(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2023101359
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】石塚 智也
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106778(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/117483(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187506(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/111722(WO,A1)
【文献】特開2015-030590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場に設置された、所定の形状パターンを構成するように並んだ物体を検知するセンサに通信可能に接続され、
エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、前記エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、前記センサにおいて、点検作業を行った作業者が保持する、前記所定の形状パターンを構成するように並んだ物体が設置された専用媒体からこの物体が検知されると、前記点検作業を行った作業者が前記昇降路の外に移動したと認識し、前記エレベータの運転モードを通常モードに切り替えるモード切替部を備える、エレベータ制御装置。
【請求項2】
エレベータの乗りかごのかごドア上部に設置され、点検作業の前に前記点検作業を行う作業者を撮影した撮像情報内に含まれる前記作業者の識別情報を保持し、保持した識別情報に基づいて、前記エレベータの運転モードが点検モードに設定された後に撮影した撮像情報に含まれる作業者が前記点検作業を行う作業者であるか否かを判定するカメラ装置に通信可能に接続され、
エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、前記エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、前記カメラ装置において、撮影した撮像情報に含まれる作業者が前記点検作業を行う作業者であると判定されると、前記点検作業を行った作業者が前記昇降路の外に移動したと認識し、前記エレベータの運転モードを通常モードに切り替えるモード切替部を備える、エレベータ制御装置。
【請求項3】
エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、前記エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、前記昇降路の外にある装置が取得した、点検作業を行った作業者のみが認識している情報の入力情報、前記作業者が携帯する媒体から読み取った前記作業者の識別情報、または前記作業者の生体認証情報を取得すると、前記点検作業を行った作業者が前記昇降路の外に移動したと認識し、前記エレベータの運転モードを通常モードに切り替えるモード切替部を備える、エレベータ制御装置。
【請求項4】
前記モード切替部は、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、前記点検作業のために戸開させた乗場ドアが戸閉したことを検知し、且つ、点検作業を行った作業者が前記昇降路の外に移動したことを認識すると、前記エレベータの運転モードを通常モードに切り替える、請求項1~
3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
エレベータの乗場に設置され所定の形状パターンを構成するように並んだ物体を検知するセンサに通信可能に接続されたエレベータ制御装置が、
エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、前記エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、前記センサにおいて、点検作業を行った作業者が保持する、前記所定の形状パターンを構成するように並んだ物体が設置された専用媒体からこの物体が検知されると、前記点検作業を行った作業者が前記昇降路の外に移動したと認識し、前記エレベータの運転モードを通常モードに切り替える、エレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、安全な運転を維持するために、定期的な保守点検が義務づけられている。エレベータの保守点検作業を行う際には、作業者が、エレベータの運転モードを通常モードから点検モードに切り替え、また保守点検作業が終了すると、点検モードから通常モードに切り替える。このように運転モードを切り替えることで、点検作業時にエレベータを点検作業に適した内容で運転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常は、エレベータの運転モードを切り替えるための操作スイッチが、昇降路内に設置されている。そのため、点検作業が終了した後にこの操作スイッチが操作されても、作業者が確実に昇降路から外に移動したか否かを正確に認識することができず、運転モードの切替えタイミングを適切に判断できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの点検作業終了後に、適切なタイミングでエレベータの運転モードを点検モードから通常モードに切り替えることが可能なエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、点検作業を行った作業者が昇降路の外に移動したことを認識すると、エレベータの運転モードを通常モードに切り替えるモード切替部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
【
図2】第1実施形態によるエレベータ制御装置に対し、作業者が乗場にいることを検知する情報を磁力センサから送信させるために用いる作業者専用カードの一例を示す図である。
【
図3】第1~第3実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
【
図5】第3実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態として、エレベータの通常運転時と点検作業時とで、エレベータの運転モードを切り替えるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムについて、説明する。
【0009】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図1は、本実施形態によるエレベータ制御装置7Aを用いたエレベータシステム1Aの構成を示す全体図である。
【0010】
エレベータシステム1Aは、建物内の昇降路2内に設置された巻き上げ機3と、巻き上げ機3に掛け渡されたロープ4と、ロープ4の一端に吊り下げられた乗りかご5と、乗りかご5にテールコード6を介して接続されたエレベータ制御装置7Aとを備える。乗りかご5は、かごドア51と、かご上部に設置されたかご上点検スイッチ52とを有する。かご上点検スイッチ52は、保守点検を行う作業者が、乗りかご5上部の保守作業を開始する際にエレベータ制御装置7A内の運転モードを点検モードに切り替え、終了する際に通常モードに戻すように操作するためのスイッチである。
【0011】
エレベータ制御装置7Aは、建物内の所定階、例えば最下階である1階乗場10Aの乗場ドア11に設置された戸開閉センサ111と、昇降路2内の乗場ドア11近傍に設置されたピット点検スイッチ12と、乗場10Aに設置された磁力センサ13とに、有線または無線で通信可能に接続される。
【0012】
戸開閉センサ111は、乗場ドア11の開閉状態を検知する。ピット点検スイッチ12は、作業者が、昇降路2下部のピット内の保守作業を開始する際にエレベータ制御装置7A内の運転モードを点検モードに切り替え、終了する際に通常モードに戻すように操作するためのスイッチである。磁力センサ13は、所定の形状パターンを構成するように並んだ複数の磁石を検知すると、検知情報を出力する。
【0013】
エレベータ制御装置7Aは、CPU71Aを有する。CPU71Aは、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。
【0014】
CPU71Aは、運転制御部711と、情報取得部712Aと、モード切替部713Aとを有する。運転制御部711は、エレベータシステム1A内の機器、例えば巻き上げ機3を制御する。情報取得部712Aは、かご上点検スイッチ52、戸開閉センサ111、ピット点検スイッチ12、および磁力センサ13から出力される情報を取得する。
【0015】
モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、運転制御部711による運転モードを、通常モードと点検モードとで切り替える。
【0016】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態において作業者は、磁力センサ13に検知情報を出力させるための作業者専用カードを保持してエレベータシステム1B内で保守点検作業を行う。
図2は、作業者専用カードCの一例を示す図である。作業者専用カードCには、磁石M1、M2、およびM3が所定の形状パターンを構成するように並べて設置されている。
【0017】
図3は、本実施形態によるエレベータシステム1Aが稼動する際に、エレベータ制御装置7Aが実行する処理を示すフローチャートである。作業者は、ピット内の保守点検作業を行う際には、乗りかご5を最下階よりも1階床以上上の階に停止させた状態で、最下階である乗場10Aで点検作業のために乗場ドア11を戸開させてドアストッパー(図示せず)でドア開状態を固定させる。その後作業者は、ピット点検スイッチ12で、エレベータ制御装置7Aによる運転モードを通常モードから点検モードに切り替えるための操作を行う。ピット点検スイッチ12は、作業者により実行された操作の情報を、エレベータ制御装置7Aに出力する。
【0018】
エレベータ制御装置7Aでは、ピット点検スイッチ12から出力された操作情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、運転モードを点検モードに切り替える操作が行われたことを認識し(S1の「YES」)、運転制御部711による運転モードを点検モードに切り替える(S2)。
【0019】
運転モードが点検モードに切り替えられた後、作業者は、乗場10Aから戸開した乗場ドア11を通り、はしご等を用いてピット内に降りて保守点検作業を行う。
【0020】
作業者は、ピット内における保守点検作業が終了すると、はしご等を用いてピットから上がり、ピット点検スイッチ12で、エレベータ制御装置7Aによる運転モードを点検モードから通常モードに切り替えるための操作を行う。ピット点検スイッチ12は、作業者により実行された操作の情報を、エレベータ制御装置7Aに出力する。
【0021】
エレベータ制御装置7Aでは、ピット点検スイッチ12から出力された操作情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われたことを認識する(S3の「YES」)。
【0022】
作業者はピット点検スイッチ12の操作後、乗場ドア11を通って昇降路2の外の乗場10Aに移動する。作業者は乗場10Aに移動すると、ドアストッパーを外して乗場ドア11を戸閉させる。乗場ドア11が戸閉すると、戸開閉センサ111が戸閉を検知し、戸閉検知情報を生成してエレベータ制御装置7Aに送信する。
【0023】
エレベータ制御装置7Aでは、戸開閉センサ111から送信された戸閉検知情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、乗場ドア11が戸閉したことを認識する(S4の「YES」)。
【0024】
その後、作業者は、磁力センサ13に自身が保持している作業者専用カードCを所定の向きでかざす。磁力センサ13は、かざされた作業者専用カードCから、所定のパターンを構成するように並んだ複数の磁石を検知し、検知情報をエレベータ制御装置7Aに出力する。
【0025】
エレベータ制御装置7Aでは、磁力センサ13から出力された検知情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが検知情報を取得すると、作業者が昇降路2の外の乗場10Aに移動したことを認識する(S5の「YES」)。これにより、モード切替部713Aは、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われ、乗場ドア11が戸閉し、且つ作業者が昇降路2の外に移動して乗場10Aにいることを認識したため、運転制御部711による運転モードを点検モードから通常モードに切り替える(S6)。運転モードが通常モードに切り替わると、ステップS1に戻る。
【0026】
また、作業者は、乗りかご5上部の保守点検作業を行う際には、乗りかご5の上部が乗場10Aの床面に近い高さになるように停止させた状態で、乗場10Aで乗場ドア11を戸開させてドアストッパー(図示せず)でドア開状態を固定させる。その後作業者は、乗場10Aから戸開した乗場ドア11を通って乗りかご5上部に乗り込み、かご上点検スイッチ52で、エレベータ制御装置7Aによる運転モードを通常モードから点検モードに切り替えるための操作を行う。かご上点検スイッチ52は、作業者により実行された操作の情報を、テールコード6を介してエレベータ制御装置7Aに出力する。
【0027】
エレベータ制御装置7Aでは、かご上点検スイッチ52から出力された操作情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、運転モードを点検モードに切り替える操作が行われたことを認識し(S1の「YES」)、運転制御部711による運転モードを点検モードに切り替える(S2)。
【0028】
運転モードが点検モードに切り替えられた後、作業者は乗りかご5上部で保守点検作業を行う。運転モードが点検モードに設定されている間は、例えば乗りかご5の走行速度が低速になる。
【0029】
作業者は、乗りかご5上部における保守点検作業が終了すると、かご上点検スイッチ52で、エレベータ制御装置7Aによる運転モードを点検モードから通常モードに切り替えるための操作を行う。かご上点検スイッチ52は、作業者により実行された操作の情報を、エレベータ制御装置7Aに出力する。
【0030】
エレベータ制御装置7Aでは、かご上点検スイッチ52から出力された操作情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われたことを認識する(S3の「YES」)。
【0031】
作業者はピット点検スイッチ12の操作後、乗場ドア11を通って昇降路2の外の乗場10Aに移動する。作業者は乗場10Aに移動すると、ドアストッパーを外して乗場ドア11を戸閉させる。乗場ドア11が戸閉すると、戸開閉センサ111が戸閉を検知し、戸閉検知情報を生成してエレベータ制御装置7Aに送信する。
【0032】
エレベータ制御装置7Aでは、戸開閉センサ111から送信された戸閉検知情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが取得した情報に基づいて、乗場ドア11が戸閉したことを認識する(S4の「YES」)。
【0033】
その後、作業者は、磁力センサ13に自身が保持している作業者専用カードCを所定の向きでかざす。磁力センサ13は、かざされた作業者専用カードCから、所定のパターンを構成するように並んだ複数の磁石を検知し、検知情報をエレベータ制御装置7Aに出力する。
【0034】
エレベータ制御装置7Aでは、磁力センサ13から出力された検知情報を情報取得部712Aが取得する。モード切替部713Aは、情報取得部712Aが検知情報を取得すると、作業者が昇降路2の外の乗場10Aに移動したことを認識する(S5の「YES」)。これにより、モード切替部713Aは、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われ、乗場ドア11が戸閉し、且つ作業者が昇降路2の外に移動して乗場10Aにいることを認識したため、運転制御部711による運転モードを点検モードから通常モードに切り替える(S6)。運転モードが通常モードに切り替わると、ステップS1に戻る。
【0035】
以上の第1実施形態によれば、エレベータ制御装置は、エレベータの点検作業終了後に、磁力センサを用いて作業者が昇降路の外に確実に出たことを認識したタイミングでエレベータの運転モードを点検モードから通常モードに切り替えることができ、作業者の安全を確保することができる。磁力センサは所定のパターンを構成する専用のものを用いることで、磁力センサを保持している作業者が昇降路の外に確実に出たタイミングにより運転モードの切り替えを行うことが可能となる。
【0036】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図4は、本実施形態によるエレベータ制御装置7Bを用いたエレベータシステム1Bの構成を示す全体図である。
【0037】
エレベータシステム1Bは、作業者が所持する携帯端末20をさらに備えるとともに、乗場10Bに、磁力センサ13に替えて、表示媒体14が設置されている他は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aと同様の構成を有するため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0038】
表示媒体14は、作業者が所持する携帯端末20で読み取り可能であり、設置位置である乗場10Bの識別情報を含む表示情報である二次元コード141が表示された媒体である。
【0039】
携帯端末20は、エレベータ点検作業用のアプリケーションを搭載し、このアプリケーションにより、表示媒体14の二次元コード141から乗場10Bの識別情報を読み取る機能、および読み取った情報をエレベータ制御装置7Bに無線送信する機能を有する。
【0040】
エレベータ制御装置7Bは、CPU71Bと、無線通信部72とを有する。無線通信部72は、携帯端末20から無線送信された乗場10Bの識別情報を受信し、CPU71Bに送出する。
【0041】
CPU71Bの情報取得部712Bは、かご上点検スイッチ52、戸開閉センサ111、ピット点検スイッチ12、および無線通信部72から送出された乗場10Bの識別情報を取得する。モード切替部713Bは、情報取得部712Bが取得した情報に基づいて、運転制御部711による運転モードを、通常モードと点検モードとで切り替える。
【0042】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態において作業者は、携帯端末20を所持してエレベータシステム1B内で保守点検作業を行う。
【0043】
本実施形態において、作業者がピット内または乗りかご5上部の保守点検作業を行う際に実行するステップS1~S4の処理は、第1実施形態で説明した場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0044】
作業者は、保守点検作業後に昇降路2内から乗場10Bに移動すると、携帯端末20のアプリケーションにより乗場10Bの表示媒体14の二次元コード141から乗場10Bの識別情報を読み取る操作を行う。携帯端末20は、アプリケーションにより読み取った情報を、エレベータ制御装置7Bに無線送信する。
【0045】
エレベータ制御装置7Bでは、携帯端末20から送信された識別情報を、無線通信部72を介して情報取得部712Bが取得する。モード切替部713Bは、情報取得部712Bが識別情報を取得すると、作業者が昇降路2の外の乗場10Aに移動したことを認識する(S5の「YES」)。これにより、モード切替部713Bは、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われ、且つ作業者が昇降路2の外に移動して乗場10Bにいることを認識したため、運転制御部711による運転モードを点検モードから通常モードに切り替える(S6)。運転モードが通常モードに切り替わると、ステップS1に戻る。
【0046】
以上の第2実施形態によれば、エレベータ制御装置は、エレベータの点検作業終了後に、二次元コードから読み取った乗場の識別情報を用いて作業者が昇降路の外に確実に出たことを認識したタイミングでエレベータの運転モードを点検モードから通常モードに切り替えることができ、作業者の安全を確保することができる。
【0047】
上述した第2実施形態において、作業者の携帯端末20が、アプリケーションにより二次元コード141から読み取った乗場10Bの識別情報を、エレベータシステム1Bを遠隔から管理する保守センタ内の管理装置に無線送信し、この管理装置からエレベータ制御装置7Bに送信するようにしてもよい。このように構成することで、保守センタの管理装置において、作業者の動向を認識することができる。
【0048】
上述した第2実施形態において、表示媒体14に表示される表示情報は二次元コードには限定されず、設置位置である乗場10Aの識別情報を携帯端末20が読み取り可能な表示情報であれば、他の情報、例えばバーコード情報、文字情報、画像情報などでもよい。
【0049】
《第3実施形態》
〈第3実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図5は、本実施形態によるエレベータ制御装置7Cを用いたエレベータシステム1Cの構成を示す全体図である。
【0050】
エレベータシステム1Cは、乗りかご5のかごドア51上部に設置されたカメラ装置53をさらに備える他は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aと同様の構成を有するため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0051】
カメラ装置53は、かごドア51が乗場10Cで戸開したときに、乗場10Cの乗場ドア11近傍のエリアを撮影し、撮像情報内に含まれる作業者の識別情報を取得する。カメラ装置53は、撮像情報から取得した作業者の識別情報を、エレベータ制御装置7Cに送信する。
【0052】
エレベータ制御装置7Cは、CPU71Cを有する。CPU71Cの情報取得部712Cは、かご上点検スイッチ52、戸開閉センサ111、ピット点検スイッチ12、およびカメラ装置53から送信された作業者の識別情報を取得する。モード切替部713Cは、情報取得部712Cが取得した情報に基づいて、運転制御部711による運転モードを、通常モードと点検モードとで切り替える。
【0053】
〈第3実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態において保守点検作業を行う際には、乗りかご5を、最下階乗場10C1の1階床上の階の乗場10C2に停止させ、かごドア51を戸開させた状態で、作業者がカメラ装置53の撮像対象エリア内に入る。カメラ装置53は、撮像情報内に含まれる作業者の識別情報を取得して保持する。作業者の識別情報は、作業者の顔の特徴情報等に基づいて取得される、他の人間と区別するための情報である。
【0054】
その後、作業者は階段等で1つ下の乗場10C1に降り、ピット内および乗りかご5上部の保守点検作業を行う。作業者がピット内または乗りかご5上部の保守点検作業を行う際に実行するステップS1~S4の処理は、第1実施形態で説明した場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
作業者は、保守点検作業後に昇降路2内から乗場10C1に移動すると、階段等で1つ上の乗場10C2に移動し、かごドア51を戸開させた状態で、作業者がカメラ装置53の撮像対象エリア内に入る。カメラ装置53は、撮像情報内に含まれる作業者の識別情報を取得して、撮像情報内の作業者が、保守点検作業前に保持した識別情報に対応する作業者であるか否かを判定する。
【0056】
カメラ装置53は、撮像情報内の作業者が、保守点検作業前に保持した識別情報に対応する作業者であると判定すると、作業者検知情報を生成してエレベータ制御装置7Cに送信する。
【0057】
エレベータ制御装置7Cでは、カメラ装置53から送信された作業者検知情報を情報取得部712Cが取得する。モード切替部713Cは、情報取得部712Cが作業者検知情報を取得すると、作業者が昇降路2の外の乗場10C2に移動したことを認識する(S5の「YES」)。これにより、モード切替部713Cは、運転モードを通常モードに切り替える操作が行われ、且つ作業者が昇降路2の外に移動して乗場10C2にいることを認識したため、運転制御部711による運転モードを通常モードに切り替える(S6)。運転モードが通常モードに切り替わると、ステップS1に戻る。
【0058】
以上の第3実施形態によれば、エレベータ制御装置は、エレベータの点検作業終了後に、乗りかごのかごドアに設置されたカメラ装置で検知された情報を用いて作業者が昇降路の外に確実に出たことを認識したタイミングでエレベータの運転モードを点検モードから通常モードに切り替えることができ、作業者の安全を確保することができる。
【0059】
上述した第1~第3実施形態において、エレベータ制御装置7A、7B、または7Cがモード切替処理に用いる、作業者が昇降路2の外の乗場に移動したことを認識するための情報は、上述したような磁力センサによる検知情報、表示媒体の読み取り情報、乗りかご5のカメラ装置53による作業者検知情報には限定されず、昇降路2の外の位置に作業者がいることが検知可能な情報であれば他の情報でもよい。例えば、エレベータ制御装置7A、7B、または7Cは、作業者のみが認識している情報の入力情報、作業者が携帯するICカードから読み取る識別情報、作業者の生体認証情報等を、昇降路2の外の乗場等にある装置を介して取得したときに、作業者が昇降路2の外の乗場に移動したことを認識し、エレベータの運転モード切替を行ってもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C…エレベータシステム、2…昇降路、3…巻き上げ機、4…ロープ、5…乗りかご、6…テールコード、7A,7B,7C…エレベータ制御装置、10A,10B,10C,10C1,10C2…乗場、11…乗場ドア、12…ピット点検スイッチ、13…磁力センサ、14…表示媒体、20…携帯端末、51…かごドア、52…かご上点検スイッチ、53…カメラ装置、71A,71B,71C…CPU、72…無線通信部、111…戸開閉センサ、141…二次元コード、711…運転制御部、712A,712B,712C…情報取得部、713A,713B,713C…モード切替部
【要約】
【課題】 エレベータの点検作業終了後に、適切なタイミングでエレベータの運転モードを点検モードから通常モードに切り替えることが可能なエレベータ制御装置を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータ制御装置は、エレベータの運転モードが点検モードに設定されているときに、エレベータの昇降路内で、点検モードから通常モードに切り替える操作が行われたことを検知した後、点検作業を行った作業者が昇降路の外に移動したことを認識すると、エレベータの運転モードを通常モードに切り替えるモード切替部を備える。
【選択図】
図1