 番号85110503);サル腎臓細胞(CV1,ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather,et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)、と同様にDSMのPERC-6細胞株である。これら宿主細胞のそれぞれでの使用に好適な発現ベクターも一般に当該技術で既知である。
【0157】
用語「宿主細胞」は一般に培養された細胞株を指すことが言及されるべきである。本発明に係る抗原結合ポリペプチドをコードする発現ベクターが導入されている人間丸ごとは「宿主細胞」の定義から明白に除外される。
【0158】
重要な態様では、本発明はまた、TIGIT抗体の発現を可能する条件下でTIGIT抗体をコードするポリヌクレオチド(たとえば、発現ベクター)を含有する宿主細胞(または無細胞発現システム)を培養し、発現されたTIGIT抗体を回収することを含む、本発明のTIGIT抗体を生産する方法も提供する。ヒトの治療用途を対象とするモノクローナル抗体を含む本発明に係るTIGIT抗体の大規模生産にはこの組換え発現プロセスを使用することができる。インビボでの治療用途に好適な組換え抗体の大規模製造に好適なベクター、細胞株及び生産プロセスは一般に当該技術で利用可能であり、当業者に周知であろう。
【0159】
従って、本発明によれば、提供されるのは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含む抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは単離されたポリヌクレオチドの組み合わせであり、その際、組み合わせは、
(i)配列番号16を含むHCDR1、配列番号17を含むHCDR2、配列番号18を含むHCDR3、配列番号61を含むLCDR1、配列番号62を含むLCDR2、及び配列番号63を含むLCDR3;
(ii)配列番号4を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、配列番号6を含むHCDR3、配列番号49を含むLCDR1、配列番号50を含むLCDR2、及び配列番号51を含むLCDR3;
(iii)配列番号7を含むHCDR1、配列番号8を含むHCDR2、配列番号9を含むHCDR3、配列番号52を含むLCDR1、配列番号53を含むLCDR2、及び配列番号54を含むLCDR3;
(iv)配列番号10を含むHCDR1、配列番号11を含むHCDR2、配列番号12を含むHCDR3、配列番号55を含むLCDR1、配列番号56を含むLCDR2、及び配列番号57を含むLCDR3;
(v)配列番号13を含むHCDR1、配列番号14を含むHCDR2、配列番号15を含むHCDR3、配列番号58を含むLCDR1、配列番号59を含むLCDR2、及び配列番号60を含むLCDR3;
(vi)配列番号1を含むHCDR1、配列番号2を含むHCDR2、配列番号3を含むHCDR3、配列番号46を含むLCDR1、配列番号47を含むLCDR2、及び配列番号48を含むLCDR3;
(vii)配列番号19を含むHCDR1、配列番号20を含むHCDR2、配列番号21を含むHCDR3、配列番号64を含むLCDR1、配列番号65を含むLCDR2、及び配列番号66を含むLCDR3;
(viii)配列番号22を含むHCDR1、配列番号23を含むHCDR2、配列番号24を含むHCDR3、配列番号67を含むLCDR1、配列番号68を含むLCDR2、及び配列番号69を含むLCDR3;
(ix)配列番号25を含むHCDR1、配列番号26を含むHCDR2、配列番号27を含むHCDR3、配列番号70を含むLCDR1、配列番号71を含むLCDR2、及び配列番号72を含むLCDR3;
(x)配列番号28を含むHCDR1、配列番号29を含むHCDR2、配列番号30を含むHCDR3、配列番号73を含むLCDR1、配列番号74を含むLCDR2、及び配列番号75を含むLCDR3;
(xi)配列番号31を含むHCDR1、配列番号32を含むHCDR2、配列番号33を含むHCDR3、配列番号76を含むLCDR1、配列番号77を含むLCDR2、及び配列番号78を含むLCDR3;
(xii)配列番号34を含むHCDR1、配列番号35を含むHCDR2、配列番号36を含むHCDR3、配列番号79を含むLCDR1、配列番号80を含むLCDR2、及び配列番号81を含むLCDR3;
(xiii)配列番号37を含むHCDR1、配列番号38を含むHCDR2、配列番号39を含むHCDR3、配列番号82を含むLCDR1、配列番号83を含むLCDR2、及び配列番号84を含むLCDR3;
(xiv)配列番号40を含むHCDR1、配列番号41を含むHCDR2、配列番号42を含むHCDR3、配列番号85を含むLCDR1、配列番号86を含むLCDR2、及び配列番号87を含むLCDR3;
(xv)配列番号43を含むHCDR1、配列番号44を含むHCDR2、配列番号45を含むHCDR3、配列番号88を含むLCDR1、配列番号89を含むLCDR2、及び配列番号90を含むLCDR3;
(xvi)配列番号271を含むHCDR1、配列番号272を含むHCDR2、配列番号273を含むHCDR3、配列番号283を含むLCDR1、配列番号284を含むLCDR2、及び配列番号285を含むLCDR3;
(xvii)配列番号274を含むHCDR1、配列番号275を含むHCDR2、配列番号276を含むHCDR3、配列番号286を含むLCDR1、配列番号287を含むLCDR2、及び配列番号288を含むLCDR3;
(xviii)配列番号277を含むHCDR1、配列番号278を含むHCDR2、配列番号279を含むHCDR3、配列番号289を含むLCDR1、配列番号290を含むLCDR2、及び配列番号291を含むLCDR3
から成る群から選択される。
【0160】
特定の実施形態では、提供されるのは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含む抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは単離されたポリヌクレオチドの組み合わせであり、その際、
(i)HCDR1は配列番号16を含むまたはそれから成り、HCDR2は配列番号17を含むまたはそれから成り、HCDR3は配列番号18を含むまたはそれから成り、LCDR1は配列番号61を含むまたはそれから成り、LCDR2は配列番号62を含むまたはそれから成り、且つLCDR3は配列番号63を含むまたはそれから成る。
【0161】
また本発明によれば、本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは単離されたポリヌクレオチドの組み合わせが提供される。特定の実施形態では、提供されるのは、本明細書で提供されている抗体31282またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0162】
また本発明によれば、抗TIGIT抗体のVHドメイン及び/またはVLドメインをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、その際、ポリヌクレオチドは配列番号241~270、335~342及び369~370から成る群から選択される1つ以上の配列を含む。特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは配列番号251に係る配列及び/または配列番号252に係る配列を含む。ポリヌクレオチドが配列番号251に係る配列及び配列番号252に係る配列を含む特定の実施形態では、配列は隣接する。ポリヌクレオチドが配列番号251に係る配列及び配列番号252に係る配列を含む特定の実施形態では、配列は隣接しない。
【0163】
また本発明によれば、宿主細胞または無細胞発現システムにおける抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする調節配列に動作可能に連結された本発明に係るポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。
【0164】
また本発明によれば、本発明に係る発現ベクターを含有する宿主細胞または無細胞発現システムが提供される。
【0165】
また、本発明によれば、抗体または抗原結合断片の発現を可能にする条件下で本発明に係る宿主細胞または無細胞発現システムを培養し、発現された抗体または抗原結合断片を回収することを含む、組換え抗体またはその抗原結合断片を生産する方法が提供される。
【0166】
医薬組成物
本明細書で提供されるのはまた、1つ以上の薬学上許容できるキャリアまたは賦形剤と共に製剤化される本発明に係る抗体または抗原結合断片を含む医薬組成物である。そのような組成物は、(たとえば、2以上の異なる)TIGIT抗体を1つまたはその組み合わせを含んでもよい。ヒトでの治療用途のために抗体を製剤化する技法は当該技術で周知であり、たとえば、Wang,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.96,pp1-26,2007にて概説されている。
【0167】
本明細書で提供されているTIGIT抗体及び医薬組成物は、疾患、特にTIGITの機能の阻害から利益が得られる状態の治療法、特に疾患の治療処置で有用性を有する。
【0168】
組み合わせ製品
本明細書で実証されているように、本発明の抗体またはその抗原結合断片は追加の治療剤と組み合わせて投与されると特に効果的である。たとえば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は免疫チェックポイント阻害剤―具体的に抗ICOSアンタゴニスト抗体または抗PD-1抗体(すなわち、ヒト免疫調節分子PD-1に特異的なアンタゴニスト抗体)と組み合わせて投与されると特に効果的である。抗ICOS抗体または抗PD-1抗体と組み合わせた抗TIGIT抗体の投与は、いずれかの抗体単独と比べて腫瘍増殖にて相乗的な減少を生じる。本発明に係る抗TIGIT抗体と抗PD-L1抗体との組み合わせを用いて類似の効果が観察されると予想される。
【0169】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、免疫チェックポイント共刺激分子に特異的なアゴニスト抗体―具体的に抗4-1BB抗体、抗OX40抗体または抗GITRアゴニスト抗体と組み合わせて投与されると特に効果的であることが本明細書でさらに実証される。抗4-1BBアゴニスト抗体、抗OX40アゴニスト抗体または抗GITRアゴニスト抗体と組み合わせた抗TIGIT抗体の投与は、いずれかの抗体単独と比べて腫瘍増殖にて相乗的な減少を生じる。
【0170】
さらなる態様では、提供されるのは、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と、化学療法剤、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体のうちの1つ以上とを含む組み合わせ製品である。
【0171】
本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片(たとえば、31282)と化学療法剤(たとえば、ドキソルビシン)との組み合わせはがんを治療することで特に効果的なので、この組み合わせで減った腫瘍体積はいずれかの治療法だけよりも有意に大きいことも本明細書で実証されており、相乗効果の可能性を示している(実施例35)。
【0172】
さらに、本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片(たとえば、31282)と化学療法剤(たとえば、ドキソルビシン)とA2A受容体(A2AR)アンタゴニストとの組み合わせは、症例の大半で完全寛解を誘導した程度に有意に効果的な治療を生じることも本明細書で実証されている。特に、抗TIGIT抗体とA2ARアンタゴニストとの組み合わせだけでは単剤療法を超えて有効性を改善することはなかった。従って本発明の組み合わせの有効性は特に予想外である。
【0173】
従って、さらなる態様では、提供されるのは本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と化学療法剤とを含む組み合わせである。好ましい実施形態では、化学療法剤はドキソルビシンを含む。
【0174】
好ましい実施形態では、組み合わせはさらにアデノシンA2A受容体(A2AR)アンタゴニストを含む。例となるA2ARアンタゴニストは、参照によって本明細書に組み込まれるPCT/EP2019/074208に提供されている。
【0175】
特定の好ましい実施形態では、抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、本発明に従って提供されている抗体または抗原結合断片である。最も好ましい実施形態では、抗TIGIT抗体または抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含み、その際、
HCDR1は配列番号16(YTFTSYYMH)を含み、
HCDR2は
を含み、
HCDR3は
を含み、
LCDR1は配列番号61(RASQSVRSSYLA)を含み、
LCDR2は配列番号62(GASSRAT)を含み、且つ
LCDR3は配列番号63(QQYFSPPWT)を含む。
【0176】
提供されるのはまた、がんまたはウイルス感染症を治療する方法で使用するための本明細書で提供されているような組み合わせであり、任意でその際、ウイルス感染症はCMV感染症である。提供されるのはさらに、本明細書で提供されている方法で使用するための本明細書で提供されているような組み合わせである。
【0177】
本明細書で使用されるとき、2以上の活性剤が「組み合わせ」、「治療上の組み合わせ」または「併用療法」(用語は相互交換可能に使用される)として提供される場合、これは活性剤が単一組成物に製剤化されることを必要としない、またはそれを除外しない。併用療法には、患者が各活性剤からの利益を引き出すことができるように投与される2以上の活性剤の従来の解釈が与えられる。「併用療法」は、同時製剤化、共投与、同時投与または固定用量製剤を必要としない。
【0178】
治療法
本明細書で提供されているTIGIT抗体またはその抗原結合断片、医薬組成物及び組み合わせを用いてインビボでがん性腫瘍細胞の増殖を阻害することができるので、腫瘍の治療に有用である。
【0179】
従って、本発明のさらなる態様は、それを必要とする患者に有効量の本明細書に記載されているようなTIGIT抗体または抗原結合断片、本明細書に記載されているような医薬組成物、または本明細書に記載されているような組み合わせを投与することを含む、ヒト患者にて腫瘍細胞の増殖を阻害する方法、及びがんを治療するまたは予防する方法に関する。
【0180】
本発明の別の態様は、ヒト患者にて腫瘍細胞の増殖を阻害するのに使用するための本明細書に記載されているようなTIGIT抗体または抗原結合断片を提供する。本発明のその上さらなる態様は、ヒト患者にてがんを治療するまたは予防するのに使用するための本明細書に記載されているようなTIGIT抗体または抗原結合断片を提供する。
【0181】
本発明の別の態様は、がん患者にてTreg細胞を選択的に枯渇させる方法を提供し、該方法は抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を患者に投与することを含む。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は、残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76及びI109を含む、好ましくは残基Q56、N58、E60、I68、L73、H76及びI109から成るヒトTIGIT上のエピトープで結合する。特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は本明細書で提供されている抗TIGIT抗体である。
【0182】
特定の実施形態では、抗TIGIT抗体は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の組み合わせを含み、その際、HCDR1は配列番号16(YTFTSYYMH)を含むまたはそれから成り、HCDR2は
を含むまたはそれから成り、HCDR3は
を含むまたはそれから成り、LCDR1は配列番号61(RASQSVRSSYLA)を含むまたはそれから成り、LCDR2は配列番号62(GASSRAT)を含むまたはそれから成り、且つLCDR3は配列番号63(QQYFSPPWT)を含むまたはそれから成る。
【0183】
特定の好ましい実施形態では、治療される患者は、腎臓癌(たとえば、腎細胞癌腫)、乳癌、脳腫瘍、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性または急性の白血病、リンパ腫(たとえば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、リンパ性リンパ腫、原発CNSリンパ腫、B細胞リンパ腫(たとえば、CLL)、T細胞リンパ腫(たとえば、セザリー症候群))、鼻咽頭癌腫、黒色腫(たとえば、転移性悪性黒色腫)、前立腺癌、結腸癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部のがん(たとえば、頭頚部の有棘細胞癌腫(HNSCC))、皮膚癌腫、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域のがん、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頚部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の腫瘍、腫瘍血管新生、脊髄軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、中皮腫から選択されるがんを有する。特定の実施形態では、抑制されるがんは、肺癌、膀胱癌、乳癌、腎臓癌(たとえば、腎臓癌腫)、頭頚部癌(たとえば、HNSCC)、または結腸癌(たとえば、結腸腺腫)である。特定の実施形態では、がんは結腸癌(たとえば、結腸腺腫)または肺癌である。特定の実施形態では、がんは血液癌である。特定のそのような実施形態では、がんはリンパ腫である。特定の実施形態では、がんはT細胞リンパ腫またはB細胞リンパ腫である。
【0184】
特定の実施形態では、治療されるがんは結腸腺癌、肝臓癌腫、膵臓癌腫、肺癌、及びT細胞リンパ腫(たとえば、セザリー症候群)から選択される。特定の実施形態では、治療されるがんは結腸腺癌である。特定の実施形態では、治療されるがんは肝臓癌腫である。特定の実施形態では、治療されるがんは膵臓癌腫である。特定の実施形態では、治療されるがんは肺癌、たとえば、肺癌腫である。特定の実施形態では、治療されるがんはT細胞リンパ腫、たとえば、セザリー症候群である。
【0185】
特定の実施形態では、がんを治療する方法はさらに、追加の治療剤、たとえば、化学療法剤の投与を含む。
【0186】
特定の好ましい実施形態では、がんを治療する方法は抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と、化学療法剤と、任意でA2ARアンタゴニストとを含む本発明に係る組み合わせの投与を含む。
【0187】
提供されるのはまた、治療法で使用するための、任意でがんを治療するのに使用するための抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片と、化学療法剤と、任意でA2ARアンタゴニストとを含む本発明に係る組み合わせである。好ましくは、がんは結腸腺癌である。
【0188】
提供されるのはまた、がんを治療する方法で使用するための本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片であり、その際、方法は、化学療法剤と組み合わせて抗体を投与することを含む。好ましくは、化学療法剤はドキソルビシンである。
【0189】
特定の好ましい実施形態では、方法はさらに、A2ARアンタゴニストを投与することを含み、その際、抗体または抗原結合断片と化学療法剤とA2ARアンタゴニストとは組み合わせとして投与される。
【0190】
本明細書で実証されているように、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、免疫チェックポイント阻害剤―具体的に抗ICOSアンタゴニスト抗体または抗PD-1抗体(すなわち、ヒト免疫調節分子PD-1に特異的なアンタゴニスト抗体)と組み合わせて投与されると特に効果的である。抗ICOS抗体または抗PD-1抗体と組み合わせた抗TIGIT抗体の投与は、いずれかの抗体単独と比べて腫瘍増殖にて相乗的な減少を生じる。本発明に係る抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体との組み合わせを用いて類似の効果が観察されると予想される。
【0191】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、免疫チェックポイント共刺激分子に特異的なアゴニスト抗体―具体的に抗4-1BBアゴニスト抗体、抗OX40アゴニスト抗体または抗GITRアゴニスト抗体と組み合わせて投与されると特に効果的であることが本明細書でさらに実証される。抗4-1BBアゴニスト抗体、抗OX40アゴニスト抗体または抗GITRアゴニスト抗体と組み合わせた抗TIGIT抗体の投与は、いずれかの抗体単独と比べて腫瘍増殖にて相乗的な減少を生じる。
【0192】
従って、本明細書で提供されるのはまた、有効量の本発明に係る抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を対象に投与し、且つ有効量の抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗4-1BB抗体、抗OX40抗体、及び抗GITR抗体、または抗ICOS抗体も投与することを含む、対象にてがんを治療する方法である。
【0193】
加えて、抗TIGIT抗体が従来型のT細胞と同様にγδ細胞の活性を高めることができることを実証している本明細書で提供されているデータは抗TIGIT抗体を用いてがん以外の状態を治療することができることを示している。特に、γδT細胞は感染、たとえば、細菌、真菌またはウイルスの感染に対する応答で重要であることが知られている。実施例29にて示すように、抗TIGIT抗体に接触させると、CMV血清反応陽性の対象に由来するγδT細胞はIFNg分泌の上昇を特徴とする顕著に上昇した活性化を示す。このようにCMV患者にてγδT細胞の活性化を促進する能力は抗TIGIT抗体の投与がγδT細胞の抗ウイルス活性を促進するであろうことを示している。
【0194】
従って、本明細書で提供されるのは、有効量の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、対象にてウイルス感染症を治療する方法である。提供されるのはまた、有効量の本明細書で提供されている抗TIGIT抗体または抗原結合断片または医薬組成物を対象に投与し、それによってウイルス感染症を治療することを含む、対象にてウイルス感染症を治療する方法である。好ましい実施形態では、ウイルス感染症はCMV感染症である。
【0195】
特定の実施形態では、方法はさらに1つ以上の追加の治療剤の投与を含む。特定の実施形態では、1つ以上の治療剤は、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体から選択される。
【0196】
実施例で実証されているように、本明細書で開示されている抗TIGIT抗体はT細胞の活性、特に炎症誘発性のT細胞の活性を促進することにて効果的である。T細胞の活性は、当業者によく知られている方法によって、たとえば、実施例に記載されているようにIFNgの産生を測定することによって測定することができる。
【0197】
従って、提供されるのはまた、T細胞の集団を、本明細書に記載されているような抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、T細胞の活性を促進する方法である。
【0198】
特定の実施形態では、T細胞の活性を促進する方法はインビトロで実施される。特定の実施形態では、T細胞の活性を促進する方法はヒト対象にてインビボで実施される。特定のそのような実施形態では、ヒト対象はがんを有する。特定の実施形態では、ヒト対象はウイルス感染症、たとえば、CMV感染症を有する。
【0199】
特定の実施形態では、方法は従来型のαβT細胞の活性を促進する。特定の実施形態では、方法はCD4T細胞の活性を促進する。特定の実施形態では、方法はCD8T細胞の活性を促進する。特定の実施形態では、方法はγδ(ガンマ・デルタ)T細胞の活性を促進する。
【0200】
本明細書で開示されている抗TIGIT抗体は、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、または抗ICOS抗体と組み合わせて使用されるとT細胞の活性を促進することにおいて特に効果的であろうことが実施例でさらに実証される。重要なことに、組み合わせは、T細胞の活性において相乗的な(すなわち、相加的よりも大きい)上昇を提供する。
【0201】
従って、特定の実施形態では、T細胞の活性を促進する方法はさらに、T細胞の集団を、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、抗41BB抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、及び抗ICOS抗体のうちの1つ以上に接触させることを含む。
【0202】
本明細書に記載されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱しない本発明の実施形態の変異体及び同等物は当業者によく知られるであろう。本発明は以下の非限定の実施例を参照してさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0203】
実施例1:TIGIT抗原結合タンパク質の選択
TIGITのABPは、たとえば、WO2009036379;WO2010105256;WO2012009568;及びXu,et al.,Protein Eng.Des.Sel.,Vol.26(10),pp.663-670(2013))に記載されているように一般的に及び以下で提供されているようにさらに具体的にIgG形式にて酵母細胞の表面上に発現され、提示されるヒト抗体の合成ライブラリから選択した。組換えライブラリから単離されたABPの配列及び特徴は
図1~6に提供されている。
【0204】
それぞれ約109の多様性の8つのナイーブなヒト合成酵母ライブラリを以前記載された(たとえば、Xu,et al,2013;WO2009036379;WO2010105256;及びWO2012009568を参照のこと)ように増殖させた。選択の最初の2回については、記載されている(Siegel,et al.,2004を参照のこと)ようにMiltenyiのMACSシステムを利用する磁気ビーズ選別法を実施した。手短には、FACS洗浄緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA))にて酵母細胞(約1010個/ライブラリ)をビオチン化TIGIT-Fc抗原(Creative Biomart)と共にインキュベートした。50mLの氷冷洗浄緩衝液で1回洗浄した後、細胞ペレットを40mLの洗浄緩衝液に再浮遊させ、ストレプトアビジンマイクロビーズ(500μL)を酵母に加え、4℃で15分間インキュベートした。次に、酵母をペレットにし、5mLの洗浄緩衝液に再浮遊させ、MiltenyiのLSカラムにかけた。5mLを負荷した後、3mLのFACS洗浄緩衝液でカラムを3回洗浄した。次いでカラムを磁場から取り出し、5mLの増殖培地で酵母を溶出し、次いで、一晩増殖させた。フローサイトメトリーを用いて後に続く回の選別を行った。およそ1×108個の酵母をペレットにし、洗浄緩衝液で3回洗浄し、室温にて平衡条件下でビオチン化TIGIT-Fc融合抗原(10nM)と共にインキュベートした。次いで酵母を2回洗浄し、LC-FITC(1:100希釈)及びSA-633(1:500希釈)またはEA-PE(1:50希釈)二次試薬のいずれかによって4℃にて15分間染色した。氷冷洗浄緩衝液で2回洗浄した後、細胞ペレットを0.4mLの洗浄緩衝液に再浮遊させ、濾過器でフタをした選別チューブに移した。FACS ARIAソーター(BD Biosciences)を用いて選別を行い、バックグラウンド対照に比べて特異的な結合物を選択するように選別ゲートを割り当てた。CHO細胞に由来する可溶性膜タンパク質(たとえば、WO2014179363及びXu,et al.,Protein Eng.Des.Sel,Vol.26(10),pp.663-670(2013)を参照のこと)を利用して非特異的な結合物の数を減らし、TIGIT-Fc抗原を用いてTIGITに対する改善された親和性を持つ結合物を特定するために、その後の回の選択を採用した。最終回の選別の後、酵母をプレートに播き、親和性成熟についてのクローンの特徴付け及び指名のために個々のクローンを採取した。機能的活性について63のクローンをスクリーニングした。スクリーニングからクローン26518、26452、26486、26521及び26493が最良の機能的活性を有し、さらなる最適化のために選択された。
【0205】
実施例2:抗体の最適化
3つの成熟戦略:軽鎖の多様化、HCDR1及びHCDR2の多様化、及び選択されたHCDR1とHCDR2の多様性プールの範囲内でのHCDR3の多様化を利用してナイーブなクローンの最適化を行った。
【0206】
軽鎖の多様化:ナイーブなアウトプット(上記に記載されている)から重鎖可変領域を抽出し、1×106の多様性を持つ軽鎖ライブラリに変換した。1回のMACS選別及び10nMまたは1nMのビオチン化TIGIT-HIS抗原(Creative Biomart)を各回に用いた3回のFACS選別によって上記に記載されているように選択を行った。
【0207】
HCDR1及びHCDR2の選択:軽鎖の多様化手順から選択されたクローンに由来するHCDR3を1×108の多様性のHCDR1及びHCDR2の変異体により予め作製したライブラリに組み換え、単量体HIS-TIGIT抗原を用いて選択を行った。室温にて平衡条件下で漸減する濃度のビオチン化HIS-TIGIT抗原(100~1nM)を用いて親和性の圧力を適用した。
【0208】
HCDR3/HCDR1/HCDR2の選択:HCDR3のいずれかの側の相同隣接領域と同様にHCDR3を含むオリゴがIDTからオーダーされた。HCDR3の全体にわたってオリゴ当たり2つの位置でのNNK多様性を介してHCDR3におけるアミノ酸の位置を多様化した。HCDR3オリゴはHCDR3の隣接領域にアニーリングしたプライマーを用いた二本鎖だった。重鎖可変領域の残りのFWR1~FWR3は上記で選択されたHCDR1及びHCDR2の多様性から単離された改善された親和性を持つ抗体のプールから増幅した。次いで元々のナイーブな親型の軽鎖をすでに含有している酵母に対して二本鎖HCDR3オリゴ、FWR1~FWR3のプールした断片及び重鎖発現ベクターで形質転換することによってライブラリを作り出した。4回のFACS選別を用いた前のサイクルの間に選択を行った。各回のFACSについて、PSR結合、種交差反応性、及び親和性圧力に関してライブラリを評価し、選別を行って所望の特徴を持つ集団を得た。これらの選択のための親和性圧力はHCDR1及びHCDR2の選択にて上記に記載されているように実行した。
【0209】
実施例3:抗体の産生及び精製
A.酵母における産生
さらなる特性評価のために十分量の最適化した及び最適化していない選択した抗体を産生させるために、酵母クローンを飽和まで増殖させ、次いで振盪しながら30℃で48時間誘導した。誘導の後、酵母細胞をペレットにし、精製のために上清を回収した。プロテインAカラムを用いてIgGを精製し、酢酸pH2.0で溶出した。パパイン消化によってFab断片を生成し、プロテインA(GE LifeSciences)及びKappaSelect(GE Healthcare LifeSciences)によって2段階プロセスで精製した。
【0210】
B.哺乳類細胞における産生
さらなる特性評価のために十分量の最適化した及び最適化していない選択した抗体を産生させるために、特異的抗体クローンをコードするDNAベクターを生成し、HEK細胞に形質導入した。抗体可変ドメインについてヒトのコドンで最適化した合成DNA断片はGeneartでオーダーした。マウスのIgカッパのシグナル配列及び各抗体クラスの定常領域を含有しているpUPE発現ベクターに可変ドメインの配列を途切れなくライゲーションした。発現ベクターは制限解析及びDNA配列決定によって検証した。一時的な形質移入にために、確立されたプロトコールに従ってエンドトキシンを含まないDNAmaxiprep(Sigma)を作製し、Freestyle培地(ThermoFisherScientific)にて重鎖及び軽鎖のベクターでHEK293EBNA1細胞に同時形質移入した。形質移入の24時間後、プリマトン(最終容量0.55%)を加えた。形質移入の6日後、馴化培地を回収した。Mabselect sureLX(GE Healthcare)アフィニティクロマトグラフィーによって抗体をバッチごとに精製した。1MのNaClを含有するPBS及びPBSによって2段階で結合した抗体を洗浄した。抗体を20mMのクエン酸塩、150mMのNaCl、pH3で溶出し、1/6容量の1MのK2HPO4/KH2PO4、pH8でおよそpH7に中和した。
【0211】
次に、PBSで平衡化したSeperdex200カラムを用いたゲル濾過によって抗体をさらに精製した。NuPAGEによって分画を分析し、抗体を含有する分画をプールした。最終生成物を0.22μmのシリンジフィルターで無菌化した。生成物をNuPAGEによって分析し、エンドトキシンのレベルをLALアッセイによって測定した。
【0212】
実施例4:組換えヒトTIGITタンパク質への抗TIGIT抗体の結合についての親和性の決定
A.ForteBioによるKDの測定
選択した抗体のForteBio親和性測定は以前記載された(たとえば、Estep,et al.,Mabs,Vol.5(2),pp.270-278(2013)を参照のこと)ように一般に実施した。手短には、ForteBio親和性測定はAHQセンサーにオンラインでIgGを負荷することによって実施される。センサーをオフラインにてアッセイ緩衝液で30分間平衡化し、次いでベースラインの確立のためにオンラインで60秒間モニターした。負荷したIgGを伴うセンサーを100nMの抗原(ヒトTIGIT-Fc、ヒトTIGIT-HisまたはカニクイザルTIGIT-Fc)に5分間曝し、その後、オフ速度の測定のためにそれらをアッセイ緩衝液に5分間移した。1:1の結合モデルを用いて動態を解析した。ForteBioによって90を超える抗体を親和性について調べ、表3は組換えTIGITタンパク質への強い結合を示す15の選択された抗TIGIT抗体についてのデータを提供する。
【0213】
B.MSD-SETによるKDの測定
選択した抗体の平衡親和性測定は、以前記載された(Estep,et al.,Mabs,Vol.5(2),pp.270-278(2013))ように一般に実施した。手短には、PBS+0.1%のIgGを含まないBSA(PBSA)にて10~100pMにて一定を保持し、10pM~10nMで開始して3~5倍の連続希釈したFabまたはmAbと共にインキュベートした抗原(TIGIT-His単量体)によって溶液平衡滴定(SET)を行った。抗体(PBA中20nM)を標準結合のMSD-ECLプレートに4℃で一晩または室温で30分間コーティングした。次いで700rpmで振盪しながらBSAによって30分間プレートをブロックし、その後洗浄緩衝液(PBSF+0.05%Tween20)で3回洗浄した。SET試料をプレートに入れ、700rpmで振盪しながら150秒間インキュベートし、その後1回洗浄した。プレート上で捕捉された抗原をプレート上で3分間インキュベートすることによってPBSF中250ng/mLスルホタグで標識したストレプトアビジンによって検出した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで界面活性剤を伴った1×Read緩衝液Tを用いてMSD Sector Imager2400機器にて読み取った。Prismにて遊離の抗原の百分率を滴定した抗体の関数としてプロットし、KDを抽出する四元方程式に適合させた。処理能力を改善するために、SET試料の調製を含めてMSD-SET実験全体を通して液体を取り扱うロボットを使用した。選択した抗体をMSDによって親和性について調べたが、表4は組換えTIGITタンパク質への強力な結合を示す7つの抗TIGITクローンについてのデータを提供する。
【0214】
(表4)選択した抗TIGIT抗体についての親和性のMSD解析
【0215】
C.Biacoreによる測定
CM5センサーチップ(GE Healthcare,Marlboro,MA)を接続したBiacoreの8K光学バイオセンサーを用いてHBS-EP緩衝液系(10mMのHEPES、pH7.3、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20)にて25℃でバイオセンサー分析を実施した。サンプルホテルを8℃で維持した。標準のアミンカップリング化学反応を用いて、センサーチップの双方のフローセルにヤギ抗ヒトIgG捕捉抗体(Fcγ断片に特異的な、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA;109-005-098)を不動化した(11700±200RU)。この表面型は各再生工程の後、新しい分析抗体を再生可能に捕捉するための定型を提供した。フローセル2を用いて捕捉抗体を分析した(60~90RU)一方でフローセル1は参照フローセルとして使用した。30から0.123nMに及ぶ(3倍希釈)抗原濃度をランニング緩衝液で調製した。抗原試料濃度のそれぞれを単回反復として実行した。2つのブランク(緩衝液)注入も実行し、システムの作為を評価し、差し引くのに使用した。抗原濃度すべてについて会合相(300s)及び解離相(600s)を30uL/分の流速で実施した。10mMのグリシン、pH1.5の3回の連続注入(15s、15s及び60s)によって30uL/分の流速で表面を再生した。データを並べ、二重参照し、Biacore8K Evaluationソフトウェア、バージョン1.0を用いて1:1結合モデルに当て嵌めた。選択した抗体をBiacoreによって親和性について調べたが、表5は組換えTIGITタンパク質への強い結合を示す5つの抗TIGITクローンについてのデータを提供する。
【0216】
(表5)選択した抗TIGIT抗体についての親和性のBiacore分析
【0217】
実施例5:抗TIGITアンタゴニスト抗体とTIGIT天然リガンドとの間での競合アッセイ
A.Octet Red384エピトープビニング/リガンドブロッキング
標準のサンドイッチ形式の交差遮断アッセイを用いて、選択した抗体のエピトープビニング/リガンドブロッキングを実施した。対照の抗標的IgGをAHQセンサー上に負荷し、センサー上の占有されていないFc結合部位を無関係なヒトIgG1抗体でブロックした。次いでセンサーを100nMの標的抗原(hTIGIT、Creative Biomart)に曝し、その後、二次抗標的抗体またはリガンド(抗TIGIT抗体及びCD155またはCD113またはCD112)に曝した。ForteBioのデータ解析ソフトウェア7.0を用いてデータを処理した。抗原会合の後の二次抗体またはリガンドによる追加の結合は占有されていないエピトープ(非競合物)を示す一方で、結合がないことはエピトープブロッキング(競合物またはリガンドのブロッキング)を示す。天然のリガンドとの競合について親型抗体(最適化の前の)を調べたが、表6はCD155、CD112及びCD113に対する競合について得られたデータをまとめている。親型クローン26432はTIGITとの結合についてCD155と競合しないことが見いだされた。他の選択した抗TIGIT抗体はすべて組換えヒトTIGITタンパク質への結合について天然のリガンドと競合する。
【0218】
(表6)最適化されていない抗TIGIT抗体についてのTIGIT天然リガンドに対するビニング解析
【0219】
B.抗TIGITアンタゴニスト抗体のJurkat-hTIGIT上のCD155との競合
ヒトTIGITを過剰発現しているJurkat細胞(Jurkat-hTIGIT)を回収し、105個/ウェルで分配し、完全培地にて以下の濃度:166.6;53.24;17.01;5.43;1.73;0.55;0.17;0.05;0.01;5.78×10-3;1.85×10-3;5.9×10-3nMでの抗ヒトTIGIT抗体と共に37℃で45分間インキュベートした。過剰な抗体を洗い流し、次いで細胞を5μg/mLでのCD155-His(Creative Biomart、PVR-3141H)と共に37℃で45分間インキュベートした。次いで、抗Hisタグ-PE(Biolegend,362603,試験当たり2μL)を用いて結合したCD155-Hisを検出し、4℃で30分間インキュベートした。BD LSRFortessaを用いたFACSによって細胞を解析し、CD155の結合を阻止する半分の濃度(IC50)は幾何平均蛍光に基づいて算出した。
【0220】
結果は、
図7で説明する結果について以下のとおりだった:クローン29489については0.101nM;クローン29494については0.07nM;クローン29520については0.102nM及びクローン29527については0.078nMだった。他の調べた抗体の値は以下の表7にてまとめている。全体として、結果は膜で発現したTIGITへの結合について調べたアンタゴニスト抗TIGIT抗体によるCD155との強い競合を実証している。
【0221】
(表7)ヒトTIGITにおけるCD155との競合についてのIC
50のデータ
【0222】
実施例6:疎水性相互作用クロマトグラフィー(MAbs.2015,May-Jun;7(3):553-561.)の特性評価
Zeba 40kDa 0.5mLのスピンカラム(Thermo Pierce,カタログ#87766)を用いて抗TIGITのIgG1抗体試料をpH6.5での1Mの硫酸アンモニウム及び0.1Mのリン酸ナトリウムに緩衝液交換した。Dionex ProPac HIC-10カラムにてpH6.5での1.8Mの硫酸アンモニウム及び0.1Mのリン酸ナトリウムから硫酸アンモニウムがない同じ条件まで塩勾配を確立した。勾配を0.75mL/分の流速で17分間流した。流入の最後にアセトニトリル洗浄工程を加え、残りのタンパク質を取り除き、次の注入サイクルの前に7カラム容量にわたってカラムを再平衡化した。A280の吸光度でピーク保持時間をモニターし、溶出での硫酸アンモニウムの濃度を勾配及び流速に基づいて算出した。表8は15の選択した抗TIGIT抗体について得られた結果をまとめている。
【0223】
(表8)選択した抗TIGIT抗体についての疎水性相互作用クロマトグラフィーの分析
【0224】
実施例7:PSR製剤多特異性試薬の特性評価
A.多特異性試薬の調製
Xu,et.al,mAbs,2013に従って多特異性試薬(PSR)を調製した。手短には、2.5リットルのCHO-S細胞を出発物質として使用した。400mLに満たした500mLの遠心ビンにて2,400×gで5分間、細胞をペレットにした。細胞ペレットを合わせ、次いで25mLの緩衝液Bに再浮遊させ、2,400×gで3分間、ペレットにした。緩衝液を捨て、洗浄を1回繰り返した。細胞を氷上で維持しながらポリトロンホモジナイザーを用いて1×プロテアーゼ阻害剤(Roche,cOmplete,EDTAを含まない)を含有するペレット容量の3倍の緩衝液Bに細胞ペレットを再浮遊させた。次いでホモジネートを2,400×gで5分間遠心分離し、上清を保持し、もう1回ペレットにして(2,400×g/5分)、壊れていない細胞、細胞残渣及び核を確実に除いた;得られた上清が総タンパク質調製物である。次いで上清を2本のNalgene Oak Ridgeの45mLの遠心管に移し、4℃にて40,000×gで40分間ペレットにした。分離した細胞質タンパク質(SCP)を含有する上清を次いできれいなOak Ridge試験管に移し、40,000×gでもう1回遠心分離した。並行して、膜分画(EMF)を含有するペレットを保持し、40,000で20分間遠心分離して残留上清を取り除いた。次いでEMFペレットを緩衝液Bですすいだ。次いで8mLの緩衝液Bを膜ペレットに加え、ペレットを移動させ、ダウンスホモジナイザーに移した。ペレットをホモジネートした後、それらを50mLの円錐管に移し、最終的なEMF調製物を表した。
【0225】
10億個の哺乳類細胞(たとえば、CHO、HEK293、Sf9)を約106~107個/mLで組織培養環境から4本の250mLの円錐管に移し、550×gで3分間ペレットにした。後に続く工程はすべて氷冷した緩衝液と共に4℃または氷上で行った。細胞を100mLのPBSF(1×PBS+1mg/mLのBSA)で洗浄し、1本の円錐管に合わせた。上清を取り除いた後、細胞ペレットを30mLの緩衝液B(50mMのHEPES、0.15MのNaCl、2mMのCaCl2、5mMのKCl、5mMのMgCl2、10%のグリセロール、pH7.2)に再浮遊させ、550×gで3分間ペレットにした。緩衝液B上清を捨て、細胞をペレットの3倍容量の緩衝液B+2.5×プロテアーゼ阻害剤(Roche,cOmplete、EDTAを含まない)に再浮遊させた。緩衝液B中のプロテアーゼ阻害剤はここから先で含めた。細胞を30秒パルスで4回ホモジネートし(ポリトロンホモジナイザー、PT1200E)、膜分画を4℃にて40,000×gで1時間ペレットにした。ペレットを1mLの緩衝液Bですすぎ、上清を保持し、sを表す。ペレットを3mLの緩衝液Bと共にダウンスホモジナイザーに移し、すりこぎをゆっくり30~35回上下に動かすことによって再浮遊させる。濃縮した膜分画(EMF)を新しい回収チューブに移し、すりこぎをすすぎ、潜在的なタンパク質すべてを回収する。Dcタンパク質アッセイキット(BioRad)を用いて精製したEMFのタンパク質濃度を決定する。EMFを可溶化するために、1mg/mLの最終濃度までEMFを可溶化緩衝液(50mMのHEPES、0.15MのNaCl、2mMのCaCl2、5mMのKCl、5mMのMgCl2、1%のn-ドデシル-b-D-マルトピラノシド(DDM)、1×プロテアーゼ阻害剤、pH7.2))に移す。混合物を一晩4℃の回転で回転し、その後、50mLのOak Ridge管(Fisher Scientific,050529-ID)にて40,000×gで1時間遠心分離する。可溶性膜タンパク質(SMP)を表す上清を回収し、タンパク質収量を上記に記載されているように定量した。
【0226】
ビオチン化のために、製造元のプロトコール(Pierce,Thermo Fisher)に従ってHNS-LC・ビオチンストック溶液を調製する。手短には、20uLのビオチン試薬を1mgのEMF試料ごとに加え、穏やかに撹拌しながら4℃で3時間インキュベートする。緩衝液Bで容量を25mLに合わせ、Oak Ridge遠心管に移す。ビオチン化EMF(b-EMF)を40,000×gで1時間ペレットにし、ペレットを壊さずに3mLの緩衝液C(緩衝液Bからグリセロールを除く)で2回すすぐ。残留溶液を取り除く。以前記載されたように3mLの緩衝液Cにてペレットをダウンスホモジナイザーで再浮遊させた。再浮遊させたペレットは今やビオチン化EMF(b-EMF)を表し、上記に記載されているように可溶化されてb-SMPを調製する。
【0227】
B.PSRの結合解析
一般にWO2014/179363に記載されているようにPSR解析を行った。手短には、酵母にて提示されるモノクローナル抗体のPSRプロファイルを特徴付けるために、200万個のIgGを提示している酵母を96穴アッセイプレートに移し、3000×gで3分間ペレットにして上清を除いた。50uLの新しく調製した1:10希釈のストックb-PSRにてペレットを再浮遊させ、氷上で20分間インキュベートする。200uLの冷PBSFで細胞を2回洗浄し、50uLの二次標識ミックス(Extravidin-R-PE、抗ヒトLC-FITC、及びヨウ化プロピジウム)にペレットを再浮遊させる。氷上でミックスを20分間インキュベートし、その後、200uLの氷冷PBSFで2回洗浄する。100uLの氷冷PBSFに細胞を再浮遊させ、HTS試料注入器を用いてFACS Canto(BD Biosciences)にてプレートを実行させる。R-PEチャネルにおける平均蛍光強度についてフローサイトメトリーのデータを解析し、非特異的な結合を評価するために適正な対照に対して正規化した。表9は、クローンのほとんどについて低いスコアを確認している15の選択した抗TIGIT抗体について得られた多特異性試薬結合の結果をまとめている。
【0228】
【0229】
実施例8:健常ヒトPBMCに由来する免疫集団におけるTIGIT発現の特性評価
A.T細胞サブセットにおけるTIGIT発現のプロファイル
健常個体から新しく単離されたPBMCにおける免疫細胞サブセットでのTIGITの発現を評価するためにフローサイトメトリー解析を行った。コンジュゲートした抗体をEbioscience/Thermo Fisher Scientific、BioLegendまたはBD Biosciencesから購入した。濾過したFACS緩衝液(PBS+2mMのEDTA+0.1%BSA)及びBrilliant染色緩衝液(BD#563794)を用いて製造元の指示によって細胞を染色した。染色に先立って適当なヒトFcBlock(BD #564220)で細胞をブロックし、データ取得に先立ってIC固定緩衝液(eBioscience #00-8222-49)を用いて固定した。データ取得はFACS Fortessa(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)で解析した。生細胞は前方散乱と側方散乱にゲートをかけた。種々の免疫細胞サブセットは以下のようにゲートをかけた:CD19+(B細胞)、CD3-CD19-CD14+(単球)、CD3+TCRab-(TCRgd T細胞)、CD3+TCRab+(TCRab T細胞)、CD3-CD19-CD14-HLA-DR-CD56低/高(NK細胞)、CD3-CD19-CD14-HLA-DR+(樹状細胞)、CD3+TCRab+CD4+CD127低CD25+(抑制性T細胞)、CD3+TCRab+CD4+またはCD8+CD45RO-CCR7+(CD4またはCD8ナイーブT細胞)、CD3+TCRab+CD4+またはCD8+CD45RO+(メモリーT細胞)及びCD45RO-CD62L-(エフェクターT細胞)。
【0230】
図8A及び8Bに示すように、TIGITはNK細胞、抑制性T細胞及びCD8メモリーT細胞で優先的に発現される。それは他のT細胞サブセットではさらに少ない程度に存在し、低い比率のナイーブT細胞がTIGIT発現を示す。加えて、TIGITは単球、樹状細胞及びB細胞では発現されない(
図8B)。このセットのデータは公開されたデータ(Yu,et al.Nl,2008及びWang,et al.EJI,2015)と一致する。
【0231】
実施例9:抗TIGITアンタゴニスト抗体の細胞への結合
A.Jurkat-hTIGIT及びJurkat-mTIGITへの抗TIGIT抗体の結合
ヒトTIGITで形質導入した(Jurkat-hTIGIT)またはマウスTIGITで形質導入した(Jurkat-mTIGIT)JurkatE6.1細胞を用いてヒト抗TIGIT抗体の親和性を測定している。hTIGITまたはmTIGITに対する選択した抗体の親和性を分析するために、ウェル当たり10
5個の細胞を分配し、100nMの単一用量での抗TIGIT抗体(表3)または漸減濃度(166.6;53.24;17.01;5.43;1.73;0.55;0.17;0.05;0.01;5.78×10
-3;1.85×10
-3;5.9×10
-3nM)の選択した抗体(
図9)と共にインキュベートした。抗体はFACS緩衝液にて細胞と共に4℃で20分間インキュベートした。洗浄の後、氷上で細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mLで)と共に20分間インキュベートし、2回洗浄した。LSR BD Fortessaを用いて幾何平均蛍光強度を解析した。細胞結合は、各抗体について形質移入していない株と比べて形質移入した株におけるPEの中央値蛍光強度として記録した(表3)。EC
50結合の算出については、Prismにて4変数曲線適合方程式を用いてhTIGIT-Jurkatへの結合の半分最大濃度(EC
50)を算出し、得られた値は
図9で説明したデータについて以下のもの;クローン29489については0.082nM;クローン29494については0.07nM;クローン29520については0.119nM及びクローン29527については0.05nMであった。結果は調べた抗TIGIT抗体について膜発現したヒトTIGITに対する強い結合を実証している。
【0232】
B.ヒト初代T細胞への抗TIGITアンタゴニスト抗体の結合
アンタゴニスト抗TIGIT抗体による結合について健常ボランティアから単離されたヒトPBMCを分析した。ウェル当たり5×10
5個で細胞を分配した。細胞を抗CD16(クローン3G8、BioLegend 302002)、CD32(クローンFLI8.26,BD Bioscience 557333)及びCD64(BD Bioscience 555525)と共に室温で10分間インキュベートし、示した抗ヒトTIGIT抗体をFACS緩衝液にて12.65;4;1.26;0.40;0.126;0.040;0.12及び4×10
-3nMの最終濃度で直接加え、4℃で20分間インキュベートした。洗浄の後、細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mLで)と共に4℃で20分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、
図10A及び10Bの結果のための以下の抗体及びLVDミックス:抗CD4-PercP-Cy5.5(クローA161A1,BioLegend 357414);抗CD8-BV510(クローンSK1,BD Bioscience 563919)及びLVD eFluor 520(eBioscience 65-0867-14)と共にインキュベートした。
図10Cについては、細胞を洗浄し、以下の抗体及びLVDミックス:LVD eFluor520(eBioscience 65-0867-14)、抗TCRab-PercP-Cy5.5(クローンIP26、Biolegend 306723)、抗CD4-BV510(クローンSK3、BD Horizon 562970)、抗CD8-APC-Cy7(クローンSK1、Biolegend 344714)、抗CD25-BV605(クローン2A3、Biolegend 562660)、抗CD127-APC(A019D5、Biolegend 351316)、抗CCR7-BV421(クローンG043H7、Biolegend 353207)及び抗CD45RO-PE-Cy7(クローンUCHL1、Biolegend 304229)と共にインキュベートした。
【0233】
CD8
+ヒト初代T細胞への結合についてのEC
50値はゲートをかけたLVD
-CD8
+T細胞における陽性TIGIT染色された細胞の%を用いて算出した(
図10A及び10B)。ヒトメモリーCD8
+初代T細胞またはTreg初代T細胞への結合についてのEC
50値は、ゲートをかけたLVD
-TCRab
+CD45RO
+CD8
+T細胞(メモリーCD8
+T細胞について)またはゲートをかけたLVD
-TCRab
+CD127
低CD25
高CD4
+T細胞(Tregについて)における陽性のTIGIT染色された細胞の%を用いて算出したが、
図10Cで説明する。
【0234】
図10Aに示すように、ヒトCD8
+T細胞全体への結合についてのEC
50値は、クローン29489については0.123nM;クローン29520については0.181nM、及びクローン29527については0.253nMである。29489と31282(残基116におけるMからTへの突然変異がある29489の変異体)との直接の比較を行い、EC
50値がそれぞれ0.057nM及び0.086nMだったということは、2つのクローンについてヒト初代CD8
+T細胞への強力で類似する結合有効性を実証している(
図10B)。メモリーCD8
+T細胞及びTregへの結合について得られたEC
50値はそれぞれ0.039nM及び0.03nMだったということは、双方の集団に対する強力で類似する親和性を実証している(
図10C)。
【0235】
C.カニクイザル初代T細胞への抗TIGITアンタゴニスト抗体の結合
Macaca fascicularisから単離されたPBMCはBioPRIMから入手した。細胞を解凍し、製造元の仕様書に従って1:2(ビーズ:細胞の比)にて非ヒト霊長類用のT細胞活性化/増殖キット(Miltenyi Biotec)を用いて刺激した。翌日、細胞を回収し、数え、ウェル当たり5×10
4個で分配した。室温にて細胞を抗CD16(クローン3G8,BioLegend 302002)、CD32(クローンFLI8.26,BD Bioscience 557333)及びCD64(BD Bioscience 555525)と共に10分間インキュベートし、選択した抗ヒトTIGIT抗体をFACS緩衝液における12.65;4;1.26;0.40;0.126;0.040;0.12及び4×10
-3nMの最終濃度で直接加え、4℃にて20分間インキュベートした。洗浄の後、細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mLで)と共に4℃で20分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、
図11A及び11Bで説明されているデータのために以下の抗体及びLVDミックス:抗CD4-PercP-Cy5.5(クローンA161A1,BioLegend 357414);抗CD8-BV510(クローンSK1,BD Bioscience 563919)、CD69-APC-Cy7(クローンFN50,BioLegend,310914)及びLVD eFluor 520(eBioscience 65-0867-14)と共にインキュベートした。染色した細胞をBD LSR Fortessaを用いてFACSによって解析した。結合のEC
50値はLVD
-CD69
+CD8
+T細胞にゲートをかけた陽性TIGIT染色された細胞の%を用いて算出した。
図11に示すように、カニクイザルCD8
+T細胞への結合についてのEC
50値は、クローン29489については0.487nM、クローン29520については1.73nM及びクローン29527については0.378nMだった。クローン29489及び31282(残基116におけるMからTへの置換がある29489の変異体)を同様に比較し、EC
50値が、
図11Bに示す例についてそれぞれ0.25nM及び0.26nMだったということは、2つのクローンについてのカニクイザル初代CD8
+T細胞に対する類似の且つ強力な親和性を実証している。
【0236】
実施例10:アンタゴニスト抗TIGIT活性のインビトロでの機能的特性評価
A.CHO-TCR-CD155及びJurkat-hTIGITの共培養におけるTIGITのバイオアッセイ
ヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、我々は、hTIGITとTCR連結の際に活性化されるルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat細胞(Promegaの、解凍してそのまま使用(Thaw-and-Use)のTIGITエフェクター細胞)をヒトCD155及びTCR活性化因子を発現するように操作したCHO-K1細胞株(Promegaの、解凍してそのまま使用のCD155 aAPC/CHO-K1)と共に共培養した。TIGITを過剰発現しているJurkat細胞の活性化はJurkat細胞上のTCRの連結の際のCD155を発現しているCHO-K1細胞との接触によって誘導することができ、アンタゴニスト抗TIGIT抗体の存在下で増大させることができる。Jurkat細胞の活性化を増大させる異なる抗体の能力を比較するために、漸増濃度の抗体の存在下で実験を実施し、EC50値を算出した。
【0237】
解凍してそのまま使用のCD155 aAPC/CHO-K1(Promega、CS198811)細胞を製造元の推奨に従って播き、5%CO2インキュベーターO/Nにて37℃でインキュベートした。その翌日、製造元の推奨に従って、解凍してそのまま使用のTIGITエフェクター細胞(Promega、CS198811)を、133nMでの抗TIGIT抗体(
図12A)または漸増濃度(0.22;0.54;1.36;3.41;8.53;21.3;53.3;133.33;及び333nM)の抗TIGIT抗体(
図12B)と共に新鮮な完全培地を含有するCD155 aAPC/CHO-K1細胞のプレートに加え、37℃、5%CO2にて6時間インキュベートした。
【0238】
6時間のインキュベートの後、Bio-GloTMルシフェラーゼアッセイシステム(Promega,G7941)を使用することによりルシフェラーゼ活性を測定することによってTIGITエフェクター細胞の活性化を評価した。
【0239】
図12Aはアイソタイプ対照と比べてルシフェラーゼのシグナルに対する選択したクローンの添加の効果を示す。データは、Jurkat-hTIGIT細胞のさらに強い活性化を生じたそれら抗体のアンタゴニスト活性を実証している。表10は、アイソタイプ対照クローン(03847)と比べた様々な抗TIGIT抗体について得られたルシフェラーゼ発現の誘導の変化倍率をまとめている。
【0240】
【0241】
図12Bに示すように、Jurkat-hTIGIT細胞の活性化は0.22nM~333nMの間の抗TIGIT抗体で評価され、クローン29489については3.0nM;クローン29494については4.4nM;クローン29520については2.3nM及びクローン29527については32nM;クローン32919については2.7nM及びクローン32931については3.2nMのEC
50を与えたということは、TIGITの抑制性シグナル伝達の遮断に連続した強い機能的な活性を実証している。クローン29489及び31282(残基116におけるMからTへの突然変異がある29489の変異体)を同様に比較し、EC
50値が、
図12Cに示す例についてそれぞれ4.3nM及び8.1nMだったということは、2つのクローンについて類似の機能的活性を実証している。
【0242】
B.ヒト初代CD8+T細胞に基づく機能的アッセイ
ヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、我々は、健常ヒトドナーのPBMCに由来するヒト初代CD8+T細胞を、ヒトCD155を発現し、ヒトT細胞を活性化するように操作されたCHO-K1細胞株と共に共培養した。我々は、操作されたCD155を発現するCHO-K1細胞の存在下でのCD8+T細胞によるIFNgの放出を抗TIGITアンタゴニスト抗体によるhTIGITの遮断によって高めることができることを観察した。IFNgの放出を高めるこれら抗体の能力を比較するために、漸増濃度の抗体の存在下で実験を実施し、EC50値を算出した。
【0243】
製造元の推奨に従って、解凍してそのまま使用のCD155 aAPC/CHO-K1(Promega、CS198811)細胞をU底96穴プレートに播き、37℃、5%CO2のインキュベーターO/Nでインキュベートした。翌日、健常ドナーの全血から単離した凍結ヒト末梢血単核細胞(Immunehealth)から陰性選択キット(Stemcell Technologies,17953)を使用することによって製造元の推奨に従ってCD8+T細胞を精製した。次いで、精製したCD8T細胞を漸増濃度(0.11nM、0.33nM、1.06nM、3.3nM、10.6nM、33.3nM、105.5nM及び333nM)の抗体(100,000個のCD8T細胞/抗体を含有する100uLの完全培地)と共に1時間インキュベートした。その後、50μLの新鮮な完全培地を含有するCD155 aAPC/CHO-K1細胞のプレートに抗体・CD8のミックスを加え、37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。最終的に、製造元の推奨に従って実行したELISAアッセイ(Affymetrix eBioscience,88-7316-86)を用いて細胞上清にてIFNgの濃度を評価した。
【0244】
図13Aに示すように、抗TIGIT抗体はすべてアイソタイプ対照と比べてIFNgの分泌を増やした。最も高い増加はクローン29489(6.4倍)で見られ、その後に29494(5.8倍)、29520(5.4倍)、29499(5.2倍)、29527(4.5倍)及び29513(3.2倍)が続いた。
【0245】
用量範囲試験(0.22nM~333nMの間での抗TIGIT抗体)も行ってヒト初代CD8T細胞によるIFNg分泌の増加についてのEC
50値を評価した。
図13Bに示すように、抗TIGIT抗体29489は3.5nMのEC
50によって最良の活性を示し、クローン29527(EC
50=5.1nM)、クローン29494(EC
50=6.1nM)及びクローン29520(EC
50=11.1nM)がその後に続いた。最終的に、クローン29489及びその変異体31282を並行して調べ、それぞれ0.49nM及び0.50nMのEC
50値で類似の活性を示した(
図13C)。要するに、これらのデータはCD8
+ヒトT細胞におけるTIGIT抑制性シグナルを遮断し、且つIFNgの産生での強い増加を特徴とするようなエフェクター機能を高めるアンタゴニスト抗TIGIT抗体の強い機能的な活性を実証している。
【0246】
C.ヒトTILの機能的アッセイ
がん患者に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、我々は、卵巣腹水患者のTILに由来するヒト初代CD8+T細胞を、ヒトCD155を発現し、ヒトT細胞を活性化するように操作されたCHO-K1細胞株と共に共培養した。我々は、操作されたCD155を発現しているCHO-K1細胞の存在下でのCD8+T細胞によるIFNgの放出が抗TIGITアンタゴニスト抗体によるhTIGITの遮断によって高められ得ることを観察した。
【0247】
解凍してそのまま使用のCD155 aAPC/CHO-K1(Promega,CS198811)を製造元の推奨に従ってU底96穴プレートに播き、37℃、5%CO2のインキュベーターO/Nにてインキュベートした。翌日、卵巣腹水から単離した凍結ヒトTIL(Immunehealth)から陰性選択キット(Stemcell Technologies,17953)を使用することによって製造元の推奨に従ってCD8T細胞を精製した。次いで、精製したCD8+T細胞を抗TIGIT抗体クローン29489の最適化していない親型であるクローン26452、及び31282(100,000個のCD8+T細胞/100μLの抗体を含有する完全培地)と共に1時間インキュベートした。その後、50uLの新鮮な完全培地を含有するCD155 aAPC/CHO-K1細胞のプレートに抗体・CD8ミックスを加え、37℃、5%CO2で5日間インキュベートした。
【0248】
最終的に、製造元の推奨に従って実行されるELISAアッセイ(Affymetrix eBioscience,88-7316-86)を用いて細胞上清にてIFNgの濃度を評価した。
図14に見られるように、抗TIGIT抗体を共培養に加えるとIFNgの分泌はほぼ2倍増えた。これらのデータは、CD8
+ヒトTILにおけるTIGITの抑制性シグナルを遮断し、且つ腫瘍の状況でのT細胞のエフェクター機能を高めるアンタゴニスト抗TIGIT抗体の強い機能的な活性を実証している。
【0249】
実施例11:マウスにて機能的な活性を持つ抗TIGITアンタゴニスト抗体の特性評価
A.代替抗TIGITアンタゴニスト抗体に対するマウスCD155の競合アッセイ
このアッセイのために、マウスTIGITを過剰発現するように操作したJurkat細胞(クローンE6-1、ATCC TIB-152)(Jurkat-mTIGIT)を使用した。この抗体がヒトTIGITへの結合と同様にマウスTIGITに対して交差反応性を示したので抗TIGIT抗体26493を代替として使用した。25μLの完全培地(RPMI+10%FBS)にて様々な濃度の抗TIGIT抗体クローン26493(0.03~10μg/mL)と共に細胞を37℃で45分間予め培養した。細胞を1回洗浄し、50μLの完全培地にて4μg/mLのマウスCD155-His-Fcタグタンパク質(Thermo Fisher,50259M03H50)と共にインキュベーターで45分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、PE-抗His抗体(Biolegend,362603)で4℃にて30分間染色した。FACSによって測定した中央値蛍光強度(MFI)をJurkat-mTIGITへのCD155の結合の測定単位として使用した。
図15Aは、IC
50として2.3nMを特定しているCD155の競合についての抗TIGITクローン26493の用量反応曲線を示す(上の点線はアイソタイプに由来するシグナルを表し、下の点線はCD155なしでの細胞からのシグナルを表す)。これらの結果はマウスTIGITについてCD155リガンドと競合する抗TIGIT抗体の機能的有効性を実証している。
【0250】
B.マウスの機能的なインビトロアッセイ:抗原特異的な細胞傷害性(OT-I)
このアッセイではOVAをパルスした標的細胞に向けたOT-ICD8
+T細胞の抗原特異的な細胞傷害活性及び抗TIGIT抗体の効果を評価するために、機械的な解離とその後のEasySep(商標)マウスT細胞単離キット(Stemcell,カタログ#19851)を用いたマウスT細胞の陰性選択によってC57BL/6-Tg
(TcraTcrb)1100Mjb/Crlマウス(Charles River)の脾臓からOT1細胞を単離した。抗原提示細胞として天然にCD155を発現しているPanO2がん細胞をマイトマイシンC(25μg/mL)で処理し、その後OVAペプチド(S7951-1MG,Sigma Aldrich,1μg/ml,37℃で1時間)でパルスした。133nMでの抗TIGIT抗体クローン26493またはアイソタイプ対照の存在下でCD8
+T細胞及びPanO2を3日間共培養した。3日目に、ELISAによるIFNgの検出(
図15B)のために上清を回収し、細胞傷害性アッセイ(
図15C)のためにT細胞を回収した。標的細胞としてOVAをパルスしたPanO2を使用した。製造元の指示書に従って、標的細胞及びパルスしていないPanO2細胞(非標的内部対照)をそれぞれ1×10
6個にてCFSE(C1157,ThermoFisher)及びCellTrace(商標)Far Red Cell Proliferationキット(C34564,ThermoFisher)によって標識した。これらの細胞を混合し(1:1の比)、ウェル当たり2×10
4個でプレートに播いた。133nMでの抗TIGIT抗体クローン26493またはアイソタイプ対照の存在下で10:1のエフェクター対標的の比を生じる1×10
5個/ウェル(エフェクター細胞)にて刺激したOT-1CD8
+T細胞を加えた。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理によって浮かせた。次いで細胞を生/死定着性バイオレット死細胞染色キット(Molecular Probes,L34955)によって染色した。次いで標的細胞の細胞傷害性殺傷をフローサイトメトリーによる生存標的細胞の非標的細胞に対する比における変化をモニターすることによって測定した。
【0251】
図15Bは、抗TIGIT抗体がIFNgの産生をほぼ2倍増やすことを示す一方で、
図15Cは60%前後のマウスOT-ICD8
+T細胞の細胞傷害活性の上昇を示している。要するに、これらの結果は、マウスのCD8
+T細胞のエフェクター機能を高める抗TIGIT抗体の機能的な活性を裏付けている。
【0252】
実施例12:マウスモデルにおける単剤療法及び抗PD-1抗体との併用における抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
A.単剤療法における抗TIGITアンタゴニスト抗体のインビボ抗腫瘍活性
この実験については、抗TIGIT抗体クローン26493はマウスIgG2aアイソタイプで哺乳類細胞にて産生された。8週齢のメスBalb/cマウスに500,000個のCT26結腸癌細胞(ATCC(登録商標)CRL-2638(商標))を皮下に接種した。接種後9日目に、腫瘍体積が平均45mm3前後であれば、マウスを同等の腫瘍体積を持つ処理群に無作為化した(群当たりn=8)。9日目、12日目及び15日目の腹腔内注射によって、マウスを200μgの抗TIGITまたはアイソタイプ対照(mlgG2a、BioXcell)または200μgの抗PD-1(RMP1-14、BioXcell)及び200μgのアイソタイプ対照(mlgG2a、BioXcell)または200μgの抗PD-1(RMP1-14、BioXcell)及び種々の濃度の抗TIGIT(200μg、60μg、20μg)で処理した。腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積は9日目から36日目まで週3回、電子キャリパーによって測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えるとマウスを屠殺した。線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に解析した。処理群間の差異は時間*処理群の相互作用を調べることによって評価した。抗TIGITと抗PD-1の間での相乗効果を調べるために、抗TIGITと抗PD-1の間での相乗効果を調べるために、2つの変数:抗TIGIT(あり/なし)及び抗PD-1(あり/なし)の組み合わせによって処理群を記録した。各処理の相加効果(抗TIGIT*時間及び抗PD-1*時間)の上の相乗効果は相互作用期間抗TIGIT*抗PD-1*時間を調べることによって評価した。
【0253】
図16Aは、単剤療法にて抗TIGIT抗体で処理したマウスについての個々の増殖曲線と同様に群当たりの中央値腫瘍増殖曲線を示す。対照群ではマウスは腫瘍の退縮を有さなかったのに対して、抗TIGITで処理した2/8のマウスは完全奏効を有した。残りのマウスでは、明瞭な腫瘍増殖の遅延が存在した。対照群では、30日を超えて生存したマウスはいなかったのに対して、処理群では、7/8のマウスが30日を超えて生存した。
【0254】
図16Bは、単剤療法または抗TIGITとの併用にて抗PD-1によって処理したマウスについての個々の増殖曲線と同様に群当たりの中央値腫瘍増殖曲線を示す。抗PD-1単剤療法と比べて抗TIGIT+抗PD-1で処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(p<0.0001)。抗TIGIT+抗PD-1の併用は、双方の単剤療法処理の相加効果よりも大きい相乗的な抗腫瘍有効性を達成した(p=0.02)。抗TIGIT抗体(200μg)と抗PD-1抗体の併用は完全奏効を示す7/8のマウスを生じた。抗腫瘍有効性は、抗PD-1と、抗TIGIT抗体を60μgに減らした際8/8のマウスで及び抗TIGIT抗体を20μgにさらに減らした際5/8のマウスで完全奏効を達成する低用量の抗TIGITとの併用で維持された(
図16C)。これらのデータは、予め確立された腫瘍の治療について、単剤療法(p<0.0001)または抗PD-1抗体との併用(p<0.0001)における抗TIGIT治療の有意な抗腫瘍有効性を実証している。
【0255】
実施例13:マウスモデルにおける単剤療法及び抗PD-1抗体との併用での抗TIGITアンタゴニスト抗体のアイソタイプ依存性の抗腫瘍活性
この実験のために、抗TIGITクローン26493をマウスIgG2a及びマウスIgG1のアイソタイプで哺乳類細胞にて産生させた。8週齢のメスBalb/cマウスに500,000個のCT26結腸癌細胞(ATCC(登録商標)CRL-2638(商標))を皮下に接種した。接種後10日目に、腫瘍体積が平均100mm3前後であれば、マウスを同等の腫瘍体積の処理群に無作為化した(群当たりn=10)。単剤療法の評価については、10日目、13日目及び16日目での腹腔内注射によって200μgの抗TIGITまたはアイソタイプ対照(mIgG2a、BioXcell)でマウスを処理した。抗PD-1との併用の評価については、10日目、13日目及び16日目での腹腔内注射によって200μgの抗PD-1(RMP1-14,BioXcell)及び200μgのアイソタイプ対照(mlgG2a,BioXcell)または200μgの抗PD-1(RMP1-14,BioXcell)と200μgの抗TIGITとの併用によりマウスを処理した。腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積は10日目から33日目まで週3回、電子キャリパーによって測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えるとマウスを屠殺した。
【0256】
図17Aは、抗TIGIT抗体による単剤療法についての個々の増殖曲線と同様に群当たりの中央値腫瘍増殖曲線を示し、
図17Bは抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体による併用療法について示す。単剤療法及び抗PD-1との併用の双方において、抗TIGIT抗体による処理はマウスIgG2aアイソタイプとして投与された場合、有意な抗腫瘍有効性を生じた(それぞれp=0.0001及びp=0.009)。しかしながら、マウスIgG1アイソタイプとしての抗TIGITでは抗腫瘍有効性が観察できなかったということは、マウスCT26モデルではFc受容体のmIgG2aとの相互作用が抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性に重要であることを示唆している。これらのデータは、予め確立された腫瘍の治療について単剤療法または併用における抗TIGIT療法のアイソタイプ依存性の抗腫瘍有効性を実証している。
【0257】
実施例14:抗TIGITアンタゴニスト抗体のインビボ抗腫瘍活性の作用のメカニズムの特性評価
A.脾臓及び腫瘍のフローサイトメトリー解析
アンタゴニスト抗TIGIT抗体の作用のインビボモードを検討するために、単剤療法及び抗PD-1との併用にて抗TIGIT抗体26493(IgG2a)による処理に続く免疫細胞の浸潤についてフローサイトメトリーによって腫瘍を解析した。実施例12に記載されているようにマウスに接種し、それを処理した。2回目の処理の2日後、マウス(群当たり8匹)を屠殺し、腫瘍を採取した。腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)によって腫瘍を解離させた。直接のエクスビボ染色のために、生存性色素(Molecular Probes,L34955)による染色及びFcブロックの後、細胞を抗CD45、抗CD4、抗CD8及び抗FoxP3(すべてeBioscience)で染色した。エクスビボ刺激については、細胞を細胞刺激カクテル(eBioscience)及びタンパク質輸送阻害剤(eBioscience)と共に3時間インキュベートした。この後に抗CD4抗体及び抗CD8抗体による染色及びFcブロックが続いた。市販の緩衝液(IC固定緩衝液及び透過化緩衝液)による固定及び透過化の後、細胞を抗IL-10及び抗IFNg(すべてeBioscience)で染色した。すべての図において、関連する対照群(単剤療法についてはアイソタイプ対照、併用については抗PD-1)と比べた比率変化は、対照群と比べて低下を表す負の値及び増加を表す正の値で示される。
【0258】
図18Aは、抗TIGIT mIgG2a抗体による腫瘍のインビボ処理が対照群と比べてCD4
+TIL集団内での抑制性T細胞の比率で28%の低下を生じ、それは抗TIGIT mIgG1による処理の後では観察されないことを示す。これはTIGIT
+Treg細胞の枯渇があることを示しており、たぶん、実施例14で議論されているような2つのアイソタイプの差別的有効性を説明する。
図18Bは、CD8
+TILの枯渇はないが、代わりに、2つのアイソタイプについて少しの増加が観察される(mIgG1については対照と比べて17%の増加及びmIgG2aについては16%の増加)ことを示している。これらの知見は一緒に、抗TIGIT mIgG2aで処理した腫瘍ではCD8/Tregの比の50%を超える上昇を生じる(
図18C)。腫瘍内T細胞の機能性も抗TIGIT mIgG2a抗体で処理した群について改善され、CD4
+(
図18D)及びCD8
+のTIL(
図18E)双方のIFNg産生の強い増加がある。これは、CD4
+TIL/CD8
+集団におけるエクスビボ刺激の後、IFN-g産生細胞/IL-10産生細胞の比の強い上昇を生じた(
図18F)。
【0259】
図18Gは、抗TIGIT mIgG2aを抗PD-1と併用することが抗PD-1の単剤療法と比べて抑制性T細胞の33%の減少を生じることを示している。再び、CD8
+T細胞については逆が真実であり、抗PD-1の単剤療法と比べてmIgG1及びmIgG2aのアイソタイプそれぞれについてCD8
+T細胞の浸潤で22%及び28%増加する(
図18H)。合わせて、これは、抗TIGIT mIgG2aとの併用での腫瘍にてCD8
+TILのTregに対する比で2倍を超える上昇を生じる(
図18I)。さらに、抗PD-1と併用した抗TIGIT抗体mIgG2aによる処理は、腫瘍内CD4
+T細胞についてTh1対Th2の表現型でのシフトを実証しており、IFNg産生CD4細胞の顕著な増加(
図18J)及びIL-10産生CD4細胞の減少(
図18K)がある。これは、単剤療法にて抗PD-1で処理したマウスと比べて、CD4
+TIL集団におけるエクスビボ刺激の後、IFNg産生細胞/IL-10産生細胞の強い上昇を生じた(
図18L)。
【0260】
(表11)抗TIGIT mIgG2aで処理したマウスとビヒクルで処理したマウスの間で差別的に発現された遺伝子
【0261】
(表12)抗TIGIT mIgG2a+抗PD-1で処理したマウスと抗PD-1で処理したマウスの間で差別的に発現された遺伝子
【0262】
B.NanoStringによる腫瘍のトランスクリプトミクス解析
抗TIGIT抗体の作用のインビボモードを検討するために、単剤療法及び抗PD-1との併用にて抗TIGITで処理した腫瘍の免疫細胞の浸潤をトランスクリプトミクス解析(Nanostring)によって解析した。実施例12に記載されているようにマウスに接種し、それを処理した。抗TIGIT抗体及び/または抗PD-1抗体による3回目の処理の2日後、マウスを屠殺し、腫瘍を採取した。RNAを抽出し、癌免疫学に関与する770の遺伝子の選択の発現をnCounter技術(PanCancer Immune Profiling panel,Nanostring;VIB Nucleomics Coreによって実施された)によって直接定量した。データはnSolverソフトウェア(Nanostring)で解析した。
【0263】
図19Aは、ビヒクルで処理したマウスと抗TIGIT mIgG2aで処理したマウスとの間で差別的に調節される遺伝子の火山プロットを示す。高度に統計的に有意な遺伝子はプロットの頂点に収まり、高度に差別的に発現される遺伝子はいずれかの側(左:抗TIGITで処理されたマウスでは下方調節される;右:抗TIGITで処理されたマウスでは上方調節される)に収まる。高度に上方調節される遺伝子の例には、パーフォリン、グランザイムB及びCTLA-4が挙げられる。実線は補正されていない0.01のp値を表し、点線は補正された0.05のp値を表す(Benjamini-Hochberg補正)。表11及び表12はそれぞれ、ビヒクルと比べた抗TIGIT mIgG2aについて及び抗PD-1に対して抗PD-1+抗TIGIT mIgG2aについて有意に差別的に発現された遺伝子を示す。複数の遺伝子が免疫細胞の機能的サブセットについてスコアで要約された場合、最も目立つ知見は細胞傷害性細胞及びCD8
+T細胞のスコアの上昇だった(
図19B)。同じ変化は抗PD-1単独と比べた抗PD-1+抗TIGIT mIgG2aで処理したマウスに存在した。単剤療法または抗PD-1との併用にて抗TIGIT mIgG1で処理したマウスでは変化は観察されなかった。
【0264】
要するに、これらの結果は、抗TIGIT抗体によるインビボ処理の後に観察された抗腫瘍有効性には腫瘍におけるTreg浸潤の減少が介在する一方でCD8+エフェクターT細胞の集団は増えることを実証している。加えて、CD4+及びCD8+のTILのエフェクター機能は、高い比率のIFNg産生細胞、Th1応答へのシフト及びT細胞の細胞傷害性機能に重要な遺伝子の発現の増加によって示されたように高められる。
【0265】
実施例15:抗TIGITアンタゴニスト抗体によって誘導される抗体依存性細胞性毒性(ADCC)活性
A.健常ドナーに由来するヒトPBMCにおけるインビトロADCC
健常ドナーから単離したPBMCを完全RPMI培地(10%熱非働化FBS+50Uのペニシリン+50Uのストレプトマイシンで補完され、且つ200IUのIL-2/mLで補完された)に再浮遊させた。2.5×10
5個のヒトPBMCを96ウェルプレートU底にてウェル当たりで分配した。哺乳類細胞にて産生させた抗ヒトTIGIT抗体クローン26452またはIgG1アイソタイプ対照(Biolegend,403102)を66.6、0.66及び0.006nMの最終濃度で各相当するウェルに加えた。細胞を5%CO2と共に37℃で20時間インキュベートした。次いで細胞を回収し、以下の抗体パネル:LVD eFluor520(eBioscience 65-0867-14)、抗TCRab-PercP-Cy5.5(クローンIP26,Biolegend 306723)、抗CD4-BV510(クローンSK3,BD Horizon 562970)、抗CD8-APC-Cy7(クローSK1,Biolegend 344714)、抗CD25-BV605(クローン2A3,Biolegend 562660)、抗CD127-APC(A019D5,Biolegend 351316)、抗CCR7-BV421(クローンG043H7,Biolegend 353207)及び抗CD45RO-PE-Cy7(クローンUCHL1,Biolegend 304229)で染色した。結果はゲートをかけた生細胞にて提示する。CD45
+CD4
+またはCD45
+CD8
+はCD4
+またはCD8
+のT細胞全体を表す。CD45
+RO
+CD4
+またはCD45
+RO
+CD8
+細胞はメモリーCD4
+またはCD8
+T細胞を表す一方でCD25
高CD127
低CD4
+はTreg細胞を表す。
図20Aに示すように、ゲートをかけたTregにおけるTIGIT
+細胞の比率はゲートをかけたメモリーCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞におけるよりも高い。
【0266】
製造元の仕様書に従ってAccuCheck Countingビーズ(Life technologies)を用いて絶対的定量を行う。μL当たりの絶対細胞数の算出の後、特異的溶解の%は以下の式=(1-(26452TIGIT抗体で処理した試料でのμL当たりの細胞の絶対数/抗体処理なしの3つ組の平均))×100を用いて算出する。
図20Bに示すように、抗TIGIT26452hIgG1抗体はCD8
+T細胞全体(12.2%)またはCD4
+T細胞全体(16.36%)よりもTreg(62.22%)にて高い特異的溶解を引き起こす。
【0267】
B.マウスの腫瘍におけるエクスビボADCC
抗TIGITマウスIgG2a抗体がTIGIT+抑制性T細胞を枯渇させることができることを確認するために、エクスビボADCCアッセイを設定した。8週齢のメスBalb/cマウスに500,000個のCT26結腸癌細胞(ATCC(登録商標)CRL-2638(商標))を皮下に接種した。接種の3週後、腫瘍を採取し、腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)で解離させた。単個細胞浮遊液を133nMの抗TIGIT抗体26493(mIgG1またはmIgG2aのアイソタイプ)と共に20時間インキュベートした(100万個の細胞/200μLのRPMI+10%FBS)。20時間後、生存性色素(Molecular Probes,L34955)で染色し、且つFcをブロックした後、細胞を抗CD4、抗TIGIT、抗CD8及び抗FoxP3の抗体(すべてeBioscience)で染色した。
【0268】
図21は、様々なTIGIT
+免疫サブセットについてのアイソタイプ対照による処理と比べたTIGIT
+細胞の絶対カウントでの%低下を示す。抗TIGIT mIgG2a抗体処理後の最強の低下が抑制性T細胞で明らかである(約40%の低下)ということは、これらの細胞が従来型のCD4
+またはCD8
+のT細胞よりもADCCの影響を受け易いことを示唆している。
【0269】
全体として、これらの結果は、Treg集団で実証された強い活性によりTIGIT+免疫細胞を枯渇させる抗TIGIT hIgG1または抗TIGIT mIgG2aの有効性を実証している。
【0270】
実施例16:コンピューターによる解析を用いた免疫原性の予測
EpiMatrixタンパク質スコア(De Groot,et al.(2009),Clinical.Immunol.131:189)を用いたコンピューター予測によってクローン29494及び29489と同様にその変異体31282の免疫原性の潜在性を評価した。解析を完了するために、インプット配列を重複する9量体のフレームに分け、各フレームを8つの共通するクラスIIHLA対立遺伝子のパネルに関して評価した。これらの対立遺伝子は「スーパータイプ」である。各1つは多数の追加の「ファミリーメンバー」の対立遺伝子と機能的に同等またはほぼ同等である。まとめて見れば、これら8つのスーパータイプの対立遺伝子はそのそれぞれのファミリーメンバーと共にヒト集団の95%余りを上手く「カバーする」(Southwood,et al.(1998),J.Immunol.160:3363)。対立遺伝子によるフレームの各「評価」はそれぞれ予測されたHLA結合親和性についての言及である。EpiMatrix評価のスコアはおよそ-3から+3までに及び、正規分布する。1.64を上回るEpiMatrix評価のスコアは「ヒット」として定義され、すなわち、潜在的に免疫原性であり、さらなる考慮に値する。
【0271】
他の因子はすべて同等であり、所与のタンパク質に含有されるHLAリガンド(すなわち、EpiMatrixのヒット)が多ければ多いほど、そのタンパク質が免疫応答を誘導することになる可能性が高い。EpiMatrixタンパク質スコアは、所与のサイズのタンパク質で見いだされると予想される予測されたT細胞エピトープの数とEpiMatrixシステムによって予測された推定上のエピトープの数の間での差異である。EpiMatrixタンパク質スコアは観察される免疫原性と相関する。EpiMatrixタンパク質スコアは「正規化され」、標準化尺度でプロットすることができる。「平均」タンパク質のEpiMatrixタンパク質スコアはゼロである。ゼロを上回るEpiMatrixタンパク質スコアは過剰なMHCリガンドの存在を示し、免疫原性の高い潜在性を意味する一方で、ゼロを下回るスコアは予想よりも少ない潜在的なMHCリガンドの存在及び免疫原性について低い潜在性を示す。+20を上回るスコアを持つタンパク質は有意な免疫原性の潜在性を有すると見なされる。
【0272】
抑制性T細胞エピトープの存在を調整すること
抗体は、その可変ドメイン、特に相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列が桁外れな程度に変化することができるという点で独特のタンパク質である。それは、抗体が多種多様な抗原を認識できるようにするこの変異性である。しかしながら、抗体の成熟を制御する組換え及び突然変異の事象は新しいT細胞エピトープまたは新T細胞エピトープも生じることができる。これらの新エピトープは循環しているT細胞にとって「異物」であると思われ得る。抗体配列における新エピトープの存在は、HAHA反応またはADA(抗薬剤抗体)としても知られるヒト抗ヒト抗体反応の形成をもたらすことができる。
【0273】
抑制性T細胞は、変異した配列及び/または高度に可変の配列、たとえば、抗体のCDRを含有するものを含む末梢における完全にヒトのタンパク質に対する免疫応答を抑制することで重要な役割を担う。抑制性T細胞は抑制性T細胞エピトープによって連結され、活性化される。抗体配列における新エピトープの存在に関連する遺伝的リスクは天然に存在する抑制性T細胞エピトープの存在によってバランスが保たれていると思われる。
【0274】
多数のヒト抗体の単離物の配列をスクリーニングすることによって、EpiVaxは抑制性の潜在力を有すると考えられるいくつかの高度に保存されたHLAリガンドを同定している。実験的な証拠は、これらペプチドの多くが実際、ほとんどの対象にて積極的に寛容原性であることを示唆している。これらの高度に保存された抑制性で乱雑なT細胞エピトープは今やTレギトープ(Tregitope)として知られている(De Groot,et al.(2008),Blood,112:3303)。
【0275】
多くの場合、ヒト化抗体に含有される新エピトープの免疫原性の潜在力は有意な数のTレギトープの存在下で効果的に制御することができる。抗体の免疫原性解析の目的で、EpiVaxはTレギトープ調整後のEpiMatrixスコア及び抗治療用抗体反応の対応する予測を開発している。Tレギトープ調整後のEpiMatrixスコアを算出するために、TレギトープのスコアをEpiMatrixタンパク質スコアから差し引く。Tレギトープ調整後のスコアは、23の市販の抗体のセットについて観察された臨床免疫応答とよく相関することが示されている(De Groot,et al.(2009),Clinical Immunol.131:189)。
【0276】
クローン29489、29494及び31282の抗体配列は、免疫原性について限定された潜在性を示す、EpiMatrixスコアの下端にて得点する。ライセンス供与されているモノクローナル抗体の回帰分析は抗体クローン29489及び31282について曝露された患者の約0%でADA反応を予測する。クローン29494については、分析はベースラインVH配列について曝露された患者の2.78%でADA反応を予測し、可変VH配列については2.88%で予測する。データは以下の表13にてまとめている。
【0277】
(表13)EpiMatrixスコア及びTレギトープ調整後のEpiMatrixスコア
【0278】
実施例17:組換えヒトTIGITタンパク質への抗TIGITクローンの結合についての親和性の決定
抗体31282を他の特許出願に記載されている抗TIGIT抗体クローンに対して比較した。具体的には、31282を4.1D3.Q1E(4.1D3とも呼ばれる、WO2017/053748から);22G2(WO2016106302から);31C6(WO2016/028656から);313M2(WO2016/191643から);及びTIG1(WO2017/152088から)と比較した。比較した抗体クローンの参照及び配列を以下の表14に示す。
【0279】
(表14)比較しての抗TIGIT抗体のVHドメイン及びVLドメインの配列
【0280】
A.哺乳類細胞における産生
さらなる特性評価のために十分な量の選択された抗TIGITクローンを産生させるために、特異的な抗体クローン(クローン31282_up、4.1D3、22G2、31C6、313M32及びTIG1)をコードするDNAベクターを生成し、ヒトIgG1アイソタイプの産生のためにHEK細胞に形質導入した。抗体可変ドメインのためのヒトコドンで最適化した合成DNA断片をGeneartでオーダーした。各抗体クラスのマウスIgカッパシグナル配列と定常領域とを含有するpUPE発現ベクターに可変ドメインの配列を継ぎ目なくライゲーションした。発現ベクターは制限解析及びDNA配列決定によって検証した。一時的な形質移入のために、エンドトキシンを含まないDNAmaxiprep(Sigma)を作製し、確立されたプロトコールに従って、Freestyle培地(ThermoFisherScientific)にて重鎖及び軽鎖のベクターをHEK293EBNA1細胞に同時形質移入した。形質移入の24時間後にプリマトン(最終容量0.55%)を加えた。形質移入の6日後、馴化培地を回収した。Mabselect sureLX(GE Healthcare)アフィニティクロマトグラフィーによって抗体をバッチごとに精製した。結合した抗体を、1MのNaClを含有するPBS及びPBSによる2工程で洗浄した。抗体を20mMのクエン酸塩、150mMのNaCl、pH3で溶出し、1/6容量の1MのK2HPO4/KH2PO4、pH8によっておよそpH7に中和した。
【0281】
次に、PBSで平衡化したSuperdex200カラムを用いたゲル濾過によって抗体をさらに精製した。NuPAGEによって分画を分析し、抗体を含有する分画をプールした。0.22μmのシリンジフィルターにて最終生成物を無菌化した。生成物をNuPAGEによって分析し、エンドトキシンのレベルはLALアッセイによって測定した。
【0282】
さらに、IgG1またはIgG4のアイソタイプで以下のように(クローン31282_wu)CHO-K1細胞にてクローン31282も産生させた。抗体をコードしているDNAベクターを構築し、CHO-K1細胞に形質移入した。抗体可変ドメインのためのCHOコドンで最適化したDNA断片を合成し、各抗体クラスのシグナル配列及び定常領域を含有する発現ベクターにライゲーションした。発現ベクターは制限解析及びDNA配列決定によって検証した。確立されたプロトコールに従ってエレクトロポレーション(Bio-Rad)によって重鎖及び軽鎖のベクターをCHO-K1細胞に同時形質移入した。形質移入した培養物を規模拡大し、流加培養に接種した。流加培養の14日後、馴化培地を回収した。
【0283】
回収した細胞培養物を先ず、連続して接続したD0HC及びA1HC(Millipore)による深層濾過の2段階によって清澄化した。次いで、清澄化した回収物を先ず、MabSelect SuRe(GE Healthcare)によるアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。結合した抗体を、1MのNaClを含有する50mMのNaAc-HAc(pH5.5)及び50mMのNaAc-HAc(pH5.5)による2工程で洗浄した。次いで抗体を50mMのNaAc-HAc(pH3.5)によって溶出し、1MのTris-HCl(pH9.0)によっておよそpH5.5に中和した。
【0284】
次に、中和した中間体をさらに素通り画分モードでのPOROS HQ50(Life Tech)を用いたアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)によって精製した。負荷の前にカラムを50mMのNaAc-HAc(pH5.5)で平衡化した。負荷工程及び回収工程の間に回収されたAEXの素通り画分をPOROS XS(Life Tech)を用いた結合・溶出モードでのカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)によってさらに精製した。CEXカラムを50mMのNaAc-HAc(pH5.5)で平衡化し、10CVで0.5MのNaClを含有する50mMのNaAc-HAc(pH5.5)に達するまでの線形勾配溶出(LGE)によって抗体を溶出した。Pellicon 3,ultracel 30kD,タイプA(Millipore)を用いた最終的な限外濾過及び透析濾過(UF/DF)を行ってCEX溶出液を濃縮し、緩衝液を20mMのHis-HCl(pH5.5)に交換した。その後、ポリソルベート80(PS80)及びスクロースを透析濾過した試料に加え、20mMのHis-HCl、0.01%(w/w)のPS80、及び9%(w/v)のスクロース(pH5.5)の緩衝液におけるその濃度が20g/Lに近い最終生成物を得た。生成物はPQA試験すべてを完了した。SEC純度、エンドトキシンのレベル及び他の基準はすべて要件を満たした。
【0285】
B.Biacore測定
BiacoreT200の技術であるCM5センサーチップ(FranceのNovalixで実行)を用いてHBS-EP緩衝液系(10mMのHEPES、pH7.3、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のTween20)にて25℃でバイオセンサー解析を行った。サンプルホテルは8℃で維持した。標準のアミンカップリング化学反応を用いて、ヤギ抗ヒトIgG捕捉抗体(Fcγ断片に特異的、Jackson ImmunoResearch Laboratories)をセンサーチップの双方のフローセルに不動化した(10000RU)。この表面型は、各再生工程の後、新しい解析抗体を再生可能な方法で捕捉するための構成を提供した。フローセル2を用いて捕捉抗体を解析する一方でフローセル1は参照フローセルとして使用した。30から0.123nMに及ぶ6つの異なる抗原濃度をランニング緩衝液で調製した。抗原試料濃度のそれぞれは、3.33nMの2つ組での実行を除いて単回の繰り返しとして実行した。2つのブランク(緩衝液)注入も実行し、系の人為的結果を評価し、差し引くのに使用した。抗原濃度すべてについて会合相(300s)及び解離相(600s)を30uL/分の流速で実施した。10mMのグリシン-HCl、pH1.5の3回の連続注入(15s、15s及び60s)によって表面を再生した。得られたセンサーグラムを1:1モデル(適用した濃度すべてについて同じ動的値を想定する)に大域的に適合させた。1:1動的モデルの適合が信頼できなかったので、親和性はクローン313M32については定常状態からも決定したということは、会合時間の終了時でのヒトTIGITとの平衡を示している。様々な抗TIGITクローンについて得られた結果を表15で報告する。
【0286】
【0287】
実施例18:抗TIGITアンタゴニスト抗体の細胞結合
A.Jurkat-hTIGITへの抗TIGITクローンの結合
ヒトTIGITで形質導入したJurkatE6.1細胞(Jurkat hTIGIT)を用いてヒト抗TIGIT抗体の親和性が測定されている。hTIGITに対する選択した抗体の親和性を分析するために、10
5個の細胞をウェル当たりで分配し、漸減濃度(8;4;2;1;0.5;0.25;0.125;0.062;0.031;0.016;8×10
-3及び4×10
-3nM)の種々の抗TIGITアンタゴニスト抗体クローンと共にインキュベートした(
図2)。抗体をFACS緩衝液にて細胞と共に4℃で20分間インキュベートした。洗浄の後、細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mlで)と共に氷上で20分間インキュベートし、2回洗浄した。LSR BD Fortessaを用いて蛍光強度を解析し、その表面にTIGITを発現している細胞にてPEの中央値蛍光強度として細胞結合を記録した。
【0288】
Jurkat-hTIGITへの結合の半最大濃度(EC
50)はPrismにおける4変数曲線・適合方程式を用いて算出した。結果は
図22Aにて説明し、値は以下の表16にてまとめる。Jurkat-hTIGITを結合するEC
50値はクローン31282については非常に近接しており、HEK細胞(31282_up、0.13nM)またはCHO-K1細胞(31282_wu、0.10nM)にて産生された抗体の間で顕著な差異はなかった。クローン31C6及びTIG1も0.2nMを下回るEC
50値を示す一方で、他のクローン(4.1D3、22G2及び313M32)についての親和性は低く、結果は0.267から0.445nMに及ぶEC
50値を示している。結果は、抗TIGITクローン31282、31C6及びTIG1について操作された系における膜で発現されたヒトTIGITへの強い結合を実証している一方で、他のクローンは低い親和性を有する。
【0289】
(表16)Jurkat-hTIGITへの結合についての様々な抗TIGITクローンのEC
50のデータ及び比較
【0290】
B.健常ヒトPBMCに由来する初代CD8+T細胞への抗TIGITクローンの結合
健常ボランティアから単離されたヒトPBMCをアンタゴニスト抗TIGIT抗体による結合について分析した。細胞をウェル当たり1×105個で分配した。細胞を抗CD16(クローン3G8,BioLegend 302002)、CD32(クローンFLI8.26,BD Bioscience 557333)及びCD64(BD Bioscience 555525)と共に室温で10分間インキュベートし、示した抗ヒトTIGIT抗体のクローンをFACS緩衝液における8;4;2;1;0.5;0.25;0.125;0.062;0.031;0.016;8×10-3及び4×10-3nMの最終濃度にて直接加え、4℃で20分間インキュベートした。洗浄の後、細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mlで)と共に4℃で20分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、以下の抗体及びLVDミックス:抗CD4-PercP-Cy5.5(クローンA161A1,BioLegend 357414);抗CD8-BV510(クローンSK1,BD Bioscience 563919)及びLVD eFluor660(eBioscience 65-0864-18)と共にインキュベートした。
【0291】
生存TIGIT
+CD8
+T細胞におけるMFIシグナルを用いてCD8
+ヒト初代T細胞への結合についてのEC
50値を算出した。結果を
図22Bで説明し、EC
50の濃度を以下の表17でまとめる。ヒト初代CD8
+T細胞を結合することについてのEC
50値は、クローン31282については非常に近接しており、HEK細胞(31282_up、0.21nM)またはCHO-K1細胞(31282_wu、0.19nM)にて産生された抗体の間で顕著な差異はなかった。アンタゴニスト抗TIGIT抗体の様々なクローン間での比較は、クローン31282_wu(0.19nM)及びクローン31282_up(0.21nM)についてヒト初代CD8
+T細胞における結合で最良のEC
50値を示している。クローン31C6及びTIG1はEC
50で2倍の差を示す一方で、クローン22G2、313M32及び4.1D3は6.1~9.7倍の倍数で異なる。全体として、31282_wu及び31282_upはヒト初代CD8
+T細胞上で膜に発現されたTIGITに対する最良の結合を示す。
【0292】
(表17)ヒト初代CD8
+T細胞への結合についての様々な抗TIGITクローンのEC
50のデータ及び比較
【0293】
C.がん患者のPBMCに由来する初代CD8
+T細胞への抗TIGITクローンの結合
様々なアンタゴニスト抗TIGIT抗体のクローンによる結合についてがん患者から単離されたヒトPBMCを分析した。細胞をウェル当たり1×10
5個で分配した。細胞を抗CD16(クローン3G8,BioLegend 302002)、CD32(クローンFLI8.26,BD Bioscience 557333)及びCD64(BD Bioscience 555525)と共に室温で10分間インキュベートし、示した抗ヒトTIGIT抗体をFACS緩衝液にて8、4、2、1、0.5、0.25、0.125、0.062及び0.031nMの最終濃度で直接加え、4℃で20分間インキュベートした。洗浄した後、細胞を抗ヒトIg(Fcガンマ特異的な)-PE(eBioscience,12-4998-82,2.5μg/mlで)と共に4℃で20分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、以下の抗体及び生存性色素(LVD)ミックス:抗CD4-PercP-Cy5.5(クローンA161A1,BioLegend 357414);抗CD8-BV510(クローンSK1,BD Bioscience 563919)及びLVD eFluor520(eBioscience 65-0867-14)と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、固定し、BD LSR Fortessaを用いて表面染色を定量した。FlowJo V10.1を用いてフローサイトメトリーのデータを解析した。ゲートをかけたLVD
-TIGIT
+CD8
+細胞におけるTIGITのMFIを用いてEC
50値を算出した。非線形の回帰曲線を
図22Cに示し、値を以下の表18でまとめる。
【0294】
クローン31282_wu及びクローン31282_upは、それぞれ0.14nM及び0.12nMの濃度でがん患者に由来するCD8+T細胞上に結合する非常に近接したEC50値を示す。クローンの残りは低い親和性を示し、クローン31C6、TIG1及び22G2はそれぞれ1.5、2.7及び3.1倍低い親和性を示す。クローン313M32について測定されたEC50値はクローン31282_upと比べて8.3倍低い。クローン4.1D3は最低の親和性を示し、調べた最良のクローンに対して9.5倍の差で結合する。
【0295】
(表18)がん患者に由来するヒト初代CD8
+T細胞への結合についての様々な抗TIGITクローンのEC
50のデータ及び比較
【0296】
実施例19:抗TIGITアンタゴニスト抗体クローンとTIGIT天然リガンド(CD155)との間の競合アッセイ
ヒトTIGITを過剰発現しているJurkat細胞(Jurkat-hTIGIT)を回収し、5.104個/ウェルで分配し、完全培地にて以下の濃度:133.33;42.20;13.33;4.22;1.33;0.422;0.133;0.042;0.0133;4.2×10-3;1.3×10-3;4.2×10-4;1.3×10-4;4.2×10-5nMでの抗ヒトTIGIT抗体と共に37℃で45分間インキュベートした。過剰な抗体を洗い流し、次いで細胞を15μg/mLでのCD155-His(Creative Biomart,PVR-3141H)と共に37℃で45分間インキュベートした。次いで、抗Hisタグ-PE(Biolegend,362603,試験当たり2μL)を用いて、結合したCD155-Hisを検出し、4℃で30分間インキュベートした。BD LSR Fortessaを用いたFACSによって細胞を解析し、細胞全体におけるPEの中央値蛍光強度に基づいて、CD155の結合を阻止する濃度の半分(IC50)を算出した。
【0297】
結果を
図23で説明し、値を以下の表19でまとめる。抗TIGITクローン31282_wu及び31282_upは、hTIGITを発現するように操作したJurkat細胞にてCD155との競合についてそれぞれ0.05nM及び0.04nMの濃度による最良のIC
50値を示す。他のクローン(4.1D3、22G2、31C6、TIG1)は0.07~0.09nMの間のIC
50値を有する一方で、クローン313M32ははるかに低い有効性(0.65nM)でTIGITへの結合についてCD155と競合する。
【0298】
(表19)ヒトTIGITにおけるCD155との競合についての様々な抗TIGITクローンのIC
50のデータ及び比較
【0299】
実施例20:アンタゴニスト抗TIGITクローンの機能的特性評価
A.Jurkat-hTIGIT細胞によるTIGITの機能的アッセイ
ヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、我々は、hTIGITとTCR連結の際に活性化されるルシフェラーゼレポーターとを発現しているJurkat細胞(Promegaの、解凍してそのまま使用のTIGITエフェクター細胞)を、ヒトPVR/CD155とTCR活性化因子とを発現するように操作したCHO-K1細胞株(Promegaの、解凍してそのまま使用のCD155 aAPC/CHO-K1)と共に共培養した。TIGITを過剰発現しているJurkat細胞の活性化はJurkat細胞上でのTCRの連結の際にCD155を発現しているCHO-K1細胞との接触によって誘導することができ、アンタゴニスト抗TIGIT抗体の存在下で高めることができる。Jurkat細胞の活性化を高める様々な抗TIGITクローンの能力を比較するために、漸増濃度の抗体の存在下で実験を行い、EC50値を算出した。
【0300】
製造元の推奨に従ってCD155 aAPC/CHO-K1(Promega,CS198811)細胞を播き、37℃、5%のCO2のインキュベーターO/Nにてインキュベートした。翌日、漸増濃度(0.03;0.11;0.33;1.06;3.34;10.56;33.38;105.49;及び333nM)の抗TIGIT抗体と共に新しい完全培地を含有するCD155 aAPC/CHO-K1細胞のプレートに、製造元の推奨に従って、TIGITエフェクター細胞(Promega,CS198811)を加え、37℃、5%CO2にて6時間インキュベートした。6時間のインキュベートの後、Bio-GloTMルシフェラーゼアッセイ系(Promega,G7941)を用いてルシフェラーゼ活性を測定することによってTIGITエフェクター細胞の活性化を評価した。
【0301】
図24Aに示し、表20でまとめるように、抗TIGIT抗体31282はアッセイにおけるEC
50値及びルシフェラーゼシグナルの最大誘導という点で最良の有効性を有する。HEK細胞(31282_up)またはCHO-K1細胞(31282_wu)にて産生されたクローンについて観察された活性はアイソタイプ対照(Bioexcell,BE0297)よりも8倍高い最大のルシフェラーゼシグナルに匹敵し、EC
50濃度はそれぞれ3.3nM及び3.5nMにて測定された。比較の目的で、クローン4.1D3、22G2及び31C6は5~10nMの間のEC
50に関連してアイソタイプ対照に比べて5.3~6.7倍の間の最大活性を有する。クローン313M32及びTIG1についてのEC
50値は調べた濃度での低い活性及び曲線の不十分な適合のために決定することができなかった(
図24A)。
【0302】
(表20)Jurkat-hTIGIT細胞における機能的活性についての様々な抗TIGITクローンのEC
50のデータ及び比較
P.F.:不十分な適合
【0303】
B.健常ボランティアに由来するヒト初代CD8+T細胞におけるTIGITの機能的アッセイ
ヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、我々は、健常ヒトドナーのPBMCに由来するヒト初代CD8+T細胞を、ヒトPVR/CD155を発現し、且つヒトT細胞を活性化するように操作したCHO-K1細胞株と共に共培養した。我々は、操作されたCD155を発現しているCHO-K1細胞の存在下でのCD8+T細胞によるIFNgの放出が抗TIGITアンタゴニスト抗体によりhTIGITを遮断することによって高められ得ることを観察した。これら抗体のIFNgの放出を高める能力を比較するために、漸増濃度の抗体の存在下で実験を行い、EC50値を算出した。
【0304】
製造元の推奨に従って、CD155 aAPC/CHO-K1(Promega,CS198811)細胞をU底96穴プレートに播き、37℃、5%CO2のインキュベーターO/Nにてインキュベートした。翌日、健常ドナーの全血から単離した凍結ヒト末梢血単核細胞(Immunehealth)から陰性選択キット(Stemcell Technologies,17953)を用いて製造元の推奨に従ってCD8+T細胞を精製した。次いで、精製したCD8T細胞と漸増濃度(0.011nM、0.033nM、0.11nM、0.33nM、1.06nM、3.3nM、10.6nM、33.3nM及び105.5nM))の抗体とをCD155 aAPC/CHO-K1(100,000個のCD8T細胞/抗体を含有する完全培地100uL)に加え、37℃、5%CO2にて5日間インキュベートした。最終的に、製造元の推奨に従って実行したELISAアッセイ(Affymetrix eBioscience,88-7316-86)を用いて細胞上清にてIFNgの濃度を評価した。
【0305】
図24Bに示し、表21にまとめるように、抗TIGITクローン31282及び4.1D3はIFNg分泌の最良の誘導を示し、アイソタイプ対照抗体に比べてそれぞれ2.7倍及び2.9倍上昇する。クローン31282は0.13nMで測定されたEC
50濃度という点でIFNg産生の誘導について最良の有効性を有する。クローン31C6は2.3倍異なるEC
50値を示す一方で、クローン22G2及び4.1D3はクローン31282よりも3.1倍及び10.8倍効き目が弱い。調べた濃度での低い活性及び曲線の不十分な適合のためにクローン313M32については値を決定することができなかった(
図24B)。
【0306】
(表21)ヒト初代CD8
+T細胞における機能的活性についての様々な抗TIGITクローンのEC
50のデータ及び比較
【0307】
C.がん患者に由来するヒト初代CD3+T細胞におけるTIGITの機能的アッセイ
がん患者に由来するT細胞上のヒトTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、がん性患者のPBMCに由来するヒト初代CD3+T細胞を、ヒトPVR/CD155を発現し、且つヒトT細胞を活性化するように操作したCHO-K1細胞株(CHO-TCR-CD155)と共に共培養した。我々は、操作したCD155を発現しているCHO-K1細胞の存在下でのCD3+T細胞によるIFNgの放出が抗TIGITアンタゴニスト抗体31282によりhTIGITを遮断することによって高められ得ることを観察した。
【0308】
製造元の推奨に従って、CD155 aAPC/CHO-K1(Promega,CS198811)細胞をU底96穴プレートに播き、37℃、5%CO2のインキュベーターO/Nにてインキュベートした。翌日、24時間早く採取したがん性患者(HNSCC)の全血から単離した新鮮なヒト末梢血単核細胞(Biopartners)から陰性選択キット(Stemcell Technologies,17951)を使用することによって製造元の推奨に従ってCD3+T細胞を精製した。精製したCD3+T細胞と66.7nMの抗体を次いでCD155 aAPC/CHO-K1(100,000個のCD3T細胞/抗体を含有する完全培地100uL)に加え、37℃、5%CO2にて5日間インキュベートした。最終的に、製造元の推奨に従って実行されるELISAアッセイ(Affymetrix eBioscience,88-7316-86)を用いて細胞上清にてIFNgの濃度を評価した。
【0309】
図24Cに示すように、抗体31282がIFNgの分泌を増やす強い機能的な活性を誘導したということは、がん患者に由来するPBMCのT細胞を再活性化するこの抗TIGIT抗体の潜在力を実証している。
【0310】
D.抗TIGITクローン31282はがん患者のPBMC及び解離させた腫瘍細胞(DTC)に由来するT細胞にて細胞内サイトカインの産生を増やす
この実施例では、新しく単離した対応したPBMCと、腎臓癌のがん患者に由来する解離させた腫瘍細胞(DTC)内の腫瘍浸潤リンパ球とからのT細胞サイトカインの産生を評価するために細胞内フローサイトメトリー染色を行った。DTCについては、特定の腫瘍型についての製造元の指示書に従って、腫瘍を機械的に細かく刻み、次いで、穏やかなMACS解離装置にて回転のもとで腫瘍解離キット(Miltenyi Biotech #130 095 929)と共にインキュベートした。細胞内染色を行う前に、T細胞刺激ビーズカクテル(Dynabeads,Thermo Fisher)で16時間細胞を刺激した。刺激の最後の3時間の間に、タンパク質輸送阻害カクテル(eBioscience)及び細胞刺激カクテル(eBioscience)を細胞に加えた。コンジュゲートした抗体はEbioscience/Thermo Fisher Scientific、BioLegendまたはBD Biosciencesから購入した。表面染色は、濾過したFACS緩衝液(PBS+2mMのEDTA+0.1%BSA)及びブリリアント染色緩衝液(BD #563794)を用いて製造元の指示によって行った。表面染色に先立って、細胞を適当なヒトFcBlock(BD #564220)でブロックした。細胞内染色については、BD Cytofix/cytoperm溶液(BD Biosciences)を用いて細胞を固定し、透過化した。細胞は以下の抗体パネル:抗CD45-BB515(クローンHI30、BD Horizon 564585)、抗CD73-BV421(クローンAD2、BD Horizon 562430)、抗CD8a-BV510(クローンSK1、BD Horizon 563919)、抗CD3-BV650(クローンSK7、BD Horizon 563999)、抗IFNγ-BV711(クローン4S.B3、BD Horizon 564793)、抗IL-2-APC(MQ1-17H12、eBioscience 17-7029-82)、抗CD4-APC-R700(クローンRPA-T4、BD Horizon 564975)、LVD eFluor780(eBioscience 65-0865-14)、抗TIGIT-PE(クローンMBSA43、eBioscience E13456-108)、抗CD39-PE-Dazzle594(クローンA1、Biolegend 328224)及びTNFα-PE-cy7(クローンMab11、eBioscience 25-7349-82)で染色した。データ取得はFACS Fortessa(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)によって解析した。生細胞は前方散乱及び側方散乱にゲートをかけた。T細胞サブセットは以下のようにゲートをかけた:PBMCについてはD45+CD3+及びDTCについてはCD45+CD3+CD4+とCD45+CD3+CD8+。サイトカインを分泌しているT細胞は未染色及び未刺激の対照を用いてゲートをかけた。
【0311】
図24Dは、IL-2、IFNg及びTNFaの細胞内含量がすべて、抗TIGITクローン31282の存在下での活性化の際に上昇したことを示す。この上昇は
図24Cで説明しているデータに従ってPBMC由来のCD3
+T細胞で観察されたが、解離させた腫瘍細胞由来のCD4
+及びCD8
+双方のTILでも観察された。このことは、PBMC集団及びがん患者のT細胞に由来するTIL集団の活性化を高める抗TIGITクローン31282の潜在力を実証している。
【0312】
実施例21:抗TIGITクローン31282はがん患者に由来するPBMCにてTregの優先的な細胞傷害を誘導する
この実施例では、肺癌患者から単離されたPBMCを完全RPMI培地(10%熱非働化FBS+50Uのペニシリン+50Uのストレプトマイシンで補完された)に再浮遊させた。2.5×105個のヒトPBMCを96ウェルプレートU底にてウェル当たりで分配した。抗ヒトTIGIT抗体クローン31282、ヒトIgG1アイソタイプ対照(BioXcell BE0297)またはリツキシマブ(InvivoGen hcd20-mab1)を6.6nMの最終濃度で相当する各ウェルに加えた。細胞を5%CO2と共に37℃で20時間インキュベートした。次いで細胞を回収し、以下の抗体パネル:LVD eFluor520(eBioscience 65-0867-14)、抗TCRab-PercP-Cy5.5(クローンIP26、Biolegend 306723)、抗CD4-BV510(クローンSK3、BD Horizon 562970)、抗CD8-APC-Cy7(クローンSK1、Biolegend 344714)、抗CD25-BV605(クローン2A3、Biolegend 562660)、抗CD127-APC(A019D5、Biolegend 351316)、抗CCR7-BV421(クローンG043H7、Biolegend 353207)及び抗CD45RO-PE-Cy7(クローンUCHL1、Biolegend 304229)で染色した。結果はゲートをかけた生細胞で提示する。製造元の仕様書に従ってAccuCheck計数ビーズ(Life technologies)を用いて絶対的な定量を行った。μL当たりの細胞の絶対数の計算の後、特異的溶解の%は以下の式=(1-(31282TIGIT抗体で処理した試料におけるμL当たりの細胞の絶対数/対照アイソタイプで処理した試料の3つ組の平均))×100を用いて算出される。結果は3つ組での特異的溶解の平均%±SDとして提示される。ADCC/ADCPのエフェクター細胞の細胞傷害活性は、リツキシマブとのインキュベートの際、ゲートをかけたCD19+細胞における特異的細胞溶解の%を測定することによって評価した。
【0313】
図25に示すように、抗TIGITクローン31282はCD45RO
+CCR7
+/-CD8
+T細胞(メモリーCD8
+T細胞全体)(-1.48±6%)またはCD45RO
+CCR7
+/-CD4
+T(メモリーCD4
+T細胞全体)(0.64±3%)よりもTreg細胞(30.1±3%)にて高い特異的溶解を引き起こす。リツキシマブ陽性対照はゲートをかけたCD19
+細胞にて77.9%(±6.8%)の特異的溶解を引き起こす。全体のデータは、メモリーCD4
+及びCD8
+のT細胞集団全体に比べてがん患者のPBMCに由来するTreg細胞の優先的な枯渇を実証している。結腸腺癌の患者に由来する細胞を用いてTreg細胞の類似する優先的な枯渇が観察された。
【0314】
実施例22:がん患者のPBMC及び解離させた腫瘍細胞に由来する免疫集団におけるTIGIT発現の特性評価
フローサイトメトリー解析を行って、がん患者に由来する新しく単離した対応するPBMCと解離させた腫瘍細胞(DTC)内の腫瘍浸潤リンパ球とに由来する免疫細胞サブセットにおけるTIGITの発現を評価した。様々な適応症:卵巣癌、腎臓癌、HNSCC、皮膚癌、黒色腫、及び肺癌に由来する試料を取得した。DTCについては、特定の腫瘍型についての製造元の指示書に従って、腫瘍を機械的に細かく刻み、次いで、穏やかなMACS解離装置にて回転のもとで腫瘍解離キット(Miltenyi Biotech #130 095 929)と共にインキュベートした。PBMCは密度勾配培地(Lymphoprep Axis-Shield #1115758)にて全血から単離した。表現型データを健常個体(n=10)から単離した凍結PBMCと比較した。
【0315】
濾過したFACS緩衝液(PBS+2mMのEDTA+0.1%BSA)及びブリリアント染色緩衝液(BD #563794)を用い、製造元の指示によって細胞を染色した。染色に先立って適当なヒトFcBlock(BD #564220)で細胞をブロックし、データ取得に先立ってIC固定緩衝液(eBioscience #00-8222-49)を用いて固定した。DTCは以下の抗体パネル:抗CD45-BB515(クローンHI30、BD Horizon 564585)、抗CD73-BV421(クローンAD2、BD Horizon 562430)、抗CD8a-BV510(クローンSK1、BD Horizon 563919)、抗CD3-BV650(クローンSK7、BD Horizon 563999)、抗CD56-BV711(クローン5.1H11、Biolegend 362542)、抗CD279-BV785(クローンEH12.2H7、Biolegend 329930)、抗CD127-APC(クローンA019D5、Biolegend 351316)、抗CD4-APC-R700(クローンRPA-T4、BD Horizon 564975)、LVD eFluor780(eBioscience 65-0865-14)、抗TIGIT-PE(クローンMBSA43、eBioscience E13456-108)、抗CD39-PE-Dazzle594(クローンA1、Biolegend 328224)及びCD25-PE-cy7(クローンBC96、Biolegend 302612)で染色した。PBMCは以下の抗体パネル:抗CD45RO-BB515(クローンUCHL1、BD Horizon 564529)、抗CD73-BV421(クローンAD2、BD Horizon 562430)、抗CD8a-BV510(クローンSK1、BD Horizon 563919)、抗CD3-BV650(クローンSK7、BD Horizon 563999)、抗CD56-BV711(クローン5.1H11、Biolegend 362542)、抗CD197-BV786(クローン3D12、BD Horizon 563710)、抗CD127-APC(クローンA019D5、Biolegend 351316)、抗CD4-APC-R700(クローンRPA-T4、BD Horizon 564975)、LVD eFluor780(eBioscience 65-0865-14)、抗TIGIT-PE(クローンMBSA43、eBioscience E13456-108)、抗CD39-PE-Dazzle594(クローンA1、Biolegend 328224)及びCD25-PE-cy7(Cl bone BC96、Biolegend 302612)で染色した。データ取得はFACS Fortessa(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)で解析した。生細胞は前方散乱及び側方散乱にゲートをかけた。種々の免疫細胞サブセットは以下のようにゲートをかけた:CD3+CD4+CD127+CD25-(CD3+CD4+非Treg細胞)、CD3+CD4+CD127低CD25+(抑制性T細胞)、CD3+CD8+(CD3+CD8+T細胞)、CD3-CD56+(NK細胞)、CD3+CD56+(NKT細胞)、CD3-CD56-(非T/NK細胞)。Quantibrite PEビーズ(BD #340495)を同じ機器設定で実行し、蛍光データを細胞当たりで結合した抗体の数に変換するのに使用した。
【0316】
百分位数を計算するTukey法を用いた箱ひげ図の表現を用いて、様々な免疫集団におけるTIGIT発現の頻度を
図26Aに表し、各サブセットのTIGIT密度を
図26Bに表す。
【0317】
データは、健常ドナーのPBMCと比べてがん患者のPBMCの方がT細胞サブセットにおけるTIGITの頻度が高いことを示している。この頻度はさらにDTCのTILで上昇する(
図26A)。CD3
+CD4
+非Treg細胞及びCD4
+Treg細胞の表面上でTIGITの密度で同じ観察が見られる一方で、CD3
+CD8
+T細胞については細胞当たりのTIGIT分子の数はDTC TILでは低下する(
図26B)。
【0318】
実施例23:TIGITの構造的な及び機能的なエピトープマッピングとクローン31282
抗TIGIT mAbであるクローン31282とTIGIT組換えタンパク質との間の相互作用をさらに特性評価し、理解するために、TIGITとの複合体における31282の結晶構造をX線回折によって決定した。
【0319】
A.TIGIT及びFabの発現、精製及び結晶化
ヒトTIGIT残基23~128はProteros Biostructures GmbHが作製した。N末端HISタグを持つ(トロンビンで切断可能)TIGIT(23~128)をpET15bにクローニングし、37℃で封入体でのBI21(DE3)にてLB培地において発現させた。封入体(IB)をTris/HCl、pH7.4及びTris/HCl、pH7.4、0.05%のBrij-35を含有する緩衝液で洗浄した。IBを6MのGdm/HCl、50mMのTris、pH8.5及び10mMのDTTで変性させた。50mMのTris/HCl、pH8、1mMのGSH、0.5mMのGSSG、150mMのNaClにて折り畳み直しを行った。折り畳み直したタンパク質をHIS-トラップで精製した。トロンビン切断を介してN末端のHISタグを取り外し、50mMのTris/HCl、pH7.5、200mMのNaClにて平衡化したSuperdex-75にてさらに精製した。
【0320】
Fab断片の発現については、HEK293F細胞を1%のペニシリン/ストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン及び0.1%のプルロニックを伴ったFreestyleF17にて増殖させた。形質移入用に増殖させた培養物を3LのErlenmeyerフラスコ(Corning,2Lの細胞培養作業容量、37℃、8%v/vのCO2、80~120rpm、50mmの振幅)にて培養した。形質移入の前日に培養物を希釈し、細胞数を1×106個/mLに調整した。発現培養物の容量は6Lだった。Fabの軽鎖及び重鎖についてのプラスミドで一時的な形質移入を行った。DNA/FectoPro(FectoPro,PolyPlus)のMasterMixを純粋なF17培地で調製し、10分間インキュベートした(PolyPlusのプロトコールに従って)。この形質移入ミックスを一滴ずつ細胞浮遊液に加え、直ちにブースターを加えた。形質移入の18時間後、培養物に3g/Lのグルコースを与えた。
【0321】
Fab断片の精製については、形質移入の6日後、HEK293細胞培養物の6Lの上清を遠心分離によって回収し、30mLのKappaSelectカラムにかけた。KappaSelectをPBS、pH7.4で洗浄し、クエン酸ナトリウム、pH3で溶出し、Fabを含有する分画をTris緩衝液で中和した。20mMのTris、pH8、100mMのNaClで平衡化したSuperdexS-200カラムにてFabをさらに精製し、さらなる使用まで-80℃で保存した。
【0322】
Fab-TIGIT複合体の形成については、精製したTIGITを精製したFabと1.5:1の比で混合し、複合体を20mMのTris、pH8、100mMのNaClで平衡化したSuperdexS-200にて精製した。Fab-TIGIT複合体を結晶化のために35mg/mLに濃縮した。0.1μgのタンパク質溶液(20mMのTRIS、pH8、0;100mMのNaClにおける35.3mg/ml)を1:1の比でリザーバ溶液(0.10Mのカコジル酸ナトリウム、pH6.00;15%(w/v)のPEG4000)と混合することによって蒸気拡散法を用いて277KにてFab-TIGIT複合体を結晶化した。25%のグリセロールを加えたリザーバ溶液にそれらを浸すことによって結晶を凍結防止した。
【0323】
B.データの収集及び処理
Proteros Biostructures GmbHの標準プロトコールを用いて低温プロトコールを確立した。結晶を瞬間凍結し、100Kの温度で測定した。極低温状態を用いてSWISS LIGHT SOURCE(SLS,Villigen,Switzerland)にてFab:TIGIT複合体の結晶からX線回折データを収集した。結晶は空間群P1に属する。プログラムXDS及びXSCALEを用いてデータを処理した。データの収集及び処理の統計は表22にて見いだすことができる。
【0324】
(表22)データの収集及び処理の統計
1SWISS LIGHT SOURCE (SLS, Villigen, Switzerland)
2括弧内の値は最高分解能のビンを指す。
3独立した反射から算出した。
【0325】
C.構造のモデル化及び緻密化
構造を決定し、解析するのに必要な位相情報は分子置換によって得た。Fabの以前解決した構造を検索モデルとして使用した。ソフトウェアパッケージCCP4及びCOOTと共に標準のプロトコールに従ってその後のモデルの構築及び緻密化を行った。自由R因子の計算については、最終モデルの正確性を相互検証する評価基準、測定された反射の約2.5%を緻密化手順から除外した(表23を参照のこと)。
【0326】
TLSの緻密化(REFMAC5,CCP4を用いて)を行い、その結果、低いR因子及び高品質の電子密度マップを生じた。自動的に生成される局所のNCSの拘束が適用されている(さらに新しいREFMAC5のバージョンのキーワード「ncsr局所」)。リガンドのパラメーター化及び対応するライブラリファイルの生成はそれぞれCHEMSKETCH及びLIBCHECK(CCP4)で行った。
【0327】
3.0で合わせたF0-FCマップのピークに水分子を入れ、その後REFMAC5で緻密化し、COOTの検証ツールで水すべてをチェックすることによりCOOTの「Find waters」のアルゴリズムによって水モデルを構築した。疑われる水のリストについての基準は:80Å2より大きいB因子、1.2σ未満の2F0-FCマップ、2.3Å未満または3.5Åを超える最も近い接触への距離だった。疑われる水分子及びリガンド結合部位(10Å未満のリガンドまでの距離)におけるそれらを手動でチェックした。最終的な複合体の構造をPHENIXで緻密化した。我々は、XYZ座標、リアル空間、個々のB因子及び群B因子を含む緻密化パラメーターを選択した。X線/立体化学の加重を最適化し、NCS拘束も緻密化のために選択した。最終モデルのRamachandranプロットは好ましい領域にて残基すべての95.39%を示し、許される領域では3.95%を示す。最終構造の統計及び緻密化の過程を表23でリストにする。
【0328】
(表23)緻密化の統計
1
1PHENIXにて定義されるような値
2COOTで算出された
【0329】
D.全体的な構造
ヒトFab抗体断片の重鎖及び軽鎖はヒト抗体の典型的な折り畳みを示す(
図27A)。基本的には同じ全体的な構造を持つ非対称単位にて2つのヘテロ三量体がある。モデルはTIGITの残基23~128、クローン31282の重鎖の残基1~224及びクローン31282の軽鎖の残基1~214を含む。重鎖の一方のショートループ領域は電子密度によって完全に定義されるわけではないので、モデルに含まれていない。
【0330】
FoldXプログラムを用いて回折画像を解析し、残基のエネルギー寄与を推定し、相互作用のホットスポットを定義した。結合界面を形成するアミノ酸残基は電子密度マップで十分に定義されている。解釈されたX線回折データはFabとTIGITの間での相互作用を明瞭に示している(
図27B及び27C)。クローン31282の軽鎖CDRはTIGITの2つの領域と相互作用しており、CDR L1のArg30とTyr33はTIGITの残基Asn58及びGlu60に接触し;CDR L1のArg30とCDR L3のPhe93はTIGIT残基のIle109に接触する。CDR L2はTIGITに接触していない(表24)。クローン31282の重鎖はTIGITの様々な領域と相互作用し、CDR H1のTyr33は残基Leu73でTIGITに接触し、CDR H2のVal50、Ser54及びSer57は残基Leu73でTIGITに接触し、CDR H3のAsp102、Tyr103及びTrp104は残基Gln56、Ile68、Leu73及びHis76でTIGITに接触する。
【0331】
抗TIGITクローン31282/TIGIT複合体のこの結晶構造に基づいて、クローン31282によって接触されるTIGITの残基(クローン31282によって結合されるTIGITについてのエピトープ残基)及びTIGITによって接触されるクローン31282の残基(TIGITによって結合されるクローン31282についてのパラトープ残基)が決定された。表24及び25及び
図27Cはクローン31282の軽鎖(表24)または重鎖(表25)の残基と接触したTIGITの残基を示す。接触残基は以下の基準:(i)それが0.3kcal/モルより大きい計算された結合自由エネルギーの寄与を有する、(ii)それがX線構造における残基すべての平均B因子より低い実験的な平均されたB因子を有する、(iii)それが4.0オングストローム以下の距離で抗体原子との少なくとも3対の重原子の原子間接触を作る、(iv)それが溶媒に曝露された水素結合またはイオン相互作用のみを作らない、(v)それが非芳香族極性残基(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、またはArg)であれば、それは抗体との少なくとも1つの水素結合またはイオン相互作用を作る;のそれぞれを満たす各アミノ酸として定義された。
【0332】
(表24)TIGITのエピトープ残基及びクローン31282の軽鎖における対応するパラトープ残基のまとめ
【0333】
(表25)TIGITのエピトープ残基及びクローン31282の重鎖における対応するパラトープ残基のまとめ
【0334】
実施例24:抗TIGITクローン31282と32959との間での競合アッセイ
ヒトIgG1アイソタイプの抗TIGIT抗体クローン32959はHEK細胞で産生させ、上記の実施例17に記載されているように精製した。
【0335】
ヒトTIGITを過剰発現しているJurkat細胞(Jurkat-hTIGIT)を回収し、5.10
4個/ウェルで分配し、このクローンのKdの0~100倍の濃度の範囲を表す以下の濃度:0nM(Abなし)、0.08nM、0.16nM、0.8nM及び8nMでのアンタゴニスト抗TIGITクローン31282と共にインキュベートした。過剰の抗体を洗い流し、細胞を漸減濃度(8;4;2;1;0.5;0.25;0.125;0.062;0.031;0.016;0.008及び0.004nM)の直接カップリングした(AF647)抗TIGITクローン32959と共に4℃で30分間インキュベートした。LSR BD Fortessaを用いて幾何平均の蛍光強度を解析した。細胞の結合をAF647の中央値蛍光強度として記録した。クローン32959のEC
50結合の算出については、Prismにおける4変数曲線適合方程式を用いてhTIGIT-Jurkatへの結合の半最大濃度(EC
50)を算出し、得られた値を表26に示し、
図28で説明する。結果はクローン31282の濃度とは無関係に抗TIGITクローン32959の強い結合を示すということは、アンタゴニスト抗TIGIT抗体との競合の非存在を実証している。
【0336】
(表26)漸増濃度のアンタゴニスト抗TIGITクローン31282の存在下での抗TIGITクローン32959のJurkat-hTIGITへの結合についてのEC
50濃度
【0337】
実施例25:カニクイザルにおける単回i.v.注射後のクローン31282の薬物動態プロファイルの測定
カニクイザルにi.v.ボーラス注射を介して抗TIGITクローン31282のIgG1またはIgG4を与えた。抗体は2匹(オス1及びメス1)の動物に3つの異なる濃度(0.1mg/kg;1mg/kg;10mg/kg)で投与した。1日目の投与後504時間に至るまで血液を採取した。血液試料を血漿に処理し、ELISA法を用いて抗TIGITクローン31282のIgG1またはIgG4の濃度について分析した。個々の動物の血漿濃度・時間データを用い、Phoenix WinNonlin(バージョン6.3,Pharsight,a Certara Company,Princeton,NJ)の血管内モデルを用いてIV投与後の抗TIGITクローン31282のIgG1及びIgG4についての毒物動態パラメーター値を算出した。
【0338】
0.1、1及び10mg/kgでの抗TIGITクローン31282のIgG1及びIgG4のIVボーラス投与に続いて、IgG1濃度は投与後それぞれ240時間、336時間、及び504時間に至るまでオス及びメスのサルの血漿にて定量でき、IgG4はそれぞれ168時間、240時間及び504時間に至るまで定量できた(
図29及び表27)。抗TIGITクローン31282のIgG1及びIgG4のi.v.ボーラス投与の後、IgG1及びIgG4への全身性曝露において明らかな性別関連の差異(Cmax及びAUClast)はなかったが、0.855から1.16に及ぶ比(オス/メス)があった。
【0339】
オス及びメスのサルへの抗TIGITクローン31282のIgG1のi.v.ボーラス投与に続いて、血漿IgG1濃度はすべての用量レベルで二相性に低下したが、平均終末相半減期(t1/2)は84.7~174時間に及んだ(
図29)。全身性クリアランス(CL)は検討した用量にわたって一貫しており、0.280から0.392mL/時間/kgに及んだ。定常状態での分布のみかけの体積(Vss)は調べた用量レベルの間で一貫しており、値は53.7から66.5mL/kgに及んだ。0.1から1mg/kgまで及び1から10mg/kgまでの範囲における抗TIGITクローン31282のIgG1用量の10倍の増加は曝露にてほぼ比例した増加を生じた(9.57~14.5倍の増加)。
【0340】
オス及びメスのサルへの抗TIGITクローン31282のIgG4のi.v.投与に続いて、血漿IgG4濃度は調べた用量レベルすべてで二相性に低下し、t1/2は148~334時間だった(
図29及び表28)。CLは調べた用量レベルの間で一貫しており、0.160から0.219mL/時間/kgに及んだ。平均Vssは41.2から70.7mL/kgに及んだ。0.1から1mg/kgまで及び1から10mg/kgまでの範囲における抗TIGITクローン31282のIgG4用量の10倍の増加はIgG4への曝露にてほぼ比例した増加を生じた(9.32~12.5倍の増加)。
【0341】
(表27)カニクイザルにおけるi.v.ボーラス後の抗TIGITクローン31282ヒトIgG1についての平均毒物動態パラメーターのまとめ
【0342】
(表28)カニクイザルにおけるi.v.ボーラス後の抗TIGITクローン31282ヒトIgG4についての平均毒物動態パラメーターのまとめ
【0343】
実施例26:ヒト腫瘍細胞集団におけるTIGIT発現の特性評価
フローサイトメトリー解析を行って、血液癌の異なる適応症のがん患者に由来する血液試料における正常及び腫瘍のT細胞またはB細胞でのTIGITの発現を評価した。
【0344】
セザリー症候群患者の試料を調べて、悪性の及び正常のCD4+T細胞集団におけるTIGITの発現を比較した。これらの集団を分離するために、Beckman CoulterのTCR-Vbレパトアキット(#IM3497)を用いて、悪性クローンのTCR-Vbの再構成の事前決定を行った。悪性クローンがいったん特定されると、以下の市販試薬:抗CD3 Krome Orange(#B00068)、抗CD4-PE(#A07751)、抗CD8-PC7(#737661)、抗CD56-PC5(#A07789)、抗CD45-Pacific Blue(#A74763)、抗CD19-AF750(#A94681)及び抗Vb8-FITC(#IM1233)(すべてBeckman-Coulter由来)及び抗TIGIT-APC(クローンMBSA43、ebiosciences #17-9500-42)を用いてセザリー症候群患者の免疫細胞にてTIGIT発現の特性を明らかにした。CytoFlex装置(Beckman-Coulter)にてセザリー症候群患者の試料のフローサイトメトリー解析を行った。データはFloJoソフトウェア(FlowJo,LLC)によって解析した。
【0345】
代表的な例を
図30Aに示す。悪性のTCR-Vb8クローンを有するこのドナーのためにゲーティング戦略を
図30Aに示すが、悪性細胞はCD45
+CD3
+CD4
+Vb8
+であり、正常CD4
+T細胞はCD45
+CD3
+CD4
+Vb8
-だった。TIGITの強い発現は正常CD4
+T細胞に比べて悪性CD4
+T細胞で観察される(4987及び999の各MFI)(
図30B)。
【0346】
同様に、フローサイトメトリー解析を行ってCLLの患者に由来する骨髄試料における正常の及び悪性のB細胞でのTIGITの発現を評価した。試料を以下の抗体パネル:LVD eFluor780(eBioscience 65-0865-14)、抗CD45-BB515(クローンHI30、BD Horizon 564585)、抗CD5-BV510(クローンUCHT2、Biolegend 363381)、抗CD19-BV711(クローンSJ25C1、BD Horizon 563036)及び抗TIGIT-PE(クローンMBSA43、eBioscience E13456-108)で染色した。データの取得はFACS Fortessa(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)で解析した。生細胞は前方散乱及び側方散乱にゲートをかけた。種々の細胞サブセットは以下のようにゲートをかけた:CD45+CD19+CD5-(正常B細胞)及びCD45+CD19+CD5+(悪性B-CLL)。
【0347】
代表的な例を
図31Aで説明しているゲーティング戦略と共に
図31に示す。正常B細胞(1%)とは対照的に高い比率の悪性B-CLL細胞がTIGIT陽性(75%)である(MFIはそれぞれ1440及び810)(
図31B)。
【0348】
全体的に、得られたデータは特定の血液癌の適応症で腫瘍細胞がTIGITを発現していることを実証している。
【0349】
実施例27:マウスT細胞リンパ腫モデルにおける単剤療法での抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
この実験のために、EL4T細胞リンパ腫細胞(ATCC(登録商標)、TIB-39(商標))を、マウスTIGITを安定して発現するように操作した(EL4-mTIGIT)。GFPをコードする類似のベクターで形質導入したEL4細胞を対照として使用した(EL4-GFP)。細胞のプールをサブクローニングしてEL4-mTIGIT及びEL4-GFPのクローンを得た。使用した抗TIGIT抗体は、VH FR3の残基27をLからVに変異させ、VH FR4の残基6をMからTに変異させるように修飾した、抗体29527の修飾された型(マウスTIGITと交差反応する)であり、ヒトIgG1アイソタイプで作製した。修飾した29527抗体(29527m)のVHドメインの配列を以下に示す。抗体29527mのVL配列は29527のVL(配列番号240)に相当する。
【0350】
8週齢のメスBalb/cマウスに1×106個のEL4-mTIGIT細胞または2×105個のEL4-GFP細胞を皮下に接種した。接種後7日目に腫瘍体積が平均110mm3前後であれば、マウスを同等の腫瘍体積で処理群に無作為化した(EL4-mTIGITについての群当たりn=15及びEL4-GFPについての群当たりn=10)。腫瘍の接種後、7日目、10日目、13日目及び16日目に腹腔内注射によってマウスを200μgの抗TIGIT抗体またはアイソタイプ対照抗体(hIgG1、BioXcell)で処理した。7日目から26日目まで腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積を週3回電子キャリパーで測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えたら、マウスを屠殺した。腫瘍増殖曲線は線形混合モデルによって統計的に解析した。時間*処理群の相互作用を調べることによって処理群間の差異を評価した。
【0351】
図32は、EL4-mTIGIT(A~C)またはEL4-GFP(D~F)を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を説明している。hIgG1アイソタイプ対照(B及びE)またはアンタゴニスト抗TIGIT抗体(C及びF)で処理したマウスについての中央値腫瘍増殖曲線(A及びD)と同様に個々の腫瘍増殖曲線を示す。EL4-mTIGIT細胞を接種したマウスでは、アイソタイプ対照で処理した群と比べて抗TIGIT抗体で処理した場合、腫瘍増殖の有意な抑制があった(p<0.001)。アイソタイプ対照で処理した群では、15匹のマウスのうち3匹がモデルの終了時700mm
3を下回る体積で腫瘍増殖の制御を示したのに対して、アンタゴニスト抗TIGIT抗体で処理した群ではこの数は15匹のマウスのうち8匹に増えた。アイソタイプ対照抗体とアンタゴニスト抗TIGIT抗体の処理を比べると、EL4-GFP担癌マウスでは抗腫瘍有効性または完全奏効を観察することができなかった。総合して、これらの結果はアンタゴニスト抗TIGIT抗体(hIgG1)がTIGITを発現している腫瘍細胞によるモデルにて有意な抗腫瘍有効性を有することを実証している。
【0352】
実施例28:CT26結腸癌マウスモデルにおける免疫チェックポイント抗体との併用での抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
抗TIGIT抗体の抗PD-1抗体との併用(実施例12、13及び14)に加えて、共刺激分子である4-1BB、OX40及びGITRに特異的なアゴニスト抗体、と同様にチェックポイント阻害分子ICOSに特異的なアンタゴニスト抗体との併用で抗TIGIT抗体の抗腫瘍有効性も評価した。
【0353】
CT26腫瘍細胞株はATCC(登録商標)から購入した(CRL-2638(商標))。8週齢のメスBalb/cマウスに右脇腹にて500,000個の細胞を皮下に接種した。接種後9日目に腫瘍体積が平均で75mm3前後であれば、同等の腫瘍体積でマウスを処理群に無作為化した(群当たりn=10匹のマウス)。抗体はすべて無作為化の日から開始して3日ごとに合計3回の注射で腹腔内に与えた。使用した抗TIGIT抗体は、抗体の修飾された型(VH FR3の残基27をLからVに変異させ、VH FR4の残基6をMからTに変異させるように修飾した)29527m(マウスTIGITと交差反応する)であり、マウスIgG2aアイソタイプで作製し、それを20μg/マウスで与えた。抗4-1BB(クローン3H3、BioXCell、BE0239)は5μg/マウスで与え、抗OX-40(クローンOX-86、BioXCell、BE0031)は20μg/マウスで与え、抗GITR(クローンDTA-1、BioXCell、BE0063)は10μg/マウスで与え;及び抗ICOS(クローン7E.17G9、BioXCell、BE0059)は200μg/マウスで与えた。7日目から35日目まで腫瘍増殖をモニターし、週3回、腫瘍体積を電子キャリパーで測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えるとマウスを屠殺した。対数変換した腫瘍体積における線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に解析した。時間*処理群の相互作用を調べることによって処理群間の差異を評価した。これは、非常に小さな腫瘍体積(10mm3を下回る)を除いてデータの大部分にとって良好なモデル適合を生じた。従って、これらの小さな腫瘍体積は欠測値として処理した。抗TIGIT抗体を対応する免疫チェックポイント抗体(IC―すなわち、抗41BB、抗OX40、抗GITR及び抗ICOS)と併用することから生じる相乗効果について調べるために、処理群を2つの変数;抗TIGIT(あり/なし)及びIC(あり/なし)の組み合わせによって再コード化した。抗TIGIT*IC*時間の相互作用期間を調べることによって各処理(抗TIGIT*時間及びIC*時間)の相加効果の上にある相乗効果を評価した。
【0354】
図33Aは、単剤療法で、または抗4-1BBとの併用で抗TIGITによって処理したマウスについての群当たりの中央値腫瘍増殖曲線と同様に個々の増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗4-1BBの単剤療法と比べて抗TIGIT+抗4-1BBで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp=0.0005及びp<0.0001)。抗TIGIT抗体と抗4-1BB抗体の併用は、それぞれ単剤としての抗TIGITまたは抗4-1BBで処理した群における1/10匹または0/10匹の完全奏効(腫瘍が<30mm
3である及び測定不能と見なされる場合)と比べて完全奏効を示す6/10匹のマウスを生じた。これらのデータは予め定着した腫瘍の治療に対する抗4-1BBとの併用での抗TIGIT療法の有意な抗腫瘍有効性を実証している。
【0355】
図33Bは、単剤療法で、または抗OX-40との併用で抗TIGITによって処理したマウスについての群当たりの中央値腫瘍増殖曲線と同様に個々の増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗OX-40の単剤療法と比べて抗TIGIT+抗OX-40で処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp=0.0002及びp<0.0001)。抗TIGIT+抗OX-40の併用は双方の単剤療法の治療の相加効果よりも大きい相乗的な抗腫瘍有効性を達成した(p=0.02)。抗TIGIT抗体と抗OX-40抗体の併用は、それぞれ単剤としての抗TIGITまたは抗OX-40で処理した群における1/10匹または0/10匹の完全奏効と比べて完全奏効を示す7/10匹のマウスを生じた。これらのデータは予め定着した腫瘍の治療に対する抗OX-40との併用での抗TIGIT療法の有意で且つ相乗的な抗腫瘍有効性を実証している。
【0356】
図33Cは、単剤療法で、または抗GITRとの併用で抗TIGITによって処理したマウスについての群当たりの中央値腫瘍増殖曲線と同様に個々の増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗GITRの単剤療法(p<0.0001)と比べて抗TIGIT+抗GITRで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった。抗TIGIT+抗GITRの併用は双方の単剤療法の治療の相加効果よりも大きい相乗的な抗腫瘍有効性を達成した(p=0.01)。抗TIGIT抗体と抗GITR抗体の併用は、それぞれ単剤としての抗TIGITまたは抗GITRで処理した群における1/10匹または0/10匹と比べて完全奏効を示す6/10匹のマウスを生じた。これらのデータは予め定着した腫瘍の治療に対する抗GITRとの併用での抗TIGIT療法の有意で且つ相乗的な抗腫瘍有効性を実証している。
【0357】
図33Dは、単剤療法で、または抗ICOSとの併用で抗TIGITによって処理したマウスについての群当たりの中央値腫瘍増殖曲線と同様に個々の増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗ICOSの単剤療法と比べて抗TIGIT+抗ICOSで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp=0.003及びp=0.0001)。抗TIGIT抗体と抗ICOS抗体の併用は、それぞれ単剤としての抗TIGIT抗体または抗ICOS抗体で処理した群における1/10匹または0/10匹と比べて完全奏効(腫瘍が<30mm
3である及び測定不能と見なされる場合)を示す1/10匹のマウスを生じた。これらのデータは予め定着した腫瘍の治療に対する抗ICOSとの併用での抗TIGIT療法の有意で且つ相乗的な抗腫瘍有効性を実証している。
【0358】
実施例29:γδT細胞に対する抗TIGITアンタゴニスト抗体の活性
γδ(ガンマ・デルタまたはg/d)T細胞は、記載された抗腫瘍活性(Zhao,et al.2018.J.Transl Med.16:122)及び抗ウイルス活性(たとえば、CMV感染)を持つ非従来型のT細胞の集団であり、自己免疫疾患にも関与している(Malik,S.et al.2016.Front Immunol.7:14)。
【0359】
フローサイトメトリー解析を行って、サイトメガロウイルス(CMV)について血清反応陰性と血清反応陽性の状態での健常個体から新しく単離されたPBMCのγδT細胞におけるTIGITの発現を評価した(CMVの状態はEFS Nouvelle Aquitaine,Bordeaux,Franceが評価した)。濾過したFACS緩衝液(PBS+2mMのEDTA+0.1%BSA)を用いて製造元の指示によって細胞を染色した。データ取得はFACS Fortessa(BD Biosciences)で行い、BD FACS DIVAソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。細胞は、前方散乱及び側方散乱及び生存性にゲートをかけた。γδT細胞は、以下の抗体:抗TCRγδAPC、MiltenyiのクローンREA591#130-109-280;抗TCR Vδ2-PE-Vio770、MiltenyiのクローンREA771、#130-111-012;BV421マウス抗ヒトCD3、BD BiosciencesのクローンUCHT1、#560365;BiolegendのZombie Aqua Fixable生存性キット、#423101を用いて以下:CD3+TCRγδ+Vδ2-(Vδ2-γδT細胞)のようにゲートをかけた。
【0360】
従来型のαβT細胞と同様に、非従来型のVδ2
-γδT細胞はCMV陰性及び陽性双方のヒト集団にてTIGITを発現する(抗TIGIT、eBioscienceのクローンMBSA43,#12-98500-42)(
図34A)。この細胞集団にてTIGIT受容体を遮断することの機能的帰結を特徴付けるために、CMV陽性ドナーから磁気的に単離されたVδ1
+γδT細胞(双方ともMiltenyiの抗TCR Vd1-FITC、クローンREA173 #130-100-532及び抗FITCマイクロビーズ #130-048-701)または全PBMCを抗Vδ1(10μg/m)(Beckman CoulterのクローンR9.1,#IM1761)及びIL-15(20ng/ml),Peprotechの#200-15-50UG)によって活性化し、TIGIT-リガンドCD155(R&D Systemsの#9174-CD-050)の存在下または非存在下でIL-2(100U/ml,#200-02-1MG Peprotech)を単離されたVδ1
+γδT細胞にさらに加えた。
図34Bは、TIGIT-リガンドCD155(0、0.1、1及び10μg/mL)の添加が介在するIFNγ分泌の用量依存性の低下(ELISAキット,Mabtechの#3420-1h-20)を示し、1μg/mLのCD155で最大阻害に達した。抗TIGIT抗体クローン31282(10μg/mL)の添加はCD155リガンドが存在しない条件以上のレベルまでIFNγの産生を完全に回復させる一方で、ヒトIgG1アイソタイプ対照は非常に限定された効果を有する。
図34Cは、全PBMCの抗Vδ1による活性化の後のCD155(10μg/mL)が介在する類似の阻害効果及び抗TIGITクローン31282を混合に加えた場合のIFNγ分泌の全面回復を実証している。これらのデータは、αβT細胞に類似して、γδT細胞の活性はCD155のTIGITへのライゲーションによって損傷することができ、抗TIGIT抗体はこの阻害を完全に阻止することを実証している。
【0361】
実施例30:肝細胞癌腫マウスモデルにおける単剤としての抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
この実験のために、メスC57Bl/6マウスの右脇腹にて500万個のHepa1-6肝細胞癌腫細胞(Crown Bioscience Inc.)を皮下に接種した。使用した抗TIGIT抗体は、VH FR3の残基27をLからVに変異させ、VH FR4の残基6をMからTに変異させるように修飾した、抗体29527の修飾された型(マウスTIGITと交差反応する)29527mであり、マウスIgG2aアイソタイプで作製した。接種後3日目に腫瘍体積が平均65mm3前後であれば、等しい腫瘍体積を持つ処理群にマウスを無作為化した(群あたりn=10)。腫瘍の接種後3日目、6日目及び9日目に腹腔内注射によって200μgの抗TIGIT抗体またはアイソタイプ対照抗体(mIgG2a,BioXcell BE0085)でマウスを処理した。3日目から20日目まで週2回、腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積を電子ノギスで測定した。腫瘍体積が2000m3を超えるとマウスを屠殺した。線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に分析した。時間*処理群の相互作用を検定することによって処理群間の差異を評価した。
【0362】
図35はHepa1-6細胞を接種したマウスにおける腫瘍増殖曲線を説明している。中央値腫瘍増殖曲線(A)ならびにmIgG2aアイソタイプ対照(B)またはアンタゴニスト抗TIGIT mAb(C)で処理したマウスについての個々の腫瘍増殖曲線を示す。アイソタイプ対照で処理した群と比べて抗TIGIT Abで処理すると腫瘍増殖の有意な抑制があった(p<0.0001)。これらのデータは、マウス肝細胞癌腫のモデルにて単剤として使用されるとアンタゴニスト抗TIGIT抗体は有意な抗腫瘍有効性を有することを実証している。
【0363】
実施例31:膵臓腺癌のマウスモデルにおける単剤としてのまたは免疫チェックポイント抗体との併用での抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
免疫療法に応答性であると記載されているモデルで観察された抗TIGITアンタゴニストmAbの有効性(実施例12~14、27、28及び30)に加えて、単剤としてのまたは併用での抗TIGIT mAbの有効性も膵臓腺癌モデルの免疫原性がより低いモデル(PancO2)で調べた。
【0364】
PanO2腫瘍細胞株は米国国立がん研究所(NCI 0507406 p3)から購入した。8週齢のメスC57Bl/6マウスに500万個の細胞を右脇腹にて皮下に接種した。接種後7日目に腫瘍体積が平均55mm3前後であれば、等しい腫瘍体積を持つ処理群にマウスを無作為化した(群あたりn=10)。抗体はすべて無作為化の日に開始して3日ごとに合計3回腹腔内に注射した。使用した抗TIGIT mAbはVH FR3の残基27をLからVに変異させ、VH FR4の残基6をMからTに変異させるように修飾した、抗体29527の修飾された型(マウスTIGITと交差反応する)29527mであり、マウスIgG2aアイソタイプで作製し、それを200μg/マウスで与えた。抗4-1BB(クローン3H3、BioXCell、BE0239)を200ug/マウスで与え、抗OX-40(クローンOX-86、BioXCell、BE0031)を200ug/マウスで与え、抗GITR(クローンDTA-1、BioXCell、BE0063)を10ug/マウスで与えた。7日目から42日目まで週に3回、腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積を電子ノギスで測定した。腫瘍体積が2000m3を超えるとマウスを屠殺した。対数変換した腫瘍体積での線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に分析した。時間*処理群の相互作用を検定することによって処理群間の差異を評価した。抗TIGIT抗体を対応する免疫チェックポイント抗体(IC-すなわち、抗41BB、抗OX40及び抗GITR)と組み合わせることで生じる相乗効果について検定するために、2つの変数:抗TIGIT(あり/なし)とIC(あり/なし)の組み合わせによって処理群を再コード化した。相互作用項、抗TIGIT*IC*時間を検定することによって、各処理の相加効果(抗TIGIT*時間及びIC*時間)に加えて相乗効果を評価した。
【0365】
図36Aは群ごとの中央値腫瘍増殖曲線を示し、
図36Bは単剤としてまたは抗4-1BBとの併用で抗TIGIT mAbによって処理したマウスについての個々の増殖曲線を示す。アイソタイプで処理したマウスと比べて抗TIGITで処理したマウスでは有意な腫瘍抑制はなかった(p=0.91)。抗TIGITまたは抗4-1BBの単剤療法と比べて抗TIGIT+抗4-1BBで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp<0.0001及びp<0.0001)。抗TIGIT抗体と抗4-1BB抗体の併用は完全な応答を示す2/10のマウスを生じた一方で、単剤としての抗TIGITまたは抗4-1BBで処理した群では完全な応答は起きなかった。これらのデータは、予め確立された腫瘍の治療について抗4-1BBと併用した抗TIGIT療法の有意な抗腫瘍有効性を実証している。
【0366】
図37Aは群ごとの中央値腫瘍増殖曲線を示し、
図37Bは単剤としてまたは抗OX40との併用で抗TIGITによって処理したマウスについての個々の増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗OX-40の単剤療法と比べて抗TIGIT+抗OX-40で処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp<0.0001及びp<0.0001)。これらのデータは、予め確立された腫瘍の治療について抗OX-40と併用した抗TIGIT療法の有意な且つ相乗的な抗腫瘍有効性を実証している。
【0367】
図38Aは群ごとの中央値腫瘍増殖曲線を示し、
図38Bは単剤としてまたは抗GITRとの併用で抗TIGITによって処理したマウスについての増殖曲線を示す。抗TIGITまたは抗GITRの単剤療法と比べて抗TIGIT+抗GITRで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(双方の比較についてp<0.0001)。これらのデータは、予め確立された腫瘍の治療について抗GITRと併用した抗TIGIT療法の有意な且つ相乗的な抗腫瘍有効性を実証している。
【0368】
さらに臨床的に代表する設定における抗腫瘍有効性を明確にするために、単剤としてのまたは抗4-1BBとの併用での抗TIGIT療法の効果を膵臓腺癌の同所性モデル(PancO2)でも調べた。ルシフェラーゼを発現するように操作した2×106個の同系PancO2腫瘍細胞を8週齢のメスC57Bl/6マウスに膵臓で同所性に接種した。接種後6日目に生物発光シグナルを測定し、等しい生物発光シグナルを持つ処理群にマウスを無作為化した(群あたりn=10のマウス)。無作為化の日に開始して3日ごとに合計4回、mAbによる処理を腹腔内に与えた。使用した抗TIGIT mAbはVH FR3の残基27をLからVに変異させ、VH FR4の残基6をMからTに変異させるように修飾した、抗体29527の修飾された型(マウスTIGITと交差反応する)29527mであり、マウスIgG2aアイソタイプで作製し、それを200μg/マウスで与えた。抗4-1BB mAb(クローン3H3、BioXCell、BE0239)を200ug/マウスで与えた。腫瘍細胞の移植後6、14、18及び22日目に測定した生物発光シグナルに基づいて腫瘍の進行をモニターした。対数変換したシグナルでの線形混合モデルによって、生物発光シグナルに基づく腫瘍進行の曲線を統計的に分析した。時間*処理群の相互作用を検定することによって処理群間の差異を評価した。マウスを毎日モニターし、スコア化評価項目についてのスコアシートに基づいて屠殺した。生存曲線を描き、ログランク(Mantel-Cox)検定を用いて統計的に分析した。
【0369】
図39Aは経時的な中央値生物発光シグナルを示し、
図39Bは処理群ごとの個々の曲線を示す。
図39A及び
図39Bはアイソタイプで処理したマウスと比べて単剤としての抗TIGIT mAbで処理したマウスにて有意な腫瘍増殖抑制を示している(p=0.008)。抗TIGITまたは抗4-1BBの単剤療法と比べて抗TIGIT+抗4-1BBの併用で処理したマウスにて腫瘍増殖の有意な抑制があった(それぞれp=0.0001及びp=0.004)一方で、抗4-1BBのみでは効果を有さなかった。
図39Cは処理群ごとの生存曲線を示す。結果は、抗TIGIT mAbが単剤として(p=0.04)または抗4-1BBとの併用で(p=0.007)使用されるとマウスの生存に対して有意な効果を有したことを示している。これらのデータは、同所性膵臓腺癌の治療について単剤としての及び抗4-1BBとの併用での抗TIGIT mAb療法の有意な抗腫瘍有効性を実証している。
【0370】
実施例32:ヒト化肺癌腫A549モデルにおける単剤としての抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
ヒト腫瘍を接種し、ヒトPBMC細胞を養子導入したNSGマウスのヒト化システムにて、マウスTIGITと交差反応しない抗TIGIT mAb 31282の抗腫瘍有効性(表3)を評価した。
【0371】
この目的で、異なるTIGITリガンド(CD155、CD112及びCD113)の発現についていくつかのヒト腫瘍細胞株を特徴付けた。
図40Aにおけるフローサイトメトリーのデータで例示されているように、ヒトA549肺癌腫細胞株は異なるリガンドについて陽性だった。
【0372】
-20日目にA549肺癌腫細胞を2×106個/マウスの濃度でNOD SCIDガンママウスの右脇腹にて皮下に移植した。0日目に群あたり等しい平均腫瘍体積を持つ処理群にマウスを無作為化し、3×106個のヒトPBMCを静脈内注射でマウスに与えた。抗TIGIT mAb 31282またはヒトIgG1アイソタイプ対照は200ug/マウスでPBMC導入の1日後に開始して3日ごとに合計3回腹腔内に注射した。PBMC導入の1日後に開始して週に2回、腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積を電子ノギスで測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えるとマウスを屠殺した。対数変換した腫瘍体積での線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に分析した。時間*処理群の相互作用を検定することによって処理群間の差異を評価した。さらに、マウスごとの腫瘍増殖阻害(TGI)は、以下の式:X日における%TGI=1-(TX-T0/CX-C0)*100を用いて算出したが、式中、Tは処理したマウス1匹の腫瘍体積(PBMC移植後0日目及びX日目)であり、Cは参照群におけるマウスの中央値腫瘍体積である。次いで、抗TIGIT mAb処理群について平均TGIを算出した。
【0373】
図40Bは群ごとの中央値腫瘍増殖曲線を示し、
図40Cはアイソタイプ対照(左)または抗TIGIT mAb(右)によって処理されたマウスについての個々の増殖曲線を示す。線形混合モデル解析は、アイソタイプと比べて抗TIGITで処理したマウスでは腫瘍増殖の有意な抑制があった(p<0.0001)ことを示している。有意な腫瘍増殖阻害はPBMCの移植後7日目(75%TGI、p=0.01)、11日目(54%TGI、p=0.01)、13日目(59%TGI p<0.01)、及び15日目(41%TGI、p<0.01)に観察された。これらのデータは、ヒト化A549肺腫瘍モデルにおける抗TIGIT mAb 31282の有意な抗腫瘍有効性を実証している。
【0374】
実施例33:γδT細胞に対する抗TIGITアンタゴニスト抗体の活性
γδ(ガンマ/デルタ)T細胞は記載されている抗腫瘍活性(Zhao et al.2018.J.Transl Med.16:122)及び抗ウイルス活性(たとえば、CMV感染)を持つ従来型ではないT細胞の集団であり、自己免疫疾患にも関与している(Malik S et al.2016.Front Immunol.7:14)。
【0375】
従来のαβT細胞と同様に、非従来型のVδ2-γδT細胞はCMV陰性及びCMV陽性双方のヒト集団にてTIGITを発現している(実施例8及び29)。この細胞集団でのTIGIT受容体をブロックする機能的結果を特徴付けるために、CMV陽性ドナー由来のPBMC全体を100000個/ウェルで96ウェルプレートに入れ、抗Vδ1(10ug/ml)(クローンR9.1、Beckman Coulterの#IM1761)とIL-15(20ng/ml)によって活性化した。組換えCD155(PVR-621H Creative Biomart)を10μg/mlでウェルに加えた。抗TIGIT mAb 31282は1μg/mlで開始して6ポイント、3.16倍の希釈曲線で加えた。hIgG1アイソタイプは最高濃度で対照として使用した。48時間の培養後、上清を回収し、ELISAによってIFNγの分泌を測定した。
【0376】
図41は、抗TIGITクローン31282を混合物に加えたときのPBMC全体の抗Vδ1による活性化の後のCD155(10μg/ml)が介在する阻害効果及びIFNγ分泌の用量依存性の回復を実証している一方で、アイソタイプ対照は効果を有さない。興味深いことに、結果は、γδT細胞を刺激する抗TIGITのCD155が介在する効果及びそれと無関係な効果をCD155が示さないで抗TIGIT mAb 31282による処理は対照条件より優れたレベルでIFNγの分泌を高めることを示している。
【0377】
これらのデータは、αβT細胞と同様に、γδT細胞の活性はIFNγ分泌の上昇によって示されるようにこの集団の活性を高める抗TIGIT mAb 31282によって積極的に調節され得ることを実証している。
【0378】
実施例34:セザリー症候群患者に由来する悪性細胞に対する抗TIGITアンタゴニスト抗体31282が誘導する抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性
TIGITは免疫細胞で発現されることが知られている標的である。加えて、TIGITの発現は特定の血液癌の徴候におけるCD4+腫瘍細胞でも観察されている(Jariwala et al.(2017)J.Invest Dermatol.137:1;実施例26)。抗TIGIT mAb 31282が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導し、TIGITを発現している悪性細胞を枯渇させることができることを評価するためにフローサイトメトリー解析を行った。
【0379】
先ず、患者の試料を調べて悪性の及び正常なCD4+T細胞集団におけるTIGITの発現をモニターした。これらの集団を分離するためにBeckman Coulter TCR-Vbレパトアキット(#IM3497)を用いて悪性クローンのTCR-Vb再構成の事前の決定を行った。いったん悪性クローンが同定されると、以下の市販試薬:抗CD3 Krome Orange(#B00068)、抗CD4-PE(#A07751)、抗CD8-PC7(#737661)、抗CD56-PC5(#A07789)、抗CD45-Pacific Blue(#A74763)、抗CD19-AF750(#A94681)及び抗Vb20-FITC(#IM1562)(すべてBeckman-Coulter由来)ならびに抗TIGIT-APC(クローンMBSA43、ebiosciences #17-9500-42)を用いてセザリー症候群患者の免疫細胞でTIGITの発現の特性を明らかにした。セザリー症候群患者試料のフローサイトメトリー解析はCytoFlex装置(Beckman-Coulter)で実施した。データはFloJoソフトウェア(FlowJo,LLC)で分析した。
【0380】
代表的な例を
図42に示す。悪性TCR-Vb20を有するこのドナーのゲートかけ戦略を
図42Aに示すが、悪性細胞はCD45
+CD3
+CD4
+Vb20
+であり、正常CD4
+T細胞はCD45
+CD3
+CD4
+Vb20
-である。正常CD4
+T細胞(28.9%)とは対照的に悪性CD4
+T細胞はすべてTIGITについて陽性である(99.6%)。
【0381】
ADCCアッセイについては、セザリー患者(SS)のヘパリン化静脈血から密度勾配によってPBMCを調製した。NK細胞及びCD4+T細胞は製造元の推奨(Miltenyi biotec)に従ってMACS(陰性選択)によって精製した。選別したCD4+T細胞はすべて10μg/mlでのアイソタイプ対照、抗TIGIT mAb(31282)または陽性対照としての抗CD52 mAb(アレムツズマブと同様の配列を共有する)と共に室温にて30分間、予備インキュベートし、次いで0/1、1/5、1/1及び5/1のE/T比で自己NKリンパ球と混合した。37℃にて4時間30分インキュベートを行った。7-AADの取り込みを介して非悪性及び悪性のCD4+T細胞ならびにNKの細胞死をフローサイトメトリーによってモニターした。
【0382】
代表的な例を
図42Bに示し、アイソタイプの存在下での無視できるレベルのNK介在性の細胞傷害があったが、E/T比と共に上昇する抗TIGIT mAbによる腫瘍細胞のNK細胞依存性の細胞傷害活性が得られた。非悪性のCD4
+T細胞に向かう細胞傷害は限定され、NK細胞は維持された。
【0383】
本明細書の本文の範囲内で引用されている参考文献、取得された特許及び特許出願はすべてあらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、PCT/US2018/43968はあらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0384】
実施例35:CT26結腸癌マウスモデルにおける化学療法及びA2ARアンタゴニストとの併用での抗TIGITアンタゴニスト抗体の抗腫瘍活性
抗TIGIT抗体の免疫チェックポイント抗体との併用(実施例12、13、14及び28)に加えて、化学療法剤ドキソルビシンまたはA2ARアンタゴニストとの併用、及びA2ARアンタゴニストとドキソルビシンとの抗TIGIT抗体の三重併用にて抗TIGIT抗体の抗腫瘍有効性を評価した。使用したA2ARアンタゴニストは参照によって本明細書に組み込まれるPCT/EP2019/074208における化合物8bに相当する。
【0385】
ATCC(登録商標)から購入したCT26腫瘍細胞株(CRL-2638(商標))を500,000個で8週齢のメスBalb/cマウスの右脇腹にて皮下に接種した。接種後9日目に腫瘍体積が平均90mm3前後であれば、マウスを等しい腫瘍体積を持つ処理群に無作為化した(群あたりn=8のマウス)。無作為化の日に開始して3日ごとに合計3回20μg/マウスの用量で抗TIGIT抗体(29527m)またはmIgG2aアイソタイプ対照を腹腔内に注射した。同じ日に開始してQDで32日間、0.6mg/kg用量のA2ARアンタゴニストまたはビヒクルによってp.o.でマウスを処理した。無作為化の1日後に開始して、6mg/kgのドキソルビシンまたは対照PBSをi.v.でマウスに投与し、投与は4日離して2回だった。
【0386】
9日目から50日目まで週に3回、腫瘍増殖をモニターし、腫瘍体積を電子ノギスで測定した。腫瘍体積が2000mm3を超えるとマウスを屠殺した。対数変換した腫瘍体積での線形混合モデルによって腫瘍増殖曲線を統計的に分析した。時間*処理群の相互作用を検定することによって処理群間の差異を評価した。
【0387】
図43は群ごとの中央値腫瘍増殖曲線(A)、ならびに単剤療法または指定された併用で処理したマウスについての個々の増殖曲線(B)を示す。腫瘍細胞移植後9、12及び15日目での1mg/kgの抗TIGIT mAb 29527mの腹腔内注射は、実施例12で前に報告されているように対照アイソタイプで処理したマウスと比べて腫瘍増殖を有意に抑制した(p=0.0009)。
【0388】
6mg/kgの用量でのドキソルビシンの2回投与は腫瘍増殖に対して効果を有さなかった(p=0.14)一方で、抗TIGITとの併用は抗腫瘍有効性を改善した(抗TIGITまたはドキソルビシンの単剤療法と比べてそれぞれp=0.008及びp=0.0002)。
【0389】
0.6mg/kgのA2AR阻害剤の抗TIGIT 29527mを伴った投与は抗TIGIT単剤療法と比べて抗腫瘍効果を改善しなかった。
【0390】
6mg/kgでのドキソルビシンと共に0.6mg/kgで投与されたA2AR阻害剤はドキソルビシンの単独投与と比べて有意な抗腫瘍効果を達成した(p=0.0003)。
【0391】
抗TIGITとA2AR阻害剤とドキソルビシンとの併用で処理したマウスにおける腫瘍増殖の抑制は、それぞれの二重併用(抗TIGIT+A2AR阻害剤と比べてまたはドキソルビシン+A2AR阻害剤と比べてp<0.0001、抗TIGIT+ドキソルビシンと比べてp=0.003)で達成された腫瘍増殖の抑制よりも有意に高く、8匹のマウスのこの群で5匹が完全な応答者だった。
【0392】
実施例36:アンタゴニスト抗TIGIT抗体の存在下でのTIGIT発現の定量
TIGIT受容体への結合について互いに競合する及びTIGITの天然のリガンド(CD155、CD112、CD113)と競合するアンタゴニスト抗TIGIT抗体の存在下でのTIGITの発現の測定を可能にするために、我々はアンタゴニスト抗体と競合しない抗TIGIT抗体についてスクリーニングした。クローン32959はアンタゴニスト抗TIGITクローン31282の存在下でTIGITに結合することができる抗体であると選択された。この能力を実証するために、EDTAで採血した健常ヒトドナーに由来する静脈血を50μLのアリコートに分配し、漸減濃度の未標識クローン31282と共にインキュベートし、37℃で1時間インキュベートした。インキュベートに続いて試料を洗浄し、上清を捨てた。その後、BioLegend由来の抗CD45-PercP(クローンHI30)及びBD bioscience由来のCD4-BV421(クローンL200)、CD8a-BV510(クローンSK1)、CD45RO-BB515(クローンUCHL1)、CD25-BV605(クローン2A3)、CD127-BV786(クローンHIL-7R-M21)、CD56-BV650(クローンNCAM16.2)及びPE標識した31282またはAF647に結合した32959のいずれかを用いたTIGITによって試験試料を染色した。各血液試料は4℃で30分間インキュベートした。BD溶解緩衝液で赤血球を溶解し、白血球をペレットにし、洗浄し、最終的に、PBSで希釈したIC固定緩衝液に再浮遊させた。LSR Fortessa(BD Biosciences)でデータ取得を行い、フローサイトメトリーのデータはFlowJo V10.5.3を用いて分析した。
【0393】
遊離のTIGITの正規化した頻度は、以下の式:Y=(A/B)*100に従って算出した。その際、このクローンでの検出についてA=31282-PE%濃度Xでの31282及びB=31282-PE%未処理の31282である一方で、クローン32959-AF647での検出については、A=32959-AF647+%濃度Xでの31282及びB=32959-AF647%未処理の31282である。
【0394】
様々な濃度の未結合の31282と共にインキュベートし、その後、その条件で同時に31282-PE(A)または抗TIGIT32959-AF647(B)によるFACS染色によって検出した後のCD3
+CD8
+細胞集団における遊離のTIGIT
+の正規化した頻度を
図44に示す。31282とのインキュベート後の32959によるTIGIT
+細胞の検出は、各抗TIGIT抗体クローンによる重複しないエピトープの認識にたぶん起因する、競合の非存在を裏付けている。
【0395】
実施例37:ヒト血清試料におけるクローン31282の濃度を測定するアッセイ(PKアッセイ)でのクローン31282に対する抗イディオタイプ抗体32869の使用
ヒトIgG1である抗イディオタイプ抗体クローン32869はアンタゴニスト抗TIGITクローン31282への特異的な結合の実証の後、HuCAL(登録商標)ライブラリから選択された。
【0396】
ヒトIgG1アイソタイプでHEK293細胞にて産生された抗イディオタイプ抗体クローン32869を用いて、臨床試験の間にクローンの薬物動態(PK)を追跡するためにヒト血清試料でのクローン31282の定量用のELISAアッセイを開発した。
【0397】
ELISAアッセイは電気化学発光検出技術を用いたMeso Scale Discovery(MSD)構築基盤に基づく。抗イディオタイプ抗体クローン32869(0.5μg/mL)を高結合のMSDプレートにコーティングする。次いで、血清試料の希釈物を1時間インキュベートし、プレートを洗浄し、コーティングした抗イディオタイプ抗体へのクローン31282の結合を、読み取り緩衝液の存在下でスルホ-TAGhIgG1 32869(0.5μg/mL)によって検出する。プレートの電極に電圧を印加し、結合したスルホ-TAGを電気化学的刺激を介して発光させる。発光の強度は血清試料におけるクローン31282の濃度に比例する(
図45)。
【配列表】