(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】高充填および柔軟性ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/20 20060101AFI20240701BHJP
C08F 210/08 20060101ALI20240701BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240701BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20240701BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08L23/20
C08F210/08
C08K3/013
H01B3/44 J
H01B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2022567039
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063076
(87)【国際公開番号】W WO2021233875
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マルキーニ、ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ムサッキ、ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】パスカリ、ステファノ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-210963(JP,A)
【文献】特表2019-509384(JP,A)
【文献】特表2013-533912(JP,A)
【文献】特表2018-501350(JP,A)
【文献】特表2018-522784(JP,A)
【文献】特表2010-531372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/20
C08F 210/08
C08K 3/013
H01B 3/44
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 85重量%~98重量%の組成物であって、
A) 最大18モル%の共重合エチレン含量を有し、2回目の加熱スキャンにおいてDSCで検出可能な溶融ピークのないエチレンとブテン-1との共重合体;および
B) 無機充填剤を含み;
B)/A)重量比が、0.3~4である、組成物;
b) 2重量%~15重量%の、A)とは異なる追加のポリオレフィンを含み;
a)およびb)の量は、a)+b)の総重量を指し、前記DSCの2回目の加熱スキャンは、1分当り10℃の加熱速度で行われ
、且つ
2回目の加熱スキャンにおける溶融ピークは、10℃/分に該当する走査速度で200℃で加熱し、5分間200℃で維持し、10℃/分に該当する走査速度で-20℃まで冷却し、-20℃で5分間定置し、及び2回目用に10℃/分に該当する走査速度で200℃に加熱することによって測定される、ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量に対して20重量%以上のA)を含有する、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
MIEが0.05g/10分以上以上であり、MIEが、ISO 1133-2:2011に従って決定される、2.16kgの荷重下の190℃での溶融フロー指数である、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
以下の追加の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物:
‐ 標準ISO 178:2019に従って成形後10日目に測定した屈曲弾性率が600MPa以下である;
‐ ショアD値が52以下である;
‐ ISO 527-1:2019に従って測定した破断点引張伸び率が135%以上である。
【請求項5】
前記ブテン-1共重合体成分A)が80以下のショアA値を有する、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
前記ブテン-1共重合体成分A)が、以下の追加の特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物:
‐ MIEが0.5~3g/10分である;
‐ 共重合エチレン含量の下限が12モル%である;
‐ ショアD値が20以下である;
‐ Mw/Mn値が3以下であり、ここで、Mwは、重量平均モル質量であり、Mnは、数平均モル質量であり、両方ともGPCによって測定される;
‐ アイソタクチックペンタッドの形態のブテン-1単位の百分率(mmmm%)が80%超である;
‐ ISO 527に従って測定された破断点引張応力が3MPa~20MPaである;
‐ ISO 527に従って測定された破断点引張伸び率が550%~1000%である;
‐ 固有粘度(I.V.)が1dl/g以上であり、上限は3dl/gである;
‐ X線によって測定された結晶度が30%未満である;
‐ 密度が0.895g/cm
3以下である;
‐ 0℃でキシレン不溶性分画の含量が15重量%未満である、
‐ 屈曲弾性率が20MPa以下である。
【請求項7】
成分B)が金属の酸化物、水酸化物、水和された酸化物、塩または水和された塩およびこれらの混合物から選択される、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
成分B)がCaO、TiO
2、Sb
2O
3、ZnO、Fe
2O
3、CaCO
3、BaSO
4、Mg(OH)
2、A1(OH)
3、A1
2O
3.3H
2O、炭酸マグネシウム水和物、MgCO
3、マグネシウムカルシウム炭酸塩水和物、マグネシウムカルシウム炭酸塩およびこれらの混合物から選択される、請求項7に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項9】
成分b)が、
1) プロピレン単独重合体;
2) エチレンおよびC
4-C
10アルファ-オレフィンから選択される1つ以上の共単量体とプロピレンとの共重合体であって、共単量体含量が、前記共重合体の総重量に対して0.05重量%~20重量%の範囲である、共重合体、または前記共重合体とプロピレン単独重合体1)との混合物;
3) i)プロピレン単独重合体1)および/または共重合体2)、ならびにエチレンとプロピレンおよび/またはC
4-C
10アルファ-オレフィンとの共重合体を含むエラストマー分画ii)を含み、選択的に微量のジエンを含有する異相ポリオレフィン組成物から選択される、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項10】
a)+b)+c)の総重量を基準に、0.1重量%~10重量%の量でカップリング剤c)をさらに含む、請求項1および2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項11】
前記カップリング剤が、極性基を含有するアルファ-オレフィンの単独重合体および共重合体から選択される、請求項10に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のポリオレフィン組成物を含む成形品。
【請求項13】
導電性ワイヤおよびケーブルの絶縁層の形態である、請求項12に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多量の無機充填剤を含み、良好な引張特性と共に低い曲弾性率およびショア硬度の値を有するポリオレフィン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低い曲弾性率およびショア硬度値を有する熱可塑性ポリオレフィン組成物は、化学的慣性、機械的特性および無毒性など、ポリオレフィンを代表する価値のある特性により、多くの応用分野で使用されてきた。
【0003】
特に、柔軟性重合体物質は、押出コーティング、電線およびケーブル被覆だけでなく、包装および医療分野で広く使用される。
【0004】
アルミニウムおよび水酸化マグネシウムまたは炭酸カルシウムなどの鉱物充填剤は、いくつかの理由で上記ポリオレフィン組成物に高濃度レベルで一般的に使用されて、例えば、自己消火特性を付与するか、または適用関連物理的特性、例えば、ソフトタッチおよび印刷適性を改善する。
【0005】
これらの鉱物充填剤の主な短所は、特に難燃剤として使用される場合、必要なローディング(loading)が非常に高いことである。要求される難燃性の等級に応じて、ポリオレフィンで適切な有効性を得るためには、最大65~70重量%の充填剤を必要とする場合がある。一般的に、これは、そのような高いレベルの充填剤を添加して分散させるのに困難であると共に、重合体の加工、および化合物の物理的かつ機械的特性に高度の悪影響を及ぼし、すなわち、より低い破断点伸び率、より低い引張強度およびより高い脆性を提供する。
【0006】
WO2012152803によれば、そのような問題は、異相組成物でもあり得る、15~40重量%の異相ポリオレフィン組成物と、40~80重量%の無機充填剤および5~25重量%のエラストマー重合体とを組み合わせることによって解決される。
【0007】
例では、25℃でエラストマー成分のキシレンに可溶性である分画の異なる固有粘度を有する少なくとも3つの異相成分で構成される異相組成物が、約37重量%以上の量で使用される。
【0008】
特定のブテン-1共重合体と多量の鉱物充填剤とを、その2つの間の定義された重量比で組み合わせることにより、異相組成物の添加(これは、製造のために多段階の重合プロセスを必要とし、最終組成物の重合体部分に複雑性を付加し、その結果、リサイクル問題を引き起こす)を必要とせず、優秀で特異な特性セットを有する柔軟性ポリオレフィン組成物を得ることが可能であるということが、ここで明らかになっている。
【0009】
異相組成物が使用される場合、これは少ない量で添加され、前述の3つの成分を有する必要はない。
【0010】
さらに、本発明のポリオレフィン組成物は、ブテン-1共重合体の代わりに、エチレンまたはプロピレンプラストマーが使用される組成物と比較して改善された加工性およびより良好な機械的特性を達成する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、
a) 85重量%~98重量%、好ましくは86重量%~98重量%の組成物であって、
A) 最大18モル%の共重合エチレン含量を有し、2回目の加熱スキャンにおいてDSCで検出可能な溶融ピークのないエチレンとブテン-1との共重合体;および
B) 好ましくは難燃性無機充填剤から選択される無機充填剤を含み;
B)/A)重量比が、0.3~4または0.5~4、好ましくは0.3~3または0.5~3、より好ましくは0.3~2.8または0.5~2.8、特に0.3~2.2または0.5~2.2である、組成物;
b) 2重量%~15重量%、好ましくは2重量%~14重量%の、A)とは異なる追加のポリオレフィンを含み;
a)およびb)の量は、a)+b)の総重量を指し、DSCの2回目の加熱スキャンは、1分当り10℃の加熱速度で行われる、ポリオレフィン組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、本発明のポリオレフィン組成物は、組成物の総重量に対して20重量%以上、より好ましくは27重量%以上のA)を含有する。
【0013】
A)の最も好ましい量は、ポリオレフィン組成物の総重量に対して20重量%~45重量%、または27重量%~45重量%である。
【0014】
B)の最も好ましい量は、ポリオレフィン組成物の総重量に対して40重量%~65重量%である。
【0015】
本発明のポリオレフィン組成物についてのMIEの好ましい値は、0.05g/10分以上、または0.25g/10分以上、特に0.05~5g/10分、または0.25~5g/10分、または0.5~5g/10分であり、MIEは、ISO 1133-2:2011に従って決定される、2.16kgの荷重下の190℃での溶融フロー指数である。
【0016】
上記組成物についての屈曲弾性率の好ましい値は、成形後10日目に標準ISO 178に従って測定する場合、600MPa以下、より好ましくは400MPa以下であり、下限は、好ましくは80MPaである。
【0017】
上記組成物についての好ましいショアD値は、52以下、特に52~30である。
【0018】
ISO 527に従って測定された、上記組成物についての破断点引張伸び率は、好ましくは135%以上、より好ましくは200%以上であり、上限は、好ましくは700%である。
【0019】
ブテン-1共重合体成分A)は、溶融および冷却直後、2回目の加熱スキャンにおいて溶融ピークを示さない。しかしながら、それは結晶化可能であり、すなわち、溶融されてから約10日後に、重合体は、測定可能な融点と、示差走査熱量計(DSC)によって測定された溶融エンタルピーとを示す。言い換えれば、ブテン-1共重合体は、本出願の実験セクションに記載のDSC方法に従って、サンプルの熱履歴を相殺した後に測定された、ポリブテン-1結晶度(TMII)DSCに起因する溶融温度を示さない。
【0020】
さらに、ブテン-1共重合体成分A)は、以下の追加の特徴のうち少なくとも1つを有することができる:
‐ MIEが0.5~3g/10分である;
‐ 共重合エチレン含量の下限が12モル%である;
‐ ショアA値が80以下、より好ましくは65以下、特に80~40または65~40である;
‐ ショアD値が20以下、特に20~5である;
‐ Mw/Mn値が3以下、特に3~1.5であり、ここで、Mwは、重量平均モル質量であり、Mnは、数平均モル質量であり、両方ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
‐ アイソタクチックペンタッド形態のブテン-1単位の百分率(mmmm%)が80%超、好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上であり、上限は99%である;
‐ ISO 527に従って測定された破断点引張応力が3MPa~20MPa、より好ましくは4MPa~13MPaである;
‐ ISO 527に従って測定された破断点引張伸び率が550%~1000%;より好ましくは700%~1000%である;
‐ 固有粘度(I.V.)が1dl/g以上;より好ましくは1.5dl/g以上であり、上限は3dl/gである;
‐ X線によって測定された結晶度が30%未満、より好ましくは20%未満である;
‐ 密度が0.895g/cm3以下、より好ましくは0.875g/cm3以下であり;下限は0.86g/cm3である;そして
‐ 0℃でキシレン不溶性分画の含量が15重量%未満であり、下限は0%である;
‐ 屈曲弾性率が20MPa以下であり、下限は好ましくは5MPaである。
【0021】
ブテン-1共重合体成分A)は、以下を接触させることによって得られるメタロセン触媒系の存在下で単量体(複数可)を重合することによって得ることができる:
‐ 立体剛性(stereorigid)メタロセン化合物;
‐ アルモキサン、またはアルキルメタロセンカチオンを形成することができる化合物;および、選択的に、
‐ 有機アルミニウム化合物。
【0022】
好ましくは、立体剛性メタロセン化合物は、以下の化学式(I)に属する:
【化1】
ここで:
Mは、元素周期表の4族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;好ましくは、Mは、ジルコニウムであり;
Xは、互いに等しいかまたは異なり、水素原子、ハロゲン原子、R、OR、OR’O、OSO
2CF
3、OCOR、SR、NR
2またはPR
2基であり、ここで、Rは、選択的に元素周期表の13~17族に属するヘテロ原子を含有する、線状または分岐状、飽和または不飽和C
1-C
20-アルキル、C
3-C
20-シクロアルキル、C
6-C
20-アリール、C
7-C
20-アルキルアリールまたはC
7-C
20-アリールアルキルラジカルであり;R’は、C
1-C
20-アルキリデン、C
6-C
20-アリーリデン、C
7-C
20-アルキルアリーリデン、またはC
7-C
20-アリールアルキリデンラジカルであり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、OR’OまたはR基であり;より好ましくは、Xは、塩素またはメチルラジカルであり;
R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9は、互いに等しいかまたは異なり、水素原子、または選択的に元素周期表の13~17族に属するヘテロ原子を含有する、線状または分岐状、飽和または不飽和C
1-C
20-アルキル、C
3-C
20-シクロアルキル、C
6-C
20-アリール、C
7-C
20-アルキルアリールまたはC
7-C
20-アリールアルキルラジカルであるか;またはR
5およびR
6、なたびに/またはR
8およびR
9は、選択的に飽和または不飽和5または6員環を形成することができ、上記環は、置換基としてC
1-C
20-アルキルラジカルを有することができ;ただし、R
6またはR
7のうち少なくとも1つは、選択的に元素周期表の13~17族に属するヘテロ原子を含有する、線状または分岐状、飽和または不飽和C
1-C
20-アルキルラジカル;好ましくはC
1-C
10-アルキルラジカルであり;
R
3およびR
4は、互いに等しいかまたは異なり、選択的に元素周期表の13~17族に属するヘテロ原子を含有する、線状または分岐状、飽和または不飽和C
1-C
20-アルキルラジカルであり;好ましくは、互いに等しいかまたは異なるR
3およびR
4は、C
1-C
10-アルキルラジカルであり;より好ましくは、R
3はメチルまたはエチルラジカルであり;R
4は、メチル、エチルまたはイソプロピルラジカルである。
【0023】
好ましくは、化学式(I)の化合物は、以下の一般式(Ia)を有する:
【化2】
ここで:
M、X、R
1、R
2、R
5、R
6、R
8およびR
9は、前述の通りであり;
R
3は、選択的に元素周期表の13~17族に属するヘテロ原子を含有する、線状または分岐状、飽和または不飽和C
1-C
20-アルキルラジカルであり;好ましくは、R
3は、C
1-C
10-アルキルラジカルであり;より好ましくは、R
3は、メチルまたはエチルラジカルである。
【0024】
メタロセン化合物の具体例は、ジメチルシランジイル{(1-(2,4,7-トリメチルインデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシランジイル{(1-(2,4,7-トリメチルインデニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b’]-ジチオフェン)}ジルコニウムジメチルである。
【0025】
アルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ-(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ-(2,3-ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)およびテトラ-(2,3,3-トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
【0026】
アルキルメタロセンカチオンを形成することができる化合物の例は、化学式D+E-の化合物であり、ここで、D+は、ブレンステッド酸であり、プロトンを供与することができ、化学式(I)のメタロセンの置換基Xと不可逆的に反応することができ、E-は、2つの化合物の反応から由来した活性触媒種を安定化させることができ、オレフィン系単量体によって除去することができるほど十分に不安定な相溶性アニオンである。好ましくは、アニオンE-は、1つ以上のホウ素原子を含む。
【0027】
有機-アルミニウム化合物の例は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、トリス(2,4,4-トリメチル-ペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3-ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)およびトリス(2,3,3-トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)である。
【0028】
上記触媒系およびそのような触媒系を採用する重合プロセスの例は、WO2004099269およびWO2009000637で見出すことができる。
【0029】
一般的に、ブテン-1共重合体成分A)の製造のための重合プロセスは、公知の技法、例えば、希釈剤として液体不活性炭化水素を使用するスラリー重合、または、例えば、反応媒体として液体ブテン-1を使用する溶液重合によって行なうことができる。さらに、1つ以上の流動床または機械的撹拌反応器で作動する重合プロセスを、気相で行なうことも可能であり得る。反応媒体としての液体ブテン-1で行われる重合が好ましい。
【0030】
一般的な法則として、重合温度は、一般的に、-100℃~200℃、好ましくは20℃~120℃、より好ましくは40℃~90℃、最も好ましくは50℃~80℃である。
【0031】
重合圧力は、一般的に、0.5bar~100barに含まれる。
重合は、分子量調節剤の濃度、共単量体濃度、温度、圧力など、同じまたは異なる反応条件下で作動し得る1つ以上の反応器で行なうことができる。
【0032】
自己消火特性が要求される応用分野では、好ましい難燃性無機充填剤B)は、例えば、次のような金属、好ましくはCa、AlまたはMgの水酸化物、水和された酸化物、塩または水和された塩である:水酸化マグネシウムMg(OH)2、水酸化アルミニウムA1(OH)3、アルミナ三水和物A12O3.3H2O、炭酸マグネシウム水和物、炭酸マグネシウムMgCO3、マグネシウムカルシウム炭酸塩水和物、マグネシウムカルシウム炭酸塩、またはこれらの混合物など。
【0033】
Mg(OH)2、A1(OH)3、A12O3.3H2Oおよびこれらの混合物が特に好ましい。
【0034】
金属水酸化物、特にマグネシウムおよび水酸化アルミニウムは、好ましくは0.1~100μm、好ましくは0.5~10μmの範囲であり得る大きさを有する粒子の形態で使用される。
【0035】
特に好ましい1つの無機充填剤は、比表面積が1~20m2/g、好ましくは3~10m2/gであり、平均粒子直径が0.5~15μm、好ましくは0.6~1μmの範囲の、沈殿した水酸化マグネシウムである。
【0036】
沈殿した水酸化マグネシウムは、一般的に、Fe、Mn、Ca、Si、Vなどの他の金属の塩、酸化物および/または水酸化物から由来する、極少量の不純物を含有する。このような不純物の量および性質は、出発物質の起源によって異なる。純度は、一般的に90~99重量%である。
【0037】
充填剤は、コーティングされた粒子の形態で有利に使用することができる。好ましく使用されるコーティング物質は、8~24個の炭素原子を含有する飽和または不飽和脂肪酸、およびこれらの金属塩、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸およびマグネシウムまたはステアリン酸亜鉛もしくはオレイン酸亜鉛である。
【0038】
無機酸化物または塩の他の例は、好ましくはCaO、TiO2、Sb2O3、ZnO、Fe2O3、CaCO3、BaSO4およびこれらの混合物である。
【0039】
ポリオレフィンb)は、好ましくは、以下の重合体および重合体組成物から選択される:
1) プロピレン単独重合体;
2) エチレンおよびC4-C10アルファ-オレフィンから選択される1つ以上の共単量体とプロピレンとの共重合体であって、共単量体含量が、共重合体の総重量に対して0.05重量%~20重量%の範囲である、共重合体、または上記共重合体とプロピレン単独重合体1)との混合物;
3) i)プロピレン単独重合体1)および/または共重合体2)、ならびにエチレンとプロピレンおよび/またはC4-C10アルファ-オレフィンとの共重合体を含むエラストマー分画ii)を含み、選択的に微量のジエン、例えば、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、エチリデン-1-ノルボルネンを含有する異相ポリオレフィン組成物。
【0040】
上記C4-C10アルファ-オレフィンは、化学式CH2=CHR(ここで、Rは、2~8個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキルラジカル、またはアリールラジカルである)を有するオレフィンから選択される。
【0041】
C4-C10アルファ-オレフィンの具体例は、ブテン-1、ペンテン-1,4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1である。
【0042】
好ましい共単量体は、エチレン、ブテン-1およびヘキセン-1である。
【0043】
プロピレン単独重合体1)は、好ましくは、特にアイソタクチック類型の立体規則性を有する結晶質単独重合体である。
【0044】
これらは、好ましくはプロピレン単独重合体の総重量を基準に、10重量%以下、特に10重量%~0.5重量%または10重量%~1重量%の25℃でキシレンに可溶性である分画の含量を有する。
【0045】
プロピレン共重合体2)は、好ましくは、特にアイソタクチック類型の立体規則性を有する結晶質ランダム共重合体である。
【0046】
これらは、好ましくはプロピレン共重合体の総重量を基準に、15重量%以下、特に15重量%~5重量%の25℃でキシレンに可溶性である分画の含量を有する。
【0047】
プロピレン単独重合体1)およびプロピレン共重合体2)の両方とも、好ましくは0.5~100g/10分、より好ましくは1~50g/10分のMIL値を有し、ここで、MILは、ISO 1133-2:2011に従って決定される、2.16kgの荷重下の230℃での溶融フロー指数である。
【0048】
上記プロピレン単独重合体1)およびプロピレン共重合体2)の両方とも、当業界に公知されており、市販されている。
【0049】
市販されているプロピレンの単独重合体および共重合体の例は、LyondellBasell Industriesによって商標名Moplenで販売されている重合体製品である。
【0050】
これらは、重合プロセスでチーグラーナッタ触媒またはメタロセン-ベース触媒系を使用して製造することができる。
【0051】
通常、チーグラーナッタ触媒は、元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物と、元素周期表の4~10族の遷移金属化合物との反応生成物を含む(新しい表記法)。特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、CrおよびHfの化合物の中で選択することができ、好ましくはMgCl2に担持される。
【0052】
特に好ましい触媒は、元素周期表の1、2または13族の上記有機金属化合物と、MgCl2に担持された電子供与体化合物およびTi化合物を含む固体触媒成分との反応生成物を含む。
【0053】
好ましい有機金属化合物は、アルミニウムアルキル化合物である。
【0054】
したがって、好ましいチーグラーナッタ触媒は、次のような反応生成物を含むものである:
1) Ti化合物、好ましくはハロゲン化されたTi化合物、特にTiCl4およびMgCl2に担持された電子供与体(内部電子供与体)を含む固体触媒成分;
2) アルミニウムアルキル化合物(助触媒);および、選択的に、
3) 電子供与体化合物(外部電子供与体)。
【0055】
固体触媒成分(1)は、電子供与体としてエーテルと、ケトンと、ラクトンと、N、Pおよび/またはS原子を含有する化合物と、モノ-およびジカルボン酸エステルとの中で一般的に選択される化合物を含有する。
【0056】
上述の特徴を有する触媒は、特許文献によく知られており;特に有利なのは、米国特許第4,399,054号およびヨーロッパ特許第45977号に記載されている触媒である。
【0057】
上記電子供与体化合物の中で特に適しているのは、フタル酸エステル、好ましくはフタル酸ジイソブチル、およびコハク酸エステルである。
【0058】
特に適した他の電子供与体は、公開されたヨーロッパ特許出願EP-A-361 493および728769に例示されているような1,3-ジエーテルである。
【0059】
助触媒(2)として、好ましくは、Al-トリエチル、Al-トリイソブチルおよびAl-トリ-n-ブチルなどのトリアルキルアルミニウム化合物を使用する。
【0060】
外部電子供与体として使用され得る電子供与体化合物(3)(Al-アルキル化合物に添加される)は、芳香族酸エステル(例えば、アルキリクベンゾエート(alkylic benzoate))、ヘテロ環化合物(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンおよび2,6-ジイソプロピルピペリジン)、特に少なくとも1つのSi-OR結合を含有するシリコーン化合物(ここで、Rは、炭化水素ラジカルである)を含む。
【0061】
上記シリコーン化合物の例は、化学式R1
aR2
bSi(OR3)cの化合物であり、ここで、aおよびbは、0~2の整数であり、cは、1~3の整数であり、和(a+b+c)は、4であり;R1、R2およびR3は、選択的にヘテロ原子を含有する1~18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。
【0062】
シリコーン化合物の有用な例は、(tert-ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH3)2、(フェニル)2Si(OCH3)2および(シクロペンチル)2Si(OCH3)2である。
【0063】
上記1,3-ジエーテルはまた、外部供与体として使用するのに適している。内部供与体が上記1,3-ジエーテルのうち1つである場合、外部供与体は省略され得る。
【0064】
触媒は、少量のオレフィンと予備接触(予備重合)され、炭化水素溶媒で触媒を懸濁状態に維持し、室温~60℃の温度で重合され、触媒重量の0.5~3倍の量の重合体を生産することができる。
【0065】
作業は、液体単量体でも起こり得、この場合、触媒重量の最大1000倍に達する量の重合体を生産することができる。
【0066】
連続式またはバッチ式であり得る重合プロセスは、公知の技法に従って液相で作動する上記触媒の存在下で、不活性希釈剤の存在有無にかかわらず、または気相で、または混合液体-気体技法によって行われる。
【0067】
重合反応時間、圧力および温度は重要ではないが、温度が20~100℃であれば最も良い。圧力は、大気圧またはそれ以上にすることができる。
【0068】
上記MIL値をもたらす、分子量の調節は、公知の調節剤、特に水素を使用して行われる。
【0069】
メタロセン-ベース触媒系の好ましい例は、US20060020096およびWO98040419に開示されている。
【0070】
メタロセン-ベース触媒系とプロピレンの単独重合体または共重合体を製造するための重合条件は、一般的にチーグラーナッタ触媒と共に使用されるものと異なる必要はない。
【0071】
異相ポリオレフィン組成物3)の好ましい例は、次を含む組成物である:
i) 以前に定義されたように、プロピレン単独重合体1)もしくはプロピレンの共重合体2)、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上のプロピレン重合体、および
ii) エチレンとプロピレンおよび/またはC4-C10アルファ-オレフィンならびに選択的に微量のジエン(好ましくはii)の重量に対して1~10重量%)との共重合体または共重合体の組成物。(上記共重合体または組成物は、ii)の重量に対して15重量%以上、好ましくは15重量%~90重量%、特に25~85重量%のエチレンを含有する)。
【0072】
上記異相ポリオレフィン組成物の特に好ましい例は、i)+ii)の総重量を基準に、40~90重量%の成分i)および10~60重量%の成分ii)を含有するものである。
【0073】
異相組成物は、好ましくは0.1~50g/10分、より好ましくは0.5~20g/10分の範囲のMILを有する。
【0074】
異相組成物の破断点伸び率は、好ましくは100%~1000%である。
【0075】
異相組成物の曲弾性率は、好ましくは500~1500MPa、より好ましくは700~1500MPaである。
【0076】
共重合体または共重合体の組成物(ii)は、(ii)の総重量を基準に、好ましくは25℃でキシレン中の溶解度が40重量%~100重量%、より好ましくは50重量%~100重量%である。
【0077】
上記異相組成物は、当業界に公知されており、市販されている。
【0078】
市販されている異相組成物の例は、LyondellBasell Industriesによって商標名Moplenで販売されている重合体製品である。
【0079】
これらは、溶融状態で、すなわち、これらの軟化点または融点よりも高い温度で成分(i)と(ii)とをブレンドすることによって、またはより好ましくは、前述の通り、高度に立体特異性のチーグラーナッタ触媒の存在下で逐次重合によって製造することができる。
【0080】
使用され得る他の触媒は、USP 5,324,800およびEP-A-0 129 368に記載のメタロセンタイプの触媒;特に有利なのは、例えば、USP 5,145,819およびEP-A-0 485 823に記載の架橋されたビス-インデニルメタロセンである。これらのメタロセン触媒は、特に成分(ii)を生産するのに使用され得る。異相組成物を生産するための上述の逐次重合プロセスは、少なくとも2つの段階を含み、1つ以上の段階(複数可)において、プロピレンは、選択的に上記C4-C10アルファ-オレフィン共単量体(複数可)の存在下で重合され、成分(i)を形成し、1つ以上の追加の段階(複数可)において、エチレンとプロピレンおよび/またはC4-C10アルファ-オレフィン、ならびに選択的にジエンとの混合物が重合されて成分(ii)を形成する。
【0081】
重合プロセスは、液体、気体または液/気相で行われる。様々な重合段階における反応温度は、等しくても異なってもよく、一般的に成分(i)の生産の場合、40~90℃、好ましくは50~80℃、および成分(ii)の生産の場合、40~60℃の範囲である。逐次重合プロセスの例は、ヨーロッパ特許出願EP-A-472946およびEP-A-400333およびWO03/011962に記載されている。
【0082】
本発明のポリオレフィン組成物には、無機充填剤と重合体成分との間の相溶性を向上させるためにカップリング剤c)が添加され得る。
【0083】
上記カップリング剤は、飽和シラン化合物または少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有するシラン化合物、エチレン性不飽和を含有するエポキシド、有機チタネート、少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有するモノ-またはジカルボン酸、またはこれらの誘導体、例えば、無水物またはエステルで構成され得るか、またはこれを含み得る。
【0084】
好ましいカップリング剤c)は、極性基、特にカルボキシル、ヒドロキシルまたはエステル基を含有するアルファ-オレフィンの単独重合体および共重合体(例えば、ブテン-1単独重合体またはブテン-1とアルファ-オレフィンとの共重合体、エチレン単独重合体またはエチレンとアルファ-オレフィンとの共重合体)である。
【0085】
上記カップリング剤は、少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有するモノ-またはジカルボン酸、またはその誘導体(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらから由来する無水物もしくはエステル、またはこれらの混合物)をアルファ-オレフィンの上記単独重合体および共重合体にグラフトすることによって得ることができる。
【0086】
無水マレイン酸でグラフトされたアルファ-オレフィンの単独重合体および共重合体が特に好ましい。
【0087】
グラフト化は、ラジカル反応(例えば、EP-A-530 940に記述されている)によって得ることができる。
【0088】
カップリング剤c)の量は、好ましくはa)+b)+c)の総重量を基準に、0.1重量%~10重量%である。
【0089】
本発明のポリオレフィン組成物は、当業界に公知の方法に従って重合体成分、充填剤および他の選択的成分を混合して製造することができる。例えば、成分は、相互浸透回転子を有するか、あるいは接線回転子を有する内部ミキサー(例えば、バンバリミキサー)で、または代替的に連続ミキサー(例えば、Bussミキサー)または共回転もしくは逆回転二軸押出機で混合され得る。
【0090】
一般的に適用される混合または押出温度は、160℃~220℃である。
【0091】
自己消火特性が要求される応用分野では、本発明のポリオレフィン組成物は、例えば、産業用ケーブル、補強および非補強のルーフィング膜ならびに接着テープのための内部充填材として電線およびケーブル被覆などの用途に使用され得る。
【0092】
難燃性が要求されない場合、本発明のポリオレフィン組成物は、補強材(例えば、広報バナー、ライナー、ターポリン、スポーツウェアおよび安全服)と結合されるかまたは結合されない、非難燃性の軟質膜に、そして合成皮革として有利に使用され得る。
【0093】
さらに、本発明のポリオレフィン組成物は、包装および押出コーティングに使用され得る。
【0094】
本発明のポリオレフィン組成物には、当業界で一般的に使用される通常の添加剤を添加することができる。
【0095】
様々な応用分野に必要な特性に応じて、本発明のポリオレフィン組成物は、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエン三元重合体(EPDM)、エチレンとC4-CI2アルファ-オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン/オクテン-1共重合体、例えば、エンゲージ(Engage)という名称で商品化されたもの)およびこれらの混合物などのエラストマー重合体と組み合わせて使用することができる。
【0096】
オレフィン重合体に一般的に使用される加工助剤、滑剤、核剤、伸長用油、有機および無機顔料、酸化防止剤およびUVプロテクターなどの通常の添加剤が添加され得る。
【0097】
通常、重合体物質に添加される加工助剤は、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、パラフィンワックス、合成油およびシリコーンゴムである。
【0098】
適した酸化防止剤の例は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよび1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジンである。
【0099】
使用され得る他の充填剤は、例えば、ガラス粒子、ガラス繊維、焼成カオリンおよびタルクである。
実施例
【0100】
本明細書に提供されたような様々な実施形態、組成物および方法の実施および利点は、以下の実施例において開示される。これらの実施例は単に例示に過ぎず、いかなる方式であれ本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0101】
次の分析方法を使用して重合体組成物を特徴付ける。
【0102】
熱的特性(溶融温度およびエンタルピー)
【0103】
Perkin Elmer DSC-7機器で示差走査熱量計(DSC)によって決定する。
ブテン-1共重合体A)の溶融温度(TmII)は、以下の方法に従って決定した:
‐ TmII(2回目の加熱スキャンにおいて測定する):秤量されたサンプル(5~10mg)をアルミニウム製鍋に密封し、及び10℃/分に該当する走査速度で200℃に加熱した。サンプルを5分間200℃で維持してすべての結晶子を完全に溶融させることにより、サンプルの熱履歴を取り消した。続いて、10℃/分に該当する走査速度で-20℃まで冷却した後、ピーク温度を結晶化温度(Tc)と見なした。-20℃で5分間定置した後、サンプルを2回目用に10℃/分に該当する走査速度で200℃に加熱した。この2回目の加熱実行において、ピーク温度(存在する場合)は、ポリブテン-1(PB)結晶形II(TmII)の溶融温度と、そして面積は、全体溶融エンタルピー(ΔHfII)と見なす。
本発明のポリオレフィン組成物のブテン-1共重合体成分A)は、TmIIピークを有しない。
【0104】
MIE
【0105】
190℃で2.16kgの荷重を用いて標準ISO 1133-2:2011に従って決定する。
【0106】
MIL
【0107】
230℃で2.16kgの荷重を用いて標準ISO 1133-2:2011に従って決定する。
【0108】
屈曲弾性率
【0109】
標準ISO 178:2019に従って成形後10日目に測定する。
【0110】
引張弾性率(MET-DMTA)
【0111】
ISO 6721-4:2019に従って1mm厚さの圧縮成形プラークのDMTA分析によって23℃で決定する。
【0112】
ショアAおよびD
【0113】
標準ISO 868:2003に従って成形後10日目に測定する。
【0114】
引張応力および破断点伸び率
【0115】
標準ISO 527-1:2019に従って、圧縮成形プラーク上で成形後10日目に測定する。
【0116】
固有粘度
【0117】
標準ASTM D 2857-16に従って135℃でテトラヒドロナフタレンで決定する。
【0118】
密度
【0119】
標準ISO 1183-1:2019に従って23℃で決定する。
【0120】
共単量体含量
【0121】
IR分光法またはNMRによって決定する。
【0122】
特にブテン-1共重合体の場合、共重合体の13C-NMRスペクトルから共単量体の量を計算する。測定は、120℃で二重重水素化(dideuterated)1,1,2,2-テトラクロロ-エタン中の重合体溶液(8~12重量%)に対して行なった。13C NMRスペクトルを120℃でフーリエ変換モードで150.91MHzで作動するBruker AV-600分光計上で、1H-13C結合を除去するために90°パルス、パルスとCPD(WALTZ16)と間の15秒遅延を用いて取得した。約1500個のトランジェントを、60ppm(0~60ppm)のスペクトル窓を用いて32Kデータポイントに保存した。
【0123】
共重合体組成物
【0124】
ダイアド(diad)分布は、次の関係式を使用して
13C NMRスペクトルから計算する:
● PP=100 I
1/Σ
● PB=100 I
2/Σ
● BB=100(I
3-I
19)/Σ
● PE=100(I
5+I
6)/Σ
● BE=100(I
9+I
10)/Σ
● EE=100(0.5(I
15+I
6+I
10)+0.25(I
14))/Σ
● ここで、Σ=I
1+I
2+I
3-I
19+I
5+I
6+I
9+I
10+0.5(I
15+I
6+I
10)+0.25(I
14)である。
● モル含量は、次の関係式を使用してダイアドから得る:
● P(m%)=PP+0.5(PE+PB)
● B(m%)=BB+0.5(BE+PB)
● E(m%)=EE+0.5(PE+BE)
I
1、I
2、I
3、I
5、I
6、I
9、I
6、I
10、I
14、I
15、I
19は、
13C NMRスペクトルにおけるピークの積分である(29.9ppmにおけるEEEシーケンスのピークを基準とする)。これらのピークの割り当ては、文献[J.C. Randali、Macromol. Chem Phys.、C29、201 (1989)、M. Kakugo、Y. Naito、K. Mizunuma and T. Miyatake、Macromolecules、15、1150、(1982)、およびH.N. Cheng、Journal of Polymer Science、Polymer Physics Edition、21、57 (1983)]に従って行われる。これらは、表Aに収集されている(文献[C.J. Carman、R.A. Harrington and C.E. Wilkes、Macromolecules、10、536 (1977)]によって命名される)。
【表1】
【0125】
プロピレン共重合体の場合、共単量体含量は、フーリエ変換赤外線分光計(FTIR)を用いて、空気バックグラウンドに対するサンプルのIRスペクトルを収集することで、赤外線分光法によって決定する。機器データ取得パラメータは、以下の通りである:
- パージ時間:最低30秒;
- 収集時間:最低3分;
- アポダイゼーション:Happ-Genzel;
- 解像度:2cm-1。
【0126】
サンプル製造
【0127】
水圧プレスを使用して、2つのアルミホイルの間に約g1のサンプルをプレスすることによって、厚いシートを得る。均質性に問題がある場合、最低2回のプレス作業が推奨される。このシートから小さな部分を切り取ってフィルムを成形する。推奨フィルム厚さの範囲は、0.02~0.05cm(8~20mil)である。
【0128】
プレス温度は、180±10℃(356゜F)であり、約10kg/cm2(142.2PSI)で約1分間加圧する。その後、圧力を解除し、サンプルをプレスから取り外し、室温で冷却する。
【0129】
重合体の圧縮フィルムスペクトルを吸光度対波数(cm-1)で記録する。次の測定値を用いてエチレンおよびブテン-1含量を計算する:
- フィルム厚さの分光学的正規化に使用される4482~3950cm-1の組み合わせ吸収バンドの面積(At)。
- エチレンが存在する場合、アイソタクチック非添加ポリプロピレンスペクトルと、以後ブテン-1が存在する場合、800~690cm-1の範囲内のブテン-1-プロピレンランダム共重合体の基準スペクトルとの、2回の適切な連続分光減算(spectroscopic subtraction)後、750~700cm-1の吸収バンドの面積(AC2)。
- ブテン-1が存在する場合、アイソタクチック非添加ポリプロピレンスペクトルと、以後エチレンが存在する場合、800~690cm-1の範囲内のエチレン-プロピレンランダム共重合体の基準スペクトルとの、2回の適切な連続分光減算後、769cm-1(最大値)での吸収バンドの高さ(DC4)。
エチレンおよびブテン-1含量を計算するためには、エチレンおよびブテン-1の公知の量のサンプルを使用して得られたエチレンおよびブテン-1にの較正直線が必要である。
【0130】
GPCによるMw/Mn決定
【0131】
平均MnおよびMw、およびこれらから由来するMw/Mnの決定を、4つのPLgel Olexis混合-ゲル(Polymer Laboratories)のカラムセットと、IR4赤外線検出器(PolymerChar)とを備えたWaters GPCV 2000装置を使用して行なった。カラムの寸法は、300×7.5mmであり、粒径は、13μmであった。使用された移動相は、1-2-4-トリクロロベンゼン(TCB)であり、その流速は、1.0ml/分で維持した。すべての測定は、150℃で行なった。溶液濃度は、TCBで0.1g/dlであり、分解を防止するために0.1g/lの2,6-ジテルブチル-p-クレゾールを添加した。GPC計算のためにPolymer Laboratoriesから供給された10個のポリスチレン(PS)標準サンプル(580~8500000の範囲のピーク分子量)を使用して汎用較正曲線を得た。三次多項式フィットを使用して、実験データを補間し、関連較正曲線を得た。データ取得および処理は、Empower(Waters)を使用して行なった。マーク-フウィンク(Mark-Houwink)関係を使用して、分子量分布および関連平均分子量を決定した:K値は、PSおよびPBそれぞれの場合、KPS=1.21×10-4dl/gおよびKPB=1.78×10-4dl/gである一方、マーク-フウィンク指数は、PSの場合はα=0.706、およびPBの場合はα=0.725を使用した。
【0132】
ブテン-1/エチレン共重合体の場合、データ評価に関する限り、分子量範囲全体で組成が一定であると仮定し、マーク-フウィンク関係のK値は、以下に報告されている線形組み合わせを使用して計算する:
【数1】
ここで、K
EBは、共重合体の定数であり、K
PE(4.06×10
-4、dl/g)およびK
PB(1.78×10
-4dl/g)は、ポリエチレンおよびポリブテンの定数であり、x
Eおよびx
Bは、エチレンおよびブテン-1重量%含量である。マーク-フウィンク指数、α=0.725を、すべてのブテン-1/エチレン共重合体に、その組成に関係なく使用する。
【0133】
0℃でキシレンに可溶性および不溶性である分画(XS-0℃)
【0134】
2.5gの重合体サンプルを、135℃で撹拌下で250mlのキシレンに溶解させる。30分後、溶液を撹拌しながら100℃に冷却した後、水および氷浴に入れて0℃に冷却する。その後、溶液を、水および氷浴で1時間静置させる。沈殿物を濾過紙で濾過する。濾過中にフラスコ内部の温度をできるだけ0℃に近づけるために、フラスコを水および氷浴に置く。濾過終了後、濾過液の温度を25℃で保ち、メスフラスコを流水浴に約30分間浸した後、50mlずつ2つのアリコートに分ける。溶液アリコートを窒素流で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで80℃で真空下で乾燥させる。2つの残留物間の重量差は、3%未満でなければならず;そうでなければテストを繰り返さなければならない。それによって、残留物の平均重量から可溶性重合体(0℃でのキシレン可溶物=XS 0℃)の重量パーセントを計算する。0℃でo-キシレンの不溶性分画(0℃でのキシレン不溶物=XI%0℃)は、以下の通りである:
XI%0℃=100-XS%0℃。
【0135】
25℃でキシレンに可溶性および不溶性である分画(XS-25℃)
【0136】
2.5gの重合体を、135℃で撹拌下で250mlのキシレンに溶解させる。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却した後、30分間静置させる。沈殿物を濾過紙で濾過し、溶液を窒素流で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで80℃で真空下で乾燥させる。したがって、室温(25℃)で可溶性(キシレン可溶物-XS)および不溶性である重合体の重量パーセントを計算する。
【0137】
室温(25℃)でキシレンに不溶性である重合体の重量パーセントは、重合体のアイソタクチック指数と見なされる。この値は、実質的に、沸騰n-ヘプタンによって抽出して決定されたアイソタクチック指数に該当し、定義によれば、ポリプロピレン重合体のアイソタクチック指数を構成する。
【0138】
アイソタクチックペンタッド含量の決定
【0139】
50mgの各サンプルを、0.5mlのC2D2Cl4に溶解させた。
【0140】
13C NMRスペクトルをBruker DPX-400(100.61Mhz、90°パルス、パルス間12秒の遅延)で取得した。各スペクトルの約3000個のトランジェントを保存し;mmmmペンタッドピーク(27.73ppm)を基準として使用した。
【0141】
微細構造分析を文献(Asakura T.らによるMacromolecules 1991、24、2334-2340、およびChujo R.らによるPolymer、1994、35、339)に記述されているように行なった。
【0142】
ブテン-1共重合体に対するペンタッドタクティシティーの百分率値(mmmm%)は、分岐状メチレン炭素(BBBBBアイソタクチックシーケンスに割り当てられた約27.73ppm)のNMR領域内の関連ペンタッド信号(ピーク面積)から計算された立体規則性ペンタッド(アイソタクチックペンタッド)の百分率であり、共単量体によって同一の領域に属する立体不規則性ペンタッド間の重ね合わせと、当該信号とを適切に考慮する。
【0143】
X線結晶度の決定
【0144】
X線結晶度は、固定されたスリットを備えたCu-Kα1放射線を使用し、回折角2θ=5°と2θ=35°との間のスペクトルを6秒ごとに0.1°の間隔で収集して、X線回折粉末回折計で測定した。
【0145】
厚さ約1.5~2.5mm、および直径2.5~4.0cmのディスクの形態に圧縮成形された試験片の測定を行なった。この試験片を200℃±5℃の温度で、かなりの圧力を10分間加えることなく、圧縮成形プレスで得た後、約10kg/cm2の圧力を約数秒間加え、この最後の作業を3回繰り返す。
【0146】
回折パターンを使用して、全体のスペクトルの適切な線形基準線を定義し、スペクトルプロファイルと基準線との間のカウント/秒(sec)・2θで表される総面積(Ta)を計算することによって、結晶度に必要なすべての成分を導出した。その後、2相のモデルに従って、結晶質領域から非晶質領域を分離する適切な非晶質プロファイルを、全体スペクトルに沿って定義した。したがって、カウント/秒・2θで表される非晶質面積(Aa)は、非晶質プロファイルと基準線との間の面積として計算し;カウント/秒・2θで表される結晶質面積(Ca)は、Ca=Ta-Aaとして計算することが可能である。
その後、サンプルの結晶度を次の式によって計算した:
%Cr=100×Ca/Ta
【0147】
実施例1~6および比較例1
【0148】
実施例に使用された物質
PP: MILが約10g/10分であり、XS-25℃が2重量%であるプロピレンの単独重合体。
HECO: MILが0.8g/10分であり、曲弾性率が1075MPaであり、XS-25℃が18重量%である異相ポリオレフィン組成物であり、この組成物は以下で構成される:
i) 83重量%のプロピレン単独重合体;
ii) 40重量%のエチレンを含有する、17重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体。
エンゲージ(ENGAGE): Dowによって商標名ENGAGE 8150で販売されている、MILが0.5g/10分であるエチレン-オクテン共重合体プラストマー。
PB-1: WO2009000637に記述のプロセスに従って生産され、ブテン-1/エチレン共重合体およびプロピレン共重合体組成物(I)の総重量に対して7重量%の量で添加されたプロピレン共重合体組成物(I)とインライン(in-line)ブレンドされた、16モル%の共重合エチレンを含有するブテン-1/エチレン共重合体。
このようなプロピレン共重合体組成物(I)は、MFRLが5.5g/10分であり、総共重合エチレン含量が3重量%であり、総共重合ブテン-1含量が6重量%であり;XS-25℃が19重量%であり、Tmが133℃であり、以下の2つの成分で構成される:
I’) プロピレンとエチレンと(共重合体中の3.2重量%)の共重合体35重量%、および
I’’) プロピレンとエチレンと(共重合体中の3.2重量%)の共重合体、およびブテン-1(共重合体中の6重量%)65重量%;
ここで、I’)およびI’’)の量は、I’)+I’’)の総重量を基準とする。
共重合体組成物(I)は、ブテン-1/エチレン共重合体の熱的および機械的特性に有意な影響を及ぼさない。
実際、上述のPB-1のDSC分析(2回目のスキャン)では溶融ピークは検出されない。
表1にPB-1の主な特性を報告する。
MDH: Kyowa Chemical Industryによって商標名Kisuma 5Aで販売されている、0.7~1.1μmの平均粒径、97~99%の純度を有する水酸化マグネシウム。
C.製剤 BYKによって商標名SCONA TSPB 5003 GAで販売されているカップリング剤。これは、約1重量%の無水マレイン酸を含有する、無水マレイン酸でグラフトされたブテン-1単独重合体である。
安定化剤1: BASFによって商標名Irganox 1010で販売されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート。
安定化剤2: BASFによって商標名Irganox MD1024で販売されている2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジドを含有する金属不活化剤および一次(フェノール系)酸化防止剤。
【0149】
上記物質を、27mmのスクリュー直径および40L/Dのスクリュー長さ/直径比率を有する共回転二軸押出機Leistritz Micro 27で以下の条件下で溶融ブレンドする:
‐ 180~210℃の押出機バレル;
‐ 250rpmのスクリュー回転速度;
‐ 15kg/時間の生産速度。
【0150】
成分の量、およびこのようにして得られた最終組成物の特性は、表2に報告されている。
【表2】
【表3】