(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】具入り餅食品
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240701BHJP
【FI】
A23L7/10 102
(21)【出願番号】P 2023179965
(22)【出願日】2023-10-19
【審査請求日】2023-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518272706
【氏名又は名称】星川 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】星川 正美
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3104359(JP,U)
【文献】特開昭54-122746(JP,A)
【文献】実開昭59-16390(JP,U)
【文献】実開平6-41489(JP,U)
【文献】特開2000-236826(JP,A)
【文献】実開平2-78096(JP,U)
【文献】実開昭55-108889(JP,U)
【文献】実開平2-57395(JP,U)
【文献】特開平11-196795(JP,A)
【文献】実開平4-127188(JP,U)
【文献】特開昭52-105255(JP,A)
【文献】実開昭61-31083(JP,U)
【文献】特開2003-93004(JP,A)
【文献】イソップ製菓「あか巻」は天草・猟師のおやつ!?,天草観光&グルメ&レジャー情報,検索日:2024年1月26日,2018年10月31日,https://tenku-f.hmup.jp/blog/101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餅板(4)に複数の種類の具(6)を相互に離して分配させてなる可食部(2)を具備し、
前記複数の具(6)は、板厚方向(Z)から見て重ならないように埋設させたことを特徴とする、具入り餅食品。
【請求項2】
前記具(6)の全体を前記餅板(4)に埋没させたことを特徴とする請求項1に記載の具入り餅食品。
【請求項3】
前記具(6)が前記餅板(4)の表面から透けて見える程度の深さに埋没されていることを特徴とする請求項2に記載の具入り餅食品。
【請求項4】
前記具(6)の端部(8)が前記餅板(4)の表面から露出した状態で、その端部(8)を除く当該具(6)の残りの部分(10)を前記餅板(4)に埋設させたことを特徴とする請求項1に記載の具入り餅食品。
【請求項5】
前記餅板(4)の表面に沿って、前記板厚方向(Z)から見て、当該餅板(4)を横断する少なくとも一本の区画線(A)が形成されており、
前記区画線(A)は、当該区画線(A)に沿って、前記餅板(4)を前記板厚方向(Z)に切断することにより、前記餅板(4)を複数の餅ピース(P)に分断させるためのものであり、
前記具(6)は、前記複数の餅ピース(P)に一種類の前記具(6)が配置されるように分配されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の具入り餅食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具入り餅食品に関する。
【背景技術】
【0002】
具材を含む餅食品として、餅生地にうるち米粒や豆などの具材をつきまぜて混和させた後に餅板に成形した餅食品が知られている(特許文献1)。
また餅で形成され、上方開口の収納凹部を有する箱状のピザ台を具備し、その収納凹部に、とろけるチーズ・ソース・スライスした玉葱・ベーコンなどのピザ材料を収納し、パック材で密閉したもちピザも提案されている(特許文献2)。
また上下2枚の厚肉の餅板を具備し、下側の餅板に形成した広く浅い上面開放の収納凹部内に、あんこ、黄粉、ひき肉、チーズなどの具材を収納させ、2枚の餅板の外周部同士を張り付けた具材入りの餅も提案されている(特許文献3)。
また餅であるビザ台の上に複数の具を載せた餅ピザも知られている(特許文献4)。
さらに球形の切り餅を囲む、片栗粉でなる可食リング体に、粒状のミックスベジタブルの具を片持ち状に保持させてなる即席餅食品も知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-284144
【文献】実開平6-46492
【文献】特開2012-175961
【文献】特開2008-43316
【文献】特開2001-149029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、調理設備を用意できない場所(被災地や登山コース・レジャースポットなどの人里離れた遊興地)において、質の高い食事を提供する必要が認識されている。
特許文献1は、餅生地に米粒や豆などの具材をつき交ぜたから、これら具材が餅板中にランダムに分配されてしまうので、餅板のどこを切り取っても食感が同じとなってしまい、菓子等の用途には向いているが、それを食事とすると飽きがきてしまう。一度の食事の主食と菜食と兼ねるような用途には向いていない。
特許文献2及び特許文献3は、餅食品の内部に形成された一個の収納凹部に単数又は複数の種類の具材を詰め込んでいるが、これでは、収納凹部に収容した全体としての味の調和を考える必要があるから、全体としての食感は単調となる。また、その餅食品を一口分噛み切ったときに収納凹部から複数の具材からこぼれ出す可能性がある。
特許文献4及び特許文献5は、餅で形成した本体(ピザ台又は切り餅)の表面に具が露出しているから、他物(利用者の手等)に接触した具が不意に本体から脱落するおそれがあり、素材が無駄になると同時に外観を損なう。
また餅食品において具が外部から視認できることは、一見した際には需要者の食欲や好奇心を刺激する要因となり得るが、具をアピールする手段としては凡庸であり、一見した後に好奇心などが薄れる傾向がある。
【0005】
本発明の第1の目的は主食と菜食とを兼ねる多様な食感を味わえる餅食品を提供することであり、第2の目的は餅食品に包含される具を効果的にアピールできる工夫をすることであり、第3の目的は被災地への救援物資として有利な食品の形態を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、餅板4に複数の種類の具6を相互に離して分配させてなる可食部2を具備し、
前記複数の具6は、板厚方向Zから見て重ならないように埋設させた。
【0007】
本手段では、
図1(A)に示す如く、餅板4に複数種類の具6を相互に離して分配させたので、各種類の具毎に、茶碗に盛ったご飯におかずを載せて食するのと同じイメージで、各種の具と餅とを食することができ、具毎の味を楽しめる。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記具6の全体を前記餅板4に埋没させた。
【0009】
本手段では、
図1(C)に示す如く、具6の全体が餅板4に埋設している。
この構造によれば、餅板4を噛み切るまでどの具がでてくるかが全く分からず、或いは分かりにくく、好奇心をそそるという効果が得られる。
【0010】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ前記具6が前記餅板4の表面から透けて見える程度の深さに埋没されている。
【0011】
本手段では、具6の全部又は一部が透けて見える程度の深さに埋没されている。
この構造によれば、透かして見ることで得られる色・大きさなどの情報から埋められた具の種類を推察できる楽しみがある。
また具6が透けて見えることにより、具6の位置をおおよそ視認又は推測することができ、可食部2を複数の餅ピースPに切断するときに便利である。
【0012】
第4の手段は、第1の手段を有し、かつ前記具6の端部8が前記餅板4の表面から露出した状態で、その端部8を除く当該具6の残りの部分10を前記餅板4に埋設させた。
【0013】
本手段では、
図2(B)に示す如く、具6の端部8が餅板4の表面から露出した状態で具6を埋設した。
この構造によれば、本来の具6のサイズが餅板4の厚みより僅かに大きい場合(例えば茹で栗・ウズラの卵など)に具を切って大きさを整える手間を省くことができ、作業時間を短縮し、素材の無駄を減らし、かつ、風味を多く残すために可能な限り素材の形を残すことができる。
【0014】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ前記餅板4の表面に沿って、前記板厚方向Zから見て、当該餅板4を横断する少なくとも一本の区画線Aが形成されており、
前記区画線Aは、この区画線Aに沿って、前記餅板4を前記板厚方向Zに切断することにより、前記餅板4を複数の餅ピースPに分断させるためのものであり、
前記具6は、前記複数の餅ピースPに一種類の前記具6が配置されるように分配されている。
【0015】
本手段では、
図3に示す如く、前記餅板4の表面に沿って、前記板厚方向Zから見て、当該餅板4を横断する少なくとも一本の区画線Aが形成されている。
この区画線Aは、当該区画線Aに沿って、前記餅板4を前記板厚方向Zに切断することにより、前記餅板4を複数の餅ピースPに分断させるためのものであり、
前記具6は、前記複数の餅ピースPに一種類の前記具6が配置されるように分配されている。
この構造によれば、区画線Aを目印にワンピースに一つの具の状態で切り分けることが容易である。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、餅板4に複数種類の具6を相互に離して分配させたので、各種類の具毎に、茶碗に盛ったご飯におかずを載せて食するのと同じ要領で、各種の具と餅とを食することができ、具毎の味を楽しめる。
第2の手段に係る発明によれば、具6の全体が餅板4に埋設しているから、餅板4を噛み切るまでどの具がでてくるかという好奇心をそそる効果が得られる。
第3の手段に係る発明によれば、具6が透けて見える程度の深さに埋没されているから、透かして見ることで得られる色・大きさなどの情報から埋められた具の種類を推察できる楽しみがある。
第4の手段に係る発明によれば、具6の端部8が餅板4の表面から露出した状態で具6を埋設したから、作業時間を短縮し、素材の無駄を減らし、かつ、風味を多く残すために可能な限り素材の形を残すことができる。
第5の手段に係る発明によれば、区画線Aを目印にワンピースに一つの具の状態で切り分けることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る具入り食品の構成及び作用を示しており、同図(A)は平面図、同図(B)は上方から見た断面図、同図(C)は側方から見た断面図、同図(D)は当該食品を包装材ごとに分割した状態を示す図である。
【
図2】
図1の製造方法を示しており、同図(A)は一個のつき立ての餅に複数の具を埋め込む第1の製造方法を、同図(B)は第1の製造方法で具を埋設した可食部の変形例であって具の端部が露出したものを、同図(C)は仕切り板を介して隣接した空所に、具を埋め込んだ複数の餅生地を入れ、仕切り板を外して餅生地同士をくっつける第2の製法をそれぞれ示している。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る具入り食品であって、区画線を付加したものの構成を示しており、同図(A)は色違いの餅生地同士の境界線を区画線とする第1の態様を、同図(B)は餅板に形成した凹条を区画線とする第2の態様を、同図(C)は第2の態様の断面形状を、同図(D)は餅板を覆う包装材に区画線を印刷する第3の態様をそれぞれ示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から
図2は、本発明の第1実施形態に係る具入り餅食品を示している。本実施形態の具入り餅食品は、可食部2と包装材12とで構成されている。もっとも、包装材12は省略しても構わない。
【0019】
可食部2は、平坦な餅板4に複数の種類の具6を相互に離して分配させてなる。複数の種類の食材を餅への添加食材として用いることで、一つの餅食品から栄養価の高い新感覚の食事を提供するためである。例えば図示例の3種類の具材6A、6B、6Cとして、例えば、肉、魚、果物・野菜のように系統の異なるものを割り当てると、バランスのよい食事が可能となる。なお、具の種類は適宜変更することができる。
なお、「分配させて」とは、個々の具6が餅生地3に囲まれ、定着された状態をいう。これに関しては、後述する。
【0020】
餅板4は、一膳の食事の主食に相当し、餅米を主体とする餅生地3で形成される。
なお、「主体とする」というのは、通常の白餅の他、緑餅(いわゆる草餅)・黒餅(餅米に黒砂糖を搗き込んで作るもの)のように餅生地になんらかの材料を添加した餅を除外しない意味である。そして、餅生地に添加した材料は「具」の概念には含まない。
もっとも、後述のように具6を埋設させた箇所において、
図1(C)に示すように餅板4の表面が多少隆起していても構わない。
図示例の餅板4は、第1方向Xを長手方向とし、第2方向Yを短手方向とする長方形状に形成されている。また、第3方向(板厚方向Z)において、餅板4の厚みは、前述の隆起箇所を除いてほぼ一定である。もっとも、餅板4の形状は適宜変更することができる。
なお、餅は時間の経過とともにデンプンの老化(β化)により固くなるが、固化を回避する既知の保存方法(温かいうちにラップして冷凍する、片栗粉をまぶしてクッキングシートに包む、砂糖を混ぜるなど)を採用すると、食するときに加熱器具が必要ない。こうすると、加熱器具を得難い被災地や人里離れた遊興地での食事に便利である。
本実施形態において、前記餅板4は、全体として平板状の略六面体(長方体)に形成されており、この六面体の最も広い面(代表面)の一面に醤油などの調味料を付着させている。
こうすることで、餅食品の表面にのみ調味料を付着することができるため、水分が少ない風味の残る餅を味わうことができる。
また、調味料の用意が難しい被災地や人里離れた遊興地において、おいしい食事をとることができる。
もっとも調味料の付着は省略することができ、また調味料の付着箇所は変更することができる。
【0021】
具6は、一膳の食事の菜食に相当する。本実施形態の具6は、後述の餅生地3へ埋め込む(埋設)作業を支障なく行える程度に、全体として一個のまとまりをもつ料理をいう。
調理した魚・貝・肉・野菜などのように、一つの具材が一個の具を構成していてもよく、複数の具材で一個の具を構成していても構わない。
好適な一実施例として、乾燥野菜のうちで、人参・カボチャ・緑のピーマン・赤のピーマン・しいたけを一定の大きさ(例えば8mm×15mm)の薄板状に揃えて切り、若干量の片栗粉を付着して一まとまりの具6とすることができる。
そして前述の餅板4の代表面と平行になるように板状の具6の姿勢を整え、餅生地3内に埋め込むことにより、餅板4内により多くの具(特により多くの野菜の具)を取り込むことができる。好適な一実施例として、具材の中に、食物繊維を多く含む野菜などを多く用いることにより、辛く長い被災者の健康・体力・気力の維持に大いに貢献する餅食品を提供できる。
なお、餅板4の板厚の範囲に収まる食材であれば、原寸法のままで切らずに餅板4に埋設することができるので、素材本来の形と風味とを残すことができる。
複数の種類の具6は、前述のように、平坦な餅板4内に相互に離して分配されている。この構成によれば、具6と餅生地3とが形態的に一体化されている。故に、特許文献2の「もちピザ」のように、可食部を一口分噛み切ったときに、複数の具が流れ出ることがなく、常に具を餅と一緒に食することができ、餅板と具との間に味覚の一体性が得られる。
的な食感が得られる。
複数の種類の具としては、収穫期に地面に落とした傷モノ商品なども活用できる。
【0022】
前記複数の種類の具6は、それぞれ餅板4に埋設されている。
故に、前述のビザ台の上に複数の具を載せた特許文献4の餅のピザように不意に具が載置場所から脱落してしまう不都合を生じない。
【0023】
「埋設させて」とは相互の離間位置に埋設させた状態であり、特許文献1の「餅食品」のように餅生地に具をつきまぜランダムに混和させたものと区別される。
各具6を埋設する箇所は、
図1(C)に示す板厚方向Z(図示例では上下方向)から見て、具6同士が互いに重ならないように設定する。
本実施形態では、
図1(B)に示す相互に平行な適数(図示例では2本)の仮想線Bを想定して、これら仮想線により区画される部位にそれぞれ一個の具6が在るように配置している。
こうすることにより、可食部2を前記仮想線Bに沿って包丁などの裁断具で垂直に切って、
図1(D)に示すように、複数(図示例では3個)の餅ピースPに分断したときに、一つの餅ピースPに複数の具6が入らないように設計している。
このようにした理由を、特許文献1を引き合いに出しつつ、説明する。前述のように餅生地に複数の種類の具材(米粒及び豆)をランダムに混和させる特許文献1の構成では、米粒と豆とが板厚方向に重なる状況が起こり得るし、そういう状況になっても特別不都合はない。これら米粒や豆は餅生地の味のアクセントとして添加されており、その餅製品のどこの部分を食してもおおよそ同じ味だからである。他方、本発明は、白米の主食に複数の菜食(例えば甘い物及び塩辛い物)とを食べるときと同様の満足感を一つの餅製品で得られるようにするものである。従って、本発明では別の種類の具6が一つの餅ピースPに含まれ、味が混ざり合うことを避ける必要があるのである。
なお、仮想線Bに代えて、餅板4の表面に沿って実在の線(後述の区画線A)を形成し、この区画線Aに従って分割される餅ピースPに一つの具6のみが含まれるように構成することもできる。
【0024】
また本実施形態では、前記具6の全体を前記餅板4に埋没させている。餅板4を噛み切るまでどの具がでてくるかが全く分からず(或いは分かりにくく)、好奇心をそそるという効果が得られる。
図示例では、全ての具6が全体として餅板4に埋設されているが、この構成は適宜変更することができ、一部の具6が全体として餅板4に埋設されていてもよい。
さらに本実施形態では、
図1(C)に示す如く、餅板4の表皮である薄膜5を介して、前記具6が前記餅板4の表面から透けて見える程度の深さに埋没されている。故に、透かして見ることで得られる色・大きさなどの情報から埋められた具の種類を推察できる楽しみがある。
なお、具6が透けて見えるのは、具6の全部に限らず、その一部でも構わない。図示例の場合、確実に透けて見えるのは、具6のうちで薄膜5に覆われて見える部分である。
【0025】
本実施形態では、餅板4の内部に、適数(図示例では3個)の具6を第1方向Xに所定の間隙dを存して埋め込んでいる。
そして、需要者が、薄膜5を通して視認される具6の位置を手掛かりに、それら間隙を通るように切り取り用の仮想線Bを想定し、その仮想線Bに従って可食部2を複数(図示例では3個)の餅ピースPに分割することが可能に設計されている。
図示例では、複数の具6の第2方向Yの位置が互い違いに(図示例では
図1(B)中の下・上・下となるように)なるように設計している。
この構成は、隣り合う具6の距離をより大きくとるためである。後述のように、つき立ての餅に複数の具6を埋め込んだ後に、その餅をのし餅(餅板)の形態へ伸ばしていく工程で、具6の位置が想定した箇所から若干ずれる可能性がある。前述の互い違いの配置を採用することにより、複数の具6を相互に分離した位置に確実に配置できる。もっとも、この配置は適宜変更することができる。
【0026】
包装材12は、可食部2への直接の接触を防ぐ機能、可食部2を保存する機能、及び餅板4からの具6の飛び出しを防止する機能を有する。
特に、前述の薄膜5を介して具6が透けて見える態様では、その薄膜が他物との接触や劣化により破損することがないように包装材12で覆って保護する意味がある。
図示例の包装材12は、前記具6を埋設した出っ張り部分から周囲の平坦部分に亘って、餅板4の表面に密着する素材(密着フィルム)で形成されている。これにより、包装材12と餅板4との間に形態上の一体性が得られる。
また包装材12は、包丁などの裁断具により、外部から包装材12ごと可食部2を裁断できる可切断性を有することが望ましい。
なお、本明細書において、「切断」とは餅板を断ち切ることをいい、治具(包丁などの裁断具)を用いて切る裁断と、後述の如く、折って千切ることとを含む。そして、裁断は、包装材ごと餅板を切ることを含む。
【0027】
前記構成によれば、具入り餅食品は、
図1(A)に示す状態で、主食と複数の菜食とが一体化されており、一つで一個の弁当と同様の満足感が得られる。
また前記具入り餅食品は、全体としてコンパクトな形状であり、保管及び輸送に便利である。
例えば被災地の救援物資という用途を考えたときに、弁当の形態は好ましくない可能性がある。
例えば物資を車両に積んで悪路を輸送しなければならない場合や、ヘリコプターが着陸できない場所(例えば河川の氾濫地域)に待つ被災者に投下して物資を届ける必要がある場合には、弁当では、包装体(弁当箱)と主食及び菜食との間に形態の一体性がないため、中身はごちゃまぜになってしまうおそれがあるからである。
本実施形態の対応では、包装材12と主食(餅板4)と菜食(具6)との間に形態上の一体性があるため、前述の移動中の不具合が起こる可能性が少ない。
【0028】
前記具入り餅食品を食するときには、前述のように餅板4の表面から透けて見える具6から想定する仮想線Bに従って、可食部2を、それぞれ一個の具6を含む餅ピースPに分割する。そうして、これら餅ピースPを必要により加熱して、一つずつ食する。こうすることで、白米のご飯とともに複数の菜食を順次食するのと同様の満足感を得られる。
面倒な調理の準備が必要なく、容易するものは、餅を切る道具と、餅を加熱する道具だけであるので、便利であり、特に、被災地や人里離れた遊興地などでの食事に有利である。
特に被災地では、食糧不足による栄養の摂取不足や偏りなどに起因して、体力や免疫力の低下・便秘・低体温症などを生じ易い。本発明の餅食品はこうした不都合の回避に貢献するものである。
【0029】
次に
図2を用いて本発明の可食部2の製造方法を説明する。
図2(A)は、第1の製造方法の説明図である。この方法では、既知の手順でもち米をつき、出来た餅生地が任意の形状(この段階では板状とは限らない)で容器C(餅つき用の臼や釜でもよい)に入った状態で複数の種類の具6を埋め込む。
この際に具6同士の間に一定の距離をとるように留意する。
複数の種類の具6を埋め込んだ後に、これらの具6が埋め込み箇所から大きく移動しないように留意しながら、各具6が餅生地3内に完全に埋まる程度に餅生地3を捏ね、そして
図1(A)~(C)に示すような餅板4の形に整える。
図示例では、複数の種類の具6を互いに距離をとって同時に埋め込むことができる保持手段Hを用いる。この保持手段Hは、相互に距離を存して配置された保持部hを有し、図示しないスイッチの操作により、各保持部hが具6を保持し、かつ、リリースすることを同時に行えるように構成している。保持手段の具体的な機構については、既存の物品保持具の構成を採用できる。
また、こうした治具を用いずに人の手で具6を埋め込んでもよい。
大切なことは、釜などの容器Cの内部で餅をつき終わって、その餅が釜の中にあるときに、予め用意した複数の具を、餅の上方へ配置しておくことである。その際には、釜の形に合わせた位置、具体的には、
図2(A)に示すように、釜の内周面の周方向に沿って等角的に離れた位置に配置するとよい。そして、餅が柔らかいうちに平たい伸し餅(餅板4)にするのである。
これ以外の方法としては、餅つき時に釜内の餅の表面に具材を散らして練り込むことも考えられたが、発明者がした実験によると、餅生地の真ん中に一回で食材を散らしても、また餅の表面全体に一回で具材を散らしても、餅を練り込み始めると、食材が一か所に集まった。これでは、餅板4に複数の種類の具6を相互に離して分配させることはできず、まして複数の具6は、板厚方向Zから見て重ならないようにすることもできない。
【0030】
図2(B)は、第1の製造方法で形成した可食部2の変形例を示している。この例では、具6の全体を餅生地3に埋設させる代わりに、具6の端部8が餅生地3から露出し、残りの部分10のみが埋め込まれるようにしたものである。この残りの部分は、具全体が餅板から飛び出さない程度の大きさの部分である。
【0031】
図2(C)は、第2の製造方法の説明図である。この方法では、一定形状(図示例では上方から見て矩形)で有底の枠Fの内部に、この内部を区分する適数(図示例では2枚)の仕切り板Sを着脱自在に配備させている。
そして、枠Fと仕切り板Sとの間の空間並びに仕切り板S同士の空間内につき立ての温かい餅生地3を押し込み、各空間の形に合わして成形させるとともに、各空間内の餅生地3に異なる種類の具6をそれぞれ埋め込む。
そして餅生地3が温かいうちに仕切り板Sを外す。温かい餅生地3は、α化(糊化)により粘りの強い状態にあるため、仕切り板Sを外すと、もともと仕切られていた餅生地同士は容易にくっつく。このくっついた餅生地3を上方から押圧して、餅生地同士のくっつきをより完全にする。しかる後に餅板4を枠Fから脱型することにより、可食部2として取り出すことができる。この脱型作業の際に、枠Fを複数の部分枠に分割できるように設計されていると可食部2の取出しに便利である。
なお、
図2(C)の例において、枠F内の複数の空間に押し込む餅生地を色違いとしてもよい。具体的には、図示の餅生地3A、3B、3Cとして、例えば通常のもち米のみで形成した白餅、よもぎなどの植物系の素材をもち米に混ぜ込んだ緑餅(草餅)、黒糖をもち米に混ぜ込んだ黒餅などを採用すると、外観上美しい三色餅となり、素材の味及び香り(野草の香りなど)を味わうとともに、食品全体の見た目の美しさも楽しめる。なお、餅生地を色違いとするのは美観だけではなく、後述の区画線Aとしての意味もあるが、これについては、後述する。
【0032】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において、第1実施形態と同じ構造については説明を省略する。
【0033】
図3は、本発明の第2実施形態に係る具入り餅食品を示している。本実施形態では、前記餅板4の表面に沿って、餅板4の板厚方向Zから見て、当該餅板4を横断する少なくとも一本(図示例では2本)の区画線Aが形成されている。「餅板4の表面に沿って」とは、後述の如く、餅板4自体に区画線が形成されている形態の他、餅板4を覆う包装材12に区画線が形成されている態様を含むものとする。
この区画線Aは、複数の種類の具6を含む餅板4を、それぞれ一種類の具6を含む複数の餅ピースPに、切断操作により分割するための目印として使用される。前述のように具6の透かしてみることにより切断位置(仮想線B)を想定する方法と比較して、利用者はより自信をもって餅板4を切断することができる。
図示例の区画線Aは、餅板4の短手方向である第2方向Yに延びているが、この構造は適宜変更することができる。例えば図示はしないが、第1方向Xに延びる一本の区画線と第2方向Yに延びる一本の区画線とにより、餅板4を上方から見て“田”の字状に区画してもよい。この場合には、区画された各餅部分に異なる種類の具6を埋設させる。さらに各方向の区画線の数も適宜変更することができる。
本実施形態としては、後述の
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)、並びに
図3(D)の3つの実施例を説明する。もっとも、これらの実施例に限らず、区画線Aの機能を果たすものは本実施形態に含まれる。
【0034】
図3(A)は、前述の
図2(C)の色違いの餅生地の境界線を区画線Aとして利用する態様である。
図3(B)及び
図3(C)は餅板4の表面(上面)に形成した凹溝を区画線Aとして利用する態様である。
一般に餅板を屈折させて千切るための凹溝(折り取り線)を設けることが知られている(例えば実開昭62-222666号)。
本実施態様の区画線Aは、治具を用いて切断するための目印であり、折り取り線としての機能は必ずしも必要ない。折り取るためには、折る操作ができる程度に餅板4が固いこと及び凹溝が深いことが必要であるが、本実施形態では、それらの条件は必須ではない。
もっとも、区画線Aが折り取り線を兼ねていても構わない。餅板4を手で折る操作により餅ピースPを折り取ることができるようにすることは、切断具を用意することが難しいできたい被災地や人里離れた遊興地での食事に有利な場合がある。
図3(D)は餅板4を覆う包装材12への印刷線を区画線Aとして利用する態様である。この態様では、前述の如く、区画線Aを目印として包装材12ごと餅板4を裁断すればよい。
【符号の説明】
【0035】
2…可食部 3、3A、3B、3C…餅生地 4…餅板 5…表皮(薄膜)
6、6A、6B、6C…具 8…端部 10…残りの部分 12…包装材
A…区画線 B…仮想線 C…容器 F…枠 H…保持手段 h…保持部
S…仕切り板 X…第1方向(長手方向) Y…第2方向(短手方向)
Z…板厚方向
【要約】
【課題】食事の主食と菜食とを兼ねる多様な食感を味わえる餅食品を提供する。
【解決手段】餅板4に複数の種類の具6を相互に離して分配させてなる可食部2を具備し、前記複数の具6は、板厚方向Zから見て重ならないように埋設させている。前記具6の全体を前記餅板4に埋没させた態様と、前記具6の端部8が前記餅板4の表面から露出した状態で、その端部8を除く当該具6の残りの部分10を前記餅板4に埋設させた態様とを含む。前者の態様においては、前記具6が前記餅板4の表面から透けて見える程度の深さに埋没されている。
【選択図】
図1