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特許7512423メタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】メタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240701BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240701BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20240701BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240701BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240701BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01N33/543 525C
C12N15/09 200
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6837 Z
C12M1/34 Z
C12M1/34 F
C12M1/34 E
C12Q1/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022565635
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021005292
(87)【国際公開番号】W WO2021221426
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0050916
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519359723
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーケー、ギョンシク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドンマン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ユンジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソキン
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158770(JP,A)
【文献】特開2019-100837(JP,A)
【文献】特許第5270672(JP,B2)
【文献】特開2018-036176(JP,A)
【文献】特表2013-524814(JP,A)
【文献】特表2009-509132(JP,A)
【文献】米国特許第10288563(US,B1)
【文献】国際公開第2017/038714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
C12N 15/09
C12Q 1/6834
C12Q 1/6837
C12M 1/34
C12Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタマテリアルパターンが形成されており、入射する電磁波の特定の周波数に対して共振するメタサーフェス構造体と、
前記メタサーフェス構造体のホットスポット領域の表面に形成された固定型バインディングボディと、
前記固定型バインディングボディに引力によって結合される移動型バインディングボディと、
前記移動型バインディングボディにリンクされたレセプターと、を含むことを特徴とするメタサーフェス構造体を用いた品質分析用ナノセンサであって、
前記ホットスポット領域は、前記メタサーフェス構造体に電磁波が入射した場合に電場の強度が強く集中する電界強化現象が発生する領域であり、
前記固定型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物からなる強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物である第1磁性体粒子であり、
前記移動型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物からなる強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物であり、またはこれらの強磁性金属群から選択される1種または混合物が銀または金ナノ粒子と結合したマグネトプラズモン粒子から形成され、前記第1磁性体粒子と引力によりバインディングされる第2磁性体粒子であることを特徴とする品質分析用ナノセンサ。
【請求項2】
前記レセプターは、分析対象物質の品質検出のためのターゲット物質が特異的に結合するバインディングサイトが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメタサーフェス構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサに関し、より具体的には、少量のナノ粒子のみで効率的に検出感度を高度に高めるようにしたメタマテリアルベースの品質分析用ナノセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンシング技術は、バイオセンサベースの分析技術であり、これを体系的に説明するためには、バイオセンサがどのように構成されるかを考察する必要がある。バイオセンサは大きく変換器と生物要素で構成されており、生物要素と分析物質の間の選択的反応の結果で現れるイオン、電子、熱、質量、光の変化を変換器で検出した後、それを電気的信号に変えて増幅させて反応信号に表示してくれる。したがって、バイオセンサは、変換器の特性に応じて電気的特性変化を測定する「電気化学的バイオセンサ」、光学的特性変化を測定する「光電子学的バイオセンサ」、質量変化を測定する「圧電流的バイオセンサ」と生物反応の結果で現れる熱変化を測定する「バイオサーミスタ」に大きく分けることができる。
【0003】
バイオセンサの主要適用分野として医療、食品および農業、工程、環境などがあるが、食品分野のバイオセンサの市場規模も急速に増大しており、今後の食品産業においてバイオセンサの活用度も高まると予想される。技術的側面においては電気化学的バイオセンサが最も高いシェアを占めている。
【0004】
食品産業においてバイオセンシング技術を活用できる分野は、成分分析、自然毒素と抗栄養素の迅速検出、食品加工と貯蔵中の酵素不活性化と微生物汚染検出、調理過程や食品成分の相互反応によって生成される有害物質測定、食品原料生産、加工過程で混入する汚染物質分析、魚類の鮮度測定、抗酸化活性などの機能性評価、発酵モニタリングなどが挙げられる。
【0005】
一方、魚肉と蓄育の腐敗過程で生成される主要物質の相対的割合を測定して鮮度を測定するバイオセンサ、抗酸化活性など機能性評価バイオセンサ、食品工程に接続してオンラインで発酵産物の濃度をリアルタイムで測定するバイオセンサなども食品産業で活用可能性が高い。
【0006】
食品分野のバイオセンサの市場規模は現在急速に増殖しているので、食品バイオセンシング技術の未来は非常に明るいといえる。また、タンパク質体学などのオミックス(Omics)技術の発達は、食品バイオセンサの研究開発と活用を促進することとして作用している。
【0007】
今後、使い捨てバイオセンサや簡便でコストパフォーマンスが良く、反応時間が速く、使いやすいバイオセンサ装置に対する需要が急増するだろう。したがって、再現性の向上と省コストのためのバイオセンサチップの規格化と微小化が重大であり、最終的にはマイクロタス(uTAS)ベースのバイオ食品計測技術の開発とそのための周辺要素技術の確立が必要であると思われる。
【0008】
従来のナノギャップを用いたメタマテリアルの場合、ナノギャップによって生じるフィールドエンハンスメント(FE、field enhancement)効果のため、ナノギャップベースのメタマテリアルセンサをより高感度センサとして活用することができた。
【0009】
しかし、ナノギャップを実際に活用する場合、製造工程が複雑でコストが高く、低価のセンサとして活用するには、現在の技術レベルでは困難がある。
【0010】
ナノ粒子をメタマテリアルの上に結合して検出する場合、感度が驚くほど増幅される効果はあるが、メタマテリアルの単位セルが大きくなる場合には非効率的であり、大量のナノ粒子が必要となるなどの難しさがある。
【0011】
また、メタマテリアルを用いた場合にでも生化学的に選択的なバインディングサイト(biochemical selective binding site)なしで単にラベルフリー(label-free)で測定する場合も検出されるが非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するために案出されたものであり、高度に検出感度を高めながら少量のナノ粒子のみで効率的に検出できるメタマテリアルとナノ粒子ベースの検出構造と検出方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の目的を達成するためのものであって、入射する電磁波の特定の周波数に対して共振するメタサーフェス構造体と、前記メタサーフェス構造体のホットスポット領域の表面または構造体の内部に形成された固定型バインディングボディと、前記固定型バインディングボディに引力によって結合される移動型バインディングボディと、前記移動型バインディングボディにリンクされたレセプターまたはナノ粒子と、を含むメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサを提供する。
【0014】
また、前記ホットスポット領域は、電場の強度が強く集中する電界強化(field enhancement)現象が発生する領域であることを特徴とする。
【0015】
また、前記固定型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物を含む強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物である第一磁性体粒子であり、前記移動型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物を含む強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物であるし、またはこれらの強磁性金属群から選択される1種または混合物が銀または金ナノ粒子と結合したマグネトプラズモン粒子を使用し、前記第1磁性体粒子と引力によりバインディングされる第2磁性体粒子であることを特徴とする。
【0016】
また、前記固定型バインディングボディは、単一、二重または多重の硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)誘導体、イオン性配位子を含むケミカルリンカーであり、前記移動型バインディングボディは、カーボハイドレート(Carbohydrate)、ペプチド(Peptide)、プロテイン(Protein)、酵素(Enzyme)、脂質(Lipid)、アミノ酸(Amino acid)、DNA、RNA、抗体(Antibody)、PEG、Drug、蛍光染料(Fluorescent dye)からなる群から選択された1種以上と結合した金属または非金属ナノ粒子を使用し、前記ケミカルリンカーと結合される粒子であることを特徴とする。
【0017】
また、前記ホットスポット領域の表面または構造体の内部に前記ケミカルリンカーがリソグラフィー法により形成されることを特徴とする。
【0018】
また、前記レセプターは、分析対象物質の品質検出のためのターゲット物質が特異的に結合するバインディングサイトが形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】本発明のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサの構造を示す模式図である。
図1b】メタサーフェス構造体に形成された様々なパターンの形態及びホットスポット領域の例である。
図1c】メタサーフェス構造体に形成された様々なパターンの形態及びホットスポット領域の例である。
図1d】メタサーフェス構造体に形成された様々なパターンの形態及びホットスポット領域の例である。
図1e】本発明の実施形態に係るナノセンサの構造及びセンシングメカニズムを示す模式図である。
図1f】本発明の実施形態に係るナノセンサの構造及びセンシングメカニズムを示す模式図である。
図2a図1dに示すメタ構造体の表面に検出対象物質が均一に吸着されながら単位面積当たりのマスが増加し検出されるラベルフリーセンシングのシミュレーション模式図である。
図2b図2aのAl粒子が全体メタ構造体の表面にコーティングされたメタ構造体センサに対する有限差分分析結果のグラフである。
図2c図2bに従った粒子個数の変化に対する頂点移動効果の結果を示すグラフである。
図3a図1dに示すメタ構造体単位セルの一定の局所領域のみにAl粒子が吸着した場合の模式図である。
図3b】中心座標移動に伴う透過度を示すグラフである。
図3c】中心座標移動に伴う透過度を示すグラフである。
図4】粒子のアイランド位置の移動に伴う画像と透過度ピークの変化グラフである。
図5】粒子のアイランド位置の移動に伴う画像と透過度ピークの変化グラフである。
図6a図4の(a)のメタ構造体のホットスポット領域にAl粒子が形成された実施形態において粒子数の変化に対するピーク変化を示すグラフである。
図6b図6aに従った頂点移動効果の結果を示すグラフである。
図7a図1dに示すメタ構造体のホットスポット領域に第2磁性体粒子と結合したPEC粒子が形成された実施形態に対する有限差分分析結果を示すグラフである。
図7b図7aに従った頂点移動効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、入射する電磁波の特定の周波数に対して共振するメタサーフェス構造体と、前記メタサーフェス構造体のホットスポット領域の表面または構造体の内部に形成された固定型バインディングボディと、前記固定型バインディングボディに引力によって結合される移動型バインディングボディと、前記移動型バインディングボディにリンクされたレセプターまたはナノ粒子と、を含むメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサに関する。
【0021】
以下、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1aは本発明のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサの構造を示す模式図であり、次のような構造からなる。
【0023】
入射する電磁波の特定の周波数に対して共振するメタサーフェス構造体10と、前記メタサーフェス構造体10のホットスポット領域の表面または構造体の内部に形成された固定型バインディングボディ20と、前記固定型バインディングボディ20に引力によって結合される移動型バインディングボディ30と、前記移動型バインディングボディ30にリンクされたレセプター40またはナノ粒子と、を含む。
【0024】
メタマテリアル単位セルにおいては、構造に従って電界効果FEが発生するホットスポットの位置が異なるように形成される。図1b乃至図1dは、様々なメタサーフェス構造体に形成されたパターンの形態及びホットスポット領域の例を示している。
【0025】
例えば、図1bのような代表的なスプリットリング共振器(Split Ring Resonator)のELC(Electric-field coupled inductor-capacitor)共振器の共振構造の場合、中間のキャパシタ部分にホットスポット領域が発生し、図1dと図1dの非対称共振構造のような場合はエッジで発生する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るメタ構造体センサは、メタパターンが形成された平面であるメタサーフェス構造体10をベースとして、前記パターンの平面上又はパターンの内部の特定位置に第1磁性体粒子20を形成して、センサの検出感度を向上させる特徴を持っている。
【0027】
図1eは、本発明の一実施形態に係る前記メタマテリアルパターンの中のホットスポットが発生する領域に固定型バインディングボディ20である第1磁性体粒子Mを導入した例を示している。図1a及び図1eを参照すると、前記第1磁性体粒子Mとしては強磁性を有する金属(Ni、Fe等)、あるいはその合金をメタマテリアルパターン中のホットスポット領域の内に導入することができる。
【0028】
その後、移動型バインディングボディ30として、第2磁性体粒子である磁性金属等を流体中に含まれて流す形態でメタマテリアルの表面に導入することができる。前記第2磁性体粒子30である磁性金属は、ナノ粒子の形態で使用することが好ましい。このように、磁性を有するナノ粒子が流体内に引き込まれてメタサーフェス構造体10の表面に流れると、磁性を有するナノ粒子は、選択的に前記メタサーフェス構造体10の表面に形成されたホットスポットの近くに高い割合で集まるようになる。
【0029】
前記第2磁性体粒子30はレセプター40またはナノ粒子とリンクしている。
【0030】
この際に、前記レセプター40又はナノ粒子は、ターゲット物質Tに特異的に結合するバインディングサイト41が形成されており、前記バインディングサイト41に物質の品質を検出するための特定のターゲット物質Tが結合されている。これにより、流体中の全てのナノ磁性粒子は、ほとんど損失なくホットスポット領域の磁性パターンに集まり付着し、前記固定型バインディングボディの単位面積当たりのバインディングサイトの個数が大きくなり感度が増加する。これにより、前記レセプター40またはナノ粒子のターゲット物質Tのバインディングサイト41に付着しているターゲット物質Tがホットスポット領域に位置することにより、分析対象物質の品質に対する検出効率が急上昇できるようになる。
【0031】
この際に、第2磁性体粒子30が金、銀のようなナノ粒子と結合したマグネトプラズモン(magnetoplasmon)粒子のデュアル機能を有する粒子の場合は、より強い吸収が起こり、高感度の測定が可能である。
【0032】
図1fは、本発明の他の実施形態に係るメタマテリアルパターンの中のホットスポットが発生する領域に固定型バインディングボディ20であるケミカルリンカーLを導入した例を示している。ケミカルリンカーLには、単一、二重または多重の硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)誘導体、イオン性配位子が含まれる。前記ケミカルリンカーLと結合する粒子として、移動型バインディングボディ30を流体と共に導入することができるのにこれはカーボハイドレート(Carbohydrate)、ペプチド(Peptide)、プロテイン(Protein)、酵素(Enzyme)、脂質(Lipid)、アミノ酸(Amino acid)、DNA、RNA、抗体(Antibody)、PEG、Drug、蛍光染料(Fluorescent dye)からなる群から選択された1種以上と結合した金属または非金属ナノ粒子を用いることができる。
【0033】
前記実施形態のセンシングメカニズムは、前記第1磁性体粒子及び第2磁性体粒子を用いた実施形態と類似して、ケミカルリンカーと移動型バインディングボディとの結合により移動型バインディングボディにリンクされたレセプター又はナノ粒子のバインディングサイトに特異的に結合されているターゲット物質Tが特定のホットスポット領域に集まるようにすることにより、検出感度を向上させることができる。
【0034】
以下、本発明に係る実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0035】
[実施形態]
【0036】
図2aは、図1dに示すメタ構造体の表面に検出対象物質が均一に吸着しながら単位面積当たりのマス(mass)が増加し、検出されるラベルフリーセンシング(Label-free sensing)をシミュレートする模式図である。特にここでは、ラベルフリーセンシングの効果を最大化するために、通常のバイオ物質よりも屈折率の高い誘電体物質の一例として、Al粒子(diameter0.8~1.0um,n=3.07)が全メタ構造体の表面に均一にコーティングされるメタ構造体の模式図を示した(上:単位セルの正面、下:単位セルの側面、この際にメタル層(薄緑色パターン)は実際より厚く強調して表現され、単位セルの大きさは58μm×58um、金属パターンの線幅は4um)。図2bは、図2aのAl粒子が全メタ構造体の表面にコーティングされたメタ構造体センサの有限差分分析の結果であり、ナノ粒子の個数が増加しながら変化する透過度を示すグラフである。図2cは、図2bの透過度グラフにおける粒子個数の変化に対する頂点移動効果(peak shift)の変化を示す。計算結果は、一般的なラベルフリーセンシングにおけるよく知られているように、メタ構造体の単位セル表面当たりの粒子の個数が増加しつつ、マス(mass)の変化により共振周波数(ピーク位置)がレッドシフト(red-shift)していることを示している。この際に、粒子個数の変化に対する頂点移動は、線形的な変化を示しながら、1000個あたり15.4GHzの変化を示している。
【0037】
図3aは、図1dに示したメタ構造体単位セルの一定の局所領域(island area:10um×10um)のみにAl粒子が吸着した場合を計算するための模式図であり、図3bはアイランド(island)のy中心座標が0であった場合におけるアイランドのx中心座標を0から48umまで移動したときの透過度を示している。図3bの結果は予想したように、ホットスポットの付近に粒子が集中している場合がより吸収が大きく発生し、ホットスポット領域の外ではスペクトルがほぼ類似して現れている。また、図3cは、アイランドのy中心座標が24μmの場合におけるx中心座標を0から48μmまで移動したときの透過度を示している。図3cの結果は、ホットスポットの領域ではないところに吸着された粒子のアイランドに対する透過度を示し、結果はアイランドのx中心座標が変わってもスペクトルの変化が全ての領域でほとんどないことを示している。これらの結果は、図3bの場合はホットスポットの付近に粒子がある場合と粒子がない場合におけるピークの変化が大きく現れるが、図3bの結果とは対照的に、図3cの場合は全てがホットスポットの領域ではないのでピークの変化がほとんどないことが示されており、ホットスポットの付近に粒子が吸着された場合が、さらに粒子のアイランドのマス変化を高感度で示すことができるといえる。
【0038】
これらの結果をより詳細に調べるために、図4は、粒子のアイランドの位置をホットスポット領域(a:x=-24μm、y=0μm)からホットスポットではない領域(b:x=24μm、y=0μm、c:x=0um、y=24um、d:x=0um、y=0um)に移し、吸着した粒子数の変化(0~300個)に対する透過度ピークの変化をそれぞれ図5の(a)~図5の(d)に示す。結果をみると、予想の通りにホットスポットでのみ粒子数の変化に対してピークの変化が観測され(図5の(a))、残りの部分ではほとんど動きがなく、あるいは変化がない場合もある。
【0039】
図6aは、図4の(a)に示すメタ構造体のホットスポット領域(y=0)にAl粒子が形成された実施形態について、粒子数の変化に対するピーク変化、すなわち感度に対する定量のために有限差分分析の結果を示すグラフである(Al粒子(n=3.07)、variation(1~501))。図6bは、頂点移動効果(peak shift)フィッティングした結果を示した。計算結果は、図6bのように107GHz/1000particlesの変化を示し、図2cの変化に比べて7倍に増幅された結果を示している。これらの結果を総合すると、ホットスポット領域の内に粒子を集中して吸着することがはるかに高感度を示している。この原理を適用してホットスポットが発生する領域に第1磁性体粒子20を導入すると、第2磁性体粒子がホットスポットの付近に吸着するのに伴って感度が大きく増加することが分かる。
【0040】
図7aは、図1dに示したメタ構造体のホットスポット領域に第2磁性体と結合したPEC粒子(先の誘電体の代わりに金属ナノ粒子を使用)が形成された実施形態に対する有限差分分析の結果を示すグラフである(PEC粒子、粒子数の変化(1~101))。図7bは頂点移動効果を示す。結果は160GHz/100particlesの感度を示しているが、これは先の場合と比較すると約15倍に増幅された結果を示しており、金ナノ粒子と磁性体粒子を結合したマグネットプラズモニック粒子が吸着して感度が急激に増加することが分かる。
【0041】
このような結果から、メタマテリアル単位セルの面積にかかわらずホットスポット領域に磁性パターンを形成することにより、検出用磁性粒子が特定領域に集まるようにするので、少量の磁性粒子に付着したバイオセンサだけでも高感度の測定が可能である。
【0042】
また、前記第2磁性体粒子としてマグネトプラズモン粒子を用いると、より強い吸収が起こり、より感度を増幅させることができる。
【0043】
本発明に係ると、高度に検出感度を高めながら少量のナノ粒子のみで効率的に検出できるメタマテリアルとナノ粒子ベースの検出構造とを有する品質検出用ナノセンサを提供することができる。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
入射する電磁波の特定の周波数に対して共振するメタサーフェス構造体と、
前記メタサーフェス構造体のホットスポット領域の表面または構造体の内部に形成された固定型バインディングボディと、
前記固定型バインディングボディに引力によって結合される移動型バインディングボディと、
前記移動型バインディングボディにリンクされたレセプターまたはナノ粒子と、を含むことを特徴とするメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
[2]
前記ホットスポット領域は、電場の強度が強く集中する電界強化現象が発生する領域であることを特徴とする[1]に記載のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
[3]
前記固定型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物を含む強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物である第1磁性体粒子であり、
前記移動型バインディングボディは、ニッケル、鉄、コバルト、希土類化合物を含む強磁性金属群から選択される1種またはそれらの混合物であるし、またはこれらの強磁性金属群から選択される1種または混合物が銀または金ナノ粒子と結合したマグネトプラズモン粒子を使用し、前記第1磁性体粒子と引力によりバインディングされる第2磁性体粒子であることを特徴とする[1]に記載のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
[4]
前記固定型バインディングボディは、単一、二重または多重の硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)誘導体、イオン性配位子を含むケミカルリンカーであり、
前記移動型バインディングボディは、カーボハイドレート(Carbohydrate)、ペプチド(Peptide)、プロテイン(Protein)、酵素(Enzyme)、脂質(Lipid)、アミノ酸(Amino acid)、DNA、RNA、抗体(Antibody)、PEG、Drug、蛍光染料(Fluorescent dye)からなる群から選択された1種以上と結合した金属または非金属ナノ粒子を使用し、前記ケミカルリンカーと結合される粒子であることを特徴とする[1]に記載のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
[5]
前記ホットスポット領域の表面または構造体の内部に前記ケミカルリンカーがリソグラフィー法により形成されることを特徴とする[4]に記載のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
[6]
前記レセプターは、分析対象物質の品質検出のためのターゲット物質が特異的に結合するバインディングサイトが形成されていることを特徴とする[1]に記載のメタ構造体を用いた品質分析用ナノセンサ。
【符号の説明】
【0044】
10:メタサーフェス構造体
20:固定型バインディングボディ
30:移動型バインディングボディ
40:レセプター
41:バインディングサイト
T:ターゲット物質
M:第1磁性体粒子
L:ケミカルリンカー
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b