(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】生体液分離装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20240701BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20240701BHJP
A61B 5/15 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01N33/48 H
A61M1/02 140
A61B5/15 200
(21)【出願番号】P 2022185650
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2020567792の分割
【原出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンツェル,スコット
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0035337(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354362(US,A1)
【文献】特表2016-515712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087517(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48
G01N 1/10
A61B 5/15
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相と第2相を有する血液サンプルを受け取るように構成された血液分離装置であって、
前記血液サンプルを受け取る収集チャンバを形成するハウジングを有するサンプル収集モジュールであって、
前記収集
チャンバは、入口端部又は入口のいずれかと出口端部又は出口のいずれかを
有し、複数の連続する流れ方向交互収集通路を形成する前記サンプル収集モジュールと、
前記サンプル収集モジュールに流体連通する起動モジュールであって、
前記収集
チャンバの少なくとも一部が第1圧力にある第1
状態と、前記収集
チャンバの少なくとも一部が第2圧力にある第2
状態との間で移行可能であり、前記第2圧力は前記第1圧力より大きい前記起動モジュールと、
前記収集チャンバの前記出口端部又は前記出口に接続されて前記収集チャンバと流体連通し、前記収集チャンバの外側に配置されている分離モジュールと、を含
み、
前記起動モジュールの一部分が作動すると、前記収集チャンバ内に収集された前記血液サンプルは前記分離モジュール内において前記第1相と前記第2相に分離される血液分離装置。
【請求項2】
前記収集
チャンバは、前記入口端部から前記出口端部へと延出する第1収集通路と、前記第1収集通路の一部分と連通するとともに、前記出口端部から前記入口端部へと延出する第2収集通路と、前記第2収集通路の一部と連通するとともに、前記入口端部から前記出口端部へと延出する第3収集通路、とを形成している請求項1に記載の血液分離装置。
【請求項3】
前記血液サンプルは、前記第1収集通路を第1方向で通過移動し、前記血液サンプルは、前記第2収集通路を前記第1方向の反対の第2方向で通過移動し、そして、前記血液サンプルは、前記第3収集通路を前記第2方向の反対の第3方向で通過移動する請求項2に記載の血液分離装置。
【請求項4】
前記第1収集通路は、前記第3収集通路から離間した前記第2収集通路から離間している請求項2又は3に記載の血液分離装置。
【請求項5】
前記分離モジュールは、第1チャンバ入口と第1チャンバ出口とを
有する第1チャンバと、第2チャンバ出口を
有する第2チャンバと、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置された分離部材と、を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項6】
前記第1チャンバ入口は、前記収集
チャンバの前記出口端部と流体連通している請求項5に記載の血液分離装置。
【請求項7】
前記血液分離装置は、前記第2チャンバ出口と連通する第2相収集容器を含み、ここで、前記第2相収集容器は
前記血液サンプルの前記第2相を受け入れる、請求項5又は6に記載の血液分離装置。
【請求項8】
前記第2相が前記第2相収集容器内に含まれている状態で、前記第2相収集容器は前記血液分離装置から取り外し可能である請求項7に記載の血液分離装置。
【請求項9】
前記第1チャンバ出口と連通する血液サンプル廃棄チャンバを更に含み、ここで前記血液サンプル廃棄チャンバは
前記血液サンプルの前記第1相を受け取る、請求項5
~8のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項10】
前記分離部材は、前記第1チャンバ内の前記第1相を捕捉し、前記第2相が前記分離部材を通って前記第2チャンバ内へと通過することを許容する、請求項
5~9のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項11】
前記分離部材は、トラックエッチング膜(track-etched membrane)を含む請求項
5~10のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項12】
前記起動モジュールは、前記ハウジングを密封するための第1シールと第2シールを有し、
前記起動モジュールは、前記第1シールが閉鎖位置にあるときに前記第1状態にあり、前記第1シールが開放位置にあるときに前記第2状態にあり、
前記起動モジュールの一部分が作動すると、前記第1シールは
、前記収集
チャンバが
前記第1圧力を有する
前記閉鎖位置から
前記開放位置へと移行
し、前記収集チャンバを前記第2圧力を有する空間と接続させる、請求項1~
11のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項13】
前記起動モジュールはスイッチを含み
、前記スイッチの作動は、前記第1シールを
前記閉鎖位置から前記開放位置へと移行させる、請求項
12に記載の血液分離装置。
【請求項14】
前記収集
チャンバの前記入口端部は、前記起動モジュールの
流入通路と流体連通している、請求項1
から13のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項15】
前記第2圧力は大気圧である、請求項1から14のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【請求項16】
前記第1圧力は負圧である、請求項1から15のいずれか一項に記載の血液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連アプリケーションへの相互参照
本出願は、2018年6月7日に出願された「生体液分離装置」と題された米国仮出願
第62/681,894号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細
書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
1.開示の分野
本開示は、一般に、生体液と使用するように構成された装置に関する。より具体的には
、本開示は、生体液の成分を分離するように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
採血は、患者から少なくとも一滴の血液を採取することを伴う一般的な健康管理手順で
ある。血液サンプルは、一般に、フィンガー・スティック、ヒール・スティック、又は静
脈穿刺のいずれかによって、入院、在宅、及び救急治療室の患者から採取される。血液サ
ンプルは、静脈又は動脈ラインによって患者から採取することもできる。収集後、血液サ
ンプルは、例えば、化学組成、血液学、凝固などの医学的に有用な情報を取得するために
分析することができる。
【0004】
血液検査は、疾患、ミネラル含有量、薬物の有効性、及び臓器機能などの、患者の生理
学的及び生化学的状態を測定する。血液検査は、臨床検査室又は患者の近くのポイントオ
ブケアで実施されうる。ポイントオブケア血液検査の一例は、フィンガー・スティックで
の血液の抽出と診断カートリッジへの血液の機械的収集を含む、患者の血糖値の定期検査
である。その後、前記診断カートリッジは血液サンプルを分析し、臨床医に患者の血糖値
の読み取り値を提供する。血液ガス電解質レベル、リチウムレベル、及びイオン化カルシ
ウムレベルを分析する他のデバイスも利用可能である。他のいくつかのポイントオブケア
装置は、急性冠症候群(ACS)と深部静脈血栓症/肺血栓症(DVT/PE)に対する
マーカを同定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血液サンプルは、全血又は細胞部分と血漿部分とを含む。全血からの血漿分離は、伝統
的に遠心分離によって達成されてきたが、これは通常15~20分かかり、重労働又は複
雑なワークフローを伴う。最近では、沈降、繊維状又は非繊維状の膜濾過、ラテラルフロ
ー分離、マイクロ流体クロスフロー濾過、及び他のマイクロ流体の流体力学的分離技術な
ど、血漿を分離するために他の技術が使用又は試みられている。しかし、これらの技術の
多くには、血漿純度の低さ、分析物の偏り、分析物の偏りを防ぐための特定のコーティン
グの必要性、高溶血、希釈の必要性、長い分離時間、及び/又は血漿の回収の困難さなど
、さまざまな課題がある。例えば、ほとんどのメンブレン(膜)ベースの分離技術は、分
析対象物の偏りの問題に悩まされており、多くの場合、対象化合物に対して特定のコーテ
ィング処理が必要である。更に、装置がニードルを介して患者に直接接続されている間に
行われる従来の分離技術は、患者に不快感を与える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本開示は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離し分離する血液分離装置を提供
する。当該血液分離装置は、サンプル収集モジュール、起動モジュール、及び分離モジュ
ールを含む。血漿分離は、血液分離装置が患者との接続を切られた後に行われるため、装
置の性能が患者の血圧やニードルのゲージの影響を受けることがなく、患者の不快感が大
幅に軽減される。
【0007】
本開示は、遠心分離と動力を必要とせずに、静脈血収集ワークフローと完全に互換性の
ある血液分離装置及び分離プロセスを提供する。有利なことに、本開示の血液分離装置は
、臨床採血中の血漿の即時分離と、下流側の診断のために分離された血漿サンプルを自己
完結型血漿容器内に収集することを可能にする。
【0008】
更に、本開示の血液分離装置は、Becton、Dickinson and Comp
anyから市販されているBD Vacutainer(登録商標)採血チューブなどの
真空チューブ、及び、対応する静脈アクセスセットを使用する従来の採血装置と変わらな
い短い患者採血時間しか必要としない分離装置を提供する。更に、血漿分離は装置が患者
から切り離された後に行われるため、装置の性能は患者の血圧やニードルのゲージの影響
を受けることがなく、患者の不快感が大幅に軽減される。
【0009】
本開示の血液分離装置は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離し分離するので
、生成される血漿の量は、患者の許容可能な採血時間によってもはや制限されることがな
い。これにより、本開示の血液分離装置の、ポイントオブケア(臨床現場則時)を超える
他の大量血漿用途のための潜在的な使用が可能になる。
【0010】
更に、分離を収集プロセスから切り離すことのもう一つの利点は、分離時間、血漿品質
、及び収量が、ニードルのゲージ及び患者の血圧によって影響されないことである。装置
がニードルを介して患者に直接接続されているときに分離が行われる場合には、低いニー
ドルゲージと高い患者の血圧とによって分離時間、収量が減少し、溶血が増加する。他方
、高いニードルゲージと低い患者血液とによって分離時間、収量が増大し、溶血が減少す
る。本開示の採血装置を使用して血漿分離プロセスを採血ワークフローから分離すること
により、採血セット及び患者の血圧は採血時間のみに影響し、分離時間、収量及び溶血レ
ベルを変化させることがない。
【0011】
本発明の実施形態によれば、第1相と第2相を有する血液サンプルを受け取るように構
成された血液分離装置は、
収集チャンバを形成するハウジングを有するサンプル収集モジュールと、
前記サンプル収集モジュールに接続された起動モジュールであって、前記起動モジュー
ルは、前記ハウジングを密封するための第1シールと第2シールを有し、前記第1シール
は、前記起動モジュールの一部分の作動によって、前記収集チャンバが第1圧力を有する
閉鎖位置から、前記収集チャンバが前記第1圧力よりも高い第2圧力と流体連通する開放
位置へと移行可能である、起動モジュールと、
前記サンプル収集モジュールの前記収集チャンバと流体連通する分離モジュールであっ
て、当該分離モジュールは、第1容量を有する第1チャンバと第2容量を有する第2チャ
ンバと形成し、更に、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に配置される分離部材
を含み、ここで、前記第1容量と前記第2容量とは異なる、分離モジュールと、を含む。
【0012】
一構成では、前記起動モジュールはスイッチを含み、ここで、前記スイッチの作動は、
前記第1シールを前記開放位置へと移行させる。別の構成では、前記スイッチは、貫通す
る通気孔を形成する押しボタンと、穿刺部分とを含み、ここで、前記スイッチの作動によ
って前記穿刺部分が移動して前記第1シールを破り、それによって前記第1シールを前記
開放位置へと移行させる。更に別の構成では、前記第1シールが前記開放位置にある状態
で、前記サンプル収集モジュールの前記収集チャンバは、前記スイッチの前記通気孔を介
して前記第2圧力と流体連通する。一構成において、前記第2シールは、そのキャップの
一部分内に穿刺可能なセルフシールストッパを備えるキャップを含む。別の構成では、前
記血液分離装置は、前記キャップを介して採血装置に接続可能である。更に別の構成では
、前記起動モジュールは、入口通路を形成し、ここで、前記採血装置が前記キャップを介
して前記血液分離装置に接続されている状態で、前記収集チャンバは、前記入口通路を介
して前記血液サンプルを受け入れる。一構成において、前記収集チャンバは、入口端部と
出口端部とを含み、複数の連続する流れ方向交互収集通路を形成している。別の構成にお
いて、前記収集チャンバは入口端部と出口端部とを有し、前記入口端部から前記出口端部
へと延出する第1収集通路と、前記第1収集通路の一部分と連通するとともに、前記出口
端部から前記入口端部へと延出する第2収集通路と、前記第2収集通路の一部分と連通す
るとともに、前記入口端部から前記出口端部へと延出する第3収集通路、とを形成してい
る。更に別の構成において、前記収集通路の前記入口端部は、前記起動モジュールの前記
入口通路と流体連通している。一構成において、前記血液サンプルは、前記第1収集通路
を第1方向で通過移動し、前記血液サンプルは、前記第2収集通路を前記第1方向の反対
の第2方向で通過移動し、そして、前記血液サンプルは、前記第3収集通路を前記第2方
向の反対の第3方向で通過移動する。別の構成において、前記第1収集通路は、前記第3
収集通路から離間した前記第2収集通路から離間している。更に別の構成において、前記
第1チャンバは第1チャンバ入口と第1チャンバ出口とを含み、前記第2チャンバは第2
チャンバ出口を有する。一構成において、前記第1チャンバ入口は、前記収集通路の前記
出口端部と流体連通している。別の構成において、前記第1シールが前記開放位置にある
状態で、大気圧によって形成される前記第2圧力と前記収集チャンバ内に形成された前記
第1圧力との間の第1圧力差によって、前記血液サンプルが前記第1チャンバに吸引され
る。更に別の構成において、前記第1シールが前記開放位置にある状態で、前記第1容量
と前記第2容量とが異なることによって、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間に
第2圧力差が生じ、これが前記血液サンプルの前記第2相を、前記分離部材を通して前記
第2チャンバ内へと駆動する。一構成において、前記分離部材は、前記第1チャンバ内の
前記第1相を捕捉し、前記第2相が前記分離部材を通って前記第2チャンバ内へと通過す
ることを許容する。別の構成において、前記血液分離装置は、前記第2チャンバ出口と連
通する第2相収集容器を有し、ここで、前記第2相収集容器は前記第2相を受け入れる。
更に別の構成において、前記血液分離装置は、前記第1チャンバ出口と連通する血液サン
プル廃棄チャンバを有し、ここで、前記血液サンプル廃棄チャンバは前記第1相を受け取
る。一構成において、前記分離部材は、トラックエッチング膜(track-etche
d membrane)を有する。別の構成において、前記採血装置が前記キャップを介
して前記血液分離装置に接続された状態で、前記収集チャンバは前記入口通路を介して前
記血液サンプルを受け入れる。更に別の構成において、前記採血装置が前記血液分離装置
から切り離された状態で、そして、前記スイッチの前記第1シールを前記開放位置へ移行
させるための作動時に、前記大気圧によって形成される前記第2圧力と前記収集チャンバ
内に形成される前記第1圧力との間の前記第1圧力差によって前記血液サンプルが前記第
1チャンバ内に吸引される。一構成において、前記第1シールが前記開放位置にある状態
で、前記第1容量と前記第2容量とが異なることによって、前記第1チャンバと前記第2
チャンバとの間に前記第2圧力差が生じ、前記血液サンプルの前記第2相を、前記分離部
材を通して前記第2チャンバ内へと駆動する。別の構成において、前記第2相が前記第2
相収集容器内に含まれている状態で、前記第2相収集容器は前記血液分離装置から取り外
し可能である。更に別の構成において、前記第1相は細胞部分であり、前記第2相は血漿
部分である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の上述した及びその他の特徴及び利点、ならびにそれらを達成する方法は、添付
の図面との関連で以下の説明を参照することによってより明らかとなりより良く理解され
るであろう。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による血液分離装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による血液分離装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による本開示のシステムを使用する第1工程の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による本開示のシステムを使用する第2工程の斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示のシステムを使用する第3工程の斜視図であって、本発明の一実施形態による、本開示の装置が前記装置の向きから独立して血漿を分離することを図示している。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による本開示のシステムを使用する第4工程の斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の一実施形態による、閉鎖位置にある血液分離装置の起動モジュールの斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の一実施形態による、開放位置にある血液分離装置の起動モジュールの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態による血液分離装置の収集チャンバの斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の別実施形態による血液分離装置の収集チャンバの斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態による血液分離装置の斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態による血液分離装置の分離モジュールの一部分の斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態による血液分離装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
複数の図面を通じて対応の参照符号が対応する部分を示している。本明細書の例示は、
本発明の実施態様を例示するものであり、そのような例示は本開示の範囲をいかようにも
限定するものと解釈されてはならない。
【0015】
詳細な説明
以下の説明は、当業者が本発明を実施するために勘案される記載された実施形態を作成
及び使用することを可能にするために提供される。しかし、様々な改変、均等物、変形、
及び代替物は、当業者には容易に明白なままである。そのような改変、変形、均等物、及
び代替物のすべては、本発明の要旨及び範囲内に入ることが意図されている。
【0016】
以下の説明の目的のために、用語「上」、「下」、「右」、「左」、「縦」、「水平」
、「上」、「下」、「横」、「長手」、及びそれらの派生語は、その図面に示されている
向きで本発明に関連するものとする。しかし、本発明は、特に銘記されない限り、代替の
バリエーション及び工程シーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。添付の図
面に示され、以下の明細書に記載されている特定の装置及びプロセスは、本発明の単なる
例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、本明細書に開示される実施形
態に関連する特定の寸法及び他の物理的特性は、限定的であると見なされるべきではない
。
【0017】
図1及び2は、本開示の血液分離装置の例示的な実施態様を図示している。
図1及び図
2を参照すると、本開示の血液分離装置10は、第1相14及び第2相16を有する血液
サンプル12(
図3~6)などの生体液を受け取るように構成される。前記血液サンプル
12の前記第1相14は細胞部分であり、前記血液サンプル12の前記第2相16は血漿
部分である。
【0018】
本開示の血液分離装置10は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離し、分離す
る。血漿分離は、血液分離装置10が患者から切り離された後に行われるので、装置の性
能は、もはや患者の血圧及びニードルのゲージの影響を受けることがなく、患者の不快感
は大幅に軽減される。
【0019】
本開示の前記血液分離装置10は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離して分
離するので、生成される血漿の量は、患者の許容可能な採血時間によってもはや制限され
ない。これによって、本開示の血液分離装置10をポイントオブケアを超えた他の大量血
漿用に使用することが潜在的に可能となる。
【0020】
本開示は、遠心分離及び動力を必要とせずに静脈血収集ワークフローと完全に互換性の
ある血液分離装置10及び分離プロセスを提供する。有利なことに、本開示の血液分離装
置10は、臨床採血中の血漿の即時分離を可能にし、装置10を外来患者に使用し、分離
された血漿16サンプルを、下流側での診断のために、自己完結型血漿容器、例えば、第
2相又は血漿収集容器80、に収集することを可能にする。
【0021】
更に、本開示の前記血液分離装置10は、Becton, Dickinson and
Companyから市販されているBD Vacutainer(登録商標)採血チュー
ブなどの、真空チューブと、対応の静脈アクセスセットとを使用する従来の採血装置とな
んら変わるところのない短い対患者収集時間しか必要としない分離装置を提供する。更に
、血漿分離は、前記装置10が患者から切り離された後に行われるので、装置の性能が患
者の血圧及びニードルのゲージによって影響されなくなり、患者の不快感は大幅に減少す
る。
【0022】
更に、血漿分離プロセスを収集プロセスから切り離すことの別の利点は、分離時間、血
漿品質、及び収量が、ニードルのゲージ及び患者の血圧によってもはや影響されないこと
である。装置がニードルを介して患者に直接接続されているときに血漿分離プロセスが行
われる場合は、ニードルゲージが低く患者の血圧が高いと、分離時間、収量が減少し、溶
血が増加する。他方、ニードルゲージが高く、患者の血圧が低いと、分離時間と収量が増
大し、溶血が減少する。本開示の血液分離装置10を使用して血漿分離プロセスを採血プ
ロセスから分離することにより、採血セット及び患者の血圧は、分離時間、収量及び溶血
レベルを変化させずに、採血時間にのみ影響を与えることになる。
【0023】
図1~13を参照すると、例示的な実施形態において、血液分離装置10は、一般に、サンプル収集モジュール20、起動モジュール22及び分離モジュール24を含む。一実施形態では、血液サンプル12を収集した後、前記血液分離装置10は、以下でより詳細に説明するように、前記血液サンプル12の第2相16を血液サンプル12の第1相14から分離することができる。有利なことに、前記血液分離装置10は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離して分離する。一実施形態では、血漿分離後、前記血液分離装置10から取り外し可能な部分、例えば、第2相収集容器80、が、血液サンプル12の前記第2相16をポイントオブケア検査に移すことができる。
【0024】
図1~6及び
図9~11を参照すると、例示的な実施形態において、前記サンプル収集
モジュール20は、収集チャンバ32を形成するハウジング30を有する。一実施形態に
おいて、前記収集チャンバ32は、入口端部又は入口34と、出口端部又は出口36とを
含み、そして複数の順次流れ方向交互収集通路38を形成している。
【0025】
前記収集チャンバ32は、複数の相互接続された平行な通路38を利用して、採血セッ
トの限定された直径内での収集及び貯蔵空間を最大化するとともに、充填中に毛細管力が
重力を上回ることを確実にする。血液サンプル12は、
図9~11に図示されているよう
に、サンプル収集モジュール20の前記相互接続された通路38を往復移動で満たす。
【0026】
例えば、
図9を参照すると、第1の例示的な実施形態において、前記サンプル収集モジ
ュール20の前記収集チャンバ32は、前記入口端部34から前記出口端部36へ延出す
る第1収集通路40と、当該第1収集通路40の一部と連通するとともに、前記出口端部
36から前記入口端部34へと延出する第2収集通路42と、前記第2収集通路42の一
部と連通するとともに、前記入口端部34から前記出口端部36へと延出する第3収集通
路44、を形成する。
図9を参照すると、前記第1収集通路40は、前記第3収集通路4
4から離間した前記第2収集通路42から離間している。
【0027】
これにより、前記収集チャンバ32の前記通路38を通る前記血液サンプル12の流路
100を示す
図9中の矢印を参照すると、前記収集チャンバ32内に収集された血液サン
プル12は、前記第1収集通路40を第1方向で通過移動し、前記血液サンプル12は前
記第2収集通路42を前記第1方向の反対の第2方向で通過移動し、前記血液サンプル1
2は前記第3収集通路44を前記第2方向の反対の第3方向で通過移動する。
図9を参照
すると、前記収集チャンバ32は、複数の相互接続された平行な通路38を利用して、採
血セットの限定された直径内での収集及び貯蔵空間を最大化するとともに、充填中に毛細
管力が重力を上回ることを確実にする。
【0028】
一実施形態において、前記収集チャンバ32への入口は、前記第1収集通路40の入口
34であり、そして、前記収集チャンバ32からの出口は前記第3収集通路44の前記出
口36である。前記第1収集通路40の前記入口34は、以下により詳しく説明するよう
に、前記起動モジュール22の流入通路66(
図7B及び
図8B)と流体連通している。
【0029】
図10を参照すると、第2の例示的な実施形態において、前記サンプル収集モジュール
20の前記収集チャンバ32は、入口端部34から出口端部36へ延出する第1収集通路
40、前記第1収集通路40の一部と連通するとともに前記出口端部36から前記入口端
部34へと延出する第2収集通路42、前記第2収集通路42の一部と連通するとともに
前記入口端部34から出口端部36へと延出する第3収集通路44、前記第3収集通路4
4の一部と連通するとともに前記出口端部36から入口端部34へと延出する第4収集通
路46、そして、前記第4収集通路46の一部と連通するとともに前記入口端部34から
出口端部36へと延出する第5収集通路48、を形成している。
図10を参照すると、前
記第1収集通路40は、前記第2収集通路42から離間し、この第2収集通路42は前記
第3収集通路44から離間し、この第3収集通路44は前記第4収集通路46から離間し
、この第4収集通路46は前記第5収集通路48から離間している。
【0030】
これにより、前記収集チャンバ32内に収集された血液サンプル12は、前記第1収集
通路40を第1方向で通過移動し、前記血液サンプル12は前記第2収集通路42を前記
第1方向の反対の第2方向で通過移動し、前記血液サンプル12は前記第3収集通路44
を前記第2方向の反対の第3方向で通過移動し、前記血液サンプル12は前記第4収集通
路46を前記第3方向の反対の第4方向で通過移動し、前記血液サンプル12は前記第5
収集通路48を前記第4方向の反対の第5方向で通過移動する。
図10を参照すると、前
記収集チャンバ32は、複数の相互接続された平行な通路38を利用して、採血セットの
限定された直径内での収集及び貯蔵空間を最大化するとともに、充填中に毛細管力が重力
を上回ることを確実にする。
【0031】
一実施形態において、前記収集チャンバ32への入口は、前記第1収集通路40の入口
34であり、そして、前記収集チャンバ32からの出口は前記第5収集通路48の前記出
口36である。前記第1収集通路40の前記入口34は、以下により詳しく説明するよう
に、前記起動モジュール22の流入通路66(
図7B及び
図8B)と流体連通している。
【0032】
一実施形態において、前記サンプル収集モジュール20の前記収集チャンバ32は、特
定の容量要件に基づいて、任意の奇数の通路38を形成することができる。重要なことは
、前記サンプル収集モジュール20の前記収集チャンバ32が複数の相互接続された平行
な通路38を利用して、採血セットの限定された直径内での収集及び貯蔵空間を最大化す
るとともに、充填中に毛細管力が重力を上回ることを確実にすることである。血液サンプ
ル12は、サンプル収集モジュール20の前記相互接続された通路38を往復移動で満た
す。
【0033】
例示的な一実施形態において、前記複数の順次流方向交互収集通路38は、
図9及び図
10に図示されているように平行構造で構成される。他の実施形態では、これら収集通路
38は、スパイラル又は蛇行通路構成、又は採血セットの限定された直径内で収集及び貯
蔵スペースを最大化し、充填中に毛細管力が重力を上回ることを保証する他の構成で構成
される。
【0034】
例示的な一実施形態において、前記収集チャンバ32は、装置の向き及び血液流速に関
係なく、気泡を捕捉することなく、血液12が収集チャンバ32の前記通路38を連続的
に満たすことを確実にするように設計される。これは所望の用途のために通路38の直径
をコントロールすることによって達成される。例えば、例示的な一実施形態では、血液が
崩壊して気泡を捕捉することを防止するために、前記通路38の直径は二つの要件を満た
す必要がある。第1に、任意の向きでのアローフロントの静圧差がメニスカスがその形状
を保持するためにラプラス圧力よりも小さくなければならない。第2に、選択された直径
は慣性力が最大流量での表面張力よりも小さくなることを保証しなければならない。
【0035】
図1、
図2及び
図7A~
図8Bを参照すると、一実施形態において、前記起動モジュー
ル22は、前記サンプル収集モジュール20に接続又は接続可能であり、ハウジング49
、第1シール50、及び、第2シール52、前記血液分離装置10、例えば、前記サンプ
ル収集モジュール20の前記ハウジング30、前記起動モジュール22のハウジング49
、そして、前記分離モジュール24のハウジング68を密封するための、を含む。これに
より、前記起動モジュール22の前記シール50、52は、以下により詳細に記載される
ように、血液分離装置10内の圧力をコントロールする。前記第1シール50は、前記起
動モジュール22の一部分の作動によって、前記収集チャンバ32が第1圧力P1(
図1
3)を有する閉鎖位置(
図7A及び
図7B)から、前記収集チャンバ32が前記第1圧力
P1よりも高い第2圧力P2(
図13)と流体連通する開放位置(
図8A及び
図8B)へ
と移行可能である。
【0036】
例示的な一実施形態において、
図7A~
図8Bを参照すると、前記起動モジュール22
は、スイッチ54を有する。そのような実施形態において、前記スイッチ54の作動によ
って、前記第1シール50が前記閉鎖位置(
図7A及び
図7B)から前記開放位置(
図8
A及び8B)へと移行する。
図7A~
図8Bを参照すると、前記スイッチ54はそれを貫
通して延出する通気孔58と穿刺部分60とを形成する押しボタン56を有する。これに
より、前記スイッチを作動すると、例えば、前記押しボタン56を
図8A及び
図8Bに図
示の位置へと押すと、それによって前記穿刺部分60が移動して前記第1シール50を破
り、それによって、この第1シール50を前記開放位置へと移行する。
【0037】
前記第1シール50が前記開放位置にある状態で、前記サンプル収集モジュール20の
前記収集チャンバ32は前記スイッチ54の前記通気孔58を介して第2圧力P2と流体
連通状態となる。前記通気孔58は、前記血液分離装置10のための通気機構を提供する
。例えば、一実施形態において、前記穿刺部分60は前記第1シール50、例えば、アル
ミホイルシール、を破って、血漿分離プロセスの動力を与えるための通気を作り出す。
【0038】
大気圧によって形成される前記第2圧力P2は、前記血液分離装置10内、例えば、当
該血液分離装置10の前記収集チャンバ32、内に形成される前記第1圧力P1よりも大
きい。これにより、大気圧によって形成される前記第2圧力P2と、前記血液分離装置1
0の残りの真空、すなわち、前記血液分離装置10内に形成される前記第1圧力P1との
間の圧力差によって、以下により詳しく説明するように、血漿分離プロセスが連続的に駆
動される。有利なことに、本開示の前記起動モジュール22を使用することによって、ユ
ーザは、血漿分離プロセスが始まる時を正確に制御することができる。
【0039】
例示的な一実施形態において、前記起動モジュール22の前記第2シール52は、その
キャップ62の一部分内に穿刺可能な自己シールストッパ64を備えるキャップ62を含
む。当該キャップ62は、前記血液分離装置10を、以下により詳しく説明するように、
採血装置200(
図3)に接続可能とすることを可能にする機構を提供する。
【0040】
例示的な一実施形態において、本開示の前記キャップ62は、ここにその開示内容全体
を参照のために合体させる、「生体液収集装置のための閉じ構造」と題する、2018年
5月4日出願の米国仮出願62/666,765に記載の閉じ構造に実質的に類似して形
成することができる。
【0041】
図7A~8Bを参照すると、一実施形態において、前記起動モジュール22は、流入通
路66を形成している。
図3を参照すると、採血装置200が前記キャップ62を介して
前記血液分離装置10に接続された状態で、前記サンプル収集モジュール20の前記収集
チャンバ32は、前記流入通路66を介して血液サンプル12を受け入れる。血液サンプ
ル12は、前記起動モジュール22の前記流入通路66から前記入口34を介して前記収
集チャンバ32の前記複数の通路38へと流れる。
【0042】
図1~6及び
図11~13を参照すると、例示的な一実施形態において、前記分離モジ
ュール24は、サンプル収集モジュール20の収集チャンバ32と流体連通し、ハウジン
グ68を含み、第1容積V1(
図13)を有する第1チャンバ70と第2容積V2(
図1
3)を有する第2チャンバ72とを形成し、そして、前記第1チャンバ70と前記第2チ
ャンバ72との間に配置された分離部材74を含む。前記第1チャンバ70の前記第1容
量V1と前記第2チャンバ72の前記第2容量V2とは異なり、これら第1チャンバ70
と第2チャンバ72との間に、後により詳しく説明するように、血液サンプル12の前記
第2相16を前記分離部材74を通して前記第2チャンバ72内へと駆動するための第2
圧力を作り出す。一実施形態において、前記分離モジュール24の一部分はマイクロ流体
チップを形成する。
【0043】
図11及び
図12を参照すると、例示的な一実施形態において、前記分離部材74は、
前記第1チャンバ70中の前記第1相14を捕捉するとともに、前記第2相16が当該分
離部材74を通って前記第2チャンバ72内に通過することを許容する。一実施形態にお
いて、前記分離部材74は、トラックエッチングされた膜で構成されている。ある構成に
おいて、前記膜は、その厚みは、例えば、5~25ミクロン、等の100ミクロン未満の
厚みとすることができる。前記膜は、直径0.2~0.8ミクロンなどのサブミクロンの
細孔又は穴を有し得る。この寸法構成(dimensionality)により、前記膜
表面に対して平行に流れる血液サンプルの血漿部分の連続ろ過が可能となり、それによっ
て、膜孔又は穴の目詰まりが防止される。他の実施形態において、前記分離部材74は、
前記第1チャンバ70内の前記第1相14を捕捉し、前記第2相16が分離部材74を通
って前記第2チャンバ72に流入することを許容する、任意のフィルタ及び/又はその他
の分離装置、として含むことができる。
【0044】
図11及び
図12を参照すると、前記第1チャンバ70は、第1チャンバ入口75と第
1チャンバ出口76とを含み、前記第2チャンバ72は第2チャンバ出口78を含む。前
記第1チャンバ入口75は、前記収集通路38の前記出口36と流体連通している。これ
により、前記起動モジュール22の一部分を作動すると、血液サンプル12が、血漿分離
のために、前記サンプル収集モジュール20の前記収集チャンバ32から前記分離モジュ
ール24の前記第1チャンバ70へと流れることができる。
【0045】
図1~6と
図11及び
図13を参照すると、前記血液分離装置10の前記分離モジュー
ル24は、前記第2チャンバ出口78と連通する第2相収集容器80を含む。前記第2相
収集容器80は、前記血液サンプル12の前記第2相16を受け入れる。前記第2相収集
容器80は、分離された第2相16を収集し格納することができる。有利なことに、
図6
を参照すると、前記第2相16が前記第2相収集容器80内に収納された状態で、前記第
2相収集容器80は前記血液分離装置10から取り外し可能である。これにより、血液サ
ンプル12の前記第2相16を、更なる診断検査のために、第2の第2相容器、例えば、
前記第2相収集容器80内に収集又は格納することができる。例えば、分離後、前記第2
相収集容器80が前記血液分離装置10から取り外された状態で、前記第2相収集容器8
0は、前記血液サンプル12の前記第2相16を、ポイントオブケア検査装置又はその他
の検査装置へと移すことができる。例示的な一実施形態において、前記第2相収集容器8
0は、当該第2相収集容器80が、所望時に、前記血漿16の一部をディスペンス(分注
)することを可能にする構造を含む。一実施形態において、前記第2相収集容器80は、
前記血漿部分16を当該第2相収集容器80内で保護的に密封するべく、キャップ又はセ
プタム81を介してシールされる。
【0046】
図11を参照すると、例示的な一実施形態において、前記分離モジュール24の前記第
2チャンバ72の一部分は、前記第2相収集容器80の内部と流体連通し、前記血漿部分
16が、前記分離部材74と前記第2チャンバ72とを通って、収集のために前記第2相
収集容器80内に流入することを許容する。
【0047】
図11~
図13を参照すると、前記血液分離装置10の前記分離モジュール24は、更
に、前記第1チャンバ出口76と連通する血液サンプル廃棄チャンバ82を含む。当該血
液サンプル廃棄チャンバ82は、血液サンプル12が前記分離部材74を超えて前記第1
チャンバ70へと流入した後に、前記血液サンプル12の残る第1相14を受け入れる。
これにより、前記血液サンプル12の前記残り第1相14を、前記血液サンプル廃棄チャ
ンバ82内に収集し格納することができる。又、前記血液サンプル廃棄チャンバ82は、
前記血液サンプル12の前記残り第1相14が、確実に、前記血液分離装置10の残り部
分が使用後に破棄される時に、安全に格納可能であることを確保する。
【0048】
図3~
図6を参照して、次に、本開示の血液分離装置10の使用法について説明する。
【0049】
図3を参照すると、本開示の血液分離装置10を使用する第1工程は、患者から血液サ
ンプル12を収集すること、例えば、採血プロセス、を含む。例えば、まず、患者からの
所与の量の血液サンプル12を、血液分離装置10の採血装置200、チューブホルダ2
02など、に対する接続の直後に、真空力で血液分離装置10の収集チャンバ32内に吸
引する。一実施形態において、そのような接続は、前記キャップの前記ストッパ64を突
き通す前記チューブホルダ202の非患者ニードル(図示せず)から構成される(
図7B
)。前記チューブホルダ202のライン204の反対側端部は、患者との連通状態にセッ
トされた静脈アクセスの患者ニードルから成る。
【0050】
図3を参照すると、前記採血装置200の前記チューブホルダ202が前記キャップ6
2(
図7B)を介して前記血液分離装置10に接続された状態で、前記サンプル収集モジ
ュール20の前記収集チャンバ32は前記起動モジュール22の前記流入通路66(
図7
B)を介して前記血液サンプル12を受け入れる。本開示の前記血液分離装置10は、一
定量の患者の血液を収集し格納する。例示的な一実施形態において、本開示の血液分離装
置10は、3mlの患者の血液を30秒間未満で収集し格納する。
【0051】
前記血液サンプル12は、前記起動モジュール22の前記流入通路66を通って前記サ
ンプル収集モジュール20の収集チャンバ32へと流れる。有利なことに、採血中、前記
収集チャンバ32の前記複数の順次流方向交互収集通路38が、採血セットの限定された
直径内での収集及び格納空間を最大化するとともに、充填中に、毛細管力が重力を上回る
ようにする。
【0052】
ユーザは、前記血液分離装置10が患者のサンプル12を受け入れ可能な方法、供給源
又は方法の一つを選択することができる。例えば、
図3を参照すると、本開示の前記血液
分離装置10は、従来式の採血装置200から血液サンプル12を受け取ることができる
。例えば、前記採血装置200は、チューブホルダ202と、対応の静脈アクセスセット
、Becton, Dickinson and Companyから市販のBD Vacu
tainer(登録商標)採血チューブ、等、を含むことができる。他の代替の実施形態
においては、血液は、従来式の採血チューブ又は、その他の中間血液サンプル容器に収集
される。前記血液サンプル容器は、その後、前記オフーペイシェント(off-pati
ent患者から離れた)分離装置に接続して血漿を生成する。
【0053】
所望量の血液サンプル12が前記収集チャンバ32に収集され、採血プロセスが完了す
ると、前記血液分離装置10は、前記採血装置200から切り離される。このように、本
開示の血液分離装置10は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離し分離する。前
記血液分離装置10が患者から切り離された後に血漿分離が行われるので、装置の性能は
もはや患者の血圧とニードルゲージによって影響されることがなく、患者の不快感が大幅
に軽減される。
【0054】
本開示の前記血液分離装置10の前記採血装置200と患者からの切り離し後、収集さ
れた血液は、血漿分離が達成されるまで前記通路38内に静止状態に留まる。前記血液分
離装置10は、これを、前記第2シール52、例えば、前記キャップ62の前記ストッパ
64、を利用することによって達成する。前記キャップ62の前記ストッパ64は、採血
装置200のニードルが前記ストッパ64から引き抜かれた後、前記血液分離装置10内
の格納された血液のフロントエンドとバックエンドとの間に圧力差が存在しないように、
前記第2シール52が適切に再度シールされるように保証する。
【0055】
図4を参照すると、前記血液分離装置10が前記採血装置200から切り離された後、
血漿分離プロセスを開始することができる。有利なことに、本開示の血液分離装置10は
、血漿分離を行うために患者に対して接続されることを要しない。血漿分離プロセスは、
完全に制御可能であり、便利な所望の時間に開始することができる。
【0056】
図4を参照すると、前記血漿分離プロセスは、単純に、前記スイッチ54(
図8A及び
図8B)を作動することによって、例えば、前記血液分離装置10上で、前記押しボタン
56を押すことによって、患者から離れて(off-patient)で、前記血液分離
装置10で開始される。前記スイッチ54の作動によって、血液分離装置10は、自動的
に、前記血液分離装置10内に格納された血液サンプル12から血漿16を発生させるこ
とが可能となる。
【0057】
前記スイッチ54の作動によって、前記第1シール50を、前記収集チャンバ32が大
気圧によって形成されかつ前記収集チャンバ32内に形成される前記第1圧力P1よりも
高い第2圧力P2と流体連通状態となる前記開放位置(
図8B)へと移行させる。これに
より、前記第1圧力差、すなわち、大気圧によって形成される前記第2圧力と、前記収集
チャンバ32内に形成される前記第1圧力との差、によって血液サンプル12が前記分離
モジュール24の第1チャンバ70内に吸引される。換言すると、大気圧と血液分離装置
10内の残り真空との間の圧力差が血液分離装置10内での血漿分離を連続的に駆動する
。実施形態において、前記分離モジュール24は、マイクロ流体チップ、例えば、
図12
に図示の前記分離モジュール24、のクロスフローろ過パターンを利用することによって
血液サンプル12が前記第1チャンバ70を通って前記分離部材74を超えて流れること
により、分離モジュール24は連続血漿分離を可能にする。一構成において、前記収集チ
ャンバ32内の圧力は、採血後でろ過前の収集チャンバ32内のエンドポイント圧力が5
.5 psi未満となるように、前記膜を介した最大許容可能圧力差によって限定される
。
【0058】
有利なことに、前記起動モジュール22は、採血後で、血液分離装置10が採血装置2
00と患者から切り離れた状態で、血漿分離プロセスを開始する。採血後に血漿分離プロ
セスを開始するためには、前記収集チャンバ32内の格納血液に圧力勾配を再度確立する
ことが必須である。これは、前記血液分離装置10内の圧力を制御する前記起動モジュー
ル22を介して達成される。起動前、前記起動モジュール22の前記第1シール50と第
2シール52が血液分離装置10の前記ハウジング30を密封し、そして、前記第1シー
ル50が前記閉鎖位置(
図7B)にある状態で、前記起動モジュール22は、前記収集チ
ャンバ32を第1圧力P1で密封する。前記起動モジュール22の作動後、前記第1シー
ル50は、前記開放位置(
図8B)へと移行し、ここでは、前記収集チャンバ32は、当
該収集チャンバ32内に形成される前記第1圧力P1よりも高い大気圧によって形成され
る第2圧力P2と流体連通状態となる。
【0059】
重要なことに、前記血液分離装置10内において、血漿16を前記分離部材74を通っ
て前記第2チャンバ72内へと駆動し、前記第2相収集容器80内に収集するべく駆動す
るために第2圧力差が使用される。前記第1シール50が前記開放位置(
図8B)にある
状態で、前記分離モジュール24の前記第1チャンバ70の前記第1容量V1と、前記分
離モジュール24の前記第2チャンバ72の前記第2容量V2とが異なることによって、
血漿16を前記分離部材74を通って前記第2チャンバ72内へと駆動し、前記第2相収
集容器80内に収集するべく駆動するための前記第2圧力差が生じる。換言すると、前記
第1チャンバ70内の血液流と前記第2チャンバ72内の前記血漿流とに渡る前記第2圧
力差及び分離中のそれらの動的プロファイルが血漿分離プロセスを更に駆動する動力源を
提供する。一実施形態において、前記第1チャンバ70内の血液流と前記第2チャンバ内
の血漿流との間と前記第2圧力差と、所与の血漿分離チップ、例えば、分離モジュール2
4、に対するそれらの動的プロファイルは、適切な初期真空レベルと前記血液サンプル廃
棄チャンバ82と前記第2相収集容器80との容量比のバランスによって達成される。一
実施形態において、前記血液サンプル廃棄チャンバ82の容量は、その容量が、端部にお
いて、分離部材74を目詰まりさせることなく血液流を駆動するための十分な残り真空を
有するために十分に大きなものとなるように設計される。実施形態において、前記容量は
、又、分離の最後において、前記血液サンプル廃棄チャンバ82内の圧力が前記分離部材
74が崩壊することを防止するべく、前記第2相収集容器80内の圧力よりも高くなるよ
うに、十分に小さなものであることも必要である。一構成において、前記血液廃棄チャン
バ82の前記容量は、前記収集チャンバ32の容量の少なくとも二倍であり、かつ、前記
第2相収集容器80の容積に係数(1収量)/収量を掛けたものよも小さい。前記膜を介
した前記圧力差は、ろ過中全体を通して5.5 psiよりも低いことが求められかもし
れない。
【0060】
前記血液分離装置10内における前記第1圧力差と前記第2圧力差とを利用することに
よって、血液12は、強制的に、前記第1チャンバ70を通って前記分離部材74を超え
て流される。血液12が、前記分離モジュール24を通って流れることにより、血漿16
が前記血液サンプル12の前記第1相14から連続的に分離される。
【0061】
血漿分離中、前記分離部材74は、前記第2相又は血漿16が当該分離部材74を通っ
て前記第2チャンバ72へと流入することを可能にし、これを、更なる診断検査のために
第2の血漿容器、例えば、第2相収集容器80に、収集又は格納することができる。
図1
1を参照すると、破線である矢印は、前記血漿16が分離部材74を通過後にとる第2相
流路104を示している。一実施形態において、血漿分離後、前記第2相又は血漿16が
前記第2相収集容器80内に収納された状態で、前記第2相収集容器80は、前記血液分
離装置10から取り外すことができる。その後、前記第2相収集容器80を使用して前記
血漿部分16をポイントオブケア装置又はその他の診断検査システムに移送することがで
きる。
【0062】
血漿分離中、前記分離部材74は血液サンプル12の第1相14を前記第1チャンバ7
0内に捕捉し、例えば、前記血液サンプル12の第1相14は、前記分離部材74を通っ
て前記第2チャンバ72に流入することができない。
図11を参照すると、直線である矢
印は、前記血液サンプル12が前記収集チャンバ32を通過する流路102と、血液サン
プル12の第1相14が分離部材74を超えて前記血液サンプル廃棄チャンバ82へと通
過する流路102を示している。
図11及び
図12を参照すると、前記血液サンプル12
の第1相14は、前記第1チャンバ入口75を通って前記分離部材74表面を超えて第1
チャンバ70に流入し、その後、前記第1チャンバ出口76を介して前記第1チャンバ7
0を出て前記血液サンプル廃棄チャンバ82に入る。
【0063】
一実施形態において、本開示の血液分離装置10は、格納された3mlの血液から35
0~600μlの血漿16を7分未満で生成することができる。
【0064】
図5を参照すると、本開示の前記血液分離装置10は、血漿分離が当該血液分離装置1
0の向きと独立して行われることを可能にする。換言すると、前記血液分離装置10は、
当該血液分離装置10が直立状態にあっても、例えば、チューブラックに収納された状態
でも、或いは、血液分離装置10がテーブル又はトレイ上でフラットに寝かされた状態で
あっても、それらに関わらず、血漿を分離する。
【0065】
図6を参照すると、前記第2相又は血漿16が前記第2相収集容器80内に収納された
状態で、前記第2相収集容器80は、前記血液分離装置10から取り外し可能である。そ
の後、前記第2相収集容器80を使用して前記血漿部分16をポイントオブケア装置又は
その他の診断検査システムに移送することができる。一実施形態において、前記第2相収
集容器80は、ルアーロックセプタムシールを介して前記血液分離装置10に対して取り
外し可能に接続可能である。
【0066】
換言すると、血漿分離の完了後、前記第2相収集容器80内の血漿16は、臨床検査に
使用するために血液分離装置10から取り出される。その後、前記血液分離装置10の残
り部分は廃棄することができる。
【0067】
ここに記載したように、本開示は、採血プロセスを血漿分離プロセスから切り離し分離
する血液分離装置を提供する。当該血液分離装置は、サンプル収集モジュールと、起動モ
ジュールと、分離モジュール、とを有する。血液分離装置が患者から切り離された後に血
漿分離プロセスが行われるので、装置の性能はもはや患者の血圧及びニードルゲージに影
響されることはなく、患者の不快感が大幅に軽減される。
【0068】
本開示を具体的な構成を有するものとして記載したが、本開示は、この開示の要旨及び
範囲内で更に変更可能である。したがって、本出願は、その一般原理を使用して本開示の
すべてのバリエーション、使用又は適合をカバーするものとして意図されている。更に、
本出願は、本開示が関連し、添付の特許請求の範囲内に属する、当該技術において知られ
ている又は慣習の範囲に属する本開示からのそのような逸脱をカバーするように意図され
ている。