IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

特許7512298三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体
<>
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図1
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図2
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図3
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図4
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図5
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図6
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図7
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図8
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図9
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図10
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図11
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図12
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図13
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図14
  • 特許-三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】三元触媒のための酸化マンガン-マンガン酸ランタンペロブスカイト-PGM複合体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/34 20060101AFI20240701BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240701BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240701BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01J23/34 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/656 A
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
F01N3/10 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021552198
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 GB2020050867
(87)【国際公開番号】W WO2020208340
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】62/830,431
(32)【優先日】2019-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】パスキュイ、アンドレ-エヴァ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05182249(US,A)
【文献】国際公開第2015/159403(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0028387(US,A1)
【文献】特開2003-175337(JP,A)
【文献】米国特許第06060420(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集団として、[MnO:[LaMnO1-y
[式中、
xは約1~約2.5であり、
yは約1~約30重量%であり、
zは約0.7~約1.1であり、かつ、
LaMnOは結晶質ペロブスカイト相である]の式を有する、凝集及び/又は融合した一次粒子の複合体を含む三元触媒用の組成物であって、
凝集及び/又は融合した一次粒子の前記複合体が、約25~約60m/gの平均表面積を有する、組成物。
【請求項2】
前記MnOが非晶質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記MnOが結晶質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記一次粒子が、独立して、MnO及びLaMnOを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
MnOの前記一次粒子が、約10nm~約60nm、好ましくは約12nm~約25nm、若しくは約14nm~約50nmのサイズ範囲で存在し、かつ/又はLaMnOの前記一次粒子が、約10nm~約50nm、好ましくは約12nm~約25nmのサイズで存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記MnO、M、Mn、又はこれらの組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
zが、約0.7~約1.1、約0.8~約1.1、約0.8~約0.99、又は約0.8~約0.95の範囲の値である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
LaCOを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
白金族金属(PGM)を、前記組成物全体の重量に対して約0.01重量%~約0.5重量%の量で更に含み、好ましくは、前記PGMがPdであり、かつ/又は前記PGMが前記一次粒子の表面に位置している、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ウォッシュコートを含む自動車用触媒コンバータであって、前記ウォッシュコートが、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む、自動車用触媒コンバータ。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む三元触媒を備えた、酸素貯蔵デバイス。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む三元触媒であって、前記組成物は、約350℃~約550℃の範囲の温度で動作させた場合、比較のCe0.5Zr0.5系組成物に対して、独立して、少なくとも85%の炭化水素(HC)、CO、及びNOの転化効率を示す、三元触媒。
【請求項13】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記方法は、前記排気ガスを、請求項12に記載の三元触媒と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、TWC用途のための酸化マンガン-マンガン酸ランタン-PGM複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NO」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システム、すなわち「後処理システム」は、大気中に排出されるこれら汚染物質の量を低減するために広く使用されている。ガソリンエンジン用途の一般的な触媒は、いわゆる三元触媒、すなわちTWCである。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)一酸化炭素(CO)の酸化、(2)未燃炭化水素の酸化、及び(3)NOのNへの還元を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガソリンエンジンの後処理のため、1980年代初頭、高表面積アルミナ及びセリア-ジルコニア担体上に分散された白金族金属(Platinum Group Metals、PGM)からなるTWCが最初に導入された。ペロブスカイト型酸化物(ABO)もまた、TWCで使用するために提案されてきた。同等又はより優れた触媒特性を有しながら、より少ないPGMを利用する、又はPGMを利用しない代替的な触媒組成物を同定することで、ますます厳しくなる排出制限を経済的に満たすことが依然として必要である。
【0004】
本開示は、これらの問題の一部を解決することに関する。
【0005】
本開示は、酸素貯蔵に有用な複合体組成物に関し、場合によっては、これらの酸素貯蔵組成物(Oxygen Storage Compositions、「OSC」)は、セリア-ジルコニア(例えば、Ce0.5Zr0.5)、ドープされたLaMnO(例えば、La0.9Sr0.1MnO)、又は複合体自体の個々の成分と少なくとも同程度に有効、場合によってはより有効である。本明細書で使用されるとき、用語「複合体」は2つ以上の構成材料から製造された材料であって、各々の構成材料が、組み合わせた際に個々の成分とは異なる特徴を有する材料(例えば、予想より優れたOSC)を生成する異なる物理的又は化学的特性を有する、材料を指す。個々の成分は構造内で分離及び区別されたままであり、例えば、XRDにより、TEMにより、又は分光学的に識別可能であるが、機械的には分離できない。そのため、化学混合物や固溶体とは区別可能である。
【0006】
本開示は、複合体又はそれ以外としての[MnO:[LaMnO1-y
[式中、
xは約1~約2.5の範囲であり、
yは約1~約30重量%、又は約1~約20重量%、又は約2~10重量%、又は約2~約5重量%の範囲であり、
zは約0.7~約1.1であり、かつ、
LaMnOは結晶質ペロブスカイト相である]を含む、からなる、又はから本質的になる組成物に関する。
【0007】
開示される複合体は、約25~約60m/g、好ましくは約27~約45m/gの範囲の平均表面積、及び約50nm~約500nmの範囲のサイズを有する凝集及び/又は融合した一次粒子として存在することができる。これらの凝集及び/又は融合した粒子は、MnO及びLaMnOである別個の一次粒子を含み得、各一次粒子は独立して、約10nm~約60nmのサイズ範囲、又は本明細書の他箇所に記載されたいずれかの範囲で存在する。凝集又は融合した粒子は各成分の別個の一次粒子を含み、個々の成分は、凝塊化した(agglomerated)マトリックス全体に分散し得る、又はLaMnO及び/若しくはMnOに富む粒子領域を与えるように存在し得る。特定の実施形態では、LaMnO一次粒子は、ファセット粒子である。
【0008】
組成物において、MnOは、独立して、非晶質、結晶質、又は混合相であってもよい。MnOは、独立して、主にMn、Mn、又はこれらの組み合わせとして記載されてもよい。
【0009】
組成物中の、又は単独での結晶質LaMnOは、約0.90~約1.0、又は約0.92~約0.98の範囲のAサイト占有率を有する。LaMnOにおけるzは、約0.7~約1.1、約0.8~約1.1、約0.8~約0.99、若しくは約0.8~約0.95の範囲、又は本明細書に記載のいずれかの他の範囲の値であり得る。それに対応して、組成物は、約0~約0.5、又は約0.01~約0.2の範囲の酸素空孔δを有するとして記載され得、そのようなLaMnO組成物は、LaMnO3±δとしても表され得る。Mnの酸化状態は、3であり得る。
【0010】
追加的に又は代替的に、Laの少なくとも一部を、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ce、Pr、若しくはNd、又はこれらの組み合わせで更に置換することにより、LaMnO構造中に酸素空孔を更に導入してもよい。
【0011】
開示される組成物は、ランタンの酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩、例えばLaOOH及び/又はLaCOを更に含んでもよい。
【0012】
開示される組成物又は単独のLaMnOは、組成物全体の重量に対して、約0.01重量%~約0.5重量%の量の白金族金属(PGM)を更に含んでもよい。PGMは、Pdとすることができる。PGMの他の選択肢としては、Pt、Rh、Ru、又はPdとPtなどの2つ以上のPGMの組み合わせが挙げられる。Pdを含む組み合わせの場合、Pdは、他のPGM成分に対して過半数のモル(molar majority)で表すことができる。代替的に又は追加的に、PGMは主に粒子表面に位置してもよい。
【0013】
開示される組成物は、本明細書に記載されるような燃焼合成法又は共沈法を含むプロセスにより更に調製され得る、又は定義され得る。
【0014】
開示される組成物は、ウォッシュコート又はウォッシュコートコーティングに組み込むことができる。
【0015】
開示される組成物は車両用触媒コンバータに組み込むことができ、この場合、車両用触媒コンバータもまた独立した実施形態である。
【0016】
開示される組成物は、酸素貯蔵組成物又はデバイスに組み込むことができ、この酸素貯蔵組成物又はデバイスは、三元触媒に使用することができる。
【0017】
開示される組成物は、約350℃~約550℃の範囲の温度で動作させた場合、比較のCe0.5Zr0.5系組成物に対して、独立して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の炭化水素(HC)、CO、及びNOの転化効率を示すことができる。
【0018】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスを処理する方法を含み、本方法は、排気ガスを、例えば、三元触媒、ガソリン又はディーゼル粒子フィルタ、触媒化煤フィルタ、ディーゼル酸化触媒において、本明細書に記載される組成物のいずれか1つと接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本特許又は出願書類は、少なくとも1つのカラー印刷図面を含む。カラー図面を備えた本特許又は本特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【0020】
本出願は、添付の図面と併せて読むことで更に理解される。主題を説明するため、主題の例示的な実施形態が図面に示されている。しかし、本開示の主題は、開示される特定の方法、プロセス、デバイス、及びシステムに限定されない。また、図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。各図面の簡単な説明は、以下の通りである。
【0021】
図1図1は、Mn:La0.9MnOを含むことを特徴とする、第1の組成物のTEM画像(バーは50nm)及びEDXマップ(バーは100nm)を示す。EDXマップでは、La及びMnは、概して均一に分布している。一次粒子のいくつかの例が強調されている(丸で囲まれている)。
【0022】
図2図2は、Mn:La0.9MnOを含むことを特徴とする、第2の組成物のTEM画像(バーは50nm)及びEDXマップ(バーは100nm)を示す。EDXマップでは、Mn及びLa0.9MnOの集中箇所が丸で囲まれ、それぞれ「Mn」及び「La&Mn」として識別されている。
【0023】
図3図3は、Mn:La0.9MnOを含むことを特徴とする、第3の組成物のTEM画像(バーは50nm)及びEDXマップ(バーは100nm)を示す。EDXマップでは、Mn及びLa0.9MnOの集中箇所が丸で囲まれ、それぞれ「Mn」及び「La&Mn」として識別されている。
【0024】
図4図4は、Mn:La0.9MnOを含むことを特徴とする、第4の組成物のTEM画像(バーは50nm)及びEDXマップ(バーは100nm)を示す。EDXマップでは、Mn及びLa0.9MnOの集中箇所が丸で囲まれ、それぞれ「Mn」及び「La&Mn」として識別されている。
【0025】
図5図5は、Mn:La0.9MnOを含むことを特徴とする組成物のTEM画像(バーは50nm)及びEDXマップ(バーは100nm)を示す。EDXマップでは、Mn及びLa0.9MnOの集中箇所が丸で囲まれ、それぞれ「Mn」及び「La&Mn」として識別されている。
【0026】
図6図6は、燃焼合成により調製された材料のPXRDパターンを示す。トレースは、測定されたパターンを示す。バーは、La0.894MnOと関連付けられたピークである。
【0027】
図7図7は、共沈法により調製された、本開示の例示的な一実施形態のPXRDパターンを示す。マークされていないバーは、La0.9MnOと関連付けられている。によりマークされたバーは、合成ハウスマン鉱であるMnと関連付けられている。#によりマークされたバーは、LaOOHである酸化ランタンの水酸化物と関連付けられる。
【0028】
図8図8は、共沈法により調製された、本開示の第2の例示的な実施形態のPXRDパターンを示す。マークされていないバーは、La0.937MnOと関連付けられている。によりマークされたバーは、酸化マンガンであるMnと関連付けられている。#によりマークされたバーは、酸化ランタンの炭酸塩であるLaCOと関連付けられている。
【0029】
図9図9は、約0.2重量%のPd添加剤を含む、及び含まない様々な組成物に関する、500℃でのCO転化率のデータを示す。
【0030】
図10図10は、約0.2重量%のPd添加剤を含む、及び含まない様々な組成物に関する、500℃でのHC転化率のデータを示す(THCは、炭化水素転化の合計を指す)。
【0031】
図11図11は、約0.2重量%のPd添加剤を含む、及び含まない様々な組成物に関する、500℃でのNO転化率のデータを示す。
【0032】
図12図12は、Pd添加剤を含有する様々な組成物に関する、500℃でのCO転化率のデータを示す。
【0033】
図13図13は、Pd添加剤を含有する様々な組成物に関する、500℃でのHC転化率のデータを示す。
【0034】
図14図14は、Pd添加剤を含有する様々な組成物に関する、NO転化率のデータを示す。
【0035】
図15図15は、本発明の組成物を含む、ガソリン又はディーゼルエンジン用の排気システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、その全てが本開示の一部を形成する添付図面及び実施例に関連してなされた以下の記載を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載又は示される特定の製品、方法、プロセス、条件、又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される用語は、単に例として特定の実施形態を記載するためのものであり、特許請求されるいかなる発明の限定も意図しないことを理解されたい。同様に、特に断りのない限り、改善のための考え得る機構又は作用モード又は理由に関するいずれの説明も例示的なものに過ぎず、本発明は、いずれのそのような改善のための提案される機構若しくは作用モード若しくは理由の正確さ又は不正確さによっても制約されるものではない。本明細書、特許請求の範囲、及び図面を通して、記載は、組成物並びに上記組成物を製造及び使用するプロセスを指すことが認識されている。すなわち、本開示は、組成物又は組成物を製造若しくは使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載又は特許請求する場合、このような記載又は特許請求の範囲は、これらの特徴又は実施形態を、これらの文脈の各々における各種実施形態(すなわち、組成物、製造方法、及び使用方法)に拡張することを意図すると理解されたい。
組成物
【0037】
本開示は、組成物、並びにこれらの組成物を製造及び使用する方法を含む。組成物は、白金族金属(PGM)の存在下又は非存在下であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、式[MnO:[LaMnO1-y[式中、
xは約1~約2.5の範囲であり、
yは約1~約30重量%、又は約1~約20重量%、又は約2~10重量%、又は約2~約5重量%の範囲であり、
zは約0.7~約1.1であり、かつ、
LaMnOは結晶質ペロブスカイト相である]の組成物を含む、からなる、又はから本質的になる。
【0038】
独立した代替的又は追加的な実施形態では、引用された組成物又はMnO若しくはLaMnO自体に関して、適切なものとして:
【0039】
(a)xは、約1~約1.1、約1.1~約1.2、約1.2~約1.3、約1.3~約1.4、約1.4~約1.5、約1.5~約1.6、約1.6~約1.7、約1.7~約1.8、約1.8~約1.9、約1.9~約2.0、約2.0~約2.1、約2.1~約2.2、約2.2~約2.3、約2.3~約2.4、約2.4~約2.5、又はこれらの範囲のうちの2つ以上を含む範囲により定義される値、例えば、約1.6~約2.5の範囲の値であり得る。誤解を回避するために、表現「MnO」は、O:Mnの原子比がxである、任意のマンガンの二元酸化物を指す。例えば、この表記には、Mn(x=1.33)、Mn(x=1.6)などが含まれる。そうであるから、値xは、本明細書の他箇所に記載されるように、マンガン酸化物類の別個の式、又はこれらの混合物のいずれかの組成を定義する。特定の独立した実施形態では、MnOは、主にMn(x=1.33)、Mn(x=1.6)、又はこれらの組み合わせである。
【0040】
(b)yは、前項の範囲よりも大きい又は小さい値であり得る。特定の実施形態では、yは、約0~約1重量%(すなわち、LaMnOそれ自体のみを考慮して)、1~約2重量%、約2~約3重量%、約3~約4重量%、約4~約5重量%、約5~約6重量%、約6~約7重量%、約7~約8重量%、約8~約9重量%、約9~約10重量%、約10~約11重量%、約11~約12重量%、約12~約13重量%、約13~約14重量%、約14~約15重量%、約15~約16重量%、約16~約17重量%、約17~約18重量%、約18~約19重量%、約19~約20重量%、約20~約21重量%、約21~約22重量%、約22~約23重量%、約23~約24重量%、約24~約25重量%、約25~約26重量%、約26~約27重量%、約27~約28重量%、約28~約29重量%、約29~約30重量%の範囲の値であることができ、又はyは、これらの範囲のいずれか2つ以上、例えば、約2~約5重量%により定義され得る。
【0041】
(c)zは、約0.7~約0.75、約0.75~約0.8、約0.8~約0.85、約0.85~約0.9、約0.9~約0.95、約0.95~約0.98、約0.98~約0.99、約0.99~約1、約1~約1.05、約1.05~約1.1の範囲の値であることができ、又はzは、これらの範囲のいずれか2つ以上、例えば、約0.75~約1.1、若しくは約0.8~約1、若しくは約0.8~約0.99、若しくは約0.8~約0.95により定義され得る。
【0042】
代替的又は追加的な独立した実施形態では、組成物中のMnOは、非晶質、ナノ結晶質、若しくは結晶質、又は非晶質、ナノ結晶質、及び結晶質材料の混合物であってもよい。MnO又は任意の他の成分が非晶質として特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に起因する識別可能なPXRDピークを示さない(ただし、その存在は、例えばTEM測定により決定することができる)。MnOがナノ結晶質として特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に起因する、幅広く形状が不十分なPXRDピークのみを示す。MnOが結晶質として特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に起因する、シャープで明確なPXRDピークを示す。
【0043】
代替的又は追加的な実施形態では、複合体は、約25~約60m/g、好ましくは約27~約45m/gの範囲の平均表面積を有する粒子を含む。独立した代替的又は追加的な実施形態では、粒子は、約25~約27m/g、約27~約29m/g、約29~約31m/g、約31~約33m/g、約33~約35m/g、約35~約37m/g、約37~約39m/g、約39~約41m/g、約41~約43m/g、約43~約45m/g、約45~約47m/g、約47~約49m/g、約49~約51m/g、約51~約53m/g、約53~約55m/g、約55~約57m/g、約57~約60m/gの範囲の平均表面積を有することを特徴とし、又は粒子は、これらの範囲の2つ以上に及ぶ平均表面積、例えば、約27~約45m/gを有するとして特徴付けられ得る。これらの表面積は、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)ポロシメトリーによって最も簡便に測定され、BET式を用いて分析される。本明細書に引用される特定の値は、3Flex高性能比表面積・細孔分布測定装置(Micromeritics)において、77KでNを使用して得ることができる。
【0044】
25m-1以上の表面積を有する粒子の利点は、酸素貯蔵機能にアクセスするために、又は続いて、酸素貯蔵機能、すなわち、構造内外への酸素移動速度を向上させることで性能を増大させる機能、若しくは他の触媒機能を触媒することができる遷移金属若しくは他の元素プロモータ(例えば、Pt、Pd、又はRh)を固定するために利用可能な、いくつかのサポートサイトが存在することである。
【0045】
代替的又は追加的な実施形態では、粒子は、凝集及び/又は融合した一次粒子を含み、一次粒子は、個別にMnOとLaMnOの組成物である。各MnO及びLaMnOの一次粒子のサイズは、同じであっても異なっていてもよい。本開示の文脈において、用語「凝集及び/又は融合した」は、個々の結晶子を含む一次粒子が結合モード(「融合」)で更に共に接合されて、より大きな凝集粒子を形成するという事実を指す。
【0046】
いくつかの実施形態では、これらの一次粒子は、約10nm~約60nm、約10nm~約50nm、約12nm~約50nm、約14nm~約50nm、及び/又は約14nm~約25nmのサイズ範囲で存在する。代替的又は追加的な実施形態では、一次粒子は、約10nm~約12nm、約12nm~約14nm、約14nm~約16nm、約16nm~約18nm、約18nm~約20nm、約20nm~約25nm、約25nm~約30nm、約30nm~約35nm、約35nm~約40nm、約40nm~約45nm、約45nm~約50nm、約50nm~約55nm、約55nm~約60nmの範囲のサイズで存在し、又は一次粒子サイズは、これらの範囲の2つ以上を包含する範囲、例えば、約14nm~約25nmにより定義され得る。特に指定のない限り、一次粒子サイズ範囲の定義は、一次測定のアプローチとしてのTEMの使用の使用が、粒子計数の統計に関連する誤差を発生しやすいことを認識してはいるが、TEM測定により決定される。
【0047】
粒子サイズはまた、(リートベルト分析を使用して)XRDパターンにおける反射のラインのブロード化を分析することにより決定することもできる。このアプローチは、反射格子面(reflections lattice plane)の特定の方向における単位セルの繰り返し距離を測定するものである。この場合、測定されたサイズはこれらの範囲の下端で特徴付けられ、より狭い分布を有する傾向がある。これは、これらの一次粒子であっても、記載された組成物の1つ以上の結晶子として存在することを示唆している。例えば、一次粒子サイズに関する約14~約25nmの範囲は、XRDにより測定される典型的な結晶子サイズのサイズと一致する。一例において、TEMにより約10nm~約60nmの範囲のサイズを有するとして測定された一次粒子は、XRD(すなわち、ライン幅のブロード化に基づいて計算された平均値)から、La0.9MnOに関しては約12~20nm、Mnに関しては約12~30nm、LaCOに関しては約15nmのサイズを有すると決定された。
【0048】
MnO及びLaMnO、しかし特にLaMnOの一次粒子サイズは、一般に上述した組成物とは独立した実施形態のベースを形成し得る。すなわち、yの制限が緩和されて0になり得る。すなわち、独立した実施形態では、組成物は、約10~約60nmの範囲のサイズを有するLaMnO(すなわち、他のMn若しくはLa含有材料を除く)の一次粒子の観点で、又は一次粒子サイズと関連する部分的な範囲の順列若しくは組み合わせのいずれかで、排他的に記載され得る。本明細書の他箇所に記載される粒子サイズと一致して、一次粒子は、より大きな構造に凝集し得る。
【0049】
本開示の一次粒子は、LaMnOについてはより球状かつファセット状となる傾向を示すが、全体としては不規則な形状となる傾向がある(例えば、図1~5を参照のこと)。MnOは、一般に、形状がきわめて不規則である。
【0050】
代替的に又は追加的に、結晶質LaMnOは、組成物中の成分としてであれ、又はそれ自体であれ、約0.7~約0.72、約0.72~約0.74、約0.74~約0.76、約0.76~約0.78、約0.78~約0.8、約0.8~約0.82、約0.82~約0.84、約0.84~約0.86、約0.86~約0.88、約0.88~約0.90、約0.90~約0.92、約0.92~約0.94、約0.94~約0.96、約0.96~約0.98、約0.98~約1.0、約1.0~約1.02、約1.02~約1.04、約1.04~約1.06、約1.06~約1.08、約1.08~約1.1の範囲のAサイト占有率を有する、又はこれらの範囲の2つ以上の観点で、例えば、約0.90~約1.0若しくは約0.92~約0.98の範囲で定義され得る。
【0051】
追加の実施形態では、開示される組成物は、ランタンの酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩、例えばLaOOH及び/又はLaCOを更に含む。MnOと同様に、ランタン成分は、非晶質、ナノ結晶質、及び/又は結晶質であり得る。
【0052】
これら一次粒子の特徴の一部は、図1~5(TEM画像及びEDXマップ)に見ることができる。少なくとも提示された試料については、一般に、(1)LaMnO一次粒子はよりファセット状であり、(2)MnO材料はより非晶質の性質を有し、(3)TEMからの一次粒子サイズ(不規則な形状)は約10~約60nmであり、(4)一次粒子は凝集及び/又は融合して、組成的に、MnOに対応するMnに富む領域、並びにLaMnOに対応するLa及びMnに富む領域を含有する、およそ50~500nmの領域を形成し、(5)XRDからの結晶子サイズは、LaMnOに関しては約15~20nm、MnOに関しては約15~30nmであり、LaCOは約15nmである(これら平均値の各々は、ライン幅のブロード化を基に計算できる)、ということが分かる。
【0053】
組成物又はその成分は、追加的に又は代替的に、個々の一次粒子の表面、及び/又は凝集若しくは凝塊化した一次粒子の細孔内に分布する遷移金属又は遷移金属酸化物触媒を含み得る。本明細書に記載されるように、このような材料は、好ましくは、Cr、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、又はZnのうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの金属及び/又はその酸化物(物理的混合物又は合金を含む)を含む。このような触媒は、当業者に知られているように、化学的に又は蒸着技術により堆積させてもよい。
【0054】
組成物又はその成分は、追加的に又は代替的に、白金族金属(PGM)を含んでもよい。PGMという用語は本明細書の他箇所に記載されているが、これらの各々は独立した実施形態を構成しており、Pt、Pd、及びRhは、これらの組成物において特に魅力的な添加剤である。したがって、Pt、Pd、及びRhを独立して含む組成物は、独立した実施形態とみなされる。触媒性能、特にNO還元活性を向上させる理由からはPdの存在が好ましいが、Rhを使用すると、同等の担持量(例えば、0.05重量%の担持量)で、Pdより優れていないとしても少なくとも同等の触媒転化率が得られる。
【0055】
更なる実施形態では、これらのPGMの1つ以上は、組成物全体の重量に対して、約0.005~約0.01重量%、約0.01~約0.02重量%、約0.02~約0.04重量%、約0.04~約0.05重量%、約0.05~約0.06重量%、約0.06~0.08重量%、約0.08~約0.1重量%、約0.1~約0.12重量%、約0.12~約0.14重量%、約0.14~約0.16重量%、約0.16~約0.18重量%、約0.18~約0.2重量%、約0.2~約0.22重量%、約0.22~約0.24重量%、約0.24~約0.26重量%、約0.26~約0.28重量%、約0.28~約0.3重量%、約0.3~約0.34重量%、約0.34~約0.38重量%、約0.38~約0.42重量%、約0.42~約0.46重量%、約0.46~約0.5重量%、約0.5~約0.54重量%、約0.54~約0.58重量%、約0.58~約0.6重量%、約0.6~約0.64重量%、約0.64~約0.68重量%、約0.68~約0.72重量%、若しくは約0.76~約0.8重量%の範囲の量で存在し、又は、この量はこれらの範囲の2つ以上の観点で、例えば、約0.01重量%~約0.5重量%、若しくは約0.1重量%~約0.6重量%で記載され得る。低レベルのPGM、特にPdの存在により、エージング後の触媒活性が改善するようである。また、MnO/LaMnOの混合物を有すると、PGMの存在下又は非存在下で、MnOに更なる安定性が付与されるようである。更に、ペロブスカイトは、それ自体ではNO還元活性が乏しい。PGM金属、特にPdは、低担持量であってもこれを著しく改善する。これは、NOと他の反応物質、特にOとが、活性部位に対して競合するためであると思われる。
組成物を製造する方法及び本方法に由来する組成物
【0056】
この時点までの開示では組成物に焦点を当ててきたが、本開示はまた、本明細書に記載されるような組成物の製造を目的とした実施形態も包含する。更に、これらの方法により調製された組成物が、本明細書の他箇所で提供される組成物に関する記載と異なる/その記載を補完する限り、これらの方法により調製された生成物(例えば、プロダクトバイプロセス)もまた、異なる実施形態を表す。
【0057】
本明細書の他箇所の実施例に記載されるように、本発明の組成物は、いわゆる燃焼合成法又は沈殿法により製造され得る。いずれの方法も、燃焼又は沈殿のいずれかの前に前駆体を均質に混合するため、水性媒体の使用を伴う。小スケールでの合成(例えば、5~10グラムスケールなどのグラムスケールでの合成)においてより有用な燃焼合成法では、それぞれの金属及び化学量論の塩(本明細書の他箇所に記載)を水性溶媒に溶解させ、これにクエン酸(又は他の可燃性ゲル形成材料、例えば、ポリオール及び/若しくはポリカルボン酸)を加える(金属:クエン酸のモル比は、ほぼ1:1)。その後、加熱若しくは真空のいずれか、又は両方により溶媒の大部分又は全てを除去すると、均一に分散した金属を含むゲルが得られる。このゲルを加熱して、約300℃未満の温度で燃焼させる。その後、得られた燃焼物を約600℃~900℃の範囲の温度(好ましくは約650℃~約750℃、又は約700℃)で、所望の生成物を得るのに十分な時間(典型的には、2時間)焼成する。
【0058】
より大きなスケール(例えば、5kgスケール以上)での反応に対応可能な共沈法では、対応する金属塩の溶液を、アルカリ性pH(典型的には、約9~約13の範囲のpH)である水酸化物(好ましくは、NaOH又はKOH)の溶液に移す。水酸化物と組み合わさると、金属塩が沈殿して酸化物/水酸化物懸濁液が形成される。その後、これを濾過、洗浄、乾燥し、上記のように焼成する。
【0059】
いずれの方法に関しても、金属前駆体は、水溶液に少なくとも部分的に可溶性の金属前駆体であり得、好ましくは、少なくとも記載の方法に好適なレベルまで完全に可溶性の金属前駆体であり得る。Mn又はLa金属(及び他のAサイトドーパント、例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ce、Pr、又はNd)の典型的な供給源としては、アルコキシド(例えば、C1~6アルコキシド)、水酸化物、水和酸化物、ヒドロゲル、ヒュームド若しくはコロイド性酸化物、又はこれらの組み合わせが挙げられる。更に、これらの金属又は元素の任意の酸化型の塩、例えば、β-ジケトネート(例えば、アセチルアセトネート、すなわち「acac」)、アルキル置換β-ジケトネート(例えば、2,2,6,6-テトラメチル3,5-ヘプタノエートなど)、炭酸塩、カルボキシレート(例えば、アセテート、プロピオネート、2-エチルヘキサノエート、オクタノエート)、ハロゲン化物、水酸化物、硝酸塩、シュウ酸塩、及び/又は硫酸塩を含むものが、適切な前駆体として機能し得る。ハロゲン化物又は硫黄を含まない前駆体の使用が好ましい。好ましい塩としては、例えば、ランタン(III)2-エチルヘキサノエート(固体若しくは溶液)、ランタン(III)アセチルアセトネート水和物、ランタン2,4-ペンタンジオネート、硝酸ランタン(III)、マンガン(II)2-エチルヘキサノエート、マンガン(II)アセテート、硝酸マンガン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0060】
特に、組成物を環境及びプロセスの安全性についての懸念が最も大きくなる大規模スケールで調製する場合には水性溶媒が好ましいが、そうでなければ、溶媒は必ずしも限定されない。特に指定のない限り、用語「水性」溶媒は、少なくとも95%が水である溶媒を指すが、他の実施形態では、溶媒は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、若しくは98%の水を含んでもよく、又は実質的に全てが水であってもよい。水に加えて、水性溶媒はまた、カルボン酸(プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸、酢酸)、又はモノ-、ジ-、若しくはポリヒドロキシアルコールを含んでもよい。
【0061】
個々の実施形態では、いずれの方法に関しても、焼成温度は、約600℃~約650℃、約650℃~約675℃、約675℃~約700℃、約700℃~約725℃、約725℃~約750℃、約750℃~約800℃、約800℃~約850℃、約850℃~約900℃の範囲の少なくとも1つの温度である、又はこれらの範囲の2つの組み合わせ、例えば、約675℃~約725℃である。約700℃の温度での焼成は、少なくとも金属硝酸塩の沈殿により形成された材料に関しては、よく作用するようである。焼成温度は、これらの材料の合成において重要なパラメータであると思われる。より低い焼成温度(約600℃未満)では、TWCの活性が低い非晶質相となる。より高い焼成温度(約800℃又は850℃超)では、表面積が崩壊してTWC活性が悪化する。
【0062】
実施例に示されるように、共沈により、LaMnO材料がMnO及びいくらかのLaCO又はLaOOHを伴う、本明細書の他箇所に記載されるような組成物を含有する生成物が得られる。組成物のLaMnO及びMnO成分は組成物に触媒活性を与えるが、ランタン材料は触媒活性を与えないと思われる。
【0063】
一旦形成されると、PGMが任意の従来の方法により導入される。低レベルのPGM、例えばPdが存在すると、非PGM組成物に対してライトオフが改善し、NO還元活性が増大した材料が形成される。例えば、0.01重量%のPdが存在するだけで、TWC活性及びNOの転化率が測定可能なほどに改善する。この場合も、LaMnOの存在により、固有のTWC活性を有するが高温で激しく焼結するMnO粒子に更なる安定性が与えられる。複合体は、複合体のいずれか個々の成分と比較して、予想外のOSC性能を与える(例えば、表1を参照)。また、複合体の新しい試料及びエージングした試料のOSCは、成分のいずれかのOSCよりも良好である(すなわち、複合体と同様又はそれより低いMn含有量、重量%を有するMn:Al、又はペロブスカイト、例えば、La0.9Sr0.1MnOのOSCよりも良好である。
用途
【0064】
ペロブスカイト組成物は、MnO及びランタン材料の存在下及び非存在下の両方で優れた酸素貯蔵能を示し、これにより、触媒コンバータでの使用、(CO、HC、及びNO転化用の)三元触媒での使用、ガソリン及びディーゼル粒子フィルタ並びに触媒化煤フィルタでの使用、並びにディーゼル酸化触媒での使用、をはじめとする様々な用途に好適となる。これらの用途の各々は当業者に既知であり、したがって、本明細書で網羅的に列挙する必要はない。開示される組成物は、これらの用途で、又は内燃反応からの排気ガスを処理する方法で、いずれもウォッシュコートコーティングの一部又は別個の材料として使用され得る。
触媒コンバータ
【0065】
例えば、本開示は、本明細書に開示される組成物のうちいずれか1つ以上を含む自動車用触媒コンバータを含む。これらの組成物はウォッシュコート組成物に配合してもよく、このようなウォッシュコート組成物は当該技術分野において周知である。触媒成分に加えて、ウォッシュコートはまた、例えば、結合剤(例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、アルミナ-シリカなど)、レオロジー剤などの他の成分も含有し得る。ウォッシュコートは、本明細書に記載されるように、ハニカムフロースルーフィルタ又はウォールフローフィルタなどの基材に適用できる。コーティングは、基材の長さにコーティングする、又は基材及びガス流の方向に対して上流ゾーン若しくは下流ゾーンなどのゾーンでコーティングする、かつ/又は基材表面に対して上層、下層、若しくは中間層などの層でコーティングする、のいずれかであり得る。コーティングがゾーン又は層として配置される場合、別のゾーンはコーティングなしでもよく、又は別のゾーン若しくは層は、異なる触媒特性及び/若しくは機能性を有する異なる触媒コーティングであってもよい。ウォッシュコートに加えて又はウォッシュコートの代わりに、本発明の組成物は、押出成形されたハニカムモノリスの形態であり得る。図15は、第1の排気ガス処理システムコンポーネント20を有する、ガソリン又はディーゼルエンジン用の排気システムであって、基材上にコーティングした本発明の組成物と、システムを通過する排気ガス40の流れに対して第1のコンポーネント20の上流にある、任意の第2の排気ガス処理システムコンポーネント10と、第1のコンポーネント20の上流にある、任意の第3の排気ガス処理システムコンポーネント30と、を備えた、排気システムを示す。
【0066】
これらの触媒コンバータでは、本明細書に記載されるような、いわゆる三元触媒(TWC)を採用することができる。これらを次に考察する。
三元触媒
【0067】
本開示は三元触媒を備えた酸素貯蔵デバイスを含み、このようなデバイス又は触媒は各々、本明細書に開示される組成物のうちのいずれか1つ以上を含む。
【0068】
本発明で有用なTWCは、3つの部分:アルミナ、酸素貯蔵成分(OSC)、並びにアルミナ及びOSCの1つ又は両方に担持された白金族金属(PGM)を有し得る。アルミナ成分は、組成物の迅速なライトオフを与えるためのものである。ライトオフとは、ある反応に対して、触媒が50%以上の効率で作用する温度である。したがって、コールドスタート直後に排気ガスを処理するには、ライトオフを迅速に達成することが重要である。OSCの特性は、上記で説明される。典型的には、少なくとも2種のPGMが存在し、白金及びパラジウムのうちの1つは酸化触媒として、ロジウムは還元触媒として存在する。アルミナとOSCとは通常、均質に混合され、ウォッシュコート中でセラミックハニカムなどの基材に適用される。PGMは、アルミナ及びOSCの1つ又は両方に、ウォッシュコートの製造前に又はウォッシュコートへの添加により含浸させることができる。ウォッシュコートの製造前にPGMを含浸させることで、配合者は、どの成分でPGMを担持するかを選択することが可能である。例えば、ロジウムをOSCのみに担持させ、白金をアルミナのみに担持させることができる。代替的な配置は、成分及び/又はPGMを、重ねた別個の層に有することである。
【0069】
当該技術分野において既知の理由のため、TWCは、動作サイクルのリーン期間中に酸素を貯蔵し、動作サイクルのリッチ期間中に酸素を放出することにより有効な動作期間を拡大させる成分を組み込むように開発されている。このような目的のために、セリア系(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)材料が、現在市販されているTWCの大部分において、酸素貯蔵成分(OSC)として使用されている。
【0070】
本明細書に記載される組成物は、この目的のために使用される他の系(system)よりも十分に適しており、著しい利点を与えるものである。ペロブスカイト系複合体上のPGMは、卑金属である類似体及びこの特徴を有さない他の材料と比較して、又は開示される材料による費用で、CO及びHCの酸化におけるライトオフ温度を向上させ、かつNOのライトオフ及び転化率を予想外に向上させる。例えば、MnO-LazMnOの酸素貯蔵能(oxygen storage capability、「OSC」)はCe0.5Zr0.5に関して測定されたものよりも大きく、TWCの動作条件下では、PGM/MnO-LaMnOはPGM/CeZr系システムに匹敵するOSCを有する。実施例を参照されたい。本明細書で報告する0.01~0.04重量%のPGM担持量でPGM/MnO-LaMnOを含有する配合物は、はるかに高い担持量でPGMを含有する標準的なTWC配合物と比較して、はるかに安価である。
【0071】
したがって、本開示の一態様は、少なくとも本明細書に開示される結晶質組成物を含む、排気ガスを処理するための触媒物品に関する。このような触媒物品はまた、基材と、基材上の触媒領域と、を含んでもよく、触媒領域は、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素貯蔵成分(OSC)材料として機能する本明細書に記載の結晶質ペロブスカイトのうちのいずれか1つを含む組成物と、を含む。この触媒物品はまた、無機酸化物担体を含んでもよい。追加の実施形態はまた、システムなどの内燃機関用の排気システムを包含する。更に別の実施形態は、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させることを含む。
【0072】
この使用との関連において、第1のPGMは、好ましくはパラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物である。より好ましくは、第1のPGMは、パラジウムである。触媒領域には、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物であり得る第2のPGM成分が更に含まれてもよい。特に好ましくは、第1のPGM成分がパラジウムである場合、第2のPGM成分はロジウムである。第1及び第2のPGM成分は、約1:1、約1.1:1~約10:1、例えば、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、又は約5:1の比で存在し得る。このような比に関して、第1のPGMは、好ましくはPdである。このような比に関して、第2のPGMは、好ましくはRhである。触媒領域は、パラジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない可能性がある。
【0073】
更に、TWC組成物は、本明細書に開示される組成物のいずれか1つと、少なくとも1種の任意にドープされた形態のアルミナとを含んでもよく、少なくとも1種の形態のアルミナ(例えば、α、β、γ、δ、又はθアルミナ)は、希土類金属、シリコン、ゲルマニウム、リン、ヒ素、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムのうちの少なくとも1つでドープされている。このような組成物は、ウォッシュコート又はウォッシュコートコーティングの形態であり得る。このような組成物はまた、すなわち少なくとも、組成物及び任意にドープされたアルミナの形態のその教示に関して、並びにTWC組成物を製造するそれらの方法に関して、その全体が本明細書の一部を構成するものとして援用される米国特許第7,396,516号に記載された触媒の類似体であると考えることができる。
【0074】
好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はフィルタモノリスである。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、チタン酸アルミニウム、若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0075】
これらの三元触媒はまた、その性能が標準と比較される際に、それらの組成物のみならず、それらの性能の観点で特徴付けられてもよい。例えば、特定の実施形態では、本組成物はまた、セリア-ジルコニア標準に対して機能する能力という観点で記載されてもよく、例えば、組成物は、約350℃~約550℃の範囲の温度で動作させた場合、比較のCe0.5Zr0.5系組成物に対して、独立して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の炭化水素(HC)、CO、及びNOの転化効率を示す。「比較のCe0.5Zr0.5系組成物に対する」これらの効率の比較は、対応する(例えば、同等のドーパント及びPGM含有量を有する)Ce0.5Zr0.5系組成物の活性を指し、これらの後者の組成物は、性能のベンチマークであるとみなされる。例えば、所与の一連の条件下で、Ce0.5Zr0.5系組成物が利用可能なNOのうちの60%を転化する場合、少なくとも85%の効率を示す開示された組成物は、同じ動作条件下で、利用可能なNOのうちの少なくとも60%×85%、つまり少なくとも51%を転化するであろう。
【0076】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する車両排気ガスの処理方法に関する。これらの材料を使用して製造されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して、改善されていないとしても、少なくとも同等の触媒性能を示す。
【0077】
このようなシステムはまた、開示された物品の上流に設けられた第2の触媒物品を含むことができ、その結果、PGM/MnO:LaMnO触媒物品はガソリン粒子フィルタ(gasoline particulate filter、GPF)又はTWCを構成することができる。第2の触媒物品は、OSC、NOxトラップ、炭化水素トラップ、又はバー若しくは触媒化フィルタであり得る。より好ましくは、第2の触媒物品は、第1の触媒物品の下流に配置される。
ガソリン及びディーゼル粒子フィルタ、触媒化煤フィルタ、並びに炭化水素トラップ
【0078】
本明細書に開示される組成物は、粒子フィルタに適用されて触媒化粒子フィルタを形成することができ、これもまた本発明の範囲内である。内燃機関はまた、内部で使用される燃料の不完全燃焼により粒子状物質を発生させることが知られており、排気通路内の排気ガス中のそのような粒子状物質をトラップするための粒子トラップも同様である。これらのトラップ又はフィルタの目的は、ガソリン又はディーゼルエンジンの排気浄化システムとの関連において、大気中に放出される粒子状物質の量を抑制することである。このようなフィルタシステムとしては、多くの場合、アルミナ、シリカ-チタニア、チタニア-ジルコニア、シリカ-ジルコニア、シリカ-酸化ガリウム、チタニア-アルミナ、シリカ-酸化イットリウム、アルミナ-ジルコニア、シリカ-酸化ランタン、チタニア-酸化カドミウム、チタニア-酸化第一スズ、チタニア-酸化亜鉛、酸化亜鉛-シリカ、及び酸化亜鉛-酸化カドミウムなどの混合酸化物を含む構造が挙げられる。そうであるから、本組成物及び混合酸化物系は、この用途及び本明細書に記載の組成物を含むフィルタに特に適している。上述の三元触媒(TWC)システムとの関連において使用される場合、触媒化粒子フィルタはTWCを含んでいてもよい、又はシステムを通過する排気ガスの流れに対して、三元触媒の上流若しくは下流のいずれかに位置していてもよい。
【0079】
好適なモレキュラーシーブは、本発明において、例えば、自動車エンジンのコールドスタート後に未燃焼の炭化水素を吸着し、吸着した炭化水素を周囲温度超で、例えば、関連する貴金属系酸化触媒成分が、例えばCO及びHCの酸化又はNOの還元に関する所望のライトオフ温度に到達した際に脱着するために使用できる。これらのモレキュラーシーブは、OSCと同じ基材上、又はOSCの上流若しくは下流のいずれかの別個の基材上に含まれ得る。このようなモレキュラーシーブは、一般に、「小細孔」モレキュラーシーブと呼ばれる場合もある、その最大の細孔開口構造として8員環の細孔開口構造(8-ring pore opening structure)を有するものではない。好ましいモレキュラーシーブは、中細孔(最大で10員環の細孔開口構造)、大細孔(最大で12員環の細孔開口構造)、又は更には、メソ細孔(>12員環の細孔開口構造)モレキュラーシーブである。その若しくは各ゼオライトモレキュラーシーブ、又はその若しくは各非ゼオライトモレキュラーシーブ(例えば、シリカ-アルミノ-リン酸、すなわちSAPO)は、ABW、AEL、AET、AFG、AFI、AFO、AFR、AFS、AFY、AHT、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CFI、CGF、CGS、-CHI、-CLO、CON、CZP、DAC、DFO、DOH、DON、EMT、EON、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIU、GME、GON、HEU、IFR、IMF、ISV、ITH、ITR、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、LAU、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MFI、MFS、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、-PAR、PON、-RON、RRO、RSN、RTE、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SGT、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TOL、TON、TUN、UOS、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VSV、WEI、又は-WENのフレームワーク型コード(framework type code)(国際ゼオライト学会の構造委員会により定義される)から選択できる、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物である。好ましいゼオライト及び非ゼオライトモレキュラーシーブは、BEA、FAU、FER、MFI、MFS、MOR、STI、SZR、及びこれらのいずれか2つ以上の混合物からなる群から選択される。特に好ましいゼオライト又は非ゼオライトモレキュラーシーブは、BEA、FER、MFI、STI、及びこれらのいずれか2つ以上の混合物からなる群から選択される。特に好ましいゼオライトモレキュラーシーブは、ZSM-5、ベータ、フェリエライト、及びこれらのいずれか2つ以上の混合物である。好ましい合成のアルミノケイ酸塩ゼオライトモレキュラーシーブは、熱安定性向上のため、シリカのアルミナに対する比が10以上、例えば、15~150、20~60、又は25~40である。モレキュラーシーブは、例えば、銅、鉄などの遷移金属を含まないことができる。あるいは、モレキュラーシーブは、触媒活性又は熱耐久性の向上のため、銅又は鉄などの交換した金属を含むことができる。
ディーゼル酸化触媒
【0080】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に開示される組成物のうちのいずれか1つ以上を含むディーゼル酸化触媒を含む。ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンは両方、世界中の政府間組織によって規制されている少なくとも4種類の汚染物質、すなわち一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)、及び粒子状物質(particulate matter、PM)を一般に含有している、様々な程度の排気物質を生成する。据え置き型か可動型(例えば、車両用エンジン)かによらず、いずれのタイプのエンジンに関しても排出基準が徐々に厳しくなっている。これらの基準を満たす、費用効率が高い、改善された触媒及び排気システムを提供する必要がある。
【0081】
ディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalysts、DOC)などの酸化触媒は、典型的には、ディーゼルエンジンによって生成される排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化する。ディーゼル酸化触媒はまた、排気ガス中に存在する一酸化窒素(NO)の一部を二酸化窒素(NO)に酸化することもできる。二酸化窒素(NO)自体は汚染物質ではあるが、NOのNOへの転化は有益であり得る。生成されたNOは、例えば、下流のディーゼル粒子フィルタ(diesel particulate filter、DPF)又は下流の触媒化煤フィルタ(catalyzed soot filter、CSF)により捕捉された粒子状物質(PM)を再生するために使用できる。一般に、酸化触媒により発生したNOにより、酸化触媒の出口からの排気ガスにおけるNO:NOの比は、入口の排気ガスと比較して増加する。この比率の増加は、下流に選択触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)触媒又は選択触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒を備えた排気システムにとって有利であり得る。ディーゼルエンジンにより直接生成される排気ガス中のNO:NOの比は、SCR又はSCRF触媒性能を最適化するには低すぎる場合がある。
【0082】
少なくともこの文脈において、実施形態は、1つ以上の遷移金属触媒、好ましくは白金族触媒を含む、それらの酸化触媒を含む。いくつかの実施形態では、触媒金属は、独立して、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びこれらの2つ以上の混合物のうちのいずれか1つ以上を含む。
用語
【0083】
本開示では、特に明示しない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の参照を含み、任意の特定の数値への参照は、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、そのような材料及び当業者に周知であるその均等物のうちの少なくとも1つへの言及である、などである。
【0084】
値が記述語「約(about)」を使用することにより近似値として表現される場合、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。概して、用語「約」の使用は、開示された主題により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。当業者は、これを日常的に行うこととして解釈できるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合、一連の値で使用される段階的な変化を使用して、各値について用語「約」に利用可能な意図された範囲を決定できる。存在する場合、全範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲内で提示されている値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0085】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記載される本発明の特定の特色はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。すなわち、明らかに互換性がないか又は具体的に除外されない限り、個々の実施形態はそれぞれ、任意の他の実施形態と組み合わせることが可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であると考えられる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特色はまた、個別に、又は任意の部分的な組み合わせで提供されてもよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部、又はより一般的な構造の一部として記載され得るが、その各工程はまた、それ自体が独立した実施形態であり、他の工程と組み合わせることができるとみなされ得る。
【0086】
移行語(transitional term)「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting)」は、特許専門用語において、それらの一般に認められた意味を内包することを意図しており、すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、他を包含し得るもの又はオープンエンドであって、追加の列挙されていない要素又は方法又はプロセス工程を除外しないものであり、(ii)「からなる(consisting of)」は、請求項で指定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、指定された材料又は工程、及び特許請求された発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないもの」に限定する。語句「含む(comprising)」(又はその同等語)という観点で記載された実施形態はまた、実施形態として、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という観点で独立して記載される実施形態も提供する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という観点で提供されたこれらの実施形態では、組成物の基本的かつ新規の特徴は、TWC触媒として機能するその能力である。すなわち、組成物は、特許請求された組成物に匹敵する速度又は効率で、このような触媒に関連する変換を行うことができる追加の材料を有さない。
【0087】
リストが提示される場合、別途記載のない限り、そのリストの各個別要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」、又は「A、B、若しくはC」を含むものと解釈されるべきである。更なる例として、「Pt、Pd、及び/又はRh」のリストは、独立した実施形態「Pt」、「Pd」、「Rh」、「Pt及び/又はPd」、「Pt及び/又はRh」、「Pd及び/又はRh」、並びに「Pt、Pd、及び/又はRh」を含む。同様に、記号「≦」及び「≧」の使用は、端点値が範囲内に含まれる範囲を指す。しかし、これらの範囲の部分集合はまた、1つ又は両方の端点値が除外されるものを含んでもよい。例えば、「0.15≦×≦0.5」などの実施形態は、範囲が端点0.15及び0.5を含むと定義される範囲を指す。別個の独立した実施形態は、範囲が、「0.15<×≦0.5」又は「0.15≦×<0.5」又は「0.15<×<0.5」として定義され得るものを含む。
【0088】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することもできるが、代表的で例示的な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0089】
関連技術の当業者により理解されるように、本明細書全体を通して、単語は、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかし、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0090】
別途記載のない限り、用語「単離された」は、溶媒又は他の不純物を含まないように、他の成分から物理的に分離されることを意味し、追加の実施形態は、化合物が、液体又はガスクロマトグラフィー相で分析的に分離されるなど、溶媒又は溶媒分画中で実質的に唯一の溶質であるものを含む。
【0091】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相での酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0092】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、その後に記載する状況が発生する場合としない場合があり、そのため、その記載には、その状況が発生する実施形態と発生しない場合とが含まれることを意味する。
【0093】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、一般に、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、又はPt、好ましくは、Ru、Rh、Pd、Ir、又はPtを指す。用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及び/又はPdのうちの少なくとも1つを指す。
【0094】
用語「分離する」又は「分離された」は、それが、生成物材料を、その材料を得る反応条件と関連した他の出発材料、又は副産物、又は副生成物(不純物)から分離又は単離することを意味する限りにおいて、当業者に理解されるような普通の意味を有する。そうであるから、当業者は、少なくとも生成物の存在を認識し、生成物を分離又は単離するための具体的な行動をとると推測される。材料は少量の不純物を含み得、分離又は単離された材料は残留溶媒を含み得るか、又は材料の反応若しくはその後の精製に使用される溶媒内に溶解し得るので、絶対的な純度は必須ではないが、好ましい。
【0095】
本明細書で使用されるとき、用語「実質的に含まない」は、本明細書で材料に関して、典型的には組成物の文脈で使用される場合、材料が少量、例えば、≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。本明細書で使用されるとき、表現「本質的に含まない」は、材料が更に少なく微量であり、例えば≦1重量%、好ましくは≦約0.5重量%、より好ましくは≦約0.1重量%であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0096】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0097】
以下の特定の実施形態のリストは、前述の記載を置き換えるか、又は取って代わるのではなく、補完することを意図している。
【0098】
実施形態1.凝集及び/又は融合した一次粒子の複合体を含む組成物であって、凝集及び/又は融合した一次粒子が、集団として、組成物[MnO:[LaMnO1-y
[式中、
xは約1~約2.5の範囲であり、
yは約1~約30重量%、又は約1~約20重量%、又は約2~10重量%、又は約2~約5重量%の範囲であり、
zは約0.7~約1.1であり、かつ、
LaMnOは結晶質ペロブスカイト相である]を含む、からなる、又はから本質的になる。
本実施形態のいくつかの態様では、複合体の凝集及び/又は融合した一次粒子は、約25~約60m/g、好ましくは約27~約45m/gの範囲の平均表面積を有する。
【0099】
実施形態2.MnOが非晶質である、実施形態1に記載の組成物。
【0100】
実施形態3.MnOが結晶質である、実施形態1に記載の組成物。すなわち、MnOの一次粒子は結晶質である。逆に、別の態様では、MnOの一次粒子はナノ結晶質又は非晶質(すなわち、PXRDでは見られない)である。
【0101】
実施形態4.一次粒子が、MnO及びLaMnOの粒子及び/又は結晶子を個々に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0102】
実施形態5.組成物が、約10nm~約60nm、好ましくは約12nm~約50nmのサイズ範囲で存在するMnOの一次粒子、及び/又は約10nm~約60nm、好ましくは約12nm~約25nmのサイズで存在するLaMnOの一次粒子を含む、実施形態4に記載の組成物。他のサイズ範囲は、本明細書の他箇所に記載される。同じく、本実施形態の特定の態様では、個々の一次粒子はまた、「約10~約60nm、好ましくは約12nm~約25nm、又は約14nm~約25nmの範囲のサイズを有する、LaMnOの一次粒子を含む(すなわち、無関係のMn又はLa材料を含まない)組成物」におけるような、個々の部分的な実施形態を表し得る。本明細書の他箇所に記載される本実施形態の別の態様では、一次粒子は、凝集体として存在する、又は凝集体であることを特徴とし得る。
【0103】
実施形態6.MnOが、主にMn、Mn、又はこれらの組み合わせである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0104】
実施形態7.結晶質LaMnOが、約0.90~約1.1、又は約0.92~約0.98の範囲のAサイト占有率を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0105】
実施形態8.zが、約0.7~約1.1、約0.8~約1.1、約0.8~約0.99、又は約0.8~約0.95の範囲の値である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0106】
実施形態9.ランタンの酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩、例えばLaOOH及び/又はLaCOを更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0107】
実施形態10.白金族金属(PGM)を、組成物全体の重量に対して約0.01重量%~約0.5重量%の量で更に含み、好ましくは、PGMがPd若しくはRhであり、かつ/又はPGMの大部分が一次粒子の表面に位置している、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0108】
実施形態11.実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物であって、本明細書に記載の方法のいずれか、例えば、
(a)ランタン及びマンガンを含む水溶液からランタン-マンガン水酸化物前駆体を沈殿させることであって、ランタン及びマンガンは、各々独立して、アセチルアセトネート、カルボキシレート、炭酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、及び/又はシュウ酸塩を含む塩であり(例えば、La(NO及びMn(NO)、アルカリ金属水酸化物を使用することで、約9~約13の範囲のpHを有する水性懸濁液を準備する、ことと、次に、
(b)約600℃~約1100℃の範囲の温度で、ランタン-マンガン水酸化物を焼成することと、次に任意に、
(c)PGMを、組成物の一次粒子又は凝集粒子上に堆積させることと、により調製された、組成物。
【0109】
実施形態12.ウォッシュコートを含む自動車用触媒コンバータであって、ウォッシュコートが、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物を含む、自動車用触媒コンバータ。
【0110】
実施形態13.実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物を含む三元触媒を備えた、酸素貯蔵デバイス。
【0111】
実施形態14.実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物を含む三元触媒であって、組成物が、約350℃~約550℃の範囲の温度で動作させた場合、比較のCe0.5Zr0.5系組成物に対して、独立して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の炭化水素(HC)、CO、及びNOの転化効率を示す、三元触媒。
【0112】
実施形態15.実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物を含むガソリン若しくはディーゼル粒子フィルタ、又は触媒化煤フィルタ。本実施形態の特定の態様では、ガソリン若しくはディーゼル粒子フィルタ、又は触媒化煤フィルタは、ウォッシュコートされたガソリン若しくはディーゼル粒子フィルタ、又は触媒化煤フィルタである。
【0113】
実施形態16.実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物を含む、ディーゼル酸化触媒。
【0114】
実施形態17.内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、方法が、排気ガスを、実施形態13に記載の触媒コンバータ、実施形態14に記載の三元触媒、実施形態15に記載のガソリン若しくはディーゼル粒子フィルタ、若しくは触媒化煤フィルタ、又は実施形態17に記載のディーゼル酸化触媒と接触させることを含む、方法。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、本開示内に記載される概念のいくつかを示すために提供される。各実施例は、組成物、調製方法及び使用方法に関する具体的な個々の実施形態を提供するとみなされるが、どの実施形態も、本明細書に記載のより一般的な実施形態を制限するものとしてみなされるべきではない。特定の実施形態では、以下のパラグラフに記載される方法及び特徴付けはまた、より一般的な記載の文脈において読まれ得る。
【0116】
以下の実施例では、使用される数(例えば、量、温度など)に対して正確度を確保する努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮すべきである。別途記載のない限り、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0117】
以下及び本明細書の他箇所に記載される実施例で生成された材料は、以下の分析方法のうちの1つ以上によって特徴付けられた又は特徴付けられるものである。粉末X線回折(Powder X-ray diffraction、PXRD)パターンは、Brucker D8粉末回折計で、CuKα線(40~45kV、40mA)を使用し、0.04°のステップサイズで、5°から100°(2θ)の間で1ステップ1秒で収集した。透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscopy、TEM)画像は、JEM 2800(走査型)TEMにて、200kVの電圧で得た。ミクロ細孔容積及び表面積は、3Flex高性能比表面積・細孔分布測定装置(Micromeritics)において、77KでNを使用して測定した。
実施例1.MnO:La0.9MnO(La:Mnは約0.9:1)である複合体1
【0118】
実施例1.1.共沈:KOH(85%、9.40g、0.1425mol)を水(200ml)に溶解させ、マグネチックスターラーバーを用いてその溶液を400rpmで撹拌して60℃まで加熱した。硝酸ランタン六水和物(9.74g、0.0225mol)及び硝酸マンガン(50重量/重量%溶液、8.95g、0.025mol)を水に溶解させ、総体積100mlの溶液を得た。塩溶液を10ml/分で塩基に添加した。添加が完了したら、沈殿物を60℃で30分間、撹拌しながらエージングした。濾過により材料を回収し、洗浄して吸着イオンを除去し、105℃で乾燥させた。試料を空気中にて700℃で2時間焼き、ペロブスカイト相を形成した。BETは30m/gであった。ペロブスカイト結晶サイズは13nmであり、98%ペロブスカイト相であった。代表的なXRDを図7に示す。
【0119】
実施例1.2.共沈:KOH(85%、900g、13.6mol)を水(7L)に溶解させ、その溶液を撹拌して60℃まで加熱した。硝酸ランタン六水和物(897g、2.07mol)及び硝酸マンガン(50重量/重量%溶液、927g、2.59mol)を水に溶解させ、総体積1.5Lの溶液を得た。塩溶液を10ml/分で塩基に添加した。添加が完了したら、沈殿物を60℃で30分間、撹拌しながらエージングした。濾過により材料を回収し、洗浄して吸着イオンを除去し、105℃で乾燥させた。試料を空気中にて700℃で2時間焼き、ペロブスカイト相を形成した。BETは31m/gであった。ペロブスカイト結晶サイズは15.6nmであり、77.7%ペロブスカイト相であった。代表的なXRDを図8に示す。
【0120】
実施例1.3.共沈:NaOH(1000g、25mol)を水(5.5L)に溶解させた。溶液を撹拌し、60℃まで加熱した。硝酸ランタン六水和物(2062g、4.68mol)を50重量%の硝酸マンガン溶液(1861g、5.2mol)と水に溶解させ、2.7Lの塩供給溶液を得た。撹拌したNaOH溶液に、塩溶液を40ml/分で添加した。添加が完了したら、沈殿物スラリーを更に30分間撹拌した。濾過により材料を回収し、水で洗浄して吸着イオンを除去した。試料を105℃で乾燥させ、空気中で700℃にて2時間焼き、ペロブスカイト相を形成した。ペロブスカイト結晶サイズは16.7nmであり、92.7%ペロブスカイト相であった。BETは31m/gであった。
実施例2.MnO:La0.9MnO(La:Mnは約0.8:1)である複合体2
【0121】
実施例2.1.燃焼:Baythounらにより公開されている通り[M.S.G.Baythoun,F.R.Sale,J.Mater.Sci.,17,1982,2757]。硝酸ランタン六水和物(8.28g、0.022mol)及び硝酸マンガン四水和物(6.183g、0.024mol)を最小量の水に溶解させた。クエン酸(9.038g、0.043mol)水溶液(金属:クエン酸は1:1)をこの溶液に滴下した後、ホットプレート上で水を蒸発させた。得られたゲルを300℃未満の焼成炉で燃焼させ、空気中にて700℃で2時間焼いた。BETは45m/gであった。ペロブスカイト結晶サイズは13nmであり、100%ペロブスカイト相であった。XRDを図6に示す。XPSは、Mnが表面に豊富にあることを示している:測定したLa:Mn比は0.7であり、計算したLa:Mn比は0.9である。
【0122】
実施例2.2.共沈:KOH(85%、9Kg、136.34mol)を水(35L)に溶解させ、撹拌しながら60℃まで加熱した。硝酸ランタン六水和物(8.97Kg、20.71mol)を50重量%の硝酸マンガン溶液(9.27Kg、25.9mol)と温水に溶解させ、14Lの溶液を得た。塩混合物を、KOH溶液中に333ml/分でポンプ注入した。沈殿物スラリーを60℃で30分間撹拌した後、濾過した。材料を洗浄し、105℃で乾燥させ、空気中で700℃にて2時間焼いた。ペロブスカイト結晶サイズは17nmであった。
【0123】
実施例3.MnO:La0.9MnO(La:Mnは約0.7:1)である複合体3
実施例3.1.共沈:KOH(85%、8.41g、0.127mol)を水(200mL)に溶解させ、マグネチックスターラーバーを用いてその溶液を400rpmで撹拌して60℃まで加熱した。硝酸ランタン六水和物(7.58g、0.0175mol)及び硝酸マンガン(50重量/重量%溶液、8.95g、0.025mol)を水に溶解させ、総体積100mLの溶液を得た。塩溶液を10mL/分で塩基に添加した。添加が完了したら、沈殿物を60℃で30分間、撹拌しながらエージングした。濾過により材料を回収し、洗浄して吸着イオンを除去し、105℃で乾燥させた。試料を空気中にて700℃で2時間焼き、ペロブスカイト相を形成した。ペロブスカイト結晶サイズは12.5nmであり、90.9%ペロブスカイト相であった。
実施例4.Pdを含浸させた試料Pd/Mn:La0.9MnO(0.4、0.2、0.1、0.05、及び0.01重量%のPd)
【0124】
Pd(NO溶液(7.83%Pd)を使用して、初期湿潤含浸により、Pdを20gの複合体上に堆積させた。試料を105℃で乾燥させ、空気中にて500℃で2時間焼いた。参照であるCe0.5Zr0.5試料も同様に調製した。
実施例5.新しい複合体及びエージングした複合体、並びに比較例に由来するOSCデータ。
【0125】
2つの方法によりOSCを決定した。これらの方法は、同等の情報を提供する。
【0126】
方法1:典型的なOSC実験では、10mL/分のArをトレーサーガス、40mL/分のHeをキャリアガスとして使用し、0.05gの試料を、酸化条件(50mL/分の5%O/He)と還元条件(50mL/分の100%CO)との間で循環させるようにプログラムする。質量分析計を使用して、500℃で複数の酸化還元サイクルにわたりCO及びO信号をモニターし、COが生成され始める最初の3.5秒間におけるCO曲線の下部の面積としてOSCを計算する。
【0127】
方法2:CO/CO破過試験を用いてOSCを決定した。この試験は、摂動条件下で、触媒の貯蔵されたOからCOが発生するのをモニターするものである。およそ0.1gの触媒を、Heをキャリアガス(90mL/分のHe)として使用し、リーン(10mL/分の5%O/Heを5分間)及びリッチ(10mL/分の10%CO/Heを5分間)のガス混合物に交互に曝した。質量分析計を使用して、500℃で複数の酸化還元サイクルにわたりCO、CO、及びO信号をモニターし、COとCOの破過信号の間にかかる時間を測定して、両方のOSCを計算した。
【0128】
試験の結果を表1に示す。
【表1】
CO生成曲線の下部領域の、3.5秒間にわたる積分。
COとCOの破過信号の間にかかる時間を測定して計算したOSC。
実施例6.実施例1の複合体に対するライトオフ試験の手順。
【0129】
実施例1の材料を、典型的なTWCガス組成である連続的なガス混合物の下で試験した。第1のランプは、試料を脱グリーン(degreen)するための前処理として使用する。一方、第2のランプ中に収集したデータは、TWC活性を比較するために使用する。10℃/分のランプ速度を使用して、試料を約110~約550℃で試験した。使用した総流量は、固定床反応器内に配置した、0.2gのコーディエライトと混合した0.2gの触媒に対して0.5L/分であった。使用したガス及びそれらの濃度を表2に示す。
【表2】
【0130】
結果は、参照であるCe0.5Zr0.5と比較して、複合体のCO/C/NO活性が向上していることを示している。TWC条件下では、吸着サイトに対して反応物が競合し、かつペロブスカイトではOとHOの吸着が優先されるため、NOの還元は不十分である。NOの還元を向上させるため、ペロブスカイト表面に少量のPdを添加した。例えば、0.2重量%のPdの存在下では、400℃超でのTWC活性は、特に燃焼させた試料の場合、0.2Pd/Ce0.5Zr0.5と同様かそれ以上である(図9~11)。0.2重量%のPdの存在下では、NOの転化率が著しく向上し、TWC活性は0.2Pd/Ce0.5Zr0.5標準と同等であった。
【0131】
約0.01~0.4重量%のPdを担持した複合体は、比較のPd/Ce0.5Zr0.5系組成物に対して、CO/C/NOを、500℃で少なくとも85%、しかし一般には90%超の効率で転化する(図12~14)。
【0132】
当業者には理解されるように、本発明の多くの改変及び変更が、これらの教示を考慮して可能であり、その全てが本明細書において意図される。
【0133】
本明細書に引用又は記載された各特許、特許出願、及び刊行物の開示は、あらゆる目的のため、又は少なくともそれらが本明細書で使用される文脈に関して、その全体における各々が本明細書の一部を構成するものとして援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15