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特許7512408血液のための冷却水循環部を備える光線力学的療法装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】血液のための冷却水循環部を備える光線力学的療法装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61M1/36 173
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022556748
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038764
(87)【国際公開番号】W WO2022079827
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】濱尾 保
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】梶原 新平
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517093(JP,A)
【文献】特表2005-518837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体外に取り出され血液用チューブ内を流れる、光反応剤を吸収した血液に、光源から光線を照射し、血液中の望ましくない成分を破壊、又は当該成分に影響を付与する光線力学的療法装置であって、
前記光源を備え、前記血液用チューブ内の血液に光線を照射する照射ユニットと、及び、
前記血液用チューブ内の血液を冷却する回路冷却ブロックと
を備え、
前記回路冷却ブロックは、前記回路冷却ブロックに冷却水を循環させるためのポンプ、リザーバタンク、及び、水を冷却する冷却部と、前記冷却水を流す水流路により繋がれており
前記血液用チューブと、前記血液用チューブが周囲を周回するように配置される巻き芯部とを含む回路ホルダを備え、
前記回路冷却ブロックは、前記回路ホルダの内側表面に接触することにより、前記血液用チューブ内の血液を冷却する、
光線力学的療法装置。
【請求項2】
前記照射ユニットは、前記回路ホルダ及び前記回路冷却ブロックに対して、相対移動可能に構成されている
請求項に記載の光線力学的療法装置。
【請求項3】
更に、
前記冷却部と前記回路冷却ブロックとの間にて前記回路冷却ブロックの上流側に第1のバルブが設けられ、加えて、
前記冷却部と前記リザーバタンクとの間にて前記リザーバタンクの上流側に第2のバルブが設けられており、
治療準備時には、前記第1のバルブを閉、前記第2のバルブを開とすることで、前記冷却部、前記リザーバタンク、及び、前記ポンプの内で水を短絡させるように構成されている、
請求項1に記載の光線力学的療法装置。
【請求項4】
治療時には、前記第1のバルブを開、前記第2のバルブを閉とすることで、前記冷却部、前記回路冷却ブロック、前記リザーバタンク、及び、前記ポンプで水を循環させる
ように構成されている、
請求項に記載の光線力学的療法装置。
【請求項5】
前記回路冷却ブロックは、複数の回路冷却サブブロックで構成され、
対向して設けられる対の回路冷却サブブロックの間には、一つ以上の弾性体が挟まれており、
前記回路冷却ブロックは、前記一つ以上の弾性体による付勢により、前記回路ホルダの内側表面により強く接触するように構成されている、
請求項に記載の光線力学的療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液のための冷却水循環部を備える光線力学的療法装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)では、特徴的な光吸収帯域を有する光反応剤を吸収した血液が、一旦患者の体外に取り出されて、その特徴的な光吸収帯域に対応する光線が照射され、これにより、血液中の望ましくない成分が破壊され、又は、当該成分に影響が付与される。照射光である光線の光源として、例えば、LEDが利用される。
【0003】
ところで、上述のPDT治療時におけるLEDによる光線が、患者の体外に取り出された血液に照射されると、その血液は発熱して温度が上昇する。血液の温度が上昇すると、血液が戻される患者の身体に負担を与える虞が生じる。また、温度の上昇は、血液そのものに悪影響を与えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/164202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、PDT療法において血液の温度上昇を抑制する光線力学的療法装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光線力学的療法装置は、患者の体外に取り出され血液用チューブ内を流れる、光反応剤を吸収した血液に、光源から光線を照射し、血液中の望ましくない成分を破壊、又は当該成分に影響を付与する光線力学的療法装置である。そのような光線力学的療法装置が、
光源を備え、血液用チューブ内の血液に光線を照射する照射ユニットと、及び、
血液用チューブ内の血液を冷却する回路冷却ブロックとを備える。
回路冷却ブロックは、回路冷却ブロック内に冷却水を循環させるためのポンプ、リザーバタンク、及び、水を冷却する冷却部と、冷却水を流す水流路により繋がれている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の光線力学的療法装置は、照射光の吸収による血液の発熱に起因する温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の実施の形態に係る光線力学的療法装置の正面図である。
図1B】実施の形態に係る光線力学的療法装置の後方からの斜視図である。
図2A】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダ及び回路冷却ブロック並びに照射ユニットの斜視図である。図中の照射ユニットと、回路ホルダ及び回路冷却ブロックとの配置は、光量モニタ時のものである。
図2B】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダ及び回路冷却ブロック並びに照射ユニットの斜視図である。図中の照射ユニットと、回路ホルダ及び回路冷却ブロックとの配置は、治療時のものである。
図3A】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダと回路冷却ブロックのほぼ正面からの斜視図である。
図3B】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダと回路冷却ブロックの斜視図である。
図4A】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダの斜視図である。
図4B】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダの、底面からの斜視図である。
図4C】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダの、分解した状態での斜視図である。
図5】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路ホルダ内にて、血液用チューブが周回された状態での斜視図である。
図6A】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路冷却ブロックの斜視図である。
図6B】回路冷却ブロックにおける、図6AのIB-IB線を含む水平面による部分断面図である。
図7】実施の形態に係る光線力学的療法装置における回路冷却ブロックを構成する回路冷却サブブロックの透視図であり、冷却水が流れる管が示されている。
図8】実施の形態に係る光線力学的療法装置と繋がる冷却水循環部の模式図であり、図中の冷却水循環部は、治療準備時の状態にある。
図9】実施の形態に係る光線力学的療法装置と繋がる冷却水循環部の模式図であり、図中の冷却水循環部は、治療時の状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
1.[本開示に至る経緯]
光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)は、光感受性物質又はその前駆体を投与し、腫瘍組織や新生血管、皮膚表面などの患部に集積させ、光感受性物質の吸収帯波長に対応する光線を励起光として照射して、励起により生成される一重項酸素をはじめとする活性酸素種の殺細胞効果を利用した治療法である。
【0012】
患者が血液がん患者であり、腫瘍細胞を有する例を取り上げると、光線力学的療法では、まず、患者に経口吸収性を有するアミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid:5-ALA)が投与される。そうすると、細胞内ミトコンドリアにてヘムが生合成される過程において、アミノレブリン酸が、光感受性物質であるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX: PpIX)に代謝される。プロトポルフィリンIXは、腫瘍細胞特異的にミトコンドリア内に蓄積する特性を有するため、患者の腫瘍細胞に蓄積される。
【0013】
続いて光線力学的療法では、患者の循環器が、血液を流すための血液回路を介して、光線力学的療法のための照射装置に接続される。患者の血液には、プロトポルフィリンIXが蓄積された腫瘍細胞が含まれており、当該血液が、血液を流すための血液回路に接続される循環ポンプの働きにより、当該血液回路を介して照射装置に流入する。照射装置において、プロトポルフィリンIXが吸収し得る波長領域(例えば、410nm付近、500~650nm付近)の光が照射されると、血液に含まれるプロトポルフィリンIXが励起一重項状態となる。プロトポルフィリンIXは、励起一重項状態から励起三重項状態を経て基底状態に戻る。その際のエネルギーを吸収した酸素が一重項酸素となり、血液中の腫瘍細胞を破壊し、又は影響を与えることができる。光照射が行われた血液は、血液を流すための血液回路を介し、循環ポンプの働きにより、患者の循環器に戻される。
【0014】
血液回路は、照射装置において、所定の樹脂により形成される透光性の血液用チューブに接続する。血液を内部にて流す当該血液用チューブが、例えば、光源であるLEDにより、光感受性物質であるプロトポルフィリンIXの吸収帯波長に対応する光線を照射される。このとき、照射光の吸収により血液が発熱し拠って血液の温度が上昇する虞があることに、発明者らは気付いた。特に、患者の体力にあまり悪影響を与えない治療の時間(例えば、3時間)にて、光線力学的療法のための十分な効果を得るには、光源の照度を相応に強くしなければならない。その場合、発明者らの試算及び試行によると、血液の温度が60℃に達する可能性もある。血液の温度が上昇すると、血液が戻される患者の身体に高温による負担を与える。更に、温度の上昇は、血液そのものに悪影響を与える。
【0015】
なお、発明者らは、照射装置により上昇し得る血液の温度は、高くとも40℃以下であることが望ましいとの知見を、多数回の試行及び試算により得ている。
【0016】
本開示は、これらの問題点を克服するものであり、光線力学的療法において照射光による血液の温度上昇を抑制する光線力学的療法装置を提供するものである。
【0017】
2.[実施の形態]
以下、添付の図面を参照して、本開示の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
2.1.[光線力学的療法装置の構成]
まず、実施の形態に係る光線力学的療法装置の構成を説明する。
【0019】
2.1.1.[光線力学的療法装置の概略の構成]
図1Aは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2の正面図である。図1Bは、同じ実施の形態に係る光線力学的療法装置2の後方からの斜視図である。
【0020】
図1Aに示すように、光線力学的療法装置2は、回路冷却ブロック6と、照射ユニット4とを備える。
【0021】
回路冷却ブロック6は所定の材料により形成され、後で説明するように、血液を流すための血液回路と接続する(即ち、一部を成す)血液用チューブ34(図5図9参照)を含む回路ホルダ22(図3A図3B等参照)の内部に差し込まれ回路ホルダ22の内側表面に接触して、血液用チューブ34及び血液を冷却する。回路冷却ブロック6を形成する材料は、熱伝導率の高い金属、例えば、アルミニウム、であることが望ましい。照射ユニット4は、回路ホルダ22内の血液用チューブ及び血液に対して、特徴的な光吸収帯域に対応する光線を照射する。照射ユニット4は、その内側にて、多数の発光素子(例えば、LED)で構成される光源(図示せず)と、光検出素子で構成される光検出部(図示せず)とを備える。光源を構成する多数の発光素子は、例えば、照射ユニット4の、対向する左右一対の、より広い側面部(図2A図2B参照)の内側に、例えば、マトリクス状に配置されている。光検出部は、例えば、照射ユニット4の、上面の内側と、底面の内側とに、配置されている。
【0022】
図1Aに示す光線力学的療法装置2に対しては、更に、下部筐体8が設けられている。下部筐体8には、後で図8及び図9を用いて説明する冷却水循環部を構成する、冷却部16、第1のバルブ14a及び第2のバルブ14b、リザーバタンク18、並びに、ポンプ20が、収納されている。
【0023】
また、図1A及び図1Bに示す光線力学的療法装置2では、上部に備わる操作部5に対する操作を介して、後で説明するバルブの開閉操作等が行われる。
【0024】
2.1.2.[回路ホルダ及び回路冷却ブロック、並びに、照射ユニットの構成]
図2Aは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6並びに照射ユニット4の斜視図である。図2Aでも示しているように、回路冷却ブロック6は回路ホルダ22の内部に差し込まれる。回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6に対して、照射ユニット4は、相対移動可能に構成されている。なお図2A及び図2Bに示す形態では、固定される回路冷却ブロック6に対して照射ユニット4が移動し得る。回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6と、照射ユニット4とが離れている状態にて、照射ユニット4は、光源及び光検出部により光量のモニタを行う。
【0025】
図2Bも回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6並びに照射ユニット4の斜視図である。照射ユニット4が、回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6に対して相対移動することで、回路ホルダ22及び回路冷却ブロック6は照射ユニット4の内部に収容されている。このとき、照射ユニット4内部の左右一対の光源は、回路ホルダ22の一対の側面に対して対向配置されることになる。照射ユニット4の左右一対の光源が回路ホルダ22の一対の側面に対して対向配置されて、照射ユニット4の光照射による治療が行われる。
【0026】
2.1.3.[回路ホルダと回路冷却ブロックの構成]
図3Aは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22と回路冷却ブロック6との、離れた状態での、ほぼ正面からの斜視図である。図3Bも、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22と回路冷却ブロック6との、離れた状態での斜視図である。
【0027】
図4Aは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22の斜視図であり、図4Bは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22の、底面からの斜視図である。特に、図4Bに示すように、回路ホルダ22の内部は中空となっており、この中空部分に回路冷却ブロック6が差し込まれ、回路ホルダ22の内側表面と接触する。
【0028】
図4Cは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22の、分解した状態での斜視図である。図4Cに示すように、回路ホルダ22は、4種の成形品と2枚のアルミニウム板金24との組み合わせ構造を備える。ここで4種の成形品は、回路ホルダ中心部30と、2本の回路ホルダ端部28と、2面の回路ホルダ側面部26と、及び、回路ホルダ上面部32とである。
【0029】
なお、図4Cに示す回路ホルダ22の分解図では、血液を流すための血液回路と接続する(即ち、一部を成す)血液用チューブ34が略されている。回路ホルダ22内部では、2枚のアルミニウム板金24と、回路ホルダ中心部30と、2本の回路ホルダ端部28と、及び、回路ホルダ上面部32とで構成される巻き芯部33に、血液用チューブ34が周回される(図5参照)。血液用チューブ34が巻き芯部33に整然と周回されるように、アルミニウム板金24と、回路ホルダ中心部30と、及び、回路ホルダ端部28とには、血液用チューブ34の周回のためのガイドが適宜設けられている。
【0030】
2面の回路ホルダ側面部26は、照射ユニット4の光源からの照射光を、血液用チューブ34及びその内部を流れる血液に到達させるために、透明の樹脂の薄板、例えば、ポリカーボネートの薄板により形成されている。図4Cにおける回路ホルダ側面部26が示すように、回路ホルダ側面部26の内側にも血液用チューブ34の周回のための横方向のガイド25が適宜設けられている。
【0031】
また、回路ホルダ側面部26の内側には縦方向の細いリブ27も多数設けられている。この多数の縦方向のリブ27によって、アルミニウム板金24に対する血液用チューブ34の密着性が向上する。
【0032】
回路ホルダ22の巻き芯部33を周回する血液用チューブ34の大部分は、照射ユニット4の光源からの照射光を透過する回路ホルダ側面部26と、回路冷却ブロック6に直接接触して冷却されるアルミニウム板金24とに挟まれて配置されることになる。図5は、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路ホルダ22内にて、血液用チューブ34が巻き芯部33に周回されている状態の斜視図である。
【0033】
なお、回路ホルダ側面部26と血液用チューブ34との間に透明の薄膜によるカバーが設けられてもよいし、回路ホルダ側面部26と血液用チューブ34が間に何も挟むことなく直接接触するものであってもよい。アルミニウム板金24と血液用チューブ34との間にも透明の薄膜によるカバーが設けられてもよいし、アルミニウム板金24と血液用チューブ34も間に何も挟むことなく直接接触するものであってもよい。
【0034】
2.1.4.[回路冷却ブロックの構成]
図6Aは、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路冷却ブロック6の斜視図である。回路冷却ブロック6は、4枚の回路冷却サブブロック(6f、6s)と、回路冷却サブブロック(6f、6s)を設ける台座部6bとにより構成されている。4枚の回路冷却サブブロック(6f、6s)は、2枚の固定式回路冷却サブブロック6fと、2枚のスライド式回路冷却サブブロック6sとにより構成される。「固定式」と「スライド式」とについては、後で説明する。なお、4枚の回路冷却サブブロック(6f、6s)は、略同じ構造を有するものでよい。更に、回路冷却サブブロック(6f、6s)はアルミニウム製であることが望ましい。また、回路冷却サブブロック(6f、6s)は4枚より多くてもよい。
【0035】
図7は、実施の形態に係る光線力学的療法装置2における回路冷却ブロック6を構成する回路冷却サブブロック(6f、6s)の透視図であり、冷却水が流れる管40が示されている。冷却水は、台座部6bから流入し、回路冷却サブブロック(6f、6s)内部に縦横に設けられている管40内を流れて、台座部6bへ流出する。回路冷却サブブロック(6f、6s)内部の管40、及び、台座部6bは、後で説明する冷却水循環部の水流路12(図8及び図9参照)の一部を為すものである。
【0036】
図6Bは、回路冷却ブロック6における、図6AのIB-IB線を含む水平面による部分断面図である。回路冷却ブロック6を構成する回路冷却サブブロックの一方は、固定式のもの(固定式回路冷却サブブロック6f)である。回路冷却サブブロックの他方は、スライド式のもの(スライド式回路冷却サブブロック6s)である。図6Bに示すように、対向して設けられている、固定式回路冷却サブブロック6fとスライド式回路冷却サブブロック6sとの間には、夫々の凹部に係合して弾性体10が挟まれている。図6Bに示す回路冷却ブロック6では、弾性体10の例として、ばねが用いられている。
【0037】
弾性体10には軸11が通される。この軸11は、スライド式回路冷却サブブロック6sに対して固定され、固定式回路冷却サブブロック6fに対してスライド可能であるように、構成されている。このことにより、固定式回路冷却サブブロック6fとスライド式回路冷却サブブロック6sとが平行の位置関係を正確に保持しつつ固定式回路冷却サブブロック6fに対してスライド式回路冷却サブブロック6sがスライドし得ることになる。軸11は、固定式回路冷却サブブロック6fに対して固定され、スライド式回路冷却サブブロック6sに対してスライド可能であるように、構成されてもよい。
【0038】
対面する一対の固定式回路冷却サブブロック6fとスライド式回路冷却サブブロック6sにて、弾性体10は複数、例えば、4本、設けられている。
【0039】
以上のように、複数の弾性体10が挟まれて設定されることにより、スライド式回路冷却サブブロック6sは、図6Bに示す矢印Aの方向に、即ち、外方向に、付勢される。スライド式回路冷却サブブロック6sが弾性体10により外方向に付勢されることにより、回路冷却ブロック6が回路ホルダ22内部に差し込まれたとき、回路ホルダ22のアルミニウム板金24の内側表面へ回路冷却サブブロック(6s、6f)がより強く接触することになる。
【0040】
つまり、対面する2枚の回路冷却サブブロック(6s、6f)において、一方が固定され、他方が弾性体機構により対面方向に反力が掛かった状態で保持されている。これは、回路ホルダ22のアルミニウム板金24に対して回路冷却サブブロック(6s、6f)の密着性を向上させるためである。このことにより、回路ホルダ22のアルミニウム板金24、血液用チューブ34、延いては血液用チューブ34内の血液への、回路冷却ブロック6による冷却作用が高められる。
【0041】
即ち、血液の温度が、血液用チューブ34→アルミニウム板金24→回路冷却ブロック6と伝熱・熱交換されて、血液温度上昇が抑制される。
【0042】
なお、対面する2枚の回路冷却サブブロックにおいて、双方がスライド式回路冷却サブブロック6sであり、それら双方のスライド式回路冷却サブブロック6sが弾性体機構により外側へ付勢されるように、回路冷却ブロック6が構成されてもよい。
【0043】
2.1.5.[冷却水循環部の構成]
図8及び図9は、血液を流すための血液回路と接続する(即ち、一部を成す)血液用チューブ34を伴う回路ホルダ22、及び、回路冷却ブロック6、並びに、冷却水循環部の構成を示す模式図である。図8の冷却水循環部は、治療準備時の状態にある。図9の冷却水循環部は、治療時の状態にある。
【0044】
図8及び図9に示すように、冷却水循環部は、冷却部16、第1のバルブ14a及び第2のバルブ14b、リザーバタンク18、並びに、ポンプ20を備える。冷却部16、第1のバルブ14a、回路冷却ブロック6、第2のバルブ14b、リザーバタンク18、及び、ポンプ20は、冷却水を流す水流路12により繋がれている。
【0045】
図8及び図9では描画及び表示の便宜上、最前面にて示されているが、)水流路12は、回路冷却ブロック6の内部にも縦横に設けられている(図7参照)。第1のバルブ14aは、冷却部16と回路冷却ブロック6との間にて、回路冷却ブロック6の上流側に設けられている。第2のバルブ14bは、冷却部16とリザーバタンク18との間にて、リザーバタンク18の上流側に設けられている。
【0046】
図8に示すように、治療準備時には、第1のバルブ14aが閉じられて第2のバルブ14bが開けられ、冷却水は、冷却部16、リザーバタンク18、及び、ポンプ20の内で短絡し、回路冷却ブロック6には流れない。一方、図9に示すように、治療時には、第1のバルブ14aが開けられて第2のバルブ14bが閉じられ、冷却水は、冷却部16、回路冷却ブロック6、リザーバタンク18、及び、ポンプ20を、循環する。第1のバルブ14a及び第2のバルブ14bの開閉操作は、操作部5に対する操作に従って行われる。
【0047】
冷却部16は、回路冷却ブロック6まで循環する水を冷却するように構成されている。冷却部16は、例えば、ペルチェ素子で構成される。冷却部16は、水を冷却する熱交換器で構成されてもよく、例えば、ラジエータにより構成されてもよい。また、冷却部16は、フロンガスを冷媒としたコンプレッサによる循環式恒温水槽等の冷凍機であってもよい。その場合、冷却部16、リザーバタンク18、及び、ポンプ20が、回路冷却ブロック6や照射ユニット4を含む光線力学的療法装置2とは別の筐体内に設けられる構成としてもよい。なお、凍ることを抑制するために、冷却水として不凍液が用いられてもよい。
【0048】
本実施の形態では、冷却水循環部を構成する、冷却部16、第1のバルブ14a及び第2のバルブ14b、リザーバタンク18、並びに、ポンプ20は、図1A及び図1Bに示す光線力学的療法装置2の下部筐体8内に収納されている。
【0049】
2.2.[光線力学的療法装置と繋がる冷却水循環部の動作]
次に、実施の形態に係る光線力学的療法装置と繋がる冷却水循環部の動作を説明する。
【0050】
再び図8を参照して、図8に示す冷却水循環部は、治療準備時の状態にある。治療準備時には、操作部5に対する操作により、第1のバルブ14aが閉じられて第2のバルブ14bが開けられる。冷却水は、冷却部16、リザーバタンク18、及び、ポンプ20の内で短絡し、回路冷却ブロック6には流れない。
【0051】
このように、治療準備中には、回路冷却ブロック6側に冷却水を循環させず、冷却部16、リザーバタンク18、及び、ポンプ20の内で短絡させることにより、冷却水を目標の温度まで冷却する。
【0052】
このことには、主に二つの目的がある。一つは、治療開始直後に冷却された生理食塩水が患者の体内に送り込まれることを回避するためである。つまり、治療開始前には、当初、血液回路には生理食塩水が充填されている。その際に、十分に冷却された回路冷却ブロック6に対して血液回路を含む回路ホルダ22を設置すると、血液回路内の生理食塩水は、照射光によっても温度上昇すること無く、回路冷却ブロック6に拠ってより温度下降することになる。この温度下降した生理食塩水が患者の体内に送り込まれることを回避する。
【0053】
もう一つの目的は、短絡により、治療準備時に水を効率よく冷却させるためである。
【0054】
続いて、再び図9を参照して、図9に示す冷却水循環部は、治療時の状態にある。治療時には、操作部5に対する操作により、第1のバルブ14aが開けられて第2のバルブ14bが閉じられる。冷却水は、冷却部16、回路冷却ブロック6、リザーバタンク18、及び、ポンプ20を循環する。このことにより、照射光の吸収による血液の発熱に起因する血液温度上昇は、抑制される。
【0055】
2.3.[まとめ]
本実施の形態に係る光線力学的療法装置2は、患者の体外に取り出され血液用チューブ34内を流れる、光反応剤を吸収した血液に、光源から光線を照射し、血液中の望ましくない成分を破壊、又は当該成分に影響を付与する光線力学的療法装置である。当該光線力学的療法装置2は、光源を備え血液用チューブ34内の血液に光線を照射する照射ユニット4と、及び、血液用チューブ34内の血液を冷却する回路冷却ブロック6とを備える。回路冷却ブロック6は、回路冷却ブロック6内に冷却水を循環させるためのポンプ20、リザーバタンク18、及び、水を冷却する冷却部16と、冷却水を流す水流路12により繋がれている。
【0056】
このように光線力学的療法装置2を構成することにより、光線力学的療法において、照射光の吸収による血液の発熱に起因する温度上昇が抑制される。
【0057】
3.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0058】
前述のように、照射ユニット4により上昇し得る血液の温度は、40℃以下に抑えられることが求められる。そこで、例えば、血液回路において、患者の循環器に戻る直前の血液用チューブ34にその内部の血液の温度をリアルタイムで検出する温度センサを設け、更に、その温度センサの検出値により、冷却部16の冷却能力を制御するコントローラを設けてもよい。即ち、温度センサが40℃に近い温度(例えば、39℃)を検出すれば、その検出値を受けたコントローラは、冷却部16のペルチェ素子を流れる電流及び/又は電圧を増加させてより冷却能力を高めるように構成されてもよい。また、温度センサが通常の体温より低い温度(例えば、34℃)を検出すれば、その検出値を受けたコントローラは、冷却部16のペルチェ素子を流れる電流及び/又は電圧を減少させてより冷却能力を低下させるように構成されてもよい。
【0059】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0060】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
2・・・光線力学的療法装置、4・・・照射ユニット、6・・・回路冷却ブロック、6b・・・台座部、6f・・・固定式回路冷却サブブロック、6s・・・スライド式回路冷却サブブロック、8・・・下部筐体、10・・・弾性体、11・・・軸、12・・・水流路、14a・・・第1のバルブ、14b・・・第2のバルブ、16・・・冷却部、18・・・リザーバタンク、20・・・ポンプ、22・・・回路ホルダ、24・・・アルミニウム板金、25・・・ガイド、26・・・回路ホルダ側面部、27・・・リブ、28・・・回路ホルダ端部、30・・・回路ホルダ中心部、32・・・回路ホルダ上面部、34・・・血液用チューブ、40・・・管。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9