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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置及び蓄電池制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240701BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H02J7/04 A
H02J7/10 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022573858
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000356
(87)【国際公開番号】W WO2022149238
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 麻紗子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
(72)【発明者】
【氏名】井出 誠
(72)【発明者】
【氏名】門田 行生
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
(72)【発明者】
【氏名】炭田 義尚
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-167878(JP,A)
【文献】特開2018-38140(JP,A)
【文献】特開2005-86927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な蓄電池を備えた蓄電池システムの稼働条件を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記稼働条件に基づいて、当該稼働条件で前記蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における前記蓄電池の電池容量を第1予測値として算出する第1算出部と、
前記第1算出部で算出された前記第1予測値に基づき、前記蓄電池システムが前記蓄電池を充電する際の充電電圧を制御する制御部と、
を備える蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記稼働条件として、前記充電電圧と、前記蓄電池の入出力電流と、前記蓄電池の温度又は前記蓄電池の周辺温度とを取得する、請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記第1算出部で算出された前記第1予測値を前記稼働条件として取得する、請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、前記蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデルを用いて、前記稼働条件で前記蓄電池の稼働させた場合での前記第1予測値を算出する、請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
前記第1算出部で算出された前記第1予測値に基づいて、前記所定期間における前記蓄電池の電池容量が閾値以上か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部で閾値未満と判定された場合に、前記取得部が取得した前記稼働条件に含まれる前記充電電圧を変更して、前記第1算出部に前記第1予測値を再度算出させる第1変更部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1判定部で閾値以上と判定された場合に、前記第1予測値の算出に使用された前記充電電圧で、前記蓄電池の充電を前記蓄電池システムに行わせる、請求項2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
前記第1変更部は、前記第1判定部で閾値以上と判定されるまでの間、前記充電電圧の変更を繰り返し行う、請求項5に記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
前記第1判定部は、前記所定期間に含まれる特定の時点での前記蓄電池の電池容量が閾値以上か否かを判定する、請求項5又は6に記載の蓄電池制御装置。
【請求項8】
前記第1変更部は、前記充電電圧の変更回数が閾値を上回った場合、前記充電電圧の変更を抑制し、アラートを報知する、請求項6に記載の蓄電池制御装置。
【請求項9】
前記取得部が取得した前記稼働条件に基づいて、当該稼働条件で前記蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における前記蓄電池の出力可能な電力量を第2予測値として算出する第2算出部と、
前記第2算出部で算出された前記第2予測値に基づいて、前記所定期間における前記蓄電池の出力可能な電力量が閾値以上か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部で閾値未満と判定された場合に、前記取得部が取得した前記稼働条件に含まれる前記充電電圧を変更して、前記第2算出部に前記第2予測値を再度算出させる第2変更部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第2判定部で閾値以上と判定された場合に、前記第2予測値の算出に使用された前記充電電圧で、前記蓄電池の充電を前記蓄電池システムに行わせる、請求項2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項10】
前記第2変更部は、前記第2判定部で閾値以上と判定されるまでの間、前記充電電圧の変更を繰り返し行う、請求項9に記載の蓄電池制御装置。
【請求項11】
前記第2判定部は、前記所定期間に含まれる特定の時点での前記蓄電池の出力可能な電力量が閾値以上か否かを判定する、請求項9又は10に記載の蓄電池制御装置。
【請求項12】
前記第2変更部は、前記充電電圧の変更回数が閾値を上回った場合、前記充電電圧の変更を抑制し、アラートを報知する、請求項10に記載の蓄電池制御装置。
【請求項13】
前記蓄電池システムの充放電動作を検出する検出部と、
前記検出部で前記充放電動作が検出されると、当該検出時の前記蓄電池システムの稼働条件に基づいて、前記蓄電池の電池容量を第3予測値として算出する第3算出部と、
前記検出部で前記充放電動作が検出されると、前記蓄電池の電池容量を実測値として計測する第1計測部と、
前記第3予測値と前記実測値との差分に基づき、前記第1算出部の動作に係る設定を補正する第1補正部と、
を更に備える、請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項14】
前記蓄電池システムの充放電動作を検出する検出部と、
前記検出部で前記充放電動作が検出されると、当該検出時の前記蓄電池システムの稼働条件に基づいて、前記蓄電池が出力可能な電力量を第4予測値として算出する第4算出部と、
前記検出部で前記充放電動作が検出されると、当該充放電動作で前記蓄電池から出力された電力量を実測値として計測する第2計測部と、
前記第4予測値と前記実測値との差分に基づき、前記第2算出部の動作に係る設定を補正する第2補正部と、
を更に備える、請求項9に記載の蓄電池制御装置。
【請求項15】
充放電可能な蓄電池を備えた蓄電池システムの稼働条件を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記稼働条件に基づいて、当該稼働条件で前記蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における前記蓄電池の電池容量を第1予測値として算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出された前記第1予測値に基づき、前記蓄電池システムが前記蓄電池を充電する際の充電電圧を制御する制御ステップと、
を含む蓄電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池制御装置及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池システムが、様々な用途に利用されている。例えば、通常時は商用電源等から供給される電力を蓄電池に蓄電しておき、商用電源等の停電時に当該蓄電池から電力を供給することで、電源を安定供給するものがある。このような形態の蓄電池システムでは、蓄電池を満充電に達すると、フロート充電等の定電圧充電方式に切り替えることで電力を維持する制御が行われることがある。
【0003】
ところで、上記の定電圧充電方式では蓄電池に印加される電圧が高電圧状態で維持されるため、蓄電池が劣化しやすいという問題がある。また、蓄電池は、使用環境の温度条件によっても劣化の進行の程度が変化する。
【0004】
例えば、従来、測定によって得られた現時点での蓄電池の実劣化率と、温度等の条件毎に用意された蓄電池の劣化傾向を示す劣化マスターカーブとを用いて、任意の時点での蓄電池の劣化予測を行い、充電電圧を制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6555347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来の技術では、蓄電池の充電電圧を、通常充電電圧値と低充電電圧値とで切り替えるのみであるため、蓄電池の寿命の延伸化に関して更なる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、蓄電池の寿命の延伸化を図ることが可能な蓄電池制御装置及び蓄電池制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態にかかる蓄電池制御装置は、充放電可能な蓄電池を備えた蓄電池システムの稼働条件を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記稼働条件に基づいて、当該稼働条件で前記蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における前記蓄電池の電池容量を第1予測値として算出する第1算出部と、前記算出部で算出された前記第1予測値に基づき、前記蓄電池システムが前記蓄電池を充電する際の充電電圧を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る蓄電池制御システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る蓄電池システムの構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係るセルモジュール、CMU及びBMUの詳細構成説明図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る蓄電池制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る電池容量算出部の算出結果の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、第1の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態の変形例1に係る蓄電池制御システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の変形例3に係る蓄電池制御システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る電池容量算出部の算出結果の一例を模式的に示す図である。
図12図12は、第2の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る電池容量算出部及び出力容量算出部の算出結果の一例を模式的に示す図である。
図15図15は、第3の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図16図16は、第4の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示す図である。
図17図17は、第4の実施形態に係る電池容量算出部及び出力容量算出部の算出結果の一例を模式的に示す図である。
図18図18は、第4の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、第5の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示す図である。
図20図20は、第5の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、第6の実施形態に係る蓄電池制御部の機能構成の一例を示す図である。
図22図22は、第6の実施形態の蓄電池制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る蓄電池制御システム1の構成の一例を示す図である。蓄電池制御システム1は、商用電源2と、負荷3と、トランス4と、蓄電池システム5と、蓄電池制御部6と、上位制御装置7とを有する。
【0012】
商用電源2は、交流電源であり、トランス4を介して蓄電池システム5に電力(交流電力)を供給する。負荷3は、電力を消費する機器である。負荷3は、通常時は商用電源2からの電力供給を受けて動作し、商用電源2からの電力供給がなくなった場合には、蓄電池システム5からの電力供給を受けて動作する。
【0013】
蓄電池システム5は、商用電源2の電力を充電したり、負荷3に対して電力供給を行ったりする。具体的には、蓄電池システム5は、蓄電池装置11と、PCS(Power Conditioning System:電力変換装置)12と、を備えている。
【0014】
蓄電池装置11は、充放電可能な蓄電池の一例である。蓄電池装置11は、PCS12と協働することで、充放電動作を実行する。PCS12は、蓄電池装置11から供給された直流電力を所望の電力品質を有する交流電力に変換して負荷3に供給する。また、PCS12は、商用電源2から供給された交流電力を所望の電力品質を有する直流電力に変換して蓄電池装置11に供給する。
【0015】
蓄電池制御部6は、蓄電池制御装置の一例である。蓄電池制御6は、PCS12を介して、蓄電池システム5の制御を行う。例えば、蓄電池制御部6は、商用電源2から蓄電池装置11に充電電力を供給可能な場合に、蓄電池装置11を充電状態に切り替え、蓄電池装置11を充電させる。また、蓄電池制御部6は、蓄電池装置11が満充電に達した場合に、フロート充電等の定電圧充電方式に切り替える。
【0016】
定電圧充電方式では、所定電圧に到達し電圧の変動が一定の幅に収まるような状況では充電電力の電流が蓄電池装置11には実質的に流れず、充電電力の電圧のみが蓄電池装置11に印加された状態で維持される。定電圧充電方式では蓄電池装置11に印加される電圧が高電圧状態で維持されるため、蓄電池が劣化しやすいという問題がある。以下では、定電圧充電方式で蓄電池装置11に印加される電圧を「充電電圧」と呼ぶ。
【0017】
また、蓄電池制御部6は、商用電源2からの電力供給がなくなった場合には、蓄電池装置11を放電状態に切り替え、負荷3に電力を供給する。上位制御装置7は、蓄電池制御部6のリモート制御を行う。
【0018】
以上の説明は、蓄電池システム5をバックアップ用電源として動作させる場合のものであるが、電力負荷平準化のためのピークシフトに際し、商用電源2からの電力供給に加えて、蓄電池システム5の電力を重畳して供給する場合であっても同様に適用が可能である。また、再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱等によるエネルギー)による発電を行う場合に、電力品質(電圧、周波数等)の安定化を図る場合にも適用することができる。
【0019】
図2は、蓄電池システム5の構成の一例を示す図である。蓄電池システム5は、上述した蓄電池装置11と、PCS12とを備える。
【0020】
蓄電池装置11は、大別すると、複数の電池盤21-1~21-N(Nは自然数)と、電池盤21-1~21-Nが接続された電池端子盤22と、を備えている。電池盤21-1~21-Nは、互いに並列に接続された複数の電池ユニット23-1~23-M(Mは自然数)と、ゲートウェイ装置24と、後述のBMU(Battery Management Unit:電池管理装置)及びCMU(Cell Monitoring Unit:セル監視装置)に動作用の直流電源を供給する直流電源装置25と、を備えている。
【0021】
電池ユニット23-1~23-Mは、それぞれ、高電位側電源供給ライン(高電位側電源供給線)LH及び低電位側電源供給ライン(低電位側電源供給線)LLを介して、出力電源ライン(出力電源線;母線)LHO、LLOに接続され、主回路であるPCS12に電力を供給している。
【0022】
電池ユニット23-1~23-Mは、同一構成であるので、電池ユニット23-1を例として説明する。電池ユニット23-1は、大別すると、複数(図2では、24個)のセルモジュール31-1~31-24と、セルモジュール31-1~31-24にそれぞれ設けられた複数(図2では、24個)のCMU32-1~32-24と、セルモジュール31-12とセルモジュール31-13との間に設けられたサービスディスコネクト33と、電流センサ34と、コンタクタ35と、を備え、複数のセルモジュール31-1~31-24、サービスディスコネクト33、電流センサ34及びコンタクタ35は、直列に接続されている。
【0023】
セルモジュール31-1~31-24は、電池セルを複数、直並列に接続されて組電池を構成している。そして、複数の直列接続されたセルモジュール31-1~31-24で組電池群を構成している。
【0024】
また、電池ユニット23-1は、BMU36を備え、各CMU32-1~32-24の通信ライン、電流センサ34の出力ラインは、BMU36に接続されている。BMU36は、ゲートウェイ装置24の制御下で、電池ユニット23-1全体を制御し、各CMU32-1~32-24との通信結果(後述する電圧データ及び温度データ)及び電流センサ34の検出結果に基づいてコンタクタ35の開閉制御を行う。
【0025】
次に、電池端子盤の構成について説明する。電池端子盤22は、電池盤21-1~21-Nに対応させて設けられた複数の盤遮断器41-1~41-Nと、蓄電池装置11全体を制御するマイクロコンピュータとして構成されたマスタ(Master)装置42と、を備えている。
【0026】
マスタ装置42には、PCS12との間に、PCS12のUPS(Uninterruptible Power System)12Aを介して供給される制御電源線51と、イーサネット(登録商標)として構成され、制御データのやりとりを行う制御通信線52と、が接続されている。
【0027】
ここで、セルモジュール31-1~31-24、CMU32-1~32-24およびBMU36の詳細構成について説明する。
【0028】
図3は、セルモジュール、CMU及びBMUの詳細構成説明図である。セルモジュール31-1~31-24は、それぞれ、直列接続された複数(図3では、10個)の電池セル61-1~61-10を備えている。
【0029】
CMU32-1~32-24は、対応するセルモジュール31-1~31-24を構成している電池セル61-1~61-10の電圧及び所定箇所の温度を測定するための電圧温度計測IC(Analog Front End IC:AFE-IC)62と、それぞれが対応するCMU32-1~32-24全体の制御を行うMPU63と、BMU36との間でCAN通信を行うためのCAN(Controller Area Network)規格に則った通信コントローラ64と、セル毎の電圧に相当する電圧データ及び温度データを格納するメモリ65と、を備えている。
【0030】
また、BMU36は、BMU36全体を制御するMPU71と、CMU32-1~32-24との間でCAN通信を行うためのCAN規格に則った通信コントローラ72と、CMU32-1~32-24から送信された電圧データ及び温度データを格納するメモリ73と、を備えている。
【0031】
以下の説明において、セルモジュール31-1~31-24のそれぞれと、対応するCMU32-1~32-24と、を合わせた各々の構成を「電池モジュール」と呼ぶ。また、電池セル61-1~61-10の各々の構成を「電池セル」と呼ぶ。さらに、電池ユニット23-1~23-Mの各々の構成を「電池ユニット」と呼ぶ。
【0032】
なお、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルは、何れも蓄電池の一例である。蓄電池制御部6は、蓄電池装置11、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルの何れかの蓄電池を制御単位として、当該蓄電池の充電電圧を制御する。以下では、蓄電池装置11、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルの何れかの制御単位を単に「蓄電池」とも表記する。
【0033】
図4は、蓄電池制御部6のハードウェア構成の一例を示す図である。図4に示すように、蓄電池制御部6は、処理部91と、記憶部92と、入力部93と、表示部94とを備える。なお、蓄電池制御部6は、他の装置と通信するための通信インタフェースも備えるが、説明を簡潔にするために、その図示と説明を省略する。
【0034】
処理部91は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、蓄電池制御部6の処理全体を制御する。
【0035】
記憶部92は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部92は、蓄電池制御部6の動作に係る各種のプログラムや設定情報を記憶する。
【0036】
また、記憶部92は、蓄電池システム5(蓄電池装置11)の稼働条件等を入力することで、任意の期間(時点)での蓄電池のSOH(State Of Health)や電池容量(以下、総称して電池容量という)を予測値として出力するよう機能付けられたデジタルモデル92aを記憶する。
【0037】
デジタルモデル92aは、蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデータであり、例えばシミュレータプログラム等によって実現される。デジタルモデル92aは、入力された稼働条件に基づき、蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することで、その稼働条件で蓄電池を稼働させた場合での、所定期間における蓄電池の電池容量を予測値として出力する。より詳細には、デジタルモデル92aは、時間経過とともに低下(劣化)する蓄電池の電池容量の傾向を、予測値として導出する。つまり、デジタルモデル92aが出力する予測値は、蓄電池の劣化の状態や蓄電池の寿命を示すものとなる。
【0038】
なお、本実施形態のデジタルモデル92aは、蓄電池を定電圧充電する際の充電電圧に基づき、任意の期間での電池容量を予測値として出力するよう機能付けられているものとする。つまり、デジタルモデル92aに入力する稼働条件には、少なくとも充電電圧が含まれるものとする。また、稼働条件は、蓄電池の劣化状態の導出に関係する他の情報を含んでもよい。例えば、稼働条件は、蓄電池が充放電動作を行う際の入出力電流を含んでもよい。また、稼働条件は、蓄電池周辺の温度又は蓄電池自体の温度が挙げられる(以下、総称して環境温度ともいう)。また、デジタルモデル92aには、例えば工場出荷時等の所定時点における蓄電池装置11の電池容量が、初期条件としてセットされてもよい。
【0039】
入力部93は、オペレータからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理部91に出力する。入力部93は、例えばキーボードやマウス等により実現される。
【0040】
表示部94は、処理部91の制御の下、各種の情報や画面を表示する。表示部94は、例えば液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイにより実現される。
【0041】
図5は、蓄電池制御部6の機能構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、蓄電池制御部6は、電池容量算出部9111と、電圧制御部9112とを機能部として備える。
【0042】
蓄電池制御部6が備える機能部の一部又は全ては、処理部91が、記憶部132に記憶されたプログラムを実行することで実現されるソフトウェア構成であってもよい。また、蓄電池制御部6が備える機能部の一部又は全ては、処理部91等が備える専用回路によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0043】
電池容量算出部9111は、取得部及び第1算出部の一例である。電池容量算出部9111は、デジタルモデル92aと協働することで、所定期間における蓄電池の電池容量を予測値として算出する。
【0044】
具体的には、電池容量算出部9111は、蓄電池システム5の稼働条件として、蓄電池の充電電圧、入出力電流、及び環境温度等を取得し、取得した稼働条件をデジタルモデル92aに入力する。
【0045】
ここで、稼働条件の取得先は特に問わず、種々の形態が可能である。例えば、電池容量算出部9111は、記憶部92等に予め保存された稼働条件を取得してもよい。また、例えば、電池容量算出部9111は、蓄電池システム5やPCS12から稼働条件を取得してもよい。また、電池容量算出部9111は、入力部93を介して入力された稼働条件を取得してもよい。
【0046】
また、電池容量算出部9111は、稼働条件をデジタルモデル92aに入力することで、デジタルモデル92aが出力した予測値を予測容量として取得する。具体的には、電池容量算出部9111は、取得した稼働条件で蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における蓄電池の電池容量を予測容量(第1予測値)として算出する。
【0047】
なお、電池容量算出部9111は、図5の破線で示したように、自己が算出した電池容量を再帰的に入力する形態としてもよい。この場合、初期条件としてセットされた電池容量が順次更新されることになる。
【0048】
図6は、電池容量算出部9111の算出結果の一例を模式的に示す図である。ここで、図6は、蓄電池の充電電圧と電池容量との関係を示す図であり、例えばグラフG11とグラフG12とで表される。
【0049】
グラフG11は、蓄電池の充電電圧の推移を示すものであり、縦軸は電圧(充電電圧)、横軸は時間を意味している。電圧VL~VHの範囲は、蓄電池の定電圧充電を安全に行うことが可能な電圧範囲である。また、時間Teは、蓄電池を継続利用する目標の年月日(以下、装置維持年数ともいう)である。
【0050】
一方、グラフG12は、蓄電池の電池容量の推移を示すものであり、縦軸は蓄電池の電池容量、横軸は時間を意味している。閾値TH1は第1閾値の一例であり、蓄電池の寿命が尽きたと見なす電池容量である。なお、グラフG11及びグラフG12の時間軸(横軸)は同期しているものとする。
【0051】
図6では、現時点を意味する時間Tnまでの間、蓄電池が充電電圧V1で定電圧充電されており、今後も同じ充電電圧で定電圧充電が継続された場合の、充電電圧V1、及び予測容量を破線で示している。
【0052】
上述したように、蓄電池の電池容量は、充電電圧V1の稼働条件(充電電圧)に応じて時間経過とともに低下(劣化)する。グラフG12に示すように、電池容量算出部9111が算出する予測容量は、その劣化傾向を予測したものとなり、かかる劣化傾向から任意の時点での予測容量を特定することができる。例えば、時間Tnから時間Teまでの間、予測容量が閾値TH1以上か否かを判定したり、時間Teの時点での予測容量が閾値TH1以上か否かを判定したりすることができる。
【0053】
図5に戻り、電圧制御部9112について説明する。電圧制御部9112は、制御部の一例である。電圧制御部9112は、電池容量算出部9111の算出結果に基づいて、PCS12が蓄電池に印加する充電電圧を制御する。
【0054】
具体的には、電圧制御部9112は、電池容量算出部9111が算出した予測容量に基づいて、電池容量算出部9111が取得した現在の充電電圧の変更量を充電電圧指示としてPCS12に送信することで、PCS12が蓄電池を定電圧充電する際の充電電圧を制御する。
【0055】
なお、充電電圧の制御方法は特に問わず、種々の形態を採用することが可能である。例えば、電圧制御部9112は、電池容量算出部9111の算出結果に基づいて、時間Tnから時間Teまでの蓄電池の予測容量が閾値TH1以上か否か等を判定したり、時間Teの時点での蓄電池の予測容量が閾値TH1以上か否か等を判定したりする。そして、電圧制御部9112は、予測容量が閾値TH1以上の場合には、現在の充電電圧を維持する制御を実行する。
【0056】
また、電圧制御部9112は、予測容量が閾値TH1未満となる場合には、現在の充電電圧を変更するための制御を実行する。例えば、電圧制御部9112は、予測容量が閾値TH1未満の場合、現在の充電電圧を所定量減少させた新たな充電電圧をPCS12に指示する。なお、電圧制御部9112は、上述した電圧VL~VHの範囲で充電電圧の変更を行うものとする。
【0057】
PCS12では、電圧制御部9112から充電電圧の指示を受けると、指示された充電電圧で蓄電池の定電圧充電を実行する。つまり、電圧制御部9112の制御により、蓄電池の充電電圧が変更されることになる。
【0058】
以下、図7を参照して、蓄電池制御部6の動作について説明する。図7は、蓄電池制御部6が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理が実行されるタイミングは特に問わないものとするが、本実施形態では、定電圧充電時に行われるものとして説明する。
【0059】
まず、電池容量算出部9111は、蓄電池の現在の稼働条件を取得する(ステップS11)。次いで、電池容量算出部9111は、ステップS11で取得した稼働条件に基づき、現在より将来の所定期間における蓄電池の予測容量を算出する(ステップS12)。
【0060】
電圧制御部9112は、ステップS12の算出結果に基づき、装置維持年数等の所定時点の予測容量が、第1閾値以上か否かを判定する(ステップS13)。第1閾値以上と判定した場合(ステップS13;Yes)、電圧制御部9112は、現在の充電電圧を維持したまま、本処理を終了する。
【0061】
一方、ステップS13で第1閾値未満と判定した場合(ステップS13;No)、電圧制御部9112は、現在の充電電圧を所定量減少させた新たな充電電圧をPCS12に指示し(ステップS14)、本処理を終了する。
【0062】
以上のように、蓄電池制御部6は、蓄電池システム5の稼働条件を取得し、取得した稼働条件に基づいて、当該稼働条件で蓄電池の稼働させた場合での、所定期間における前記蓄電池の電池容量を予測容量として算出する。そして、蓄電池制御部6は、予測容量に基づいて、蓄電池を定電圧充電する際の充電電圧を制御する。
【0063】
これにより、蓄電池制御部6は、例えば、現在の蓄電池の稼働条件では、第1閾値以上の状態で維持したまま装置維持年数まで蓄電池を使用することができない場合に、当該条件を充足することが可能な充電電圧を設定することができる。したがって、蓄電池制御部6は、蓄電池の劣化を抑えた充電電圧を設定することができるため、蓄電池の寿命の延伸化を図ることができる。
【0064】
また、蓄電池制御部6は、蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデル92aを用いて予測容量を算出するため、各種の稼働条件に従内に対応することができ、予測容量の算出を効率的に行うことができる。
【0065】
なお、上述した実施形態は、上述した各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。
【0066】
(変形例1)
図1の蓄電池制御システム1では、蓄電池システム5の外部に蓄電池制御部6を配置する形態としたが、これに限らず、蓄電池システム5に蓄電池制御部6を含める形態としてもよい。
【0067】
図8は、本変形例に係る蓄電池制御システム1の構成の一例を模式的に示す図である。図8に示すように、本変形例に係る蓄電池制御システム1では、蓄電池システム5の内部に蓄電池制御部6が設けられる。また、蓄電池制御部6は、蓄電池装置11及びPCS12と通信可能な状態で接続される。これにより、蓄電池制御部6は、蓄電池の定電圧充電に係る充電電圧を制御することができるため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
(変形例2)
図1の蓄電池制御システム1では、蓄電池システム5の外部にトランス4を配置する形態としたが、これに限らず、蓄電池システム5にトランス4を含める形態としてもよい。この場合も、蓄電池制御部6は、蓄電池の定電圧充電に係る充電電圧を制御することができるため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0069】
(変形例3)
図1の蓄電池制御システム1では、蓄電池システム5は、商用電源2や負荷3との間で交流電力を入出力する形態としたが、これに限らず、商用電源2や負荷3が直流電力を送受信可能な構成の場合には、直流電力を入出力する形態としてもよい。
【0070】
この場合、蓄電池制御システム1は、例えば図9の構成とすることも可能である。ここで、図9は、本変形例に係る蓄電池制御システム1の構成の一例を模式的に示す図である。
【0071】
図9に示すように、本変形例に係る蓄電池制御システム1は、PCS12に代えて、直流電力を処理することが可能なDC/DCコンバータ等の電力装置12aを備えている。そして、蓄電池装置11は、電力装置12aを介して、直流電源の商用電源2や負荷3との間で直流電力の入出力を行う。
【0072】
また、蓄電池制御部6は、電力装置12aと協働することで、蓄電池の充電電圧を制御する。これにより、蓄電池制御部6は、蓄電池の定電圧充電に係る充電電圧を制御することができるため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0074】
図10は、第2の実施形態に係る蓄電池制御部6aの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御部6aのハードウェア構成は、上述した図4の構成と同様であるとする。
【0075】
図10に示すように、蓄電池制御部6aは、電池容量算出部9121と、電池容量判定部9122と、電圧設定部9123と、電圧制御部9124とを機能部として備える。
【0076】
電池容量算出部9121は、第1算出部の一例である。電池容量算出部9121は、電池容量算出部9111と同様の機能を有する。また、電池容量算出部9121は、電圧設定部9123が変更した充電電圧を用いて算出処理を行うことで、変更後の充電電圧に基づく予測電圧を算出する。
【0077】
電池容量判定部9122は、第1判定部の一例である。電池容量判定部9122は、電池容量算出部9121の算出結果に基づいて、所定の期間又は所定の時点での予測容量が第1閾値以上か否かを判定し、その判定結果を電圧設定部9123に出力する。例えば、電池容量判定部9122は、装置維持年数の時点での予測容量が第1閾値以上か否かを判定する。
【0078】
電圧設定部9123は、第1変更部の一例である。電圧設定部9123は、電池容量判定部9122の判定結果に基づいて、定電圧充電に使用する充電電圧を設定する。具体的には、電圧設定部9123は、電池容量判定部9122の判定結果が、第1閾値以上であることを示す場合、電池容量算出部9121の算出で使用された充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0079】
一方、電池容量判定部9122の判定結果が、第1閾値未満であることを示す場合、電圧設定部9123は、充電電圧を所定量減少させることで充電電圧を仮想的に変更する。次いで、電圧設定部9123は、変更後の充電電圧を電池容量算出部9121に入力することで、変更後の充電電圧に基づく予測容量の算出を電池容量算出部9121に実行させる。これにより、電池容量判定部9122では、電池容量算出部9121で新たに算出された予測容量に基づき上記の判定処理を再度実行することで、その判定結果が電圧設定部9123へと出力される。
【0080】
また、電圧設定部9123は、電池容量判定部9122の判定結果が第1閾値以上となるまで上記の処理を繰り返し実行することで、充電電圧を所定量ずつ減少させる。そして、電圧設定部9123は、予測容量が第1閾値以上になると、電池容量算出部9121の算出で使用された充電電圧の電圧値を、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0081】
なお、電圧設定部9123は、予測容量の変化傾向や、第1閾値との差分値等に基づいて、将来の所定時点での予測容量が第1閾値以上となる電圧値を一度に設定する構成としてもよい。この場合、電圧設定部9123は、例えば、第1閾値との差分値と、充電電圧の変更量との関係を対応付けたテーブルデータに基づいて、変更後の充電電圧を決定する形態としてもよい。
【0082】
電圧制御部9124は、電圧設定部9123が設定した充電電圧をPCS12に指示する。これにより、蓄電池の定電圧充電が行われる際に、所定の期間又は所定の時点での予測容量が第1閾値以上となることが確認された充電電圧を印加することができる。
【0083】
図11は、電池容量算出部9121の算出結果の一例を模式的に示す図である。なお、図11に示すグラフG21、G22は、図6で説明したグラフG11、G12と同様の形態であるため、各軸の説明等は省略する。
【0084】
図11では、現時点を示す時間Tnまでの間、充電電圧V1で定電圧充電が行われた場合の算出結果を示しており、充電電圧V1が継続された場合での、時間Tnから時間Teの期間における充電電圧V1と、予測容量とを破線で示している。
【0085】
ここで、例えば、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)で、予測容量が閾値TH1を下回ったとすると、電池容量判定部9122は、予測容量が第1閾値未満であることを示す判定結果を電圧設定部9123に出力する。この場合、電圧設定部9123は、充電電圧V1を所定量減少させた充電電圧V2を電池容量算出部9121に入力することで、変更後の充電電圧V2に基づく予測容量を電池容量算出部9121に算出させる。
【0086】
図11では、充電電圧V2及び当該充電電圧V2に基づく予測容量を実線で表している。また、図11では、充電電圧V1から充電電圧V2への変更に伴い、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)で予測容量が閾値TH1以上になったことを示している。なお、電圧設定部9123は、電圧VL~VHの範囲で充電電圧の変更を行うものとする。
【0087】
そして、電圧設定部9123は、電池容量判定部9122の判定結果に基づき、予測容量が閾値TH1以上となったことを確認すると、その際の予測容量の算出で使用した充電電圧V2を定電圧充電用に設定する。
【0088】
以下、図12を参照して、蓄電池制御部6aの動作について説明する。図12は、蓄電池制御部6aが実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理が実行されるタイミングは特に問わないものとするが、本実施形態では、定電圧充電時に行われるものとして説明する。
【0089】
まず、電池容量算出部9121は、蓄電池の現在の稼働条件を取得する(ステップS21)。次いで、電池容量算出部9121は、ステップS21で取得した稼働条件に基づき、現在より将来の所定期間における蓄電池の予測容量を算出する(ステップS22)。
【0090】
電池容量判定部9122は、ステップS22の算出結果に基づき、装置維持年数等の所定時点の予測容量が、第1閾値以上か否かを判定する(ステップS23)。
【0091】
ステップS23で第1閾値未満と判定された場合(ステップS23;No)、電圧設定部9123は、充電電圧を所定量減少させた新たな充電電圧を設定する(ステップS24)。次いで、電圧設定部9123は、ステップS24で設定した新たな充電電圧を用いて、ステップS22の処理を実行させることで、変更後の充電電圧に基づく予測容量を電池容量算出部9121に算出させる。
【0092】
また、ステップS23で第1閾値以上と判定された場合(ステップS23;Yes)、電圧設定部9123は、ステップS22の算出処理で使用された充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定する(ステップS25)。
【0093】
そして、電圧制御部9124は、ステップS25で設定された充電電圧をPCS12に指示し(ステップS26)、本処理を終了する。
【0094】
以上のように、蓄電池制御部6aは、所定期間における蓄電池の電池容量(予測容量)が第1閾値未満となる場合、充電電圧を仮想的に変更することで、電池容量を第1閾値以上とすることが可能な充電電圧を特定することができる。
【0095】
これにより、蓄電池制御部6aは、例えば、現在の稼働条件では、第1閾値以上の電池容量を維持したまま装置維持年数まで蓄電池を使用することができない場合に、充電電圧を実際に操作することなく、当該条件を充足することが可能な充電電圧を設定することができる。したがって、蓄電池制御部6aは、蓄電池の劣化を抑えた充電電圧を設定することができるため、蓄電池の寿命の延伸化を効率的に行うことができる。
【0096】
なお、本実施形態では、電圧設定部9123が自動で充電電圧を設定する形態としたが、これに限らず、入力部93を介したユーザ操作に基づいて、充電電圧を設定する形態としてもよい。この場合、例えば、電圧設定部9123は、充電電圧の変更を1又は複数回行った後、充電電圧の各々と、当該充電電圧に対応する予測容量とを関連付けた画面を表示部94に表示させ、所望の充電電圧をユーザに選択させる形態としてもよい。表示の対象とする充電電圧は、装置維持年数の時点で第1閾値以上となったものだけを挙げてもよいし、第1閾値未満のものを含めて表示させてもよい。
【0097】
なお、電圧設定部9123は、電圧VL~VHの範囲で充電電圧を変更しても、所定の期間(又は所定時点)での予測容量を第1閾値以上とすることができない場合、充電電力の自動設定を抑制してもよい。このような場合、電圧設定部9123は、充電電圧を設定することができない旨を表したアラート画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9123は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0098】
また、電圧設定部9123は、充電電圧の変更回数が閾値に達した場合、充電電圧の変更動作を抑制してもよい。この場合も上記と同様に、電圧設定部9123は、充電電圧を自動設定することができない旨を表した報知画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9123は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0099】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0100】
図13は、第3の実施形態に係る蓄電池制御部6bの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御部6bのハードウェア構成は、上述した図4の構成と同様であるとする。
【0101】
図13に示すように、蓄電池制御部6bは、電池容量算出部9131と、出力容量算出部9132と、出力容量判定部9133と、電圧設定部9134と、電圧制御部9135とを機能部として備える。
【0102】
電池容量算出部9131は、第1算出部の一例である。電池容量算出部9131は、電池容量算出部9111と同様の機能を有する。また、電池容量算出部9131は、電圧設定部9134が変更した充電電圧を用いて算出処理を行うことで、変更後の充電電圧に基づく予測電圧を算出する。
【0103】
出力容量算出部9132は、第2算出部の一例である。出力容量算出部9132は、蓄電池の稼働条件と、電池容量算出部9131が算出する予測容量とに基づいて、蓄電池が出力可能な電力量(Wh)等の出力容量を予測出力として算出する。具体的には、出力容量算出部9132は、予測出力の導出用に作成されたデジタルモデル92aを用いることで、充電電圧や環境温度、予測容量等から予測出力を算出する。
【0104】
出力容量判定部9133は、第2判定部の一例である。出力容量判定部9133は、出力容量算出部9132の算出結果に基づいて、所定の期間又は所定の時点での予測出力が第2閾値以上か否かを判定し、その判定結果を電圧設定部9134に出力する。例えば、出力容量判定部9133は、装置維持年数の時点での予測出力が第2閾値以上か否かを判定する。
【0105】
電圧設定部9134は、第2変更部の一例である。電圧設定部9134は、出力容量判定部9133の判定結果に基づいて、定電圧充電に使用する充電電圧を設定する。具体的には、電圧設定部9134は、出力容量判定部9133の判定結果が、第2閾値以上であることを示す場合、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0106】
一方、出力容量判定部9133の判定結果が、第2閾値未満であることを示す場合、電圧設定部9134は、充電電圧を所定量増加させることで充電電圧を仮想的に変更する。次いで、電圧設定部9134は、変更後の充電電圧を電池容量算出部9131に入力することで、変更後の充電電圧に基づく予測容量の算出を電池容量算出部9131に実行させる。これにより、出力容量判定部9133では、出力容量算出部9132で新たに算出された予測出力に基づき上記の判定処理を再度実行することで、その判定結果が電圧設定部9134へと出力される。
【0107】
また、電圧設定部9134は、出力容量判定部9133の判定結果が第2閾値以上となるまで上記の処理を繰り返し実行することで、充電電圧を所定量ずつ増加させる。そして、電圧設定部9134は、予測出力が第2閾値以上になると、電池容量算出部9131の算出で使用された充電電圧の電圧値を、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0108】
なお、電圧設定部9134は、予測容量又は予測出力の変化傾向や、予測出力と第2閾値との差分値等に基づいて、将来の所定時点での予測出力が第2閾値以上となる電圧値を一度に設定する構成としてもよい。この場合、電圧設定部9134は、例えば、第2閾値との差分値と、充電電圧の変更量との関係を対応付けたテーブルデータに基づいて、変更後の充電電圧を決定する形態としてもよい。
【0109】
電圧制御部9135は、電圧設定部9134が設定した充電電圧をPCS12に指示する。これにより、蓄電池の定電圧充電が行われる際に、所定の期間又は所定の時点での予測出力が第2閾値以上となることが確認された充電電圧を印加することができる。
【0110】
図14は、電池容量算出部9131及び出力容量算出部9132の算出結果の一例を模式的に示す図である。図14において、グラフG31、G32は、電池容量算出部9131の算出結果の一例を示すものである。なお、グラフG31、G32は、図6で説明したグラフG11、G12と同様の形態であるため、各軸の説明等は省略する。
【0111】
また、グラフG33は、出力容量算出部9132の算出結果の一例を模式的に示す図である。グラフG33は、蓄電池の予測出力の推移を示すものであり、縦軸は出力容量(Wh)、横軸は時間を意味している。また、閾値TH2は、第2閾値の一例であり、要求される出力容量の最低値を意味する。なお、グラフG31、G32、G33の横軸(時間軸)は同期しているものとする。
【0112】
図14では、現時点を意味する時間Tnまでの間、蓄電池が充電電圧V1で定電圧充電が行われた例を示している。また、図14では、今後も同じ充電電圧で定電圧充電が継続された場合の予測電圧及び予測出力の算出結果を示している。具体的には、図14では、時間Tn以降の充電電圧V1、充電電圧V1に基づき算出された予測容量及び予測出力を破線で示している。
【0113】
ここで、例えば、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)で、予測出力が閾値TH2を下回ったとすると、出力容量判定部9133は、予測出力が第2閾値未満であることを示す判定結果を電圧設定部9134に出力する。この場合、電圧設定部9134は、充電電圧V1を所定量増加させた充電電圧V2を電池容量算出部9131に入力することで、変更後の充電電圧V2に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9131及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0114】
図14では、充電電圧V2と、当該充電電圧V2に基づく予測容量、予測出力の算出結果を実線で示している。また、図14では、充電電圧V1から充電電圧V2への変更に伴い、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)での予測出力が閾値TH2以上になったことを示している。なお、電圧設定部9134は、電圧VL~VHの範囲で充電電圧の変更を行うものとする。
【0115】
そして、電圧設定部9134は、出力容量判定部9133の判定結果に基づき、予測出力が閾値TH2以上となったことを確認すると、その際の予測容量及び予測出力の算出で使用した充電電圧V2を定電圧充電用に設定する。
【0116】
以下、図15を参照して、蓄電池制御部6bの動作について説明する。図15は、蓄電池制御部6bが実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理が実行されるタイミングは特に問わないものとするが、本実施形態では、定電圧充電時に行われるものとして説明する。
【0117】
まず、電池容量算出部9131は、蓄電池の現在の稼働条件を取得する(ステップS31)。次いで、電池容量算出部9131は、ステップS31で取得した稼働条件に基づき、現在より将来の所定期間での蓄電池の予測容量を算出する(ステップS32)。
【0118】
また、出力容量算出部9132は、蓄電池の現在の稼働条件と、ステップS32の算出結果とに基づき、現在より将来の所定期間での蓄電池の予測出力を算出する(ステップS33)。次いで、出力容量判定部9133は、ステップS33の算出結果に基づき、装置維持年数等の所定時点での予測出力が第2閾値以上か否かを判定する(ステップS34)。
【0119】
ステップS34で第2閾値未満と判定された場合(ステップS34;No)、電圧設定部9134は、充電電圧を所定量増加させた新たな充電電圧を設定する(ステップS35)。次いで、電圧設定部9134は、ステップS35で設定した新たな充電電圧を用いて、ステップS32の処理を実行させることで、変更後の充電電圧に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9131及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0120】
また、ステップS34で第2閾値以上と判定された場合(ステップS34;Yes)、電圧設定部9134は、ステップS32の算出処理で使用された充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定する(ステップS36)。
【0121】
そして、電圧制御部9135は、ステップS36で設定された充電電圧をPCS12に指示し(ステップS37)、本処理を終了する。
【0122】
以上のように、蓄電池制御部6bは、所定期間における蓄電池の出力容量(予測出力)が第2閾値未満となる場合、充電電圧を仮想的に変更することで、出力容量を第2閾値以上とすることが可能な充電電圧を特定することができる。
【0123】
これにより、蓄電池制御部6bは、例えば、現在の稼働条件では、第2閾値以上の出力容量を維持したまま装置維持年数まで蓄電池を使用することができない場合に、充電電圧を実際に操作することなく、当該条件を充足することが可能な充電電圧を設定することができる。したがって、蓄電池制御部6bは、蓄電池の可用性を向上させることができる。
【0124】
なお、電圧設定部9134は、電圧VL~VHの範囲で充電電圧を変更しても、所定の期間(又は所定時点)での予測出力を第2閾値以上とすることができない場合、充電電力の自動設定を抑制してもよい。また、電圧設定部9134は、所定の期間(又は所定時点)での予測出力を第2閾値以上とすることができた場合であっても、所定の期間(又は所定時点)での予測容量が第1閾値未満となる場合には、充電電力の自動設定を抑制してもよい。このような場合、電圧設定部9134は、充電電圧を設定することができない旨を表したアラート画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9134は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0125】
また、電圧設定部9134は、充電電圧の変更回数が閾値に達した場合、充電電圧の変更動作を抑制してもよい。この場合も上記と同様に、電圧設定部9134は、充電電圧を自動設定することができない旨を表した報知画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9134は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0126】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0127】
図16は、第4の実施形態に係る蓄電池制御部6cの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御部6cのハードウェア構成は、上述した図4の構成と同様であるとする。
【0128】
図16に示すように、蓄電池制御部6cは、電池容量算出部9141と、電池容量判定部9122と、出力容量算出部9132と、出力容量判定部9133と、電圧設定部9142と、電圧制御部9143とを機能部として備える。蓄電池制御部6cは、第2の実施形態と第3の実施形態とで説明した機能を併せ持つものとなる。
【0129】
電池容量算出部9141は、第1算出部の一例である。電池容量算出部9141は、電池容量算出部9111と同様の機能を有する。また、電池容量算出部9141は、電圧設定部9142が変更した充電電圧を用いて算出処理を行うことで、変更後の充電電圧に基づく予測容量を算出する。
【0130】
電池容量判定部9122は、第1判定部の一例である。電池容量判定部9122は、電池容量算出部9141の算出結果に基づいて、所定の期間又は所定の時点での予測容量が第1閾値以上か否かを判定し、その判定結果を電圧設定部9142に出力する。
【0131】
出力容量算出部9132は、第2算出部の一例である。出力容量算出部9132は、蓄電池の稼働条件と、電池容量算出部9141が算出する予測容量とに基づいて、蓄電池が出力可能な出力容量を予測出力として算出する。
【0132】
出力容量判定部9133は、第2判定部の一例である。出力容量判定部9133は、出力容量算出部9132の算出結果に基づいて、所定の期間又は所定の時点での予測出力が第2閾値以上か否かを判定し、その判定結果を電圧設定部9142に出力する。
【0133】
電圧設定部9142は、第1変更部及び第2変更部の一例である。電圧設定部9142は、電池容量判定部9122及び出力容量判定部9133の判定結果に基づいて、定電圧充電に使用する充電電圧を設定する。
【0134】
具体的には、電圧設定部9142は、電池容量判定部9122の判定結果が第1閾値未満であることを示す場合、充電電圧を所定量減少させることで充電電圧を仮想的に変更する。また、電圧設定部9142は、出力容量算出部9132の判定結果が第2閾値未満であることを示す場合、充電電圧を所定量増加させることで充電電圧を仮想的に変更する。そして、電圧設定部9142は、変更後の充電電圧を電池容量算出部9141に入力することで、変更後の充電電圧に基づく予測容量及び予測出力を電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0135】
また、電圧設定部9142は、電池容量判定部9122の判定結果が第1閾値以上、出力容量算出部9132の判定結果が第2閾値以上である場合、電池容量算出部9141の算出で使用された充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0136】
なお、電圧設定部9142は、電池容量判定部9122の判定結果が第1閾値未満で、且つ出力容量算出部9132の判定結果が第2閾値未満であった場合には、予め定められた優先度の高い項目(電池容量又は出力可能容量)から、充電電圧の変更を行うものとする。
【0137】
電圧制御部9143は、電圧設定部9142が設定した充電電圧をPCS12に指示する。これにより、蓄電池の定電圧充電が行われる際に、所定の期間又は所定の時点での予測容量が第1閾値以上で、且つ予測出力が第2閾値以上となることが確認された充電電圧を印加することができる。
【0138】
上述したように、蓄電池制御部6cは、第2の実施形態と第3の実施形態とで説明した機能を有するものとなる。したがって、蓄電池制御部6cは、蓄電池の予測容量と予測出力との両方が所定の条件を満たす充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定することができる。
【0139】
図17は、電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132の算出結果の一例を模式的に示す図である。図17において、グラフG41、G42は、電池容量算出部9141の算出結果の一例を示すものである。また、グラフG43は、出力容量算出部9132の算出結果の一例を示す図である。なお、グラフG41、G42、G43は、第3の実施形態で説明したグラフG31、G32、G33と同様の形態であるため、各軸の説明等は省略する。
【0140】
図17では、現時点を意味する時間Tnまでの間、蓄電池が充電電圧V1で定電圧充電が行われた例を示している。また、図17では、今後も同じ充電電圧で定電圧充電が継続された場合の予測電圧及び予測出力の算出結果を示している。具体的には、時間Tn以降の充電電圧V1、充電電圧V1に基づき算出された予測容量及び予測出力を破線で示している。
【0141】
ここで、例えば、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)で、予測出力が閾値TH2を下回ったとすると、出力容量判定部9133は、予測出力が閾値TH2未満であることを示す判定結果を電圧設定部9142に出力する。この場合、電圧設定部9142は、充電電圧V1を所定量増加させた充電電圧V2を電池容量算出部9141に入力することで、変更後の充電電圧V2に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0142】
図17では、充電電圧V2、充電電圧V2に基づき算出された予測容量及び予測出力を一点鎖線で示している。また、図17では、充電電圧V1から充電電圧V2への変更に伴い、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)での予測出力が閾値TH2以上になったことを示している。
【0143】
また、図17では、充電電圧V2への変更に伴い、時間Tnから時間Teの期間(又は時間Teの時点)での予測容量が閾値TH1未満になったことを示している。この場合、電池容量判定部9122は、予測容量が閾値TH1未満であることを示す判定結果を電圧設定部9142に出力する。この場合、電圧設定部9142は、充電電圧V2を所定量増加させた充電電圧V3を電池容量算出部9141に入力することで、変更後の充電電圧V3に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132に算出させる。なお、図17では、変更後の充電電圧V3、充電電圧V3に基づき算出された予測容量及び予測出力を実線で示している。
【0144】
なお、電圧設定部9134は、電圧VL~VHの範囲内で充電電圧の変更を行うものとする。また、充電電圧の増加量と減少量とは同量であってもよいが、増減方向の異なる変更操作を連続して行う場合には、一度に変更可能な変更量を相違させることが好ましい。例えば、電圧設定部9142は、直前に行った充電電圧の変更量の大きさや増減方向に応じて、次の変化量の大きさを変化させてもよい。一例として、前回変化させた充電電圧の増減方向と、今回変化させる充電電圧の増減方向とが相違する場合、今回の変化量は前回の変化量よりも小量とすることが好ましい。
【0145】
そして、電圧設定部9142は、充電電圧V3への変更に伴い、例えば時間Teでの予測容量が第1閾値以上で、且つ予測出力が第2閾値以上となったことを確認すると、その時の充電電圧V3を、定電圧充電用の充電電圧に設定する。
【0146】
以下、図18を参照して、蓄電池制御部6cの動作について説明する。図18は、蓄電池制御部6cが実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理が実行されるタイミングは特に問わないものとするが、本実施形態では、定電圧充電時に行われるものとして説明する。
【0147】
まず、電池容量算出部9141は、蓄電池の現在の稼働条件を取得する(ステップS41)。次いで、電池容量算出部9141は、ステップS41で取得した稼働条件に基づき、現在より将来の所定期間での蓄電池の予測容量を算出する(ステップS42)。また、出力容量算出部9132は、蓄電池の現在の稼働条件と、ステップS42の算出結果とに基づき、現在より将来の所定期間での蓄電池の予測出力を算出する(ステップS43)。
【0148】
続いて、出力容量判定部9133は、ステップS43の算出結果に基づき、装置維持年数等の所定時点での予測出力が第2閾値以上か否かを判定する(ステップS44)。
【0149】
ステップS44で第2閾値未満と判定された場合(ステップS44;No)、電圧設定部9142は、充電電圧を所定量増加させた新たな充電電圧を設定する(ステップS45)。次いで、電圧設定部9142は、ステップS45で設定した新たな充電電圧を用いて、ステップS42の処理を実行させることで、変更後の充電電圧に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0150】
また、ステップS44で第2閾値以上と判定された場合(ステップS44;Yes)、電池容量判定部9122は、ステップS42の算出結果に基づき、装置維持年数等の所定時点での予測容量が第1閾値以上か否かを判定する(ステップS46)。
【0151】
ステップS45で第1閾値未満と判定された場合(ステップS46;No)、電圧設定部9142は、充電電圧を所定量減少させた新たな充電電圧を設定する(ステップS47)。次いで、電圧設定部9142は、ステップS47で設定した新たな充電電圧を用いて、ステップS42の処理を実行させることで、変更後の充電電圧に基づく予測容量及び予測出力を、電池容量算出部9141及び出力容量算出部9132に算出させる。
【0152】
また、ステップS46で第1閾値以上と判定された場合(ステップS46;Yes)、電圧設定部9142は、直近するステップS42の算出処理で使用された充電電圧を、定電圧充電用の充電電圧に設定する(ステップS48)。
【0153】
そして、電圧制御部9143は、ステップS48で設定された充電電圧をPCS12に指示し(ステップS49)、本処理を終了する。
【0154】
以上のように、蓄電池制御部6cは、所定期間における蓄電池の電池容量(予測容量)と出力容量(予測出力)とが所定の条件を充足しない場合、充電電圧を仮想的に変更することで、条件を充足することが可能な充電電圧を特定することができる。
【0155】
これにより、蓄電池制御部6cは、例えば、現在の稼働条件では、第1閾値以上の電池容量で、且つ第2閾値以上の出力容量を維持したまま装置維持年数まで蓄電池を使用することができない場合に、充電電圧を実際に操作することなく、当該条件を充足することが可能な充電電圧を設定することができる。したがって、蓄電池制御部6cは、蓄電池の寿命の延伸化を図るとともに、蓄電池の可用性を向上させることができる。
【0156】
なお、電圧設定部9142は、電圧VL~VHの範囲で充電電圧を変更しても、装置維持年数の時点での予測容量を第1閾値以上で、且つ予測出力を第2閾値以上とすることができない場合には、充電電力の自動設定を抑制してもよい。このような場合、電圧設定部9142は、充電電圧を自動設定することができない旨を表した報知画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9142は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0157】
また、電圧設定部9142は、充電電圧の変更回数が閾値に達した場合、充電電圧の変更動作を抑制してもよい。この場合も上記と同様に、電圧設定部9142は、充電電圧を自動設定することができない旨を表した報知画面を表示部94に表示させてもよい。また、電圧設定部9134は、上位制御装置7宛に、アラートを報知する構成としてもよい。
【0158】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0159】
図19は、第5の実施形態に係る蓄電池制御部6dの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御部6dのハードウェア構成は、上述した図4の構成と同様であるとする。
【0160】
図19に示すように、蓄電池制御部6dは、充放電動作検出部9151と、電池容量算出部9152と、実容量算出部9153と、補正量算出部9154とを機能部として備える。なお、図示しないが、蓄電池制御部6dは、上述した実施形態のうちの何れか一の機能構成を備えるものとする。
【0161】
充放電動作検出部9151は、検出部の一例である。充放電動作検出部9151は、蓄電池システム5の充放電動作を検出する。例えば、充放電動作検出部9151は、PCS12と協働することで、蓄電池システム5の充放電動作が発生したことを検出する。
【0162】
電池容量算出部9152は、第3算出部の一例である。電池容量算出部9152は、充放電動作検出部9151で充放電動作が検出されると、その時の稼働条件を蓄電池システム5から取得し、取得した稼働条件に基づいて蓄電池の現時点での予測容量を算出する。図19では、電池容量算出部9152が稼働条件として取得する、充放電動作検出時の蓄電池の印加電圧を動作時電圧と表記している。
【0163】
なお、実容量算出部9153の機能は、上述した各実施形態の電池容量算出部9111、9121、9131、9141の何れかが担ってもよい。以下では、電池容量算出部9111、9121、9131、9141を総称して、メイン電池容量算出部と呼ぶ。
【0164】
実容量算出部9153は、第1計測部の一例である。実容量算出部9153は、充放電動作検出部9151で充放電動作が検出されると、その時の稼働条件に基づき蓄電池の実際の電池容量(以下、実容量ともいう)を算出(計測)する。具体的には、実容量算出部9153は、稼働条件に含まれる動作時電圧及び入出力電流等に基づき、蓄電池の実容量を算出する。なお、実容量の算出方法は、公知の技術を用いることが可能である。
【0165】
補正量算出部9154は、第1補正部の一例である。補正量算出部9154は、電池容量算出部9152で算出された予測容量と、実容量算出部9153で算出された実容量との差分に基づき、メイン電池容量算出部の動作に係る設定を補正する。
【0166】
具体的には、補正量算出部9154は、予測容量と実容量とを比較し、両容量の差分が閾値以上となった場合、その差分を縮小するための補正量を算出する。そして、補正量算出部9154は、算出した補正量に基づき、メイン電池容量算出部の動作に係るパラメータや、デジタルモデル92aを補正する。
【0167】
なお、蓄電池システム5の充放電動作は、負荷3の状況等に応じて動的に行われてもよいし、予め定められたスケジュールで定期的に行われてもよい。例えば、後者の場合、充放電動作検出部9151は、PCS12と協働することで、予め定められたスケジュールで蓄電池システム5の充放電動作を制御してもよい。
【0168】
以下、図20を参照して、蓄電池制御部6dの動作について説明する。図20は、蓄電池制御部6dが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0169】
まず、充放電動作検出部9151は、蓄電池システム5の充放電動作を検出するまで待機する(ステップS51;No)。ステップS51で充放電動作が検出されると(ステップS51;Yes)、電池容量算出部9152は、現在の稼働条件を取得する(ステップS52)。
【0170】
続いて、電池容量算出部9152は、ステップS52で取得した稼働条件に基づいて、蓄電池の現時点での予測容量を算出する(ステップS53)。また、実容量算出部9153は、現在の稼働条件に基づいて、蓄電池の現時点での実容量を算出(計測)する(ステップS54)。
【0171】
続いて、補正量算出部9154は、ステップS53で算出された予測容量と、ステップS54で算出された実容量とを比較し、両容量の差が閾値以上か否かを判定する(ステップS55)。ここで、両容量の差が閾値未満の場合には(ステップS55;No)、本処理を終了する。
【0172】
一方、両容量の差が閾値以上と判定した場合(ステップS55;Yes)、補正量算出部9154は、両容量の差分に応じた補正量を算出する(ステップS56)。そして、補正量算出部9154は、算出した補正量に基づいて、メイン電池容量算出部の予測容量の算出に係る設定を補正し(ステップS57)、本処理を終了する。
【0173】
以上のように、蓄電池制御部6dは、充放電動作が開始されたタイミングで、蓄電池の予測容量と実容量とを取得し、両容量の差分に基づいて、メイン電池容量算出部の予測容量の算出に係る設定を補正する。
【0174】
これにより、蓄電池制御部6dは、メイン電池容量算出部が算出する予測容量の精度向上を図ることができるため、充電電圧の算出及び制御をより正確に行うことができる。
【0175】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0176】
図21は、第6の実施形態に係る蓄電池制御部6eの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御部6eのハードウェア構成は、上述した図4の構成と同様であるとする。
【0177】
図21に示すように、蓄電池制御部6eは、充放電動作検出部9151と、出力容量算出部9162と、実出力算出部9163と、補正量算出部9164とを機能部として備える。なお、図示しないが、蓄電池制御部6eは、上述した第3の実施形態及び第4の実施形態のうち何れか一の機能構成を備えるものとする。
【0178】
出力容量算出部9162は、第4算出部の一例である。出力容量算出部9162は、充放電動作検出部9151で充放電動作が検出されると、その時の稼働条件を蓄電池システム5から取得し、取得した稼働条件に基づいて蓄電池の現時点での予測出力を算出する。なお、出力容量算出部9162の機能は、上述した第3又は第4実施形態の出力容量算出部9132が担ってもよい。
【0179】
実出力算出部9163は、第2計測部の一例である。実出力算出部9163は、充放電動作検出部9151で充放電動作が検出されると、その時の稼働条件に基づき蓄電池の実際の出力容量(以下、実容量ともいう)を算出(計測)する。具体的には、実出力算出部9163は、稼働条件に含まれる動作時電圧及び入出力電流等に基づき、蓄電池の実出力を算出する。なお、実出力の算出方法は、公知の技術を用いることが可能である。
【0180】
補正量算出部9164は、第2補正部の一例である。補正量算出部9164は、出力容量算出部9162で算出された予測出力と、実出力算出部9163で算出された実出力との差分に基づき、出力容量算出部9132の動作に係る設定を補正する。
【0181】
具体的には、補正量算出部9164は、予測出力と実出力とを比較し、両出力の差分が閾値以上となった場合、その差分を縮小するための補正量を算出する。そして、補正量算出部9164は、算出した補正量に基づき、出力容量算出部9132の動作に係るパラメータや、デジタルモデル92aを補正する。これにより、出力容量算出部9132が算出する予測出力の精度向上を図ることができるため、蓄電池の充電電圧の制御をより正確に行うことができる。
【0182】
以下、図22を参照して、蓄電池制御部6eの動作について説明する。図22は、蓄電池制御部6eが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0183】
まず、充放電動作検出部9151は、蓄電池システム5の充放電動作を検出するまで待機する(ステップS61;No)。ステップS61で充放電動作が検出されると(ステップS61;Yes)、出力容量算出部9162は、現在の稼働条件を取得する(ステップS62)。
【0184】
続いて、出力容量算出部9162は、ステップS62で取得した稼働条件に基づいて、蓄電池の現時点での予測出力を算出する(ステップS63)。また、実出力算出部9163は、現在の稼働条件に基づいて、蓄電池の現時点での実出力を算出(計測)する(ステップS64)。
【0185】
続いて、補正量算出部9164は、ステップS63で算出された予測出力と、ステップS64で算出された実出力とを比較し、両出力の差が閾値以上か否かを判定する(ステップS65)。ここで、両出力の差が閾値未満の場合には(ステップS65;No)、本処理を終了する。
【0186】
一方、両出力の差が閾値以上と判定した場合(ステップS65;Yes)、補正量算出部9164は、両出力の差分に応じた補正量を算出する(ステップS66)。そして、補正量算出部9164は、算出した補正量に基づいて、出力容量算出部9132の予測出力の算出に係る設定を補正し(ステップS67)、本処理を終了する。
【0187】
以上のように、蓄電池制御部6eは、充放電動作が開始されたタイミングで、蓄電池の予測出力と実出力とを取得し、両出力の差分に基づいて、出力容量算出部9132の予測出力の算出に係る設定を補正する。
【0188】
これにより、蓄電池制御部6eは、力容量算出部9132が算出する予測出力の精度向上を図ることができるため、充電電圧の算出及び制御をより正確に行うことができる。
【0189】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0190】
1 蓄電池制御システム
2 商用電源
3 負荷
4 トランス
5 蓄電池システム
6、6a、6b、6c、6d、6e 蓄電池制御部
7 上位制御装置
11 蓄電池装置
12 PCS
9111、9121、9131、9141、9152 電池容量算出部
9112、9124、9135、9143 電圧制御部
9122 電池容量判定部
9123、9134、9142 電圧設定部
9132、9162 出力容量算出部
9133 出力容量判定部
9151 充放電動作検出部
9153 実容量算出部
9154、9164 補正量算出部
9163 実出力算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22