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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20240701BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240701BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240701BHJP
   H04N 1/40 20060101ALI20240701BHJP
   H04N 1/62 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/01 Y
B41J29/393 105
H04N1/40
H04N1/62
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023026985
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2018174554の分割
【原出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2023059969
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】石川 林
(72)【発明者】
【氏名】濱野 晃
(72)【発明者】
【氏名】辻村 宗士
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】後久 斉文
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-145399(JP,A)
【文献】特開2012-189735(JP,A)
【文献】特開2013-083977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/14
G03G 15/01
B41J 29/393
H04N 1/40
H04N 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる色の画像を形成する複数の画像形成手段と、
前記複数の画像形成手段により形成された前記画像を担持する像担持体と、
前記画像を前記像担持体からシートへ転写する転写手段と、
前記像担持体に形成された色ずれ検出用のパターンを検出する検出手段と、
前記複数の画像形成手段に前記パターンを形成させる制御手段と、
前記検出手段による前記パターンの検出結果に基づいて、前記複数の画像形成手段により形成される画像の色ずれを補正する補正手段と、
温度を検知する温度検知手段と、を備える画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記画像形成装置が画像形成を行ったシートの総出力枚数に対するカラーの画像を形成したシートの枚数の比率が基準値未満の場合に補正モードを第1モードとして決定し、前記比率が前記基準値以上の場合に前記補正モードを第2モードとして定し
前記制御手段は、前記補正モードが前記第1モードである場合、カラーの画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と基準温度との差が閾値より大きければ、前記カラーの画像形成を行う前に前記パターンを形成
前記制御手段は、前記補正モードが前記第2モードである場合、カラーの画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差が第1閾値より大きければ、前記カラーの画像形成を行う前に前記パターンを形成し、
前記制御手段は、前記補正モードが前記第2モードである場合、黒単色の画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値より大きければ、黒単色の画像形成を行った後に前記パターンを形成し、
前記制御手段は、前記補正モードが前記第1モードである場合、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差に基づく画像形成後の前記パターンの形成を行わないことを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記第1閾値と等しいことを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記総出力枚数が所定の出力枚数を超えた場合に、前記補正モードを決定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、黒単色の画像形成が指示された場合に、前記補正モードが前記第1モードであれば、前記パターンを形成しないことを特徴とする、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基準温度は、前記パターンが前回形成された際に前記温度検知手段により検知された温度であることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記温度検知手段は、前記画像形成装置の内部に設けられ、該画像形成装置の機内温度を検知することを特徴とする、
請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる色の画像を重畳してカラーの画像を形成することができる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写、定着の各工程を行うことでシートに画像を形成する。帯電は、感光体の表面を帯電器により一様に帯電する工程である。露光は、帯電された感光体にレーザスキャナから光ビームを出射して、感光体上に潜像を形成する工程である。現像は、潜像をトナー等の現像剤により顕像化して感光体上にトナー像を形成する工程である。転写は、感光体から直接、或いは感光体から中間転写体を介して、シートにトナー像を転写する行程である。定着は、トナー像が転写されたシートを加熱及び加圧することで、シートに画像(トナー像)を定着させる工程である。シートに画像を定着させることで成果物が完成する。
【0003】
レーザスキャナは、光源、光源から出力される光ビームを偏向する回転多面鏡、及び回転多面鏡により偏向された光ビームを感光体に導くレンズやミラー等の光学系を備える。光源、回転多面鏡、及び光学系は、一つの筐体に収容される。画像形成装置内の温度が変化する場合、レーザスキャナの筐体が熱膨張する。また、レーザスキャナの筐体内の熱分布や筐体の素材に含有されるガラスフィラー等の異方性により、筐体内は複雑な熱膨張変形を起こし、レンズやミラー等の光学系の位置が変動することがある。これは、感光体を走査する光ビームの照射位置に影響し、画像形成位置がずれる要因となる。各色の画像形成位置がずれることによって成果物の色味が変化する現象は、色ずれと呼ばれる。色ずれが生じた場合、成果物の品位は著しく低下してしまう。
【0004】
画像形成装置は、色ずれを補正するために色ずれ補正を行う。色ずれ補正は、所定のタイミングで中間転写体に形成した色ずれ検出用の検出用画像に基づいて行われる。画像形成装置は、検出用画像を色ずれ検出センサで検出した結果に基づいて色ずれ量を算出する。画像形成装置は、算出した色ずれ量に基づいて画像形成位置を補正することで色ずれを補正する。なお、画像形成装置は、色ずれ補正を行うことでダウンタイムが発生して生産性が低下する。
【0005】
これに対して特許文献1は、装置内の温度変化が小さい場合は画像形成後に色ずれ補正を行い、装置内の温度変化が大きい場合は画像形成前に色ずれ補正を行う画像形成装置を提案する。この画像形成装置は、画像形成処理が断続的に実行される場合、画像形成後に色ずれ補正を実行する可能性が高い。そのために、ユーザは、画像形成前に色ずれ補正が実行される場合よりも画像形成時のダウンタイムを感じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-132643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、色ずれ補正はカラー画像の色味を変動させてしまう現象なので、例えば黒単色で画像形成を行う場合には色ずれ補正が実行される必要性は低い。しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置は、黒単色の画像を形成する場合であっても次の画像形成に備えて色ずれ補正が行われる。つまり、後続の画像形成処理においてカラー画像が形成される可能性があるので、特許文献1に記載の画像形成装置は色ずれ補正を実行している。
【0008】
特許文献1に記載の画像形成装置は、単色の画像形成が多く行われるにもかかわらず色ずれ補正が実行されてしまうので、現像器、感光体、中間転写体といった構成部品の寿命が不必要に短くなる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、色ずれ補正の実行条件を適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置は、それぞれが異なる色の画像を形成する複数の画像形成手段と、前記複数の画像形成手段により形成された前記画像を担持する像担持体と、前記画像を前記像担持体からシートへ転写する転写手段と、前記像担持体に形成された色ずれ検出用のパターンを検出する検出手段と、前記複数の画像形成手段に前記パターンを形成させる制御手段と、前記検出手段による前記パターンの検出結果に基づいて、前記複数の画像形成手段により形成される画像の色ずれを補正する補正手段と、温度を検知する温度検知手段と、を備える画像形成装置であって、前記制御手段は、前記画像形成装置が画像形成を行ったシートの総出力枚数に対するカラーの画像を形成したシートの枚数の比率が基準値未満の場合に補正モードを第1モードとして決定し、前記比率が前記基準値以上の場合に前記補正モードを第2モードとして定し、前記制御手段は、前記補正モードが前記第1モードである場合、カラーの画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と基準温度との差が閾値より大きければ、前記カラーの画像形成を行う前に前記パターンを形成、前記制御手段は、前記補正モードが前記第2モードである場合、カラーの画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差が第1閾値より大きければ、前記カラーの画像形成を行う前に前記パターンを形成し、前記制御手段は、前記補正モードが前記第2モードである場合、黒単色の画像形成が指示され、且つ、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値より大きければ、黒単色の画像形成を行った後に前記パターンを形成し、前記制御手段は、前記補正モードが前記第1モードである場合、前記温度検知手段の検知温度と前記基準温度との差に基づく画像形成後の前記パターンの形成を行わないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、色ずれ補正の実行条件を適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】コントローラの説明図。
図3】副走査方向の色ずれ補正の説明図。
図4】主走査方向の色ずれ補正の説明図。
図5】色ずれ検出用の検出用画像の例示図。
図6】色ずれ補正の実行タイミング決定処理を表すフローチャート。
図7】色ずれ補正を含む画像形成処理を表すフローチャート。
図8】露光器の説明図。
図9】選択画面の例示図。
図10】1日の最初の画像形成時の処理を表すフローチャート。
図11】色ずれ補正を含む画像形成処理を表す別のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態の画像形成装置の構成部品の寸法、材質、及びその相対位置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成又は作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0014】
(全体構成)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。この画像形成装置1は、例えば複写機、プリンタ、及びファクシミリの機能を有する複合機等で実現されるフルカラーの画像形成装置である。画像形成装置1は、複数の画像形成部2a~2d、中間転写ユニット100、定着器15、及び画像が形成されるシートSの給送機構を備える。
【0015】
画像形成部2a~2dは、形成する画像の色に応じた数だけ設けられる。本実施形態ではイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するために、4つの画像形成部2a~2dが設けられる。画像形成部2aは、イエローの画像を形成する。画像形成部2bは、マゼンタの画像を形成する。画像形成部2cは、シアンの画像を形成する。画像形成部2dは、ブラックの画像を形成する。画像形成部2a~2dの下部には、レーザスキャナである露光器6が設けられる。各画像形成部2a~2dは、同じ構成を有している。ここでは画像形成部2aの構成について説明する。
【0016】
画像形成部2aは、感光ドラム3a、帯電ローラ5a、現像器7a、及びクリーナブレード4aが設けられる。感光ドラム3aは、ドラム形状の感光体である。感光ドラム3aは、図中時計回りに回転する。帯電ローラ5aは、感光ドラム3aの画像が形成される表面を一様に帯電させる。表面が一様に帯電した感光ドラム3aは、露光器6によりレーザ光が走査されることで、表面に静電潜像が形成される。露光器6は、イエローの画像信号に応じてレーザ光を感光ドラム3aに照射する。露光器6は、他の色の感光ドラム3b~3dに対しては、各色に対応した画像信号に応じたレーザ光を照射する。
【0017】
現像器7aは、イエローのトナーにより感光ドラム3a上の静電潜像を現像して、感光ドラム3aにイエローのトナー像を形成する。同様に現像器7bは、マゼンタのトナーにより、感光ドラム3bに、マゼンタのトナー像を形成する。現像器7cは、シアンのトナーにより、感光ドラム3cに、シアンのトナー像を形成する。現像器7dは、ブラックのトナーにより、感光ドラム3dに、ブラックのトナー像を形成する。
【0018】
中間転写ユニット100は、無端状の転写体である中間転写ベルト103を備える。中間転写ベルト103は、二次転写内ローラ102を含む複数の支持ローラにより張架されており、図中反時計回りに回転可能である。画像形成部2a~2dの各感光ドラム3a~3dは、中間転写ベルト103の回転方向の上流から感光ドラム3a、感光ドラム3b、感光ドラム3c、感光ドラム3dの順に配置される。感光ドラム3a~3dの中間転写ベルト103を挟んで対向する位置には、一次転写ローラ101a~101dが設けられる。感光ドラム3a~3dに形成されたトナー像は、一次転写ローラ101a~101dにより所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが付与されることで、中間転写ベルト103へ転写される。この際、中間転写ベルト103の回転に応じて、感光ドラム3a~3dから順次、各色のトナー像が重なるように転写される。このように中間転写ベルト103は、画像形成部2a~2dで形成されたトナー像(画像)を担持する像担持体として機能する。
【0019】
二次転写内ローラ102の中間転写ベルト103を挟んで対向する位置には二次転写外ローラ8が設けられる。二次転写外ローラ8は、両端を軸受により回転可能に支持される。二次転写外ローラ8は、軸受を介して中間転写ベルト103に向かって弾性部材により弾性付勢されている。二次転写内ローラ102と二次転写外ローラ8とは、二次転写部Tsを構成する。中間転写ベルト103は、回転することで転写されたトナー像を二次転写部Tsへ搬送する。なお、画像形成部2dと二次転写部Tsとの間の中間転写ベルト103近傍には、色ずれ検出センサ200が設けられている。
【0020】
画像形成装置1は、シートSが収容可能な給紙カセット9a、9b及びシートSが載置可能な手差しトレイ10を備える。シートSは、給紙カセット9a、9b及び手差しトレイ10のいずれかから画像形成装置1へ給紙される。シートSの給送機構には、給紙ローラ11a、11b、11c、レジストローラ12等の搬送ローラが設けられる。給紙ローラ11aは、給紙カセット9aからシートSを搬送経路14へ給紙する。給紙ローラ11bは、給紙カセット9bからシートSを搬送経路14へ給紙する。給紙ローラ11cは、手差しトレイ10からシートSを搬送経路14へ給紙する。レジストローラ12は、給紙されたシートSの斜行補正を行う。レジストローラ12は、中間転写ベルト103によりトナー像が二次転写部Tsに搬送されるタイミングに応じて、シートSを転写前ガイド13を介して二次転写部Tsへ搬送する。
【0021】
二次転写部Tsは、中間転写ベルト103上の4色のトナー画像を、二次転写外ローラ8と中間転写ベルト103とが形成する二次転写ニップ部において、所定の加圧力及び静電的負荷バイアスによりシートSに転写する。トナー像が転写されたシートSは、二次転写部Tsから定着器15へ搬送される。定着器15は、シートSを加熱及び加圧することで、該シートSに画像を定着させる。画像が定着されたシートSは、排出トレイ160、161のいずれかへ排出される。
【0022】
画像形成装置1は、装置内部(機内温度)を検出するための機内温度センサ130を備える。画像形成装置1は、装置外部の温度(機外温度)を検出するための機外温度センサ70を備える。機外温度センサ70は、外部から空気を取り込むための不図示のファンの近傍に配置される。
【0023】
このような画像形成装置1は、異なる色の複数の画像間の色ずれを補正するための色ずれ補正機能を有している。色ずれ検出センサ200は、中間転写ベルト103に形成される色ずれ検出用のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の検出用画像を検出する。検出用画像は、各色のトナー像からなるトナーマークである。色ずれ検出センサ200は、4色すべての検出用画像を検出可能で且つ二次転写部Tsの二次転写外ローラ8のローラ圧によって検出用画像の形状がくずされることのない位置で検出用画像を検出するように配置される。
【0024】
(コントローラ)
図2は、画像形成装置1の動作を制御するためのコントローラの説明図である。コントローラ600は、CPU(Central Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)603、メモリ604、入力IF605、及び出力IF606を備える。CPU601は、メモリ604に格納されるコンピュータプログラムを、RAM603を作業領域に用いて実行することで、画像形成装置1全体の動作を制御する。
【0025】
本実施形態のCPU601は、色ずれ補正を実行する補正モードとして、少なくとも第1モードと第2モードの2種類で動作する。CPU601は、2種類の補正モードのいずれかの補正モードを択一的に選択して実行する。第1モードは、第1実行条件が満たされた場合に画像形成処理の前に色ずれ補正を実行する補正モードである。第2モードは、第2実行条件が満たされた場合に画像形成処理の後に色ずれ補正を実行する補正モードである。
【0026】
入力IF605は、入力インタフェースであり、色ずれ検出センサ200、機内温度センサ130、及び機外温度センサ70が接続される。入力IF605は、色ずれ検出センサ200、機内温度センサ130、及び機外温度センサ70による検出結果を取得してCPU601へ送信する。また、入力IF605は、不図示の入力装置が接続される。入力装置は、例えば画像形成装置1に設けられるタッチパネルや各種のキーボタンである。入力IF605は、入力装置からの指示等をCPU601へ送信する。
【0027】
出力IF606は、出力インタフェースであり、CPU601の指示に応じて各種の信号を外部装置へ送信する。外部装置は、例えば画像形成装置1に設けられるディスプレイである。例えば出力IF606は、CPU601の指示に応じてディスプレイへ画像を表示させる信号を出力する。
【0028】
RAM603は、上記の通り作業領域に用いられる他に、記憶領域607、609~611が設けられる。記憶領域607は、色ずれ補正の必要性を示す色ずれ補正フラグが記憶される。色ずれ補正の必要性は、例えば、前回の色ずれ補正時からの機内温度の温度変化量に基づいて判定される。記憶領域609は、中間転写ベルト103に形成された検出用画像の色ずれ検出センサ200による検出結果(パターン読取データ)が記憶される。記憶領域610は、パターン読取データから検出される色ずれ量を表す色ずれ量データが記憶される。色ずれ量は、例えばイエローの画像の形成位置を基準として、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の形成位置の基準からのずれを表す量である。領域611は、色ずれ量データから算出される色ずれ補正データが記憶される。色ずれ補正時には、色ずれ量に基づいて露光器6による光ビームの書き出しタイミングが補正される。
【0029】
メモリ604は、不揮発性メモリやHDD(Hard Disk Drive)等で構成され、上記のコンピュータプログラムの他に、記憶領域623~629が形成される。記憶領域623は、色ずれ補正を行うタイミングを決定する色ずれ補正実行タイミングが記憶される。記憶領域624は、色ずれ補正フラグの判定基準(閾値)となる温度差T1、T2等の色ずれ補正の実行条件が記憶される。記憶領域625は、最も直近に実行された色ずれ補正時の機内温度センサ130による検出結果(機内温度)が、前回温度Tzとして記憶される。記憶領域626は、画像形成により出力したシートSの積算枚数が総出力枚数Pとして記憶される。記憶領域627は、総出力枚数Pに対するカラーにより画像形成を行ったシートの枚数の比率がカラー比率Cとして記憶される。記憶領域628は、カラー比率Cの高低を判定する閾値であるカラー比率判定条件Yが記憶される。記憶領域629は、総出力枚数Pの量を判定する閾値である出力枚数判定条件Xが記憶される。
【0030】
なお、記憶領域627に記憶されるカラー比率Cは、総出力枚数Pに対する比率の他に、以下のような値を用いることができる。例えば、カラーによる画像形成が指示された比率、イエロー、マゼンタ、シアンに対応する感光ドラム3a、3b、3cの回転時間の比率、ユーザのプリント傾向としてのカラーによる画像形成の比率等である。
【0031】
CPU601は、基本的に従来と同様に色ずれ補正を行う。即ち、CPU601は、画像形成部2a~2dにより中間転写ベルト103上に各色の色ずれ検出用の検出用画像を形成する。CPU601は、中間転写ベルト103上の検出用画像の色ずれ検出センサ200による検出結果(パターン読取データ)を取得する。CPU601は、検出結果から算出される色ずれ量(色ずれ量データ)から補正値(色ずれ補正データ)を取得する。CPU601は、以降の画像形成時において、露光器6による光ビームの書き出しタイミングを補正値に応じて補正する等によりフィードバック制御を行う。ただし、本実施形態では、従来とは異なり、色ずれ補正の実行タイミング(補正モード)がカラー比率Cに応じて決定される。
【0032】
(色ずれ補正の説明)
図3図4図5は、本実施形態の色ずれ補正の説明図である。なお、以下の説明において、露光器6が光ビームで感光ドラム3a~3dを走査する方向が主走査方向であり、主走査方向に直交する方向が副走査方向である。なお、主走査方向は、中間転写ベルト103が回転する方向(搬送方向)に直交する方向である。副走査方向は、中間転写ベルト103が回転する方向(搬送方向)である。
【0033】
図3は、副走査方向の色ずれ補正の説明図である。副走査方向の色ずれ検出用の検出用画像は、イエローの補正パターン501Y、マゼンタの補正パターン501M、シアンの補正パターン501C、及びブラックの補正パターン501Kを含む。各色の補正パターン501Y、501M、501C、501Kは、主走査方向に延びる線状の画像である。イエローの補正パターン501Y、マゼンタの補正パターン501M、シアンの補正パターン501C、及びブラックの補正パターン501Kは、主走査方向に平行で且つ副走査横行に所定の間隔で中間転写ベルト103上に形成される。色ずれ補正の基準色はイエローの補正パターン501Yである。4色の補正パターン501Y、501M、501C、501Kが、1セットの副走査方向の色ずれ検出用の検出用画像となる。
【0034】
副走査方向の色ずれ量は、以下のように測定される。ここでは、マゼンタの副走査方向の色ずれ量について説明する。CPU601は、各補正パターン501Y、501M、501C、501Kの重心位置を色ずれ検出センサ200の検出結果から検出する。色ずれが生じていない場合の各補正パターン501Y、501M、501C、501Kの重心位置をYR1、MR1、CR1、KR1とする。
【0035】
露光器6の熱膨張等により副走査方向の露光位置が変化する場合、マゼンタの補正パターン501Mは、副走査方向にずれて、補正パターン501M’の位置に形成される。マゼンタの補正パターン501M’の重心位置は、位置MR1からずれた位置MR1’になる。イエローの補正パターン501Yに対するマゼンタの補正パターン501M’の副走査方向の色ずれ量は、以下の式で表される。
副走査色ずれ量=(MR1’-YR1)-(MR1-YR1)=MR1’-MR1
【0036】
CPU601は、算出した副走査方向の色ずれ量を補正値として、露光器6による画像書き出しタイミングを調整することで副走査方向の色ずれ補正を行う。他の色のイエローを基準とした副走査方向の色ずれ補正も同様に行われる。なお、ここではイエローを基準色として説明したが、基準色は他の色であってもよい。
【0037】
図4は、主走査方向の色ずれ補正の説明図である。主走査方向の色ずれ検出用の検出用画像は、イエローの補正パターン521Y、522Y、マゼンタの補正パターン521M、522M、シアンの補正パターン521C、522C及びブラックの補正パターン521K、522Kを含む。各色の補正パターン521Y、521M、521C、521Kは、主走査方向に対して所定の角度θ傾いた線状の画像である。各色の補正パターン522Y、522M、522C、522Kは、主走査方向に対して所定の角度-θ傾いた線状の画像である。補正パターン521Y、521M、521C、521Kと補正パターン522Y、522M、522C、522Kとは、主走査方向に対して逆方向に同じ角度傾いて形成されることになる。イエローの補正パターン521Y、マゼンタの補正パターン521M、シアンの補正パターン521C、及びブラックの補正パターン521Kは、それぞれ平行に且つ副走査方向に所定の間隔で中間転写ベルト103上に形成される。イエローの補正パターン522Y、マゼンタの補正パターン522M、シアンの補正パターン522C、及びブラックの補正パターン522Kは、それぞれ平行に且つ副走査方向に所定の間隔で中間転写ベルト103上に形成される。色ずれ補正の基準色はイエローの補正パターン521Y、522Yである。4色の補正パターン521Y、522Y、521M、522M、521C、522C、521K、522Kが、1セットの主走査方向の色ずれ検出用の検出用画像となる。
【0038】
主走査方向の色ずれ量は、以下のように測定される。ここでは、マゼンタの主走査方向の色ずれ量について説明する。主走査方向の色ずれ量も副走査方向の重心位置に基づいて測定される。CPU601は、各補正パターン521Y、522Y、521M、522M、521C、522C、521K、522Kの重心位置を色ずれ検出センサ200の検出結果から検出する。色ずれが生じていない場合の各補正パターン521Y、522Y、521M、522M、521C、522C、521K、522Kの重心位置をYR3、YR4、MR3、MR4、CR3、CR4、KR3、KR4とする。
【0039】
露光器6の熱膨張等により主走査方向の露光位置が変化する場合、マゼンタの補正パターン521M、522Mは、主走査方向にずれて、補正パターン521M’、522M’の位置に形成される。マゼンタの補正パターン521M’、522M’の重心位置は、位置MR3、MR4からずれた位置MR3’、MR4’になる。色ずれ検出センサ200の読取位置は図中点線で表される。イエローの補正パターン521Y、522Yに対するマゼンタの補正パターン521M’、522M’の副走査方向の色ずれ量は、幾何学的に両者が等しいことから、以下の式で表される。
副走査色ずれ量={(MR3’-YR3)-(MR4’-YR4)}/2
【0040】
CPU601は、算出した副走査方向の色ずれ量を、補正パターンが主走査方向に対して傾く角度θを用いて、主走査方向の色ずれ量に変換する。
主走査色ずれ量={(MR3’-YR3)-(MR4’-YR4)}/2tanθ
【0041】
CPU601は、算出した主走査方向の色ずれ量を補正値として、露光器6による画像書き出しタイミングを調整することで主走査方向の色ずれ補正を行う。他の色のイエローを基準とした主走査方向の色ずれ補正も同様に行われる。なお、ここではイエローを基準色として説明したが、基準色は他の色であってもよい。
【0042】
図5は、実際の色ずれ補正時に中間転写ベルト103上に形成される色ずれ検出用の検出用画像の例示図である。本実施形態では、図3の検出用画像と図4の検出用画像とが組み合わされる。図5では、6セットの副走査方向の色ずれ検出用の検出用画像と、2セットの主走査方向の色ずれ検出用の検出用画像とが組み合わされ、それぞれ中間転写ベルト103の主走査方向の両端部に形成される。なお、各検出用画像のセット数や、形成される順序はこれに限らない。また、各補正パターンの形状も、図3図4に例示したものに限らず、縦線、十字線、三角形等であってもよい。
【0043】
(色ずれ補正の実行タイミング)
図6は、色ずれ補正の実行タイミング決定処理を表すフローチャートである。色ずれ補正の実行タイミングは、総出力枚数P、出力枚数判定条件X、カラー比率C、及びカラー比率判定条件Yを条件に用いて決定される。出力枚数判定条件Xは、ここでは2000枚に設定されている。これは、一般的に画像形成装置1が1ヶ月で通紙する枚数に相当する。カラー比率判定条件Yは、ここでは例として30%に設定されている。実行タイミング決定書値により、補正モードが第1モードと第2モードのいずれかに決定される。
【0044】
画像形成装置1が起動した状態では、CPU601は、画像形成を指示するプリント信号の受信を待機する(S101)。プリント信号は、例えば入力装置や外部のコンピュータから入力される。CPU601は、プリント信号を受信すると画像形成処理を実行する(S102)。画像形成処理が終了すると(S103)、CPU601は、記憶領域626に記憶されたその時点の総出力枚数Pを確認する(S104)。CPU601は、総出力枚数Pと出力枚数判定条件Xとを比較する(S105)。総出力枚数Pが出力枚数判定条件X以下の場合(S105:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要がないと判定する。この場合、CPU601は、次のプリント信号の受信を待機する状態になる。
【0045】
総出力枚数Pが出力枚数判定条件Xより多い場合(S105:Y)、CPU601は、画像形成処理を行ったシートSの枚数が色ずれ補正を行う条件を満たしたと判定する。つまり、CPU601は、画像形成を行った回数(枚数)が所定枚数より多ければ、色ずれ補正を行うことを決定する。CPU601は、記憶領域627に記憶されたその時点のカラー比率Cを確認する(S106)。CPU601は、カラー比率Cとカラー比率判定条件Yとを比較する(S107)。CPU601は、カラー比率Cに応じて補正モードを決定する。
【0046】
カラー比率Cがカラー比率判定条件Y未満の場合(S107:Y)、CPU601は、ユーザのプリント傾向としてカラーの画像形成の比率が判定条件よりも低い状態であると判定する。この場合、CPU601は、色ずれ補正の実行タイミング(補正モード)を画像形成前に設定する第1モードに決定する(S108)。CPU601、記憶領域623に色ずれ補正の実行タイミングを第1モードに決定したことを記憶する。
【0047】
カラー比率Cがカラー比率判定条件Y以上の場合(S107:N)、CPU601は、ユーザのプリント傾向としてカラーの画像形成の比率が判定条件よりも高い状態であると判定する。この場合、CPU601は、色ずれ補正の実行タイミング(補正モード)を画像形成後に設定する第2モードに決定する(S109)。CPU601、記憶領域623に色ずれ補正の実行タイミングを第2モードに決定したことを記憶する。
【0048】
(色ずれ補正処理)
図7は、色ずれ補正を含む画像形成処理を表すフローチャートである。この処理は、温度差T1(第1温度差)、温度差T2(第2温度差)、色ずれ補正実行タイミング(補正モード)、プリント信号の色確認結果を条件として行われる。温度差T1、T2は、例えばそれぞれ4℃、3℃に設定されている。ただし温度差T1、T2は、大小関係は関係なく、例示の値に限定されない。
【0049】
画像形成装置1が起動した状態では、CPU601は、画像形成を指示するプリント信号の受信を待機する(S201)。CPU601は、プリント信号を受信すると記憶領域623に記憶される色ずれ補正実行タイミングを確認する(S202)。CPU601は、色ずれ補正実行タイミングが第1モードであるか否かを判定する(S203)。
【0050】
色ずれ補正実行タイミングが第1モードである場合(S203:Y)、CPU601は、受信したプリント信号により指示される画像形成に用いる色を確認する(S204)。ここでCPU601は、プリント信号がカラープリント(複数色を用いた画像形成)と黒単色プリントとのいずれを指示するかを判定することになる。プリント信号が黒単色プリントを指示する場合(S205:N)、色ずれ補正を行う必要がない。そのためにCPU601は、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S209)。
【0051】
プリント信号がカラープリントを指示する場合(S205:Y)、CPU601は、記憶領域625に記憶された、前回の色ずれ補正時に機内温度センサ130が検出した機内温度である前回温度Tzを確認する。CPU601は、現在の機内温度を機内温度センサ130の検出結果から確認する。CPU601は、前回温度Tzと現在の機内温度との差分である温度変化量ΔTを算出する(S206)。CPU601は、温度変化量ΔTと温度差T1とを比較する(S207)。
【0052】
温度変化量ΔTが温度差T1未満である場合(S207:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要が無いと判定し、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S209)。温度変化量ΔTが温度差T1以上である場合(S207:Y)、CPU601は、画像形成処理を行う前に色ずれ補正を行う(S208)。CPU601は、色ずれ補正後にプリント信号に応じた画像形成処理を行う(S209)。
【0053】
色ずれ補正実行タイミングが第2モードである場合(S203:N)、CPU601は、S206の処理と同様の処理により、前回温度Tzと現在の機内温度との差分である温度変化量ΔTを算出する(S210)。CPU601は、温度変化量ΔTと温度差T2とを比較する(S211)。
【0054】
温度変化量ΔTが温度差T2未満である場合(S211:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要が無いと判定し、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S213)。温度変化量ΔTが温度差T2以上である場合(S211:Y)、CPU601は、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S211)。CPU601は、画像形成処理後に色ずれ補正を行う(S214)。
【0055】
以上により画像形成処理が終了する。第1モードの場合、CPU601は、プリント信号が指示する画像形成に用いる色及び機内温度の温度変化量を第1実行条件として、色ずれ補正を画像形成処理の前に実行する。第2モードの場合、CPU601は、機内温度の温度変化量を第2実行条件として、色ずれ補正を画像形成処理の後に実行する。
【0056】
図6図7の処理によると、カラー比率判定条件Yは、ユーザのプリント傾向に応じて色ずれ補正を画像形成の前後いずれで行うかを判定するための閾値となる。枚数判定条件Xは、ユーザのプリント傾向を判定するための閾値となる。温度差T1、T2は、色ずれ補正自体の実行を判定するための閾値となる。
【0057】
CPU601は、総出力枚数Pが所定値(枚数判定条件X=2000枚)を超えた場合に、ユーザのプリント傾向としてのカラー比率Cと所定値(カラー比率判定条件Y=30%)とを比較する。この比較結果に応じて、色ずれ補正を画像形成の前後のいずれで行うかを表す補正モード(第1モード、第2モード)が決定される。
【0058】
カラー比率Cがカラー比率判定条件Yより小さい場合、CPU601は、ユーザが黒単色による画像形成を多く行っていると判定する。この場合、CPU601は、色ずれ補正の補正モードを第1モードに決定する。第1モードでは、色ずれ補正後に画像形成処理が行われる。
黒単色による画像形成は、色ずれが発生しない。そのためにCPU601は、第1モードで、プリント信号が黒単色プリントを指示する場合に、色ずれ補正を行わない。CPU601は、第1モードでプリント信号がカラープリントを指示する場合に、前回の色ずれ補正時の機内温度Tzからの機内温度の温度変化量ΔTと所定値(温度差T1=4℃)との比較結果により色ずれ補正を実行するか否かを決定する。CPU601は、温度変化量ΔTが温度差T1より大きければ、色ずれ補正を画像形成処理の前に行う。
【0059】
第1モード時のこのような処理により、色ずれ補正が第1実行条件を満たして必要な場合にのみ実行される。そのために色ずれ補正の回数の増加を抑止できる。色ずれ補正回数の増加を抑止は、現像器7a~7dや感光ドラム3a~3d、中間転写ベルト103といった構成部品の回転時間の増加を防止し、構成部品の寿命低下を減少させる。また、カラー比率が少ないユーザの場合、カラープリント時にのみ色ずれ補正が行われる。そのために色ずれ補正の回数を減らすことができ、ユーザが感じるダウンタイムを少なくすることができる。本実施形態では、黒単色プリントの場合に色ずれ補正を行わない例を示したが、イエロー、マゼンタ、シアンの単色プリントの場合でも色ずれ補正を行わないようにしてもよい。
【0060】
カラー比率Cがカラー比率判定条件Yより大きい場合、CPU601は、ユーザが複数色による画像形成を多く行っていると判定する。この場合、CPU601は、色ずれ補正の補正モードを第2モードに決定する。第2モードでは、色ずれ補正が画像形成処理後に行われる。第2モードでは、プリント信号がカラープリントと黒単色プリントとのいずれを指示するかは色ずれ補正の実行条件に含まれない。CPU601は、前回の色ずれ補正時の機内温度Tzからの機内温度の温度変化量ΔTと所定値(温度差T2=3℃)との比較結果により色ずれ補正を実行するか否かを決定する。CPU601は、温度変化量ΔTが温度差T2より大きければ、色ずれ補正を画像形成処理の後に行う。
【0061】
第2モード時のこのような処理により、色ずれ補正が第2実行条件を満たして必要な場合にのみ実行される。第2モードではカラー比率が比較的高いために、黒単色プリント時に色ずれ補正が実行される回数は減少傾向になり、構成部品の寿命の低下への影響が小さくなる。また、色ずれ補正が実行されるタイミングが画像形成処理後になるために、ユーザが感じるダウンタイムを大幅に削減することができる。
【0062】
(露光器の温度を実行条件に追加した場合)
画像形成装置1は、色ずれ量の予測を露光器6の温度に応じて行ってもよい。この場合、露光器6の内部及び周囲に温度センサが配置される。図8は、露光器6の説明図である。露光器6は、筐体66内に回転多面鏡ユニット41及び露光器内温度センサ65を備え、筐体66外に露光器外温度センサ56及び回路基板60を備える。
【0063】
回転多面鏡ユニット41は、感光ドラム3a~3d上に光ビームを走査させる。回転多面鏡ユニット41が動作することで、筐体66内の温度が上昇する。露光器内温度センサ65は、筐体66の内部温度(露光器内温度)を検出する。回路基板60は、露光器6の動作をCPU601からの指示に応じて制御する。回路基板60が動作することで筐体66周辺の温度が上昇する。露光器外温度センサ56は、筐体66の周囲(回路基板60の周囲)の温度(露光器外温度)を検出する。露光器内温度センサ65及び露光器外温度センサ56の検出結果は、CPU601へ送信される。なお、露光器外温度も画像形成装置1の機内温度である。
【0064】
画像形成装置1の操作者は、1日の最初の画像形成時に待ち時間短縮と画質とのいずれを優先するかを選択することができる。図9は、このような選択を行う選択画面の例示図である。この選択画面は、画像形成装置1に設けられる不図示のタッチパネルのディスプレイに表示される。CPU601は、出力IF606を介してタッチパネルのディスプレイに選択画面を表示させる。
【0065】
操作者は、選択画面から、ボタン401、402のいずれかを選択する。待ち時間短縮を優先する場合、操作者はボタン401を選択する。画質(色ずれ)を優先する場合、操作者はボタン402を選択する。ボタン401、402の選択は、例えばタッチパネルの押下や、キーボタン等の入力装置の操作により行われる。選択内容は、入力IF605を介してCPU601に入力される。
【0066】
図10は、1日の最初の画像形成時の処理を表すフローチャートである。この場合、メモリ604には、前回画像形成を行った時刻が記憶される。操作者は、図9の選択画面から待ち時間短縮と画質とのいずれを優先するかを選択している。選択内容は、メモリ604に記憶されている。また、メモリ604には、前回の色ずれ補正時の機外温度、露光器外温度、及び露光器内温度が記憶される。この処理では、機外温度、露光器外温度、及び露光器内温度が色ずれ補正の実行条件となる。
【0067】
CPU601は、プリント信号を受信すると(S301)、前回の画像形成処理からの経過時間t1を算出する(S302)。CPU601は、メモリに記憶される前回の画像形成処理の時刻と現在時刻とから経過時間t1を算出する。CPU601は、経過時間t1が所定時間以上(ここでは8時間以上)であるか否かを判定する(S303)。所定時間は、例えば前日の最後の画像形成処理から当日の最初の画像形成処理までの時間に相当する時間に設定される。
【0068】
経過時間t1が所定時間以上(8時間以上)である場合(S303:Y)、CPU601は、図9に例示した選択画面による選択内容が待ち時間短縮を優先するか否かを判定する(S304)。待ち時間短縮の優先が選択されている場合(S304:Y)、CPU601は、露光器内温度センサ65から露光器内温度の検出結果を取得し、且つ露光器外温度センサ56から露光器外温度の検出結果を取得する。CPU601は、取得した露光器外温度及び露光器内温度と、前回の色ずれ補正時の露光器外温度及び露光器内温度と、の温度変化量を算出する。CPU601は、算出した温度変化量に基づいて現在の色ずれ量を予測し、予測結果に基づいて色ずれ補正を行う(S306)。CPU601は、画像調整後に画像形成処理を行う(S310)。色ずれ量の予測は、所定の補正式を用いて行ってもよく、算出した温度変化量と色ずれ量との関係を表すテーブルを用いて行ってもよい。
【0069】
経過時間t1が所定時間未満(8時間未満)である場合(S303:N)、或いは選択画面による選択内容が画質優先である場合(S304:N)、CPU601は、機外温度T2、露光器外温度T3、及び露光器内温度T4を取得する(S305)。CPU601は、機外温度センサ70から機外温度T2を取得し、露光器外温度センサ56から露光器外温度T3の検出結果を取得し、露光器内温度センサ65から露光器内温度T4の検出結果を取得する。
【0070】
CPU601は、取得した機外温度T2、露光器外温度T3、及び露光器内温度T4と、前回の色ずれ補正時の機外温度、露光器外温度、及び露光器内温度とのそれぞれの温度変化量ΔT2、ΔT3、ΔT4を算出する(S307)。CPU601は、機外温度の温度変化量ΔT2、露光器外温度の温度変化量ΔT3、露光器内温度の温度変化量ΔT4が、それぞれに設定される所定の温度差以上であるか否かを判定する(S308)。ここでは、CPU601は、機外温度の温度変化量ΔT2と所定の温度差(4℃)を比較し、露光器外温度の温度変化量ΔT3と所定の温度差(3℃)を比較し、露光器内温度の温度変化量ΔT4と所定の温度差(3℃)を比較する。CPU601は、比較の結果、いずれか1つでも温度変化量が所定の温度差以上であれば(S308:Y)、色ずれ補正を実行し(S309)、その後画像形成処理を行う(S310)。CPU601は、算出した温度変化量に基づいて現在の色ずれ量を予測して色ずれ補正を行う。色ずれ量の予測は、所定の補正式を用いて行ってもよく、算出した温度変化量ΔT2、ΔT3、ΔT4と色ずれ量との関係を表すテーブルを用いて行ってもよい。CPU601は、比較の結果、いずれの温度変化量も所定の温度差未満であれば(S308:N)、色ずれ補正を実行せずに画像形成処理を行う(S310)。
【0071】
以上のように画像形成装置1は、1日の最初の画像形成処理時に、待ち時間短縮と画質とのいずれを優先するかを選択可能である。画像形成装置1は、その選択結果に応じた色ずれ補正を行う。色ずれ補正時には、露光器6の内外の温度の温度変化量を色ずれ補正の実行条件とすることができる。画像形成装置1は、このような処理により、ダウンタイムの低減と構成部品の寿命の低下の抑止を両立することができる。
【0072】
(色ずれ補正処理の別の例)
図11は、色ずれ補正を含む画像形成処理を表す別のフローチャートである。この処理は、温度差Ta(第1温度差)、温度差Tb(第2温度差)、色ずれ補正実行タイミング(補正モード)、プリント信号の色確認結果を条件として行われる。温度差Ta、Tbは、例えばそれぞれ5℃、3℃に設定されている。ただし温度差Ta、Tbは、大小関係は関係なく、例示の値に限定されない。
【0073】
画像形成装置1が起動した状態では、CPU601は、画像形成を指示するプリント信号の受信を待機する(S201)。CPU601は、プリント信号を受信すると記憶領域623に記憶される色ずれ補正実行タイミングを確認する(S202)。CPU601は、色ずれ補正実行タイミングが第1モードであるか否かを判定する(S203)。
【0074】
色ずれ補正実行タイミングが第1モードである場合(S203:Y)、CPU601は、受信したプリント信号がカラープリント(複数色を用いた画像形成)と黒単色プリントとのいずれを指示するかを判定する(S401)。プリント信号が黒単色プリントを指示する場合(S401:N)、色ずれ補正を行う必要がない。そのためにCPU601は、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S404)。
【0075】
プリント信号がカラープリントを指示する場合(S401:Y)、CPU601は、前回温度と現在の機内温度との差分である温度変化量ΔTと温度差Taとを比較する(S402)。温度変化量ΔTが温度差Ta未満である場合(S402:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要が無いと判定し、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S404)。温度変化量ΔTが温度差Ta以上である場合(S402:Y)、CPU601は、画像形成処理を行う前に色ずれ補正を行う(S403)。CPU601は、色ずれ補正後にプリント信号に応じた画像形成処理を行う(S404)。
【0076】
色ずれ補正実行タイミングが第2モードである場合(S203:N)、CPU601は、S401の処理と同様に、プリント信号がカラープリント(複数色を用いた画像形成)と黒単色プリントとのいずれを指示するかを判定する(S405)。プリント信号がカラープリントを指示する場合(S405:Y)、CPU601は、S402の処理と同様に、温度変化量ΔTと温度差Taとを比較する(S406)。温度変化量ΔTが温度差Ta未満である場合(S406:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要が無いと判定し、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S404)。温度変化量ΔTが温度差Ta以上である場合(S406:Y)、CPU601は、画像形成処理を行う前に色ずれ補正を行う(S403)。CPU601は、色ずれ補正後にプリント信号に応じた画像形成処理を行う(S404)。
【0077】
プリント信号が黒単色プリントを指示する場合(S405:N)、CPU601は、プリント信号に応じた画像形成処理を行う(S407)。画像形成処理後にCPU601は、温度変化量ΔTと温度差Tbとを比較する(S408)。温度変化量ΔTが温度差Tb以上である場合(S408:Y)、CPU601は、色ずれ補正を行い、処理を終了する(S409)。一方、温度変化量ΔTが温度差Tb未満である場合(S408:N)、CPU601は、色ずれ補正を行う必要が無いと判定し、処理を終了する。
【0078】
以上により画像形成処理が終了する。第1モードの場合、CPU601は、プリント信号が指示する画像形成に用いる色及び機内温度の温度変化量を第1実行条件として、色ずれ補正を画像形成処理の前に実行するか否かを制御する。第2モードの場合、CPU601は、機内温度の温度変化量を第2実行条件として、色ずれ補正を画像形成処理の後に実行するか否かを制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11