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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】バドミントン用のラケットフレーム
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/10 20150101AFI20240701BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20240701BHJP
【FI】
A63B49/10
A63B102:04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022134186
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2024030937
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 隆行
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】太田 映
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直矢
(72)【発明者】
【氏名】保富 大輔
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特許第4511675(JP,B2)
【文献】特開平10-28746(JP,A)
【文献】特許第2758354(JP,B2)
【文献】特開2008-36077(JP,A)
【文献】米国特許第5358261(US,A)
【文献】特開2007-54232(JP,A)
【文献】特開2002-35170(JP,A)
【文献】特許第6782154(JP,B2)
【文献】特開2011-161221(JP,A)
【文献】特開2001-170219(JP,A)
【文献】特開2019-107057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00 - 51/16
A63B 102/04
A63B 59/00 - 59/80
A63B 67/00 - 69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフェース部と、
グリップ部と、
前記フェース部と前記グリップ部との間に配置されたシャフト部とを備え、
前記フェース部、前記グリップ部、および前記シャフト部は、
第1平面上に配置され、
前記フェース部の外周線に対して垂直な面である第1垂直面での前記フェース部の断面形状は、
第1中点と、
前記第1中点と接続される頂点と、
前記頂点と接続される端点と、
前記端点と接続される底点とを備え、
前記第1中点は前記第1平面上に配置され、
前記頂点は前記第1平面および前記第1垂直面に対して垂直な面である第2垂直面上に配置され、
前記底点は前記フェース部の前記断面形状において前記第2垂直面から最も離れた位置に配置され、
前記端点は前記フェース部の前記断面形状において前記第1平面から最も離れた位置に配置され、
前記端点および前記第1中点は前記第2垂直面からみて、前記底点が位置する領域に配置され、
前記第1平面から前記端点までの距離である第1幅は、前記第2垂直面から前記底点までの距離である第1距離に対して0.6倍以上1.1倍以下であり、
前記第2垂直面から前記端点までの距離である第2距離は、前記第1距離に対して0.53倍以上0.75倍以下であり、
前記第1平面から前記頂点までの距離である第2幅は、前記第1幅に対して0.46倍以上0.56倍以下であり、
前記フェース部の前記断面形状は、
前記第1中点と前記頂点とを接続する第1フレーム部と、
前記頂点と前記端点とを接続する第2フレーム部と
前記端点と前記底点とを接続する第3フレーム部とを含み、
前記第1フレーム部の厚みは前記第2フレーム部の厚みより大きく、
前記第3フレーム部の厚みは前記第2フレーム部の厚みより大きい、バドミントン用のラケットフレーム。
【請求項2】
前記フェース部の前記断面形状は、前記第1垂直面上において前記第1平面を対称面とした面対称な形状である、請求項1に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
【請求項3】
前記フェース部の前記断面形状は前記第1平面上に配置された第2中点を備え、
前記第2中点は前記底点と接続され、
前記第2中点は、前記第2垂直面からみて前記底点が位置する領域に配置され、
前記第2垂直面から前記第2中点までの距離である第4距離は、前記第2垂直面から前記第1中点までの距離である第3距離より大きく、
前記第4距離は前記第1距離より小さい、請求項1または請求項2に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
【請求項4】
前記第3距離は前記第1距離に対して0.16倍以下である、請求項3に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
【請求項5】
前記フェース部の前記断面形状は、
前記頂点と前記端点とを接続する第2フレーム部と、
前記底点と前記第2中点とを接続する第4フレーム部とを含み、
前記第4フレーム部の厚みは前記第2フレーム部の厚みより大きい、請求項3に記載の
バドミントン用のラケットフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バドミントン用のラケットフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テニスラケットなど、打球部にガットを張って使用するラケットおよび当該ラケットを構成するラケットフレームが知られている。これらのラケットでは、打球時における反発性を向上させるために、ラケットフレームの変形を促すものが提案されている(例えば、特開2019-107057号公報参照)。特開2019-107057号公報では、ガット保護体を嵌める第1溝の他に、ラケットフレームの変形を促す第2溝が設けられたラケットフレームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-107057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2019-107057号公報に開示されたラケットフレームは、製造上において第2溝が形成されているため研磨や塗装の作業性が悪い。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、製造上の手間を増やすことなく、反発性が高いバドミントン用のラケットフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったバドミントン用のラケットフレームは、環状のフェース部とグリップ部とシャフト部とを主に備える。シャフト部は、フェース部とグリップ部との間に配置される。フェース部、グリップ部、およびシャフト部は、第1平面上に配置される。第1垂直面でのフェース部の断面形状は、第1中点と頂点と端点と底点とを備える。第1垂直面は、フェース部の外周線に対して垂直な面である。頂点は第1中点と接続される。端点は頂点と接続される。底点は端点と接続される。第1中点は第1平面上に配置される。頂点は第2垂直面上に配置される。第2垂直面は第1平面および第1垂直面に対して垂直な面である。底点はフェース部の断面形状において第2垂直面から最も離れた位置に配置される。端点はフェース部の断面形状において第1平面から最も離れた位置に配置される。端点および第1中点は第2垂直面からみて、底点が位置する領域に配置される。第1幅は、第1距離に対して0.6倍以上1.1倍以下である。第1幅は第1平面から端点までの距離である。第1距離は第2垂直面から底点までの距離である。第2距離は第1距離に対して0.53倍以上0.75倍以下である。第2距離は第2垂直面から端点までの距離である。第2幅は、第1幅に対して0.46倍以上0.56倍以下である。第2幅は第1平面から頂点までの距離である。
【0007】
上記によれば、製造上の手間を増やすことなく、反発性が高いバドミントン用のラケットフレームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレームの平面図である。
図2】実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレームの側面図である。
図3図1の線分III-IIIにおける断面図である。
図4】バドミントン用のラケットフレームの解析モデルである。
図5】バドミントン用のラケットフレームの解析モデルである。
図6】バドミントン用のラケットフレームの剛性の解析結果である。
図7】バドミントン用のラケットフレームの剛性の解析結果である。
図8】バドミントン用のラケットフレームの剛性の解析結果である。
図9】バドミントン用のラケットフレームの剛性の解析結果である。
図10】バドミントン用のラケットフレームのモデルの形状を示すグラフである。
図11】実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレームの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
<バドミントン用のラケットフレームの構成>
図1は、実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレーム1の平面図である。図2は、図1のバドミントン用のラケットフレーム1の側面図である。図3は、図1の線分III-IIIにおける断面図である。
【0011】
図1から図3に示されたバドミントン用のラケットフレーム1は、フェース部2とシャフト部3とグリップ部4とを主に備える。図1および図2に示されるように、フェース部2、シャフト部3、およびグリップ部4は第1平面A上に配置される。つまり、フェース部2、シャフト部3、およびグリップ部4は、図1の第1方向Xから順に並んで同一平面上に配置される。フェース部2は、第2方向Yから見た平面視において周方向に延びるように形成された構造を持つ。つまり、フェース部2の形状は環状である。図2に示されるように、第2方向Yは、図1の第1方向Xと直交する方向である。異なる観点から言えば、第2方向Yは、フェース部2にガットが張られることにより形成される打球面7に直交する方向である。
【0012】
シャフト部3は、フェース部2とグリップ部4との間に配置される。シャフト部3は、グリップ部4およびフェース部2に接続されている。シャフト部3はグリップ部4の延在する方向である第1方向Xに沿って延びている。フェース部2およびシャフト部3は、たとえば繊維強化樹脂によって一体的に形成される管状構造を有している。グリップ部4では、たとえばグリップレザーなどが巻回被膜した状態となっている。グリップ部4の構造は基本的に中実であるが、管状構造であってもよい。
【0013】
図3に示されるように、第1垂直面Bでのフェース部2の断面形状6は、第1中点p1と頂点p2と端点p3と底点p4とを備える。第1垂直面Bは、第2方向Yからみたラケットフレーム1の平面視におけるフェース部2の外周線5aに対して垂直な面である。つまり、第1垂直面Bは第1平面Aに対して垂直な面である。以下、第1垂直面B上におけるフェース部2の断面形状6における、第1中点p1、頂点p2、端点p3、および底点p4の位置関係について説明する。なお、ここで言うフェース部2の断面形状6は、第2方向Yから見た平面視においてフェース部2の任意の周方向位置における部分の断面形状を意味する。ここでは、図1の線分III-IIIにおける断面でのフェース部2の断面形状について説明する。
【0014】
フェース部2の断面形状6は、第1フレーム部6aと第2フレーム部6bと第3フレーム部6cとを含む。頂点p2は、第1フレーム部6aを介して第1中点p1と接続される。端点p3は、第2フレーム部6bを介して頂点p2と接続される。底点p4は、第3フレーム部6cを介して端点p3と接続される。第1中点p1および底点p4は第1平面A上に配置される。頂点p2は、図3に示されるように、第2垂直面C上に配置される。第2垂直面Cは、第1平面Aおよび第1垂直面Bに対して垂直な面である。つまり、第2方向Yから見た平面視におけるフェース部2の外周線5aと第1垂直面Bが交差する点が、頂点p2である。そして、第2方向Yから見た平面視におけるフェース部2の内周線5bと第1垂直面Bが交差する点が、底点p4である。つまり、底点p4は、フェース部2の断面形状6において第2垂直面Cから最も離れた位置に配置される。端点p3は、フェース部2の断面形状6において第1平面Aから最も離れた位置に配置されている。端点p3および第1中点p1は第2垂直面Cからみて、底点p4が位置する領域に配置される。上記の第1中点p1、頂点p2、端点p3、底点p4を備えたフェース部2の断面形状6は、第1垂直面B上において第1平面Aを対称面とした面対称な形状である。なお、フェース部2の断面形状6は、必ずしも第1平面Aを対称面とした面対称な形状でなくてもよい。たとえば、フェース部2の断面形状6は、第1平面Aを境に形状が異なっていてもよい。
【0015】
また、第1方向Xに対して垂直な面上におけるフェース部2の一対の断面形状は、第1方向Xに対して垂直な面上において中心軸Rを点対称とした形状であってもよい。中心軸Rは、グリップ部4を通り、第1方向Xに沿って延びる第1平面A上に配置される線である。ここで言うフェース部2の一対の断面形状は、フェース部2において中心軸Rに対して垂直な面と交差する2点の周方向位置における、一対のフェース部2の断面形状を意味する。たとえば、フェース部2の一対の断面形状は、図1の線分Q-Q間の範囲内におけるフェース部2の断面形状である。2点の周方向位置を互いに結ぶ線は第1方向Xに対して垂直である。上記一対の断面形状は、中心軸Rを軸中心として一方の断面形状が180°回転された時に、一方の断面形状が他方の断面形状に重なるような形状である。このようにすれば、一つのラケットで打球面7の表面および裏面それぞれにおける打球時の反発性およびコントロール性は同一にすることができる。
【0016】
一対の断面形状は、第1方向Xに対して垂直な面上において第3垂直面Eに対して鏡像対象であってもよい。第3垂直面Eは、中心軸Rを含み、第1平面Aに垂直な面である。つまり、第1平面Aと第3垂直面Eとの交線が中心軸Rとなる。
【0017】
図3に示されるように、フェース部2の断面形状6では、ガット保護体が配置可能な第1溝8aが設けられている。第1溝8aは一対の頂点p2に囲まれるように形成される。第1溝8aは第1中点p1を底とする凹状の溝である。第1溝8aは、第1平面A上にフェース部2の外周に沿って形成されている。
【0018】
第1フレーム部6a、第2フレーム部6b、および第3フレーム部6cは、それぞれ厚みt1、t2,t3を有する。厚みt1および厚みt3はそれぞれ、厚みt2より厚くてもよい。たとえば、当該ラケットフレーム1を製造する際に、フェース部2の断面形状6の中央部分である第1中点p1および底点p4にプリプレグを積層することで、厚みt1および厚みt3を厚みt2より大きくできる。こうすることで、打球時に荷重がかかる第1中点p1および底点p4における剛性を確保することができる。
【0019】
第1平面Aから、端点p3および頂点p2のぞれぞれまでの距離を第1幅W1、第2幅W2とする。第2垂直面Cから、底点p4、端点p3、第1中点p1のそれぞれまでの距離を第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3とする。ラケットの種類によって、当該ラケットフレーム1の断面形状6におけるアスペクト比(W1/L1)が異なる。たとえばバドミントン用のラケットである場合、第1幅W1は、第1距離L1に対して0.6倍以上1.1倍以下である。上記のアスペクト比の範囲内において、第2幅W2、第2距離L2を適宜変更することで、打球時にフェース部2の断面形状6の撓みやすさが変わる。フェース部2の断面形状6が撓みやすくなることで、当該ラケットフレーム1における打球時の反発性が向上する。
【0020】
ここで、本実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレーム1の特徴は、フェース部2の断面形状6が撓みやすいような形状である点である。具体的には、第2距離L2は、第1距離L1に対して0.53倍以上0.75倍以下である。第2幅W2は、第1幅W1に対して0.46倍以上0.56倍以下である。このようにすれば、フェース部2の断面形状6は撓みやすくなり、打球時の反発性を向上したバドミントン用のラケットフレーム1を得ることができる。また、ラケットフレーム1の反発性を向上させるために追加の溝などを形成していないので、ラケットフレーム1を製造する上で当該追加の溝などを形成するための特殊な加工を施す必要が無い。そのため、当該ラケットフレーム1は製造上の手間を増やすことなく生産できる。
【0021】
<作用効果>
本開示に従ったバドミントン用のラケットフレーム1は、環状のフェース部2とグリップ部4とシャフト部3とを主に備える。シャフト部3は、フェース部2とグリップ部4との間に配置される。フェース部2、グリップ部4、およびシャフト部3は、第1平面A上に配置される。第1垂直面Bでのフェース部2の断面形状6は、第1中点p1と頂点p2と端点p3と底点p4とを備える。第1垂直面Bは、フェース部2の外周線5aに対して垂直な面である。頂点p2は第1中点p1と接続される。端点p3は頂点p2と接続される。底点p4は端点p3と接続される。第1中点p1は第1平面A上に配置される。頂点p2は第2垂直面C上に配置される。第2垂直面Cは第1平面Aおよび第1垂直面Bに対して垂直な面である。底点p4はフェース部2の断面形状6において第2垂直面Cから最も離れた位置に配置される。端点p3はフェース部2の断面形状6において第1平面Aから最も離れた位置に配置される。端点p3および第1中点p1は第2垂直面Cからみて、底点p4が位置する領域に配置される。第1幅W1は、第1距離L1に対して0.6倍以上1.1倍以下である。第1幅W1は第1平面Aから端点p3までの距離である。第1距離L1は第2垂直面Cから底点p4までの距離である。第2距離L2は第1距離L1に対して0.53倍以上0.75倍以下である。第2距離L2は第2垂直面Cから端点p3までの距離である。第2幅W2は、第1幅W1に対して0.46倍以上0.56倍以下である。第2幅W2は第1平面Aから頂点p2までの距離である。
【0022】
このようにすれば、フェース部2の断面形状6は撓みやすくなり、打球時の反発性を向上したバドミントン用のラケットフレーム1を得ることができる。また、断面形状6を撓みやすくするために製造上において特別な加工を施さなくて済むため、当該ラケットフレーム1は製造上の手間を増やすことなく生産が可能となる。
【0023】
上記バドミントン用のラケットフレーム1において、フェース部2の断面形状6は、第1垂直面B上において第1平面Aを対称面とした面対称な形状である。このようにすれば、一つのラケットで打球面7の表面および裏面それぞれにおける打球時の反発性およびコントロール性を同一にすることができる。
【0024】
上記バドミントン用のラケットフレーム1において、フェース部2の断面形状6は、第1フレーム部6aと第2フレーム部6bとを含む。第1フレーム部6aは第1中点p1と頂点p2とを接続する。第2フレーム部6bは頂点p2と端点p3とを接続する。第1フレーム部6aの厚みt1は第2フレーム部6bの厚みt2より大きい。このようにすれば、打球時に荷重がかかる第1中点p1における剛性を確保することができる。
【0025】
上記バドミントン用のラケットフレーム1において、第3距離L3は第1距離L1に対して0.16倍以下である。このようにすれば、フェース部2の断面形状6における周長が短くなるため、当該ラケットフレーム1の軽量化を図ることができる。
【0026】
上記のような本実施の形態に係るバドミントン用のラケットフレーム1の効果を検証するために以下のような剛性解析を実施した。
【0027】
(解析例1)
<解析モデル>
図4および図5は当該解析で対象としたモデル10である。当該モデル10は、一対の端面部11と側面部12とから構成される。端面部11の形状は、図3で示されるフェース部2の断面形状6から第1平面Aを境にして半分に切った断面形状6を模擬している。側面部12は、一対の端面部11間の距離が40mmになるように、一対の端面部11を接続している。つまり、当該モデル10は、図3で示されるようなフェース部2の断面形状6を半分に切った形状が第3方向Zに40mm伸びるように形成された形状である。当該モデル10の断面形状におけるフレームの厚みは、一様に0.8mmとした。なお、モデル10の材料特性は表1のとおりである。なお、表1では左側から材料特性、当該材料特性の単位、材料特性の数値が記載されている。
【0028】
【表1】
【0029】
上記のモデル10において、アスペクト比を一定にする一方、無次元距離lおよび無次元幅wを変えて、各断面形状における剛性を検討した。なお、無次元距離l(単位:%)は、第2距離L2を第1距離L1で除した値である。無次元幅w(単位:%)は、第2幅W2を第1幅W1で除した値である。
【0030】
<解析条件1>
図4に示されるように、本解析条件は片持ち梁を想定した条件である。具体的には、モデル10の端面部11aを完全拘束した状態で、他端の端面部11bを構成する各要素に等しく荷重F1を加えた。端面部11bを構成する各要素に等しく加えられた荷重F1の合力は10Nである。荷重F1は、図3の第1中点p1から底点p4に向かう方向に対応する方向に加えた。このようにすることで、端面部11bを構成する各要素における変位量の平均を曲げ変位量として評価した。
【0031】
<解析条件2>
図5に示されるように、本解析条件では接続部12bに一様に荷重F2を加えた時の解析を実施した。具体的には、モデル10の接続部12aを拘束した状態で、接続部12bに一様に単位線分あたりの荷重F2を加えた。接続部12bに加えた荷重F2の合力は10Nである。接続部12aおよび接続部12bは、側面部12上に設定された線である。接続部12bは、図3のフェース部2の断面形状6の第1中点p1に対応する。接続部12aは、図3のフェース部2の断面形状6の底点p4に対応する。荷重F2は、接続部12bから接続部12aに向かう方向に加えた。なお、本解析条件における拘束条件は、接続部12a、12bを軸中心とした回転方向の移動を許容している。つまり、接続部12aにおいて、X方向、Y方向、Z方向における並進方向の移動が完全拘束され、Z方向の回転のみがフリーとされる(ただし、X方向、Y方向における回転は拘束される)。ただし、接続部12bにおいて、Y方向における移動、およびZ方向における回転はフリーとされる。ここでいう、Y方向は接続部12bから接続部12aに向かう方向に対応する。Z方向は第3方向Zに対応する。つまり、X方向は、Y方向およびZ方向に対して垂直な方向である。このようにすることで、接続部12bを構成する各要素における変位量の平均を潰れ変位量として評価した。
【0032】
なお、上記2つの解析条件において、いずれも微小変形を想定した線形静解析で実施した。
【0033】
<解析結果>
上記2つの条件下における解析結果を表2、図6図7図8、および図9に示す。各試料における剛性を、第1変位量r1、第2変位量r2、および第3変位量r3で評価した。なお、第3変位量r3は、第2変位量r2を第1変位量r1で除した値である。第1変位量r1は、BASE形状における曲げ変位量を1とした時の各試料の曲げ変位量である。第2変位量r2は、BASE形状における潰れ変位量を1とした時の各試料の潰れ変位量である。なお、BASE形状において、無次元距離lが50%であり、無次元幅wが58%である。説明の便宜上、無次元距離lと無次元幅wとの関係で、各試料をグループA、B、C、D、Eに分類した。ここで、BASE形状は従来の一般的なラケットフレームの断面形状を考慮した基準形状として決定された。
【0034】
【表2】
【0035】
無次元距離lと第1変位量r1との関係を図6に示す。図6において、横軸が、無次元距離l(単位:%)を示し、縦軸が第1変位量r1(単位:-)を示す。無次元距離lと第2変位量r2との関係を図7に示す。図7において、横軸が、無次元距離l(単位:%)を示し、縦軸が第2変位量r2(単位:-)を示す。無次元距離lと第3変位量r3との関係を図8に示す。図8において、横軸が、無次元距離l(単位:%)を示し、縦軸が第3変位量r3(単位:-)を示す。無次元幅wと第2変位量r2との関係を図9に示す。横軸が、無次元幅w(単位:%)を示し、縦軸が第2変位量r2(単位:-)を示す。
【0036】
ラケットフレーム1において、ラケットフレーム1の全体的な変形(曲げ)が抑制されつつ、局所的なひずみ(潰れ)が大きいときに、当該ラケットフレーム1の反発性は十分確保される。本解析において、当該ラケットフレーム1が上記の効果を有するために、潰れ変位量(第2変位量r2)が大きい時にラケットフレーム1の反発性を向上させ得る。さらに、第2変位量r2が第1変位量r1より大きい場合に、ラケットフレーム1の反発性をより向上させ得る。具体的には、ラケットフレーム1の反発性が向上したといえる条件は、本解析において、第2変位量r2が1以上である。さらに、第3変位量r3が1以上であることが望ましい。つまり、第2変位量r2は第1変位量r1に対して大きい(r2>r1)ことが望ましい。以上の条件を満たすのは表2からグループAおよびグループCに含まれる試料となっている。ただし、グループCは無次元幅wが相対的に他のグループに対して大きい。その結果、打球時においてガットから伝達される衝撃によって発生しうる破損のリスクが増加する恐れがある。また、フェース部2の断面形状6の周長が大きくなるため、ラケットフレーム1の重量が増加してしまう。以上の2つの理由から、グループAに含まれる試料の断面形状を有するラケットフレーム1がバドミントン用として好適である。図6から図9は表2をグラフ化したものである。
【0037】
図6から分かるように、無次元距離lが大きくなると第1変位量r1は小さくなる。一方、図7から分かるように、無次元距離lが大きくなると第2変位量r2は大きくなる。第2変位量r2が1を超えるのは、無次元距離lが53%以上になる時であることが分かる。無次元距離lが大きくなると、第1変位量r1は小さくなり、第2変位量r2は大きくなる。その結果、図8に示されるように、無次元距離lが大きくなると、第1変位量r1に対する第2変位量r2の割合である第3変位量r3は大きくなる。また、図9から分かるように、無次元幅wが大きくなると、第2変位量r2は大きくなる。第2変位量が1を超えるのは、無次元幅wが46%以上になる時であることがわかる。
【0038】
無次元距離lと無次元幅wとの関係を図10に示す。図10において、横軸が、無次元距離l(単位:%)を示し、縦軸が無次元幅w(単位:%)を示す。ラケットフレーム1の製造上の制限を考慮して、反発性を向上させる無次元距離lと無次元幅wがとりえる範囲は、図10で示した領域Dで示された領域である。無次元幅wについては、第1溝8aが相対的に大きくなる(無次元幅wが大きくなる)ことでラケットフレーム1が潰れやすくなることから、無次元幅wは大きい方がラケットフレーム1の反発性が向上する。一方、無次元幅wが大きくなると、フェース部2の断面形状6の周長が大きくなり、ラケットフレーム1の重量が大きくなる。ラケットフレーム1の軽量化の観点から、無次元幅wの上限は56%である。また、製造上の観点から、無次元距離lの上限は75%である。つまり、領域Dは、無次元距離lおよび無次元幅wのそれぞれの上限とグループAが存在する範囲とから決定される。すなわち、本実施の形態に係るフェース部2の断面形状6において、第2距離は、第1距離に対して0.53倍以上0.75倍以下である。第2幅は、第1幅に対して0.46倍以上0.56倍以下である。
【0039】
なお、軽量化の観点から、無次元距離lは63%以下が好ましい。無次元幅wは、51%以下が好ましい。これは、無次元幅wが大きいと、打球時においてガットから伝達される衝撃によって発生しうる破損のリスクが増加する恐れがあるためである。
【0040】
無次元距離lおよび無次元幅wが領域Dの範囲にあるフェース部2の断面形状6は必ずしもフェース部2の全周に亘って形成されてなくてもよい。図1に示されるように、第2方向Yから見た平面視において、無次元距離lおよび無次元幅wが領域Dの範囲にあるフェース部2の断面形状6が、例えばフェース部2のトップ部2aあるいはサイド部2bのみに形成されていてもよい。トップ部2aは、シャフト部3からみてフェース部2における最も離れた部分である。サイド部2bは、フェース部2上において、シャフト部3とトップ部2aとの間に配置された部分である。
【0041】
ラケットフレーム1の軽量化の観点から、第3距離L3は第1距離L1に対して0.16倍以下であることが好ましい。第1溝8aの深さが小さい方が、フェース部2の断面形状6における周長が短くなるため、ラケットフレーム1を構成するフェース部2の体積を減少させてラケットフレーム1の軽量化を図ることができる。
【0042】
<変形例の構成>
図11は、実施の形態1に係るバドミントン用のラケットフレーム1の変形例を示す断面図である。図11は、図3に対応する。図11に示されるバドミントン用のラケットフレーム1は、基本的には図1から図3に示されたバドミントン用のラケットフレーム1と同様の構成を備えるが、第2溝8bが設けられている点で異なる。
【0043】
具体的には、図11に示されるように、第1垂直面Bでのフェース部2の断面形状6は、第2中点p5を備える。フェース部2の断面形状6は、第4フレーム部6dを含む。第2中点p5は、第1平面A上に配置される。第2中点p5は、第4フレーム部6dを介して底点p4と接続される。第2中点p5は第2垂直面Cからみて、底点p4が位置する領域に配置される。第2垂直面Cから第2中点p5までの距離を第4距離L4とすると、第4距離L4は、第3距離L3より大きく、第1距離L1より小さい。フェース部2の断面形状6において、底点p4は第2垂直面Cから最も離れた位置に配置されるため、第2垂直面Cから見て、第2中点p5までの距離である第4距離L4は、底点p4までの距離である第1距離L1より小さく、第1中点p1までの距離である第3距離L3より大きい。第2中点p5が第1平面Aに配置されるため、第1平面Aから見て底点p4は端点p3が位置する領域に配置される。つまり、第1平面Aから見て、底点p4は第2中点p5と端点p3との間に配置される。ただし、フェース部2の断面形状6において、端点p3は第1平面Aから最も離れた位置に配置されるため、第1平面Aから底点p4までの距離を第3幅W3とすると、第3幅W3は第1幅W1より小さくなる。
【0044】
第2溝8bは、一対の底点p4に囲まれるように形成される。第2溝8bは第2中点p5を底とした凹状の溝である。第2溝8bは、第1平面A上にフェース部2の内周線5bに沿って形成されている。このように、内側に窪んだ溝である第2溝8bを設けることにより、打球面7に張られたガット面積が増加するため、ラケットフレーム1の反発性が向上する。
【0045】
第4フレーム部6dは、厚みt4を有する。厚みt4は厚みt2より厚くてもよい。こうすることで、打球時に荷重がかかる第2中点p5における剛性を確保することができる。
【0046】
<作用効果>
上記バドミントン用のラケットフレーム1において、フェース部2の断面形状6は第2中点p5を備える。第2中点p5は第1平面A上に配置される。第2中点p5は底点p4と接続される。第2中点p5は第2垂直面Cからみて底点p4が位置する領域に配置される。第4距離L4は第3距離L3より大きい。第4距離L4は、第2垂直面Cから第2中点p5までの距離である。第3距離L3は第2垂直面Cから第1中点p1までの距離である。第4距離L4は第1距離L1より小さい。
【0047】
このようにすることで、フェース部2の断面形状6のでは、底点p4側に第2中点p5を含む第2溝8bが形成されるので、打球面7に張られたガット面積が増加し、当該ラケットフレーム1の反発性能が向上する。
【0048】
上記バドミントン用のラケットフレーム1において、フェース部2の断面形状6は第2フレーム部6bと第4フレーム部6dとを含む。第2フレーム部6bは、頂点p2と端点p3とを接続する。第4フレーム部6dは、底点p4と第2中点p5とを接続する。第4フレーム部6dの厚みt4は第2フレーム部6bの厚みt2より大きい。このようにすることで、打球時に荷重がかかる第2中点p5における剛性を高めることができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つ以上を組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均衡の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【0050】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
環状のフェース部と、
グリップ部と、
前記フェース部と前記グリップ部との間に配置されたシャフト部とを備え、
前記フェース部、前記グリップ部、および前記シャフト部は、
第1平面上に配置され、
前記フェース部の外周線に対して垂直な面である第1垂直面での前記フェース部の断面形状は、
第1中点と、
前記第1中点と接続される頂点と、
前記頂点と接続される端点と、
前記端点と接続される底点とを備え、
前記第1中点は前記第1平面上に配置され、
前記頂点は前記第1平面および前記第1垂直面に対して垂直な面である第2垂直面上に配置され、
前記底点は前記フェース部の前記断面形状において前記第2垂直面から最も離れた位置に配置され、
前記端点は前記フェース部の前記断面形状において前記第1平面から最も離れた位置に配置され、
前記端点および前記第1中点は前記第2垂直面からみて、前記底点が位置する領域に配置され、
前記第1平面から前記端点までの距離である第1幅は、前記第2垂直面から前記底点までの距離である第1距離に対して0.6倍以上1.1倍以下であり、
前記第2垂直面から前記端点までの距離である第2距離は、前記第1距離に対して0.53倍以上0.75倍以下であり、
前記第1平面から前記頂点までの距離である第2幅は、前記第1幅に対して0.46倍以上0.56倍以下である、バドミントン用のラケットフレーム。
(付記2)
前記フェース部の前記断面形状は、前記第1垂直面上において前記第1平面を対称面とした面対称な形状である、付記1に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
(付記3)
前記フェース部の前記断面形状は、
前記第1中点と前記頂点とを接続する第1フレーム部と、
前記頂点と前記端点とを接続する第2フレーム部とを含み、
前記第1フレーム部の厚みは前記第2フレーム部の厚みより大きい、付記1または付記2に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
(付記4)
前記フェース部の前記断面形状は前記第1平面上に配置された第2中点を備え、
前記第2中点は前記底点と接続され、
前記第2中点は、前記第2垂直面からみて前記底点が位置する領域に配置され、
前記第2垂直面から前記第2中点までの距離である第4距離は、前記第2垂直面から前記第1中点までの距離である第3距離より大きく、
前記第4距離は前記第1距離より小さい、付記1から付記3のいずれか1項に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
(付記5)
前記第3距離は前記第1距離に対して0.16倍以下である、付記4に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
(付記6)
前記フェース部の前記断面形状は、
前記頂点と前記端点とを接続する第2フレーム部と、
前記底点と前記第2中点とを接続する第4フレーム部とを含み、
前記第4フレーム部の厚みは前記第2フレーム部の厚みより大きい、付記4または付記5に記載のバドミントン用のラケットフレーム。
【符号の説明】
【0051】
1 ラケットフレーム、2 フェース部、2a トップ部、2b サイド部、3 シャフト部、4 グリップ部、5a 外周線、5b 内周線、6 断面形状、6a 第1フレーム部、6b 第2フレーム部、6c 第3フレーム部、6d 第4フレーム部、7 打球面、8a 第1溝、8b 第2溝、10 モデル、11,11a,11b 端面部、12 側面部、12a,12b 接続部、A 第1平面、B 第1垂直面、C 第2垂直面、D 領域、E 第3垂直面、F1,F2 荷重、L1 第1距離、L2 第2距離、L3 第3距離、L4 第4距離、W1 第1幅、W2 第2幅、W3 第3幅、X 第1方向、Y 第2方向、Z 第3方向、R 中心軸、l 無次元距離、p1 第1中点、p2 頂点、p3 端点、p4 底点、p5 第2中点、r1 第1変位量、r2 第2変位量、r3 第3変位量、t1,t2,t3,t4 厚み、w 無次元幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11