(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】治療に使用するための抗ソルチリン抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240701BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240701BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240701BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240701BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240701BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240701BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P25/00
A61P21/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P19/02
A61P31/04
C12N15/13
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2021573616
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 US2020037054
(87)【国際公開番号】W WO2020252066
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517041235
【氏名又は名称】アレクトル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, マイケル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ロン, ホア
(72)【発明者】
【氏名】ルー, シャオ-ピン
(72)【発明者】
【氏名】シッディーキー, オメル リズワン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール, アーノン
(72)【発明者】
【氏名】リン, エルヴェ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517401(JP,A)
【文献】国際公開第2018/191786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの疾患または傷害を治療する及び/またはその進行を遅延させる方法において使用するための組成物であって、前記組成物は抗ソルチリン抗体を含み、
前記方法は抗ソルチリン抗体を
約60mg/kgの用量で4週間に1回
の頻度で前記ヒトに静脈内投与することを含み、ここで、前記抗体は、
アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含
み、
前記疾患または損傷が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、認知症、脳卒中、パーキンソン病、急性散在性脳脊髄炎、網膜変性、加齢黄斑変性症、緑内障、多発性硬化症、敗血性ショック、細菌感染症、関節炎、及び変形性関節症からなる群から選択される、前記組成物。
【請求項2】
前記抗体が、
配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、
請求項1
に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体が、IgG1アイソタイプであり、Fc領域は、L234A、L235A、及びP331S位でのアミノ酸置換を含み、ここで、残基位置のナンバリングは、EUのナンバリングに従う、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体が、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記疾患または傷害が、前頭側頭型認知症または筋萎縮性側索硬化症である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(a)前記ヒトが、GRNにおける突然変異についてヘテロ接合性であり、任意により、GRNにおける前記突然変異が、機能喪失型突然変異である、
(b)前記ヒトが、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒトが、前頭側頭型認知症の症状を示す、または前記ヒトが、前頭側頭型認知症の症状を示さない、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
(a)前記抗ソルチリン抗体の投与後の前記ヒトの血漿中のPGRNタンパク質のレベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトの血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍高く、任意により、前記ヒトの血漿中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約5日で、及び/もしくは前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する、並びに/または
(b)前記抗ソルチリン抗体の投与後の前記ヒトの脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトの脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高く、任意により、前記ヒトの脳脊髄液中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日で、及び/もしくは前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約24日で、及び/もしくは前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗ソルチリン抗体投与後の前記ヒトの末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトの末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも50%、または少なくとも70%低下し、任意により、前記ヒトの末梢白血球上のSORT1の前記発現レベルの低下が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日以上で、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約17日以上で、または前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約40日以上で存在する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
血漿中の前記抗ソルチリン抗体の半減期が、約5日または約8日である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒトが、最長48週間の治療期間、または48週間の長さの治療期間治療され、任意により、前記抗ソルチリン抗体の投与が、治療期間の初日及びその後4週間ごとに行われる、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗ソルチリン抗体が、治療期間中に合計13回投与される、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
前記疾患または損傷が、前頭側頭型認知症(FTD)であり、前記抗ソルチリン抗体投与後、血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルが、前記抗ソルチリン抗体投与前の血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルと比較して、少なくとも10%低下する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(a)前記ヒトの脳脊髄液(CSF)中のCTSBのタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトのCSF中のCTSBのタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約20%増加し、
(b)前記ヒトのCSF中のSPP1のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトのCSF中のSPP1のタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約10%減少し、
(c)前記ヒトのCSF中のN-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトのCSF中のNAGKのタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に増加し、及び/または
(d)前記ヒトのCSF中の1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記ヒトのCSF中の前記1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に減少し、ここで、前記1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月11日に出願された米国仮出願第62/860,207号、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,850号、2019年7月15日に出願された米国仮出願第62/874,475号、2019年12月12日に出願された米国仮出願第62/947,503号、及び2020年1月15日に出願された米国仮出願第62/961,591号の利益を主張するものであり、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:735022003040SEQLIST.TXT、記録日:2020年6月9日、サイズ:135KB)。
【0003】
本開示は、抗ソルチリン抗体の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ソルチリンは、I型膜貫通タンパク質であり、いくつかのリガンドの受容体として作用し、またトランスゴルジ網(TGN)からの指定積荷分子(cargo)の後期エンドソーム及びリソソームへの分解のための選別にも作用する。ソルチリンは、分泌タンパク質のプログラニュリン(PGRN)と結合し、PGRNをリソソーム分解へと標的化することから、PGRNの細胞外レベルを負に制御する(Hu,F et al.(2010)Neuron 68,654-667)。これに伴い、ソルチリンの欠如は、in vivoマウスモデルとin vitroヒト細胞の両方において血漿PGRN濃度を有意に増加させる(Carrasquillo,M.M et al.,(2010)Am J Hum Genet 87,890-897、Lee,W.C et al.,(2014)Hum Mol Genet 23,1467-1478)。更に、ソルチリンの多型が、ヒトにおけるPGRN血清濃度と強く関連していることが示された(Carrasquillo MM e al.,(2010),Am J Hum Genet.10;87(6):890-7)。
【0005】
プログラニュリン(PGRN)は、成長因子様の栄養性及び抗炎症の分泌タンパク質であり、食事誘発性肥満及びインスリン抵抗性に関与するアディポカインとしても作用する(Nguyen DA et al.,(2013).Trends in Endocrinology and Metabolism,24,597-606)。プログラニュリンの欠乏は、早期発症型の神経変性疾患であるすべての遺伝型の前頭側頭型認知症(FTD)のほぼ25%を占める。PGRNにヘテロ接合性機能喪失型変異を持つ患者は、当該タンパク質の細胞外レベルが約50%減少し、例外なくFTDを発症することから、PGRNはこの疾患の原因遺伝子とされる(Baker,M et al.,(2006)Nature 442,916-919、Carecchio M et al.,(2011)J Alzheimers Dis 27,781-790、Cruts,M et al.,(2008)Trends Genet 24,186-194、Galimberti,D et al.,(2010)J Alzheimers Dis 19,171-177)。加えて、PGRN変異対立遺伝子がアルツハイマー病患者で同定されている(Seelaar,H et al.,(2011).Journal of neurology,neurosurgery,and psychiatry 82,476-486)。重要なことに、PGRNは、PGRNレベルを増加させた複数の疾患モデルにおいて保護的に作用し、虚血からの行動回復を加速し(Tao,J et al.,(2012)Brain Res 1436,130-136、Egashira,Y.et al.,(2013)J Neuroinflammation 10,105)、パーキンソン病モデルにおける歩行障害を抑制し(Van Kampen,J.M et al.(2014).PLoS One 9,e97032)、筋萎縮性側索硬化症(Laird,A.S et al.,(2010).PLoS One 5,e13368.)及び関節炎(Tang,W et al.,(2011).Science 332,478-484)のモデルにおける病状を緩和し、アルツハイマー病モデルにおける記憶障害を予防する(Minami,S.S et al.,(2014).Nat Med 20,1157-1164)。
【0006】
プログラニュリンなどのタンパク質との種々の相互作用を介して、ソルチリン及びその多数のリガンドは、種々の疾患、障害及び病態、例えば、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮性側索硬化症-前頭側頭型認知症表現型、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、神経精神疾患、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性症、緑内障、外傷性脳損傷、老化、痙攣発作、創傷治癒、脳卒中、関節炎及びアテローム動脈硬化性血管疾患に関与することがわかっている。
【0007】
ソルチリンを標的とする新規治療用抗体は、ソルチリン活性に関連する疾患を治療するための1つの解決策である。全身投与されたモノクローナル抗体は通常、二相性の薬物動態プロファイルを示し、最初は比較的迅速に分布し、次にゆっくりと排除される(Ovacik,M and Lin,L,(2018)Clin Transl Sci 11,540-552)。全身投与された抗体の循環は、典型的には、血管系及び間質腔に限定される(Ovacik,M and Lin,L,(2018)Clin Transl Sci 11,540-552)。これは、それらのサイズ、極性、再循環及びクリアランスの動力学、及び典型的には比較的長い半減期(多くの場合、ヒトでは11~30日である)のためである(Ovacik,M and Lin,L,(2018)Clin Transl Sci 11,540-552)。
【0008】
モノクローナル抗体の投与は、治療的使用の課題を提示する。モノクローナル抗体は経口バイオアベイラビリティが制限されているため、典型的には、静脈内、皮下、または筋肉内に投与させる(Ovacik,M and Lin,L,(2018)Clin Transl Sci 11,540-552)。これらの選択肢の中で、皮下投与は自宅で、また多くの場合患者自身が行うことができるので最も簡便であるが、静脈内投与はより高い全身曝露をもたらす。脳脊髄液(CSF)への送達には、高い全身投与量を必要とする。したがって、治療がCSFに影響を与える必要がある場合、皮下投与では十分な高用量を送達できないため、通常、静脈内投与が必要とされる。
【0009】
しかし、静脈内投与は、FTD及びALSなどの神経変性疾患の患者にとって特に困難である。これらの疾患は、長期間患者に影響を与えるため、長年にわたって定期的な治療が必要である。自宅では静脈内投与ができないため、定期的に輸液センターに患者を搬送させる必要があり、患者及び介護者の両方に負担がかかる。最終的に、これらの疾患の記憶喪失、気分のむら、攻撃性、及び他の行動症状により、患者のコンプライアンスが困難になる。
【0010】
したがって、ソルチリン活性に関連する1つ以上の疾患、障害及び病態を治療するために、ソルチリンタンパク質に特異的に結合してソルチリンのそのリガンド(プログラニュリンなど)への結合を遮断するか、またはそうでなければリガンドの有効濃度を調節する、治療用抗体が必要とされている。更に、投与及び投薬の様式の制限のために、正しい用量で患者を治療し、患者のコンプライアンスを容易にする方法でその用量を投与する方法を特定する、更なる必要性がある。本明細書で引用されるすべての参考文献は、特許、特許出願及び刊行物を含め、その全体が参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、一般に、ヒトソルチリンに特異的に結合する抗体、例えば、モノクローナル、キメラ、ヒト化抗体、抗体断片などを含む組成物を使用する方法に関する。
【0012】
特定の態様では、本明細書で提供されるのは、個体の疾患または傷害を治療する及び/またはその進行を遅延させる方法であって、抗ソルチリン抗体を少なくとも約30mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含み、ここで、抗体は、(i)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(ii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRVS(配列番号30)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(iii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLES(配列番号3)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(iv)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(v)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(vi)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、(vii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLHSNGYNYLD(配列番号26)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、または(viii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQGLLRSNGYNYLD(配列番号27)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを含み、抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号59のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号78のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体はIgG1アイソタイプであり、Fc領域は、L234A、L235A、及びP331S位においてアミノ酸置換を含み、残基位置のナンバリングは、EUナンバリングに従う。
【0027】
いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも約35mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約45mg/kg、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約55mg/kg、または少なくとも約60mg/kgである。いくつかの実施形態では、用量は、約30mg/kg~約60mg/kgである。いくつかの実施形態では、用量は、約60mg/kgである。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、約60mg/kgの用量で4週間に1回投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、認知症、脳卒中、パーキンソン病、急性散在性脳脊髄炎、網膜変性、加齢黄斑変性症、緑内障、多発性硬化症、敗血性ショック、細菌感染症、関節炎、及び変形性関節症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、筋萎縮性側索硬化症である。
【0031】
いくつかの実施形態では、個体は、GRNにおける突然変異についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異は、機能喪失型突然変異である。いくつかの実施形態では、個体は、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、個体は、前頭側頭型認知症の症状を示す。いくつかの実施形態では、個体は前頭側頭型認知症の症状を示さない。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも1倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約5日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約56日で存在する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約40日において、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.25倍高い。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍、3倍、または4倍高い。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約5日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.8倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも1倍高い。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約24日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約56日で存在する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約42日において、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.2倍高い。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約24日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28、35、42、49または56日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも50%低下する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも70%低下する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後約12日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後約17日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後約40日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約17日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約40日以上で存在する。
【0037】
いくつかの実施形態では、血漿中の抗ソルチリン抗体の半減期は、約5日である。いくつかの実施形態では、血漿中の抗ソルチリン抗体の半減期は、約8日である。
【0038】
いくつかの実施形態では、個体は、最長48週間の治療期間治療される。いくつかの実施形態では、個体は、48週間の長さの治療期間治療される。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与は、治療期間の初日及びその後4週間ごとに行われる。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、治療期間中に合計13回投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、前頭側頭型認知症(FTD)であり、血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルは少なくとも10%低下する。いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、前頭側頭型認知症(FTD)であり、血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルは、抗ソルチリン抗体投与前の血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルと比較して、抗ソルチリン抗体投与後に、少なくとも10%低下する。
【0040】
いくつかの実施形態では、個体のCSF中のCTSBのタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中のCTSBのタンパク質レベルと比較して、少なくとも約20%増加する。いくつかの実施形態では、個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルと比較して、少なくとも約10%減少する。いくつかの実施形態では、個体のCSF中のCTSBのタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中のCTSBのタンパク質レベルと比較して、抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約20%増加する。いくつかの実施形態では、個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルと比較して、抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約10%減少する。いくつかの実施形態では、個体のCSF中のN-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)のタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中のNAGKのタンパク質レベルと比較して、抗ソルチリン抗体の投与後に増加する。いくつかの実施形態では、個体のCSF中の1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体のCSF中の1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルと比較して、抗ソルチリン抗体の投与後に減少し、ここで、1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される。
【0041】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、抗ソルチリン抗体を投与されている個体の治療をモニタリングする方法であって、本方法は、個体が1回以上抗ソルチリン抗体を受ける前後の個体からの試料中の1つ以上のタンパク質のレベルを測定することを含み、ここで、1つ以上のタンパク質は、CTSB及び/またはSPP1である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体を投与されている個体の治療をモニタリングする方法は、試料中の1つ以上のタンパク質のレベルに基づいて、個体における抗ソルチリン抗体の活性を評価するステップを更に含む。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液または個体の血液からのものである。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液からのものである。
【0042】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、抗ソルチリン抗体を投与されている個体の治療をモニタリングする方法であって、本方法は、個体が1回以上、抗ソルチリン抗体を受ける前後の個体からの試料中の1つ以上のタンパク質のレベルを測定することを含み、ここで、1つ以上のタンパク質は、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、及びCD86からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、この方法は、試料中の1つ以上のタンパク質のレベルに基づいて、個体における抗ソルチリン抗体の活性を評価することを更に含む。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液からのものである。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して少なくとも約20%増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して約10%減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のNAGKのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のNAGKのレベルと比較して増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中の1つ以上の炎症性タンパク質のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中の1つ以上の炎症性タンパク質のレベルと比較して減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定され、ここで、1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、試料は、個体の血液からのものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】
図1A~1Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを単回投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。
図1Aは、指定された抗ソルチリン抗体用量での治療後の指定された時間(時間)でのベースラインからのパーセンテージとして末梢白血球中のSORT1のレベルを示す。SORT1の発現は、試験を行ったすべての抗ソルチリン抗体用量で減少した。より高い抗体用量(60mg/kg、200mg/kg)は、より少ない抗ソルチリン抗体用量(5mg/kg、20mg/kg)と比較して、SORT1レベルのより早い及びより長い減少の両方をもたらした。用量あたり動物n=3。
【
図1B】
図1A~1Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを単回投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。
図1Bは、指定された抗ソルチリン抗体用量での治療後の指定された時間(時間)でのベースラインからのパーセンテージとして、血漿中のPGRNのレベルを示す。PGRNのレベルは、時間及び用量依存的に増加した。特に、血漿PGRNレベルは、試験を行ったすべての抗ソルチリン抗体用量について、ベースラインレベルと比較してC
maxで3~4倍増加し、より高い抗体用量では、より長期間増加を維持した。用量あたり動物n=3。
【
図1C】
図1A~1Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを単回投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。
図1Cは、指定された抗ソルチリン抗体用量での治療後の指定された時間(時間)でのベースラインからのパーセンテージとして、CSF中のPGRNのレベルを示す。CSF PGRNレベルは、20mg/kg、60mg/kg、または200mg/kgのいずれかを投与された動物で、ベースラインより2~3倍増加した。血漿PGRNレベル(
図1B)で観察されたとおり、CSF PGRNレベルは、より高い抗体用量群において経時的に上昇したままであった。用量あたり動物n=3。
【
図2A】
図2A~2Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを反復投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。動物(雄2匹及び雌2匹)に抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを週1回60mg/kgの用量で4回投与した。投与を行った日は、縦の破線で表されている。
図2Aは、末梢白血球(WBC)のSORT1濃度の平均(+/-標準偏差)を、指定された時間(日)でのベースラインのパーセンテージとして示す。末梢白血球のSORT1レベルは、試験期間中減少したままであった。
【
図2B】
図2A~2Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを反復投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。動物(雄2匹及び雌2匹)に抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを週1回60mg/kgの用量で4回投与した。投与を行った日は、縦の破線で表されている。
図2Bは、血漿中のPGRN濃度の平均(+/-標準偏差)を、指定された時間(日)でのベースライン(正規化)のパーセンテージとして示す。血漿PGRNレベルは、ピークレベルでベースラインの5~6倍に増加した。抗ソルチリン抗体の4回目及び最後の投与後に血漿PGRNの減少が観察された。しかし、血漿PGRNレベルはベースラインの2倍上昇したままであった。
【
図2C】
図2A~2Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを反復投与した非ヒト霊長類の薬物動態学的及び薬力学的試験を示す図である。動物(雄2匹及び雌2匹)に抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを週1回60mg/kgの用量で4回投与した。投与を行った日は、縦の破線で表されている。
図2Cは、CSF中のPGRN濃度の平均(+/-標準偏差)を、指定された時間(日)でのベースライン(正規化)のパーセンテージとして示す。CSF PGRNレベルは、ベースラインより3~4倍増加した。
【
図3A】
図3A~
図3Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが白血球中のSORT1レベル及び血漿PGRNレベルに及ぼす効果を示す。
図3Aでは、破線は、末梢白血球(wbc)でのSORT1発現レベルを、指定された用量の抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSで治療された5つの健康なボランティアコホートにおける指定された時間でのベースラインからの変化率(%)として表す。実線は、血漿(PL)PGRNレベルを、指定された用量の抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSで治療された5つの健康なボランティアコホートにおける指定された時間でのベースラインからの変化率(%)として表す。抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSをヒト対象に投与することにより、末梢白血球のSORT1発現レベルが減少し、血漿PGRNレベルが増加した。
【
図3B】
図3A~
図3Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが白血球中のSORT1レベル及び血漿PGRNレベルに及ぼす効果を示す。抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを投与されたヒト対象における指定された時間(投与後日数)での末梢白血球上のSORT1レベルの更なる分析が
図3Bに提供されている。
【
図3C】
図3A~
図3Cは、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが白血球中のSORT1レベル及び血漿PGRNレベルに及ぼす効果を示す。抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを投与されたヒト対象における指定された時間(投与後日数)でのベースラインと比較したPGRNレベルの更なる分析が
図3Cに提供されている。水平の破線は、ベースラインの2倍の増加を示している。
【
図4A】
図4A~4Cは、CSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。CSF PGRNレベルの薬力学的データは、0mg/kg(プラセボ)、15mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgで投与された健康なボランティアコホートから得られた。CSF試料は、抗体投与前、及び抗体投与の約30時間後、12日後、24日後、及び42日後に収集した。
図4Aに示されるように、CSF PGRNレベルの統計的に有意な増加(ベースラインで観察されたPGRNレベルと比較して)は、すべてのコホートにおいて30時間及び12日で見られた。更に、抗体を60mg/kgで投与することにより、CSF PGRNのレベルが増加し、抗ソルチリン抗体の単回IV投与後、少なくとも24日間持続した。
【
図4B】
図4A~4Cは、CSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。CSF PGRNレベルの薬力学的データは、0mg/kg(プラセボ)、15mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgで投与された健康なボランティアコホートから得られた。CSF試料は、抗体投与前、及び抗体投与の約30時間後、12日後、24日後、及び42日後に収集した。
図4Bは、試験13日目(投与後12日)での、0mg/kg(プラセボ)、15mg/kg(「コホート3」)、30mg/kg(「コホート4」)、または60mg/kg(「コホート5」)で投与された健康なボランティアのCSF PGRNレベルのベースラインからの変化率(%)を示している。アスタリスクは、統計的有意性を示す(****:P<0.0001,多重度に合わせて調整)。
【
図4C】
図4A~4Cは、CSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。CSF PGRNレベルの薬力学的データは、0mg/kg(プラセボ)、15mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgで投与された健康なボランティアコホートから得られた。CSF試料は、抗体投与前、及び抗体投与の約30時間後、12日後、24日後、及び42日後に収集した。
図4Cは、60mg/kgで投与された健康なボランティア(「コホート5」及び「コホート6」の合計)における投与後の指定された日のCSF PGRNレベルのベースラインからの変化率(%)を示している。
【
図5A】
図5A~5Cは、aFTD-GRN及びFTD-GRN対象の血漿及びCSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。
図5Aは、1名のaFTD-GRN対象及び3名のFTD-GRN対象における投与後の指定された日の血漿PGRNレベルの平均変化率(%)を提供する。
【
図5B】
図5A~5Cは、aFTD-GRN及びFTD-GRN対象の血漿及びCSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。
図5Bは、1名のaFTD-GRN対象(試験13日目)及び3名のFTD-GRN患者(試験57日目)におけるCSF PGRNレベルのベースラインからの平均変化率(%)を提供する。
【
図5C】
図5A~5Cは、aFTD-GRN及びFTD-GRN対象の血漿及びCSF中のPGRNレベルに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。
図5Cは、正常な健康なボランティア及び投与前及び試験57日目の3名のFTD-GRN患者からのCSF中のPGRNの濃度(ng/mL)を提供している。
【
図6】実施例3に記載の第2相試験を示す概略図である。CSF=脳脊髄液、GRN=グラニュリン、IV=静脈内、MRI=磁気共鳴画像法、PD=薬力学、PET=陽電子放出断層撮影、q4w=4週ごと、TSPO=トランスロケータータンパク質。
【
図7】実施例5に記載の抗体投与後の指定された時間におけるaFTD-GRN及びFTD-GRN対象の血漿中のPGRN濃度(ng/mL)に対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。SD=単回投与、MD=複数回投与。健康なボランティア(HV)及びFTD患者の血漿中のPGRNのベースライン濃度の中央値は、水平線で示す。
【
図8】抗体投与後の指定された時間におけるaFTD-GRN(無症候性)及びFTD-GRN(症候性)対象のCSF中のPGRN濃度(ng/mL)に対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。健康なボランティア(HV)のCSF中のPGRNの濃度が提供される。症状のある1名の対象は、ベースラインにおいて報告可能なCSF PGRNの結果はなかった。
【
図9】実施例5に記載のとおり、1000を超えるタンパク質のSOMASCAN分析によるFTD-GRN患者のCSFタンパク質シグネチャに対する抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの効果を示す図である。Y軸は、FTD-GRN患者及び健康なボランティアにおける各タンパク質のレベルの比率のZスコアを提供する。X軸は、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPS投与後57日及びベースライン時(抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPS投与前)のFTD-GRN患者における、各タンパク質レベルの比率のZスコアを提供する。FTD-GRN患者において上方制御され、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与後に正常化されたタンパク質は、散布図の左上の象限に示す。FTD-GRN患者において下方制御され、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与後に回復したタンパク質は、散布図の右下の象限に示す。
【
図10A】FTD-GRN患者でのNfL血漿レベルを示す図である。NfL血漿レベルは、QuinterixによるSIMOA Nf-Light Advantageアッセイを使用して測定した。NfL血漿レベルは、5名の患者それぞれのベースラインレベルに対する比率として、様々な時点で示す。
【
図10B】FTD-GRN患者でのNfL血漿レベルを示す図である。NfL血漿レベルは、QuinterixによるSIMOA Nf-Light Advantageアッセイを使用して測定した。FTD-GRN患者でのNfL血漿レベルを示す図である。
図10Aのデータの幾何平均を示す。
【
図11A】抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSがFTD患者で上方制御されるバイオマーカーであるSPP1に及ぼす効果を示す図である。バイオマーカーSPP1が、健康なボランティアと比較してFTD患者で上方制御されており、FTD患者をS-60-15.1[N33T]LALAPSで治療することにより、SPP1が正常レベルまで低下することを示している。
【
図11B】抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSがFTD患者で下方制御されるバイオマーカーであるCTSBに及ぼす効果を示す図である。
図11Aとは逆に、バイオマーカーCTSBが、健康なボランティアと比較してFTD患者で下方制御されており、FTD患者をS-60-15.1[N33T]LALAPSで治療することにより、CTSBレベルが正常レベルまで増加することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
定義
本明細書で使用されるとき、「予防する」という用語は、個体における特定の疾患、障害または病態の発生または再発に対する予防を提供することを含む。個体は、特定の疾患、障害または病態にかかりやすく感受性であり得るか、かかる疾患、障害または病態を発症する危険性があり得るが、当該疾患、障害または病態であると診断されていない。
【0045】
本明細書で使用されるとき、特定の疾患、障害または病態を発症する「危険性のある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載される治療方法の前に、検出可能な疾患または疾患の症状を呈していてもいなくてもよい。「危険性のある」とは、個体が、当技術分野において既知である、特定の疾患、障害または病態の発症と相関する測定可能なパラメータである、1つ以上の危険因子を有することを意味する。これらの危険因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらの危険因子のうちの1つ以上を有しない個体よりも特定の疾患、障害または病態を発症する可能性が高い。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「治療」という用語は、臨床病理の過程で治療される個体の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、特定の疾患、障害または病態の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。個体は、例えば、特定の疾患、障害または病態に伴う1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「治療」に成功する。
【0047】
「有効量」は、必要な用量及び期間で、所望の治療結果または予防結果を達成するために少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。治療有効量は、本明細書において、個体の病状、年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き起こすための治療の能力などの因子によって変動し得る。治療有効量は、治療の任意の毒性または有害な影響よりも治療的に有益な効果が勝る量でもある。予防的使用の場合、有益または望ましい結果には、危険の排除または軽減、重症度の軽減、または疾患の生化学的、組織学的及び/または行動的症状、その合併症及び疾患の発症中に提示される中間の病理学的表現型を含む疾患の発症の遅延などの結果が含まれる。治療的用途の場合、有益または望ましい結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している人々の生活の質を高める、疾患を治療するために必要な他の薬物の用量を減少させる、標的化などによる別の薬物の効果を強化させる、疾患の進行を遅らせる、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的に予防的または治療的治療を達成するのに十分な量である。臨床の文脈で理解されるように、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療剤を投与するという文脈で考慮され得、単一の剤は、1つ以上の他の剤と組み合わせて、望ましい結果があり得るか、または達成される場合、有効量で与えられるとみなされ得る。
【0048】
本明細書で使用されるとき、別の化合物または組成物との「併用」投与は、同時投与及び/または異なる時点での投与を含む。併用投与はまた、合剤としての投与または別個の組成物としての投与を包含し、異なる投与頻度または間隔で、かつ同じ投与経路または異なる投与経路を使用することを含む。
【0049】
治療、予防または危険性の低減の目的のための「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、競技用または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、個体は、ヒトである。
【0050】
用語「ソルチリン」または「ソルチリンポリペプチド」は、本明細書では、互換的に使用され、別段に示されていない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む、任意の哺乳動物源からの任意の天然ソルチリンを指す。いくつかの実施形態では、この用語は、野生型配列及び天然に存在する変異形配列、例えば、スプライシング変異形または対立遺伝子変異形の両方を包含する。いくつかの実施形態では、この用語は、「全長」非プロセシングソルチリン、更には、細胞におけるプロセシングから生じている任意の型のソルチリンを包含する。いくつかの実施形態では、ソルチリンは、ヒトソルチリンである。いくつかの実施形態では、例示的なヒトソルチリンのアミノ酸配列は、配列番号81である。
【0051】
用語「抗ソルチリン抗体」及び「ソルチリンに結合する抗体」及び「ソルチリンに特異的に結合する抗体」は、その抗体がソルチリンの標的化において診断用及び/または治療用作用物質として有用であるような十分な親和性で、ソルチリンに結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非ソルチリンポリペプチドへの抗ソルチリン抗体の結合規模は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、ソルチリンへの抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、ソルチリンに結合する抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。ある特定の実施形態では、抗ソルチリン抗体は、異なる種からのソルチリン内に保存されているソルチリンのエピトープに結合する。
【0052】
「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において、「抗体」と互換的に使用される。本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成されたものを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に包含するが、これは、それらが所望の生物学的活性を呈する場合に限る。
【0053】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽鎖(L)及び2つの同一の重鎖(H)からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、これにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、もう一方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0054】
異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Ed.,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton&Lange,norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0055】
任意の脊椎動物種に由来する軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つのクラスがあり、それぞれ、アルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)及びミュー(「μ」)と表記される重鎖を有する。γ及びαのクラスは、CH配列及び機能における比較的わずかな相違に基づいて、サブクラス(アイソタイプ)に更に分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は既知であり、例えば、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,4th ed.(W.B.Saunders Co.,2000)に概して記載されている。
【0056】
抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と称することができる。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0057】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定セグメントが、抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)間で配列が大幅に異なるという事実を指す。可変ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。むしろ、それは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおいて、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を主とする4つのFR領域を含み、これらのHVRは、ベータシート構造を接続し、場合により、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖のHVRは、FR領域によって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0058】
「単離された」抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)は、その産生環境(例えば、天然または組換え)の構成成分から同定、分離及び/または回収されたものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その産生環境に由来する他のすべての夾雑成分との会合がない。その産生環境に由来する夾雑成分、例えば、組換えトランスフェクション細胞に起因するものなどは、典型的に、抗体の研究上、診断上または治療上での使用に干渉する物質であり、これらには、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を挙げることができる。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、(1)抗体が、例えば、ローリー法によって決定したときに、95重量%超、いくつかの実施形態では99重量%超になるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用により、少なくとも15個のN末端もしくは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルー染色もしくは好ましくはシルバー染色を使用して、非還元条件もしくは還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体には、組換えT細胞内のin situ抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0059】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体、例えば、本開示のモノクローナル抗ソルチリン抗体を指す。すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る可能性のある自然に発生する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化など)を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象とする。異なる決定基(エピトープ)を対象とする種々の抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていない、ハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、限定されないが、次の方法の1つ以上:DNA(複数可)、ウイルス様粒子、ポリペプチド(複数可)、及び/または細胞(複数可)のうちの1つ以上の種での、限定されないが、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター及び/またはニワトリを含む動物の免疫化法、ハイブリドーマ法、B細胞クローニング法、組換えDNA法、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物におけるヒト抗体またはヒト様抗体の産生技術を包含する様々な技術によって作製され得る。
【0060】
「全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)を指して互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)であっても、そのアミノ酸配列変異形であってもよい。一部の場合では、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0061】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域及び/または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)参照)、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0062】
抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映した名称を持つ1つの残留「Fc」断片とが産生される。Fab断片は、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(VH)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型F(ab’)2断片をもたらし、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、いくつかの更なる残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元来、その間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0063】
Fc断片は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、この領域はまた、ある特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0064】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが非共有結合で緊密に結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、この抗体に抗原結合特異性を与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0065】
「sFv」または「scFv」と短縮されることもある「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に連結されているVH及びVL抗体ドメインを含む、抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含んでおり、このリンカーにより、sFvが抗原結合に望ましい構造を成すことが可能となっている。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0066】
抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)の「機能性断片」は、インタクト抗体の一部分を含み、これには、概して、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するかもしくは修飾されたFcR結合能力を有する抗体のF領域が含まれる。抗体断片の例には、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0067】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間の可変ドメイン対合を達成し、それによって二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を用いてsFv断片(前の段落を参照)を構築することによって作製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在している、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「キメラ抗体」は、抗体(免疫グロブリン)(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)であって、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体に対応する配列と同一または相同であり、更に、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体に対応する配列と同一または相同である抗体、ならびにかかる抗体の断片を指す(ただし、それらが所望の生物学的活性を呈する場合に限る)。本明細書における目的のキメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、ここで、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルに目的の抗原で免疫付与を行うことによって産生される抗体に由来する。本明細書で使用されるとき、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0069】
非ヒト(例えば、マウス)抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)の「ヒト化」形態は、非ヒトHVRのアミノ酸残基及びヒトFRのアミノ酸残基を含有するキメラ抗体である。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。ヒト化抗体は任意により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を施されている抗体を指す。
【0070】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技法のうちの任意のものを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ及び酵母ベースのプラットフォーム技術を含む、当該技術分野において既知の様々な技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、トランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することによって作製することができ(このトランスジェニック動物は、かかる抗体を抗原投与に応答して産生するように改変されており、その内因性遺伝子座が無効化されている)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介しても生成することができる。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体の抗体可変ドメインの領域)を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。
【0072】
多くのHVR記述が本明細書で使用され、本明細書に包含される。いくつかの実施形態では、HVRは、配列の可変性に基づくKabat相補性決定領域(CDR)であり得、最も一般的に使用されている(Kabatら、上掲)。いくつかの実施形態では、HVRは、Chothia CDRであり得る。Chothiaは、むしろ、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。いくつかの実施形態では、HVRは、AbM HVRであり得る。AbM HVRは、EUまたはKabat CDRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。いくつかの実施形態では、HVRは、「接触」HVRであり得る。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々の残基を、以下に記載する。
【表1】
【0073】
HVRは、次の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)及び89-97または89-96(L3)、ならびにVHにおいて、26-35(H1)、50-65または49-65(好ましい実施形態)(H2)及び93-102、94-102または95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの伸長HVR定義の各々について、Kabatら(上掲)に従ってナンバリングされる。
【0074】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0075】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワークに由来するまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLフレームワークまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでもよいし、既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態において、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましいアミノ酸変化は、位置71H、73H及び78Hのうちの3個、2個または1個のみに生じ、例えば、当該位置のアミノ酸残基は、71A、73T及び/または78Aであり得る。一実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0076】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンのVLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表する、フレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行われる。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)におけるようなサブグループである。例には、VLに関するものが含まれ、サブグループは、Kabatら(上掲)におけるようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIIIまたはカッパIVであり得る。更に、VHについては、サブグループは、Kabatら(上掲)におけるようなサブグループI、サブグループIIまたはサブグループIIIであり得る。
【0077】
指定位置における「アミノ酸修飾」(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体のアミノ酸修飾)は、指定残基の置換もしくは欠失、または指定残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。指定残基に「隣接する」挿入とは、その1~2つの残基内への挿入を意味する。挿入は、指定残基のN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
【0078】
「親和性成熟」抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)は、その1つ以上のHVRに1つ以上の変化を有し、これらの変化が、それらの変化(複数可)を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらすものである。一実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモルまたは更にはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野において既知の手法によって産生される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VHドメインとVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟を記載している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「特異的に認識する」または「特異的に結合する」という用語は、標的と抗体すなわち(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)との間の引力または結合などの、測定可能かつ再現可能な相互作用を指し、これにより、生体分子を含む不均質な分子集団の存在下で標的の存在を決定できる。例えば、ある標的またはエピトープに特異的または優先的に結合する抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)は、他の標的または当該標的の他のエピトープに結合するよりも、より高い親和性、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で、当該標的またはエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分)が第2の標的に特異的または優先的に結合しても、しなくてもよいこともまた理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要とするものではない(ただし、含む場合もある)。標的に特異的に結合する抗体は、少なくとも約103M-1または104M-1、場合により、約105M-1または106M-1、他の場合、約106M-1または107M-1、約108M-1~109M-1または約1010M-1~1011M-1以上の会合定数を有し得る。多様なイムノアッセイフォーマットを使用して、特定タンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイを常法により使用して、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択する。イムノアッセイフォーマット及び特異的免疫反応性を決定するために使用できる条件の記載については、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照されたい。
【0080】
本明細書で使用されるとき、ソルチリンタンパク質と第2のタンパク質との間の「相互作用」は、限定するものではないが、タンパク質-タンパク質相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用、結合、共有結合及びイオン結合を包含する。本明細書で使用されるとき、抗体は、その抗体が2つのタンパク質間の相互作用を中断、低減または完全に排除するとき、2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。本開示の抗体またはその断片は、その抗体または断片が2つのタンパク質のうちの1つに結合するとき、2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。
【0081】
「アゴニスト」抗体または「活性化」抗体は、抗体が抗原に結合した後に、抗原の1つ以上の活性または機能を誘導する(例えば、増加させる)本開示のアゴニスト抗ソルチリン抗体などの抗体である。
【0082】
「遮断」抗体、「アンタゴニスト」抗体または「阻害」抗体は、抗体が抗原に結合した後に、1つ以上のリガンドへの抗原結合を阻害または低減させる(例えば、減少させる)、及び/または抗体が抗原に結合した後に、抗原の1つ以上の活性または機能を阻害または低減させる(例えば、減少させる)抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)である。いくつかの実施形態において、遮断抗体、アンタゴニスト抗体または阻害抗体は、1つ以上のリガンドへの抗原結合、及び/または抗原の1つ以上の活性または機能を実質的または完全に阻害する。
【0083】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列変異形Fc領域)に帰属する生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプに応じて多様である。
【0084】
本明細書における「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、アミノ酸残基の位置Cys226またはPro230から、そのカルボキシル末端まで及ぶものと定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去されてもよい。したがって、インタクト抗体の組成は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられる。
【0085】
「天然配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに自然発生のそれらの変異形が含まれる。
【0086】
「変異形Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異形Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異形Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは、それらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも約95%の相同性を保有する。
【0087】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これには、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体(これらの受容体のアレル変異形及び代替的にはスプライス型を含む)が含まれ、FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にそれらの細胞質ドメインが異なる、同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(「ITAM」)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(「ITIM」)を含有する。今後同定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。FcRはまた、抗体の血清中半減期を延長させ得る。本明細書で使用されるとき、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「アミノ酸配列相同性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じて最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しない、指定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合を指す。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な当該技術分野において既知の任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。
【0088】
「単離された」細胞は、その細胞が生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑細胞から同定及び分離された分子または細胞である。いくつかの実施形態では、単離された細胞は、その産生環境に伴うすべての構成要素との会合がない。単離された細胞は、自然界に見られる形態または設定とは異なる形態である。単離された細胞は、組織、臓器、または個体中に天然に存在する細胞とは区別される。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、本開示の宿主細胞である。
【0089】
抗体(例えば、本開示の抗ソルチリン抗体)をコードする「単離された」核酸分子は、その核酸分子が生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、その産生環境に伴うすべての構成要素との会合がない。本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、その核酸分子が天然で認められる形態または設定とは異なる形態で存在する。したがって、単離された核酸分子は、細胞中に天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0090】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用されるとき、当該ベクターに結合された別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一種には「プラスミド」があり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二本鎖DNAを指す。ベクターの別の種類はファージベクターである。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、この場合、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムへライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに統合することができるため、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある特定のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」または簡単に「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターのうちで最も一般的に使用される形態であるため、互換的に使用され得る。
【0091】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりまたは合成反応によりポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。
【0092】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物を組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントになり得る、またはレシピエントになっている個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、その子孫は、自然発生的、偶発的または意図的な変異により、元の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてもよい(形態学的にまたはゲノムDNA相補体において)。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチド(複数可)をin vivoでトランスフェクションした細胞を含む。
【0093】
本明細書で使用される「担体」には、用いられる用量及び濃度でその担体に曝露される細胞または哺乳動物にとって無毒である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤が含まれる。
【0094】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」を付した値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ記載する)ものである。
【0095】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。例えば、「抗体」への言及は、モル量のような1から多くの抗体までに対する言及であり、当業者に知られているその等価物を含むことなどである。
【0096】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態を「含む」、態様及び実施形態「からなる」、ならびに態様及び実施形態「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
【0097】
概説
本開示は、個体に抗ソルチリン抗体を投与することによって個体の疾患または傷害を治療及び/またはその進行を遅延させる方法に関する。治療または遅延させ得る疾患の非限定的な例としては、前頭側頭型認知症(FTD)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。以下に記載するとおり、本開示の方法は、正しい用量で患者を治療する方法を特定し、患者のコンプライアンスを容易にする方法でその用量を投与するための当技術分野の必要性を満たす。
【0098】
有利なことに、非ヒト霊長類への本開示の抗ソルチリン抗体の単回または反復投与(例えば、実施例1を参照)の静脈内投与は、用量依存的に白血球上のSORT1タンパク質の減少、及び血漿中のPGRNタンパク質レベルの増加(例えば、2~6倍の増加)及び脳脊髄液(CSF)中のPGRNタンパク質レベルの増加(例えば、2~4倍の増加)をもたらす。更に、抗ソルチリン抗体の半減期は比較的短いが(例えば、最大73.6時間)、予期せぬことに、白血球のSORT1タンパク質の減少と、血漿及びCSFのPGRNタンパク質レベルの増加は、時間が経過しても持続する(例えば、抗ソルチリン抗体の最後の投与から最大で14日後)。更に、有利には、曝露は時間の経過と共に増加し(例えば、1日目対22日目)、これは、抗ソルチリン抗体が蓄積されたことを示す。
【0099】
同様に、健康なヒトへの本開示の抗ソルチリン抗体の単回投与(例えば、実施例2を参照)の静脈内投与は、用量依存的に白血球上のSORT1タンパク質の減少(例えば、50%または70%の減少)、及び血漿中のPGRNタンパク質レベルの増加(例えば、1.29~2.14倍の増加)及びCSF中のPGRNタンパク質レベルの増加(例えば、0.57~1.13倍の増加)をもたらす。更に、抗ソルチリン抗体の半減期は比較的短い(例えば、最大190時間)が、予期せぬことに、白血球上のSORT1タンパク質の減少(例えば、40日以上)、ならびに血漿(例えば、40日~42日以上)及びCSF中のPGRNタンパク質レベルの増加は、時間が経過しても持続する(例えば、少なくとも24日)。
【0100】
FTD及びALSなどの神経変性疾患の患者は、長期間にわたって疾患の影響を受けるため、長年にわたって定期的な治療が必要になる。自宅では治療的静脈内投与ができないため、輸液センターに患者を搬送させる必要があり、患者及び介護者の両方に負担がかかる。最終的に、これらの疾患の記憶喪失、気分のむら、攻撃性、及び他の行動症状により、患者のコンプライアンスが困難になる。
【0101】
有利なことに、本開示の抗ソルチリン抗体は比較的短い半減期を示し、したがって治療的に有用であることは期待できないが、本明細書で提供される方法に従って投与された場合、抗体は、予想外に長続きする薬力学(PD)効果(例えば、血漿及びCSF中におけるPGRNレベルの増加、ならびにWBC及びCSF中におけるSORT1レベルの減少)を呈する。したがって、本明細書で提供される方法では、抗ソルチリン抗体の比較的頻度の低い投与が可能になり、これは、FTD及びALSなどの神経変性疾患を有する患者にとって特に有益である。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は更に、個体に抗ソルチリン抗体を少なくとも約30mg/kgの用量で少なくとも4週間に1回静脈内投与することによって、個体におけるFTD(例えば、実施例3を参照)またはALS(例えば、実施例4を参照)を治療及び/またはその進行を遅延させる方法に関する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、約60mg/kgの用量で4週間に1回投与される。
【0103】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、特許、特許出願及び刊行物を含め、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0104】
治療用途
本開示は、個体における疾患または傷害を治療する及び/またはその進行を遅延させる方法を提供し、本方法は、抗ソルチリン抗体を個体に投与することを含み、本抗体は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域と、を含み、重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号2~3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び配列番号5~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み;軽鎖可変領域は、配列番号8~27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号29~30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0105】
本明細書に開示されるとおり、本開示の抗ソルチリン抗体は、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、認知症、脳卒中、パーキンソン病、大脳辺縁系優位型老年期TDP43脳症(LATE)、急性散在性脳脊髄炎、網膜変性、加齢黄斑変性症、緑内障、多発性硬化症、敗血性ショック、細菌感染症、関節炎、または変形性関節症の進行を治療及び/または遅延させるために使用され得る。いくつかの実施形態では、疾患または損傷は、前頭側頭型認知症または筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、限定されないが、認知症、C9orf72関連疾患、FTD、アルツハイマー病、ALS、LATE、及びパーキンソン病に関連するTDP43病態などのTDP43病態を治療または緩和するために使用され得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、2つ以上の抗ソルチリン抗体を含む抗ソルチリン抗体を含む。
【0107】
認知症
認知症は、これまでに障害のなかった人において、正常な老化から予想され得るものを越える全体的認知能力の重大な損失として現れる非特異的症候群(すなわち、一連の徴候及び症状)である。認知症は、固有の全体的な脳損傷の結果として、変化しないこともある。あるいは、認知症は、進行性である場合もあり、身体の損傷または疾患によって長期的な減退がもたらされる。認知症は、高齢者集団においてより多く一般的に見られるが、65歳以前に発症することもある。認知症によって影響を受ける認知領域には、限定するものではないが、記憶、注意持続時間、言語及び問題解決が含まれる。一般に、個体が認知症と診断されるまでには、少なくとも6ヶ月間、症状が存在する必要がある。
【0108】
認知症の例示的な形態には、限定するものではないが、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、意味性認知症及びレビー小体型認知症が含まれる。
【0109】
理論に束縛されるものではないが、本開示の抗ソルチリン抗体の投与により、認知症を治療する及び/またはその進行を遅延させることができると考えられる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、認知症を有する個体において1つ以上のプログラニュリン活性(例えば、ニューロンに対する神経栄養及び/または生存活性、ならびに抗炎症活性)を誘導し得る。
【0110】
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉の進行性の劣化から生じる病状である。この変性は、時間の経過と共に側頭葉に進むことがある。罹患率では、FTDは、アルツハイマー病(AD)に次いで、初老年性認知症症例の20%を占める。FTDの臨床的特徴には、記憶障害、行動異常、人格変化及び言語障害が含まれる(Cruts,M.&Van Broeckhoven,C.,Trends Genet.24:186-194(2008);Neary,D.,et al.,Neurology51:1546-1554(1998);Ratnavalli,E.,Brayne,C.,Dawson,K.&Hodges,J.R.,Neurology58:1615-1621(2002))。
【0111】
FTD症例のかなりの部分が常染色体優性の様式で遺伝するが、症状は、たとえ1つの家族であっても、行動障害を伴うFTDから、原発性進行性失語まで、大脳皮質基底核神経節変性症までの範囲にわたることがある。FTDは、ほとんどの神経変性疾患と同様に、罹患脳における特定のタンパク質凝集の病理学的存在によって特徴付けることができる。歴史的に、FTDに関する最初の記載は、神経原線維変化またはピック球における異常にリン酸化されたタウタンパク質の神経細胞内蓄積の存在を認めたものである。微小管関連タンパク質タウの因果的役割は、いくつかの家族において、タウタンパク質をコードする遺伝子の変異を特定することによって裏付けられた(Hutton,M.,et al.,Nature 393:702-705(1998)。しかしながら、FTD脳の大部分は、異常にリン酸化されたタウの蓄積を示さず、ユビキチン(Ub)及びTAR DNA結合タンパク質(TDP43)に対して免疫反応性を示す(Neumann,M.,et al.,Arch.Neurol.64:1388-1394(2007))。Ub封入体(FTD-U)を有するこれらのFTD症例の大部分は、プログラニュリン遺伝子に変異を持つことが示された。
【0112】
プログラニュリン突然変異はハプロ不全を生じ、家族性FTD症例のほぼ50%に存在することが知られていることから、プログラニュリン突然変異はFTDの主要な遺伝子因子とされる。理論に束縛されるものではないが、プログラニュリン突然変異の機能喪失型ヘテロ接合体の特徴は、プログラニュリン発現が、健康な個体において、FTDの発症から健康な個体を保護するのに用量依存性の重要な役割を果たすことを示していると考えられる。したがって、ソルチリンとプログラニュリンとの間の相互作用を阻害することによってプログラニュリンのレベルを増加させることにより、FTDを治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、FTDを治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、FTDを有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、神経認知及び/または機能的検査または評価(すなわち、臨床転帰評価)におけるベースラインからの変化によって判定される。FTDの治療及び/またはその進行の遅延を評価するために使用され得る神経認知及び機能検査の非限定的な例としては、前頭側頭型認知症臨床評価スケール(FCRS)、前頭側頭型認知症評価スケール(FRS)、臨床全般改善度(CGI-I)評価、神経精神医学的目録(NPI)評価、カラートレイルテスト(CTT)パート2、高次脳機能評価の繰り返し神経心理テスト課題(RBANS)、Delis-Kaplanエクゼクティブ機能システムカラー-ワード干渉検査、対人反応性指標、Winterlight Lab Speech Assessment(WLA)、及びSummerlight Lab Speech Assessment(SLA)が挙げられる。いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、1つの神経認知及び/または機能的検査または評価におけるベースラインからの変化によって判定される。いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、2つ以上の神経認知及び/または機能的試験または評価(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上の神経認知及び/または機能的検査または評価)におけるベースラインからの変化によって判定される。
【0115】
いくつかの実施形態では、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、全体的及び/または局所的脳容積、白質高信号域の容積、脳灌流、部分異方性、平均拡散係数、軸方向放射拡散係数、及び放射拡散係数及び/または機能的脳活動のベースラインからの変化によって判定される。ある特定の実施形態では、脳灌流は、動脈スピンラベリングMRIによって測定される。ある特定の実施形態では、放射拡散係数は、拡散テンソルイメージングによって測定される。ある特定の実施形態では、機能的脳活動は、機能的MRIによって測定される。
【0116】
いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、全血、血漿、及びCSFにおける神経変性のマーカーにおけるベースラインからの変化によって判定される。神経変性のマーカーには、ニューロフィラメント軽鎖[NfL]、タウ、及び/またはpTauが挙げられるが、これらに限定されない。ニューロフィラメント軽鎖は、限定されないが、Quanterix及び/またはRoche Diagnosticsのアッセイなどの方法によって測定することができる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、NfLレベルを少なくとも10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低下させる。いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、リソソーム機能のマーカーにおけるベースラインからの変化(例えば、増加)によって判定される。リソソーム機能のマーカーは、これに限定されないが、カテプシンB(CTSB)などのカテプシンであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、CTSBなどの1つ以上のリソソームマーカーのベースラインレベルと比較して、CTSBなどの1つ以上のリソソームマーカーのレベルを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上のうちのいずれか、増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、CTSBのベースラインレベルと比較して、CTSBのレベルを少なくとも約20%増加させる。リソソームマーカーの別の非限定的な例は、N-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)である。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、NAGKのベースラインレベルと比較して、NAGKのレベルを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上のいずれか増加させる。
【0117】
いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、オステオポンチン(SPP1)などの炎症マーカーのレベルのベースラインからの変化(例えば、減少)によって判定される。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、SPP1などの1つ以上の炎症マーカーのベースラインレベルと比較して、SPP1などの1つ以上の炎症マーカーのレベルを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上のいずれか減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、SPP1などの1つ以上の炎症マーカーのベースラインレベルと比較して、SPP1などの1つ以上の炎症マーカーのレベルを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか減少させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、SPP1のベースラインレベルと比較して、SPP1のレベルを少なくとも約10%減少させる。炎症マーカーの他の例としては、限定されないが、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体による治療は、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86などの1つ以上の炎症マーカーのベースラインレベルと比較して、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86などの1つ以上の炎症マーカーのレベルを少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか減少させる。
【0118】
いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、ミクログリア活性のマーカーにおけるベースラインからの変化によって判定される。ミクログリア活性のマーカーは、限定されないが、YKL-40及び/またはインターロイキン-6であってもよい。いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、末梢細胞におけるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現のベースラインからの変化によって判定される。いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、FTD疾患生物学及び/または抗ソルチリン抗体に対する応答に関連する分析物のベースラインからの変化によって判定される。
【0119】
いくつかの実施形態において、1つ以上のタンパク質(例えば、YKL-40、IL-6、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、またはCD86のうちの1つ以上)のレベルは、全血、血漿、及び/またはCSFの試料など、個体から得られた試料中で測定され得る。個体から得られた試料中の1つ以上のタンパク質(例えば、YKL-40、IL-6、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、またはCD86のうちの1つ以上)のレベルを測定するために使用され得る方法の非限定的例としては、SOMASCANアッセイ(例えば、Candia et al.(2017)Sci Rep 7,14248)、ウエスタンブロット、質量分析、フローサイトメトリー、及び酵素免疫測定法(ELISA)アッセイが挙げられる。
【0120】
いくつかの実施形態において、FTDの治療及び/またはその進行の遅延は、神経炎症及び/またはミクログリア活性化におけるベースラインからの変化によって判定される。神経炎症及び/またはミクログリアの活性化は、当技術分野で知られている任意の方法によって測定することができる。ある特定の実施形態において、神経炎症及び/またはミクログリア活性化は、トランスロケータータンパク質-陽電子放出(TSPO-PET)イメージングを使用して測定され得る。ある特定の実施形態では、[18F]PBR06及び/または[11C]PBR28 PETは、TSPO-PETイメージングの放射性トレーサーとして使用される。ある特定の実施形態では、[18F]PBR06は、TSPO-PETイメージングの放射性トレーサーとして使用される。ある特定の実施形態では、[11C]PBR28 PETは、TSPO-PETイメージングの放射性トレーサーとして使用される。
【0121】
いくつかの実施形態において、個体は、GRN(グラニュリン遺伝子)における突然変異についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異は、機能喪失型突然変異である。いくつかの実施形態では、個体は、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、個体はFTDの症状を示す。いくつかの実施形態では、個体はFTDの症状を示さない。
【0122】
いくつかの実施形態では、個体が行動変異型FTD(bvFTD)の可能性またはbvFTDの高い可能性または原発性進行性失語症(PPA)の診断基準を満たしている場合、その個体は、FTDの症状を示す。いくつかの実施形態では、個体は、bvFTDの可能性の診断に必要な行動/認知症状のうちの1つ以上を有する(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)。いくつかの実施形態において、個体は、日常生活動作に有意に影響を及ぼさない軽度の症候学を有する(例えば、軽度の認知障害、軽度の行動障害)。ある特定の実施形態において、個体は、付随する運動ニューロン疾患を伴うbvFTDまたはPPaを有する。いくつかの実施形態では、個体は、前頭側頭型認知症臨床評価スケール(FCRS)の評価言語ドメイン、ならびに行動、快適性、及び人格ドメインの両方で、1以下の臨床認知症評価スケール(CDR)グローバルスコア及び1以下のボックススコアによって定義される軽度の重症度のFTDを有する。
【0123】
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な形態である。この疾患に治療法はなく、進行するにつれて悪化し、最終的には死に至る。ほとんどの場合、ADは、65歳を越えた人において診断される。しかしながら、あまり一般的ではない早期発症型のアルツハイマー病は、より早期に発症することがある。
【0124】
アルツハイマー病の一般的症状には、近時事象の想起困難などの行動症状、認知症状、混乱、易刺激性及び攻撃性、気分変動、言語障害ならびに長期の記憶喪失が含まれる。疾患が進行するにつれて、身体機能が失われ、最終的に死に至る。アルツハイマー病は、完全に明らかになるまでに未知の可変時間量で発症し、何年も診断未確定で進行する場合がある。
【0125】
ソルチリンがアミロイド前駆体タンパク質(APP)及びAPPプロセシング酵素BACE1に結合することが示されている。理論に束縛されるものではないが、これらの相互作用がアルツハイマー病に関与すると考えられる。したがって、理論に束縛されるものではないが、本開示の抗ソルチリン抗体を利用して、かかる相互作用を阻害し、アルツハイマー病の予防、その危険性の低減、または治療を必要とする個体において、それを行うことができると考えられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、理論により束縛されるものではないが、ソルチリンと、本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)、p75、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、及び/またはAβペプチドとの間の相互作用を阻害するか、またはソルチリンの1つ以上の活性を阻害する本開示の抗ソルチリン抗体を利用して、アルツハイマー病の治療、及び/またはアルツハイマー病の進行の遅延を必要とする個体において、それを行うことができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、アルツハイマー病を治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、アルツハイマー病を有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0128】
血管性認知症
血管性認知症(VaD)は、脳血管疾患(脳内の血管疾患)に起因すると考えられる、わずかに進行性の記憶及び他の認知機能の悪化である。脳血管疾患は、脳(大脳)の血管(脈管構造)の進行性変化である。加齢に伴う最も一般的な血管変化は、血管壁におけるコレステロール及び他の物質の蓄積である。これにより、血管壁の肥厚化及び硬化ならびに血管の狭窄が生じ、その影響を受けた動脈によって供給される脳領域への血流が減少し、または完全に停止し得る。血管性認知症患者は、多くの場合、アルツハイマー病(AD)患者と類似の症状を示す。しかしながら、関連する脳での変化は、AD病理に起因するものではなく、最終的に認知症につながる脳内の血流の慢性的減少に起因するものである。VaDは、高齢者において最も一般的な認知症の1つであるとみなされている。VaDの症状には、記憶困難、構成化及び複雑な問題の解決困難、思考力の減退、注意散漫または「関心不在」、記憶から言葉を引き出すのが難しい、気分または行動の変化、例えば、うつ状態、易刺激性もしくは無関心及び幻覚もしくは妄想などが含まれる。
【0129】
理論に束縛されるものではないが、ソルチリンの1つ以上の活性、またはソルチリンと、プログラニュリン、本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)、ニューロテンシン、リポタンパク質リパーゼ、アポリポタンパク質AV及び/もしくは受容体関連タンパク質との間の1つ以上の相互作用は、血管性認知症に関与すると考えられる。したがって、理論に束縛されるものではないが、ソルチリンと、本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)、ニューロテンシン、p75、ソルチリンプロペプチド(Sort-pro)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Aβペプチド、リポタンパク質リパーゼ(LpL)、アポリポタンパク質AV(APOA5)、アポリポタンパク質E(APOE)及び/もしくは受容体関連タンパク質(RAP)との間の相互作用を阻害するか、またはソルチリンの1つ以上の活性を阻害する本開示の抗ソルチリン抗体を利用して、血管性認知症の予防、その危険性の低減、または治療を必要とする個体において、それを行うことができると考えられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、VaDを治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、VaDを有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0131】
痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷
本明細書で使用されるとき、網膜ジストロフィーとは、網膜変性を伴う任意の疾患または病態を指す。かかる疾患または病態は、視力低下または完全な失明につながることがある。
【0132】
本明細書で使用されるとき、痙攣発作は、てんかん発作も含み、脳の異常な過剰または同期性の神経活動の一過性症状を指す。外見上の影響は、興奮したのたうち運動のような劇的な場合もあれば、意識の軽微喪失のような軽い場合もある。痙攣発作は、精神状態の変化、強直性または間代性運動、痙攣及び種々の他の精神的症状として現れ得る。
【0133】
外傷性脳損傷(TBI)は、頭蓋内損傷としても知られ得る。外傷性脳損傷は、外的な力が脳に外傷を与えるときに生じる。外傷性脳損傷は、重症度、機構(閉鎖性または穿通性頭部損傷)、または他の特徴(例えば、特定の場所で生じるまたは広範囲にわたって生じる)に基づいて分類することができる。
【0134】
脊髄損傷(SCI)は、疾患ではなく外傷によって引き起こされる脊髄へのあらゆる損傷を含む。症状は、脊髄及び神経根がどこで損傷を受けているかに応じて、疼痛から麻痺、失禁まで、大きく変わり得る。脊髄損傷は、患者に影響を与えないことから多様であり得る「不完全型」から、機能の完全な喪失を意味する「完全型」損傷まで種々のレベルで記述される。
【0135】
プロニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン-4/5、ニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNFなど)が痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷に関与することが示されている。
【0136】
したがって、理論に束縛されるものではないが、ソルチリンと本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)との間の相互作用を阻害するか、またはソルチリンの1つ以上の活性を阻害する本開示の抗ソルチリン抗体を利用して、痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、及び/または脊髄損傷の予防、その危険性の低減、または治療を必要とする個体において、それを行うことができると考えられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、及び/または脊髄損傷を治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、及び/または脊髄損傷を有する個体における1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0138】
老化の望ましくない症状
本明細書で使用されるとき、老化の望ましくない症状には、限定するものではないが、記憶喪失、行動変化、認知症、アルツハイマー病、網膜変性、アテローム動脈硬化性血管疾患、聴力損失及び細胞分解が含まれる。
【0139】
いくつかの実施形態において、理論により束縛されるものではないが、ソルチリンと、プログラニュリン、本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)、ニューロテンシン、p75、リポタンパク質リパーゼ(LpL)、アポリポタンパク質AV(APOA5)及び/もしくは受容体関連タンパク質(RAP)との間の相互作用を阻害するか、またはソルチリンの1つ以上の活性を阻害する本開示の抗ソルチリン抗体は、老化の1つ以上の望ましくない症状を予防し、その危険性を低減させ、または治療するために利用することができると考えられる。
【0140】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、老化の1つ以上の望ましくない症状を治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、老化の1つ以上の望ましくない症状を有する個体における1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0141】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
本明細書で使用されるとき、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または運動ニューロン疾患またはルーゲーリッグ病は、互換的に使用され、急速に進行する衰弱、筋萎縮及び線維束性収縮、筋痙縮、発話困難(構音障害)、嚥下困難(嚥下障害)ならびに呼吸困難(呼吸障害)を特徴とする様々な病因を有する消耗性疾患を指す。
【0142】
GRN遺伝子のヘテロ接合性機能喪失型変異によるPGRNハプロ不全は、CSF PGRNレベルの低下をもたらし、TDP-43病理を伴う前頭側頭型認知症(FTD)の発症の原因となる(Sleegers et al.,(2009)Ann Neurol 65:603、Smith et al.,(2012)Am J Hum Genet 90:1102)。TDP-43は、ALSにおいて主要な病理学的タンパク質としても同定されており、ALSとFTDとの類似性を示唆するものである。
【0143】
例えば、散発性及び家族性のALS患者では、TDP-43の20を超える優性突然変異が同定されており(Lagier-Tourenne et al.,(2009)Cell 136:1001)、及びALS症例の約95%でTDP-43陽性の集団が見られる(Prasad et al.,(2019)Front Mol Neurosci 12:25)。更に、MOBP、C9ORF72、MOBKL2B、NSF、FUSなどのALS危険遺伝子も、FTDを引き起こし得る(Karch et al.,(2018)JAMA Neurol 75:860)。更に、PGRN及びC9ORF72の両方の変異は、異常なミクログリアの活性化に関連しており、これは、FTD及びALSの別の一般的な病状と考えられる(Haukedal et al.,(2019)J Mol Biol 431:1818)。他の証拠も、ALS及びFTDが緊密に関連した状態であり、遺伝的、神経病理学的、及び臨床的特徴が重複することを示唆している(Weishaupt et al.,(2016)Trends Mol Med 22:769;McCauley et al.,(2018)Acta Neuropathol 137:715)。まとめると、これらの結果は、両方の疾患が共有治療の恩恵を受ける可能性があり、PGRNの遺伝的多様性が、ALSの経過の改変因子として作用することを示唆している。
【0144】
更に、PGRNの喪失が急性及び慢性神経変性の複数のモデルで有害であるという実証は別として(Boddaert et al.,(2018)Methods Mol Biol 1806:233)、PGRNの過剰発現は、ALSの多くの動物モデルで保護的であることがわかっている(Laird et al.,(2010)PLoS One 5:e13368、Tauffenberger et al.,(2013)Hum Mol Genet 22:782、Beel et al.,(2018)Mol Neurodegener 13:55、Chang et al.,(2017)J Exp Med 214:2611)。更に、GRNの一般的な変異形は、ALS患者の発症年齢の低下及び発症後の生存期間の短縮に有意に関連している(Sleegers et al.,(2008)Neurology 71:253)。
【0145】
要約すると、ヒト遺伝学及び疾患モデルのデータが両方とも、TDP-43病理に関連するALS患者の病理を軽減するPGRNの保護機能を裏付けている。
【0146】
いくつかの実施形態において、理論により束縛されるものではないが、ソルチリンと、プログラニュリン、本開示のニューロトロフィン(例えば、プロニューロトロフィン、プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNF、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNFなど)、ニューロテンシン、p75、リポタンパク質リパーゼ(LpL)、アポリポタンパク質AV(APOA5)及び/もしくは受容体関連タンパク質(RAP)との間の相互作用を阻害するか、またはソルチリンの1つ以上の活性を阻害する本開示の抗ソルチリン抗体は、ALSの1つ以上の望ましくない症状を予防し、または治療するために利用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、ALSを治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、ALSを有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。いくつかの実施形態では、個体は、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である。
【0148】
いくつかの実施形態において、ALSの治療及び/またはその進行の遅延は、脳萎縮、脳接続性、脳遊離水及び/または脳炎症におけるベースラインからの変化によって判定される。限定されないが、MRIなどの当技術分野で知られている任意の方法を使用して、脳萎縮、脳接続性、脳遊離水及び/または脳炎症を測定することができる。ある特定の実施形態では、脳萎縮は、構造的MRIを使用して測定される。ある特定の実施形態では、脳遊離水及び/または脳炎症は、拡散テンソルイメージング(DTI)を使用して測定される。
【0149】
いくつかの実施形態において、ALSの治療及び/またはその進行の遅延は、プログラニュリン、神経変性のマーカー、グリア活性化のマーカー、及び/またはTDP-43病理のマーカーのベースラインからの変化によって判定される。ある特定の実施形態において、プログラニュリンは、アジポゲンイムノアッセイを使用して測定される。ある特定の実施形態において、神経変性のマーカーは、これに限定されないが、ニューロフィラメント軽鎖を含む。ニューロフィラメント軽鎖は、限定されないが、Quanterix及び/またはRoche Diagnosticsのアッセイなどの当技術分野の任意の既知の方法によって測定することができる。ある特定の実施形態において、グリア活性化のマーカーは、限定されないが、YKL-40(CHI3L)、IL-6、及び/またはGFAPを含む。GFAPは、これに限定されないが、Roche Diagnosticsのアッセイなどの当技術分野で知られている任意の方法を使用して測定することができる。
【0150】
パーキンソン病
パーキンソン病は、特発性または原発性パーキンソニズム、低運動性硬直症候群(HRS)、または振戦麻痺とも呼ばれることがあり、運動系制御に影響を与える神経変性脳障害である。脳内におけるドーパミン産生細胞の進行性死がパーキンソン病の主要な症状を引き起こす。ほとんどの場合、パーキンソン病は、50歳を越えた人において診断される。パーキンソン病は、ほとんどの人で特発性(原因不明)である。しかしながら、遺伝的要因がこの疾患にも関与している。
【0151】
パーキンソン病の症状には、限定するものではないが、手、腕、足、顎及び顔の振戦、四肢及び胴の筋強剛、運動の遅さ(運動緩慢)、姿勢反射障害、歩行困難、神経精神障害、発語または行動の変化、うつ病、不安、疼痛、精神病、認知症、幻覚ならびに睡眠問題が含まれる。
【0152】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、パーキンソン病を治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、パーキンソン病を有する個体において1つ以上のプログラニュリン活性を誘導し得る。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、パーキンソン病を有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0153】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、散在性硬化症または散在性脳脊髄炎と呼ばれることもある。MSは、脳及び脊髄の軸索を覆う脂質性ミエリン鞘が損傷を受けて、脱髄及び瘢痕化ならびに広範な徴候及び症状が生じる炎症性疾患である。例えば、www.ninds.nih.gov/Disorders/Patient-Caregiver-Education/Hope-Through-Research/Multiple-Sclerosis-Hope-Through-Researchを参照のこと。
【0154】
MSの症状には、限定するものではないが、感覚欠如またはヒリヒリ感などの感覚変化、感覚減退及び感覚異常などの刺痛またはしびれ感、筋力低下、クローヌス、筋痙攣、移動困難、運動失調などの協調及びバランス困難、構音障害などの発語障害または嚥下障害などの嚥下困難、眼振、視神経炎(眼閃を含む)及び複視などの視覚問題、疲労、急性もしくは慢性の疼痛、ならびに膀胱及び腸管障害、様々な程度の認知障害、うつ病または気分不安定の感情症状、通常の周辺温度よりも高い温度にさらされることにより現存する症状が憎悪するウートホフ現象、ならびに頸部を曲げると背中から下方に電気が走ったような感覚があるレルミット徴候が含まれる。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することは、多発性硬化症を治療する及び/またはその進行を遅延させることができる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、多発性硬化症を有する個体において1つ以上のプログラニュリン活性を誘導し得る。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、多発性硬化症を有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0156】
緑内障及び黄斑変性症
緑内障は、限定するものではないが、視野欠損及び失明の原因になる視神経の損傷を特徴とする疾患群を記述するものである。緑内障は、通常、角膜下の前房における液の圧力(=眼内の圧力)が上昇することによって引き起こされる。緑内障は、視覚にとって重要な網膜神経節細胞の継続的な消失をもたらす。加齢黄斑変性症は、通常、高齢者が罹患し、主に、視野の中心である黄斑で視野欠損が生じる。黄斑変性症は、限定するものではないが、ドルーゼン、色素変化、視野の歪み、眼の出血、萎縮、視力低下、視野のぼけ、中心暗点、色覚低下及びコントラスト感度の低下を引き起こす。
【0157】
理論に束縛されることは望まないが、本開示の抗ソルチリン抗体の投与により、緑内障及び黄斑変性を治療する及び/またはその進行を遅延させることができると考えられる。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、緑内障及び黄斑変性症を有する個体において1つ以上のプログラニュリン活性を誘導し得る。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体を投与することは、緑内障及び黄斑変性症を有する個体において1つ以上のソルチリン活性を調節し得る。
【0158】
グラニュリン突然変異
いくつかの実施形態において、個体は、GRN(グラニュリン遺伝子)における突然変異についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異は、機能喪失型突然変異である。
【0159】
いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異の存在は、当技術分野で知られている任意の方法によって決定される。GRNにおける突然変異の存在を決定するために使用され得る方法の非限定的な例には、DNAシーケンシング、DNAハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、リアルタイムPCR、定量PCR、半定量的PCR、DNAマイクロアレイ、多重ライゲーション依存プローブ増幅、一本鎖コンフォメーション多型分析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロッティング、遺伝連鎖分析(例えば、短いタンデムリピート及び/または可変数タンデムリピートを使用する)、蛍光in situハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的増幅、及び/または制限酵素消化法(例えば、制限酵素断片長多型分析)(Mahdieh et al.,Iran J Pediatr(2013)23(4):375-388)が含まれる。
【0160】
いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異の存在は、DNAシーケンシングによって決定される(Chang et al.,(2010)Arch Neurol 67(2):161-170)。いくつかの実施形態では、GRNにおける突然変異の存在は、DNAシーケンシング及びジェノタイピングによって決定される(Chang et al.,(2010)Arch Neurol 67(2):161-170)。
【0161】
いくつかの実施形態において、低血清プログラニュリンは、GRNにおける突然変異の存在を予測する(Schofield et al.,(2010)J Alzheimers Dis 22(3):981-4)。PGRNのレベルは、以下の「PGRNレベル」セクションで記載されているように決定され得る。
【0162】
C9orf72突然変異
いくつかの実施形態では、個体は、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である。
【0163】
いくつかの実施形態において、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在は、当技術分野における任意の既知の方法によって決定される。C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在を決定するために使用され得る方法の非限定的な例には、DNAシーケンシング、ロングリードDNAシーケンシング、DNAハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、リアルタイムPCR、定量PCR、半定量的PCR、DNAマイクロアレイ、サザンブロッティング、多重ライゲーション依存プローブ増幅、一本鎖コンフォメーション多型分析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動、ヘテロ二本鎖分析、遺伝連鎖分析(例えば、短いタンデムリピート及び/または可変数タンデムリピートを使用する)、蛍光in situハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的増幅、及び/または制限酵素消化法(例えば、制限酵素断片長多型分析)(Mahdieh et al.,Iran J Pediatr(2013)23(4):375-388)が含まれる。
【0164】
いくつかの実施形態において、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在は、DNAシーケンシングによって決定される(Ebbert et al.,Mol Neurodegener(2018)13(1):46)。いくつかの実施形態では、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在は、ロングリードシーケンシングによって決定される(Ebbert et al.,Mol Neurodegener(2018)13(1):46)。いくつかの実施形態では、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在は、Pacific BiosciencesシーケンシングプラットフォームまたはOxford Nanopore Technologiesシーケンシングプラットフォームを使用して決定する(Ebbert et al.,Mol Neurodegener(2018)13(1):46)。いくつかの実施形態では、C9orc72ヘキサヌクレオチドリピート伸長の存在は、市販の試験を使用して決定される。市販の検査の非限定的な例には、GeneDx(ウェブサイトwww[ドット]genedx[ドット]com/wp-content/uploads/2017/06/info_sheet_C9orf72.pdfで入手可能)、Fulgent(ウェブサイトwww[ドット]fulgentgenetics[ドット]com/repeatexpansion-c9orf72で入手可能)、Prevention Genetics(ウェブサイトwww[ドット]preventiongenetics.[ドット]com/testInfo.php?sel=test&val=C9orf72+Gene+Hexanucleotide+Repeat+Expansionで入手可能)、及び/またはAthena Diagnostics(ウェブサイトwww[ドット]athenadiagnostics[ドット]com/view-full-catalog/c/c9orf72-dna-testで入手可能)の検査が含まれる。
【0165】
薬学的投薬量
本明細書で提供される抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、鼻内、病変内投与、大脳脊髄内(intracerobrospinal)、頭蓋内、脊髄内、滑液包内、髄腔内、経口、局所、または吸入経路を含む任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、ボーラス剤としての、または経時的な連続注入による静脈内投与、動脈内、関節内、腹膜内、または皮下投与が含まれる。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与である。いくつかの実施形態では、投与は、皮下である。投与は、一部では、投与が短時間または長時間かどうかに応じて、任意の適切な経路によって、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によってよい。限定されないが、様々な時点での単回または複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書では企図される。
【0166】
本明細書で提供される抗体は、良好な医学的実施と合致する方法で製剤化され、用量決定され、及び投与されるであろう。この状況で考慮される因子には、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用物質の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に公知の他の因子が含まれる。抗体は、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の作用物質と共に製剤化されるが、これは必要ではなく、任意である。そのような他の作用物質の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療の種類、及び上記で検討した他の因子に依存する。これらは一般に、本明細書の記載と同じ投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載の投薬量の約1~99%で、または経験的/臨床的に適切と決定されている任意の投薬量で、かつ任意の経路で使用される。
【0167】
特定の抗ソルチリン抗体の投薬量は、抗ソルチリン抗体の1回以上の投与を与えられている個体において経験的に決定されてもよい。個体は、抗ソルチリン抗体の徐々に増加する用量を与えられる。抗ソルチリン抗体の有効性を評価するために、本開示の任意の疾患、障害、または状態(例えば、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、脊髄損傷、長期うつ病、アテローム硬化性血管疾患、及び正常老化の望ましくない症状)の臨床症状を監視することができる。
【0168】
疾患を予防または治療するために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用する場合)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療法、抗体に対する患者の臨床的履歴及び応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は、1回で、または一連の治療で、患者に適切に投与される。
【0169】
疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1つ以上の別々の投与によるか、または連続注入によるかで、抗体の約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)が、個体に投与するための初期投薬量候補であり得る。典型な1日投薬量の1つは、上述の因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得るであろう。状態に応じて、数日間またはそれ以上にわたる反復投与では、治療は一般に、症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。抗体の例示的な投薬量の1つは、約15mg/kg~約70mg/kgの範囲にあるであろう。したがって、約15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、または70mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量を患者に投与することができる。抗体の別の例示的な投薬量は、約30mg/kg~約60mg/kgの範囲であろう。したがって、約30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、または60mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量が個体に投与され得る。
【0170】
いくつかの態様において、本開示の方法は、少なくとも約30mg/kgの用量で抗ソルチリン抗体を個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも約35mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約45mg/kg、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約55mg/kg、または少なくとも約60mg/kgである。いくつかの実施形態では、用量は、約30mg/kg~約60mg/kgである。いくつかの実施形態では、用量は、約60mg/kgである。
【0171】
このような用量を、間欠的に、例えば、毎週または3週ごとに投与してもよい(例えば、個体が抗体の投薬を約2~20回、または例えば、約6回受けるように)。ある特定の実施形態では、投薬頻度は1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに1回、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、もしくは1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、用量は、約1ヶ月に1回投与される。いくつかの実施形態では、投与頻度は、q2w以上(すなわち、用量は、2週間に1回、または2週間に1回よりも少ない頻度で投与される)、q3w以上、q4w以上、q5w以上、q6w以上、q7w以上、またはq8w以上である。
【0172】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約30mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0173】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約35mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0174】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約40mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0175】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約45mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0176】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約50mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0177】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも約55mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも約55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも約55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0178】
いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回またはそれ以上の頻度で、約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0179】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも30mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0180】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも35mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0181】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも40mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0182】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも45mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0183】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも50mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0184】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を、少なくとも55mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、少なくとも55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、少なくとも55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、少なくとも55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0185】
いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回またはそれ以上の頻度で、60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、2週間に1回、60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、3週間に1回、60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、4週間に1回、60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0186】
ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって個体に静脈内投与される。
【0187】
ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも約30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも約35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも約40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも約60分にわたって少なくとも約45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも約50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも約60分にわたって少なくとも約55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも約55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって約60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0188】
ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも30mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも35mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも40mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも45mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって少なくとも50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも50mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも約60分にわたって少なくとも55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって少なくとも55mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約60分にわたって60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。ある特定の実施形態において、抗ソルチリン抗体は、少なくとも60分にわたって60mg/kgの用量で個体に静脈内投与される。
【0189】
ある特定の実施形態では、抗ソルチリン抗体が少なくとも2回、少なくとも4回、少なくとも6回、少なくとも8回、少なくとも10回、少なくとも12回、少なくとも14回、少なくとも16回、少なくとも18回、または少なくとも20回、個体に静脈内投与される。特定の実施形態において、合計13回、抗ソルチリン抗体が個体に投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、個体は、最長24週間、最長25週間、最長26週間、最長27週間、最長28週間、最長29週間、最長30週間、最長31週間、最長32週間、最長33週間、最長34週間、最長35週間、最長36週間、最長37週間、最長38週間、最長39週間、最長40週間、最長41週間、最長42週間、最長43週間、最長44週間、最長45週間、最長46週間、最長47週間、または最長48週間の治療期間、治療される。いくつかの実施形態では、個体は、最長48週間の治療期間治療される。いくつかの実施形態では、個体は、48週間の長さの治療期間治療される。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与は、治療期間の初日及びその後4週間ごとに行われる。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、治療期間中に合計13回投与される。
【0193】
最初により高い負荷用量、その後に1つ以上のより低い用量を投与してもよい。しかし、他の投与レジメンが有用である場合がある。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視できる。
【0194】
PGRNレベル
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を個体に静脈内投与することを含み、ここで、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも高い。いくつかの実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの1倍の増加は、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの100%の増加に相当する。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルより、少なくとも1倍高い、少なくとも1.25倍高い、少なくとも1.5倍高い、少なくとも1.75倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも2.25倍高い、少なくとも2.5倍高い、少なくとも2.75倍高い、または少なくとも3倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも1倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い。
【0195】
いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの2倍の増加は、抗ソルチリン抗体投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルと比較して、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの100%の増加に相当する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い。
【0196】
いくつかの実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体投与後約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、または約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約5日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約56日で存在する。
【0197】
いくつかの実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11、または約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約5日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約35日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約49日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約56日で存在する。
【0198】
いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約40日、約41日、または約42日において、抗ソルチリン抗体投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも、少なくとも0.25倍高い、少なくとも0.3倍高い、少なくとも0.35倍高い、少なくとも0.4倍高い、少なくとも0.45倍高い、少なくとも0.5倍高い、少なくとも0.55倍高い、少なくとも0.6倍高い、少なくとも0.65倍高い、少なくとも0.7倍高い、少なくとも0.75倍高い、少なくとも0.8倍高い、少なくとも0.85倍高い、少なくとも0.9倍高い、少なくとも0.95倍高い、少なくとも1倍高い、または少なくとも1.5倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約40日において、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.25倍高い。
【0199】
いくつかの実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、複数の時点で採血することによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、抗ソルチリン抗体投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、18日、30日、42日、43日、57日、85日、及び/または113日後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体投与の1日、2日、3日、6日、8日、13日、30日、43日、57日、85日、及び113日後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、抗ソルチリン抗体の各投与日と同日、及び抗ソルチリン抗体の初回投与の10週、20週、30週、40週、50週、60週、及び/または70週後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態では、個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、抗ソルチリン抗体の各投与日と同日、及び抗ソルチリン抗体の初回投与の61週後に採血することによって決定される。
【0200】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を個体に静脈内投与することを含み、ここで、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも高い。いくつかの実施形態において、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの1倍の増加は、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの100%の増加に相当する。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルより、少なくとも0.8倍高い、少なくとも0.85倍高い、少なくとも0.9倍高い、少なくとも0.95倍高い、少なくとも1倍高い、または少なくとも1.2倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.8倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも1倍高い。
【0201】
いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体投与後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約31日、約32日、約33日、約34日、約35日、約36日、約37日、約38日、約39日、約40日、約41日、または約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約24日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の投与後約56日で存在する。
【0202】
いくつかの実施形態において、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの2倍の増加は、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの100%の増加に相当する。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルより、少なくとも2倍高い、少なくとも2.5倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも3.5倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも4.5倍高い、または少なくとも5倍高いのうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い。
【0203】
いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約31日、約32日、約33日、約34日、約35日、約36日、約37日、約38日、約39日、約40日、約41日、または約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日のいずれかで存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約24日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約35日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約42日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約49日で存在する。いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルの倍増は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約56日で存在する。
【0204】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約31日、約32日、約33日、約34日、約35日、約36日、約37日、約38日、約39日、約40日、約41日、または約42日で、ソルチリン抗体投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.2倍高い。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与後約42日において、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも0.2倍高い。
【0205】
いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、複数の時点で腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の投与の1日、30時間、2日、12日、24日、及び/または42日後に腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の初回投与の少なくとも10週、少なくとも15週、少なくとも20週、少なくとも25週、少なくとも30週、少なくとも40週、少なくとも50週、及び/または少なくとも60週後に腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の初回投与後の25週目中及び61週目中に腰椎穿刺を行うことによって決定される。
【0206】
いくつかの実施形態において、個体の血漿または脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、当技術分野において公知であるタンパク質を定量化する任意の方法を使用して決定される。PGRNタンパク質を定量化するために使用され得る方法の非限定的例としては、SOMASCANアッセイ(例えば、Candia et al.(2017)Sci Rep 7,14248)、ウエスタンブロット、質量分析、フローサイトメトリー、及び酵素免疫測定法(ELISA)アッセイが挙げられる。ある特定の実施形態において、個体の血漿または脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルは、ELISAアッセイを使用して決定される。
【0207】
SORT1レベル
いくつかの態様において、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルが低下している場合に、抗ソルチリン抗体を個体に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%低下する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも50%低下する。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体投与後の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも70%低下する。
【0208】
いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後、約10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、16日以上、17日以上、18日以上、19日以上、20日以上、21日以上、22日以上、23日以上、24日以上、25日以上、26日以上、27日以上、28日以上、29日以上、30日以上、31日以上、32日以上、33日以上、34日以上、35日以上、36日以上、37日以上、38日以上、39日以上、40日以上、41日以上、42日以上、43日以上、44日以上、または45日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後約12日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後17日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の投与後約40日以上で存在する。
【0209】
いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後、約10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、16日以上、17日以上、18日以上、19日以上、20日以上、21日以上、22日以上、23日以上、24日以上、25日以上、26日以上、27日以上、28日以上、29日以上、30日以上、31日以上、32日以上、33日以上、34日以上、35日以上、36日以上、37日以上、38日以上、39日以上、40日以上、41日以上、42日以上、43日以上、44日以上、または45日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約17日以上で存在する。いくつかの実施形態では、個体の末梢白血球中のSORT1の発現レベルの低下は、抗ソルチリン抗体の最終投与後約40日以上で存在する。
【0210】
いくつかの態様では、本開示の方法は、抗ソルチリン抗体を個体に静脈内投与することを含み、ここで、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与前の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルと比較して、低下している。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体投与後の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下している。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルと比較して、少なくとも50%低下している。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体の投与後の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与前の個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルと比較して、少なくとも70%低下している。
【0211】
いくつかの実施形態において、個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質のレベルは、複数の時点で採血することによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の末梢白血球上のSORT1のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、18日、30日、42日、43日、57日、85日、及び/または113日後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の末梢白血球上のSORT1のレベルは、抗ソルチリン抗体の投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体投与の1日、2日、3日、6日、8日、9日、13日、18日、30日、43日、57日、85日、及び113日後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態では、個体の末梢白血球上のSORT1のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、抗ソルチリン抗体の各投与日と同日、及び抗ソルチリン抗体の初回投与の10週、20週、30週、40週、50週、60週、及び/または70週後に採血することによって決定される。ある特定の実施形態では、個体の末梢白血球上のSORT1のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、抗ソルチリン抗体の各投与日と同日、及び抗ソルチリン抗体の初回投与後61週目中に採血することによって決定される。
【0212】
いくつかの実施形態では、個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、複数の時点で腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体投与の8日、5日、3日、2日、1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の投与の1日、30時間、12日、24日、及び/または42日後に腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の初回投与の少なくとも10週、少なくとも15週、少なくとも20週、少なくとも25週、少なくとも30週、少なくとも40週、少なくとも50週、及び/または少なくとも60週後に腰椎穿刺を行うことによって決定される。ある特定の実施形態において、個体の脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体の初回投与の最大6週、最大5週、最大4週、最大3週、最大2週、最大1週、最大7日、最大6日、最大5日、最大4日、最大3日、最大2日、最大1日、及び/または0日前、及び抗ソルチリン抗体の初回投与後の25週目中及び61週目中に腰椎穿刺を行うことによって決定される。
【0213】
いくつかの実施形態において、個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質のレベルまたは脳脊髄液中の可溶性SORT1タンパク質のレベルは、当技術分野において公知であるタンパク質を定量化する任意の方法を使用して決定される。SORT1タンパク質を定量化するために使用され得る方法の非限定的例としては、SOMASCANアッセイ(例えば、Candia et al.(2017)Sci Rep 7,14248)、ウエスタンブロット、質量分析、フローサイトメトリー、及び酵素免疫測定法(ELISA)アッセイが挙げられる。ある特定の実施形態において、個体の末梢白血球または脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、ELISAアッセイを使用して決定される。ある特定の実施形態において、個体の末梢白血球または脳脊髄液中のSORT1タンパク質のレベルは、抗ソルチリン抗体特異的抗イディオタイプ抗体を用いたELISAアッセイを使用して決定される。
【0214】
抗ソルチリン抗体の薬物動態
いくつかの実施形態において、血漿中の抗ソルチリン抗体の半減期は、約5日、約6日、約7日、約8日、または約9日である。いくつかの実施形態では、血漿中の抗ソルチリン抗体の半減期は、約5日である。いくつかの実施形態では、血漿中の抗ソルチリン抗体の半減期は、約8日である。
【0215】
診断用途
本開示の単離された抗体(例えば、本明細書に記載の抗ソルチリン抗体)は、診断的有用性も有する。したがって、本開示は、個体におけるまたは個体由来の組織試料におけるソルチリンタンパク質の検出などの診断目的のために、本開示の抗体またはその機能的断片を使用する方法を提供する。
【0216】
いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態において、個体は、本開示の疾患、障害、または損傷を患っているか、または発症の危険性のあるヒト患者である。いくつかの実施形態において、診断方法は、生検試料、組織または細胞などの生体試料中のソルチリンタンパク質を検出することを伴う。本明細書に記載の抗ソルチリン抗体を生体試料に接触させ、抗原に結合した抗体を検出する。例えば、生検試料は、疾患関連細胞を検出及び/または定量するために、本明細書に記載の抗ソルチリン抗体で染色され得る。検出法は、抗原に結合した抗体の定量を含み得る。生体試料中の抗体検出は、免疫蛍光顕微鏡法、免疫細胞化学、免疫組織化学、ELISA、FACS分析、免疫沈降またはマイクロポジトロン放出断層撮影を含む、当該技術分野において既知の任意の方法で行うことができる。ある特定の実施形態において、抗体は、例えば、18Fで放射性標識され、その後、マイクロポジトロン放出断層撮影分析を利用して検出される。抗体結合はまた、ポジトロン放出断層撮影(PET)、X線コンピュータ断層撮影、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)及びコンピュータ体軸断層撮影(CAT)などの非侵襲性技法によって、個体において定量され得る。
【0217】
他の実施形態において、本開示の単離された抗体(例えば、本明細書に記載の抗ソルチリン抗体)は、前臨床疾患モデル(例えば、非ヒト疾患モデル)から採取した脳試料のミクログリアを検出及び/または定量するために使用することができる。したがって、本開示の単離された抗体(例えば、本明細書に記載の抗ソルチリン抗体)は、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、アテローム性動脈硬化性血管疾患、那須・ハコラ病または多発性硬化症などの神経系疾患または損傷のモデルにおける治療後の治療応答を対照と比較して評価するのに有用であり得る。
【0218】
ソルチリン抗体
本開示の特定の態様は、1つ以上の改善された及び/または強化された機能的特徴を含む抗ソルチリン抗体に関する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、WO2016164637に記載のとおり、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体、S-60と比較して、1つ以上の改善及び/または増強された機能的特徴を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗ソルチリン抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む対照抗ソルチリン抗体)の親和性よりも高いソルチリン(例えば、ヒトソルチリン)に対する親和性を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する対照抗ソルチリン抗体)より低い半最大有効濃度(EC50)より高い程度まで、ソルチリンの細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)を減少させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗ソルチリン抗体と比較して、ソルチリンの細胞表面レベルの最大の低下を改善する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗ソルチリン抗体と比較して、細胞外プログラニュリン(PGRN)の分泌を増加させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する対照抗ソルチリン抗体)より低い半最大有効濃度(EC50)より高い程度まで、ソルチリンに対するPGRNの結合を遮断する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗ソルチリン抗体と比較して、ソルチリンへのPGRNの結合の最大遮断を改善する。
【0219】
本明細書では、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗ソルチリン抗体と比較して、1つ以上の改善及び/または増強された機能的特徴を呈する異なるFc変異形を有する抗ソルチリン抗体も企図され、これの改善及び/または増強としては、半最大有効濃度(EC50)を低下させて、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させること、ソルチリンの細胞表面レベルの最大の低下を改善すること、PGRNの細胞外分泌を増加させること、半最大有効濃度(EC50)を低下させて、ソルチリンへのPGRNの結合を遮断すること、及びソルチリンへのPGRN結合の最大遮断を改善することが挙げられる。
【0220】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ヒト抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、多価抗体、コンジュゲート抗体、またはキメラ抗体である。
【0221】
好ましい実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体である。
【0222】
抗ソルチリン抗体重鎖及び軽鎖可変領域
A.重鎖HVR
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示すとおり)から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、または3つすべて)のHVRを含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示すとおり)を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、HVR-H1は、配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H2は、式I:TIYHSGSTYYNPSLX1S(配列番号4)による配列を含み、式中、X1は、KまたはEである。いくつかの実施形態では、HVR-H2は、配列番号2~3から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H3は、式II:ARQGSIX1QGYYGMDV(配列番号7)による配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H3は、配列番号5~6から選択される配列を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、HVR-H1は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H1は、置換(例えば、配列番号1のアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態において、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号1のHVR-H1アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態では、HVR-H2は、配列番号2~3から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H2は、置換(例えば、配列番号2~3から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号2~3から選択されるHVR-H2アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態では、HVR-H3は、配列番号5~6から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-H3は、置換(例えば、配列番号5~6から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号5~6から選択されるHVR-H3アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。
【0225】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、YSISSGYYWG(配列番号1)の配列を含むHVR-H1、式Iによる配列を含むHVR-H2、及び式IIによる配列を含むHVR-H3を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号1の配列を含むHVR-H1、配列番号2~3から選択される配列を含むHVR-H2、及び配列番号5~6から選択される配列を含むHVR-H3を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、S-60-24、またはそれらの任意の組み合わせのHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示すとおり)を含む。
【0228】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、以下のうちの1つ以上を含む:(a)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H1アミノ酸に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H2アミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H3アミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H3。
【0229】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む。
【0230】
B.軽鎖HVR
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3(表14~16に示すとおり)から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、または3つすべて)のHVRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3(表14~16に示すとおり)を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、HVR-L1は、式III:RSSQX1LLX2SX3GYNYLD(配列番号28)による配列を含み、式中、X1は、SまたはGであり、X2は、RまたはHであり、X3は、N、T、S、G、R、D、H、K、Q、Y、E、W、F、I、V、A、M、またはLである。いくつかの実施形態では、HVR-L1は、配列番号8~27から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-L1は、配列番号8~27から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-L1は、配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)、RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)、RSSQSLLRSSGYNYLD(配列番号10)、RSSQSLLRSGGYNYLD(配列番号11)、RSSQSLLRSRGYNYLD(配列番号12)、RSSQSLLRSDGYNYLD(配列番号13)、RSSQSLLRSHGYNYLD(配列番号14)、RSSQSLLRSKGYNYLD(配列番号15)、RSSQSLLRSQGYNYLD(配列番号16)、RSSQSLLRSYGYNYLD(配列番号17)、RSSQSLLRSEGYNYLD(配列番号18)、RSSQSLLRSWGYNYLD(配列番号19)、RSSQSLLRSFGYNYLD(配列番号20)、RSSQSLLRSIGYNYLD(配列番号21)、RSSQSLLRSVGYNYLD(配列番号22)、RSSQSLLRSAGYNYLD(配列番号23)、RSSQSLLRSMGYNYLD(配列番号24)、RSSQSLLRSLGYNYLD(配列番号25)、RSSQSLLHSNGYNYLD(配列番号26)、またはRSSQGLLRSNGYNYLD(配列番号27)を含む。1つの特定の実施形態では、HVR-L1は、配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含む。別の特定の実施形態では、HVR-L1は、配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)(表14に示すとおり)を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、HVR-L2は、式IV:LGSNRX1S(配列番号31)による配列を含み、式中、X1は、AまたはVである。いくつかの実施形態では、HVR-L2は、29~30から選択される配列を含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、HVR-L3は、式V:MQQQEX1PLT(配列番号34)による配列を含み、式中、X1は、AまたはTである。いくつかの実施形態では、HVR-L3は、配列番号32~33から選択される配列を含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、HVR-L1は、配列番号8~27から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-L1は、置換(例えば、配列番号8~27から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号8~27から選択されるHVR-L1アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態では、HVR-L2は、配列番号29~30から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-L2は、置換(例えば、配列番号29~30から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号29~30から選択されるHVR-L2アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。いくつかの実施形態では、HVR-L3は、配列番号32~33から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR-L3は、置換(例えば、配列番号32~33から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、または最大5のアミノ酸が、配列番号32~33から選択されるHVR-L3アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。
【0235】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、式IIIによる配列を含むHVR-L1、式IVによる配列を含むHVR-L2、及び式Vによる配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号8~27から選択される配列を含むHVR-L1、配列番号29~30から選択される配列を含むHVR-L2、及び配列番号32~33から選択される配列を含むHVR-L3を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、S-60-24、またはそれらの任意の組み合わせのHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3(表14~16に示すとおり)を含む。
【0237】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域は、以下のうちの1つ以上を含む:(a)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L1アミノ酸に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L2アミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L3アミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0238】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む。
【0240】
C.重鎖HVR及び軽鎖HVR
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示す)から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、または3つすべて)のHVRを含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3(表14~16に示す)から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、または3つすべて)のHVRを含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示す)を含み、軽鎖可変領域は、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む(表14~16に示す)を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、式Iによる配列を含むHVR-H2、及び式IIによる配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、式IIIによる配列を含むHVR-L1、式IVによる配列を含むHVR-L2、及び式Vによる配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号1の配列を含むHVR-H1、配列番号2~3から選択される配列を含むHVR-H2、及び配列番号5~6から選択される配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号8~27から選択される配列を含むHVR-L1、配列番号29~30から選択される配列を含むHVR-L2、及び配列番号32~33から選択される配列を含むHVR-L3を含む。
【0242】
いくつかの態様では、重鎖可変領域は、配列番号1の配列を含むHVR-H1、配列番号2~3から選択される配列を含むHVR-H2、及び配列番号5~6から選択される配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号8~27から選択される配列を含むHVR-L1、配列番号29~30から選択される配列を含むHVR-L2、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0243】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、S-60-24、またはそれらの任意の組み合わせのHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3(表11~13に示す)を含む重鎖可変領域、S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、S-60-24、またはこれらの任意の組み合わせのHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3(表14~16に示す)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0244】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、ならびにHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3(表11~16に示す)を含む。
【0245】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域と、を含み、ここで、重鎖可変領域は、以下のうちの1つ以上を含み:(a)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H1アミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H2アミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-H3アミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H3、を含み、軽鎖可変領域は、以下のうちの1つ以上を含む:(a)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L1アミノ酸に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L2アミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のHVR-L3アミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0246】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRVS(配列番号30)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLES(配列番号3)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0249】
いくつかの態様では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0250】
いくつかの態様では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0251】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0252】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLHSNGYNYLD(配列番号26)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQGLLRSNGYNYLD(配列番号27)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0254】
D.重鎖可変領域
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号54~56から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号54~56から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、置換(例えば、配列番号54~56から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、または最大10のアミノ酸が、配列番号54~56から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。
【0255】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号56のアミノ酸配列を含む。
【0256】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24の重鎖可変領域を含む(表25に示すとおり)。
【0257】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域を含む。
【0258】
E.軽鎖可変領域
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号57~80から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号57~80から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、置換(例えば、配列番号57~80から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、または最大10のアミノ酸が、配列番号57~80から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。
【0259】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号57のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0260】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24の軽鎖可変領域を含む(表26に示すとおり)。
【0261】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0263】
F.重鎖可変領域及び軽鎖可変領域
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号54~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号57~80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号54~56から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号57~80から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、置換(例えば、配列番号54~56から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、置換(例えば、配列番号57~80から選択されるアミノ酸配列に対する保存的置換、挿入、または欠失)を含むアミノ酸配列を含むが、依然としてソルチリンに結合する能力を保持している重鎖可変領域と、を含む。ある特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、または最大10のアミノ酸が、配列番号54~56から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失され、特定の実施形態では、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、または最大10のアミノ酸が、配列番号57~80から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列において置換、挿入、及び/または欠失されている。
【0264】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号54~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号57~58、60~78、及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンタンパク質に結合し、抗体としては、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号59のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号78のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域が挙げられる。
【0266】
一態様では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0267】
一態様では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号60のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24の重鎖可変領域(表25に示す)と、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24の軽鎖可変領域(表26に示す)と、を含む。
【0269】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号57及び60から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、S-60-15[N33(wt)]の重鎖可変領域(表25に示される)と、抗体S-60-15[N33(wt)]の軽鎖可変領域(表26に示される)と、を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、S-60-15.1[N33T]の重鎖可変領域(表25に示される)と、抗体S-60-15.1[N33T]の軽鎖可変領域(表26に示される)と、を含む。
【0270】
例示的抗ソルチリン抗体
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24から選択される抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗ソルチリンモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24から選択される抗体の重鎖及び軽鎖を含む抗ソルチリンモノクローナル抗体である。
【0271】
(1)S-60-10
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-10の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-10のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-10のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-10の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-10の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-10または配列番号54のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-10のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-10のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-10のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-10の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-10または配列番号57のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-10のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-10のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-10のHVR-L3アミノ酸配列。
【0272】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0273】
(2)S-60-11
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-11の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-11の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-11の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-11のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-11の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-11のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-11の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-11の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-11の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-11または配列番号54のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-11のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-11のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-11のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-11の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-11の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-11の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-11または配列番号58のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-11のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-11のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-11のHVR-L3アミノ酸配列。
【0274】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0275】
(3)S-60-12
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-12の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-12の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号59のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-12の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-12のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-12の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号59のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-12のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-12の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-12の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-12の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-12または配列番号54のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-12のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-12のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-12のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-12の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号59のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-12の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号59のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-12の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号59のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-12または配列番号59のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-12のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-12のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-12のHVR-L3アミノ酸配列。
【0276】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号94のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0277】
(4)S-60-13
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-13の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-13の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-13の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-13のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-13の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-13のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-13の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-13の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-13の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-13または配列番号55のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-13のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-13のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-13のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-13の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-13の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-13の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-13または配列番号57のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-13のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-13のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-13のHVR-L3アミノ酸配列。
【0278】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号88または配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号88または配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0279】
(5)S-60-14
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-14の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-14の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-14の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-14のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-14の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-14のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-14の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-14の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-14の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号55のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-14または配列番号55のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-14のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-14のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-14のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-14の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-14の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-14の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号58のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-14または配列番号58のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-14のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-14のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-14のHVR-L3アミノ酸配列。
【0280】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号88または配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号88または配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0281】
(6)S-60-15
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-15の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-15の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-15のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-15のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-15または配列番号56のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-15のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-15のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-15のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号57のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-15または配列番号57のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-15のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-15のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-15のHVR-L3アミノ酸配列。
【0282】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0283】
(7)S-60-15.1
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-15.1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-15.1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号60のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15.1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-15.1のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15.1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号60のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-15.1のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15.1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15.1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15.1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-15.1または配列番号56のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-15.1のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-15.1のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-15.1のHVR-H3アミノ酸。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-15.1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号60のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15.1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号60のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-15.1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号60のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-15.1または配列番号60のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-15.1のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-15.1のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-15.1のHVR-L3アミノ酸。
【0284】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0285】
(8)S-60-16
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-16の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-16の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号77のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-16の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-16のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-16の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号77のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-16のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-16の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-16の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-16の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-16または配列番号56のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-16のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-16のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-16のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-16の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号77のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-16の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号77のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-16の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号77のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-16または配列番号77のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-16のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-16のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-16のHVR-L3アミノ酸配列。
【0286】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0287】
(9)S-60-18
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-18の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-18の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号78のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-18の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-18のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-18の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号78のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-18のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-18の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-18の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-18の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-18または配列番号56のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-18のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-18のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-18のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-18の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号78のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-18の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号78のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-18の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号78のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-18または配列番号78のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-18のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-18のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-18のHVR-L3アミノ酸配列。
【0288】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号113のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号113のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0289】
(10)S-60-19
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-19の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-19の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号79のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-19の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-19のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-19の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号79のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-19のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-19の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-19の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-19の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号54のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-19または配列番号54のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-19のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-19のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-19のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-19の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号79のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-19の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号79のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-19の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号79のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-19または配列番号79のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-19のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-19のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-19のHVR-L3アミノ酸配列。
【0290】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号114のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号86または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号114のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0291】
(11)S-60-24
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインと、を含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-24の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;及び/または軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-24の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号80のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-24の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、抗体S-60-24のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-24の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号80のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、抗体S-60-24のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-24の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-24の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-24の重鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号56のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-24または配列番号56のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-24のHVR-H1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-24のHVR-H2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-24のHVR-H3アミノ酸配列。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-24の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号80のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、置換(例えば、参照配列に対して、保存的置換、挿入、または欠失)を含むが、その配列を含む抗ソルチリン抗体は、ソルチリンに結合する能力を保持している。ある特定の実施形態では、抗体S-60-24の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号80のアミノ酸配列において、合計1~10のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、抗体S-60-24の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列または配列番号80のアミノ酸配列において、合計1~5のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR領域)で起こる。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、FR領域で起こる。任意により、抗ソルチリン抗体は、その配列の翻訳後修飾など、抗体S-60-24または配列番号80のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、以下から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む:(a)抗体S-60-24のHVR-L1アミノ酸配列、(b)抗体S-60-24のHVR-L2アミノ酸配列、及び(c)抗体S-60-24のHVR-L3アミノ酸配列。
【0292】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0293】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-16、S-60-18、S-60-19、及びS-60-24からなる群から選択される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗体と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する。
【0294】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-10である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-10と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-10の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-10の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-10の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0295】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-11である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-11と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-11の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-11の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-11の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0296】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-12である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-12と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-12の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-12の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-12の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0297】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-13である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-13と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-13の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-13の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-13の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0298】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-14である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-14と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-14の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-14の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-14の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0299】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-15である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-15と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0300】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-15.1である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-15.1と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15.1の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15.1の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-15.1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0301】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-16である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-16と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-16の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-16の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-16の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0302】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-18である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-18と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-18の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-18の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-18の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0303】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-19である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-19と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-19の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-19の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-19の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0304】
いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、抗ソルチリンモノクローナル抗体S-60-24である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、S-60-24と本質的に同じソルチリンエピトープに結合する単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-24の重鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-24の軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、モノクローナル抗体S-60-24の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された抗体である。
【0305】
ある特定の実施形態では、抗ソルチリン抗体は、アンタゴニスト抗体である。ある特定の実施形態では、抗ソルチリン抗体は、アゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、IgGクラスのものであり、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する。
【0306】
追加の抗ソルチリン抗体、例えば、本開示のソルチリンタンパク質に特異的に結合する抗体は、当技術分野で知られている様々なアッセイによって、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性について同定し得、スクリーニングし得、及び/または特徴を明らかにし得る。
【0307】
本開示の特定の態様は、一緒に利用された場合、対応する単一の抗ソルチリン抗体を使用した場合と比較して、相加的または相乗的効果を示す2つ以上の抗ソルチリン抗体の使用に関する。
【0308】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ヒトソルチリンタンパク質に結合する抗体断片である。
【0309】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ヒトソルチリン、ヒトソルチリンの天然に存在する変異形、及びヒトソルチリンの疾患変異形からなる群から選択される1つ以上のヒトタンパク質に結合する抗体断片である。
【0310】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体断片であり、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、またはscFv断片である。
【0311】
抗体フレームワーク
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、VH FR1、VH FR2、VH FR3、及びVH FR4から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つすべて)のフレームワーク領域を含む重鎖可変領域を含む(表17~20を参照)。いくつかの実施形態において、VH FR1は、配列QVQLQESGPGLVKPSETLSL TCAVSG(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態において、VH FR2は、配列WIRQPPGKGLEWIG(配列番号36)を含む。いくつかの実施形態では、VH FR3は、式VI:X1VTISVDTSKNQFSLX2LSSVTAADTAVYYC(配列番号39)の配列を含み、式中、X1は、QまたはRであり、X2は、EまたはKである。いくつかの実施形態では、VH FR3は、配列番号37~38からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH FR4は、配列WGQGTTVTVSS(配列番号40)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号35の配列を含むVH FR1、配列番号36の配列を含むVH FR2、式VIのVH FR3、及び配列番号40の配列を含むVH FR4を含む重鎖可変領域を含む。
【0312】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号35の配列を含むVH FR1、配列番号36の配列を含むVH FR2、配列番号37~38から選択される配列を含むVH FR3、及び配列番号40の配列を含むVH FR4を含む重鎖可変領域を含む。
【0313】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のVH FR1、VH FR2、VH FR3、及びVH FR4を含む重鎖可変領域(表17~20に示す)を含む。
【0314】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、VL FR1、VL FR2、VL FR3、及びVL FR4から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つすべて)のフレームワーク領域を含む軽鎖可変領域を含む(表21~24に示す)。いくつかの実施形態では、VL FR1は、式VII:DIVMTQSPLSLPVTPGX1X2ASISC(配列番号44)の配列を含み、式中、X1は、EまたはGであり、X2は、PまたはSである。いくつかの実施形態では、VL FR1は、配列番号41~43からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VL FR2は、式VIII:WYLQKPGQX1PQLLIY(配列番号47)による配列を含み、式中、X1は、SまたはPである。いくつかの実施形態では、VL FR2は、配列番号45~46からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VL FR3は、式IX:GVPDRX1SGSGSGT DFTLKISRX2EAEDVGX3YYC(配列番号52)の配列を含み、式中、X1は、FまたはLであり、X2は、AまたはVであり、X3は、VまたはAである。いくつかの実施形態では、VL FR3は、配列番号48~51からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VL FR4は、配列FGGGTKVEIK(配列番号53)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、式VIIによる配列を含むVL FR1、式VIIIによる配列を含むVL FR2、式IXによる配列を含むVL FR3、及び配列番号53の配列を含むVL FR4を含む軽鎖可変領域を含む。
【0315】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号41~43から選択される配列を含むVL FR1、配列番号45~46から選択される配列を含むVL FR2、配列番号48~51から選択される配列を含むVL FR3、及び配列番号53の配列を含むVL FR4を含む軽鎖可変領域を含む。
【0316】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のVL FR1、VL FR2、VL FR3、及びVL FR4を含む軽鎖可変領域(表21~24に示す)を含む。
【0317】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、VH FR1、VH FR2、VH FR3、及びVH FR4から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つすべて)のフレームワーク領域を含む重鎖可変領域(表17~20に示す)、ならびにVL FR1、VL FR2、VL FR3、及びVL FR4から選択される1つ以上(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つすべて)のフレームワーク領域を含む軽鎖可変領域(表21~24に示す)を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、
【0318】
配列番号35の配列を含むaVH FR1、配列番号36の配列を含むVH FR2、式VIによるVH FR3、及び配列番号40の配列を含むVH FR4を含む重鎖可変領域と、式VIIによる配列を含むVL FR1、式VIIIによる配列を含むVL FR2、式IXによる配列を含むVL FR3、及び配列番号53の配列を含むVL FR4を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、配列番号35の配列を含むVH FR1、配列番号36の配列を含むVH FR2、配列番号37~38から選択される配列を含むVH FR3、配列番号40を含むVH FR4を含む重鎖可変領域と、配列番号41~43から選択される配列を含むVL FR1、配列番号45~46から選択される配列を含むVL FR2、配列番号48~51から選択される配列を含むVL FR3、及び配列番号53の配列を含むVL FR4を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0319】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33 (wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のVH FR1、VH FR2、VH FR3、及びVH FR4を含む重鎖可変領域(表17~20に示す)と、抗体S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、またはS-60-24のVL FR1、VL FR2、VL FR3、及びVL FR4を含む軽鎖可変領域(表21~24に示す)と、を含む。
【0320】
抗ソルチリン抗体活性
抗ソルチリン抗体のいずれかの特定の態様において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンタンパク質の1つ以上の活性を阻害する、例えば、限定されないが、ソルチリンの細胞レベルの低下(例えば、ソルチリンの細胞表面レベル、ソルチリンの細胞内レベル、及び/またはソルチリンの総レベル)、プログラニュリンレベルの増加(例えば、プログラニュリンの細胞外レベル及び/またはプログラニュリンの細胞レベル)など;かつプログラニュリンとソルチリンの間の相互作用(例えば、結合)を阻害する。本明細書で企図されるとおり、本開示の抗ソルチリン抗体は、これに限定されないが、本開示のプロニューロトロフィン(プロニューロトロフィン-3、プロニューロトロフィン-4/5、pro-NGF、pro-BDNFなど)、本開示のニューロトロフィン(ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、NGF、BDNF、など)、ニューロテンシン、p75、ソルチリンプロペプチド(Sort-pro)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Aベータペプチド、リポタンパク質リパーゼ(LpL)、アポリポタンパク質AV(APOA5)、アポリポプロテインE(APOE)、及び受容体関連タンパク質(RAP)のうちの1つ以上との相互作用(例えば、結合)の阻害、PCSK9の分泌を減少、ベータアミロイドペプチドの産生の減少など、ソルチリンタンパク質の活性を阻害し得る。
【0321】
ある特定の実施形態において、本開示は、抗ソルチリン抗体を提供し、(a)抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンの細胞外レベルを増加させる、ソルチリンの細胞レベルを減少させる、ソルチリンとプログラニュリンの間の相互作用を阻害する、またはそれらの任意の組み合わせ;(b)抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させる、プログラニュリンの細胞外レベルを増加させる、ソルチリンとプログラニュリンの間の相互作用を阻害する、またはそれらの任意の組み合わせ;(c)抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させる、ソルチリンの細胞内レベルを低下させる、ソルチリンの総レベルを低下させる、またはそれらの任意の組み合わせ;(d)抗ソルチリン抗体は、ソルチリン分解、ソルチリン切断、ソルチリン内在化、ソルチリンの下方制御、またはそれらの任意の組み合わせを誘導する;(e)抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの細胞レベルを低下させる、ソルチリンとプログラニュリンの間の相互作用を阻害する;(f)抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの細胞レベルを低下させる、プログラニュリンの細胞レベルを増加させる;及び/または(g)抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンの有効濃度を増加させる。
【0322】
ある特定の実施形態において、本開示は、抗ソルチリン抗体を提供し、抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの細胞表面レベルを減少させ、プログラニュリンの細胞外レベルを増加させ、ソルチリンとプログラニュリンとの間の相互作用を阻害する、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0323】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、(a)フローサイトメトリーで測定したときに、150pM未満である半最大有効濃度(EC50)で、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させる;(b)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、ソルチリンの細胞表面レベルを、1.25nM IgGで約50%超、0.63nM IgGで約80%超、または150nM IgGで約69%超低下させる;フローサイトメトリーで測定したとき、標準的なELISAで測定したとき、プログラニュリン分泌を、0.63nM IgGで対照の約1.13倍超、または50nM IgGで対照の約1.22倍超増加させる;フローサイトメトリーで測定したとき、0.325nM未満の半最大有効濃度(EC50)で、プログラニュリンのソルチリンへの結合を遮断する;(e)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、プログラニュリンのソルチリンへの結合を50nM IgGで約88%超、または150nM IgGで約27.5%超遮断する;または(f)それらの任意の組み合わせである。
【0324】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、(a)フローサイトメトリーで測定したとき、681pM未満である半最大有効濃度(EC50)で、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させる;(b)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、ソルチリンの細胞表面レベルを、1.25nM IgGで約40%超、0.6nM IgGで約29%超、または150nM IgGで約62%超低下させる;(c)標準的なELISAで測定したとき、プログラニュリン分泌を、0.63nM IgGで対照の約1.11倍超、または50nM IgGで対照の約1.75倍超増加させる;(d)フローサイトメトリーで測定したとき、0.751nM未満の半最大有効濃度(EC50)で、プログラニュリンのソルチリンへの結合を遮断する;(e)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、プログラニュリンのソルチリンへの結合を50nM IgGで約90%超、または150nM IgGで約95%超遮断する;または(f)それらの任意の組み合わせである。
【0325】
ソルチリンレベルの減少
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、細胞の表面上に発現される本開示のソルチリンタンパク質に結合し、表面に発現したソルチリンタンパク質に結合した後、本開示の1つ以上のソルチリン活性を調節する(例えば、誘導または阻害する)。
【0326】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、in vitroでソルチリンの細胞レベルを減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、in vivoで(例えば、個体の脳及び/または末梢器官において)ソルチリンの細胞レベルを減少させ得る。いくつかの実施形態では、ソルチリンの細胞レベルの減少は、ソルチリンの細胞表面レベルの減少を含む。本明細書で使用されるとき、抗ソルチリン抗体は、飽和抗体濃度(例えば、0.6nM、0.63nM、1.25nM、50nM、または150nM)で、及び/または対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、本明細書に記載されているかまたは当技術分野において知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは好適なin vivoモデルによって測定されるソルチリンの細胞表面レベルの減少を誘導する場合、ソルチリンの細胞表面レベルを減少させる。いくつかの実施形態では、ソルチリンの細胞レベルの減少は、ソルチリンの細胞内レベルの減少を含む。本明細書で企図されるとおり、抗ソルチリン抗体は、飽和抗体濃度で、及び/または対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、本明細書に記載されているかまたは当技術分野において知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは好適なin vivoモデルによって測定されるソルチリンの細胞内レベルの減少を誘導する場合、ソルチリンの細胞内レベルを減少させる。いくつかの実施形態では、ソルチリンの細胞レベルの減少は、ソルチリンの総レベルの減少を含む。本明細書で企図されるとおり、抗ソルチリン抗体は、飽和抗体濃度で、及び/または対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、本明細書に記載されているかまたは当技術分野において知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは好適なin vivoモデルによって測定されるソルチリンの総レベルの減少を誘導する場合、ソルチリンの総レベルを減少させる。
【0327】
本明細書で使用される場合、ソルチリンのレベルは、ソルチリンをコードする遺伝子の発現レベル;ソルチリンをコードする1つ以上の転写産物の発現レベル;ソルチリンタンパク質の発現レベル;及び/または細胞内及び/または細胞表面に存在するソルチリンタンパク質の量を指し得る。遺伝子発現、転写、翻訳、及び/またはタンパク質の存在量または局在化のレベルを測定するための当技術分野で知られている任意の方法を使用して、ソルチリンのレベルを決定することができる。
【0328】
ソルチリンの細胞レベルは、限定されないが、ソルチリンの細胞表面レベル、ソルチリンの細胞内レベル、及びソルチリンの総レベルを指し得る。いくつかの実施形態では、ソルチリンの細胞レベルの減少は、ソルチリンの細胞表面レベルの減少を含む。いくつかの実施形態では、ソルチリンの細胞レベル(例えば、ソルチリンの細胞表面レベル)を減少させる本開示の抗ソルチリン抗体は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:(1)1つ以上のソルチリン活性を阻害するかまたは低減させること;(2)ソルチリンの1つ以上のリガンドへの結合を阻害するかまたは低減させる能力;(3)ソルチリン発現細胞におけるソルチリン発現を減少させる能力;(4)ソルチリンタンパク質と相互作用するか、結合するか、または認識する能力;(5)ソルチリンタンパク質と特異的に相互作用するかまたは結合する能力;及び(6)本明細書に記載されているかまたは企図されている疾患または障害の任意の態様を治療するか、改善するか、または予防する能力。
【0329】
いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの下方制御を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの切断を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの内在化を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの脱落を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの分解を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの脱感作を誘導する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、ソルチリンを一時的に活性化するためのリガンド模倣物として作用する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの細胞レベルの減少及び/またはソルチリンと1つ以上のソルチリンリガンドとの間の相互作用(例えば、結合)の阻害を誘導する前に、ソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの分解を誘導する前にソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの切断を誘導する前にソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの内在化を誘導する前に、ソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの脱落を誘導する前にソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリン発現の下方制御を誘導する前にソルチリンを一時的に活性化する。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗ソルチリン抗体は、リガンド模倣物として作用し、ソルチリンの脱感作を誘導する前にソルチリンを一時的に活性化する。
【0330】
ある特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリン分解を誘導することにより、ソルチリンの細胞レベル(例えば、ソルチリンの細胞表面レベル、ソルチリンの細胞内レベル、及び/またはソルチリンの総レベル)を減少させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンの分解を誘導する。
【0331】
本開示の抗ソルチリン抗体は、ピコモル範囲の半最大有効濃度(EC50)(例えば、in vitroで測定された場合)でソルチリンの細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)を減少させ得る。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約680.9pM未満である。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約72.58pM~約680.9nMである。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約103.6pM~約680.9nMである。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、1pM、または0.5pM未満である。
【0332】
いくつかの実施形態では、抗体のEC50は、約675pM、650pM、625pM、600pM、575pM、550pM、525pM、500pM、475pM、450pM、425pM、400pM、375pM、350pM、325pM、300pM、275pM、250pM、225pM、200pM、175pM、150pM、125pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pM、3pM、2pM、1pM、または0.5pM以下である。
【0333】
いくつかの実施形態では、抗体のEC50は、約680.9pM未満である。いくつかの実施形態では、抗体のEC50は、約0.1pM、0.5pM、1pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、125pM、150pM、175pM、200pM、225pM、250pM、275pM、300pM、325pM、350pM、375pM、400pM、425pM、450pM、475pM、500pM、525pM、550pM、575pM、600pM、625pM、650pM、675pM以上である。すなわち、抗体のEC50は、約675pM、650nM、650pM、625pM、600pM、575pM、550pM、525pM、500pM、475pM、450pM、425pM、400pM、375pM、350pM、325pM、300pM、275pM、250pM、225pM、200pM、175pM、150pM、125pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、1pM、または0.5pMの上限を有し、約0.1pM、0.5pM、1pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、125pM、150pM、175pM、200pM、225pM、250pM、275pM、300pM、325pM、350pM、375pM、400pM、425pM、450pM、475pM、500pM、525pM、550pM、575pM、600pM、625pM、650pM、または675pMの下限から独立して選択された範囲のいずれかであり得、ここで、下限は上限よりも小さい。いくつかの実施形態では、抗体のEC50は、約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、15pM、20pM、25pM、30pM、35pM、40pM、45pM、50pM、55pM、60pM、65pM、70pM、75pM、80pM、85pM、90pM、95pM、100pM、105pM、110pM、115pM、120pM、125pM、130pM、135pM、140pM、145pM、150pM、155pM、160pM、165pM、170pM、175pM、180pM、185pM、190pM、195pM、または200pMのいずれかである。
【0334】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、150pM未満である半最大有効濃度(EC50)でソルチリンの細胞表面レベルを低下させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約103.6pMである。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約72.58pMである。
【0335】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、ソルチリンの細胞表面レベルを、1.25nM IgGで約40%超、または0.63nM IgGで約80%超低下させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、1.25nM IgGでソルチリンの細胞表面レベルを約60.92%低下させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、150nM IgGでソルチリンの細胞表面レベルを約69.3%低下させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定されるとおり、150nM IgGでソルチリンの細胞表面レベルを約70.3%低下させる。
【0336】
抗体EC50値を測定する様々な方法は、例えば、フローサイトメトリーによるものなど、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態では、EC50は、ヒトソルチリンを発現するように操作された細胞を使用してin vitroで測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約4℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約25℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約35℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約37℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、一価抗体(例えば、Fab)または一価形態の全長抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態では、EC50は、Fc受容体結合の増強を示す定常領域を含む抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態では、EC50は、Fc受容体結合の低減を示す定常領域を含む抗体を使用して決定される。
【0337】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させるより高い効力を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも低いEC50(例えば、in vitroで測定)でソルチリンの細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)のEC50よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%低いEC50でソルチリンの細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)のEC50の少なくとも少なくとも約1分の1、少なくとも約1.1分の1、少なくとも約1.5分の1、少なくとも約2分の1、少なくとも約3分の1、少なくとも約4分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約6分の1、少なくとも約7分の1、少なくとも約8分の1、少なくとも約9分の1、少なくとも約10分の1、少なくとも約12.5分の1、少なくとも約15分の1、少なくとも約17.5分の1、少なくとも約20分の1、少なくとも約22.5分の1、少なくとも約25分の1、少なくとも約27.5分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約50分の1、または少なくとも約100分の1であるEC50でソルチリンの細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)を減少させる。
【0338】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも1.5分の1であるEC50を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも1.1分の1であるEC50を有する。
【0339】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、(a)フローサイトメトリーで測定したとき、681pM未満である半最大有効濃度(EC50)で、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させる;(b)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、ソルチリンの細胞表面レベルを、1.25nM IgGで約40%超、0.6nM IgGで約29%超、または150nM IgGで約62%超低下させる;(c)標準的なELISAで測定したとき、プログラニュリン分泌を、0.63nM IgGで対照の約1.11倍超、または50nM IgGで対照の約1.75倍超増加させる;(d)フローサイトメトリーで測定したとき、0.751nM未満の半最大有効濃度(EC50)で、プログラニュリンのソルチリンへの結合を遮断する;(e)フローサイトメトリーで測定したとき、対照と比較して、プログラニュリンのソルチリンへの結合を50nM IgGで約90%超、または150nM IgGで約95%超遮断する;または(f)それらの任意の組み合わせである。
【0340】
プログラニュリンレベルの増加
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、in vitroでプログラニュリンの細胞外レベルを増加させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンの細胞レベルまたはin vivo(例えば、個体の脳、血液、及び/または末梢器官において)を増加させ得る。本明細書で使用されるとき、抗ソルチリン抗体は、飽和抗体濃度(例えば、0.6nM、0.63nM、1.25nM、50nMまたは150nM)で、及び/または対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、本明細書に記載されているかまたは当技術分野において知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは組織ベース(脳組織ベースなど)のアッセイによって測定したときに、プログラニュリンの細胞外レベルの増加を誘導する場合、プログラニュリンの細胞外レベルを増加させる。本明細書で企図されるとおり、抗ソルチリン抗体は、飽和抗体濃度(例えば、0.6nM、0.63nM、1.25nM、50nMまたは150nM)で、及び/または対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、本明細書に記載されているかまたは当技術分野において知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは組織ベース(脳組織ベースなど)のアッセイによって測定したときに、プログラニュリンの細胞レベルの増加を誘導する場合、プログラニュリンの細胞レベルを増加させる。
【0341】
本明細書で使用される場合、プログラニュリンのレベルは、プログラニュリンをコードする遺伝子の発現レベル;プログラニュリンをコードする1つ以上の転写産物の発現レベル、プログラニュリンタンパク質の発現レベル;及び/または細胞から分泌される及び/または細胞内に存在するプログラニュリンタンパク質の量を指し得る。遺伝子発現、転写、翻訳、タンパク質存在量、タンパク質分泌、及び/またはタンパク質局在化のレベルを測定するための当技術分野で知られている任意の方法を使用して、プログラニュリンのレベルを決定することができる。
【0342】
本明細書で使用される場合、プログラニュリンレベルは、限定されないが、プログラニュリンの細胞外レベル、プログラニュリンの細胞内レベル、及びプログラニュリンの総レベルを指し得る。いくつかの実施形態において、プログラニュリンのレベルの増加は、プログラニュリンの細胞外レベルの増加を含む。
【0343】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、標準的ELISAによって測定したときに、0.63nM IgGで、対照よりも約1.11倍超プログラニュリン分泌を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、標準的ELISAによって測定したときに、0.63nM IgGで、対照よりも約1.42倍プログラニュリン分泌を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、標準的ELISAによって測定したときに、50nM IgGで、対照よりも約1.75倍超プログラニュリン分泌を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、標準的ELISAによって測定したときに、50nM IgGで、対照よりも約1.97倍プログラニュリン分泌を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、標準的ELISAによって測定したときに、50nM IgGで、対照よりも約2.29倍以上プログラニュリン分泌を増加させる。
【0344】
プログラニュリン分泌を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、例えば、ELISAによるものも含まれる。いくつかの実施形態において、EC50は、ヒトソルチリンを発現する細胞を使用して、in vitroで測定される。いくつかの実施形態において、プログラニュリン分泌は、一価抗体(例えば、Fab)または一価形態の全長抗体を使用して判定される。いくつかの実施形態において、プログラニュリン分泌は、Fc受容体結合の増強を示す定常領域を含む抗体を使用して判定する。いくつかの実施形態において、プログラニュリン分泌は、Fc受容体結合の低下を示す定常領域を含む抗体を使用して判定する。
【0345】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、プログラニュリンのレベルを増加させるより高い効力を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも低いEC50(例えば、in vitroで測定)でプログラニュリンのレベル(例えば、細胞外レベル)を増加させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%、プログラニュリンのレベル(例えば、細胞外レベル)を増加させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)のEC50の少なくとも約1分の1、少なくとも約1.1分の1、少なくとも約1.5分の1、少なくとも約2分の1、少なくとも約3分の1、少なくとも約4分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約6分の1、少なくとも約7分の1、少なくとも約8分の1、少なくとも約9分の1、少なくとも約10分の1、少なくとも約12.5分の1、少なくとも約15分の1、少なくとも約17.5分の1、少なくとも約20分の1、少なくとも約22.5分の1、少なくとも約25分の1、少なくとも約27.5分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約50分の1、または少なくとも約100分の1であるEC50でソルチリンのレベル(例えば、細胞外レベル)を減少させる。
【0346】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンレベルを対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも約1.1倍増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンレベルを対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも約1.3倍増加させる。
【0347】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、プログラニュリンの有効濃度を増加させる。プログラニュリンの有効濃度とは、血漿または脳脊髄液中のプログラニュリンの濃度を指す。いくつかの実施形態において、プログラニュリンの有効濃度の増加は、1.5倍を超える増加である。いくつかの実施形態において、プログラニュリンの有効濃度は、7~28日間増加する。
【0348】
ソルチリンとプログラニュリンと間の相互作用の減少
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンとプログラニュリンとの間の相互作用(例えば、結合)を遮断(例えば、阻害)しながら、プログラニュリンレベルを増加させ、及び/またはソルチリンの細胞レベルを減少させる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンとプログラニュリンとの間の相互作用(例えば、結合)を遮断する。本明細書で使用される場合、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で知られている任意のin vitroまたは細胞ベースの培養アッセイにおいて、飽和抗体濃度(例えば、0.6nM、0.63nM、1.25nM、50nMまたは150nM)で、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させる場合、抗ソルチリン抗体は、ソルチリンとプログラニュリンとの間の相互作用(例えば、結合)を遮断する。
【0349】
本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリンへのプログラニュリンの結合を、ピコモル範囲の半最大有効濃度(EC50)(例えば、in vitroで測定した場合)で減少させ得る。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約2.2nM未満である。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約1.22nM未満である。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約751pM未満である。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約325pM~約751nMである。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約405pM~約751nMである。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約588pM~約751nMである。ある特定の実施形態では、抗体のEC50は、約2.2nM、2.1nM、2.0nM、1.9nM、1.8nM、1.7nM、1.6nM、1.5nM、1.4nM、1.3nM、1.2nM、1.1nM、1.0nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、1pM、または0.5pM未満である。
【0350】
いくつかの実施形態において、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させるための抗体のEC50は、約2.2nM、2.1nM、2.0nM、1.9nM、1.8nM、1.7nM、1.6nM、1.5nM、1.4nM、1.3nM、1.2nM、1.1nM、1.0nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、475pM、450pM、425pM、400pM、375pM、350pM、325pM、300pM、275pM、250pM、225pM、200pM、175pM、150pM、125pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pM、3pM、2pM、1pM、または0.5pM以下である。
【0351】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約1.22nMである。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約588pMである。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約405pMである。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のEC50は、約325pMである。
【0352】
抗体EC50値を測定する様々な方法は、例えば、フローサイトメトリーによるものなど、当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させるためのEC50は、ヒトソルチリンを発現する細胞を使用してin vitroで測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約4℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約25℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約35℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、EC50は、約37℃の温度で測定される。いくつかの実施形態では、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させるためのEC50は、一価抗体(例えば、Fab)または一価形態の全長抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態では、EC50は、Fc受容体結合の増強を示す定常領域を含む抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態では、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させるためのEC50は、Fc受容体結合の減少を示す定常領域を含む抗体を使用して決定される。
【0353】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)と比較して、ソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させるより高い効力を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)よりも低いEC50(例えば、in vitroで測定)でソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)のEC50よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%低いEC50でソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)のEC50の少なくとも約1分の1、少なくとも約1.1分の1、少なくとも約1.5分の1、少なくとも約2分の1、少なくとも約3分の1、少なくとも約4分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約6分の1、少なくとも約7分の1、少なくとも約8分の1、少なくとも約9分の1、少なくとも約10分の1、少なくとも約12.5分の1、少なくとも約15分の1、少なくとも約17.5分の1、少なくとも約20分の1、少なくとも約22.5分の1、少なくとも約25分の1、少なくとも約27.5分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約50分の1、または少なくとも約100分の1であるEC50(例えば、in vitroで測定)でソルチリンへのプログラニュリン結合を減少させる。
【0354】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも1.3分の1であるEC50を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも1.8分の1であるEC50を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも1.9分の1であるEC50を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体)の少なくとも2.3分の1であるEC50を有する。
【0355】
本明細書に記載されるかまたは当技術分野で知られている任意のin vitro細胞ベースのアッセイまたは好適なin vivoモデルを使用して、ソルチリンと1つ以上のソルチリンリガンドとの間の相互作用(例えば、結合)の阻害または減少が測定され得る。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、ソルチリン発現を減少させることにより(例えば、ソルチリンの細胞表面レベルを低下させることにより)、ソルチリンと1つ以上のソルチリンリガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害するかまたは減少させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で知られている任意のin vitroアッセイまたは細胞ベースの培養アッセイを使用して、飽和抗体濃度で、ソルチリンと1つ以上のソルチリンリガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上、阻害するかまたは減少させる。
【0356】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定したときに、ソルチリンへのプログラニュリンの結合を、50nM IgGで約90%超、または150nM IgGで約96%超、遮断する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定したときに、ソルトリンへのプログラニュリンの結合を、50nM IgGで約90.74%遮断する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定したときに、ソルトリンへのプログラニュリンの結合を、150nM IgGで約96.5%遮断する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、フローサイトメトリーによって測定したときに、ソルトリンへのプログラニュリンの結合を、150nM IgGで約96.9%遮断する。
【0357】
炎症促進性メディエータの発現の減少
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、細胞内で発現されるソルチリンタンパク質に結合した後、炎症促進性メディエータの発現を減少させ得る。
【0358】
本明細書で使用される場合、炎症促進性メディエータは、炎症応答を誘導、活性化、促進、またはさもなければ減少させるメカニズムに直接的または間接的に(例えば、炎症促進性シグナル伝達経路を介して)関与するタンパク質である。炎症促進性メディエータを同定し、特徴を明らかにするための当技術分野で知られている任意の方法を使用することができる。
【0359】
炎症促進性メディエータの例としては、限定されないが、サイトカイン、例えば、タイプI及びIIインターフェロン、IL-6、IL12p70、IL12p40、IL-1β、TNF-α、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、IL-33、LIF、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、及びCRPが挙げられる。炎症促進性メディエータの更なる例としては、限定されないが、ケモカイン、例えば、CXCL1、CCL2、CCL3、CCL4及びCCL5が挙げられる。
【0360】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、炎症促進性メディエータ、IL-6、IL12p70、IL12p40、IL-1β、TNF-α、CXCL1、CCL2、CCL3、CCL4及びCCL5の機能的発現及び/または分泌を減少させ得る。ある特定の実施形態において、炎症促進性メディエータの発現の減少は、マクロファージ、樹状細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリア細胞において起こる。発現の減少には、限定されないが、遺伝子発現の減少、転写発現の減少、またはタンパク質発現の減少が含まれる。遺伝子、転写物(例えば、mRNA)、及び/またはタンパク質発現を決定するための当技術分野で知られている任意の方法を使用することができる。例えば、ノーザンブロット分析を使用して、炎症促進性メディエータ遺伝子発現レベルを決定することができ、RT-PCRを使用して、炎症促進性メディエータ転写のレベルを決定することができ、ウエスタンブロット分析を使用して、炎症促進性メディエータタンパク質のレベルを決定することができる。
【0361】
本明細書で使用される場合、本開示のアゴニスト抗ソルチリン抗体など、ソルチリン剤で治療された対象の1つ以上の細胞中における発現が、アゴニスト抗ソルチリン抗体で治療されていない対応する対象の1つ以上の細胞中で発現する同じ炎症促進性メディエータの発現よりも多い場合、炎症促進性メディエータは、発現が減少している可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、例えば、抗ソルチリン抗体で治療されていない対応する対象の1つ以上の細胞中での炎症促進性メディエータと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%、対象の1つ以上の細胞中の炎症促進性メディエータの発現を減少させ得る。他の実施形態では、抗ソルチリン抗体は、例えば、抗ソルチリン抗体で治療されていない対応する対象の1つ以上の細胞中での炎症促進性メディエータと比較して、少なくとも1.5分の1、少なくとも1.6分の1、少なくとも1.7分の1、少なくとも1.8分の1、少なくとも1.9分の1、少なくとも2.0分の1、少なくとも2.1分の1、少なくとも2.15分の1、少なくとも2.2分の1、少なくとも2.25分の1、少なくとも2.3分の1、少なくとも2.35分の1、少なくとも2.4分の1、少なくとも2.45分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも2.55分の1、少なくとも3.0分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4.0分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5.0分の1、少なくとも5.5分の1、少なくとも6.0分の1、少なくとも6.5分の1、少なくとも7.0分の1、少なくとも7.5分の1、少なくとも8.0分の1、少なくとも8.5分の1、少なくとも9.0分の1、少なくとも9.5分の1、または少なくとも10分の1、対象の1つ以上の細胞中での炎症促進性メディエータの発現を減少させ得る。
【0362】
いくつかの実施形態において、上記の実施形態のいずれかによる抗ソルチリン抗体は、以下のセクション1~7に記載されるように、単独でまたは組み合わせて、特徴のいずれかを組み込むことができる。
【0363】
(1)抗ソルチリン抗体結合親和性
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0364】
本開示の抗ソルチリン抗体は、標的抗原(例えば、ヒトソルチリンまたは哺乳動物ソルチリン)に対してナノモルまたはピコモルもの親和性を有し得る。ある特定の実施形態において、標的抗原(例えば、ヒトソルチリンまたは哺乳動物ソルチリン)に対する本開示の抗ソルチリン抗体の結合親和性は、解離定数KDによって測定される。解離定数は、任意の生化学的または生物物理学的手法など、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、酵素免疫測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBioによるOctet Systemを参照)、メソスケールディスカバリー(例えば、MSD-SETを参照)、等温滴定カロリメトリー(ITC)、示差走査熱量測定(DSC)、円二色性(CD)、ストップトフロー分析、及び比色分析もしくは蛍光タンパク質融解分析;または細胞結合アッセイなど、あらゆる分析技術によって決定され得る。いくつかの実施形態では、ソルチリンのKDは、約25℃の温度で決定される。いくつかの実施形態において、解離定数(KD)は、例えば、FACSまたはバイオレイヤー干渉法アッセイを利用して、4℃または室温で測定され得る。
【0365】
いくつかの実施形態では、ソルチリンのKDは、約4℃の温度で決定される。いくつかの実施形態では、KDは、一価抗体(例えば、Fab)または一価形態の全長抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態において、KDは、二価抗体及び単量体組換えソルチリンタンパク質を使用して決定される。
【0366】
ある特定の実施形態において、ヒトソルチリン、哺乳動物ソルチリン、またはその両方に対する本開示の抗ソルチリン抗体のKDは、本明細書に記載のとおりFACSを使用して測定される。ある特定の実施形態において、ヒトソルチリン、哺乳動物ソルチリン、またはその両方に対する本開示の抗ソルチリン抗体のKDは、本明細書に記載のとおりバイオレイヤー干渉法を使用して測定される。
【0367】
いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、配列番号56の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号79の配列を含む軽鎖可変領域と、を含む抗ソルチリン抗体の最大2.5分の1であるヒトソルチリンの解離定数(KD)を有し、ここで、KDは、FACSによって決定される。いくつかの実施形態において、抗ソルチリン抗体は、約1.10E-8M~約4.68E-10Mの範囲のヒトソルチリンの解離定数(KD)を有し、KDは、FACSによって決定されるか、または約270~約2910pMであり、KDは、バイオレイヤー干渉法によって決定される。
【0368】
ある特定の実施形態では、ヒトソルチリン、哺乳動物ソルチリン、またはその両方に対する本開示の抗ソルチリン抗体のKDは、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、20nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.1nM未満、0.09nM未満、0.08nM未満、0.07nM未満、0.06nM未満、0.05nM未満、0.04nM未満、0.03nM未満、0.02nM未満、0.01nM未満、0.009nM未満、0.008nM未満、0.007nM未満、0.006nM未満、0.005nM未満、0.004nM未満、0.003nM未満、0.002nM未満、0.001nM、または0.001nMであり得る。
【0369】
ヒトソルチリン、哺乳類ソルチリン、またはその両方に対する抗ソルチリン抗体の解離定数(KD)は、10nM未満、9.5nM未満、9nM未満、8.5nM未満、8nM未満、7.5nM未満、7nM未満、6.9nM未満、6.8nM未満、6.7nM未満、6.6nM未満、6.5nM未満、6.4nM未満、6.3nM未満、6.2nM未満、6.1nM未満、6nM未満、5.5nM未満、5nM未満、4.5nM未満、4nM未満、3.5nM未満、3nM未満、2.5nM未満、2nM未満、1.5nM未満、1nM未満、0.95nM未満、0.9nM未満、0.89nM未満、0.88nM未満、0.87nM未満、0.86nM未満、0.85nM未満、0.84nM未満、0.83nM未満、0.82nM未満、0.81nM未満、0.8nM未満、0.75nM未満、0.7nM未満、0.65nM未満、0.64nM未満、0.63nM未満、0.62nM未満、0.61nM未満、0.6nM未満、0.55nM未満、0.5nM未満、0.45nM未満、0.4nM未満、0.35nM未満、0.3nM未満、0.29nM未満、0.28nM未満、0.27nM未満、0.26nM未満、0.25nM未満、0.24nM未満、0.23nM未満、0.22nM未満、0.21nM未満、0.2nM未満、0.15nM未満、0.1nM未満、0.09nM未満、0.08nM未満、0.07nM未満、0.06nM未満、0.05nM未満、0.04nM未満、0.03nM未満、0.02nM未満、0.01nM未満、0.009nM未満、0.008nM未満、0.007nM未満、0.006nM未満、0.005nM未満、0.004nM未満、0.003nM未満、0.002nM未満、または0.001nM未満であり得る。
【0370】
ある特定の実施形態において、ソルチリンに対する抗体の解離定数(KD)は、例えば、KDがFACSによって決定される場合、約0.560nM~約1.63nMである。ある特定の実施形態において、ソルチリンに対する抗体の解離定数(KD)は、例えば、KDがバイオレイヤー干渉法によって決定される場合、約0.270nM~約2.910nMである。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトソルチリン、マウスソルチリン、またはその両方の解離定数(KD)を有し、その範囲は、約0.36nM~約0.43nM、または1.02nM未満である。いくつかの実施形態では、解離定数は1.02nM未満である。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、0.560nM以下のヒトソルチリンの解離定数を有する。
【0371】
1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.560nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.423nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.365nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.344nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.298nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。1つの特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.270nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。別の特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、約0.260nMのヒトソルチリンの解離定数を有する。
【0372】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、対照抗ソルチリン抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む対照抗ソルチリン抗体)よりもソルチリンに対してより低い解離定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、標的に対する対照抗ソルチリン抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む対照抗ソルチリン抗体)のKDよりも、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%低い、標的(例えば、ヒトソルチリン)に対するKDを有する。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、標的に対する対照抗ソルチリン抗体(例えば、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む対照抗ソルチリン抗体)のKDの少なくとも約1分の1、少なくとも約1.1分の1、少なくとも約1.5分の1、少なくとも約2分の1、少なくとも約3分の1、少なくとも約4分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約6分の1、少なくとも約7分の1、少なくとも約8分の1、少なくとも約9分の1、少なくとも約10分の1、少なくとも約12.5分の1、少なくとも約15分の1、少なくとも約17.5分の1、少なくとも約20分の1、少なくとも約22.5分の1、少なくとも約25分の1、少なくとも約27.5分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約50分の1、少なくとも約100分の1、少なくとも約200分の1、少なくとも約300分の1、少なくとも約400分の1、少なくとも約500分の1、少なくとも約600分の1、少なくとも約700分の1、少なくとも約800分の1、少なくとも約900分の1、または少なくとも約1000分の1である標的(例えば、ヒトソルチリン)に対するKDを有する。
【0373】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の少なくとも100分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の少なくとも50分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の少なくとも10分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の少なくとも5分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の少なくとも2分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。
【0374】
特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の約2.79分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。別の特定の実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体は、S-60に対応する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗ソルチリン抗体の約2.05分の1であるヒトソルチリンのKDを有する。
【0375】
(2)抗体断片
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、抗体断片である。抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、FvまたはscFv断片、及び以下に記載の他の断片であるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照のこと。ScFv断片の概説については、例えば、WO93/16185;及び米国特許第5571894号及び同第5587458号である。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期が延長されたFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5869046号を参照されたい。
【0376】
ダイアボディは、2価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404097;WO1993/01161;Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照のこと。また、トライアボディ及びテトラボディについては、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部、あるいは軽鎖可変ドメインの全部または一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6248516号を参照されたい)。
【0377】
抗体断片は、本明細書に記載のとおり、限定されないが、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による産生など、様々な技術によって作製され得る。
【0378】
いくつかの実施形態において、抗体断片は、第2のソルチリン抗体と共に、かつ/またはアミロイドβもしくはその断片、Tau、IAPP、α-シヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスサイレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルゾリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、プロリン-アルギニン(PR)リピートペプチド及びこれらの任意の組み合わせから選択される疾患原因タンパク質に特異的に結合する1つ以上の抗体と共に組み合わせて使用される。
【0379】
(3)キメラ及びヒト化抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0380】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、標的に対して、ヒト化抗体が由来する別の種からの抗体と実質的に同じ親和性を有する。例えば、米国特許第5530101号、同第5693761号、同第5693762号、及び同5585089号を参照されたい。ある特定の実施形態において、その免疫原性を低下させながら、抗原結合ドメインの本来の親和性を低下させることなく改変され得る抗体可変ドメインのアミノ酸が同定される。例えば、米国特許第5766886号及び同第5869619号を参照されたい。一般に、ヒト化抗体は、HVR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。また、ヒト化抗体は、任意により、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0381】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:161 9-1633(2008)で検討され、例えば、米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号に更に記載されている。ヒト化に使用され得るヒトのフレームワーク領域としては、限定されないが、「ベストフィット」方法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285 (1992);及びPresta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)を参照のこと);ヒトの成熟した(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒトの生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);及びFRライブラリのスクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al.J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照のこと)が挙げられる。
【0382】
(4)ヒト抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、概して、van Dijk et al.Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0383】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。マウス抗体の非存在下でそのようなマウスがヒト抗体を産生することを予想して、ヒトIg遺伝子座の大きい断片を用いてマウス抗体産生が欠損しているマウス株を操作することができる。大きいヒトIg断片は、大きい可変遺伝子の多様性、更には、抗体の産生及び発現の適切な調節を保持することができる。抗体の多様化及び選択、ならびにヒトタンパク質に対する免疫寛容の欠如のためにマウス機構を利用することにより、これらのマウス株で再現されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原など、目的の任意の抗原に対する高親和性完全ヒト抗体を生成できる。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMAbを産生及び選択することができる。特定の例示的方法は、米国特許第5545807号、欧州特許第546073号、及び欧州特許第546073号に記載されている。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載している米国特許第6075181号及び同第6150584号;HUMAB(登録商標)技術について記載している米国特許第5770429号;K-M MOUSE(登録商標)技術について記載している米国特許第7041870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。そのような動物によって生成されたインタクト抗体のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変させ得る。
【0384】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法で作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol.133:3001(1984)及びBoerner et al.J.Immunol.147:86(1991)を参照のこと)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体は、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1 03:3557-3562(2006)にも記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)に記載されている方法が含まれる。また、ヒトハイブリドーマ技術(トリオマ技術)は、Vollmers et al.Histology and Histopathology 20(3):927-937(2005)及びVollmers et al.Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology27(3):185-91(2005)に記載されている。ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成され得る。次に、そのような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0385】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、in vitro法によって、及び/または所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離されたヒト抗体である。好適な例には、限定されないが、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(旧Proliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(CAT)、酵母ベースのプラットフォーム(Adimab)などが含まれる。ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリにおいて無作為に再び結合し、次いで、これを、Winter et al.Ann.Rev.Immunol.12:433-455(1994)に記載されているとおりに、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、そのようなライブラリを所望の結合特性を有する抗体についてスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で知られている。Sidhu et al.J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004;Lee et al.J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004;Fellouse Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.J.Immunol.Methods 284(-2):1 19-132(2004)も参照されたい。ファージは、典型的には、抗体断片を単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして提示する。免疫源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体をもたらす。あるいは、Griffiths et al.EMBO J.12:725-734(1993)によって記載されているとおり、ナイーブなレパートリーをクローニングして(例えば、ヒトから)、いずれの免疫化も伴うことなく、広範な非自己抗原、更には自己抗原に対する抗体の単一の源を得ることができる。最後に、Hoogenboom et al.J.Mol.Biol.,227:381-388,1992に記載されているとおり、ナイーブなライブラリを、幹細胞からの非再編成V遺伝子セグメントをクローニングし、かつ無作為配列を含むPCRプライマーを使用して、高可変HVR3領域をコードし、かつin vitroで再編成を達成することによって、合成によって作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載している特許公報には、例えば:米国特許第5750373号、及び米国特許出願公開第2007/0292936号及び同第2009/0002360号が含まれる。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体は、本明細書では、ヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0386】
(5)Fc領域を含む定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、Fcを含む。いくつかの実施形態では、Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及び/またはIgG4アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。
【0387】
本明細書で提供される抗体のいずれかのある特定の実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG2定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、1つ以上のソルチリン活性を、またはFc受容体への結合とは関係なく誘導する。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。ある特定の実施形態において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0388】
本明細書で提供される抗体のいずれかのある特定の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、マウスIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。ある特定の実施形態では、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0389】
本明細書で提供される抗体のいずれかのある特定の実施形態では、抗体は、IgG4アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。ある特定の実施形態において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0390】
本明細書で提供される抗体のいずれかのある特定の実施形態では、抗体は、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG2のEUナンバリングに従ったアミノ酸118~260、及びヒトIgG4のEUナンバリングに従ったアミノ酸261~447を含むアミノ酸配列を含む(WO1997/11971;WO2007/106585)。
【0391】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、アミノ酸置換を含まないFc領域を含む対応する抗体と比較して、補体を活性化することなくクラスター化を増加させる。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体によって特異的に結合された標的の1つ以上の活性を誘導する。いくつかの実施形態では、抗体はソルチリンに結合する。
【0392】
エフェクター機能を改変するために、及び/または抗体の血清半減期を延長させるために、本開示の抗ソルチリン抗体を改変することが更に望ましい場合がある。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を減少させるために、FcγRI、FcγRII、及び/またはFcγRIIIなどの特定のFc受容体に対する結合親和性を除去する、または減少させるように修飾されるか、または変異されてもよい。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、抗体のFc領域(例えば、IgGのCH2ドメイン)のN-グリコシル化が除去されることによって損なわれる。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、WO99/58572及びArmour et al.Molecular Immunology 40:585-593(2003);Reddy et al.J.Immunology 164:1925-1933(2000)に記載のとおり、ヒトIgGの233~236、297、及び/または327~331などの領域を修飾することによって損なわれる。他の実施形態では、体液性応答(例えば、抗体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞食作用など)を活性化することなく、隣接細胞上のソルチリン抗体のクラスター化を増加させるために、エフェクター機能を修飾して、ITIM含有FcgRIIb(CD32b)に対する選択性の発見を増大させるために、本開示の抗ソルチリン抗体を改変することも望ましい場合がある。
【0393】
抗体の血清半減期を延長させるために、例えば、米国特許第5739277号に記載されているとおり、サルベージ受容体結合エピトープを、抗体(特に、抗体断片)に取り込んでもよい。本明細書で使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期の延長を担う、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0394】
他のアミノ酸配列修飾
(6)多重特異性抗体
同じまたは別のポリペプチド(例えば、本開示の1つ以上のソルチリンポリペプチド)上のものなど、少なくとも2つの異なるエピトープについて結合特性を有する抗体は、多重特異性である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、三重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、四重特異性抗体であり得る。このような抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)に由来し得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、ソルチリン上の第1の部位に結合する第1の抗原結合領域を含み、また、ソルチリン上の第2の部位に結合する第2の抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、ソルチリンに結合する第1の抗原結合領域と、第2のポリペプチドに結合する第2の抗原結合領域とを含む。
【0395】
本明細書で提供されるのは、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体であり、第1の抗原結合領域は、ソルチリンに結合する本明細書に記載の抗体の6つのHVRを含み、第2の抗原結合領域は、第2のポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、本明細書に記載の抗体のVHまたはVLを含む。
【0396】
多重特異性抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、(a)血液脳関門を通過する輸送を促進する抗原;(b)トランスフェリン受容体(TR)、インスリン受容体(HIR)、インスリン様成長因子受容体(IGFR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1及び2(LPR-1及び2)、ジフテリア毒素受容体、CRM197、ラマ単一ドメイン抗体、TMEM 30(A)、タンパク質形質導入ドメイン、TAT、Syn-B、ペネトラチン、ポリアルギニンペプチド、アンギオペップペプチド、ならびにANG1005から選択される血液脳関門を通過する輸送を促進する抗原;(c)アミロイドベータ、オリゴマーアミロイドベータ、アミロイドベータ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、Tau、IAPP、アルファ-シヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(染色体9オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、ベータ2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピセリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択される病原タンパク質;(d)免疫細胞上に発現されるリガンド及び/またはタンパク質(リガンド及び/またはタンパク質は、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA-4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、BTLA、KIR、GAL9、TIM3、A2AR、LAG-3、及びホスファチジルセリンからなる群から選択される);及び/または(e)1つ以上の腫瘍細胞上に発現されるタンパク質、脂質、多糖、または糖脂質及びそれらの任意の組み合わせである。
【0397】
血液脳関門を通過する輸送を促進する多数の抗原が当技術分野で知られている(例えば、Gabathuler R.Neurobiol.Dis.37:48-57(2010)を参照のこと)。そのような第2の抗原には、限定されないが、トランスフェリン受容体(TR);インスリン受容体(HIR);インスリン様成長因子受容体(IGFR);低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1及び2(LPR-1及び2);CRM197(ジフテリア毒素の無毒性変異体)を含むジフテリア毒素受容体;TMEM30(A)(Flippase)などのラマ単一ドメイン抗体;TAT、Syn-B、またはペネトラチンなどのタンパク質形質導入ドメイン;ポリアルギニンまたは一般的に正電荷を有するペプチド;ANG1005などのアンギオペップペプチド(例えば、Gabathuler、2010を参照されたい)、ならびに血液脳関門内皮細胞上に豊富にある他の細胞表面タンパク質(例えば、Daneman et al.,PLoS One 5(10):e13741(2010)を参照されたい)が含まれる。
【0398】
多価抗体は、ソルチリン抗原、更には、限定ではないが、追加の抗原Aβペプチド抗原またはα-シヌクレインタンパク質抗原、またはTauタンパク質抗原、またはTDP-43タンパク質抗原;またはプリオンタンパク質抗原;またはハンチンチンタンパク質抗原;またはRAN;グリシン-アラニン(GA)、グリシン-プロリン(GP)、グリシン-アルギニン(GR)、プロリン-アラニン(PA)、もしくはプロリン-アルギニン(PR)から構成されるジペプチドリピートを含む翻訳産物抗原(DPRペプチド)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体を認識し得る。トランスフェリン受容体または血液脳関門を通過する抗体の移動を促進する他の抗原。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、トランスフェリンである。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、Tauである。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、Aβである。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、TREM2である。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、α-シヌクレインである。
【0399】
多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(及び好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含み得、ここで、VD1は、第1の可変ドメインであり、VD2は、第2の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、nは、0または1である。同様に、ポリペプチド鎖(複数可)は、VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含み得る。本明細書の多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(及び好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを更に含む。本明細書の多価抗体は、例えば、約2~約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含み得る。本明細書で企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意により、CLドメインを更に含む。
【0400】
多重特異性抗体を作製するための技術としては、これに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello Nature 305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.EMBO J.10:3655(1991))、及び「ノブインホール」技術(例えば、米国特許第5731168号を参照のこと)が挙げられる。また、WO2013/026833(CrossMab)を参照のこと。多重特異性抗体はまた、静電ステアリングエフェクトを操作して抗体Fc-ヘテロダイマー分子を作製すること(WO2009/089004A1);2つ以上の抗体を架橋すること(例えば、米国特許第4676980号を参照されたい);ロイシンを使用すること;「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい);及び一本鎖Fv(scFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい);及び例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載のとおりに三重特異性抗体を調製することによって作製され得る。
【0401】
「オクトパス抗体」など、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576を参照されたい)。本明細書の抗体には、複数のソルチリンに結合する抗原結合部位を含む「二重作用性(Dual Acting)FAb」または「DAF」も含まれる(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0402】
(7)安定性が改善された抗体
製造、貯蔵、及びin vivo投与における安定性を改善するための本開示の抗ソルチリン抗体、またはその抗体断片のアミノ酸配列修飾も企図される。例えば、限定ではないが、酸化及び脱アミドなどの複数の経路による本開示の抗体または抗体断片の分解を減少することが望ましい場合がある。抗体または抗体断片のアミノ酸配列変異形は、適切なヌクレオチド変化を、抗体または抗体断片をコードする核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかる修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせがなされるが、これは、最終構築物が所望の特徴(すなわち、分解感受性の減少)を有することを条件とする。
【0403】
いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のHVR-L1領域中のアスパラギン(N33)部位は、脱アミドによる分解に対して感受性があり得る。ある特定の実施形態では、S-60-15(配列番号8)のHVR-L1領域中のアスパラギン(N33)部位は、脱アミドに対して感受性があり得る。脱アミドされると、S-60-15のHVR-L1領域中のアスパラギン(N33)部位は、AsnからAsp/IsoAspへの変化を生じる。ある特定の実施形態では、S-60-15のHVR-L1領域中のアスパラギン(N33)部位は、脱アミドを防止または減少させるために、置換されていてもよい。HVR-L1領域中のアスパラギン(N33)部位にアミノ酸置換を有するS-60-15の非限定的な例示的アミノ酸配列変異形としては、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、またはS-60-15.17[N33L]が挙げられる。
【0404】
(8)抗体変異形
本明細書において提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましいことがある。
【0405】
(i)置換、挿入、及び欠失変異形
本明細書において提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形を提供する。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはそこへの残基の挿入、及び/またはその中での残基の置換が含まれる。
【表2】
【0406】
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくはヘリックスコンフォメーションとしての、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さを維持することに及ぼす影響が著しく異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、一般的な側鎖特性に基づき、グループに分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0407】
例えば、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。このような置換残基を、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域に導入してもよいし、または分子の非相同領域に導入してもよい。
【0408】
本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体を変化させる際に、ある特定の実施形態によれば、アミノ酸のハイドロパシー指標(hydropathic index)を考慮することができる。各アミノ酸には、その疎水性及び荷電の特徴に基づいてハイドロパシー指標が割り当てられている。このハイドロパシー指標は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。
【0409】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のアミノ酸ハイドロパシー指標の重要性は、当技術分野で理解されている。Kyte et al.J.Mol.Biol.,157:105-131(1982)。ある特定のアミノ酸は、類似のハイドロパシー指標またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換することができ、置換されても類似の生物学的活性を維持することは公知である。ハイドロパシー指標に基づいて変化を加える際に、ある特定の実施形態では、ハイドロパシー指数が±2の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれる。ある特定の実施形態では、ハイドロパシー指標が±1の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれ、ある特定の実施形態では、ハイドロパシー指標が±0.5の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれる。
【0410】
特に、同様のアミノ酸の置換によって生成される生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドが、本件の場合のように免疫学的な実施形態で使用されることが意図される場合、同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野で理解されている。ある特定の実施形態では、あるタンパク質の最大の局所平均親水性(その隣接するアミノ酸の親水性によって支配される)は、このタンパク質の免疫原性及び抗原性、すなわちそのタンパク質の生物学的特性に相関する。
【0411】
次の親水性値が、これらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0±1);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5)、及びトリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変化が加わる際には、ある特定の実施形態では、親水性値が±2の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれ、ある特定の実施形態では、親水性値が±1の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれ、ある特定の実施形態では、親水性値が±0.5の範囲内であるアミノ酸の置換が含まれる。また、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域はまた、「エピトープコア領域」とも呼ばれる。
【0412】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書において提供する保存的置換)は、HVR中にあってよい。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側にあってよい。上記で提供されている変異形VH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは改変されていないか、または1個、2個または3個以下のアミノ酸置換を含有する。
【0413】
アミノ酸配列挿入は、長さが1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲のアミノ末端融合及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに、単一または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異形には、抗体の血清半減期を延長させる酵素(例えば、ADEPT用)またはポリペプチドに対する抗体のN末端またはC末端への融合が含まれる。
【0414】
抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基はまた、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止するために、一般にセリンで置換されてもよい。逆に、システイン結合(複数可)は、(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合)その安定性を改善するために抗体に添加されてもよい。
【0415】
(ii)グリコシル化変異形
本明細書において提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように抗体を改変する。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作成または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0416】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位がもたらされる。O結合型グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0417】
グリコシル化部位の抗体への付加は、(N結合型グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。改変は、(O結合型グリコシル化部位のための)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加、またはこれらの残基による置換によっても行われ得る。
【0418】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着する炭水化物は改変され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのKabatナンバリングに従って、Asn297へのN結合によって一般に結合される分岐した二分岐オリゴ糖を含む。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体変異形を作製するために行われ得る。
【0419】
一実施形態では、Fc領域に(直接的または間接的に)付着したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異形が提供される。例えば、米国特許公開第2003/0157108号及び同第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコース化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する公開の例には、US2003/0157108;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLed 3 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);US2003/0157108)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng. 87: 614(2004)及びKanda et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688(2006))が含まれる。
【0420】
(iii)修飾された定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態において、抗体Fcは、抗体Fcアイソタイプ及び/または修飾型である。いくつかの実施形態において、抗体Fcアイソタイプ及び/または修飾型は、Fcガンマ受容体に結合することができる。
【0421】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾抗体Fcは、IgG1修飾Fcである。いくつかの実施形態では、IgG1修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG1修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を含む(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)。いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換は、N297A(Bolt S et al.(1993)Eur J Immunol 23:403-411)、D265A(Shields et al.(2001)R.J.Biol.Chem.276,6591-6604)、L234A、L235A(Hutchins et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA,92:11980-11984;Alegre et al.,(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.,(2000)Cell Immunol,200:16-26)、G237A(Alegre et al.(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.(2000)Cell Immunol,200:16-26)、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、P331S(Sazinsky et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 2008,105:20167-20172)、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、アミノ酸の位置は、EUナンバリング規則に従う。本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体はIgG1アイソタイプであり、Fc領域は、L234A、L235A、及びP331S位でのアミノ酸置換を含み、ここで、残基位置のナンバリングは、EUナンバリングに従う。
【0422】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったN297A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったD265A及びN297A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったD270A突然変異を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったL234A及びL235A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったL234A及びG237A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったL234A、L235A及びG237A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EUナンバリングに従ったP238D、L328E、E233、G237D、H268D、P271G、及びA330R突然変異のうちの1つ以上(すべてなど)を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E/L328F突然変異のうちの1つ以上を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったP238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G、及びA330R突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったP238D、L328E、G237D、H268D、P271G、及びA330R突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EUナンバリングに従ったP238D、S267E、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G、及びA330R突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったP238D、S267E、L328E、G237D、H268D、P271G、及びA330R突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったC226S、C229S、E233P、L234V、及びL235A突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったL234F、L235E、及びP331S突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E及びL328F突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E突然変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、IgG1の定常重鎖1(CH1)及びCH1を有するIgG1のヒンジ領域、及びカッパ軽鎖を有するIgG2のヒンジ領域(EUナンバリングに従ったIgG2のアミノ酸118~230)との置換を含む。
【0423】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、2つ以上のアミノ酸置換を含まないFc領域を有する対応する抗体と比較して、補体を活性化することなく抗体クラスター化を増加させる2つ以上のアミノ酸置換を含む。したがって、IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、Fc領域を含む抗体であり、ここで、抗体は、E430G位でのアミノ酸置換と、以下から選択される残基位置でのFc領域中での1つ以上のアミノ酸置換を含む:EUナンバリングに従ったL234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、及びそれらの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、L243A、L235A、及びP331S位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G及びP331S位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G及びK322A位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、A330S、及びP331S位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、A330S、及びP331S位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、及びA330S位でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、及びP331S位でアミノ酸置換を含む。
【0424】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、本明細書において更に含み得、A330L突然変異(Lazar et al.Proc Natl Acad Sci USA,103:4005-4010(2006))、またはL234F、L235E、及び/またはP331S突然変異のうちの1つ以上(Sazinsky et al.Proc Natl Acad Sci USA,105:20167-20172(2008))(これらは、EUナンバリング規則に従う)と組み合わされて、補体活性化を除去させ得る。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったA330L、A330S、L234F、L235E、及び/またはP331Sのうちの1つ以上を更に含み得る。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、ヒト血清における抗体半減期を増長するための1つ以上の突然変異(例えば、M252Y、S254T、及びT256E突然変異(EUナンバリング規則に従う)の1つ以上(すべてなど))を更に含み得る。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG1修飾Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及び/またはS440Wのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0425】
本開示の他の態様は、修飾された定常領域(すなわち、Fc領域)を有する抗体に関する。標的受容体を活性化するためにFcgR受容体への結合に依存する抗体は、FcgR結合を排除するように操作された場合、そのアゴニスト活性を失い得る(例えば、Wilson et al.Cancer Cell 19:101-113(2011);Armour at al.Immunology 40:585-593(2003);及びWhite et al.Cancer Cell 27:138-148(2015)を参照のこと)。したがって、抗体がヒトIgG2アイソタイプ(CH1及びヒンジ領域)からのFcドメイン、または阻害性FcγRIIB r受容体に優先的に結合することができる別のタイプのFcドメイン、もしくはその変異形を有する場合、正しいエピトープ特異性を有する本開示の抗ソルトリン抗体は、最小限の悪影響で標的抗原を活性化できると考えられる。
【0426】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾抗体Fcは、IgG2修飾Fcである。いくつかの実施形態では、IgG2修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG2修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を含む(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換は、V234A(Alegre et al.Transplantation 57:1537-1543(1994);Xu et al.Cell Immunol,200:16-26(2000));G237A(Cole et al.Transplantation,68:563-571(1999));H268Q、V309L、A330S、P331S(US 2007/0148167;Armour et al.Eur J Immunol 29:2613-2624(1999);Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000);Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000))、C219S、及び/またはC220S(White et al.Cancer Cell 27,138-148(2015));S267E、L328F(Chu et al.Mol Immunol,45:3926-3933(2008));及びM252Y、S254T、及び/またはT256E(EUナンバリング規則に従う)から選択される。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったV234A位及びG237A位でのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったC219S位またはC220S位でのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったA330S位及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E位及びL328F位でのアミノ酸置換を含む。
【0427】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリング規則に従うC127Sアミノ酸置換を含む(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148;Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010);及びWO2008/079246)。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、EUナンバリング規則に従うC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する(White et al.Cancer Cell 27:138-148(2015);Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010);及びWO2008/079246)。
【0428】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EUナンバリング規則に従うC220Sアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、EUナンバリング規則に従うC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0429】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EUナンバリング規則に従うC219Sアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、EUナンバリング規則に従うC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0430】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、IgG2アイソタイプ重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含む(White et al.Cancer Cell 27:138-148(2015))。IgG2修飾Fcのいずれかのある特定の実施形態において、IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域は、EUナンバリングに従った118~230のアミノ酸配列を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、抗体Fc領域は、EUナンバリング規則に従うS267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換、またはその両方、及び/またはN297AまたはN297Qアミノ酸置換を含む。
【0431】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及びS440W位に1つ以上のアミノ酸置換を更に含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、ヒト血清における抗体半減期を増長するための1つ以上の突然変異(例えば、M252Y、S254T、及びT256E突然変異の1つ以上(すべてを含む)、EUナンバリング規則に従う)を更に含み得る。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、A330S及びP331Sを更に含み得る。
【0432】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、IgG2/4ハイブリッドFcである。いくつかの実施形態において、IgG2/4ハイブリッドFcは、IgG2 aa 118~260及びIgG4 aa 261~447を含む。任意のIgG2修飾Fcのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったH268Q、V309L、A330S、及びP331S位で1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0433】
IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったA330L、L234F;L235E、またはP331S及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の追加のアミノ酸置換を含む。
【0434】
IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのある特定の実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったC127S、L234A、L234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、E345R、E430G、S440Y、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置で1つ以上の追加のアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、L243A、L235A、及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G位及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G位及びK322A位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、A330S、及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、A330S、及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、及びA330S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G、K322A、及びP331S位でのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E位及びL328F位でアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったC127S位でアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE345R、E430G、及びS440Y位でのアミノ酸置換を含む。
【0435】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾抗体Fcは、IgG4修飾Fcである。いくつかの実施形態では、IgG4修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG4修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を含む(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、EUナンバリング規則に従うL235A、G237A、S229P、L236E(Reddy et al.J Immunol 164:1925-1933(2000))、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択される。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリング規則に従うL235A、G237A、及びE318Aを更に含み得る。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリング規則に従って、S228P及びL235Eを更に含み得る。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG4修飾Fcは、EUナンバリング規則に従うS267E及びL328Fを更に含み得る。
【0436】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG4修飾Fcは、抗体の安定性を増強するために、EUナンバリング規則に従うS228P突然変異(Angal et al.,Mol Immunol.30:105-108(1993))及び/またはPeters et al.,J Biol Chem.287(29):24525-33(2012)に記載されている1つ以上の突然変異を含む。
【0437】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、IgG4修飾Fcは、ヒト血清における抗体半減期を増長するための1つ以上の突然変異(例えば、M252Y、S254T、及びT256E突然変異(EUナンバリング規則に従う)の1つ以上(すべてなど))を更に含み得る。
【0438】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったL235Eを含む。IgG4修飾Fcのいずれかのある特定の実施形態では、Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を、EUナンバリングに従ったC127S、F234A、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、E345R、E430G、S440Y、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置で含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、アミノ酸置換を、EUナンバリングに従ったE430G、L243A、L235A、及びP331S位で含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G及びP331S位でアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G及びK322A位でアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430位でアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE430G位及びK322A位でアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったS267E及びL328F位でアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、アミノ酸置換を、EUナンバリングに従ったC127S位で含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの実施形態において、Fcは、EUナンバリングに従ったE345R、E430G、及びS440Y位でアミノ酸置換を含む。
【0439】
核酸、ベクター、及び宿主細胞
本開示の抗ソルチリン抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されているとおりの組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を有する単離核酸が提供される。そのような核酸は、抗ソルチリン抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、そのような核酸を含む宿主細胞も提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、これらを形質導入されている)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。本開示の宿主細胞にはまた、限定ではないが、単離細胞、in vitro培養細胞、及びex vivo培養細胞が含まれる。
【0440】
本開示の抗ソルチリン抗体の作製方法が提供される。いくつかの実施形態において、方法は、抗ソルチリン抗体をコードする核酸を含有する本開示の宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、その後、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0441】
本開示の抗ソルチリン抗体を組換え産生するためには、抗ソルチリン抗体をコードする核酸を単離し、これを、宿主細胞における更なるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入させる。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0442】
本開示の抗ソルチリン抗体のいずれかをコードする核酸配列、または本明細書に記載されているそれらの細胞表面発現断片またはポリペプチド(抗体を含む)を含む適切なベクターには、限定するものではないが、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。好適なクローニングベクターは、標準的技法に従って構築することができ、あるいは当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用しようとする宿主細胞に応じて変わり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有し得、かつ/またはベクターを含有するクローンの選択に用いることができるマーカーのための遺伝子を保持し得る。好適な例には、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これらのクローニングベクター及び多くの他のクローニングベクターが、BioRad、Strategene及びInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0443】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、本開示の抗ソルチリン抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合には、細菌において産生され得る。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現について(例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号及び同第5,840,523号)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製することができる。
【0444】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物もまた、抗体コードベクターに好適なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌株及び酵母株が含まれる(例えば、Gerngross Nat.Biotech.22:1409-1414(2004);及びLi et al.Nat.Biotech.24:210-215(2006))。
【0445】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から得ることもできる。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と共に使用することができる、多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる(例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載されている))。
【0446】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な宿主哺乳動物細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(293細胞または例えばGraham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ科腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI 細胞、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0447】
バイオマーカー
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することにより、CTSBなどの1つ以上のリソソームマーカーのレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を、CTSBなどの1つ以上のリソソームマーカーのベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上増加させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することにより、CTSBのベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、CTSBのレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を少なくとも約20%増加させる。リソソームマーカーの別の非限定的な例は、N-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)である。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することにより、NAGKのベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、NAGKのレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上のいずれか増加させる。
【0448】
いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することにより、SPP1などの1つ以上の炎症マーカーのレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を、SPP1などの1つ以上のリソソームマーカーのベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上減少させる。いくつかの実施形態において、本開示の抗ソルチリン抗体を投与することにより、SPP1のベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、SPP1のレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を少なくとも約10%減少させる。炎症マーカーの他の例としては、限定されないが、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の抗ソルチリン抗体の投与により、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86などの1つ以上の炎症マーカーのベースラインレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)と比較して、YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86などの1つ以上の炎症マーカーのレベル(例えば、全血、血漿、及び/またはCSF中)を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか減少させる。
【0449】
本開示の抗ソルチリン抗体を投与されている個体の治療をモニタリングする方法も本明細書で提供される。
【0450】
いくつかの実施形態において、方法は、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前後の個体からの試料中の1つ以上のタンパク質のレベルを測定することを含み、1つ以上のタンパク質は、CTSB及び/またはSPP1である。いくつかの実施形態では、この方法は、試料中の1つ以上のタンパク質のレベルに基づいて、個体における抗ソルチリン抗体の活性を評価するステップを更に含む。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液または個体の血液からのものである。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液からのものである。
【0451】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前後の個体からの試料中の1つ以上のタンパク質のレベルを測定することを含み、ここで、1つ以上のタンパク質は、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、及びCD86からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、この方法は、試料中の1つ以上のタンパク質のレベルに基づいて、個体における抗ソルチリン抗体の活性を評価することを更に含む。いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液からのものである。いくつかの実施形態では、試料は、個体の血液からのものである。
【0452】
いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して、(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上のいずれか)増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して少なくとも約20%増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。
【0453】
いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して、(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか)減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して約10%減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。
【0454】
いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のNAGKのレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のNAGKのレベルと比較して、(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか)増加する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定される。
【0455】
いくつかの実施形態では、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中の1つ以上の炎症性タンパク質のレベルが、個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中の1つ以上の炎症性タンパク質のレベルと比較して、(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%のいずれか)減少する場合、抗ソルチリン抗体は、個体において活性であると決定され、ここで、1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される。
【0456】
いくつかの実施形態では、試料は、個体の脳脊髄液からのものである。
【0457】
いくつかの実施形態では、試料は、個体の血液からのものである。
【0458】
いくつかの実施形態において、1つ以上のタンパク質(例えば、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、またはCD86のうちの1つ以上)のレベルは、全血、血漿、及び/またはCSFの試料など、個体から得られた試料中で測定され得る。個体から得られた試料中の1つ以上のタンパク質(例えば、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、またはCD86のうちの1つ以上)のレベルを測定するために使用され得る方法の非限定的例としては、SOMASCANアッセイ(例えば、Candia et al.(2017)Sci Rep 7,14248)、ウエスタンブロット、質量分析、フローサイトメトリー、及び酵素免疫測定法(ELISA)アッセイが挙げられる。
【0459】
医薬組成物
本明細書で提供されるのは、本開示の抗ソルチリン抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物及び/または医薬製剤である。
【0460】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、好ましくは、使用される投薬量及び濃度においてレシピエントに対して無毒である。本明細書に記載の抗体は、固体、半固体、液体または気体の形態の調製物に製剤化され得る。このような製剤の例には、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、ミクロスフェア及びエアゾール剤が挙げられる。薬学的に許容される担体は、所望の製剤に応じて、動物またはヒト投与のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルである、薬学的に許容される無毒性の担体または希釈剤を含み得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、pH、オスモル濃度、粘度、清澄度、色調、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、組成物の吸着もしくは浸透を改変する、維持する、または保つための製剤材料を含み得る。
【0461】
ある特定の実施形態では、薬学的に許容される担体には、限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、または他の有機酸など);増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシンなど);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯生成剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;ならびに他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤、及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル(tyloxapal)など);安定性増強剤(スクロースまたはソルビトールなど);張度増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤、及び/または薬学的アジュバントが含まれる。様々な種類の投与に適した製剤の更なる例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Pharmaceutical Press 22nd ed.(2013)に見出すことができる。薬物送達のための方法の簡潔な論評については、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照されたい。
【0462】
非経口投与に適した製剤としては、水性及び非水性の等張性滅菌注射液(抗酸化剤、緩衝液、バクテリオスタット、及び溶質(これらは、目的のレシピエントの血液と製剤を等張にすることができる)、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含むことができる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。
【0463】
製剤は、脳または中枢神経系での保持及び安定化のために最適化され得る。剤が頭蓋コンパートメントに投与される場合、剤がコンパートメント内に保持されること、血液脳関門で拡散しないことまたは他の方法で通過しないことが望ましい。安定化技術には、分子量の増加を達成するための、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、中性タンパク質担体などの基への架橋、多量体化、または結合が含まれる。
【0464】
保持を増加させるための他の戦略には、生分解性または生侵食性(bioerodible)のインプラントにおける、本開示の抗ソルチリン抗体などの抗体の捕捉が含まれる。治療活性剤の放出速度は、ポリマーマトリックスを介する輸送速度、及びインプラントの生分解によって制御される。インプラントは、粒子、シート、パッチ、プラーク、繊維、マイクロカプセルなどであり得、選択された挿入部位と適合性のある任意のサイズまたは形状であり得る。使用することができる生分解性ポリマー組成物は、有機エステルまたはエーテルであり得る。これらは、分解されたときに、モノマーなど、生理学的に許容される分解生成物をもたらす。無水物、アミド、オルトエステルなどは、それ自体で、または他のモノマーと組み合わせて用いられ得る。ポリマーは、縮合ポリマーになる。ポリマーは、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。特に興味深いのは、ホモまたはコポリマーのいずれかのヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー及び多糖類である。目的のポリエステルの中には、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせのポリマーが含まれる。目的の多糖類は、アルギン酸カルシウム、及び官能化セルロース、特に水不溶性、約5kD~500kDの分子量などを特徴とするカルボキシメチルセルロースエステルである。生分解性ヒドロゲルも本発明のインプラントに使用され得る。ヒドロゲルは、典型的には、液体を吸収する能力を特徴とする共重合体材料である。
【0465】
キット/製造品
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗ソルチリン抗体を含む製品(例えば、キット)である。製造品は、本明細書に記載の抗体を含む1つ以上の容器を含み得る。容器は、バイアル、ボトル、ジャー、軟包装(例えば、密閉されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な包装であり得る。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、複数回用量包装)または分割単位用量でもよい。
【0466】
いくつかの実施形態では、キットは、第2の剤を更に含み得る。いくつかの実施形態において、第2の剤は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液などを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容される緩衝液または希釈剤である。いくつかの実施形態において、第2の剤は、薬学的に活性な剤である。
製造品のいずれかのいくつかの実施形態では、製造品は、本開示の方法に従って使用するための説明書を更に含む。説明書は、一般に、目的の治療のための用量、投与計画及び投与経路に関する情報を含む。いくつかの実施形態では、これらの取扱説明書は、本開示の任意の方法に従って、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、ゴーシェ病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、脊髄損傷、アテローム硬化性血管疾患、正常な老化の望ましくない症状、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、長期うつ病、パーキンソン病、ハンチントン病、タウオパチー病、多発性硬化症、加齢黄斑変性、緑内障、変性椎間板疾患(DDD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、那須-ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、狼瘡、急性及び慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、マラリア、本態性振戦、中枢神経系狼瘡、ベーチェット病、混合型認知症、レビー小体型認知症、多発性萎縮症、シャイ-ドレーガー症候群、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核神経節変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽種性障害、サルコイドーシス、老化に伴う疾患、網膜色素変性、網膜変性、呼吸器感染症、敗血症、眼感染症、全身性感染、狼瘡、関節炎、及び創傷治癒から選択される疾患、障害、または損傷を予防する、その危険性を減少させる、またはそれを有する個体を治療するための、本開示の単離された抗体(例えば、本明細書に記載の抗ソルチリン)の投与についての説明を含む。いくつかの実施形態では、疾患、傷害または損傷は、前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、説明書は、抗ソルチリン抗体及び第2の剤(例えば、第2の薬学的活性剤)を使用するための取扱説明書を含む。
【0467】
本開示は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示全体にわたるすべての引用は、参照により明示的に本明細書に援用される。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[1]個体の疾患または傷害を治療する及び/またはその進行を遅延させる方法であって、抗ソルチリン抗体を少なくとも約30mg/kgの用量で4週間に1回またはそれ以上の頻度で前記個体に静脈内投与することを含み、ここで、前記抗体は、
(i)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(ii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRVS(配列番号30)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(iii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLES(配列番号3)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(iv)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(v)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(vi)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(vii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIQQGYYGMDV(配列番号5)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQSLLHSNGYNYLD(配列番号26)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQETPLT(配列番号33)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含むか、または
(viii)アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、アミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列RSSQGLLRSNGYNYLD(配列番号27)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、アミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む、前記方法。
[2]前記用量が、少なくとも約35mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約45mg/kg、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約55mg/kg、または少なくとも約60mg/kgである、[1]に記載の方法。
[3]前記用量が、約30mg/kg~約60mg/kgである、[1]に記載の方法。
[4]前記用量が、約60mg/kgである、[1]に記載の方法。
[5]前記抗ソルチリン抗体が、2週間に1回投与される、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記抗ソルチリン抗体が、3週間に1回投与される、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[7]前記抗ソルチリン抗体が、4週間に1回投与される、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[8]前記抗ソルチリン抗体が、約60mg/kgの用量で4週間に1回投与される、[1]に記載の方法。
[9]前記重鎖可変領域が、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含み、前記軽鎖可変領域が、アミノ酸配列RSSQSLLRSNGYNYLD(配列番号8)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記重鎖可変領域が、アミノ酸配列YSISSGYYWG(配列番号1)を含むHVR-H1、アミノ酸配列TIYHSGSTYYNPSLKS(配列番号2)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列ARQGSIKQGYYGMDV(配列番号6)を含むHVR-H3を含み、前記軽鎖可変領域が、アミノ酸配列RSSQSLLRSTGYNYLD(配列番号9)を含むHVR-L1、アミノ酸配列LGSNRAS(配列番号29)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列MQQQEAPLT(配列番号32)を含むHVR-L3を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[11]前記抗体が、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号59のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号78のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、配列番号54のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[12]前記抗体が、
(i)配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含むか、
(ii)配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[13]前記抗体が、IgG1アイソタイプであり、Fc領域は、L234A、L235A、及びP331S位でのアミノ酸置換を含み、ここで、残基位置のナンバリングは、EUのナンバリングに従う、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記抗体が、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]前記疾患または損傷が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、血管性認知症、痙攣発作、網膜ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、認知症、脳卒中、パーキンソン病、急性散在性脳脊髄炎、網膜変性、加齢黄斑変性症、緑内障、多発性硬化症、敗血性ショック、細菌感染症、関節炎、及び変形性関節症からなる群から選択される、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]前記疾患または傷害が、前頭側頭型認知症または筋萎縮性側索硬化症である、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[17]前記個体が、GRNにおける突然変異についてヘテロ接合性である、[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]GRNにおける前記突然変異が、機能喪失型突然変異である、[17]に記載の方法。
[19]前記個体が、C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長についてヘテロ接合性である、[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
[20]前記個体が、前頭側頭型認知症の症状を示す、[17]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記個体が、前頭側頭型認知症の症状を示さない、[17]~[19]のいずれかに記載の方法。
[22]前記抗ソルチリン抗体の投与後の前記個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体の血漿中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍、3倍、または4倍高い、[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記個体の血漿中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約5日で存在する、[22]に記載の方法。
[24]前記個体の血漿中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する、[22]または23に記載の方法。
[25]前記抗ソルチリン抗体の投与後の前記個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質のレベルよりも少なくとも2倍高い、[1]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26]前記個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日で存在する、[25]に記載の方法。
[27]前記個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約24日で存在する、[25]または26に記載の方法。
[28]前記個体の脳脊髄液中のPGRNタンパク質の前記レベルの倍増が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約28日、35日、42日、49日、または56日で存在する、[25]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29]前記抗ソルチリン抗体投与後の前記個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも50%低下する、[1]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30]前記抗ソルチリン抗体投与後の前記個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体の末梢白血球上のSORT1タンパク質の発現レベルと比較して少なくとも70%低下する、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記個体の末梢白血球上のSORT1の前記発現レベルの低下が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約12日以上で存在する、[29]または30に記載の方法。
[32]前記個体の末梢白血球上のSORT1の前記発現レベルの低下が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約17日以上で存在する、[29]または30に記載の方法。
[33]前記個体の末梢白血球上のSORT1の前記発現レベルの低下が、前記抗ソルチリン抗体の最終投与後約40日以上で存在する、[29]または30に記載の方法。
[34]血漿中の前記抗ソルチリン抗体の半減期が、約5日である、[1]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35]血漿中の前記抗ソルチリン抗体の半減期が、約8日である、[1]~[33]のいずれかに記載の方法。
[36]前記個体が、最長48週間の治療期間治療される、[1]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37]前記個体が、48週間の長さの治療期間治療される、[1]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38]前記抗ソルチリン抗体の投与が、治療期間の初日及びその後4週間ごとに行われる、[36]または37に記載の方法。
[39]前記抗ソルチリン抗体が、治療期間中に合計13回投与される、[36]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40]前記疾患または損傷が、前頭側頭型認知症(FTD)であり、前記抗ソルチリン抗体投与後、血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルが、前記抗ソルチリン抗体投与前の血漿ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベルと比較して、少なくとも10%低下する、[1]~[39]のいずれかに記載の方法。
[41]前記個体の脳脊髄液(CSF)中のCTSBのタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体のCSF中のCTSBのタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約20%増加する、[1]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42]前記個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体のCSF中のSPP1のタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に少なくとも約10%減少する、[1]~[41]のいずれかに記載の方法。
[43]前記個体のCSF中のN-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体のCSF中のNAGKのタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に増加する、[1]~[42]のいずれかに記載の方法。
[44]前記個体のCSF中の1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルが、前記抗ソルチリン抗体の投与前の前記個体のCSF中の前記1つ以上の炎症性タンパク質のタンパク質レベルと比較して、前記抗ソルチリン抗体の投与後に減少し、ここで、前記1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される、[1]~[43]のいずれかに記載の方法。
[45]抗ソルチリン抗体を投与されている個体の治療をモニタリングする方法であって、前記個体が1回以上の抗ソルチリン抗体を受ける前後の前記個体からの試料中の1つ以上のタンパク質のレベルを測定することを含み、ここで、前記1つ以上のタンパク質は、CTSB、SPP1、NAGK、YWHAE、AIF1、CSF1、CHIT1、LY86、及びCD86からなる群から選択される、前記方法。
[46]前記試料中の前記1つ以上のタンパク質のレベルに基づいて、前記個体における前記抗ソルチリン抗体の活性を評価することを更に含む、[45]に記載の方法。
[47]前記試料が、前記個体の脳脊髄液からのものである、[45]または46に記載の方法。
[48]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して増加する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定される、[46]または47に記載の方法。
[49]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のCTSBのレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のCTSBのレベルと比較して少なくとも約20%増加する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定される、[48]に記載の方法。
[50]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して減少する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定される、[46]~[49]のいずれかに記載の方法。
[51]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のSPP1のレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のSPP1のレベルと比較して約10%減少する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定される、[50]に記載の方法。
[52]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中のNAGKのレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中のNAGKのレベルと比較して増加する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定される、[46]~[51]のいずれかに記載の方法。
[53]前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受けた後の脳脊髄液中の1つ以上の炎症性タンパク質のレベルが、前記個体が1回以上の前記抗ソルチリン抗体を受ける前の脳脊髄液中の前記1つ以上の炎症性タンパク質のレベルと比較して減少する場合、前記抗ソルチリン抗体が、前記個体において活性であると決定され、ここで、前記1つ以上の炎症性タンパク質は、14-3-3タンパク質イプシロン(YWHAE)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86からなる群から選択される、[46]~[52]のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0468】
実施例1:非ヒト霊長類における抗ソルチリン抗体PK及びPD
この実施例では、静脈内(IV)投与された抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を非ヒト霊長類において決定した。
【0469】
材料及び方法
単回投与薬物動態及び薬力学試験
単回投与薬物動態試験のために、カニクイザルに、抗ソルチリン抗体を0日目に、5mg/kg、20mg/kg、60mg/kg、または200mg/kgの単回IV投与によって投与した(用量あたり動物n=3)。血液及びCSFを、その後の複数時点で動物から採取して、抗ソルチリン抗体薬物動態の尺度である血漿及び脳脊髄液(CSF)中の抗ソルチリン抗体濃度を得た。薬力学の尺度であるプログラニュリン(PGRN)濃度及び白血球(WBC)上のソルチリン(SORT1)のレベルも決定した。
【0470】
抗ソルチリン抗体濃度を、抗ソルチリン抗体特異的抗イディオタイプ抗体を用いるELISAアッセイを使用してアッセイした。PGRN濃度を、市販のELISAキットでアッセイした。白血球上のSORT1のレベルを、ELISAアッセイを使用してアッセイし、タンパク質濃度に対して正規化した。
【0471】
結果
表2は、試験された抗ソルチリン抗体用量のそれぞれについての血漿平均C
max、平均AUC、及びt
1/2を示している。
【表3】
【0472】
図1Aに示されているとおり、末梢白血球中のSORT1発現レベルは、試験された抗ソルチリン抗体用量のいずれでも非ヒト霊長類を処置した後に低下した。より多い抗ソルチリン抗体用量(60mg/kg、200mg/kg)は、より少ない抗ソルチリン抗体用量(5mg/kg、20mg/kg)と比較して、末梢白血球中のSORT1レベルのより早期及びより長期の低下の両方をもたらした。
【0473】
PGRNのレベルは、抗ソルチリン抗体の単回IV注射を投与された非ヒト霊長類の血漿中において、時間及び用量依存的に増加した(
図1B)。特に、血漿中PGRNレベルは、試験されたすべての抗ソルチリン抗体用量について、ベースラインレベルと比較して、C
maxで3~4倍増加した。血漿中PGRNレベルは、高い抗体用量では、より長期間にわたって上昇したままであった。加えて、血漿中PGRNレベルの増加は、末梢白血球上のSORT1の発現レベルの減少と相関した。
【0474】
CSF中のPGRNのレベルも、抗ソルチリン抗体の単回IV注射を投与された非ヒト霊長類で増加した。
図1Cに示すとおり、CSF PGRNレベルは、20mg/kg、60mg/kg、または200mg/kgのいずれかを投与された動物で、ベースラインより2~3倍増加した。血漿中のPGRNレベルで観察されたとおり、CSF PGRNレベルは、より高い抗体用量群において経時的に上昇したままであった。
【0475】
表3は、非ヒト霊長類における、試験された抗ソルチリン抗体用量のそれぞれについてのCSF平均C
max、平均AUC、及びt
1/2を示している。抗ソルチリン抗体CSF濃度は平均で、血漿中で観察された量の約0.1%であった。
【表4】
【0476】
反復投与の薬物動態及び薬力学試験
更なる薬物動態及び薬力学試験を、反復投与レジメンにしたがって抗ソルチリン抗体を投与された非ヒト霊長類で行った。これらの試験では、動物(雄2匹及び雌2匹)に、抗ソルチリン抗体を60mg/kgの用量で、週1回、4週間にわたって投与した。その後の様々な時点で、末梢白血球上のSORT1発現レベルを決定した。加えて、抗ソルチリン抗体の血漿及びCSF中レベルを決定した。
【0477】
図2Aに示されているとおり、末梢白血球中のSORT1レベルは、試験期間を通じて低下したままであった。血漿中PGRNレベルは、ピークレベルでは、ベースラインの5~6倍に増加した(
図2B)。抗ソルチリン抗体の4回目及び最後の投与後に血漿PGRNの減少が観察された。しかし、血漿PGRNレベルはベースラインの2倍上昇したままであった。加えて、CSF中PGRNレベルは、ベースラインの3~4倍に増加した(
図2C)。
【0478】
平均Cmax及びAUC0-168によって推定された全身抗ソルチリン抗体曝露は、1日目は2100μg/mL及び114,000μg/mL×時間、ならびに22日目は3020μg/mL及び174,000μg/mL×時間であった。これらの結果は、曝露が1日目と比較して22日目で高いことを示し、抗体の多少の蓄積を示した。
【0479】
これらの動物における抗ソルチリン抗体のCSF濃度は、血漿中で観察されたものの0.03%~0.12%の範囲であり、CSF中の他の抗体の分布と一致した(Pestalozzi et al.,(2000)J Clin Oncol 18(11):2349-51;Petereit et al.,(2009)Mult Scler 15(2):189-92)。
【0480】
実施例2:ヒトの健康なボランティアにおける抗ソルチリン抗体PK及びPD
この実施例では、静脈内投与された抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSのヒトにおける薬物動態及び薬力学が調査された。
【0481】
材料及び方法
ヒトに静脈内投与された抗ソルチリン抗体の薬物動態及び薬力学を調査するために、以下のヒト第1a相臨床試験を実施した。
【0482】
18~65歳の男性及び女性の健康なボランティア6つのコホートが本試験に含まれ、抗ソルチリン抗体(またはプラセボ対照)の単回投与を約1時間かけて点滴静注した。各コホートには、少なくとも8名の健康なボランティア対象が含まれ、少なくとも6名の対象に抗ソルチリン抗体が投与され、少なくとも2名の対象にプラセボ対照が投与された。6つのコホートに使用された抗体の用量レベルは、2mg/kg、6mg/kg、15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kgであった。以下に説明するように、2つの別々のコホートを60mg/kgで試験して、異なる投与後の時点での脳脊髄液(CSF)の効果を調査した。
【0483】
複数の時点でヒト対象から採血して、血漿中の抗ソルチリン抗体濃度を得、また、腰椎穿刺を行ってCSFを収集した。これらは両方とも、薬物動態の測定のために行った。また、薬力学の測定のために、白血球(WBC)のSORT1発現レベルを得て、PGRN濃度を得た。CSFの測定では、15mg/kg以上の抗体用量を投与されたヒト対象に腰椎穿刺を行った。抗ソルチリン抗体濃度(PK)及びPGRN濃度(PD)は、CSF試料で決定した。
【0484】
抗ソルチリン抗体濃度を、抗ソルチリン抗体特異的抗イディオタイプ抗体を用いるELISAアッセイを使用してアッセイした。PGRN濃度は、市販のELISAキットを使用してアッセイし、白血球のSORT1のレベルは、ELISAアッセイを使用してアッセイし、タンパク質濃度に対して正規化した。
【0485】
すべて健康なボランティアコホートにおいて、PK及びPDの測定については、抗ソルチリン抗体またはプラセボが試験1日目に投与され、血液試料が試験日1日目、2日目、3日目、6日目、8日目、13日目、18日目、30日目、43日目、57日目、85日目、及び113日目に対象から採取した。CSF試料は、3つのコホート(15mg/kg、30mg/kg、60mg/kgコホート)について、試験1日目(投与前)、2日目、及び13日目に採取した。CSF試料は、試験1日目(投与前)、25日目及び43日目に60mg/kgを投与された対象の2番目のコホートから得られた。
【0486】
結果
合計50名の健康なボランティアに抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの単回投与が行われた。
【0487】
血漿中の薬物動態
すべてのコホートの少なくとも30日間の投与後データを含む、健康なボランティアの漸増用量コホートからの血漿PKデータを表4に示す。健康なボランティアに投与された抗ソルチリン抗体は、おおよその用量比例C
maxを示した(すなわち、2mg/kgで47.2μg/mL;60mg/kgで1540μg/mL)。結果はまた、抗ソルチリン抗体の用量レベルを2mg/kgから60mg/kgに増加させたときに、抗体の血漿クリアランスが減少し、血漿半減期が延長し、総血漿曝露(AUC
0-infとして計算)が非線形式に増加したことを示した。特に、抗ソルチリン抗体の血漿終末半減期は、試験したすべての用量で短く、2mg/kg用量での29.6時間(1.2日)~60mg/kg用量での190時間(7.9日)の範囲であった。
【表5】
【0488】
表4の血漿PK結果の更なる分析を表5に示す。
【表6】
【0489】
まとめると、これらの結果は、試験した用量で、抗ソルチリン抗体が同様のクラスの他の治療用抗体よりも迅速に除去されることを示し、したがって、同様のクラスの他の場合と比較して、予想外に、抗ソルチリン抗体がこの抗体のより短い半減期を示したことを示した(Ovacik,M and Lin,L,(2018)Clin Transl Sci 11,540-552)。抗体の半減期が短いことは、それが治療的に有用ではない可能性があることを示唆するものであった。
【0490】
CSF中の薬物動態
CSFが収集された3つの単回漸増用量の健康なヒトボランティアコホートの予備的なCSF PKデータを以下の表6に示す。
【0491】
抗ソルチリン抗体のCSF濃度は、15mg/kg及び30mg/kgの両方のコホートで、投与後30時間から投与後12日目まで時間の経過と共に減少を示した(表6)。これらの結果は、CSF中の抗ソルチリン抗体濃度が、15mg/kgまたは30mg/kgの抗体のいずれかを投与された健康なボランティアにおいて、投与後12日目より前の時点でピークに達したことを示した。対照的に、抗ソルチリン抗体のCSF濃度は、60mg/kgコホートで投与後30時間から投与後12日目まで増加した(表6)。
【表7】
【0492】
更に、健康なボランティアの2番目の60mg/kgコホートからの抗体のCSF濃度が、投与後24日目及び42日目で測定され、これにより、抗ソルチリン抗体がCSF中に42日後も存在することが明らかになった(表7)。
【表8】
【0493】
15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kgの用量での抗ソルチリン抗体の血漿濃度に対するCSF濃度のパーセンテージの比率を決定し、結果を表8に示す。
【0494】
表8に示すとおり、投与後12日目でのCSF中の抗ソルチリン抗体濃度は、15mg/kg用量で血漿中に観察された濃度は0.09%であり、30mg/kg用量で血漿中観察された濃度は0.12%であり、及び60mg/kgの用量で血漿中に観察された濃度は0.26%であった。これらの結果は、用量の増加と共に、抗ソルチリン抗体の中枢神経系へのより高い浸透度が観察されたことを示している。
【表9】
【0495】
15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kgの用量での抗ソルチリン抗体の血漿濃度に対するCSF濃度のパーセンテージの更なる分析を表9に示す。
【表10】
【0496】
まとめると、これらの結果は、抗ソルチリン抗体が他のIgG抗体と同様の比率でCSFに入り、他の治療用モノクローナル抗体と一貫した血漿PKに対するCSF PK率%を示すことを示した。
【0497】
血液中の薬力学
末梢白血球のSORT1レベル及び血漿PGRN濃度レベルに対する抗ソルチリン抗体の効果を測定した。これらの試験では、SORT1レベル及びPGRNレベルは、5つの健康なボランティアコホート(2mg/kg、6mg/kg、15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kg)から決定した。
【0498】
図3A(破線)に示すとおり、ヒト対象への抗ソルチリン抗体の投与は、末梢白血球上のSORT1発現レベルの減少をもたらした。
【0499】
例えば、2mg/kgの抗ソルチリン抗体用量を投与された対象は、抗体投与後5~7日目に、ベースラインレベルから約50%の末梢白血球上のSORT1発現レベルの最大減少を示した。例えば、6mg/kg、15mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgの抗ソルチリン抗体用量を投与された対象は、抗体投与後12~17日目に、ベースラインレベルから約70%の末梢白血球上のSORT1発現レベルの最大減少を示した。末梢白血球上のSORT1の発現レベルの減少は、抗ソルチリン抗体の各用量を増加させることにより、抗体投与後もより長期間持続した。SORT1発現レベルの最も長く持続的な減少は、60mg/kg群で抗体投与後40日超生じた。
【0500】
ヒト対象への抗ソルチリン抗体の投与後の末梢白血球上のSORT1発現レベルの更なる分析を
図3Bに提供する。
【0501】
更に、
図3A(実線)に示すとおり、ヒト対象への抗ソルチリン抗体の投与は、血漿PGRNレベルの増加をもたらした。
【0502】
例えば、血漿PGRN濃度レベルの増加は、抗ソルチリン抗体の単回IV投与を投与されたすべてのヒト対象で観察された。
図3Aに示すとおり、血漿PGRN濃度レベルの増加は、すべての抗ソルチリン抗体用量で対象において観察された。血漿PGRNの最大濃度は、抗体投与後5~12日で見られた。ベースラインレベルからの変化の最大増加(パーセント)は、5つのコホートのそれぞれについてプールされたプラセボ試料と比較して、統計的に有意であった。血漿PGRN濃度レベルの増加は、ベースラインの1.29~2.14倍の範囲であった(ベースラインからの1倍の増加は、ベースラインからの100%の増加に相当する)。血漿PGRNレベルは、用量依存的に抗ソルチリン抗体を投与した後、ますます長い期間上昇したままであった。血漿PGRNレベルの増加の持続時間は、30mg/kg及び60mg/kgの抗ソルチリン抗体用量で40日~42日以上の範囲であり、血漿PGRNレベルの観察された増加が最高抗体用量レベルでより持続したことを示している。
【0503】
ヒト対象への抗ソルチリン抗体の投与後の血漿PGRNレベルの更なる分析を
図3Cに提供する。
【0504】
CSFの薬力学
CSF中のPGRN濃度レベルに対する抗ソルチリン抗体の効果も決定された。CSF PGRN濃度レベルの薬力学的データは、15mg/kg、30mg/kg、または60mg/kgで投与された健康なボランティアの4つのコホートから得られた。3つのコホート(15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kg)について、CSF試料は、投与前、その後約30時間(2日目)及び抗体投与後12日(13日目)でヒト対象から収集した。これらの3つのコホートでは、6名の対象がプラセボを投与され、プラセボ投与の約30時間後及び12日後にCSF試料を採取した。第4のコホートは60mg/kgで投与され、CSF試料は投与前と25日目及び43日目にこれらの対象から得られた。この第4コホートの2名の対象はプラセボを投与され、CSF試料は投与前と25日目及び43日目にこれらの対象から得られた。この60mg/kgの追加コホートを試験に追加して、CSF PGRN濃度レベルに対する抗ソルチリン抗体の効果の持続期間を更に評価した。
【0505】
図4Aに示すとおり、CSF PGRN濃度レベルの統計的に有意な増加(ベースラインで観察されたPGRN濃度レベルと比較して)が、最初の3つのコホートの投与後の両方の時点(30時間及び12日目)で見られた。CSF PGRNレベルの最大の増加は、抗ソルチリン抗体投与の12日後に観察された。抗ソルチリン抗体投与の12日後、CSF PGRN濃度レベルは、ベースラインと比較して、15mg/kg用量で0.57倍、30mg/kg用量で0.84倍、60mg/kg用量で1.13倍増加した(ベースラインから1倍の増加は、ベースラインからの100%の増加に相当する)。15mg/kg、30mg/kg、及び60mg/kgコホートのCSF PGRNレベルのベースラインからの変化率を示す棒グラフを
図4Bに示す。
【0506】
上記のとおり、CSF試料は、投与前及び25日目と43日目(すなわち、抗体投与後24日と42日)に第4コホート(60mg/kg)の対象から得られた。ベースラインと比較したCSF PGRN濃度レベルの平均0.83倍及び0.23倍の増加が、それぞれ25日目及び43日目に観察された。これらの結果は、60mg/kgの用量及びプラセボについての25日目及び43日目のベースラインからの変化率として
図4Aに示されている。
【0507】
更に、PGRNレベルは、投与前から投与後42日までの両方の60mg/kgコホートの対象から得られたCSF試料で分析した。これらの結果は、ベースラインからの変化率として
図4Cに示されている。
【0508】
これらの結果は、抗ソルチリン抗体の投与により、ヒトにおけるCSF PGRNの濃度レベルが増加し、CSF PGRNの濃度レベルの増加が、60mg/kgの抗ソルチリン抗体の単回IV投与後少なくとも24日間持続したことを示した。
【0509】
要約すると、血漿中の半減期が短いにもかかわらず、S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与は、白血球でのSORT1発現の低下、血漿及びCSF中でのPGRNレベルの増加など、ヒトにおいて有望な薬力学効果を示した。予期せぬことに、これらの治療効果は、ヒト対象において長期間持続した。したがって、ヒトにおける抗体の更なる試験が追求された。
【0510】
安全性の概要
抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSは、一般的に安全であり、投与されたすべての用量で忍容性が良好であった。用量制限副作用、薬物関連の重篤な有害事象(SAE)、または用量制限毒性(DLT)は観察されなかった。治療下で発現した有害事象(TEAE)のほとんどは、軽度または中等度の重症度であった。有害事象には、明らかな用量依存的な傾向はなかった。最も一般的なTEAEは、腰椎穿刺後症候群(腰椎穿刺は、15mg/kgの用量レベルから開始して実施した)、穿刺部位の痛み、頭痛、貧血、及び嘔吐であった。表10は、第1相試験で観察された有害事象を示している。
【表11-1】
【表11-2】
【0511】
第1b相試験
進行中の非盲検第1b相試験では、グラニュリン突然変異の無症候性キャリア(aFTD-GRN)に、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを60mg/kgで単回投与した。CSFは、投与前と投与後12日及び24日(試験1日目(投与前)及び試験13日目及び25日目)にサンプリングした。グラニュリン突然変異の症候性キャリア(FTD-GRN)に、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを30mg/kg、q2wで(2週間ごとに)3回投与した。CSFは、投与前と投与後56日(試験1日目(投与前)と試験57日目)、または最後の投与から約4週間後にサンプリングした。血漿試料は、PGRNレベルを分析するために試験中のいくつかの時点で得られた。本試験の目的は、グラニュリン突然変異キャリア及びグラニュリン突然変異FTD患者の安全性及び忍容性、薬物動態及び薬力学を評価することであった。本試験の探索的目的には、バイオマーカーの分析が含まれていた。
【0512】
結果
試験対象
3名のaFTD-GRN対象に、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを60mg/kgで単回IV投与した。
【0513】
6名のFTD-GRN患者に、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを30mg/kg、q2w(2週間ごと)で3回IV投与した。
【0514】
抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSは、一般的に安全であり、GRNキャリアでは十分に許容された。
【0515】
血漿PGRNレベル
投与後の指示された日における血漿PGRNレベルの変化率は、1名のaFTD-GRN対象及び3名のFTD-GRN患者について
図5Aに提供されている。
【0516】
CSF PGRNレベル
1名のaFTD-GRN対象(試験13日目)及び3名のFTD-GRN患者(試験57日目)におけるCSF PGRNレベルの変化率を
図5Bに提供する。
【0517】
正常な健康なボランティア及び投与前及び試験57日目の3名のFTD-GRN患者からのCSF中のPGRNの濃度(ng/mL)を
図5Cに提供する。
【0518】
結論
この進行中の第1b相試験のこれまでの結果は、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが一般的に安全であり、最高用量レベルである60mg/kgまで十分に許容されることを示している。更に、結果は、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが、GRN突然変異キャリアでの血漿及びCSFの両方中において、PGRNレベルの用量依存的かつ長期的な増加を引き起こすことを示している(
図5A~5B)。更に、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSは、FTD-GRN患者のCSF中のPGRNレベルを、正常な健康なボランティアが呈する正常範囲に匹敵するレベルまで回復させた(
図5C)。
【0519】
実施例3:前頭側頭型認知症の原因となるグラニュリンまたはC9orf72突然変異のヘテロ接合性キャリアにおける抗ソルチリン抗体を評価するための第2相試験。
この実施例では、前頭側頭型認知症(FTD)の原因となるグラニュリンまたはC9orf72変異のヘテロ接合性キャリアにおける抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するための第2相多施設非盲検試験について記載する。
【0520】
試験の目的
第1の目的
本試験の第1の目的は、FTDの原因となるGRN突然変異の無症候性キャリア及び症候性キャリア、及びFTDの原因となるC9orf72突然変異の症候性キャリアにおいて、最大48週間にわたる抗ソルチリン抗体の静脈内(IV)投与の安全性及び忍容性を評価することである。
【0521】
第2の目的
本試験の第2の目的は、FTDの原因となるGRN突然変異の無症候性キャリア及び症候性キャリア、及びFTDの原因となるC9orf72突然変異の症候性キャリアにおいて、以下に基づいて、最大48週間にわたる抗ソルチリン抗体のIV投与の効果を評価することである:
・薬物動態(PK)。
・薬力学(PD)バイオマーカー:
○長期的血漿及びCSFのPGRN濃度レベル。
○白血球(WBC)のSORT1の長期的レベル及びCSFの可溶性SORT1(sSORT1)のレベル。
【0522】
探索的目的
本試験の探索的目的は、FTDの原因となるGRN突然変異の無症候性キャリア及び症候性キャリア、及びFTDの原因となるC9orf72突然変異の症候性キャリアにおいて、以下に基づいて、最大48週間にわたる抗ソルチリン抗体のIV投与の効果を判定することである:
・PDバイオマーカー:
○神経変性、リソソーム機能、及びミクログリア活性の探索的バイオマーカーの長期的血液、血漿、及びCSF濃度レベル。
○脳内での変化を評価するための磁気共鳴画像法(MRI)測定。
○脳ミクログリアの活性化。
○探索的体液PDバイオマーカー、イメージングPD測定、及び臨床転帰評価(COA)間の相関。
【0523】
本試験の探索的臨床目的は、COAによって測定する臨床的進行である。
【0524】
試験参加者
2つのコホートの約32名の参加者が本試験に登録されている。
・GRNコホート(最大24名の無症候性参加者及び症候性参加者。具体的には、約6名の無症候性の参加者及び約18名の症候性の参加者)。このコホートには以下を含む:
○健康なボランティア及びヘテロ接合性GRN突然変異キャリアにおける抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験(以下、「抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験」と呼ぶ)の無症候性の参加者及び症候性の参加者。
○新規症候性GRN突然変異キャリア。
・C9orf72コホート(最大8名の症候性患者)。
【0525】
参加者は、すべての選択基準を満たし、いずれの除外基準にも適合しない場合にのみ、試験的治療に割り当てられる。
【0526】
選択基準
各参加者は、本試験に登録するために次のすべての基準を満たす:
【0527】
重要な選択基準
参加者カテゴリー1:抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験からのGRN突然変異キャリア、症候性:
・患者は、57日目の訪問日までの抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験を完了しており、試験責任医師が本試験への安全な参加を妨げるであろうと判断する有害事象(AE)を経験しなかった。
○抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験のすべての患者が再度スクリーニングされ、本試験に適用されるすべての選択/除外基準を満たしている。
○患者は、行動変異型FTD(bvFTD)の可能性またはbvFTDの高い可能性(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)、または原発性進行性失語症(PPA)(Gorno et al.,(2011)Neurology 76(11):1006-1014)の診断基準を満たしている。軽度の症候学を有し、日常生活動作に有意な影響を及ぼさない患者(例えば、軽度の認知障害、軽度の行動障害)患者。bvFTDの可能性の診断に必要な6つの行動/認知症状のうちの1つ以上を有する場合のbvFTD患者(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)。運動ニューロン疾患を併発しているbvFTDまたはPPA患者。
【0528】
参加者カテゴリー2:抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験からのGRN突然変異キャリア、無症候性:
・患者は、43日目の訪問日までの抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験を完了しており、試験責任医師が本試験への安全な参加を妨げると判断するAEを経験しなかった。
○抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験のすべての患者が再度スクリーニングされ、本試験に適用されるすべての選択/除外基準を満たしている。
【0529】
参加者カテゴリー3:GRN突然変異キャリア、症候性、新規:
・患者は、FTD-GRNの原因となる機能喪失型GRN突然変異キャリアであり、突然変異状態が判明している。
・患者は、bvFTDの可能性またはbvFTDの高い可能性(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)、またはPPA(Gorno et al.,(2011)Neurology 76(11):1006-1014)の診断基準を満たしている。軽度の症候学を有し、日常生活動作に有意な影響を及ぼさない患者(例えば、軽度の認知障害、軽度の行動障害)患者。bvFTDの可能性の診断に必要な6つの行動/認知症状のうちの1つ以上を有する場合のbvFTD患者(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)。運動ニューロン疾患を併発しているbvFTDまたはPPA患者。
・患者は、以下の定義では、軽度の重症度である:
○臨床認知症評価スケール(CDR)のグローバルスコアが1以下である、及び
○前頭側頭型認知症臨床評価スケール(FCRS)の言語ドメイン、及び行動、態度、人格ドメインの両方でボックススコアが1以下である。
【0530】
参加者カテゴリー4:C9orf72突然変異キャリア、症候性、新規:
・患者は、FTD-C9orf72の原因となるヘキサヌクレオチドリピート伸長C9orf72突然変異キャリアであり、その突然変異状態がわかっている。
・患者は、bvFTDの可能性またはbvFTDの高い可能性(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)、またはPPA(Gorno et al.,(2011)Neurology 76(11):1006-1014)の診断基準を満たしている。軽度の症候学を有し、日常生活動作に有意な影響を及ぼさない患者(例えば、軽度の認知障害、軽度の行動障害)患者。bvFTDの可能性の診断に必要な6つの行動/認知症状のうちの1つ以上を有する場合のbvFTD患者(Rascovsky et al.,(2011)Brain 134(9):2456-2477)。運動ニューロン疾患を併発しているbvFTDまたはPPA患者。
・患者は、以下の定義では、軽度の重症度である:
oCDRのグローバルスコアが1以下である、及び
oFCRSの言語ドメイン、及び行動、態度、人格ドメインの両方でボックススコアが1以下である。
【0531】
一般的な選択基準
各参加者は、本試験に登録するために次のすべての基準も満たす:
・スクリーニング時に、参加者は18歳から80歳までである。
・スクリーニング時に、女性の参加者は妊娠しておらず、授乳しておらず、次の条件の少なくとも1つに適合する:
o参加者は、出産の可能性のある女性(WOCBP)ではない。
o参加者はWOCBPであり、スクリーニングからフォローアップ訪問の90日後まで許容できる避妊法を使用している。
oWOCBPには、スクリーニング時に実施される血清妊娠検査がある。
・男性の参加者は、外科的に不妊手術を受けていない場合、許容できる避妊法を使用し、フォローアップ訪問の1日目から90日後まで精子を提供しないことに同意する。
・参加者は、病歴、身体検査(PE)、臨床検査、心電図(ECG)、及びバイタルサインにおいて臨床的に有意な所見がないことに基づいて、健康な状態にある。
・参加者は、試験プロトコルを遵守する意思があり、遵守することができる。
・参加者は、患者と頻繁かつ十分に接触(例えば、週に10時間以上の対面接触)している人(「試験パートナー」)を手配可能であり、この人物は、参加者の認知及び機能能力に関する正確な情報を提供でき、COAを完了するためにパートナーの入力を必要とする診療所訪問時に情報を提供することに同意し、必要な同意書に署名する。
【0532】
除外基準
次の基準のいずれかを満たす参加者は、本試験から除外される:
・参加者は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体または融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、または他の過敏反応の既往歴を有する。
・参加者は、過去2年以内にアルコールまたは物質使用障害(DSM-5、American Psychiatric Association、2013による)の病歴を有する。
oニコチンの使用は許可されている。
・参加者は、1日目までの30日以内に100mLを超えて献血しているかまたは失血している。
・参加者は、スクリーニング前の30日以内に輸血を受けた。
・参加者は、薬物投与前の5日以内に、安全性評価に影響を与える可能性のある、臨床的に有意な及び/または急性の疾病を有していた。
・参加者は、スクリーニング前の30日間に、手術、入院、または経口もしくはIV抗生物質を必要とする臨床的に有意な感染症を有していた。
・参加者は、試験評価を実行する能力を妨げる試験中に処置または手術が計画されている。
・参加者は、小児熱性痙攣を除いて、過去に痙攣発作の病歴を有する。
・参加者は、免疫抑制薬の効果が継続しているため、臨床的に有意な全身性免疫不全状態にある。
・参加者は、大うつ病性障害(寛解期にあり、登録時及び試験全体を通じて治療されていない場合)または統合失調症、統合失調感情障害、または双極性障害(現在または過去の治療に関係なく)の病歴を有している。
・参加者は以下を除いてがんの病歴を有する:
o臨床的に治癒している場合。
o抗がん療法または放射線療法で積極的に治療されておらず、その後3年間は治療を必要とする可能性がない。
o再発の可能性が低いと考えられる。
・参加者は、臨床的に関連のある頭蓋内腫瘍(例えば、神経膠腫、脳転移)の病歴または存在を有する。
・参加者は、試験への参加者の安全な参加及び試験の完了を妨げる臨床的に有意な病状または検査異常を有する。
・参加者は、B型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、またはヒト免疫不全ウイルス-1及び-2抗体または抗原に陽性であるか、CNSのスピロケタール感染症(例えば、梅毒またはボレリア症)の病歴を有する。
・参加者は、コッククロフト・ゴールトの式を使用して中央検査室によって計算された<30mL/分のクレアチニンクリアランス結果のスクリーニングによって示されるとおり、有意な腎臓病を有しており、再検査しても<30mL/分のままであった。
・参加者は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のスクリーニングによって示されるとおり、肝機能障害、臨床的に有意な合成機能の他の異常を有する。このスクリーニングの結果は、正常上限(ULN)の2倍以上、または総ビリルビンが、ULNの1.5倍以上であり、再検査した場合、これらの制限のうちいずれかを上回ったままである。
・参加者は、過去2年以内に、不安定または臨床的に有意な心血管疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、New York Heart AssociationクラスIII以上の心不全)を有する。
・参加者は、制御不能な高血圧症を有する(例えば、血圧(BP)は、一般的に収縮期140mmHg超または拡張期90mmHg超である)。
・参加者は、完全な左脚ブロック、2度または3度の心臓ブロック、または以前の心筋梗塞のエビデンスを含む、臨床的に有意な異常なECGの病歴または存在を有する。
・参加者は、5分間隔で少なくとも2つのECGによって示されるとおり、男性参加者の場合は>450ミリ秒、女性参加者の場合は>470ミリ秒であるFridericia式(QTcF)を使用して、QT間隔を補正している。
・参加者は、例えば、構造的心臓病(例えば、重度の左心室収縮機能障害、左心室肥大)、冠状動脈性心臓病(症候性または診断検査によって示される虚血を伴う)、臨床的に有意な電解質異常(例えば、低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、または原因不明の突然死の家族歴またはQT延長症候群などの心室性不整脈の病歴または心室性不整脈の危険因子を有している。
・参加者は、凝固障害、付随する抗凝固療法(アスピリンなどの血小板阻害剤を除く)、血小板減少症、または安全な腰椎穿刺を妨げる他の要因など、腰椎硬膜穿刺に対する禁忌を有する。
・参加者は、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、または血管性認知症など、FTD以外の状態に起因する認知症またはより軽度の症候性症候群(例えば、軽度の認知障害、軽度の行動障害、または軽度の運動障害)を有する。
・参加者は、認知機能に影響を与える可能性を有する、脳に影響を与える可能性のある臨床的に明らかな血管疾患(例えば、臨床的に有意な頸動脈または椎骨動脈狭窄またはプラーク;大動脈瘤;頭蓋内動脈瘤;脳出血;動静脈奇形)の病歴または存在を有する。
・参加者は、過去2年以内に症候性脳虚血の病歴を有するかもしくは症候性脳虚血が存在している、または一過性脳虚血発作と一致する急性イベントの過去6ヶ月以内に記録された病歴を有する。
・参加者は、重度の臨床的に有意な(持続的な神経学的欠損または構造的脳損傷)CNS外傷(例えば、脳挫傷)病歴を有する。
・参加者は、参加者を特別な危険にさらし、参加者の臨床的状態または精神的状態の評価にかなりのバイアスをかける可能性がある程度まで進行、再発、または変化すると予想される、または試験評価を完了する参加者の能力を妨害する、または施設もしくは病院でのケアと同等のものを必要とする任意の他の重度のまたは不安定な病状を有する。
・参加者は、MRI手技に耐えることができない、またはMRIに禁忌を有する。これには、限定されないが、ペースメーカー、動脈瘤クリップ、人工心臓弁、耳のインプラント、またはMRIスキャンを禁忌とする目、皮膚、もしくは身体内での異物金属物の存在、または、MRIと組み合わせて潜在的な危険をもたらす可能性のある他の病歴または検査所見が挙げられる。
【0533】
薬物関連基準
以下の薬物は、示されているように、試験開始前の以前に指定された期間、及び試験参加の全期間中禁止されている(試験中にこれらの薬物を開始した参加者は、試験的治療を中止する):
・医療モニターの承認を得て病状の治療に必要でない限り、意識または認知を損なうことが知られている薬物のいずれかの継続的な使用。これらの薬物の断続的または短期間の使用(1週間未満)は許可され得るが、Winterlight Lab Speech Assessment(WLA)またはSummerlight Lab Speech Assessment(SLA)を除き、任意の認知または行動の評価の前に、2日または5半減期のいずれか長い方を停止する必要がある。WLAまたはSLAを除いて、認知または行動の評価の前の24時間以内のカンナビノイドの使用は禁止されている。
・認知機能低下を予防または延期するために評価中の試験的能動免疫療法(ワクチン)。
・スクリーニングから1年以内の、認知機能低下を予防または延期するために評価中の任意の受動免疫療法(免疫グロブリン)または他の長時間作用型生物学的製剤。上記の抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験への参加は、この基準には適用されない。
・本試験の薬物投与(1日目)前30日以内の臨床試験(抗ソルチリン抗体の以前の第1相試験を除く)での薬物;1日目の前の30日または5半減期のいずれか長い方での任意の実験的経口療法の使用;1日目の前の12週間または5半減期以内のいずれか長い方での任意の生物学的療法の使用;またはスクリーニングから5半減期または3ヶ月以内のいずれか長い方の任意の他の試験的治療。ワクチンのように半減期を有さない実験的治療法を受けた参加者は、1日目の少なくとも12週間前にその治療を完了している。
・非精神病の適応症(例えば、嘔吐)の簡単な治療を除いて、スクリーニングから6ヶ月以内の定型抗精神病薬または神経弛緩薬。
・スクリーニングから3ヶ月以内の抗凝固薬(クマジン、ヘパリノイド、アピキサバン)。
o抗血小板治療(例えば、アスピリン、ジピリダモール)は許可されている。
・全身性免疫抑制療法または試験中に必要と予想される。
o登録前に少なくとも3ヶ月間安定しており、ヘモグロビンが9g/dLを超え、白血球数が3000/mm3を超え、好中球絶対数が1500/mm3を超え、血小板数が100000/mm3を超える場合は、10mg/日以下のプレドニゾンまたは同等のコルチコステロイドの使用が許可される。
・スクリーニングから3ヶ月以内のアヘン剤またはオピオイド(長時間作用型オピオイド薬を含む)の慢性使用。
o任意の神経認知評価前の2日または5半減期(いずれか長い方)以内を除いて、痛みに対する短時間作用型オピオイド薬の断続的な短期使用(1週間未満)が許可される。
・スクリーニングから1ヶ月以内、及び試験全体を通じて、任意の刺激薬(アンフェタミン、メチルフェニデート製剤、またはモダフィニル)。
・スクリーニングの3ヶ月前からのバルビツール酸塩または催眠薬の慢性使用。
o睡眠または不安に対するブスピロンまたは短時間作用型催眠薬の断続的な短期(1週間未満)使用は、任意の神経認知評価前の2日または5半減期(いずれか長い方)以内を除いて許可される。
【0534】
試験デザイン
この第2相多施設共同非盲検試験では、無症候性キャリア及びFTDの原因となる機能喪失型GRN突然変異のヘテロ接合性の症候性患者及びFTDの原因となるC9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長変異を伴う症候性患者における抗ソルチリン抗体の安全性、忍容性、PK、PD、及びCOAへの効果を評価する。
【0535】
図6に示すとおり、本試験には、スクリーニング期間(1日目の前6週間以内)、治療期間(48週間)、及びフォローアップ期間(抗ソルチリン抗体の最後の投与から12週間後)、及び61週目(試験終了)のフォローアップ訪問が含まれる。
【0536】
試験的治療及びフォローアップ
登録されたすべての参加者は、磁気共鳴画像法(MRI)、任意のTSPO-PET画像法、PDバイオマーカー測定のための生体液サンプリング、CSF収集のための腰椎穿刺、安全性評価、及びいくつかのCOAによるベースライン評価を受ける。
【0537】
GRNコホート及びC9orf72コホートの患者(上記の「試験参加者」セクションを参照)は、1日目及びその後4週間ごと(q4w)、49週目の終わりまで合計13回(48週間の治療期間)60mg/kgの用量で抗ソルチリン抗体を静脈内投与される。抗ソルチリン抗体は、約60分かけて静脈内投与される。参加者は、IV注入終了後、その訪問日に予定されているすべての活動が完了して少なくとも60分後までにフォローアップを行う。投薬溶液の調製手順は、薬局マニュアルに別途記載されている。
【0538】
参加者及び試験パートナーを含む認知機能検査は、スクリーニング中、ベースライン評価後12週間ごと(すなわち、13、25、37週目)、及び61週目の試験完了訪問(または早期終了訪問)時に実施される。
【0539】
イメージングは、スクリーニング中、13週目、25週目、及び61週目の試験完了訪問(または早期終了訪問)時に実施される。CSF採取のための腰椎穿刺は、スクリーニング、25週目、及び61週目の試験完了訪問時に実施される。
【0540】
参加者は、試験参加の同意を取り消す参加者を除いて、48週間の治療期間の終了後及び最後の投与(61週)の12週間後にフォローアップ評価訪問を完了する必要がある。AEが原因で中止された参加者は、その事象が解決されるまでフォローアップされる。更に、試験中の任意の時点で発生する試験薬または放射性トレーサーに関連すると考えられる重篤なAE(SAE)は、解決、参加者の同意の撤回、フォローアップ不能、または死亡のいずれかが該当する場合まで報告される。
【0541】
MRI、任意のTSPO-PETイメージング、PDバイオマーカー測定のための生体液サンプリング、CSF採取のための腰椎穿刺、及びいくつかのCOAの評価は、治療及びフォローアップ期間中に発生する。
【0542】
任意のTSPO-PETイメージング評価
TSPO-PETイメージングによって測定される脳ミクログリア活性化を評価するための任意の探索的評価は、抗ソルチリン抗体のIV投与後の脳ミクログリア活性化の変化を評価するために実施される。ベースラインTSPO-PETスキャンは、患者が他のすべてのスクリーニング評価の完了に基づいて試験参加の適格性を示した後にのみ抗ソルチリン抗体投与前、13週目、及び61週目の試験完了訪問時に実施される。
【0543】
試験薬
抗ソルチリン抗体(試験薬)は、20mMヒスチジン/ヒスチジンHCL、7.5%(w/v)スクロース及び0.02(w/v)ポリソルベート-80を含む抗ソルチリン抗体含有水溶液に、濃度50mg/mL、pH5.5で、製剤化された液体溶液として提供される。
【0544】
併用療法及び以前の療法
試験の過程で、参加者は、試験の選択基準及び除外基準に従って、スクリーニング手技中に特定された承認されている処方薬物の使用を継続する。参加者は、緊急使用のために新規薬物が必要な場合を除いて、試験責任医師に相談することなく、処方薬及び店頭販売の両方で、いかなる新規薬物も服用しないようにアドバイスされている。
【0545】
試験中の参加者の安心にとって必要と思われる併用薬はいずれも、試験責任医師の裁量で与えられる。
【0546】
制限されている薬物はいずれも、試験の選択基準及び除外基準によって要求されるとおり停止される。試験中にこれらの薬物を開始した参加者は、試験依頼者の医療モニターの裁量により、試験的治療を中止する。
【0547】
患者の参加中止
参加者が継続することが最善の利益とならない場合、参加者はいかなる時でも試験薬または試験的治療を中止させる。以下は、試験薬または試験的治療の中止の考えられる理由を列挙するものである:
・参加者が、プロトコルに準拠していない。
・参加者が、フォローアップ不能である。
・参加者が、同意を撤回する。
・参加者が、試験責任医師の意見では、試験的治療の中止を必要とする重篤または耐え難いAEを有している。
・試験責任医師の意見では、臨床状態または安全性の評価にかなりの程度影響を与える併発疾患が発症している。
・許可されていない併用薬を使用している。
・妊娠している。
・試験責任医師の裁量による。
・死亡
【0548】
AEまたはSAEが原因で中止した参加者は、その事象が解決されるまでフォローアップされる。
【0549】
試験を中止した参加者は、試験責任医師と相談して交代する。
【0550】
試験評価
試験エンドポイント
主要な安全性エンドポイント
抗ソルチリン抗体の安全性プロファイルに対する累積曝露の潜在的影響を評価するために、受けた実際の用量(体重に正規化)の三分位数を使用するなどして、用量ごとに以下を評価する:
・AE及びSAEの発生率、性質、及び重症度。
・AEによる治療中止及び試験中止の発生率。
・身体検査の異常。
・神経学的検査の異常。
・ベースラインからのバイタルサインの経時変化。
・ベースラインからのECGの経時変化。
・ベースラインと比較した投与後のMRI異常。
・ベースラインからの臨床検査の経時変化。
・シーハン自殺傾向追跡スケール(シーハン-STS)
・抗ソルチリン抗体に対するADAの発生率。
【0551】
副次的PKエンドポイント
本試験の副次的PKエンドポイントは、次のとおりである:
・指定された時点での抗ソルチリン抗体の血清濃度。
・抗ソルチリン抗体PKパラメータ。
・Cmax。
・Ctrough。
・AUCss。
【0552】
本試験の副次的PDバイオマーカーエンドポイントは次のとおりである:
・CSF中のPGRNのベースラインからの全体的な変化。
・血漿中のPGRNのベースラインからの全体的な変化。
・WBCのSORT1及びCSFのsSORT1のベースラインからの全体的な変化。
【0553】
本試験の探索的PDバイオマーカーエンドポイントは、次のとおりである:
・神経変性、リソソーム機能、及び血液、血漿、CSF中のミクログリア活性の探索的バイオマーカーのベースラインからの全体的な変化。
・全体及び局所の脳MRI萎縮尺度。
・TSPO-PETによって評価された神経炎症(任意のイメージング評価に参加することに同意した参加者のみ)。
・探索的流体バイオマーカー、イメージング測定、及びCOA間の相関。
【0554】
本試験の探索的臨床エンドポイントは次のとおりである:
・COAの装置のスコアのベースラインからの全体的な変化。
・FTD臨床評価スケール(FCRS)。
・前頭側頭型認知症評価スケール(FRS)。
・臨床全般改善度(CGI-I)。
・神経精神医学的目録(NPI)。
・カラートレイルテスト(CTT)パート2。
・高次脳機能評価の繰り返し神経心理テスト課題(RBANS)。
・Delis-Kaplanエグゼクティブ機能システム(D-KEFS;カラー-ワードの干渉のみ)。
・対人反応性指標
・Winterlight and Summerlight Lab Speech Assessments(WLA及びSLA;これらの任意の評価に参加することに同意する参加者のみ)。
【0555】
分析集団
登録集団:登録集団は、インフォームドコンセントフォームに署名し、試験に参加する資格があるすべての参加者で構成されている。登録集団は、試験集団及びCOAの要約に使用される。
【0556】
安全性分析集団:安全性分析集団は、抗ソルチリン抗体を少なくとも1回受けるすべての参加者で構成されている。安全性分析集団は、安全性の要約に使用される。
【0557】
PK分析集団:PK分析集団には、少なくとも1つのPKパラメータを決定するための適切な評価を有する安全性集団のすべての参加者を含む。PK分析集団は、PKの要約に使用される。
【0558】
PD分析集団:PD分析集団には、ベースライン及び少なくとも1回の投与後PD評価の両方を有する安全性分析集団のすべての参加者が含まれる。PD分析集団は、PD活性の要約に使用される。
【0559】
バイオマーカー集団:バイオマーカー集団は、ベースラインと、少なくとも1つのPDバイオマーカーパラメータの少なくとも1つの投与後測定値の両方を有する安全性集団のすべての参加者で構成される。PDバイオマーカー集団は、探索的PDバイオマーカーの要約に使用される。
【0560】
記述統計は、臨床的に有意な関連所見を評価するために使用される(例えば、試験薬の中止につながる試験薬関連のAEまたは試験薬関連のSAE)。
【0561】
安全性エンドポイントを除いて、上記で指定された他のすべての試験エンドポイントは、GRN突然変異キャリア対C9orf72突然変異キャリアごとに要約されている。
【0562】
統計分析方法論
統計分析は、SASソフトウェアバージョン9.4以降(SAS Institute Inc.,Cary,North Carolina,USA)を使用して実施する。カテゴリー変数については、頻度及びパーセンテージが表示される。連続変数は、記述統計(参加者数、平均、標準偏差[SD]、中央値、最小値、最大値、及び該当する場合は95%信頼区間[CI])を使用して要約される。すべてのCIは両側であり、90%のCI及び幾何平均が使用されるPKパラメータを除いて、5%の有意水準を使用して実施される。
【0563】
サブタイプのサイズが少なくとも2名の参加者である場合、すべての要約は、ベースラインでの参加者の状態及び認知症の種類ごとに表示される(aFTD-GRN対FTD-GRN bvFTD対FTD-GRN PPA対FTD-C9orf72 bvFTD対FTD-C9orf72 PPA)。
【0564】
ベースラインは、最初の試験薬投与の開始前の繰り返される予定外の測定を含む、最後の欠落のない(last non-missing)評価として定義される。
【0565】
参加者の人口統計、病歴、及びベースライン特性
人口統計学的情報は、スクリーニング時に記録される。
【0566】
現在の病歴、他の関連する病歴、及び基礎疾患に関する情報を含むすべての関連病歴は、試験薬投与前のスクリーニング時に記録される。診断特性フォームは、症候性参加者のみのスクリーニング時に記入される。試験過程中に症候性になった無症候性の参加者はいずれも、診断特性フォームに記入する。これらの参加者の場合、診断特性フォームは、臨床症状を呈する最初の訪問時にのみ記入される。
【0567】
人口統計(限定されないが、年齢、性別、人種など)及びベースライン及び背景の特性が要約表に示される。定性的データ(例えば、病歴、診断特性)は、分割表に要約されている。定量的データ(年齢など)は、定量的記述統計を使用して要約されている。すべての遺伝子型データは要約表に示されている。
【0568】
試験薬及び以前の薬物/併用薬物
試験薬投与データは、投与を受けた回数及び総投与量ごとに要約されている。全体的な治療コンプライアンスは、投与の中断/中止に基づいて計算される。
【0569】
以前の薬物及び併用薬物は、2019年3月以降のWHO-DDを使用してコード化されている。すべての以前の薬物及び併用薬物のデータは、解剖学的治療化学クラス及び一般名ごとに要約される。以前の薬物及び併用薬物について、別々の要約が提示されている。
【0570】
安全性評価
すべての安全性の要約は、安全性分析集団を使用して提示されている。
【0571】
試験薬との関係に関係なく、有害事象、放射性トレーサー(18F-PBR06もしくは11C-PBR28)またはTSPO-PETの任意の評価手技が記録される。AEは、MedDRAバージョン21.1以降に従って、器官別大分類(system organ class)及び基本語(preferred term)にコード化されている。以下のAE要約は、ベースラインでの器官別大分類、基本語、参加者状態、及び認知症種類ごとに報告されている。
・治療下で発現したAE(TEAE)。
・治療関連TEAE。
・試験薬との因果関係によるTEAE。
・重症度ごとのTEAE。
・SAE。
・試験薬の投与中止に至ったTEAE。
・試験中止に至ったTEAE。
【0572】
安全性の報告のために、ベースラインと比較した投与後のMRIの臨床的に有意な変化はいずれも、試験責任医師によって評価され、AEとして含まれる。MRIによって特定されたAEの個別の分析は実施しない。
【0573】
身体的及び神経学的検査
意識、見当識、脳神経、運動及び感覚系、協調及び歩行、ならびに反射の評価を含む完全な神経学的検査が実施される。ベースライン異常からの変化及び以前の神経学的検査からの変化は、その後の各神経学的検査時に記録される。臨床的に有意であると考えられる場合、新しいまたは悪化した異常はAEとして記録する。
【0574】
頭、目、耳、鼻、及び喉、及び心臓血管系、皮膚科、筋骨格系、呼吸器系、及び胃腸系の評価を含む完全な身体検査(PE)が実施される。限定された症状指向検査は、他のすべての指定された時点で、試験薬投与前(該当する場合)、または臨床的に必要とされる場合に実施される。ベースラインで観察された異常、及び他のすべての訪問時の新しいまたは悪化した臨床的に有意な異常が記録される。新しい異常PE所見は、次回の予定された訪問時にフォローアップされる。臨床的に有意であると考えられる場合、新しいまたは悪化した異常はAEとして記録する。身長(cm)は、スクリーニング時に測定される。
【0575】
身体的及び神経学的検査のための別々のシフト表は、所見の分類的解釈ごとに生成され、身体システムごとに提示される。
【0576】
参加者は、仰臥位で5分以上休息した後、仰臥位の収縮期及び拡張期血圧(BP)、脈拍、体温、ならびに呼吸数を記録する。その後、体温及び呼吸数を測定する。ベースラインで観察された異常、及びその後の訪問での新しいまたは悪化した臨床的に有意な異常を記録する。臨床的に有意であると考えられる場合、新しいまたは悪化した異常はAEとして記録する。体重(kg)は、バイタルサインが取られるのと同じ訪問時に取る。
【0577】
バイタルサイン及び体重の実測値及びベースラインからの変化は、記述統計を使用して各時点でまとめる。
【0578】
患者が5分以上仰臥位になった後に、12誘導ECGを3回得る。すべてのECGは、臨床安全性に基づいて分析される(集中的なQT分析は行わない)。ECGの変化の臨床的有意性は、参加者の病歴、PE、及び併用薬に関連してECGレポートを確認した後、試験責任医師によって決定される。
【0579】
定量的ECG結果の実測値及びベースラインからの変化は、記述統計を使用して、各時点で要約している。ECGの分類的解釈のため、シフト表が生成される。グレード3以上のQTcF延長が記載される。
【0580】
臨床検査分析
血液試料及び尿試料は、臨床安全検査(化学、凝固、血液学、尿検査、血清学、及び妊娠検査)のために採取される。
【0581】
臨床検査結果の実測値及びベースラインからの変化は、記述統計を使用して各時点で要約される。シフト表は、臨床検査結果用に生成される。
【0582】
自殺傾向追跡スケール
シーハン自殺傾向追跡スケールは、自殺傾向の核となる現象を経時的に評価し、監視するために設計された簡単なスケールである。試験責任医師が評価を行い、自殺念慮または自殺行動があると判断した場合、AEが記録される。
【0583】
シーハン-STS合計スコアの要約表は、記述統計を使用して時点ごとに示す。
【0584】
免疫原性分析
血清試料は、抗薬物抗体(ADA)の測定のために採取される。追加のADA試料は、注入関連反応の兆候及び症状を有する参加者において採取される。対応する追加のPK試料が同じ時点で得られ、サイトカイン分析用の血漿試料が採取される。
【0585】
抗ソルチリン抗体に対するADAの免疫原性試験の結果は、時点ごとに要約されている。
【0586】
薬物動態学的及び薬力学的評価
試料採取
抗ソルチリン抗体の血清濃度を評価するために、血清試料が採取される。PK試料はすべて、試験薬投与日に注入に使用されなかった腕から採取する。
【0587】
PGRNのレベルを評価するために、血液PGRN血漿試料が採取される。
【0588】
全血試料は、WBC上のSORT1のレベルの評価、及び他の分析物の評価のために採取される。
【0589】
脳脊髄液試料は、抗ソルチリン抗体の濃度について判定される。脳脊髄液試料は、PGRN及びsSORT1のレベルについても評価される。脳脊髄液試料は、PK、PD、及び探索的PDバイオマーカー測定値を評価するために、スクリーニング時の試験薬投与前(該当する場合)、25週目、及び試験完了/早期終了時に腰椎穿刺によって採取される。25週目の腰椎穿刺は、探索的PDバイオマーカーの概説に基づいて調整される。
【0590】
探索的全血、血漿、及びCSF PDバイオマーカーの試料は、神経変性(すなわち、ニューロフィラメント-軽鎖[Nfl]、タウ、pタウ)、リソソーム機能(すなわち、カテプシン)、及びミクログリア活性(すなわち、YKL-40、インターロイキン-6)、末梢細胞におけるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現の評価のため、ならびに疾患生物学及び抗ソルチリン抗体への応答に関連する他の分析物のレベルを潜在的に評価するために採取される。
【0591】
副次的薬物動態エンドポイントの分析
すべてのPKの要約は、PK分析集団を使用して提示されている。
【0592】
個々の平均血清抗ソルチリン抗体濃度-時間データは、試験日及び突然変異キャリアごとに表にされ、プロットされている。該当する場合、抗ソルチリン抗体の血清PKは、抗ソルチリン抗体の複数回投与後に得られた結果に基づいて、試験日及びコホートごとに、最大観察濃度(Cmax)、トラフ濃度(Ctrough)、及び濃度-時間曲線下面積(AUCss)の推定ごとに要約されている。
【0593】
抗ソルチリン抗体の個々の血清濃度対実際時間のデータを使用して、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)(Certara USA Inc.,Princeton,NJ,USA)バージョン6.4以降を使用した標準的な非コンパートメント法によってPKパラメータを導出する。個々のPKパラメータは、リストに提示する。PKパラメータは、次の記述統計を使用して表に要約する:n、算術平均、SD、変動係数(CV)、幾何平均、幾何平均CV、最小値、中央値、及び最大値。幾何平均及び幾何平均、90%CI、及びCVは、Cmax、Ctrough、及びAUCssにのみ含まれる。
【0594】
データが許す限り、関連するPKパラメータと、人口統計学、安全性(QT変化を含む)、及びPD測定値との潜在的な相関関係を調べる。これらの相関関係の特徴を明らかにするために、集団PK分析などの追加のモデリングを実施する。
【0595】
副次的及び探索的薬力学的エンドポイントの分析
すべてのPDの要約は、PD分析集団を使用して提示されている。
【0596】
PDエンドポイントは、ベースライン及び指定された各時点での試験日及び突然変異キャリア、ならびに各PDエンドポイントのベースラインからの変化率ごとに記述し、要約している。血漿試料及びCSF試料で評価される薬力学的エンドポイントには、限定されないが、PGRN、SORT1、sSORT1、及びNflが挙げられる。
【0597】
PDエンドポイントの要約統計量及びそれに対応するベースラインからの変化(すなわち、ベースラインからの変化率)は、試験日及びコホートごとに表にしている。PDエンドポイントの時間経過は、観測値及びベースライン値からの変化率の両方についてグラフで表示している。更に、反復測定の混合モデル(MMRM)を使用して、95%CIのベースラインからのPDエンドポイントの平均変化率を要約している。PDエンドポイントと臨床反応との関連も調査する。
【0598】
PK-PD関係は、非線形混合効果モデリングを使用した母集団PK/PDモデルごとにモデル化される。ベースラインの探索的PDバイオマーカーは、ベースライン血清またはCSFのPGRNレベル及びPGRNのジェノタイピングなど、抗ソルチリン抗体に対する応答の潜在的な予測因子としても検討されている。
【0599】
探索的薬力学的バイオマーカーエンドポイントの分析
すべての探索的PDバイオマーカーの要約は、バイオマーカー集団を使用して表示される。
【0600】
体液PDバイオマーカーレベル、イメージングPD測定値、及び臨床転帰測定値の間の相関を評価する。
【0601】
磁気共鳴画像法(MRI)
脳のMRIスキャンが実行され、安全性の評価のために、ならびに全体及び局所的脳体積、白質高信号域体積、脳灌流(動脈スピンラベリングMRIで測定)、分数異方性、平均拡散係数、軸方向拡散係数、及び放射状拡散係数(拡散テンソルイメージングによって測定)、ならびに機能的脳活動(機能的MRIによって測定)の評価のために一元的に検討される。
【0602】
定量的MRIパラメータの実測結果及びベースライン値からの変化率は、記述統計を使用して、訪問ごとに要約されている。ベースライン値からの平均変化率、プラスまたはマイナスSDもプロットに表示する。
【0603】
トランスロケータータンパク質陽電子放出断層撮影(TSPO-PET)
147位のアミノ酸に影響を与えるTSPOの多型(rs6971)により、集団の約10%がTSPO放射性リガンドのTSPOミトコンドリアタンパク質への低親和性結合を呈する。スクリーニング訪問の一部として、イメージング部位に移動する前に、参加者がインフォームドコンセントに同意してそれを提供した場合、任意のTSPO-PETイメージング評価のために、事前スクリーニングを受ける。任意の血液試料を臨床現場で採取して、rs6971 TSPO多型を遺伝子型決定し、それらが高親和性バインダー(147位のAla/Alaアミノ酸)、中親和性バインダー(Ala/Thr)、または低親和性バインダー(Thr/Thr)のいずれであるかを判断する。低親和性バインダー(Thr/Thr)であるすべての個体は、任意のTSPO-PETイメージング評価への参加から除外される。高親和性及び中親和性バインダーは、任意のTSPO-PETイメージング評価の参加に適格である。
【0604】
任意のTSPO-PETイメージングの参加者は、抗ソルチリン抗体投与前、及び13週目及び試験完了訪問(61週目)にTSPO-PETイメージングを受ける。ベースラインの任意のTSPO-PETイメージングは、すべてのスクリーニング評価の完了に基づいて、参加者が試験参加の適格性を示した後にのみ、抗ソルチリン抗体投与前に実施される。
【0605】
TSPO-PET分析の全体的な目標は、[11C]PBR28及び[18F]PBR06を、抗ソルチリン抗体による治療の前後の試験患者の脳におけるミクログリア活性化の放射性トレーサー薬力学(PD)バイオマーカーとして評価することである。
【0606】
更に、TSPO-PET分析を実施して、抗ソルチリン抗体のIV投与後の脳ミクログリア活性化の変化を評価する。TSPO-PET分析中、MRI画像ならびに[11C]PBR28及び[18F]PBR06 PET画像は、[11C]PBR28及び[18F]PBR06の局所的な結合/取り込みを分析するために、解剖学的に基づく関心領域(ROI)の定義のために並べ合わせる。解剖学的テンプレートは、MRIスキャン及びPETスキャンの両方において、脳の下部構造を定義するために使用される。
【0607】
他の探索的薬力学的バイオマーカー
他の探索的PDバイオマーカーパラメータの実測結果及びベースライン値からの変化は、記述統計を使用して、訪問ごとに要約されている。ベースライン値からの平均変化、プラスまたはマイナスSDもプロットに表示する。
【0608】
探索的臨床転帰評価エンドポイントの分析
以下の神経認知及び機能検査が実施される。神経認知及び機能検査は、試験薬投与前(該当する場合)及び任意のストレスのかかる手順(採血、画像診断など)前に実施される。
・前頭側頭型認知症臨床評価スケール(FCRS)。
・前頭側頭型認知症評価スケール(FRS)。
・臨床全般改善度(CGI-I)。
・神経精神医学的目録(NPI)。
・カラートレイルテスト(CTT)パート2。
・高次脳機能評価の繰り返し神経心理テスト課題(RBANS)。
・Delis-Kaplanエグゼクティブ機能システムカラー-ワード干渉検査。
・対人反応性指標。
・Winterlight Lab Speech Assessment(WLA)及びSummerlight Lab Speech Assessment(SLA)(英語に堪能であり、任意の評価に同意し、参加する資格がある米国、英国、及びカナダの参加者のみ)。
【0609】
すべての臨床転帰評価(COA)の要約は、登録集団を使用して提示されている。COAの分析の詳細には、合計スコア及びサブスケールスコアが含まれる。
【0610】
COA合計及び/またはサブスケールスコアの実測結果及びベースライン値からの変化は、記述統計を使用して、訪問ごとに要約されている。ベースライン値からの平均変化、プラスまたはマイナスSDもプロットに表示する。
【0611】
COAエンドポイントは、MMRM方法論を使用して判定する。従属変数は、ベースラインスコアから各ベースライン後の訪問判定への変化である。固定効果には、参加者の突然変異型及び認知症型が含まれ、時点は反復測定である。限定されないが、ベースラインのPGRNレベル、性別、年齢などの共変量を調べる。
【0612】
薬理ゲノミクス評価
DNA抽出のためスクリーニング時に血液試料を採取し、全ゲノムシーケンスによる分析を行って、試験薬に対する応答を予測し、より重篤な病状への進行に関連し、AEの発生に対する感受性に関連する一般的及びまれな遺伝子変異形を特定することが可能になるか、または疾患の生物学の知識及び理解を高めることができる。
【0613】
実施例4:筋萎縮性側索硬化症(ALS)における抗ソルチリン抗体を評価するための第2相臨床試験。
この実施例では、ALS患者における抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するための第2相試験について記載する。
【0614】
試験の目的
第1の目的
本試験の第1の目的は、抗ソルチリン抗体による治療がALSの病態生理に影響を与え、臨床的利益を及ぼすかを判断することである。
【0615】
第2の目的
本試験の第2の目的は次のとおりである:
・ALS患者における抗ソルチリン抗体の安全性及び忍容性を判定する。
・ALS患者における抗ソルチリン抗体の薬物動態及び薬力学を判定する。
【0616】
試験集団
以下の基準のいずれかを満たす患者が本試験に含められる:
・TDP-43の蓄積または別のTDP-43関連の病状を呈する家族性または散発性のALS患者。
・TDP-43突然変異を有する家族性または散発性のALS患者。
・C9orf72ヘキサヌクレオチドリピート伸長を有する家族性または散発性のALS患者。
【0617】
試験的治療
ALS患者は、1日目及びその後4週間ごと(q4w)に60mg/kgの用量で抗ソルチリン抗体を静脈内投与される。抗ソルチリン抗体は、約60分かけて静脈内投与される。投薬溶液の調製手順は、薬局マニュアルに別途記載されている。
【0618】
試験評価
薬物動態評価
血液中の標的の関与は、イムノアッセイを使用して白血球中の遊離SORT1レベルを測定することによって判定される。
【0619】
薬力学的評価
以下の薬力学的マーカーは、血清中及びCSF中の両方で測定される:
・プログラニュリン(アジポゲンイムノアッセイ)。
・神経変性のマーカー、例えば、ニューロフィラメント軽鎖(QuanterixまたはRoche Diagnostics)。
・グリア活性化のマーカー、例えば、YKL-40(CHI3L)、IL-6、GFAP(Roche Diagnostics)。
・TDP-43病理学のマーカー。
【0620】
更に、MRI試験は、脳萎縮(構造的MRI)、接続性、及び遊離水/炎症(DTI)に対する抗ソルチリン抗体の効果を判定するために使用される。
【0621】
実施例5:無症候性GRN突然変異キャリア(aFTD-GRN)における抗ソルチリン抗体の単回静脈内投与及びFTD-GRN患者における抗ソルチリン抗体の複数回静脈内投与の効果を評価するための第1B相試験。
この実施例は、実施例2に記載の非盲検第1b相試験の結果を提供し、本試験では、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを、60mg/kgで単回投与されたグラニュリン突然変異の無症候性キャリア(aFTD-GRN)、及び抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを、30mg/kgで、q2w(2週間ごと)で、3回投与されたグラニュリン突然変異の症候性キャリア(FTD-GRN患者)を評価した。
【0622】
結果
安全性の結果
重篤な有害事象(SAE)は、観察されなかった。すべての有害事象は、軽度であった。薬物または試験の中止は発生しなかった。
【0623】
血漿PGRNレベル
図7に示すとおり、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与により、aFTD-GRNキャリア(丸)及びFTD-GRN患者(四角)の血漿PGRN濃度が増加した。健康なボランティア(HV)及びFTD患者の血漿PGRN濃度の中央値は、比較のために
図7に提供されている。FTD-GRN患者では、PGRNレベルは、本試験全体において増加し、FTD-GRN患者で観察されたベースラインレベル中央値よりも最大3倍高くなり、健康なボランティアに匹敵するレベルに達した。この効果は、投与後56日目(最後の投与から約4週間後)まで持続した。同様の結果がaFTD-GRNキャリアで観察され、PGRNのピークレベルは、ベースラインレベル中央値の最大4倍に達した。
【0624】
CSF PGRNレベル
図8に示すとおり、CSF中のPGRNの濃度は、FTD-GRN患者(症候性)またはaFTD-GRNキャリア(無症候性)のいずれかに抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを投与した後に増加した。例えば、FTD-GRN患者に抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを投与して56日後、CSF中のPGRN濃度の中央値(ng/ml)は、ベースライン(投与前)PGRNレベルの約2倍であった。同様に、aFTD-GRNキャリアに抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSを投与して12日後、CSF中のPGRN濃度の中央値は、ベースライン(投与前)PGRNレベルの約2倍であった。健康なボランティア(HV)におけるPGRNの濃度は、比較用に
図8に提供されている。
【0625】
FTD-GRN患者における疾患タンパク質のシグネチャ
SOMASCANアプタマーベースのプロテオミクスアッセイ(例えば、Candia et al.(2017)Sci Rep 7,14248)を使用して、FTD-GRN患者のCSFからタンパク質シグネチャプロファイルを生成した。このアッセイでは、関連するバイオマーカーを特定するために、FTD-GRN患者のCSF中の1,000を超えるタンパク質の相対的な存在量を、S-60-15.1[N33T]LALAPSによる治療の前後(57日目)に分析した。
図9は、4方向復元プロットを使用した結果を示しており、各データポイントは、個々のタンパク質を表している。最も高い水平線より上のデータポイントはすべて、FTDにおいて上方制御されているタンパク質である。最も高い水平線より下のデータポイントはすべて、FTDにおいて下方制御されているタンパク質である。黒い矢印で示されている垂直線の右側にあるデータポイントはすべて、S-60-15.1[N33T]LALAPSによって上方制御されているタンパク質である。白抜きの矢印で示されている垂直線の左側にあるすべてのデータポイントは、S-60-15.1[N33T]LALAPSによって下方制御されているタンパク質である。したがって、右下の象限は、S-60-15.1[N33T]LALAPSがFTDで下方制御されるタンパク質を上方制御することを示し、左上の象限は、S-60-15.1[N33T]LALAPSがFTDで上方制御されるタンパク質を下方制御することを示している。したがって、S-60-15.1[N33T]LALAPSは、これらの象限に示されているように、病状のタンパク質シグネチャを打ち消し、この効果は、右上及び左下の象限でデータポイント(タンパク質)の量が少ないことを考慮すると、統計的に非常に有意である。
【0626】
S-60-15.1[N33T]LALAPSによって上方制御される右下象限のタンパク質としては、グラニュリン及びカテプシンB(CTSB)などのFTDで下方制御されるリソソームタンパク質が挙げられる。S-60-15.1[N33T]LALAPSによって下方制御される左上象限のタンパク質としては、オステオポンチン(SPP1)などのFTDで上方制御される炎症性タンパク質が挙げられる。したがって、疾患タンパク質シグネチャの逆転は、これらのタンパク質が通常の状態で他のように機能する機能と一致する。
図11A~11Bは、S-60-15.1[N33T]LALAPSによる治療前後(57日目)の健康なボランティアとFTD-GRN患者の脳脊髄液(CSF)中のCTSB及びSPP1タンパク質のレベルを詳細に示している。
図11Aが示すとおり、SPP1は、健康なボランティア(「HV-0日目」)と比較して、未治療のFTD患者(「FTD-0日目(治療前)」)において上方制御され、S-60-15.1[N33T]LALAPSによる治療では、FTD患者(「FTD-57日目(治療後)」)においてSPP1レベルが有意に低下した。逆に、
図11Bが示すとおり、CTSBは、健康なボランティア(「HV-0日目」)と比較して、未治療のFTD患者(「FTD-0日目(治療前)」)において下方制御され、S-60-15.1(「N33T」)LALAPSによる治療では、FTD患者(「FTD-57日目(治療後)」)において、CTSBレベルを有意に増加させた。
【0627】
図9に示されている4方向回復プロットの左上の象限にある追加のタンパク質が同定され、以下の炎症性タンパク質が含まれる:YWHAE(14-3-3タンパク質イプシロン)、同種移植炎症性因子1(AIF1)、コロニー刺激因子1(CSF1)、キチナーゼ1(CHIT1)、リンパ球抗原86(LY86)、及びCD86。これらの結果は、FTDにおいて上方制御されている特定の炎症性タンパク質が、S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与後に下方制御されるかまたは正常化されることを示している。
【0628】
図9に示す4方向回復プロットの右下の象限にある追加のタンパク質は、N-アセチルグルコサミンキナーゼ(NAGK)として同定した。NAGKは、FTDにおいて下方制御されているリソソームタンパク質である。これらの結果は、FTDにおいて下方制御されている特定のリソソームタンパク質が、S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与後に上方制御されるかまたは正常化されることを示している。
【0629】
ニューロフィラメント軽鎖(NfL)レベル
ニューロフィラメント軽鎖(NfL)は、FTDを含む神経変性疾患のバイオマーカーである。NfLレベルは、対照と比較してFTD-GRN患者で5~7倍上昇している(Meeter et al.(2016)Ann.Clin.Transl.Neurol.3(8):623-636)。逆に、NfLレベルは、他の神経変性疾患において有効である薬物による治療の約6ヶ月後に減少することが示されている(Kuhle et al.(Mar2019)Neurology92(10)e1007-e1015);Olsson et al.(2019)Journal of Neurology 266:2129-2136)。したがって、血漿NfLレベルは、S-60-15.1[N33T]LALAPSによる治療後、FTD-GRN患者で調べた。
【0630】
図10Aは、85日目まで、つまり最初の投与から約3ヶ月後に血液試料が入手できた5名の患者の予備データを示している。NfL血漿レベルは、QuinterixによるSIMOA Nf-Light Advantageアッセイを使用して測定した。
図10Aでは、NfL血漿レベルは、5名の患者それぞれのベースラインレベルに対する比率として、様々な時点で示す。
図10Bは、
図10Aのデータの幾何平均を示しており、これは、血漿NfLレベルの約14%の減少の初期傾向を示唆するものである。
【0631】
結論
この進行中の第1b相試験の結果は、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが一般的に安全であり、最高用量レベルである60mg/kgまで十分に許容されることを示している。更に、これらの結果は、抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSが、aFTD-GRN突然変異キャリア及びFTD-GRN患者の血漿及びCSF中のPGRNレベルを増加させ、健康なボランティアで観察された正常範囲内までこれらのレベルを回復させることを示している。更に、FTD-GRN患者への抗ソルチリン抗体S-60-15.1[N33T]LALAPSの投与は、CSF中のタンパク質シグネチャの正常化をもたらした。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27-1】
【表27-2】
【表27-3】
【表27-4】
【表28-1】
【表28-2】
【表29】
【表30-1】
【表30-2】
【表30-3】
【表30-4】
【表31-1】
【表31-2】
【表31-3】
【表31-4】
【表31-5】
【表31-6】
【表31-7】
【配列表】