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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】編組プリフォームのラジウスフィラー
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20240701BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20240701BHJP
   D04C 1/06 20060101ALI20240701BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B29B11/16
D04C1/02
D04C1/06 Z
B29K105:08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021560913
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020057071
(87)【国際公開番号】W WO2020212042
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】19170064.0
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520149353
【氏名又は名称】テイジン カーボン ユーロップ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Teijin Carbon Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Kasinostrasse 19-21, 42103 Wuppertal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルティン リンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ローウェ
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ヴォカッツ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522332(JP,A)
【文献】特表2014-521796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0183067(US,A1)
【文献】特開2015-147411(JP,A)
【文献】特表2016-509638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16、15/08-15/14
C08J 5/04-5/10、5/24
B29C 41/00-41/36、41/46-41/52、
70/00-70/88
D04C 1/00-7/00
D04G 1/00-5/00
D06M 13/00-15/715
B29K 105:08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのカーボンヤーンを含む編組プリフォームのラジウスフィラーであって、少なくとも1つのカーボンヤーンが連続カーボンフィラメントヤーンであり、前記少なくとも3つのカーボンヤーンが互いに一緒に編組されている、編組プリフォームのラジウスフィラーにおいて、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンは、前記連続カーボンフィラメントヤーンの繊維重量に対して1~10重量%の範囲の濃度で樹脂組成物を含み、前記編組プリフォームのラジウスフィラー全体における樹脂の総量は、前記編組プリフォームのラジウスフィラーの総繊維重量に対して10重量%未満であり、前記編組プリフォームのラジウスフィラーは、カーボンヤーンのみを含み、編組ステップは、次の式に基づき、その際、編組角度αは、少なくとも18°である:
編組角度α=arccos((n(cy)×T(cy))/(A(cy)×d(cy)-n(UD)×T(UD))
ここで、
n(cy)は、前記少なくとも3つのカーボンヤーンの数であり、
T(cy)は、tex単位での前記少なくとも3つのカーボンヤーンの繊度であり、
A(cy)は、mm単位での前記少なくとも3つのカーボンヤーンの断面積であり、
d(cy)は、g/cm単位での前記少なくとも3つのカーボンヤーンの密度であり、
n(UD)は、一方向配向カーボンヤーンの数であり、
T(UD)は、tex単位での前記一方向配向カーボンヤーンの繊度である
ことを特徴とする、編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項2】
前記編組角度αが20°~45°の範囲にある、請求項1記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を含み、前記第1の樹脂組成物が、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンに浸透し、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンのフィラメントが、前記第1の樹脂組成物を介して少なくとも部分的に結合され、前記第2の樹脂組成物が、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの束の外側で、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの強化繊維フィラメントに付着する粒状物または液滴の形態で存在する、請求項1または2記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項4】
すべてのカーボンヤーンが連続カーボンフィラメントヤーンである、請求項1から3までのいずれか1項記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項5】
少なくとも1つのカーボンヤーンが、短繊維および/またはステープルファイバーから構成される、請求項1から3までのいずれか1項記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項6】
すべてのカーボンヤーンが、各カーボンヤーンの繊維重量に対して1~10重量%の範囲の濃度で樹脂組成物を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項7】
前記編組プリフォームのラジウスフィラーが、三角形、正方形、円筒形、または多角形の断面形状を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項8】
前記第1の樹脂組成物が、少なくとも2つのビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂H1およびH2を、H1:H2=1.1~1.4の重量比で含み、H1は、1850~2400mmol/kgのエポキシ価、および800~1000g/molの平均分子量Mnを有し、H2が、5000~5600mmol/kgのエポキシ価、および700g/mol未満の平均分子量Mnを有し、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンが、前記第1の樹脂組成物を、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの総重量に対して0.1~2重量%有する、請求項3記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項9】
前記第2の樹脂組成物が、エポキシ価が480~645mmol/kgでありかつ平均分子量Mnが2700~4000g/molである少なくとも50重量%のビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂H3、芳香族ポリヒドロキシエーテルP2、ポリアミド、もしくは熱可塑性ポリウレタン樹脂、またはこれら化合物の混合物を含み、前記化合物が、110~150℃の範囲の溶融温度を有する、請求項3または8記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項10】
前記第2の樹脂組成物が、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの総重量に対して0.5~10重量%の濃度で束の外側に存在し、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの前記束の外側の表面の少なくとも50%が、前記第2の樹脂組成物を含まない、請求項3記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項11】
前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの束の内部が、前記第2の樹脂組成物を含まない、請求項3記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項12】
前記少なくとも3つのカーボンヤーンの束の内部が、前記第2の樹脂組成物を含まない、請求項3記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項13】
前記第1の樹脂組成物が、酸価が40~55mgKOH/gでありかつ平均分子量Mnが4000~5000g/molである芳香族ポリヒドロキシエーテルP1をさらに含む、請求項3記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項14】
前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンが、6000~48,000のフィラメントを含み、かつEN ISO 2060:1995に準拠して測定された400~32,000texの範囲の線密度を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の編組プリフォームのラジウスフィラー。
【請求項15】
編組プリフォームのラジウスフィラーの製造方法であって、請求項1に従って少なくとも3つのカーボンヤーンを一緒に編組し、その際、前記少なくとも3つのカーボンヤーンのうちの少なくとも1つが、連続カーボンフィラメントヤーンである、方法において、前記少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンは、前記連続カーボンフィラメントヤーンの繊維重量に対して1~10重量%の範囲の濃度で樹脂組成物を含み、前記ラジウスフィラーにおける樹脂の総量は、前記ラジウスフィラーの総繊維重量に対して10重量%未満であることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1記載の編組ラジウスフィラーを含む、複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材構造物用の編組プリフォームのラジウスフィラー、かかる編組プリフォームのラジウスフィラーの製造方法、および編組プリフォームのラジウスフィラーを含む複合材に関する。
【0002】
ラジウスフィラー(radius filler)は様々な用途で知られ、使用されている。例えば航空機の建造では、ラジウスフィラーは、構成要素の異なる構造部分間のクロスオーバーに使用され、キャビティに充填される。
【0003】
ラジウスフィラーは、例えば米国特許第9,827,710号明細書に記載されている。該特許のラジウスフィラーは樹脂を含み、該樹脂は、編組ステップの前または後に添加される。上記の文献の図5によれば、乾燥繊維を編組した後にこれを樹脂浴で湿らせるか、あるいは、予め樹脂が含浸されたプリプレグ繊維として提供される。したがって、米国特許第9,827,710号明細書では、ラジウスフィラーにおける樹脂の量が多い。
【0004】
米国特許第4,650,229号明細書には、安定剤を含む一方向配向繊維を含むラジウスフィラーが開示されている。繊維は、モールド内で間隙の形状に成形される。
【0005】
日本国特許第5984933号公報は、国際公開第2013/017434号に対応する。該文献には、カーボン繊維で構成された、第1および第2の樹脂組成物を含むヤーンが開示されている。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0183067号明細書は、風洞ブレードに関する。このデバイスでは、ラジウスフィラーを使用して、デバイスの様々な部分の間の間隙を塞ぐ。ラジウスフィラーは、多数の一方向トウを囲む編組スリーブを含む。編組スリーブは、粘着付与剤溶液を含む。
【0007】
したがって、従来技術の不利な点を克服する編組プリフォームのラジウスフィラー(braided preform radius filler)を創作することが目的である。
【0008】
この目的は、本発明の請求項1記載の編組プリフォームのラジウスフィラーによって達成される。
【0009】
フィラープリフォームは、最終製品のほぼ3次元の形状を有する3次元の乾燥構造体である。したがって、フィラープリフォームは、予備成形品である。プリフォームは、樹脂の量が最終製品とは異なる。樹脂は、最終製品の製造プロセス中にプリフォームに対してのみ施与される。したがって、プリフォームは、樹脂の含有量が比較的少ない乾燥構造体と説明される。「樹脂の含有量が比較的少ない」という用語は、プリフォーム内の樹脂の総量が、プリフォームの総繊維重量に対して15重量%未満であることを意味する。
【0010】
本発明による編組プリフォームのラジウスフィラー全体における樹脂の総量は、編組プリフォームのラジウスフィラーの総繊維重量に対して10重量%未満である。これは、編組プリフォームのラジウスフィラーの繊維に対して、(編組ステップの前後を問わず)従来技術の意味での樹脂の含浸が行われないことを意味する。しかし、編組ステップにより、さらなる樹脂材料やスリーブなしで、フィラーはその形状を維持する。さらに、少なくとも1つの連続カーボンヤーンの上またはその中の少量の樹脂は、フィラーに対するこの効果を強化するのに適している。
【0011】
明確にするために述べると、本開示による編組プリフォームのラジウスフィラーは、さらなる樹脂、調製物、またはマトリックス材料を含まず、編組プリフォームのラジウスフィラーの総繊維重量に対して、マトリックス材料を10重量%未満しか含まない。そのため、編組プリフォームのラジウスフィラーは軽量であり、マトリックスや樹脂材料に応じた特別な条件(例えば、保管条件、寿命限界)は不要である。
【0012】
編組プリフォームのラジウスフィラーは、次の式に従って編組され、その際、編組角度は、少なくとも18°である:
編組角度α=arccos((n(cy)×T(cy))/(A(cy)×d(cy)-n(UD)×T(UD))
ここで、
n(cy)は、カーボンヤーンの数であり、
T(cy)は、tex単位でのカーボンヤーンの繊度であり、
A(cy)は、mm単位でのカーボンヤーンの断面積であり、
d(cy)は、g/cm単位でのカーボンヤーンの密度であり、
n(UD)は、一方向配向カーボンヤーンの数であり、
T(UD)は、tex単位での一方向配向カーボンヤーンの繊度である。
【0013】
特許請求の範囲に記載の樹脂組成物を含むカーボンヤーンと組み合わせたこの種の編組物は、フィラーの形態を緻密な所望の様式で固定するのに適している。フィラーは取扱いが容易であり、間隙に固定することができる。一方で、樹脂量が十分に少ないため、フィラーは間隙に柔軟に適応可能であり、さらなる処理ステップでマトリックスを容易に浸透させることができる。これは、フィラーが(例えば圧縮によって)成形可能であり、それに応じて間隙にフィットし得ることを意味する。さらに、編組プリフォームフィラーは、編組プリフォームフィラーを含む構成要素の機械的特性にまったくまたはわずかにしか影響を及ぼさない。したがって、構成要素の機械的特性を考慮する際に、編組プリフォームフィラーの存在を無視することができる。これは、プリプレグ、ロービング、または一方向繊維で構成されたフィラーには当てはまらない。
【0014】
一実施形態において、編組角度αは、18°~50°、20~45°、25°~40°、または30~35°の範囲にある。角度が大きいほど、(編組プリフォームフィラーを含む)構成要素に対する編組プリフォームフィラーの影響が小さくなる。
【0015】
一実施形態において、連続カーボンフィラメントヤーン(continuous carbon filament yarn)の繊維重量に対して1~10重量%の濃度の少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの樹脂組成物は、40℃を超える温度で粘着性を示す。本実施形態において、樹脂組成物は周囲温度で非粘着性であるため、編組ステップを問題なく行うことができる。好ましくは、粘着性樹脂組成物は、編組プリフォームのラジウスフィラーの固結を支持する。本実施形態において、固結は、編組物と、編組物を40℃超の温度に加熱することによる粘着性樹脂組成物とによって達成される。
【0016】
一実施形態において、樹脂の総量は、樹脂組成物と、カーボン繊維ヤーン上に配置され得る追加の樹脂組成物の量を合わせたものである。他の一実施形態において、カーボン繊維ヤーンは、追加の樹脂組成物を含まず、樹脂の総量は、連続カーボンフィラメントヤーンの樹脂組成物の濃度から得られたものである。
【0017】
好ましい実施形態において、樹脂は、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を含み、第1の樹脂組成物は、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンに浸透し、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンのフィラメントは、第1の樹脂組成物を介して少なくとも部分的に結合される。第2の樹脂組成物は、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの束の外側で、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの強化繊維フィラメントに付着する粒状物または液滴の形態で存在する。それにより、第1の樹脂組成物は、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンのフィラメントを少なくとも部分的に結合して、非常に良好な固結を保証する。さらに、その組成により、第1の樹脂組成物は、編組プリフォームのラジウスフィラーに高い寸法安定性を与える。この高い寸法安定性により、有利な実施形態の編組プリフォームのラジウスフィラーが可能となる。束の外側に施与される第2の樹脂組成物により、これらが周囲温度で非粘着性であり、例えば編組プリフォームのラジウスフィラーに成形できることが達成される。しかし、高温では、第2の樹脂組成物により高い粘着性が達成され、その粘着性はまた、ラジウスフィラーが形成されるように編組ヤーンが配置された構造においても、冷却後の編組プリフォームのラジウスフィラーの構造の高い安定性につながる。第1および第2の樹脂組成物を含む少なくとも1つの連続カーボン繊維と共に編組プリフォームのラジウスフィラーを使用する場合、編組プリフォームのラジウスフィラーを固定するための追加のバインダー材料は不要である。
【0018】
別の実施形態において、第2の樹脂組成物は、周囲温度で固体であり、高温で溶融可能であり、かつ少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの総重量に対して0.5~10重量%の濃度で束の外側に存在する。好ましくは、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの束の外側の表面の少なくとも50%は、第2の樹脂組成物を含まない。第2の樹脂組成物の示された濃度、特に、第2の樹脂組成物が、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの強化繊維フィラメントに付着する粒状物または液滴の形態で存在し、束の外側の表面の少なくとも50%は第2の樹脂組成物を含まず、束の内部は第2の樹脂組成物を含まないという態様であることによって、高い柔軟性と良好なドレープ性とを示すヤーンが得られることが判明した。その際、強化繊維フィラメントに付着する粒状物または液滴が300μm未満のサイズを有する場合に有利であり、それらが20~150μmの範囲の平均サイズを有する場合に特に有利であることが判明した。このため、編組プリフォームのラジウスフィラーは、様々な断面形状に配置することができ、様々な(そして大きな)形状のキャビティに配置することもできる。
【0019】
さらなる実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーの少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの第1の樹脂組成物は、少なくとも2つのビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂H1およびH2を、H1:H2=1.1:1.4の重量比で含む。H1は、好ましくは、1850~2400mmol/kgのエポキシ価、および800~1000g/molの平均分子量Mnを有し、周囲温度で固体である。H2は、好ましくは、5000~5600mmol/kgのエポキシ価、および700g/mol未満の平均分子量Mnを有し、周囲温度で液体であり、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンは、第1の樹脂組成物を、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの総重量に対して0.1~2重量%有する。好ましくは、編組プリフォームのラジウスフィラーは、第1の樹脂組成物を、編組プリフォームのラジウスフィラーの総重量に対して0.1~2重量%有する。
【0020】
さらなる実施形態において、第1の樹脂組成物は、酸価が40~55mgKOH/gでありかつ平均分子量Mnが4000~5000g/molである芳香族ポリヒドロキシエーテルP1をさらに含む。少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンの寸法安定性は、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンに浸透する第1の樹脂組成物に影響を受け、その際、芳香族ポリヒドロキシエーテルP1の割合が重要であることが判明した。好ましい実施形態において、第1の樹脂組成物は、ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂H1およびH2を、芳香族ポリヒドロキシエーテルP1に対して(H1+H2):P1=0.05~0.8の重量比で含む。試験において、この重量比が0.05未満であるとヤーンの摩耗が増加するおそれがあることが観察された。対照的に、この重量比が0.8を超えると、ヤーンの寸法安定性が過度に低くなる。一方では寸法安定性、そして他方ではドレープ性の観点から、第1の樹脂組成物が、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーン総重量に対して0.4~1.2重量%の濃度で存在する場合にも有利である。
【0021】
好ましくは、第2の樹脂組成物は、エポキシ価が480~645mmol/kgでありかつ平均分子量Mnが2700~4000g/molである少なくとも50重量%のビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂H3、芳香族ポリヒドロキシエーテルP2、ポリアミド、もしくは熱可塑性ポリウレタン樹脂、またはこれらの化合物の混合物を含み、これらの化合物は、110~150℃の範囲の溶融温度を有する。
【0022】
さらなる実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、連続カーボンフィラメントで構成されたカーボンヤーンのみを含む。一実施形態において、すべての連続カーボンフィラメントヤーンは、上記の樹脂組成を示す。別の実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、短繊維および/またはステープルファイバー(不連続繊維)から構成された少なくとも1つのカーボンヤーンも含む。一実施形態において、ステープルファイバーまたは短繊維から構成されたカーボンヤーンは、上記で開示された樹脂組成物を含まない。したがって、編組プリフォームのラジウスフィラーは、開示された樹脂組成物を含む連続カーボンフィラメントヤーンと、そのような樹脂組成物を含まないカーボン繊維ヤーンとの組み合わせにより編組される。
【0023】
一実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、開示された樹脂組成物を含む連続カーボンフィラメントヤーンが編組プリフォームのラジウスフィラーの外側シース(outer sheath)上に配置され、かつ編組プリフォームのラジウスフィラーのコアが、樹脂組成物を含まない短繊維および/またはステープルファイバーから構成されたカーボンヤーンから構成されるように製造される。この配置により、編組プリフォームのラジウスフィラーをキャビティに容易にフィットさせることができ、第2の樹脂組成物の液滴は、加熱により粘着性となってキャビティに結合する。複合材における編組プリフォームのラジウスフィラーの取扱いが非常に容易になる。
【0024】
さらなる一実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、編組プリフォームのラジウスフィラーのコア領域に開示された樹脂組成物を含む連続カーボンフィラメントヤーンを有し、シース領域(sheath region)は、樹脂組成物を含まない短繊維および/またはステープルファイバーから構成されたカーボンヤーンから構成される。このような編組プリフォームのラジウスフィラーは、優れた寸法安定性を示す。編組プリフォームのラジウスフィラーを加熱することにより、第2の樹脂組成物の液滴が粘着性となり、それにより編組ヤーン構造がさらに改善される。
【0025】
さらに別の実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、上記の樹脂組成物を含む連続カーボンフィラメントヤーンと、記載の樹脂組成物を含まない不連続カーボンヤーン(ステープルファイバーまたは短繊維で構成)とを含み、これらのヤーンが編組プリフォームのラジウスフィラーに均一に配置されるように編組される。
【0026】
しかし、連続カーボンフィラメントヤーンと、短繊維および/またはステープルファイバーから構成されたカーボンヤーンとの組み合わせを含み、すべてのヤーンが樹脂組成物を含む編組プリフォームのラジウスフィラーも可能である。
【0027】
一実施形態において、編組プリフォームのラジウスフィラーは、三角形、正方形、円筒形、または多角形の断面形状を有する。
【0028】
一実施形態において、少なくとも1つの連続カーボンフィラメントヤーンは、6000~48,000のフィラメントを含み、かつ400~32,000texの範囲の線密度を有する。
【0029】
上記の樹脂組成物を含む連続カーボンフィラメントヤーンに関しては、欧州特許出願公開第2736691号明細書が参照され、参照により本明細書に援用される。特に、第6頁~第15頁の樹脂複合材の開示が参照により援用される。樹脂組成物に関する参考文献も、開示された短繊維またはステープルファイバーで構成されたカーボンヤーンについて参照により本明細書に援用される。
【0030】
本発明の別の実施形態は、請求項1記載の編組プリフォームのラジウスフィラーの製造方法である。編組プリフォームのラジウスフィラーについて開示されたすべての実施形態が、編組プリフォームのラジウスフィラーの製造方法にも適用可能であることは明らかである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、本開示による編組プリフォームのラジウスフィラーを含む複合材に関する。