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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】積み重ね可能なラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/40 20060101AFI20240701BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240701BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H04R1/40 310
H04R1/02 101F
H04R3/00 310
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022548771
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021017598
(87)【国際公開番号】W WO2021163283
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】16/790,356
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・スモール
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・シー・サントロ
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0358734(US,A1)
【文献】特表2010-534965(JP,A)
【文献】特開2006-166019(JP,A)
【文献】特開平09-322295(JP,A)
【文献】特表2016-539535(JP,A)
【文献】中国実用新案第205123967(CN,U)
【文献】特開2006-157857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/40
H04R 1/02
H04R 3/00-3/12
H04R 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウドスピーカであって、
一緒に音響空洞を画定する複数の壁を備えるハウジングと、
前記ハウジングの前壁に取り付けられた電気音響トランスデューサと、
を備え、
前記電気音響トランスデューサの運動軸が、前記前壁の重心からオフセットされており、
前記ラウドスピーカは、同一の構造の他のラウドスピーカと積み重ねられ、前記積み重ねられたラウドスピーカが音響エネルギーを放射して全方向放射パターンを生成する第1の構成、及び前記積み重ねられたラウドスピーカが音響エネルギーを放射してカージオイド放射パターンを生成する第2の構成で、積み重ねられるように構成されており、前記第1の構成では、各前記ラウドスピーカの前記前壁が、同じ方向を向き、前記第2の構成では、各前記ラウドスピーカの前記前壁が反対方向を向き、
前記ラウドスピーカは、前記ラウドスピーカが前記他のラウドスピーカに対して第1の配向にあるときに噛み合わずに積み重ねを阻止し、かつ前記ラウドスピーカが前記他のラウドスピーカに対して第2の配向にあるときに噛み合って積み重ねを可能にするキー特徴部を含む、ラウドスピーカ。
【請求項2】
電気音響信号を処理し、前記トランスデューサに給電するための電子機器を更に備え、
前記電子機器は、前記ラウドスピーカが前記第2の構成で前記他のラウドスピーカと積み重ねられたときに、前記電気音響信号に位相シフト及び時間遅延を導入するように構成されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項3】
前記ラウドスピーカ及び前記他のラウドスピーカの前記キー特徴部は、前記ラウドスピーカの前記電気音響トランスデューサのそれぞれの前記運動軸が前記第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項4】
前記複数の壁は、前記前壁、上壁、下壁、及び前記上壁と前記下壁との間に延在する複数の側壁を含み、
前記ラウドスピーカ及び前記他のラウドスピーカの前記キー特徴部は、前記ラウドスピーカの前記ハウジングのそれぞれの前記上部壁が前記第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項5】
前記ラウドスピーカ及び前記他のラウドスピーカの前記キー特徴部は、前記ラウドスピーカの上壁が前記他のラウドスピーカの下壁と共に垂直面内に配置されているときに噛み合わないように配置されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項6】
前記前壁を通って延在するポートを更に備え、前記ラウドスピーカ及び前記他のラウドスピーカの前記キー特徴部は、前記ラウドスピーカのそれぞれの前記ポートが前記第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項7】
前記電気音響トランスデューサは、長軸及び短軸を有するダイヤフラムを備え、前記長軸が、前記短軸よりも長い、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項8】
前記ダイヤフラムは、楕円、長円、又はトラックの形状である、請求項7に記載のラウドスピーカ。
【請求項9】
前記複数の壁は、前記前壁、上壁、下壁、及び前記上壁と前記下壁との間に延在する複数の側壁を含み、
前記側壁が、前記電気音響トランスデューサの長軸と実質的に平行であり、
前記上壁は、前記ラウドスピーカが、前記長軸を地面に垂直に配置した状態で搬送することができるようにハンドルを有する、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項10】
前記ラウドスピーカはセンサを備え、前記センサは、前記ラウドスピーカが前記他のラウドスピーカと共に前記第2の構成で配置されたときを検出し、それに応答して、前記電気音響トランスデューサを駆動するために使用される電気音響信号に、位相シフト及び時間遅延を自動的に適用するように構成されている、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項11】
前記キー特徴部は、適切に位置合わせされたときに噛み合う凸部及び凹部を備える、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項12】
音響システムであって、
第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカであって、各々が、
一緒に音響空洞を画定する複数の壁を備えるハウジングと、
前記ハウジングの前壁に取り付けられた電気音響トランスデューサと、
キー特徴部、
を備え、
前記電気音響トランスデューサの運動軸は、前記前壁の重心からオフセットされ、
前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカは、前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカが音響エネルギーを放射して全方向放射パターンを生成する第1の構成、及び前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカが音響エネルギーを放射してカージオイドパターンを生成する第2の構成で、互いに積み重ねられるように構成されており、前記第1の構成では、各前記ラウドスピーカの前記前壁が、同じ方向を向き、前記第2の構成では、各前記ラウドスピーカの前記前壁が反対方向を向き、
前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカのそれぞれの前記キー特徴部は、噛み合わないことにより、前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカが互いに対して第1の配向にあるときに積み重ねを阻止し、かつ噛み合うことにより、前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカが互いに対して第2の配向にあるときに積み重ねを可能にする、音響システム。
【請求項13】
前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカは、前記第2の構成で積み重ねられたときを自動的に検出するように構成されている、請求項12に記載の音響システム。
【請求項14】
前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカが、ラインアレイラウドスピーカと結合されるように構成され、前記ラウドスピーカが、アレイハウジングと、垂直軸に沿って配置され、前記アレイハウジングの前面から外向きに音響エネルギーを放射するように構成された複数の電気音響トランスデューサと、を備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカは、前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカのうちのどちらが、前記ラインアレイが音響エネルギーを放射する方向に面する前面を有するかを自動的に検出し、前記第1のラウドスピーカ及び前記第2のラウドスピーカのうちの他方の前記電気音響トランスデューサを駆動するために使用される音声信号に、位相シフト及び時間遅延を自動的に適用するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積み重ね可能なラウドスピーカ、並びに関連するシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
下記で言及される全ての例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0003】
一態様では、ラウドスピーカは、一緒に音響空洞を画定する複数の壁を有するハウジングを含む。電気音響トランスデューサは、ハウジングの前壁に取り付けられ、電気音響トランスデューサの運動軸は、前壁の重心からオフセットされている。ラウドスピーカは、同一の構造の他のラウドスピーカと、積み重ねられたラウドスピーカが音響エネルギーを放射して全方向放射パターンを生成する第1の構成、及び積み重ねられたラウドスピーカが音響エネルギーを放射してカージオイド放射パターンを生成する第2の構成で、積み重ねられるように構成されている。ラウドスピーカは、ラウドスピーカが他のラウドスピーカに対して第1の配向にあるときに噛み合わずに積み重ねを阻止し、かつラウドスピーカが他のラウドスピーカに対して第2の配向にあるときに噛み合って積み重ねを可能にするキー特徴部を含む。
【0004】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0005】
いくつかの実装形態では、ラウドスピーカは、電気音響信号を処理し、トランスデューサに給電するための電子機器を含む。電子機器は、ラウドスピーカが第2の構成で他のラウドスピーカと積み重ねられたときに、電気音響信号に位相シフト及び時間遅延を導入するように構成されている。
【0006】
特定の実装形態では、ラウドスピーカ及び他のラウドスピーカのキー特徴部は、ラウドスピーカの電気音響トランスデューサのそれぞれの運動軸が第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている。
【0007】
場合によっては、複数の壁は、前壁、上壁、下壁、及び上壁と下壁との間に延在する複数の側壁を含む。ラウドスピーカ及び他のラウドスピーカのキー特徴部は、ラウドスピーカのハウジングのそれぞれの上壁が第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている。
【0008】
特定の場合、ラウドスピーカ及び他のラウドスピーカのキー特徴部は、ラウドスピーカの上壁が他のラウドスピーカの下壁と共に垂直面内に配置されているときに噛み合わないように配置されている。
【0009】
いくつかの実施例では、ラウドスピーカは、前壁を通って延在するポートを含む。ラウドスピーカ及び他のラウドスピーカのキー特徴部は、ラウドスピーカのそれぞれのポートが第1の構成及び第2の構成の各々で垂直面内に位置合わせされたときに噛み合うように配置されている。
【0010】
特定の実施例では、電気音響トランスデューサは、長軸と長軸よりも短い短軸とを有するダイヤフラムを含む。
【0011】
いくつかの実装形態では、ダイヤフラムは、細長い形状、例えば、楕円、長円、又はトラックの形状を有する(長軸に沿って延在する平行な側部と、平行な側部との間に延在する丸みのある端部と、を有し、「スタジウム」としても知られる)。
【0012】
特定の実装形態では、複数の壁は、前壁、上壁、下壁、及び上壁と下壁との間に延在する複数の側壁を含む。側壁は、電気音響トランスデューサの長軸と実質的に平行である。上壁は、ラウドスピーカが、長軸を地面に垂直に配置した状態で搬送することができるようにハンドルを有する。
【0013】
場合によっては、ラウドスピーカはセンサを備え、センサは、ラウドスピーカが他のラウドスピーカと共に第2の構成で配置されたときを検出し、それに応答して、電気音響トランスデューサを駆動するために使用される電気音響信号に、位相シフト及び時間遅延を自動的に適用するように構成されている。
【0014】
特定の場合において、キー特徴部は、適切に位置合わせされたときに噛み合う凸部及び凹部を含む。
【0015】
別の態様では、音響システムは、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカを含む。第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカの各々は、共に音響空洞を画定する複数の壁を有するハウジングと、ハウジングの前壁に取り付けられた電気音響トランスデューサと、キー特徴部と、を含む。電気音響トランスデューサの運動軸は、前壁の重心からオフセットされている。第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカは、(i)第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカが音響エネルギーを放射して全方向放射パターンを生成する第1の構成、及び第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカが音響エネルギーを放射してカージオイドパターンを生成する第2の構成で、互いに積み重ねられるように構成されている。第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカのそれぞれのキー特徴部は、噛み合わないことにより、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカが互いに対して第1の配向にあるときに積み重ねを阻止し、かつ噛み合うことにより、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカが互いに対して第2の配向にあるときに積み重ねを可能にする。
【0016】
実装形態は、上記及び/又は下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0017】
いくつかの実装形態では、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカは、第2の構成で積み重ねられたときを自動的に検出するように構成されている。
【0018】
特定の実装形態では、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカは、(例えば、無線で、例えば、ブルートゥース(登録商標)を介して、又はケーブル接続を介して)ラインアレイラウドスピーカと結合されるように構成され、ラウドスピーカは、アレイハウジングと、垂直軸に沿って配置され、アレイハウジングの前面から外向きに音響エネルギーを放射するように構成された複数の電気音響トランスデューサと、を備える。
【0019】
場合によっては、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカは、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカのうちのどちらが、ラインアレイが音響エネルギーを放射する方向に面する前壁を有するかを自動的に検出し、第1のラウドスピーカ及び第2のラウドスピーカのうちの他方の電気音響トランスデューサを駆動するために使用される音声信号に、位相シフト及び時間遅延を自動的に適用するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面では、同じ参照符号は、一般に、異なる図を通して同じ部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、概ね、本開示の原理を示すことに重点が置かれている。
図1A】前側、上側、及び右側から見たラウドスピーカの斜視図である。
図1B】後側、上側、及び左側から見た図1Aのラウドスピーカの斜視図である。
図2図1Aのラウドスピーカの前面図である。
図3図1Aのラウドスピーカの側断面図である。
図4A】全方向性放射パターンの極座標図である。
図4B】所望のカージオイド放射パターンの極座標図である。
図5図1Aの詳細5-5のキー特徴部の詳細である。
図6A】全方向性構成で適切に積み重ねられたラウドスピーカの側面図である。
図6B】全方向性構成で適切に積み重ねられたラウドスピーカの正面図である。
図6C】全方向性構成で不適切に積み重ねられたラウドスピーカの側面図である。
図6D】全方向性構成で不適切に積み重ねられたラウドスピーカの正面図である。
図7A】カージオイド構成で適切に積み重ねられたラウドスピーカの側面図である。
図7B】カージオイド構成で適切に積み重ねられたラウドスピーカの正面図である。
図7C】カージオイド構成で不適切に積み重ねられたラウドスピーカの側面図である。
図7D】カージオイド構成で不適切に積み重ねられたラウドスピーカの前面図である。
図8A】ホール効果センサ及び磁石を有するラウドスピーカの前面斜視図である。
図8B図8Aのラウドスピーカの後面斜視図である。
図9A】ラインアレイラウドスピーカと結合された一対のラウドスピーカを含む音響システムの正面図である。
図9B図9Aの音響システムの後面図である。
図10A】さねはぎキー特徴部を有するラウドスピーカの前面斜視図である。
図10B】さねはぎキー特徴部を有する積み重ねられたラウドスピーカの前面斜視図である。
図11】前側、上側、及び右側から見た、グリル付きで示される図1Aのラウドスピーカの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、積み重ね可能なラウドスピーカの構成に関する。この構成により、一対のそのようなラウドスピーカを上下に積み重ねることができ、ユーザの自由裁量で、全方向性放射パターン又はカージオイド放射パターンを提供することができる。全方向性放射パターンは、2つのラウドスピーカが同じ方向を向くように積み重ねられたときに達成される。カージオイドパターンは、2つのラウドスピーカが反対方向を向くように積み重ねられたときに達成される。
【0022】
所望の放射パターンを達成するために、特に、ラウドスピーカが積み重ねられてカージオイド出力を提供する場合、ラウドスピーカには、カージオイド構成での誤った配向の積み重ねを阻止(例えば、防止)するキー特徴部、例えば、凸部及び凹部がそれぞれの嵌合面上に提供される。すなわち、キー特徴部は、ラウドスピーカの電気音響トランスデューサのそれぞれの運動軸が所望の放射パターンを生成するように位置合わせされていないときに積み重ねを阻止する。これは、電気音響トランスデューサの運動軸がラウドスピーカの重心からオフセットされている場合に特に有益であり得る。
【0023】
ラウドスピーカ
図1A図3は、例示的なラウドスピーカ100を示す。ラウドスピーカ100は、電気音響トランスデューサ104及びバスレフポート106を支持するハウジング102を含む。ハウジング102は、音響空洞110を画定する複数の壁(集合的に「108」)を含む(図3)。複数の壁108は、上壁108a、下壁108b、左側壁108c及び右側壁108d、前壁108e、並びに後壁108fを備える。電気音響トランスデューサ104及びバスレフポート106は、前壁108eによって支持される。上壁108aは、ラウドスピーカ100を搬送するためのハンドル112を支持する。後壁108fは、入力/出力(i/o)パネル114を支持する(図1B)。左右の側壁108c、108dは、以下でより詳細に論じられるように、ラウドスピーカ100を同一の構造の他のラウドスピーカと積み重ねることを可能にするキー特徴部116を有する。いくつかの実装態様では、ラウドスピーカ100は、図1Bの左側壁108cに示されるように、取付ポールの端部を受容するように構成されたポール取付台117を含み得る。場合によっては、ラウドスピーカ100は、約20Hz~約200Hz、例えば、約35Hz~約200Hz、例えば、約40Hz~約200Hzの動作周波数範囲を有するサブウーファである。
【0024】
電気音響トランスデューサ104は、任意の既知のタイプの電気音響トランスデューサとすることができる。例えば、図3に示すように、電気音響トランスデューサ104は、電気モータ118、ダイヤフラム120、及びサスペンション122を含むことができる。特に、ダイヤフラム120は、細長い形状、例えば、楕円、長円、又はトラックの形状(長軸に沿って延在する平行な側部と、平行な側部との間に延在する丸みのある端部と、を有し、「スタジウム」としても知られる)。ダイヤフラム120は、ラウドスピーカ100の質量中心が(同等の表面積を有する円形ダイヤフラムを有する設計と比較して)ユーザの身体により近くなるようにラウドスピーカ100が運搬される(ハンドル112によって搬送される)とき、その長軸124(図2)が垂直に配置されるように配置される。恩恵(複数可)は、この構成が、より運びやすいより狭いラウドスピーカ100を可能にすることである。細長いダイヤフラム120は、同じ放射表面積を有する円形ダイヤフラムと比較して、同じ出力だが、より高い密度を提供する。細長いダイヤフラム120はまた、同等の放射表面積を集合的に有する複数の小さなトランスデューサを備えた配置と比較して、空間をより効率的に使用する。
【0025】
バスレフポート106は、前壁108eを通って延在し、音響空洞110を、ラウドスピーカ100を取り囲む環境に音響的に結合する。バスレフポート106は、電気音響トランスデューサ104の運動軸が前壁108eの重心128からオフセットされるように電気音響トランスデューサ104と並んで配置され、その結果、重心128は、電気音響トランスデューサ104の運動軸126とバスレフポート106との間に配置される。
【0026】
積み重ね
図3を参照すると、ラウドスピーカ100は、コネクタ132(図1B)を介して受信され、電気音響トランスデューサ104を駆動する音響信号を処理するための電子機器130を含む。ラウドスピーカ100は、同一の構造を有する他のラウドスピーカ100の上に積み重ねられて、全方向性出力400(図4A)又はカージオイド出力136(図4B)のいずれかを生成することができるように構成されている。
【0027】
全方向性構成では、ラウドスピーカ100は、ラウドスピーカ100の前壁108eが(同じ方向に面する)共通の垂直面内にあり、トランスデューサダイヤフラム120の長軸124が地面に実質的に平行に配置される(すなわち、トランスデューサダイヤフラム120の短軸138(図2)が地面に垂直になるように)積み重ねられている。
【0028】
カージオイド構成では、電子機器130は、カージオイドモードで動作するように選択されたラウドスピーカ100のうちの1つ上の関連する電気音響トランスデューサ104に提供される音響信号に位相シフト及び時間遅延を導入するように構成されている。カージオイドモードで動作するように選択されたラウドスピーカ100は、音響が提供される方向の反対側(すなわち、聴取者から反対側)である積み重ねの後側に面する、積み重ね内のラウドスピーカ100である。
【0029】
(ラウドスピーカの各々が側壁の一方に据えられるように)積み重ねられると、ラウドスピーカ100のそれぞれの運動軸126が同じ垂直面内に配置される(すなわち、トランスデューサダイヤフラムの短軸が一致するように)ことが望ましい場合がある。そうするのに失敗すると、望ましくない、又は最適未満の音場をもたらし得る。例えば、運動軸及び/又はバスレフポートがオフセットされ、ラウドスピーカ100がカージオイド構成で積み重ねられたときに、放射パターンは、図4Bに示される所望のカージオイドパターンと一致せず、その結果、放射パターンがユーザのニーズを満たさないことがある。
【0030】
積み重ねられたときに運動軸が適切に位置合わせされることを確実にするために、ラウドスピーカ100には、それぞれの運動軸126が互いに水平にオフセットされるようにラウドスピーカ100が積み重ねられるのを防止するキー特徴部116が備えられる。図5に示す実施例では、キー特徴部116は、側壁の外面から外向きに延在する凸部116aと、適切に積み重ねられたときに第2のラウドスピーカの凸部を受容するように構成された凹部116bと、を備える。すなわち、2つのラウドスピーカのハンドルが、ラウドスピーカが側面に積み重ねられたときに、積み重ねの同じ側面に沿って、同じ垂直面内に配置される。図示される実装形態では、凸部116aは、左右の側壁108c、108dの表面から外向きに延在する脚部の形態であり、凹部116bは、左右の側壁108c、108dのポケットの形態である。各脚部はポケットと対になっており、4つの脚部/ポケット対が各側壁108c、108d上にある。
【0031】
図6Aは、全方向性構成で適切に積み重ねられた一対のラウドスピーカ100a、100bを示す。図に示すように、ラウドスピーカ100aのうちの第1のラウドスピーカの凸部116aは、ラウドスピーカ100bのうちの第2のラウドスピーカの凹部116bと位置合わせされ、その逆も同様であり、積み重ねられたときに、凸部116aは凹部116b内に位置する。図6Bに示すように、ラウドスピーカ100a、100bが全方向性構成で適切に積み重ねられたとき、トランスデューサ104のそれぞれの運動軸126は、垂直面142内に位置合わせされる。適切な全方向性構成では、ラウドスピーカ100a、100bのそれぞれの上壁108aも、下壁108bと同様に垂直面144内に位置合わせされる。又は、別の言い方をすれば、適切な全方向性構成で、トランスデューサ104のそれぞれの運動軸126は、電気音響トランスデューサ104の長軸124に実質的に垂直な平面142内で位置合わせされる。また、適切な全方向性構成では、それぞれのポート106は、電気音響トランスデューサ104の長軸124に実質的に垂直な平面145内に位置合わせされる。
【0032】
図6Cに示すように、キー特徴部116はまた、全方向性構成での不適切な積み重ねを阻止する。それに関して、キー特徴部116は、第1のラウドスピーカ100aの上壁108aが第2のラウドスピーカ100bの下壁108bと共に垂直面146(図6D)内に配置されたとき、噛み合わないように配置されている。それに関して、ラウドスピーカ100a、100bが適切に積み重ねられていない場合、それぞれのラウドスピーカ100a、100bの凸部116aは互いに干渉する。図6Dを参照すると、この干渉はラウドスピーカ100a、100bの積み重ねを阻止して、電気音響トランスデューサ104のそれぞれの運動軸126が距離h1だけ互いに水平にオフセットされ、それぞれのポート16が距離h2だけ互いに水平にオフセットされる。
【0033】
図7Aは、カージオイド構成で適切に積み重ねられた一対のラウドスピーカ100a、100bを示す。図に示すように、ラウドスピーカ100aのうちの第1のラウドスピーカの凸部116aは、ラウドスピーカ100bのうちの第2のラウドスピーカの凹部116bと位置合わせされ、その逆も同様であり、積み重ねられたときに、凸部116aは凹部116b内に受け入れられる。図7Bに示すように、ラウドスピーカ100a、100bがカージオイド構成で適切に積み重ねられたとき、トランスデューサ104のそれぞれの運動軸126は、垂直面148内に位置合わせされる。適切なカージオイド構成では、ラウドスピーカ100a、100bのそれぞれの上壁108aも、下壁108bと同様に垂直面150内に位置合わせされる。又は、別の言い方をすると、適切なカージオイド構成では、それぞれの運動軸126は、電気音響トランスデューサ104の長軸124に実質的に平面148内に位置合わせされる。また、適切なカージオイド構成では、それぞれのポート106は、電気音響トランスデューサ104の長軸124に実質的に垂直な平面152内に位置合わせされる。
【0034】
図7Cに示すように、キー特徴部116はまた、カージオイド構成での不適切な積み重ねを阻止する。それに関して、キー特徴部116は、第1のラウドスピーカ100aの上壁108aが第2のラウドスピーカ100bの下壁108bと共に垂直面154内に配置されたとき、噛み合わないように配置されている。それに関して、ラウドスピーカ100a、100bがカージオイド構成で適切に積み重ねられていない場合、それぞれのラウドスピーカ100a、100bの凸部116aは互いに干渉する。図7Dを参照すると、この干渉はラウドスピーカ100a、100bの積み重ねを阻止して、電気音響トランスデューサ104のそれぞれの運動軸126が距離h1だけ互いに水平にオフセットされ、それぞれのポート16が距離h2だけ互いに水平にオフセットされる。
【0035】
上述のように、カージオイド構成で積み重ねられると、スタック内のラウドスピーカ100a、100bのうちの一方は、カージオイドモードに配置される。カージオイドモードに配置されたラウドスピーカは、電気音響トランスデューサ104に供給される音響信号に位相シフト及び時間遅延を導入する。この位相シフト及び時間遅延は、2つのラウドスピーカの出力が積み重ねの後側と弱め合って干渉し、積み重ねの前側と強め合って干渉して、カージオイドパターンを生成することを確実にする。これにより、さもなければ全方向性となる方向性低周波数が得られる。積み重ねの後側は、カージオイドモードで動作するラウドスピーカの前壁が面する側であり、積み重ねの前側は、他のラウドスピーカの前壁が面する側、すなわち、カージオイドモードで動作するラウドスピーカの後壁が面する側である。カージオイドモードの係合は、カージオイドモードで動作するラウドスピーカ100の後壁108f上のi/oパネル114上のスイッチ又はボタン156(図1B)の動作によるものであり得る。
【0036】
他の実装形態
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載の発明概念の範囲から逸脱することなく、追加の修正を行うことができることが理解されよう。
【0037】
一例として、いくつかの実装形態では、ラウドスピーカは、カージオイド構成で積み重ねられたときに、それらがカージオイド構成にあることを自動的に検出し、ラウドスピーカのうちの1つを自動的にカージオイドモードに置くことができる。例えば、ラウドスピーカは、ラウドスピーカがカージオイド構成で積み重ねられたときに感知することができるセンサを備えてもよい。例えば、図8A図8Bを参照すると、ラウドスピーカ100(1つが図示される)には、ホール効果センサ158と磁石160との組み合わせが提供され得る。図示される例では、ホール効果センサ158は、前壁108eの近くの左右の側壁108c、108d上に配置され、磁石160は、後壁108fの近くの左右の側壁108c、108dに配置される。カージオイド構成で積み重ねられると、ラウドスピーカ100のうちの1つの磁石160は、他のラウドスピーカ100上のホール効果センサ158と位置合わせされる。電子機器130(図3)は、センサから信号を読み取り、カージオイドモードを開始するためのプロセッサを含み得る。場合によっては、積み重ねられたラウドスピーカは、例えば、i/oパネル114(図1B)を通じたケーブル接続を介して、又は電子機器が提供される通信ハードウェアを介して無線で、互いに通信することができる。ラウドスピーカ100は、ラウドスピーカ間の通信を介して、どのデバイスがカージオイドモードで動作されるかを決定し得る。場合によっては、ラウドスピーカ100は、音響信号及び/又はデータの配信のために、(例えば、ケーブル接続を介して)デイジーチェーン構成で一緒に結合することができる。ラウドスピーカがデイジーチェーン構成で一緒に結合されると、上流の(又は代替的に、下流の)ラウドスピーカは、ラウドスピーカがカージオイド構成で積み重ねられていることを検出すると、カージオイドモードで動作するように自動的に指定され得る。
【0038】
カージオイドモードの自動検出及び自動開始に関する追加の詳細は、2019年6月11日に出願された「Auto-Configuration Bass Loudspeer」と題する米国特許出願第16/438,138号に見出すことができ、その完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
場合によっては、ラウドスピーカは、図9A及び図9Bに示すように、ラインアレイラウドスピーカと結合されて、音響システム162を提供することができる。ラインアレイラウドスピーカ164(「アレイラウドスピーカシステム)又は「ラウドスピーカシステム」としても知られる)は、アレイアセンブリ166及びベース168を含む。図示される例では、アレイアセンブリ166は、それぞれが関連する複数の電気音響トランスデューサ172を支持する一対のアレイハウジング170a、170bを含み、電気音響トランスデューサは、垂直軸174に沿って配置され、アレイハウジング170a、170bの関連するハウジングの前面から外向きに音響エネルギーを放射するように構成されている。ベース168は、アレイアセンブリ166を受け入れ、支持するベースハウジング176を含む。ベースハウジング176は、電気音響トランスデューサ172に電力を供給する電子機器を収容する。ラインアレイラウドスピーカに関する追加の詳細は、2019年10月31日に出願された「Loudspeaker System Cooling」と題する米国特許出願第16/669,682号に見出すことができ、その完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
図示される例では、ラウドスピーカの第1のラウドスピーカ(「第1のラウドスピーカ100a」)は、音響がラインアレイラウドスピーカ164から第1のラウドスピーカ100aに提供される第1のケーブル接続178を介してラインアレイラウドスピーカ164に結合される。次に、ラウドスピーカの第2のラウドスピーカ(「第2のラウドスピーカ100b」)は、第1のラウドスピーカ100aがラインアレイラウドスピーカ164から第2のラウドスピーカ100bに音響信号を中継するデイジーチェーン構成で、第2のケーブル接続180を介して第1のラウドスピーカ100aに結合される。場合によっては、データ、音声、及び電力が、第1のケーブル接続178及び第2のケーブル接続180にわたって提供され得る。この目的のために好適なケーブル接続は、2019年6月28日に出願された「Active Loudspeaker and Cable Assembly」と題する米国特許出願第16/456,348号に記載されており、その開示全文は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
上述のように、いくつかの場合では、ラウドスピーカ100a、100b(概して「100」)は、ラウドスピーカがカージオイド構成にあることを自動的に検出することが可能であり、下流(又は上流)ラウドスピーカ100をカージオイドモードに置くように構成することができ、位相シフト及び時間遅延が、カージオイドモードに置かれたラウドスピーカ100の電気音響トランスデューサに提供される音響信号に適用される。
【0042】
代替的に、又は追加的に、ラウドスピーカ100及びラインアレイラウドスピーカ164は各々、電子コンパス(磁力計)を含み得る。磁気計の読み取り値を使用して、(地球の磁気N極に対する)ラインアレイラウドスピーカからの音声出力の方向を判定することができる。ラウドスピーカ100がセンサを介して、ラウドスピーカがカージオイド構成にあることを検出すると、ラインアレイラウドスピーカ164の磁力計読み取り値と最も近く一致する磁力計読み取り値を有するラウドスピーカ100は、前方に面するラウドスピーカであると想定することができ、2つのラウドスピーカのうちの他方は、カージオイドモードに置くことができる。
【0043】
キー特徴部が噛み合う脚部及びポケットを備える実装形態が上述されているが、キー特徴部の他の構成もまた企図される。例えば、図10Aは、キー特徴部が、外向きに延在する舌部182の形態の凸部と、溝184の形態の凹部と、を備える別の実装形態を示す。図10Bに示すように、舌部182及び溝184は各々、下壁108bから上壁108aまで側壁108c、108cの高さ分延在する。図示される実施例では、左右の側壁108c、108dの各々は、1つの舌部182及び1つの溝184を含む。図10Bに示されるように、積み重ねられたとき、1つのラウドスピーカ100aの舌部182は、他のラウドスピーカ100bの溝184と係合し、逆も同様である。
【0044】
いくつかの実装形態では、ラウドスピーカ100は、図11に示されるように、ハウジング102の前壁に沿って電気音響トランスデューサ104及びバスレフポート106を覆う音響透過性グリル186を含み得る(図1Bの「グリル186」も参照)。
【0045】
本明細書において、いくつかの実装形態について記述し説明してきたが、当業者であれば、様々な他の手段、及び/又は、機能を実行し及び/若しくは結果を得るための構造、及び/又は、本明細書に記載の1つ又はそれ以上の利点を容易に思いつくであろう、並びに、こうした変更形態及び/又は変形形態の各々は、本明細書に記載の実装形態の範囲内であるとみなすことができる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載のパラメータ、寸法、材料、及び構成の全てが例示的であること、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、特定のアプリケーション又は本発明の教示が使用されるアプリケーションに依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、日常的な実験を行うだけで、本明細書に記載されている特定の実装形態に相当する多くの等価物を認識したり、あるいは確認することができるであろう。したがって、前述の実装形態は、単なる例として提示されたものであり、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内で、明確に記載され特許請求された以外の別のやり方で実装形態を実施することができるということを理解されたい。本開示の実装形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。更に、2つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法のいかなる組む合わせも、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0046】
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく追加の改変を行うことができ、したがって、他の実装形態も以下の特許請求の範囲の範疇にあることが理解される。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11