IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図1
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図2
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図3
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図4
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図5
  • 特許-インプリント装置および物品製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】インプリント装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240701BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023084773
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2018210917の分割
【原出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2023104989
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058735(JP,A)
【文献】特開2018-036544(JP,A)
【文献】特開2018-110269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で、前記インプリント材を硬化させるインプリント処理を実行するインプリント装置であって、
記基板を変形させる第1光を照射する第1光源と、
前記第1光とは波長が異なる、前記基板上に供給された前記インプリント材の粘性を増加させる第2光を照射する第2光源と、
前記第1光と前記第2光とを変調して前記基板に導く変調器と、
前記第1光と前記第2光とを前記変調器に導く第1光学系と、
前記第1光および前記第2光のいずれもが前記基板に照射されない期間において、前記第1光で第1光強度分布を形成する前記変調器の制御と、前記第2光で第2光強度分布を形成する前記変調器の制御と、を切り替える制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記変調器には、前記第1光と前記第2光のうちの一方が選択的に入射されることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記型と前記基板とのアライメントが実行されている期間において、前記インプリント材の粘性を増加させることを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第1光源と前記変調器との間の光路に前記第2光源からの前記第2光を前記変調器へ導く光学素子を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記光学素子はミラーであることを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第1光の強度と前記第2光の強度が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第1光学系は、前記第1光源からの前記第1光と前記第2光源からの前記第2光とを光ファイバへ導くミラーと、前記光ファイバからの前記第1光と前記第2光とを前記変調器へ導く光学系と、含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記変調器は、デジタルミラーデバイスを含み、
前記デジタルミラーデバイスをOFF状態とすることで、前記基板に前記第1光および前記第2光のいずれもが照射されない期間が生じるように制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記インプリント材を硬化させるための光を照射する硬化光源を備え、
前記型と前記基板とのアライメントが完了した後に前記インプリント材を硬化させるための光が前記インプリント材に照射されることによって前記インプリント材が硬化されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記硬化光源からの光と前記変調器によって変調された光のうち一方の光を透過させ、他方の光を反射させる合成ミラーを備えることを特徴とする請求項9に記載のインプリント装置。
【請求項11】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で、前記インプリント材を硬化させるインプリント処理を実行するインプリント装置であって、
前記基板を変形させる第1光を照射する第1光源と、
前記第1光とは波長が異なる、前記基板上に供給された前記インプリント材の粘性を増加させる第2光を照射する第2光源と、
前記第1光と前記第2光とを変調して前記基板に導く変調器と、
前記第1光と前記第2光とを前記変調器に導く第1光学系と、
前記第1光および前記第2光のいずれもが前記基板に照射されない期間において、前記第1光源の点灯と前記第2光源の点灯とが切り替わるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で、前記インプリント材を硬化させるインプリント方法であって、
第1光源からの第1光が第1光学系により変調器に導かれ、変調器で変調された前記第1光を前記基板に導くことによって、前記基板を変形する工程と、
第2光源からの、前記第1光とは波長が異なる第2光が前記第1光学系により前記変調器に導かれ、前記変調器で変調された前記第2光を前記基板に導くことによって、前記基板の上に供給されたインプリント材の粘性を増加させる工程と、
前記第1光で第1光強度分布を形成する前記変調器の制御と、前記第2光で第2光強度分布を形成する前記変調器の制御と、を切り替える切り替え工程と、を有し、
前記切り替え工程は、前記第1光および前記第2光のいずれもが前記基板に照射されない期間において行われる、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で、前記インプリント材を硬化させるインプリント方法であって、
第1光源からの第1光が第1光学系により変調器に導かれ、変調器で変調され前記第1光を前記基板に導くことによって、前記基板を変形する工程と、
第2光源からの、前記第1光とは波長が異なる第2光が前記第1光学系により前記変調器に導かれ、前記変調器で変調され前記第2光を前記基板に導くことによって、前記基板の上に供給されたインプリント材の粘性を増加させる工程と、
前記第1光源の点灯と前記第2光源の点灯とを切り替える切り替え工程と、を有し、
前記切り替え工程は、前記第1光および前記第2光のいずれもが前記基板に照射されない期間において行われる、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項14】
前記型と前記基板とのアライメント工程をさらに有し、
前記アライメント工程が実行されている期間に、前記インプリント材の粘性を増加させる工程を行うことを特徴とする請求項12又は13に記載のインプリント方法。
【請求項15】
前記インプリント材を硬化させるための光を照射する硬化光源を備え、
前記型と前記基板とのアライメントが完了した後に前記インプリント材を硬化させるための光が前記インプリント材に照射されることによって前記インプリント材が硬化する硬化工程をさらに有することを特徴とする請求項12又は13に記載のインプリント方法。
【請求項16】
請求項1乃至1のいずれか1項に記載のインプリント装置により基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する工程と、
を含み、前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの物品を製造する方法として、基板の上のインプリント材と型を接触させ、型を接触させた状態でインプリント材を硬化させることによって、インプリント材を成形するインプリント方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、基板のパターン形成領域にレジストを滴下し、そのレジストにテンプレートを押し当て、パターン形成領域とその外側の領域との境界を含む光照射領域に光を照射し、その後にパターン形成領域に光を照射するインプリント装置が記載されている。該光照射領域への光の照射によって、該光照射領域上のレジストが硬化し、該パターン形成領域へのレジストの進入が防止される。特許文献2には、基板のパターン領域を加熱によって変形させる加熱機構と、型のパターン領域を変形させる形状補正機構とを備えるインプリント装置が記載されている。また、加熱の分布を形成する手段としてデジタルミラーデバイスを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-069918号公報
【文献】特開2013-102132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプリント装置において、型を保持して駆動する機構の上方には種々のデバイスが配置されうる。例えば、基板の上のインプリント材を硬化させるための硬化部、基板に光を照射して加熱することで基板を変形させる変形部、基板と型との相対的な位置を検出するための検出系等のデバイスが配置されうる。これらのデバイスが配置される領域は限りがあり、種々のデバイスを配置するのは非常に困難であった。また、種々のデバイスを配置すると装置のサイズが大きくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、インプリント装置の構造を単純化するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインプリント装置は、基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で、前記インプリント材を硬化させるインプリント処理を実行するインプリント装置であって、前記基板を変形させる第1光を照射する第1光源と、前記第1光とは波長が異なる、前記基板上に供給された前記インプリント材の粘性を増加させる第2光を照射する第2光源と、前記第1光と前記第2光を変調して前記基板に導く変調器と、前記第1光と前記第2光とを前記変調器に導く第1光学系と、前記第1光および前記第2光のいずれもが前記基板に照射されない期間において、前記第1光で第1光強度分布を形成する前記変調器の制御と、前記第2光で第2光強度分布を形成する前記変調器の制御と、を切り替える制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インプリント装置の構造を単純化するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のインプリント装置の構成を示す図である。
図2】光源ユニットの構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態のインプリント装置によって実行されるインプリント処理における光源ユニットの第1動作例(a)および第2動作例(b)を示す図。
図4】基板のパターン領域の変形量(熱変形量)の時間的な変化を示す図。
図5】物品製造方法を例示する図。
図6】物品製造方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1には、本発明の一実施形態のインプリント装置1の構成が示されている。インプリント装置1は、インプリント処理を実行し、これにより基板Sの上にインプリント材IMの硬化物からなるパターンを形成する。インプリント処理は、基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを接触させる接触工程と、該接触工程の後に基板Sと型Mとのアライメントを行うアライメント工程と、該アライメント工程の後にインプリント材IMを硬化させる硬化工程とを含みうる。
【0012】
インプリント材IMには、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。
【0013】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0015】
基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0016】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。基板またはその領域と型Mまたはその領域とのアライメントは、基板Sおよび型Mの少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。また、アライメントは、基板Sおよび型Mの少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0017】
インプリント装置1は、基板Sを保持し駆動する基板駆動機構SD、および、基板駆動機構SDを支持するベースフレームBF、型Mを保持し駆動する型駆動機構MDを備えうる。基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDは、基板Sと型Mとの相対位置が調整されるように基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDの少なくとも一方を駆動する駆動機構DRVを構成する。駆動機構DRVによる相対位置の調整は、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの接触、および、硬化したインプリント材IM(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動を含む。
【0018】
本実施形態のインプリント方法は、基板Sの上にインプリント材を供給し、供給されたインプリント材と型を接触させる(押印)。そして、インプリント材と型を接触させた状態でインプリント材を硬化させた後、硬化したインプリント材から型を引き離す(離型)ことにより、基板上にインプリント材のパターンが形成される。本実施形態のインプリント装置は、基板上のインプリント材と型を接触させた後、型に形成された凹凸形状のパターンの凹部にインプリント材を十分に充填させた後、紫外線を照射してインプリント材を硬化させる。このようにインプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0019】
基板駆動機構SDは、基板Sを保持する基板保持部SH、基板保持部SHを支持する基板ステージSS、および、基板ステージSSを駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動アクチュエータSMを含みうる。基板駆動機構SDは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。基板Sの位置および姿勢の制御は、計測器29によって基板Sの位置および姿勢を計測し、その計測の結果に基づいてなされうる。
【0020】
型駆動機構MDは、型Mを保持する型保持部MH、および、型保持部MHを駆動することによって型Mを駆動する型駆動アクチュエータMMを含みうる。型保持部MHは、型Mを変形させる型変形機構を含みうる。該型変形機構は、例えば、型Mの側面に力を加えることによって型Mを変形させうる。型駆動機構MDは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型Mは、インプリント処理によって基板Sの上のインプリント材IMに転写すべきパターンが形成されたパターン領域を有する。型駆動機構MDは、型Mの裏面側(パターン領域PRの反対側)の空間SPの圧力を調整することによって、型M(のパターン領域PR)を基板Sに向かって凸形状に変形させたり、平坦にしたりする圧力調整器PCを含みうる。型Mを基板Sに向かって凸形状に変形させた状態で、基板Sの上のインプリント材IMとパターン領域PRとの接触が開始され、その後、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触領域が徐々に拡大するように圧力調整器PCが空間SPの圧力を調整しうる。
【0021】
インプリント装置1は、基板Sの上にインプリント材IMを供給、塗布あるいは配置するディスペンサ5(供給部)を備えうる。しかし、インプリント材IMは、インプリント装置1の外部装置において基板Sの上に供給、塗布あるいは配置されてもよい。
【0022】
インプリント装置1は、硬化工程において、基板S(のショット領域)と型M(のパターン領域PR)との間のインプリント材IMに対してインプリント材IMを硬化させるための光9(硬化光)を光路LPに照射するための光源2(硬化光源)を備えうる。光路LPは、型Mおよびインプリント材IMを介して基板Sに至る光路である。インプリント装置1は、更に、基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークとの相対位置を検出する検出器12を備えうる。検出器12は、基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークを検出光15で照明し、これらのアライメントマークによって形成される像を撮像しうる。検出光15も、光路LPに照射される光として理解される。検出器12は、アライメントマークからの光を検出しうる。
【0023】
型Mは、基板Sの上のインプリント材を成形するための型である。型は、テンプレートまたは原版とも呼ばれうる。型Mは、矩形の外形形状を有し、基板S(の上のインプリント材)に転写すべきパターン(凹凸パターン)が形成されたパターン面(第1面)11aを有する。型Mは、基板Sの上のインプリント材を硬化させるための紫外線(硬化光)を透過する材料、例えば、石英などで構成されうる。また、型Mのパターン領域PRには、アライメントマークとして機能する型側マークが形成されている。
【0024】
インプリント装置1は、更に、基板Sの上のインプリント材IMと型M(のパターン領域PR)との接触状態、あるいは、基板Sとの型M(のパターン領域PR)との間の空間へのインプリント材IMの充填状態を検出するための撮像部6を備えうる。撮像部6は、その他、基板Sと型Mとの間の異物を検出するためにも使用されうる。撮像部6は、基板S、インプリント材IMおよび型Mで構成される積層構造を観測光18で照明し、この積層構造によって形成される像を撮像しうる。観測光18も、光路LPに照射される光として理解される。
【0025】
インプリント装置1は、更に、変調光21を光路LPに照射する光源ユニット20を備えうる。後述のように、光源ユニット20は、空間光変調器を含み、この空間光変調器によって入射光が変調された変調光21を光路LPに照射する。変調光21は、基板S(ショット領域)と型M(パターン領域PR)とのアライメントのために基板Sを変形させる第1変調光およびインプリント材IMを部分的に硬化させる第2変調光を含みうる。光路LPに第1変調光が照射されるときは、光路LPに第2変調光が照射されず、光路LPに第2変調光が照射されるときは、光路LPに第1変調光が照射されないことが好ましい。ただし、変調光21が光路LPに照射される期間における十分に短い期間であれば、第1変調光および第2変調光の双方が光路LPに照射されてもよい。第1変調光および第2変調光は、波長域が互いに重複しない光である。あるいは、第1変調光および第2変調光は、互いに異なる波長にピークを有する光でありうる。または、第1変調光および第2変調光は、互いに異なる強度を有する光でありうる。
【0026】
第1変調光は、基板S、より詳しくは基板Sのパターン形成領域(ショット領域)を目標形状に変形させる光強度分布(照度分布)が基板Sの形成されるように変調された光でありうる。基板Sに対する第1変調光の照射によって、基板Sに温度分布が形成され、この温度分布によって基板Sのパターン形成領域が目標形状に変形する。基板Sのパターン形成領域が目標形状に変形し、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントが完了した時点で硬化工程(硬化光源2によってインプリント材IMに硬化光が照射され、インプリント材IMが硬化される工程)が実行される。第1変調光は、インプリント材IMを硬化させない波長を有する光である。
【0027】
第2変調光は、インプリント材IMを硬化させる波長、換言すると、インプリント材IMの粘性(粘弾性)を高める波長を有する。第2変調光は、例えば、基板Sの上のインプリント材IMのうち基板Sのパターン形成領域の周辺部(枠状領域)におけるインプリント材IMを硬化させるように変調された光でありうる。このような第2変調光の照射は、枠露光と呼ぶことができ、接触工程および/またはアライメント工程において実行され、基板Sのパターン形成領域の外にインプリント材IMが押し出されることを防止するために有利である。インプリント装置で用いられる型Mにはメサ部と呼ばれる領域を備えており、メサ部にパターン領域PRが形成されている。枠露光を実行することによって、基板に対して凸形状であるメサ部の側面にインプリント材が付着することを低減することができる。
【0028】
硬化光源2、検出器12、撮像部6および光源ユニット20のそれぞれの光軸は、光路LPを共有する。これを実現するために、合成ミラー22、ダイクロイックミラー23、24が設けられている。合成ミラー22は、観測光18を透過し、変調光21を反射する。ダイクロイックミラー23は、観測光18および変調光21を透過し、検出光15を反射する。ダイクロイックミラー24は、観測光18、変調光21および検出光15を透過し、硬化光9を反射する。
【0029】
インプリント装置1は、更に、上記の基板駆動機構SD、型駆動機構MD、圧力調整器PC、ディスペンサ5、計測器29、硬化光源2、検出器12、撮像部6および光源ユニット20等を制御する制御部7を備えうる。制御部7は、例えば、FPGA(FieldProgrammable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部7は、インプリント装置1内に設けてもよいし、インプリント装置1とは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
【0030】
(光源ユニットの構成)
図2には、光源ユニット20の構成例が示されている。光源ユニット20は、第1変調光を生成するための第1波長域を有する第1光を発生する第1光源121と、第2変調光を生成するための第2波長域を有する第2光を発生する第2光源122とを含みうる。また、光源ユニット20は、第1光(入射光)を変調した第1変調光および第2光(入射光)を変調した第2変調光を発生する空間光変調器(変調器)としてのDMD(デジタルミラーデバイス)133を含みうる。また、光源ユニット20は、第1光源121からの第1光および第2光源122からの第2光を空間光変調器としてのDMD133に入射させる第1光学系(125、126、111、132)を含みうる。
【0031】
一例において、光源ユニット20は、照明部120と、変調部130とを光ファイバ110で接続して構成されうる。照明部120は、第1光源121、第2光源122、第1コントローラ123、第2コントローラ124、ミラー125、126を含みうる。第1光源121が発生する第1光の光路と第2光源122が発生する第2光の光路とはミラー125、126によって共通化され、光ファイバ110の入射部111に接続されている。光ファイバ110の射出部112は、変調部130に接続されている。
【0032】
第1コントローラ123は、制御部7からの指令に従って第1光源121を制御する。第1光源121の制御は、第1光源121の点灯および消灯の制御を含みうる。第1光源121の制御は、更に、第1光源121が発生する第1光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第1コントローラ123は、制御部7からの指令値に従った電流値を有する電流を第1光源121に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第1コントローラ123は、指令値に従って第1光源121を駆動する駆動回路と、第1光源121が発生する第1光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0033】
第2コントローラ124は、制御部7からの指令に従って第2光源122を制御する。第2光源122の制御は、第2光源122の点灯および消灯の制御を含みうる。第2光源122の制御は、更に、第2光源122が発生する第2光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第2コントローラ124は、制御部7からの指令値に従った電流値を有する電流を第2光源122に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第2コントローラ124は、指令値に従って第2光源122を駆動する駆動回路と、第2光源122が発生する第2光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0034】
制御部7は、第1光源121および第2光源122を個別に制御しうる。制御部7は、例えば、第1光源121および第2光源122の一方を点灯させるときは他方を消灯させるように第1光源121および第2光源122を制御しうる。他の観点において、第1光源121からの第1光および第2光源122からの第2光の一方が空間光変調器(DMD133)に入射しているときは、第1光および第2光の他方は該空間光変調器に入射しない構成が採用されうる。これは、例えば、第1、第2コントローラ123、124による第1、第2光源121、122の制御、または、第1光および第2光の一方を選択的に遮断する機構によって実現されうる。
【0035】
(各光の波長について)
ここで、硬化光9、検出光15、観測光18、変調光21(第1変調光、第2変調光)に対する波長の割り当ての一例を説明する。硬化光9は、インプリント材IMを硬化させる光であり、一例において、300nm~380nmの範囲内に任意の波長域を有しうるが、300nm以下の波長域を有してもよい。検出光15は、アライメントマークを検出するための光であり、一例において、550nm~750nmの波長域を有する。観測光18は、インプリント材IMと型Mとの接触状態および基板Sと型Mとの間の空間へのインプリント材IMの充填状態等を観察するための光である。観測光18は、例えば、400nm~480nmの波長域から、硬化光9および検出光15の波長域と重複しない波長域が選択されうる。変調光21は、インプリント材IMを硬化させない波長域を有する第1変調光と、インプリント材IMを硬化させる波長域を有する第2変調光を含む。
【0036】
変調光21は、観測光18と同様の波長域、例えば、400nm~480nmの波長域から硬化光9および検出光15の波長域と重複しないように選択されうる。第1変調光は、第1光源121が発生した第1光を変調部130(DMD133)が変調することによって生成される。第2変調光は、第2光源122が発生した第2光を変調部130(DMD133)が変調することによって生成される。インプリント材IMが硬化する波長域の上限から、第1光源121が発生する第1光および第2光源122が発生する第2光の波長を決定することができる。例えば、インプリント材IMが硬化する波長域の上限が440nmであれば、第1光源121が発生する第1光の波長を460nm程度とし、第2光源122が発生する第2光の波長を410nm程度とすることができる。第1光源121および第2光源122は、波長幅が狭い単波長光を発生する光源であることが好ましく、例えば、レーザーダイオードが適している。また、レーザーダイオードは、高速に点灯、消灯を切り替えることができる点で優れている。
【0037】
光ファイバ110を介して変調部130に伝送された光は、光学系132を介して、空間光変調器としてのDMD133に入射する。光学系132は、例えば、集光光学系、および、該集光光学系からの光を均一化してDMD133を照明する照明系(例えば、マイクロレンズアレイ)を含みうる。DMD133は、光を反射する複数のマイクロミラー(不図示)と、該複数のマイクロミラーをそれぞれ駆動するアクチュエータとを含む。各アクチュエータは、制御部7からの指令に従って、対応するマイクロミラーを複数のマイクロミラーの配列面に対して-12度(ON状態)または+12度(OFF状態)の角度に制御する。ON状態のマイクロミラーで反射された光は、変調光として、DMD133と基板Sとを光学系に共役関係にする投影光学系134(第2光学系)を介して基板Sの上に像を形成する。OFF状態のマイクロミラーで反射された光は、基板Sに到達しない方向に反射される。全てのマイクロミラーをON状態にしたときに基板Sに投影される領域(最大照射領域)は、基板Sの最大パターン形成領域(ショット領域)のサイズより大きい。第2変調光を基板Sのパターン形成領域の周辺部(枠状領域)を照射することを考慮して、最大照射領域は、最大パターン形成領域より1mm以上大きい領域に設定されうる。DMD133に代えて、他の空間光変調器、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)が採用されてもよい。
【0038】
変調部130を構成している光学系は、インプリント材IMを硬化させない波長の第1光(第1変調光)およびインプリント材IMを硬化させる波長の第2光(第2変調光)の双方を透過させる必要がある。また、一般的なDMDでは、420nm以下の波長では、マイクロミラーアレイに照射可能な最大光強度が低下し、更に、紫外光と可視光との境界である400nm付近では、マイクロミラーアレイに照射可能な最大光強度が1/1000程度に極端に低下する。そこで、波長幅が短いレーザーダイオード等を使って、インプリント材IMが硬化する波長域の上限付近に第1光源121の波長および第2光源122の波長を近づけることが望ましい。
【0039】
制御部7は、例えば、基板Sの表面上に形成すべき光強度分布(照度分布)データに基づいて、DMD133の各マイクロミラーのON状態およびOFF状態の切り替えを制御する制御データを生成しうる。光強度分布データは、例えば、各マイクロミラーをON状態にする時間に関する情報および各マイクロミラーをOFF状態にする時間に関する情報を含みうる。ON状態のマイクロミラーが多いほど、また、ON状態が長いほど、基板Sのパターン形成領域を大きな露光量を与えることができる。
【0040】
制御部7は、第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データと、第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データとを格納するメモリを含みうる。第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データは、基板Snoパターン形成領域(ショット領域)を目標形状に変形させる光強度分布データを含みうる。第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データは、基板Sの上のインプリント材IMのうち基板Sのパターン形成領域の周辺部(枠状領域)におけるインプリント材IMを硬化される(粘性を増加させる)光強度分布データを含みうる。
【0041】
変調部130を第1光源121および第2光源122で共有する構成は、変調部130あるいは光源ユニット20を小型化すること、これによりインプリント装置1の構造を単純化するために有利である。これにより、光路LPの付近に変調部130を配置することを容易にすることができる。照明部120と変調部130とを相互に分離した構成は、熱源となる照明部120をインプリント装置1の光路LPから遠い位置に配置するために有利である。しかし、光ファイバ110を使用せず、照明部120と変調部130とを近接して配置してもよい。あるいは、変調部130に照明部120を組み込んでもよい。また、第1光源121と変調部130とを第1光ファイバで接続し、第2光源122と変調部130とを第2光ファイバで接続してもよく、この場合、第1光ファイバから出る第1光の光路と第2光ファイバから出る第2光の光路とが結合されうる。
【0042】
(光源ユニットの動作)
図3(a)には、インプリント装置1によって実行されるインプリント処理における光源ユニット20の第1動作例が示されている。図3(a)において、「インプリント処理」は、インプリント処理の進行を示している。インプリント処理は、基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを接触させる接触工程と、該接触工程の後に基板Sと型Mとのアライメントを行うアライメント工程と、該アライメント工程の後にインプリント材IMを硬化させる硬化工程とを含みうる。接触工程は、駆動機構DRVによって基板Sの上のインプリント材IMと型M(のパターン領域PR)とを接触させる工程である。この接触工程は、例えば、基板Sの上のインプリント材IMと凸形状に変形された型Mのパターン領域PRとの接触の開始によって開始し、パターン領域PRの全域が平坦にされることによって終了する期間でありうる。インプリント処理は、接触工程に付随する工程として、駆動機構DRVによって基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを相互に近づける駆動工程を有し、この工程は図3(a)では「駆動」として記載されている。
【0043】
アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように駆動機構DRVによって基板Sおよび型Mの少なくとも一方が駆動される。また、アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域(ショット領域)と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように型駆動機構によって型Mが変形されうる。また、アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように、後述の変形工程が実行されうる。
【0044】
アライメント工程と並行して充填工程が進行する。充填工程では、基板Sと型Mのパターン領域PRとの間のインプリント材IMがパターン領域PRのパターンを構成する凹部に充填され、また、基板Sと型Mのパターン領域PRとの間に存在する空隙が消失する。アライメント工程および充填工程は、図3(a)では、「充填およびアライメント」として記載されている。一例において、充填工程がアライメント工程に先行して開始しうる。また、図3(a)では、硬化工程は「硬化」として、分離工程は「分離」として記載されている。
【0045】
図3(a)において、「DMDによる光変調」は、光源ユニット20のDMD133による光の変調を示す。「C」は、部分硬化工程であり、インプリント材IMを硬化させる(粘性を増加させる)波長域の光である第2光を変調して生成される第2変調光が光路LPに照射されることを示す。第1実施形態における部分硬化工程Cでは、前述の枠状領域におけるインプリント材IMが硬化(いわゆる枠露光)される。「D」は、変形工程であり、インプリント材IMを硬化させない波長域の光である第1光を変調して生成される第1変調光が光路LPに照射されることを示す。変形工程Dでは、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントのために、基板Sのパターン形成領域が変形される。「OFF」は、光路PLに第1変調光も第2変調光も照射されないことを示す。「OFF」の期間にDMD133を制御して、第1変調光から第2変調光の光強度分布となるように切り替える。
【0046】
枠露光を行う部分硬化工程Cの期間(タイミング、時間長さ)は、枠状領域におけるインプリント材IMを硬化させて基板Sのパターン形成領域の外にインプリント材IMが押し出されることを防止するように決定されうる。変形工程Dの期間(タイミング、時間長さ)は、硬化工程において硬化光源2からの硬化光9によってインプリント材IMを硬化させる時点において基板Sのパターン形成領域が目標形状になるように決定されうる。少なくともアライメント期間中に基板Sを変形させ、硬化工程が開始する前に完了させるのが望ましい。
【0047】
なお、第1実施形態では、部分硬化工程Cを先に行い、その後に変形工程Dを行う実施形態について説明したが、実施する順番はこれに限られず、反対であってもよいし、複数回繰り返して実行してもよい。
【0048】
図3(b)には、インプリント装置1によって実行されるインプリント処理における光源ユニット20の第2動作例が示されている。標記方法は、図3(a)の標記方法に従う。図3(b)に示された第2例では、図3(a)に示された例における「OFF」の期間が省略ないし短縮されている。部分硬化工程Cの期間と変形工程Dの期間とは重複させることができない。考えられうる1つの制約の下では、接触工程においては部分硬化工程Cが実行されない。これは、接触工程においてインプリント材IMが部分的にでも硬化すると、インプリント材IMが広がることが妨げられ、後の充填工程における充填が妨げられるからである。このような制約の下では、部分硬化工程Cの後に変形工程Dが実行される場合、互いに並行して進行するアライメント工程および充填工程に要する時間は、部分工程Cの期間と変形工程Dの期間との合計時間より短くすることはできない。
【0049】
部分硬化工程Cは、前述のように、枠露光が実行される。枠露光の実行期間は、基板Sのパターン形成領域(型Mのパターン領域)の外にインプリント材IMが押し出されることが防止されるように決定される。
【0050】
部分硬化工程Cは、前述のように、制振露光が実行される。制振露光の実行時間は、基板Sと型Mとの間の相対的な振動が低減されアライメントの収束性が向上するように決定される。
【0051】
図4には、図3(a)、(b)に示された第1、第2動作例の変形工程Dにおける基板S(のパターン領域)の変形量(熱変形量)の時間的な変化が例示されている。変形量の変化は、例えば、指数関数を含む関数で表現されうる。この指数関数の時定数を予め求めておくことによって、各変形工程Dの時間や、変形工程Dの開始タイミングを決定することができる。また、第1光の強度が調整されてもよい。
【0052】
このように、異なる波長の光源に対して変調部130(DMD133)を共通化することにより、装置の構造を複雑化することなく、インプリント装置に複数の機能を配置することができる。
【0053】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第2変調光として、ショット領域の周辺部におけるインプリント材の粘性を高めるための光を照射する場合について説明した。
【0054】
第2実施形態における第2変調光は、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高め、これによってインプリンント材IMによる基板Sと型Mとの結合力を高めるように変調された光でありうる。このような第2変調光の照射は、制振露光と呼ぶことができ、アライメント工程において実行され、アライメント精度を向上させうる。インプリント材IMによる基板Sと型Mとの結合力が弱い状態(第2変調光の照射前)では、基板Sおよび型Mは、外乱等によって個別に振動しうる(つまり、基板Sと型Mとの間に相対的な振動が大きい)。インプリント材IMへの第2変調光の照射によりインプリント材IMの粘性を部分的に高め、基板Sと型Mとの結合力を高めることによって、基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減し、アライメントの収束性を向上させることができる。一例において、基板Sと型Mと間の相対移動によって発生するせん断力の大きさが0.5~1.0Nの範囲内になるように第2変調光の照射によってインプリント材IMの粘性(粘弾性)を高めることが、アライメントの収束性を向上させるために効果的である。
【0055】
なお、第2実施形態における制御部7は、第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データと、第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データとを格納するメモリを含みうる。第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データは、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高めてインプリンント材IMを介した基板Sと型Mとの結合力を高めるための光強度分布データを含みうる。
【0056】
第2実施形態における部分硬化工程Cでは、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性が高められる(いわゆる制振露光)。
【0057】
なお、制振露光を行う部分硬化工程Cの期間(タイミング、時間長さ)は、インプリント材IMの粘性を部分的に高めて基板Sと型Mとの結合力を高めることによって基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減するように決定されうる。
【0058】
このように、異なる波長の光源に対して変調部130(DMD133)を共通化することにより、装置の構造を複雑化することなく、基板を変形させる機構とインプリント材の粘性を高める(制振露光)機構を配置することができる。
【0059】
(第3実施形態)
第1実施形態では、第1変調光として、基板Sのパターン形成領域(ショット領域)を目標形状に変形させる光強度分布(照度分布)が基板Sの形成されるように変調された光を照射する場合について説明した。
【0060】
第3実施形態における第1変調光は、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高め、これによってインプリンント材IMによる基板Sと型Mとの結合力を高めるように変調された光でありうる。このような第1変調光の照射は、制振露光と呼ぶことができ、アライメント工程において実行され、アライメント精度を向上させうる。インプリント材IMによる基板Sと型Mとの結合力が弱い状態(第1変調光の照射前)では、基板Sおよび型Mは、外乱等によって個別に振動しうる(つまり、基板Sと型Mとの間に相対的な振動が大きい)。インプリント材IMへの第1変調光の照射によりインプリント材IMの粘性を部分的に高め、基板Sと型Mとの結合力を高めることによって、基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減し、アライメントの収束性を向上させることができる。一例において、基板Sと型Mと間の相対移動によって発生するせん断力の大きさが0.5~1.0Nの範囲内になるように第2変調光の照射によってインプリント材IMの粘性(粘弾性)を高めることが、アライメントの収束性を向上させるために効果的である。
【0061】
なお、第3実施形態における制御部7は、第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データと、第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データとを格納するメモリを含みうる。第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データは、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高めてインプリンント材IMを介した基板Sと型Mとの結合力を高めるための光強度分布データを含みうる。
【0062】
第3実施形態における部分硬化工程Cでは、ショット領域の周辺部におけるインプリント材の粘性を高めるための光が照射される(いわゆる枠露光)。一方、第1実施形態の変形工程Dの代わりに、第3実施形態では、基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減させるための光がショット領域に照射される。
【0063】
なお、制振露光を行う制振露光工程の期間(タイミング、時間長さ)は、インプリント材IMの粘性を部分的に高めて基板Sと型Mとの結合力を高めることによって基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減するように決定されうる。
【0064】
このように、基板上の照射領域の分布が異なる光源に対して変調部130(DMD133)を共通化することにより、装置の構造を複雑化することなく、ショット領域の周辺部におけるインプリント材の粘性を高める(枠露光)機構を配置することができる。
【0065】
(第4実施形態)
第1実施形態では、第1変調光と第2変調光の2種類の異なる波長または、分布を有する光を基板に照射する場合について説明した。第4実施形態における光源ユニット20には、第1変調光と第2変調光に加えて、第3変調光を基板に照射する機構が設けられていてもよい。
【0066】
例えば、図2の光源ユニットに、第3波長域の第3光を照射することができる第3光源を備えることができる。第3光源は第3コントローラによって制御されうる。この場合、第1変調光はショット領域を目標形状に変形させる光強度分布の光とし、第2変調光は、ショット領域の周辺部におけるインプリント材の粘性を高める光とし、第3変調光は、アライメントの収束性を向上させるための光とすることができる。
【0067】
これらの複数の光源の光を基板に対して順次照射する際には、図3の部分硬化工程Cにおいて枠露光および制振露光の双方を実行することができる。部分硬化工程Cにおいて、枠露光および制振露光の双方が実行される場合、典型的には、枠露光が制振露光より先になされうる。これは制振露光がアライメント工程の途中で実行され、硬化工程の直前で完了するのが望ましいためである。
【0068】
このように、異なる波長の光源に対して変調部130(DMD133)を共通化することにより、装置の構造を複雑化することなく、基板を変形させる機構とインプリント材の粘性を高める(制振露光)機構を配置することができる。合わせて基板上の照射領域の分布が異なる光源に対して変調部130を共通化することもできる。また、更なる光源を追加して光源ユニット20に構成することも可能である。
【0069】
(物品の製造方法)
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池等が挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子等が挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッド等が挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0070】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0071】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図5(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0072】
図5(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図5(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0073】
図5(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0074】
図5(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図5(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0075】
次に、物品の別の製造方法について説明する。図6(a)に示すように、石英ガラス等の基板1yを用意し、続いて、インクジェット法等により、基板1yの表面にインプリント材3yを付与する。必要に応じて、基板1yの表面に金属や金属化合物等の別の材料の層を設けても良い。
【0076】
図6(b)に示すように、インプリント用の型4yを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3yに向け、対向させる。図6(c)に示すように、インプリント材3yが付与された基板1yと型4yとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3yは型4yと基板1yとの隙間に充填される。この状態で光を型4yを透して照射すると、インプリント材3は硬化する。
【0077】
図6(d)に示すように、インプリント材3yを硬化させた後、型4yと基板1yを引き離すと、基板1y上にインプリント材3yの硬化物のパターンが形成される。こうして硬化物のパターンを構成部材として有する物品が得られる。なお、図6(d)の状態で硬化物のパターンをマスクとして、基板1yをエッチング加工すれば、型4yに対して凹部と凸部が反転した物品、例えば、インプリント用の型を得ることもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 インプリント装置
S 基板
121 第1光源
122 第2光源
133 DMD
130 変調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6