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特許7512469画像処理装置及び画像処理装置の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023067281
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2021080559の分割
【原出願日】2015-06-02
(65)【公開番号】P2023080366
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】内田 弘樹
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083276(JP,A)
【文献】特開2014-083268(JP,A)
【文献】特開2012-071113(JP,A)
【文献】特開2014-045869(JP,A)
【文献】特開2014-113207(JP,A)
【文献】特開昭61-020539(JP,A)
【文献】特開2014-039883(JP,A)
【文献】吉村長久、大石明生,眼科ケア2011年臨時増刊 実践! 診断に役立つOCT画像撮りかた講座,株式会社メディカ出版,2011年10月05日,p. 148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の断層画像に2つの層境界の形状を有する2つのラインを重畳して表示手段に表示させる表示制御手段と、
検者からの指示に応じて前記断層画像における深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域を深度範囲として設定する設定手段と、
前記設定された深度範囲に基づいて前記被検眼の正面画像である二次元画像を生成する生成手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
被検眼の断層画像に2つの層境界の形状を有する2つのラインを重畳して表示手段に表示させる表示制御手段と、
検者からの指示に応じて前記断層画像における深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域である深度範囲に基づいて前記被検眼の正面画像である二次元画像を生成する生成手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項3】
前記深度範囲は、マウスによる検者からの指示に応じて前記断層画像における深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域として設定される請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記2つの層境界は、前記被検眼の断層画像から抽出された前記被検眼の網膜の層境界を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
マウスによる検者からのクリックで指示された、前記2つのラインのうちのカーソル上の1つのラインが、マウスによる検者からの指示に応じて前記断層画像における深度方向に移動可能に構成される請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示される断層画像における任意の深度位置に設定された2つの直線の間を前記深度範囲として設定可能に構成される請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、走査された測定光の被検眼からの戻り光と前記測定光に対応する参照光とを干渉させた干渉光に基づいた複数の画素値が前記被検眼の深さ方向に並ぶ画素値列であって、複数の画素値列におけるそれぞれの画素値列から所定の選択基準に従って選択された画素値に基づいて前記二次元画像を生成する請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記複数の画素値列の各々において、画素値の大きさが所定の順位となる画素値を選択するための選択基準である請求項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記被検眼の注目領域内で前記深度範囲が選択される第一のモードと、前記注目領域と前記注目領域よりも広い領域とを含む範囲を前記深度範囲とする第二のモードとに応じて、前記所定の選択基準を変更する基準変更手段を更に備える請求項又はに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記基準変更手段は、前記第一のモードと前記第二のモードとのそれぞれに対応付けて予め決定されている選択基準に、前記所定の選択基準を変更する請求項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記予め決定されている選択基準は、前記深度範囲の大きさが異なることにより前記深度範囲に含まれる注目領域の占める割合が異なることが考慮されて決定されている請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記基準変更手段は、前記深度範囲に含まれる注目領域の占める割合に応じて前記所定の選択基準を変更する請求項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記層境界は、ILM(網膜-硝子体境界)、NFL/GCL境界、GCL/IPL境界、IPL/INL境界、IS/OSライン、RPE、及びBMのうちの少なくとも一つを含む請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
走査された測定光の被検眼からの戻り光と前記測定光に対応する参照光とを干渉させた干渉光を検出する検出手段を備える、光コヒーレンストモグラフィによる撮影装置と、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
を備える撮影システム。
【請求項15】
被検眼の断層画像に2つの層境界の形状を有する2つのラインを重畳して表示手段に表示させる工程と、
検者からの指示に応じて前記断層画像の深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域を深度範囲として設定する工程と、
前記設定された深度範囲に基づいて前記被検眼の正面画像である二次元画像を生成する工程と、
を含む画像処理装置の作動方法。
【請求項16】
被検眼の断層画像に2つの層境界の形状を有する2つのラインを重畳して表示手段に表示させる工程と、
検者からの指示に応じて前記断層画像の深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域である深度範囲に基づいて前記被検眼の正面画像である二次元画像を生成する工程と、
を含む画像処理装置の作動方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の画像処理装置の作動方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉で得られた断層画像の情報から二次元の画像を得る画像処理装置及び画像処理装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多波長光波干渉を利用した光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)による撮影装置(以降OCT装置と称する。)が、知られている。OCT装置は、例えば内視鏡での内蔵情報や、眼科装置での網膜の情報を得るために用いられ、人体に対する適用分野を広げつつある。特に眼に適用したOCT装置は、眼科用機器として網膜の専門外来では必要不可欠な装置になりつつある。
【0003】
OCT装置では、低コヒーレント光である測定光をサンプルに照射し、干渉系を用いてそのサンプルからの後方散乱光を測定することで、画像の取得を可能にしている。そして、眼に適用した場合には、測定光を被検眼上で走査することにより被検眼の断層画像を高解像度に撮像することが可能である。
【0004】
また、複数の断層画像から疑似的に眼底を正面から見た二次元画像(以下、「二次元画像」と呼ぶ。)を生成する技術が知られている。二次元画像を生成する方法として、1回のAスキャンによって得られた深さ方向の画素値列の中から画素値の大きさの順に基づき画素値を選択する。そして、それら選択された画素値を全てのAスキャンに対して得ることで、断層画像のみで網膜の平面画像と類似した二次元画像(Projection画像)を生成している(特許文献1)。
【0005】
また、特許文献1には、網膜の所定層を選択した場合に、当該所定層に関する二次元画像を生成する方法も開示されている。当該方法では、その層内における画素値列から画素値の大きさの順に基づき画素値を選択し、二次元画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-45869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、網膜の深さ方向における深度範囲の選択の仕方によっては、良好な二次元画像が得られないことがある。
【0008】
また、例えば病変を有する層に関しての二次元画像を得ようとした場合、該病変の影響を受けた組織に対応する画素値がその周辺部と大きく異なることが生じ得る。このとき、該病変に対応する画素値が含まれる深度範囲の選択が求められる
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、良好な二次元画像を得ることを可能とする画像処理装置及び画像処理装置の作動方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る画像処理装置は、
被検眼の断層画像に2つの層境界の形状を有する2つのラインを重畳して表示手段に表示させる表示制御手段と、
検者からの指示に応じて前記断層画像における深度方向に移動可能な前記2つのラインに挟まれた領域を深度範囲として設定する設定手段と、
前記設定された深度範囲に基づいて前記被検眼の正面画像である二次元画像を生成する生成手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つによれば、良好な二次元画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置を有する撮影システムの構成図である。
図2図1に例示した撮影システムを構成する眼科装置の側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図1に示す撮影システムに供せられる撮影装置の光学系の構成図である。
図5】第1の実施形態の第一のモードにおける二次元画像生成の流れを示すフローチャートである。
図6】Aスキャン画像の画素値列を示す説明図である。
図7】画素値の並べ替えの一例を示す説明図である。
図8】第1の実施形態の第二のモードにおける二次元画像生成の流れを示すフローチャートである。
図9】深度範囲の設定例を示す説明図である。
図10図1に示す撮影システムにおける断層画像及び二次元画像の表示例を示す図である。
図11図1に示す撮影システムにおけるProjection画像及びEnFace画像の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関わる本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置100及びそれと接続される撮影装置1を有する撮影システム1000の構成例を示す図である。本形態に係る画像処理装置100は、中央演算処理装置(CPU)10、主メモリ11、磁気ディスク12、及び表示メモリ13で構成される。また、撮影システム1000は、モニタ928、マウス929-1、及びキーボード929-2を有する。なお、モニタ928がタッチパネルを有することとしてもよい。
【0015】
CPU10は、主として、画像処理装置100の各構成要素の動作を制御する。主メモリ11は、CPU10が実行する制御プログラムを格納したり、CPU10によるプログラム実行時の作業領域を提供する。磁気ディスク12は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライバ、後述する再構成処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等を格納する。表示メモリ13は、モニタ928のための表示用データを一時記憶する。モニタ928は、例えば、CRTモニタや液晶モニタ等であり、表示メモリ13からのデータに基づいて画像を表示する。マウス929-1及びキーボード929-2はユーザによるポインティング入力及び文字等の入力をそれぞれ行う。上記の各構成要素は共通バス17により互いに通信可能に接続されている。
【0016】
画像処理装置100は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して撮影装置1と接続されており、撮影装置1から画像データを取得できる。なお、本発明の形態はこれに限定されず、これらの機器との接続は、例えば、USBやIEEE1394等の他のインターフェイスを介して行ってもよい。また、これらのデータを管理するデータサーバ等の外部装置3から、LAN等を介して必要なデータを読み込む構成であってもよい。また、画像処理装置100に記憶装置、例えば、FDD、CD-RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等を接続し、それらのドライブから必要なデータを読み込むようにしてもよい。
【0017】
図2は、以上の構成により眼科装置の態様にて構築された該撮影装置1の側面図である。同図に示す撮影装置1は、外部固視標324、顎台323、ベース部951、ステージ部950、及び光学ヘッド900を有する。光学ヘッド900は、被検眼の前眼画像、及び眼底の表面画像及び断層画像を撮像するための測定光学系である。ステージ部950は、光学ヘッド900を図中xyz方向に不図示のモータを用いて移動可能とした移動部を構成する。ベース部951は、後述の分光器を内蔵する。
【0018】
パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と称する。)925はステージ部の制御部を兼ね、画像処理装置100を有する。顎台323は、被検者の顎と額とを固定することで、被検者の眼(被検眼)の固定を促す。外部固視標324は、被検者の眼を固視させるのに使用する。また、画像処理装置100を光学ヘッド900、あるいはステージ部950に組み込むこともできる。この場合には撮影装置1と画像処理装置100が撮影装置として一体的に構成される。
【0019】
図3は、画像処理装置100の機能構成を示すブロック図であり、該画像処理装置100は再構成部1100、生成部1200、及び層認識部1300を有する。再構成部1100は再構成手段として機能し、測定光の被測定物体からの戻り光と参照光とを干渉させて得た干渉光に基づいて被測定物体の所定範囲の断層画像を得る。より詳細には、センサからの出力値に対して波数変換と高速フーリエ変換(FFT)処理とを行い、被検眼眼底上の一点における深さ方向の断層画像(Aスキャン画像)として再構成する。生成部1200は、再構成部1100で得られた断層画像の深さ方向のそれぞれの画素値列から所定の画素をそれぞれの画素値列毎に選択して二次元画像を生成する生成手段として機能する。層認識部1300は、再構成部1100で得られた断層画像において被測定対象物(網膜)の層構造を抽出し、それぞれの層境界の形状を特定する。
【0020】
図4は撮影装置1の測定光学系および分光器の構成を説明する図である。光学ヘッド900部の内部、及びベース部951の内部に配置される光学要素について、以下に説明する。
【0021】
なお、本実施形態では、被測定物体としての被検眼107を例示して以下の説明を行う。光学ヘッド900では、該被検眼107に対向して対物レンズ135-1が設置される。該対物レンズ135-1の光軸上には、第1ダイクロイックミラー132-1及び第2ダイクロイックミラー132-2が配置される。被検眼107に至る光路は、第1ダイクロイックミラー132-1によって前眼観察用の光路353へ、波長帯域に応じて分岐される。また分岐後の光路は更に、第2ダイクロイックミラー132-2によって固視灯用の光路352と、眼底観察のためのOCT光学系の光路351とに、波長帯域ごとに分岐される。
【0022】
固視灯用光路352上には、被検眼107側より順に、合焦レンズ135-3、レンズ135-4、穴あきミラー303、第3ダイクロイックミラー132-3が配置される。第3ダイクロイックミラー132-3の反射方向にはCCD172が、透過方向には固視灯191が配置される。ここで、合焦レンズ135-3は、固視標191および眼底観察用のCCD172の合焦調整のため不図示のモータによって光路352に沿った方向に駆動される。
【0023】
穴あきミラー303は、レンズ135-4と第3ダイクロイックミラー132-3の間に配置され、光路352から光路354への光路の分岐を為す。
【0024】
光路354は、被検眼107の眼底を照明する照明光学系を形成している。被検眼107の位置合わせに用いられる眼底観察用照明光源であるLED光源316、被検眼107の眼底の撮像に用いるストロボ管314が設置されている。該照明光学系は、最奥のLED光源316より順に配置される、コンデンサレンズ315、ストロボ管314、コンデンサレンズ313、ミラー317、リングスリット312、レンズ311及びレンズ309を有する。
【0025】
LED光源316とストロボ管314とからの照明光はリングスリット312によってリング状の光束となり、孔あきミラー303によって反射され、被検眼107の眼底127を照明する。LED光源316は、780nm付近を中心波長とする光源である。
【0026】
前述したように、光路352上の穴あきミラー303以降には、第3ダイクロイックミラー132-3が配置される。該第3ダイクロイックミラー132-3による眼底観察用のCCD172及び固視灯191への光路分岐は、他のダイクロイックミラーと同じく波長帯域ごとにおこなわれる。
【0027】
CCD172は眼底観察用照明光であるLED光源316から発せられる光の中心波長、具体的には780nm付近に感度を持つものであり、CCD制御部102に接続されている。一方固視標191は可視光を発生して被検者の固視を促すものであり、固視標制御部103に接続されている。
【0028】
CCD制御部102及び固視標制御部103は、共に演算部104に接続されており、演算部104を通じて、データはパソコン925へ入出力される。
【0029】
第1ダイクロイックミラー132-1に分岐された光路353には、分岐部より順に、レンズ135-2及び前眼観察用の赤外線CCD171が配置される。このCCD171は不図示の前眼観察用照明光の波長、具体的には970nm付近に感度を持つものである。また、光路353には、不図示のイメージスプリットプリズムが配置されており、被検眼107に対する光学ヘッド900部のz方向の距離(被検眼107に対する接近及び離間の方向)を、前眼観察画像中のスプリット像として検出することができる。
【0030】
光路351は前述の通りOCT光学系を成しており、実際に被検眼107の網膜の断層画像を撮像するための構成が配置される。より具体的には、断層画像を形成するための干渉信号を得るための構成が配置される。光路351には、第2ダイクロイックミラー132-2から順に、XYスキャナ134、合焦レンズ135-5、及びレンズ135-6が配置され、ファイバー131-2端部より当該光路351に測定光が供給される。
【0031】
XYスキャナ134は、測定光を眼底上で走査するために用いられる。なお、XYスキャナ134は一枚のミラーとして図示してあるが、XY2軸方向の走査を行うものである。合焦レンズ135-5は、後述する光ファイバー131-2の端部から出射する光源101からの光を眼底127上に合焦調整をするために不図示のモータによって光路351に沿って駆動される。また、この合焦調整によって眼底127からの光は、同時に光ファイバー131-2先端にスポット状に結像されて入射されることとなる。
【0032】
次に、光源101からの光路と参照光学系、分光器の構成について説明する。
【0033】
光源101は、光ファイバー131-1を介して光カプラー131に接続される。光カプラー131は光ファイバー131-1及び131-2に加え、光ファイバー131-3及び131-4に接続されている。これら光ファイバーは光カプラー131に接続されて一体化されているシングルモードに光ファイバーである。光源101から射出された光は光カプラー131において測定光と参照光とに分割され、測定光は光ファイバー131-2を介して光路351へ、参照光は光ファイバー131-3を介して後述する参照光路へ導かれる。参照光路には、該光路奥より順に、ミラー132-4、分散補償用ガラス115、及びレンズ135-7が配置される。分散補償用ガラス115は、測定光と参照光の分散を合わせるために参照光路中に挿入される。
【0034】
該参照光路を経た参照光は光ファイバー131-3の端部に入射され、同様に光カプラー131に戻った測定光と合波されて光ファイバー131-4を経て分光器180に導かれる。本実施形態におけるこれらの構成は、マイケルソン干渉系を構成している。
【0035】
測定光は前述のOCT光学系光路を通じ、観察対象である被検眼107の眼底に照射され、網膜による反射や散乱により同じ光路を通じて前述したように光カプラー131に到達する。一方、参照光は光ファイバー131-3、レンズ135-7、分散補償ガラス115を介してミラー132-4に到達し反射される。そして同じ光路を戻り光カプラー131に到達する。
【0036】
光カプラー131によって、測定光と参照光とは合波され干渉光となる。ここで、測定光の光路長と参照光の光路長がほぼ同一となったときに干渉を生じる。ミラー132-4は不図示のモータおよび駆動機構によって光軸方向に調整可能に保持され、被検眼107によって変わる測定光の光路長に参照光の光路長を合わせることが可能である。干渉光は光ファイバー131-4を介して分光器180に導かれる。
【0037】
また、測定光側の偏光調整部139-1が、光ファイバー131-2中に設けられる。参照光側の偏光調整部139-2も、光ファイバー131-3中に設けられる。これらの偏光調整部は光ファイバーをループ状に引き回した部分を幾つか持ち、このループ状の部分をファイバーの長手方向を中心として回動させることでファイバーに捩じりを加える。この操作によって、測定光と参照光の偏光状態を各々調整して合わせることが可能となる。本装置ではあらかじめ測定光と参照光の偏光状態が調整されて固定されている。
【0038】
次に分光器180について述べる。分光器180はレンズ135-8、レンズ135-9、回折格子181、及びラインセンサ182から構成される。光ファイバー131-4から出射された干渉光はレンズ135-8を介して略平行光となった後、回折格子181で分光され、レンズ135-3によってラインセンサ182に結像される。ラインセンサ182の出力は、パーソナルコンピュータ925へと入力される。
【0039】
次に、光源101の周辺について説明する。光源101には、代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)を用いる。該光源101から発せられる光の中心波長は855nm、波長バンド幅は約100nmである。ここで、バンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメータである。また、光源の種類としては、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。中心波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。また、中心波長は得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましい。双方の理由から中心波長を855nmとした。
【0040】
なお、本実施形態では干渉計としてマイケルソン干渉計を用いたが、マッハツェンダー干渉計を用いてもよい。測定光と参照光との光量差に応じて光量差が大きい場合にはマッハツェンダー干渉計を、光量差が比較的小さい場合にはマイケルソン干渉計を用いることが望ましい。
【0041】
次に本撮影装置を用いた被検眼の撮像方法について説明する。
【0042】
まず、検者は本実施例に基づく撮影装置の前に患者を着座させ、被検眼眼底の表面画像の撮影を開始する。光源316を射出した光は、リングスリット312によってリング状の光束となり、孔あきミラー303によって被検眼107に向けて反射される。反射された光は、被検眼107の眼底127を照明する。該照明による眼底127からの反射光束は孔あきミラー303を通過し、CCD172上において結像される。CCD172上にて結像された眼底127の反射光は、CCD制御部102にて眼底の表面画像として画像化され、画像処理装置100へ送信される。
【0043】
次に、撮影装置1はXYスキャナ134を制御することで、被検眼107の眼底における所望部位の断層画像を撮像する、より詳細には所望部位の各位置での深さ方向の輝度情報を取得する。
【0044】
被検眼に向かう測定光は光ファイバー131-2を通過しファイバー端から射出され、XYスキャナ134へ入射する。XYスキャナ134により偏向された測定光は光学系135-1を経由して被検眼眼底127を照射する。そして被検眼で反射した反射光は逆の経路をたどって光カプラー131へと戻される。
【0045】
一方、参照ミラーに向かう参照光は光ファイバー131-3を通過しファイバー端から射出され、コリメート光学系135-7及び分散補償光学系115を通して参照ミラー132-4に到達する。参照ミラー132-4で反射された参照光は逆の経路をたどって光カプラー131へと戻される。
【0046】
光カプラー131に戻ってきた測定光と参照光は相互に干渉し、干渉光となって光ファイバー131-4へと入射し、光学系135-8により略平行化され回折格子181に入射する。回折格子181に入力された干渉光は結像レンズ135-9によってラインセンサ182に結像し、被検眼眼底上の一点における干渉信号を得ることができる。
【0047】
ラインセンサ182の複数の素子で取得された干渉情報を有する画像信号としての出力値を画像処理装置100に出力する。なお、図4では、ストロボ管314の発光で一度に眼底の表面画像を取得する形態を説明したが、SLD光源で発光した光を走査するSLOタイプで眼底の表面画像を得る構成としてもよい。
【0048】
以上述べたOCT光学系の構成は、本実施形態において、走査された測定光の被測定物体からの戻り光と測定光に対応する参照光とを干渉させた干渉光に基づいて被測定物体の深さ方向に並ぶ画素値列を取得する取得手段に対応する。
【0049】
次に画像処理装置100の画像処理方法の流れを説明する。
【0050】
被検眼眼底上の一点における断層情報を取得した後、撮影装置1は走査手段としてのXYスキャナ134の駆動により測定光の照射位置をX方向に移動させ、被検眼眼底上の別の一点の干渉光を発生させる。該別の一点の干渉光はラインセンサ182を経由し、再構成部1100に入力される。再構成部1100は、該入力されたデータに基づいて、被検眼眼底上の別の一点における深さ方向の断層画像(Aスキャン画像)を形成する。該Aスキャンの干渉信号を撮影したXYスキャナ134の位置とAスキャン画像の眼底画像上の座標とは関連付けて記憶されている。
【0051】
このXYスキャナ134による測定光照射位置のX方向への移動を連続して行うことにより、被検眼眼底の水平方向の一枚の断層画像(Bスキャン画像)を再構成部1100は再構成する。
【0052】
XYスキャナ134により測定光照射位置をY方向に一定量移動した後、上述したX方向の走査を再び行うことで、被検眼眼底上の別のY方向位置における眼底の水平断層画像(Bスキャン画像)を再構成部1100は再構成する。このXYスキャナ134による測定光照射位置のY方向移動を繰り返すことで、眼底127の所定範囲をカバーする複数枚の断層画像を形成することができる。本撮影装置1ではY方向に128回の一定量の微小駆動を行いながらBスキャン画像の形成を繰り返すことで、128枚の断層画像を生成する。また、再構成部1100は、128枚の断層画像から三次元の断層画像を再構成(形成)する。
【0053】
次に再構成部1100で生成された断層画像から網膜の二次元画像を生成部1200で生成する。
【0054】
本実施形態において、生成部1200は動作モードとして第一のモードと第二のモードとを有する。第一のモードは、Aスキャン画像のための輝度情報を得た全ての深度範囲に対応する画素から二次元画像を生成する。第二のモードは、輝度情報を得た深度範囲内の所定の深度範囲から二次元画像を生成する。第一のモードで生成される二次元画像(以下、Projection画像と呼ぶ)は強度画像とも呼ばれ、眼底の表面画像と類似したものである。一方、第二のモードで生成される二次元画像(以下、EnFace画像と呼ぶ)は、網膜における任意の深さの情報により生成される平面状の画像であって、眼疾患による網膜層構造の変化を可視化するために用いられる。なお、ユーザはマウス929-1、キーボード929-2およびタッチパネルの少なくとも一つを用いて第一のモードおよび第二モードから一方のモードを選択することが可能である。例えば、ユーザは、モニタに表示された第一のモードを示すGUIおよび第二のモードを示すGUIのうち一方のGUIをマウス929-1を用いてクリックすることでモードを選択することができる。モニタ928は、第一のモードおよび第二モードをプルダウンにより選択可能に表示することとしてもよい。
【0055】
ここで、図5を用いて第一のモードによるProjection画像の生成処理について説明する。前述したように、再構成部1100にて生成された断層画像は生成部1200へと入力される(S2000)。
【0056】
Aスキャン画像は被検眼眼底上の一点における深さ方向の断層画像であり、図6に示すように深さ方向の複数の輝度情報から構成されている。
【0057】
図6の二次元の断層画像はAスキャン画像の集合である。この二次元の断層画像はBスキャン画像である場合と、三次元に再構成された断層画像の断面を示す場合がある。なお、図6からわかるように断層画像には網膜領域とそれ以外の部分とが含まれている。網膜領域とは例えばILMとRPEとにより挟まれた領域である。
【0058】
例えば、本実施形態で用いた撮影装置1では2048の画素を持つラインセンサ182を用いており、FFT後のAスキャン画像Aiは1176個の画素値から画素値列が構成されている。ここでP0は深さ方向の一番浅い部分の輝度情報としての画素値の値を色の濃さで示しており、P1175は深さ方向の一番深い部分の輝度情報としての画素値を示している。これらAスキャン画像から平面画像を得る場合、本撮影装置1は、これら複数の輝度情報の中から一つの輝度情報を選択抽出する。この抽出された輝度情報に対応する画素値は、該Aスキャン画像を得た被検眼眼底上の一点の代表的な強度信号とする。すなわちAスキャンで得られる1176個の画素値から一つの画素値を選択する。
【0059】
ここで、生成部1200は、外部装置3から取得され且つ再構成された断層画像を処理してProjection画像を生成するように構成してもよい。この場合には、輝度情報等は、再構成部1100を介さずに不図示のデータ取得部から直接入力を受ける態様とすることが好ましい。
【0060】
生成部1200は、図7に示すようにAスキャン毎に対応する断層画像の輝度情報を輝度の大きい順に並べ替えを行う。すなわち1176個の画素値列毎に画素値の大小関係に基づいて画素値を順位付けし、画素値の並び替え(ソート処理)を行う(S2010)。なお、同図において、R0は最も明るい輝度情報を画素値として持つ画素であり、R1175は最も暗い輝度情報を画素値として持つ画素である。輝度は干渉の強さを示すため、画素値も干渉の強さに対応している。生成部1200は、更に並び替え後の画素値列における所定順位の画素Rxを選択する。ここで所定順位の画素とは、輝度情報の大きい順に並べ替えた後、先頭からx番目に位置している画素のことである。
【0061】
第一のモードでProjection画像を生成する場合、Aスキャン画像に含まれる全1176個の画素値から所定順位の画素値を選択する。網膜の断層画像を撮影した場合、Aスキャン画像の中で被測定対象物(網膜)の占める割合は約20%程度に留まる。つまり、Aスキャン画像を構成する全1176個の画素のうち約20%が明るい網膜部の画素であり、残りの約80%は被測定対象物以外の暗い画素で構成される。そのため、網膜の平均的な輝度を取得する場合、xは総画素数の半分よりも高順位に位置している画素であることが望ましい。具体的には総画素数1176の画素値列で構成されるAスキャン画像を用いる場合、上位10%の位置に相当する先頭から118番目の画素を所定順位の画素Rxとして選択する(S2020)。
【0062】
生成部1200は、全てのAスキャン画像に対して上位10%の位置に相当する画素Rxを選択し、それらの画素値を用いてProjection画像を生成する(S2030)。
【0063】
このProjection画像はCCD172にて得られる眼底の表面画像や、他の眼底カメラ、SLOで得られる眼底画像と類似した画像であり、疑似的に眼底表面を可視化することが可能である。また、複数の輝度情報の中から有効情報のみを選択的に取得するため、Aスキャン画像に含まれるノイズ成分や干渉の強度が低い暗部の領域に左右されることなく好適な表面画像を得ることが可能である。
【0064】
なお、ここでは、再構成部1100で全データを再構成した後に生成部1200でProjection画像を生成する例で説明した。しかし、Aスキャン毎に再構成された断層画像を生成部1200に順次送信する構成や、Bスキャン毎に再構成された断層画像を生成部1200に順次送信する構成としてもよい。
【0065】
次に図8を用いて第二のモードによるEnFace画像の生成処理について説明する。
【0066】
層認識部1300は二次元の断層画像から網膜の層構造(層境界)を抽出し、それぞれの層境界の形状を特定する。ここで特定される層境界の形状はILM(網膜-硝子体境界)、NFL/GCL境界、GCL/IPL境界、IPL/INL境界、IS/OSライン、RPE、BM等が挙げられる。一般的にEnFace画像においてはRPEや推定RPE(BM)の形状が用いられる事が多いが、角膜形状など画像解析によって得られた任意の形状を用いても良い。特定された層境界の形状は断層画像と共に生成部1200へと入力される(S3000)。ここで、生成部1200は、図示しない取得部が外部装置3から取得した層境界の形状及び断層画像を用いてEnFace画像を生成するように構成してよい。この場合に、生成部1200は、再構成部1100及び層認識部1300を介さずに取得部2000から直接入力を受ける。
【0067】
生成部1200は、入力された層境界の形状に基づき、断層画像を構成する各Aスキャン画像においてEnFace画像を生成するための深度範囲Ziとして、画素値列の一部分を設定する。網膜全層のEnFace画像を得る場合、図9(a)に示すようにILMからRPEまでの深度範囲Zを設定する。また、例えば、RPE近傍の浮腫等を観察する場合、図9(b)に示すように推定RPE形状を有する2本のラインをRPEを挟んで上下に等距離に配置することで深度範囲Ziを設定してもよい。
【0068】
また、深度範囲Ziを設定する2本のラインはマウス929-1等で上下に移動可能に構成することもできる。この場合、推定RPE形状を有するラインの1本をRPE上に設定し、もう1本を脈絡膜下に配置することで、脈絡膜のEnFace画像を得るための深度範囲Ziを設定することもできる。なお、本実施形態では、深さ方向の画素値の選択範囲を設定する際に、表示手段において図9(a)等に表示される表示形態を利用して深度範囲を設定させている。しかし、深度範囲を設定する際の表示形態はこれに限定されず、カーソルによって個々の層境界をクリックして選択する等種々の表示形態を用いることが可能である。この表示形態の表示は、パソコン925において表示制御手段として機能するモジュールにより実行される。例えば、図9(a)に表示された断層画像における2つの層境界がクリック等を用いてユーザにより選択された場合、選択された2つの層境界に挟まれた領域が深度範囲Zとして設定される。クリック等を用いてユーザにより選択される層境界は、断層画像に重畳表示された層境界を示す表示であってもよいし、断層画像自体に含まれる層境界であってもよい。
【0069】
さらに、層境界の形状を用いずに深度範囲Zを設定することもできる。例えば、硝子体のEnFace画像を得るために、断層画像の上端部からILM境界までを深度範囲Zと設定することができる。また、断層画像の任意の深度位置に2本の直線を設定し、その2本の直線の間を深度範囲Zとすることもできる。
【0070】
そして、生成部1200は全てのAスキャン画像Aiに対して深度範囲Ziを設定する(S3010)。生成部1200は、設定された深度範囲に基づきEnFace画像を生成する。即ち、生成部1200における設定手段として機能するモジュールは、選択範囲として深さ方向のそれぞれの画素値列の各々の一部分を深度範囲Ziとして設定する。
【0071】
前述のように各Aスキャン画像Aiは1176個の画素値から画素値列が構成されている。生成部1200は、各Aスキャン画像Aiに対して設定された深度範囲Ziに基づき、深度範囲内に相当する画素値のみを取得し、深度範囲Ziにおける画素値列を生成する。以下、例えば、深度範囲における画素値列に192個の画素値が含まれるものとして説明する。
【0072】
生成部1200は、Aスキャン毎に設定された深度範囲の画素値列内で画素値の大小関係に基づいて画素値を順位付けし、画素値の並び替えを行う(S3020)。そして生成部1200は、所定順位の画素Rxを選択する。ここで所定順位の画素とは、輝度情報の大きい順に並べ替えた後、先頭からx番目に位置している画素のことである。
【0073】
第二のモードでEnFace画像を生成する場合、設定された深度範囲に含まれる全192個の画素値から所定順位の画素値を選択する。Aスキャン画像において深度範囲を設定する場合、深度範囲の中で着目領域(例えば、被測定対象物である網膜)の占める割合はほぼ100%である。これはEnFace画像を作成する場合、着目領域のみが含まれるよう深度範囲を設定するためである。そのため、着目領域の平均的な輝度を取得する場合、xはProjection画像と同じ上位10%の位置では不適切であり、総画素数の半分程度であることが望ましい。具体的には総画素数192の画素値列を用いる場合、上位50%の位置に相当する先頭から81番目の画素を所定順位の画素Rxとして選択する(S3030)。
【0074】
生成部1200は、全てのAスキャン画像に対して深度範囲Zi内の画素値列から上位50%の位置に相当する画素Rxを選択し、それらの画素値を用いてEnFace画像を生成する(S3040)。
【0075】
なお、上記ではEnFace画像を生成する際に深度範囲内の画素値列から上位50%の位置に相当する画素を選択したが、これは上位50%の位置の画素に限るものではない。所定順位は画素値列の輝度分布(ヒストグラム)に応じて設定することもできるし、深度範囲内に占める着目領域の割合に応じて所定順位を可変とすることもできる。例えば、画素値列の輝度分布(ヒストグラム)に応じて所定順位を設定する際に、深度範囲内に含まれる網膜の占める割合に応じて、上位何%の位置の画素を選択するかを変更することもできる。このような構成では、画像に含まれる網膜の割合に応じて適切な画素が選択されるため、患者ごとの網膜厚の違いによらず良好なEnface画像を生成することができる。例えば、層認識部1300はILMとRPEとを断層画像から抽出し、ILMとRPEとに挟まれる領域を網膜の領域として認識する。すなわち、層認識部1300は、断層画像における網膜領域の座標を取得する。一方、生成部1200はユーザにより指定された深度範囲Ziの座標を取得する。そして、生成部1200は層認識部1300から断層画像における網膜領域の座標を取得し、深度範囲Ziの座標と比較することで、深度範囲Zi内において網膜の占める割合を算出することができる。すなわち、生成部1200は画素値列に含まれる注目領域の占める割合を算出することができる。この割合に基づいて生成部1200は自動的に上位何%の位置の画素を選択するかを変更することができる。 なお、生成部1200は、深度範囲Zi内に網膜が含まれる割合が少ない程、より上位の位置の画素を選択するようにする。言い換えれば、生成部1200は、深度範囲Zi内に網膜が含まれる割合が多い程、より下位の位置の画素を選択するようにする。すなわち、基準変更手段の一例である生成部1200は、第二のモードにおいて、画素値列に含まれる注目領域の占める割合に応じて二次元画像の生成に用いる画素値の順位を変更する。
なお、生成部1200はAスキャン画像毎に網膜の占める割合を算出してAスキャン画像毎に上位何%の位置の画素を選択するかを変更することとしてもよいし、複数Aスキャン画像における網膜の占める割合の平均値に基づいて上位何%の位置の画素を選択するかを変更することとしてもよい。また、生成部1200は、第一のモードにおいても、Aスキャン画像に含まれる網膜の割合に応じて上位何%の位置の画素を選択するかを変更することとしてもよい。
【0076】
このような本実施形態において所定順位として述べられる設定された選択範囲に応じた所定の選択基準の変更は、ここで述べたように網膜の割合に例示される患者個々の眼の特徴等に応じて行われることが好ましい。また、予め保存されている患者個人のデータより、任意に選択し条件に基づいて行われても良い。この場合、当該処理は同画像処理装置100中において基準変更手段として機能するモジュールにより実行される。また、この基準変更は、例えば網膜の占める割合の値が閾値を超えるか否かで判断し実行されても良く、検者による入力、指示等に応じて実行されても良い。
【0077】
このEnFace画像はCCD172にて得られる眼底の表面画像とは異なり、深度範囲の設定によって様々な様態の画像を得ることができる。特定の深度範囲内の情報のみで二次元画像を生成するため、深度範囲内における被測定対象物の構造とその構造の変化を顕著に可視化することができる。
【0078】
次に、本実施形態に係る撮影装置1では、生成した眼底の表面画像、断層画像、Projection画像、EnFace画像をモニタ928に表示する。図10に示すように、眼底の表面画像Sと、断層画像Ti、Projection画像Pはモニタ928上に並べて表示される。また、Projection画像P及び表面画像S上には断層画像Tiの取得位置Liが重ねて表示される。Projection画像Pは、不図示の切り替え手段によりEnFace画像Eに切り替えて表示することもできる。或いは、図11に示すように、断層画像Ti、Projection画像P、及びEnFace画像Eをモニタ928上に並べて表示することもできる。
【0079】
なお、本実施形態における画像処理装置100では、128枚の断層画像を生成する。しかし、モニタ928上には選択された1枚の断面としての断層画像Ti(i=0~128)、又は三次元で再構成された断層画像の断面画像Ti(この場合には任意の番号iが振られる)が表示される。検者は入力部929-1、929-2を操作して、表示する断層画像を切り替える切り替え表示可能とすることができる。ここで、断層画像Tiが切り替わると、Projection画像P、EnFace画像E及び表面画像S上に表示される断層画像Tiの取得位置Liの表示位置も更新される。これにより、検者は表示された断層画像Tiが被検眼眼底127上のどの位置の断層画像なのかを容易に知ることができる。
【0080】
そして、取得位置LiがEnFace画像E上におかれた場合、特定の深度範囲における被測定対象物の構造変化と断層画像Tiを対比しながら観察することも可能である。
【0081】
なお、本実施例では被検眼眼底の断層画像に基づいて網膜のProjection画像及びEnFace画像を生成しているが、被検眼前眼部の断層画像に基づいて前眼部のProjection画像及びEnFace画像を生成しても良い。
【0082】
以上述べたProjecion画像及びEnFace画像を生成する生成部1200は、本実施形態において、複数の前記画素値列のそれぞれから所定の選択基準に従って選択された画素値に基づいて二次元画像を生成する。この場合、所定の選択基準は前述した上位何パーセントという基準が例示される。
【0083】
また、この所定の選択基準は、画素値選択時に用いるAスキャン画像中の画素値列として用いる画素の数に応じて変更される。この場合、複数の画素値列の各々において、深さ方向において幾つの或いはどのような条件の範囲に含まれる画素値を用いるかは、選択される画素値の選択範囲を設定する設定手段として機能する画像処理装置100中のモジュールにより実行される。また、設定された選択範囲に応じた所定の選択基準の変更は、同画像処理装置100中において基準変更手段として機能するモジュールにより実行される。
【0084】
前述したように、本発明によれば、深さ方向の全ての情報に基づき二次元画像を生成する場合と、深さ方向の所定範囲内の情報に基づき二次元画像を生成する場合の双方で、良好な二次元画像を得ることが可能となる。
【0085】
[その他の実施形態]
なお、本件は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形、変更して実施することができる。例えば、上記の実施形態では、被測定物体が眼、特に眼底の場合について述べているが、眼以外の皮膚や臓器等の被測定物体に本発明を適用することも可能である。この場合、本発明は眼科装置以外の、例えば内視鏡等の医療機器としての態様を有する。従って、本発明は眼科装置に例示される検査装置のための画像処理装置として把握され、被検眼は被検査物体の一態様として把握されることが望ましい。
【0086】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
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