(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】脳神経の耳麻酔による疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20240701BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240701BHJP
A61K 31/4152 20060101ALI20240701BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240701BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240701BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240701BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240701BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240701BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240701BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240701BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240701BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240701BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240701BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K31/167
A61K31/4152
A61P25/00
A61P27/16
A61P13/00
A61P1/00
A61P9/00
A61P11/00
A61K47/12
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/12
A61P11/04
A61P11/06
A61P3/04
A61P11/14
(21)【出願番号】P 2022016897
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2018543020の分割
【原出願日】2016-11-02
【審査請求日】2022-03-08
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515300826
【氏名又は名称】トーマス エム.クルーズ
【氏名又は名称原語表記】Thomas M.CREWS
【住所又は居所原語表記】3008 Jones Mille Road,Statesboro,GA 30461 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,エム.クルーズ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06093417(US,A)
【文献】国際公開第2014/179814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の脳神経に関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善するために使用される医薬組成物であって、
前記疾患は、神経精神医学関連疾患、耳鼻咽喉(ENT)関連疾患、GU関連疾患、胃腸(GI)関連疾患、心臓関連疾患、肺関連疾患または代謝関連疾患であるが、前記対象が耳感染症又は耳痛に罹患しておらず、
前記医薬組成物は少なくとも1つの麻酔剤を含むが、鎮痛剤を含まず、
かかる治療を必要とする対象の外耳道に対して、前記医薬組成物の有効量を投与されるものであり、かつ前記対象の外耳道に対して、前記医薬組成物を投与されない対象の特定の脳神経の生理学的活性と比較して、前記対象の特定の脳神経の活性を生理学的に変化させるのに十分な濃度で投与されるものであり、
前記麻酔剤は
、テトラカイン
及びリドカインから選択される少なくとも1種である医薬組成物。
【請求項2】
前記特定の脳神経が、
三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経、舌下神経、迷走神経またはそれらの組合せである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記神経精神医学関連疾患が、
慢性疲労症候群、強迫性障害、パニック発作、三叉神経痛、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、不安頭痛、不眠症、末梢神経障害、ADHD、吐き気、非特異的な手の振戦、坐骨神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー痛及び多汗からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬
組成物。
【請求項4】
前記耳鼻咽喉(ENT)関連疾患が、
扁桃摘出術後疼痛、咽頭痛、喉頭痛、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、いびき、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、三叉神経痛及び側頭骨顎関節痛からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
消化器/泌尿器(GU)関連疾患が、
膀胱痙攣、月経困難症、骨盤痛、早産、子癇前症、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、月経過多、頻尿及び持続性腟出血からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記胃腸(GI)関連疾患が、
過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性結腸炎、胃酸逆流、胃炎、胃腸炎、妊娠悪阻、食欲抑制、慢性便秘、慢性下痢及び膵炎からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記心臓関連疾患が、
起立性(神経原性)低血圧、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、心臓手術に由来する咳、心ブロック及び心房収縮からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記肺関連疾患が、
喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記代謝関連疾患が、
高血圧、糖尿病、高血糖症及び高コレステロール血症からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記麻酔剤がリドカインである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記麻酔剤がテトラカインである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物がさらに、抗生物質、血管収縮剤、グリセリン、エピネフリンまたは酢酸のうちの1つ以上を含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、溶液状で投与される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、フォーム状で投与される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記麻酔剤が、前記医薬組成物中に、1mL当たり2~20mgの濃度で含まれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記麻酔剤が、前記医薬組成物中に、1mL当たり2~15mgの濃度で含まれる請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Thomas M.Crewsにより2015年11月3日に出願された米国特許出願第14/931,581号の利益及び優先権を主張する。米国特許出願第14/931,581号は、2014年5月5日に出願された国際出願第PCT/US2014/036855号の一部継続出願であり、当該国際出願は、2013年5月3日に出願された米国仮出願第61/819,023号の優先権を主張する。これら出願の各々の内容は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。米国仮出願第61/819,023号、PCT/US2014/036855、及び米国特許出願第14/931,581号の明細書、図面、ならびに全開示は、すべての目的のため、特定の参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、及び刊行物は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載され特許請求される本発明の日付において、当業者に知られている最新技術をより完全に説明するために、参照することによりそれらの全体が本出願に組み込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象である材料を含む。著作権の所有者は、米国特許商標局の特許ファイル及び記録に記載される、特許文書または特許開示の何人によるに複写に対しても異議はないが、それ以外はすべての著作権を留保する。
【0004】
本開示は、第5脳神経(三叉神経)、第7脳神経(顔面神経)、第9脳神経(舌咽神経)、及び第10脳神経(迷走神経)の耳麻酔を行うことによる、様々な疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0005】
交感神経のシナプス前神経細胞体は、脊髄分節T1-L2の側角に位置する。交感神経のシナプス後細胞体は、神経節、すなわち、交感神経鎖神経節または脊椎前神経節のいずれかにある。交感神経のシナプス前線維は、白交通枝を介して交感神経鎖に達し、それらが入るレベルにおいてシナプスを形成し、シナプスに対して上下するか、またはシナプスを形成することなく、内臓神経として交感神経幹を離れ、脊椎前神経節に行くかのいずれかである。交感神経のシナプス後線維は、後枝及び前枝に分布するように灰白交通枝を介して脊髄神経に入る場合、血管に分布するように血管周囲叢を形成する場合、または標的器官に直接入るように移動する場合がある。交感神経系は、基本的に身体のすべての部分に対して交感神経支配をもたらす。
【0006】
副交感神経のシナプス前細胞体は、脳幹ならびに脊髄分節S2、S3、及びS4の側角に位置し、第3、第7、第9、及び第10脳神経において、ならびに脊髄神経S2、S3、及びS4の前枝から生じる骨盤内臓神経においてCNSを離れる。副交感神経のシナプス後細胞体は、頭部における4対の神経節(第3、第7、及び第9脳神経と関連する)に、さもなければ標的器官上の、またはその壁内のいずれかの微視的神経節に位置する。副交感神経系の分布は、交感神経系よりも限られており、第3、第7、及び第9脳神経は平滑筋及び頭部の腺を提供し、迷走神経は左結腸曲まで内臓器官を提供し、骨盤内臓神経は下行及びS状結腸、直腸、ならびに骨盤内臓器を提供する。外性器を除き、副交感神経系は体壁には達しない。
【0007】
自律神経系は、脊椎動物種が、それらの器官の機構について考える必要なしに日常業務をこなすことを可能にする。心臓が鼓動し、腸が消化し、血管が径を変え、脊椎動物はあ
らゆる状況に適切に適応するが、すべて我々はそれについて考える必要はない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第5、7、9、10、11、及び12脳神経を、副交感神経系、交感神経系とともに麻酔する目的で、外耳道の局所耳麻酔を行うことを含む、様々な疾患の治療方法を提供する。1つの実施形態では、本発明は、自律神経系の耳麻酔を提供する。1つの実施形態では、耳麻酔は、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経、またはそれらの組合せにおいて行われる。本発明は、さらに、1つ以上の麻酔剤(例えば、リドカイン及び/またはテトラカイン)を、医薬担体(例えば、賦形剤)グリセリンとともにエピネフリンを含む、またはエピネフリンを含まない溶液の耳用医薬組成物を投与することによる、一般体性神経系及び一般内臓神経系の調節を提供する。いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物は、さらに鎮痛剤、例えば、ピラゾロン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、該ピラゾロン誘導体はアンチピレンである。本発明は、迷走神経を介して交換神経叢まで、交感神経系の耳刺激を行うことを含む様々な疾患の治療方法を提供する。本発明はまた、迷走神経を直接、及び交感神経を間接的に耳麻酔し、ひいては一般体性求心性シグナル及び一般内臓求心性シグナルを遮断することによって、本明細書に開示の任意の様々な疾患に由来する痛みの治療方法を提供する。本発明はさらに、視床核の麻酔をもたらす迷走神経の耳麻酔を行い、一般内臓求心性疼痛及び一般体性求心性疼痛の調節をもたらすことを含む、様々な疾患に由来する痛みの遮断方法を提供する。様々な実施形態では、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。
【0009】
様々な実施形態では、本発明は、安全かつ非侵襲的な方法を提供し、それにより、第5脳神経(三叉神経)、第7脳神経(顔面神経)、第9脳神経(舌咽神経)、及び第10脳神経(迷走神経)に関連する多くのヒトの疾患及びそれらの症状を治療する。本開示は、侵襲的かつコストのかかる外科処置に頼らない神経の正常な生理学的機能を破壊する方法を提供する。本開示の方法は、求心性及び遠心性シグナルの両方の伝達を、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、または迷走神経を介して伝達されることから「遮断」することが可能である。神経におけるシグナルの伝達のかかる遮断は、医薬組成物が対象の外耳道に投与される局所耳麻酔処置によって達成される。それは、これら神経及びそれらの特定の近傍ならびにそれらの機能の調節を可能にするそれぞれの神経節との関係の皮膚に影響する耳麻酔である。それは、特定の疾患経過の発現の調節をもたらす機能の調節である。
【0010】
実施形態では、本開示は、疾患の症状の治療方法を提供し、これは、対象の外耳道に対して、以下を含む医薬組成物を局所投与することを含む:(i)鎮痛剤及び(ii)麻酔剤。実施形態では、該鎮痛剤は、アムピロン、ジピロン、アンチピリン、アミノピリン、及びプロピフェナゾンからなる群から選択される少なくとも1つのピラゾロン誘導体である。好ましい実施形態では、該鎮痛剤はアンチピリンである。実施形態では、該麻酔剤は、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ラロカイン、ピペロカイン、プロポキシカイン、プロカイン、ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン、アメトカイン、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン、ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、リグノカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、及びそれらの医薬的に許容される誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましい実施形態では、該麻酔剤はベンゾカインである。
【0011】
本発明の態様は、以下を含む耳用医薬組成物を提供する:(i)ピラゾロン誘導体を含む少なくとも1つの鎮痛剤。本発明の他の態様では、該耳用医薬組成物はさらに、(ii)式I:
【化1】
を含む少なくとも1つの麻酔剤を含み、ここで、R
1は以下を含み:
【化2】
【化3】
を含み、R
3は、HまたはNH
2を含み、R
4は、H、NH
2、CH
3、
【化4】
を含み、R
5はHを含み、R
6は、HまたはCH
3を含む。本発明の態様はさらに、本明細書に記載の式Iを有する少なくとも2つの麻酔剤化合物を含む耳用医薬組成物を提供する。例えば、該耳用医薬組成物は、麻酔剤テトラカイン
【化5】
を含むことができる。
【0012】
本発明の態様は、特定の脳神経に関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善するための方法を提供し、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の
苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛であり、該方法は、かかる治療を必要とする対象の外耳道に対して、以下を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む:(i)ピラゾロン誘導体を含む少なくとも1つの鎮痛剤、及び(ii)式Iを含む少なくとも1つの麻酔剤。この場合、該医薬組成物は、該対象の外耳道に対して、該医薬組成物を投与されない対象の特定の脳神経の生理学的活性と比較して、該対象の特定の脳神経の活性を生理学的に変化させるのに十分な濃度で投与される。本発明の態様は、特定の脳神経に関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善するための方法であり、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛であり、該方法は、かかる治療を必要とする対象の外耳道に対して、耳用医薬組成物の有効量を投与することを含み、該医薬組成物は、本明細書に記載の式Iを有する少なくとも2つの麻酔剤化合物を含む。例えば、該耳用医薬組成物は、麻酔剤テトラカイン
【化6】
を含むことができる。
【0013】
1つの実施形態では、式IのR
1は、
【化7】
または
【化8】
を含み、R
2は、HまたはCH
3を含み、R
3はHを含み、R
4は、
【化9】
を含み、R
5はHを含み、R
6はHまたはCH
3を含む。1つの実施形態では、式IのR
1は、
【化10】
を含み、R
2は、HまたはCH
3を含み、R
3はHを含み、R
4は、H、NH
2、または
【化11】
を含み、R
5はHを含み、R
6はHまたはCH
3を含む。
【0014】
1つの実施形態では、該鎮痛剤は、アムピロン、ジピロン、アンチピリン、アミノピリン、及びプロピフェナゾンからなる群から選択される少なくとも1つのピラゾロン誘導体である。好ましい実施形態では、該鎮痛剤はアンチピリンである。1つの実施形態では、該麻酔剤は、
【化12】
【化13】
【化14】
本明細書に記載する麻酔剤の組合せ、またはそれらの医薬的に許容される誘導体を含む。別の実施形態では、該麻酔剤はベンゾカインではない。1つの実施形態では、該麻酔剤はリドカインである。1つの実施形態では、該麻酔剤はテトラカインである。1つの実施形態では、該麻酔剤はテトラカイン及びリドカインである。
【0015】
1つの実施形態では、本発明は、特定の脳神経と関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善するための方法に関し、この場合、三叉神経(第5脳神経)、顔面神経(第7脳神経)、舌咽神経(第9脳神経)、迷走神経(第10脳神経)、脊髄副神経(第11脳神経)、舌下神経(第12脳神経)、またはそれらの組合せにおいて耳麻酔が行われる。
【0016】
本開示の方法によって治療可能な疾患は多く、本明細書に記載される。特定の神経によって神経支配される器官または身体組織と関連する任意の疾患は、本方法によって潜在的に治療することができる。本方法によって治療可能な以下の疾患に関して具体的な言及がなされる:喘息、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、胃食道逆流性疾患、及び肥満。本方法はまた、扁桃摘出術後もしくはアデノイド切除術後の咽頭痛または口腔咽頭痛の治療に適する。
【0017】
1つの実施形態では、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。1つの実施形態では、該神経精神医学関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:慢性疲労症候群、線維筋痛症、てんかん、強迫性障害、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群、限局性筋失調症、三叉神経痛、過食症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム障害、不安頭痛、不眠症、網様体賦活系(RAS)調節不全、多発性硬化症、末梢神経障害、失行症、頸部及び肩の痛み、パーキンソン病、一般体性求心性疼痛、一般内臓求心性疼痛、オピエート離脱、構音障害、ADHD、非特異的な手の振戦、吃音、脳性まひ、レイノー現象、ならびに多汗。1つの実施形態では、該一般体性求心性疼痛は、首、背中、腕、脚、または肩の神経筋疼痛、関節痛、坐骨神経痛、関節炎の痛み、帯状疱疹の痛み、反射性交感神経性ジストロフィーの痛み、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、オピエート離脱症状は、全身痛、筋肉痛、吐き気、嘔吐、発汗、下痢、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、該耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:口蓋ミオクローヌス、扁桃摘出術後疼痛、咽頭痛、喉頭痛、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、いびき、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、耳の痛み、頸部痛、ドライアイ症候群、三叉神経痛、及び側頭骨顎関節痛。1つの実施形態では、該消化器/泌尿器(GU)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:膀胱痙攣、月経困難症、骨盤痛、早産、間質性膀胱炎、前立腺炎、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、膀胱炎、腎臓痛、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、遺糞、月経過多、頻尿、持続性腟出血、及び腎血流の減少。1つの実施形態では、胃腸(GI)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性結腸炎、胃酸逆流、胃炎、胃腸炎、妊娠悪阻、小児疝痛、肝腎症候群、食欲抑制、胆嚢痛、慢性便秘、慢性下痢、及び膵炎。1つの実施形態では、該心臓関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:発作性(孤立性)(迷走神経性)心房細動、起立性(神経原性)低血圧、反射性非収縮性失神、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経反射、心臓手術に由来する咳、心ブロック、心房収縮、頻脈、及びうっ血性心不全。1つの実施形態では、該肺関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、嚢胞性線維症、及び気管支痙攣。1つの実施形態では、該代謝関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:高血圧、糖尿病、敗血症性ショック、神経原性ショック、高血糖症、及び高コレステロール血症。
【0018】
さらに他の実施形態では、本開示の方法によって治療可能な疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:心疾患、発作性(孤立性)(迷走神経性)心房細動、反射性収縮性失神、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、過剰催吐反射、食道性嚥下障害、嘔吐、吐き気、嚥下痛、食道痛、食道神経痛、胃炎、消化不良、胆嚢疾患、胆嚢炎痛、腹痛、食道運動障害または食道運動不全、痙攣性結腸、膵臓痛または痙攣、小児疝痛、直腸痙攣及び直腸痛、膀胱痙攣(過活動膀胱)、間質性膀胱炎、月経困難症、早産、骨盤痛、慢性骨盤痛、慢性前立腺炎痛、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、膀胱炎痛、過敏性腸症候群、コーン病(Cohn’s disease)、潰瘍性結腸炎、逆流症、胃炎、胃腸炎症状、妊娠悪阻、小児疝痛、肝腎症候群、食欲抑制、胆嚢痛、食道の炎症、胃の炎症、結腸の炎症、腎臓痛(結石、感染症、または腫瘍由来)、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、遺糞、月経過多、頻尿、持続性膣出血、勃起抑制、早漏防止、多汗抑制、尿管痙攣、月経痙攣、子宮痙攣、卵巣痛及び痙攣、ファローピウス管痛及び痙攣、小児喘息、成人喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支粘液、急性気管支炎、喘息性気管支炎、慢性気管支炎、気管支痙攣、嚢胞性線維症、肺の炎症、気腫、胸膜炎性胸痛、肋間筋痛、神経痛、
挿管及び抜管に続発する気管支痙攣、狭心症、心臓迷走神経遮断、血管迷走神経反射遮断、徐脈、低血圧症、起立性低血圧症、高血圧症、糖尿病、ショック、敗血症性ショック、血糖低下、膵臓の炎症、迷走神経または心臓に関する理由に続発する失神、血管迷走神経性失神、徐脈型不整脈、皮膚の血管拡張、神経痛、喉頭痙攣、急性喉頭炎、喉頭痛、慢性喉頭炎、抜管後及び挿管後の喉頭痙攣、口蓋ミオクローヌス、扁桃摘出術後疼痛、いびき、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、炎症性ポリープ症(鼻)、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、クループ、慢性疲労症候群、線維筋痛症(慢性)、てんかん、強迫性障害、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群、限局性筋失調症、三叉神経痛、過食症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム、不安頭痛、不眠症または睡眠障害、多発性硬化症、網様体賦活系の調節、末梢神経障害、失行症、頸部及び肩の痛み、ならびにパーキンソン病。
【0019】
従って、本方法は、概して、特定の神経機能の「遮断」から恩恵を受ける可能性がある任意の疾患、病気、または身体状態の治療に適用される。すなわち、神経が神経学的シグナルを伝達する能力の阻害から恩恵を受ける任意の状態が、本開示の方法に包含される。
【0020】
本明細書に開示の方法において、該医薬組成物は、対象の外耳道に対して、該医薬組成物を投与されない対象の神経の生理学的活性と比較して、該対象の神経の活性を生理学的に変化させるのに十分な濃度で投与される。従って、開示される方法で使用される本医薬組成物は、神経が、その長さに沿って神経学的シグナルを伝達する天然の能力を妨害することができる。これらのシグナル、すなわち、求心性及び遠心性の両方は、本方法によって遮断または阻害される。
【0021】
該医薬組成物に含まれる鎮痛剤の量は、およそ:1mL当たり1~100mg、1mL当たり10~100mg、1mL当たり20~100mg、1mL当たり30~100mg、1mL当たり40~100mg、1mL当たり50~100mg、1mL当たり60~100mg、1mL当たり70~100mg、1mL当たり80~100mg、1mL当たり90~100mg、または1mL当たり100mgを含む。いくつかの実施形態では、含まれる鎮痛剤の量は、1mL当たり約50~60mg、もしくは1mL当たり約54mg、もしくは1mL当たり約50~55mg、または1mL当たり約55~60mgである。
【0022】
該医薬組成物に含まれる麻酔剤の量は、およそ:1mL当たり1~100mg、1mL当たり10~100mg、1mL当たり20~100mg、1mL当たり30~100mg、1mL当たり40~100mg、1mL当たり50~100mg、1mL当たり60~100mg、1mL当たり70~100mg、1mL当たり80~100mg、1mL当たり90~100mg、または1mL当たり100mgを含む。いくつかの実施形態では、含まれる麻酔剤の量は、1mL当たり約1~20mg、もしくは1mL当たり約1~15mg、もしくは1mL当たり約5~15mg、もしくは1mL当たり約10~20mg、もしくは1mL当たり約10~15mg、または1mL当たり約14mgである。
【0023】
1回の投薬で患者に投与される該医薬組成物の総量は、およそ:0.001~0.01mLの溶液、もしくは0.01~0.1mLの溶液、もしくは0.1~0.5mLの溶液、もしくは0.1~1mLの溶液、もしくは1~1.5mLの溶液、もしくは1.5~2mLの溶液、もしくは2~5mLの溶液、または5~10mLの溶液を含み得る。該投与は、通常投薬で当該患者の外耳道に溶液の「滴」を施す「ドロッパー」ボトルの使用を含み得る。かかる投与は、1mL=約15~20滴、0.5mL=約10滴、0.25mL=約5滴を含み得る。
【0024】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての数、例えば、値、範囲、量、またはパーセンテージを表すものは、「約」という語によって、この用語が明示的に出現しない場合でも、前置きされていると読むことができる。本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に含まれるすべての部分範囲を含むように意図される。複数形は単数形を包含し、逆もまた同様であり、例えば、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、本方法によって治療される対象は、耳感染症に罹患していない。さらに、ある特定の実施形態では、本方法によって治療される対象は、耳に痛みがないか、または耳痛を感じていない。
【0026】
特定の態様において、本方法は、耳感染症に罹患した患者に対して使用される。すなわち、本方法は、特にある特定の実施形態では、化膿の有無にかかわらず、外耳道感染症、耳痛、または中耳炎に罹患した患者に対して使用される。特にある特定の実施形態では、本方法を、耳の痛みまたは耳痛を感じている対象に対して使用する。これらの実施形態では、方法の第1段階は、治療する医師による耳の診察で、患者が耳感染症を有すること、もしくは耳痛を感じていること、または鼓膜に穴を有することを保証することを含み得る。それは、発赤、中耳浸出液、もしくは外耳道の組織の腫脹、または鼓膜の歪みからなる場合がある。いくつかの態様では、鼓膜にあるか、外耳道にあるか、または中耳にあるかにかかわらず、該患者が確かに耳感染症を有することを確認した後、賦形剤に溶解したアンチピレン/ベンゾカインの形態の局所麻酔を、点耳剤の形態で該外耳道に挿入し、耳痛を軽減する場合がある。これはまた、同様の賦形剤であるグリセリン中、エピネフリンを含むまたは含まないリドカイン及びテトラカインによって行うことができる。禁忌とされるのは、耳管もしくは均圧管、または活発な進行中の穿孔の存在下での任意の局所麻酔の使用である。
【0027】
本方法で使用される本開示の医薬組成物は、さらなる成分、例えば、抗生物質、血管収縮剤、グリセリン、及び酢酸を含んでもよい。
【0028】
該医薬組成物は、任意の医薬的に許容される担体、またはアジュバントを含んでよく、溶液、フォーム、ゲル、クリーム、ペースト、ローション、エマルション、及び上記の組合せとして処方され得る。
【0029】
該医薬組成物は、必要に応じて、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10~20回、または、最高で、1日を通して連続的に投与され得る。さらに、ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、喘息発作の発症時に投与される。他の実施形態では、該医薬組成物は、空腹を感じている人に対して投与される。該方法のいくつかの態様では、咽頭部に痛みを感じている患者に対する該医薬組成物の投与を伴う。ある特定の実施形態は、耳痛を感じている、もしくは耳感染症に罹患している、または耳感染症に伴う耳内腫脹を有する患者には、本開示の組成物を使用しないことを企図している。これらの実施形態では、迷走神経と関連する疾患を治療する本開示の方法は、患者が耳痛を示した時点で、即時に中止または停止され得る。
【0030】
本開示の方法によって治療される特に好ましい病気は、扁桃摘出の術後性またはアデノイド切除の術後性関連の咽頭痛または口腔咽頭痛である。これらの実施形態では、患者が上記外科処置後に感じる痛みを治療する。これらの実施形態では、該医薬組成物は、該医薬組成物の投与に先立って、168時間(または7日)前、48時間前、24時間前、12時間前、4時間前以内に扁桃摘出術またはアデノイド切除術を受けた、または術後すぐの対象の外耳道に対して適用される。従って、本方法は、本開示の手順及び医薬組成物を、術後に咽頭または口腔咽頭部に痛みを感じた直後に使用するように、医師が患者に処方
することを企図している。
【0031】
本開示の方法によって治療される別の特に好ましい病気または疾患は、喘息である。ある特定の実施形態では、急性喘息発作が本方法によって治療される。これらの実施形態では、該医薬組成物を、急性喘息発作を現在感じている対象の外耳道に対して投与することを含む。さらに、これらの実施形態は、過去48、24、12、6、または1時間に喘息発作を感じた対象の治療を含み得る。従って、本明細書に開示する方法は、患者の喘息の治療及び管理のため、通常の気管支拡張剤及びコルチコステロイドと併用して用いられる場合がある。本方法は、最大呼気速度(PEFR)が当該患者の通常の最大速度の測定値の50~79%、すなわち、米国肺協会によって分類される「イエローゾーン」を感じている喘息患者に対する使用に好適であり得る。本方法はまた、最大呼気流量が当該患者の通常の最大流量の測定値の50%未満、すなわち、「レッドゾーン」を感じている患者に対する使用に好適である。本方法は、患者が重篤な喘息発作を感じている場合に救助吸入器との併用で使用することができる。その結果として、いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、キットの構成要素であって、該キットは、救助吸入器ならびにアンチピリン及びベンゾカインを含む医薬組成物を含む。該キットは、重篤な喘息発作を起こす危険がある患者が保持することを意図している。さらに、いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、例えば、学校の教室に保持される救急処置キットの一部である。これらの実施形態では、非常時、例えば、生徒が重篤な喘息発作を起こしたにもかかわらずすぐに利用可能な救助吸入器がない場合に、教師が本医薬組成物を使用することができる。
【0032】
本方法はまた、慢性喘息の治療における使用に好適である。これらの実施形態では、患者は、本開示において教示される通りに本開示の組成物を使用し、急性喘息発作の発症を予防する。これらの方法では、慢性喘息は、本方法の継続使用により管理される。従って、ある特定の実施形態では、喘息患者は、本明細書に示す医薬組成物を、喘息発作の発症前に投与される。例えば、本方法のある特定の実施形態は、運動をする患者の喘息を管理するのに効果的である。多くの場合、喘息に罹患している患者は、身体運動時に呼吸能力の低下を感じ、これは、場合によっては吸入器の使用を要する重篤な喘息発作につながり得る。本方法は、当該対象が運動をする前に、アンチピリン及びベンゾカインを含む医薬組成物で対象の外耳道を処置できるようにする。このように、本方法は、喘息発作を起こす可能性を減らすために、患者が身体的活動をする前に使用するのに有効な療法であり得る。
【0033】
本開示の方法によって治療される別の特に好ましい状態または疾患は、肥満である。本方法は、患者の食欲を抑制する機序を提供することによって肥満を治療する。患者の食欲を抑制することにより、本方法は、医師が患者の体重を管理することに使用するための別の手段を提供する。従って、肥満は、対象の外耳道に本開示の医薬組成物を投与することにより治療され得る。いくつかの実施形態では、対象は、空腹感を感じるたびに本開示の医薬組成物で処置される。さらに、いくつかの実施形態は、食事がとられる直前に、もしくは食事がとられる10分~60分前に、もしくは食事がとられる20~60分前に、もしくは食事がとられる30~60分前に、または飲食と同時に、本開示の医薬組成物を対象の外耳道に投与する。従って、いくつかの態様において、本方法の迷走神経の耳刺激方法は、当該患者が何らかの食物をとる前1時間以内に患者に対して使用される。このようにして、患者の食欲は満たされ、食事の摂取が減少する。さらに、いくつかの実施形態は、朝、好ましくは当該対象が朝食をとる前に、本開示の医薬組成物を対象の外耳道に投与し、このようにして少なくとも昼食まで持続する有効な食欲抑制剤を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物及び治療方法は、患者の食欲を抑えるための該医薬組成物の利用を含むだけでなく、特定の食事及び運動療法も含み得る、包括的な減量プログラムの一部である。
【0035】
いくつかの態様において、患者の外耳道に該局所医薬組成物を塗布する者は、該患者の耳を表面的に検査し、任意の巨視的な障害、すなわち、耳あか、皮膚、感染、化膿、または腫脹を確認するために良好な明かりを有するべきである。この者は、耳介を外側及び上向きに穏やかに引っ張り、外耳道をまっすぐに伸ばしてもよい。予め温めておいた、非常に粘稠な本開示の医薬組成物を含む点耳剤を、耳の側面開口のposterior(後)またはback(後)壁に塗布するべきである。各滴が外耳道をゆっくりと移動できるように、滴は極めてゆっくりと意図的に、一度に1滴ずつ塗布されるべきである。該患者の頭部は、最適な塗布のため、平らな柔らかい表面に横に載せるべきである。外耳道の後壁及び鼓膜は、迷走神経線維の大部分を有し、それ故この領域への直接的な塗布が望ましい。いくつかの態様において、麻酔のためには、10歳未満の小児は片耳当たり4~8滴を要し、成人及び12歳を超える小児は、通常6~10滴を要する。いくつかの実施形態では、側方外耳道内で約1時間、滴を常に綿球で追従し、該外耳道内での該薬剤の維持を保証し、迷走神経に対する必要な局所麻酔をもたらす。1時間後、該綿を取り除いてよい。
【0036】
迷走神経の生理的変化に影響を受ける疾患を治療するために迷走神経の耳麻酔の目的での患者の外耳道に対する医薬組成物の投与は、いくつかの実施形態では、「クルーズ・マヌーバ(Crews Maneuver)」と呼ばれる。迷走神経を麻酔するための管路として外耳道を利用するクルーズ・マヌーバは、当技術分野に存在する欠点を有さない。
【0037】
本開示の実施形態のこれら及び他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の説明、特許請求の範囲、及び下記に説明する添付の図面に関連してより良く理解されるようになるであろう。
【0038】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を備えた本特許または特許出願公開のコピーは、要請及び必要手数料の支払いを受け、特許局により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】迷走神経の複雑な解剖学的構造の図である。耳介枝が示されている。
【
図2】身体の片側の副交感神経の神経支配を示す迷走神経の複雑な解剖学的構造の図である。
【
図7】ヒトの耳の内部の図である。外耳道が示されている。
【
図9】脳神経C-3、5、7、及び10の図である。
【
図10】舌下神経(第12脳神経)の分布の図である。
【
図12】交感神経(赤)及び副交感神経(青)系の神経支配の解剖学的構造の図である。
【
図13】交感神経(青)及び副交感神経(赤)系の神経支配の解剖学的構造の図である。
【
図14】神経支配、ならびに節前及び神経節性ニューロンの解剖学的構造の図である。
【
図15】体性(オレンジ)及び内臓(青)運動神経線維の解剖学的構造の図である。
【
図16】神経支配、ならびに節前及び神経節性ニューロンの解剖学的構造の図である。
【
図18】ウマ(上)、イヌ(下)、及びネコ(継続ページ)における脳神経のマップである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
1つ以上の好ましい実施形態の詳細な説明を本明細書に提供する。しかしながら、本開示は様々な形態で具体化され得ることを理解されたい。従って、本明細書に開示する具体的な詳細は、限定するものではなく、特許請求の範囲の基礎として、及び当業者が任意の適切な方法で本開示を使用するように教示するための代表的な基礎として解釈されたい。
【0041】
本明細書で使用される「約」という用語は、本明細書において、およそ、大体、おおよそ、または、~の領域内を意味するために用いられる。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、当該用語は、当該範囲を、指定された数値の上下にその境界を拡張することにより修飾する。概して、「約」という用語は、上下(高低)20パーセントの変動による指定された値の上下の数値を修飾するために本明細書では使用される。
【0042】
本明細書で使用される「有効量」、「十分量」、または「治療有効量」は、臨床結果を含めた有益なもしくは所望の結果をもたらすのに十分な化合物の量である。従って、有効量は、例えば、苦痛もしくは状態、もしくはその1つ以上の症状の重症度及び/または持続時間を低減もしくは改善するため、苦痛もしくは状態に関連する状態の進行を防ぐため、苦痛もしくは状態に関連した1つ以上の症状の再発、進行、または発症を予防するため、または別の療法の予防もしくは治療効果(複数可)を向上もしくは改良するために十分であり得る。有効量はまた、望ましくない副作用を回避する、または実質的に軽減する化合物の量を含む。
【0043】
本明細書で使用され、当技術分野で十分理解される、「治療」とは、臨床結果を含めた有益なまたは所望の結果を得るための方法である。有益なまたは所望される臨床結果としては、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、1つ以上の症状もしくは状態の軽減または改善、疾患の程度の減少、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患の蔓延の予防、疾患進行の遅延または減速、病態の改善または緩和、及び寛解(部分的であるか完全であるかに関わらず)が挙げられ得るが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予測生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味することができる。
【0044】
「それを必要とする」という表現は、例えば、がんまたは神経変性疾患等の状態からの症候性または無症候性の軽減の必要性を指す。それを必要とする対象は、例えば、がんまたは神経変性疾患に関連した状態の治療を受けていても受けていなくてもよい。
【0045】
「担体」という用語は、化合物がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を指す。かかる医薬担体の非限定的な例としては、水及び油等の液体が挙げられ、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む。該医薬担体はまた、食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等でもよい。さらに、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を使用してもよい。好適な医薬担体の他の例は、Remington:The
Science and Practice of Pharmacy、21st Edition (University of the Sciences in Philadelphia、ed.,Lippincott Williams & Wil
kins 2005)、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients、7th Edition (Raymond Rowe et al.,ed.,Pharmaceutical Press 2012)に記載されており、これらの各々は参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書で使用される「動物」、「対象」、及び「患者」という用語は、哺乳類、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ等)、ならびにヒトが含まれるがこれらに限定されない動物界のすべての成員を含む。
【0047】
自律神経系
【0048】
自律神経系は、交感神経及び副交感神経成分に分類される。交感神経系は、身体をストレスに対して準備させ、「闘争・逃走」系と呼ばれる。副交感神経系は、身体を安静に対して準備させ、「安静と消化」または「植物機能」系と呼ばれる。
【0049】
交感神経系は、自律神経系の2つの主な区分の一方であり、他方は副交感神経系である。交感神経系は、外耳道に対する耳麻酔の使用によって、調節されたり大きく影響を受けたりする可能性がある。外耳道に対する耳麻酔は、交感神経鎖または神経系に直接つながっている迷走神経及び舌咽神経を調節することができる(
図12、
図13参照、
図1及び
図5も参照されたい)。交感神経系の一次過程は、身体の逃走・闘争反応を刺激することである。しかしながら、それは恒常性を維持するために基本的なレベルで常に活性である。それは、直接の神経系伝達により副交感神経系と密接に連動して補完として働く。
【0050】
交感神経系を介した任意のシグナルの伝達に関与するニューロンには2種類、すなわち、節前または節後がある。より短い節前ニューロンは、脊髄の胸腰部(具体的にはレベルT1~L2)に始まり、多くの場合脊椎傍神経節の1つである神経節まで進み、そこで、節後ニューロンとともにシナプスを形成する。そこから、長い節後ニューロンが身体の大部分に広がる。交感神経は、脊柱の第一胸椎で始まる外側灰白柱の中間外側核の脊髄の中央付近から生じ、第二または第三腰椎まで伸びると考えられている。これらの神経の軸索は、前根を介して脊髄を離れる。それらは、脊髄知覚神経節の近傍を通過し、脊髄神経の前枝に入る。しかしながら、体性神経支配とは異なり、それらは、脊柱と並行して伸びる脊椎傍神経節または椎前神経節のいずれかにつながる白枝コネクターを介して迅速に分離する。脊椎傍神経節または脊椎前神経節のいずれかを終結させるシナプス前神経または軸索。すべての場合において、軸索はその発生脊髄神経のレベルで脊椎傍神経節に入る。この後、それはこの神経節でシナプスを形成するか、脊椎傍神経節より上に上がり、もしくは下に下りてそこでシナプスを形成するかのいずれかが可能であるか、または、脊椎前神経節に下りてそこでシナプス後細胞とシナプスを形成することが可能である。シナプス後細胞は次に、標的及びエフェクター、すなわち、腺、平滑筋等を神経支配する。明らかな例外は、副腎の副腎髄質の神経支配の経路である。この場合、シナプス前ニューロンは、脊椎傍神経節を通過し、脊椎前神経節を通り、その後副腎組織と直接シナプスを形成する。迷走神経に対する耳麻酔は、脊椎傍神経節にシグナルを送り、神経伝達に影響を及ぼし、ひいては交感神経の様々な器官、筋肉、血管、腺、皮膚、及び神経への流出に影響を与えることができ、ひいては疾患過程に影響を与える。
【0051】
交感神経系は、以下を含む何百もの疾患過程に関与する:慢性疲労症候群、線維筋痛症、心的外傷後ストレス障害、下肢静止不能、不安、自律神経失調症、手の振戦、片頭痛、ならびに筋肉疾患、例えば、多発性硬化症、脳性まひ、及びパーキンソン病。他の疾患、例えば、末梢神経障害、関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、筋肉痛、発汗、起立性低血圧、体位性起立性頻脈症候群、血管迷走神経反射、心臓不整脈、高血圧、糖尿病、血糖上昇、コレステロール上昇、過敏性腸疾患、過敏性腸症候群、慢性便秘、潰瘍性結腸
炎、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、早漏、上室性頻脈、及びうっ血性心不全はすべて、過活動性交感神経系の影響を受ける可能性がある。この系の調節は、迷走神経及び舌咽神経の耳介枝ならびに残りの交感神経系とつながるその上頸交感神経節との密接なつながりを介して副交感神経系を直接調節することによって達成することができる。保留の図面を参照されたい。同様に注目すべきは、交感神経系の機能には、瞳孔の拡張、目の乾燥の増加、鼻と口の乾燥の増加、心拍数と収縮力の増加、気管支の拡張、骨格筋の拡張、脳に向かう血管の拡張、腎臓への血流の減少、胃腸管への血流の減少、蠕動抑制性の汗腺の活性化の増加、レニンのレベルの上昇、コレステロール及びトリグリセリドのレベルの上昇、血圧レベルの上昇、ならびに射精のための発火促進が含まれるということである。
【0052】
本発明は、特定の脳神経に関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善するための方法を提供し、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。1つの実施形態では、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。1つの実施形態では、該神経精神医学関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:慢性疲労症候群、線維筋痛症、てんかん、強迫性障害、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群、限局性筋失調症、三叉神経痛、過食症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム障害、不安頭痛、不眠症、網様体賦活系(RAS)調節不全、多発性硬化症、末梢神経障害、失行症、頸部及び肩の痛み、パーキンソン病、一般体性求心性疼痛、一般内臓求心性疼痛、オピエート離脱、構音障害、ADHD、非特異的な手の振戦、吃音、脳性まひ、レイノー現象、ならびに多汗。1つの実施形態では、該一般体性求心性疼痛は、首、背中、腕、脚、または肩の神経筋疼痛、関節痛、坐骨神経痛、関節炎の痛み、帯状疱疹の痛み、反射性交感神経性ジストロフィーの痛み、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、オピエート離脱症状は、全身痛、筋肉痛、吐き気、嘔吐、発汗、下痢、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、該耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:口蓋ミオクローヌス、扁桃摘出術後疼痛、咽頭痛、喉頭痛、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、いびき、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、耳の痛み、頸部痛、ドライアイ症候群、三叉神経痛、及び側頭骨顎関節痛。1つの実施形態では、該消化器/泌尿器(GU)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:膀胱痙攣、月経困難症、骨盤痛、早産、間質性膀胱炎、前立腺炎、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、膀胱炎、腎臓痛、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、遺糞、月経過多、頻尿、持続性腟出血、及び腎血流の減少。1つの実施形態では、該胃腸(GI)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性結腸炎、胃酸逆流、胃炎、胃腸炎、妊娠悪阻、小児疝痛、肝腎症候群、食欲抑制、胆嚢痛、慢性便秘、慢性下痢、及び膵炎。1つの実施形態では、該心臓関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:発作性(孤立性)(迷走神経性)心房細動、起立性(神経原性)低血圧、反射性非収縮性失神、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経反射、心臓手術に由来する咳、心ブロック、心房収縮、頻脈、及びうっ血性心不全。1つの実施形態では、該肺関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、嚢胞性線維症、及び気管支痙攣。1つの実施形態では、該代謝関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:高血圧、糖尿病、敗血症性ショック、神経原性ショック、高血糖症、及び高コレステロール血症。
【0053】
一般内臓及び求心性線維は、通常は痛みである知覚刺激及び投射感覚を内臓、腺、及び血管から中枢神経系へ伝える。それらは、自律神経系ではなく、内臓神経系の一部である
と考えられている。しかしながら、自律神経系の遠心性線維と異なり、求心性線維は、交感神経または副交感神経のいずれかに分類されない。一般内臓求心性は、一般体性求心性線維の活性化への関連痛を生み、そこで二者が脊髄の後角で会う。一般内臓求心性線維を含む脳神経には、顔面神経、舌咽神経、及び迷走神経が含まれ、これらのすべてが外耳道を神経支配する。一般内臓求心性関連痛は、これら脳神経に対する耳麻酔によって調節することができるが、これは、それらが外耳道の特定の領域に知覚神経支配をもたらすためである。これらの領域に対する局所麻酔は、身体から中枢神経系へ戻る一般内臓求心性シグナルを調節することができる。
【0054】
一般体性求心性線維(GSAまたは体性知覚神経)求心性線維は、脊髄神経節の細胞から到着し、まれに第一頸を除きすべての脊髄神経で見られ、体表面からの痛み、接触、及び温度の刺激を、脊髄の後根を介して、ならびにより深い構造からの筋覚、腱覚、及び関節知覚の刺激を伝える。一般体性求心性線維は、交感神経鎖を通って脊髄神経に入り、後根神経節に入り、後根及び脊髄に入る。それは、脊髄を上って視床レベルに中枢神経系を移動し、その後大脳上に移動することができ、そこで、それらは内臓運動及び体性運動神経を含む反射弓に関与することができ、これらはまた、前根から交感神経鎖を通ってそれらのそれぞれの器官に戻る。
図12~13。現時点では、交感神経性脊髄傍及び脊髄前神経系の調節がこの時点で神経節または視床レベルで痛みを調節するかどうかは分からない。理論に拘束されるものではないが、一般体性求心性疼痛及び一般内臓求心性疼痛は、迷走神経及び交感神経系へのその接続を調節する外耳道に局所的に施された耳麻酔を介して調節することができる。
【0055】
脊椎動物の解剖学的構造は、多くの共通の神経学的解剖学的及び生理学的側面を有する。他の脊椎動物種、すなわち、霊長類、ネコ、イヌ、ウシ、及びげっ歯類種において脳神経及び交感神経系を介して疾患を調節する目的で外耳道の局所麻酔または耳介調節の使用を除外する理由はない。理論に拘束されるものではないが、他の脊椎動物種もまた、自律神経系の耳介調節による特定の脳神経関連疾患の治療から恩恵を受ける可能性がある。本方法は、脊椎動物対象の外耳道に対して、以下を含む医薬組成物を外耳道へ局所投与することを含む:i.鎮痛剤、及び/またはii.麻酔剤。
【0056】
脳神経
【0057】
迷走神経、別名第10脳神経は、12対の脳神経の10番目であり、脳神経の中で一番長い。延髄錐体と下小脳脚の間の髄質を離れると、それは頸静脈孔に広がり、その後、頭部より下の内頸動脈と内頸静脈の間の頸動脈鞘を首、胸、及び腹部まで通り、そこで内臓の神経支配に寄与する。迷走神経の解剖学的構造を、
図1及び2に示す。
【0058】
頸静脈孔を出ると、迷走神経は頸静脈の神経節及び下神経節、または上及び下迷走神経節を形成する。該頸静脈の神経節は、舌咽神経の錐体神経節からのフィラメントによって連結される。迷走神経の耳介枝はまた、それが頸静脈窩の外側壁から乳突小管に入るため、10の頸静脈の神経節及び舌咽神経の錐体神経節からの接続を有する。側頭骨を無視すると、迷走神経の耳介枝は、鼓室乳突裂を出て、2つの枝に分かれる。一方は耳後部神経に結合し、他方は耳後部の皮膚及び外耳道後部に分配される。
【0059】
迷走神経は、体の器官の状態についての知覚情報を中枢神経系に伝える。迷走神経の神経線維の約80%は求心性または知覚神経であり、内臓の状態を脳に伝達する一方、残りの20%は遠心性または機能的神経である。
【0060】
迷走神経は、呼吸、発語、発汗、呼吸中に喉頭を開いたままにすることの促進、心拍の監視及び調節、ならびに胃における食物の消化を含むがこれらに限定されない多くの身体
機能とともに、多くの他の生理作用の調節に関与する。
【0061】
結果として、迷走神経の操作及びそれに続くその正常な生理作用の変化は、迷走神経の調節と関連する広範囲のヒトの病気に大きな影響がある場合がある。しかしながら、迷走神経の機能を変化させるために当技術分野で利用可能な現在の方法は、高度に侵襲的である。これらの現行の方法は多くの場合、人工的な機械装置を患者の体内に埋め込むことに依存している。高度に侵襲的な外科処置であることに加えて、これらの方法は非常にコストがかかる。
【0062】
例えば、米国食品医薬品局は、1990年代後半、部分発症てんかんの治療に対して、迷走神経刺激(VNS)と呼ばれる処置を承認した。VNSは、てんかん発作を有する対象内にペースメーカー様の装置を設置するための外科処置として行われる。患者の頸部に埋め込まれた該装置は、迷走神経を介して軽度の電気的刺激を送るために用いられる。該装置は、電池式であり、電気パルス発生器を有する。その埋め込み後、絶縁プラスチックを備えた電極が、患者の頸部の皮膚の下から迷走神経に通される。パルスは、数秒ごとにオンにし、次いでオフにすることによって交互に動作するように設定される。
【0063】
研究者らはまた、これらのペースメーカー様の装置を肥満患者の胃で使用し、食欲を抑えるために迷走神経の機能を遮断する可能性を調べ始めている。この場合もやはり、これらの処置は高度に侵襲的であり、患者の体内への人工的な装置の埋め込みを伴う。
【0064】
外科医の中には、肥満を治療するために迷走神経切離処置を行った者さえいる。これらの処置では、外科医は患者の迷走神経を完全に断ち切る。これらの処置では、当該対象はうまく減量できたが、かかる侵襲的かつ永久的な外科処置は多くの患者にとって問題があることは明らかである。
【0065】
第7脳神経または顔面神経は、12対の脳神経のうちの1つである(
図3参照)。その主な機能が顔の筋肉に運動神経支配を供給することであることから、それはそのように呼ばれる。それが神経支配する他の筋肉は、広頸筋、顎二腹筋後腹、及びアブミ骨筋である。顔面神経の知覚及び副交感神経部分は、中間神経を移動し、以下の構成要素を供給する:(1)舌の前方3分の2の味覚、(2)涙腺、鼻及び洞の粘液腺、口、ならびに顎下腺及び舌下腺への分泌ならびに血管運動線維、ならびに(3)外耳道及び耳の後ろの領域からの皮膚知覚刺激。翼口蓋神経節、鼻及び副鼻腔の粘膜ならびに粘膜下層への中間神経からの副交感神経刺激は、それらの静脈容量及びうっ血レベルを決めるということも考えられている。
【0066】
第7脳神経の副交感神経部分は、脳幹の唾液核に由来し、顔面神経の運動部門と分かれて内部耳介に入る。これは、膝神経節の近位にある顔面神経と結合する。これら線維は、大錐体神経を介して膝神経節を離れ、大深錐体神経により結合されてヴィディアン神経または翼突管の神経を形成し、そこでそれらはともに前進し、蝶形骨口蓋神経節でシナプスを形成する。そこでそれらは、目、鼻、洞、口蓋、咽頭、及び唾液腺に、副交感神経支配を提供する。膝神経節は、迷走神経の耳介枝及びその第7脳神経への接続を介して外耳道から一般体性求心性線維を受ける。一般体性知覚求心性線維は、膝神経節でシナプスを形成する。
【0067】
三叉神経または第5脳神経は、12対の脳神経の5番目であり、すべての脳神経のうちで最大である(
図4参照)。これは、顔の皮膚、頭皮、外耳道、粘膜、及び頭部の他の内部構造の、大知覚神経である。これはまた、咀嚼筋に対する運動神経支配としての機能を有し、固有受容性線維を含む。これはさらに、脳の硬膜からその様々な枝で知覚神経支配を行う。第5脳神経は、かなり広範囲に及ぶ。主知覚核は、橋から上部脊髄に伸びる。該
核は、半月状神経節、別名三叉神経節またはガッサー神経節からその求心性線維を受ける。三叉神経節は、その3つの主な分枝のための知覚線維の細胞体を含む。それは、3つの大きな知覚分枝、すなわち、眼、上顎、及び下顎分枝を受ける。知覚根線維は、この神経節を後方に出て、橋にそれらの挿入を通す。
【0068】
舌咽神経、別名第9脳神経は、12の頭蓋周囲神経の9番目であり、鼓室神経として知られ、知覚及び分泌線維の両方を有する(
図5及び6参照)。この神経は、知覚及び運動の混合神経である。知覚要素は、咽頭及び扁桃領域ならびに舌の奥の粘膜に対して知覚を供給する体性求心性線維からなる。脳幹からの舌咽神経の表面起始部は、オリーブと下脚の間の溝内の3または4本の細根による。これは、頸静脈孔から頭蓋を出て、内頸動脈と内頸静脈の間を前方に走行する。頸静脈孔を出ると、これは1対の神経節様腫脹、すなわち、上神経節または頸静脈神経節、及び下神経節または錐体神経節を形成する。この神経節は、この神経の知覚線維の細胞体を含む。第9神経は、迷走神経または第10脳神経、顔面神経、及び交感神経節と連絡する。舌咽神経は、5つの異なる一般的な機能を有する:(1)運動(特殊内臓遠心性)が、茎突咽頭筋を供給し、(2)内臓運動(一般内臓遠心性)が、耳下腺の副交感神経支配を提供し、(3)内臓知覚(一般内臓求心性)が、頸動脈洞及び頸動脈小体から内臓知覚情報を運び、(4)一般知覚(一般体性遠心性)が、外耳の皮膚、鼓膜の内面、上咽頭、及び舌の後方3分の1からの一般知覚情報を提供し、(5)特殊知覚(特殊求心性)が、有郭乳頭を含めた舌の後方3分の1からの味覚を提供する。
【0069】
副神経または脊髄副神経は第11脳神経である。この脳神経は、胸鎖乳突筋及び僧帽筋を制御する。胸鎖乳突筋は、頭部を傾け回転させる一方、僧帽筋は、肩の拳上及び腕の外転を含めた肩甲骨のいくつかの要因を有する。首と肩の可動域及び強度の試験は、神経学的診察の過程で測定し、脊髄副神経の機能を評価することができる。可動域の制限または低筋力は、脊髄副神経の損傷を示す。これは、脳神経の様々な原因によって起こる可能性がある。脊髄副神経は、頭蓋から特殊な穴または孔を通って出る。この神経は、上部脊髄にある個々のニューロンの大部分に由来する。そこから、線維は大後頭孔に入り、頭蓋の内壁に沿って頸静脈孔に向かって走行し、そこから、舌咽神経(または第9脳神経)及び迷走神経(または第10脳神経)とともに頭蓋を出る。その特有のコースのため、脊髄副神経は、頭蓋に入るだけでなく頭蓋から出る唯一の脳神経であることで知られる(
図1、
図2、及び
図5)。この神経が頸静脈孔を出ると、顎二腹筋後腹のレベル付近で内頸静脈と交差する。これが進み、僧帽筋及び胸鎖乳突筋を神経支配する。脊髄副神経の機能は、特殊内臓遠心性または神経支配、ならびに胸鎖乳突筋及び僧帽筋の運動制御の機能である。脊髄副神経の異常は、これらの2つの筋肉の痙攣とともに、頭部、首、肩、及び腕の運動ならびに可動域の収縮ならびに衰弱または異常を引き起こす場合がある。脊髄副神経は、迷走神経の上神経節及び下神経節である迷走神経と密接につながっている。迷走神経の耳麻酔は、電気入力及び脊髄副神経の機能を直接調節する(
図5参照)。
【0070】
舌下神経は、第12脳神経であり、舌の筋肉を神経支配する。この神経は、脳幹の他の脳神経とともに生じる。この神経は、舌下神経管を介して後方窩の頭蓋底を出る。頭蓋を出るにつれて、これは小髄膜枝を出し、C1の前枝から枝を拾う。それは、迷走神経の近傍及び副神経の脊髄部分に続き、迷走神経の後ろに続き、頸動脈鞘上にある内頸動脈と内頸静脈の間を通る。それは、顎下部の顎二腹筋後腹に深く移行する。それは、下喉頭神経の舌骨舌筋に対して側方を通り、舌に到達し、舌を遠心性に神経支配する。それは、舌を神経支配するため、発語に密接に関与する。それは、舌の内舌筋及び外舌筋を神経支配し、一般体性遠心性神経型を特徴とする。それは、舌下神経に直接つながる迷走神経に対する間接的な調節または麻酔によって調節することができる(
図1及び
図5参照)。舌下神経は発語だけでなく、唾液口を清浄にするための嚥下及び舌が完了する他の不随意活動に関与する。ほとんどの機能は随意的である。随意機能は、意識的思考を必要とし、神経路
は脊髄の皮質延髄領域で生じる。舌下神経核は、網様体からの神経支配によって供給され、これにより、それはいくつかの反射的または無意識の運動、ならびに発語及び咬合への関与に要求される無意識の運動の支援に関与する。第10脳神経を介した舌下神経へのシグナルの調節は、咬合、発語、嚥下、及び後頭蓋窩頭痛の改善に絶大な効果をもたらす可能性がある。
【0071】
従って、迷走神経または他の脳神経の機能を侵襲性の外科処置または人工的な装置によって変更することに頼らない、迷走神経及び他の脳神経と関連する疾患の治療方法に対する大きな必要性が、医学界に存在する。具体的には、非侵襲性、安全、有効、及び経済的な、迷走神経ならびに他の脳神経の機能を変更する処置に対する大きな必要性が、当技術分野に存在する。
【0072】
脳神経に沿った神経系シグナル伝達の遮断
【0073】
本発明は、第5、7、9、10、11、及び/または12脳神経を麻酔する目的で、外耳道の耳麻酔(例えば、局所麻酔)を行うことを含む、本明細書に開示の様々な疾患の治療方法を提供する。本発明はまた、交感神経及び/または副交感神経系(複数可)の耳麻酔(例えば、局所麻酔)を行うことを含む、本明細書に開示の様々な疾患の治療方法を提供する。さらに、一般内臓求心性、一般体性求心性、一般内臓遠心性、及び/または一般体性遠心性神経の耳麻酔を行うことを含む、本明細書に開示の様々な疾患の治療方法のための本発明。いくつかの実施形態では、耳麻酔は、例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等の種が挙げられるがこれらに限定されない様々な脊椎動物種において行われる。いくつかの実施形態では、耳麻酔は、賦形剤であるグリセリンを含み、エピネフリンを含むまたは含まない溶液中に混合したリドカイン及びテトラカインの組合せを投与することによって行われる。アンチピリン及びベンゾカインもまた、疾患を治療する目的で、外耳道の耳麻酔を行うのに用いることができる(本明細書の実施例参照)。グリセリンは、USPに基づく物質の賦形剤である。テトラカインもまた、エピネフリンなしで投与し、同様の結果を得る場合がある。局所麻酔剤または局所鎮痛剤を運ぶため、他の賦形剤も利用される。1つの実施形態では、本開示は、疾患の症状の治療方法を提供し、これは、対象の外耳道に対して、麻酔剤及び別の麻酔剤を含む医薬組成物を局所投与することを含む。いくつかの実施形態では、麻酔剤とともに鎮痛剤もまた使用され得る。これは、それ自体は別々の点耳剤である。1つの実施形態では、該鎮痛剤はアンチピリンであるが、他の既知の鎮痛剤からなることもできる。実施形態では、該麻酔剤は、本明細書に論じるアミドまたはエステル化合物からなる選択された群のうちの少なくとも1つである。
【0074】
第10脳神経(迷走神経)は、多くの身体器官と関連し、その正常な生理的機能の変更は、多くのヒトの病気に重大な影響を及ぼす可能性がある。すなわち、特定の脳神経における神経系シグナルの伝導を「blocking(遮断する)」もしく「disrupting(遮断する)」または「まひさせる」ことで、その神経が神経支配する多くの器官に影響を及ぼすことができる。結果として、神経に沿って伝わるシグナル伝達の遮断は、これらのシグナルが本来求心性であろうと遠心性であろうと、様々な器官及び組織の正常な生理反応を変更する。これは、同様にして、特定の神経が神経支配するヒトの器官及び組織と関連する様々な疾患または病気の治療に対して深遠な意味を有し得る。
【0075】
第7脳神経(顔面神経)の皮膚部分の耳麻酔は、副交感神経線維及び知覚線維が麻酔され、遮断され、さもなければ調節される膝神経節にシグナルを戻す。膝神経節及びその翼口蓋神経節への接続の麻酔は、顔面神経を介した遠心性シグナルの伝達を調節または遮断する働きをする。これは、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、炎症性鼻ポリープ症、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、及びあらゆる形態の鼻炎等であるがこれらに限定されない疾患過程に重大な影響を与えることができる。
【0076】
第5脳神経(三叉神経)の知覚面は、硬膜、目の粘膜、鼻及び洞の粘膜、外耳道の皮膚、鼓膜からの情報を取り扱う。外耳道の皮膚の耳麻酔は、次に、三叉神経下顎枝の耳介側頭の枝を介して三叉神経にシグナルを伝える。三叉神経を介した求心性シグナルの調節は、複数の疾患過程に重大な影響を与える。硬膜、目、鼻及び洞からのこれらの求心性シグナルの調節は、様々な疾患過程の調節をもたらす。眼、上顎、及び下顎の区分を通過する硬膜のシグナルの操作は、頭痛及び片頭痛の治療に重大な影響を及ぼす。三叉神経の眼及び上顎区分からの求心性シグナルの操作もしくは調節または遮断は、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、あらゆる形態の鼻炎、炎症性鼻ポリープ症、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、及びくしゃみを抑える第7脳神経の運動部門からの遠心性シグナルの調節をもたらす。
【0077】
第9脳神経(舌咽神経)の皮膚部分及びその錐体神経節近傍ならびにその第7脳神経及び第10脳神経との接続の耳麻酔は、特定の疾患過程に重大な影響を及ぼす可能性がある。舌咽神経と第7及び第10脳神経の間の神経接続のため、これらの神経に特異的な疾患過程もまた調節され得る。局所耳麻酔によって影響を受ける可能性がある舌咽神経に特異的な疾患としては、咽頭痛、扁桃摘出後の疼痛、くしゃみ、及び耳下腺の唾液分泌が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、迷走、三叉、顔面、または舌咽神経を介した遠心性シグナル伝達を遮断する方法を含む。本開示の別の実施形態は、迷走、三叉、顔面、または舌咽神経を介したシグナルの求心性伝達を遮断する。本開示はまた、迷走、三叉、顔面、または舌咽神経を介した求心性及び遠心性シグナル伝達の両方が遮断される方法を提供する。
【0079】
1つの実施形態では、本発明は、特定の脳神経に関連する疾患を有する対象の症状を治療または改善する方法を提供し、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛であり、該方法は、かかる治療を必要とする対象の外耳道に対して、以下を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む:(i)ピラゾロン誘導体を含む少なくとも1つの鎮痛剤、及び(ii)式I:
【化15】
を含む少なくとも1つの麻酔剤、ここで、R
1は:
【化16】
【化17】
を含み、
R
2は、H、CH
3、Cl、または
【化18】
を含み、R
3は、HまたはNH
2を含み、
R
4は、H、NH
2、CH
3、
【化19】
を含み、
R
5はHを含み、R
6は、HまたはCH
3を含み、該医薬組成物は、対象の外耳道に対して、該医薬組成物を投与されない対象の特定の脳神経の生理学的活性と比較して、該対象の特定の脳神経の活性を生理学的に変化させるのに十分な濃度で投与される。1つの実施形態では、該特定の脳神経は、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経、舌下神経、迷走神経、またはそれらの組合せである。
【0080】
医薬組成物
【0081】
本開示の方法は、かかる治療を必要とする対象の外耳道に対する医薬組成物の塗布を利用する。外耳道は、
図7に示されている。該医薬組成物は、鎮痛剤及び麻酔剤を含む。
【0082】
本開示の実施形態に含まれる鎮痛剤はピラゾロン(C
3H
4N
2O)誘導体である。3-ピラゾロンの分子構造は以下の通りである:
【化20】
【0083】
異性体5-ピラゾロンの誘導体もまた本開示に包含される。
【0084】
本方法の特定の実施形態は、ピラゾロン誘導体としてアンチピリンを使用する。アンチピリン(C
11H
12N
2O)はまた、フェナゾンとも呼ばれる。アンチピリンの分子構造は以下の通りである:
【化21】
【0085】
1つの実施形態では、本方法及び医薬組成物は、式I:
【化22】
を含む少なくとも1つの麻酔剤を含み、
ここで、R
1は:
【化23】
【化24】
を含み、
R
2は、H、CH
3、Cl、または
【化25】
を含み、R
3は、HまたはNH
2を含み、R
4は、H、NH
2、CH
3、
【化26】
を含み、R
5はHを含み、R
6は、HまたはCH
3を含む。
【0086】
別の実施形態では、式IのR
1は、
【化27】
を含み、R
2は、HまたはCH
3を含み、R
3はHを含み、R
4は、H、NH
2、
【化28】
を含み、R
5はHを含み、R
6は、HまたはCH
3を含む。
【0087】
1つの実施形態では、該麻酔剤は、
【化29】
またはそれらの組合せを含む。
【0088】
1つの実施形態では、該麻酔剤は、
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
本明細書に記載する麻酔剤の組合せ、またはそれらの医薬的に許容される誘導体を含む。別の実施形態では、該麻酔剤はベンゾカインではない。
【0089】
1つの実施形態では、該麻酔剤はリドカインである。
【0090】
1つの実施形態では、該麻酔剤はテトラカインである。
【0091】
1つの実施形態では、該麻酔剤はテトラカイン及びリドカインである。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態に含まれる麻酔剤は、エステル系の麻酔剤である。特定の実施形態では、該麻酔剤はベンゾカイン(C
9H
11NO
2)であり、その分子式は以下の通りである:
【化34】
別の実施形態では、該麻酔剤はベンゾカインではない。
【0093】
本方法のさらなる実施形態は、アミド系の麻酔剤を使用する。
【0094】
本方法の好ましい実施形態では、本開示の医薬組成物は、アンチピリンを鎮痛剤として、及びベンゾカインを麻酔剤として含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、アンチピリンを鎮痛剤として、ならびにテトラカイン及び/またはリドカインを麻酔剤として含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、テトラカイン及びリドカインを麻酔剤として含む。
【0096】
1つの実施形態では、本発明は、耳用医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物は、(i)ピラゾロン誘導体を含む少なくとも1つの鎮痛剤、及び(ii)式I:
【化35】
を含む少なくとも1つの麻酔剤を含み、ここで、R
1は以下を含み:
【化36】
【化37】
R
2は、H、CH
3、Cl、または
【化38】
を含み、R
3は、HまたはNH
2を含み、R
4は、H、NH
2、CH
3、
【化39】
を含み、R
5はHを含み、R
6はHまたはCH
3を含み、該鎮痛剤は、該医薬組成物に、
1mL当たり約50~約60mgの濃度で含まれ、該麻酔剤は、該医薬組成物に、1mL当たり約10~約20mgの濃度で含まれる。
【0097】
1つの実施形態では、式IのR
1は、
【化40】
を含み、R
2は、HまたはCH
3を含み、R
3はHを含み、R
4は、H、NH
2、または
【化41】
を含み、R
5はHを含み、R
6は、HまたはCH
3を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物はさらに、抗生物質、血管収縮剤、グリセリン、エピネフリン、酢酸、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、該麻酔剤は、リドカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、該麻酔剤はベンゾカインではない。さらなる実施形態では、該麻酔剤は、リドカイン、テトラカイン、またはそれらの組合せを含む。
【0099】
1つの実施形態では、該耳用医薬組成物のピラゾロン誘導体は、アムピロン、ジピロン、アンチピリン、アミノピリン、またはプロピフェナゾンを含む。いくつかの実施形態では、該鎮痛剤はアンチピリンである。
【0100】
本医薬組成物は、以下が挙げられるがこれらに限定されない多くの方法で処方され得る:溶液、フォーム、ゲル、クリーム、ペースト、ローション、エマルション、及び上記の組合せ。
【0101】
さらに、本開示は、アンチピリン及びベンゾカイン等の医薬組成物の活性成分が、その後患者の外耳道に入れられる材料に注入され得ることを企図する。例えば、綿ガーゼ材料を、本医薬組成物を含むように構成することができ、該ガーゼは、本医薬組成物に外耳道を暴露するための便利な塗布方法を提供する。
【0102】
1つの実施形態では、耳用医薬組成物は、かかる治療を必要とする対象の外耳道に対して投与され、該対象は、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等が挙げられるがこれらに限定されない脊椎動物種である。いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物は、局所麻酔剤を単独で、または他の局所麻酔剤と組合せて含み、鎮痛剤を含むまたは含まない。1つの実施形態では、該鎮痛剤はアンチピリンである。別の実施形態では、該麻酔剤は、ベンゾカイン、フォルマカイン(formacaine)、コカイン、及びシクロメチカインからなる群から選択される少なくとも1つである。他の実施形態では、該麻酔剤は、テトラカイン及び/またはリドカインを含む。いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物はさらに、様々な医薬担体の溶液に懸濁されたエピネフリンの存否を含む。該耳用医薬組成物は、所望の効果のため、続いて外耳道に投与される。
【0103】
医薬組成物の塗布の解剖学的位置
【0104】
本発明は、第5、7、9、10、11、及び12脳神経を、副交感神経系、及び/または交感神経系の麻酔とともに麻酔する目的で、外耳道の局所耳麻酔を行うことを含む、様々な疾患の治療方法を提供する。1つの実施形態では、本発明は、自律神経系の局所耳麻酔を行うことを含む様々な疾患の治療を提供する。1つの実施形態では、三叉神経(第5脳神経)、顔面神経(第7脳神経)、舌咽神経(第9脳神経)、迷走神経(第10脳神経)、脊髄副神経(第11脳神経)、舌下神経(第12脳神経)、またはそれらの組合せにおいて耳麻酔が行われる。本発明は、さらに、1つ以上の麻酔剤(例えば、リドカイン及び/またはテトラカイン)を、医薬担体(例えば、賦形剤)グリセリンとともにエピネフリンを含む、またはエピネフリンを含まない溶液の耳用医薬組成物を投与することによる、一般体性神経系及び一般内臓神経系の調節を提供する。いくつかの実施形態では、該耳用医薬組成物は、さらに鎮痛剤、例えば、ピラゾロン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、該ピラゾロン誘導体はアンチピレンである。
【0105】
本方法は、患者の外耳道に対して本開示の医薬組成物を塗布することを企図する。外耳道は、本医薬組成物を塗布し、迷走神経または他の脳神経に沿って神経学的シグナルの遮断を達成するヒトの解剖学的構造における便利な点として機能することが見出されている。すなわち、本明細書に記載の通り、患者の外耳道に医薬組成物を入れることにより、身体が該組成物を吸収し、迷走神経または他の脳神経が「遮断」され、その結果、該神経の正常な生理的機能が変更されることが見出されている。特定の神経を麻酔するための管路として外耳道を利用する本方法は、当技術分野に存在する欠点を有さない。
【0106】
記載の通り医薬組成物を塗布する本方法は、侵襲的でなく、外科処置に伴う危険をもたらさない。さらに、本方法は、患者の体内に人工的な装置を挿入することに頼らない。本開示の非侵襲的処置は、人工的な装置も外科処置もなしに迷走神経または他の脳神経の機能を変更することができるため、本方法が最先端技術の大幅な進歩を示すことは明らかである。本方法はまた、経済的であり、それ故、人口の大部分に対して治療を利用する機会を与えるであろう。
【0107】
本開示の迷走神経におけるシグナル伝達の遮断方法の実施形態を、以下の実施例を参照してさらに詳細に説明する。これら実施例の各々において、本開示の方法は、特定の脳神経に関連するヒトの疾患または病気を治療することに成功することができた。理論に拘束されるものではないが、本方法はまた、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等が挙げられるがこれらに限定されない様々な脊椎動物種の特定の脳神経と関連する疾患または病気の治療にも有用である。本明細書に開示の実施例で治療される状態は、迷走神経または他の脳神経において耳麻酔を行う本開示の方法により、または、自律神経系の耳麻酔を行うことによって、すなわち、「クルーズ・マヌーバ」と呼ばれるもので、臨床的に有効な程度に制御することができた。1つの実施形態では、該疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。1つの実施形態では、該神経精神医学関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:慢性疲労症候群、線維筋痛症、てんかん、強迫性障害、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群、限局性筋失調症、三叉神経痛、過食症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム障害、不安頭痛、不眠症、網様体賦活系(RAS)調節不全、多発性硬化症、末梢神経障害、失行症、頸部及び肩の痛み、パーキンソン病、一般体性求心性疼痛、一般内臓求心性疼痛、オピエート離脱、構音障害、ADHD、非特異的な手の振戦、吃音、脳性まひ、レイノー現象、ならびに多汗。1つの実施形態では、該一般体性求心性疼痛は、首、背中、腕、脚、または肩の神経筋疼痛
、関節痛、坐骨神経痛、関節炎の痛み、帯状疱疹の痛み、反射性交感神経性ジストロフィーの痛み、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、オピエート離脱症状は、全身痛、筋肉痛、吐き気、嘔吐、発汗、下痢、またはそれらの組合せを含む。1つの実施形態では、該耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:口蓋ミオクローヌス、扁桃摘出術後疼痛、咽頭痛、喉頭痛、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、いびき、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、耳の痛み、頸部痛、ドライアイ症候群、三叉神経痛、及び側頭骨顎関節痛。1つの実施形態では、該消化器/泌尿器(GU)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:膀胱痙攣、月経困難症、骨盤痛、早産、間質性膀胱炎、前立腺炎、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、膀胱炎、腎臓痛、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、遺糞、月経過多、頻尿、持続性腟出血、及び腎血流の減少。1つの実施形態では、該胃腸(GI)関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性結腸炎、胃酸逆流、胃炎、胃腸炎、妊娠悪阻、小児疝痛、肝腎症候群、食欲抑制、胆嚢痛、慢性便秘、慢性下痢、及び膵炎。1つの実施形態では、該心臓関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:発作性(孤立性)(迷走神経性)心房細動、起立性(神経原性)低血圧、反射性非収縮性失神、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経反射、心臓手術に由来する咳、心ブロック、心房収縮、頻脈、及びうっ血性心不全。1つの実施形態では、該肺関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、嚢胞性線維症、及び気管支痙攣。1つの実施形態では、該代謝関連の苦痛は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:高血圧、糖尿病、敗血症性ショック、神経原性ショック、高血糖症、及び高コレステロール血症。
【0108】
別途の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。例示的な方法及び材料については後述するが、本明細書に記載されるものと類似するまたは同等な方法及び材料もまた、本発明の実施または試験に使用することができる。
【0109】
本開示の解釈から当業者には明らかなように、本開示の実施形態は、上に具体的に開示されたもの以外の形態で具体化することができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、従って、例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。当業者には、通常の実験のみを用い、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多数の等価物を認識されるか、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物に規定されており、上の説明に含まれる例に限定されない。
【0110】
本明細書で言及されるすべての刊行物及び他の参考文献は、個々の刊行物または参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたものとして、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される刊行物及び参考文献は、先行技術とは認められていない。
【実施例】
【0111】
本発明の理解をより完全にするため、以下に実施例を示す。以下の実施例は、本発明の例示的な作製方法及び実施方法を示す。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示される特定の実施形態に限定されず、代替法を用いて同様の結果を得ることができるため、これら実施形態は例示の目的のためのみである。
【0112】
実施例1:扁桃摘出術後の咽頭または口腔咽頭痛の治療
【0113】
プロトコル
【0114】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、扁桃摘出術後の咽頭または口腔咽頭痛を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0115】
すでに扁桃摘出術を受けた500人の患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日3回、扁桃摘出術後10日間使用するように指示した。
【0116】
結果
【0117】
治療した500人の患者のうち、495人が咽頭及び/または口腔咽頭痛の顕著な減少を報告した。
【0118】
実施例2:アデノイド摘出術後の咽頭または口腔咽頭痛の治療
【0119】
プロトコル
【0120】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、アデノイド摘出術後の咽頭または口腔咽頭痛を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0121】
すでにアデノイド摘出術を受けた200人の患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日2回、アデノイド摘出術後7日間使用するように指示した。
【0122】
結果
【0123】
治療した200人の患者のうち、200人が咽頭及び/または口腔咽頭痛の顕著な減少を報告した。
【0124】
実施例3:喘息の治療
【0125】
プロトコル
【0126】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、慢性喘息及び急性喘息発作を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0127】
10人の喘息患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に毎朝2ヶ月間使用するように指示した。
【0128】
重篤な急性喘息発作を起こした患者も同様に、上記医薬組成物を該患者の外耳道に直ちに充填することにより治療した。
【0129】
結果
【0130】
治療した10人の患者のうち、10人が喘息発作の著しい減少を報告した。
【0131】
さらに、重篤な喘息発作を起こした患者では、この治療から60分以内にその肺に到達する酸素量が劇的に増加した。
【0132】
実施例4:肥満の治療(すなわち、食欲の抑制方法)
【0133】
プロトコル
【0134】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、肥満患者の治療方法の有効性を評価した。
【0135】
5人の肥満患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に毎朝無期限に使用するように指示した。
【0136】
結果
【0137】
治療した5人の患者のうち、5人全員がこの治療の使用の過程で著しい食欲の低下を報告した。著しい食欲の低下は、減量につながった。
【0138】
実施例5:神経性の咳の治療
【0139】
プロトコル
【0140】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、神経性の咳を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0141】
神経性の咳を有する4人の患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日2回、7日間、その後必要なときのみに使用するように指示した。
【0142】
結果
【0143】
治療した4人の患者のうち、4人全員が咳の著しい減少を報告した。
【0144】
実施例6:ヒステリー球の治療
【0145】
プロトコル
【0146】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、ヒステリー球を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0147】
2人のヒステリー球患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日1回、必要に応じて無期限に使用するように指示した。
【0148】
結果
【0149】
治療した2人の患者のうち、2人ともが咽喉絞扼感の著しい減少を報告した。
【0150】
実施例7:痙攣性発声障害の治療
【0151】
プロトコル
【0152】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、痙攣性発声障害を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0153】
1人の痙攣性発声障害を有する患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日1回、必要に応じて無期限に使用するように指示した。
【0154】
結果
【0155】
この患者は、この治療の使用のほぼ直後、咽喉嗄声及び声帯痙攣の著しい減少を報告した。
【0156】
実施例8:喉頭痛の治療
【0157】
プロトコル
【0158】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、喉頭痛を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0159】
2人の喉頭痛を有する患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日1回、必要に応じて無期限に使用するように指示した。
【0160】
結果
【0161】
治療した2人の患者のうち、すべての患者が喉頭痛の著しい減少を報告した。
【0162】
実施例9:胃食道逆流性疾患の治療
【0163】
プロトコル
【0164】
本方法の好ましい実施形態の試験を行い、胃食道逆流性疾患(GERD)を有する患者の治療方法の有効性を評価した。
【0165】
2人のGERDを有する患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物6滴をそれぞれの耳に1日1回、必要に応じて無期限に使用するように指示した。
【0166】
結果
【0167】
治療した2人の患者のうち、2人ともが胃酸の逆流及び胸やけの著しい減少を報告した。
【0168】
上述の臨床実験の結果は、下記表1において見出すことができる。
【0169】
【0170】
実施例10:疾患の治療
【0171】
プロトコル
【0172】
本方法の実施形態の試験を行い、特定の脳神経に関連する疾患を有する患者の治療方法の有効性を評価した。この場合の疾患は、神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、消化器/泌尿器(GU)関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛である。
【0173】
神経精神医学関連の苦痛、耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛、GU関連の苦痛、胃腸(GI)関連の苦痛、心臓関連の苦痛、肺関連の苦痛、または代謝関連の苦痛を有する患者に、アンチピリン(約54.0mg)及びベンゾカイン(約14.0mg)を含む医薬組成物の滴(治療プロトコル、「AB」Tmtプロトコル)または、リドカイン(約40.0mg)及びテトラカイン(約5.0mg)を含む医薬組成物の滴(治療プロトコル、「LAT」Tmtプロトコル)を片耳または両耳に少なくとも1日1回(例えば、朝または夜のいずれか)、必要に応じてある期間(Tmt期間)使用するように指示した。この試験に用いるLAT耳用溶液は、4%のリドカイン、.5%のテトラカイン、1/100,000のエピネフリン、及び無水グリセリンを含む。この試験に用いるAB耳用溶液は、5.4%のアンチピリン、1.4%のベンゾカイン、硫酸オキシキノリン、及び無水グリセリンを含む。
【0174】
表2.神経精神医学関連の苦痛の臨床実験
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【0175】
表3.耳鼻咽喉(ENT)関連の苦痛の臨床実験
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0176】
表4.消化器/泌尿器(GU)関連の苦痛の臨床実験
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【0177】
表5.胃腸(GI)関連の苦痛の臨床実験
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0178】
表6.心臓関連の苦痛の臨床実験
【表6-1】
【表6-2】
【0179】
表6.肺関連の苦痛の臨床実験
【表7-1】
【表7-2】
【0180】
表7.代謝関連の苦痛の臨床実験
【表8-1】
【表8-2】
【0181】
本開示の方法によって治療可能な疾患は多い。特定の神経によって神経支配される器官または身体組織と関連する任意の疾患は、本方法によって潜在的に治療することができる。本方法によって治療可能な以下の疾患に関して具体的な言及がなされる:喘息、神経原性咳、ヒステリー球、痙攣性発声障害、胃食道逆流性疾患、及び肥満。本方法はまた、扁桃摘出術後もしくはアデノイド切除術後の咽頭痛または口腔咽頭痛の治療に適する。
【0182】
さらに他の実施形態では、本開示の方法によって治療可能な疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:心疾患、発作性(孤立性)(迷走神経性)心房細動、反射性収縮性失神、体位性起立性頻脈症候群(POTS)、過剰催吐反射、食道性嚥下障害、嘔吐、吐き気、嚥下痛、食道痛、食道神経痛、胃炎、消化不良、胆嚢疾患、胆嚢炎痛、腹痛、食道運動障害または食道運動不全、痙攣性結腸、膵臓痛または痙攣、小児疝痛、直腸痙攣及び直腸痛、膀胱痙攣(過活動膀胱)、間質性膀胱炎、月経困難症、早産、骨盤痛、慢性骨盤痛、慢性前立腺炎痛、子癇、子癇前症、ヘルプ症候群、膀胱炎痛、過敏性腸症
候群、コーン病(Cohn’s disease)、潰瘍性結腸炎、逆流症、胃炎、胃腸炎症状、妊娠悪阻、小児疝痛、肝腎症候群、食欲抑制、胆嚢痛、食道の炎症、胃の炎症、結腸の炎症、腎臓痛(結石、感染症、または腫瘍由来)、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、遺糞、月経過多、頻尿、持続性膣出血、勃起抑制、早漏防止、多汗抑制、尿管痙攣、月経痙攣、子宮痙攣、卵巣痛及び痙攣、ファローピウス管痛及び痙攣、小児喘息、成人喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支粘液、急性気管支炎、喘息性気管支炎、慢性気管支炎、気管支痙攣、嚢胞性線維症、肺の炎症、気腫、胸膜炎性胸痛、肋間筋痛、神経痛、挿管及び抜管に続発する気管支痙攣、狭心症、心臓迷走神経遮断、血管迷走神経反射遮断、徐脈、低血圧症、起立性低血圧症、高血圧症、糖尿病、ショック、敗血症性ショック、血糖低下、膵臓の炎症、迷走神経または心臓に関する理由に続発する失神、血管迷走神経性失神、徐脈型不整脈、皮膚の血管拡張、神経痛、喉頭痙攣、急性喉頭炎、喉頭痛、慢性喉頭炎、抜管後及び挿管後の喉頭痙攣、口蓋ミオクローヌス、扁桃摘出術後疼痛、いびき、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、炎症性ポリープ症(鼻)、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、耳鳴り、嚥下障害、クループ、慢性疲労症候群、線維筋痛症(慢性)、てんかん、強迫性障害、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群、限局性筋失調症、三叉神経痛、過食症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、自律神経失調症、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム、不安頭痛、不眠症、多発性硬化症、網様体賦活系の調節、末梢神経障害、失行症、頸部及び肩の痛み、ならびにパーキンソン病。
【0183】
特に、上記方法に基づいた治療を受けた患者の半分以上に改善が報告され、以下の疾患もしくは障害と関連する症状または状態を治療された患者が最低5人であった。すなわち、血管迷走神経反射閉塞、慢性気管支炎、喘息性気管支炎、低血圧、高血圧、糖尿病、膀胱痙攣、月経困難症、骨盤痛、膀胱炎の痛み、遺尿、排尿障害、性交疼痛症、月経過多、頻尿、痙攣性発声障害、いびき、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、慢性副鼻腔炎、慢性鼻閉、アレルギー性結膜炎、くしゃみ、しゃっくり、鼻炎、嚥下障害、過敏性腸症候群、胃炎、食欲抑制、慢性疲労症候群、線維筋痛症、不安、うつ、下肢静止不能症候群、家族性企図振戦、片頭痛、自閉症スペクトラム、不安頭痛、不眠症、睡眠障害、失行症、ならびに頸部及び肩の痛み。同様の良好な結果(すなわち、治療された患者全員または全員の半数超に対して報告された良好な結果)は同様に、他の記載された疾患または密接に関係する疾患においても見られた。
【0184】
迷走神経及び他の脳神経に関連する様々な疾患の治療方法を様々な実施形態に関連して本出願に記載してきたが、本方法の範囲は、そのように開示された特定の実施形態に限定されることを意図しない。それとは逆に、本方法は、以下の特許請求の範囲及び趣旨に含まれ得る代替物、修正、及び等価物を網羅することが意図されている。
【0185】
等価物
当業者には、通常の実験のみを用い、本明細書に記載の特定の物質及び手順に対する多数の等価物を認識されるか、または確認することができるであろう。かかる等価物は、本発明の範囲内にあると見なされ、以下の特許請求の範囲に含まれる。