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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】フランジ
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/08 20060101AFI20240701BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E04H12/08
E04B1/58 503H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022549933
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021051085
(87)【国際公開番号】W WO2021164971
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】20158766.4
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス クラーセン
(72)【発明者】
【氏名】エルウィン デ ヨング
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-125821(JP,A)
【文献】国際公開第2009/132659(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/009500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/08
E04B 1/58
F03D 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補的なフランジ(1)に接続するためのフランジ(1)であって、前記フランジ(1)は、水平面に沿ってとられた断面が実質的に円形の形状であるタワー区分の一部であり、
- 前記相補的なフランジ(1)の相補的な環状のフランジ接続面(1F)に対して位置するための環状のフランジ接続面(1F)と、
- 前記フランジ(1)を前記相補的なフランジ(1)に接続するための締結部材(10B)のセットを受容する傾斜開口(10_thru,10_part)の環状配列を有する主ボルトサークル(1P)を備えており、前記主ボルトサークル(1P)は、前記環状のフランジ接続面(1F)上にあり、かつ、前記タワー区分の平均直径(D_20)と実質的に同一の直径を有している、第1の本体区分(10)と、
- 前記フランジ(1)を中間構造体(3)に接続するための締結部材(11B)のセットを受容する貫通孔(11_thru)の環状配列を有する副ボルトサークル(1S)を有する第2の本体区分(11)と、
を備えており、
前記主ボルトサークル(1P)は、傾斜貫通孔(10_thru)と傾斜袋孔(10_part)との交互の配列を有している、フランジ(1)。
【請求項2】
前記主ボルトサークル(1P)の傾斜開口(10_thru,10_part)は、前記傾斜開口(10_thru,10_part)の長手方向軸線(10A,10A’)と、前記フランジ接続面(1F)の面法線(N)との間の、0°ではない傾斜角度(θ)により特徴づけられている、請求項1記載のフランジ(1)。
【請求項3】
前記主ボルトサークル(1P)の傾斜開口(10_thru,10_part)の前記傾斜角度(θ)は、少なくとも10°である、請求項2記載のフランジ(1)。
【請求項4】
前記主ボルトサークル(1P)の傾斜開口(10_thru,10_part)の前記傾斜角度(θ)は、最大でも30°である、請求項2または3記載のフランジ(1)。
【請求項5】
前記主ボルトサークル(1P)は、傾斜貫通孔(10_thru)と傾斜袋孔(10_part)との交互の配列を有しており、前記相補的なフランジ(1)の相補的な袋孔(10_part)内へ延在する締結部材(10B)の軸部(10B_s)を収容するために、前記傾斜貫通孔(10_thru)が前記フランジ(1)を貫通して延在している、請求項1からまでのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項6】
前記主ボルトサークル(1P)は、傾斜貫通孔(10_thru)と傾斜袋孔(10_part)との交互の配列を有しており、前記相補的なフランジ(1)の傾斜貫通孔(10_thru)の通過後に、前記フランジ(1)内へ延在する締結部材(10B)のねじ山付き端部(10B_t)を収容するために、前記傾斜袋孔(10_part)が前記フランジ(1)内に部分的に延在している、請求項1からまでのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項7】
前記副ボルトサークル(1S)の前記貫通孔(11_thru)の長手方向軸線(11A)は、前記フランジ接続面(1F)の面法線(N)と平行である、請求項1からまでのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項8】
前記フランジ(1)は、前記主ボルトサークル(1P)を備えた第1の本体区分(10)と、前記副ボルトサークル(1S)を備えた別個の第2の本体区分(11)とを含む2部分フランジとして形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項9】
前記第2の本体区分(11)は、前記フランジ接続面(1F)に対して平行な開口(12_thru,12_part)を通って延在する締結部材によって前記第1の本体区分(10)に取り付けられている、請求項記載のフランジ(1)。
【請求項10】
前記環状のフランジ接続面(1F)の内径(D_1F_in)は、前記副ボルトサークル(1S)の直径(D_1S)を超えている、請求項1からまでのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項11】
前記相補的なフランジ(1)の逆向きアライメント特徴(15B)の傾斜面と係合するように成形された傾斜面を有するアライメント特徴(15A)を備える、請求項1から10までのいずれか1項記載のフランジ(1)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のフランジ(1)を備えた円筒状のタワー区分(20A)を取り扱う方法であって、前記方法は、
- 前記フランジ(1)の前記副ボルトサークル(1S)の前記貫通孔(11_thru)を通して挿入された複数の締結部材(11B)によって、前記タワー区分(20A)と保持装置(3)との間の一時的接続(11_temp)を形成し、次いで前記締結部材(11B)を前記副ボルトサークル(1S)から取り外すことにより、前記一時的接続(11_temp)を解除するステップ、
- 前記フランジ(1)および別のタワー区分(20B)の相補的なフランジ(1)の主ボルトサークル(1P)における傾斜開口(10_thru,10_part)を通して挿入された複数の締結部材(10B)によって、前記タワー区分(20A)と前記別のタワー区分(20B)との間の永久接続(10_perm)を形成するステップ
のいずれかを含む方法。
【請求項13】
前記フランジ(1)は2部分フランジであって、一時的接続(11_temp)を形成するステップの前に、前記保持装置(3)のボルトサークルに対応する副ボルトサークル(1S)を有する第2の本体区分(11)を選択するステップ、および前記選択された第2の本体区分(11)を前記2部分フランジ(1)の第1の本体区分(10)に取り付けるステップを実施する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
実質的に円筒状の複数のタワー区分(20A,20B)を備えた風力タービンタワー(2)であって、前記複数のタワー区分は、請求項1から11までのいずれか1項記載のフランジ(1)を備え、前記フランジ(1)の前記主ボルトサークル(1P)における前記傾斜開口(10_thru,10_part)を通して挿入された締結部材(10B)によって永久接続されている、風力タービンタワー(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相補的なフランジに接続するためのフランジ、ならびにこのようなフランジを備えた円筒状のタワー区分を取り扱う方法を説明している。
【0002】
風力タービンタワーなどの高いタワーは、概して、タワー区分を互いに接続することによって構築される。このために、各タワー区分にはフランジが設けられている。一般的なフランジ形状は「L字形フランジ」であり、複数の相補的なL字形フランジが、ボルトサークルに配置されたボルトのような締結部材によって互いに接続されている。タワー区分は、内側ボルトサークル(すなわち、フランジはタワー内部へ延びている)または外側ボルトサークル(すなわち、フランジはタワーから外部へ延びている)を備えるL字形フランジを有するように製造されてよい。
【0003】
現在開発中のタイプの大型の風力タービンは、非常に長いロータブレードを有しており、したがって、より高いタワーを必要とする。しかしながら、一般的に使用されるL字形フランジ接続の限定的な耐荷重能力により、タワー構造は制限される。
【0004】
フランジ接続の強度は、様々なパラメータ、例えば、鋼の選択、壁厚、ボルト直径、ボルトサークルにおけるボルトの数、荷重経路等に依存する。タワー区分間のフランジ接続の強度を高めるために、1つのアプローチは、代わりに「T字形フランジ」を使用することであってもよい。この「T字形フランジ」は、タワー内部へ延びる内側フランジと、タワーから外部へ延びる外側フランジとを備える、反転した「T」の形状を有する。T字形フランジは、L字形フランジの2倍の強度を有することができ、すなわち、T字形フランジは、同等のL字形フランジが耐えることができる荷重の2倍の大きさの荷重に耐えることができる。しかしながら、T字形フランジの主要な欠点は、タワーの外側からのアクセスおよびタワー内側からのアクセスの両方を必要とすることである。T字形フランジは、それらの比較的大きな耐荷重能力のために、幾つかの場合における解決手段として見なされているが、T字形フランジを使用する複数区分から成るタワーの組立ておよび耐用期間にわたる保守整備は、極めて高価である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述の問題を克服する改良されたフランジ接続を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1記載のフランジによって、かつ請求項13記載のこのようなフランジを備えた円筒状のタワー区分を取り扱う方法によって達成される。
【0007】
本発明によれば、フランジは、構造的な構成要素の一部であり、別の構造的な構成要素の一部である相補的なフランジへの接続のために形成されている。本発明によるフランジは、相補的なフランジの相補的な環状の接続面に対して位置する(lie against)ようになっている実質的に平坦な環状の接続面;フランジを相補的なフランジに接続するための締結部材の第1のセットを受容する交互の傾斜開口の環状配列を有する主ボルトサークルを備えた第1の本体区分;および、フランジを中間構造体に一時的に接続するための開口の環状配列を有する少なくとも部分的な副ボルトサークルを有する第2の本体区分、を備えている。
【0008】
以下では、本発明を何ら限定することなく単純にするために、構造的な構成要素はタワー区分、例えば、風力タービンタワー区分であると仮定されてよい。タワー区分は、以下では「タワーシェル」とも呼ばれる。本発明のフランジの一実施形態は、構造的な構成要素が接続されているときに、構造的な構成要素の「一部」である。これは、構造的な構成要素およびそのフランジが単一の実体と見なされてよいことを意味すると理解されたい。構造的な構成要素およびそのフランジは、単一の本体として形成されてよい。同様に、構造的な構成要素およびそのフランジは、別々に製造され、次いで接合されてもよく、例えば、フランジは、鋼製のタワーシェルに溶接されてもよく、またはフランジの直立円筒部分は、コンクリートタワーシェルの外端部に埋め込まれてもよい。
【0009】
主ボルトサークルは、フランジ接続面における開口に沿って位置する円として理解されたい。主ボルトサークルの直径は、タワー区分またはタワーシェルの平均直径と類似または等しいと仮定することができる。傾斜開口は、フランジ接続面からフランジ本体内に延びている。主ボルトサークルの利点は、継手がタワーシェル「内へ」効果的に移動させられ、すなわち、締め付けられるボルトによって加えられる力が、タワーシェルの平均直径と交差する傾斜経路に沿って方向付けられることである。これは、荷重が、1つのタワーシェルから次のタワーシェルへとはるかに効果的に伝達されることを意味する。対照的に、従来のL字形フランジの鉛直ボルトは、常に、タワーシェルの平均直径から離された距離にあり、これにより荷重経路がオフセットされ、結果としてより大きな曲げモーメントが生じる。
【0010】
副ボルトサークルの開口は、慣用的な意味で鉛直方向、すなわちフランジの接続面に対して垂直であると仮定されてよい。副ボルトサークルは、中間構造体への接続のためだけに設けられており、このような目的のために(傾斜した開口を備える)主ボルトサークルを使用することに伴う実際的な困難を克服している。
【0011】
本発明のフランジは、その主ボルトサークルおよび副ボルトサークルにより、L字形フランジの主要な利点、すなわちタワー内部からの主ボルトサークルへのアクセスを損なうことなく、T字形フランジ構造強度に匹敵する構造強度を効果的に提供する。
【0012】
「中間構造体」は、本発明の文脈においては、タワー区分の搬送中に使用される保持構造体、タワー区分の設置中に使用される吊上げインターフェース等のようなあらゆる装置であると理解されてよい。中間構造体は、タワー区分が一部となるタワーの要素ではないと仮定されてよい。
【0013】
「フランジ」および「相補的なフランジ」という用語は、通常の意味では、実質的に同一であるフランジを意味すると理解され、例えば、互いに接続することができるように互いの鏡像を成すフランジを意味すると理解される。
【0014】
本発明のフランジの利点は、2つの別個の態様を組み合わせることであり、これらの態様は組み合わせると、コンパクトであるが強固なフランジ接続をもたらす。第1の態様では、フランジ接続は、主ボルトサークルの傾斜開口内に配置される締結部材のセットによって、本発明によるフランジの2つの実例を互いにボルト結合することによって行われる。主ボルトサークルが形成される方式により、傾斜した締結部材のこのセットは、好適にはタワー区分本体に近位にある。第2の態様では、タワー区分を、副ボルトサークルを貫通して延びる締結部材によって、中間構造体に比較的容易に接続することができる。
【0015】
本発明によれば、このようなフランジを備えた円筒状のタワー区分を取り扱う方法は、フランジの副ボルトサークルを通して挿入された複数の締結部材によって、タワー区分と保持装置との間の一時的接続を形成し、次いで締結部材を副ボルトサークルから取り外すことにより、一時的接続を解除するステップ;および/またはフランジの主ボルトサークルを通して、かつ別のタワー区分の相補的なフランジの主ボルトサークルを通して挿入された複数の締結部材によって、タワー区分と別のタワー区分との間の永久接続を形成するステップ;のいずれかを含む。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態および特徴は、以下の説明で明らかになるように、従属請求項に記載されている。異なるカテゴリの請求項の特徴は、本明細書には記載されていないさらなる実施形態を提供するために適切に組み合わされてよい。
【0017】
タワー区分は、実質的に円筒状の形状、例えば、まっすぐな円筒を有していると仮定されてよい。同様に、タワー区分は、例えば、その上端部における直径がその下端部における直径より小さくなるように、円錐台の形状を有していてもよい。タワー区分は、実質的に円形の断面形状を有すると仮定されてよい。
【0018】
タワー区分は、「中実」、すなわち、例えば、鋼またはコンクリートの中実の側壁を有すると仮定されてもよいが、本発明のフランジ接続は、中実の側壁を有するタワー区分に限定されない。
【0019】
本発明によるフランジは、実質的に、主ボルトサークルを組み込む第1の本体区分と、(部分的なまたは完全な)副ボルトサークルを組み込む第2の本体区分とを有している。後述するように、本発明によるフランジは、1部分から成る構成要素として、または2部分から成る構成要素として実現することができる。
【0020】
以下では、フランジは、概ね「L字形」の形状を有していると、すなわちフランジの第2の本体区分は、実質的にタワー区分の内部空間内に延在するリップまたはカラーであると仮定されてよい。
【0021】
主ボルトサークルの傾斜開口は、その長手方向軸線と、フランジ接続面の面法線との間に規定される傾斜角度θにより特徴づけられている。換言すると、主ボルトサークル開口の長手方向軸線は、水平面に対して相対的に傾けられている。本発明の好ましい実施形態では、この傾斜角度θは、15°~25°である。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態では、主ボルトサークルは、下向きに延びる傾斜開口と、上向きに延びる傾斜開口との交互の配列を有する。本発明の好ましい実施形態では、「上側の」フランジを用いて説明するが、下向きに延びる傾斜開口は、このフランジを貫通して延在していて、下側のフランジの相補的な傾斜開口内へと延びる締結部材の軸部を収容することができ、上向きに延びる傾斜開口は、接触面からこのフランジ内へと部分的に延び、「下側の」フランジからこのフランジ内に延びる締結部材のねじ山付き端部を収容することができる。
【0023】
下向きに延びる傾斜開口は、フランジを貫通するように挿入された締結部材が相補的なフランジの傾斜開口内に延びるように形成された貫通開口である。したがって、下向きに延びる傾斜開口は、フランジの本体全体を貫通して延びているので、「貫通孔」である。
【0024】
上向きに延びる傾斜開口は、相補的なフランジの傾斜開口を介してこのフランジ内に挿入される締結部材のねじ山付き端部を受容するように形成されたねじ山付き開口である。したがって、上向きに延びる傾斜開口は、フランジの本体内で終端しているので、「袋孔(blind opening)」である。
【0025】
したがって、接続面から見た場合、フランジは、複数の開口から成る1つのリングを示している。それぞれ第2の開口は、傾斜貫通孔の「出口」開口であり、その他の開口は、逆向きに傾斜する袋孔の「入口」開口である。フランジ接続を形成するために、2つのフランジは、各「出口」開口が、対応する「入口」開口と整列させられるように、向かい合って配置されている。
【0026】
本発明によるフランジは、2種のボルトサークル、すなわち、交互に傾斜した締結部材を備えるボルトサークルと、「L字形フランジ」により公知のボルトサークルとを組み合わせているので、本発明によるフランジは、以下では、「X-L字形フランジ」と呼ばれてもよい。「X-L字形フランジ」は、傾斜したボルトの交互の配列によって、また、ボルトが、タワーシェル直径と一致するかまたは少なくとも極めて近いリングに沿って「互いに交差」することによって、好適には高い耐荷重能力を有する。その結果、より効率的な荷重経路が生じ、これによりL字形フランジ接続では典型的に生じるタイプのこじりモーメントはほぼ解消される。本発明によるフランジの耐荷重能力は、同等の「T字形フランジ」の耐荷重能力に匹敵する。しかしながら、従来技術の「T字形フランジ」とは異なり、本発明による「X-L字形フランジ」を使用するタワーの組立ては、タワーの外側からのアクセスを必要としない。これは、主ボルトリングの全ての締結部材またはスタッドを、全てタワーの内側から挿入することができるからである。このような側面は、洋上における、または人員のためのアクセスプラットフォームを提供するための外部のクレーンを配備することができない場所におけるタワーの組立てのために、特に重要である。
【0027】
主ボルトサークルの目的は、2つのフランジを永久的に互いにボルト結合させることを可能にすることであり、一方、副ボルトサークルの目的は、フランジをいくつかの中間構造体に一時的に接続することを可能にすることである。本発明の好ましい実施形態では、副ボルトサークルの開口の長手方向軸線は、フランジ接続面の面法線と共線性(collinear)を有している。すなわち、ボルト孔は、フランジを貫通して垂直に延在しており、容易にアクセスすることができる。
【0028】
副ボルトサークルは、1つの完全なリング、または1つのリングの円弧区分に基づくものであってよい。1つの完全なリングに基づく場合は、第2の本体区分は、第1の本体区分からフランジ内部に向かって水平に延在するL字形フランジの形状に類似のものである。1つの円の円弧区分に基づく場合は、第2の本体区分は、複数の角度セグメント、例えば、フランジの中心点に対して30°の角度を成す各セグメントを有することができ、4つのこのような区分が、第1の本体区分の内周に沿って均等に離隔させられている。このような実施形態の利点は、材料費が削減されることである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、フランジは、1部分から成る構成要素として製造されている。このような実施形態において、二次的な利点は、第2の本体区分、すなわち、副ボルトサークルを含むリップまたはカラーによって提供される高められた剛性である。この本体区分または構造的な要素は、搬送中の楕円化を最小限にする助けとなる。すなわち、保管または搬送中にフランジが変形する可能性を低減または排除することを助成する。そうでない場合には、僅かに楕円形となったフランジが生じ得る。
【0030】
本発明の代替的な好ましい実施形態では、フランジは、主ボルトサークルを備えた第1の本体区分と、副ボルトサークルを備えた第2の本体区分とを含む2部分フランジとして形成されている。好ましくは、第2の本体区分は、溶接によって、またはフランジ接続面に対して平行に延在する締結部材によって、第1の本体区分に取り付けられている。
【0031】
従来技術により、特定のボルトサークル径(BCD)を有するように、様々なタワーシェル直径のフランジを設計することが知られている。これにより、フランジの設計が単純化され、フランジの製造コストが削減されるが、例えば、特定のフランジBCDが、搬送用継手または吊上げ装置にフランジを接続することができるようにするためにアダプタを必要とする場合には、他の箇所でより高いコストにつながる可能性がある。本発明のフランジは、2つの部分から成る構成要素として形成することができるので、それぞれ異なるBCDを有する所定の範囲の第2の本体区分を提供することは比較的容易である。これにより、タワー区分の取り扱いにおいて使用される中間構造体のBCDに基づいて、適切な第2の本体区分を選択することができる。
【0032】
2つのタワー区分が互いに接続されると、荷重はほぼ垂直方向に伝達される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、環状のフランジ接続面の内径は、副ボルトサークルの直径を超えている。これは、例えば、フランジ間の接触面積を上側タワー区分本体と下側タワー区分本体との間の領域に制限するために、フランジの第2の本体区分に凹部を機械加工することによって達成することができる。換言すると、第2の本体区分の厚みが減じられている。
【0033】
この好ましい実施形態のさらなる利点は、このような凹部は、フランジ接触面をより良好に画定するためにも役立つことである。荷重伝達に関連する領域に対する接触面積を制限することにより、フランジ接続面の間のギャップのような性能に関わる欠陥をより容易に識別することができる。このようなギャップは、荷重伝達経路を損なう。本発明のこの好ましい実施形態は、このようなギャップの迅速な識別を可能にし、これにより、主ボルトサークルの締結部材を締め付ける前にシミングによってギャップを修正することができる。
【0034】
上述したように、ある程度の楕円化が、タワー組立ての前に、タワー区分において生じる場合がある。本発明の好ましい実施形態では、フランジは、フランジ接続面の内径に隣接して形成されたアライメント特徴を備え、このアライメント特徴は、相補的なフランジの逆向きのアライメント特徴と係合するように成形されている。1つのタワー区分が、別のタワー区分の上方の位置へ下降させられる場合、アライメント特徴に関連した上側のタワー区分の重量は、あらゆる楕円化を修正するために十分である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、タワー組立て中にタワー区分を取り扱う方法は、一方のタワー区分のフランジを他方のタワー区分の相補的なフランジに整列させるために、副ボルトサークルの開口にガイドピンを挿入するステップを含む。
【0036】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面につき考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、図面は、例示の目的のためにのみ作成されており、発明の限定を定義するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図2】本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図3】本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図4】本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図5】本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図6】中間構造体に接続された本発明によるフランジの実施形態を示す図である。
図7】従来技術により接続され積層されたタワー区分を有するタワーを示す図である。
図8】従来技術により接続され積層されたタワー区分を有するタワーを示す図である。
【0038】
図面では、同じ符号は、同じ対象を示している。図面における対象は、必ずしも正しい縮尺である必要はない。
【0039】
図1図2,および図3は、本発明によるフランジ1の実施形態を示している。風力タービンのタワー区分は、6~8mのオーダーの平均直径を有していてよく、本発明のフランジ1はそれに合わせて寸法設計されている。図1は、本発明によるフランジ1の実施形態の1つの実施例を(断面図で)示していて、このフランジは、機能的に同一のフランジ1の実施例に接続されている。各フランジ1は、第1の本体区分10と第2の本体区分11とを有している。第1の本体区分10には、フランジ1を相補的なフランジ1に接続するための締結部材10Bのセットを受容する傾斜開口10_thru,10_partの環状配列を有する主ボルトサークル1Pが組み込まれている。主ボルトサークル1Pの傾斜開口10_thru,10_partは、その長手方向軸線10A,10A’と、フランジ接続面1Fの面法線Nとの間に規定される傾斜角度θにより特徴づけられている。図1において、貫通孔10_thruの「出口」開口の中心と、袋孔10_partの「入口」開口の中心とは、主ボルトサークル1Pに沿った点である。このことは図3の斜視図でより明確に示されており、図3には、貫通孔「出口」開口10_outおよび袋孔「入口」開口10_inの交互の配列が示されていて、これらの開口が主ボルトサークル1Pを形成している。
【0040】
図2は、タワー区分20Aの一部としての本発明によるフランジ1の実施形態を示している。この図は、主ボルトサークル1Pの直径D_1Pと、タワー区分20Aの平均直径D_20とを示している。
【0041】
理想的には、主ボルトサークル1Pは、タワーシェル20Aの平均直径D_20と同じ直径D_1Pを有しており、すなわち、主ボルトサークル1Pは、(図3に示したように)タワーシェル20Aの中央平面と同一線上にある(すなわち、一致している)。しかしながら、例えば、フランジ1とタワーシェル20Aとの間の溶接の非破壊試験を可能にするために(フランジとタワーシェルとの間の溶接接合部は、傾斜貫通開口10_thruの外端部に近い)、タワーシェル中央平面から主ボルトサークル1Pが僅かにオフセットされていなければならないことがある。主ボルトサークル1Pとタワーシェル中央平面との間のこのようなオフセットは、好ましくは、本発明のフランジ1の好適な高い耐荷重能力を維持するために、最小限に維持される。
【0042】
それぞれ第2の本体区分11には、フランジ1を中間構造体(図示せず)に接続するための締結部材11Bのセットを受容する開口11の環状配列を有する副ボルトサークル1Sが組み込まれている。図3は、開口11によって規定された副ボルトサークル1Sを示しており、図2は、副ボルトサークル1Sの直径D_1Sを示している。環状の接続面1Fの面積は、フランジ1の外径D_1F_outおよび内径D_1F_inにより規定される。
【0043】
図2に示された構造は、複数の積層された円筒状エレメントから形成されたタワー部分の1つの端部であってよい。タワー部分の2つの外側端部は、本発明によるフランジ1の実施例ではそれぞれ終端している。円筒状エレメント間の接合は、従来のL字形フランジを使用して、または本発明のX-L字形フランジを使用して行うことができる。
【0044】
図3に示されたように、フランジは接続面1Fを有していて、この接続面は、相補的なフランジの接続面に接して位置するようになっている。この図は、考えられる変化態様も示しており、フランジ1の下面における凹部14が示されている。したがって、環状のフランジ接続面1Fの内径D_1F_inは、副ボルトサークル1Sの直径D_1Sを超えている。この実施形態では、接続面1Fの総面積は、図1に示された実施形態の接続面の面積よりも小さいが、上側タワー区分からの荷重は、依然として下側タワー区分の本体内へ効果的に伝達される。凹部14によって、中間装置(図示せず)へのより容易な接続を促進することができる。
【0045】
図4は、本発明によるフランジ1の2つの例を接合することにより形成される永久フランジ接続10_permを示している。この接続は、構造体の耐用期間にわたって耐久性があるという意味で「永久」である。この場合、各フランジ1は、相補的なフランジ1の逆向きアライメント特徴15Bと係合するように成形されたアライメント特徴15Aを有するように形成されている。アライメント特徴15A,15Bは、タワー区分が積層される場合に、フランジに存在し得る僅かな楕円化を修正するように機能する。図は、上側フランジ1内の貫通孔10_thruを通って、下側フランジ1のねじ山付き袋孔10_part内に延びる締結部材10Bを示している。図は、下側フランジ1内の貫通孔10_thruを通って、上側フランジ1のねじ山付き袋孔10_part内に延びる、逆向きに傾斜した別の締結部材10Bも示している。
【0046】
図5は、本発明によるフランジ1の別の実施形態を示している。この場合、フランジ1は、第1の本体区分10と、別個の第2の本体区分11とを有している2部分フランジとして形成されている。第2の本体区分には、締結部材用の水平開口が、貫通孔12_thruによって設けられており、第1の本体区分には、部分孔または袋孔12_partが設けられている。この袋孔は、第2の本体区分を貫通して挿入された金属ねじのねじ山付き端部を受容するための雌ねじ山を有していてよい。この例の実施形態では、貫通孔12_thru,12_partは、フランジ接続面1Fに対して平行に延在している。このようなボルト接合の代替手段は、第1の本体区分10に対して第2の本体区分11を溶接することであってよい。
【0047】
図6は、本発明によるフランジ1の中間構造体への一時的接続11_tempの実施形態を示している。この場合、タワー部分2の上端部20Aにおけるフランジ1は、クレーン3の吊上げ取付け具31に接続されていて、タワー部分2の下端部20Bにおけるフランジ1は、別のクレーン3の直立工具32に接続されている。クレーン3は、タワー部分2が「直立させられる」ように、すなわち水平保管向きから垂直設置向きへと移動させられるように制御される。このような接続11_tempは、中間構造体31,32が再びフランジ1から取り外されるという意味で「一時的」である。タワー部分2の各端部20A,20Bにおけるフランジ1は、図4につき上述したように、タワー組立て工程のその後の段階で、相補的なフランジ1に対して永続的に接続される。
【0048】
タワー部分は、一般的に、製造と最終的な設置との間の複数の段階において取り扱われ、そのために、副ボルトサークル1Sは、タワー部分の各端部におけるフランジを、支持構造体のクレードルまたはブラケット、楕円化防止工具、搬送車両のアダプタ等に接続するために使用される。
【0049】
図7は、風力タービンタワーのようなタワー2を示しており、このタワーは、互いに上下に「積層され」、従来の形式で、L字形フランジLFを使用して接続されたタワー区分20を有している。締結部材は、内側のボルトサークル内に挿入される。貫通孔LF_Hは、図8の拡大部分図に示されている。ボルトサークルとタワー壁との間のオフセットは、このタイプの接続が、過剰な曲げモーメントに対して脆弱であることを意味している。結果として、タワー2の全高が、フランジ接続部の耐荷重の限界により、制限される場合がある。このような制限を克服するために、代替的な従来技術の構造では、タワー区分20を内側ボルトサークルおよび外側ボルトサークルに接続するためにT字形フランジが使用されるが、このような解決手段は、上述したように著しく高いコストに結びつく。
【0050】
本発明を、好ましい実施形態およびその変化態様につき開示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの付加的修正および変更を本発明に対して行うことができることが理解されるであろう。
【0051】
明確にするために、本願を通して、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、複数を排除するものではなく、「備える(comprising)」は、他のステップまたは要素を排除するものではないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8